朝が来た。いよいよ今日は、学年別トーナメント準々決勝。私が、あの男子ペアと戦う日。
そして自分の右手中指を見ると、そこにあるのは、いつも通りの打鉄弐式。これは――誰にも、渡せない。
「大丈夫、大丈夫……」
以前、宇月さんが口にした「マジカルアップル」の主人公の口癖が、口から出た。
だけど、あの主人公ほどの自信は浮かんでこなかった。
「……チェック、完了」
朝一番の打鉄弐式のチェックを終えて、全てのウィンドウを閉ざした。勿論、試合開始前にもチェックは行うけれど。
私自身がどうしても気になってしまったから……あれ? ノック?
「かんちゃーん、朝ごはん食べよー」
「ほ、本音……」
ドアを開けると、そこにいたのは、私の幼馴染で専属メイドの本音だった。どうやら部屋の前で待っていたらしく、周囲の視線が集まっている。
「ど、どうしてここに……」
「だって、今日はお互いに試合だからねー。かんちゃん達と食べようと思ったんだよー」
達、という言葉に気付かされたけれど、私のタッグパートナーのドレさん、そして本音のパートナーの……えっと、本名は知らない娘がいた。
「おはよう、更識さん」
「お、おはよう……」
「じゃーかんちゃん、かなりん、ドレドレ、行こうかー」
本音のマイペースっぷりは知っていたけれど、今日は、なぜかそれが少しだけ不快に感じた。
だけど。私だけじゃなくドレさんや、かなりんさん(仮名)もいたため、そのまま流されるしかなかった。
「ぞりぞりぞり~~♪」
「の……布仏さんって、そんなの、食べるの?」
ドレさんが、かなり気持ち悪そうに見ている。以前、打鉄弐式の建造を一緒に手伝ってくれたけれど、本音の食事風景を見るのは初めてだったのだろうか。
烏龍茶のお茶漬けに生卵と納豆、そして海苔の佃煮まで入ったそれをかき混ぜている。……普通の人には、気持ち悪いだろう。
「うまうま♪」
「……あの悪食が、スタイルの良さの秘訣なのかな」
ドレさんのつぶやきは、嫌でも耳に入った。低い身長や幼く見える行動とは裏腹に、本音のスタイルはかなりいい。
虚さんもそうだったから、血筋なのか――と思った瞬間、自分のスタイルがそれを否定する。――ううん、そんな事はどうでもいい。
大事なのは、今日の試合に勝つことだ。
「かんちゃん? どうかしたの?」
「ううん、何でもない」
「でも~~」
「おや、更識さん達か。おはよう」
そこへ、ドイッチ君がやってきた。ハンバーガーや豚カツ、ビーフシチューなど朝から高カロリーなものばかり。
「布仏さん達は、今日は俺達と戦うんだったね。――お手柔らかに、お願いするよ」
「……お手柔らかに~~」
気のせいだろうか。本音が、珍しくも敵意を見せたような気がした。でも、どうしてだろう……?
「ねえ、かんちゃん。あの人から力を借りたって聞いたけど、本当~~?」
ドイッチ君が去っていくと、本音がわずかに不快そうに問いただしてきた。これも、この子にしては珍しい反応。
「うん。今日は、男子二人が相手だから。今までの打鉄弐式じゃ、勝てないから」
「でも~~」
「本音。これは、私の戦いだから。じゃあ」
「あ、かんちゃん~~!」
朝食を切り上げて、私は三人を置いていく。……本音と話していると、何かが揺らいでしまいそうだったから。
「最終チェックをして、レッドキャップを装備して、時間は――」
「凄いですね!」
「……?」
アリーナへと向かいながらスケジュールを見直していると、いきなり大声がした。
そして私は、別に隠れる必要は無いのに、隠れてしまった。自己嫌悪が浮かぶ中、そっと木陰から音のした方向を覗くと。
「おめでとう、真悠! 代表候補生に選ばれたんだって!? 凄いじゃない!!」
道の真ん中で、一人の女子を囲んで三人の女子が祝辞を述べていた。中央のあの人は――確か、三年生の日垣 真悠(ひがき まゆ)先輩。
日本政府が、代表候補生の予備候補、としてリストアップしていたから、顔と名前くらいは知っている。
だけど、代表候補生の候補、じゃなくて。本当に、代表候補生に選ばれたんだ……!!
「まあ、一回戦でたまたま代表候補生と勝負して、勝てたのが評価されただけだよ」
「でも、代表候補生になれば学園を卒業してもISに携われるのは確実じゃない。これも、凄い事だよ」
「そうだな。残り半年ちょっとで、ギリギリ選ばれただけだけどね」
「もー、真悠ってば。もう少し喜んでもいいんじゃないの?」
「まだ、現実味が無いんだよ」
苦笑いする日垣先輩。まあ、代表候補生の人数には制限は無い。私には、別に関係ないし……。
「そういえば、一年生の更識簪さんの試合の話、聞いた? 何か、凄い泥仕合だったって話だけど」
……! いきなり出てきた自分の名前に、竦んでしまう。絶対に、良い意味じゃないのが解っているから。
「ふうん、そうなんだ。でも、泥試合だからって関係ないんじゃないの?」
「ううん、政府の中で、更識さんから専用機を取り上げようって話が出ているらしいのよ。ね?」
「まあ、そういう風な事も口にはしていたが……本決まりというわけではなさそうだったぞ?」
……! もう、そんな話が出回ってる、の……? 日垣先輩が、知っているなんて……!
「え? じゃあ、専用機用のコアが一個空くって事よね? ひょっとしたら、真悠が更識さんから専用機を奪えるかもって事?」
「いや別に、専用機に興味は無いけど――」
「何言ってるのよ、チャンスは最大限に生かさないと!! ドールが入ってきても、ISコアの専用機を貰える人なんて一握りなんだから!!」
「頑張ってください、真悠先輩!」
「う、うん、ありがとう」
口々に応援する生徒達と、その中心で戸惑いながらも笑顔を向ける日垣先輩。
その実力は、確かに代表候補生に相応しいものなんだろう。――だけど。
「……渡せない。この打鉄弐式は……渡せないっ!!」
誰であれ。絶対に、この機体は渡せない。……そう、強く思った。
「やれやれ。あれはまるで、気合の入りすぎた猪みたいだな」
そんな簪を、木の影からケントルムが見ていた。簪とそれほど親しくない彼女にも、簪がどれだけ気負っているのかは分かる。
そんな簪をみて、笑うケントルム。ふと、その個人用の端末――生徒用とは別――に通信が入った。
「……なんだ、お前か」
『ご挨拶だな。――欧州から通達が来た。例の「挿す者」を奪いに行く計画は、日本政府内の調整も合わせて順調だそうだ』
「挿す者……ああ、アレか。しかし、そう簡単に奪えるのか?」
『あの雑魚は、俺に二連敗したからな。その辺りを突けば容易いさ』
「実際に動いたのは、クリスティアンの人形秘書だろうが」
『あれは、俺の発案だ』
自慢げな顔が見えるようなゴウの声に、ケントルムは顔をしかめた。協力関係にある二人だが、仲間意識も無ければ共通の目的すらない。
単なる利害の一致でいるだけの二人であり、むしろその態度には互いに負の感情を抱くことも多かった。
「それで、例の試作品を渡したのか? データ取り、という名目をつけてまで」
『データ取り目的、というのも嘘じゃないさ。――だが、どうせアレを使ってもあの二人に勝つ確率は低いだろう。
タッグパートナーがセシリアやラウラ、シャルレベルならば解らないが、代表候補生でもないただの雑魚だ』
「ふん……哀れだな、あの女は。弄ばれてポイ、か」
『まあ、あの家に――あるいは、あの女の妹に生まれたのが不幸の始まりだったんだ。気にする必要はないさ』
「生まれの不幸、か。――転生者であるお前がいう言葉ではないな」
『そっくりそのまま返すぞ』
ケントルムとゴウは、互いに哂った。しかしそれは寒々しく、空々しい物で。
『あれは、潜在意識の中で誰かに縋る事を求めている。ならば、それを与えてやるのも優しさというものだろう?』
「しかしアレは、だんだん凶暴化していく欠点が無かったか?」
『その経緯のデータも必要なんだよ。必要な犠牲、って奴だ。まあ、「挿す者」が消えても問題は無い』
詭弁だな、と思ったがケントルムはそれを口に出す事はしなかった。彼女にとっても『原作』の崩壊は、望ましい事だったからである。
ましてや対象は、これから暫くは『知識』には登場しない。十月頃までは、いなくなってもらった方がありがたかったのだ。
「あれ、どうしたのよ、こんな所で」
「ううん、何でもないわ。じゃあ、行きましょうか」
クラスメートの女子が近づいてきたのを察し、ケントルムはまた仮面をかぶる。普通の女子生徒、という仮面を。
その仮面を本当の顔とすることも可能だが、彼女は目的のためにそれを選ばなかった。その目的は――
(ああ、早くならないもんかな。――七夕の日に)
誰にも打ち明ける事の無い、秘密。ただ一人で燃え盛る、激烈な業火は、まだ外に漏れ出すことは無かったのだった。
「あれ、あそこにいるのは――」
「将隆と、赤堀さんだね」
俺とシャルロットが食堂に入ると。入ってすぐの席にいたのが、昨日も会った二人だった。
「おはよう、お二人さん」
「おはよう」
「お、一夏とシャルルか。お前ら、今日は更識たちが相手なんだってな?」
「ブラックホールコンビが、トトカルチョやってたからね。皆、注目してるよ」
「そうなのか……って、トトカルチョ? 良いのかよ」
千冬姉辺りにばれたら、やばいことになりそうなんだが。
「胴元は、生徒会長だって話だから良いんじゃないのかな?」
うわあ。猫みたいに笑う、扇子を持ったあの人の笑い顔が浮かんでくるようだ。
「そういえば、連中の噂で気になる話を聞いたんだが。更識がドイッチと組んだらしいが、一夏、シャルル、何か聞いてるか?」
「え、ゴウが? そうなんだ」
あいつと仲の良いシャルロットが、驚いてわずかに立ち上がった。確かに、意外だな。今まで、そんな話聞いたことなかったし。
「大丈夫かな、あいつと組んで……」
「どうしたの、将隆? ゴウが更識さんに力を貸すのは、別にルール違反じゃないと思うけど?」
「いや、何でもない」
はて、シャルロットも疑問に思ったようだが、将隆がドイッチの奴に対して何か悪感情を持っているようにも見える。何かあったのだろうか?
俺もあいつとは仲が良いとは言えないが、シャルロットの事もあるし、あまり厄介なことにはしたくないな。
「……。そういえば、二組の女子から聞いたけど。赤堀さんは、パンチで勝ち上がってきたんだってね?」
「うん。安芸野君の足を引っ張らないように、必死で戦ったよ」
「へえ。武器を使わずに、パンチで勝ち上がれるのか?」
シャルロットが、話題を変えに入ったので便乗する。パンチで勝ち上がる、か。
「あ。確か、アメリカの現役国家代表が、パンチを重視してるんだったか?」
「うん、そうだね。アメリカ国家代表、イーリス・コーリングさん。第三世代型の専用機を持っている人だよ」
シャルロットはともかく、将隆は何でこう、いろいろな事情に詳しいんだろうか。自衛隊にいた時に聞いた、って言ってたが。
「私もアメリカの国家代表の話は聞いた事があるよ。でも、どうせならロケットパンチだともっと良かったのにね」
……は?
「ロ、ロケットパンチ?」
確か、古いアニメが元祖だって言う武器か? 二の腕から先が飛んでいく、あれだろ?
「あれ、織斑君。ロケットパンチを知らないの?」
「い、いや、知っているけど……なんでISでロケットパンチなんだ?」
「ちっちっち、織斑君、それは早計だよ。ISだからこそ、だよ。オルコットさんのブルー・ティアーズもそうだけど。
今世界の中で、ああいう無線誘導装置の分野が一番進んでいるのはISの分野だからね。だからこそ、ISでロケットパンチを再現するのは当然なんだよ。
できればリヴァイヴか打鉄にも標準装備としてロケットパンチを搭載してほしいなあ。
まあ、他の武器とも兼ね合いがあるから難しいとは分かっているんだけどね。そもそも――」
「赤堀、一夏が困ってるだろ。というか、お前は暴走しすぎだ。少しは自重しろ」
「あ。え、えーっと、ごめんね。私ってば、ついついやり過ぎちゃうみたいで」
怒涛の喋りを見せた赤堀さんは、正気に返った。……まさか、こういう娘だったとは思わなかった。
「あ、赤堀さんは、ロケットパンチ、っていうのが好きなの?」
「それは正確には違うね。私は、ロケットパンチだけじゃなくて他にもいっぱい好きな武器があるよ」
好きな武器?
「シャルル。こいつは、俺が転入してきた初日の質問コーナーで『どの武器が好きか』を聞いてきたんだがな。
その後、俺が赤堀は何が好きなんだと聞いたら『スーパーロボットの武器全部』と答えた女だぞ」
え? 何だって?
「す、スーパーロボット? 一夏、解る?」
「おれも、あまり詳しくはないんだけどなあ」
おそらくは、アニメに出てくるロボット達の事だろう。
「そうだね。神にも悪魔にもなれる熱線、ブレス●ファイアー! ヴィクトリーの力、超●磁スピン!! 太陽の勇者の力、ゴッ●バード!!
愛の拳で未来を掴む、烈風正●突き! 正義の怒りをぶつける、ガン●ムハンマー!! 計算に計算を重ねた力と、それを補う勇気で地球を守るヘ●&ヘブン!!
……挙げればきりがないけど、まあこんな所かな?」
「おい、最後から二番目は違わないか? リアル系の祖的な作品だろ?」
赤堀さんの言葉もそうだが、将隆のツッコミも、意味がわからなかった。
「そうかな。あれがリアル系の祖だっていうは勝手に一部のファンが原理主義者化しただけだと思うけど。
本来アレは、そんなに大きくないサイズにしたかったらしいし」
うむ、さっぱりわからない。IS関連の用語が理解できなかった、四月初頭と同じ気分だ。
「……まあ、良いか。そういえば一夏、シャルル、お前達は彼女について何か調べたのか?」
調べる、か。……今までは試合によってスタイルがバラバラの一般生徒だったから、あまり意味がなかったけど。
「一応、打鉄弐式に関しては今までの試合を見る限り、基本変更は無し・対抗戦の頃と変わりないって聞いてるけどな」
「そうだね。むしろ、心理的な物の方が重要かもしれないね」
心理的?
「なるほど、な。そういえば久遠とロブが一般生徒に負けた時、相手に心理の底まで読まれた――とか言ってたな」
ああ。つまりは、相手がどういう風に戦い何を狙っているのか。それを読み取るってことか。
「一夏や将隆は、彼女とクラス対抗戦で戦ったんだよね? 何か、知ってる?」
そうだなあ。……あ。対抗戦じゃなく、その少し後で彼女と話をする機会があったんだけど。
「関係あるかどうかは分からないけど、更識さんは確か、ヒーローになりたがってたな」
俺が『更識さんもヒーローじゃないか?』って言ったら『今は、まだ。でも、いつかは』とか言ってたし。
「ほう。更識さんはヒーロー願望あり、かあ。噂では聞いていたけど、それなら私と話が合いそうかな?」
「とりあえず、お前の突撃癖のまま話しかけたら、彼女は多分ドン引きするぞ」
将隆は、赤堀さんに対して軽口も叩くようだった。タッグを組んだことで、親しくなったのだろうか。
……どちらかといえば内気な方に見える更識さんが、赤堀さんの怒涛の会話を聞いたら引きそうなのには同意するが。
「そういえば更識が目指すヒーローって、どんなヒーローなんだ?
完璧なヒーローとか、復讐に身を焦がすダークヒーローとか、元々は悪だったけど正義に目覚めたヒーローとか、色々あるだろ?」
更識さんが目指すヒーロー像か。俺も、はっきりとは聞かなかったが。
「完璧なヒーロー……なのかな」
姉の楯無さんを、完璧だと思っているみたいだし。千冬姉の事も、完璧だと誤解していたし。
「ふーん、完璧なヒーロー、ねえ。……そういうのって、殆どいないと思うよ?」
「そうなのか?」
「うん。ヒーローだって、人間としての弱み……たとえば恨みだとかトラウマだとかを密かに持っているヒーローも多いし。
敵によっては、戦うべきじゃなかった敵とか、戦わなくても良かった敵とかもいるしね。
この『太陽王子』なんて、親友と一緒に洗脳される筈だったんだけど、主人公だけ助かって。
洗脳されて敵の幹部になった親友と戦う事になる物語だし……」
「ダークな話なんだな」
「うん。このヒーローは二段階変身もするヒーローなんだけどね、その力の根源が怒りと悲しみだし……」
昆虫フェイスの黒いヒーローの写真を端末に出し、更にその二段階変身したと思しき別のヒーローの写真を出す。
……生徒用端末には趣味の画像とかを入れている人もいるって聞いたことがあるが、赤堀さんはその一人だったようだ。
「詳しいんだね、赤堀さん」
「え? 別に詳しくないし、一般常識だよ? 私の好きなのは、どちらかというと『超越人シリーズ』だし……。
って、デュノア君は知らないかな。1960年代半ばから始まって、今なお作り続けられているシリーズなんだよ」
超越人シリーズ……ああ、巨大なヒーローが怪獣や宇宙人と戦うアレか。でも、それって一般常識か?
「基本的に一話完結な超越人シリーズは、敵も色々と出てくるからね。地球侵略を狙う宇宙人、その手先となった改造怪獣。
かとおもえば人間の行為が原因で暴れだした古代怪獣、人間の感情が生み出した怪獣、人間そのものが変身した怪獣なんてのもいるし。
宇宙人の中でも戦いを避けられたかもしれない宇宙人もいれば、地球人と友好関係を結んだ宇宙人もいるし。
面白いのだと、自然環境そのものや精霊的な存在である怪獣なんてのもいるし。あるいは、複数の怪獣が合体した合体怪獣もいるね。
ちなみに、その中でも私のお勧めは、この『最高超越人』の第13話かな? ここに出てくる怪獣は『絶対に手を出してはいけない』怪獣なんだけど。
超越人の中でも最速・最強を謳われた超越人でさえも勝てない、ファンの間では最強怪獣候補とも言われているこの怪獣を止めたのは――」
「おい赤堀、一夏とシャルルが戸惑ってるだろ。その辺にしておけよ」
「あはは、ごめんごめん。ついつい、ヒートアップしちゃったよ。さっきやっちゃったばかりなのにね」
あっけらかん、といった感じで笑う赤堀さん。なんていうか、女子らしくない女子だった。
タイプとしては鈴が近いかもしれないが、あいつよりも男っぽい部分を感じる。いや、口には出来ないけどな。
「まあ、ヒーロー観に話を戻せば。ヒーローにも色々あると思うけど。人々を守り、力をふるうことの意味を自覚しているのなら。
どんな人でも、ヒーローなんだと思うよ。そういう意味では、ヒーロー番組では脇役であることが多いけど……。
消防士とか警察官とか自衛官なんかもヒーローだね。人を守ろうとする人は、皆ヒーローたりえると思うよ」
「なるほど、な」
赤堀さんがさっきから熱弁してくれた知識はさっぱり理解できなかったが、彼女のヒーロー観は、理解できるものだった。
「じゃあ、私は今日の整備内容を先輩達にチェックしてもらってくるから先に行くね」
「おう、また後でな」
朝食を載せていたトレーを手に、去っていく赤堀さん。……まるで、台風みたいだったな。
「何か、すごい変わった子だったな」
「そうだね。えっと、日本語では……珍無類って言うんだっけ?」
ち、珍無類かよ。シャルロットが意味を解って言ってるのだとすれば、少々きつ過ぎる表現のような気がするぞ。
「あ、そうだ一夏。更識さんたちと戦うって事は――何が今までの戦いと違うか、解ってる?」
「え? ……あ、そういえば」
端末に入っているルールブック(電子版)をめくり、お目当てのページを探し出す。そこには
◇専用機持ちはシールドエネルギーを50%から、その僚機となる訓練機は80%の状態から戦闘開始とする
補足:専用機持ちが双方に存在する試合の場合、上記の制限は無しとする。
とあった。俺達は今までシールドエネルギーを50%の状態で戦ってきたが、今日の試合はこの制限が無くなるんだな。
「……っていう事は、零落白夜も実質二倍使えるって事か」
「うん。だから、今までとは少し戦い方が変わってくると思う。でも、それは向こうも同じだからね」
「そうだな。だけど、零落白夜が二倍使えるなら助かるぜ」
白式の燃費は、最悪レベルだからな。これで少しは、戦いやすくなるってもんだ。
「そっか、お前らは相手が専用機持ちだから変わるんだな。俺達は今までどおり、一般生徒だから変更は無いけど」
「そうだね。……でも、もしも僕達が互いに勝ち残ったら」
「次は、俺達が戦うんだったな」
既に、決勝までの組み合わせは発表されている。俺達と将隆達が共に勝ち上がった場合、準決勝で当たる事になっていた。
ちなみに箒やドイツのアイツ、あるいはセシリアと鷹月さん、ドイッチ達とは決勝まで当たらないようだ。……。
「一夏。今は、将隆たちでも決勝の相手でもなく。目の前の、更識さん達を相手にすることを考えよう」
「お、おう」
アイツとの戦いを考えていると、シャルルに警告を出された。いかんいかん、そうだな。
「……夫婦かお前ら?」
「な!? 何を言うのさ将隆!?」
「お、おい声が大きいって」
将隆の小声の呟きに、今俺に冷静に警告したのと同じ人物とは思えないほど動揺したシャルロットが、大きな声を出した。
周囲の女子が何事か、と見るが。何でここまで動揺したんだろうか?
「やれやれ。あいつらも大変だな――っと」
食堂での一件を回顧しつつ、アリーナに向かう将隆を待っていた人物がいた。
それは、将隆や香奈枝の幼馴染み――ロブことロバート・クロトーと、一場久遠だった。
「マサ兄、オレ達の敵討ちは頼んだよ」
「……お願いしますね」
ロブと久遠は、今から将隆らが戦う相手に敗れたのだった。近接格闘戦に持ち込まれ、専用機を持ちながら、敗北した。
敗因としては、ロブと久遠に対してその戦術や性格傾向を完全に読み取られたというのがある。
「ああ。全力を尽くすさ」
ここ数日。将隆の部屋に久遠やロブがやってくる回数が増えた。直接当たることが無かったから良かったのだが、そうでなければ八百長を疑われる頻度である。
(……自衛隊に連絡したら、ハニートラップじゃないかなんて言われたな)
言われた瞬間の衝撃を思い出しつつ、何かが喉に詰まったような態度で幼馴染み達に接する将隆。
このあたりは、同じく幼馴染みが学園内にいる一夏よりは危機感があるといえただろうが。
「あの。……頑張って、くださいね」
(何か久遠は、妙に熱のこもった視線だよな?)
久遠の、その心の奥底に眠っていた恋心の再燃には、一夏同様に気付いていないのだった。
「いつもどおり頼んだぞ」
「任せて! 大暴れするよ」
「ほどほどに、な」
アリーナのピットで、ややげんなり、とした様子で将隆はパートナーの少女に視線を向ける。
なぜなら、このトーナメントで、自分の趣味と戦術とを両立させている生徒。それがこの赤堀唯だったのだ。
まず一回戦ではいきなりロケットパンチ――という名の腕パーツ――を飛ばし、戸惑わせて勝利をつかみ。
二回戦では、回転付きのパンチを飛ばし、それが本命と思わせての突撃でダブルノックダウンした後に、将隆がもう一方を落とし勝利。
三回戦では早々と唯が撃墜されるも、使用許諾を与えたロケットパンチ+御影のステルス機能によるステルスパンチで勝利。
四回戦では、量子変換していた予備のパーツをも駆使しての連打で勝利、とただの趣味だけではなかった。
一部教諭からはやや批判的な声も出たのだが、二人の副担任である古賀水蓮が「副担任責任」で整備をしていたため、それ以上の問題にはならなかった。
「というか、お前は何であそこまでロケットパンチに拘るんだ?」
「まあ、一言で言うと。……私が十年来抱えている謎の答えが解るかもしれないから、だね」
「?」
それはいつも朗らかに笑うか趣味の話を熱く語るかが多かった彼女の、見知らぬ一面だった。
だが、その思考は試合開始五分前を告げるアナウンスに中断させられる。
「じゃあ行こうか、安芸野君!」
「お、おう」
唯が今日もまた趣味と戦術とを両立させるカスタムを施された機体に乗り、将隆は自分の専用機を展開させる。
そして、共にアリーナに飛び出すのだった。
「ステルス機能にも、穴はいくらでもあります!」
試合開始から十分後。ステルス機能を使った御影に対し、三組生徒・水月小百合のリヴァイヴが、グラネードを射出した。
黒いロングヘアを持つ日本的美人の眼差しが、獲物を捕らえる鷹や鷲のように狭まり。
そしてその中から帯びたたしい量の粉末が飛び散り、その中に、忍者のような姿が映し出された。
「こうきたか……!」
御影のステルス機能に対しては、零落白夜などと共に様々な対策が立てられていた。
豪雨のような弾幕、ワイヤーによる捕縛、そして煙や塵を利用した浮かびあがらせ。
だが、将隆もステルス機能だけに頼っているわけではない。ステルス機能を解除し、すぐに戦術を変えた。
「岩戸……くっ、データよりも切り替え速度がさらに上がっていますね!」
ほぼタイムラグなしで、御影のもう一つの特徴――複合武装『岩戸』が出現する。
使用し始めた頃には切り替えに戸惑っていたが、今では修練を積んでその高速化に成功していた。
このトーナメント中にも、その速度は成長していたのである。更に――。
「い、瞬時加速!?」
この試合で、初めて瞬時加速を使った。今まで使いこなせなかった技だが、担任などから深夜特訓を受けて練習していた技。
ピンチというわけではないが、これは『次の試合』を睨んだやり方だった。
あっという間に間合いを詰められ、そのまま岩戸の電撃攻撃で沈むリヴァイヴ。
「くっ……ここまで、勝ち上がったのに。残念です」
「危なかったな。というか、水月がここまで強いとは思わなかったぜ」
御影のシールドエネルギー残量は、一割を切っていた。この試合は、水月小百合が御影を抑え。
その間にクラス代表級の実力者であるロミー・ベンサムが赤堀唯を狙うというペースで進んでいた。
「……やべえかもな、こりゃ」
相棒はどうなっているか、と将隆が御影のセンサーを僚機に向け。……そして、彼の眼は点になった。
「へ?」
「……え?」
金髪の女子生徒、ロミー・ベンサムが『それ』を見た時の反応は将隆と同じだった。
後わずかなシールドエネルギーしかない赤堀唯が、量子変換領域から取り出したもの。
それは――巨大な、腕だった。本体の肩と二の腕、手首といった稼動部が打鉄本体と繋がる長大な腕パーツ。
クラス代表たちが見れば、それはクラス対抗戦の侵入者と似ている事に気づいただろう。
勿論、この時に初めてそれを知った将隆も顔色を変えたのだが、本人曰く「大きな腕ならパンチ力もあるからね!」という発想だったりする。
「It's show time!!」
高らかに宣言し、巨大な腕を二つ向けながら唯が放ったのは、追加ブースターによる瞬時加速に準ずるレベルの高速攻撃。
気付いたら目の前に巨大な腕があった、とは試合後のロミーの談話だが。
「そ、そんな馬鹿な~~!?」
彼女が思わず叫んだ一言は、観客全員の総意だった。残り五割ほどあったシールドエネルギーを、半減させるほどの強烈なパンチ。
その機体が、バリア近くまで吹き飛ばされるほどの強烈な一撃だった。
「この……そんな原始的な方法で!!」
だが、ロミーも反撃を繰り出していた。ハンドガン『アベル』による攻撃が、同時に唯のシールドエネルギーを削りきっていた。
「うーん、やられちゃったかあ」
何処か、呑気にいう相手にロミーは一瞬激昂しかけ……すぐに青くなった。なぜ、彼女が呑気にしていられるのか。それを悟ったからだった。
「惜しかった、な」
ステルス機能で気付かれずに近づいた御影が出現し、岩戸でのスパイク攻撃が炸裂し。ロミーのリヴァイヴのシールドエネルギーも、ゼロになったのだった。
「くううっ……あの巨大パンチさえなければ、あと少し持ちこたえられたのに」
「まあ、仕方がないよね。ここまで、勝ち残れたんだし」
敗者が去り、勝者は讃えられるのが試合後の光景だが……その試合の終了後は、微妙な空気が漂っていた。
卑怯だったり残虐であったわけではない。ただ、そのとんでもなさが観客の興奮を削いでいたのだった。
「次は、どちらが勝つにせよ専用機のいるペアだからね。もっとすごい物を見せるよ!」
「勘弁してくれ」
一人元気な赤堀唯に、将隆がうんざりした声を漏らす。
なお彼女はこれから『パンチ馬鹿』『トンデモ発想の実現者』などと呼ばれるのだが。それはまた、別の話である。
「これは……?」
「打鉄弐式『赤帽子』」
「あかぼうし?」
私は、今日は更識さんとコンビを組むマルグリット・ドレさんの機体の整備担当になっていた。その横には打鉄弐式がいたのだけど。
それには、見慣れない赤いパーツが追加されていた。両手首に砲口が一門づつ、背中にはスラスターが四つ追加されている。
胸部追加装甲、二の腕には物理シールド、脚部にはウェポンラック。頭にはセンサー用の角もある。
何ていうか、打鉄弐式にはまるでふさわしくない感じがした。
「赤帽子、って何なの?」
「貴女には、関係ない……」
答えが返ってくるとは思っていない独り言だったんだけど、明確な拒絶だった。……何だろうか。何かが、いつもの彼女とは違っている。
「でもこれじゃ、かなり機体制御が難しくなりそうよ?」
「出力制御も難易度が上がりそうですし~~。これ、使わないとだめですか?」
「はい。……使います」
黛先輩やフィー先輩の意見にさえ耳を傾けようとはしない。この頃、私は少し疎遠だったけど、先輩たちのアドバイスを受けていたはずなのに。
「まあ、私達も命預かっている身だ。正直、無理矢理にでも止めさせたい所だがなあ……」
「相手が織斑君とデュノア君じゃ、少々の無茶はしないとだめかもね」
先輩達曰く、今年はとんでもない整備案を頼んでくる生徒――主として、専用機のタッグと当たった生徒――が多いため、例年以上に苦労しているらしい。
話に聞いただけだが、とんでもない整備案を頼んできた生徒もいるらしい。何でも、無人飛行する腕パーツだとか……。
「それにしても更識さん。これが、日本政府が送ってきたパーツなの?」
「これは、ゴウ君から貸してもらった……レッドキャップ」
レッドキャップ? それが、この追加武装――いや、パッケージに近い代物の名称なんだろうか?
「レッドキャップゥ? 何でそんな名前付けたんだ?」
「趣味、悪いですよね~~」
先輩達は顔をしかめている。そんなに趣味の悪い名前なんだろうか?
「もう、話は終わりです……」
「しょうがないわね。じゃあ、次はあっちの三年生の機体整備を始めようか」
「はい!!」
「にしても、レッドキャップか……」
「そこまで趣味の悪い名前なんですか?」
「ああ、レッドキャップって言うのはな……」
三年生の機体に向かう途中で、京子先輩がレッドキャップの意味を教えてくれた。
イギリスの、自分の帽子を赤く染める妖精レッドキャップ。ただし、その染料の種類と入手源は……。
「な、何でよりにもよって、そんな名前をつけたんでしょうか?」
「さあな、どっちにせよ趣味悪いとしかいいようがねえな。何か理由でもあるのかねえ」
「あ。彼女自身に関する噂なら、今朝、聞きましたよ」
「うん、私も聞いたわ。政府の間で、取り上げるって話が出ているって……」
戸塚さんや黛先輩が口にしたのは、私にとっても聞き捨てならない内容だった。
「そ、そんな事になってたんですか!? でも、どうしてそんな」
「ドイッチ君に、授業とこの大会で二連敗したのが原因……とは言われているけどね」
「まあこれも噂、だけどね。でも、彼女達の人格はともかく正誤に関しては信頼できるわ」
とりあえず、戸塚さんはさりげなく毒を吐く人だと分かった。
ちらり、と離れた場所の更識さんを見るけど。さっきの拒絶も、それが原因なんだろうか……?
『準々決勝開始まで、残り十五分。なお、この試合には専用機が双方に参加している事を配慮し。シールドエネルギー上限を通常の物とする事とする』
十五分前のアナウンスが聞こえる中。打鉄弐式を纏った簪は、ひたすらに呟いていた。
「大丈夫……ゴウ君から貰った力があれば、零落白夜にも、高速切り替えにも負けない……」
まるで、自分に言い聞かせるようにそれだけを呟く。
パートナーのマルグリット・ドレはそんな彼女に声もかけられないでいたが。
「ドレさん、貴女は、できるだけ長く生き残ることを考えて」
「う、うん……」
話しかけられても、ただそれだけしか返せなかった。マルグリットも、パートナーの異変に気付かないわけはない。
しかし、元々気弱な彼女には何も言えない。打鉄弐式建造にほんの少しだけ関わっていても、それは同じだった。
パートナーが自分一人で戦う、と宣言していても、それに対して頷くことしかできなかった。
(でも、一人で勝てる、の……?)
今の簪にはとても言えない言葉を、マルグリットは心中で呟いた。今日の対戦相手は、ともに専用機持ちの織斑一夏とシャルル・デュノア。
簪の言うように、一人で勝てる相手だとは思えなかった。せいぜい、判定勝利に持ち込むのがやっとではないのか。
その場合、自分はどこまで粘れるのだろうか。簪が100%シールドエネルギーを残したとしても、自分が撃墜されれば平均値は50%となる。
彼女もここまで激戦を勝ち抜けたとはいえ、専用機二機相手に生き残り、判定に持ち込める自信はなかった。
そもそも、判定に持ち込もうとしても到底無理だと彼女は考えていた。その理由は――
「あれ? ……判、定?」
その時、無理な理由を考えていた彼女の頭に電撃のごとき天啓が閃いた。もしも、自分達と男子生徒が戦えば、どうなるのか。
その結果、ありえるパターンから逆に勝機が見えてきた。確率としては、それなりにある。
「ご、ごめんなさい、じゅ、十分だけ、場を離れる、から……!」
「……解った」
こちらを見もしなかった簪だが、マルグリットはそれを気にする間もなく部屋を出た。パートナーには、聞かせられない話。
それを伝えるため、焦る心を抑え込み生徒用端末に番号を打ち込んでいく。その番号は――。
「あ、あの――。一年四組、マルグリット・ドレ、です。委員会を、お願い、します!」
「ん? どうした?」
「ドレさん? どうかしたの?」
「申請された設定は、すべて終わってるよね? 何か不備でもあった?」
委員会との通信を終え、マルグリットが走っていった先そこには香奈枝と京子、戸塚留美がいた。
この三人は、マルグリットの機体を整備しており。それが終わったため、一休みしていたのだが。
(ドレさん、どうしたのかしら? いつもとは別人みたいだけど)
打鉄弐式の建造を手伝った事もあったため、香奈枝とマルグリットには多少の面識もあった。
だが、香奈枝も見たことがないほど彼女の顔は紅く染まり――そして、緊張からか息も荒かった。
「あ、あの……今から、設定変更、できます、か?」
「え゛?」
「マジかよ? 今からぁ!?」
「変更内容にもよるけど、あまり複雑な変更はちょっと無理だと思うけど……」
「あ、あの、ですね。変更内容は――」
おどおどした様子だったが、マルグリットは何とか自分の要望を伝えた。
それを聞いて、苦々しい表情を浮かべていた京子や困り果てていた香奈枝も何とか表情を緩める。
「まあ、その位なら残り時間でなんとかできるけどな。宇月、戸塚、急いで仕上げるぞ」
「はい!!」
「了解です」
そして、京子が飲んでいたジュースの缶をごみ箱に投げ捨て、残る二人も動き出す。
その変更が終ったのは、試合開始ぎりぎりだった。
「準備は、出来たぜ」
「それじゃあ、二人とも、頑張ってね」
「うん……」
「それじゃ、行くから」
簪とマルグリットが並んでピットから試合に向かう。それを見た整備の少女達は、いずれも顔を曇らせていた。
「ドレ、だったか。ありゃあ、逃走寸前の馬みたいだな。あんなんで、両方専用機のペアに勝てるのか?」
「……私としては、更識さんの様子のほうが気になります。無事に、終わるといいんですけど」
「でも、何であんな変更をしたんでしょうか。織斑君とデュノア君と戦うなら、逆の方がいいような……。
彼女が、あのコンビ並みの技量をもっているなら別ですけど」
「好きにさせてやればいいんじゃないか? ま、あたしらはまだまだ暇じゃないんだ、次のセッティング行くぞ!」
京子の激が飛び、整備課の、あるいはそこを目指す少女達は別の機体に向かう。だからこそ、誰も――。
いや、パートナーである簪さえ気付いていなかった。
「私は……適性もB-止まりだし、操縦もそんなに上手くない……。でも……!」
マルグリットは、ISに搭乗する最後までルールブックをしっかりと握り締めていた事に。
彼女の切り札。――それは、このルールブックなのだ、という事に。