「ステータス画面を開いたら、アイテム欄の装備の所をクリック、選択するのだ」
「お、これか」
「セブルスくん、アイテム欄とはどこの事だね?」
後ろからルシウスに話しかけられて、スネイプはびくっと跳ねた。
その後、どうにか説明をする。
『シリウスとルシウス先輩がなんでここにいるんだ!』
『知らないわよ、大方要人から権力と魔法を駆使して分捕ったんでしょ。純血だからマグルには縁がないと思ったんだけど……セブルス・スネイプ。このゲームにはお金と時間が掛かっているの。貴方の個人的感情で台無しにしていいものではないわ。契約に基づいて働いている以上、貴方はプロよ』
『だから、こうやってきちんとやっているじゃないか! うう、五ヶ月もこいつらと一緒なのか……。ルシウス先輩はまだマシだが……。悪夢だ……』
「皆、降りてきたな? 良かろう、まず町を案内しよう。僕についてくるが良い、木偶人形ども!」
ぶっちゃけ、子供はシリウスとルシウス、そして案内を終えて自分のキャラに入って降り立った私だけだった。スネイプは大きなお友達達に若干気圧される。
また、私は様々な賛辞を受けながら、愚かなNPCの如く、何も知らない振りをした。
アナウンサーが、プレイヤー達に次々とインタビューをしていく。
スネイプに先導されて、一行は町へ行く。
ツンデレドジっ子属性の設定のスネイプは、道化の如く道々で転びかけたりして、失敗せねばならない。
シリウスはそれを見て笑う。私は手を貸した。
「か、感謝なんかしてないんだからな! ああ、そこだ。そこの店が武器屋だ。今の武器が気にいらない者は、買い換えると良い。このほかにも道具屋や研究室をめぐるが、初期資金はそう多くない。よく考えてくれ」
そしてスネイプは、一つ一つ武器の説明をする。
シリウスは剣を売り、買える中で一番良い剣を買った。
ルシウスは、スネイプに何に使うのが一番良いか問う。
「それはプレイスタイルとステータスによる。そうだな、ルシウスさんは狩りが好きか?なら、投擲用ピックやこれから行く店で調味用具を買うといい。狩りシステムも楽しめるから。ごく短期間で魔物狩りのみを遊びたいなら、あるいはクリアを目指すなら、シリウスのように一番良い剣を買うのも手だ。ファンタジック1はソードアートオンラインの別名通り、武器は剣しか存在しない。他にも、鍛冶屋、音楽家、コック、商店など出来る事は多岐にわたっている」
「なるほど……では、投擲用ピックを一つ」
「私は剣にしよう」
「鍛冶道具を後で買おう」
「皆、必要な物は買ったな? 次は防具屋だ」
杖がないとはいえシリウスが悪戯をしかけてこない事に若干安心したスネイプは、それでも緊張しながら店を見て回った。
そして、ついに町の外に出る。
「ここをまっすぐ行って、森に行って兎を狩り、調理して食べよう。それで僕の案内は終わりだ。その他の事は、自分で見つけ出してくれ。町で聞き込みをすれば、大体の情報は集まるように出来ている。特別に今回だけ、僕も一緒に行く」
そこで、皆の頭の中にミッションが流れ、皆が頭を押さえた。
『狩りに出たヒースクリフを守れ! (ヒースクリフが破れた場合、ゲームオーバーとなり、全てのデータが白紙に戻ります)』
「ええ? なんで俺がスニベルスを守らなきゃならないんだよ」
勤めて気にしないようにしながら、スネイプは外へ出た。
魔物が襲ってきて、シリウスは思わず呪文を唱える。
「何をしているんだ? 魔法が使えるのは妖精族の僕だけだ、木偶人形」
ようやく訪れた反撃の時に、スネイプはにやにやと笑った。
むっとしたシリウスが剣の腹で小突くと、スネイプの周囲に透明な壁が出てスネイプを守る。
「木偶人形は、目覚めさせた主である僕と同胞を攻撃できない。あるアイテムを手に入れない限り。それはこれからの冒険で見つけてくれ」
「魔物が来たぞ!」
ルシウスが叫ぶ。
スネイプが呪文を唱えて攻撃すると、魔物のHPバーが三分の一ほどに減った。
明らかに堅気ではないと思われるごついプレイヤーが、手慣れ過ぎた様子で剣を振るうと、魔物はポリゴンとなって飛散した。
「よくやった! クリティカルだ! 素晴らしい!! さあ、次が来るぞ!」
「ふん、なんだ弱いじゃないか」
シリウスが、ルシウスが、他のプレイヤーが魔物へと向かう。
「皆、へったねぇ。私達の体には、魔物を倒す技が組み込まれているの。初動をこうやって動くと……」
私が大きな声で言って、剣を振る。システムが作動。
片手用曲刀基本形、リーバーが作動し、効果音と共に一撃で魔物を倒す。
ぱちぱちと拍手がなされる。
「いくら上手い剣技でも、登録された技には負けるわ。モーションの確認方法と技の登録方法は……」
説明している間に、スネイプが一撃食らった。
HPがぐっと減って半分になり、皆が驚愕した。
「スニベルス、よわっ」
「セブルスくん、君は下がっていたまえ」
「難度が高すぎやしないかね?」
その後、スネイプを鉄壁の陣で守りながら、なんとか森につき、ルシウス達の活躍で兎やその他の材料を得た。
それを利用し、皆で食事を取る。
途中、レアな兎を手に入れて大いに私とスネイプが称えたのでルシウスは機嫌を良くした。
「それほど美味い物ではないな。レアだとかいう兎肉がなんとか食べられる程度か」
シリウスは無言で炙った肉を貪っている。
狩りには大分時間が掛かっているから、空腹を刺激しているはずだ。
そして、持ちよった材料でスネイプがポーションを作って見せた。
「ポーションを作れるのは妖精族の僕だけだ。他は皆死んでしまったからな……。材料を研究室に預ければしばらく後にアイテムが出来あがる。ボスを倒した後、次の階への扉を開けるのも僕だ。もちろん、僕が死ねばゲームオーバーだから、しっかり守ってくれ。それと、僕は普段NPCだから、受け答えは期待するな」
「難しいゲームだな」
そうよ? クリアできる物ならしてみなさい。私は微笑んだ。