4分の3番線で、リリーに会う。
スネイプはリリーの顔を見ると、露骨にほっとした顔をした。
しかし、リリーは頬を染めて顔を逸らした。
「お、お仕事大変なのね、スネイプ。その……シリウスとあんな事している漫画が売っているなんて」
「買ったの!? 年齢制限があったじゃない」
スネイプは瞬時にして砂になった。
「それはまあ、どうにかして……。アーサーさん達も買い物に来ていたわよ」
スネイプは我に返り、私をポカポカと叩く。呪いをかけるのでない所がスネイプの可愛い所だ。杖を使わない反撃方法はファンタジック1で刻み込まれていた。
「やあ。ここにいたのかい」
「ダモクレスさん」
「大変だったね、スネイプ」
「ミア……」
スネイプは恨めしげに私を見つめた。
「まあまあ、魔法界ではそんな広まってないでしょう、多分」
「マグル生まれが何人か来ていたよ。凄い宣伝の仕方だったらしいね。テレビで毎日のように宣伝されたって」
もはやスネイプは恨み事すら言わず、丸まった。
「君からナーヴギアを紹介されて以来、気になってたんだ。君、マグル界では凄い人らしいね」
「まあね」
「そんな君が、なんで僕に?」
私はニコリと笑う。
「私はとっても見る目があるのよ」
ダモクレスは、それを聞いてスネイプを見つめた。
「スネイプも、なのかい? 闇の魔術が優れているから?」
「スネイプは才能があるわ」
その言葉に、スネイプはちろりと私を見て目を逸らした。
ふふ、悩んでいる悩んでいる。例え私に甚振られようと、スネイプを認めるのは私一人なのだ。今回、先にグリフィンドールを選んだ事でルシウスもあまりスネイプに構っていないから。
「僕も君に触発されてね。脱狼薬、本気で頑張ってみようかと思うんだ。でも、狼人間の知り合いがいなくて……。危険な実験になるし」
「資金は出すわ。それで狼人間を雇って、好きなだけ実験なさい。なんなら私が捕まえて来ても良いわよ。助手にはスネイプを。きっと役立つわ」
私の言葉に、ダモクレスは頷いた。その後、スネイプと打ち合わせを開始する。スネイプは若干元気を取り戻したようだった。
ホグワーツにつくと、組わけの儀式を見学した。希望がある程度考慮される事はもう伝わっているようで、皆何事か唱えている。
私はレギュラスだけチェックして、後は研究の事を考えて過ごした。
寮に戻ると、ミアはどこだと探す者がいた。
4人の男の子だった。一人はレギュラス。一人は赤毛にそばかすの眼鏡を掛けたどこか見覚えのある女の子。後は双子だ。どことなく私に似た、黒髪の男の子達。一人は大人しげでキラキラとした瞳をしていて、一人は憎々しげに私を見ていた。
まず、レギュラスが口を開いた。
「おい、お前、兄上を苛めたろう。帰って兄上は泣いていたんだからな!」
「それはぜひ見たかったわ」
「機械の女王だか何だか知らないが、マグル生まれの片親の癖に!」
「用件はそれだけ?」
「そ、そうだ。もう兄上を苛めるなよ」
レギュラスはパタパタと駆けて行く。良い弟さんだ。
憎々しげに私を見ていた方の男の子が口を開いた。
「僕はカート・ホークス。こいつは弟のルート・ホークスだ」
「で、誰?」
男の子達は顔をゆがませた。
「ぼく達は姉上の弟です」
「僕はお前を姉上だなんて認めないぞ! 妾腹の癖に!」
「心配しなくても私達は他人よ。貴方の父親からはびた一文貰っていないし、物ごころついてからは会った事もないわ。話はそれだけ?」
男の子達はやっぱり顔をゆがませて駆け去った。
私は最後に赤毛の女の子を見る。
「わ、私、アンナって言います! ミア様に憧れてこの学校に入ったんです! 私はミア様と同じ通信教育を受けるって言ったら、ダンブルドア先生が、ミア様もホグワーツに入っているよって。私、ミア様の事、尊敬しています! 5歳で国防総省で使っているARPANETよりも遥かにコストパフォーマンスに優れたインターネットと高性能小型パソコンを開発して、しかもインターネットとパソコンの設計図を無料で開放して、9歳でナーヴギアって言う夢の機械を組み上げて、ゲームとか、漫画とか、音楽とか文化面まで影響を与えつつあって、自分が題材のえっちな漫画を描かれても笑い飛ばすぐらいの度量があって、とにかく人間じゃないです! わ、私ミア様の為なら何でもします! ミア様の部下にして下さい! 私、私、自分の周りの人間ってバカばっかりだと思ってて、お母さんとお父さんは私の事を全然認めてくれなくて、パソコン一つ買ってくれなくて……。そんな中でミア様だけが輝いていて……。なのに私、せっかくのチャンスを台無しにしちゃって、マニュアル一晩で覚えられなくて、私、いつもその事を悔やんでいて、今はもうマニュアルを暗記していて」
「ああ、アンナね。私の友達候補だった。テストさせてみたら馬鹿で、やっぱり大人を使った方が早いから断ったけど」
すると、アンナは感激した顔で言った。
「ミ……ミア様が、私の事を覚えていて下さった! そしてミア様は、私の事すら馬鹿だと言った……! ミア様、やっぱりミア様は凄い……! ミア様、どうすれば私を部下にしてくれますか? ミア様のお友達、全部排除すればいいですか? それとも、ミア様の敵を倒せばいいですか? さっきの、レギュラスとか、ホークス兄弟とか……。私、ホークス兄弟が憎い。凄く憎い。ミア様と同じ血が半分も流れているなんて、妬ましくて……」
ああ、ヤンデレね。
「私の許可なく、私の為に他者を攻撃しては駄目よ。それは私の敵を作る事に通じるわ。捨て石で良ければ、使ってあげる。ミアからの紹介だって言って、まずはスネイプからパソコンの使い方を学びなさい。どれくらい使えるか見てあげる」
「は、はい! ミア様!」
アンナは走ってスネイプを探しに行った。
そこへルシウスが通りがかり、私を見て膝を折った。
「姫君、こちらへおられましたか。お手数ですが、これから集まって頂けますか。スリザリン生全員に大切なお話がありますので」
「わかったわ」
三十分して、ルシウスが皆を集め終わると、大声で言った。
「皆、眠い所をすまない。短くすむし、大切な事だから良く聞いてくれ。魔法使いの闇の帝王が、マグルの闇の皇女ミア様とご婚約した!」
ほう、それは初耳だ。