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No.30054の一覧
[0] IS ―インフィニット・ストラトス クラスメートの視線―[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:41)
[1] 受験……のはずが[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:27)
[2] どんどん巻き込まれていく[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:42)
[3] ある意味、自業自得なんだけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:42)
[4] 何だかんだで頑張って[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:44)
[5] やるしかないわよね[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:14)
[6] いざ、決戦の時[ゴロヤレンドド](2012/04/16 08:11)
[7] 戦った末に、得て[ゴロヤレンドド](2014/06/16 08:01)
[8] そして全ては動き出す[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:55)
[9] 再会と出会いと[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:45)
[10] そして理解を[ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:58)
[11] 思いがけぬ出会いに[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:47)
[12] 思い描け未来を[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:48)
[13] 騒動の種、また一つ[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:49)
[14] そして芽生えてまた生えて[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:50)
[15] 自分では解らない物だけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:52)
[16] 渦中にいるという事[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:52)
[17] 歩き出した末は [ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:59)
[18] 思いもよらぬ事だらけ[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:54)
[19] 出会うなんて思いもしなかったけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:55)
[20] それでも止まらず動き出す[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:28)
[21] 動いている中でも色々と[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:00)
[22] 流れはそれぞれ違う物[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:01)
[23] ようやく準備は整って[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:01)
[24] それぞれの思い、突きあわせて[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:02)
[25] ぶつかり、重なり合う[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:56)
[26] その果てには、更なる混迷[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:04)
[27] 後始末の中で[ゴロヤレンドド](2012/11/15 08:09)
[28] たまには、こんな一時[ゴロヤレンドド](2012/11/15 08:10)
[29] 兆し、ありて[ゴロヤレンドド](2012/12/10 08:16)
[30] それでも関係なく、私の一日は過ぎていく[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:06)
[31] 新たなる、大騒動は[ゴロヤレンドド](2013/01/07 14:43)
[32] ほんの先触れ[ゴロヤレンドド](2013/01/24 15:47)
[33] 来たりし者は[ゴロヤレンドド](2013/02/25 08:21)
[34] 嵐を呼ぶか春を呼ぶか[ゴロヤレンドド](2015/08/11 08:06)
[35] その声は[ゴロヤレンドド](2013/03/26 08:05)
[36] 何処へと届くのか[ゴロヤレンドド](2013/04/03 08:02)
[37] 私を取り巻く人々は[ゴロヤレンドド](2013/04/27 09:30)
[38] 少しずつ変わりつつあって[ゴロヤレンドド](2013/05/09 11:05)
[39] その日は、ただの一日だったけれど[ゴロヤレンドド](2013/05/21 08:10)
[40] 色々な動きあり[ゴロヤレンドド](2013/06/05 08:00)
[41] 小さな波は[ゴロヤレンドド](2013/07/06 11:24)
[42] そのままでは終わらない[ゴロヤレンドド](2013/07/29 08:06)
[43] どんな夜でも[ゴロヤレンドド](2013/08/26 08:16)
[44] 明けない夜はない[ゴロヤレンドド](2013/09/18 08:33)
[45] 崩れた壁から[ゴロヤレンドド](2013/10/09 08:06)
[46] 差し込む光は道標[ゴロヤレンドド](2013/11/18 08:13)
[47] 綻ぶ中で、新しいモノも[ゴロヤレンドド](2013/11/18 08:14)
[48] それぞれの運命を変えていく[ゴロヤレンドド](2013/12/02 15:34)
[49] 戦いは、すでに始まっていて[ゴロヤレンドド](2013/12/11 12:56)
[50] そんな中で現われたものは[ゴロヤレンドド](2014/08/18 07:59)
[51] ぶつかったり、触れ合ったり[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:29)
[52] くっ付いたり、繋がれたり[ゴロヤレンドド](2014/08/18 07:59)
[53] 天の諜交、地の悪戦苦闘[ゴロヤレンドド](2014/02/28 08:27)
[54] 人の百過想迷[ゴロヤレンドド](2014/03/11 08:12)
[55] 戦いの前に、しておく事は[ゴロヤレンドド](2014/03/11 08:40)
[56] 色々あるけど、どれも大事です[ゴロヤレンドド](2014/04/14 08:34)
[57] 無理に、無理と無理とを重ねて[ゴロヤレンドド](2014/04/30 08:27)
[58] 色々と、歪も出てる[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:24)
[59] まさかまさかの[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:57)
[60] 大・逆・転![ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:59)
[61] かなわぬ敵に、抗え[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:25)
[62] その軌跡が起こす、奇跡の影がある[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:24)
[63] 思いを知れば[ゴロヤレンドド](2014/07/30 08:06)
[64] 芽生える筈のものは芽生える[ゴロヤレンドド](2014/08/18 08:00)
[65] 決意の時は、今だ遠し[ゴロヤレンドド](2014/09/03 08:13)
[66] 故に、抗うしかない[ゴロヤレンドド](2014/10/06 08:13)
[67] 捻じ曲げられた夢は[ゴロヤレンドド](2014/10/06 08:14)
[68] 捻じ曲げ戻すしかない[ゴロヤレンドド](2014/10/23 08:17)
[69] 戦う意味は、何処にあるのか[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:12)
[70] それを決めるのは、誰か[ゴロヤレンドド](2014/12/09 08:22)
[71] 手繰り寄せた奇跡[ゴロヤレンドド](2014/12/26 14:07)
[72] 手繰り寄せられた混迷[ゴロヤレンドド](2014/12/26 14:08)
[73] 震える人形[ゴロヤレンドド](2015/01/19 08:01)
[74] 対するは、揺るがぬ思いと揺れ動く策謀[ゴロヤレンドド](2015/02/17 08:06)
[75] 曇った未来[ゴロヤレンドド](2015/03/14 10:31)
[76] 動き出す未来[ゴロヤレンドド](2015/03/31 08:02)
[77] その始まりは[ゴロヤレンドド](2015/04/15 07:59)
[78] 輝夏の先触れ[ゴロヤレンドド](2015/05/01 12:16)
[79] 海についても大騒動[ゴロヤレンドド](2015/05/19 08:00)
[80] そして、安らぎと芽生え[ゴロヤレンドド](2015/06/12 08:02)
[81] 繋いだ絆、それが結ぶものは[ゴロヤレンドド](2015/06/30 12:20)
[82] 天の川の橋と、それを望まぬ者[ゴロヤレンドド](2015/07/23 08:03)
[83] 夏の銀光、輝くとき[ゴロヤレンドド](2015/08/11 08:08)
[84] その裂け目、膨大なり[ゴロヤレンドド](2015/09/04 12:17)
[85] その中より、出でし光は[ゴロヤレンドド](2015/10/01 12:15)
[86] 白銀の天光色[ゴロヤレンドド](2015/12/01 12:17)
[87] 紅と黒の裂け目の狭間で[ゴロヤレンドド](2015/12/01 12:18)
[88] 動き出したのは修正者[ゴロヤレンドド](2016/02/04 08:01)
[89] 白銀と白[ゴロヤレンドド](2016/02/04 08:02)
[90] その、結末[ゴロヤレンドド](2016/03/02 12:22)
[91] 出会い、そして[ゴロヤレンドド](2016/03/30 12:24)
[92] 新たなる始まり[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:16)
[93] 新しいもの、それに向き合う時[ゴロヤレンドド](2016/06/24 08:40)
[94] それは苦しく、そして辛い[ゴロヤレンドド](2016/08/02 10:08)
[95] 再開のもたらす波、それに乗り動く人[ゴロヤレンドド](2016/09/09 09:34)
[96] そのまま流される人[ゴロヤレンドド](2016/10/27 10:08)
[97] 戻りゆく流れの先に[ゴロヤレンドド](2017/02/18 12:02)
[98] 新たなる流れ[ゴロヤレンドド](2017/03/25 11:46)
[99] 転生者たちはどんな色の夢を見るのか[ゴロヤレンドド](2017/05/27 14:38)
[100] そして、その生をあたえたものは[ゴロヤレンドド](2017/05/27 14:36)
[101] 戦いの前に[ゴロヤレンドド](2017/09/12 15:39)
[102] 決めた事[ゴロヤレンドド](2018/01/30 15:54)
[103] オリキャラ辞典[ゴロヤレンドド](2017/09/12 15:38)
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[30054] 新たなる、大騒動は
Name: ゴロヤレンドド◆abe26de1 ID:2f15c288 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/01/07 14:43
「香奈枝、香奈枝。何か今、揉めてたわよ。何でも、篠ノ之さんが引っ越すんだって」
「え、篠ノ之さんが出て行ったの?」
 そんな事をフランチェスカから聞いたのは、日曜日の夜だった。てっきり織斑君が出て行くと思っていたので、少し驚く。
私も部屋が離れれば、ようやく彼のお世話から解放されるかなと思ったんだけど……。
「それでね、凄いサプライズがあったのよ!!」
 凄いサプライズ?
「あの篠ノ之さんが。織斑君に『わ、私と付き合ってもらう!!』って言ったのよ!!」
「……え?」
 ……。…………。今、フランチェスカは何て言った? 篠ノ之さんが? 織斑君に『付き合ってもらう』って言った?
「ほ、本当なのそれ!?」
「そうよ! 今度、学年別個人トーナメントがあるでしょう?」
 ああ、任意参加のあれね。私は別に参加する予定はなかったから、それほど気にしてないけど……。
「あれで優勝したら、付き合ってもらうんだって!」
「優勝……ね」
 篠ノ之さんが優勝できるかどうかは、正直『専用機の不参加』が条件な気がする。現在、一年生に五人いる専用機持ち。
この面々が参加しなければ、あるいは……といった所あろうか。まあでも、専用機だって無敵じゃない。
「確か、アウトーリさんがノーマルのリヴァイヴで安芸野君を倒した事があるって聞いたんだけど」
「ああ、ロミのあれ? うん、あるらしいよ」
 実例がある以上、専用機が相手でも勝てないわけじゃないんだろう。勿論、勝率は低いけど。
「それにしても、何で『優勝したら』なのかしら? アウトーリさんみたいに、倒せる自信があるのかしら?」
「さあ? ひょっとしたら、何か意味があるのかもしれないけど」
 面白そうに笑みを浮かべるフランチェスカ。まあ、別にいいけど……そういえば。
「じゃあ、織斑君は一人部屋なのかしら」
「さあ? 案外、安芸野君みたいに誰か来るかもしれないけど」
「まさか」
 そんな情報、この女子ネットワークで流れない筈が無い。それよりも。
「クラス対抗戦も終わったし、織斑君と安芸野君が一緒になった方が手っ取り早い気がするわね」
「あ、そっかー。まあ、普通に考えればそれが自然よね」
「さ、もう寝ましょうか。遅いし」
「そうね」
 明日からの授業に備え、ベッドに入る。……また、一週間が始まる。そう思ううちに、私は眠りに落ちていた。


 月曜日。昨日はあんな事を聞いたけど、さて二人は……と見てみたら、織斑君はいつもどおりだった。一方、篠ノ之さんは……。
「大丈夫なの、篠ノ之さん。昨日の夜から何か変だけど」
「な、何でもないのだ。心配は、要らない」
 ルームメイトになったらしい鷹月さんが心配するほど、おたおたしていた。ああ、何となく未来が予想できた気がする。
「おはよう、諸君」
 すると、まだ時間じゃないのに先生達が教室に来た。雑談やその他に耽っていたクラスメート達も、すぐに着席していく。
そしてチャイムが鳴り、HRの時間となるのだけど……。気のせいか、山田先生がいつもよりニコニコしているような気がした。
「さて、今朝の伝達事項だが……言っていたように、今日からは本格的な実戦訓練を開始する。
訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人、気を引き締めるように」
 いよいよ、か。ちなみにこの時は、ISスーツの着用が義務付けられた授業となるらしい。
忘れた人は学校指定の水着での授業を強いられ、それも忘れた人は下着での……って、それは幾ら何でもやり過ぎのような気が。
「では山田先生、ホームルームを」
「は、はいっ」
 織斑先生からの連絡事項が終わると、いつも通り山田先生へバトンタッチした。それにしても、何であんなに笑顔なんだろう?
「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します! しかも二名です!」
「「「「「「「「「「ええ―――っ!?」」」」」」」」」」
 思いがけない展開に、教室中が一気に騒然となる。そして、山田先生に促されて入ってきたのは……!?
「……お、男の、こ?」
 誰かの声がしたけど。クラス中が呆然とする中、男子生徒はにこやかな笑みを浮かべて。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れな事も多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」
 挨拶を終えて笑顔と共に一礼した。その笑顔、濃い金髪や白い肌。そして礼儀正しい立ち振るまいなどなど……。
まるで少女漫画や女性向けドラマに出てきそうな、貴公子や王子様のようだった。
比べる物じゃないのは解ってるんだけど、織斑君達とはまるで違う男子。共学の中学にいた私だって、こんなタイプは見た事がない。
ただ、随分と小柄で……隣にいる山田先生と同じくらいの身長だった。フランスの人って、もう少し高いと思ってたんだけど。
対抗戦の時のアリュマージュ先輩は、目の前のデュノア君よりもかなり高く感じたし……。
「それでは、次に――」
「あ、あ、あのっ! し、シャルル君は、男の子なの!? お、男の子なのにISを使えるの!?」
 田島さんが、いきなり立ち上がって質問する。言わずもがな、だけど質問をしないではいられなかったのだろう。
「はい。此方に、僕と同じ境遇の方が居ると聞いて本国より転入を―――」
「「「「「「「「「「きゃああああああああ―――っ!」」」」」」」」」」
「え? え?」
 クラスの過半数のメンバーの歓声が共鳴して、教室を揺らす。
突然のことにデュノア君は驚いているけど、騒ぎはこれだけでは止まらなかった。
「男子! 三人目の男子!」
「しかもまたうちのクラス! 神様ありがとう!!」
「その上、美形のヨーロッパ人! 守ってあげたくなる系のたおやかな貴公子!」
「この世界に生まれて良かった~~~!」
 皆の盛り上がりも、解らないではないけど、最後は突飛すぎじゃないの?
「……まさか、また一人見つかるなんてなあ」
 隣で織斑君がそう呟くけど、確かにね。織斑君、安芸野君に次いで三人目……か。そういえば、今回は事前に伝達が無かったけど……?
まあ、安芸野君の時は事前に噂が流れていたから、学園側も後追いでHRで情報を出したんでしょうけど。
「あ、あのー!! ひょっとして、デュノア君も織斑君や安芸野君と同じく専用機持ちなんですか?」
 こう質問したのは相川さん。――ああ、そういえばそうね。
「は、はい。一応、フランスの代表候補生です」
「すっごい! このクラス、これで専用機持ちは三人目よ!!」
 確かに、イギリス・フランスの代表候補生に織斑君を加えて、このクラスの専用機持ちは三人。
二組・三組・四組は一人ずつしかいないのに。……まあ、理由は察しがつくけど。
「質問はそこまでにしておけ。もう一人いることを、忘れるなよ」
 あ。すっかり忘れてたけど、転入生は二人いたんだった。……さて、視線を彼女に向けないとね。
「さて。次はお前が挨拶をしろ、ラウラ」
「はい、教官」
 もう一人の転入生――デュノア君よりも更に小柄な銀髪の少女――は今まで興味無さそうにしていたけど、先生の一言で振り向いた。
……きょうかん? えーーと。……叫喚でも凶漢でも兇漢でもないでしょうから『教官』の事?
左目を眼帯で覆ってるし、まるで軍人みたいな雰囲気だし。教官、っていう言葉にもとても自然な雰囲気があったし……。
「ここではそう呼ぶな。もう私は教官では無いし、ここではお前は一般生徒だ。私の事は織斑先生と呼べ」
「了解しました」
 そして銀髪の少女は振り向く。彼女は一体、どんな自己紹介をするのか。周囲の期待が高まる中……。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「……」
 名前だけを言う、という何処かの誰かさんのような自己紹介だった。しかし、その込められた感情はまるで違っている。
「え、えーーっと。そ、それだけですか?」
「以上だ」
「……ぼ、ボーデヴィッヒさんもデュノア君と同様にドイツの代表候補生だそうですよ~~って、ボーデヴィッヒさん?」
 困惑する山田先生が何とか銀髪の転入生にも意識を向けてもらおうと話題をふるけど、当人は無視して、織斑君の前にきて――!?
「……認めない。お前があの人の弟である事など、認めるものか」
 いきなり、頬を叩いた上に意味不明なことを言い出した。ちょ、ちょっと、一体何を――。
「……では、授業の準備に入れ。本日は二組と合同だ」
 不思議な事に、織斑先生は何も言わずに去っていった。……ど、どうなってるの?
「……ん?」
 気のせいか、他のクラスが騒々しいような気がした。この距離だと二組じゃなくて……三組かしら?




「だ、男子生徒!?」
「副担任!?」
「副担任補佐!?」
「スペインの代表候補生!?」
 ……先ほどの絶叫とブラックホールコンビの情報によると、一組にも転入生が来たようだが。
我が三組にも、新しくクラスに加わる人間がいた。――それも、四人。俺も含め、クラス中が騒然となっている。
まあ、中には居眠り中のアウトーリとかもいるんだが。……あ、歩堂が起こしているな。ようやく目覚めたようだ。
「では、まず古賀先生から自己紹介をお願いします」
「このクラスの副担任、古賀水蓮だ。IS整備なら、世界でトップ級だという自負はある。まあ、よろしく頼む」
 副担任、だと名乗った先生は歯を見せて笑った。男がすると、男らしいって言われそうな笑いなんだが。
古賀先生は外見が黒髪で長身・細身の女性にもかかわらず、何ていうか……似合っている。
髪の毛が少し乱れている辺りも、その笑い方とはマッチしているような気がした。
「古賀先生。副担任については『未着任』であると新野先生より窺っていたのですが。事情を説明してください」
 さっそくライアンが切り込んだ。多分、そんなのを気にしない連中を除き全員が気になっている事だろう。
「ああ、簡単な事だ。ちょっくら委員会の方に呼ばれてな。IS弄くってたら、数ヶ月経ってた」
「委員会……ですか」
 その答えに、ライアンすら一瞬戸惑ったようだった。委員会って……国際IS委員会か?
国家のIS保有数や動きなどを監視する委員会で、俺や織斑をどの国の所属にするか話し合ってる所だって聞いた事があるが。
確かこの委員会自体も抑止力として20機のISを保有してるらしいから、その関係なんだろうか。
「では次に、ニーニョさん。どうぞ」
「……ニナ・サバラ・ニーニョ。スペインの代表候補生だ」
 こちらは、燃えるような赤い髪の転入生だった。ライアンや他の何人かも赤毛だが、より濃い赤毛。
だがその表情が不自然なほど落ち着いているのが、髪の毛から受ける印象と逆だった。
「他には、何か無いですか?」
「……今の時期の編入ということで色々と迷惑をかけるかもしれないが。……よろしく、たのむ」
 なんとも無愛想だが。一応、ちゃんと挨拶はしたな。見かけよりも付き合いやすいのかな?
「さて、次は私でしょうね。副担任補佐として着任しました、ゲルト・ハッセ。ドイツ出身の、この学園のOGです。
去年の三月卒業したのですが、また戻ってこようとは思いませんでした。皆さん、よろしくお願いしますよ」
 金髪黒目のお姉様、といった感じの自主的に喋り出した三人目の女性――ハッセさん。なら、俺達より四年先輩なのか。
「副担任補佐、ということなのですが。どういう役職なのですか?」
「それはまず、隣のクラウス君の事を話してからにしましょう」
「じゃあまさか、彼も安芸野君や織斑君と同じ……?」
「いや、俺にはISは動かせない。俺は、ドールの運用試験担当だ」
 四人目――多分、一番注目を集めているであろう『男』が口を開いた。ドール? ……おいおい、それって。
「俺の名はクラウス・ブローン。ドイツ出身の、ドールの運用試験担当者だ。
ISとの比較訓練やその他諸々の為、この学園にやって来た。この学園にもドールが搬入される予定なので、その前触れかな?」
 黒髪黒目の男――クラウス・ブローンは、そういうと自己紹介をした。軽くもなく、重くもないその口調。
明らかに『美形』に分類される顔立ちで、身長は俺や織斑よりも多分上だろう。制服を、しっかりと着こなしている。
「なるほど。……データ取りの為。という事ですか。では、ハッセさんは」
「その補助と整備担当です。まあ、学園を卒業してから少しばかりドールの開発に携わったのですが。
今回クラウス君が送られる事となり、その補助としてOGである私が選ばれたのです。ドールの事以外でも、よろしくお願いしますね」
 なるほど、理解できた。でも、この学園にもドールが搬入されるのか。ISと同じ力を持つ、っていうけど……。
「あのー。ドールの運用試験、って事はこの学園にもドールがやって来るって事ですよね? 早くて秋頃って聞いてたけど……」
「ああ。俺もドールを預かってきてるけど、もう少ししたら予定を早めてこの学園にもドールが来るらしいよ」
「ISとドールとは、決して敵対する物ではありません。皆さん、よろしくお願いしますね」
「ありがとうございました。では皆さん。新しく加わる四名に、歓迎の拍手をお願いします」
 一礼する二人。自己紹介も終わった所で、盛大な拍手が出た。
「ちょっと待ってください、先生。最後に重要な事を言っておきたいのですが」
「おや、それはすみませんでした。どうぞ」
 あれ、ブローンはまだ終わりじゃなかったのか。それにしても、今言った事以外に重要な事って……何だろうか?
「俺は今現在、恋人がいない! ぜひともこの学園で恋人を50人は作りたいと思う! 来るものは拒まずだ!! よろしくぅ!!」
「……は?」
 ブローンは爽やかな良い笑顔を浮かべだが、隣にいるハッセさんを除く全員が呆気にとられた。……えーーと?
「まさか『軍港都市キールの恥さらし』『北海に沈めるべき男No.1』が来るなんてね……」
 よく見れば、俺の隣の席のエーベルトが突っ伏してるんだが。知り合いらしいな。
「……安芸野君、彼と君とは同室になります。同じ男子生徒同士、よろしく頼みますよ」
 新野先生が、さり気無く俺に押し付けた。……おいおい。
「……よ、よろしくな、ブローン」
「ああ。安芸野将隆君、だったな。よろしく頼む」
 俺の事を知っているらしいブローンは、友好的に手を差し出してきた。慌てて掴むが、あくまで相手は友好的に接してくる。
……変な奴ではあるが、悪い奴じゃ無さそうだな。
「で、だ。……一つ聞きたいんだが」
 こっそりと俺に耳打ちをしてくる。……何だ?
「君がハーレムに組み込んでいる女子は誰なんだ? 俺は他人の恋人を奪うのは趣味じゃない……って、何で倒れるんだ?」
 駄目だこいつ、織斑とは逆ベクトルでやばすぎる!!




「織斑君、だよね? 初めまして。僕は――」
「挨拶は後でいい、移動が先だ。女子が着替え始めるからな。それに急がないと、おそらく大変な事になるからな」
「着替えはわかるけど、大変って――え?」
 HRが終わり。デュノアが疑問を口にしようとすると、地面が揺れ始めた。
「な、何!?」
「やっぱり来た! 走るぞ!!」
「え? え?」
 そう言って勢いよくデュノアの手を掴む。走り出したが――その後ろから女子の大群がやって来る。
「ああっ! 一組の男子転校生を発見!」
「しかも織斑君と一緒!」
「いた、こっちよ!」
「ものども出会え~! 出会え~!!」
 いつからここは武家屋敷になったんだよ!
「な、何? 何でみんな騒いでるの?」
 状況が飲み込んでいないデュノアは困惑顔だ。……あれ、解ってないのか?
「そりゃあ、俺達が男子だからだろ」
 以前、安芸野が転入してくる前日――寮で初めて会った直後にも似たような事があった。
だから今回も……とは思ったが、情報が回るのが早すぎるぞ、まったく!!
「……あっ! ああ、うん。そうだね」
「授業に遅れたら世界最強教師からの罰則有りだからな。急ぐぞ!」
 そして俺は、デュノアの手を引っ張って更衣室へと急ぐのだった。


 からくも女子生徒から逃れた俺達は、更衣室で着替えを完了した。……にしても、デュノアは着替えが早いよなあ。
ちょっと背を向けたら、次の瞬間には着替え終わってたぞ。何かコツでもあるんだろうか、あるなら教えて欲しいが。
「そういえばそのスーツは着やすそうだよな。何処の製品なんだ?」
「あ、うん。デュノア社製のオリジナルだよ。べースはファランクスだけど、ほとんどフルオーダー品」
「デュノア? デュノアって……お前もデュノアだよな?」
「うん、僕の家だよ。父がね、社長をしてるんだ。一応、フランスで一番大きいIS関係の企業だと思う」
 ひょっとして、と思ったらその通りだった。
「へえ、じゃあデュノアは社長の息子なんだな。なるほど、気品というか……いい所の育ちという感じがするな」
「……そうかな?」
「そうだぜ。俺や安芸野将隆――ああ、もう一人の男子生徒なんだけど、そいつよりも上品な感じがする」
「……上品、ね」
 褒めたつもりだったのだが。デュノアの顔が、僅かに曇った……様な気がした。
「どうかしたのか?」
「う、ううん、何でもないよ。……それと僕の事は、シャルルでいいよ」
「そうか? なら俺も、一夏でいいぜ」
「うん。じゃあ、行こうか」
 ちょっと引っかかったが、まあいいか。今はそれよりも、授業に急ぐ事を考えないとな。


 第二グラウンドにて整列する一・二組。その中で、悶絶している二人の女子がいた。
「だ、大丈夫か、二人とも……?」
 千冬姉の一撃に悶絶する二人。最低限の手加減はしているから大丈夫だろうとは思うんだが。
「授業中にベラベラ喋っているからこうなる。放って置け、織斑。さて、今日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する。
ではまず、専用機持ちに戦闘を実演してもらおうか。ちょうど活力が溢れんばかりの十代女子もいることだしな。凰! オルコット!」
「あ、あたし達ですか!?」
 指名された二人は、痛みも忘れて立ち上がった。……痛みを忘れて立ち上がらないと、続きが来るもんなあ。
「お前達はすぐに始められるからな。いいから前に出ろ」
「は、はい。ま、まあやれと言われればやって見せますが……」
「お前ら、少しはやる気を出せ。……一夏に良い所を見せてやれる機会なんだぞ?」
「――! やはりここは! イギリス代表候補生、わたくしセシリア・オルコットの出番ですわね!」
「――! まあ、実力の違いを見せるいい機会よね! 専用機持ちの!」
 いきなり鈴とセシリアの気迫が漲ってきたようだ。何か千冬姉が言ったようだが、何を言われたのだろうか?
「それで、先生。相手はセシリアですか?」
「あら、わたくしは鈴さんがお相手でもぜんぜん構いませんでしてよ?」
「ふふん、それはこっちのセリフよ。返り討ちよ」
 相手を見据える二人は、闘志に溢れている。そういえば箒とセシリアだけじゃなく、この二人も名前で呼び合うようになったな。良い事だ。
「慌てるなバカども。対戦相手は―――」
「ああああーっ! ど、どいてくださ~~~いっ!」
 千冬姉の声を遮り、上空から悲鳴が聞こえてきた。何やら甲高い音も聞こえてくる。……え゛?
「や、ヤマピー?」
「ま、まやや!?」
「やまやん!?」
 色々な呼ばれ方をしているが、間違いない。山田先生が、ISを纏ったまま墜落してきている。……って!?
「お、織斑君、危ないです~~!!」
 その墜落コース上に、俺がいた。
「一夏ぁ!!」
 ……箒の声がしたような気がした。それが、俺の認識した最後だった。


「……」
 落ち着こう。俺は山田先生の墜落に巻き込まれた。ISを展開すればこの程度でダメージは受けないので、白式を慌てて展開した。
それは何とか間に合ったが、衝撃までは殺しきれずにバランスを崩してそのまま転倒した。……そこまでは解るんだが。
「あ、あの織斑君……そ、その、困ります、こんな場所で……いえ、場所だけじゃなくてですね、私と織斑君は教師と生徒ですし……。
で、でもこのまま行けば織斑先生がお義姉さんになるわけですから……で、でもやっぱり皆さんの前では……それに私、男の人は……」
 い、いかん! 俺の左手が、山田先生の……む、胸を鷲掴みにしている! は、早く離さねば!!
「あれ?」
「ひゃんっ! お、織斑君、せ、先生はその、初めてでして……」
 山田先生の胸から手が離せない。ど、どういう事だこれは!!
「……っ!!」
 いきなり殺気を感じ、俺は頭を下ろした。ほぼ同時に、俺の頭があった空間をBTレーザーが通過していく。
「あら、外れましたか……。まあISを纏っているのですし、問題はありませんわね?」
 せ、セシリア!? いや、やっぱりISを纏っているとはいえ危険だと思うぞ!?
「一夏ぁ!! 胸に向かって頭を突っ込んでるんじゃないっ!!」
 ……あ。箒の一言で気付いたが、レーザーを回避したと同時に先生の胸にダイブしてしまっていた。
千冬姉さえ越える大きな膨らみの感触が、俺の頭にダイレクトで伝わってくる……って、鈴!?
「とっとと離れなさいよ、この馬鹿ぁ!!」
「ひえええっ!?」
「させませんよっ!」
 二振りの双天牙月が連結され、投擲される。慌てて避けようとするが……その時、声と共に二発の銃声がした。。
聞き覚えのある、だがまるで違う声のようにも聞こえるそれと共に放たれた銃弾は、的確に投擲された双天牙月に命中する。
双天牙月はコースをずらされて誰もいない地面に突き刺さるが、それは俺の下にいた山田先生の射撃による物だった。
上体だけを起こして両手でしっかりとアサルトライフルを握ったその姿は、普段からは想像もつかないほど似合っている。
あれは米国製の『ヴェント』っていう実用性の高いアサルトライフルだった筈だが、それを違和感なく使いこなしている。
「なぁっ!?」
「や、山田先生……!?」
「す、凄い……」
「な、何という射撃技術だ……」
「マ、マジ?」
「や、やまやん……?」
 鈴もセシリアも……そして俺も、他のクラスメートも唖然とした。
あの山田先生が、ライフルに限らず銃器を構えている姿など想像は出来なかった。しかもその腕前が、ここまでの技量だったとは。
「何やら驚いているようだが。山田先生はこう見えても、代表候補生だったからな。今くらいの射撃は造作もない」
「む、昔の話ですよ。それに候補生止まりでしたし」
「謙遜する事は無い。オルコット、凰。相手も来たのだし、始めろ」
「え? あの、まさか二対一で……?」
「いやセシリア、さすがにそれはないでしょ?」
「いや。その通りだぞ凰。……安心しろ、今のお前達では二人がかりでも山田先生には勝てん」
「「!!」」
 代表候補生二人を前に、きっぱりと言い切った。セシリアも鈴も、反論はしないが目の色が変わる。


「退避は完了したな。――では、始めろ」
 そしてクラスメートが安全域まで下がるのを確認した千冬姉の声を合図に、鈴、セシリア、山田先生の順で上空へ舞い上がっていく。
俺とシャルル、それにアイツ――ラウラ・ボーデヴィッヒはIS展開をしつつ、他の生徒達よりもやや前に立っている。
基本、グラウンドの安全域にはアリーナと同じくバリアーがあるが、それでも万が一、って事はある。千冬姉曰く、クラスメート達への壁役だ。
……ちなみに、こっそりと教えてもらったのだがさっきの山田先生の墜落は『模擬戦でISが落ちて来た時に受け止める』訓練だったらしい。
つまり、わざとだったという事なんだが……いや、それならそうと言って欲しかったぞ!! む、胸を触っちゃったし……。
「手加減はしませんわ!」
「さっきのは本気じゃなかったしね!」
「い、行きます!」
 俺の葛藤はさて置き、試合が始まった。セシリアはブルー・ティアーズを早速四方に放ち、鈴も衝撃砲を撃つ。
一方の山田先生は、両手にマシンガンを展開して弾幕を張っていた。


「山田先生って、凄かったんだな……」
 対抗戦が終わってからの訓練でセシリアや鈴と戦ってきた俺には、意外な展開だった。
セシリアと鈴、二人の代表候補生を相手に、山田先生は押される事なく戦っていた。そして、シャルル達は。
「ふん……。あれが中国と英国の第三世代型か。大した事はないな」
「凄いな、山田先生……ノーマルのリヴァイヴを、あそこまで使いこなしている……」 
 口調は真逆だが、共に戦況を一瞬たりとも見逃さないように注視していた。この辺りは、やっぱり代表候補生だからか。
「……さて織斑。山田先生の使っているISの説明をしろ」
「お、俺がですか?」
「デュノアにやってもらおうと思ったが、奴は忙しそうなのでな。お前がやれ」
「は、はい。山田先生の使っているISは、デュノア社製第二世代のラファール・リヴァイヴ。
安定した性能と高い汎用性、後付装備(イコライザ)の豊富さが特徴です。十二ヵ国で正式採用されており、世界シェアは第三位。
特徴は、操作性の簡易化によって誰でも操縦者がし易い事と……」
 何だったっけ、この後が思い出せないぞ。殆どは覚えているのだが……。
まあ、この知識は対抗戦の訓練の時にリヴァイヴを借りたクラスメート達の受け売りと、教科書の丸暗記だけど。
「多様性役割切替(マルチロール・チェンジ)を、簡易性と両立させている事だ。世界七ヵ国でライセンス生産もされている。
後は、第二世代としては最後発に位置する点などがあるが……まあ、良いだろう。ギリギリ合格だ」
「は、はい」
「さて、そろそろあちらも終わるな」
 そう言って千冬姉が空を見上げるとほぼ同時に。射撃で知らず知らずのうちに誘導されていたらしいセシリアが、鈴と激突し。
そこにグレネードを投げ付けられて墜落してきた。


「さて、教員の実力が分かった所で、早速グループに分かれての実習に入る。専用機持ちと代表候補生にはリーダーになってもらおう。
出席番号順に織斑、オルコット、チャコン、デュノア、凰、ボーデヴィッヒ……」
 ふむふむ。
「私、それと山田先生。八つのグループに分かれろ!!」
 ……え?
「「「「「ええええええええええええええええええええええええ!?」」」」」
 さっきのシャルルの時と同じような――いや、さっきは一組だけだったから、単純計算で人数は二倍。
シャルルや俺達も当然驚いているから……というか、驚いていない奴なんていなかった。……あの転入生や、山田先生まで含めて。
「お、織斑先生が指導をなさるんですか!?」
「そうだ。……ああ、出席番号順だぞ? 殺到するのは、現役時代の出張指導で既に慣れっこだからな」
 その指示と共に、女子がパニック寸前に陥った。一部を白式のセンサーで聞き取ってみると。
「……やった、織斑くんと同じ班っ! この苗字のお陰ね!! ありがとうお父さん!!」
「う~、セシリアかぁ。ハァ……デュノア君が良かったなぁ……」
「二組の前クラス代表で、アルゼンチンの代表候補生のチャコンさん、か。私、一組だからあまり知らないなあ……」
「デュノア君、学園生活で解らない事があったら何でも聞いてね。ちなみに私は1018号室だから!!」
「凰さん、よろしくね!! 後で織斑君の話を聞かせてね!!」
「……よ、よろしくね、ボーデヴィッヒさん」
「お姉様からの指導を直接受けられるなんて、一生の宝物です!! 二組でも諦めないでよかったぁ!!」
「山田先生、今日はご指導宜しくお願いします」
 ……一部なんかやばそうなのがあったが。出席番号順、という誤魔化しようが無いルールなのであっさりと女子が動いていく。
そして、俺の前にも当然女子が集まってきた。箒や一組のメンバーは知ってるけど、二組の出席番号一番の子とかは知らないから……。
「今日は宜しくな。一応挨拶しておくと、俺は――」
「はいはいはーい! 一年一組、出席番号一番・相川清香!! ハンドボール部だよ!」
「い、いや、それは知ってるんだが……」
 入学直後ならともかく、もうそろそろクラスのメンバーの顔は覚えだしている。何故、彼女が自己紹介をする必要があるんだ?




「……大丈夫かしら」
「どうしましたの、宇月さん?」
「いや、フランチェスカが……ね」
「ああ……」
 オルコットさんの班に割り当てられた私は、出席番号の関係上で最初にリヴァイヴを纏っていた。
オルコットさんの指導は多少細かいけど適確だったから、それ自体は問題なかったんだけど……。
「レオーネさんは、あの方の班ですものね」
 フランチェスカは、転入生の一人・ボーデヴィッヒさんの班だった。
彼女は『そんな事やってられるか』といった態度で話しかけようともしない。そしてフランチェスカ達も話しかけられないでいる。
何とか皆で打鉄を起動させようとしてるけど、その行動は遅々として進んでいない。……あ。もう心配はいらないわね、だって……。
「ほう、ボーデヴィッヒ。貴様、いつから命令を無視するような人間に成り下がった?」
「きょ、教官!?」
 ボーデヴィッヒさんの班が遅れているのを見かねたのか、織斑先生が向かったからだ。
ちなみに、一番早いのは先生の班である事は言うまでも無い。
「私は『専用機持ちと代表候補生にはリーダーになってもらおう』と言ったはずだな? 聞き逃したか?」
「い、いいえ! そのような事は!!」
「そうか、ならば鏡の起動を手伝ってやれ。一番遅れているのはこの班だぞ?」
「は、はい!!」
 慌てて鏡さんの起動を手伝い出すボーデヴィッヒさん。……何か、物凄く素直だ。
「……一件落着、ですわね」
「ええ」
 そして歩行訓練をやるけど、フィッティングとパーソナライズを切っているので少し動かしづらい。
まあ、皆で連続して使うわけだから仕方のないことなのだけど。
「ええ、そうですわ。そこで三歩ほど……はい」
 そうこうしている間に、一通りの動きは終わったのでリヴァイヴから降りる事になる。さて、と。降りる時は解除手順を踏んで――。
「ああ、宇月さん。次の方が乗りますから、リヴァイヴを屈めてから解除手順に入って下さいな」
「あ、うん」
 いけないいけない、忘れてた。立ったままで装着解除すると、当然ながらISは立ったままになる。
降りる方は飛び降りればいいけど、次に乗る人はISをよじ登るか何かしないといけないから……
「ああああああああああ!!」
「っ!?」
 突然聞こえた絶叫に、思わず装着解除の手を止めた。な、何? まさか、乱入者!?
「お、織斑君が……お姫様だっこして打鉄に乗せてる!!」
「……は?」
 織斑君の班を見ると、どうやら一人目の相川さんが立ったまま解除させちゃったらしく。
立ったままの打鉄に、織斑君が白式を展開して二人目の岸里さんを乗せているのだ。
しかも、私も昔の漫画で見た事があるけど『お姫様抱っこ』という体勢で。それは、皆の注目の的になっている。
「な、何て羨ましい……!!」
 オルコットさんに至っては、私達の事を完全に忘れているようだった。……凰さんも同じみたいだけど。
「……とりあえず、先に進めましょうか」
「そうね」
「ねー、かなみー。気がついた~~?」
「え、何が?」
 私の次に乗る岸原さんと入れ替わり、私はリヴァイヴから降りた。
すると本音さんが何かに気付いたようで、話しかけてくる。一体、何に気がついたんだろう?
「らーぽん、じっと織斑先生の指導を受ける娘達を見てたよー。れおっち達の事を放っておいたのも、その為かもー」
「……そうなの?」
「うん。羨ましそーに見てたよー」
 そう、なんだ。そういえば教室で『教官』って言ってたし、ボーデヴィッヒさんは以前にも織斑先生の指導を受けた事があるのかしら?
「……ところで、らーぽんって」
「ん? らーぽんはらーぽんだよ?」
 ら、らーぽん……。当人の自己紹介とのギャップに、思わず吹き出した。
『らーぽんだ』
 ……だ、駄目。本人の自己紹介に当て嵌めてみたら、笑いが出てきた……。
「ねえ宇月さん、どうしたの?」
「ご、ごめんなさい、あの……」
 ちなみに、この事を皆に話したら笑いが伝染し。織斑先生が近づいてくるまで、実践が停滞してしまったりしたのだった。



★補足説明
・グラウンドの安全域

 グラウンド内部にあるバリアー発生箇所の事。授業の中で実機を使用する模擬戦の際に、非IS装着者の見学に使用される。
また、より精密かつ近距離での撮影場所などにも使用される。

 やっとシャルとラウラを出せました。うん。今回はそれしかありませんね。


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