<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.30054の一覧
[0] IS ―インフィニット・ストラトス クラスメートの視線―[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:41)
[1] 受験……のはずが[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:27)
[2] どんどん巻き込まれていく[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:42)
[3] ある意味、自業自得なんだけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:42)
[4] 何だかんだで頑張って[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:44)
[5] やるしかないわよね[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:14)
[6] いざ、決戦の時[ゴロヤレンドド](2012/04/16 08:11)
[7] 戦った末に、得て[ゴロヤレンドド](2014/06/16 08:01)
[8] そして全ては動き出す[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:55)
[9] 再会と出会いと[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:45)
[10] そして理解を[ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:58)
[11] 思いがけぬ出会いに[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:47)
[12] 思い描け未来を[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:48)
[13] 騒動の種、また一つ[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:49)
[14] そして芽生えてまた生えて[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:50)
[15] 自分では解らない物だけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:52)
[16] 渦中にいるという事[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:52)
[17] 歩き出した末は [ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:59)
[18] 思いもよらぬ事だらけ[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:54)
[19] 出会うなんて思いもしなかったけど[ゴロヤレンドド](2013/04/13 11:55)
[20] それでも止まらず動き出す[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:28)
[21] 動いている中でも色々と[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:00)
[22] 流れはそれぞれ違う物[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:01)
[23] ようやく準備は整って[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:01)
[24] それぞれの思い、突きあわせて[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:02)
[25] ぶつかり、重なり合う[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:56)
[26] その果てには、更なる混迷[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:04)
[27] 後始末の中で[ゴロヤレンドド](2012/11/15 08:09)
[28] たまには、こんな一時[ゴロヤレンドド](2012/11/15 08:10)
[29] 兆し、ありて[ゴロヤレンドド](2012/12/10 08:16)
[30] それでも関係なく、私の一日は過ぎていく[ゴロヤレンドド](2013/04/13 12:06)
[31] 新たなる、大騒動は[ゴロヤレンドド](2013/01/07 14:43)
[32] ほんの先触れ[ゴロヤレンドド](2013/01/24 15:47)
[33] 来たりし者は[ゴロヤレンドド](2013/02/25 08:21)
[34] 嵐を呼ぶか春を呼ぶか[ゴロヤレンドド](2015/08/11 08:06)
[35] その声は[ゴロヤレンドド](2013/03/26 08:05)
[36] 何処へと届くのか[ゴロヤレンドド](2013/04/03 08:02)
[37] 私を取り巻く人々は[ゴロヤレンドド](2013/04/27 09:30)
[38] 少しずつ変わりつつあって[ゴロヤレンドド](2013/05/09 11:05)
[39] その日は、ただの一日だったけれど[ゴロヤレンドド](2013/05/21 08:10)
[40] 色々な動きあり[ゴロヤレンドド](2013/06/05 08:00)
[41] 小さな波は[ゴロヤレンドド](2013/07/06 11:24)
[42] そのままでは終わらない[ゴロヤレンドド](2013/07/29 08:06)
[43] どんな夜でも[ゴロヤレンドド](2013/08/26 08:16)
[44] 明けない夜はない[ゴロヤレンドド](2013/09/18 08:33)
[45] 崩れた壁から[ゴロヤレンドド](2013/10/09 08:06)
[46] 差し込む光は道標[ゴロヤレンドド](2013/11/18 08:13)
[47] 綻ぶ中で、新しいモノも[ゴロヤレンドド](2013/11/18 08:14)
[48] それぞれの運命を変えていく[ゴロヤレンドド](2013/12/02 15:34)
[49] 戦いは、すでに始まっていて[ゴロヤレンドド](2013/12/11 12:56)
[50] そんな中で現われたものは[ゴロヤレンドド](2014/08/18 07:59)
[51] ぶつかったり、触れ合ったり[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:29)
[52] くっ付いたり、繋がれたり[ゴロヤレンドド](2014/08/18 07:59)
[53] 天の諜交、地の悪戦苦闘[ゴロヤレンドド](2014/02/28 08:27)
[54] 人の百過想迷[ゴロヤレンドド](2014/03/11 08:12)
[55] 戦いの前に、しておく事は[ゴロヤレンドド](2014/03/11 08:40)
[56] 色々あるけど、どれも大事です[ゴロヤレンドド](2014/04/14 08:34)
[57] 無理に、無理と無理とを重ねて[ゴロヤレンドド](2014/04/30 08:27)
[58] 色々と、歪も出てる[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:24)
[59] まさかまさかの[ゴロヤレンドド](2014/07/30 07:57)
[60] 大・逆・転![ゴロヤレンドド](2015/01/19 07:59)
[61] かなわぬ敵に、抗え[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:25)
[62] その軌跡が起こす、奇跡の影がある[ゴロヤレンドド](2014/07/19 14:24)
[63] 思いを知れば[ゴロヤレンドド](2014/07/30 08:06)
[64] 芽生える筈のものは芽生える[ゴロヤレンドド](2014/08/18 08:00)
[65] 決意の時は、今だ遠し[ゴロヤレンドド](2014/09/03 08:13)
[66] 故に、抗うしかない[ゴロヤレンドド](2014/10/06 08:13)
[67] 捻じ曲げられた夢は[ゴロヤレンドド](2014/10/06 08:14)
[68] 捻じ曲げ戻すしかない[ゴロヤレンドド](2014/10/23 08:17)
[69] 戦う意味は、何処にあるのか[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:12)
[70] それを決めるのは、誰か[ゴロヤレンドド](2014/12/09 08:22)
[71] 手繰り寄せた奇跡[ゴロヤレンドド](2014/12/26 14:07)
[72] 手繰り寄せられた混迷[ゴロヤレンドド](2014/12/26 14:08)
[73] 震える人形[ゴロヤレンドド](2015/01/19 08:01)
[74] 対するは、揺るがぬ思いと揺れ動く策謀[ゴロヤレンドド](2015/02/17 08:06)
[75] 曇った未来[ゴロヤレンドド](2015/03/14 10:31)
[76] 動き出す未来[ゴロヤレンドド](2015/03/31 08:02)
[77] その始まりは[ゴロヤレンドド](2015/04/15 07:59)
[78] 輝夏の先触れ[ゴロヤレンドド](2015/05/01 12:16)
[79] 海についても大騒動[ゴロヤレンドド](2015/05/19 08:00)
[80] そして、安らぎと芽生え[ゴロヤレンドド](2015/06/12 08:02)
[81] 繋いだ絆、それが結ぶものは[ゴロヤレンドド](2015/06/30 12:20)
[82] 天の川の橋と、それを望まぬ者[ゴロヤレンドド](2015/07/23 08:03)
[83] 夏の銀光、輝くとき[ゴロヤレンドド](2015/08/11 08:08)
[84] その裂け目、膨大なり[ゴロヤレンドド](2015/09/04 12:17)
[85] その中より、出でし光は[ゴロヤレンドド](2015/10/01 12:15)
[86] 白銀の天光色[ゴロヤレンドド](2015/12/01 12:17)
[87] 紅と黒の裂け目の狭間で[ゴロヤレンドド](2015/12/01 12:18)
[88] 動き出したのは修正者[ゴロヤレンドド](2016/02/04 08:01)
[89] 白銀と白[ゴロヤレンドド](2016/02/04 08:02)
[90] その、結末[ゴロヤレンドド](2016/03/02 12:22)
[91] 出会い、そして[ゴロヤレンドド](2016/03/30 12:24)
[92] 新たなる始まり[ゴロヤレンドド](2016/05/12 12:16)
[93] 新しいもの、それに向き合う時[ゴロヤレンドド](2016/06/24 08:40)
[94] それは苦しく、そして辛い[ゴロヤレンドド](2016/08/02 10:08)
[95] 再開のもたらす波、それに乗り動く人[ゴロヤレンドド](2016/09/09 09:34)
[96] そのまま流される人[ゴロヤレンドド](2016/10/27 10:08)
[97] 戻りゆく流れの先に[ゴロヤレンドド](2017/02/18 12:02)
[98] 新たなる流れ[ゴロヤレンドド](2017/03/25 11:46)
[99] 転生者たちはどんな色の夢を見るのか[ゴロヤレンドド](2017/05/27 14:38)
[100] そして、その生をあたえたものは[ゴロヤレンドド](2017/05/27 14:36)
[101] 戦いの前に[ゴロヤレンドド](2017/09/12 15:39)
[102] 決めた事[ゴロヤレンドド](2018/01/30 15:54)
[103] オリキャラ辞典[ゴロヤレンドド](2017/09/12 15:38)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[30054] 思いがけぬ出会いに
Name: ゴロヤレンドド◆abe26de1 ID:bf927713 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/04/13 11:47
「何か二組、凄い盛り上がってたよ……」
「あの中国の娘、結構強そうだったよね……」
「そういえばさ、昨日階段で……」
 一組では、昨日とは一転してクラス対抗戦への不安が囁かれていた。二組と三組の転入生。それらが原因である事は間違いないけど。
「場の空気が変わっているな」
「全く……。周囲の意見に流されて自分の意見が変わるとは、情けないですわ」
 それには同意するわ。でもこのクラスの過半数を占める日本人は、そういう気質なのよね。
「まあ、いきなり敵のランクが上がったから無理も無いわね。勿論、私も織斑君に勝って欲しいけど」
 主に、デザートパスのために。体重を気にしないといけないけど、この学園のデザートは豪華絢爛の一言だし。
試しに食べてみた抹茶ケーキ、本当に美味しかったし。……あ、涎が出そう。
「というか織斑君、勝たなかったらクラスの半分以上から無視されるかもね」
「そこまで酷いのか!?」
「冗談よ」
「酷い冗談だな……」
 リラックスさせるつもりで冗談を飛ばす。……少なくとも、織斑君のジョークよりは上手いつもりだけど。
「心配はいりませんわ。たとえあの方が中国代表候補生であれ、このセシリア・オルコットが一夏さんのコーチなのですから」
「そうだぞ、たとえどのような強敵であれ、最初から勝つ気で行かなくてどうする。
同じ代表候補生であるオルコットとの戦いの際は、ISに僅かしか乗らなかったにも関わらず引き分けられたのだ。自信を持て」
「そ……そ、そうですわ、ね……ほほほ」
 少なくとも、この二人だけは絶対に織斑君を見捨てたりはしないわよね。……オルコットさん、微妙に顔が引き攣ってるけど。
「セシリア、箒……。そうだな。俺には応援してくれるクラスメイトが、仲間がいるんだもんな」
 ……そのクラスメイト・仲間、って言う言葉。私に対しては間違って無いけど、そこで二人ほど溜息ついてるわよ?


「……ん?」
 昼休み、食事を終えた私はトイレにいた。当然ながら個室なんだけど、壁越しに声が聞こえてくる。
「ねえねえ聞いた? 二組と三組の転入生の話。最悪よね、デザートパスは夢のまた夢か……」
「聞いた聞いた。二組は中国代表候補生の専用機持ちで、三組は男子の専用機持ちなんて……。しかも一組は織斑君だし……」
「たった一週間で、英国代表候補生と引き分けたんでしょ? あーあ、うちは代表候補生でも、アレだし……」
 どうやら、四組の生徒達みたいね。でも四組だって専用機持ちの筈……あ、開発途中とか言う噂だったかしら?
「げ、やっば……」
「あ……さ、更識さん!?」
 ……更識?
「い、今のは何でもないのよ! あ、貴女が四組の代表だからって、そんな……」
 どうやら『更識』と言うのが四組代表の名前らしい。そしてその悪口を言っていたら、当人に会ったのか。タイミングが悪いわね……。
「それじゃあたし達、クラスに戻ってるから! じゃあ!」
 かなりバツの悪そうな雰囲気で、愚痴っていた女子は去っていったみたい。……よし。
じゃあ、ウェットティッシュで後始末も済んだし、手を……あ゛。
「……」
 なるべく、何気ないフリをしてトイレを出ると、そこには蒼のセミロングの髪の女子がいた。一人だけだから、間違えようが無い。
この娘が、四組代表ね……。あまりジロジロ見るのも失礼だし、顔を覚えるだけに留めておく。今はそれどころじゃないし。
「……あの、更識さん」
 私は、初対面の彼女に話しかける。あっちはまた何か言われるのか、と思ってるんだろうけど。
「ウェットティッシュか何か、持ってない? スカートが濡れちゃったんだけど、ハンカチ、忘れちゃって」
「え?」
 我ながら、最悪な事態だった。ハンカチは昨日洗ったばかりで。新しいのを出し忘れていたんだった。ウェットティッシュは使い切ったし。
まあトイレットペーパーで拭く、という手もないわけじゃないんだけど……。
「……これ」
 そういうと、更識さんはハンカチを貸してくれた。……あら、結構良い人かな?


 ……そして無事に濡れた箇所を拭き終え、私は彼女に向き合った。
「ありがとう。これ、洗って後日返しに行くわ。……4組で、良いんでしょ?」
「別にいい。貴方にあげる」
 いや、流石にそれは……。これ、まだ殆ど使ってない――と言うか、新品じゃないのこれ? それに。
「そ、それはちょっとまずいわよ。こんな高そうな物、貰えないわ」
「貰い物だから、別に……」
「いやそれ、なおの事まずいから」
 しまった。初対面の女子に、普通に言葉を遮ってツッコミを入れてしまったわ。
織斑君達に付き合う中で、会話を無理矢理止める技術は無駄に磨かれてるものね、私……。
「……」
 更識さんは『何この人?』と言いたそうな冷たい目で見ている。まずい、わよね。
「あれ~? かんちゃんと、かなみーだ~~?」
 と、そこにムードブレイカーな布仏さんがやって来た。こういうときは、彼女のマイペースさがありがた……って、あら?
「本音……? 貴女、本音の知り合いなの?」
「布仏さん、知り合いなの?」
「うん~。かなみーはクラスメイトだし~~。かんちゃんは私の仕えるお嬢様なのだ~~」
 ……仕える? お嬢様?
「へえ。更識さんって、上流階級の出身なんだ」
「……っ!」
 と、更識さんは脱兎の如く走り去った。後に残されたのは、私と布仏さん。……何かまずい事を言ったの?
一組でいうとオルコットさん(イギリス貴族)みたいな感じなのかな、ってニュアンスだったんだけど。
「行っちゃったわね。どうしようかしら、これ。……あれ?」
 いっその事、仕えていると言う布仏さんから渡してもらった方が良いような気が、と考えていると。私はハンカチの違和感に気付いた。
「ねえ、布仏さん。彼女って、名前、何ていうの?」
 ハンカチには、T.Sとイニシャルがあった。布仏さんが『かんちゃん』って呼んでたから、『か』から始まる名前だと思ってたんだけど。
オルコットさんは『せっしー』で私は『かなみー』だし。本当はタ行で始まる名前なのかしら?
「ん~? かんちゃんはね~、更識簪って言うんだよ~~?」
 ……うん、簪とは予想外だったわ。でも……
「このハンカチのイニシャル、彼女じゃないの?」
「……んー。かなみー、このハンカチは絶対、ぜーったいに無くさないでね~~?」
「え……?」
 そういいながら、彼女に借りたハンカチを見せると、今までに見た事がないほど真剣な顔になる布仏さん。
いつも通りにのほほんとしてるんだけど、何処か険しさを感じさせるような表情。……どうして?
「あ」
 そして私は、自分のミスに気付いた。……まだ、私の名前を言ってなかったわね。


「……織斑君、篠ノ之さん。準備はいい? こっちは準備できたわよ」
 放課後、私はデータ収拾の為にアリーナに来ていた。この時期はクラス対抗戦がある為、クラス代表以外の生徒は遠慮しがちになる。
その為、アリーナの使用許可は結構あっさりと下りた。そして織斑君達三人のデータを収集するのが、私の役目だ。
『ああ、いけるぜ』
『問題ない』
「それじゃ、今日はまず篠ノ之さんとの打撃訓練だったわよね? こっちも準備は良いわ、始めて」
『よし。行くぞ、一夏!!』
 掛け声と共に、篠ノ之さんの駆る打鉄が左腰部から剣を実体化させて動き出した。織斑君の白式は、基本的に刀一本で戦う機体。
オルコットさんとの戦いを引き分けに持ち込んだ単一使用技能・零落白夜と言う技があるとはいっても……これは両刃の剣。
シールドエネルギーを消費してしまうこれだけで戦うわけにも行かない。だから、ISによる刀の使い方を訓練しているのだった。
『さて、今日は急加速の復習から行いましょうか……。それともスターライトを使い、回避訓練を……』
 ちなみに、こちらで織斑君とのメニューを考えているのはオルコットさん。最初はどちらが織斑君に教えるかでもめたのだが。
『一人一人が、交代で教える』『篠ノ之さんは近接攻撃を、オルコットさんは基本動作を教える』『どちらが最初かは日替わり』
『篠ノ之さんが打鉄を借りられない時は、その分を剣道の稽古に当てる』と言う条件で何とか双方に納得してもらった。
篠ノ之さんは同室なんだから、少しは譲ってあげたらと言えたら楽なんだろうけど。それにしても……
「織斑君、不安そうに言ってたけど慣れてきたのかしらね。日進月歩だわ」
 打鉄相手に、かなりの動きっぷりを見せている。何があったのかしらね。今までとは、気迫が違う気がする。
「宇月さん。どうですか、織斑君達の調子は」
「あ、山田先生」
 すると、山田先生が現れた。珍しいわね、最近はこっちに顔を出さなくなってたんだけど……。
「織斑君、結構上達してきてます。打鉄相手なら、かなり行けるんじゃないかと思いますけど……」
「そうですね。でも今回は……」
「ええ。全員が専用機持ち、あるいは代表候補生ですから。織斑君には、かなり辛い戦いだと思います」
 モニターから目を離さず、先生との会話を続ける。これ位なら、何とかこなせるようにはなった。
「宇月さんも、すっかりデータスキャンに慣れたみたいですね」
「先生の指導のお陰ですよ」
 そう。ISの腕前を上げる為には、データ収拾のような裏方仕事も欠かせないのだけど。
私には多少の知識はあるが、経験は全く無かった。そんな素人だった私を指導してくれたのが、隣に居る山田先生だ。
代表決定戦の時もそうだったし、その実力は申し分ない。そして、教え方も解りやすくて本当に凄いなと思う。
「そ、そうですか? そういってくれると、嬉しいですね」
 嬉しそうに笑う山田先生。実年齢よりもかなり若そうに……と言うか、下手をすると私達と同世代に見える。……顔だけは。
「もしも何か解らない事があったら、遠慮なく言ってくださいね。何せ私は、先生ですから」
 山田先生が胸を張ると、その体とは不釣合いなほど大きな胸が揺れるのが、横にいるのに視界の隅に入ってきた。
クラスでトップ級の篠ノ之さんはおろか、織斑先生さえ上回る大きさ。……何食べたらここまで膨らむのかしらね。
「――あ、終了したみたいですね。今度は、オルコットさんの番ですけど」
「そうですね。じゃあ、センサーを切り替えて……と」
『さあ一夏さん、今度は私の指導ですわよ!!』
『あ、ああ! 解ったぜ!!』
 かなり疲れてるみたいだけど、織斑君は立ち上がってオルコットさんの指導に入っていく。……がんばれ、織斑君。


「はいこれ、オルコットさんのデータよ。篠ノ之さんと織斑君はこっち。メモリーカードに入れてあるから、あとでチェックしてね」
 訓練が終わって更衣室から出てきた三人に、私は訓練データを二つに分けて渡した。
何故わざわざ分けるのかというと、英国代表候補生であるオルコットさんのデータは迂闊に漏らせないから……というのがその理由。
英国出身者に任せられれば良いのだけど、一組には英国出身者が他にいないので私がやっていた。
……正確には『二人がゴタゴタした時の、折衝役も兼ねている』らしいけどね。誰が言ったのかは、言うまでもないけど。
「ありがとうございます、宇月さん。ご迷惑をおかけしますわね」
「いいのよ、いい勉強になるし」
 本来なら彼女のデータに触れるのはまずいのだけど、クラス代表補佐なので例外、との事だった。
……生まれて初めて、守秘義務書類にサインさせられたけど。まあ今の所は別に問題も無く、これでうまくいっているので。
何か変化が起こらなければ、このまま続けていく事になるのかしらね。まさか、これ以上代表候補生は入ってこないだろうし……。
「ありがとうな、宇月さん。じゃあ、飯にするか」
「で、でしたら一夏さん。ご一緒にディナーを如何です?」
「な、何!?」
「ああ、良いぜ。じゃあ箒も行くから、食堂で待ち合わせるか? いいだろ、箒? あ、宇月さんもどうだ?」
 そこでどうして私達も誘うのかしらね? 善意なのは解るのだけど。オルコットさんの笑顔、引き攣ってるわよ。
「そ、そうだな。うむ。構わないぞ」
「……。フランチェスカに聞いてからにしておくわ」
「……」
「あれ、セシリア。何で不機嫌になるんだ?」
「いいえ、そんな事はありませんでしてよ?」
 ……こちらの方は、うまくいっていると言えるのかどうか解らないけど。とりあえず織斑君の唐変木はいつもどおりだった。




「……ふー」
 セシリアや宇月と共に行ったIS訓練の後。私達は自室に戻っていた。そして今、一夏が私服に着替え終わったのだが。
「では一夏、夕食に行くか。遅れてはまずいからな」
「そうだな、セシリア達と食堂で待ち合わせをしてるし。さーて、今日は何を食べるかな……」
「おーいおりむー。やっほ~~」
 部屋を出ると同時に、布仏がやって来た。相変わらず袖を垂らした動物の格好をしているが、今日の格好は……犬か?
「のほほんさんか。俺に何か用事か?」
「んー、おりむー達は夕食まだだよねー?」
「ああ、私達は今からだが」
 私達と共に取りたいのか? まあ布仏ならば、問題は無いだろうが。オルコットも別に文句は言うまい。
「じゃあ、ちょっと軽めにしててくれないかなー? あのねー……」


『織斑君、クラス代表就任おめでとう&クラス対抗戦頑張ってね♪ パーティー』
 そんな垂れ幕が、夕食後の食堂に垂れ下がっていた。どうやら一夏の祝賀会と壮行会を合わせたような物らしいのだが。
「織斑君、クラス代表おめでとう!」
「「「「「おめでとう~~!」」」」」
 フランチェスカのそんな声と共に、わらわらと女子が一夏に寄ってくる。え、ええい! 何を楽しそうにしているのだ!!
「いやー、これでクラス対抗戦も頑張って欲しいね!! 強敵も増えたけど、織斑君なら当てれば一発KOなんだし!!」
「そうそう。なんたってデザートパス半年分だもんね!!」
「ほんと、織斑君と同じクラスで良かったよー」
 ぐぬぬ、べ、ベタベタと。羨ま……しくはないが、あ、あまりにも、その……はしたないだろう。うん。
「ご機嫌ななめね、篠ノ之さん」
「宇月……」
 近づいてきた彼女は、抹茶羊羹をつまんでいる。む、中々美味そうだな。
「貴女も、意外と大胆なようでそうじゃないのよね」
「ど、どういう意味だ?」
「……。だって、織斑君がいるのに仕切り越しに着替えたって話だったわよね?」
「!?」
 な、何故それを宇月は知っているのだ!? 『だって』からを耳元で囁かれたが。心臓が止まるかと思ったぞ!?
「織斑君が、ふと漏らしちゃったのよ。まあ、一応口止めはしておいたから大丈夫だけど」
「そ、そうか……」
 それにしても一夏め。宇月相手だったからよかったような物だが、あの事を易々と漏らすとは。……まさか、嫌なのだろうか?
「あれ? あの人は……」
「ん、どうした?」
 宇月の視線を追うと、見慣れぬ女生徒がいた。人数から考えて他のクラスの女子が混じっているようだが、また増えたのか?
いや、待て。あのタイの色は……?
「はいはーい、新聞部でーす! 話題の新入生、織斑一夏くんに特別インタビューをしに来ました~!」
「い、インタビュー?」
「うん、私は二年の黛薫子。よろしくね。新聞部の副部長やってまーす。はいこれ名刺。ではではずばり織斑くん!
クラス代表になった感想を、どうぞ!」
 随分と早口な、黛と名乗る先輩は一夏へ録音機器を向けた。やはり二年生か、それも副部長とは……。
それにしても、一夏にインタビューとは……。……む、近いぞ。な、何故そこまで顔を塚付ける必要があるのだ!?
「え~っと……。他のクラスの代表は強敵だけど、頑張ろうと思います」
「え~。もっと良いコメントちょうだいよ~。例えば『俺に触るとヤケドするぜ!』とか!」
「……自分、不器用ですから」
「うわ、前時代的!」
 何やら親しそうだな、あの先輩。まさか、一夏とは初対面ではないのか?
……いや、さっき名刺を渡していたのだから今日が初対面の筈だ。なのに、あそこまで……。
「黛先輩、相変わらずね……」
 む?
「宇月、あの先輩とは知り合いなのか?」
「ええ。実はクラス代表決定戦の際に、新聞部にブルー・ティアーズの情報を提供してもらったって言ったでしょう? 
その時に、窓口になってくれたのがあの人なのよ」
「なんと……」
 そうだったのか。ある意味では、一夏の恩人のようなものだな。……おや、もうセシリアの方に話を向けている。
「コホン、ではわたくしと一夏さんが何故決闘することになったのかを―――」
「ああ、長そうだから良いや。話題の専用機持ちのツーショット写真だけ貰うね。じゃあ、もう少しくっ付いて」
 と、一夏とセシリアの手を取り重ね合わせて……って、待て! 何故そこまでくっ付かねばならん!!
「何だよ、箒?」
「な、何でもない!!」
「それじゃ撮るよー? 35×51÷24は~?」
「え、えーっと……2?」
「ぶー。74.375でしたー」
 ……そしてシャッターが切られた瞬間。一夏やオルコット以外の生徒もカメラのフレーム内に入りこんでいた。
私も、一応は入りこんだが。これは場の雰囲気を読むと言う奴であり、け、決してツーショットを阻む為では無いぞ。
「あ、あなたたちっ!!」
「まあまあ、セシリアだけツーショットはずるいじゃん」
「そうそう。幸せはクラス皆で分かち合わないとねー」
「あ、せんぱーい。写真はもらえるんですよね?」
「そりゃ勿論。後で、数だけ教えてね?」
 ……そういったのはフランチェスカや夜竹達だった。一夏は、そこまで人気があるのだろうか。


「……ふう、くたびれたな」
 パーティーも終わり、私達は自室に戻った。一夏め、クラスの女子や紛れ込んだ他クラスの女子に引っ張り凧だったが。
くたびれた、と言うくらいなら適当にあしらえばいいものを。……まあ、一夏にその類の技術が無いのは知っているが。
「今日は楽しかったようだな?」
「そんなわけあるかよ。そりゃ、パーティーをやってくれたのは嬉しいけど。結構プレッシャーも溜まったぜ」
 ……ついつい気分がささくれ立ち、そんな事を言ってしまう。
「だいたい、もしもお前が俺の立場なら楽しいのかよ?」
「む……そうだな、楽しいかもしれないな」
 ……。本当は、はしゃぐ男に囲まれるなど楽しい筈が無い。というか、嫌だが。
「今日は疲れたし、もう寝るわ……」
「ま、待て! ――き、着替えるのだから向こうを向いていろ!」
 枕を投げ付け、一夏に向こうを向かせる。……け、決して着替えが嫌なのかと思ったとか、そういうわけでは無いが。
「なあ、いつも思うんだけど俺が席を外してる間に――いや、何でもない」
 一夏を視線で黙らせ、私は寝巻きに着替える。……今日は、気分を変えてこの帯にしようか。
この帯は、まだ入学してから身につけてはいなかったしな。そろそろ、今まで使ってきた物も洗わなければならないだろうし。
「……いいぞ」
「お、おう。……あれ?」
 振り向くと、奇妙な顔になった。……む、まだ何かあるのか?
「帯が、今まで見た事ない奴だな? 新品か?」
「――! よ、よく見ているな」
「いや、色も模様も違うから解るだろ。箒を毎日見てるんだしな」
 わ、私を……!?
「ま、毎日見ているか、そ、そうかそうか。――よし! 寝るとするか!!」
「……?」
 一夏は怪訝そうな顔をしているが、特に何を返す事も無く床についた。そして電気を消し……。
「……一夏」
「ん?」
「さ、さっきは済まなかったな」
「ああ、いいよ。気にしてない。――お休み」
「あ、ああ。お休み」
 ……。そして、間もなく一夏の寝息が聞こえてきた。
「……毎日、か」
 何だかんだと言っても、私を気にかけてくれている事が嬉しくて。中々寝付けなかった。




「……は?」
 俺は、呆然としていた。IS学園への編入が正式に決まり、あと数日で引っ越す事になると言われた夜の事だったが。
「三人目のIS適性をもつ男が……見つかった?」
「そうらしいな。何でも、アメリカらしいが。フランスでもそういう噂が流れているが、な」
「俺もそうでしたけど、織斑一夏の時みたいに騒がれてませんよ?」
「早くも米軍が囲い込みをしたらしい。連中も必死だからな。欧州連合も同じだろう」
「はー、そうですか」
 織斑一夏以外の操縦者は、世間には出ていなかった。理由は、前述の通りだが。
「そういえば、そいつもIS学園に来るんですか?」
「さあ、それはまだ未定みたいよ。貴方みたいに、ある程度訓練をしてから来るんじゃないかしら」
「そういえば、確かアメリカの代表候補生はIS学園一年にいたな。専用機は持っていないようだが」
 へえ。
「専用機を持っていないとはいえ、今の君よりは実力は上だぞ。甘く見るな」
「はい」
 御影をだいぶ使いこなせるようになっていたとはいえ。
安奈さんや麻里さんから言わせると俺は『代表候補生にはまだまだ』レベルらしい。……いや、それは当然なんだろうけど。
「――よし、明日は私が相手をしようか」
「え? 安奈さんがですか?」
 この人てっきり、技術者だと思ってたんだけど。
「これでもISランクはB+だ。技術と知識だけでは無いぞ。どうせもうお別れなのだし、最後に手合わせするのも良い思い出になるだろう」
 へえ。ちなみに俺のランクはBだったけど。それより少し高いって事だな。……後半部分は、少しさびしかったけど。
「そういえば、麻里さんはどうだったんですか?」
「私はCだったからね。安奈の方が上よ」
 フェレットのぬいぐるみを抱きしめつつ、麻里さんが答えてくれた。これがお気に入りの一つ、らしいが。
「さてと、今日の訓練及び学習は終了した。――くれぐれも、忘れないように」
「じゃあ、お休みなさい」
「はい」
 現在時刻は午後11時、今は就寝前の僅かな空き時間だったのだが。……すっかりこの生活も板についた。
だけど、もうこの施設ともお別れ……と思うと、少しだけさびしい気がした。二人が去っていった分、余計に感じる。
「IS学園、か。ここよりは楽だって言ってたけどなあ。――まあ、今更どうしようもないか」
 どういう理由なのか、ISを動かしてから一変した俺の人生に。不安を覚えながらも、俺はベッドに入るのだった。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.033818006515503