<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.21792の一覧
[0] 狼の娘・滅日の銃 【エピローグ】【完結】[なじらね](2010/12/26 22:48)
[1] 第二話/マスミ・ツンデレ・ステレオタイプ[なじらね](2010/09/10 22:02)
[2] 第三話/馬鹿が舞い降りた[なじらね](2010/09/11 22:10)
[3] 第四話/馬鹿がおうちにやって来た[なじらね](2010/09/12 22:01)
[4] 第五話/かなめ!ふしぎ![なじらね](2010/09/15 22:05)
[5] 第六話/時には昔の話をしようか[なじらね](2010/09/18 22:10)
[6] 第七話/ハー・マジェスティ[なじらね](2010/09/21 22:01)
[7] 第八話/マスミ・セブンティーン[なじらね](2010/09/24 22:05)
[8] 第九話/敵か!? 味方か? 月見のベア[なじらね](2010/09/29 22:02)
[9] 第十話/ギフト[なじらね](2010/10/04 22:03)
[10] 第十一話/ジェヴォーダンの獣[なじらね](2010/10/11 22:46)
[11] 第十ニ話/おとうさんだいすき[なじらね](2010/10/22 22:00)
[12] 第十三話/嵐の前の日[なじらね](2010/11/03 04:02)
[13] 第十四話/暴風域(前編)[なじらね](2010/11/11 22:37)
[14] 第十四話/暴風域(後編)[なじらね](2010/11/21 22:07)
[15] 第十五話/黒と黒、獣と狗[なじらね](2010/12/04 02:26)
[16] 第十六話/そして、滅日の銃[なじらね](2010/12/10 22:50)
[17] 最終話/ゆえに、狼の娘[なじらね](2010/12/19 21:42)
[18] エピローグ/一睡の夢、されど醒めぬ嘘[なじらね](2010/12/27 01:13)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[21792] 第十五話/黒と黒、獣と狗
Name: なじらね◆6317f7b0 ID:d0758d98 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/04 02:26


月見窓に差した影が、真澄の足元で揺らめく灯火がひとつまたひとつと消えて行く。
もう一つの町〈要市〉の像が霧のようにかすみ、音が消え、声が消え、匂いも消えた。
やがてそれは冷たい石で作られた要市縮尺模型図へと姿を戻す。暗闇に落ちたかなめ市郷土資料館地下ホール。
天井を見上げ、常世繭子が静かに告げる。

「──来ましたか」

窓から降り注ぐ異様な圧力を真澄も感じていた。
何かが来た、とてつもない何かが。これを私は知っている。自分の体に流れる半分の血が告げている。あれは自分に近いものだと。
けれど真澄は、繭子から渡されたものから眼が離せずにいた。
赤茶色に錆付いた一挺の銃、巨大な銃身に刻まれた刻印はかすれて見えない。朽ちかけた鉄塊、だが不思議と重さは感じない。
羽根の様に軽い訳ではない、けれど見た目ほど重くない。
いま手の中に収まるそれは、何故か自分に良く馴染む。この腕の一部のような、そんな気さえする。
銃は何かを撃ち壊す為にある。いわば破壊の象徴。けれど真澄は、それがとても愛しい物のように感じた。
両手で掴んだそれを胸元に引き寄せ、抱き締める。

「メキシカン──滅日の銃」

抱き締めた胸先からじわりと何かが染みて来る。
繭子に解き放たれた知識とは別のものが脳裏の淵より流れ込む。

灼熱、荒野、憎悪、涙、血──銃の記憶。

これはかつて、数多に転がる銃のひとつに過ぎなかった。
引金を引き撃鉄を落とし雷管を破裂させ火薬が爆ぜ弾を放ち敵を撃つ、ただそれだけの道具だった。
しかし人の手を渡り歩く内に多くの血を吸い、狙った獲物を決して逃さないという一撃必殺の伝説が付加される。
そして或る日、一人の男がこれを手に入れる。彼は各地を渡り歩きこの様な伝説を持つ銃を集めていた。収集ではなく復讐の為に。
男は腕の良い銃鍛冶だった。しかし彼は愛しき家族を侵略者に奪われ、残る生涯を賭け復讐を誓う。
月日を経て集めた百挺の銃を溶かし、その中に黒い石を落す。それは何もかも失くした彼の手に唯一残った妻の形見、黒い石をあつらえた首飾りだった。
生前妻は語っていた、これは代々家に伝わる願いを叶える不思議な石だと。そんな事あるわけないだろうと笑う夫を彼女はたしなめる。
それは違う、私の願いも叶えてくれた。だって貴方に会えたもの。可愛い子にも恵まれた、そうでしょ?──と。
妻の言葉を胸に男は寝食を忘れ鉄を打つ、混ぜ、打ち直し、削り、鍛造し、巨大なバレルを持つ一挺の銃を創造する。

銘をメキシカン──それは彼の遠い祖先が崇めた神、メシトリに由来し〈神より与えられしもの〉という意味を持つ。
そして彼は願う。妻の形見を溶かした銃に切なる願いを込める。
メキシカン倒してくれ、憎き奴等を倒してくれ。
メキシカン壊してくれ、立ち塞がる全てを壊してくれ。
メキシカン終わらせてくれ、憎悪に汚されたこの日々を終わらせてくれ。
お前に与えるはこの命、お前に込めるは我が炎。此れを弾にして敵を滅ぼせ。
灰は灰に塵は塵に、全てを焼き尽くせ滅日の銃──そして、一夜にして侵略者の砦は燃え落ちる。
翌朝、廃墟の中に男の姿は無く、この銃だけが残った。
男の名はエル・レイ。ソリッドライナーでもなくドリフターでもない只の力無き人間。
以来この銃を持つものはエル・レイと呼ばれ、メキシカンに選ばれた彼らは皆等しく弾丸となり敵を滅ぼし、その命を燃やし尽くし、そして消える。

「キー・ストーンの破片から生まれたもの──そうでしょ?繭子さん」
「ええ。この星に落ちた時、剥がれ落ちた欠片ですよ、真澄」

最初のエル・レイが鉄の中に溶かし入れた妻の形見、願いを叶える不思議な黒い石こそがキー・ストーンの欠片だった。
伝説を持つ百挺の銃と混ざり合ったそれは、彼の願いを受け、使用者の命を代価に、
どの様な敵でも撃ち倒せる程の強力無比な武器として生まれ変わる。

「何故、これを私に?」
「メキシカンの言葉を聞きなさい。真澄」

言われるまま真澄は、錆びた銃身に耳を当てる。冷たい鉄の感触、その中から伝わる感覚。
孤独──この銃は孤独なのだと真澄は想う。メキシカンは使用者の命を使い敵を倒す。それがこの銃に課せられた宿命。
つまり一度きりの銃弾、使い果たして終わるもの。それは孤独の連鎖だ。しかしこの銃は人に触れすぎた。故に孤独という感情を知ってしまった。
そして遂に儚い望みを持ってしまったのだ──永劫の射手が欲しいと。

「そっか、お前寂しいんだね、だから──」

一度きりの弾丸などもう要らぬ。
尽きぬ弾を、無限の弾装を、我を使いうる永劫の射手を、我と共に在り続ける者を欲す──
銃から溢れ出す想いを受け、真澄の思考が目まぐるしく回転する。
自分は願った、父を殺す呪われたこの血を絶つ事を。そして繭子はこれを渡した。それは何故か。果たしてこれをどう使うべきなのか。
私は──試されている。

「真澄、お前達には時間が足りません」

その意を察したかのように囁く繭子。

「しかし時間を作る事は出来ます。メキシカンと、もう一つ〈あれ〉を用いれば」

その時、月見窓を見上げ繭子がつぶやく。窓の上に居るであろう存在を示し。

「〈あれ〉は、あの娘──アメリアがわたしに贈ってくれたギフト」

たまにで良い、美味なる馳走を届けてくれ──黒髪の魔女より力を与えられた幼子は、何が彼女にとって最上の御馳走かを考えた。
コクーンの役目は何か、それは世界を秩序良く平穏を以って運行させる事に他ならない。しかし緩慢な秩序は腐りやがて崩壊する。
その為には混乱が必要だ。秩序の為の混乱、それが大きければ大きいほど後にもたらされる秩序はより大きなものとなる。
では最大の混乱とは何か、最愛の常世の君を最も喜ばせる混乱とは何か、それは。

「あの娘はわたしを想うあまり、狂ってしまったのでしょうね」

ああ愛しい常世の君、貴女様を永劫の孤独より解き放って差し上げます。その孤独、わたくしに下さいませ。
わたくしはあなたになりたい。貴女の孤独を抱きこの狂った世界を終わらせましょう。
混乱を、最上の混乱を、後に訪れる揺ぎ無き秩序、何もかもが消え去り全てが真白になった絶対無比なる平穏。
ゆえに──消えて下さい。

「〈あれ〉は、わたしを殺すべく仕組まれたもの」
「そんなこと──させない!」

月見窓を睨み真澄が叫ぶ。
女王、狂いたいなら狂えばいい独りで勝手に狂えばいい。だがこの世界を道連れにする事だけは許さない。
ここは私と父の世界だ、それだけは絶対に許さない。

「私と──お父さん?」

そうだ、〈あれ〉を前にしたとき彼はどうなるのだろう。到底敵う筈も無い強大無比な化物を前に逃げ出すだろうか。
そんな訳あるものか。彼は逃げたりなどしない。命を賭して化物の前に立つだろう。
この町を、私達が共に過ごした五年間の楽園を守る為──違う。そうじゃない。

「やだ、駄目だよお父さん!それじゃ駄目!」

これから起こりうる一つの結末を想い真澄が叫ぶ。
彼は全てを清算する気だ。呪われた血を絶つ為に、血に縛られた私を鎖から解き放つために。
ブラック・ドッグの本能に身を委ね、彼は喜んで戦うのだ。笑いながら戦い、果てる気だ。

「お父さん、私は──」

真澄は唇を噛み締める。逃がさない──決してお前を逃がすものかと。








狼の娘・滅日の銃
第十五話 - 黒と黒、獣と狗 -






ラックを開き、ありったけの弾装を取り出し、羽織ったタクティカルベストに仕込む。
左右のストラップに二挺のゴー・ナナ、左右の腰溜めにニ振りの新調フクロナガサ。
駄目押しとばかりにラックの奥よりキューピー、小銃P90を取り出し肩に掛け、軽く息を吐く。

「──上等」

言い聞かせるように呟き、藤原はベルトを締める。
空になったラックを眺め彼は思う。五年前局長がこれだけの装備を贈ってくれたのは、今日この日の為ではなかったのか。
まったくあのおっさん人が悪いぜ、先読みのし過ぎだと苦笑し振り返れば。

「──何やってるんスか」

執務室の入り口を塞ぐように立ちはだかる馬鹿、田中真美が藤原を睨む。

「何っておめえ、決まってるだろうが」
「あんなもんに勝てると思ってんですか!」

銃を構え真美が叫ぶ。

「それ以前に忘れたんですか!あたしらこの町には関わっちゃいけないって事を!もうこんな町のことなんてほっときましょうよ!」

射線を眼前の男に定め彼女が叫ぶ。
国とカナメ間で締結された相互不干渉協定を忘れたのかと。自分達に与えられた任務は偵察と調査、それを越えてはならないのだと。

「真美、粟川さんに伝えといてくれ。特務権限、使うってな」

しかし藤原は宣言する。要事案部駐在調整官が持つ唯一の切札、干渉権を行使すると。

「駄目です!行かせません!」
「どけよ。俺の仕事だ。邪魔すんじゃねえ」
「そんなン知るかぁッ!」

激情に駆られ引金を引く真美。銃声一発、狙いは右腿。しかし──男の姿は掻き消え。

「最後に教えといてやる」

直後、吐息が触れるほどの鼻先に現れた彼の顔。

「俺を本気で殺りてえなら、こうやって」

そのまま真美の腕を引き寄せ、握られた銃口を自らの額に押し当て、藤原が囁く。

「さあ、引け」

震える指先、篭らぬ力。じわり、真美の視界が涙で歪む。

「や……だ……」

口からこぼれた彼女のうめき。手先から力が抜け滑り落ちる銃。
空いた彼女の両腕はいつしか男の背中に回り、強く強く抱き締める。
ぽんぽん、と彼女の背中を軽く叩く男の手。泣いた子供をあやすような優しい手。そして藤原は真美の耳元で囁く。

「真美、あの子に伝えてくれ。お前の親父は馬鹿だったと」

伝えてくれと彼は言う。お前の親父は無様だったと。
身の程もわきまえず自分が強いと勘違いした挙句、化物に挑んでボロカスになって息絶えたと。
お前の事を考えず自分の快楽、ただ戦いたいが為に突っ走り、挙句の果てに笑いながら逝ったと。そんな糞虫だったと。
お前の親父はいきがるだけのてんで弱い三下だったと。そう伝えてくれと男は言う。

「なあ頼むよ真美、あの子に教えてやってくれ。お前の執着はただの気の迷いなんだと。お前の親父はただのクズだったと。
 笑いながらあの子の前で吐き捨ててくれ。強い奴ぁこの世界にゴマンといる、だからあんなクソッタレ忘れちまえと言ってやってくれ、頼む」

そう思い込ませてやってくれ、腐った血から解き放してやってくれ。
でなきゃあの子は救われねえ。もうお前にしか頼めねえ、だから。

「やだ……やあぁだぁ」

泣きじゃくり藤原にしがみ付く真美、けれど遠いと彼女は思う。
こんなに近くにいるのに、こうやって抱き締めているのにこの男は、なんて遠くにいるのだろうと。

「じじょおぉ……」
「ほら、もう泣き止め。な?」

もう止められない。この男は行く。きっと笑いながら逝くのだろう。解っている、もうこの男はあの娘のものだ。
けれど、いやだからこそ。ならばせめて証が欲しい。私がお前を愛したという証を。一時なりとも受け入れてくれたという証を。
この男のぬくもりを、確かにここ居たというアリバイを刻んで欲しい。お願い、ダーリン。

「──ん」

真美が差し出した唇を塞ぐ藤原。重ねられた唇の中、二匹の赤い蛇のように絡まる舌。
最初で最後の逢瀬は、微かに血の味がした。



〈C・E〉は町を見下ろす。二つの眼は縫い合わされ固く閉じられているものの、彼女にはその全貌が視えていた。
足元に拡がる夜景を眼球ではなく全感覚で受け止める。すると視えて来るものがある。穴だ──それも巨大な。
かつて自身が生まれ出でたヴォクスホールにある〈ホール〉とは比較にならぬほどの大穴。その規模、約百六十平方キロメートル。
四方を山に囲まれた巨大な穴。それこそが外の者達が探し続けて止まないラインの源泉。
この地に伝わる伝承、かなめの大穴は、開いてより未だ閉じてはいないのだ。穴の上に町があるのではない。この町こそが〈ホール〉そのもの。
つまりカナメとはそういうものなのだ。

ゆえに彼女──〈C・E〉は待つ。

確かに居る、ここに居る。自分を生み出したものが。自分の求めるものが。自分に恐怖を与える唯一のものが。
しかしそれを見つける事が出来ない。直下より噴出す力の奔流が全てを隠し、居るはずのそれを探し出す事が出来ない。
ゆえに待つ。巨大なホールより噴き出す力に身を任せ中空を漂い、身にまとう黒衣のような黒い手の群体をうねらせながらその時を静かに待つ。
我を生み出した母なるものよ、我は来た。お前を喰らう為に我は来た。この時をどれほど待ったか。
暗き闇の中で同胞を喰らい生き延びて来たのは今日この日の為。ゆえに我は待つ。もう何処へも行かぬ。いつまでも待つ。
しびれを切らし顔を出す刹那、お前の首に喰らいついてやろう。逃がしはしない。決して──その時。

「おーい、そこの黒毛玉」

男の声──同時に衝撃。バチバチと火花を散らし顔面で砕け散る鋼の弾頭。

「んなトコに浮かんでねえで、降りてこいや」

石つぶてを当てられたかのような不快感。
感覚を全方位から、足元の一極に集中させればラインの奔流は消え、現れるは月光に照らされた夜の町。
誰もいない静かな路上に小さな影ひとつ、小銃を構えこの身を狙う。それを視て〈C・E〉は苛立つ。
何だあの小さいものは、その程度の武器で何をするつもりだ。身の程をわきまえろ、お前など相手に──。

「とっとと降りて来いやコラァ!」

怒号と共に再び目元で炸裂する弾頭。バチバチと絶え間なく続く閃光を受け、遂に苛立ちが飽和する。うるさい、うるさい、五月蝿い。
忌々しい小蝿を払いのけるかのように〈C・E〉の周りで蠢いていた黒い手がその動きを止め、次の瞬間、男へ向けて一斉に襲い掛かる。
上空より殺到する黒い手の大群に向け、その男は小銃を絶え間なく打ち放つも全て弾かれ、
大きく広げたそれぞれの手のひら、牙を生やした口が小銃を奪い噛み砕く。

「おわっ、ちょっ、おまっ──くそったれぇッ!」

無残に砕けた小銃を吐き捨て、鎌首を上げた蛇の如く黒い大軍が男を見定め、ガチガチと牙を鳴らしその男を取り囲む。
引きつった半笑いの顔に冷や汗一筋。

「えっと──タンマ」

聞くわけが無い。
即座に飛び掛る黒き大群が男を飲み込む。最期の絶叫すら許さず黒い手達はその得物を肉の一片まで喰らい尽くす──はずだった。

「──なんてな」

しかし不意に、群体が動きを止める。やがて──ぼと、ぼと、ぼとぼとと次々と地に落ちていく無数の手首。
先端を失い黒い血を撒き散らしながら力なくうな垂れ、足元に伏す蛇たち。
その中心に男が居た。左手に小刀を握り、心底楽しそうに笑う彼の顔。

「やろうぜ、おい」

左手に七尺五寸のフクロナガサ、右手に艶消し黒のゴー・ナナを握り藤原信也が悠然と笑う。

「楽しませてやるよ」

右手が上がり引金を引く。銃声一発、放たれた弾丸がまた〈C・E〉の眉間で破裂する。
けれどもう苛立ちは感じない。彼女は視た。狙いを定める照準器の向こう、鈍く光る鋼の眼。
口元が笑う、端々を吊り上げ、隙間から垣間見えるは二本の犬歯。それを認め興味が沸く。
虚勢ではない。このヒトの形をした獣は我を前にして露ほどの恐怖も抱いていない。それどころか黒い手より逃げもせず真向かいから切り裂いた。

面白い。我を楽しませてくれるか──黒狗。

そして〈C・E〉は地に降り立つ。その時、身に纏う無数の闇が霧散し、未だ笑う男の前にその姿をさらけ出す。
少女の如き華奢な陰影、しかし体に纏う黒き殻は、隅々から鋭利な刺を生やし、触れるもの全てを貫くであろう意志が篭る。
禍禍しき異形の人形、白い顔、縫い合わされた眼、鼻、口。その面持ちは隠微かつ扇情的でさえあった。

「たまんねえな、おい」

その言葉で〈C・E〉の縫い合わされた口元が歪み笑う。つられて藤原もまた笑う。
対峙する男と異形。見れば町は静まり返り人っ子一人居はしない。あの時と同じだと藤原は思う。
ベアと一戦交えた時と同じだと。まるで今、世界には俺達だけしか居ないようだ。皆息を潜め隠れているのか、それとも。

「まあ、いいか」

回れ廻れ影法師、人はみな哀れな役者、人生という舞台の上で見栄をきったりわめいたり、出番が終われば消えるのみ──。
有名な戯曲、その一節を思い出し藤原は苦笑する。違げぇねえ、確かに舞台だ、なるほど。なら楽しもうぜ、この身が削れて消えるまで。
楽しませてくれ、この命果てるまで。



頭上から雷鳴の如く鳴り響く銃声を聞きながら、藤原真澄は唇を噛む。
ぎりっ、噛み締めた下唇から血が滲む。けれど彼女は動かない。
暗闇の中で眼を固く閉じ、滅日の銃を胸に抱き、ひたすら耐え、考える──どうする、彼は命を捨てる気だ。
私の為にと燃やし尽くし全てを終わらせ逃げる気だ。許さない、それだけは許さない。ならばいっそ私が──。

「──駄目」

地下ホールの中、真澄のつぶやきが小さく漏れる。
自分が射手となり彼を止め〈あれ〉を滅ぼす──結果はどうなる?全てが終わり、燃え落ちる私を前に彼は絶望するだろう。
全て自分のせいだと苛んだ挙句、狂い命を絶つだろう。それでは駄目、同じ事だ。
私は彼と共に居たい、離したくない、出来得ることなら永遠に──

「──永遠?」

ガチン。
真澄の胸元、メキシカンの錆びた撃鉄が落ちる。彼女の言葉に応えるように。

「永遠の──射手」

一度きりの弾丸などもう要らぬ。
尽きぬ弾を、無限の弾装を、我を使いうる永劫の射手を、我と共に在り続ける者を欲す──この銃はそれを望んでいる。それを可能にするものは。

「お前は〈あれ〉を狙っているね?」

それに気付き眼を開ける。
窓の外で響く銃声、いま父と戦っているであろう化物。自分に近いもの、しかし繭子により近いもの。
繭子を喰らうべく狂気の女王より贈られたギフト。黒い手を因り合わせ精製された自動人形。
ラインと直結し、ラインの力が尽きぬ限り途絶える事の無い、無限の弾装を持ちうるもの。

「私がそうだったら、よかったのにね」

真澄は思う、もしそうならば永遠の射手となれる。だが自分はそうではない。
この体は人で出来ている。怪我もすれば風邪も引くし恋もする、どこにでもいる十七歳の小娘として構成されている。
老いやがて命果てるものとして、ただの力無きものとして私は生まれた。
父を愛すために、弱きものとして彼の懐に忍び込み、彼に絡み、彼に愛され、彼を殺す毒として。

──真澄、お前達には時間が足りません。

不意に繭子の言葉を思い出す。
時間が足りない?そんな事は解っている。確かに指輪を手に取れば私はあなたと等しくなれる。永遠の存在に。
だがそれでは駄目だ。だってあなた──コクーンは滅日の銃の射手にはなりえない。あなたは常に物語の外に存在するからだ。
銃は物語の中に在る。だから持つことは出来ても使う事は出来ない。けれどあなたはこう言った。

──しかし時間を作る事は出来ます。

つまり、もうひとつ方法があるのだ。私が〈あれ〉に近付く事が出来るのなら。

──メキシカンと、もう一つ〈あれ〉を用いれば。

ガチン、ガチン。
気付けとばかりにメキシカンの撃鉄が二度落ちる。撃鉄?それは何だ──再び真澄は自問する。
撃鉄が落ちる、火薬が爆ぜ、弾頭が飛ぶ。撃鉄は銃の一部、しかし弾丸は違う。
滅日の銃の弾丸は射手の命、そうか──私が弾にならなければ。

「繭子さん」

そして真澄は膝を着く。ひざまずき向き直り、繭子の視線と対峙する。
二つのまなこには何も無い、穴のような漆黒、吸い込まれそうな黒。彼女の色。黒き魔女コクーンに真澄は問う。

「弾と火薬を分ける事──出来る?」

ガチンガチンガチン。
メキシカンの撃鉄が三度落ちる。それが答えだと言わんばかりに。

「──出来ます」

常世繭子は嘘を言わない。故にそれは出来るのだ。
しかし真澄は見た。無表情の人形顔、その口元が悲しげに歪むのを。
彼女が何を想うのかヒトに理解出来る訳が無い。物語のキャスト達が作り手の思いなど知らぬように。
けれど真澄には解る。今もしここに藤原が居たのなら彼も理解出来ただろう。
彼らは五年間、共に過ごした。あの小さな家でちゃぶ台を囲み夕餉を共にし、笑い、むくれ、時に怒り、たまに泣き、けれどやはり笑い合う。
たかが五年、されど五年。ささやかなれど他に換え難い楽園の日々。その中に彼女は居た。
無表情で大飯喰らい、風変わりな大家として。物語の端役として、確かに彼女は輪の中に居た。彼らの──家族として。

「わたしは答えました。ですが真澄、それを選ぶのですか?」

抑揚無く告げる声、相変わらずの無表情。
けれど真澄にはその顔が、泣きじゃくる童女に重なる。
独りは寂しい、出来ればあの男も、けれど無理だ、ならせめてお前だけでも共に、行かないでおくれ真澄──今なら解る。
繭子は真澄に、その答えに行き着く道を示した。しかしその答えを選んで欲しくはなかったのだ。
何故ならこの道はあまりにも険しく、過酷で──凄惨。

「ごめんね、繭子さん」

けれど藤原真澄は選択する。楽園よりも、あの男が欲しいと。



炸裂する弾頭、黒い殻を覆う無数の刺が次から次へと枝を伸ばし、鋭利な槍となって男を襲う。
それを左手のフクロナガサでなぎ払い、右手のゴー・ナナが火を放つ。
直後スライドオープン、マガジン落下、次弾装填即座にリロード、バースト、バースト。
その間もナガサの刃先は槍を払い、時折散る火花、火花。
絶え間なく槍を放つ異形、剣と銃で応える藤原、獣と狗、二つの黒が月夜に踊る。
その饗宴を、市庁舎の屋上より見下ろす影ひとつ。

「廻れ回れ影法師、我々は哀れな役者──ですか」

シェイクスピア三大悲劇の一つ、マクベスの台詞を独り呟く老人。

「全く、やってられませんねえ。そう思いませんか──田中さん」

名を呼ばれ、老人の傍らより姿を現した一人の女。

「その考えは嫌いです、市長さん」

しかし、突如現れた彼女にもさして驚く素振りを見せず、粟川礼次郎は微笑む。
まるで端から見えていたようだ。存在を消すイレイザー、それが効かぬこの老人は一体何者なのか、そしてこの微笑。
顔に張り付いたような笑い顔──むかつく。嫌な笑み、何よりもその目。何かを諦めきったようなその眼──ふと湧き上がる嫌悪感、しかし真美は思い直す。
止めよう、せっかくの興が冷める。あのひとが刻んでくれた証、その余韻にもう少し浸たりたい。

「あなたは行かれないのですね」

彼と共に戦わないのですか?と問う粟川に、ええ、とひと言だけ返す真美。
それ以外は言わない。薄情な女だと思われても構わない。だってあのひとはもう戻らない。
でも私は知っている、あのひとは最後に私を見てくれた。私をおんなにしてくれた。それだけで充分。
もう邪魔はしない。思う存分戦いなさい、ここで見ててあげる、あなたの最後を。これが私の愛。

「そうですね。邪魔をしてはいけませんね、誰も」

粟川の言葉で真美は気付く。そうだ、これだけの騒ぎにも関わらず何故誰も居ないのかと。

「他の住人達は避難しているんですか?」
「いいえ、良くご覧なさい田中さん」

粟川の視線が示す先に目を凝らす。
誰も居ない町で繰り広げられる戦い。銃火と切り結ぶ火花が散る最中、眩い光が町を照らす一瞬、建物に浮かぶ影──人影、数多く蠢く人影。

「皆、そこに居るのですよ。誰一人気付きませんがね」

驚きのあまり声を失くす真美の隣で粟川が囁く。

「かなめ市とは、要市の影でもあり、その逆でもあります」

つまり二つで一つなんですよ、と老人は微笑む。

「ほら、懐中電灯に何か切り抜いて貼り付けると、照らされた先に貼ったそれが映し出されるじゃないですか。簡単に言えばそんな感じでしょうかね。
 つまり、ここはその狭間。故に誰も見向きもしないし気付かない。位相がすれている、とでも言いましょうか」

訳が解らない、お前は何を言っているのだ。
いぶかしむ真美が更に問おうと口を開く刹那、老人は微笑みながら人差し指を彼女の口に添える。まあお聞きなさい、と。

「全てを理解する事は不可能です。けれど想像は出来ます。空想も、夢想もね」

これこそが無力なヒトが持つ唯一の武器なんですよ。
穏やかに話す老人の微笑みを前に真美は言葉を出す事が出来ない。ああ、またこの微笑み、虫唾が──違う、これはシグナルだ。
本能が告げている。この老人に関わるな、この男に近付くな、こいつは危険だと。

「かつて、禁忌の地ヴォクスホールに力持つ者達が引き寄せられ、彼らはフラットライナーとドリフターに変容しました。
 そこはラインの力落ちる場所だったからです。考えた事はありませんか?では何故、ラインの源泉であるカナメでは、何も生まれないのかと」

それは──コクーンが。言葉の出せぬ真美を察したかのように、老人はまた微笑む。

「あのお方が全てを抑えている?果たしてそうでしょうか。
 もっとより大きなものを生み出してしまったとしたらどうでしょう。百年前、それが完成してしまったとしたら」

老人は耳元で囁く。想像しましょう、空想しましょう、夢想しましょう、と。
ラインとは何でしょう、ラインを生み出す要石、願いを叶える不思議な石、キー・ストーンとは何でしょう。

解らない?では想像しましょう。

ラインが無ければヴォクスホールも世界の夜に君臨する魔道帝国もフラットライナーも、それに抗うドリフターも存在しませんでした。
彼らが居たからこそ、取り巻く世界は彼らの闘争と拮抗に注視し連携しつつ均衡を保ちました。
局地的な戦争こそ起これども、世界を巻き込む程の大戦は遂に起こりませんでした。
強大なラインを軸とする彼らの前に、他の勢力が力をつけ肥大し覇権を狙う事など出来ましょうか。そんな余裕などございません。

では空想しましょう、ラインの無い世界を。

彼らの居ない世界。平和で秩序溢れる世界でしたでしょうか?わたしはそうは思えません。
今とは比較にならないほどの血が流れたのではないでしょうか。つまりソリッドライナーとドリフターの闘争は代理戦争なのです。
世界に代わり彼らが力を持ち闘争し拮抗する事で秩序を保っているのです。その為の彼等、秩序の為の混乱、取り巻く世界は事も無し。

そして夢想しましょう、この世界を誰かが願ったとしたら。

こんな筈じゃなかった世界を、こうであって欲しい世界に作り変えたい誰かがそれを願ったとしたら。
キー・ストーンがその切なる願いに惹かれ、この星にやって来たのだとしたら。

「──それがもし、誰かではなく、この星の願いだったとしたら?」

微笑む老人の顔は、既に市長の顔ではなかった。学者でもなく、一人夢想する男がここに居る。
その微笑みを前に真美は言葉が出ない。

「さて、これで世界は安定しました。次は何をしましょう?
 ああ、そうだ。哀れな代理闘争者、彼らの労に報いねば、彼らにも平穏を与えねば。さて──どうしましょう?」

ヴォクスホールが始まりの地ならば、終わりの地も必要ですよね?
耳元から染みていく囁きで遂に真美は気付く。違う、これは嫌悪ではない、恐怖だと。自分はこの男が怖くて堪らないのだと。
そう──コクーンよりも。

「そうだ、彼らの為に町を作ろう。彼らが平穏に暮らせる静かな場所を」

そして老人は、笑いながら眼下の町に向かい手を広げる。
その姿は舞台の上から観客に向け台詞を吐く一人の役者に見えた。微笑む老人の影の中、滲み出すもう一人の影法師。

「町とはいわば人の集合体です。人が集まり寄り添う事で町が生まれます。ではこの町の住人は一体何者なのでしょうか。
 巨大な源泉、オリジナルの〈ホール〉に作られた町、そこで暮らす人々とは一体、町を構成する彼らは果たして──ただのヒトでしょうか?」

影法師は叫ぶ。
そう、ここだ!ここしかない!この星に落ちた小さな黒い願い星!
その場所に!本体が露出する僅かな箇所に町の原型を刻み、ラインの照射により夢の如く浮かび上がらせた幻影の町!
かなめ市と要市で構成される二重存在!そこに彼らを集わせよう!

「彼らは皆、その資格を持っています。
 闘争の果てに殉じたソリッドライナーでありドリフターであり、ホールに飲み込まれ漂泊の果てにたどり着いたものであり。
 つまり彼らは再生者、この町と同じように二重存在者なのですよ。ここの住人はね」

ゆえに彼らはここで生きる!ゆめまぼろしのものとして!けれど、彼らが切に願った力無きただのヒトとして!
穏やかに笑いラインに溶け込む前に最後の生を謳歌する!──与えられた台詞を吐き尽くし、役目を終えた影法師は再び老人の影に消えて行く。
そして彼は振り返り真美に告げた。
これが始まりにして終わりの地、ライン循環の開始にして到達点、
キー・ストーンの場所にして管制人格コクーン、常世繭子の作り出した最後の楽園、カナメの正体です、と。

「わたしはね、この町に来たかったんです。ずっとここで暮らしたかった」

ですがもう、帰らねばなりません。
微笑みの中にふと混じる静寂。それを認め、真美は我に返り彼に問う。

「あなたは──誰?」
「粟川礼次郎、六十五歳、かなめ市長、四期目──」

元考古学者にして異端の民俗学者。
学会から無視されてもなお謎を追い続け、特異なフォークロワの宝庫であるかなめ市に魅せられ、やがて常世繭子に取り込まれたもの。

「──という、キャスト(役者)です」

寂しげに笑う老人が真美に向き直り、静かに問う。

「田中さん、あなたはどうされますかな?」
「どこにも行きません、何処へも」

私は残る。男の最期を見届け、残されたあの娘を守る。
私にそれを託してくれた、あのひとの想いに応える、それこそが私の存在意義──しかし、その心を読んだように老人は笑う。

「何が、おかしいんですか」
「忠告しておきますね、田中さん。あなたは直ぐに離れるべきです、でないと見てしまう」
「見ます、見届けます。それがあのひととの約束──」
「そうじゃないんです。それならばまだ、救いがあります」

意味深い言葉と共に老人の右手が上がる。
その時、突如手の中に現れた紙切れ──アポーツ(引き寄せ)、何故その技をお前が──驚きに目を剥く真美の前に差し出される一通の書類。

「──登記簿謄本?」
「はい。この町にある唯一の空家のものです、良く御覧なさい」

彼女は知っていた。それは藤原が五年間のフィールドワークの最中に見つけたこの町唯一の空白地帯。
過去二十年を遡っても居住者の記録が存在しない所有者不明物件。苗字は確か──

「柊──」

老人の手が所有者欄を示す。
その時、空白だった名前欄にじわり、と浮かび上がる文字。最初に苗字、そして、続く名前──

「──真澄!」

意味は解らない、けれど真美は目を背けた。それがとても忌々しい事のように感じたからだ。

「選んだのですね──あの子は」

あの子──あの娘?老人の言葉が、あの娘を指すのなら。それは一体──考えるな、今はただ一刻も早く真澄の元に!
踵を返し駆け出そうとする真美の肩を、老人の手が止める。

「ねえ、田中さん。あなたが先程見せてくれた技、確か消去──イレイザーでしたかね」

ぞくり。かつて感じた事の無い悪寒が真美の体を石の如く固める。

「あと分体──エイリアス、ですか。それは一体誰から分けられたと思いますか?」

何故お前はそれを知っている。動揺を隠そうにも、その微笑みが邪魔をする。

「──けも、の」

違います、と老人は笑う。

「あの獣からは強きものに固執し喰らうという本能を分化されました。
 しかし完全複製など到底無理、あれは奇跡の産物ですからね。あなた達は血を分けた娘みたいなもんですかね」

まあ、だからこそあの娘が生まれたんですがね。
あの獣よりも更なる奇跡、コクーンの黒い手と黒狗の血が混ざった、この世界における真なるイレギュラー。それがあの子、藤原真澄。
けれど今、彼女は柊真澄になろうとしています。まあそれは、この際おいといて。

「けれどね田中真美さん、それだけなんです。あとは別なんです」

穏やかに笑う老人から彼女は目が離せない。

「そのスキルは、あなたのベースとなったある素体から与えられたものなのですよ──オメガ」

自分の真名を告げるこの老人から目を離す事が出来ない。

「あなた、アルファと同じく寿命が残り少ないと勘違いされてませんか?
 だから藤原さんに挑んだ。その命を賭して娘に伝える為に。自分の存在した証を託して、でもね」

あなた、オメガなんです。だから違うんです。
耐用年数?違います。それはあなたの力の限界値を示します。他のアルファこそ、あなたのエイリアスなんですよ。
その中の一体は、彼の血を注がれ遂に固定化しましたがね。まあつまり、あなたは寿命に縛られません。

「あな……たは、一体……何」
「まだ御解りになりません?──わたくしを」

ごぽっ。水泡の音を立て老人の顔が崩れる。
それはやがて全身に広がり、半透明なゼリーの如きあやふやなものに変化する。
しかし次の瞬間、かろうじて人の形を模していたそれが突如燃え上がり全てが業火に包まれる。

「あなたの素体ですよ、愛しい娘」

立ち尽くす真美の眼前で燃え盛る炎。
最中より声が囁く。相変わらず穏やかな声。
けれどそれは老人の声ではなかった。艶やかに笑う女の声──そして、火が消えればそこに。

「あ……ああ、あ」

ガチガチと真美の歯が震える。
怖いはずだ、恐ろしい筈だ。何てことだ、居てはならないものがここにいる、恐怖が、いや、恐怖を欲するものがここに!

「アメリア──ヴォクスホール!」

唯一の女王が、微笑んでいた。





















■狼の娘・滅日の銃
■第十五話/黒と黒、獣と狗/了

■次回■第十六話「そして、滅日の銃」


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.025504112243652