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No.30054の一覧
[0] IS ―インフィニット・ストラトス クラスメートの視線―[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:41)
[1] 受験……のはずが[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:27)
[2] どんどん巻き込まれていく[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:42)
[3] ある意味、自業自得なんだけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:42)
[4] 何だかんだで頑張って[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:44)
[5] やるしかないわよね[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:14)
[6] いざ、決戦の時[ゴロヤレンドド](2012/04/16 08:11)
[7] 戦った末に、得て[ゴロヤレンドド](2014/06/16 08:01)
[8] そして全ては動き出す[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:55)
[9] 再会と出会いと[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:45)
[10] そして理解を[ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:58)
[11] 思いがけぬ出会いに[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:47)
[12] 思い描け未来を[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:48)
[13] 騒動の種、また一つ[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:49)
[14] そして芽生えてまた生えて[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:50)
[15] 自分では解らない物だけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:52)
[16] 渦中にいるという事[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:52)
[17] 歩き出した末は [ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:59)
[18] 思いもよらぬ事だらけ[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:54)
[19] 出会うなんて思いもしなかったけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:55)
[20] それでも止まらず動き出す[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:28)
[21] 動いている中でも色々と[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:00)
[22] 流れはそれぞれ違う物[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:01)
[23] ようやく準備は整って[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:01)
[24] それぞれの思い、突きあわせて[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:02)
[25] ぶつかり、重なり合う[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:56)
[26] その果てには、更なる混迷[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:04)
[27] 後始末の中で[ゴロヤレンドド](2012/11/15 08:09)
[28] たまには、こんな一時[ゴロヤレンドド](2012/11/15 08:10)
[29] 兆し、ありて[ゴロヤレンドド](2012/12/10 08:16)
[30] それでも関係なく、私の一日は過ぎていく[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:06)
[31] 新たなる、大騒動は[ゴロヤレンドド](2013/01/07 14:43)
[32] ほんの先触れ[ゴロヤレンドド](2013/01/24 15:47)
[33] 来たりし者は[ゴロヤレンドド](2013/02/25 08:21)
[34] 嵐を呼ぶか春を呼ぶか[ゴロヤレンドド](2015/08/11 08:06)
[35] その声は[ゴロヤレンドド](2013/03/26 08:05)
[36] 何処へと届くのか[ゴロヤレンドド](2013/04/03 08:02)
[37] 私を取り巻く人々は[ゴロヤレンドド](2013/04/27 09:30)
[38] 少しずつ変わりつつあって[ゴロヤレンドド](2013/05/09 11:05)
[39] その日は、ただの一日だったけれど[ゴロヤレンドド](2013/05/21 08:10)
[40] 色々な動きあり[ゴロヤレンドド](2013/06/05 08:00)
[41] 小さな波は[ゴロヤレンドド](2013/07/06 11:24)
[42] そのままでは終わらない[ゴロヤレンドド](2013/07/29 08:06)
[43] どんな夜でも[ゴロヤレンドド](2013/08/26 08:16)
[44] 明けない夜はない[ゴロヤレンドド](2013/09/18 08:33)
[45] 崩れた壁から[ゴロヤレンドド](2013/10/09 08:06)
[46] 差し込む光は道標[ゴロヤレンドド](2013/11/18 08:13)
[47] 綻ぶ中で、新しいモノも[ゴロヤレンドド](2013/11/18 08:14)
[48] それぞれの運命を変えていく[ゴロヤレンドド](2013/12/02 15:34)
[49] 戦いは、すでに始まっていて[ゴロヤレンドド](2013/12/11 12:56)
[50] そんな中で現われたものは[ゴロヤレンドド](2014/08/18 07:59)
[51] ぶつかったり、触れ合ったり[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:29)
[52] くっ付いたり、繋がれたり[ゴロヤレンドド](2014/08/18 07:59)
[53] 天の諜交、地の悪戦苦闘[ゴロヤレンドド](2014/02/28 08:27)
[54] 人の百過想迷[ゴロヤレンドド](2014/03/11 08:12)
[55] 戦いの前に、しておく事は[ゴロヤレンドド](2014/03/11 08:40)
[56] 色々あるけど、どれも大事です[ゴロヤレンドド](2014/04/14 08:34)
[57] 無理に、無理と無理とを重ねて[ゴロヤレンドド](2014/04/30 08:27)
[58] 色々と、歪も出てる[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:24)
[59] まさかまさかの[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:57)
[60] 大・逆・転![ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:59)
[61] かなわぬ敵に、抗え[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:25)
[62] その軌跡が起こす、奇跡の影がある[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:24)
[63] 思いを知れば[ゴロヤレンドド](2014/07/30 08:06)
[64] 芽生える筈のものは芽生える[ゴロヤレンドド](2014/08/18 08:00)
[65] 決意の時は、今だ遠し[ゴロヤレンドド](2014/09/03 08:13)
[66] 故に、抗うしかない[ゴロヤレンドド](2014/10/06 08:13)
[67] 捻じ曲げられた夢は[ゴロヤレンドド](2014/10/06 08:14)
[68] 捻じ曲げ戻すしかない[ゴロヤレンドド](2014/10/23 08:17)
[69] 戦う意味は、何処にあるのか[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:12)
[70] それを決めるのは、誰か[ゴロヤレンドド](2014/12/09 08:22)
[71] 手繰り寄せた奇跡[ゴロヤレンドド](2014/12/26 14:07)
[72] 手繰り寄せられた混迷[ゴロヤレンドド](2014/12/26 14:08)
[73] 震える人形[ゴロヤレンドド](2015/01/19 08:01)
[74] 対するは、揺るがぬ思いと揺れ動く策謀[ゴロヤレンドド](2015/02/17 08:06)
[75] 曇った未来[ゴロヤレンドド](2015/03/14 10:31)
[76] 動き出す未来[ゴロヤレンドド](2015/03/31 08:02)
[77] その始まりは[ゴロヤレンドド](2015/04/15 07:59)
[78] 輝夏の先触れ[ゴロヤレンドド](2015/05/01 12:16)
[79] 海についても大騒動[ゴロヤレンドド](2015/05/19 08:00)
[80] そして、安らぎと芽生え[ゴロヤレンドド](2015/06/12 08:02)
[81] 繋いだ絆、それが結ぶものは[ゴロヤレンドド](2015/06/30 12:20)
[82] 天の川の橋と、それを望まぬ者[ゴロヤレンドド](2015/07/23 08:03)
[83] 夏の銀光、輝くとき[ゴロヤレンドド](2015/08/11 08:08)
[84] その裂け目、膨大なり[ゴロヤレンドド](2015/09/04 12:17)
[85] その中より、出でし光は[ゴロヤレンドド](2015/10/01 12:15)
[86] 白銀の天光色[ゴロヤレンドド](2015/12/01 12:17)
[87] 紅と黒の裂け目の狭間で[ゴロヤレンドド](2015/12/01 12:18)
[88] 動き出したのは修正者[ゴロヤレンドド](2016/02/04 08:01)
[89] 白銀と白[ゴロヤレンドド](2016/02/04 08:02)
[90] その、結末[ゴロヤレンドド](2016/03/02 12:22)
[91] 出会い、そして[ゴロヤレンドド](2016/03/30 12:24)
[92] 新たなる始まり[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:16)
[93] 新しいもの、それに向き合う時[ゴロヤレンドド](2016/06/24 08:40)
[94] それは苦しく、そして辛い[ゴロヤレンドド](2016/08/02 10:08)
[95] 再開のもたらす波、それに乗り動く人[ゴロヤレンドド](2016/09/09 09:34)
[96] そのまま流される人[ゴロヤレンドド](2016/10/27 10:08)
[97] 戻りゆく流れの先に[ゴロヤレンドド](2017/02/18 12:02)
[98] 新たなる流れ[ゴロヤレンドド](2017/03/25 11:46)
[99] 転生者たちはどんな色の夢を見るのか[ゴロヤレンドド](2017/05/27 14:38)
[100] そして、その生をあたえたものは[ゴロヤレンドド](2017/05/27 14:36)
[101] 戦いの前に[ゴロヤレンドド](2017/09/12 15:39)
[102] 決めた事[ゴロヤレンドド](2018/01/30 15:54)
[103] オリキャラ辞典[ゴロヤレンドド](2017/09/12 15:38)
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[30054] それぞれの思い、突きあわせて
Name: ゴロヤレンドド◆abe26de1 ID:2f15c288 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/04/13 12:02
※2012/06/01付けの現代事故さんへの感想返しに補足を致しました。
 少々遅すぎた決定をお詫びいたします。


「さあさあ始まりましたIS学園クラス対抗戦一年生の部!! 実況は放送部の看板アナウンサー、アンヌ・アリュマージュと!
一組代表の織斑君とは四年連続同じクラス、二組代表の凰さんとは中学時代の同級生。三組代表安芸野君とは昔の知り合い!!
そして四組代表更識さんのIS作成にも関与した、一年一組の名サポーター・宇月香奈枝さんでお送りします!!」
「よ、よろしくお願いします」
「さっそくですが宇月さん。この戦い、どうご覧になりますか?」
「え、えっとですね。やはり、本命は二組代表の凰鈴音さんです。中国の代表候補生にして、専用機持ち。
実働時間は、他の三人よりも上です。そして第三世代型である専用機『甲龍』の噂が本当なら、かなり強力でしょうね」
「なるほど。では、対抗馬は?」
「一組代表の織斑一夏君でしょう。彼は、一撃必殺タイプ。あの『ブリュンヒルデ』織斑先生と同じ力を持っています。
クラス代表決定戦では、一撃で英国代表候補生との戦いを引き分けに持っていくほどの威力を発揮しました。
あの一撃をどこで使うか、そしてそれは誰に向けられるのか。それが彼の勝敗を、そしてこの戦い全体の行方を左右するでしょう。
 そして逆に、四組代表の更識簪さんは遠距離攻撃特化型です。作り上げたばかりの機体の操縦と戦術組み立ては万全との事ですが。
バトルロイヤルですから、他の三人への効果的な攻撃と敵を近づけさせない事が勝利の鍵でしょう。ただ……」
「ただ?」
「三組代表、安芸野将隆君の機体が気になります。情報では、転入してきてからは基礎訓練と駆動訓練を繰り返していたようです。
こちらも第三世代型の専用機である以上『何か』があるはずなんですが、これといった特徴を聞いていません。
噂は色々と流れているのですが、どうもハッキリしません。情報漏れが一つも無い、というのは少々奇妙ですが。
彼の、そして御影の活躍次第では、大きく戦況が変わる事になると思います」
「なるほど、彼はダークホースだという事ですね。それでは一度、マイクをスタジオにお返しします!」


「ありがとっ! 見事な解説っぷりだったわよ!」
「台本ありですけどね。というか、別に私は名サポーターってわけじゃないんですけど……」
 私は渡された台本を置き、ようやく一息ついた。黛先輩からのお願い。それは、クラス対抗戦の解説だった。
何故私が、といえばその理由はさっき説明したように、クラス代表四人と親しいから。それにしても……。
(ついていけない部分もあるわね……)
 フランス出身の三年生・アリュマージュ先輩は、黛先輩と同じようなタイプ。
正直、こちらがついていくのが難しいほどのハイテンションの人だった。というかスタジオって何処? この台本書いたの誰ですか?
しかも私とまさ……安芸野君の事まで、はっきりと言われちゃうし。噂はかなり広まってるみたいだけど、ね……。
「それにしても、今年の一年は凄いわねえ。クラス代表四人が専用機持ちなんて」
「そうですね」
 もう何度も言われた言葉だけど、実際この事態は異常と言うしかない。まあ、私にとってみれば中学の同級生二人と昔馴染み一人。
それと最近親しくなった人でしかないのだけど。……よく考えてみれば、こう考えてしまう私も異常なのかもしれない。
「ただ、学園側としても苦労しましたよ。観戦希望者が例年よりもはるかに増えましたからね」
 これは、この解説室担当の新野智子先生。一年三組の担任ではあるが、私は今日が初対面。
この学園では担任と副担任が殆どの教科を受け持つ為、他のクラスの先生とは疎遠になりがちだ。
二年以上になると、もう少し専門分野を学ぶ為に、中学や一般高校のように専門の教師が教えるようになるらしいのだけど……。
「――! さあさあ、クラス代表の入場です!」
「そう、ですね。全員、流石に専用機持ちばかりなだけあって乱れの無い入場です」
 アリュマージュ先輩の合図と共に、解説者モードになる。……一応台本はあるけど、どうしてもアドリブを効かさないといけないから辛い。
そして、四人のクラス代表が東西南北の入り口からそれぞれ出てきた。そのまま四方に待機して、試合開始の合図を待つ。
『一夏! あたしをのけ者にした事、後悔させてあげるからね!!』
『べつにのけ者にした覚えは無いけどな。――勝たせてもらうぜ!!』
『おー。二人とも燃えてるな。だけど、俺達を忘れてもらっちゃ困るぜ?』
『……』
「おお、早くも舌戦が始まったようです。どうみますか、宇月さん?」
「そう……ですね。更識さんは、我関せずと集中しているようです。織斑君、凰さん、安芸野君はそれぞれ闘志を高めているようですが」
 今のは、やりやすかった。思った事を、そのまま口にしただけだったから。
『三組と四組の代表! まあ、この戦いに出てきた根性は認めるけど。……あたし、強いわよ?』
「おお! これは、勝利宣言か!?」
「いえ、これ、彼女の地です。逆に言えば、平静を保っているという事ですね。――落ち着いています」
 ……って、織斑君が言ってた。
『そりゃ確かにな。まあ、中国代表候補生のお手並み拝見――だな』
『……』
 試合開始は間もなく。……そして、アリーナ中が異様な熱気に包まれていた。




「A-07……あ、こっちよマリア」
「ありがとう、留美。私達はこの辺りみたいね」
「そーだね。07から14まで、私達みたい」
 そのような会話が、アリーナのあらゆる場所で繰り広げられていただろう。相手はクラスメートであったり、同級生であったり。
あるいは同じ企業・国家の人間であったり、別の組織に所属する人間であったり。思惑も、言葉も様々であったが。一つだけ確かなのは。
「この戦い。もしかすると、ISの歴史に残るくらい重大な一戦になるわよ。見逃せないわ」
 私、マリア・ライアンの言葉が示すように。誰しもが注目しているという事であった。……ちなみに余談ではあるけど。
「そういえば、聞いた? この試合の席を売買していた先輩の事」
「聞いたわ。織斑先生に見つかって、凄いお仕置きを受けたとか……」
「何でも、まだ部屋から出てこれないらしいわよ……」
「お姉様のお仕置き……。羨ましい……」
 そんな会話も、畏怖と羨望を交えながら生徒間で広がっていたのだった。……理解できないわ。




「……」
 私は、打鉄弐式・黒金を纏って待機していた。ほんの数週間前までは、夢想だにしなかった現実。だけど、私はここにいる。
「にしても、安芸野のISって直に見るのは初めてだけど……忍者みたいだな」
「まあ、その通りだけどな。だけどコイツを甘く見たら後悔するぜ?」
「そうか。――で、更識さんのISは打鉄の流れを汲んでるって感じだな。いかにも後継機って感じだぜ」
「……そう」
 オープンチャネルで彼がいうとおり、この弐式・黒金は打鉄の因子を濃く受け継いでいる。
機動性重視で独立ウイング式にする筈だった腰周りは、防御重視の袴型スカートアーマーのまま。
腕部装甲は射撃戦闘を重視する為に打鉄よりも少し削ったけれど、基本的な構造は打鉄本来の物と近い。
特徴的な肩部ユニットも(ブースターを仕込んであるけど)打鉄のそれと形状は近い。一見は、打鉄そのままにも見えるだろう。
背中に搭載された速射重視タイプの荷電粒子砲『春雷』は、脇の下から潜らせて正面に向けるタイプなので設定に苦労したし。
「ちょっと一夏! あたしの甲龍はどうなのよ!! 甲龍も、全部見るのは初めてでしょ!!」
「そうだな、鈴の方は……。その非固定浮遊部位、それで殴られたら凄く痛そうだな」
「はあ!? 何であたしだけそんな感想なのよ! 他にないの!?」
「ほ、他か? ええーっと、後は……なんかシェンロンって聞くと、七つの玉の龍を連想するよな」
「……もういいわ、あんたに感想を求めたあたしが馬鹿だった」
「凰、お前とは今から戦う間柄だけど……同情するなあ」
『出場者は、所定の位置につけ』
 そんな、今から戦うとは思えないような会話も交わされていたけれど。織斑先生の合図で、それは止まった。いよいよ……!
「おりむーもかんちゃんも、頑張ってねー!」
 ……その時、喧騒を切り裂いて本音の声がしたような気がした。ハイパーセンサーでちょっと探してみると……いた。
一組であろう女生徒達と一緒に応援をしている。そしてすぐ近くに石坂さんや周さん、ドレさんもいた。
「一組の為に、戦う……だっけ」
 少し前に会った時、織斑君が言っていた言葉。だったら、私は――。
「私を、助けてくれた人の為に……戦う!」
 本音の言っていたように、ヒーローになれるのかどうかは解らないけど、その思いが力になると信じて。私は、試合に突入した。




『では、クラス対抗戦・一年生の部。――試合開始!!』
 千冬さんの声と共に、試合が始まり。――まず動いたのは、一夏と四組代表・更識だった。
「っと、危ない危ない」
 あたしは初っ端から放たれた荷電粒子砲を避けて、斬りかかって来た一夏を近接戦闘用の武器・双天牙月で受け止める。
この戦いで一番まずいのは、一人に集中して他の敵の事を忘れる事。ましてや……。
「やっぱり、あんたらはまずあたしを潰す気ね」
「そりゃ、この中じゃお前が一番強いみたいだからな。俺にとっても、鈴は一番の強敵だし」
 ちっ……。いくらあたしでも、複数のIS相手は厄介だ。二組の皆と、複数相手の訓練はしたけど。
一夏以外の『一機』はあまりデータが無い。……あれ?
(一夏と、更識と……!? さ、三組の機体は!?)
 いつの間にか、三組……たしか安芸野、だっけ? そいつの機体が消えていた。見えるのは一夏と、更識だけ。
ど、どういうことよ! 光学迷彩!? でも、ハイパーセンサーでも捉えられないなん……っ!
「っ!!」
 あたしは、直感的に左へ回避した。ソレと同時に、あたしのいた空間を何かが切り裂くような気配がした。
「そこっ!!」
 ステルスを警戒したのか、一夏が離れてくれたので双天牙月を振り回す。
手ごたえは無かったけど、目に見えない『何か』が動くような気配はした。……離れた、か。
「厄介な奴ね……」
 光学迷彩は、目視でさえ相手の捕捉を不可能にする。だけど、ISに積まれているハイパーセンサー。
それを使えば移動する際の空気の流れや攻撃の際の熱量、あるいは攻撃角度からの位置判断などはできる……筈なのに!!
(今までより更に進化したステルス機……それがこいつの正体!!)
 ステルス機能自体は噂に聞いていたけど、ここまで高性能だとは思わなかった。……っ!
「俺を忘れるなよ、鈴!」
「――ちっ!」
 いけないいけない、一夏への牽制も忘れては駄目だ。何せアイツの攻撃は文字通りの一撃必殺。近づけさせなければいいのだけど。
「痛っ!」
 ステルス機が、邪魔をする。一夏へ攻撃を集中させようとしても、一撃を加えて離脱して来る。
その上、更識の射線には入らないのだから性質が悪い。
「……狙い撃つ」
「っ!」
 そして、その更識の砲撃も厄介だった。日本の代表候補生らしく、射撃は精密そのもので注意しないわけにはいかない。
あのISは完成したばかりで、ほとんど動かしてない筈なのに、そんな事情を感じさせないくらいの射撃能力を持っているみたい。
今の所はあたしだけを狙っているらしく、一夏達には照準を合わせていないようだった。ったく。日本のISって、どいつもこいつも……。
「……あれ?」
 よく考えたら、一夏と更識は日本のISメーカー・倉持技研製のISで。そして安芸野は、自衛隊所属のISだって聞いてる。
って事は、あたし以外のクラス代表は全員が日本製のISを操る日本人じゃないの!? 何この疎外感!? あたしだけ中国製!?
クラス別対抗戦をバトルロイヤルにした奴、出て来い!! あと、クラス代表を譲った三組のアメリカの代表候補生も!!
「――っと」
 余計な事を考えていると、荷電粒子砲がかすった。いけないいけない。――戦闘中に余計な事は、考えない。それがあたしだ。
「手を組めばあたしに勝てる、なんて甘いのよ」
 別に国の名誉とかどうでもいいし、一夏たちが『試合に勝つために』手を組んでいるのも解る。卑怯だとか言う気は無い。
……だからといって、負けるのはあたしの趣味じゃないのよね?
「Made in Chinaを舐めるなぁぁぁっ!!」
「意味が解らねえぞ!? 何でいきなりキレてるんだ!?」
 あたしはインターフェイスを一夏に向け、衝撃砲をチャージした。空間の歪みだとかは察知できてるだろうけど、それじゃ遅い。
「ぐっ……!?」
 不可視の弾丸が、一夏に着弾した。……ちょっとだけ、嫌な気分になったけど。操縦者生命危険域まで行かない限り、大した事は無い。
「衝撃砲……まさか、ここまで完成度が高いなんて」
 更識も感心していた。少しだけ溜飲が下がるけど、まずは。
「言っとくけど、今のはジャブだからね」
 続いて、本命の一発を叩き込む。……さてと。これ以上、好き勝手はやらせないわよ!!




「あれが、衝撃砲という奴か……」
「ええ。それにしても、透明なのは解っていましたが。あそこまで砲身射角が広いとは……。
ブルー・ティアーズよりも射程が短く二門だけとはいえ、かなり広い攻撃可能範囲を持っているようですわね」
「しかし、安芸野のステルス機能も厄介だな……。それ自体は聞いてはいたが、あそこまで高性能だとは思わなかった」
「ええ。凰さんが完全に見失っていた所からしても、かなりの高性能のようですわ。そして更識さんの方も、かなりの精度のようですし」
 私やセシリアは、千冬さん・山田先生と共にアリーナの管制室にいた。今、一夏達の試合は最初の攻防が終わった所。
その攻防は、どれもこれも強敵である事をあらわすものだった。
「――だが、そろそろだろう」
 千冬さんの声と共に、三組の機体が姿を見せる。……ああ、そうか。
『姿を見せた……?』
『20秒ルール、か。ったく、厄介だよなあ』
『確か……この対抗戦でも適応されてるモンド・グロッソ公式ルール。
ステルス機能を発動した場合、それを連続発動可能なのは20秒まで。それ以上消えてたら、降伏扱い……だったか?』
『まあ、そういうことだな。――もっとも、この【御影】のステルス機能、そう簡単には破れないぜ!』
 安芸野は、一旦距離をとると加速し始めた。一体、何を……!?
『『消えた!?』』
 加速したまま、安芸野の機体は消えた。それなのに、一夏にも凰にも動きが捉えられていない。
何やら攻撃を受けたようで、体勢を崩していた。
「なるほどな。奴のステルス機能は、高速機動中にさえ働くという事か」
「あ、あれでは一夏さんがあの方に零落白夜を当てることなど……」
 セシリアは、何やら不安そうに戦況を見つめている。な、何を怖気づいているのだ! 一夏には、私達が……!
「織斑は、代表候補生のうち一人――出来れば稼働時間が上の凰を落とした上で、更識や安芸野を落とせれば勝ちだろうが。
今の状況では、そう上手くはいくまい。漁夫の利を狙うほど賢しくはなく、連中もそれはさせないだろうからな。
まあ、あの御影という機体。ステルス機能を重視するあまり攻撃力と防御力を削っているようだが……まだ隠し球はあるだろうな」
 千冬さんの声に、私は不安が高まるのを抑え切れなかった。……一夏。




「っと、危ない危ない、20秒越える所だったぜ」
「なら貰った!」
 ステルス機能が解除され。御影が、再び姿を見せた。そこに、発射待機状態だった衝撃砲が飛ぶ。――しかし。
「んじゃ次は――こいつだ!」
 御影の右腕に、楯のような物体が展開(オープン)され、衝撃砲を完全に防ぐ。その楯からは、光り輝く幕のような物が広がっていた。
「衝撃砲を弾いた……!? ま、まさかエネルギーシールド!?」
「それだけじゃないけどな!!」
 楯の一部が変形して、二本の棘が突き出される。それはまるで、スパイク・シールドのようだった。そこから紫電が迸り――。
「楯殺し(シールド・ピアーズ)!? ……ううん、違うっ!? で、電撃攻撃!?」
「正解っ!」
「うううううううっ!!」
 一気に接近し、放出された。ISのエネルギーを電力に変換し、そのまま撃つ電撃攻撃。
単純ではあるが、甲龍のエネルギーが削られた。
「ステルスだけの機体じゃない、って事!? ったく、厄介な装備を持ってるわね!!」
「あれ? ……安芸野の新装備って、スターライトみたいな長銃じゃ無かったのか?」
「私は、スラスター系だって聞いてた……」
「何を聞いてんのよ! ……まあ、あたしは荷電粒子砲系だって聞いたけど」
 安芸野の新装備の情報は得ていたようだが。三人が三人とも、誤情報をつかまされているようだった。


「ふっふっふ。一組も二組も四組も、慌てていますね」
「そうだね。私達が動いた甲斐があったというものだ」
 一年生寮の食堂で、入場できなかった生徒用に置かれているモニターより少し離れた席。
そこでは、三組のブラックホールコンビがほくそえんでいた。幸い、試合に夢中な生徒達はそれを誰も見ていないが。
「安芸野君の新装備。情報かく乱のため、様々な情報を流しましたね」
「そうだね。織斑君の零落白夜に対抗する長銃だとか、荷電粒子砲だとか。あるいは急加速装置というのもあったっけ」
「ええ。そのお陰でどうやらあの新装備『岩戸』の情報は殆ど漏れなかったようです」
「情報というもののアドバンテージは、非常に大きいのだよ。圧倒的じゃないか、安芸野君は」
「このまま行けば、勝利する事も夢ではありません。そうすれば……」
「我が三組の勝利に貢献した私達の株も上がる。他の女子に近づき、篭絡するのも簡単になるというものだ」
 そこで、二人の美少女は同じような表情になった。……ただし。
「「ぐふふふふふふふ」」
 思いっきり弛みきった邪悪な顔では、どんな美少女であれ台無しだっただろう。


「……」
 更識簪は、戦況予想を少々改めた。この戦い、最も注意すべきは甲龍、次に白式だと考えていたのだが。
御影のステルス機能は、想像以上の出来だった。実際、自分に襲いかかって来ないが安芸野将隆は確実に両者のエネルギーを削っていた。
あの新装備も、まったく予想外だった。まさか武器まで仕込んだ楯だとは。
「……なら、試してみる」
 そして、牽制と実力考察の為に荷電粒子砲『春雷』を発射する。……だが、荷電粒子砲はそのシールドにあえなく弾かれた。
「……! 対荷電粒子シールドまで!?」
「その通り! こいつには様々な防御機能を仕込んである! 白騎士からの伝統装備……荷電粒子砲対策もな!」
 高揚し、簪への反撃を仕掛けんとする将隆。――だが、それを見た『二人』はその好機を逃さない。
「潰すわよっ!!」
「ちっ!」
 強襲する甲龍だが、左手の小烏丸により双天牙月が受け止められていた。――しかしまだ敵は残っている。
「もらったああ!」
「いっ!? お、俺狙いか!?」
 白式が、急加速して甲龍の逆から仕掛けて来た。雪片弐型を展開し、一気に斬りかかる。そのまま零落白夜が発動し――。
「なっ!?」
 だが、一撃必殺の筈の零落白夜がとめられていた。……正確に言うと、新装備・岩戸の中に秘められた対抗策の一つ。
一夏の腕を、岩戸から突き出した、先端部を鋏のように設計した『腕』が押さえ込んでいたのだ。
「な、何だこれ……! た、楯から腕が生えてるのか!?」
「対零落白夜用装備、鎮腕(しずめかいな)だ。こんなので止められるんだぜ、零落白夜はなっ!」
「う、嘘だろ!?」
「アウトーリにしてもらった対織斑用の訓練が、ここまで役立つなんてな!」
 だが、零落白夜を押さえ込んだ事でごく僅かだが心理的な隙が生じた。そして、鈴はそれを見逃さない。
「隙ありっ!!」
「痛ええええっ!?」
 双天牙月と小烏丸の鍔競り合いの中で、衝撃砲が放たれた。連続して放たれる不可視の弾丸に、御影が吹き飛ぶ。
それにより鎮腕が外れ、一夏は開放された。そして御影のステルス機能が発動し、ほかの三人も距離を取る。
猫の目のように攻防が交代していった。




 アウトーリ。安芸野君からその名を聞いた途端、アリュマージュ先輩の顔色が変わった。
「アウトーリって……ロミーナ・アウトーリの事!? あのイタリアの『雪崩』使い!!」
「知ってるんですか、先輩?」
「ええ。今年イタリアから入った娘の中じゃ、相当の実力者よ。そういえば安芸野君と同じ、三組だったわね……」
 ……実は私も、その名をフランチェスカから聞いた事がある。彼女の中学時代の同級生で、近接戦闘ならトップだったと聞く。
クラス代表決定戦の際にフランチェスカが看病に行っていた相手も、彼女らしい。何でも、苺の食べすぎでお腹を壊したのだとか……。
ちなみに『雪崩』とは、彼女の得意とする高速剣撃が、まるで雪崩のように相手を一気に倒してしまうから……らしい。
多分、その高速剣撃で『刀を持っている人間の手を押さえる』という荒業の訓練をしたんだろう。
「あの子と近接戦闘訓練、かあ。……これは、ダークホースじゃないかもしれないわね」
 すっかり解説とアナウンサーが逆転しているような気がしないでもないけれど。
安芸野君の意外な実力に、私は僅かだけど高揚しているのを自覚した。
「それにしても、あの楯は一体……? 織斑君の攻撃を簡単に受け止めましたよ?」
「あれこそ複合防御防具『岩戸』よ」
「……知ってたんですか、新野先生?」
「そう。対ビームシールド、対エネルギーシールド、対衝撃装甲……色々な防護システムを組み込んだ上に武器まで内臓した楯。
『何をやってくるか外見からでは解らない』ISの攻撃に対する、一つの答えね」
「そうなのですか……あ! 安芸野君と凰さん、織斑君と更識さんが……!」
 その岩戸という新武装を再展開した安芸野君は、凰さんに勝負を仕掛けている。
そしてその二人が戦っているのを潰しあう好機と見たのか。更識さんが、織斑君に攻撃を仕掛けていた。




「ミサイルか!」
 鈴・安芸野と距離を取った俺の元に、警告音と共にミサイルが俺に襲いかかって来た。
セシリアのブルー・ティアーズ(弾道型)よりは小型だが、はるかに数が多い。
「貴方には……負けないっ!」
「っ!」
 ミサイルを雪片弐型で切り払うが、払いきれなかった一発が被弾する。小型だけど、中々の威力。……だけど、今のは。
「ミサイルが……避けた?」
 今、ミサイルの軌道が明らかに変化した。それは野球中継のリプレイで見る、変化球のようで。だからこそ、一発斬り払いそこねたのだが。
「この変化球ミサイルが、打鉄弐式の新型武装ってわけか!」
「……」
 俺の言葉には反論せず、ミサイルポッドを展開する。同時に何やら映像型キーボードを展開し、ポッドの中からミサイルが発射された。
「っ!」
 俺にとって、実弾系の射撃武器への対策は少ない。たとえばセシリアであればブルー・ティアーズで打ち落とせるだろう。
皆だって搭載されている火器で迎撃は出来る場合もある。……だが、俺は切り払うか避けるか被弾覚悟で突っ込むしかない。更に――
「くそっ!」
 避けた所にもこのミサイルは襲ってきた。今度は八発中、二発をくらってしまう。……だが、隙も見えた。
「動きが止まってるな!」
「!」
 どうやらこのミサイルの変化は、セシリアと似たような弱点を有しているらしい。
ミサイルの動きを彼女がコントロールしているのか、その動きが止まっていた。
「だったら……!」
 そして三度(みたび)ミサイルを発射してくる。今度は被弾覚悟で――。
「ありゃっ!?」
 ミサイルをくらいながらも雪片弐型を振るったのだが。あえなく避けられてしまった。
「ど、どうしてだ? 一体、なんで……」
「教えない」
 僅かに笑うような口調だった。……っ!
「一夏ぁ! あたしの相手も忘れるんじゃないわよっ!」
 衝撃砲が、俺の背後から襲いかかってきた。どうやら二門ある砲で俺と更識さんをそれぞれ狙ったらしく、命中したのは一発だけだが。
(くそっ……。かなりのエネルギーを削られちまったな……)
 はっきり言って、今のは悪手になってしまった。今の攻防で、俺だけがエネルギーを削られ。鈴と更識さんは無傷。……やばい、な。




「一夏さんっ!?」
「なるほど。どうやら更識は、複数のコントロールシステムを打鉄弐式に組み込んでいるようだな」
 一夏さんが、ミサイルを連続して被弾してしまい。それを見た織斑先生が、何かを悟られた。
「どういう事ですか、ち……織斑先生?」
「一発目と二発目は更識自身のコントロールだが。三発目は、熱源感知式か何かだろう。
『更識はミサイルを発射している間は動けない』とでも思った織斑を、見事に引っ掛けたわけだ」
 なるほど……。あの動作に、そのような駆け引きが……。
「流石は、日本の代表候補生。……只者ではありませんわね」
 完成したばかりの機体であそこまでやるとは思わなかった。……いいえ、よく考えてみればありえない事態ではない。
それは誰よりもわたくしが知っている。……そう、一夏さんもそうだったのだから。
「それにしても、安芸野の機体……あの鋏のような物体で零落白夜を止めるとは……」
「私が現役の時も、ああいう対策を取った奴はいたぞ。もっとも、私を止めることなどできなかったがな」
「織斑先生。では、どのような対策を採ったのですか?」
「聞いても、今の織斑には伝えられることでは無いが……。まあ、幾つかある。瞬時加速による回避でもいい。
あるいは、捕縛用のシステム自体を雪片で迎撃したこともあった。――変り種では、わざと捕まるというのもあったな」
 ……わざと? 何故、わざわざ――。
『まずは織斑、お前が落ちろっ! ……なっ!?』
 その思考を遮るように、安芸野さんがステルス状態での攻撃を仕掛けた。けれど慌てた声と共に、小烏丸は雪片弐型で受け止められる。
『す、ステルス機能を見破ったって言うのか!?』
『流石にそれは、正直には言えないぜ』
 そのまま零落白夜の発動。残念ながら回避されたため、エネルギーを削る事はできなかったけれど。
「やった! ステルス機能を見破りましたわ!!」
「ああ、そうだな。一夏め……。私のアドバイスを忘れてはいなかったのだな!!」
「アドバイス? ステルス機能を打ち破るアドバイスをなさったんですの?」
 好奇心半分、そんなアドバイスをしたのかという嫉妬と疑問半分で尋ねる。一体、どんな事を言ったのか……?
「簡単な事だ。こう……敵がガッ、ときた所をヒュッといけば、透明になる相手といえど倒せるだろう。
あるいは、敵がバッと来た所を狙い定めてグッと行き、ズバッと零落白夜でやってしまえばいいからな」
「……」
 どういう意味なのか。わたくしが疑問符を浮かべると、山田先生達も困惑の表情を浮かべている。ただ一人――。
「つまり、消えようとした瞬間に間合いをつめられれば当てる事も出来るということだ。
あるいは敵が攻撃を仕掛けようとした所を気配を察し、攻撃角度を読み、狙いを定めて一歩踏み出し、零落白夜で一閃。
織斑は、篠ノ之がいった後者を実践したということだ。そう言う事だろう、篠ノ之?」
「はい!」
 ……織斑先生、なんで今の言葉で解るのですか。思わずそう尋ねそうになってしまう。だけど、今の言葉は中々に重要だった。
つまりは、タイミング。先生が一夏さんに零落白夜に関する指導でも指摘された事だけど。……その重要さを改めて認識する。
「タイミング……間合いの重要さが解りますね」
「間合い、ですか」
「ああ。だからこそ、織斑にも私が直々に教えたのだ。仮にも一組の代表だ、無様な戦い方をさせられん」
 山田先生や箒さんに答える織斑先生のその眼差しはとても優しく、一夏さんと先生との強い絆を感じさせた。
そしてそれは、とても温かく心地よかったけれど。……もう、わたくしには決して得られない物だと知っているが為に。
ほんの少しだけ、織斑先生達を羨ましく思ってしまい、心が軋むのを感じた。
「何を考えている、オルコット?」
「わ、わたくしは、別に何も。……ただ、一夏さんの勝利を考えているだけですわ」
「そうか。……まあ、絆という物は途切れる事もある。だが、取り戻せる物でもあり。また新しく作れるものだぞ」
「……そう、ですか」
 先生には見抜かれていたようで、私は溜息をつく。新しく、作る。…………。
『セシリア。俺と、新しい家族の絆を作らないか?』
 い、一夏さんとでしたら、わ、わたくしは……。
「……何を考えている、オルコット?」
「何やら、呆けていたが……。何か変な事でも懸想していたのでは無いだろうな、セシリア?」
「い、いいえ! な、何でもありませんわ!!」
 気がつくと、織斑先生と箒さんが良く似た表情で私を見ていた。い、いけない、いけない。わたくしとした事が……。




「そんな馬鹿な……」
 ステルス機能は、御影の華。だからこそ今まで模擬戦でも隠してきた。使った時は、アウトーリやライアンでさえ倒せた。
なのに、織斑は数回見ただけで破るっていうのかよ!?
「これが世界最強の血って奴か……?」
 思わずそんな愚痴が出てしまう。……情けない話だ。今のは安奈さんや真里さん、クラスの皆には聞かせられないな。
奴らは、御影の真の能力には気づいてない筈だ。単なる光学迷彩じゃなく、ISそのものを騙す。それが御影だ。
……落ち着け。……落ち着け。クールになれ。自衛隊でもここでも、冷静さを保つように言われ続けてきたんだからな。
「安芸野、今度はこっちから行くぜ! 今度はさっき見たいには行かないぞ!」
 織斑が、雪片弐型という名前らしい刀剣を展開(オープン)させて攻撃に入る。だが零落白夜じゃなく、単なる物理刀状態。
どのタイミングで発動させてくるのか。それにあわせて、俺は鎮腕を準備する。
「今度は貰ったぁぁぁ!!」
 そして、物理刀が変形し始めて……今だ!
「……なんてな」
「な!?」
 鎮腕の発動に合わせ、織斑が自分の武器を収納(クローズ)した。それを理解した時には、鎮腕は止まらなかった。
鋏が自動的に織斑の腕を……いや、織斑がその左腕をわざと挟ませた。織斑の左腕と岩戸が繋がるが、右腕はフリーになる。
「や、やば……」
「貰ったぜ!」
 そして、俺の直感どおり織斑が雪片弐型を再展開する。右腕だけの片手持ちだが、それは関係ない。
とっさに避けようとするが――そもそも鎮腕により俺達は繋がれている。そんな状態で逃げても、どうにもならず。
「貰った!!」
 雪片が鎮腕を根元から切断した。本当は岩戸そのものを斬るつもりだったのだろうが、何とか最悪の事態だけは回避した――が。
「まだまだあ!!」
 解放された左腕と合わせて両手持ちに戻った刃が、岩戸を貫こうとする。しかも、今度はエネルギー刃。――零落白夜だ。
「くっ!」
 とっさに岩戸を収納し、俺はその一撃を回避……しきれなかった。
ほんの僅かではあるがエネルギー刃が届き、御影の装甲は削れなかったがダメージが来る。
「ふう。危なかったな、掠っただ……げ」
 シールドエネルギーを見ると、たったあれだけで40も減っていた。ちょっと掠っただけで、これか。
今のはちょうど肘の辺りを掠めた一撃だったから、絶対防御が発動したとはいえ……。
「くう、彼我の攻撃力差がとんでもないな」
 こっちは掠っただけで大打撃。いくらあっちのシールドエネルギーも削られるとはいえ、他に敵がいる以上は痛い事には変わりは無い。
……くっそ。厄介すぎるぜ、あの武器は。それにしても、何て対応力だよあいつは。まさか鎮腕を二回目で失うなんて……。
「ふー。とっさに閃いて収納したけど、上手くいって良かったぜ……」
 おいちょっと待て、まさか、今のはたまたまって事か。……ったく、どいつもこいつも強敵ぞろいだな。




「なるほど、御影の弱点が出たか。――いや、安芸野自身にというべきだな」
「弱点、ですか?」
 織斑先生の言葉に、篠ノ之さんが反応しました。……ああ、なるほど。
「おそらくあの機体、ステルス機能にエネルギーをかなり配分している筈だ。
しかし岩戸は電撃攻撃や対エネルギーシールドなど、かなりのエネルギーを食う装備」
「……! つまりは、同時使用が出来ないという事ですね」
「それで、ステルス機能を使った時はあの楯を使わなかった……という事ですわね」
 篠ノ之さんやオルコットさんも気付いたように。御影は、ステルス機能とあの『岩戸』の同時使用は出来ないようです。それに……。
「おそらくは、そうだろう。そして安芸野自身も、まだまだ問題がある。岩戸は片腕で扱う武器、手早い展開と収納は必須だ。
だが、奴自身もあの武装には慣れていないのだろう。だからこそ、他の武装やステルス機能との切り替えに手間取る。
そこが他の連中のつけいる隙であり、今の攻防で鎮腕を斬られた原因だ。
熟練した操縦者ならば、岩戸の収納と回避を同時にこなすが……奴にはまだ出来なかった。だからこそ回避が遅れ、削られたのだな」
 彼が高速切り替え(ラピッド・スイッチ)でも使えるなら別ですけど、新装備を入れた直後って、戸惑うんですよね。
武装が一つしかない織斑君は、この点では逆に有利なんです。さっきも、収納と展開を上手く使って鎮腕を打ち破りましたし。
「……ほう。どうやら安芸野は織斑狙いに移ったようだな。更識と凰がそれを傍から見ている……。そろそろ、決着かもしれんな」
「……?」
 そんな会話に耳を傾けていた私の視界の隅に、奇妙な表示が捉えられました。……アリーナ外で、空間歪曲? これは――。



「な、何だ!?」
「え!?」
「うおっ!?」
「……!?」
 その時、クラス代表四人全員が予期せぬ出来事が起こった。アリーナのバリアを貫いて、何かが着弾した。
その瞬間に四人がわかったのは、それだけだった。
「あ、アリーナのバリアが!? な、何なのよ一体!?」
「どうやら、ビーム兵器による砲撃みたいだけど……。何て出力……」
「お、おい! 何か反応があるぞ! 何かが……いる!!」
 今なお煙が立ち昇る着弾地点で、何かが動いた。煙の中からゆっくりと姿を見せたそれは――。
「あれは、何だ? IS…………なのか?」
「……」
 顔も含めた全身を覆う、深い灰色の装甲。つま先よりも下に伸びた長大な腕。首というものがなく、胴体と一体化した頭部。
全身に配置されたスラスター。法則性が感じられない、剥き出しのセンサーレンズ。……今までに彼らの見た、どんなISとも違っていた。
 そしてそのISは、そのまま動かない。何も言う事無く、何も反応無く。だた、その場にとどまっていた。
「何なんだ、一体……?」
「……試合は中止よ! すぐにピットに戻って!」
「も、戻れって……鈴、お前はどうすんだよ!」
「あたしはアンタ達や観客が避難するまで時間を稼ぐわ! いいから早く!」
「馬鹿言うな! お前を置いて逃げられるわけないだろ!」
「そうだぜ、凰。ISを纏ってないなら兎も角……」
「アンタら二人は素人でしょ! 更識の機体も作ったばっかりで、まだ慣熟機動は無理みたいだし!!
いいからここはあたしに任せなさいって言ってるでしょ!」
 だがその時、まるでその配慮を無視するように白式のモニターに警告の文字が表示された。
それには『警告 ステージ中央に熱源反応 所属不明ISにロックされました』とあり。
「っと!」
 白式は、正体不明のISから放たれたビームを回避する。今度はやや低出力だったらしく、アリーナのバリアは貫けなかったが。
「鈴!」
 更に続けて、甲龍に向けてビームが発射された。速射性を重視したのか、白式への攻撃よりも更に速い。
自分への攻撃を回避した白式がとっさに甲龍を抱え、発射と同時に動くことにより避ける。
幸いにも速射性重視ゆえの低出力であったため、今度も施設に被害は及ばなかったが。
「ビーム兵器……しかもアリーナのバリアを突き破る威力の奴も、そうじゃない奴も発射可能なのかよ」
「ちょ、ちょっと一夏! あんた何してんのよ!」
「あ、危ないから暴れんなよ!!」
「うるさいうるさいうるさ~~い!」
 ちょうど『お姫様抱っこ』といわれる状態で抱えられた鈴が、暴れ出す。
もっともその顔は赤く、何故暴れているのかは抱えている本人を除けば一目瞭然だった。
「おーい、じゃれ合いはそのへんにしておこうぜ」
「緊張感が無い……」
「……!」
 ステルス機能で接近した御影が一撃を叩き込み、更に『春雷』での攻撃が続いた。完全に無警戒であったのか、直撃するが。
「俺も忘れてもらっちゃ困るぜ、乱入者!」
「四対一……卑怯かもしれないけど、これ以上やらせない」
『ちょ、ちょ――待って――さい! み、皆さ――避難を! 今、教――――援に向かいます!!』
 その時、管制室から山田麻耶の声が届く。だがそれは、所々が途切れていた。
「いや、俺達で少しでも時間を稼ぎます。避難する時間なら、俺達だって稼げる」
「……ま、皆だっているし、世界中からのお客さんもいるしね」
「一人だと危険でも、四人なら何とかなるんじゃないですかね?」
「……それに、ピットに戻ろうとした所に攻撃を受ける可能性もある」
 そしてクラス代表たちも全て戦う意思を見せる。侵入者は、それに呼応するかのように、その巨体を宙に浮かせた。
『織斑君!? 凰さん!? 安芸野君!? 更識さん!? 戻って――』
『構わん、時間を稼げるなら稼いでみせろ。ただし無茶はするなよ。私は――』
 そして管制室からの通信も無くなった。不自然な箇所で終わった事からして、途切れたというのが正しいのだろう。
「ちょ、ちょっと一夏! それよりもそろそろ降ろしなさいよ! 動けないじゃない!」
「あ。悪かったな」
「……わ、悪くは無いわよ」
 そして、ずっとお姫様抱っこ状態だった鈴を一夏が放し、四機は空中で静止する。
解放された鈴が赤い顔で何かを言っていたのだが、あまりにも小さすぎてハイパーセンサーでさえも捉えられないのだった。
「なあ、皆。……こいつらを倒して、改めて対抗戦だな」
「勿論!」
「おう!!」
「うんっ……!!」
 そしてその声と共に。乱入者と、クラス代表たちとの戦いが始まったのだった。




 結局対抗戦だけで一話終了。教師サイドの対応策の結果も入れたかったけど、長くなりすぎたので流石に断念。
そしてゴーレムはアニメ版ではなく原作小説版。原作では二対一だったけどこちらでは四対一。……さーて、ゴーレムを強化しないとなぁ。


 そして御影のステルス機能は無茶苦茶強い。試合形式上は20秒限定だけど、消えたまま攻撃も可能。
そして岩戸も強い。操縦者自身はまだまだだけど。かろうじてチート……ではないはず。
これだから『アレ』は使わないのです。


 補足

○岩戸
 元ネタはガンダムSEED・ブリッツの特殊複合装備・トリケロス。各種対抗用の楯有り、鋏有り、電撃スパイク有りと使い方は幅広い。
ただし、安芸野自身がまだ使いこなしていない部分がある。


○打鉄弐式・黒金の外見
 本来の予定とは異なり、打鉄の姿にかなり近い。ただし武装は本来の物に近い。各種スペックは

・機動性  本来>黒金  やや機動性は劣る。もう一つ理由があるが、後述。
・加速力  本来>黒金  本体重量がやや増加している分、加速力も低下。
・攻撃力  本来=黒金  近接武装がオミットされているが、その分ミサイルを積んである。後述の理由も。
・防御力  本来<黒金  打鉄本来の防御力を残している。


 じつは、本編の打鉄弐式とは稼動データがやや異なる。本編では雪羅の荷電粒子砲、霧の淑女の実稼動データを入力したが黒鉄には無い。
その分、完成から決定戦までの短期間であるが実際に動かしてみてデータを採っている。
ただ時間が足りない為、攻撃力や機動性がやや劣っている部分があるのは否めない。

 といった所か。


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