「セブ。休暇中は頑張っていたのね。凄いわ。首相の傍に付き添って大臣と握手している映像を見たわ」
「僕は、本当について行っただけだよ」
セブルスは呟く。
「それに、ボス戦って毎回テレビでやるのね。あれはセブが演じてるの? クリスマスは凄かったわ。頑張ってた」
「あれはAIって言って自分で考えるコンピュータープログラムなんだ。ええと……」
セブルスは拙い説明をする。それでも、説明が出来るようになってきたという事だ。
そこへ、カートとルートが頭を覗かせた。
「い、一緒に座ってやってもいいぞ!」
「姉上、一緒に座りましょう」
私はそれにため息をつく。
「懲りないわね。貴方達も。狭くて良ければ隣へどうぞ」
カートとルートは、私が意見を変えないうちにと急いで隣に座る。
「姉上。例のあの人は姉上を攻撃できないって本当ですか」
「私を傷つけられない様に暗示を掛けたのは本当だけど。開心術には効かなかったし、絶対安全と言うわけではないわ」
「ふ、ふん。マグルとしては凄くても、魔法使いとしては並みなんだろう? 絶対、僕が追い越して……」
「あら、頼もしい事ね。確かに私の魔力はヴォルほど強くないわ。弱くもないけど。でもね、私はヴォルすら使わない手を使うわよ。媚薬とかね」
そういうと、カートとルートは共に頬を赤くした。
ルートが話題を逸らし、私はあえてそれに乗ってやる。
以前よりは仲良くなってきて良かったと、リリーは微笑ましい目で、セブルスはどこか心配そうな目で見つめていた。
ホグワーツについた翌日、ダンブルドアに呼ばれた。私とセブルスだけでなく、ダモクレスやリリーも一緒だ。
ダンブルドアの部屋につくと、そこには魔法大臣もいた。
「おお、良く来たの。今日呼んだのは、ある噂を聞いたからじゃ。なんでも、狼人間を安全に匿っておるとか……」
「ナーヴギア! あれにあんな使い道があるとは! 私はあれを一度とはいえ使った事に恐怖を感じておるよ」
「あれは正当な契約です。彼は喜んで結んでくれましたわ」
「そう思うようナーヴギアに設定したのではなく?」
私は、艶然と微笑んだ。
「お話はそれだけですの?」
二人は、僅かに息をのむ。
「君達は、ディスティニーブレイカ―を名乗っているそうだね」
「ええ。それが、何か?」
「ナーヴギアの他に、盾の呪文を込めた道具を作っているとか。どうだろう、ナーヴギアとその道具を売ってくれんかね」
私は、小首を傾げる。
「申し訳ありませんが、ナーヴギアはそう簡単にお渡しできるものではありませんの。そういう使い方を想定していないので、管理が心配なんですの」
「ミアくん、狼人間は雇ってはいけないんだ。これは魔法使いの規則でね……」
「ならば、マグルとして雇いますわ」
「マ、マグルとして?」
「こちらで管理出来るなら、問題ありません。全ての狼人間を、マグルとして雇ってもよろしいと言いました。もちろん、私に服従するなら。それなら魔法界の掟に反さないでしょう? ああ、盾の呪文を込めた道具についてはお売りしますわ。ご用件はそれだけですか?」
「あ、ああ」
ダンブルドアはにこやかに、のんびりと言った。
「これで、狼人間の支持を手中にした事になるの」
大臣ははっと顔をあげ、私とダンブルドアの顔を見比べる。
私は微笑んだ。
「意図してそうしたわけではないけれど。まあ、万一ヴォルと敵対した時の盾くらいにはなるでしょうね。反対なさる? 狼人間に残された唯一の救いの道を?」
ダンブルドアは静かに言う。
「信じておるよ。君がゲームにのみ情熱を捧ぐと言う事を」
「それは、信じて下さっても結構ですわ。さ、私達、研究がありますの」
そして、私は三人の背を押した。
ダモクレスが、ダンブルドアの部屋を出るなり、私を問い詰める。
「君は、僕を君の派閥に入れるつもりなのか!?」
「ダモクレス、そんな事をしなくても、とっくに周囲は貴方を私の側だと判断しているわ」
「僕は悪い事の手伝いはしないぞ!」
「悪い事かしら? 狼人間達を救う事が? 職を与え、暴走を防ぐ事が?」
ダモクレスはぐっと黙った。
「心配しなくても、狼人間には自衛か私を守らせる時以外は、マグルとして扱うわよ。兵としては扱わない」
「本当だな?」
疑わしげに、ダモクレスが言う。
「もちろん。ヴォルが私に危害を加えなければの話だけど」
三人が沈黙した。
「怪獣大決戦かしら」
「何を言いたいか、わかる」
「全くだ」
三人とも、失礼な人達だ。
まあ、それ以外のホグワーツでの滞在では特にこれといった事はなかった。
いつも通り、私とセブルスとダモクレスはそれぞれの研究に手いっぱいで、主にリリーが盾の呪文を込めた道具を生産して魔法省に売っていた。
けど、このご時世なんだから職員鍛えて盾の呪文を覚えさせるぐらいしなさいよ。
そうだ、闇の魔術の防衛術でボガートとも戦ったのだった。
私の場合、私自身が出て来てしまい、自分を笑った姿にするのもなぁ、と戸惑った。
結局どうにもできず、私は初めて、実技で悪い点数を取った。
武装解除呪文と守護霊を作り出す呪文も自主的に勉強した。
やはり、ハリー・ポッターは最強らしい。
私は、守護霊を作り出せなかった。ただ、禍々しく光り輝くだけ。
セブルスから、守護霊を作り出す呪文で禍々しい光は初めて見たと気味悪げに言われた。
守護霊を生み出せなかったのは不満だが、どんな守護霊が出るのか、楽しみだ。
そして私は、ホグワーツから戻る汽車へと乗っていた。
夏休み中に、ゲームクリアが行われそうだと言うのを楽しみにして。