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No.30054の一覧
[0] IS ―インフィニット・ストラトス クラスメートの視線―[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:41)
[1] 受験……のはずが[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:27)
[2] どんどん巻き込まれていく[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:42)
[3] ある意味、自業自得なんだけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:42)
[4] 何だかんだで頑張って[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:44)
[5] やるしかないわよね[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:14)
[6] いざ、決戦の時[ゴロヤレンドド](2012/04/16 08:11)
[7] 戦った末に、得て[ゴロヤレンドド](2014/06/16 08:01)
[8] そして全ては動き出す[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:55)
[9] 再会と出会いと[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:45)
[10] そして理解を[ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:58)
[11] 思いがけぬ出会いに[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:47)
[12] 思い描け未来を[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:48)
[13] 騒動の種、また一つ[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:49)
[14] そして芽生えてまた生えて[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:50)
[15] 自分では解らない物だけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:52)
[16] 渦中にいるという事[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:52)
[17] 歩き出した末は [ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:59)
[18] 思いもよらぬ事だらけ[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:54)
[19] 出会うなんて思いもしなかったけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:55)
[20] それでも止まらず動き出す[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:28)
[21] 動いている中でも色々と[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:00)
[22] 流れはそれぞれ違う物[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:01)
[23] ようやく準備は整って[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:01)
[24] それぞれの思い、突きあわせて[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:02)
[25] ぶつかり、重なり合う[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:56)
[26] その果てには、更なる混迷[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:04)
[27] 後始末の中で[ゴロヤレンドド](2012/11/15 08:09)
[28] たまには、こんな一時[ゴロヤレンドド](2012/11/15 08:10)
[29] 兆し、ありて[ゴロヤレンドド](2012/12/10 08:16)
[30] それでも関係なく、私の一日は過ぎていく[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:06)
[31] 新たなる、大騒動は[ゴロヤレンドド](2013/01/07 14:43)
[32] ほんの先触れ[ゴロヤレンドド](2013/01/24 15:47)
[33] 来たりし者は[ゴロヤレンドド](2013/02/25 08:21)
[34] 嵐を呼ぶか春を呼ぶか[ゴロヤレンドド](2015/08/11 08:06)
[35] その声は[ゴロヤレンドド](2013/03/26 08:05)
[36] 何処へと届くのか[ゴロヤレンドド](2013/04/03 08:02)
[37] 私を取り巻く人々は[ゴロヤレンドド](2013/04/27 09:30)
[38] 少しずつ変わりつつあって[ゴロヤレンドド](2013/05/09 11:05)
[39] その日は、ただの一日だったけれど[ゴロヤレンドド](2013/05/21 08:10)
[40] 色々な動きあり[ゴロヤレンドド](2013/06/05 08:00)
[41] 小さな波は[ゴロヤレンドド](2013/07/06 11:24)
[42] そのままでは終わらない[ゴロヤレンドド](2013/07/29 08:06)
[43] どんな夜でも[ゴロヤレンドド](2013/08/26 08:16)
[44] 明けない夜はない[ゴロヤレンドド](2013/09/18 08:33)
[45] 崩れた壁から[ゴロヤレンドド](2013/10/09 08:06)
[46] 差し込む光は道標[ゴロヤレンドド](2013/11/18 08:13)
[47] 綻ぶ中で、新しいモノも[ゴロヤレンドド](2013/11/18 08:14)
[48] それぞれの運命を変えていく[ゴロヤレンドド](2013/12/02 15:34)
[49] 戦いは、すでに始まっていて[ゴロヤレンドド](2013/12/11 12:56)
[50] そんな中で現われたものは[ゴロヤレンドド](2014/08/18 07:59)
[51] ぶつかったり、触れ合ったり[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:29)
[52] くっ付いたり、繋がれたり[ゴロヤレンドド](2014/08/18 07:59)
[53] 天の諜交、地の悪戦苦闘[ゴロヤレンドド](2014/02/28 08:27)
[54] 人の百過想迷[ゴロヤレンドド](2014/03/11 08:12)
[55] 戦いの前に、しておく事は[ゴロヤレンドド](2014/03/11 08:40)
[56] 色々あるけど、どれも大事です[ゴロヤレンドド](2014/04/14 08:34)
[57] 無理に、無理と無理とを重ねて[ゴロヤレンドド](2014/04/30 08:27)
[58] 色々と、歪も出てる[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:24)
[59] まさかまさかの[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:57)
[60] 大・逆・転![ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:59)
[61] かなわぬ敵に、抗え[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:25)
[62] その軌跡が起こす、奇跡の影がある[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:24)
[63] 思いを知れば[ゴロヤレンドド](2014/07/30 08:06)
[64] 芽生える筈のものは芽生える[ゴロヤレンドド](2014/08/18 08:00)
[65] 決意の時は、今だ遠し[ゴロヤレンドド](2014/09/03 08:13)
[66] 故に、抗うしかない[ゴロヤレンドド](2014/10/06 08:13)
[67] 捻じ曲げられた夢は[ゴロヤレンドド](2014/10/06 08:14)
[68] 捻じ曲げ戻すしかない[ゴロヤレンドド](2014/10/23 08:17)
[69] 戦う意味は、何処にあるのか[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:12)
[70] それを決めるのは、誰か[ゴロヤレンドド](2014/12/09 08:22)
[71] 手繰り寄せた奇跡[ゴロヤレンドド](2014/12/26 14:07)
[72] 手繰り寄せられた混迷[ゴロヤレンドド](2014/12/26 14:08)
[73] 震える人形[ゴロヤレンドド](2015/01/19 08:01)
[74] 対するは、揺るがぬ思いと揺れ動く策謀[ゴロヤレンドド](2015/02/17 08:06)
[75] 曇った未来[ゴロヤレンドド](2015/03/14 10:31)
[76] 動き出す未来[ゴロヤレンドド](2015/03/31 08:02)
[77] その始まりは[ゴロヤレンドド](2015/04/15 07:59)
[78] 輝夏の先触れ[ゴロヤレンドド](2015/05/01 12:16)
[79] 海についても大騒動[ゴロヤレンドド](2015/05/19 08:00)
[80] そして、安らぎと芽生え[ゴロヤレンドド](2015/06/12 08:02)
[81] 繋いだ絆、それが結ぶものは[ゴロヤレンドド](2015/06/30 12:20)
[82] 天の川の橋と、それを望まぬ者[ゴロヤレンドド](2015/07/23 08:03)
[83] 夏の銀光、輝くとき[ゴロヤレンドド](2015/08/11 08:08)
[84] その裂け目、膨大なり[ゴロヤレンドド](2015/09/04 12:17)
[85] その中より、出でし光は[ゴロヤレンドド](2015/10/01 12:15)
[86] 白銀の天光色[ゴロヤレンドド](2015/12/01 12:17)
[87] 紅と黒の裂け目の狭間で[ゴロヤレンドド](2015/12/01 12:18)
[88] 動き出したのは修正者[ゴロヤレンドド](2016/02/04 08:01)
[89] 白銀と白[ゴロヤレンドド](2016/02/04 08:02)
[90] その、結末[ゴロヤレンドド](2016/03/02 12:22)
[91] 出会い、そして[ゴロヤレンドド](2016/03/30 12:24)
[92] 新たなる始まり[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:16)
[93] 新しいもの、それに向き合う時[ゴロヤレンドド](2016/06/24 08:40)
[94] それは苦しく、そして辛い[ゴロヤレンドド](2016/08/02 10:08)
[95] 再開のもたらす波、それに乗り動く人[ゴロヤレンドド](2016/09/09 09:34)
[96] そのまま流される人[ゴロヤレンドド](2016/10/27 10:08)
[97] 戻りゆく流れの先に[ゴロヤレンドド](2017/02/18 12:02)
[98] 新たなる流れ[ゴロヤレンドド](2017/03/25 11:46)
[99] 転生者たちはどんな色の夢を見るのか[ゴロヤレンドド](2017/05/27 14:38)
[100] そして、その生をあたえたものは[ゴロヤレンドド](2017/05/27 14:36)
[101] 戦いの前に[ゴロヤレンドド](2017/09/12 15:39)
[102] 決めた事[ゴロヤレンドド](2018/01/30 15:54)
[103] オリキャラ辞典[ゴロヤレンドド](2017/09/12 15:38)
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[30054] 来たりし者は
Name: ゴロヤレンドド◆abe26de1 ID:2f15c288 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/02/25 08:21
  遅ればせながらですが、IS再起動おめでとうございます。これでISのSSもまた盛り上がるといいですね。
とりあえず8巻&新装1巻+2巻発売までは、今のペースで続けていく予定です。
今年中にはアニメ終了時点(=原作3巻)まで行きたいなあ……。



「平和だわ……」
「そうねえ」
 デュノア君とボーデヴィッヒさんが転入した次の日。私とフランチェスカはのんびりと昼食をとっていた。
あっちの方では、今日も三組の男子転入生を三組や他のクラスの女子が囲んでいる。何人か一組の女子もいるみたいだけど……。
「シャルル君と同じ日だったせいか、二分されてるわね」
「そうねえ。それにしても、彼ってドールと一緒に来たらしいけど……彼も持ってるのかなあ?」
「それは気になるわね」
 私にとって、話にしか聞いた事の無い『ドール』という存在は物凄く気になる。
……絶対に口には出せないけど、シャルル君よりもブローン君の方が一組に来て欲しかった、と思えるくらいに。
「それにしても、オルコットさんと凰さんはあそこまでやるとは思わなかったわね」
「何が?」
「ほら、昨日の授業中に山田先生の胸を掴んじゃった織斑君に……」
 ああ、あれね。
「あれは、じゃれ合いみたいな物よ」
「じゃれ合い?」
「そう。ISを展開しあってる者同士だけが出来るじゃれ合いのような物。気にする事は無いわ」
 ある意味では、専用機持ちの特権だといえるだろう。……まあ、展開していない状態であんな事をしたら流石に問題だけど。
以前にも、似たような騒動があったし。……あの時は、結局織斑君が平謝りして何とか止まったのだけど。
「多分、織斑先生もそう思ってるんじゃないの? だからこそ、授業中に何も言わなかったんだろうし」
「なるほど。そういう解釈もありなんだ」
 フランチェスカはそれがよほど気になっていたのか、何度も頷いている。……ん? この振動は。
「あれ? 職員室に呼び出し?」
 生徒全員に配られる端末の、バイブレータ機能。それを感じ取って端末を見てみると。
メールボックスに『至急、職員室横の談話室まで来る事。織斑千冬』と書かれたシンプルなメールがあった。
「ごめん、フランチェスカ。織斑先生に呼ばれたから、先に行ってるね」
「解ったわ」
 何故か笑顔になるフランチェスカを尻目に。私は、食器を片付けて職員室へと向かった。
午後からの授業もあるけど、先生直々の呼び出しなので多分大丈夫だろう。


「宇月。お前の、クラス代表補佐の任を解く」
 ……開口一番にそう言われ。私は、一瞬その言葉が理解できなかった。
「え、ええっと? ……今、何て仰いましたか?」
「織斑の補佐の任を解く、と言ったのだ」
 その言葉がようやく脳に染み渡り。私は、疑問を懐かずにはいられなかった。
もしかしたら『お前はクラス代表補佐に相応しくない人間だ』なんていう風に評価されている可能性も、無いわけじゃないし。
「もしよろしければ、理由を聞かせてもらってもいいですか?」
「これは、レオーネ他数名からの進言だ。……お前自身の学習が、織斑達により妨げられかねない可能性が出てきた」
「それに、もう織斑君もだいぶ学校に慣れたようですし。宇月さんも、自分のやりたい事が多いでしょうしね」
「……」
 隣にいる山田先生の言葉と合わせたその言葉には、真実味が感じられた。そして、私は。
「はい! 解りました!!」
 思わず、喜びの声をあげた。……ちょっと不味かったかな、と思ったけど。織斑先生はなんとも言えない表情を浮かべている。
「……そこまで苦労していたのか」
 ええ。昨日なんて、整備室横の保健室に行ったら『また疲れが溜まってきたんですか?』と言われてしまいましたよ。
ただ整備中に装甲の端で指を切っちゃったから、消毒をしてもらおうとしただけなんですけどね。
「織斑が、迷惑をかけたな。まあ、これで――」
『織斑先生。倉持技研の方が来られています』
 その時。職員室から連絡が入り、織斑先生の言葉を遮った。
「……倉持の? 何の用事だ? アポは無かったな?」
『い、いえそれが……宇月香奈枝さんに面会を希望しています』
「は?」
 私? なんで私が? 倉持技研に知り合いなんていないんだけど。
「勧誘、でしょうか?」
 山田先生がそう言うけれど。……勧誘? なんで私に?
「学生への勧誘は禁じてはいませんが……どうしますか?」
「それ以前の問題だぞ、山田君。……いきなり尋ねてきてそれでは、許可できん」
『いえ、今日はアポイントメントを取るだけだという事でした』
「ああ。そういえば今日は、あそこから打鉄の補給部品の搬入があるんでしたね。それと合わせて、ということでしょうか」
「あの、何の話かは知らないけど……せっかく来られたのなら、私としては会っても良いですけど?」
 先生達の話に口を挟む。打鉄弐式の関係かな、とも思ったけど。せっかく来てくれているなら、会ったって構わない。
「ふむ……。お前自身がそういう気持ちならば、そう伝えるとするか」
 そして。放課後にまた来るように言われ、私は教室に戻るのだった。


「初めまして、宇月香奈枝さん。私は倉持技研の開発班に所属する者で、加納那緒美(かのう なおみ)といいます」
 放課後。再び談話室に来た私は、その言葉と共に名刺を渡された。ほがらかな笑みを浮かべている、優しそうな人。
ここのOGであり、三組のブラックホールコンビの片割れ・加納空さんの姉という話だった。
「あ、あの。それで私に、何の用事でしょうか?」
「ええ。じつは貴女を、この学園を卒業した後に、我が倉持技研で働いてもらいたい……という事をお伝えにあがりました」
「へ?」
「ほう」
「まあ……」
 またしても、私は相手の言っている事が理解できなかった。えーっと。倉持技研に、私が? 卒業した後?
ということは三年後の話なのよね。でも私はまだ一年生だから、えーーと。
「宇月、正気に戻れ」
「……はっ!」
 織斑先生の声で、私は自分を取り戻した。……うん。最近驚く事ばかりだけど、まだ慣れてないのかしら。
「つまりは、青田刈りか。目ぼしい生徒に眼をつけ、その生徒が卒業時に実力を身に付けていればそのまま、そうでなければ……」
「これは手厳しいですね。それとこれは、打鉄弐式の一件で大変なご迷惑をおかけした、ほんのお詫びです」
 そういうと加納さんは封筒を手渡してきた。……結構厚みがあるけど、何これ?
「どうぞ、開けてみて下さい」
「これは……預金通帳とカードですか? この銀行は……」
「はい。失礼ですが、少々調べさせていただきました。その銀行には口座をお持ちではなかったようですので、そちらに」
「は、はあ……うえっ!?」
 変な声が出たけど、その通帳に記載された金額に眼をむいた。……だって、六桁の入金があったのだから無理もない。
ちなみに名義は加納さんの名前。入金の日付は、クラス対抗戦の行われた日だった。
「こ、これって」
「名義は私になっていますが、暗証番号をお教えしますので好きなように使ってください。こちらには月のお小遣いとして――」
 そして『月のお小遣い』と言われて差し出された紙に表示された金額は『お小遣い』なんてレベルじゃなかった。
普通の高校生なら、三ヶ月くらいバイトしないと貰えない金額。それを月レベルで支払ってくれるのだと言う。
こ、これだけ貰えれば、お父さんやお母さんからの仕送りはいらない。
それに、体重と体脂肪さえ気にしなければ、デザートパスを使った時くらいにデザートが食べ放題に……。
「おい、金に目が眩むなよ? たとえ親孝行が理由であれ、ろくな事にならんぞ?」
「は、はい!」
 以前、更識さんと関わった時に向けられた怒りなんて比べ物にならないほど強い怒りの――殺気のレベルの視線を向けられた。
あ、危なかった……。うん、お金に眼がくらみかけた事と、織斑先生の怒りをかいかけた事が。
「ご、ごめんなさい。こ、このお金は受け取れません。お礼は、更識さんから貰ってますから」
「更識さんから、ですか?」
「は、はい。眼鏡型のデバイスを借りているんです。――卒業まで、って期限を付けて」
 幸い、この後に使うつもりだったので持ってきていたデバイスを見せる。
「そう、ですか。……更識さんが少々変わったと報告がありましたが、貴女のお陰だったのですね?」
「え? ――そ、そんな事は無いですよ。布仏さんとか、四組の人とかも協力してくれましたし。それに黛先輩とか……」
 私がやった事と言えば、更識さんの地雷を踏み抜いた事と、虚先輩の訓練をクリアした事くらいだし。
「そうですか。……ではまた、お話をお伺いにあがります。本日は、時間を空けていただきありがとうございました」
 そういうと、加納さんは去っていった。……あー、緊張したわ。色々な意味で。




「で、どうする気だ。恐らく先方は、また来るぞ」
「え? そ、そうなんですか?」
 加納那緒美が去って一息つく香奈枝だが。担任の一言に、慌てて振り向いた。
「お前は、代表候補生連中や男子操縦者を除けば学年でも有数の実績を残している。一度断られたくらいで諦めるとは思えん」
「……」
「まあ、お前がどうしてもいやと言うのならば倉持からの干渉をシャットアウトしても良いが。……どうする?」
「……あの。もう少し、考えさせてもらっても良いですか?」
 その問いに。香奈枝はやや躊躇いながら先送りを決意した。まだ、現実味が無いためでもあろうが。
「構わん。もしも相談があれば、私でも山田先生でも構わないから呼べ。――では、解散」
「はい!」
 担任はそれを許可するのだった。


「良いんですか? レオーネさん達からの提案がある前に、織斑先生の判断で宇月さんの解任を決めていた事を話さないでも」
「話す必要も無い。まあ聞かれれば話すが、経緯を細かくは聞かれなかったからな」
 香奈枝の去った後の談話室で、ぶっきらぼうに言い放つ千冬だが。麻耶には、それが何処か照れ隠しのようにも見えた。
「先生も、本当は優しいのに。偶には甘くしても良いんじゃないですか?」
「必要は無い。そういうのは、君の担当だ」
「ふふ。……それにしても、こんなに早く宇月さんにスカウトが来るなんて思いませんでしたね」
「まあ、奴はあの布仏姉の特訓をクリアしたからな。今後の成長次第では、まだまだ増えるかもしれん。――気は抜けんぞ」
「そうですね」
 微笑む麻耶だったが。その顔が、笑顔から生徒を案ずる物へと変わる。千冬も同じだったが――。やや、違う物が混じっていた。
(加納那緒美……私が来る前にこの学園を卒業した、第一期卒業者。どうも素人では無さそうだったが……)
 今まで自分達が会ってきた来訪者の言動と、加納の言動。文言は同じに聞こえるが、加納のそれに僅かな違和感を覚えていたからであった。
やや強調した怒りで香奈枝への誘惑をとめたのも、それがあったからである。


「……はい。宇月香奈枝との第一次接触は失敗。少々、時間がかかりそうです」
『そうなの。それで、どうだったの? 久しぶりの母校は』
「特には。……ただ、織斑千冬が厳しい視線を向けてきましたが」
 倉持技研の施設の中では、加納那緒美が『本当の職場』に電話をかけていた。その表情には、ほがらかさは微塵も感じられない。
『うーん。彼女はいつも厳しい視線だから、それだけでは判別が難しいわね。
倉持技研が動くと聞いたから、これ幸いと便乗したのだけど……まあ、暫くは自重なさい』
「はい」
『じゃあ、後は貴方に任せておくわよ。――ホース』
「了解しました。――スコール」
 そして通話が終わるが。那緒美の顔には、まるで能面のような無表情しかなかった。その真意は、誰も知らないままに。




 俺と将隆とシャルルは、第二アリーナにいた。箒やセシリアたちは予約が取れなかったのでここにはいない。
たまには男だけ、ってのも悪くない……と思っていたら、同じく第二アリーナを予約した生徒達がひっきりなしに話しかけてくる。
幸い『今この時を大事にしたいのです。華を愛でたい気持ちもあるのですが、今回はその気持ちを静めてください』
とシャルルが言ったら、もうそれ以上の干渉はなかったけどな。
「……へえ。シャルルのISには、二十以上の武器が量子変換されているのか」
 そして今は休憩中なのだが。シャルルのIS――山田先生の使った、リヴァイヴのカスタム機らしい――の事を話していた。
正式名称は「ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ」というらしいが。基本装備を幾つか外し、拡張領域を倍にし。
その空いた分の拡張領域に、様々な武装を量子変換しているらしい。……武器が雪片弐型だけな俺には、羨ましすぎる話だった。
「俺も、岩戸や小烏以外の武器も使えるようになったけど……そんなに量子変換してるのかよ」
「重戦車数十台……下手したら、数百台分の火力って事か?」
「……織斑、今時『重戦車』とかいう名称は使わないぞ。あと、戦車を数えるのは『両』だからな。
まあ、俺も自衛隊で訓練を受けていなかったら、今でも勘違いしていただろうけどな」
 そうだっけか? 昔やってた漫画で、そんな描写があったんだが。……あれって、第二次世界大戦直後が舞台だったかな?
「でも、一夏が間違えるのも仕方が無いよ。普通の人はそんな単語の差異だとかは知らないだろうし。
白騎士事件以降、軍事産業は大きく変わったからね。事件の前に復活した『戦艦』って艦船のカテゴリーも、すぐに消えちゃったし」
「へえ。流石はデュノア社の御曹司だ、軍事系に詳しいんだな」
「……そう、かな?」
 いかん。安芸野がシャルルの地雷を踏んでしまったようだ。ここは……
「やっぱりオルコットみたいにメイドさんとかいたのか? 前に彼女が、そんな事を話してたけど」
 俺が話題を思いつく前に、安芸野が話を続けた。以前聞いた話では、セシリアの実家には多くのメイドさんがいるらしい。
その中でも『チェルシー』という人はメイドでありながら幼なじみであり、二つ上という事なので姉的な存在でもあるらしい。
セシリア曰く、気配りのきく優秀で優しい美人なんだとか。ただ『会ってみたいな』といったら途端に箒と鈴に睨まれたけどな。
「……別に、いなかったよ? ――それよりも、練習を続けよう」
 どこか素っ気無くシャルルは言う。……そして俺は、将隆にプライベート・チャネルを繋ぐ。
『なあ、将隆。あんまり、シャルルの家の事には触れない方が良いみたいだぞ』
『え、そうなのか?』
『ああ。何か暗い影背負い出すし。……まあ、俺も正確な事は知らないけど。色々あるんじゃないのか?』
『そうだな、家庭の事情って人それぞれだし。……サンキュ、気付かなかったぜ』
『いいって』
「……二人とも、どうしたの?」
 全く動こうとしない俺達を不審に思ったのか、シャルルが怪訝そうな視線を向けてきた。……まずい、話を誤魔化さねば。
「いや。ちょっと一夏と……雑煮の出汁について話していたんだ。うちなんか、毎年インスタントなんだけどな」
「雑煮のダシ?」
 ……話を誤魔化したのは解るが。ちょっと厳しくないか、将隆? まあ、フランス人のシャルルには解らない話だろうけど。
「ダシって、味噌と一緒に入ってるんじゃないの?」
 ああ、出汁入り味噌の事だな。
「雑煮は色々あるぞ。煮干しとか、椎茸とか、昆布とか。変わったのだと、伊勢海老とか牛肉とか。
更にはアゴ……トビウオから出汁を取るっていう地方もあるらしい。味噌だって赤味噌や白味噌の他にも……」
 気付くと、シャルルと将隆が感心したような表情で俺を見ていた。
「……一夏って、詳しいんだね」
「まあな」
 今年の正月にも、受験勉強の合間にちょっと作ってみた。千冬姉も帰ってきて、一緒に飲んだっけ。
「そういえば、一夏はある程度料理は出来るんだっけ。それが原因かな……」
「どうだろうね? 箒さんや鈴さんは、入学前からって聞いたけど……」
「ん? 何の話だ?」
 将隆とシャルルが言うが。原因? ……箒や鈴の名前が出たけど、何の事だろうか?
「まあ、どうでもいい事だよ。――それより、そろそろ再開するか。俺は三組だから、お前らと一緒に練習できる時間が少ないし」
 将隆がそういう。聞いた話だと、三組のもう一人の男子・ブローンはまだ自分の持つドールを見せていないらしい。
だから将隆が男一人で練習しているのだが。俺もそうだが、男一人だとたまに周りのペースについていけなくなるんだよなあ。


「――おい。織斑一夏」
 と。突然、通常回線で呼びかける声がした。それに振り向くと、俺達よりやや上空に一機の黒いISがやって来ている。
「……なんだよ」
「貴様も専用機持ちだそうだな。私と戦え」
 それはあのドイツからの転入生、ラウラ・ボーデヴィッヒだった。相変わらず、人を見下したような視線を向けてきている。
あの一幕以来、俺に絡んでくる事は無くなっていた。だからといって友好的ではなく。
誰とでも話せるシャルルとは真逆で、クラスメートの誰とも話していないようだった。
「……断る。俺には、お前と戦う理由が無い」
「貴様に無くとも私にはある。――気様は、教官に相応しくない」
「……!?」
「貴様がいなければ、教官が大会二連覇の偉業を為し得ただろう事は容易に想像できる。だから、私は貴様を――貴様の存在を認めない」
「そういうことかよ……」
 何処か、薄々と感じていた理由ではあったが。考えないようにしていた事ではあったが。やっぱり、か。
「あいつか。一夏を初対面でひっぱたいたドイツからの転入生ってのは。何の事だか解らないけど、喧嘩を売るならよそでやれよ」
「ふん、雑魚はどいていろ。ならば――戦わざるを得ないようにしてやる!」
 あいつのIS――ドイツの第三世代型・シュバルツェア・レーゲンと表示が出た――の右肩の大型砲が俺の方を向き。
それ――大口径レールカノン――から、超高速の弾丸が放たれた。――が。
「いきなり戦闘を始めようとするなんて、ドイツ人は随分と沸点が低いね。ビールだけじゃなく、頭までホットなのかな?」
 いつの間にかシャルルが射線上に入り、構えた楯でその弾丸を防いでくれた。……い、今の動きって。
「フランスの第二世代(アンティーク)如きが私の前に立ちふさがるとはな」
「未だに量産の目途が立っていないドイツの第三世代(ルーキー)よりは動けるはずだよ」
 ……シャルルも毒舌なんだな。宇月さんレベルだ。
「ふん。フランスのアンティークに庇ってもらうとは。偽者の雪片を得意げに振り回す貴様には、相応しいな」
「……訂正しておくぞ。こいつは雪片じゃない。雪片弐型、だ」
「ふん。教官の技を真似した贋作の使い手が、偉そうに吠えるな。どのような理由かは知らんが、貴様にその技は相応しくない」
 俺に視線を向けると、今度は雪片弐型まで貶し始めた。……理由に関しては、俺が知りたいくらいだけどな。
ただ、零落白夜と雪片弐型に関しては、千冬姉自身にならともかく……こいつにそんな事を言われる筋合いは無い。
『そこの生徒!! 何をやっている!!』
 と、監督役の教師らしき声がした。それに興を削がれたのか、あいつはアリーナ入り口へと戻っていく。
ここにはさっきも言ったとおり他の生徒もいたけど、一瞥だにしなかった。


「高速切り替え(ラピッド・スイッチ)か……。モンド・グロッソの映像で見た事あるけどな……」
「まさか、シャルルがその使い手だとは思わなかったぜ。さんきゅ、助けてくれて」
「いいよ、もう」
 アリーナの更衣室で着替える途中。俺も将隆も、シャルルの早業が気になっていた。
ラピッド・スイッチ。ISの武装切替を、瞬時に行う技。基本を極めた先にある技。……と教科書にはあったけど。
知識としては知っていたが、実際に見たのは初めてだ。それも、俺より後からISを動かし始めた筈のシャルルが。
「それにしても、才能って奴なのかよ。一夏は単一使用能力を使えるし、シャルルはラピッド・スイッチか」
 将隆が、やや落ち込んだような声を出した。
「おいおい、何言ってるんだよ。シャルルはともかく、俺なんて使える理由も解ってないブラックボックスなんだぞ?」
 最初は姉弟だからか、と思ったけどそうじゃなさそうだし。
「ああ、悪い。少し、愚痴りたくなっただけだ。……もう少し、男が増えると良いんだがな」
 それは同感だな。そういえば……
「それにしても、どうしてシャルルやブローン達はうちや三組に来たんだろうな?」
「ああ、集中しすぎてる……って事か? まあ、三組(うち)にはブローンと一緒に他にも何人か来たんだけどな」
 二組には鈴達が入ってきたらしいが、男子は入ってこなかった。纏めてくれるのは嬉しいんだが。
どうせなら、将隆やブローンも一組に入れてくれれば良いのに。……まあ、それだと集中させすぎか?
「それに絡んだ話なんだが。一夏、シャルル。実は――」
「ええええええっ!? マジか!?」
「そ、そうなの!?」
 将隆がクラスメートの情報通から聞いたという噂。それは――。



「いいなあ、一組と三組……男の子がまた来て」
「なんでうちにはこないのよ……不公平じゃない」
 デュノア達が転入してきてから、うちの――二組の空気は何処か不満げだった。原因は、言うまでもない。
HRが始まっても、何処かそんな空気が漂っているけど……。
「さて、喜べ生徒諸君! 我がクラスにも、凰鈴音以来の転入生がやってきたぞ! しかも二人だ!!」
「ええええええええええっ!?」
「ひょ、ひょっとして今度こそ男子!?」
 一気にクラス中が盛り上がる。……あー、いやな事思い出したわ。あたしが転入してきた時、がっかりした顔があった事。
名前は挙げないけど、その娘達とはまだ上手くいってないし。まあ、それはいいか。別に興味ないし。
「五人目の男子生徒!?」
「サンドイッチの正直って奴!? ……あれ、何か違う?」
 そして、期待と混乱が広まる中入ってきた人影は……半分だけ期待通りだった。いや、正確には四分の一かな?
あとファティマ、サンドイッチじゃなくて三度目の正直、だからね。
「お、男の子……?」
 ティナの声がしたけど、それは昨日、一組や三組から聞こえてきた歓声とは微妙に違っていた。何せ……。
ややとんがっている瞳。デュノアみたいな薄い金髪なんだけど、ハーフなのか、アジア系のようなそうでないような容貌。
それほど伸びていない手足。あたしの胸ほどまでしかない背丈。……まあ、簡単に言うと。
「……何歳なんですか、その子」
「凰の疑問はもっともだが、それは本人からして貰おうか」
「はい! ロバート・クロトー、12歳です! ロブ、と呼んで下さい! よろしくお願いします!!」
 あたし達、日本以外の国の生徒が使うのと同レベルの流暢な日本語でその子は自己紹介をした。……いやちょっと待って。
「じ、12歳!?」
「ちょ、ちょっと待ってよ、そんな子がこの学園に来て大丈夫なの!?」
「まあ、結構美少年だけど……いくらなんでも、ねえ……」
「まあ、来た以上は……歓迎するしかないんじゃない?」
「美少年キタ……! これぞ我が理想郷(アルカディア)ァ……!! ハアハアハアハア……漲ってきたぁ!!」
 クラス中が、この予想だにしなかった事態に騒然となる。驚き、疑問、困惑、歓迎……。
最後のだけは、思わず甲龍を起動させそうになる位に恐怖を覚えたけど。そ、それよりも。
「何で12歳の子供がIS学園に来ちゃうんですか? いくら何でも、まずいんじゃ……」
「その為に私がこちらに来たのです」
 あたしの言葉を遮り、涼やかな声がした。……すっかり蚊帳の外だったけど、もう一人の転入生がいたんだった。
そしてそれは、あたし達と同い年に見える女子。見たところ、日本人……だと思うけど。違うかな?
背丈はあたしよりも高く、一組のセシリアと同じくらい。胸もあいつと同じ……ふ、ふん! それはどうでもいいわ!!
「私は一場久遠、アメリカの代表候補生です。クロトー君共々、よろしくお願いします」
 え? アメリカの代表候補生って、確か三組にもいなかったっけ? そもそも。
「日本人、よね? なんでアメリカの?」
「国籍変更はまだですが、暫定的な措置です。正確には、アメリカの代表候補生『扱い』というべきでしょうか」
 さっきは涼やか、と判断したけど。むしろ冷たい声、と形容した方が合ってるんじゃないかという口調だった。
「その辺りは私から説明しよう。一組の織斑君、三組の安芸野君のように男でもISを動かせる人物を探すべく各国政府が動いた。
その中で、アメリカで発見されたのがクロトー君だ。12歳の少年とはいえ、どのような組織が彼を狙うかも解らない。
だからこそ、ここで保護する事にしたのさ。まあ、彼を一人だけ送り込む事などは出来ないであろうから……」
「世話役として、私、一場久遠が派遣されました。基本的に、彼の世話は私が担う事になります。
色々とご迷惑をかける事にもなるでしょうが、どうか皆様、よろしくお願いします」
 なるほど……。その事情は理解できないわけじゃない。皆も理解したようで、深々と頭を下げた一場にも何も言わなかったけど。
「先生、授業はどうするんですか? こう言ったら悪いですけど、この学園の授業は10歳の子についていける授業じゃあ……」
「それに関しては教科にもよるが、別メニューを用意する。ISがらみに関しては、そうもいかないがな」
 そういえば思い出したけど、一夏がISを動かして以来、中国でも相当数の男がIS起動実験に参加したらしい。
でも人口世界一の筈の中国でも、そんな男は見つかっていない。元々中国は儒教国家で、男が偉いって国だった。
一人っ子政策の中で、女子だったら……なんて話も十年前までは普通にあったらしいし。
何より、日本で二人も見つかったのに、人口が十倍以上の中国で一人も見つからないので『上』も相当荒れてるらしい。
……まあ、あたしには直接関係のない話だけどね。男だから偉い、とか正直ムカッとするし。
「それにしても、小学生にIS触らせるなんて、ね……」
「何を言っている、凰鈴音。国によっては、彼よりも幼い年でISを動かす機会があるんだぞ?」
 ……さりげなくやばい事を。というかうちの国も、IS適性を保持する男子がいたら……止めておこう。
怖い想像しか出来ない。君子危うきに近寄らず、それは当然の事だから。
「ところで先生。この学校には、安芸野将隆君という生徒がいると聞いたのですが」
「ああ、そうだが? どうした、藪から棒に」
「幼なじみなので、挨拶をしたいのですが。このクラスでは無いようですが、どのクラスなのですか?」


「……鈴、さっき一場さんが『幼なじみなので、挨拶をしたい』って言った時、モアイ像みたいな顔してたよ」
 HRと最初の授業が終わり。恵都子が言ってきた言葉がそれだった。……って、モアイ像のような顔ってどんな顔よ!?
「何よそれ! ……っていうか、例の転入生達は?」
「三組の方に行ったわよ。安芸野君に会いに行ったんじゃないの?」
 とこれはファティマ。そういえばあたしも、一夏に会いに行ったっけ。……千冬さんの出席簿の一撃を受けちゃったけど。
「そういえばさっき、HR中に三組か四組の方でも歓声が上がったみたいだけど。誰か来たのかな?」
「え? そうだった?」
 ティナがそんな事を言っていた。ティナは後ろの方の席(=三組・四組に近い方)だったから、気付いたのかな?
まあ殆どの生徒は、自分のクラスの転入生に意識が回ってて気付かなかったんだろうけど。




 同じ日。唯一転入生の無かった四組にも、転入生はやって来た。――それも、男子生徒。
「……俺の名はオベド・岸空理(きしくうり)・カム・ドイッチ。まあ長いと思うので、ゴウと呼んでくれると嬉しい。
所属は欧州連合。今までは、連合でISに関わる訓練や学習を受けてきた。そしてこれが俺の預かるISだ。
コアNo.174、オムニポテンス(※ラテン語で万能)という。――色々と至らぬ点もあるだろうが、よろしく、頼む」
 その少年は、左腕のフィンガーグローブを見せながらそう言うとニコリと微笑み、それと共に教室に歓声が響く。
今まで三組との合同授業での安芸野将隆との付き合い位しかなかった四組女子にとっては、抵抗不可能な魅力だった。
金髪(一部、黒髪)の甘いマスクに穏やかな笑みを浮かべ、真新しい制服を体の一部のように着こなしている。
クラスは女子ばかりでありながら物怖じも緊張も無く、ただただ堂々としたその姿に、過半数の生徒は既に魅了されていた。


 ……だから、この時に彼の微笑みに潜んだ『モノ』に気付いたのは、ほんのごく一部だけだった。
そしてある者は、この時のIS学園一年の各クラスに加わった転入生達を、後にこう称している。
一組には仲間が、二組には友人が、三組には好敵手が来て。そして、四組には――災いが来た、と。


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