第十五話 閉じられたリンク
「飛ばすぞ、身体をどこかに寄せろ!」
ハンドルを握った卜部の声に、ルルーシュはロロを抱き寄せて衝撃に備えた。
藤堂、咲世子、クライスの三人も、それぞれに身体を支えている。
「追え、追え!!くっ・・・ルルーシュが中にいる以上、手荒な止め方は出来ん」
トラックに入り込んだルルーシュ達にコーネリアは歯噛みしつつも、VTOLで追いすがる。
卜部はルルーシュの指示で地下道に逃げられるポイントを目指し、アルフォンスが開けた門を強引に突破して政庁を抜けた。
「次はポイントCまで急いでくれ。政庁内の俺の兵達には足止めするように言ってあるが、長くは保たない」
「解った。にしても、あれだけの兵があんたの仲間とは、正直思わなかった」
さすがはゼロだな、と卜部が言うと藤堂も頷いた。
ルルーシュはギアスまでは知らされていないのだから無理もないと、ふっと自嘲する。
「・・・ああ、俺も驚いたがな。それに、主義者もけっこう多かったから」
ユーフェミアがナンバーズに対して穏やかな政策を取ったので、それに賛同する者達が日本に来たようだという一部の事実を告げると藤堂達はさらに納得したようだった。
「コーネリアは上空から俺達を追跡しているが、既に手は打ってある。
問題は追跡している連中だが、それもすぐに黙らせてみせる」
コーネリアはルルーシュの正体を知らない一般兵に知られることなく、かつトラックを無傷で止めなくてはならないという困難極まる状況に置かれている。
租界内の地図を丸暗記しているルルーシュは、一度トラックを捨てて地下道に降り、シンジュクゲットーに出ることにした。
「ポイントCに車があるからそれを使って地下道からチヨダまで向かい、朝比奈達と合流する。
そこからカツシカに戻ろう」
「承知した。朝比奈達に伝えておく」
藤堂が通信機で朝比奈と千葉に連絡すると、是の返事が返ってきた。
「確か五人乗りだが車があったな。少し狭いだろうが、我慢してくれ」
藤堂が無表情のロロに向けて安心させるように言うと、別にその程度のことをわざわざ言わなくてもいいのに、とロロは少し顔を揺らしたくらいで何も言わなかった。
トラックは猛スピードでトウキョウ租界の街並みを突っ切り、それを必死で追いすがるブリタニア軍と警備隊、そして上空をコーネリアが乗るVTOLが追跡していた。
夜なので車の通りが少なく、またテロリストを追っているのだと判断した市民達はシンジュクの二の舞になることを恐れ、たちまち車を止めて嵐が過ぎ去るのを待つ。
「ポイントC、ビル群に入る」
卜部はシンジュク殲滅作戦によりうまい具合に倒壊したビルの陰に、トラックを乗り込ませた。
シンジュクは高層ビルが立ち並んでおり、日本を占領した際も相当な打撃だった上にシンジュク殲滅戦のせいでさらにビルがテトリスのように絡み合って倒れていた。
その隙間にトラックが入り込んだので上空のコーネリアの視界を遮り、また追跡する軍の車や戦車、ナイトメアもうかつに入ることが出来ない。
「どのように倒れているか把握していない以上、無理に入れば中にいるルルーシュもろともビルが完全に倒壊しかねん・・・!」
追跡する側も地の利がなくあらかじめ障害物を調べて専用ルートを作っていたルルーシュ達にあっという間に突き放されてしまい、夜だったので視界が悪いせいでビルの中に入ることが出来なかった。
「私が直接地下道に行く!!」
コーネリアがパラシュートの用意をギルフォードに命じるが、ギルフォードは自分がパラシュートを装備しながら首を横に振った。
「なりません、姫様!地下道は頑丈とはいえ、いつ崩れるか解りません。
しかもあそこはテロリストどもが使っている場所、何が仕掛けてあるが知れたものではありませんから、私が参ります」
「その程度の危険、恐れる私ではない!」
「私が恐れます、姫様!!今のルルーシュ様はブリタニア皇族を敵とみなしでおいでで、サイタマやナリタでも貴女様を殺そうとなさった。
今回もそうしないという保証がない以上、ここは私にお任せを!」
ルルーシュとコーネリアとの会話を聞いていたギルフォードは、ルルーシュが彼女を敵と決めて戦う意志を固めたことを知っている。
弟と知らずに戦っていたコーネリアとは違い、ルルーシュは戦っている相手をコーネリアと認識したうえで容赦なく殺そうとしていたのだ。
よっていくら何でも敵のテリトリーでありあまりにも危険な地下へと主君をやることを、ギルフォードは避けたかったのである。
「・・・解った、お前に任せよう。
だがギルフォード、他は始末しても構わないが、ルルーシュだけはなるべく無傷で連れ戻して欲しい。
私のわがままだと解っているが・・・頼む」
「イエス、ユア ハイネス。では行って参ります」
ダールトンはコーネリアを降ろすなとは命じられていたがギルフォードまでは命令に含まれていなかったので、彼を地上に降ろすべくVTOLを空中停止させた。
「私も追いたいが、コーネリア様をお守りせねばならん。任せたぞ」
「は、ルルーシュ様を必ず、無事に保護して参ります」
ギルフォードはそう言うと、VTOLから飛び降りた。
そしてパラシュートを開き、あっさりと地上に着陸する。
「これより、テロリストを追跡する!
トラックに生命反応があるかを確認しろ。ないならトラックを爆破し、追跡を再開する」
ギルフォードはトラックに阻まれて突入出来ない追跡部隊に、てきぱきと指示するのだった。
一方、ルルーシュ達はトラックから降りて地下道に降りていた。
地下を走ってしばらくすると、廃墟と化している地下鉄に出る。
日本各地にあるゲットーや地下道にはいざという時のために車を隠し置いてある。
しかも他の人間に勝手に持っていかれないよう、パスワードを入力しなければエンジンがかからない仕組みになっていた。
地下道に駐車していた車を見つけると、卜部がハンドルを握って皆が乗った。
「ここからなら、チヨダまですぐだ」
卜部がアクセルを踏んだ刹那、そこで遠くから爆発音がした音が地下まで響き渡って来た。
「トラックが破壊されたようだな。来るぞ」
「しつこい奴らだ。飛ばすんで、シートベルトしといてくれ!」
グンとスピードが増した車の中、定員オーバーなのでルルーシュはシートベルト代わりにロロを抱き寄せる。
「俺に掴まっていろ。放すなよ」
「は、はい・・・」
ぎゅっとロロがルルーシュの胸のあたりを握りしめると、ルルーシュはふっと笑みを浮かべた。
「よし、もうすぐチヨダだ」
卜部がクダンシタ駅の地下に車を止めると、一同が車を降りようとした刹那、ルルーシュとクライス、そしてロロは違和感を感じて立ち止まった。
「?!」
くっと立ちくらみを起こしたように動きを止めた三人に、藤堂と卜部もどうしたと駆け寄る。
「どうした、貧血でも起こしたのか?」
「猛スピードで走ったから、無理もない。卜部、水か何かを・・・」
藤堂がルルーシュとロロ、卜部がクライスを支えながら心配げに顔を覗き込むと、ロロはクライスから“ギアスを忘れろ”と言われ、さらにルルーシュから“トラックに乗り込め”と命じられたことを思い出した。
そしてルルーシュとクライスは、繋いでいた手を突然放されたかのような感覚を同時に感じて思わず呻く。
(何だこりゃ・・・どうしたってんだ?!ゼロ、どうなったと思う?)
エトランジュが無理をして繋いでくれているギアスを通じてクライスがルルーシュに尋ねたが、ルルーシュからはむろんエトランジュからすら何の応答もない。
「な・・・何だ・・・?」
クライスが驚愕の目でルルーシュを見つめると、ルルーシュも同じ表情を返して来たので自分だけではないことを知った。
「・・・おいおい、マジかよ」
ラテン語の呟きだったので藤堂達は首を傾げるが、クライスは止まっている場合ではないと顔を上げた。
「話は後だ!とにかく逃げましょう!」
「そ、そうだな。ロロ、行くぞ!」
「え、う、うん・・・」
ロロも二転三転する訳の解らない状況に混乱したが、ルルーシュがしっかりと手を握って走り出したので思わず自分も後を追った。
(ギアスにかけられてたんだ、僕・・・でも、自分に従えじゃなくてここに来いって・・・それにこの人もギアスを忘れろって言っただけだし)
ロロはクライスのギアスをよく把握していなかったので、命令系のギアスだと判断した。
だから大した命令をしてこない二人の意図が読めず、混乱する。
いきなり回復して元気に走り出した三人の様子がよく解らなかった藤堂と卜部だが、追及するどころではないので同じく朝比奈達と合流すべく地上に上がった。
「朝比奈、千葉!!」
「お待ちしておりました、藤堂中佐!!
先ほどブリタニアの大型軍用ヘリが一機、上空を通っていったのですが・・・」
合流ポイントで待っていた朝比奈の報告に、ルルーシュは眉をひそめた。
「ヘリ、だと・・・政庁からか?」
「いや、西からだったな。中佐達が来るちょっと前に政庁方面へ飛んで行ったが・・・」
目的は解らないと言う朝比奈に、ルルーシュは政庁に向かったのならそこにいるマオ達からの報告を聞こうと考えた。
「解った、そちらのほうはアルカディア達に探って貰うとしよう。
それより、先に礼を言わせてくれ・・・助けてくれて感謝する」
ルルーシュが滅多に言わない感謝の言葉を内心気恥ずかしい様子で言うと、朝比奈と千葉は顔を見合せた。
「はは、まさかゼロを救出に向かうことになるとは思わなかったけどね」
「全くだ。しかし、本当にブリタニア人だったんだな・・・」
顔立ちの飛びぬけて良い紫色の瞳をした少年を、千葉は思わずまじまじと凝視する。
「ゲットーの方に軍隊は来なかったんで、俺らの出番はこっちに迎えに来るだけでしたね。けどいつ来るか解りませんから、とっとと行きますよ」
「同感だ。ではもう一回乗り換えだ。もう少しだ、頑張ってくれ」
ルルーシュは真っ先にロロを車に乗せると、千葉が同じくブリタニア人の少年に視線を向けて藤堂に訊ねた。
「どうしたんですか、この子?ブリタニア人みたいですけど」
「ああ、ブリタニア軍の特殊機関の子供らしい。何でも幼い頃から暗殺者として育てられて殺しをさせられていた子だそうだ。
ゼロが説得して連れて来た」
「子供を戦争に使うっていうのは聞く話ですが、実際見ると腹立ちますね。
子供だからそれはいけないとイーリスちゃんを止めた中佐の爪の垢でも煎じて飲めばいいのに」
千葉がぼそっと低い声で吐き捨てると、朝比奈も確かに、と乾いた笑みで同意する。
「ブリタニアの暴虐の生き証人でもある。大事にしてやってくれ」
「ああ、そう言う意味もあるか。承知した」
ルルーシュに言われてさすが情理で動けるゼロ、と朝比奈が納得すると、朝比奈達が用意したワゴンは一路、カツシカへと走り出した。
「仙波中尉からナナリー皇女の様子を聞いた。まだ起きてゼロ・・・ルルーシュ皇子の帰宅を待っているとのことだ。
ただ、エトランジュ様がまだお戻りになっていないとのことでそれが気になる」
千葉の前半の報告に安堵したルルーシュだが、後半のそれに眉をひそめた。
「俺が頼んだのはアッシュフォード学園の俺の部屋の隠し収納庫に連絡用の携帯を隠してくれというだけだったんだが・・・もう戻っていい時間帯だぞ」
一度行ったことのある学園である。さほど迷うこともないし租界に検問を張られてもさして不審に思われることはないはずだと言うルルーシュに、またしてもイレギュラーかと頭を抱えた。
(もしかして、リンクが切れたのはギアスの使い過ぎによるものか?
あれだけ長い間ギアスを使っていたのは初めてだろうから、考えられなくはない)
もしそうでもまだジークフリードが彼女の傍にいるはずだから大丈夫だとは思うが、最悪の事態ということも考えられる。
「俺、トウキョウ租界に戻る!アッシュフォード学園に行かないと!」
「待て、今はまだ危険だ!この騒ぎが収まるまではやめたほうがいい!!」
今にも飛び出さんとするクライスを、藤堂と朝比奈が抑え込む。
「中佐の言うとおりだ!君まで捕まったら今までの苦労が水の泡だよ?!」
「けど、俺はエディの護衛なんだよ!何かあったら助けに行くのが当然だろうが!!」
車の中で暴れ出すクライスだが、しばらくして何かに驚いたような表情をした後、徐々に動きが止まっていく。
「・・・?どうしたんだクライス君」
「・・・解った、解った」
ラテン語でそう呟いたクライスは、途端に暴れるのをやめた。
「すんません、藤堂中佐、朝比奈少尉。俺、頭に血が上っちまいました」
「いや、それは君の立場なら当然だ。解ってくれてありがとう」
だが確かにエトランジュが戻らないのは気がかりだ。速やかに基地に戻り事態を把握しようという相談がまとまる。
そして車はさらにスピードを上げて、一路黒の騎士団本部のトレーラーへと向かうのだった。
シンジュクにて、まんまとルルーシュに逃げられたコーネリアは頭上を通り過ぎて行った大型の軍用ヘリに眉をひそめた。
「V.Vが寄越したアレはなんだ?」
「解りませんが、アレを政庁内に入れたとの報告が・・・」
ダールトンも主君を無視した勝手な振る舞いに怒りを隠せない様子で、コーネリアに進言する。
「・・・残念ですが、この様子ではルルーシュ様は既にゲットーの方に逃走されたと思われます。
ここはいったん政庁に引き上げて、改めて捜索する方が効率がよろしいのでは?」
「信頼出来る者だけを厳選して、捜索するということか・・・」
確かに敵味方が入り乱れているこの状況では、いつ誰がルルーシュに通じるとも限らない。腹心のギルフォードからも連絡がなく、ダールトンの言うとおり既にゲットーに逃げた可能性が高かった。
何しろこのエリア11は租界よりもゲットーの方が広い上にイレヴンが味方についているので、地の利は圧倒的にルルーシュの方にあった。
「・・・解った。ギルフォードに戻ってくるように伝えろ」
「イエス、ユア ハイネス」
苦渋の表情でダールトンの意見を聞き入れたコーネリアは、全軍に退却の指示を出して政庁へとVTOLを向かわせた。
同時刻、チヨダ周辺の地下道で主君からの引き上げ命令を聞いていたギルフォードは急に襲った目まいの後、自身に起こった状況に眼鏡を外して額を押さえていた。
彼の身体は滑稽なことに小麦粉に覆われており、先ほどもピンと張られたワイヤーに足を取られて転倒するなど無様な醜態を晒していた。
常ならば引っかかるなどあり得ないトラップにこうも簡単に引っかかったのは、やはりルルーシュを追うことに集中したせいだと考えた。
だが目まいと共に『全てのイレギュラーを見逃せ!!』とそのルルーシュに命じられたことを思い出したギルフォードは、何故かそれに是の返事を返した己をさらに訝しむ。
(・・・白昼夢かなにかだろうか・・・そう考えるのが一番納得はするのだが)
理論的にはそう考えるべき事態だとギルフォードは無理やり自己完結し、主君の命令に従うべく兵士達に帰還命令を出した。
(あんな馬鹿げたトラップに引っかかりさえしなければ、ルルーシュ様に何とか追いつけたやもしれぬというのに・・・!
姫様にどの顔でお会いすればいいのか)
ギルフォードは己の不甲斐無さを罵りながら、シンジュクゲットーへと向かうのだった。
政庁では、V.Vが遺跡経由で運ばせたギアスキャンセラーの適合体であるジェレミアが入れられたカプセル装置を見て大きく溜息をついていた。
目を閉じて液体の中で眠っている彼だが、先ほど気圧ショックを与えられた際は苦痛に喘いで暴れたため、鎮静剤を投与したところである。
「えー、これ一度使うとしばらく使えない状態なの?」
「申し訳ございません、これはまだまだ研究段階でして」
恐縮するギアス嚮団の研究員に、だったらV.Vはあんなところで使わせるんじゃなかったと後悔した。
「研究所の外での実験は今回が初めてですが、半径もせいぜい100メートルほどです。
無理に身体に圧力をかけてギアスキャンセラーを動かしますと壊れてしまう可能性があります。今の状態では十時間は休ませた方が・・・」
「ゼロがいる辺りで発動させちゃえば、ロロを連れ去ったゼロのギアスが解けると思ったんだけどなー。
結局ロロ、うまくやったのかなあ」
V.Vは一部ハッキングを免れた監視カメラの映像から、ロロがルルーシュ達が逃走に使ったトラックに乗りこんでいたことを確認していた。
そこでようやくロロもルルーシュのギアスにかかっていることを知ったV.Vは、懐にいるなら彼のギアスさえ解けば後はロロに任せればいいと考え、急きょ念のため復興途中の式根島基地に保管し、政庁に寄越す手はずになっていたギアスキャンセラーをシンジュクとチヨダ辺りまでやったのだが、今の状況ではロロがゼロを始末出来たかどうかは解らない。
「まあいいや。とりあえずギアスキャンセラーが使えるようになったら、政庁にかけられたゼロのギアス解いちゃってね」
「かしこまりました。では失礼します」
研究員がジェレミアが入れられているカプセルを運び出すと、V.Vはこれで政庁にゼロことルルーシュの手駒はいなくなってひとまず安心だと機嫌がよくなった。
だがそれどころではないのは、ギアス嚮団の研究員の心の声を聞いて事態を知ったマオと、それを聞いたアルフォンスである。
《それでさっきからゼロと連絡が取れなくなったのか!とんでもないもん発明してくれちゃって!!》
《さっさと僕達も政庁から離れないと、こっちのギアスも解かれてエディとも連絡が取れなくなるよ》
今はそのギアスキャンセラーとやらは使えないのだから今のうちにと言うマオのもっともな意見に、アルフォンスは歯軋りしながらも頷いた。
「・・・ユーフェミア皇女、ゼロは無事に逃げられたみたいだ。
こっちも詳しい話を聞きに行きたいから、速やかにここから出たいんだけど」
「そうなのですか?よかった・・・」
ユーフェミアとスザクはその報告に安堵の息を吐くと、アルフォンスの言はもっともだが、姉により出ることを禁じられていると申し訳なさそうに言った。
「あれだけの騒ぎですから、どうしましょう・・・」
「・・・皇帝が来たら言いたいことがあるから残るって言ったら?
あの女の性格上、たぶん帰れと言いだすと思うから」
さすが敵対しているだけあって逆に相手の性格をよく把握しているアルフォンスの提案に、ユーフェミアは複雑な気分で受話器を手にして姉に連絡した。
アルフォンスの読みは見事に当たり、ルルーシュを取り逃がしてしまったことを謝罪したコーネリアに、皇帝が来るのならルルーシュの件で尋ねたいことがあるから残ってもいいですかと言ったユーフェミアに慌てふためいた声が飛んだ。
「・・・それは私からうまくお尋ねするから、お前は気にしなくていい。
それに急に特区から出て来たのだからこれ以上残るのはよくない。騒ぎも収まったのだから、もう戻ったほうがいい」
「・・・解りました。よろしくお願いします」
今夜の詳しいことは後で話すし、国民達にはテロリストを追ったとだけ報道すると言われたユーフェミアは溜息をつきながら受話器を置くと、アルフォンスはさっそくパソコンを操作してハッキングの痕跡を綺麗に消してしまう。
そして電話で車を一台用意して貰うと、一同は政庁を出る準備を始めた。
マオが滅多に来ないであろうギアス嚮団員を最後に念入りに調べておこうとギアスを集中させると、マオは首を傾げた。
(ラグナレクの接続、思考エレベーターってなんだろ?
この研究員は専門じゃないみたいだけど、それを担当してる嚮団の研究員がいるみたいだなあ)
アルフォンス達にも後で聞いてみようとさらにギアスの範囲を広めると、ギアスキャンセラーなるものを埋め込まれたオレンジことジェレミアの思考が飛び込んできた。
《ゼロ、復讐、忠誠、ブリタニア!!我改造!!》
(あー、駄目だこいつ。まともな思考回路してないな)
マオは半ば憐れみを込めて彼の思考をシャットアウトしようとすると、さらに声が響いてきた。
(マリアンヌ様守れず我、不覚!ルルーシュ殿下殺したイレヴン、死!)
そういえばコーネリアの思考を読んだ時、アリエス宮の事件でジェレミアも警備を担当していたのでそこからコーネリアは彼とルルーシュとの間に繋がりがあると誤解していたっけと思い出す。
そのルルーシュが彼をさんざんな目に遭わせた張本人である上、忠誠を誓った祖国により勝手に身体を改造されたジェレミアは実に哀れな男である。
しょせん他人事なのでマオはそれ以上ジェレミアを気にかけず、ギアス嚮団員から正確な嚮団の位置を探ってから、だいたいの情報は得たと視線でアルフォンスに伝えた。
既に政庁に用はないアルフォンスは了解すると、早くルルーシュの安否を知りたいユーフェミアに急かされた形で一同は部屋を出るのだった。