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No.28454の一覧
[0] 犬夜叉(憑依)×リリカルなのは 【完結】 【後日談追加】[闘牙王](2012/02/15 19:30)
[1] 第1話 「復活」[闘牙王](2011/07/04 14:42)
[2] 第三十八話 「君がいない未来」[闘牙王](2011/06/20 14:39)
[3] 第2話 「決意」[闘牙王](2011/06/28 00:49)
[4] 第3話 「時代を超える想い」[闘牙王](2011/06/25 16:12)
[5] 第4話 「仲間」[闘牙王](2011/06/26 19:22)
[6] 第5話 「運命」[闘牙王](2011/06/29 11:34)
[7] 第6話 「激突」[闘牙王](2011/07/02 10:26)
[8] 第7話 「禁忌」[闘牙王](2011/07/04 22:23)
[9] 第8話 「傷心」[闘牙王](2011/07/08 21:40)
[11] 第9話 「接触」[闘牙王](2011/07/19 20:55)
[12] 第10話 「守るもの」[闘牙王](2011/07/19 01:03)
[13] 第11話 「誓い」[闘牙王](2011/07/19 21:52)
[14] 第12話 「想い」[闘牙王](2011/07/23 09:11)
[15] 第13話 「真実」[闘牙王](2011/07/29 08:34)
[16] 第14話 「自分」[闘牙王](2011/07/27 20:24)
[17] 第15話 「答え」[闘牙王](2011/07/31 15:23)
[18] 第16話 「名前」[闘牙王](2011/08/01 17:27)
[19] 第17話 「再会」[闘牙王](2011/08/06 21:46)
[20] 第18話 「逆鱗」[闘牙王](2011/08/09 07:02)
[21] 第19話 「暴走」[闘牙王](2011/08/12 19:01)
[22] 第20話 「後悔」[闘牙王](2011/08/13 21:06)
[23] 第21話 「約束」[闘牙王](2011/08/19 21:33)
[24] 第22話 「心」[闘牙王](2011/09/11 23:15)
[25] 第23話 「交錯」[闘牙王](2011/08/24 17:05)
[26] 第24話 「再戦」[闘牙王](2011/08/29 01:22)
[27] 第25話 「激闘」[闘牙王](2011/08/31 21:57)
[28] 第26話 「嫉妬」[闘牙王](2011/09/01 21:59)
[29] 第27話 「遭遇」[闘牙王](2011/09/03 11:41)
[30] 第28話 「願い」[闘牙王](2011/09/05 08:43)
[31] 第29話 「光」[闘牙王](2011/09/10 21:48)
[32] 第30話 「日常」[闘牙王](2011/09/13 01:10)
[33] 第31話 「恋心」[闘牙王](2011/09/19 06:22)
[34] 第32話 「乱戦」[闘牙王](2011/09/21 18:34)
[35] 第33話 「急変」[闘牙王](2011/09/25 02:10)
[36] 第34話 「絆」[闘牙王](2011/11/18 21:02)
[37] 第35話 「悪意」[闘牙王](2011/09/28 20:32)
[38] 第36話 「闇」[闘牙王](2011/09/29 07:44)
[39] 第37話 「夢」[闘牙王](2011/10/20 21:54)
[40] 第38話 「矛盾」[闘牙王](2011/10/02 01:25)
[41] 第39話 「涙」[闘牙王](2011/10/03 06:10)
[42] 第40話 「奇跡」[闘牙王](2011/10/06 21:35)
[43] 第41話 「因果」[闘牙王](2011/10/08 21:15)
[44] 第42話 「分岐」[闘牙王](2011/10/11 12:07)
[45] 第43話 「再動」[闘牙王](2011/10/15 22:36)
[46] 第44話 「軌跡」[闘牙王](2011/10/18 01:59)
[47] 第45話 「邂逅」[闘牙王](2011/10/16 09:37)
[48] 第46話 「機動六課」[闘牙王](2011/10/18 02:14)
[49] 第47話 「機人」[闘牙王](2011/10/19 19:47)
[50] 第48話 「天敵」[闘牙王](2011/10/24 02:16)
[51] 第49話 「集結」[闘牙王](2011/10/24 17:49)
[52] 第50話 「変化」[闘牙王](2011/10/26 14:35)
[53] 第51話 「平穏」[闘牙王](2011/10/31 15:43)
[54] 第52話 「師妹」[闘牙王](2011/11/03 08:50)
[55] 第53話 「宝玉」[闘牙王](2011/11/07 17:32)
[56] 第54話 「親子」[闘牙王](2011/11/08 23:54)
[57] 第55話 「過去」[闘牙王](2011/11/11 09:40)
[58] 第56話 「遺産」[闘牙王](2011/11/13 04:44)
[59] 第57話 「因縁」[闘牙王](2011/11/25 12:31)
[60] 第58話 「接戦」[闘牙王](2012/01/06 19:54)
[61] 第59話 「騎士」[闘牙王](2012/01/09 23:40)
[62] 第60話 「敗北」[闘牙王](2012/01/19 20:50)
[63] 第61話 「叢雲牙」[闘牙王](2012/01/21 07:06)
[64] 第62話 「絶望」[闘牙王](2012/01/23 12:06)
[65] 第63話 「崩壊」[闘牙王](2012/01/24 23:20)
[66] 第64話 「希望」[闘牙王](2012/01/26 23:00)
[67] 第65話 「烈火」[闘牙王](2012/01/28 18:42)
[68] 第66話 「不屈」[闘牙王](2012/01/29 06:09)
[69] 第67話 「夜天」[闘牙王](2012/01/31 12:10)
[70] 第68話 「祝福」[闘牙王](2012/02/03 15:25)
[71] 第69話 「雷光」[闘牙王](2012/02/03 23:47)
[72] 第70話 「意志」[闘牙王](2012/02/06 21:40)
[73] 第71話 「母娘」[闘牙王](2012/02/08 11:45)
[74] 第72話 「犬夜叉」[闘牙王](2012/02/10 12:47)
[75] 第73話 「新生」[闘牙王](2012/02/10 19:21)
[76] 第74話 「闘牙」[闘牙王](2012/02/13 06:46)
[77] 最終話 「君と望む世界」[闘牙王](2012/02/15 12:54)
[78] あとがき[闘牙王](2012/02/15 05:07)
[79] 後日談 「小さな召喚士のある休日」[闘牙王](2012/02/18 05:17)
[80] 後日談 「ある執務官の憂鬱」 前編[闘牙王](2012/02/18 05:38)
[81] 後日談 「ある執務官の憂鬱」 後編[闘牙王](2012/02/20 01:13)
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[28454] 第53話 「宝玉」
Name: 闘牙王◆53d8d844 ID:e8e89e5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/07 17:32
機動六課の隊舎へ向かう人影がある。だがその姿に気づく人間は一人もいない。それは当然。なぜならその人影は地中をまるで泳ぐように潜行しながら進んでいたのだから。


(反応はこのあたりかな………)


その人影の正体は戦闘機人№6セイン。セインは今回、ある任務を実行するためここ機動六課に侵入を試みていた。

それは鞘の奪取及び破壊。本来ならミッドでの戦闘行為はドクターによって禁止されていたのだが潜入、そして直接の戦闘行為を行わないという制限の元、セインはこの潜入任務を行っている。幸いにも隊舎には何かの任務のためかほとんどの高ランク魔導師が出払ってしまっているようだ。まさに千載一遇のチャンス。セインは自らの手にあるロストロギアの探知機を使いながらその場所に向かって潜行していく。鞘の反応は六課に入ってからほぼ同じ場所から動いていないことが確認されている。どうやらどこか決まった場所に保管されているらしい。前のように闘牙が持ち歩いているならば手を出すことは難しいが今の状況ならそれも可能。そしてセインはその保管場所に苦もなく辿り着く。

それはセインのIS『ディープダイバー』の力。

それは無機物に潜行し自在に通り抜ける能力。突然変異によって発生した希少な能力であり、潜入任務においては絶大な力を発揮する物。それ故にセインはナンバーズの中でも特に重宝されている。それはナンバーズの任務は基本的に隠密性を求められる物であったからだ。

セインは目的の部屋に辿り着いた後、その指先のペリスコープ・アイと呼ばれるカメラを使い天井から中の様子を確認した後、部屋に降り立ち辺りを見渡す。そしてその視線の先にある物を見つけ出す。それはまるで金庫の様な箱。そして鞘の反応はそこから発生している。恐らくこの中に保管されているらしい。ならこれを持ち帰れば任務は達成される。ここで解錠することも可能だが流石に時間がかかる。そう判断しセインがその手を金庫へと伸ばそうとしたその瞬間、


「そこまでだ。」


そんな男性と思われる声がした後、光の鎖が突如その体に向かって巻きつきセインはその動きを封じられてしまう。


「えっ!?」


セインは突然の事態に驚愕するしかない。自分に掛けられているのはバインド。しかもその強度も強力な物。セインはそのままその声の主の元に目を向ける。そこには青い狼、ザフィーラの姿があった。そしてそれに続くようにもう一人の人物が姿を現す。


「戦闘機人ですね……あなたを施設侵入とガジェット関連の事件の容疑者として拘束させてもらいます。」


それは黒いバリアジャケットを身に纏ったフェイト。その状況にセインは自分の侵入が既に察知されてしまっていたことを悟る。だが一体何故。それは六課の隊舎の防衛システムにあった。

はやては闘牙から戦闘機人たちの能力について情報を得ており、その対策も講じてきた。その中でも特にはやてが警戒したのがセインの能力。それは拠点を持つ組織にとってはまさに天敵ともいえる能力。そのため建物内部にそれに対応するためのセンサーを設置することでそれに対抗しようとはやては考えた。その結果が今の状況。セインはそうとは知らず、罠の中にまんまとおびき寄せられてしまったのだった。

セインは自らの失態に気づき何とかバインドから抜け出そうとするもそれは叶わない。そしてフェイトとザフィーラがセインに向かって近づこうとしたその時、黒いナイフの様な物が次々にセインを縛っていたバインドを切り裂いていく。同時にそのナイフによって小規模な爆発が起こり、フェイトとザフィーラは一瞬でそれをかわしながら距離をとる。


そしてその爆発が収まった先には外装を纏った小柄な少女、チンクの姿があった。


「大丈夫か、セイン?」

「た……助かったよ、チンク姉。」


チンクのスティンガーによってバインドの拘束から解放されたセインは安堵の声を漏らしながら体勢を整える。そんなセインを庇うように前に出ながらチンクは両手にスティンガーを構えながらフェイトとザフィーラに対峙する。チンクがここにいるのは偶然ではない。この任務は元々チンクとセインのツーマンセルでのもの。

セインのディープダイバーは対象に触れていればセインに加え、人間二、三人程度なら同時に潜ることができる。セインは希少な能力を持ってはいるが直接の戦闘能力は高くはない。そのためそのフォローのためにチンクが同行することになっていた。もちろんセインのみで戦闘を行わずに任務を達成することができればチンクの出番もなかったのだがそう上手くはいかなかったらしい。ミッドでの戦闘行為の禁止という命令に背く形になってしまったが状況からやむを得ない。それに関しては後回しだ。今はこの状況を何とかしなければならない。


「あなたは………」

「………また会ったな、フェイト。」


フェイトの驚きの声にそう答えながらもチンクは通信によってセインに話しかける。それは先程トーレから届いた情報に関すること。


『セイン、ここは私が抑える。お前は先に戻ってノーヴェとウェンディの援護に回ってやってくれ。』

『どういうこと?』

『どうやら嵌められたのは私たちだけではないらしい。詳しい話はトーレに聞いてくれ。』

『………分かった、チンク姉もあんまり無茶しないでよ。』


チンクの言葉と提案にセインは少し戸惑うような様子を見せるもすぐにその場をチンクに任せることを決断し、再びディープダイバーによって潜行し姿を消していく。そのことに気づいたフェイトとザフィーラがそれを阻止しようとするもそれはチンクの攻撃によって妨げられる。


「くっ!」
「ぬうっ!」

密室空間での爆発の威力と爆炎に部屋が包まれる。閉鎖空間での戦闘こそがチンクの真骨頂。特に施設内であれば金属も多く存在しており爆発の威力も桁違いになる。だが曲がりなりにも戦闘禁止の命が出ている以上あまり派手にここで戦闘を行うわけにはいかない。何よりも自分たちはフェイト達、機動六課を甘く見ていたらしい。自分たちに加え、クアットロ達も恐らくはその罠に乗せられてしまったのだろう。だがこれ以上の失態を続けるわけにはいかない。チンクはそう判断し、爆発によって生まれた壁の穴から室外に向かって飛び出していく。


「なっ!?」


ここは隊舎の最上階。こんなところから飛び下りればひとたまりもない。しかもチンクは飛行能力を持たない。フェイトは驚きながらもその後を追う。だがそんなフェイトの予想を嘲笑うかのようにチンクはその驚異的な身体能力によって難なく地面に着地し、凄まじい速度でその場から逃走を開始する。その速度はとても人間とは思えない物。例え魔導師であってもあんな身体能力は発揮できないであろう力。それが戦闘機人、人と機械の融合という存在だった。

フェイトは一瞬で状況を整理する。先程の地面に潜行する能力を持つ少女、セインを追うことは恐らく不可能だろう。流石に自分といえども地中を追跡することはできない。例え闘牙であったとしてもそれは変わらない。ならば自分はこのままチンクを追うしかない。何よりも自分は一度チンクと交戦した経験がある。ならばそれを生かさない手はない。


「ザフィーラ、私はこのまま追跡するからここをお願い!」

「心得た。」


フェイトの言葉にザフィーラはすぐさまそう力強く答える。それはまだこの場に鞘が残っていること。もし自分とフェイトが同時にこの場を離れれば再び先程の少女がそれを狙って戻ってくる可能性もある。何よりもさらなる増援、襲撃が無いとも限らない。それを瞬時に理解したから。それは歴戦の戦士であるザフィーラの経験。フェイトはそんなザフィーラに頼もしさを感じながらその場を任し、すぐに飛翔しチンクの追跡を開始する。その視線の先には銀の輝きがある。フェイトその胸中に秘めた想いを抱いたまま疾走する。



今、再びフェイトとチンクの因縁の対決が始まろうとしていた……………




森林に囲まれた施設の周辺で二つの存在が空を縦横無尽に飛び回っている。それは闘牙となのは。二人は己の相棒である鉄砕牙とレイジングハートを構えながらも何かを迎え撃とうとしている。それはガジェットの大群。戦闘機型、カプセル型が混ざり合った編隊で二人に襲いかかってくる。その数も通常では考えられないようなもの。そこから戦闘機人達が本気でここを落とそうとしていたことがうかがえる。だがそんなガジェットの大群を目の前にしながらも二人は全く動じない。いや、それどころか力がみなぎっているのではないかと思えるほどだ。そして最初に動き出したのは闘牙だった。


「邪魔だあああっ!」


闘牙は鉄砕牙を振りかぶり、それを振り下ろす。その瞬間、その剣圧によってガジェット達は次々に粉々になり、タダの鉄くずへとその姿を変えていく。だがそれを見ながらもガジェット達は全く動じずに闘牙へと襲いかかる。それは意志を持たない兵器だからこそ。もしそうでなければ闘牙相手をすることはできなかっただろう。闘牙はそんなガジェットを捉えながらも慣れた手つきでそれを迎撃していく。それはこの四年間で培われてきた経験と実力。流石に正攻法では敵わないと判断したのか何機かのガジェットが闘牙の背後、死角から攻撃しようと試みる。

だがそれは闘牙には通用しない。例え死角を突いたとしても闘牙はその半妖の聴覚と嗅覚でそれを感知することができる。そして闘牙がそれに対応しようとした瞬間、それらは桜色の魔力弾によって撃ち抜かれ破壊されていく。闘牙が一瞬驚きながら目を向けた先にはレイジングハートを構えながら自らの周りに魔力弾を生み出しているなのはの姿があった。


「アクセルシューター……シュ―――トッ!」


叫びと共に無数の魔力弾が次々に打ち出され、闘牙を守るように戦場を駆けまわって行く。そしてそれは闘牙の死角を、攻撃の隙をフォローするようにコントロールされている。そのことを悟った闘牙は一度、なのはへと笑みを向けた後、再びガジェットの大群に向かって飛び込んでいく。その姿には一切の迷いも恐れもない。それは自分の力となのはの力を信じているからこそ。

今、闘牙は懐かしい感覚に包まれていた。それはかつてのクロノとの共闘。まるであの時の再現のようだ。それはなのはの成長。なのはは闘牙の動きを生かすために共闘を行っている。それは奇しくもかつてクロノが行っていた方法と同じ物。それは教導官として、魔導師としての成長によってなのはがクロノと同じ領域まで腕を上げていることを意味していた。そのことに師として驚きと嬉しさを抱きながら闘牙はなのはと共に戦場を駆け抜ける。二人の前にはいかに大群のガジェットといえども無力同然。

だが二人には全く油断は見られない。それは先程の砲撃からまだ一度も戦闘機人の攻撃が行われていないから。二人はそれを警戒しているのだった。



闘牙となのはが闘っている戦場から遥かに離れた岸壁に二つに人影がある。一人は身の丈ほどもある巨大な砲身をもった少女、もう一人はどこか楽しげに岸壁に腰掛けている眼鏡をした少女。それはディエチとクアットロ。

二人は先程の射撃から身動きせず、戦況を見守っていた。それは戦闘機人の驚異的な視力によるもの。特に狙撃手であるディエチのそれはまさに鷹の目と言っても過言ではない物。その距離は闘牙の嗅覚でも感知できない程の距離を見渡すことができる物だった。


「どうする、クアットロ。このまま撤退する?」


ディエチはその手の狙撃砲『イノーメスカノン』を担ぎながら横にいるクアットロへ問いかける。先程の砲撃で施設への砲撃で防衛機能を奪いはしたものの闘牙と白い魔導師がまるで待ち構えたように姿を現してしまった。どうやら自分たちは機動六課に一杯喰わされてしまったらしい。闘牙はもちろんだが白い魔導師の実力はかなりの物。恐らくはSランクオーバーの実力者だろう。だが幸いにも自分たちに居場所までは掴めていないらしい。それは狙撃手である自分にとっては当然ではあるがそれでもそれは大きなアドバンテージ。

だが自分たちの任務はロストロギアの探索。それができないと分かった以上無駄な交戦は避けるべき。ディエチはそう判断し、撤退の準備を開始しようとするが


「そ~ね~。確かに撤退するのがセオリー何だけど~このままやられっぱなしってのも癪に触るわよね~。」


クアットロはどこか邪悪な笑みを浮かべながらそう呟く。その姿にディエチは思わずため息を漏らす。どうやらクアットロの悪いところが出てきてしまったらしい。クアットロはその性質上相手を陥れる戦術や作戦を立てることを得意としている。だが逆に自分がそういった目に会うことに対しては異常に嫌悪、屈辱を感じるらしい。それはプライドが高いとも言いかえられる。クアットロは自分が偽の情報を掴まされてしまったことに憤りを感じていた。恐らくはもう一つの施設も同様だろう。だが通信妨害によってウェンディたちとも連絡が取れない。まさにしてやられたと言った状況。このまま尻尾を巻いて逃げ出すなどクアットロのプライドが許さなかった。そして長い付き合いでそれを理解しているディエチは再び持ち場へと戻りながら問いかける。


「……じゃあどうするの?」

「そ~ね~……じゃあ、あの白い魔導師にちょっとお灸をすえて上げましょうか。」


ディエチの問いかけにクアットロはそう楽しそうに答える。こうなってしまっては仕方ない。戦闘はできる限り避ける原則には反するが副指揮官であるクアットロの命令には従うのがルールだ。ディエチはその巨大な狙撃砲を再び構える。それはとても少女であるディエチには持ち上げることすらできないであろうもの。そのアンバランスさが逆にその砲撃の脅威を現しているかのようだ。


「………闘牙は狙わなくてもいいの……?」


砲撃態勢に入りながらもディエチはそうクアットロに確認する。それは先程の言葉から察するに狙うのは白い魔導師だけであるように聞こえたから。


「そうよ。ディエチちゃんだって分かってるんでしょ?闘牙を狙ったって無駄だってことぐらい。」

「……………」


クアットロのどこか吐き捨てるような言葉にディエチは返す言葉を持たない。それは既にディエチも理解している事実でもあった。そんなディエチの姿を見ながらもクアットロは機嫌が悪そうな表情を見せる。



(………あんな化け物の相手なんてまっぴらごめんだわ。)


クアットロはそう内心でそう愚痴を漏らす。その脳裏にはこれまでの闘牙とのかかわりが蘇っていた。


クアットロが闘牙を知ったのは六年前。闇の書事件の始まりの戦闘の時。その時、クアットロはドクターが探しているロストロギアがあると思われる地球を探索に訪れていた。そして偶然にもヴォルケンリッター達が張った結界の反応をキャッチする。クアットロは任務の障害になる可能性と好奇心から自らの能力で偽装したサーチャーをその結界内に放ち様子をうかがうことにする。そこでは魔導師と騎士、そして半妖である闘牙の戦闘が行われていた。どうやら高ランク魔導師達の戦闘らしい。ならば長居は無用。クアットロはそう判断し、その場を離脱しようとしたその時、異変が起こる。

それは闘牙の妖怪化。その圧倒的力によって騎士たちは殺される寸前まで追い詰められる。その光景にクアットロは恐怖する。それは本能。サーチャー越しであるにもかかわらずその殺気が、力が伝わってくかのよう。クアットロは自身の生まれて初めての恐怖を抑えながらもその場を離脱する。だがそれで事態は終わらなかった。

それは何故かドクターが闘牙に興味を示してしまったから。そしてクアットロはその監視を行う任務を与えられてしまう。本当ならばそんなことは御免だったのだが創造主であるドクターの命であるため断ることもできずクアットロはそのまま闘牙の監視の任務に就くことになる。その時のように獣の様な姿は見せることはなくなったもののその妖怪化と呼ばれる力をクアットロは騎士たちとの、闇の書の闇との戦いで目の当たりにする。それは戦闘機人である自分たちであっても決して敵わないと確信できるほどの力。ドクターもそのことは分かっているはず。にもかかわらずドクターは自分たちにそんな闘牙を殺すよう任務を告げる。結果は既に語るまでもない。

最近稼働したウェンディとノーヴェはまだ気づいていないのだろう。闘牙が自分たちと闘う時には恐らくは半分の力も出していないことを。妖怪化のことも自分以外のナンバーズは知らない。それはドクターからの口止め。それを知ればナンバーズ達が恐れを抱いてしまうことを見越してこと。だが恐らくトーレとチンクはその実力に気づいているのだろう。

だがトーレは任務であればそれをこなすことしか興味はないため、チンクは闘牙へ好意を抱いているため気にはしていないらしい。だが自分はそんな考えを持つことはできない。

あの恐怖と力。今はその甘さから何度も見逃されているがその気が変わればいつ殺されてもおかしくない。それがクアットロにとっての闘牙という存在だった。



「っ!?」

なのはは突然起こった出来事に驚きの表情を見せる。それは先程まで闘牙を狙っていたガジェットが急に自分に矛先を向け始めたから。そしてもう一つ。そのガジェットの数が一気に増したこと。しかもそれは増援で増えたようなものではない。まさに突如その場に現れたかのよう。そして数を増したガジェットは一気になのはへと襲いかかってくる。なのはは意識を切り替えその大群に向かって魔力弾を撃ち込んでいく。標的が自分に変わったとしてもガジェットに後れをとるほど自分は甘くはない。その自信がなのはにはあった。だがその魔力弾がガジェットを破壊するかに思われたその時、その魔力弾はそのままガジェットをすり抜けてしまう。そのことに驚き、なのはに一瞬の隙が生じる。その瞬間、ガジェットの攻撃がなのはに向かって放たれる。なのははすぐさまシールドを張りながらその場から距離をとる。そしてなのはは思い出す。それは闘牙から聞いた一人の戦闘機人の能力。


幻惑の銀幕『シルバーカーテン』

それがクアットロの先天固有技能。幻影を操り対象の知覚を騙す能力。直接の戦闘能力をほとんど持たないクアットロはこの能力を駆使し「戦わずして勝つ」ことを基本戦術としている。その一つがガジェットの幻影を使った撹乱。その幻影はレーダーやデバイスすらだますことができるいわば幻影魔法の様な物。そしてそれは戦場、特に乱戦においては脅威となる。

ガジェットの大群の中には幻影だけでなく本物も多く存在している。だがなのはにはそれの区別がつかない。レイジングハートの探索でもそれは不可能。故になのはは全てのガジェットに対処するしかない。だがそれには多くの魔力、そして何よりも精神力を要する。なぜなら本物のガジェットを破壊しても幻影によってそれは蘇り、傍目には全くその数が減ったようには見えない。それはまるで終わりの見えない消耗戦。なのはといえどその疲労は例外ではない。なのはが何とかそれを打開する術を模索しようとしたその時


「なのは、ここは俺に任せろ!」


闘牙が声を上げながらガジェットの大群に向かって突進していく。その光景になのはは思わず声を上げそうになる。例え闘牙といえども幻影が混じった大群相手では苦戦は免れないはず。加えてガジェット達は散開しながら攻撃を仕掛けてくる。そのため闘牙となのはは風の傷、砲撃を放つことができない。使ったとしても効率が悪く疲労が増すだけ。はやての様な広範囲魔法が使えれば話は違ってくるがなのははそれを使うことはできない。なのはがそう焦りを感じたその瞬間、それを振り払うかのように闘牙の鉄砕牙が次々にガジェットを切り裂いていく。


「え?」


その光景になのはは目を奪われる。闘牙はまるで本物の存在を見抜いているかのような最小限の動きでガジェットを葬って行く。幻影によってその数は減っていないように見えるがその落下していく残骸からそれが確実に減っていっていること明らか。そしてなのはは気づく。闘牙には本物と幻影を見分けることができるのだと。



(ふん………相変わらずむかつく奴だわ………)


そんな光景を眺めながらクアットロは心の中でそう悪態をつく。闘牙にはシルバーカーテンが通用しない。シルバーカーテンは幻影を生み出したり、姿を消すことができる能力だがあくまでそれは偽装。本当に新しい存在を生み出したり、物質を消しているわけではない。それ故に闘牙の感覚はそれを捉えることができる。これがクアットロが闘牙を毛嫌いしているもう一つの理由。まさにクアットロにとって天敵と言えるのが闘牙という存在だった。

だがそんなことはこれまでの戦闘で嫌と言うほど理解している。これは闘牙を足止めするための布石。今、闘牙となのはの間に距離ができた。そして二人の意識はガジェットへと向けられている。そしてそれを管制と狙撃手の二人は見逃さなかった。


「いいわよ、ディエチちゃん。」


クアットロの言葉に合わせるようにディエチはその目になのはを捉え、砲撃、いや狙撃態勢に入る。それに呼応するようにイノーメスカノンのチャージが完了する。その威力、エネルギーはまさに一撃必殺、ナンバーズの中でもトップレベルのもの。そして



「発射。」


そんな静かな声と共にその強力無比な咆哮がなのはに向かって放たれる。その精度、速度ははるかに離れた両者の距離を一瞬にしてゼロへと変えていく。


『master!』

「くっ!!」


レイジングハートの警告とほぼ同時に圧倒的なエネルギーの奔流がなのはに迫る。なのははその声に一瞬で反応し、その機動でそれを何とか紙一重で躱す。それはまさに直感と言ってもいい物。だがその余波だけでなのはのバリアジャケットは破れダメージを負ってしまう。なのははその砲撃、狙撃に驚愕する。間違いなくこの砲撃はSランクオーバーの威力がある。すぐさまなのははその砲撃が放たれた方向に目を向けるも狙撃手の姿を捉えることができない。恐らくはそれほどの長距離狙撃なのだろう。だがそれだけではなかった。

今、ディエチとクアットロはシルバーカーテンでその身を隠している。例え視認できる距離にいたとしてもなのはではそれを捉えることはできなかっただろう。見えない狙撃手に狙われる状況。その不利をなのはは砲撃魔導師として誰よりも理解している。そんな中


「なのは、お前は一旦撤退しろ!ここは俺がやる!」


ガジェットと交戦している闘牙がそうなのはに告げる。この状況はあまりにもなのはに不利。それを庇いながら戦うのは流石に自分でも骨が折れる。悪いがここは一旦なのはに退いてもらうしかない。自分なら手加減は難しいが爆流破によって砲撃は跳ね返すことができ、また匂いで二人を探すこともできる。闘牙はそう判断した。だが



「………大丈夫だよ、闘牙君。ここは私に任せて。」


どこか不敵な笑みをを浮かべながらなのははそう闘牙に答える。闘牙はそんななのはの姿に一瞬、震えを感じる。それは寒気。どうやら自分は何かのスイッチを踏んでしまったらしい。


「行くよ、レイジングハート!」


その言葉と共になのはのバリアジャケットがその姿を変える。

それはなのはの新しい力、『エクシードモード』

同時になのはの魔力も高まり、レイジングハートもまるで槍の様な姿へと変形する。それはなのはが本気になった証でもあった。そして


「シュ―――トッ!!」


なのははその矛先を先程の砲撃が放たれた方向に向けて砲撃魔法を放つ。そのことにディエチとクアットロだけでなく闘牙も困惑するしかない。その砲撃は確かに砲撃が放たれた方向に向かって放たれたが二人がいる位置からは離れた場所に着弾し爆発を起こしてしまう。まるで何の意味もない砲撃。そのことに闘牙は不安を感じるもなのはの表情を見た瞬間、それは杞憂だと悟る。その目には砲撃魔導師、管理局の『エース・オブ・エース』高町なのはの姿があった。



「どうやら大したことない相手だったみたいね。ディエチちゃん、次で終わらせるわよ」

「分かった。」


どこか呆れ気味の表情を見せながらクアットロはそう命令を下す。どうやら何か狙いがあったのだろうがそれでもこちらの圧倒的優位は変わらない。なら次の一撃で落とし、撤退することにしよう。そしてノーヴェ達もどうなっているか分からない。つまらない子たちだがそれでも使える駒が減るのは面白くない。そんなことを考えているうちに最後の一撃の準備が整う。

ディエチはそんなクアットロとは対照的に冷静そのもの。それはまさに狙撃手に相応しい姿。そしてその標準が再びなのはを捉える。だがなのははその場所から全く動こうとはしない。どうやらこちらの砲撃を防御するつもりらしい。だがそれは不可能。次弾は先ほどよりもさらに威力を増したもの。そしてその最後の引き金が引かれた瞬間、その砲撃が一瞬でなのはを飲みこんでいく。同時にその背後になる施設もその威力によって大爆発を起こす。後には凄まじい爆煙が辺りを包み込む光景が広がっているだけだった……………



「さあ、帰るわよ。ディエチちゃん。」


それを見届けたクアットロはそう言いながらその場を後にしようとする。一応手加減はする様にしている。もし誤って殺してでもしてしまえば闘牙の逆鱗に触れかねない。だが戦闘不能は免れないだろう。だがいつまでたっても声をかけたディエチはその場を動こうとはしなかった。そのことにクアットロが気づいた瞬間、爆炎の中から一つの人影が姿を現す。


そこには片腕のバリアジャケットが砲撃の威力によって破れ、火傷を負っているものの全く戦意を失っていない高町なのはの姿があった。


そんななのはの姿に二人は思わず言葉を失ってしまう。それは当然だ。手加減したとはいえ先程の砲撃に耐えうる魔導師がいるなどとは考えもしなかった。それがなのはのまさに鉄壁ともいえる防御。それでもそれを防ぎきることができない程の砲撃であったことは疑いようがない。その証拠に少なくないダメージをなのはは負っている。ならば次でとどめを刺せばいい。そうクアットロが考えた瞬間、なのはの持つレイジングハートが砲撃の体勢に入りながらその矛先を向ける。

その光景に二人は戦慄する。それは先程の様に考えなしの物ではない。それは間違いなく自分たちを捉えている。同時にその巨大な魔力が集束していく。その光から凄まじい砲撃が放たれることは明らか。だが分からない。何故自分たちの場所が分かったのか。自分たちはシルバーカーテンによってその身を隠している。それともただの偶然なのか。クアットロがそう焦り混乱した瞬間その目にある物が写り込む。

それはサーチャー。それがまるで自分たちがそこにいるのを見抜いているかのようにその視線を向けている。クアットロは気づく。自分たちが罠にはめられたことに。

そのサーチャーはなのはが放った物。そしてそれは最初の砲撃によるもの。その目的は砲撃が放たれたと思われる近辺にサーチャーを設置するため。そしてその配置を完了させたなのははその場から動かずわざと砲撃を受け止めた。それはサーチャーの操作に意識を割くため、そして同時に相手の油断を誘うため。それによりなのははサーチャーによってその砲撃の発射地点を特定した。

自らを囮にし、場所を見抜いた後の砲撃による一撃必倒。

だがそれは思いついたとしても実行に移せるような作戦ではない。それは『砲撃魔導師』であるなのはだからこそ取れる戦法。そして


「エクセリオン……バスタ――――!!」


その真の力が今解き放たれる。桜色の光の咆哮が凄まじい速度で二人に向かって放たれる。その光景にクアットロは身動きをとることができない。ディエチもそれに応戦しようとするがチャージが間に合わない。為すすべなく二人はそのまま光の波に飲み込まれていった……………


「ふう………」


溜息をもらしながらなのははレイジングハートを下ろす。同時にレイジングハートの排気口から煙が排出される。カートリッジも使用した遠距離砲撃。狙いもタイミングも完璧。少しやりすぎてしまったかもしれないが相手の砲撃も強力なものであったため仕方がない。そしてなのはは闘牙へと目を向けた瞬間、あることに気づく。それは闘牙の表情。闘牙はまるで何かを見つめるような視線を上空に向けている。同じように視線を向けたそこには



ディエチとクアットロを抱えた紫のショートカットの女性の姿があった。

その腕と脚からは光の翼の様な物が生えている。何よりもその佇まい。それはまさに歴戦の戦士を思わせる物。なのはがこれまで聞いていたナンバーズ達の様子とは大きく異なる存在だった。


「ふ~っ、トーレ姉様、助かりました~」

「…………感謝。」


トーレの両脇に抱えられたクアットロとディエチがそう感謝の言葉を漏らす。実際後一瞬助けが遅ければ間違いなく自分たちはやられていたのだからそれは当然。だがそれ以上に命令違反を犯してしまったことに二人は気後れしてしまっているようだった。


「ボーっとするな、この馬鹿者ども。命令違反のことは後だ。すぐにこの場を離脱する。」


それを見抜いたトーレはそう言いながら一度振り返りながら闘牙となのはを見据えた後、すぐさま凄まじい速度でその場を離脱していく。そのことに驚きながらもなのはは砲撃を行おうとするがその速度を捉えることができない。一瞬の間に三人は姿を消してしまい後には破壊された施設とガジェットの残骸が残されただけ。闘牙もそんな光景を見つめることしかできない。トーレの速度はフェイトに匹敵、もしくはそれ以上の物。いくら自分でもここから追いつくことはできない。何よりもナンバーズの中では間違いなく最強でありなのはとの相性は最悪だろう。AMF下であの速度の相手を砲撃で捉えるのは至難の業だからだ。

闘牙となのははそのまましばらくトーレ達が去って行った方向を眺め続けるのだった………………




トーレはそのまま凄まじい速度で飛行しながら闘牙達から距離を取って行く。そんな中トーレは二人に今の状況を説明する。


チンクとセインの潜入任務も失敗し、現在もチンクが交戦中であること。


ノーヴェとウェンディも六課の高ランク魔導師、いや騎士たちの待ち伏せにあったらしいが間一髪のところでセインの救援が間に合い脱出したらしいこと。


その内容にクアットロ達は肩を落とす。それはこうも失態が続くとは思いもしなかったから。機動六課に対する認識を正す必要がありそうだ。そんなことを思考しながらトーレはあることに気づき、突如飛行を停止する。そして



「クアットロ、そのコートを捨てていけ。」

「え?」


そう告げる。その言葉にクアットロは目を丸くするしかない。それはシルバーケーブと呼ばれるクアットロの固有武装。それを何故この場に捨てていかなければならないのか。


だが気づく。そのコートの一部に気づかれないように偽装された魔力によって作られたであろうマークの様な物があることに。それは先程の砲撃になのはが付与していた魔法。それはマークの場所を特定できる追跡の魔法。それこそがなのはたちの狙い。


戦闘機人達は自壊プログラムが施されおり、捕えることも後を追うこともできない。そこでその追跡魔法を使うことでスカリエッティの居場所を特定する作戦だった。危うくそれにかかるところだったクアットロは悔しさに顔を歪ませながらそれを降下に投げ捨てる。どうやら思った以上に油断ならない相手らしいことをトーレは確信し、再び飛び始めるのだった…………




ミッドに面した海岸で金と銀の光が交差し、同時に爆発と砂埃が辺りを覆い尽くしていく。それはフェイトとチンクの戦闘。奇しくもその場所も戦況も先の戦闘と全く同じ。互いの手の内を知っているが故の互角の戦闘。両者は疲労により肩で息をしながらも互いを睨みあいながら対峙する。だが以前とは違うことがある。

それは立場。チンクは逃げる者であり、フェイトはそれを追う者。その意識の違いがあった。チンクは何も闇雲にここまで逃走してきたわけではない。それには理由がある。そしてその条件は整った。ならば後はそれを実行するだけ。そう考えながらもチンクはあることに気づく。

それは闘牙のこと。チンクは心のどこかで今回の任務で闘牙と相見えるのではないかと期待していた。だがその姿が見当たらない。そして



「………闘牙はここにはいないのか?」


チンクはそうフェイトに問いかける。その瞬間、フェイトの顔が驚愕に染まる。それはまるで前回とは逆の光景。しばらくこの場が戦場であることを忘れてしまうほどフェイトは呆けてしまうがすぐに我を取り戻しながらチンクに向かい合う。


「それを聞いてどうするんですか……?」


フェイトはどこか警戒するような声色でそう逆に問いかける。その姿を不思議に思いながらもチンクは続ける。


「いや……少し用があってな。」


それは消して嘘ではない。だが明確に何か用事があるわけではない。戦闘をしたいというわけでもない。ただ会ってみたい。自分の理解できない感情を、気持ちを確認したかったのがその理由。それはまるで純粋な子供の様な願望。そんなチンクの姿にフェイトはなぜか危機感を感じる。そしてその理由に気づく。

それは目の前のチンクの姿にかつての自分の面影が見えたから。それが自分が目の前の少女、チンクに対抗意識を持ってしまうわけであることを確信する。



「トーガは………私の………私たちの仲間です。あなたには関係ありません。」


フェイトはバルディッシュを構えながらそう言い聞かせるようにチンクに言い放つ。だが本当は違う。本当はトーガは私の。その想いが口に出かかるもそれを何とか抑えながらフェイトは言葉をつなぐ。

それは恐れ。それを口にしてしまえば自分とトーガの関係が崩れてしまうのではないか。そんな不安があったから。


だがそんなフェイトの言葉にチンクは何かを考えるような仕草を見せる。そんなチンクにフェイトは目を奪われる。そんな中チンクの胸中では様々な想いが駆け廻っていた。

目の前の女性、フェイトの言葉。それは正しい。自分は戦闘機人で闘牙は恐らくは機動六課の人間。それは間違いない事実。だがその言葉に自分はどこかいらだちを、嫉妬を感じている。それが何故なのか。そしてチンクは気づく。

今の感情が自分の闘牙への感情に結びついていることに。そしてフェイトが間違いなく闘牙に対して好意を抱いていることに。それはつまり




「……………そうか、私は闘牙に惚れていたのか。」


自分が闘牙に好意を抱いているということ。まるで何かの問題が解けたかのようなそんな当たり前の様な姿でチンクはそう答えに至った。




「……………………は?」


そんなチンクの言葉にフェイトは間抜けな声を漏らすことしかできない。それは当然だ。いきなり闘っていた相手が自分の思い人を好きだと宣言したのだから。それもそれに今気づいたかのように、何でもない当たり前のことのように。その姿にフェイトは驚愕と共に恐れを感じる。

自分がその想いを自覚するのにどれだけかかったのか。どれだけその想いを口にすることができずにいるのか。それを目の前の少女、チンクはあっさりとやってのけた。もちろんその想いを闘牙本人に告白したわけではない。だが



「礼を言う、どうやら私はどうしてももう一度闘牙に会わなければいけないらしい。」



間違いなく目の前の少女はそれを闘牙本人にやってのけるだろう。



そのことに気づき、フェイトの体を焦りが支配する。そしてその瞬間、チンクのスティンガーが砂浜に次々に突き刺さって行く。フェイトはすぐ我に帰り、一瞬で距離をとる。同時に爆発が辺りを包み込む。そしてフェイトは追撃に備えて辺りを警戒する。だがそれは間違い。フェイトは失念してしまっていた。

これは以前の様な戦闘ではない。自分にとってこれは追撃戦。つまりチンクにとっては逃亡戦なのだと言うことに。


フェイトがそのことにすぐに気づくも時すでに遅く煙が晴れた先にはチンクの姿はなかった。そしてその足跡は海に向かって消えている。それがチンクがここまで逃走してきた理由。チンク達戦闘機人はその呼吸も人間に比べて長く持たすことができる。加えてチンクはこうなる可能性を考え酸素マスクを携帯していた。それは爆撃を使うチンクにとっては必須の物。流石のフェイトも海中に逃げられればその後を追うこともできない。電気によって攻撃する手も考えたがそれが届く位置には既にチンクがいないことは明白。


間違いなくこれは自分の失態、敗北。だがそれ以上にフェイトは違う意味で敗北感に胸を痛め続けるのだった………………










スカリエッティのアジトの広場にナンバーズ達が勢ぞろいしている。そしてその中心には紫のロングヘアーの女性の姿がある。彼女は№1ウーノ。最古参のナンバーズでありスカリエッティの秘書を務めている。戦闘や作戦のリーダーはトーレの役割だが実質的なナンバーズのトップはこのウーノであることは周知の事実。

そんなウーノが自分たちの前で何かの説明があるとのことでナンバーズ達の間には緊張感が漂っている。特にノーヴェとウェンディはそれが顕著だ。先程任務を失敗してきたばかりなので無理もないだろう。そんな妹たちの様子を見て取ったウーノはどこか笑みを浮かべながら


『安心しなさい、悪い話じゃないわ』


そう通信を使って妹たちに話しかけてくる。それは機密に関する話を行う時の物。それはつまりそれに関して何か動きがあったことを意味している。一字一句聞き逃さないようナンバーズ達は緊張を高める。そして



『一つ、朗報があってね。ドクターが四魂の玉を手に入れたそうよ。』


そう事実を妹たちに告げる。その言葉にナンバーズ達は驚きを隠せない。何故ならそれは六年以上前からずっと自分たちが探し続けたもののいまだ発見できていないロストロギア。それを、しかもドクターが自身で手に入れてきたとなれば驚かないわけにはいかなかった。


『い……一体どこにあったんスか!?』
『おい、ウェンディ!』


思わずいつも調子で聞き返してしまったウェンディをノーヴェが諫める。だがウーノは特にそれを期した風もなく話を続ける。


『それは私も気になったのだけれど結局教えては下さらなかったわ。とにかくこれで私たちが探すものは後一つだけ。』


その言葉と同時に全員の視線がウーノに注がれる。そして





『黒真珠………引き続きその探索を行って頂戴。』




そう最後の宝玉の名前が伝えられる。



彼女たちには知る由もなかった。





その二つの宝玉の意味を―――――





そしてそれが何をもたらすかを―――――――


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