「将来の夢ねぇ・・・」
「去年も同じ事授業でやった気がするよ」
「そうなんか?」
「まあ学校の授業なんてそんなものですよ」
現在私は学校の屋上でお昼の弁当を食べています。
メンバーは私とテスタロッサ姉妹、なのはさん筆頭の三人娘、そして最近秘密が発覚した希さんと、ほぼ完全に歩ける様になったはやてさんです。
ゴールデンウィークに行った海鳴温泉での件からは特に事件や問題に直面する事も無く生活出来ている為、最近はとても平和です。惜しむらくは、何だかんだで誰かに付き合う事になって思った様にダラダラできないという事でしょうか。
近いうちに休みを一日中使って思いっきりダメな生活を取り戻したいと思っています。多少なら忙しいのにも慣れてきましたが、やはり暇でのんびりした日常の方が好きですし。
今の話題は授業で話に上がった『将来の夢』について。去年の春先にも同じ授業をやった気がしますが、よくある題材なのでどうでもいいですね。
「アリサちゃんとすずかちゃんは変わらず、かな?」
「そうね。跡継ぎだもの」
「私は最近、アリシアちゃんの話を聞いてデバイスとかも気になってるけどね」
「すずかは結構そういうの得意みたいだしね」
すずかさんまでデバイス研究を始めたら大変な事になりそうな気がします。というか、地球はこの先どうなるんでしょうか・・・この間アリシアちゃんとリニスさんはついに自動人形を完成させていましたし。
まだまだ量産出来るレベルでは無いと言ってましたが、そこに月村家の経済力が加わったら・・・恐ろしい。すずかさんが加わったら間違いなく忍さんも参加するでしょうし、マッドだらけになってしまいます。
すずかさんまでマッドになってしまったら変な化学反応を起こして魔法でも霊力でもない新しいエネルギーを見つけたりしそうです。
「なのはは将来何か考えてるのかな?」
「うーん・・・得意なのは魔法しかないけど、それだと魔法世界にいかなきゃダメだし・・・」
「私はもう時空管理局に就職内定やけどな!・・・中卒になりそうやけど」
「再就職は厳しいですね」
魔法で就職はちょっと面倒そうですよね。というか時空管理局って軍隊みたいなものですよね?なのはさんの場合家族が納得するんでしょうか・・・お兄さんとか、凄く反対しそうですけど。
はやてさんは本人が家長ですし、後見人も魔法世界の人らしいので問題にはならなそうですね。中卒故に再就職は厳しいでしょうけど、はやてさんの魔法の才能(と魔改造闇の書)があれば大丈夫でしょうし。
おっと、今は夜天の書でしたっけ。はやてさんは闇の書のままで良い様な気がしてたらしいですが、管制人格のリインフォースさんが泣きながら嫌がったそうです。
ちなみにリインフォースさんは私に対して物凄い苦手意識が芽生えているらしいです。ヴォルケンリッターの皆さんもちょっと苦手意識があるらしいですが、こっちはそれなりに友好的なんですよね。
「というか、なのはさんは魔法以外にもカメラとかあるじゃないですか」
「そうよ!あんな才能を隠し持っておいて得意なのが魔法しかないってどういう事?」
「にゃ!?そ、そんなに凄かったかなぁ?」
「あれは確かに上手だったよねぇ」
そう、海鳴温泉の件でなのはさんの秘められたカメラマンとしての才能が明らかになったんです。
家族の方達は皆さん知っていたらしいですが、小学一年生からの付き合いであるお二人は何だかんだでこの事を知る機会が無かったとの事。
しかし色々聞いてみると、翠屋のメニューにある写真もなのはさんが撮影したものという事が判明し・・・何というか、なのはさんは魔法というより機械操作に強いという事が判明したのでした。
パソコンとかAV機器とかにも強いみたいですしね。なのはさんとすずかさんとアリシアちゃんの機械談義にはついていけません。
製作専門のアリシアちゃんにおそらく使用専門のなのはさん、そして多分どちらもこなせるすずかさん・・・凄いものが作れそうですね。
「わ、私よりも、フェイトちゃんとアリシアちゃんはどうなの?」
「私はもちろんデバイスマイスター兼研究者だよ!」
「私は・・・どうだろう?」
「フェイトは料理が得意だから、料理人とかどう?」
「むしろ桃子さんに弟子入りして翠屋二号店の店長さんとかどうでしょうか」
「あ、それええなあ。友人価格で食べさせてな」
「うーん、翠屋二号店はともかく、桃子さんに弟子入りして色々なお菓子作りはしてみたいかも・・・」
アリシアちゃんはもう決まっている様なものですからともかく、フェイトさんは未来の選択肢が多そうですよね。
魔法が使えるので管理局に入るのもありでしょうし、話に出た通りに料理関係もありますし・・・どうです?うちにメイドさんとして就職しませんか?ある意味永久就職になるかもしれませんが。
まあ冗談はさておき、もし桃子さんに弟子入りするなら応援しましょう。そして美味しいものをいっぱい食べさせてください。
「希さんはやはり退魔師でしょうか?」
「専門に出来るほどの才能は無いと思うから、とりあえず進学はする予定だけど・・・もしかしたらお姉ちゃんが旅館経営始めるかもしれないから、そしたらそこで働くかも」
「温泉が好き過ぎて温泉旅館を経営・・・そう簡単に行くのかしら?」
「旅館はともかく、何らかのお店をやりたいって。接客商売が好きみたいだから」
成程・・・まあ小学生の時に明確に将来が決まってる事の方が珍しいですし、普通はそんな感じですよね。他の皆さんがはっきりしすぎなんです。
何せはやてさんに至ってはもう内定している訳ですし。アリシアちゃんも既にいっぱしの研究者として活躍してますし。・・・私の周りの人間って、本当に普通な人がいないですよね。
アリサさんは神秘的な意味では普通ですけど、社会的にはかなり特別な人ですし。もう一般人は私しか・・・すいません嘘つきました。
「杏ちゃんはどうなの?」
「働きたくないです」
「まあ想像は出来てたわ」
「杏お姉ちゃんは働かなくても何とかなっちゃうしねー」
「無職が問題があるというなら株トレーダーにでもなれば問題ありません。私の能力なら大成出来ます」
「卑怯やな・・・」
「でもあまり無職と変わらないよね」
生まれ持ったものを活用して卑怯といわれても・・・まあ自覚はしていますけどね。ただ自重はするつもりはありませんが。
あと無職ではありません。ニートです。働く意欲の無い若者なので。
「わざわざニートに訂正するあんたもどうかと思うわよ」
ごもっともですね。・・・っと、チャイムもなりましたし、教室へ戻りましょうか。ああ、授業が面倒です。自習になればいいのに。
「杏お姉ちゃんが大金稼いだら、スポンサーになってみんなを後押ししたら・・・」
「あ、それ良いかもしれませんね」
「アリシアちゃんの研究所とフェイトちゃんのお店と・・・どれだけお金が必要なんだろうね」
「まあ、宝くじとギャンブルでなんとかなりますよ」
「思考がダメ人間と同じよね・・・こっちは必勝だけど」
将来、どうなるんでしょうねぇ。