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No.18551の一覧
[0] 伝鬼物語  過去―――別レ 壱 追加(異世界・異能ファンタジー)[霧雨夢春](2010/07/05 02:07)
[1] 伝鬼物語  プロローグ[霧雨夢春](2010/06/10 23:22)
[2] 伝鬼物語 現在―――出会イ 壱[霧雨夢春](2010/06/12 14:23)
[3] 伝鬼物語 現在―――出会イ 弐[霧雨夢春](2010/06/06 11:53)
[4] 伝鬼物語 現在―――出会イ 参[霧雨夢春](2010/06/06 13:57)
[5] 伝鬼物語 現在―――出会イ 四[霧雨夢春](2010/06/06 12:37)
[6] 伝鬼物語 現在―――日常 壱[霧雨夢春](2010/06/06 13:43)
[7] 伝鬼物語 現在―――日常 弐[霧雨夢春](2010/06/06 13:57)
[8] 伝鬼物語 現在―――日常 参[霧雨夢春](2010/06/06 14:05)
[9] 伝鬼物語 現在―――日常 四[霧雨夢春](2010/06/07 19:31)
[10] 伝鬼物語 現在―――別レ 壱[霧雨夢春](2010/06/23 00:19)
[11] 伝鬼物語 現在―――別レ 弐[霧雨夢春](2010/06/26 00:08)
[12] 伝鬼物語 現在―――別レ 参[霧雨夢春](2010/06/29 00:45)
[13] 伝鬼物語 現在―――別レ 四[霧雨夢春](2010/07/01 23:54)
[14] 伝鬼物語 過去―――出会イ 壱[霧雨夢春](2010/06/06 12:48)
[15] 伝鬼物語 過去―――出会イ 弐[霧雨夢春](2010/06/06 13:22)
[16] 伝鬼物語 過去―――出会イ 参[霧雨夢春](2010/06/06 13:28)
[17] 伝鬼物語 過去―――出会イ 四[霧雨夢春](2010/06/06 13:36)
[18] 伝鬼物語 過去―――日常 壱[霧雨夢春](2010/06/10 23:35)
[19] 伝鬼物語 過去―――日常 弐[霧雨夢春](2010/06/13 22:52)
[20] 伝鬼物語 過去―――日常 参[霧雨夢春](2010/06/17 02:45)
[21] 伝鬼物語 過去―――日常 四[霧雨夢春](2010/06/19 19:18)
[22] 伝鬼物語 過去―――別レ 壱[霧雨夢春](2010/07/05 08:50)
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[18551] 伝鬼物語 現在―――出会イ 参
Name: 霧雨夢春◆9b146213 ID:c8d51e6c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/06 13:57


「いやはや、本ッ当にごめんなさい!」

 咲夜の屋敷、先程と違い明かりの着けられたその場所には、全力で謝っているずぶ濡れの少年の姿があった。

 少年の頬には赤々と腫れ上がった手形がついている。
 さらに膝と掌、そして頭までも地面へとつけているという格好。

 要するに少年は土下座していた……

 ためらうことなく頭を地面にこすりつけている。
 それはもう、見事なほど全力の土下座だった。

 そんな少年を前に、私は途方に暮れるしかない。

「いいよ、もう。そもそも誰が悪いわけでもないし……事故だよ」

 思いっきり引っぱたいておいて矛盾するセリフかもしれないが、あの状況では誰でもそうなってしまってしまうんじゃないだろうか。

 うぅ、赤くなっているのが自分で分かる……

 ここのところ、感情を表に出すようなことがなかったから、なおのこと頬が熱くなっていることを意識してしまう。

 私の言葉を聞いて、少年はまだ申し訳なさそうに顔を上げる。

 気恥ずかしさで赤面していることを誤魔化すためにも、肝心のことを聞いておかないといけないだろう。

「それよりも、どうしてあんなことになっていたの?まさか、鬼に……!」

「あぁ~~!! 忘れていた!」

 言葉が途中で少年の声にかき消される。

 少年は、思い出したように何故か持ってきていた自分が倒れていた桃の枝をガサゴソと漁る。
 少しの間そうしていたが、やがてガクリと突っ伏した。

「何故……何故、桃の木に桃がないの? そのために崖からまっ逆さまにまでなったのに……」

 背後にズ~ンと、重いオーラが漂っており本気で落ち込んでいるのが分かる。

 私が水浴びしていた時に多くの桃が流れていたから、崖から落下した時とやらに実っていた桃が落ちてしまったのだろう。
 というよりも桃のためだけに崖から落ちたとはいったいどんなことをやっていたのだろう……それとも、それほどまでに桃が好きなのか?

 声もかけるにかけられないでいたのだが、

「待てよ! 成り行きとはいえ町に着いたんだから、桃を食えなくても普通に飯を食えるよな!」

 ガバッ、と起き上がる少年。

 それから、いそいそと懐を探る。
 崖から落下した直後でこの気力があるとはこの少年は相当しぶとい。

 半ば呆れながら私は少年のことを見ていた。

 そして、少年が今度は凍りついた。

「サイフ……落とした」

 そのセリフが全てを物語っていた。
 崖から落ちたときに、おそらく落としたのだろう。

 再び声をかけるにかけられない状態になったのだが。


 バタンッ、


 いきなり少年が倒れた。
 真正面から受身も取らずに。

 見ているこっちが痛くなりそうな倒れ方だ……

「ちょっと!」

 今さらながらに、崖から落ちた影響が出たのかと近づこうとしたときだった。


 グギュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルゥゥゥゥゥゥゥッ……!


 信じられないほどに凄まじい腹の音が響いた。
 少年が何も言わなくても事情は分かった。

 長い沈黙が流れる。

 流れる。

 流れる。

 流れる………

 やがて、沈黙に勝てずに咲夜が声をかける。

「えっと……大丈夫?」

 グゥゥ……

「痛いところとかはないの?」

 グゥ、グゥ……

「崖から落ちたんだよね、本当に大丈夫なの?」

 グゥゥ……

 返ってくるのは沈黙のみ……
 というか、腹の音で返事をしている気がするのは、自分だけだろうか?

 さすがに少年に哀れみを持ってくる。

「あのさ……ご飯食べていく?」

 自然に出た言葉だった。

 だが、言ってからそれは言ってはならない言葉だったことを思い出した。

(馬鹿だなぁ、神託者の私がこんなことを言ったところでさらに気まずくなるだけなのに……)

 この町でそのことを知ったはずなのに……なのに私は、また同じ間違いを繰り返そうとしている。

 だが、倒れたままで顔だけを上げて咲夜を見た少年は

「いいのか!!」

 子どものように無邪気に、輝くような笑顔でそう答えただけだった。

「う、うん」

「ありがとう!あんたいい人だな!!」

 そう言いながら立ち上がると、自分の両手で私の手を握りブンブン振ってくる。

 歓喜の感情を余すことなくぶつけられて、ちょっと戸惑う。
 ただ無礼とも言える行動なのに不思議と不快感はなかった。

「そういえば、名前言ってなかったよな?俺はせん!あんたは?」

 ようやく、名乗りをあげる少年。

 そういえば、この閃という少年は自分が神託者であることを知らないのだ。

 (私はそのことを言うべきなのかな……?)

 だが、悩むより先に言葉が出てきた。

「私は咲夜、よろしくね」





 それが、『神と崇められた少女』と『全てにおける異端の少年』の出会いだった。



***

はい、というわけでようやく主人公の名前が明らかになりました。

でも、一話からここまで閃は主人公らしいところを何一つとして見せてない気がするのは作者だけでしょうか?w

主人公ならもうちょっとカッコいいとこを見せてほしいですねぇ。

いまさらになりますが、この小説は基本的に一人称視点と三人称視点を織り交ぜた形式で送っていくと思います。

読みづらくなっているところがあったら、おっしゃってください。

6/6 火輪さんの指摘を受けて、改行等の形式を変更しました。


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