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No.30054の一覧
[0] IS ―インフィニット・ストラトス クラスメートの視線―[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:41)
[1] 受験……のはずが[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:27)
[2] どんどん巻き込まれていく[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:42)
[3] ある意味、自業自得なんだけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:42)
[4] 何だかんだで頑張って[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:44)
[5] やるしかないわよね[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:14)
[6] いざ、決戦の時[ゴロヤレンドド](2012/04/16 08:11)
[7] 戦った末に、得て[ゴロヤレンドド](2014/06/16 08:01)
[8] そして全ては動き出す[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:55)
[9] 再会と出会いと[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:45)
[10] そして理解を[ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:58)
[11] 思いがけぬ出会いに[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:47)
[12] 思い描け未来を[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:48)
[13] 騒動の種、また一つ[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:49)
[14] そして芽生えてまた生えて[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:50)
[15] 自分では解らない物だけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:52)
[16] 渦中にいるという事[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:52)
[17] 歩き出した末は [ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:59)
[18] 思いもよらぬ事だらけ[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:54)
[19] 出会うなんて思いもしなかったけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:55)
[20] それでも止まらず動き出す[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:28)
[21] 動いている中でも色々と[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:00)
[22] 流れはそれぞれ違う物[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:01)
[23] ようやく準備は整って[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:01)
[24] それぞれの思い、突きあわせて[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:02)
[25] ぶつかり、重なり合う[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:56)
[26] その果てには、更なる混迷[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:04)
[27] 後始末の中で[ゴロヤレンドド](2012/11/15 08:09)
[28] たまには、こんな一時[ゴロヤレンドド](2012/11/15 08:10)
[29] 兆し、ありて[ゴロヤレンドド](2012/12/10 08:16)
[30] それでも関係なく、私の一日は過ぎていく[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:06)
[31] 新たなる、大騒動は[ゴロヤレンドド](2013/01/07 14:43)
[32] ほんの先触れ[ゴロヤレンドド](2013/01/24 15:47)
[33] 来たりし者は[ゴロヤレンドド](2013/02/25 08:21)
[34] 嵐を呼ぶか春を呼ぶか[ゴロヤレンドド](2015/08/11 08:06)
[35] その声は[ゴロヤレンドド](2013/03/26 08:05)
[36] 何処へと届くのか[ゴロヤレンドド](2013/04/03 08:02)
[37] 私を取り巻く人々は[ゴロヤレンドド](2013/04/27 09:30)
[38] 少しずつ変わりつつあって[ゴロヤレンドド](2013/05/09 11:05)
[39] その日は、ただの一日だったけれど[ゴロヤレンドド](2013/05/21 08:10)
[40] 色々な動きあり[ゴロヤレンドド](2013/06/05 08:00)
[41] 小さな波は[ゴロヤレンドド](2013/07/06 11:24)
[42] そのままでは終わらない[ゴロヤレンドド](2013/07/29 08:06)
[43] どんな夜でも[ゴロヤレンドド](2013/08/26 08:16)
[44] 明けない夜はない[ゴロヤレンドド](2013/09/18 08:33)
[45] 崩れた壁から[ゴロヤレンドド](2013/10/09 08:06)
[46] 差し込む光は道標[ゴロヤレンドド](2013/11/18 08:13)
[47] 綻ぶ中で、新しいモノも[ゴロヤレンドド](2013/11/18 08:14)
[48] それぞれの運命を変えていく[ゴロヤレンドド](2013/12/02 15:34)
[49] 戦いは、すでに始まっていて[ゴロヤレンドド](2013/12/11 12:56)
[50] そんな中で現われたものは[ゴロヤレンドド](2014/08/18 07:59)
[51] ぶつかったり、触れ合ったり[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:29)
[52] くっ付いたり、繋がれたり[ゴロヤレンドド](2014/08/18 07:59)
[53] 天の諜交、地の悪戦苦闘[ゴロヤレンドド](2014/02/28 08:27)
[54] 人の百過想迷[ゴロヤレンドド](2014/03/11 08:12)
[55] 戦いの前に、しておく事は[ゴロヤレンドド](2014/03/11 08:40)
[56] 色々あるけど、どれも大事です[ゴロヤレンドド](2014/04/14 08:34)
[57] 無理に、無理と無理とを重ねて[ゴロヤレンドド](2014/04/30 08:27)
[58] 色々と、歪も出てる[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:24)
[59] まさかまさかの[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:57)
[60] 大・逆・転![ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:59)
[61] かなわぬ敵に、抗え[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:25)
[62] その軌跡が起こす、奇跡の影がある[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:24)
[63] 思いを知れば[ゴロヤレンドド](2014/07/30 08:06)
[64] 芽生える筈のものは芽生える[ゴロヤレンドド](2014/08/18 08:00)
[65] 決意の時は、今だ遠し[ゴロヤレンドド](2014/09/03 08:13)
[66] 故に、抗うしかない[ゴロヤレンドド](2014/10/06 08:13)
[67] 捻じ曲げられた夢は[ゴロヤレンドド](2014/10/06 08:14)
[68] 捻じ曲げ戻すしかない[ゴロヤレンドド](2014/10/23 08:17)
[69] 戦う意味は、何処にあるのか[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:12)
[70] それを決めるのは、誰か[ゴロヤレンドド](2014/12/09 08:22)
[71] 手繰り寄せた奇跡[ゴロヤレンドド](2014/12/26 14:07)
[72] 手繰り寄せられた混迷[ゴロヤレンドド](2014/12/26 14:08)
[73] 震える人形[ゴロヤレンドド](2015/01/19 08:01)
[74] 対するは、揺るがぬ思いと揺れ動く策謀[ゴロヤレンドド](2015/02/17 08:06)
[75] 曇った未来[ゴロヤレンドド](2015/03/14 10:31)
[76] 動き出す未来[ゴロヤレンドド](2015/03/31 08:02)
[77] その始まりは[ゴロヤレンドド](2015/04/15 07:59)
[78] 輝夏の先触れ[ゴロヤレンドド](2015/05/01 12:16)
[79] 海についても大騒動[ゴロヤレンドド](2015/05/19 08:00)
[80] そして、安らぎと芽生え[ゴロヤレンドド](2015/06/12 08:02)
[81] 繋いだ絆、それが結ぶものは[ゴロヤレンドド](2015/06/30 12:20)
[82] 天の川の橋と、それを望まぬ者[ゴロヤレンドド](2015/07/23 08:03)
[83] 夏の銀光、輝くとき[ゴロヤレンドド](2015/08/11 08:08)
[84] その裂け目、膨大なり[ゴロヤレンドド](2015/09/04 12:17)
[85] その中より、出でし光は[ゴロヤレンドド](2015/10/01 12:15)
[86] 白銀の天光色[ゴロヤレンドド](2015/12/01 12:17)
[87] 紅と黒の裂け目の狭間で[ゴロヤレンドド](2015/12/01 12:18)
[88] 動き出したのは修正者[ゴロヤレンドド](2016/02/04 08:01)
[89] 白銀と白[ゴロヤレンドド](2016/02/04 08:02)
[90] その、結末[ゴロヤレンドド](2016/03/02 12:22)
[91] 出会い、そして[ゴロヤレンドド](2016/03/30 12:24)
[92] 新たなる始まり[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:16)
[93] 新しいもの、それに向き合う時[ゴロヤレンドド](2016/06/24 08:40)
[94] それは苦しく、そして辛い[ゴロヤレンドド](2016/08/02 10:08)
[95] 再開のもたらす波、それに乗り動く人[ゴロヤレンドド](2016/09/09 09:34)
[96] そのまま流される人[ゴロヤレンドド](2016/10/27 10:08)
[97] 戻りゆく流れの先に[ゴロヤレンドド](2017/02/18 12:02)
[98] 新たなる流れ[ゴロヤレンドド](2017/03/25 11:46)
[99] 転生者たちはどんな色の夢を見るのか[ゴロヤレンドド](2017/05/27 14:38)
[100] そして、その生をあたえたものは[ゴロヤレンドド](2017/05/27 14:36)
[101] 戦いの前に[ゴロヤレンドド](2017/09/12 15:39)
[102] 決めた事[ゴロヤレンドド](2018/01/30 15:54)
[103] オリキャラ辞典[ゴロヤレンドド](2017/09/12 15:38)
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[30054] 新たなる始まり
Name: ゴロヤレンドド◆abe26de1 ID:2f15c288 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/05/12 12:16

※今回、一部文章が抜け落ちていた箇所があった4話と69話を加筆修正しました。
 この二話を読まれた皆さんに、この場を借りて謝罪いたします。申し訳ありませんでした。


「おはよう、宇月さん。昨日はよく眠れ……てないみたいね」
 七月八日、臨海学校最終日。朝起きると、同じ部屋だった鷹月さんに真っ先に言われたのがそれだった。
「うわ、眼の周りクマが出来てるよ。クリーム貸そうか?」
「ううん、持っているから大丈夫よ谷本さん。ありがとう」
 布団から出て、洗面所に向かう。……うわあ、これは酷い。以前、虚先輩の授業を受けていた時期。
私が一度倒れたことがあったけれど、その時期と同じような酷さだ。……原因は、はっきりとしているけど。
「やっぱり、ハードすぎたわね……」
 自分が持ってきたスキンクリーム――黛先輩お勧めの、汚れや疲れ隠し用――を鏡を見ながら塗り、考える。
昨日の夜、織斑先生に無理を言って連れて行ってもらった結果。私は、世界中で謎になっている問題の答えを知らされた。
私としては、白式の変化以外は別に知りたいと思ったわけじゃないけど……。そんな理屈が通用しないのは、もう解っていた。
「それにしても、何でなんだろう……?」
 織斑君がISを動かせる理由も、他の男子達の場合も。篠ノ之博士にさえ、わからなかったみたいだし……。
「まあ、考えても結論なんて出るわけない、か」
 思考を一時中断し、鏡を見て、クリームを塗るべき場所を考える。あ、目元はもう少し塗っておいた方が良いかな?
「結論って、何が?」
「!」
 独り言への返答に、思わず指が髪の毛の方までいってしまった。鏡に映っていたのは、私のルームメイトにして友人の。
「ふ、フランチェスカ? お、起きてたの?」
「うん。そろそろだよ、って皆に起こされて。香奈枝もさっき起きたばっかりだ、って聞いたんだけど」
「う、うん、そうよ。じゃ、じゃあね」
 あ、危ない危ない。もしもこの秘密をばらしたら、それこそどうなるか解らない。だから私は、慌てて洗面所を飛び出したのだった。


「あーあ、あっという間だったね……」
「でもボーデヴィッヒさんが怪我したって聞いたけど、大丈夫かな? 別ルートでもう学園に戻ってるらしいけど」
「試験の中止と、やっぱり関係あるのかな?」
 朝食も終わり、旅館から去る時間が近づいていた。皆、臨海学校を振り返っているけど……。
ボーデヴィッヒさんの怪我とか、昨日の試験中止だとか、皆の口にのぼる話題はそれだ。
「皆、聞いた? 何か、ゴウ君も怪我したっていう話なんだけど」
「え、本当?」
「何でゴウ君まで? ボーデヴィッヒさんと同じなの?」
「さあ、そこまでは。三組のブラックホールコンビの情報だから、精度は高いと思うけど」
 そして、ドイッチ君も怪我をしたという話が飛び交い始める。私は昨日の時点で知っていたけど、当然ながらこれも話せるわけはない。
だから、今まで黙っていた。だけど、やっぱり人の口に戸は立てられないというものなんだろう。発覚したようだった。
「ねえねえ香奈枝。昨日は聞きそびれたけど、篠ノ之博士を見て、どう思ったの? 織斑君の側にいたから、結構間近で見れたんだよね?」
「へ? べ、別にどう、ってことはな、無かったけど……」
「あれ? 何か変だよ、宇月さん」
 いきなり話しかけてきたフランチェスカの言葉の内容に、思いっきり動じてしまう。……岸原さんじゃなくても、変に思うだろう。
「ひょっとして、香奈枝。貴女……」
「な、何よ、フランチェスカ?」
「白式の事で……」
 ……!
「篠ノ之博士に、また何か言われたの? 昨日、虫とか言われてたんでしょ?」
「む、虫?」
「ほら、博士が紅椿……だっけ? 篠ノ之さんの専用機を届けに来て、彼女がそれを纏った後で」

『いっくんに変な虫もついているみたいだしねー』

「とか言われていたらしいじゃない。オルコットさんが、今朝教えてくれたんだけどさ」
「あ、そ、そうだったわね」
 そういえば、そんな事を言われたな……と思い出す。それから起きた数々の出来事で、そんな事はもう記憶の彼方に飛んでいた。
「そういえば博士って、あれからどうしたんだろう? 紅椿を渡してから、どこか行っちゃったみたいだけど」
「さあ? 博士の足取りって、世界中の政府とか色々な機関が探してるけど、全然見つからないらしいし……」
「また、現れるのかな?」
 それから、みなの話題は篠ノ之博士へと移っていった。……ふう。篠ノ之博士、かあ。本当に、あの人は一体何なんだろう。


「……」
 そしてバスに乗る時間が来て、皆がそれぞれのバスに乗り込んでいく。……我が一組を除いて、だけど。
それは織斑君の隣を誰にするか、というクラス中を巻き込んだ大ジャンケン大会があったからで、私は唯一の不参加者だった。
そしてバスの適当な席に座り、昨日の出来事を回想する。やっぱり離れないのは、篠ノ之博士の言葉。

『ふふふ。そうだね、たとえ話だけど「しろきし」の力を受け継ぐ「しろしき」なんてあったら面白いねー』

『知ったら、何なのかな? それと、そのくらい私が理解していないとでも思っているのかい? 舐められた物だね、束さんも』

『……ねえ、ちーちゃん。今の世界は楽しい?』

 どれもこれも、一生忘れられないだろう。ええっと、後は。
「……あれ?」
 思い出していく、博士の言葉。その中に一つだけ、変な所があった。

『いっくんはIS開発に関わっていない筈なのに、おかしいよね』

「どういうことよ、あれ……?」
 変だった。これが正しいなら、まるで――世界中が追い求めている『あの謎』の前提条件が、覆ってしまうからだ。
そう。もしも私の推測が正しいのなら。私は……私の方は『初』じゃ、なかったんだということになる。
「……」
 今更ながらに、背筋がゾクッとした。自身の知ってしまった『謎』が、どれだけ大きい物であるのかを理解して。
「どうしたのよ、香奈枝。ジャンケン大会、参加しなかったの?」
「え、ええ。私は別に、ね。ところで、決まったの?」
「うん、優勝は――」
「私だよ~~♪」
 フランチェスカの後ろから、高々と振られる長い袖が見え、間延びした声が聞こえてくる。ああ、なるほど、ね。




「おりむーおりむー。お菓子もってないかな~~?」
「って、もう食べたのかお菓子!?」
 俺達は、学園への帰路へとついていた。色々な事があった旅館から出て20分くらいして、俺の隣に座ったのほほんさんが言った一言がこれ。
確か彼女は、大きな袋にいっぱいお菓子を詰めていたはずなのだが。
「あのな、のほほんさん。前々から思ってたけど、そんなにお菓子ばっかり食べるとよくないぞ? 俺達の年齢だって、太るときは太るんだからな」
「大丈夫だよー、私、おっぱいとお尻以外は太らないからー」
「ぶっ!」
 少しだけ嗜めるような言葉を掛けたら、異次元の返答が返ってきた。思わずのほほんさんの身体に視線が行きそうになり、慌てて外を向く。
「どうしたの、おりむー?」
「い、いや何でもない。……そ、それよりも、太るほかにも問題がある。栄養が足りなくなって、身長が伸びなくなるかもしれないだろ?」
 のほほんさんの身長は正確には知らないが、俺よりも20センチは低い。
15~16歳の女子としては平均的かもしれないが、さっきの発言を誤魔化したいからこう言ってみた。
「んー、確かにもう少し身長があってもいいけどねー。別に、伸びなくても良いかなー。
そういえばおりむーは、背の高い女の子と背の低い女の子、どっちが好きかなー?」
「い!?」
「の、布仏! き、貴様何を聞いているのだ!」
 と、俺の三つ後ろの席に座っていた箒がやって来た。お、おいおい。そんな事をしていると……。
「ぐはっ!?」
「高速道路にいる時は、席を立つな。……布仏も、その位にしておけ」
「わ、解りました、織斑先生……」
「はーい」
 千冬姉から投擲された出席簿が箒の頭を直撃する。そして、この話題は何とか収まった。……ふう、助かったな。


「では、このサービスエリアで昼食をとる。予定時刻は変更なし、ここを出発すると学園まで停車はないのでそのつもりで行動しろ」
 そして、そうするうちにサービスエリアに着いた。かなり大きな場所で、ちょっとした学校サイズの広さがあるようだ。
「織斑。お前はクラス代表として、クラス全員を纏めて連れて行け」
「はい」
 そして俺達は、バスから降りてレストランへと向かった。別のバスだった鈴や簪、将隆達もクラスの面々を連れてきている。
「おりむーおりむー、席はどうなってるの~~?」
「いちおう、このレストラン全体が貸切になってるみたいだけど。席については自由らしいぞ」
「それじゃー、たまには専用機持ちだけじゃなくて、私達とも座ろうよー」
「それは良いけど……私達、ってのは誰なんだ?」
「えっとねー。私と、かなりんと……」
 なるほど、全員が一組のメンバーだな。なら、それで良いか。


「一夏っ! あたし達と一緒に食べなさいっ!」
「一夏さん、ランチを一緒に如何でしょう?」
「あ、あの。私達と、い、一緒に……食事、してくれ、ない?」
 レストランの中に入り、各自席に分かれようとすると。鈴、セシリア、簪が現れた。うーん。いつもなら、歓迎なんだが。
「悪い、ちょっと先約があってな。今日は、勘弁してくれ」
 席が大きければ皆も一緒に食べても良いんだが、残念ながらテーブルは六人掛け。そして俺を含めて六人いるので、空きはなかった。
「な、何ですって!?」
「で、出遅れてしまいましたわ……!」
「本音……隣だって聞いてたけど、ずるい……」
「てひひー、先手必勝、だよー」
 誘ってきた三人は悔しげに、のほほんさんは胸を張ってⅤサインをしていた。うーん。
「まあ、お前らもまた誘ってくれよ。今日は駄目だったけど、また機会もあるんだしさ」
「……解ったわよ、今日のところは引き下がってあげるわ」
「淑女たる者、引き際は心得ておりますわ」
「また、ね」
 三人は、おとなしく引き下がってくれた。せっかく誘ってくれたのに、ちょっと悪い事をしたかな。
「さてとおりむー、レッツゴー、だよ」
「おう」
 まあ、たまには違うメンバーと食事をするのも良いよな?


「へえ。白式で瞬時加速している時って、そんな感じなんだ」
「私はまだ、瞬時加速を使えないけど……。早く使えるようになりたいなあ」
 のほほんさんやクラスメート達と食事となったのだが。話題は、IS関係のことになっていった。
瞬時加速の感覚や、部分展開の感触など……。まだ皆にとっては未知の話題を提供している。
「そういえば織斑君。白式が何か変わったとか噂になっているんだけど……本当?」
「……ああ、昨日、ちょっとな」
 夜竹さんが、恐る恐る、といった感じで質問をしてきた。彼女が聞いているのは、白式の二次形態移行の事なんだろう。
あの時は福音との戦いでそれどころじゃなかったけど、実は物凄いことらしい。
ちなみに千冬姉曰く『二次形態移行をしたことそのものは、喋っても構わん。だが、そのタイミング等は絶対に喋るな』らしい。
「そ、それって二次形態移行、だよね?」
「信じられない……」
 皆も、驚きを浮かべている。そうでないのは、デザートのパフェ(※個人で注文)を食べるのに忙しいのほほんさん位だ。
「ねえねえ、どんな感じになったの?」
「うーん……。まあ、データ取りとかもあるんで学園に戻ってから話すよ。俺自身も、まだ解っていない部分があるし」
 これは、三組の副担任で宇月さんとも親しい古賀先生から教わった『言い訳』だった。
白式のことは聞かれるだろうから、こう答えればいいとの事だったが。
「そっか。……じゃあ、そうしようかな」
 皆も、それ以上の質問はしないのだった。ふう、これで山は越えたかな……。
「じゃあじゃあ織斑君! 一昨日の自由時間で、皆、水着姿だったけど。誰の水着が一番印象的だった? あ、織斑先生はなしだよ?」
「い!?」
 と思ったら、別方向からとんでもない質問が飛んできた。み、水着? 千冬姉以外で……?
「う、うーん……」
「そんなに悩まなくても良いよ、ぱっと考えて誰の水着が印象に残ってるの?」
 相川さんが、助け舟を出してくれた。……そう、だな。
「……箒と、のほほんさんかな?」
 箒は、昨日の夜……二人だけで見せてくれた事が印象に残ってるし。のほほんさんは、着ぐるみというインパクトが強かったからなぁ。
「わーい、ありがとうおりむー」
「篠ノ之さんと本音、かあ……。ってことは、やはり大きい方がインパクトがあるのかなあ?」
「大きい? ……っ!」
 岸原さんの言葉は一瞬意味が解らなかったが、すぐに理解できてしまった。
「い、いやそういうわけじゃないぞ!? 別に、胸が大きいからあの二人が印象に残ってるとか言うんじゃなくて……!」
 って、俺は何を大声を出してるんだ!? 別のテーブルから、思いっきり視線が集中してるし。うわ、恥ずかしい。
「お、おほん。の、のほほんさんは、あの着ぐるみだったからな。どうしても、インパクトが強いんだよ」
「まあ、そうだよね。本音にしか出来ない水着だよね、あれは……」
「えへへー」
 半分くらいは呆れている感じがする谷本さんの声だが、のほほんさんは褒められたと感じたのか嬉しそうだった。いや、褒められてないと思うぞ?
「……あれ? 篠ノ之さんの水着ってどんなのだっけ?」
「私も、彼女の水着は見ていないような気がする……」
「私も、知りませんね……。織斑君、どんな水着だったんです?」
「箒の水着か? えっと……あれは、白いビキニっていうのかな」
 詳しくは解らないけど、多分それで合っている筈だ。
「むむ、白いビキニか。篠ノ之さんのスタイルだと、凄く凶悪そうな組み合わせだね」
「私も、もっと大胆に行けば良かったかなー」
「あ、そういえばさあ、あのビーチバレーの時にまーやんが……」
 それからも、皆と色々な話をした。こういうのも、良いよな。



「失礼。貴女が、織斑一夏君よね?」
「え?」
 昼食を終え、皆がお土産購入やトイレを済ませていく中。バスの中で待っていると、そこに金髪の女性が入ってきた。学園関係者、か?
でも、見た事のない……いや、何処かで顔を見たような気がする。でも、何処でだ?
「あの、俺に何か用事なんでしょうか?」
「私は米軍所属のIS操縦者、ナターシャ・ファイルズ。銀の福音の、専属操縦者よ」
「!」
 こ、この人が……!? そういえば、あの時、福音のデータが公表された時にこの人の顔があったような。
「ちょっと、数分ほど良いかしら? 話をしたいんだけど」


 俺達は、バスから離れて建物の影にいた。一応千冬姉に連絡したが『五分で戻れ』と言われただけなので、問題はないようだ。
「ごめんなさいね、こんな所まで呼び出して。私と『あの子』の事は、一般生徒に聞かれるわけにはいかないでしょ?」
 ああ、それで呼び出したんだな。納得だ。
「それで、俺に何か? 体調は、大丈夫なんですか?」
「ええ、私はもう大丈夫よ。それと呼び出したのは、お礼がしたかったからよ、白いナイトさん」
「……え?」
 言った瞬間には、ファイルズさんの唇が俺の頬にキスをしていた。……もっとも、それを理解した瞬間。
「おわああああああああああああああああああああああああ!?」
 俺は、何もかも忘れて慌ててファイルズさんから離れた。な、な、何をするんですか!?
「あら、そんなに嫌がらなくてもいいじゃない。失礼しちゃうわね」
 失礼しちゃう、といいつつも笑っているファイルズさん。……でも、なあ。
「いや、その、嫌だったとか、そういうんじゃ、なくて……」
 ええっと、その。何と言いますか。俺は、その。
「……もしかして、織斑君。キスは初めて、だったとか?」
 う……。ちょっと気恥ずかしいが、その通りなんだよ、な。だから俺は、首を縦に振った。
「あらまあ、それはごめんなさい。でも、唇にしなくてよかったわ。そんな事をしたら、地獄の果てまでブリュンヒルデが追いかけてきそうだし」
 申し訳なさそうな、でも楯無さんみたいな『年下をからかうお姉さん』みたいな表情になるファイルズさん。
それは、昨日俺達と激闘を繰り広げた銀の福音の操縦者だとは思えない、普通のお姉さんだった。
「さて、と。じゃあそろそろ私『たち』は戻らないといけないから、ここで失礼するわね。また、会いましょう」
 バーイ、といいながら手を振っていくファイルズさん。それは、しっかりとした足取りだった。




 サービスエリアの駐車場入口。ナターシャ・ファイルスを待つ米軍関係者の車両の手前に、彼女の知人がいた。
黒いスーツに身を包み、癖のある髪をした戦乙女と異名を持つ女性――織斑千冬。
「おい、妙な火種を残していくな。もしもこれがばれたら、また一騒動だ。ガキの面倒は大変なんだぞ?」
「ごめんなさい。思っていたよりも、ずっと素敵な男性だったから、つい」
 はにかんだ笑みを見せるナターシャに、千冬は呆れ気味に肩を竦めた。その顔には、安堵と懸念の色が浮かぶ。
「やれやれ。……それより、昨日の今日で動いても大丈夫なのか? わざわざ、サービスエリアまできて礼を言うとはな」
「ええ。私はずっと……あの子に守って貰っていたから」
「やはり、そうか」
「ええ。あの子は望まぬ戦いにその身を投じた。強引な二次形態移行。そして、コア・ネットワークの切断……。
あの子は、自分の全てを変貌させた。飛ぶ事がただ好きだったあの子に、そんな事をさせてしまった……。
自らの姿を歪めるような二次形態移行とワンオフアビリティーの発動だって、全てが私と飛び続けたかった事が原因……」
 深い悔恨の言葉を続けるナターシャの瞳が、鋭いものへと変わった。それを、千冬はただじっと見つめる。
「だから、私は許さない。あの子に、あんな事をさせた元凶に……必ず、その報いを受けさせる」
 ギュッと握りしめた拳が、ギリギリと軋むような音を立てた。そこには、一夏が先ほど感じたような雰囲気は微塵も感じられない。
たとえるならば、夜叉のごとく歪んでいた。もともとの顔立ちが美人であるだけに、なおいっそう歪みを感じてしまう。
「無茶はするなよ。この後、査問委員会なんだろう? しばらくは、大人しくしていた方が良いぞ?」
「それは忠告かしら、ブリュンヒルデ?」
「アドバイスさ、ただの、な」
 千冬は少しばかり、顔を顰めた。自分ではあまり好まない呼ばれ方をしたことへの顰みと。そして、別の事への顰みが混じった物。
緊迫した雰囲気が漂う中。ナターシャが、ふと思い出したように表情を弛緩させる。
「ところで千冬。今のは頬へのキスだったけれど。もしも弟さんの唇へのファーストキスを私が奪っていたら、どうしたかしら?」
「別に、一夏が誰とキスをしようと、どうということもないさ。真剣に愛し合う覚悟さえあれば、な」
「ふうん。じゃあ彼への感謝ではなく、ジョークで奪ったらどうなのかしら? あるいは、嫌がる彼に無理矢理――とかしたら、どうなるの?」
「その場合か? ……潰すぞ、アメリカごと」
 その直後に冗談だ、と続けた千冬だが。それを見たナターシャは『あれは100%本気の発言だった』と後に述懐している。
この発言を聞いた某元日本代表メンタルトレーナーや童顔爆乳の元日本代表候補生も、これに同意したとか。――閑話休題。


「そうか。ファイルスも銀の福音も無事に回収。在日米軍に引き渡された、か」
 現地時間、七月七日午後一時(日本時間、七月八日午前八時)のハワイにて、マサイアス・トランスはその報告を受け取っていた。
そして、周囲で固唾を飲んで聞いていた者達の表情にも一斉に喜びの色が浮かぶ。
「どちらとも、無事なのですね?」
「そうだ。……それと、銀の福音は二次形態移行をし、ワンオフアビリティーにも目覚めたとの報告があった」
「な、何と! それは、本当ですか!?」
「そうだ。それを駆使し、IS学園所属のIS、カコ・アガピの私兵、謎の侵入者と戦ったという。報告はいずれ、在日米軍から上がってくるだろうが……」
 ナターシャ・ファイルスと銀の福音の無事。そして二次形態移行とワンオフアビリティーの発動。
どれも慶事であるのだが、トランスの表情はさえなかった。何故なら、ば。
「ワンオフアビリティー、そして特殊武装の発生……。本来ならば、喜ぶべき事案なのだがな。暴走の結果とあっては、手放しでは喜べんな」
「しかしナターシャ・ファイルズが無事だったのは幸いです。彼女なしでは、もはや福音は成り立たないのですからね。
早速、二次形態移行後の詳細なデータを取らなければなりません。その次には、各種武装の詳細も……」
「――いや。福音は、無期限の凍結処分となった」
「と、凍結!? そ、そんな馬鹿な! あの機体がどれほどの宝の山か、上層部は解っていないのですか!?」
 トランスは、笑顔から一転して愕然となった整備士のその意見も。
また、上層部の懸念も同時に理解できるゆえに、苦々しい顔つきになる。だが、彼は凍結を選ばざるをえなかった。
「福音が、通常のままで二次形態移行したのであればお前の言うとおりなのだろう。だが、福音は暴走の結果として二次形態移行した。
どうやら、コア・ネットワークからの離脱を伴ってな」
「は、はい。しかしそれでも、あの機体を調べる事は……」
「無意味だ。上層部が求めているのは『兵器』なのだからな」
 わずかにため息を漏らしつつ、トランスは言葉を続ける。それは、目の前の整備士に対してではなく。自分に対しての言葉。
「兵器とは、ある程度の力量を持つ者にならば誰にでも扱え、そして『望まれた状況で、望まれた戦果をあげるもの』でなくてはならない。
ファイルスにしか使えず、しかも暴走した経験を持つ銀の福音は――兵器としては、相応しくないのだ」
 また一つ、ため息をつく。もしも銀の福音が二次形態移行していなければ、ナターシャ・ファイルスから取り上げ、初期化するという手段もあった。
しかし二次形態移行を果たし、更にワンオフアビリティーも発動した。こうなっては、初期化など出来る筈もない。
だからこそ凍結し、暴走の原因の解明――ただし、その犯人については大方の見当はついている――とそれへの対抗策が出来上がれば解除する。
そういう流れになっていたのだった。
「しかし……!」
「お前の不満は理解できる。だがこれ以上、上層部の批判をすれば私も聞き逃すわけにはいかないぞ。さあ、早く持ち場に戻れ」
「は、はい……」
 落胆しきった様子で歩く整備士を見るトランスの表情も、さえなかった。そして、報告書へと再び目を通す。
「日本の第三世代型IS、御影のステルス機能を破った事は間違いないようだが、最後の最後で見通せなかった、か」
 それは、福音の撃破原因となった御影の奇襲、そして正面衝突についての報告だった。
それまで御影のステルス機能を破っていたようにも見えた福音が、あの時だけはそれを見破れなかった。
福音が完全にステルス機能を見破っていたとしたら、大回りや待ち構えも見破れなければおかしくなる。しかし福音は、最後の最後で見破れなかった。
「つまりステルス機能を破った手段は、自然に発動するパッシブタイプではなく、能動的に、意識する事による発動――アクティブタイプということか」
 ラウラ・ボーデヴィッヒの『越界の瞳』も、自身の精神状況によっては上手く使いこなせないのと同じように。
福音のステルス破りも、御影を撃破したと思い込んだ事で他の敵への意識を集中させてしまい、御影の存在そのものを見落としたという事になる。
「福音のエネルギー回復能力、そしてあのメタトロンのような全身を覆う目、エネルギー操作による変貌……調べる事は多そうだな。
まあ、一刻も早く凍結の解除を認めさせて、能力分析をやるしかあるまい」
 トランスは、その道程の困難さに苦笑いした。――だが、その脳裏にある疑問がわく。
「……しかし、白式までもが二次形態移行したか。これも、篠ノ之束のしわざなのか?」
 彼が、自らの疑問を口にした頃。太平洋を挟んだ反対側でも、同じ言葉が議場にのぼっていた。


「白式が、二次形態移行か……」
「やはり、篠ノ之博士の所業と考えるのが自然なのでしょうか?」
 米国とは太平洋を挟み反対側の中国。その首都・北京の一角でも、トランスと同じ言葉が議題に上っていた。
共産党における序列の、一桁の者さえ参加する、重要な会議。その議題は、日本近海で昨夜繰り広げられた大騒動だった。
中央のモニターには、やや画像が荒いが、銀の福音に攻撃を仕掛ける白式の姿が映し出されている。
その姿は、二次形態移行後の姿であり。今まで、中国政府が夢想だにしなかったデータである。
「さて、どのように変化したのか。現在わかっていることだけを、報告したまえ」
「はい。まず特筆すべきは、加速力の上昇です。銀の福音に匹敵する加速力を得ていました。
操縦者である織斑一夏の力量がもう少し上であれば、速度面においては福音をも凌駕していた可能性が高いと見ます」
「武装面に関しては?」
「左腕に、荷電粒子砲と零落白夜を兼ね備えた新武装を確認しています。詳細は不明ですが、使い勝手は雪片弐型より上と予想されます。
特性などに関しては、今後の調査が待たれますね」
 その報告に、会議室の全員からどよめきともざわめきともつかない声が漏れた。その中の一人が、やや遠慮がちに手を挙げる。
「凰鈴音に、織斑一夏への篭絡の手を強めるように指示を出しますか?」
「無駄だ、やめておけ。下手に手を出せば、学園も黙ってはいないだろう。
――あくまで『自然に』凰鈴音と織斑一夏が結ばれれば、文句のつけようもないのだからな。
そのために甲龍を預け、IS学園に彼女を送ったのだからな」
 鈴がIS学園に贈られたのは、当然ながら一夏との縁を期待してであった。勿論、それだけではないが。
「しかし、凰候補生はまだまだ未熟です。他国の代表候補生……。特に英国や米国、スペインやアルゼンチンの代表候補生。
性同一性障害という名目で入ったデュノア社の娘、あるいは例の新型機を預かった篠ノ之束の妹と比べては、あまりにも違いすぎます」
 何が未熟であるのか。専用機を預かったばかりの篠ノ之箒の名が出て、更識簪やラウラ・ボーデヴィッヒの名前が出ていない事で、それは明白だった。
「織斑一夏が豊満な女性よりもそうでない女性を好む可能性はないのか? 小日本ではオタクといわれる人種がそうらしいが」
「低いかも知れんな。織斑千冬、篠ノ之束などを見る限りでは……」
「しかし、凰鈴音がこれから豊満なスタイルを持つ女性へと成長する可能性もあるのではないでしょうか?」
「皆無だ。その可能性は、明日、世界が滅びる可能性よりも低いだろう」
「そうですな」
(……やれやれ、この室内の人間で凰候補生の魅力を理解しているのは私だけか。むしろ、小さいからこそ良い。
つるペタな胸、スレンダーな豹のような体形、八重歯、そして竜の髭の如き艶やかなツインテールこそが彼女の最高の魅力だということに気付かないとは!)
 そんな一見はマヌケな、しかし本人達は大真面目な会話が続いたのだった。
なお、自身のスタイルに感するこの話題をもし鈴音自身が聞いていたのならば、目の死んだ笑顔で衝撃砲を撃ちこんだ事は間違いなかった。


「やっと着きましたわね……」
「ほんの三日……実質的には二日ちょっとしか出かけていないのに、もっといなかったような気がするね」
 IS学園一年生は、臨海学校の全日程を終えて学園に通じるモノレール駅まで戻っていた。
学園に通じるモノレールのうち、南側に一・二組が。北側に三・四組が振り分けられ、特別便も含めたモノレールで学園に向かう……のだが。
「ぐ~~」
「……で、アンタは何で布仏をおんぶしてるのよ」
「しょうがないだろ、のほほんさんが寝たままなんだから」
「起こせば良いじゃないの、そんなの! というか何で千冬さんは黙ってるのよ!」
「千冬姉は山田先生と一緒に、バスが着くとヘリですぐに戻ったんだ。後は俺に任せる、って言われた」
「でも一夏、彼女の荷物もあるし、いい加減起こした方が良いんじゃ……」
 激昂する鈴に代わり、シャルロットが苦言を呈した。もっとも、彼女もある意味では同じである。
(一夏におんぶされたまま学園に戻るなんて、許さないわよ!)
(い、良いなあ布仏さん……)
 おんぶされている布仏本音を羨ましがっている事は、変わりがなかったのだから。
「こんにちわ、織斑一夏君」
「……? あの、どちら様ですか?」
 と、一夏に声を掛ける者がいた。彼には見覚えのない、IS学園の女子。眼鏡をかけ、三つ編みの髪をした真面目そうな女子生徒。
だが、その女子が反応する前に反応したクラスメートがいた。
「の、布仏先輩!? どうしてここに!?」
「こんにちわ、宇月さん。それと、お帰りなさい。私は、本音を呼びにきたのだけど――」
 その優しげな視線が、一夏の背で寝る妹に向けられた途端に細まる。――そして。
「起きなさい」
「んぎゅっ!? ……あれー、もう朝ー?」
 そのファイルを持っていた手が握られ、その拳が、千冬には劣るもののかなりの速度で振り下ろされた。それを肩に受けた本音が、ようやく目覚める。
「お嬢様がお呼びです。先に、学園に戻りますよ」
「うー、疲れてるのにー。おやつを食べてからじゃ、駄目?」
「……本音?」
「ううー、解ったよー。それじゃ皆、先に戻ってるねー」
 そのままヘリポートまで移動し、学園へと一足早く戻る姉妹。そんな顛末を、一組と二組の生徒が呆然と見送っていた。
「……えっと、宇月さん。今の人が、そうなのか?」
「ええ、何度か話した事のある本音さんのお姉さん――布仏虚先輩よ」
「そうだね。僕も、話しかけられたことがあったよ」
「え、シャルもか。……それにしても、結構意外だったな。のほほんさんとは、全然違うタイプみたいだった」
「……まあ、そうね。それより織斑君、そろそろモノレールが来る時間じゃないの。凰さんと一緒に、生徒を移動させないと」
「うわ、マジだ。それじゃ皆、疲れてるだろうけど移動するぞー」
 おー、と疲れてはいるがしっかりとした返事が聞こえ。約60人近い学生達は、それぞれ学園へと戻るのだった。



「本音ちゃん、お帰りなさい。疲れているだろうけど、もう一仕事してもらうわよ」
「はーい」
 一方。いち早く学園に戻った布仏姉妹は、生徒会長である更識楯無と共に生徒会室にいた。
彼女もまた、前日からの騒動に振り回された一人である。ようやく、本音から事情を聞くという名目で抜け出してきたのだが。
「さて。……紅椿、だったかしら。篠ノ之箒が預かった、新型機について貴女が知っている事を報告してもらうわ」
「本音。他の人には、ばれていないでしょうね?」
「大丈夫だよー」
 他の人。それは他の生徒というだけではなく、教師――特に、織斑千冬を指していた。何故なら。


『布仏……どうした、妹が心配になったか?』
 昨夜――というよりも、七月八日午前三時。一年生が既に眠りについた旅館の一室に、布仏虚がいた。
一年生が不在とはいえ、生徒会の仕事は多い。会長である更識楯無はこの時、福音関係の会議で学園を離れ不在。
学園に残っている唯一の生徒会役員である彼女は、それこそ寝る間も惜しまなければならないほど忙しい筈なのだが。
『本音が心配ではない、といえば嘘になりますが。――お分かりでしょう?』
『ああ』
『今回の一件について、会長を含む学園関係者の多くが疑問を呈しているようですので。動きやすい私が、それをお伝えに参りました』
『……なるほど。予想通り、だな』
『では、やはり?』
『ああ、束だろうな』
 千冬はあっさりと、虚の予想を肯定した。拍子抜けさえするほどの、肯定。
『織斑先生。……あの方を制御する事は出来ないのでしょうか? 織斑君や他数名の生徒も怪我をされたと聞きましたが』
『お前がそう考えるのも無理はないが。以前から言っているように、不可能だ』
『そう、ですか』
(……珍しい事だな、布仏がここまで感情を表に出すのは。……恐らくは対抗戦の時の事も気付いているであろうし、それも当然だが)
 千冬が悟ったように、虚は怒っていた。クラス対抗戦における乱入により、対抗戦は中断された。
それは妹のように見てきた主君の妹の、そしてその駆る機体を作った実妹や後輩達の努力を嘲笑われたも同じだった。
そして今回、彼女達が楽しみにしていた臨海学校までも邪魔された。勿論、私的な感情を表に出すような虚では無いが。
千冬はそれを指摘せず、持っていたアタッシュケースを渡した。
『ああ、ちょうど良かった。――これをもって帰れ』
『こ、これは……?』
 さすがの虚も、これだけ無造作に渡されては緊張を隠しきれなかった。その中にあるのは――束を襲撃した者のドールのコア。
ヤヌアリウスやフィッシングのそれも含まれたそれらは、異変を察した織斑千冬が『回収』したものである。
『それで、このコア達はどうするのですか?』
『それならばヨーロッパ側から既に通達があった。こちらの好きにしろ、だそうだ』
『……奇妙ですね? 初期ロットがここにはもう20機入ってくる予定だというのに……』
『その代わり、秘密にしてくれという事だ。まあ、わざわざ公表する気は無いが。では、頼んだぞ』
 そして千冬は、虚とそれ以上会話をすることなく去った。虚もまた、それ以上問い詰める事はなく去っていったのだが。


「やっぱり、織斑先生には完全に心を許しちゃ駄目なのかしらねえ?」
「織斑先生には先生の立場がある以上、難しいでしょう」
 かすかに残念そうな思いを交えた楯無の言葉を、虚は肯定する。自身の担任である千冬への会話を傍で聞いていた本音は、というと。
「……くー」
 疲れていたのだろう、一年三組の『眠り姫』ロミーナ・アウトーリ同様に立ったまま眠っていた。
なお、直後に姉からのお仕置きが下った事は言うまでもない。


「さて、本音ちゃん。貴方はあの時、同じ場所にいたのよね?」
「篠ノ之博士が出現してからの会話内容。――出来る限り、詳細に説明なさい」
「はーい。詳しくは、これに入ってまーす」
 楯無と虚の視線が、本音に向かう。並大抵の男でも震えるほど圧迫的な視線だったが、本音には涼風と同じだった。
そして彼女は、スーツの腕ボタンサイズのディスクを取り出す。それは、更識家関係御用達の、小型録音機用の録音ディスク。
「なるほど。……本音、繰り返しになるのだけどばれてはいないのね?」
「ISスーツの胸の谷間に隠しておいたから、大丈夫だよー」
「そう、ご苦労様」
 もしもここに簪がいれば、精神的大ダメージを受けたであろうが。幸い、ここには彼女はいないので、問題は無かった。
なお、このときの本音のバストサイズとカップは(個人情報保護のため、削除)である。
そして、本音の録音していた海岸での会話が生徒会室で再生されたのだった。

『いやぁ、それにしても、こうしてきちんと会うのは何年振りだろうねぇ? 大きくなったね箒ちゃん。特に、おっぱいが……』
『殴りますよ、姉さん』
『いった~~~いぃ! 殴ってから言った~! 酷いよ箒ちゃん!! ねぇ、いっくんもそう思うでしょ?』
『は、はあ……』
『おい一夏、束の相手などするな。時間の無駄だ』

「……まるで、寸劇ね。これ、カモフラージュなのかしら?」
「いいえ、織斑君と篠ノ之さんの反応を見る限りでは素の反応だと思われます」
「まあ、確かにしののんのおっぱいは大きいよね~~」
 一見は呆れているようではあるが、これもまた分析だった。篠ノ之束という天災を、分析するための重要な材料なのだ。

『今のアレ、何なのさ? 殺し屋か何かと思ったら、変な事言い出すし』
『……気にするな、というか忘れろ。覚える必要もない』
『ふーん、どうせすぐに忘れるけどね。ああ、ちーちゃんが嫌なら、アレらの人格でも消しておこうか?』
『……。…………。駄目だ』
『そう、ならそれでいいね。……さて、本題に入ろうか!!』
『ね、姉さん。では、頼んでいたものを……?』
『そうだよ。ふっふっふ~、お待たせしたね箒ちゃん! さあ! 大空をご覧あれ!!』

「――! 今の所、もう一度再生して!」
「はい」

『ね、姉さん。では、頼んでいたものを……?』

「頼んでいた……という事は」
「しののんは、博士に頼んでたんだねー」
「そう考えるのが、自然かと」
 生徒会の三人の意見が、一致した。つまり、紅椿は篠ノ之箒が篠ノ之束に頼んだ物。そう、結論付けたのである。だが、これで話は終わりではない。
「さて、そうなると重要になるのは。

1.篠ノ之箒はいつ専用機を求めたのか
2.篠ノ之箒はどうやって姉に連絡をしたのか
3.篠ノ之束はいつから紅椿を作り始めていたのか
4.篠ノ之束はどうやって紅椿を作り上げたのか

 といった所かしらね」
「はい、そうなるかと」
「えー、そうなのー?」
 能天気な妹の言葉に、虚はため息を漏らす。自身の卒業後を案じつつも、妹を見捨てるという選択肢は彼女にはない。
「本音。……貴女は、どれか疑問があるのかしら? もしくは、付け加える事がある、とか?」
「んー。3.は、それほど重要なのかなー、って思うけど……」
「そうね。1.とも連動するのだけれど。たとえば篠ノ之箒さんが求めてから紅椿を作り上げたのか。
それとも予め作っておいて、彼女が求めてから渡す事にしたのかという点で相違性が出てくるのよ。
また、紅椿の性能に関しても篠ノ之さんの要望が関係しているのか――なども重要な点ね」
「なるほどー」
 解っているような、解っていないような本音だった。
「まあこれから確実なのは、紅椿と二次形態移行した白式に関して情報公開を求めてくる声が殺到する事ね。……虚ちゃん、忙しくなるわよ」
「覚悟の上です。それに――その機会は、あるでしょうからね」
「ええ」
 虚と楯無の視線が、生徒会長の机に山積みになっている書類、その一番上の書類へと向けられる。
その書類には『学年別トーナメント再開についての懸案と対応策』とあるのだった。



 さて、臨海学校編はこれにて終幕。しかし、まだまだ一学期の〆は残っています。
とりあえずは原作にある展開よりも、ない展開が多くなるでしょうがどうかお付き合いください。
ちなみに今回、一番苦労したのが御影のステルス機能を福音が破ったのに最後に引っかかった理由説明だったりします。
……矛盾に気付いて、慌てて付け加えたとかそういう事はアリマセンヨ?


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