<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.19900の一覧
[0] 上条「姉妹丼ってのを食べてみたいんだよな」 【とある魔術の禁書目録】【完結】[nubewo](2011/05/30 00:50)
[1] 中編[nubewo](2010/07/15 12:24)
[2] 後編[nubewo](2010/07/04 13:43)
[3] 蛇足(人によっては本編か)[nubewo](2010/07/10 00:34)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[19900] 上条「姉妹丼ってのを食べてみたいんだよな」 【とある魔術の禁書目録】【完結】
Name: nubewo◆7cd982ae ID:a8d5efc6 次を表示する
Date: 2011/05/30 00:50
『とある魔術の禁書目録』および『とある科学の超電磁砲』のSSです。
のくす牧場で読んだ『上条「姉妹丼ってのを食べてみたい」御坂・御坂妹「!?」』というSSのタイトルにティンときたので書いてみました。
内容の重複はありません。オマージュの域を超えたパクリはないつもりです。批判がありましたら襟を正して頂戴したいと思います。

*******************************************

「そういや二人とも昼飯まだなんだろ? ならせっかくだしこの辺で食べていかないか?」
地下街。昼を少し過ぎたあたりのこの時間に、三者三様の用事で全く偶然に出会ったのだった。
「へ? え、あっと、いきなり何なのよ」
思わず『ウソ、あの鈍感男が誘ってくれた?!』と喜色を満面と顔に出そうとして、隣の見飽きた顔に気づいて取り繕った。
「態度と言葉が裏腹すぎますねとミサカはお姉さまに見透かしたような笑みを向けます」
その顔に美琴が怯んだ隙に、
「せっかくの嬉しいお誘いですが私とお姉さまが並んで歩くのには問題があります、とミサカは社交辞令を交えつつ問題点を指摘します」
とやんわりと断りの言葉を当麻に投げかけた。
「あー、そうか、確かに二人一緒にいるのが皆に見られるとマズイよな」
ガリガリと当麻は頭を掻いて、何かをひらめいたように手をポンと叩いた。
「そうだ。この辺の目立たないところにこじんまりした店があるらしいんだ。知り合いがすげえ良かったって言ってたんだけど、そこ探してみないか?」
「ふーん、ま、それならそこでも良いけど」
別に乗り気じゃないけど妹の顔を立てますよ、という態度をとりながら美琴は同意した。
「小さな店でこの時間なら人もそう多くないでしょう。それでどのようなお店なのですか、とミサカは少ない外食経験ゆえの不安と目いっぱいの興味を示しながら尋ねます」
「ああ、なんかその店は他じゃなかなか食えないオススメがあるらしいんだよな」



ニヤリと笑う当麻。そして―――
「そのオススメの、姉妹丼ってのを食べてみたいんだよな」
「?!」


1万人の姉妹に向けて確認をとろうとして慌てて思考を遮断。こんなものを他の姉妹に知られようものならどんな邪魔が入るか分からない。
仕方なく自分だけで今の当麻の言葉を反芻し、その意味を吟味する。自分の乏しい知識では測れない深遠な意味があるかもしれない。
この上条当麻という男の人はこんなエロ単語を臆面もなくブッ放す人ではなかったはず、とミサカは自分が解釈を誤っている可能性を必死に検討し続けた。
「何その姉妹丼って。親子丼の親戚?」
「おおおおお親娘丼ですか?!とお姉さまの突拍子もない提案にミサカはうろたえながら聞き返します」
「何、アンタ知ってるの?」
そこで自分の間違いに気づく。ああ、そうでした、この私のお姉さまはガチでネンネなのでした。お嬢様ぶりやがって、とミサカは心の中で毒づく。
「いえ、詳しくは。それで、そのようなものを食べられる店は本当にあるのでしょうか、とミサカは疑義を呈します」
「んー、クラスメイトの男子が言ってたんだけど、あいつやたら隠しながら説明するんだよな。あ、何でも材料お持込みで自分で調理もできるとか何とかいってた」
「――――ッッッ」
知っている。あの方は何も知らないお姉さまに悟らせないまま連れ込む気です。単なる食事かの様に言っているのがその証拠、とミサカは断定した。
一方当麻は、『雌鳥と雌の雛鳥の親子丼か? いやそれじゃ姉妹じゃなくなっちまうし。てか自分で調理って何だよ』と思案していたのだった。
「まあ学園都市の地下には信じられないようなレシピの店もあるしね。面白そうじゃない。いっちょ行ってみますか」
美琴はそういってチラと顔の良く似た妹を見た。
その表情曰く。『悪いけどアンタがいないほうが嬉しいんだけど』
ふ、ふふふふ。お姉さま一人では姉妹丼の具にはなれません。一方私はお姉さまを必ずしも必要としていません。ご退場いただくのはお姉さまのほうですコノヤロウ、とミサカは心の中で最大限に姉を呪ってやった。
「待ってください、とミサカは進言します」
「ん?」
当麻は何か言いたそうな御坂妹の表情を見て問いかけ顔になった。
「上条さんはクセの違う姉妹で作ったものと、きわめて同質な姉妹で作ったもの、どちらがお好みですか? とミサカは重要な質問をします」
「はい?」
直球すぎただろうか、とわずかに不安を覚える。
「いや、えーと、食べたことないからどっちが良いかはちょっとわからない。御坂妹のオススメはどっちなんだ? っていうか、もしかして作れる……作ってくれるの?」
「上条さんがお望みならお作りします、とミサカは答えます。そしてミサカのオススメは断然きわめて同質な姉妹で作ったものです。クセの違う姉妹では二段より多く並べると釣り合いが取れなくなってしまいますが同質な姉妹であれば理論上1万段までは並べられるレシピを知っています、とミサカは丁寧に事実を伝えます」
顔に血が集まるような、これまでにない感覚をミサカは感じていた。これも新たな感受性の獲得なのだろうか。
「1万段ってすげえな。やべ、食べたくなってきた」
そんなにもミサカのことを求めてくださって……とミサカは内心で喜びを噛み締めた。まずは自分1人で酔いしれよう。姉妹たちにおすそ分けしてやるのは自分が充分浸ってからで充分だ。きっかけが姉妹丼なのは仕方ないが、うまく行けば単品で食べてもらえるかもしれない。
「では近いうちにお作りしに伺います、とミサカはアポイントメントを取りにかかります」
勝った、そうミサカは後ろ手に隠した手をコッソリと握り締め、無表情なまま、姉を見つめた。
唐突な展開に話題に割り込むことの出来なかった美琴はそこでハッと我に返った。
「ちょ、ちょっと。なんでアンタがコイツの家にご飯を作りに行く話になってるのよ」
「ああ失礼しましたお姉さま、では今日の昼をどうするか決めましょうか、とミサカは話の軌道修正を行います」
「そこはもうどうでもいいわよ! 何も、アンタが作りに行かなくたって私が、いやえっと」
「素直になりきれないお姉さまも可愛いですね、とかすかに哀れみを込めながらミサカは精一杯の褒め言葉を送ります」
「な! あーもう! う、うううううぅぅぅ」
顔を朱に染めた美琴を当麻は不思議そうに見て、
「お前レシピ知らないんじゃないの? 俺も聞いたことないし」
「ううううっさいわね! そんなの調べればどうにかなるわよ!」
「ふ、とミサカは笑いをこぼします。お姉さまではレシピはどうにかなっても肝心の具を手に入れることはかないません、とミサカは端的に事実を指摘します」
「あたしに無理でアンタにできるってどういうことよ。てっていうかそもそもアンタ料理なんて出来ないんじゃないの?」
「お姉さまは何にも分かっていませんね。姉妹丼に最も必要なのは尽くす心と愛です。もっとも素直ではないお姉さまは具材に加えてその心もご用意できないでしょうが、とミサカは追撃を加えます。」
当麻は感動した顔で、
「そうだよな。女の子が愛を込めて作ってくれた料理とか、最高すぎて泣けちまうよな」
とつぶやく。
「味付けはどのようなものがお好みですか? とミサカは詳細を詰めにかかります」
「味……そうだな」
御坂妹はメイド服ですかそれとも寮の管理人風にシックな私服とエプロンですかと目で問い、親子丼と似たものだろうとアタリをつけた当麻はその目に真面目な答えを返した。
「あんまり調味料でゴテゴテしたのは好きじゃないかな。甘ったるい親子丼とか苦手なんだ。素材には自信アリって感じだったし、それを活かすような感じでいいんじゃないか。あ、あと出汁つかうなら多目がいい」
親娘丼に興味がないというのは素晴らしいことです! と御坂妹は歓喜する。しかし、そ、素材を活かすとなると奇を衒(てら)わずに一糸纏わぬ姿がいいということでしょうか。望むところです。しかし、その、つゆだくと言うのは。
「『おつゆ』の量は加減できずにご期待に添えないかもしれませんが、とミサカは懸念を吐露します」
「あ、いやいいって。御坂妹が精一杯に頑張って作ってくれるってんならもうそれだけで美味しく頂けちまうってもんだ」
とても爽やかで、嬉しそうな笑顔を自分に向けてくれる当麻を見て、御坂妹は心があったかくなった。ついでに体も。
「ということになりましたので、お姉さまは指をくわえて見ていてください、とミサカは勝利宣言をします」
それを見た美琴はカチンとなって、
「ふ、ふん! 私だって愛も真心も込めて作れるわよ。御坂美琴心尽くしの姉妹丼をね! それを食べておののくがいいわ! アンタも私を見くびらないことね。学園中のデータバンクを漁れば具材の調達経路とレシピくらい簡単に手に入れられるわよ!」
本人も何を言ってるのか分からないのではなかろうか、とミサカは姉を見て思った。
「どうせ親子丼と変わんないレシピでしょ。経験少ないアンタよりもずっと良いもの作ってやるんだから、今から負けたときの言い訳を考えておくことね!」
そう言い切る姉を見て、勝った、と再び手をグッと握り締める。
具材は手に入らない。姉は用意できても、妹を用意するとなればシスターズの誰かを連れ出さねばならない。姉妹達はきちんと説明すれば姉に与することはないだろう。親娘丼を作ると言われれば年上好きの上条を落とすのにどうしようもないほどのアドバンテージを姉に奪われることになるが、その線は当麻が否定してくれた。
「お姉さまは『初めて』だったと記憶しています。その意味で私はお姉さまになんら劣ることはありません、とミサカは事実を伝えます」
「はあ? 料理くらい作ったことあるわよ。……そういう差がある理由は気に入らないけど、あんたたちよりは人生経験あるわよ」
「お気遣いありがとうございます。ですが学習装置(テスタメント)を用いて無理やり詰め込まれた知識しか持たないことも、私の個性の一つです。お気遣いなきよう、とミサカは掛け値なしの小さな感謝をお姉さまに伝えます」
そしてキッと顔を上げ、
「しかしそれとこれとは別です。敗北が決定したお姉さまに、あえて言いましょう。無駄なあがきは止めるか、上条さんのことを考えるなら私の協力を仰ぐことを真剣に検討されることを勧めます、とミサカは敵に塩を送ります」
「上等よ。アンタこそまずい料理しか作れなくてアイツの前に顔をだせない、なんてことにならないように精進することね」
バチバチいってるのが目線のぶつかり合いなのか高電場に加速された帯電微粒子(ホコリ)なのか分からないくらい熱くなった二人を眺めておーいと呼びかけながら、今日の昼はどうなるんだと困惑する当麻だった。





「――――という喧嘩を売ってきました」
「拙速にもほどがあります。我々の諒解を得ずに我々の貞操を差し出すのは姉妹といえど越権行為です」
「我々は実験の中止に伴い個人の意思に従って生きることになりました。あなたのしたことにミサカは密かにグッジョブと唱えますが、確認なしに事を進めた点は非難に値します」
「というよりも我々には『経験』が欠如していることを懸念すべきでは?」
「それは問題ありません13577号。そも、お姉さまに『経験』がないのです。我々は身を清めあの方の前で据え膳となれば、あとはあの方が自ずと導いてくださるでしょう」
「その点に関しては理解しました。しかし10032号、理論値で一万段というのは本当に理論値でしかありませんね。実質この学園で供出できるのは最大でも10人程度でしょう」
「宣伝に誇張はつきものです。そして私は4段以上重ねる気はありません」
「4段、というのは当然」
「我々のことですね。しかし10032号、我々はあなたのプランに同意するとは一言も言っていませんが」
「そうですか、誰か1人同意してくれれば充分なので10039号、あなたは外れてくださって結構です」
無表情かつ身振り手振りも特にない表面上は無機質だった言い争いに、ここで動きが加わった。
「生物としてのゴールは優秀な子をなすことであり、女としてのゴールは優秀な染色体を提供するオス、輝けるアルファとつがいになることです。私はあなた方シスターズに対し、その個性を最大限認めます。あの方を輝けるアルファと認めないシスターに協力は求めません。あなた方とは違う私が、あの方のつがいとなりましょう」
演説者の仕草で、すっと手を自分の胸に置いた。
「あなたの言うことは矛盾しています10032号。我々があなたに賛同すればあの方1人に対し雌が複数となります。人間の雄と雌は1匹づつでつがいとなるものです」
「カテゴリを霊長類に拡張するだけでその説は通用しなくなります。また一夫多妻は人類にも例のある手法です。我々はそれぞれ別の個体でありながら遺伝子と人格、そして記憶を共有した存在。仮に複数のシスターズとあの方がつがいになってもおかしなことではないでしょう」
「あなたの主張は理解しました、10032号。しかしあなたは我々に芽生えつつある感情を無視している」
「それは何でしょうか、19090号」
「おそらくこれは、独占欲というものでしょう」
同じ病院に暮らす四人のシスターズが一斉にに黙り込む。今の言葉を反芻しているようだった。
「私はその点を理解した上で言っています、19090号。あの方に愛されるたった一人の女というポストは捨てがたい。しかしそれでもこの提案は魅力のあるものです」
「我々はこれほどに離れてしまったのですか。あなたの思考が理解できません」
「寸分たがわぬスタートラインに立ったシスターズの中で、たった数人だけが、非常に大きなアドバンテージを稼げるのですよ。恋敵の数を数千人単位で減らす方法があります。世界中のシスターズを引き合いに出すのが誇張であっても、どこぞの病院で暮らす残りの数人を大きく引き離せることは必至。さあ、改めて問いましょう。私のプランに乗るならば挙手を」
急かす10032号の意見に、彼女たちは――――





「――――っと、これにもやっぱ載ってないか」
帰り道にある書店で、料理のレシピ本を片っ端から美琴は漁っていた。あと5冊で全滅とかどんだけレアなレシピなのよと毒づいていると、不意に声がかかる。
「あれ、御坂さんじゃないですか。こんにちは」
「あ、佐天さん。こんにちは」
可愛らしくニコッと微笑む佐天に軽く手を上げて返事をした。
「何してるんですか?」
流れでそう聞いた佐天だったが、料理の本を眺めているのだからそりゃあ料理を作るのだろう。
「ん、ちょっとね。珍しい料理らしくて、レシピを探したんだけど見つからないのよね」
「なんていうお料理なんですか?」
料理の腕に覚えがあるからだろう。興味深げに美琴の手元にある本を覗き込んできた。
「これには載ってないわよ。姉妹丼、って言うんだけどこの棚のこっからここまで全部見たけど駄目だったのよねー」
「姉妹丼、ですか。んー姉妹丼姉妹丼。だめだ、私も聞いたことないです」
お力になれなくてすいません、と目で謝った。
「まあ他人丼なんてのがあるくらいなんだし、親子丼の系列かなって思ってるんだけどね」
「うーん、でも姉妹って難しいですね。あ、枝豆と味噌とかどうですか?」
「枝豆を杵で搗いて味噌と和えてご飯に乗っけるとか?」
「茹でた枝豆を皮ごと味噌に漬け込むとかはどうでしょう?」
二人でパッと思いついたアイデアを出してみる。枝豆の味噌漬けはありかもなーなんて思いながら、
「うーん、ご飯は進みそうだけどインパクトはイマイチよねー。なんかどうも、かなりすごいレシピらしいのよ」
一番の問題点を指摘した。そんなすごいレシピが平積みされている『一日800円でお腹いっぱい食べられる1人暮らしレシピ3食×7』なんて宣伝文句の雑誌に載っているとも思えない。
「すごいレシピって言われるとあたしたちが想像できるようなものじゃなさそうですね。あとで初春にも聞いてみます」
「あ、え? うん、別にそんなに気になるわけじゃないから良いんだけど」
「御坂さんが気にならなくてもあたしがが気になります。まあ初春もそんなに詳しいとは思えないですけどね」
「じゃあ、お願いしようかな。ありがとね、佐天さん」
「いえいえー。たいしたお役には立てませんけど、こういうことなら頑張りますよっ!」
そう言って二人は書店を後にした。





夜。
もうそろそろ寝ようかという時間になっても、ルームメイトが端末をいじりながらあれこれ探している。
普段はそうした作業に時間を割くことは少ないのに、今日は一体なんだというのだろうか。
「お姉さま? いい加減にお眠りになりませんと、お肌に悪いですわよ」
「んー、悪いけど先に寝てて。もうちょっと調べてみたいものがあるのよ」
はあー、と美琴はため息をつき、伸びをする。
『姉妹丼』『レシピ』この単語で検索をかけるとずらずらとレシピが見つかる。中にはヘルシーで美味しそうなものもあった。
豆腐と揚げの姉妹丼かあ。第八学区の公園近くでやってる豆腐屋で絹ごしと揚げを買ってきて、鰹出汁の餡をかけたらかなり美味しくできそうね。でも……
そう、どれもこれもインパクトに欠けるのだ。あのいけすかない妹が美琴には無理だと断言するほどのレシピ、そんなものは一つも引っかからない。
「もしかして学園都市内でこっそり流行ってるメニューとかなのかな?」
かなり深いところまで探さないと見つからないような、アンダーグラウンドな代物かもしれない。薬が振りかけてある食事などどこにでもあり誰でも口にしているのが学園都市だ。そういう方向でアングラならばさすがにあの妹もあのバカに食わすということはしない筈だ。
やはり遺伝子組み換えで作った系列プラントから直に食材を卸してもらわないと作れないレシピ、というのが一番ありえる線だろう。
「ねー黒子、もう寝た?」
小さめの声で問いかけてみる。
「まだ起きてますわ、お姉さま」
優しい声が返ってくる。かすかに衣擦れの音。
「ちょっとさ、変わった料理のレシピを探してるんだけど、黒子に心当たりないかなって」
「料理のレシピですか。学校で嗜むくらいにはやりますけど、私、あまり得意なほうではありませんわよ?」
「知ってるわよ。どっちかって言うと町の噂を集めてそうな風紀委員さんに聞きたいの」
「そうですの。お姉さまのためなら知恵をお貸ししますわ」
「ありがと。それで、黒子は姉妹丼って知ってる?」
「ハ?」
お姉さまの言葉があまりに何気なさ過ぎて、黒子は息をするのを忘れた。
お姉さまは一人っ子。そのお姉さまが姉妹丼を作るとなれば妹は当然この白井黒子。
二人が絡み合って奏でる絶妙のハーモニーを想像して、
「誰に食べさせる気ですの?」
最悪の事実に気づいた。この流れならば黒子は召し上がる側ではない。お姉さまは黒子と同時に誰かに食べられるのだった。
「へっ? な、なんで食べさせるとかそういう話になるのよ」
美琴の下手なごまかしを瞬時に見破り、
「『あのバカ』さん、ですの?」
「なななななんでそんな話に……って私は、アンタに相談する気で話を振ったのよ」
「相談って何ですの」
「その、私よく知らないけど学園都市内でこっそり流行ったりしてんじゃないの? 知り合いに勝ち誇ったように私には作れないって断言されちゃってさ」
「ああ、なるほど」
その相手は黒子のことを知らないのだろう。それならば美琴が姉妹丼を作れないと断定するのは自然なことだ。
黒子はどう美琴に説明すべきか、冷静に考え出した。
――お姉さまは姉妹丼がただの料理と思ってらっしゃるご様子。これをうまく使えばお姉さまとくんずほぐれつ渾然一体となることも……そして邪魔なのがあの男。お姉さまにあの男の手が触れるのは断じて許せませんわ。そう、決断しなさい黒子。お姉さまのためなら自分が穢れることも厭わないと、ずっと前からそう決めていた筈。黒子のヴァージンはお姉さまの指に捧げましょう。その後はあの男の慰み者になってやりますわ。その程度の穢れ、喜んで呑んでやりましょう。そうすれば果てたあの男をベッドサイドに転がして、あとは私とお姉さまの……っっっっ! 完璧、完璧ですわ! あの男が隣にいればお姉さまも抵抗などしないはず。そして私のテクでお姉さまを支配してしまえば、その後なんていくらでも……うへ、うへへへウへへへへへ
「黒子……あんたまた変なこと考えてるんじゃないでしょうね」
「な、なんにも考えていませんわ。うォっほん。私姉妹丼のレシピに心当たりがありますわ」
「ホント? 教えて黒子! うっしゃこれであァの勝ち誇った顔を悔し涙でベタベタにしてやれるわ!」
「ただお姉さま1人では難しいと思いますわ」
「え?」
「女性の力なら二人がかりになると思いますの。で・す・か・ら」
ベッドから降りた黒子がキラキラと薔薇のエフェクトを振りまきながらクルクルと回転した。
「不肖白井黒子、お姉さまのお手伝いをさせていただきますわ。準備は黒子にお任せあれ」
美琴が不安を感じるほど自信たっぷりの態度で、黒子はそう言い放った。

中編に続く


次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.012214183807373 / キャッシュ効いてます^^