やってきました第131管理外世界。
入国・・・入世界?の時に地球でいうバニングスグループの様に極秘裏に管理局に関わっている企業の人に、くれぐれも魔法を使わない様にと念を押されてしまいました。
どうやら以前来たちょっと頭が残念な方が街中で魔法を使ってしまったらしく、一時期物凄い騒動になってしまったらしいです。ちなみにその人は管理局法違反で捕まったらしいです。
そんな訳で今はちょっと過敏になっているらしいので、人が居る所ではデバイスは極力使わない様にしなければなりません。
なのはさんは主に人の少ない秘境等で、かつ空から撮影する時は認識を阻害する魔法を使うので問題はありませんが・・・私は皆さんからユニゾン禁止令を出されてしまいました。
おかげで歩幅も小さければ視点も低い状態で歩かなければなりません。また子供と間違えられるんですね・・・
「でも杏ちゃんなら小さくても可愛いから大丈夫だよ」
「嫌です。もう二度となのはさんと親子に見られたくありません」
「何で私と杏が親子に見られないのかな・・・」
「髪の色と顔立ちだと思うよ。なのはと杏は同じ日本人だしね。・・・それにしても、本当に全然身長が・・・」
それ以上言ったらドアというドア全てに指を挟む様に仕向けますよ?
という訳で街へとやってきました。文明の進歩具合は地球と同じくらいですが、聞いた話によるともうすぐ魔法に到達するかもしれないそうです。
先ほど言った街中で魔法を使った人が原因できっかけを手に入れたかもしれない人が何人か居るらしいので、地球よりも先に魔法を手に入れるかもしれませんね。
「しかし、やはり世界が変わっても食文化はある程度は同じなんですね」
「前の世界も食材は不思議だったけど、食べ方は地球でも同じのが多かったしね」
そうですね。まあ煮る焼く揚げる蒸す、その他諸々も料理をやってたら思いつく様な事なんでしょう。
「それがそうでも無いんだよ」
「ユーノ君?」
「発掘で世界を回って知ったんだけど、地球の調理文化はかなりハイレベルだよ。あそこまで技術が進歩して一切魔法に関わりが無いのが、科学以外の技術の躍進に関わっているかも知れないと思ってる」
「へぇー、そういえばミッドでも地球の文化とか料理が人気だって言ってたっけ」
そんな状態で魔法に到達する科学技術を手にしたらとんでもない事になりそうですね。現時点でも妖怪とか霊とか違う意味でとんでもない世界ですけど。
もしかするよ地球は魔法を手にしない方がいいのでは・・・というか科学的なのとはまた違う幻想的な魔法が既に存在していそうな気がします。
・・・あれ?もしかして私のこの能力ってそれなんじゃ?声を聞くとか何となくそれっぽいですし。うぅむ、気になる。
・・・こんな時は、ご先祖様を知っている不思議本に聞いてみましょう!
「(私のこの能力って魔法だったりします?)」
『---』
違いました。何でしょう、ちょっと恥ずかしいです。
『---』
「え、ちょっ」
「いきなりどうしたの?」
「あ、いえ、私の能力が魔法かどうか気になったので本に聞いてみたんですが・・・魔法よりヤバいと言われました」
「魔法よりヤバいなんて今更だよね」
「そうだよね」
「えっと、それは私もそう思う」
私もそんな感じの自覚は持ってましたけど、実際に言われるとちょっと、その、ねぇ?
というかヤバいって言わないで下さい。凄いとか言ってください。危険な能力みたいに感じるじゃないですか。
「いや、実際危険だと思うよ?使えるのが杏ちゃんだから大変な事になってないだけで」
「時空管理局も分単位で壊滅させられそうな能力だしね」
「世界征服とか出来そうだもんね」
あれ?もしかして私って物凄く危険な人物だったんですか?ただのんびりする事と美味しい料理を食べる事が好きなだけの一女性だと思ってたんですが・・・
・・・まあどうでもいいですね。そんな事する気も無いので考えるだけ無駄ですし。平和が一番ですよ。ええ。
とりあえず疲れたのでホテル行きましょうよホテル。のんびりしたいです。
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「やあ久しぶりじゃないかプレシア!ところで自動人形に関してk」
「アリシア、塩持ってきなさい!」
「アジシオでいーい?」
自宅(松田家)にて親子水入らずでのんびりと午後の昼下がりを過ごしていると、突如来客があった。
今日は特に客の来る予定は無い筈だと予定を思い出しながら、杏からのお土産か何かが届いたのかと玄関のドアを開けると、そこには紫髪の不審者が笑みを浮かべて立っていた。
ジェイル・スカリエッティ。プロジェクトFの基本理論を確立した生命操作研究の第一人者であり、かつてプレシアと共に研究した仲であり、過去管理局に情報提供した時に運良く逃れる事の出来た変態である。
その姿を確認した瞬間、プレシアは面倒な事になったと確信した。この男は変態な上に、気になった事は研究しないと気が済まないしつこさを持っているのだ。
先程のセリフから自動人形に関しての研究がしたいのだろうと予測は出来たが、ここまで手がかりを求めてくるという事はつまり、あの自分達も解析に苦労したプロテクトを突破したという事だろう。やはり変態でもこいつは天才だったかとプレシアは再確認した。
「自動人形に関してはここの世界のロストテクノロジーよ。詳しい事は調べられる程度にしか私は知らないわ」
「くっくっく・・・それを聞けただけでも大収穫さ。やはりこの世界だったか!はははははは!!」
「うるさーいテレビの音が聞こえないー」
人の家の前でテンションが振り切れてきている男を見て、プレシアはご近所の風評が変な事にならないか心配になってきた。
この辺りの住人は何かと寛大な存在が多いが、こんなアレな人種に対してもそれが発揮されるとは限らない。もし変な噂が近所の奥様方の間で流れたら本気で困る。
ちなみに現時点でも既にマッド気味な研究者だとバレているのだが、役に立つ作品を提供していたりするので近所付き合いは良好である。
「なにがこの世界なのよ・・・」
「おや、気付いていないのかい?娘の蘇生に成功していたのだから此処が始まりの世界、アルハザードだと判っていたのだと思ったが」
「ここがアルハザード?貴方は一体何を言って・・・」
思わず声を上げて驚いてしまったが、よくよく考えると納得出来る要素ばかりな事に気付いた。
妖怪という異形。魔法とは違う霊能力。夜の一族などの人と少し違う者達。そして、人型アルハザードと言ってもいい杏の存在。
恐らく自動人形とプレシアの居場所を手がかりに地球に来たのだろうが、ここで調べ物をすればそう思い立っても仕方が無いだろう。流石に杏の存在までは知らないだろうが。
「胸が躍るよ。この世界は実に興味深い!・・・暫くはこの世界に滞在して様々な研究をするつもりだ。これからよろしく頼むよ」
「お断りよ」
プレシアの話などまるで聞かずにスカリエッティは松田家から離れ・・・二軒隣の空き家だった筈の家へと入っていった。本当にこれからよろしくするつもりなのかもしれない。
実際覗き見てみると、何やらピッチリしたスーツを着た少女や女性達が引越し作業を行っていた。どうやらあれが噂に聞いていた戦闘機人らしい。
見事に女性ばかりのそのメンバーを見て、そしてその中に居る銀髪の幼い少女を姿を見て、やはりコイツは真性の変態だとプレシアは再確認した。戦闘機人であんな幼い容姿の少女を作るなんて趣味以外考えられない。
眼帯を着けていたのもそれに拍車をかける。近くに居なかったので詳しくは知らなかったが、ああいう趣味の人間が多く居るのがアキハバラなのだろうと偏見に満ちている様で割と的を得た思考をプレシアは巡らせる。
「面倒な事になったわね・・・戦力ではこの町は異常だから問題にはならないだろうけれど、先が不安だわ・・・」
「ふぅ面白かった・・・で、おかーさん。さっきの変な人はなんだったの?」
「近所に引っ越してきた変な人よ。関わらない様にしなさい」
杏が帰ってきたらどうにかなるのかしら?と、どう考えても変な意味でどうにかなってしまいそうな想像をしてプレシアは思考を止めた。
今は親子でのんびりする時間である。面倒な事は後回しにしておこう。あわよくば自分達に面倒が降りかかるまで放置しておこう。
何気に杏に影響されているプレシアであった。