一年目は瞬く間に過ぎて。
「どうかなお父さん、似合う?」
「お、おう。そんなもんじゃね?」
「なに顔赤くしてるの?ははぁさてはお父様、娘の制服姿に欲情してますね?」
「あのな真澄。何度も言うようだが父は胸が平面ガエルにはぴくりとも動か」
「ハイッ!ハイッ!ハイッ!ハイッ!」
「痛いッ!痛いッ!痛いッ!痛いッ!」
二年目は気が付いたら過ぎていて。
「藤原。お前はやってはいけぬ事をやってしまいましたね」
「え?何でおめえ怒ってんだよ、おかず一品もらっただけじゃ」
「謝って!お父さん早くマユコさんに謝って!早く!」
「藤原お前が泣いても殴るのを止めぬ藤原お前が泣いても殴るのを止めぬ藤原お前が泣いても殴るのを止めぬ藤原お前が泣」
「マウントッ!やめっ!拳ッ!離せなッ!ノブッ!鼻ッ!血ッ!ふりっ!くりっ!かゆっ!うまっ!」
「にげてー!おとうさん!にげてー!」
三年目もなんだかんだで過ぎたりして。
「まあだあまげえだあああ!ごんなオヤジにい!まだあまげえだああ!」
「ああウゼエ!泣くなベソ美!うわ抱きつくな鼻水拭うな噛むな舐めるなてめえッ!」
「で?お父さん解ってる?私ね今年受験なの。その辺よく解ってる?」
「こんばんはマスミちゃんバカでーす!しばらくよろしくねっ!」
「しばらく?──お父さん、ちょっとこっち来て」
「うん真澄、静かにさせるから少し落ち着い痛ッ痛ッ痛ッ!」
四年目なんてあっという間ですよ。
「さてお父様いかがですか?お嬢さま学校の制服ですわよ?ほらほら」
「ま、まあまあじゃ、ねえか──くっ」
「な、なによっ、泣くなんて、そんな──もうっ」
「おめでとう真澄。今日は祝いですね藤原。祝いと言えばちらし寿司。早く作れ」
「いやあ師匠良かったッスねえ!めでたいついでにアタシの処女膜もえいっと」
「よしッ解った!てめえら今日こそは腹割って話そうッ!」
そして、五年が経ちました。
狼の娘・滅日の銃
第八話 - マスミ・セブンティーン -
「──なによ?」
「いや、あん時ぁまんまと騙されちまったなあ、ってさ」
「そ、そんな昔の事なんて覚えてないわよ!」
五年前、再会した十二の娘は彼を睨みつけていた。
そして今、美しく成長した十七の彼女は頬を染め、父と仲良く手を繋ぐ。
「早く忘れなさい!いいわね!」
「はいはい」
「ハイは一回ッ!」
「ヘイアッ!」
「うるさい!」
娘、藤原真澄は一喝するも、繋ぐその手は離さない。
父、藤原信也は楽しげに笑う。だらしなく頬を緩めこれ以上ないくらい笑う。
相変わらずの日々ではある。
駐在調整官という大層な肩書きを背負いながらもだらだらと職務をこなし、町にも随分溶け込んだ。
地道なフィールドワークの甲斐もありヒューマンネットワークの全容もおぼろげながら掴めて来た。
しかしまだまだ時間は掛かる。当分本局からお呼びが掛かる事はないだろう。特務権限行使を考慮する事態など起きようも無い。
局長は少々肩透かしを食っているようだがそんなん知るか。まさに狙い通りと藤原はほくそえむ。
あと馬鹿な弟子も相変わらず馬鹿ではあるがもう泣かなくなった。技巧だけで言えば既に自分を超えただろう。馬鹿だが。
そして休日は娘と二人、こうやって買物にも行ける素晴らしき毎日。
「──やべえ、俺超泣きそう」
「ていうか泣いてるし」
つまり男は、娘と共に暮らした五年を経て、立派な親馬鹿と成り果てた──のではあるが。
「お父さん?どうしたの?」
だらしない頬の緩みが不意に消える。藤原の視線が一瞬、商店街の雑踏を凝視する。
「ん?なんでもねえよ」
しかし直ぐに顔が崩れ、再びだらけきった笑みになる藤原。
「なんだかなあ、最近変だよ?」
そっかあ?などと真澄に返事を返しながら横目でもう一度雑踏を流し見る。消えたな、と藤原は感じた。
ここ最近受ける妙な視線。敵意も無く意志も無く、ただ見つめる無味乾燥とした視線。
近くも無く遠くも無く害意さえ受けず、一定の距離を保ち自分を見る観察者の視点。
動かぬ自分に業を煮やした局長か?否。あの狸ならばもう少々ねちっこい。
繭子か?否。そんな事しなくともあいつは毎日飯をたかりにやって来る。
ベソ美か?否。あいつは馬鹿だ。
ならば対象は限られる。この地に入り込める第三者など、もう奴等しかありえない。
「さぁて今日夕飯ナニするよ?」
「玉子焼き!お父さんの玉子焼き!」
「おう、久々に作るか。んじゃおめえ肉ジャガ作れや」
「りょーかい!」
買物袋をぶら下げて、手を繋ぐ二人が踵を返す。
家路へ。狭いながらも楽しい我が家へ。帰ればきっと腹すかせた大家が待っているのだろう。
ともすれば馬鹿な弟子が適当に理由つけて押しかけて来るかもしれない。
なんだかんだで賑やかな夕餉、それが終われば風呂入ってまったりして寝る。そんな日々。素晴らしいじゃねえかと男は笑う。
世界は素晴らしい、戦うだけの価値がある──かつて酒と薔薇の日々に溺れた文豪の言葉を藤原は思い出す。
同感だクソ野郎。この日々を、この子を守る為ならなんだってやるさ。
視線を感じた方角に一瞥し宣戦布告とばかりに男は笑う。口の端から覗く犬歯を隠そうともせず。
やがて二人が去った頃、地上十二メートルの中空から囁く声。
「怖いですネェ。流石ヘルマシェーテ」
電信柱の上に立つ影ひとつ。あからさまに怪しいカタコトでつぶやく謎のガイジン。
「老いても狼と言った所でスカ」
ママーあのおじさん変だよー。しっ!見るんじゃありません!
おい変態だぞ警察呼べ!おい物干し竿持って来い!突付け!突付け!
「オウッ!止めなサイッ!決して怪しいモノではアリマセーン!」
商店街の皆様から投げつけられる小石とか空き缶とかイワシの頭とかを、怪しい語尾で制しながらも軽やかに避ける電柱の怪人。
しかし投げ付けられたブツの中に卵を発見。しっかりキャッチするちゃっかりさん。
「オウ!イッツァ、タメイゴゥ!これは貴重なタンパク源でス!」
グッドプロティン!センキュー!と笑いながら電柱の上から上を軽やかに伝い逃げていく謎のガイジン。
残された商店街の皆様はただもう唖然。しかしその中の一人がぽつりと呟く。
いやお前、卵はエッグだろう。
■
おかあさん。震える声で娘が呼ぶ。
十一歳の夜。風呂の中、じわりと滲む赤は、やかて浴槽の中を朱に染めた。
浴室の戸を開けた母は、一目見て全てを理解し、一瞬寂しそうな顔を浮かべ、そして微笑む。
──そっか。あんたも女になったんだね。
浴槽の脇に腰を降ろし、娘の頭を撫でる母。
そして彼女は風呂の中に手を入れ、ちゃぷちゃぷと朱に染まった水を波立たせる。
娘の小さな肩に寄せては返す赤い波。おめでとう。娘の耳元で囁き、濡れるのも構わず娘を胸に抱き寄せる。
──あいつが恋しいかい?
母の胸に抱かれ、こくりと頷く娘。そっか、そうだよね。
優しく耳元で囁く声が娘の脳裏に染みていく。豊かな母の胸、その感触に身を委ねる。
目を閉じれば、温かな赤い水はまるで、子宮の中にいたあの頃の様に心地良く、鼻腔に広がる鉄錆に似た匂いさえ懐かしく。
──あいつに会いたいかい?
うん、と娘が小さく返す。そっか、そうだともね。
ぎゅっと抱き締める母の腕。胸から伝わる彼女の鼓動。
とくん、とくん、と脈打つリズムが娘の耳に木霊する。
──アタシを、殺したいかい?
どくん、と娘の鼓動が跳ね上がる。
「──ッ!」
目を空ければいつもの天井。
浴槽の中、一回り大きくなった肩を抱く真澄。
「なんで──今頃」
忘れていたのに。十七歳の娘が首を振る。
小さく波打つ青い湯船。ラベンダー、お気に入りの入浴剤。理由は色、ただそれだけ。赤くなければなんでもいい。
緑でも黄色でも何でもいい。紅くなければそれでいい。そして胸に手を添える。
あの胸に比べ自分の胸はなんと薄いのだろう。やがて指先に伝わる振動。とくとくとくんと早い鼓動。
落ち着け、落ち着けと言い聞かせる。抑えろ、抑えろと己を制する。小さな胸は未だ自分が子供の証。大丈夫だ、まだ大丈夫だ。
だから落ち着け自分の鼓動。あの男は自分を捨てた憎き父。そう思え思い込め。大丈夫だ、まだ大丈夫だ。だから抑えろ自分の本能。
「何やってるんだろ、私」
肩を落し、口元を湯船に沈め、下唇を噛み締める。
微かに鉄錆の味がした。
■
ずう、ずずう、と縁側に座り茶を啜る影二つ。
「玉子焼き、大変美味でありましたよ、藤原」
「おう、なんたって俺ぁ藤原家玉子焼担当大臣だからよ」
ずずう、ずずずう、と再び茶を啜る音が重なる。
「町に面白いものが来ておりますね、藤原」
「やっぱ気付いてたか。ありゃ何だ?」
「かの地よりの者でしょう。ですがお前に似た匂いも致します」
「ふーん。ま、いいけどよ」
「真澄の事は心配せずとも良い」
「なんだおめえ、随分とお優しいじゃねえか」
「あの娘に何かありましたら夕餉が困ります故に」
「ふん。なら勝手にやらせてもらうぜ」
ずずずう、ずずずずう。茶を啜る音がユニゾンを奏でる。
「そういや来月だっけか?郷土資料館の五周年記念式典」
「早いものですね。お前達と出会ってはや五年でありますか」
「ふん。てめえにゃ瞬きにすりゃならねえだろうが」
「人並みに歳月は感じておりますよ、藤原」
たん、たん。と縁側に置かれた二つの湯呑み。
「さて藤原。答え合わせを致しますか」
相変わらずの無表情、抑揚の無い声で繭子が告げる。その顔を見て、やけに楽しそうじゃねえかと藤原は笑う。
最近この人形顔にも慣れてきた。なんとなくではあるが読めるのだ。
「要市縮尺模型図、あれおめえが作ったんだろ?繭子」
「ほう。何故そう思われますか」
「おめえくれえなモンだ、あんなん作れんのは。それにな」
ありえねえモンがあんだよ、と藤原は言う。
五年前あれを始めて見た際に粟川が話した経緯。
建設予定地で見つかった予想外の岩盤、中断する工事、一夜にして現れた模型図、仕様変更を受け完成した当時の商工会議所。
「なんで模型図にあの建物があるんだ?」
藤原は気付いた。模型図に存在するかなめ市三大古臭い建物。
市庁舎、市役所前駅、そして当時の商工会議所にして現かなめ市立郷土資料館。
建設前に現れた模型図にも関わらず何故それが存在するのか。
そして彼は町のヌシに問う──すべて後付けの話なんだろ?と。
「あの建物は、模型図を内包するために作られた箱。違うか?」
「ならばお前はあれを何と思いますか、藤原」
「町のアーキテクト。模型図じゃねえ、原型図だ」
五年を経て確信する。あれはそういう物なのだと。
市庁舎も駅も、そればかりか真澄の通う私立青陵女子高校も、市政開始時に建造された全ての建物は歴史を辿れば全て百年。
一世紀前にこの町は忽然と現れた。山々に囲まれた何も無い平地に。その時何があったのかは知らない。しかし藤原は確信する。
要市縮尺模型図とは町を模して作られたものではない。町があれを模して作られたのだと。
「お前にしてはまあまあですね藤原」
「おめえ一体何モンなんだ、繭子」
「大家です」
「いやまあ、そうだろうけどよ」
五年の付き合いで藤原は気付いた。彼女は決して嘘は言わないと。
だがその言葉の何を取るかによって答えが変わる事も理解出来た。
彼女の曖昧な言葉は、受け手によってはまったく逆の意味になりかねないのだ。
敢えてそうしているのか、底意地が悪いのか。否、と藤原は思う。彼女の真意を理解するには、ヒトは未だ小さすぎるのだ。
深淵を覗く者は深淵に覗かれるという言葉があるが、繭子はまさにそれだ。
ヒトは気付けないだけだ。自分の除いた大穴、深淵だと信じていたそれは、実は巨大な眼球の一部だという事に。
果たして彼女の視るヒトとは一体、どのように映るのだろうか。一度聞いてみたいものだと藤原は思う。
「ヒトはヒトです。それ以外ありませぬ」
「勝手に心読むんじゃねえよてめえ」
まあそれはいい、だがよ、と彼は敢えて問う。
「あの下に、何があるんだ?」
いや、違うな、と藤原は言い直す。
「あれ自体が何かの一部じゃねえのか?氷山みたくよ」
繭子は答えない。沈黙、それは肯定の証か。
「ま、別にいいけどよ」
そこで藤原は言葉を止める。それ以上は問うまいと。
全てを知った時、この楽園の日々は終わる。彼にはそう思えてならないからだ。
ならばそれは聞くまい。このままやり過ごせるならばそれでいい。それでいいのだ。
「かつて、お前と同じ答えに辿りついた者がおりまする」
「市長──粟川さんか」
「一度聞いて見るが良い。わたくしの言葉では伝えられぬものも、あの者を介すなら」
「いや、いいわ。興味ねえし」
「お前は本当に面白い男ですね」
しかし、と常世繭子は彼に告げる。
「見ないふりも過ぎれば、取り返しのつかぬ事となり得る。心に刻みなさい、藤原」
その言葉は、藤原の芯に染みた。
■
夜もふけて、家の灯が落ちる。
「真澄おめえよお、いくつになったっけ?」
「十七だよお父さん。なんなのよいきなり」
「そうだよな、そうだよなあ」
ガバっと立ち上がるお父さん。居間の電気点灯。
「もういきなりなんなのよ!眩しいよ!」
「真澄、そこに座りなさい」
藤原が見下ろす足元で、のそのと起き上がる娘。
「さて真澄。久々に質問です。何をしているのかね君は」
「添い寝だよ。フジワラスタイルじゃない」
「うんそうだね真澄。しかしフジワラスタイルシーズンワンは君の中学入学と共に」
「御好評を博しましたのでセカンドシーズンに突入します」
「そっかあ四年を経て復活かあ。だがね娘良く聞きなさい。二期は大概失敗と相場が」
「ますみこどもだからよくわかんない」
「よしッ!腹割って話そうッ!夜通し話そうッ!」
藤原、久々のグッドダディモード三分で終了。
「小学生ですら危ういのに高校二年生にもなって添い寝とかねえってんだッ!」
「人恋しい年頃なのよ甘えさせなさいッ!」
その瞬間、ばっと同時に窓を見る二人。大丈夫だヤツは来ない。学習したフジワラ親子。
「いったいどうしたんだよお前、今日に限ってよぉ」
「どうもしないわよ。ははぁさてはお父様、たわわに実った甘い果実に辛抱たまりませんのかしら?」
「たわわ?ほほう、たわわねぇ。娘よたわわとはざわわとは違うのだよ。もう少し立体的にオウトツってもんが」
ヒュンと娘の鋭い蹴りが跳ぶも紙一重で避けるお父さん。
最近本気出さないと危なくなってきました。娘の蹴りはマジで痛いのです。明日に響きます。
「避けましたわねお父様」
「当たり前だとも娘。お前の蹴りは骨まで響く」
「まあいいわ。とりあえず電気消して」
「いや待て話はまだ」
「消して」
「はい」
今日の娘は妙な迫力が御座います。
目が座っているというか、目がスリナムジンドウイカっぽいというか。要約しますとお父さんこわい。
「あのな真澄、お前はもう大人」
「子供だもん」
ぎゅっ、と藤原の背中から回される細い腕。
「今日だけは──お願い」
怖い夢、見ちゃったから。小さく呟くその言葉が藤原の力を抜く。
「今日、だけだぞ」
「──うん」
なんだかんだ言って俺も甘いよなあ、と藤原は苦笑する。
背中から回された娘の腕は五年前に比べ随分と長くなった。背丈も自分の胸元まで伸びた。
背中に当たっているであろう胸の感触についてはノーコメント。怖いから。
つまりはまあ、これくらいのガギは直ぐに大きくなりやがる。けれど子供はやっぱり子供なのだ。そう思うことにする。
最近とみに綺麗になったとか、やけにあの女の面影が重なるとか。それでも真澄は真澄、可愛い可愛い砂糖菓子に違いない。
こうやって懐いてくれる内が華だ。なに今に俺なんざ歯牙にもかけなくなるさ。
いい男が出来て色気づいてある日お父さん紹介したい人がいるのとか言われた日にゃきっと泣く。んで男ブン殴る。
そうやって離れていくのさ。寂しいけどそんなもんだ。これが普通さ。けれど。
──見ないふりも過ぎれば、取り返しのつかぬ事となり得る。
くそったれ。この胸騒ぎは何だ。
■
結局お父さん、一睡も出来ませんでした。
「いってきまーす!」
「いってらっさーい」
娘はぐっすり眠れたようでお父さん安心。目の下にクマなど出来ておりますが。
「眠いなあ、オイ」
などと言っても部屋には一人。なんだかんだで御気楽な部署。
すっかり定番となった二階のコーヒーを啜りながら、肩をぐりぐり回す藤原。寝返り出来なかったツケが今頃来たらしい。
駅で別れた真澄は昨夜の事など微塵も感じさせず、いつも通り元気な娘だった。
あの年頃の娘というのは何かと不安定なのだろう。きっとそうだ。そう思う事にする。
気を取り直して端末に目を向ける。
各種新着情報を流し読みする藤原であったが、本局調査部からの定例報告の中に少々見逃せない項目を発見。
「──ふん、なるほどね」
そういう事か、と専用ブラウザを開き調査部のカネトモを呼び出す。
モニターの向こうで開口一番、藤原さんお久しぶりですどうっすか初号機の調子は?
と彼が譲ってくれた軽トラの話題を軽く流しつつ本題を切り出す藤原。
そこで取り交わされた会話を要約すると。
曰く、ヴォクスホールに妙な動きがある。
曰く、英国経由で同国籍の男が一ヶ月前入国したと入管リストに記載。
曰く、照会したところ元SASらしい。
曰く、現在の所属は不明だが恐らく〈青〉──魔道第五師団絡みなのは間違いない。
「──解った。たぶんそいつ、こっち来てるわ」
経過報告を約束しブラウザを閉じる。時計を見れば一時過ぎ。この時間帯はもう食堂の定食終わってる。
仕方ねえ閑休庵か、と上着を羽織り、念のため腰溜めに得物を仕込み、やや遅い昼食へと出向く藤原。
市庁舎前の駅に入ればつんと鼻先をくすぐる出汁の匂い──しかし。
「オヤジサン、葱は抜いてクダサイ。具なんぞ女の厚化粧に過ぎまセン。
麺と蕎麦のソリッドなハーモニーがいいのでス。あ、でもタメイゴゥは入れてクダサイ。それグッドプロティン!」
なんかいました。
■狼の娘・滅日の銃
■第八話/マスミ・セブンティーン■了
■次回■第九話「敵か!? 味方か? 月見のベア」
※おまけェ…2
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