ついに最終戦が始まる。
現ザフトの最高責任者、ギルバート・デュランダルひきいるザフト軍はとあるポイントに陣を張った。
その場所は特に基地があるわけもないただの宇宙域。
なぜこんな場所に?
大半の人が抱いた疑問はすぐ解ける。
なんと巨大な大砲のような施設が目の前にいきなり現れたんだ。
これはネオ・ジェネシスという兵器だ。
隕石でも落としそうなこの議長はこっそり壊れてたのを修理していたという。
これが現ザフトの切り札である。
だから破壊されると外交的にヤバいので是非とも死守してってね!
と演説していただいた。
「しっかしデカイよな~」
一人でミネルバの展望台から見るネオ・ジェネシスは超でかかった。
これを修理した金を少しでも他に分けてくれたら……と思ったのは秘密だ。
「本当だったら月にコイツをぶち込んだらしいぜ」
「ハイネ」
いつのまに入ってきたのか。
それにしても情報通だよね
流石は俺達の中の最古参の一人、頼りになるなぁ。
「月にいる地球軍の連中は他の派閥が引き取っていったもんで出番はなかったのさ」
「もしあったらコイツがねぇ? そんなに凄いんですか?」
「もちろんよ。ただチャージに時間がかかりすぎるのが弱点だ。そのせいで前の戦争で一度、破壊されちまってる」
「誰がやったんです?」
「ラクス・クライン率いる騎士さんご一行。それに現ザフトで白服はってるのやつの副官だよ」
呆れたように肩をすくめた。
俺も信じられない気持ちだ。
元敵だったやつを副官にできるものか?
議長の口添えがあったからアスランも復帰が可能になったのに。
ところで白服ってなに? またザフトの個人主張の一貫?
「運良くレクイエムって兵器も徴収できたおかげでザフトの防衛力はえらい高まってる。これならどんな国も簡単に攻めて来ない!……はずなんだよなぁ」
「普通そうですよね」
「……実はついさっき宣戦布告された。予想はつくと思うが言っておく。あのラクス・クラインだ」
彼女はいつから一国の首相になったんですか?
「あとオーブも兵士の多くが艦やMSと一緒に脱走しラクス・クラインの元に集まっているらしい。オーブ国首相から「止められなかった」と詫びの通信があった。
「うそん」
「悲しいけどこれ、事実なんだよな」
わかる。
どうせカガリあたりが通信ジャックして呼びかけたのが影響してんだろ?
あとは他の国が輸送の手助けとかしてんだろうな。
あいつらの思想ってよくわからん。中心がラクスの考え一つで決まるから楽できる利点もあるにはあったけど……正直、肌にいまいち合わなかった。
ラクスとは結構相性よかったのに不思議!
それはさておき。
「レクイエムってのを使って一斉になぎ払えばいいんじゃないか?」
「残念だがレクイエムは使えん」
「なんで!?」
せっかくの戦力ですよ?
派手にいきましょうぜ。
「いきなり使われたら大事だからと物理的・システム的に厳重なロックをかけたそうだ。しかも議長自らが赴かないと解けない」
「おい!」
「仕方ないだろ。そもそもこんなに早く反抗する連中がいるなんて思わないって。少なくとも3ヶ月は時間を確保できると踏んでたのに。ひと月足らずで攻め込める軍隊を集められるって誰が思えるよ!」
キレないでください。
俺が悪かったから怒らないで。
「上はあと5日ほどで戦端が開くと予測してる。俺も慣熟訓練があるから時間がない」
「5日!? 早過ぎって、え? 新しいの来たの?」
流石は議長! そこに痺れる憧れるぅ!
「ああ、お前が鹵獲したフリーダムを修理・改修したのを貰えた。これで全員が核動力になったな」
人のトラウマの機体を味方にするなんて。
前から言いたかったんですが、敵を自分の手駒にするのは将棋のルールですよ議長……。
最後の戦い―――。
全ての決着がつく戦いを前に俺の心臓は張り裂けそうなほど強く動いていた。
思えばフリーダムに家族が殺されたことが俺の人生をきめることになったといっても過言じゃない。
だからこそ、このしがらみを断ち切るために俺は、討つ!
……なんてね。
うは、超恥ずかしい。
なにこの次回予告。素面で言えねーっすよ。
でもネタに使えるな。
今度のヴィーノ、ヨウランとの飲み会で使ってみよう。
端末にアイディアをメモして終わるとタイミングを見計らったようにルナが話しかけてきた。
その顔は緊張のせいか人形のように無表情だ。
「シンは戦争が終わったらどうするの?」
「いきなりなんだよ……そうだなぁ。大分後になるだろうけど、旅でもしてみたいな」
「旅?」
金あるし。
レイの治療が出来そうな人も地球にいるからコネを作るためにもいかないといけないから。
議長に相談すればスムーズに渡りを付けてもらえそう。
それが終わったらジャパンに行きてぇ。
ホテルとか凄いサービスいいし、なにより飯が美味い!
しかも手頃な値段で地球のあちこちの料理を食べられるという神秘の国だ。
もちろん、夜のサービスも素敵なのが多かった……。
あ。
俺、ジャパンだとまだ未成年だから酒も飲めないし夜の店にも行けないじゃん。
テンションが下がりまくりんぐ……。
「急にそんなこと聞いてくるなんてどうしたんだ?」
「ぅぇ!? ううん、なんでもないの! じゃ、じゃあ後でね!!」
そう言うとルナはスタコラサッサと持ち場に戻っていった。なんだったんだ?
まさか旅に着いて来るとか……やめてくれ、性欲をもてあましちゃうから。
今から対策を考えないと。メイリンを俺が殺しちゃえば嫌われる、いやいや人としてどうよ、それ。
仕方ない。夜逃げのごとく見事に逃げきってみせよう。
幸いにも荷物は少ない……いける!
考えも纏まったところで最後のブリーフィングといきますか。
ブリーフィングはハイネによる作戦行動の説明から入った。
ちなみにレイは諸用で遅れてる。
「今回、敵の戦力はこちらよりはるかに少数だ。しかも遠征で補給もままならない。一方の我が軍は支援も充実している」
「じゃあ負ける要素なんて一つもないじゃないですか」
ルナの間の手にハイネが大きく頷く。
「そうだ。しかし一つだけ、同時に最大の問題もある」
「……ラクス・クライン」
「シンの言ったとおりだ。彼女が指揮官として君臨している限り早々に引いてはくれないだろう。けれど持ちこたえれば俺達の、勝ちだ」
ガナーザクと偵察型ジンの両部隊は射程ギリギリからの支援を。
スラッシュザクとグフイグナイテッドたちがシールドを支給されたザク達と連携を取って近づかせない。
「また長距離ミサイルとネオジェネシスによる砲撃支援を敵艦隊を射程内に収めしだい発射する。巻き込まれる可能性があるのでネオジェネシスの砲撃終了の合図まで各乗組員は待機命令が出ている」
「それでどこまで撃ち減らせるかが鍵でしょうね」
よくて1割だろうけど戦う身としては十分ありがたい。
どうせアークエンジェルは落とせないはずなんでそこは諦めよう。
少しでもアストレイを削ることが出来ればあとは楽。
「私たちも他の部隊と連携を?」
「いや、それについてはレイから連絡があると聞いているんだが。まだ来ないな」
しかたなくハイネが部隊の展開予想に移ろうとしたときレイは来た。
「遅れて申し訳ありません」
「お! ちょうどいいタイミングだぜ。さっきルナマリアから質問があったばっかりだよ。で、俺達の役目は?」
「はい、我々は一丸となってキラ・ヤマト及びアスラン・ザラの足止めを実行せよと命令を受けました」
確かに俺達じゃないとあいつらは止められないと思う。
自慢じゃないがミネルバ組のパイロットは全員が恐ろしい腕前になってる。
前の戦いでもレイとルナがキラ相手に持ちこたえたのが良い証拠だ。
「別に倒してしまっても構わないんだろう?」
「シン、俺達の腕なら倒せる可能性は高い。しかし議長は確実に勝てる方法を選択肢たんだ。命令はあくまでも「抑えろ」だそうだ」
微妙な空気になった。
信頼されてるからこそ「倒してこい」の言葉のほうがパイロットとしては嬉しい。
でも議長の言うとおり、この戦局は無理に戦わなくてもいいものだ。だから被害を抑えようと無理させない方向に持ってきたんだろうけど。けどさ。
「確実に仕留めるなら4人で囲んで戦えばいい。キラ・ヤマト一人ならばその戦法も取れたはずだった。本来ならばそれで片がついたはずだった」
「マジかよ。せっかく俺のフリーダムのデビュー戦だってのにツイてないぜ」
「私は正直安心しちゃった。キラ・ヤマトって強すぎよ。前の戦いで二人がかりで抑えるのがやっとだったのよ? それに無理に落とさなくても他の連中を落としたほうが楽だわ」
納得しきれないハイネと安堵の溜息を漏らすルナが対称的で面白い。
実はレイのほうも納得しきれてない様子で少々不機嫌だ。
俺も残念7割安心3割な気分だしなぁ。
「ふぅ。愚痴っても仕方ないさ。それよか今の命令をこなせるよう話し合いしようぜ。なにせ明日には連中は攻めて来るんだしさ」
俺の一言でなんとか皆、頭を切り替えられたようだ。
最初と違って不満そうだけど。
「あーあ。生まれ変わったフリーダムでボッコボコにしたかったぜ」
「そんなに愚痴らないでくださいよ。もしかしたら機会があるかもしれないじゃないですか」
「そうだよな、じゃないと休暇の1日潰してデザインしたロゴが無駄になるしな。期待しとくことにするよ」
どんなロゴかは想像できるんで聞くのをやめた。
だからいいって、カバンから嬉々として取り出そうとすんなぁ!
「いいか、このギターの角度がだな……」
俺の言葉をスルーして話し始めるハイネ。
時間がないって言ったのアンタだろ!
おい、二人とも早く止めるんだ。そして俺を助けてくれ。
助けてください!
「俺達がフリーダムを抑える。ルナとハイネはアスランを頼む」
「オーケー。レジェンドとの連携は時間が足りなかったしね。これならバッチリよ」
無視かよ!