愛機の選別も無事に終わり準備万端の俺達にさっそく指令が届いた。
内容はロゴスの本拠地を叩く。それだけだ。
ミネルバが修理してんで作戦時期を伸ばしてくれたらしい。
有り難や有り難や。。
というわけでそれぞれが準備で忙しい。
先日の選抜戦の疲れを取るためにルナとハイネは1日潰して休まないといけなかった。
その間に俺とレイは娯楽品や嗜好品を買い集めたり訓練をしたり。
さらには復活した二人が困らないよう作戦資料を作成したりと忙しい日々を過ごすことになった。
その甲斐あって二人は2時間ほどで作戦内容を頭に叩き込み機体の状態を最適にするため腐心することができた。
なかなかいい感じに進んでいたけどちょっとトラブルが起きた。
レイとルナは機体の調整が終わらない。
ルナの場合は仕方ないんだがレイはドラグーンシステムが不調気味らしい。
本来なら全員でミーティングをする予定だったが急遽、俺とハイネだけですることになった。
「てなわけでハイネ、作戦どうしよう?」
「そうだな~」
ハイネの自室にて相談中。
部屋は綺麗に片付いていつでも降りれるようになっている。
なかなかスマートだと感心させられた。
でもマグカップだったりカバンだったりとミクがなにかしらから主張してくる。
ちょっと尊敬したのを後悔した俺の心境を知るワケもなくハイネはさっそく考えを教えてくれた。
「航空地図見ると海から攻めることになりそうだし。俺たちは偵察部隊の情報を元に敵施設の破壊でもするか?」
「大気圏から強襲とかどうです? 燃えません?」
「シン、君は実にアホだな。そんなことしたら普通に迎撃されちまう。せいぜいミサイルをばら撒いて嫌がらせで終わりだ」
しょんぼり。
「じゃあ攻撃部隊と反対方向から攻めて撹乱とか」
「うーん、そんなところか。もしくはコンセプト通りお前が奇襲して撹乱したところに突っ込むか」
とグダグダな会議も終えて艦長に作戦要望案をいくつか渡して終わった。
もうやることないし部屋でゴロゴロしとくか。
「じゃ、俺も帰って休んでますか「ちょっと待てよ。お前に見せたいものがあるんだ」ら……」
ハイネェ……。
手に持ってる初音ミクの痛PCをなんとかしてくれ。
おい、なんでヘッドフォンまで用意してるんだよ。
あっという間に作戦開始日。
今か今かと出撃の時を待ちわびる俺たち。
気分は最高、体調微妙。
ハイネのやつ、4時間も歌を聞かせ続けやがって。
部屋に戻ったら「パイロットなんだから体調に気をつけろ」ってレイに怒られたんだぞ。
『パイロット各自へ。出撃3分前です』
お、きたきた。
特攻隊長シン・アスカの出番だ。
「んじゃ先に逝ってきますね」
『きちんと仕事しといてよ』
『帰還進路は確保しておく。心置きなく行っても大丈夫だ』
『俺は指揮権の確保で少しばかり遅れる。獲物は残しといてくれよ』
「まとめて了解!」
<発進まで残り2分。機体を固定します>
「推進剤満タン。武装に異常なし。動力・サブ動力共に正常稼動中」
<発射まで残り30秒。28,27……>
この緊張感。何回やっても心が震える。
やっぱ男はこういうのに弱いんだよな。
<4,3,……デスティニー、どうぞ!>
「シン・アスカ、デスティニー行きます!」
カタパルトから一瞬で空へ―――。
広がる海。遠くに見える目標。
作戦開始まで乗り30分。
それまでせいぜい暴れてやる。
海岸線接触まで残り10分。
なるべく低空飛行で近づいてるけどそろそろ気づかれる。
その前に先制攻撃といきますか。
高エネルギー長射程ビーム砲の出番だ。
元祖デスティニーより安定して長時間の照射に対応できるよう改造されているらしい。
論より証拠、さっそく実力を見せてもらおう。
「有効射程に突入。チャージ開始」
空中でホバリングして撃つ時が一番怖い。
なんせ無謀で途中で動作を止めるのも苦労する。
ザクで似たような事やればだいたい落とされるし。
相手も気付いたか。
だが遅い!
「エネルギー砲、発射!」
先端から赤いビームが音を割って飛び出し沿岸部に展開していた部隊を襲う。
MSは回避できても車両が反応に遅れている。
数台の迎撃ミサイルを搭載していたジープや戦車を数台まとめて壊すことに成功。
殆ど間を置かず反撃がくる。
高度を上げながら盾を構え回避しながら陸地に向かう。
「この距離ならいける」
敵との距離が目と鼻の先になった瞬間、さらに加速した。
慌ててこっちを追いかけ始めるが無駄だ。
最初から狙いはあくまで中央。
雑魚にかまってる暇はない。
中心部に突入して暴れ回ること5分。
さすがに回避が難しくなってきた。
作戦時間まで残り5分。
撃墜スコアは20を超えて数えるのをやめた。
バッテリーの心配はなくても辛いな。
とうとうライフルがいかれた。
スモークを巻いてその場を離れる。
ライフルから無理やり取り付けたビームガンを構え直す。
落としても落としても一向に減らないウインダム。
早く逃げたい。
アラームが鳴った!
やっと作戦開始か。
俺に攻撃をしかけようとしていたウインダムが次々と火だるまに変わっていく。
落ちていくウインダムたちの頭上をバビの編隊は悠々と飛び、遅れてグフたちが続く。
レーダーに増えていく友軍のマーク。
周囲の敵がザフト本隊に気を取られているうちに急いでその場を離脱した。
小一時間もたつと敵の防衛が元に戻ってしまった。
上手く相手の出鼻をくじけたのに早くに復活されたようだ。
敵の指揮官たちは優秀だな。
しかも空から降ってきた援軍たちは地上からのビームで一掃されてしまった。
俺も混ざってたらああなったのか……ありがとうハイネ。
思考の片手間に目の前のダガー部隊を撤退させても次から次にやってくる。
早く終わんないかなーと考えてたら急に敵が引き始めた。
訝しげに注意してたら何人かが追いかけてった。
そいつらに続こうとしたやつらはハイネを始めとする指揮官たちが抑えてくれる。
それでも行く連中はいるもので、止めることもできず斥候代わりいかせてやった。
暫し後、地面から山が出てきた。しかも3つ。
そう、我らが宿敵メガトロン軍団である。
デストロイの間違いだった。
案の定、先発達は小物らしい叫び声とともにぐしゃっとされた。
おいおい、ステラのときでさえ苦労したのに3体とか反則でしょ。
『二人とも覚えているか?』
「嫌でも覚えてるさ。デストロイってMAだろ」
『あれって反則でしょ』
フリーダムという目眩ましがいたから懐に潜り込めたんだが。
今回はどうすれば……。
『シン、レイ! お前たちがあいつらを引きつけろ。隙をついて近接戦が得意な連中でしかける』
「『ハイネ?』」
まさかの囮をやれ宣言。
死ねと?
『ハイネ、私も―――』
『悪いがこっちも戦力が欲しい。ジャスティスなら切込隊長として申し分ないからこっちな』
『でも、たった二機じゃ』
いいぞルナ、もっと言ってやれ。
『ルナマリア、俺達は大丈夫だ。そうだろシン!』
「ああ、もちろんさ!」
あ。反射的に答えちゃった。
今の無し!
『まかせてください。行くぞシン。俺達の力を魅せつけてやろう』
え? なに? レイがノリ気?
……何が何だか解らない。
おまえ、そんなキャラじゃなかったじゃん。
おかしい。もしかして俺のせいか?
昔に試しに読ませた漫画にハマったのが原因か?
元から変に熱い時があったとはいえ、こんなときに出てくるなよ。
迷う暇もないとばかりにレイが飛び出す。
慌てて追いかける俺。
艦砲射撃のような雨あられの弾幕の中をグレイズすることなく飛んでいく。
ライフルはしっかりと防がれお返しに数百倍の密度でお礼をされる。
しばらく二人で応戦してたが徐々に俺の攻撃回数を減らしゆっくりとレイと距離を取っていく。
すると案の定、火線はレイに集中した。
この隙にビームガンからアロンダイトに切り替え、足元から突撃。
三機の中で反応の鈍い左端の一つに的を絞り膝裏を切り裂く。
バランスを崩し倒れる一機。
他の2体の注意が俺に向く。
『よくやったシン! 行くぞお前ら!』
倒れたやつを援護しようとする2機の一つに地面から近づいていた他の部隊が突撃をかけた。
象に群がるトカゲのように執拗にコクピットや頭部、手足の武器を狙って切り続けるザクやグフたち。
倒れてるやつはルナがコクピットにサーベルを突き立てていた。
残りの一機、仲間に被害を出さないうちに俺が片付ける。
アロンダイトを仕舞い再びビームガンを三連射。続いて高エネルギー砲を放つ。
たまらず防御した。
瞬間、三度武器をアロンダイトを手にデスティニーを加速させる。
上下左右にぶれ、目標を定めさせないように近付く。
あまりの速度にデスティニーの表面が摩擦熱で赤く染まる。
『死ねよぉ!』
オープンチャンネルで叫ぶデストロイのパイロット。
同時に防御を無視し一斉射撃を俺に撃つ。
「お前が死ねよぉっ!」
肩端に命中したビームで装甲が吹き飛ばされる。
けど敵はそこまでだった。
間違いなく、アロンダイトはコクピットに深々と突き刺さった。
試合に勝って勝負に負けた。
ようやくデストロイを倒して施設を確保した俺達に告げられたのは作戦失敗の連絡だった。
肝心のジブリールを取り逃がしてしまった。
戦力をデストロイ討伐に傾けすぎたのが敗因だった。
バビの人たちが追いつこうとしてもウインダムに阻まれてできなかったらしい。
見事な逃げっぷりだったそうだ。
それでも施設や資源を奪えたのは大きかった。
鹵獲したMSで足りない重機は補えたようだし。
他の人たちと一緒に部隊を再編成し、事後処理を片付けていると議長から各艦隊に連絡が入ってきた。
「悪の親玉を取り逃がしちゃったYO! オーブに逃げたっぽいから追いかけようZE!」
要約するとこういうことだ。
加速度的に慌ただしくなるザフト軍。
言うのは簡単、やるのは地獄とはこのことだぜヒャッハー。
それでもおそるべきことに5日で全ての準備を整えることができた。
こいうところはコーディネーターの面目躍如だ。
しかし疲労の色が濃い。
一応、ジブリールを引き渡すよう交渉してるが上手くいかないという噂だ。
ただオーブそれ自体はいらないという。
ぶっちゃけ、取れる資源や人材と背負う厄介ごとを比べると後者の割合がデカイ。
差出人不明の莫大な支援金が振り込まれてるおかげで国庫自体は安定してるが占領すればそれも無くなる。
すると残るのは莫大な借金。
ザフトにそんな体力はない。
せいぜい、他の国に売りつけるくらい。
だったらジブリールだけでいいやって考えなんだが。
やっぱり首を振らないわけで。
もう戦争は確定なんで防衛部隊をいくつか残してまた移動ですよ。
あー、眠い。