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No.30054の一覧
[0] IS ―インフィニット・ストラトス クラスメートの視線―[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:41)
[1] 受験……のはずが[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:27)
[2] どんどん巻き込まれていく[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:42)
[3] ある意味、自業自得なんだけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:42)
[4] 何だかんだで頑張って[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:44)
[5] やるしかないわよね[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:14)
[6] いざ、決戦の時[ゴロヤレンドド](2012/04/16 08:11)
[7] 戦った末に、得て[ゴロヤレンドド](2014/06/16 08:01)
[8] そして全ては動き出す[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:55)
[9] 再会と出会いと[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:45)
[10] そして理解を[ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:58)
[11] 思いがけぬ出会いに[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:47)
[12] 思い描け未来を[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:48)
[13] 騒動の種、また一つ[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:49)
[14] そして芽生えてまた生えて[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:50)
[15] 自分では解らない物だけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:52)
[16] 渦中にいるという事[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:52)
[17] 歩き出した末は [ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:59)
[18] 思いもよらぬ事だらけ[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:54)
[19] 出会うなんて思いもしなかったけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:55)
[20] それでも止まらず動き出す[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:28)
[21] 動いている中でも色々と[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:00)
[22] 流れはそれぞれ違う物[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:01)
[23] ようやく準備は整って[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:01)
[24] それぞれの思い、突きあわせて[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:02)
[25] ぶつかり、重なり合う[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:56)
[26] その果てには、更なる混迷[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:04)
[27] 後始末の中で[ゴロヤレンドド](2012/11/15 08:09)
[28] たまには、こんな一時[ゴロヤレンドド](2012/11/15 08:10)
[29] 兆し、ありて[ゴロヤレンドド](2012/12/10 08:16)
[30] それでも関係なく、私の一日は過ぎていく[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:06)
[31] 新たなる、大騒動は[ゴロヤレンドド](2013/01/07 14:43)
[32] ほんの先触れ[ゴロヤレンドド](2013/01/24 15:47)
[33] 来たりし者は[ゴロヤレンドド](2013/02/25 08:21)
[34] 嵐を呼ぶか春を呼ぶか[ゴロヤレンドド](2015/08/11 08:06)
[35] その声は[ゴロヤレンドド](2013/03/26 08:05)
[36] 何処へと届くのか[ゴロヤレンドド](2013/04/03 08:02)
[37] 私を取り巻く人々は[ゴロヤレンドド](2013/04/27 09:30)
[38] 少しずつ変わりつつあって[ゴロヤレンドド](2013/05/09 11:05)
[39] その日は、ただの一日だったけれど[ゴロヤレンドド](2013/05/21 08:10)
[40] 色々な動きあり[ゴロヤレンドド](2013/06/05 08:00)
[41] 小さな波は[ゴロヤレンドド](2013/07/06 11:24)
[42] そのままでは終わらない[ゴロヤレンドド](2013/07/29 08:06)
[43] どんな夜でも[ゴロヤレンドド](2013/08/26 08:16)
[44] 明けない夜はない[ゴロヤレンドド](2013/09/18 08:33)
[45] 崩れた壁から[ゴロヤレンドド](2013/10/09 08:06)
[46] 差し込む光は道標[ゴロヤレンドド](2013/11/18 08:13)
[47] 綻ぶ中で、新しいモノも[ゴロヤレンドド](2013/11/18 08:14)
[48] それぞれの運命を変えていく[ゴロヤレンドド](2013/12/02 15:34)
[49] 戦いは、すでに始まっていて[ゴロヤレンドド](2013/12/11 12:56)
[50] そんな中で現われたものは[ゴロヤレンドド](2014/08/18 07:59)
[51] ぶつかったり、触れ合ったり[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:29)
[52] くっ付いたり、繋がれたり[ゴロヤレンドド](2014/08/18 07:59)
[53] 天の諜交、地の悪戦苦闘[ゴロヤレンドド](2014/02/28 08:27)
[54] 人の百過想迷[ゴロヤレンドド](2014/03/11 08:12)
[55] 戦いの前に、しておく事は[ゴロヤレンドド](2014/03/11 08:40)
[56] 色々あるけど、どれも大事です[ゴロヤレンドド](2014/04/14 08:34)
[57] 無理に、無理と無理とを重ねて[ゴロヤレンドド](2014/04/30 08:27)
[58] 色々と、歪も出てる[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:24)
[59] まさかまさかの[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:57)
[60] 大・逆・転![ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:59)
[61] かなわぬ敵に、抗え[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:25)
[62] その軌跡が起こす、奇跡の影がある[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:24)
[63] 思いを知れば[ゴロヤレンドド](2014/07/30 08:06)
[64] 芽生える筈のものは芽生える[ゴロヤレンドド](2014/08/18 08:00)
[65] 決意の時は、今だ遠し[ゴロヤレンドド](2014/09/03 08:13)
[66] 故に、抗うしかない[ゴロヤレンドド](2014/10/06 08:13)
[67] 捻じ曲げられた夢は[ゴロヤレンドド](2014/10/06 08:14)
[68] 捻じ曲げ戻すしかない[ゴロヤレンドド](2014/10/23 08:17)
[69] 戦う意味は、何処にあるのか[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:12)
[70] それを決めるのは、誰か[ゴロヤレンドド](2014/12/09 08:22)
[71] 手繰り寄せた奇跡[ゴロヤレンドド](2014/12/26 14:07)
[72] 手繰り寄せられた混迷[ゴロヤレンドド](2014/12/26 14:08)
[73] 震える人形[ゴロヤレンドド](2015/01/19 08:01)
[74] 対するは、揺るがぬ思いと揺れ動く策謀[ゴロヤレンドド](2015/02/17 08:06)
[75] 曇った未来[ゴロヤレンドド](2015/03/14 10:31)
[76] 動き出す未来[ゴロヤレンドド](2015/03/31 08:02)
[77] その始まりは[ゴロヤレンドド](2015/04/15 07:59)
[78] 輝夏の先触れ[ゴロヤレンドド](2015/05/01 12:16)
[79] 海についても大騒動[ゴロヤレンドド](2015/05/19 08:00)
[80] そして、安らぎと芽生え[ゴロヤレンドド](2015/06/12 08:02)
[81] 繋いだ絆、それが結ぶものは[ゴロヤレンドド](2015/06/30 12:20)
[82] 天の川の橋と、それを望まぬ者[ゴロヤレンドド](2015/07/23 08:03)
[83] 夏の銀光、輝くとき[ゴロヤレンドド](2015/08/11 08:08)
[84] その裂け目、膨大なり[ゴロヤレンドド](2015/09/04 12:17)
[85] その中より、出でし光は[ゴロヤレンドド](2015/10/01 12:15)
[86] 白銀の天光色[ゴロヤレンドド](2015/12/01 12:17)
[87] 紅と黒の裂け目の狭間で[ゴロヤレンドド](2015/12/01 12:18)
[88] 動き出したのは修正者[ゴロヤレンドド](2016/02/04 08:01)
[89] 白銀と白[ゴロヤレンドド](2016/02/04 08:02)
[90] その、結末[ゴロヤレンドド](2016/03/02 12:22)
[91] 出会い、そして[ゴロヤレンドド](2016/03/30 12:24)
[92] 新たなる始まり[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:16)
[93] 新しいもの、それに向き合う時[ゴロヤレンドド](2016/06/24 08:40)
[94] それは苦しく、そして辛い[ゴロヤレンドド](2016/08/02 10:08)
[95] 再開のもたらす波、それに乗り動く人[ゴロヤレンドド](2016/09/09 09:34)
[96] そのまま流される人[ゴロヤレンドド](2016/10/27 10:08)
[97] 戻りゆく流れの先に[ゴロヤレンドド](2017/02/18 12:02)
[98] 新たなる流れ[ゴロヤレンドド](2017/03/25 11:46)
[99] 転生者たちはどんな色の夢を見るのか[ゴロヤレンドド](2017/05/27 14:38)
[100] そして、その生をあたえたものは[ゴロヤレンドド](2017/05/27 14:36)
[101] 戦いの前に[ゴロヤレンドド](2017/09/12 15:39)
[102] 決めた事[ゴロヤレンドド](2018/01/30 15:54)
[103] オリキャラ辞典[ゴロヤレンドド](2017/09/12 15:38)
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[30054] 騒動の種、また一つ
Name: ゴロヤレンドド◆abe26de1 ID:bf927713 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/04/13 11:49
「馬鹿か貴様は」
 天網恢々疎にして漏らさず、じゃないけど。私は、寮長室に呼び出されていた。
何処かで助けを求める声が聞こえたような気がするけど、それどころじゃない。むしろこちらを助けて欲しい。
目の前の織斑先生が、本気で怒っている。……はっきり言ってしまえば怖い。勿論、自業自得である事は理解しているけど。感情は別物だ。
「何処の世界に、手伝うべき人間に喧嘩を吹っかける奴がいる。お前、責任を放棄するつもりか」
「いいえ。自分が嫌う事を自分でやるなんて気は、ありません」
「ならば、どうする気だ」
「とりあえず、布仏さんと相談して。謝罪します」
 まあ、少し質問がきつ過ぎたし。……本当に、この悪癖を何とかしないとね。
「……」
 織斑先生の目が、獲物を狙う猛禽類のように細まる。拳骨でも来るかな……?
「まあいい、更識と仲直りして奴の専用ISを何とか形にして見せろ。もし自分達だけで不可能だと思えば、我々に言え。
ただし……もしも責任を放棄するつもりならば、お前に直々に『代償』を払わせてやるか」
 と思ったら。い、いきなり地獄への扉が開いたわっ!? 確か『ここに入る者、全ての希望を捨てよ』って書いてあるんだっけ。
「現実逃避をしても、何もならないぞ。――解ったな?」
「はい……」


「んー、大変だねかなみーも」
 相変わらずマイペースな布仏さんが、羨ましかった。……まあ彼女には『代償』は無いでしょうけどね。
「もしも間に合わなかったら、打鉄かリヴァイヴに乗り換えた方が良いような気もするけど……」
 現実逃避気味に、更識さんの対抗戦の事を考えてみる。でもそうなると、日本の代表候補生が量産機で出る事になる。
専用機を持っていないのなら兎も角、持っているのにそれはまずい。ましてや二組の鳳さんは、中国の代表候補生だし。
「というか倉持技研、何やってるのよ……」
 あそこがちゃっちゃと作ってくれていれば、こんな事態にならずにすんだのに。
「んー、おりむーの機体を調べるのに手一杯なんだよ~~。なにせおりむーは、単一仕様能力まで持ってるんだし~~」
 そりゃそうだけど、そもそも白式は倉持技研で作った物なのに。何で調べるのにそんなに手間取ってるのよ?
「んー、何ていったってー、おりむーの単一仕様能力は暮桜と同じだしねー」
「それ自体、ありえないんだけどね」
 今までの常識じゃあ、単一仕様能力とは操縦者とISの最高相性が必要だった筈だ。
それなのに織斑君は、一回目の起動でそれを発動させた。その上、それは姉である織斑先生が『暮桜』で使っていたものと同じ。
違う人間、違うISなのに同じ能力なんて……兎に角、常識外れ。クラス代表決定戦の後、それを聞いたんだけど……耳を疑ったわよ。
「んー、後は噂だけどねー。倉持技研が、白式と打鉄弐式を同時に扱う余裕が無くなったって話だよー?」
「余裕が無い? 予算とか、技術者とか?」
「んー、詳しくは知らないけど。打鉄弐式がかんちゃんに未完成で預けられたのも、その所為らしいよー。
本当は、数ヶ月経ってから未完成なら預けるって話だったけどー」
「ふうん……」
 まあ、裏事情まで関わる気は無いけど。それにしても、布仏さんは結構噂に詳しいのかしらね。


「こんばんわ、かなみー」
「布仏さん……?」
 先生にはああ言ったけど、更識さんは部屋には不在で、結局部屋に戻るしかなく。
夕食もお風呂も終わった私を訪ねて来たのは、珍しいお客さんだった。だけど寮で着ているパジャマ姿ではなく、制服に着替えている。
「さー、学校に行こうかー」
「布仏さん、ついにボケた? 今は夜の七時よ?」
「解ってるよ~?」
 フランチェスカ、口に出さないの。……私も同じ事を思ったけどね。
「でも、何でこんな時間に学校に? 大丈夫なの?」
「大丈夫だよー。さあ行こうかー。お化けなんて無いさ~~♪」
 歌を歌う布仏さん。いえ、怖いのはお化けじゃなくて規律にうるさい寮長の世界最強教師なんだけど。
どうやって更識さんと仲直りするか、とかもあるし……。最後の手段としては、諦めるというのもあるんだけどね……。


 ……。幸い見咎められたりする事は無く、私達は目的地らしい部屋に着いた。そこには、生徒会室と書かれている。え、何で?
「つれて来ました~」
「いらっしゃい」
「ご苦労様、本音」
 扉が開くと、中には二人。タイの色から察するに、二人とも先輩。扇子を持った蒼髪の二年生の女子と、ファイルを持った三年生の女子。
多分、生徒会の役員なのだろうけど、二年生の方が椅子に座っているし……あれ? この二人、誰かに似ているような?
「えっと。すみませんが、どちら様ですか?」
「私は更識楯無。この学園の生徒会長をしている者よ」
「……生徒会長?」
 その蒼髪の二年生――更識先輩は、何とも言いがたい人だった。笑みを浮かべているが、隣の布仏さんのようなそれとは違う。
奥が見通せない、かといって作り笑顔でもない。……霧のような、何処か不安にさせる要素と。
でも穏やかな、人を安心させる要素を共存させた笑み。自分で言ってて、何がなんだか解らなくなりそうだけど。
「私は、布仏虚。会計を任されている者です。……ところで、相手が名乗った以上は貴女も名乗るべきではないですか?」
 一方の三年生――布仏先輩は、いかにもキャリアウーマンって感じの『出来る人』だった。かと言って冷たい感じは無く。
私にも失礼を怒っているのではなく、たしなめるように告げる。え、布仏って……もしかして、布仏さんのお姉さんなの?
顔立ちも似てるし。彼女に、こんな真面目そうなお姉さんがいたなんて……じゃなくて。
「あ、そ、そうですね。わ、私は……」
「知っているよ、一年一組宇月香奈枝さん。貴女が、織斑一夏君のIS初起動の第一発見者である事。
そして彼と四年連続で同じクラスである事、織斑君に近しい女生徒達の間で唯一の彼への好意を持っていない事もね」
「……」
 自己紹介しようとしたら、私の関わった一件を生徒会長に並びたてられた。……あれ、ちょっと待った。この人の名前って……。
「更識って、もしかして?」
「うん。私は簪ちゃんの姉。香奈枝ちゃんは、協力してくれてるんだよね?」 
「は、はい。このハンカチがきっかけで、知り合って……。それで、先生からの命令を受けて……」
 でも、喧嘩してますが。
「……!」
 あれ? ハンカチを見せた途端、今まで捕らえどころの無い笑みを浮かべていた生徒会長の顔が曇った。
「……」
 そして一瞬で笑顔に戻る。でもそれは、無理矢理に作った笑顔だった。さっきまでの笑みとは違う。何処か、痛々しい笑み。
「あの……どうかしたんですか?」
「うーん。実はこれ、私達用に作ってもらったハンカチなんだけどね……」
 そこに取り出したのは、K・Sと書かれたハンカチ。少しデザインが違うけど……K?
「デザインがちょっと気に入らなくて、お互い交換したんだけど……なあ。んー」
 あのハンカチは、会長用だったのね。それにしても、それを人に渡そうとするなんて……どうしてかしら?
ハンカチの交換も含めて、一人っ子である私にはよく解らないけど。
「……でも、持っていましたよ」
「え?」
「更識さん、そのハンカチを持ち歩いてたんです。……嫌だったら、そもそも持ち歩かないと思いますよ」
 気がついたら、私はそんな事を口にしていた。最近は織斑君たちのフォローばっかりしていた所為か、こんな言葉が自然と口に出る。
「……ありがと」
 その会長の笑みは、何処か儚くも素敵で。……その気なんか全くない私も、ドキッとしてしまった。


「なるほど、簪ちゃんの機体はそういう状況か……」
 そして。私達は、二人に更識さんの機体の今の状況を伝え終えた。
「んー、虚ちゃん。貴女の仕事を増やしてもいいかしら?」
「私でしたら、構いませんが。こちらの機体は、完成にめどがついていますし」
「布仏先輩に? それに、機体って……?」
「機体、って言うのはこっちの話。こう見えても虚ちゃんは、三年整備科の首席だし。きっと貴女の為になると思うけどな」
 主席っ!? って言う事は、オルコットさんと同じ……って考えたら、微妙に凄い事じゃないような気がしてきた。
「あら、驚かないのね? ぶー、つまらないなあ」
 いや、面白いとかつまらないとか言う話ではなく。
「んー、でも~~。かんちゃん、お姉ちゃんの手伝いはきっと嫌がるな~~」
 意外にも口を挟んだのは布仏さん。……嫌がる? 布仏先輩、更識さんと仲が悪いの?
『お姉ちゃんの手伝いは』って言うからには、単に手伝いを嫌がるっていうことじゃあなさそうだし。
「そうかもしれませんね。お嬢様の差し金、と思われるでしょうし」
 お嬢様……って、会長の事? 意味が解らないんですが。
「……もう、お嬢様は止めてよ」
「失礼しました」
 そう言う会長は、妙に元気が無い。言い終えた後に扇子で口元を隠し。それには『……』と書かれてある。
「あの。何か不都合でもあるんですか?」
「いや、その。あの子、何ていうかね? 私に対して、引け目があるっていうか……」
「つまりは、姉に……会長に対して、コンプレックスを抱いているのです」
 ……あの、布仏先輩。少し直球すぎじゃないかと思うのですが。
「んー、楯無お嬢様は国家代表だけど~。かんちゃんも代表候補生なんだしー、誇っても良いんだけどなー」
 ああ、そうなの。会長も国家代表……あれ? 今、その後に『候補生』って付かなかったような?
「あの、更識会長って……?」
「ああ、説明していなかったっけ。私、ロシアの国家代表。自由国籍保持者、って奴ね」
 自由国籍保持者って……ISの取り扱いを決めたアラスカ条約の一項にある、文字通りの何処の国の代表にもなれる人たちよね?
その中から、国家代表が選ばれるケースが存在するのは知っていたけど……。そもそも、かなりややこしい立場になっちゃうし。
そうでなくても並大抵じゃない実力と高い適性が必要だから、滅多にいるわけはない。
でも、会長が学生でありながらそうであるなら。そして国家代表ならば……更識さんがコンプレックスを持つのも無理はないわね
「あ」
 あー、何か思い出したわ。身近にいるわね、そういう人が一人。もしかしたら二人。……うん。


「それで、簪ちゃんと香奈枝ちゃんは喧嘩中なんだっけ? 事情はさっき聞いたけど」
「う……」
 私と更識さんの事情も、さっき伝えた。私が言うと公平じゃなそうだったから、布仏さんに頼んだのだけど。
「……あの子も、頑固だからなあ。一度へそを曲げちゃったら、長いわよ」
 やっぱりそうですか。何となく、そんな気はしますけど。
「まあ、そもそも今回の一件自体が無理のある話なのですが。整備科でもない一般生徒が、新規建造の手伝いというのはほぼ不可能でしょう」
「そうねえ。んー、せめて誰か専門の人でもいればいいのにね」
 そうですね……と相槌を打とうとした時。一つのアイディアが浮かんだ。……聞いてみようかしら。
「――あの、布仏先輩。もしよろしければ、私達を指導してくださいませんか?」
「指導?」
「はい。私達はまだまだ力不足です。先輩の指導を受ければ、もう少し彼女の役に立てるようになるでしょうし」
 本当なら、先輩が直接協力できればいいんだろうけど。それは出来ないみたいだし。
私はデータスキャン関連くらいしか役に立てそうな技術が無いし。
「んー、いいアイディアだと思うな~~」
「確かに、いいアイディアでしょう。しかし簪お嬢様は、それすらも会長からの助力と考えて拒む可能性もありますよ?」
 三年主席だけあって、先輩は即座に問題点に気付いたようだった。私達が指導を受けるのはいいだろう。
でも殆ど無知な筈の私が更識さんにいきなり適切なアドバイスを行えば、誰かが手伝っているのは明白。そしてそれは誰なのか。
それくらい、彼女は見抜いてしまうだろうから。
「ええ、だから直接言います。私達の事、全部。更識会長が妹さんの機体を完成させたがってます、って」
 嘘をつきとおせるとは思えないし、ばれた時が怖い。だったら、最初からハッキリと言ってしまおう。
「ちょ、ちょっと待って。そ、それはちょっと不味いかな~~、なんて……」
 と、やや慌てた表情で会長が口を挟んできた。
「わ、私の名前出されると、おねーさん、ちょっと困っちゃうんだけどなあ?」
「今更ですよ、会長。――それだけで断るなら、宇月さんも楽なのでしょうけど」
「で、でも。正直に言って、簪ちゃんが納得するのかなあ?」
「はい。だから、賭けを持ちかけます」
「賭け?」
「布仏先輩の指導を受ける前に、彼女に言います。もしも先輩に合格点を貰ったら手伝わせてほしい、って」
「……へえ。そっちも最初に言う気なんだ?」
 はい。
「それに乗ってくれたら、勝算はあります。――後は、私と布仏さんの努力次第ですけど」
「ふむ。簪ちゃんを、挑発するわけね。へー。ふむふむ、なるほどねえ……」
 意外そうな顔をしながら、更識会長は思案している。――と。扇子が開き、そこには『可能性有り』と書いてあった。
思うのだけど、いつの間に交換してるんだろう……?
「のるかもしれないわねえ」
 悪戯好きな子供のような笑みを浮かべる会長。……少し早まったかな、と思ったけど。今更止められない。
「どうでしょうか。……布仏先輩、お願いできますか?」
「心得ました。それと、ややこしいので私の事は虚で構いませんよ」
「それじゃー、よろしくねーお姉ちゃーーん」
「はい、よろしくお願いします。虚先輩」
「解りました。しかし時間があまり無い以上、かなりの集中講義になりますが。宜しいですね?」
「はい。それに、こうなった以上はやり遂げてみせます」
「……ふう。それにしても、貴女は意外と大胆なのね」
 少しだけ、更識会長が目を丸くした。まあ、私にも意地があるのだしね。
「はい。私はこれでも、一般中学からIS学園を狙うような人間なので。それに……」
 最初は気が乗らなかったけど、少しづつ事情も解ってきたような気がするし。
「更識さんが、何故機体を一人で完成させようとしてるのかも、何となく解りましたし」
 それによく考えてみれば、これはチャンスかもしれない。専用機の建造に関わるなんて、普通なら望んでも叶わない事。
なのに、一年生の私がそれに関われる。こじつけだけど、ポジティブに考えてみた。
……まあ、成功しなくても良い経験にはなりそうだし。問題は、織斑先生がどういう風な評価を下すかだけど……。
「そうだねー。かんちゃん、お嬢様を見てたから専用機を自分で作りたくなったんだしね~~」
「う……。私だって、虚ちゃんや薫子ちゃんに手伝ってもらったんだけどなあ」
 ……はい?
「あ、あのー。もしかして、会長は自分のISを……」
 国家代表なら、間違いなく持ってるだろう専用機を。
「自分で組んだわよ? 今言ったとおり、友人二人に意見を聞いたり手伝ってもらったけど。薫子ちゃんの事は知ってる? 新聞部の」
「は、はい。黛薫子先輩の事ですよね。何度かお話をした事があります。クラス代表決定戦の時も、お世話になりましたし」
 天才がここにいた。てっきり『専用機を一人で組み立てたら姉に勝てる!』って感じだと思ったら。追いつける、だけだったのね。
「凄いですね……」
「でも、七割方出来てたからよ? 私がしたのは、仕上げの部分だけ」
 そうは言うけど。多分、妹さんには通じません。
「では明日の放課後、こちらに来てください。ノートやその他記録媒体、IS技術系の教科書は忘れないように」
「解りました。では、失礼します」
 そう一礼し。
「あれ、布仏さんは戻らないの?」
「んー。私は生徒会の役員の仕事があるからね~~。まだ戻っちゃ駄目だってお姉ちゃんが……かなみー?」
 ……いけないわね、疲れすぎなのかしら。幻聴が聞こえてきたわ。
「えっと。布仏さん、何て言ったっけ?」
「生徒会の、仕事があるんだよ~~」
 ……。落ち着こう。布仏さんが、生徒会役員? ……え。
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?」
「な、何でそこまで驚くの~~!?」
 夜も遅いというのに、私は絶叫した。ちなみに更識会長は扇子を口に当てて笑っていて。虚先輩は溜息をついていた。
……。結局、私は布仏さんに平謝りで許してもらい(代償は一週間、昼にケーキを奢る事)。彼女達を残し、私は生徒会室を出るのだった。




「さて、と。もう演技はいいでしょうか」
「ええ。それにしても、意外とやる気だったわね」
「くたびれた~~」
 香奈枝の退室後、私達は安堵していた。それにしても香奈枝ちゃんは、無関係なのに『こちらの狙い通りに』指導を願い出てきたわね。
本音ちゃんはともかく、彼女に簪ちゃんの機体を完成させなければならない義理なんて無いのに。
「中学の人物調査では、一度引き受けた事は無理にでもやり遂げたがる性格のようですから。
少々不自然なこの一件も、やり遂げたいと思っているのでしょう。それを利用させてもらうのは、少々心苦しいですが」
「そうね。……でも、出来るかしら」
 正直な話、クラス対抗戦までに打鉄弐式を完成させるのはかなり困難だろう。……勿論、人材が今のままでならだけど。
「会長。無理矢理にでも介入した方が宜しいのでは? 私なら、時間はありますが」
「うーん、でもね。幾ら私でも、そこまでしたらかえって逆効果になるような気がするのよ。
織斑先生だって、織斑君は一生徒として扱ってるしね。深夜特訓だって、彼からの要請があったからこそみたいだし」
 ――ああ、我ながらなんて下手な嘘だろう。……本当の理由は私の臆病さだ。いつの頃からだろうか。
私とあの子を周囲が比べだし、それがあの子の重荷になり出したのは。
 ……私も、何かすればよかったのかもしれない。やってあげたい事もいっぱいあった。だけど、私自身が手を貸せば。
あの子からすれば『自分の事で手一杯な妹に対する、余裕綽々な姉のお情け』にしかならなかっただろう。
そして気がつけば、会話すらろくに出来なくなった姉妹の出来上がりだった。
「……」
「何か?」
「ううん、何でもないわ」
 隣にいる虚ちゃんは、妹である本音ちゃんと普通の姉妹関係を築いている。状況の違いなど、様々な要因はあるだろうけど。……羨ましかった。
「てひひー。それじゃあ、お待ちかねの~~。ご褒美ケーキタイム~~♪」
「……」
「うええええっ……。いたあ……」
 虚が音も無く本音ちゃんに近寄ると、握った拳がそのまま妹の頭に振り落とされた。とても痛そうな音が響く。
「本音、すこしは自重なさい。いくら演技の褒美といっても、これはお嬢様が……」
「良いのよ。食べちゃっても」
「うあーいっ!」
 喜色満面で皿とケーキを取り出す本音ちゃんと、しょうがないですね、と言った感じの。でも、優しい目で妹を見る虚ちゃん。
……それが、見ていられなかった。妹の為に買ってきた筈のケーキを、渡す事さえ出来なかった私には。


「ところで、簪ちゃんは『アレ』を聞いたの?」
「んー、ちゃんと朝のうちに伝えたんですけど~~」
「そう……。やっぱり駄目だった、か」
 アレ――私の考えた、打鉄弐式の作成プラン。クラス対抗戦がバトルロイヤルになると知り。
空き時間を利用して、技術的にも時間的にも実現可能な計画を立てた。それを参考にでもなれば、と本音ちゃんに渡したのだが。
「かなみーも、それで怒っちゃったし~~。大変でした~~」
「本音……? まさか貴女、宇月さんの前であのプランを発表したの?」
「ち、違うよ~~。かなみーが、偶然同じような事を口にしたんだよ~。伝えたのは、朝ってさっき言ったよ~~」
「ふむ、結構勉強しているのかしら。それとも偶然?」
「どちらにせよ、中々鍛えがいのある人のようですね。楽しみです」
 ふむ……。ここに一般中学から入れるくらいだから、そうとうな努力を積んだんでしょうけど。
かなりのハードコースになりそうよね。まあ、これも努力したら出来ると思うけど。
「ところで会長。彼女を取り巻く事情について、本人に説明いたしますか?」
「んー、その辺りは織斑先生と相談しないとね。何処まで話して良いのか、決めておかないと」
 香奈枝ちゃん自身は夢にも思ってないだろうけど、実は彼女自身も色々な所からマークされている。
所謂『将を射んとせばまず馬を射よ』だ。彼の周りに居る中で、まず『馬』になりうるのが彼女なのだから。
「承知しました」
 僅かに微笑む虚ちゃん。――と、その話題が別の事に切り替わった。言われなくても、目を見ればわかる。
「……そういえば会長。あの申し出を、受けるおつもりですか?」
「ええ。一年生があれだけ頑張ってるんだもの、生徒会長の私が頑張らないわけにはいかないじゃないの」
「そうですか。では当日までに、完全に仕上げるとしましょう」
「えー、何の話ー?」
「こっちの話よ。――というか口をふきなさい、クリームが付いてるわよ?」
 さて、と。忙しくなりそうねえ?




「――なるほど、な。連絡ご苦労、布仏。事情に関しては、今はまだ隠しておく事にする」
 生徒会室の布仏虚から、寮監室の織斑千冬への電話。それは宇月香奈枝と布仏本音が彼女の指導を受けるとの連絡だった。
「それにしても布仏はともかく宇月が、な。そこまでやるとは少々行き過ぎかもしれんが……。脅しが効きすぎたか?」
 三年主席の在籍する生徒会や、少しだけ関わった経験のある新聞部への協力を願い出るのは千冬も想定内だったが。
香奈枝達が指導を受けて更識簪に協力する、というのは行き過ぎの感もあった。
もしかするとその一因が自分の発言にあるのかもしれない、と思い当たり、頭を悩ませる。
彼女自身としては香奈枝が『何もやらない』限りは、制裁を下す気など無かったのだが。
「やれやれ、思いがけず厄介な事になるな。まあ、仕組んだのはこちらなのだから文句の持っていき所も無いが」
 もっとも、整備課や布仏虚らの協力を更識簪が受け入れるならこんな企ても必要ないのだがな、と心中で続ける。
……宇月香奈枝と布仏本音を四組に派遣したのは、色々な理由が重なったからだった。列挙していくと。

・打鉄弐式の完成と、更識簪の意識改革
・どうしても地味になりがちな整備という一面のアピール
・四組の一部から起こりつつあるという、一組への不満解消

 などがある。一部には

・宇月香奈枝を織斑一夏の(=白式の)専属スタッフとして成長させる目論見
・日本の代表候補生である簪と、織斑一夏の架け橋になって欲しい……という政府関係者の皮算用

 もあるというが。そして、千冬自身としては別の目論みもあった。
「あいつらも、宇月無しで上手くやれるようにならねばならんしな」
 あいつら、とは織斑一夏、篠ノ之箒、セシリア・オルコットだった。香奈枝を加えた四人がグループ化しつつあるが。
箒とセシリアが一夏に好意を持っているため激突する事が多く、その仲裁役が香奈枝になっている。
今はそれほど大きな揉め事も少なくなり、安心してみていられたのだが。
「オルコットだけではまず終わらないだろうからな」
 一夏のフラグ成立能力を考えると、他の女子がこの輪に加わる事も考えられた。事実、転入生の凰鈴音がその輪に入りかけている。
クラス対抗戦終了までは少し距離を置くらしいが、それが終われば間違いなく加わってくるであろう事が予想されていた。
そうなると、香奈枝だけで上手く回っていくのかどうか解らない。だからこそ、今のうちに一夏を『鍛えて』おく必要があった。
「ISを扱う事についてならば、私が一声かければすむ話だが……。恋愛沙汰に関してはな……」
 本来ならば恋愛禁止、とでもいえば済む話だがそれで事は済まない。男性でありながらIS操縦適性を保持する一夏。
そんな彼を、色仕掛けで堕とそうとする国が出てきても不思議ではないのだ。そんな輩に対処する為には。
「一夏自身にも、しっかりしてもらわねばならん。あいつ、女を見る目がまるでないからな」
 その原因の一つが自分である事を自覚しながらも。彼女は溜息をつくのだった。


「それにしても宇月は、根を詰めすぎるタイプだとは思っていたが。ここまで、とはな」
 色々と重なる事情に翻弄されつつも、自分からその解決に向かう意思のある香奈枝。だからこそ、一夏達の仲介も。
そして今回の一件も任せようとしたのだが。
「ギリギリまで、奴は私や整備課に頼ろうとはすまい。――さて、どう手を打ったものかな。
報酬……で動くタイプではなさそうだが、あまり奴ばかりに関わってばかりもいられないしな……」
 自分の弟の一件の第一発見者であり、個人的にもある程度親しい彼女は、すでに政府にさえマークされている。
そんな彼女を、どうするべきか。必要以上の事情は説明しないつもりだったが、方向転換する必要があるのか。頭を悩ませる千冬だった。




 7割以上が香奈枝の視点。うん、減らしたいんだけど減らせない。何だこのジレンマ(A.作者の構成力不足)


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