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No.17719の一覧
[0] (ネタ/転生) 劉宏伝 (真・恋姫†無双)[心海2000+](2011/03/23 05:43)
[1] プロローグ[心海2000+](2011/03/23 05:44)
[2] 第一話[心海2000+](2011/03/23 05:43)
[3] 第二話[心海2000+](2011/03/23 05:45)
[4] 第三話[心海2000+](2011/03/23 05:44)
[5] 第四話[心海2000+](2011/03/23 05:45)
[6] 第五話[心海2000+](2011/03/23 05:45)
[7] 第六話[心海2000+](2011/03/23 05:45)
[8] 第七話[心海2000+](2011/03/23 05:46)
[9] 第八話[心海2000+](2011/03/23 05:46)
[10] 第九話[心海2000+](2011/03/23 05:46)
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[17719] 第五話
Name: 心海2000+◆22d0e021 ID:00b068e4 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/23 05:45
息を吸い込んだ。むせ返る大地の香り。激しい風。遮る物などないから、飛び散る砂が少し痛い。
それでも幸せを感じるのは、恐らくこの世界に来て初めて広大な大地を感じているからだろう。
前世でも、ここまで広大な平野を見た事は無かったように思う。
否応なしにテンションが上がる。何の意味もなく駆け出したくなった。これが自由か。
近代以降の人々が自由を求めた理由がよくわかる。これは良い物だ。


「これで馬に乗れたらきっと一番良かったんだけどなぁ」


中国大陸の地を徒歩で行くのは中々無謀な気がするが、残念ながら俺は乗馬経験が無かった。そして何より馬を買う金も無かった。
路銀は少々持たせてもらったが、馬を買うほどは無い。何にせよ、馬に乗る機会は巡ってこない。そして馬に乗る修練をする時間も無い。なので徒歩だ。
長い木の棒を支えにしつつ、日傘を被って歩く。ちなみに宝剣は持っていると寝てる間に盗まれたり、もしくは道を歩いているだけで強奪されるであろう事は確実だったので華琳に預けてしまった。

そもそも体力の無い俺には剣が重荷だった。それを持って歩くだけで、もう動く気力がどんどん萎えていく。少しして帰ってきた俺の現状に凄く呆れた顔をした華琳。思い出すと少し笑えた。
従者をつけろと言う話も出たのだがそれも断ってしまった。邪魔だったからだ。それに従者つきの旅なんてしていたら確実に怪しまれるだろう。

宦官だって素直に俺が死んだとは思わないだろう。俺だったらまず逃げ出した線を探す。人相描きも出るんじゃないだろうか。
その時に従者つきのそっくりさんが歩いていたら確実に怪しまれるだろう。
そして宦官たちは世間知らずの俺が逃げ出したと仮定するならば我が儘に従者や華美な事を好むと思い込むに違いない。実際、宮廷ではそれなりに我が儘は言っていたしな。
そんな我が儘な俺がまさか一人旅をしているとは思うまい。日傘を深く被り、しかもたった一人で歩いているただの旅人と言うのならば、そこまでは警戒されない。
万が一にも逃げ出した皇族だと疑われる事は無いだろう。このご時世に諸国を歩き回る事は別段不思議なことでは無いのだから。

清流派と呼ばれる名士の多くはかなり前から有能な主を探して歩き回っている。これは、中央を宦官が牛耳り、その支配が地方にまで及び始めたからだ。
清流派や自らの能力に自信のある人物の多くは宦官の下で働くことを良しとしなかった。
それにより、有能な主を捜し求めて人々が歩き回っている現在、俺もその中の一人と称し動いたとしても不思議には思われない。
まぁ、何処かで路銀を稼いだりしなければいけないが、それもやれなくも無い。

文字書きが出来て算学も出来るので、代筆や倉庫整理などが出来る。その土地を治める人物に言って少しの間だけ雇い入れてもらえば旅費に関しては充分なのだ。
かの老子だって図書館の司書やってたんだぜ。ちゃんと雇われてたらしいけど。隠れているのだから長居は出来ないだろうが、三日四日程度ならば問題ないだろう。
それが宦官の影響が少ない地域ならば、もっと長くいても大丈夫かもしれない。

現実的な線で言えば俺が問題なく長期滞在出来るのは涼州、幽州、益州、楊州のいずれかだろう。この辺りは宦官の影響がとてつもなく小さい。
一番小さいのは恐らくは交州だが、あそこには行って無事である自信も無ければ帰ってこれる自信も無い。なので結局は先の四州が恐らく現実的だろう。

まず、涼州と幽州。この二つへ行く宦官は少ないだろう。この二つは異民族との戦いの第一線であり、しかも作物の収穫高はそこまで多くない。
しかも幽州は公孫家が、いわゆる下級官僚を家族で固めて来ているため、迂闊な行動をする事は幾ら金で官位を買ったとしても出来ない。
涼州もほぼ同様である。最も、公孫家のように代々の名士と言う存在はいないのだが、その代わり羌族との結び付きがかなり強い。あそこは漢という枠組みからは何処か外れているような気がしないでもない。
そんなわけで、この二つの州に好んで行く宦官はいない。
何故なら、そこで取れる税も少なければ、下手すると反乱が起きたり異民族に侵略されて責任取らされるかもしれない地へと赴き、政治を乱すほど宦官とその親族は愚かでは無い。
まぁ、度胸が無いだけという意見もあるのかもしれない。
もしも本気でカリスマの有る人物で、俺と同じようにこの後に世が乱れると知っているとするならば、あの中に入り込んで一旗あげようと考えるだろう。俺の場合は無理そうだけれど。
何故なら、今の俺では兵を率いて戦うと言うことが出来ないからだ。なのでこの案件は即却下された。

次に宦官勢力との結び付きが小さいのは、益州だろうか。あそこは深い山々に包まれていて交通の便が悪い上に大きな関によって移動がかなり制限されている地域である。
あそこは、なんかもうほぼ独立領域みたいな感じだ。変に孤立している場所だからなのか独特な文化が育まれており、中央との断絶も激しく一度入ると出るのに苦労する場所。
幽州や涼州に関しても中央から遠いと言えば遠いが、益州はもう全然別の意味で遠い。同じ国の人なのか、ちょっと疑いたくなるレベルだ。
独立機構すぎる。そう言う意味では、あそこにいるのは俺にとって悪い事ではない。だが、そうなると華琳とのコミュニケーションが途切れ途切れになってしまうだろう。
より良い人付き合いの基本は一定期間、常に報告連絡相談を行い続ける事だ。篭もるだけなら益州で問題ないが、打って出る事を考えるとあそこは、あまりよろしくない。
きちんとした通信網があれば話が別なのだが、華琳も俺もそんな上等な物は持っていない。


「ふーむ……となると楊州が一番現実的なのかな……?」


楊州の特徴は交易が盛んな事と水軍が強い事だ。適度に中央にも近い。近いが、そこも当然異民族との軋轢があり、異民族との戦いがある。異民族で思い出した。
異民族討伐を通して大きな勢力になっていたはずの孫堅が何故か俺が朝廷を出る寸前にお亡くなりになった。最早意味がわからない事この上ない。
今孫パパ死んだらダメだろ。反董卓連合どうするんだ。いや、ここではパパじゃなかった。ママだ。それも意味がわからない。調べたら何故か孫堅は女性だったのだ。
曹操が女性だった時も結構驚いたが今度は孫堅まで女性。後漢っぽい何かと言い続けたが後漢を機軸にした別世界と考えた方が良いのかもしれない。

一度その話は置くとして、今現在揚州は非常に混乱している。理由としては異民族に対抗する主柱とすべき存在が居なくなったからだ。
それなり頑張ってはいるが、それでも政治的にも軍事的にもぽっかりと穴が出来てしまい、楊州は混乱している。
中央と地理的に近く、政治的に混乱している今ならば俺が紛れ込むのはちょうど良いだろう。だが問題もある。
ここにいては黄巾党を盗むと言う発想が上手に機能しない可能性がある。そう言う意味では先ほど考えていた益州は論外だ。

あそこにいては黄巾党どころか、政治的異変が起きた事すら気付かずに終わる可能性すら出てくる。もしも俺が黄巾党に関して何かを望むのならば、むしろ宦官勢力の近くにいるべきなのだ。
民が暴動を起こそうとしている気配や、いわゆる侠と呼ばれる人々と何かしらの縁を結ぼうと考えるならば、中央付近の政治的腐敗の中に飛び込まなければいけない。
しかし、政治的腐敗の近くと言うことは宦官とその親族などと通じている人間が多くいると言う事だ。それを掻い潜る事が俺に出来るだろうか?


「……難しいと言うのは楽観的だな」


はっきり言えば無理だろう。それこそ、俺自らに何かしらの援護、もしくは協力体制が無い限りは絶対に無理なのだ。援護ならば密約を結んでいる華琳と考えるが、華琳に動いてもらうのは無理だ。
華琳の動きは一年は見張られるだろう。それに華琳自身が何かしらの権限を持つに至るのに、どれだけの才覚があろうと2年はかかると俺は踏んでいる。2年間の間、俺はどうにか世間に潜り込まなければ行けない。
黄巾党の動きが活発化する詳しい時期はわからないが、今は楊州で身を隠すのが現実的だろうか。だからと言って中央への動向を無視する事は出来ない。
俺に必要なのは隠れつつ、中央への情報が手に入り、お金も稼げるという事か……。いや、正直全部は無理だな。最優先は隠れる事、次点で中央の情報が手に入る事、最後がお金だな。
お金に関しては最低限食べられる程度を稼げれば良い。粗食に体を慣らしてきたつもりだ。一日二日食べなくても生きていけるように体を作り変えてきた。おかげで体力とは無縁の体になってしまったが。
もう少し現実的に詰めて行くならば、最優先は隠れる事とあまり表に出なくても怪しまれない職に就いてしまう事、次点で楊州の豪族から中央に関する情報を集める事と中央から少し外れた清流派の人との間に独自のコネを作って情報を集める事、最後はお金、だな。
次点での中央から少し外れた清流派に関しては華琳を通して紹介してもらうのも有りかな。それ以外にもここの豪族を通して紹介してもらうという手もある。実際行うならば両方か。


「うん、これで良いな」


さて、それじゃあ、楊州へ向けて進むとするか。

■■

突然だが俺が元々住んでいた都である洛陽の近くにも大きな河がある。黄河と呼ばれるものである。正直、見たのなんて数回程度だが、それでも大きな河の流れを最初見た時には、自らの中に壮大な何かを見出したりしたものだ。錯覚だとは思うが。
今、目の前にそれ以上に大きい長江が広がっている。ほとんど海だろうと突っ込みをいれたいが、これも一応は河。ここまで大きいと俺も何と言えば良いのか、よくわからない。
例えば音一つ描写するのでも、河と言うよりも海に近い。光景も向こう岸がギリギリ見えるか見えないかで、下手すると見えないので海を見た時の感想と同じになる。ただただ広さに圧倒されるのだ。

俺はそんな長大な河を草むらに腰を下ろしながら眺めていた。辺りにあまり人影は無い。何でこんな所で一人黄昏ているのかと言えば、向こう岸に渡ろうとしているが、踏ん切りがつかないと言った所だろうか。
向こう岸に渡ってしまうと、かなり行動が制限されてしまうからだ。今現在、隠れる事と情報収集の妥協点を考えているのだ。
正直、長江がここまで大きいと思っていなかったのだ。これだと下手な所に行ってしまうと、確実に情報交換などで不便な思いをする事だろう。
全てが全て上手くいくなどと考えていないが、それでも上手くいったら大きい収穫があるのならば一縷の望みに賭けてみたいと言う欲求は俺の中では強い。そもそも俺の行動の多くはそう言う行動に類する。
自らを死んだ事にしたのも、華琳の元から去ったのも、全部賭けみたいなものだ。どちらも成功したとも失敗したとも言えない粗末な結果だが、それでも言える事がある。


「どうやら、別に運が壊滅的に悪いわけじゃないらしいよな」


結果を考えるに、そこまで壊滅的では無さそうだ。そもそも転生なんてしたり、皇帝に成り損ねているのだが、それでもそのせいで死ぬような事は無かった。
もう一度、賭けをしてみるのも良いかもしれない。この豫州で賭けをする相手は幾つかあるが、一番倍率が高いのは孫家だろう。


「ふむ……確か、今は孫ママが亡くなって周辺地域を別の勢力が統治する事になったんだったかな」


賭けをする相手の情報を何となく思い出す。俺が今回、ちょっと人生張ってみる候補の一つは呉だ。それも落ちぶれている状態の。
何故か歴史よりもずっと早い段階で孫堅が亡くなった。まだ若すぎる孫策は、権力を持ち続ける事がどうやら出来なかったようだ。
だが、全てが早まっている今、孫策が歴史通りに勢力を回復するのはまず間違いなく、しかもそれが早まる可能性は充分にあり得る。
歴史通りに関しては俺と言う最大の例外があるのだが、曹操が生まれているし、政治が乱れているので大局に変化は無いだろう。
それに、結局誰が漢の皇帝になっても今はただ操られるだけだ。そうなれば反乱は俺じゃなくても起こる。その時の皇帝が俺であろうが無かろうが多分変わりない。
もしも今の段階で孫家に恩を何かしらの手で売ったり出来れば、配当は凄く高くなるだろう。なるだろうが……。


「売れるもんが無いんだよなぁ……」


残念な事に売れるものが無い。俺が持っている物は既に華琳に売却済みである。しかも、最も価値のある名前だ。
漢帝国の血筋という大義名分。あの時、俺にあったのはソレだけだ。それ以上の物は無かった。だから売りつけた。
だから、今の俺は完全に空っぽだ。本名の劉宏とは一時的にお別れになる。だから、俺に売れる物は完全にないわけだ。出自不明者で、知識はそれなりしかない。そんな人間が売れる物は何だろうか。
もしくは売るのではなく、彼らが何かを成そうとしているのに手を貸すと言う方向性もある。これなら、俺にも出来るだろうが出自は疑われるだろう。嘘を突き通すのは、中々に難しい事だ。
だが、今現在孫家は落ち目である。残念な事に孫堅が亡くなり、元々持っていた領地の維持が不可能となった事で多くの人間が散って行った。この隙に、俺が呉の中にもぐりこむ事自体は、そんなに難しくは無いだろう。
難しくはないだろうが、深く入りすぎれば今度はそれが邪魔になる。自由に動けないのは困るのだ。
俺は黄巾と言うまだ見ぬ賊を吸収し、自らに"軍事力"という新たな価値を生み出さなければならない。そのためには、ある程度自由で無くてはならない。


「妥協点だらけだな……どの辺りで折り合いをつけるか」


声は河の音に切り刻まれて、やがて虚空に消えた。



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