ジェームズが色気づいてきた。
それに伴い、ますます悪戯等が激しくなってきた。
一度間違って私にまで呪いをかけ、精液採取の刑にあったのは記憶に新しい事である。
シリウス、ジェームズと純血の精液が手に入ったのは良い事である。
ルーピンとピーターはいらん。
あれはセブルスがドン引きしていた。
まったく、あの四人組の悪戯三昧にも困ったものである。
それはそうと、私はファンタジック3のデータ作成に、研究に、仲間集めと、中々暇がない。
ダモクレスは来年卒業するので、イモリ試験の勉強が忙しく、研究も滞り気味だ。
そういう事で、セブルスはアンナと共に私の研究を手伝ってくれていた。
スクイプの治療以来、カートとルート、レギュラスもうろちょろするようになったので、仕事を手伝わせるのと同時に夏休みに遊びに来ないかと誘ってみる。
ルートは喜んで、カートとレギュラスはいやいやと……しかし、目は輝いている……承諾した。
そして、瞬く間に日は過ぎ、夏休みがやってきた。
スティーブに命じてファンタジック1設定資料集を出す事にしたので、今度の夏休みはセブルスも忙しい。ふふふ、ざまあみろ。
そうそう、「ミア女史の平穏なる日常」は私の手を離れ、いまだに連載している。既にアニメの声はプログラムに言わせるようにしているので、本当に手は掛からない。
毒満載のアニメとなっており、私の功績だけでなく、私がやったと推測されている数々の悪事まで描かれている。
まあ、私本人が見ていてもクスッと笑ってしまう良い出来となったからいいのだけれど。
「ミア女史の平穏なる日常」は、ぱくられたり著作権販売されたり、リメイクされたりして各国でやっている。
私はベンツにセブルスとアンナ、カートとルート、レギュラスを招き入れる。
研究所につくまでの間、三人は物珍しげにしていた。
そして、研究所につくと、調整済みのナーヴギアを一人に一つずつ渡す。
「ファンタジック1でもファンタジック2でも、好きな所で遊んでなさいな。一通り遊べるよう、強いキャラのいるアカウントを貸してあげる。アンナとセブルスは仕事を手伝ってね。モニターしているから、わからない事があれば何でも聞いて」
「う、うん」
「ふん。マグルの作るものがどんなものか、見てやろうじゃないか」
「僕はファンタジック2がいいな」
三人はナーヴギアを被る。
その次の瞬間、三人は草原に降り立っていた。
魔物に目を丸くする三人。杖を取り出して呪文を唱えるが、何も起こらない。
『馬鹿ね。ここはゲームの世界なのよ。外の呪文は使えないわ。ステータス画面と言ってみて』
「ステータス画面!」
『今光ったのが、攻撃呪文。セブルスの切り裂けと同じ。次が回復呪文。癒しの呪文と言った所ね。それに、補助呪文。素早さが上がるわ。さ、攻撃呪文の所を読んでみて』
「な、なんか変なのが現れたぞ」
『それで照準を合わせるの。丸の中に魔物を入れて』
三人はしばらく戸惑っていたが、すぐに魔物退治の仕方を覚えた。
夢中になって魔物を追ったり、飛ぶ練習をし始めた。
私はそれをしばらく見守った後、仕事に移る。
スティーブが三人の面倒を良く見てくれた。
そこへ、ミア13から連絡が来る。
「ナーヴギアの工場で細工をしている連中がいるみたいよ」
「見せしめにして。細工されたナーヴギアは全てチェックしているわね?」
「もちろんよ」
ストライキ事件から、こういう事が起こる事は予想出来ていた。
こうなると、どちらが折れるかである。円満にするならば、最初から相手の要求にある程度応じてやった方がいいのだが、それではストライキは継続して起こる事になる。
少なくとも、私の傘下ではストライキは許されない。それを苦労してでも刻み込みたかった。
事実、ミア女史の関連企業でストライキをすると命が危ないらしいと言う黒い噂は瞬く間に広がり、ストライキは一部の意地になった者を除いて下火となっている。
元からストライキは禁ずると契約書に書いてあったし、待遇自体はいいのだ。
そして、その一部の意地になった者達は次々と消えて行った。
そして相手はついに業を煮やしたようだ。しかし、私のナーヴギアに手を出すなら容赦はしない。彼らはきっと後悔する羽目になるだろう。
作業がひと段落ついた頃、レギュラス達が戻ってきて食事になった。
その後は、アンナとセブルスに自由時間を言い渡して、一人でスティーブの心をコピーして、改変作業をする。
やはり、大人の人格は改変作業が難しい。
なんとか自壊しないような人格を作ったが、オリジナルとまではいかない。
ファンタジック3の開発もあるし、中々忙しい。
良かった事としては、レギュラス、カート、ルートも魔法使いの視点から意見を言う事で、ゲーム開発に貢献してくれた。
特に屋敷しもべ妖精の話は面白かった。
私が屋敷しもべ妖精の話に耳を傾けると、レギュラスも喜んだ。
ファンタジック3では、ソードアートオンラインにもユイがいた。お助け機能として、屋敷しもべ妖精ぐらい入れてやってもいいだろう。
二月近くを皆で過ごし、コミケでレギュラス達にグッズを買い与えてやって、私の夏休みは終了だ。
皆を帰すと、スティーブに呼ばれて二人で夜の街を歩いた。二人でと言ったが、もちろんSPはいる。
「ミア女史……も、もう15歳ですね」
「それがどうかしたのかしら?」
「いや、その……僕達、新しいステップを踏んでも、良いんじゃないかな、と」
私は呆れた目でスティーブを見る。
「スティーブ、15歳はまだ子供よ。そういう事をするには適さないわ」
「キ、キスだけです。ミア女史のファーストキスの相手は、僕であって欲しいななんて」
スティーブはそれきり、顔を赤くして下を向いてしまった。
「ふぅーん……」
私はニヤニヤとスティーブを見つめ、そして……その唇に、軽く触れた。
「ミ、ミア女史!」
スティーブが私をきつく抱きしめる。
「満足? じゃ、これで帰るわよ」
「は、はい!」
スティーブは足取りも軽くなり、私はそれに苦笑する。
それが、スティーブを見た最後となった。
翌朝、スティーブは無残な姿で殺されていた。
添えられたカードには「帝王より、愛をこめて」と一言だけ。
知らせを受けて駆けこんできたセブルスは酷くショックを受けた。
私は、いまだにスティーブの完全なコピーを作る事が出来ていなかった。
「ヴォルデモート……私の手駒に手を出したわね……許さないわ」
私はにっこりとほほ笑んで、セブルスを従え、朝早くゴーント家に向かい、指輪を回収した。
「その指輪は何だ? 物凄く禍々しい呪いが掛かっている。危険だ、ミア」
「ちゃんと処分するからいいのよ」
そして私は9と4分の3番線に向かう。
ホグワーツ行きの列車には、何とか間に合った。
ホグワーツにつくなり、私はダンブルドアの所に行って、余興があるので広い空間を作って欲しいと頼んだ。
そして、組わけの儀式が行われる間に、急いで必要の部屋へと向かった。
そして、目的のものを手に入れると、私はダンブルドアの所に戻った。
用意は、整っていた。
「皆、聞いて欲しい! ヴォルデモートと私の休戦協定は破られた! ヴォルデモートは私の手駒、スティーブを壊した。ならば、それなりに報復を受けねばならない。私は! ヴォルデモートが泣くまで! 5つの分霊箱を破壊するのをやめない! セブルス・リングハーツ。悪霊の火を、ここへ。大丈夫、ダンブルドアがいるから、危険はないわ」
「何をしたいんだ、ミア!?」
「いいから、やれ」
セブルスは渋々と悪霊の火を出す。蛇の炎。
「まず生贄に捧げられしは、これよ! ロウェナ・レイブンクローの髪飾り!」
言って私はレイブンクローの髪飾りを投げ込む。
恐ろしい悲鳴が響いた。
事態についていけない子供達は、呆然とした顔で私を見つめ、あるいは分霊箱の悲鳴に背筋を凍らせていた。
「次は、これ……。死の秘宝が一つ、蘇りの石の嵌めこまれし、呪いの指輪!」
私が思い切りよく悪霊の火に投げ込もうとした時、ダンブルドアが慌てて止めた。
「ミア! そ、それが蘇りの石とは、本当かね」
「恐ろしい呪いが掛かっていて、指にはめたら死ぬし、分霊箱にされているから、もう使い道なんてないわよ」
私は肩を竦め、再度思い切り放り投げようとする。
ダンブルドアは、悪霊の火を吹き消した。
「ミア! それでも、それでもわしに預からせてくれんかの。それを調べたい」
「そうね。でも、分霊箱を一つ壊したくらいじゃ私の気は収まらないの。グリンゴッツ銀行の、ベラトリックス家の金庫にある、ハッフルパフのカップと交換ならいいわ。私を敵に回した事、後悔させてあげたいの」
「ミア、君は誰を敵に回したか全く分かっておらん。しかし、ヴォルデモートもまた、誰を敵に回したかわかっておらんかったようじゃな。その知識、どこで得た? あと二つの分霊箱はどこじゃ?」
私は肩を竦めた。
「それが、ヴォルが持っているのよね。まあ、全部丸ごと悪霊の火で焼きつくせば良いだけの事だけど」
それを聞き、ダンブルドアはなるほど、なるほどと呟いた。
「ミア、君が今以上に凶暴になったら危険じゃ。ハッフルパフのカップは後で必ずや渡そう。じゃから、その指輪を預からせてくれんかの」
「あら。この指輪に魅入られないとお約束できます? ダンブルドア先生。この指輪は元からあった魔力とヴォルデモートの魔力でもってして先生を陥落せしめようとしますわ。分霊箱の魂だけを破壊する方法、先生はご存知?」
「出来るとも、それが蘇りの石を使う条件ならば」
私は指輪を渡した。
そして、私とヴォルデモートとの戦いの火ぶたは切って落とされた。
レティクスの新聞で、それは大々的に報じられた。