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No.30054の一覧
[0] IS ―インフィニット・ストラトス クラスメートの視線―[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:41)
[1] 受験……のはずが[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:27)
[2] どんどん巻き込まれていく[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:42)
[3] ある意味、自業自得なんだけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:42)
[4] 何だかんだで頑張って[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:44)
[5] やるしかないわよね[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:14)
[6] いざ、決戦の時[ゴロヤレンドド](2012/04/16 08:11)
[7] 戦った末に、得て[ゴロヤレンドド](2014/06/16 08:01)
[8] そして全ては動き出す[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:55)
[9] 再会と出会いと[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:45)
[10] そして理解を[ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:58)
[11] 思いがけぬ出会いに[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:47)
[12] 思い描け未来を[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:48)
[13] 騒動の種、また一つ[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:49)
[14] そして芽生えてまた生えて[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:50)
[15] 自分では解らない物だけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:52)
[16] 渦中にいるという事[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:52)
[17] 歩き出した末は [ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:59)
[18] 思いもよらぬ事だらけ[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:54)
[19] 出会うなんて思いもしなかったけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:55)
[20] それでも止まらず動き出す[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:28)
[21] 動いている中でも色々と[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:00)
[22] 流れはそれぞれ違う物[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:01)
[23] ようやく準備は整って[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:01)
[24] それぞれの思い、突きあわせて[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:02)
[25] ぶつかり、重なり合う[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:56)
[26] その果てには、更なる混迷[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:04)
[27] 後始末の中で[ゴロヤレンドド](2012/11/15 08:09)
[28] たまには、こんな一時[ゴロヤレンドド](2012/11/15 08:10)
[29] 兆し、ありて[ゴロヤレンドド](2012/12/10 08:16)
[30] それでも関係なく、私の一日は過ぎていく[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:06)
[31] 新たなる、大騒動は[ゴロヤレンドド](2013/01/07 14:43)
[32] ほんの先触れ[ゴロヤレンドド](2013/01/24 15:47)
[33] 来たりし者は[ゴロヤレンドド](2013/02/25 08:21)
[34] 嵐を呼ぶか春を呼ぶか[ゴロヤレンドド](2015/08/11 08:06)
[35] その声は[ゴロヤレンドド](2013/03/26 08:05)
[36] 何処へと届くのか[ゴロヤレンドド](2013/04/03 08:02)
[37] 私を取り巻く人々は[ゴロヤレンドド](2013/04/27 09:30)
[38] 少しずつ変わりつつあって[ゴロヤレンドド](2013/05/09 11:05)
[39] その日は、ただの一日だったけれど[ゴロヤレンドド](2013/05/21 08:10)
[40] 色々な動きあり[ゴロヤレンドド](2013/06/05 08:00)
[41] 小さな波は[ゴロヤレンドド](2013/07/06 11:24)
[42] そのままでは終わらない[ゴロヤレンドド](2013/07/29 08:06)
[43] どんな夜でも[ゴロヤレンドド](2013/08/26 08:16)
[44] 明けない夜はない[ゴロヤレンドド](2013/09/18 08:33)
[45] 崩れた壁から[ゴロヤレンドド](2013/10/09 08:06)
[46] 差し込む光は道標[ゴロヤレンドド](2013/11/18 08:13)
[47] 綻ぶ中で、新しいモノも[ゴロヤレンドド](2013/11/18 08:14)
[48] それぞれの運命を変えていく[ゴロヤレンドド](2013/12/02 15:34)
[49] 戦いは、すでに始まっていて[ゴロヤレンドド](2013/12/11 12:56)
[50] そんな中で現われたものは[ゴロヤレンドド](2014/08/18 07:59)
[51] ぶつかったり、触れ合ったり[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:29)
[52] くっ付いたり、繋がれたり[ゴロヤレンドド](2014/08/18 07:59)
[53] 天の諜交、地の悪戦苦闘[ゴロヤレンドド](2014/02/28 08:27)
[54] 人の百過想迷[ゴロヤレンドド](2014/03/11 08:12)
[55] 戦いの前に、しておく事は[ゴロヤレンドド](2014/03/11 08:40)
[56] 色々あるけど、どれも大事です[ゴロヤレンドド](2014/04/14 08:34)
[57] 無理に、無理と無理とを重ねて[ゴロヤレンドド](2014/04/30 08:27)
[58] 色々と、歪も出てる[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:24)
[59] まさかまさかの[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:57)
[60] 大・逆・転![ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:59)
[61] かなわぬ敵に、抗え[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:25)
[62] その軌跡が起こす、奇跡の影がある[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:24)
[63] 思いを知れば[ゴロヤレンドド](2014/07/30 08:06)
[64] 芽生える筈のものは芽生える[ゴロヤレンドド](2014/08/18 08:00)
[65] 決意の時は、今だ遠し[ゴロヤレンドド](2014/09/03 08:13)
[66] 故に、抗うしかない[ゴロヤレンドド](2014/10/06 08:13)
[67] 捻じ曲げられた夢は[ゴロヤレンドド](2014/10/06 08:14)
[68] 捻じ曲げ戻すしかない[ゴロヤレンドド](2014/10/23 08:17)
[69] 戦う意味は、何処にあるのか[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:12)
[70] それを決めるのは、誰か[ゴロヤレンドド](2014/12/09 08:22)
[71] 手繰り寄せた奇跡[ゴロヤレンドド](2014/12/26 14:07)
[72] 手繰り寄せられた混迷[ゴロヤレンドド](2014/12/26 14:08)
[73] 震える人形[ゴロヤレンドド](2015/01/19 08:01)
[74] 対するは、揺るがぬ思いと揺れ動く策謀[ゴロヤレンドド](2015/02/17 08:06)
[75] 曇った未来[ゴロヤレンドド](2015/03/14 10:31)
[76] 動き出す未来[ゴロヤレンドド](2015/03/31 08:02)
[77] その始まりは[ゴロヤレンドド](2015/04/15 07:59)
[78] 輝夏の先触れ[ゴロヤレンドド](2015/05/01 12:16)
[79] 海についても大騒動[ゴロヤレンドド](2015/05/19 08:00)
[80] そして、安らぎと芽生え[ゴロヤレンドド](2015/06/12 08:02)
[81] 繋いだ絆、それが結ぶものは[ゴロヤレンドド](2015/06/30 12:20)
[82] 天の川の橋と、それを望まぬ者[ゴロヤレンドド](2015/07/23 08:03)
[83] 夏の銀光、輝くとき[ゴロヤレンドド](2015/08/11 08:08)
[84] その裂け目、膨大なり[ゴロヤレンドド](2015/09/04 12:17)
[85] その中より、出でし光は[ゴロヤレンドド](2015/10/01 12:15)
[86] 白銀の天光色[ゴロヤレンドド](2015/12/01 12:17)
[87] 紅と黒の裂け目の狭間で[ゴロヤレンドド](2015/12/01 12:18)
[88] 動き出したのは修正者[ゴロヤレンドド](2016/02/04 08:01)
[89] 白銀と白[ゴロヤレンドド](2016/02/04 08:02)
[90] その、結末[ゴロヤレンドド](2016/03/02 12:22)
[91] 出会い、そして[ゴロヤレンドド](2016/03/30 12:24)
[92] 新たなる始まり[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:16)
[93] 新しいもの、それに向き合う時[ゴロヤレンドド](2016/06/24 08:40)
[94] それは苦しく、そして辛い[ゴロヤレンドド](2016/08/02 10:08)
[95] 再開のもたらす波、それに乗り動く人[ゴロヤレンドド](2016/09/09 09:34)
[96] そのまま流される人[ゴロヤレンドド](2016/10/27 10:08)
[97] 戻りゆく流れの先に[ゴロヤレンドド](2017/02/18 12:02)
[98] 新たなる流れ[ゴロヤレンドド](2017/03/25 11:46)
[99] 転生者たちはどんな色の夢を見るのか[ゴロヤレンドド](2017/05/27 14:38)
[100] そして、その生をあたえたものは[ゴロヤレンドド](2017/05/27 14:36)
[101] 戦いの前に[ゴロヤレンドド](2017/09/12 15:39)
[102] 決めた事[ゴロヤレンドド](2018/01/30 15:54)
[103] オリキャラ辞典[ゴロヤレンドド](2017/09/12 15:38)
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[30054] 思い描け未来を
Name: ゴロヤレンドド◆abe26de1 ID:bf927713 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/04/13 11:48
 どんな時も、朝は来るわけで。今、私達のクラスには世界最強の教師がいた。
「さて、HRを始める。――まず最初は、伝達事項だ。織斑。お前も参加するクラス対抗戦に、変更があった」
「変更?」
「そうだ。今まではリーグマッチだったが、今年のみは全クラスの代表が一堂に会してのバトルロイヤル形式になる」
「バトルロイヤル?」
「そうだ。四人のクラス代表が、一気に戦う事になる」
 いきなりの発言に、クラス中が驚きに包まれる。な、何で?
「先生。何故今年のみ、そのような変更がなされたのですか?」
「昨日、三組の現在のクラス代表が正式に転入生へのクラス代表移譲を認めた。転入前だというのにな。
この結果、今年は一年生のクラス代表全員が専用機持ち、という異例の事態になった。
例年ならば専用機は一機か二機、後の代表は打鉄などの量産機を使用する場合が殆どだったが、今回はそれらが一機もない。
全て専用機、それも最新式の第三世代……あるいはそれに相当する代物ばかりだ」
「そ、それはそうですけれど。それがどうしてバトルロイヤルに繋がるのですか?」
「最新型ISの実力が異例の状況下において何処まで発揮できるか……というデモンストレーションの意味もあるのだろう。
この状況なら三対一の協力体制を取らせる事も可能……つまりは実力と経験に置いて抜きん出ている二組代表の一人勝ちを防ぐ為もある。
はっきりと言ってしまえば効果があるとは思えんし、そもそも褒められた事ではないがな。総当り戦の方が賢明だろうに」
 バトルロイヤル……ねえ。まあ、一撃必殺タイプの織斑君ならむしろラッキーなのかもしれない。
相手を三回倒すだけではなく、弱った所を通常攻撃で狙う戦法も取れるから。集中砲火を受けたらすぐに沈むだろうけど。
「眠い……」
 昨日、あまり眠れなかった。最近溜め込んでいた録画ドラマを見ていたら、時間が遅くなって。
その所為で目が冴えてしまい、睡眠不足と言う結末だった。まあ、100%自業自得だけど。
早朝に出会った篠ノ之さんも似たような感じだったけれど、彼女は朝錬をしたら眠気は消えたらしい。
うう……眠い。あくびなんか出来ないのに。割と本気で、命に関わる事態になるかもしれないのに……。
「それと、もうひとつ。一組に対し、四組への協力要請があった」
「協力要請?」
 何を協力するというんだろう……。まずいわ、あくびが出そう……。うう、もう限界かも……。
「四組代表の専用機の完成に向けて、人員を派遣する。布仏、宇月。お前達がその担当だ」
「は~~い」
 ……。眠気が、一気に吹きとんだ。布仏さんは呑気に返事をしているけど。
「先生。何故私達なのでしょうか?」
「先方から指名があった。布仏は四組代表・更識との個人的な親しさや、それなりに独習している点を考慮されたのだろうな」
 布仏さん、独習もしてたの? ……まあ、彼女はどうやら四組の代表である更識さんの知り合いらしいし、順当な所だろうけど。
「そして宇月。このクラスで一番データ収集に長けているのは、現時点ではお前だ。お前が選ばれたのは、その点を鑑みられたのだろうな」
「……あの、そもそも何故四組の生徒ではなく一組の私が? しかもデータ収集って……」
 実力が評価された(?)のは嬉しいですけど。四組だって、そういう生徒はいるんじゃないでしょうか?
「データ収集も重要だぞ。ちゃんとしたデータが取れなければ、しっかりとした設定など覚束ないだろう」
「そ、それはそうかもしれませんけど……」
「後は……そうですね。一週間前の関心度チェックで、二人は整備方面の関心が高かったのも理由かもしれないですね」
 山田先生が追撃をしてきた。……まあ、一年の五月でもう整備方面に関心のある人って少ないと思う。地味といえば地味なのだし。
代表候補生以外は団栗の背比べ状態だろうし、この学園で実力を高めて専用機を持ちたい、って思っている娘が大半で。
最初から整備を目指そうとするのは、確実に少数派だろう。……でも、それでも私が選ばれた理由が解らない。 
幾ら整備に関心のある人が少ないっていっても、学年全体では私達以外にもまだいるんじゃ……。
「まあ、お前が困惑するのも無理は無いが、これも経験と思って受けてみろ」
「頑張ろーね、かなみー」
 というか、先生に言われた織斑君達への緩衝役はどうするんでしょうか。そんな事を指摘する間もなく、授業へと移っていくのだった。


「はあ……。また厄介ごとが増えたわ……」
 机に倒れこみそうになるのを、何とか避ける。そんな私の所に、織斑君達がやってきた。
「大変だな、宇月さん」
「そもそも、四組代表のISを開発しているのは倉持技研だと聞いた事があるのですが。何故、宇月さんや布仏さんが加わるのです?」
「何? という事は宇月や布仏は、倉持技研に行くのか?」
「違うよ~~」
「違う? どういう意味だ、のほほんさん?」
 いつものようにゆっくりと歩いてくる布仏さんが否定する。……あれ、違うの? 私もそう思ってたんだけど。
「倉持技研に行くんじゃなくて、学校の中でだよ~?」
「……お待ちなさい、布仏さん。まさか四組代表の方と言うのは、自分でISを組み立てようとしているというのでは無いでしょうね?」
「そうだよ~?」
「……あ、ありえませんわ」
「そういう噂は聞いた事があるけど、本当だったんだねー」
「うんうん。最初は本当かなって思ってたけど……」
 オルコットさんが唖然とした表情になる。他のクラスメート達も、同じような表情。
「それって、とんでもない事なのか?」
「そうですわね……。例えるならば、家を自分一人で建てるようなものでしょうか」
「そ、そうなのか……。でも、何でのほほんさんや宇月さんなんだろうな」
「そうですわね。一応説明はありましたが、やはり不自然ですわ」
 皆もやはり不思議そうだけど。それを世界で一番強く思っているのは、この私よね。
「あー、私はちょっと用事があったよ~~。それじゃ~、さよならなのだ~~」
 袖を振りながら、布仏さんは教室を出て行った。……少しだけ早足だけど、どうしたんだろう? 次は移動教室じゃないし……。
「トイレかな? ――ぐはっ!?」
「貴様は、もう少しデリカシーという物を理解しろ」
「暴力はいけませんが……同感ですわね」
 織斑君がデリカシー皆無の発言をして、篠ノ之さんに制裁を受け。オルコットさんが呆れる、といういつもの流れだった。


 色々と言いたいことはあるが、先生からの指示に拒否権はあるわけも無く。放課後、更識さんがいると言う整備室へと向かっていた。
「ねえ、布仏さん」
「何~~?」
「更識さんって、どんな娘なの? 何が趣味だとか……」
「んー、かんちゃんは、ヒーロー番組とか好きだよー?」
「ヒーロー? ウルト○マンとか、仮面○イダーとか?」
 一時期、お母さんが見てたから知っている。もっとも、お母さんの目的はイケメン俳優だったけど。
「そんな所かなー。勧善懲悪が好きだけど~~。あ、かんちゃんのお姉さんは浦島太郎が好きだったっけ~~」
 ……どうしてなのかしら。質問をして答えを得たはずなのに、もっと解らなくなったような気がするのは。


「やっほー、かんちゃん!」
「どうも……こんにちわ」
 整備室では、何体ものISとそれを修理している上級生達がいた。その一角には、一体のISの前に齧り付いている更識さんがいたけど。
「かんちゃーん、手伝いに来たよー?」
「……」
 彼女は、こちらを全く見ようともしない。……彼女にとっては、不本意なのかしら。
「かーんちゃん」
「ひゃっ!?」
 しびれを切らしたのか、あるいは天然か(多分後者)。作業を一段落した更識さんの耳に、息を吹きかける。
「ほ、本音……。こういうのは、止めて……」
「だってー。かんちゃん、返事もしてくれないんだから、仕方がないよー」
「――あの。こんにちわ、更識さん。ハンカチ、ありがとう」
「……」
 私はそう言いながら割り込み洗濯したハンカチを差し出すけど、彼女は受け取ってくれない。
布仏さんの態度といい、今の彼女といい。何かあるのかしら?
「んー、じゃあかなみー。そのハンカチ、借りていていーと思うよー」
「え? ……あ、うん。じゃあ、借りておくわよ、これ?」
「……」
 布仏さんのフォローもあったけど。彼女は、何も答えなかった。
「え、えーーっと。そのIS、名前は何ていうの?」
「……打鉄弐式」
 話題を変えようとしたら、あっさりと乗ってくれたけど。……え?
「これ、打鉄なの?」
 日本の量産型ISである打鉄。篠ノ之さんが使うし、パンフレットにも載っているから馴染みは深いけど……。
目の前のそれは、鎧武者といった感じの打鉄とは大きく違う機体だった。全体的に細く、スマートな形。
ガード重視というよりは、機動性重視に近いような印象を受ける。カスタム機?
それとも『弐式』っていうからには、新規開発機なの? 学園で広く使われている、ラファール・リヴァイヴみたいに……。
「あれ、これって機体は出来てるの?」
「……機体は三割だけ。武装も、実戦の稼動データも無い……」
 つまり、機体自体があと七割。当然ながら実戦は無理って事?
「……とりあえず、何からすれば良いのかしら」
 私のかわれたのはデータ収集なのだから、その系統が良いのだろうけど。実際の所はどうなんだろう……。
「……別にいい」
「はい?」
 と思っていたら、思い切り拒絶された。
「打鉄弐式は、一人で完成させるから」
「かんちゃん……」
 いや、一人でってね。そもそもISって、一人で出来るような物じゃないでしょ。……それに。
「無理ね。私達にその選択肢は選べないの」
「……どうして?」
「織斑先生から『四組代表の機体が完成しなければ、貴様らの評価に影響する』って言われてるの。
貴女にとっては不本意かもしれないけど……実はこれ、私達自身の為でもあるのよ」
 あの時の織斑先生は、本当に鬼に見えた。……なんか、あの人らしくなかったけどね。
何かと不自然なこの一件、先生にとっても不本意な何かがあったのかな。学園の上などからの、命令だとか?
「……だったら、私だけで機体を完成させて。それに貴方達も手伝ったって伝える」
 それはそれで助かるけど。
「無理よ。どうせ詳細を報告してレポートで出すように言われるだろうし。それに、日本代表候補生にも興味ないわけじゃないし」
「……じゃあ、荷物運びだけしてもらう」
「良いわよ」
 最後のは、少し付け足しだったけど。まあ、一歩前進……かな?


「それで更識さん。どういうISを組むの?」
 どんな機材やパーツを持ってくるのかにも必要だし、ね。
「……」
 無言でデータウィンドウを展開し、こちらに送る更識さん。えっと……。
「機動性重視……。それに64発のミサイルロックオンシステム……薙刀状のブレード、小口径の荷電粒子砲もあるのね」
 機体としての評価は兎も角、あと数週間で、一年生三人で新しいISを組む。……無理すぎるわこれ。
付け焼刃の知識しかない私でも、その位は解る。データスキャン位しか役立てそうに無い私なら、なおの事だ。
「じゃあ、何から持ってくるの?」
「これを」
 とはいえ、乗りかかった船だし。私は更識さんから部品リストを見せてもらい、資材室へと調達に向かうのだった。


「布仏さん、そっちはどう?」
「んー、見つかったよー」
 資材室には、それこそ山のようにIS用パーツがあった。装甲板、配線などなど……もって行く物を二人がかりで抱え、カートに積んでいく。
資材室のカートには動力があるから、乗せてしまえば整備室まで運ぶのは楽なのだけど。
「あれ? どうして貴方達がここにいるの?」
「あれ……黛先輩? こんにちわ」
「こんにちわー」
 声がかけられたので振り向いてみると、そこにいたのはISスーツ姿の新聞部副部長・黛先輩だった。って、布仏さんも知り合いなの?
「こんにちわ、二人とも。でもどうしたの、こんな所に。織斑君の手伝い?」
「いえ……織斑君じゃなくて、四組代表の更識さんの手伝いです」
「え? 何で一組の貴方達が?」
「実は……」
 ……。黛先輩に事情を説明すると、先輩は考え込むような表情になる。
「んー、それってかなり無理があるわよ。何か他に理由があるのかな……?」
 多分、裏の事情とかを考えているんだろう。先輩がそこまで首を突っ込む気なのかはわからないけど。
「まあそれはさて置き。もし何かあったら、頼ってくれてもいいわよ?」
 そういうと、先輩は自信あり気に胸を張った。まあ、手助けしてくれるって言ってるんだし。邪険には出来ないわよね?
「はい、その時が来たらお願いします」
 そう言って、先輩とは別れた。……ちなみにその直後、布仏さんから黛先輩が二年整備科のエースだと聞いたのだけど。
私は自分の見る目の無さに少し気落ちし、先輩に心中で謝罪した。山田先生もそうだけど、人は見かけによらないのよね。


「持ってきたわよ」
「お待たせー」
「……ご苦労様」
 黛先輩と話した分は少し遅れたけど、彼女は端的に礼を言うと、私達が持って来た部品を受け取った。
それをチェックしつつ、打鉄弐式に取り付けるべく加工していく。
「……」
「はむはむっ♪」
 そして私と布仏さんは、それを眺めているだけだった。布仏さんは、お菓子をつまみながらだけど。
「……ふう」
 装甲板を一枚取り付けて、更識さんが一息つく。僅かなズレでも許されないらしく、緊張していたのだろう。
でもこのペースで行ったら、絶対に間に合いそうにない。
「あの、更識さん。――どういう建造スケジュールを組んでるのかだけでも、教えてくれない?」
 間に合うのか、とは言えないのでこう尋ねてみる。今度も空中投影ディスプレイでデータだけが『飛んで』きたのだけど……。
「え?」
 完成予定は、早くても七月末。しかもこれは戦闘プログラムの作成だとかコアの適性値だとかなんだとか……。
全てが予想通りにいった上での結果だった。つまり、クラス対抗戦には絶対に間に合いそうに無いという事。
あのー。幾らなんでもこれはまずいんじゃない? 私達も困るし、四組も困るのよ、これ?
「……」
 私が視線を向けても、集中している彼女からの返事は無い。……どうするのよ、これ。
「……とはいっても、どういえば良いんだろう」
 困った事に、私には『これじゃ間に合わない事』は解っても『じゃあどうすれば良いのか』というアイディアがない。
受験勉強、そして授業でISの事を学んでいるとはいえ。こんな事態に対応できる知識は、私の中にはほとんど無い。
違うアイディアが無いのに反論だけするなんて嫌だし……えっと。えーーっと。
「――あ。元が打鉄なら、そのデータを丸ごと入れて、ガード重視で組んだ方が早くないかしら?」
 一か八かで、そう言ってみる。確か、打鉄同士ならデータ交換も簡単に出来る……って一昨日の授業で言ってたし。
「――! それじゃ駄目!」
 ……驚いたわ。更識さん、こんな大声も出せるんだ。でも何でそこまで拒絶するの?
「んー、私も~~。さっきも言ったけど、次のクラス対抗戦はガード重視の方が良いと思うなー」
 予想外の援護射撃がきた。大声を出した事で、彼女は動揺してるみたいだし。これで……あれ? 何で『さっきも』なんて――。
「……別に良い」
 と思ったら、素に戻られて予想外の一言がきた。……何それ?
「……ねえ、更識さん。……貴女、誰?」
「かなみー……?」
「……何を?」
「誰だ、って聞いてるの」
 ……ヤバい、感情が抑えきれない。でも。
「……更識、簪」
「で?」
「……どういう意味?」
「日本代表候補生……っていうのは、何処へ行ったの? 四組代表、っていうのは?」
「わ……私は、別に……」
 ええ、解ってるわ。日本代表候補生はどうか知らないけど、クラス代表の方は貴女の意思じゃない事くらい。……でも、ね?
「選ばれたんなら、その責任を果たしなさいよ。じゃなきゃ、他の人間に譲りなさい。二組代表は、転入生に譲ったらしいわよ?」
 私の好きになれないタイプ。それは、自分のやるべき事をやろうとしない人間だ。マニフェストを守らない政治家。
公職なのに公私混同する公務員。複数の異性から好かれてるのが『理解できている』のに、ちゃんと返事を出さない人とかね。
ちなみに唐変木である織斑君は、これらの一歩手前だ。まあ『好きになれない』であって、憎しみだとかを持つレベルじゃないのだけど。
「そもそも、どうして専用機を一人で作り上げようなんて考えてるの?」
 どうしても聞いておかなければならない疑問を解き放つ。これを聞かないと、話が始まらないし。
専用機完成が遅れているから、というのは『自分一人』で作り上げようなんて理由にはならない筈だし。
「貴女には、関係……」
「もう私にとって、貴女の専用機は関係ある事よ。――理由を、教えて」
「……」
 更識さんは、口を開かない。適当に誤魔化すわけはないと思っていたけど、口を開かないのは……?
「言えない理由なの? それとも、言いたくないの?」
 この辺りで止めておくべきだ。理性はそう告げるけど、止まらない。むしろ、もっと危険な言葉が浮かんでくる。
「布仏さんから聞いたんだけど、貴女はヒーローが好きなのよね? 負った責任を果たさないのは、ヒーローじゃないんじゃない?」
「……!」
「貴女がISを一人で作り上げたい理由、それって功名心じゃないわよね? この学年には世界唯一の男子や、IS開発者の妹がいるけど。
他国の代表候補生だとか、そういった特殊な人達に負けたくないっていう対抗心じゃ――」
「――っ!」
 ないのなら、教えてと続けようとした瞬間。
「か、かんちゃん……」
 ……乾いた音がして。私は、更識さんに頬を叩かれていた。
「何も……何も、知らないくせにっ!」
 ……涙。叩いた方が泣いてる、ってどうなのよ。……何処か他人事のように考えていた。
「――じゃあ、話してよ。貴女がどうしてもそれを完成させたい理由」
「……っ!」
「か、かんちゃーん~!!」
 涙をハンカチ――私に渡したのとは全く別物の、ヒーロー物のハンカチで拭くと。彼女は一度も振り向かずに走り去った。
布仏さんもそれを追っていく。……あーあ、やっちゃった。オルコットさんの時といい。私って、短気よね……。




「……」
 どうしようか、この状況。
「だからあんたらは引っ込んでてよ。あたしは一夏に話があるんだから。昨日はゴタゴタしてて出来なかった分、教えてあげられるし」
「お前は二組だろうが! 一夏と戦う間柄なのだぞ!!」
「そうですわ! スパイのつもりですの!?」
 放課後。いつものように箒・セシリアと共に特訓に入ろうとしていると、そこに鈴が乱入してきた。
模擬戦形式で教えてあげる、と言う鈴に二人が噛みついたわけだが。ちなみに、宇月さんは四組代表の元に行ってるのでいない。
「特訓くらい、別に良いような気もするが……」
「馬鹿者! 戦う前に手の内を明かす奴があるか!
宮本武蔵とて、巌流島で佐々木小次郎と戦う際に、船中で木刀を櫂より作ったというではないか!」
 む、確かに一理あるな。
「別に一夏の手の内なんて、隠さなくても知ってるわよ? 千冬さんと、暮桜と同じ力を持ってるんでしょ?」
「ぐぬぬ」
 ……って、知られてたのか。まあ、無理も無いけど。
「だ、だがお前は、一夏の太刀筋などは知らんだろう。……一夏は、中学時代は剣道をやっていなかったようだしな」
「ぐ……」
 お、今度は箒がやり返した。……まあ、確かに。鈴は、箒とは違って俺が剣道をやる姿はほとんど見た事無い筈だ。
箒達が引っ越してから、俺や千冬姉も通っていた、箒の親父さんがやっていた道場も閉鎖された。
その頃から、俺は忙しくなっていた千冬姉の代わりに家事に力を入れるようになって剣を握らなくなり。
俺達が中学に入った頃に警官だった人が道場を引き継いだんだけど、その時の俺は家事とバイトに忙しかったしなあ。
「い、一夏の事は知らなくても、千冬さんの動きはモンドグロッソで見た事あるわよ? 一夏と千冬さんの剣って、同じなんでしょ?」
「あら、そうとは限らないのではなくて? 暮桜と白式は武装は同じとはいえ、各種ステータスから見れば全く別の機体なのでしてよ?
多少に通っている部分はあるでしょうけれど、織斑先生と一夏さんの動きは違うのではないでしょうか?」
 鈴も反論するが、今度はセシリアが迎撃に入った。口調は丁寧だけど、迫力が凄い。周囲が、少し引いてるくらいだ。
しかし、セシリアが箒の援護に入るなんてなあ。あのクラス代表決定戦の後からだろうか、対立したりいがみ合う事があったけど。
どういう風の吹き回しだろうか?ひょっとして『お前を倒すのはこの俺だ』のパターン……なわけないか。
だいたい、何の為に箒とセシリアが争う事があるって言うんだよ。……ん、今何か呆れた視線が向けられたような?
「一夏! あ、あんたはどうなのよ! あたしと訓練したくないの!?」
「一夏! お前に手の内を明かす余裕など無いぞ!」
「一夏さん! はっきりと断ってください!」
「うーん……」
 そして、とうとう俺が決断を迫られた。確かに、鈴と訓練した方がいい気もする。
未完成だと言う四組、そして素人同然の俺。そして今ひとつ不明だが『代表候補生の専用機持ち』ではないらしい三組。
クラス対抗戦の本命は、千冬姉も言っていた通り間違いなく鈴だ。その手の内を少しでも明かせるならそれでもいい。
俺の実力アップにも繋がるのだし。――だけど。箒の言うように、俺自身の手の内も読まれる事は間違いない。
ましてや、あの階段付近での反応速度だとかを見る限り、鈴はかなりの実力者だ。下手をすれば、鈴は実力を隠したまま。
俺だけが手の内を読まれるなんて事にもなりかねない。そうなったら本末転倒だし、間違いなく俺は負ける。
「……」
 果たしてどっちがいいのか。……そんな俺の脳裏に、応援してくれたクラスの皆の顔が浮かんだ。


「鈴……今回は、遠慮してくれないか?」
 俺は、応援されている以上は勝ちたい。ここで、鈴に手の内を読まれるわけにはいかないんだ。
「え……。な、何でよ……。あたしだけ、仲間はずれ?」
「そんなんじゃねえよ。これもクラス対抗戦が終わるまでの辛抱だからさ。
それが終わったら、再会祝いも兼ねて何処か遊びに行こうぜ? レナンゾスとか、良いんじゃないか?」
「え!? そそそ、それってデー……」
「中学時代の友達も呼んだら、皆驚くし。きっと楽しいぜ? あ、そういえば弾とか女子の友達にはもう連絡したのか?
お前が帰ってきたって知ったら、皆きっと喜ぶぜ? 俺も、久しぶりに会いたくなったぜ……あれ?」
 鈴は悲しそうな顔から笑顔になったのに、すぐに不機嫌な顔になるんだ? 逆に箒とセシリアは、ムッとなった後にホッとしてるし。
「……良いわ、だったら一つ賭けをしましょうよ?」
「賭け? 何だよそれ。俺、賭け事弱いぞ?」
 と言うか、何故このタイミングで賭けをするんだ?
「良いでしょ! するの、しないの?」
「どんな賭けだよ?」
「あんたとあたし。クラス対抗戦で勝った方が、負けた方に一つだけ何でも言う事を聞かせられる!! ってのはどう?」
「良いぜ」
 俺は、負けられない。だったらその賭けは、乗るしかない。もっとも……。
「バトルロイヤルなんだが、俺もお前も勝てなかったらどうするんだ? 三組や四組のクラス代表が勝ったら……」
「はんっ! 素人のあんたや他のクラスにあたしが負けるとでも? まあ、気になるなら『先にダウンした方が負け』でも良いけど?」
「ああ、それで良い」
「じゃあ賭けは成立ね! 首を洗って待ってなさいよ!!」
 ……そういうと、鈴は疾風のように去った。早いなあ、あいつ。
「い、一夏。大丈夫なのか、あんな賭けをして……」
「大丈夫だって。俺が負けなきゃ、俺の勝ちなんだからな」
「そ、それはそうだが……」
「おいおい、心配すんなよ。命取られるわけじゃないんだし」
「そうですわ、一夏さんが勝たれればそれで良いのです。一対一ではない戦い、というのはISに置いては少々特殊な経験ではありますが。
一対多を念頭に置かれた第三世代兵装搭載の機体、ブルー・ティアーズを駆るこのわたくしが、多数の敵との戦いについて……」
「……ええい、私も腹を括った!! お前に、刀の特性と使い方を徹底的に仕込んでやる!! 覚悟しておけ!!」
「わ、わたくしを無視しないで頂けますか!? い、一夏さん!!」
「いや、俺は聞いてるって!!」
 ああ、何でここまで混乱するんだ。宇月さん、早く帰ってきてくれーー!!



「どうして――あんな事、したんだろう」
 更識簪は、自室でシャワーを浴びていた。思うのは、自分が頬を叩いた女子の事。

『だったら、理由を教えてよ』

 その目は、とても真剣だった。彼女の姉の事を知らないのか、純粋に疑問に思っている声。……しかし、話せなかった。
「私は……」
 自分だけでISを完成させる。その目標を達成する為には、クラス対抗戦など邪魔なだけだった。
各組に分散された代表候補生である事が理由で押し付けられた、その程度にしか思っていなかった。――だけど。

『選ばれたんなら、その責任を果たしなさいよ』
『負った責任を果たさないのは、ヒーローじゃないんじゃない?』

 責任。その言葉が、発言者の意図以上に更識簪にショックを与えていた。
「ヒーローなら……責任を果たせるのかな……」
 彼女は、勧善懲悪のヒーロー物が好きだ。自分の力を正しく使い、人々を守るヒーロー。
だが今の彼女とヒーロー達とで決定的に違う点がある。ヒーロー達は、どんな境遇でも戦い続ける点だった。
それは、ヒーローとして力を得た『責任』を果たしているといえた。なのに、自分は。

『功名心じゃないわよね? 対抗心じゃ――』

「違う……違うっ!!」
 本当は、そんなのじゃない、と言いきりたかった。ヒーローどころか、三下の悪役のような理由。そんな理由じゃない――筈だった。
でも、あの言葉を言われた瞬間に心の中によぎった事。自分と姉とを比べる、周囲への鬱屈した感情。姉の影からの脱却。
――その根底に、対抗心が無いわけじゃなかった。同級生への、ではないが。香奈枝の言葉は、一部正解だったのだ。
「何で……何で、私は……!!」
 自分が嫌になる。みっともなくて、醜くて。自分が好きになれない自分。思考が、どんどんマイナスへと落ち込み――
「かーんちゃん」
「ひゃうっ!?」
 その声は、布仏本音。簪の幼なじみにして、専属のメイドでもある少女だった。織斑一夏の「のほほんさん」という呼び名がピッタリな少女。
そんな彼女が、何故か簪の部屋のシャワールームへと入ってきたのだった。
「ほ、本音……? な、何でここに――」
「裸の付き合いだよー。昔は、一緒にプールやお風呂に入ったしー」
「そ、それは……で、でもなんで……? か、鍵はかけたのに……」
「てひひー。かんちゃんのルームメイトの、いっしーに頼んだんだよー」
「い、石坂さん……」
 この場にはいないルームメイトに文句を言いたくなる簪だった。だが、その幼なじみはお構い無しにくっ付く。
「……かんちゃん、泣いてたのー?」
「っ! な、泣いて、なんか……」
「んー。かなみーは、今は織斑先生に呼ばれて寮長室だよー?」
「……え? な、何で……」
「かんちゃんと喧嘩をしたって情報が、すぐに流れたんだよー。それで、呼び出されたんだよー」
「あの子には……関係ないのに」
「んー。でもかなみーは、しょうがないかって言ってたよー?」
「しょうが、ない?」
 簪には解らなかった。無理矢理自分に協力するように言われた彼女。それで呼び出しをくらったのに。
「……。かんちゃん、かなみーはねー? ただ、自分のやるべき事をやりたいだけの人なんだよー。それは、解って――」
 本音の言葉は、シャワールームが閉められる音に遮られた。追おうとする本音だが、ドア越しに聞こえた『声』にその手が止まる。
そして簪のルームメイトの帰室まで、そのまま過ごすのであった。



 何か香奈枝視点が異常に増えた。――少しは減らすべきだろうかと思ったり。
SSのテンプレとも言えるほど使用される「一夏以外の簪への協力」イベント発生。さてどうなるやら。



・没ネタ

「ほ、本音……? な、何でここに――」
「裸の付き合いだよー。昔は、一緒にプールやお風呂に入ったしー」
 思い切り抱きつく本音だが。――簪の顔が、何故か暗くなった。
「あれー? かんちゃん、どうしたのー?」
「な、何でもないから……。こ、ここから出て行って」
「えー。裸の付き合いも、悪くないよー」
 ぎゅっと背中から幼なじみを抱きしめる本音。だが。
(ほ、本音……。また、大きくなってる……)
 その大きな膨らみが簪に当たっているのは、まるで気付いていないようだった。それが、当てられている本人が落ち込む原因となっている事も。
(何で、同い年なのに……)
 以前のデータでは、1カップ違っていた。アンダーバストも違うので単純比較は出来ないが。2㎝から3㎝は違う計算になる。
「かんちゃん、どうしたのー?」
「な、何でもない……。お、お願いだから出て……え?」
 いって、と続けようとした振り向いた瞬間。簪の腕が、本音の胸に当たった。本来ならば故意でなくても謝る所なのだが。
「……」
 ――ぷるん。そんな擬音がつくくらい、当たった胸が大きく揺れた。当てられていた感触から推測するよりも、大きめである。
「ほ、本音? ……今、何㎝くらいあるの?」
「えー? えーっとねー」
 何でそんな事を聞いたのか、彼女は後に後悔する。……ちなみに本音の回答は、簪との差が2カップに広がった事を証明するものだった。



 没にするしかないよなあ、このネタ。でも思い浮かんだので使う、私は謝らない!!


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