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No.15675の一覧
[0] 魔法少女リリカルなのはThe,JINS『旧題・魔法少女と過去の遺物』{魔法少女リリカルなのはとオリキャラ物}[雷電](2012/12/08 18:27)
[1] プロローグ・改訂版[雷電](2011/06/20 19:29)
[2] 無印 第1話・改訂版[雷電](2011/06/20 19:35)
[3] 無印 第2話・改訂版[雷電](2011/09/14 08:43)
[5] 無印 第3話 改訂版[雷電](2011/05/03 23:14)
[6] 無印 第4話[雷電](2011/05/03 23:17)
[7] 無印 第5話[雷電](2011/09/14 08:44)
[8] 無印 第6話[雷電](2011/06/20 19:53)
[9] 無印 第7話[雷電](2011/07/17 16:19)
[10] 無印 幕間1[雷電](2011/07/17 16:27)
[11] 無印 第8話[雷電](2012/03/10 00:36)
[12] 無印 第8話・2[雷電](2012/03/30 19:37)
[13] 無印 第9話[雷電](2012/03/30 19:39)
[14] 無印 第10話[雷電](2012/11/07 21:53)
[15] 無印 第11話[雷電](2012/11/07 21:55)
[16] 無印 第12話・前編[雷電](2012/12/08 18:49)
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[15675] 無印 第8話・2
Name: 雷電◆5a73facb ID:b3aea340 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/30 19:37


第8話・2





≪洞爺様、聞こえますか?≫

お茶会から抜けてなのはを追った斎賀洞爺は、彼女の足跡を追って手入れの行き届いた林の中を周囲に気を配りながら疾走していた。
ここはすでに敵地を言っても良い、相応の注意が必要なのだ。いつどこから魔力弾や銃弾が飛んでくるかわからない。
頭痛と共に頭に直接鳴り響く声に、洞爺は林の中を走りながら答える。酷い頭痛だが丁寧に手入れされた庭は転びようが無いほど走りやすいのが幸いだ。
頭の中に直接響く感覚がとても気持ち悪いが、これからはいつもの事になるのだから慣れるしかないだろう。

≪エーアリヒカイトか、状況を説明してもらいたい。なぜジュエルシードが庭にある?あれは厳重に保管されているはずだ。演習目的などという見え透いた言い訳はしないでくれよ。≫

≪これはナンバー14とは別の個体です。まさか、お庭に落ちているとは・・・こちらの不手際です。≫

≪こんな近くに落ちているとは思わなかった、か?≫

≪・・・はい。一度捜索はしていたのですが、見落としてしまったようです。≫

≪悔んでも仕方あるまいよ。もう起きてしまったのだ、今はどう収拾を付けるかが重要だ。≫

≪宇都宮祝融とサーシャ・モシン・ナガンの両名と警備隊、偽装武装ヘリ1機を応援も向かわせます。彼女達と共同し、ジュエルシードの封印と美空・・・・子猫の救出をお願いします。≫

≪こちらも全力は尽くす。が、封印するのは高町の仕事だ。出来るだけ早く合流するように伝えてくれ。≫

ノエルはそれを見越していたのか、たいしてショックを受けずに答える。

≪承知しています。今後の連絡の際は無線機を介した方がよろしいでしょうか?≫

≪いや、別に構わん。だがこちらからはしばらく無線で連絡することになる、回線は開けておいてくれ。≫

≪解りました、ご武運を。≫

「了解、そっちも頼むぞ。特に、バニングスちゃん達がこっちに来ないようにな。」

念話が切れ頭痛が消えるのを感じながら、皮ジャンの裏から十四年式拳銃を取り出して安全装置を解除する。
弾倉に弾が入っていることを確認すると、コッキングピースを摘んでスライドを引いた。
次いでもう一度弾倉を引き抜いて8ミリ南部拳銃弾を1発だけ足してから元に戻す。やがて洞爺はなのはの後ろに追いついたが様子がおかしい、ユーノが慌てて周りを見渡している。

「ここじゃあ人目が・・・結界を作らなきゃ!!」

「結界?」

ユーノの話によれば、魔法効果の生じてる空間と時間進行をずらすということらしい。そうすれば、ここで戦闘をしても外にはばれないというのだ。
目立つなのはの魔法にしても、洞爺の銃にしても、これは非常に都合がいい。
だがデメリットが無いわけでもない、今結界を張られたらこれから来る増援にトラブルが発生するかもしれないのだ。
せめて味方が到着してからでなければ、洞爺は二人に追いつくと会話を遮って制止した。

「僕が少しは得意な魔法だ。」

「待て、これから増援部隊が来る。結界を張るのがそれからだ。」

「うん、じゃぁお願いね。」

「う、うん!任せてよ、なのは。」

「おい待て話を聞け、味方を閉めだす気か!」

ユーノはなのはの言葉少し照れくさそうにしたがすぐに真顔に戻って前を向く。
駄目だ完全に二人だけの世界に入っている、何とか正気に戻そうと、洞爺は二人の頭にゲンコツを振り下ろそうとしたが遅かった。
瞑想するように目をつむり、神経を集中させる。ユーノの前に魔法陣が出現し、周囲の景色が一変した。

「やってしまった・・・後でどやされるな。」

「あまり広い空間は無理だけど・・・この付近なら、何とか・・・あ、サイガ追いついたんだね?」

魔法陣の光が増大し周りの風景が一変する。いや、景色は変わらないが色が抜け落ちてグレーが目立つというべきか。
その変貌になのはは呑気に目を丸くする。珍しそうにあたりを見回して、木をぺたぺた触ったりと興味深々だ。
そんな時、目の前にジュエルシードの発する光が瞬き、瞬く間に光の柱になって、その中から何かがのそりと歩き出た。
何が出てきても対応できるよう、3人は各々構えをとり、そのまま固まった。

「!?」

「ぁ・・・・」

「ぉ・・・・」

それは大きな猫だった。そう『木よりも大きくなった子猫』だった。しかも、先ほどユーノを追いかけまわしたあいつである。
くりくりとした愛らしい巨大な目、サラサラでふわふわな太い毛におおわれた4つ足の体躯。
かわいげに鳴いて前足を舐めるそいつは全く邪気を放っていない。それに全員頭真っ白、目が点である。
なのはは目が点、洞爺は頭髪真っ白。ユーノは干からびて毛並みが荒れて唖然とする。

「にゃ~~ん。」

あの子猫はそれを気にせずに歩き出す。可愛い声に似合わず、足音はドッシンドッシンと強烈だ。
だが、かわいい。その足音がアクセントとなり、可愛らしい巨体が余計に引き立っている。
見ていると無性に抱きつきたくなるその姿に、洞爺はややひきつった口元をほぐしながらユーノに問いかけた。

「ユーノ・・・答えろ・・・どうしてこうなった?」

「た、たぶんあの猫の大きくなりたいって言う思いが・・・・正しくかなえられたんじゃないかな?」

「正しいのか?これが?」

体だけでっかくなった子猫。しかも形は子猫のままで体がそのまま大きくなっただけ、しかも愛らしい。
猫好きならば誰もが望むであろうものだが、まさか猫自体が望むとは思えない。だが、ふと子供に有りがちな願いを思い出して洞爺はようやく納得がいった。

「なるほど、こいつはつまり『大きくなりたい』と願ったのであって。成長したいとは願っていなかった訳か。」

「そ・・・そっか・・・」

「ユーノ、封印したらあれは一休さんに改名しよう。」

「モノリスにしようよ、イディーカムニエー。」

「なのは、なにそれ。」

「アリサちゃんのやってたゲームに出てきたやつ。」

場を和ませようとしたつもりなのか妙なギャグを飛ばす洞爺に、なのはは現実逃避しているようで平坦な声でどうでも言い反論をする。

「とにかく、このままじゃ危険だから元に戻さないと。」

「そうだね。」

「さすがにあれはな、いや不幸中の幸いか。月村なら小躍りしそうだが・・・」

「ありえる。すずかちゃんならありえる。」

「正直言うと今凄く抱きつきたいと思う俺がいる。」

なんとなく濃い顔立ちになって頷くなのはに、洞爺は少し苦笑気味に言って竹刀入れから九九式短小銃を取り出す。
ボルトを引き、取り出した五連発ストリッパークリップを使って固定式弾倉に九九式普通実包を装填して、使ったクリップはズボンのポケットに押し込んだ。

「俺が周囲を警戒する、さっさとやってしまえ。あれなら激しい抵抗はするまい、優しくすれば楽なもんだろう。苦しませるなよ?絶対に苦しませるなよ?いいな?絶対だぞ、約束だぞ。」

「じゃ、ササッと封印を―――」

無駄話はそこまでだった。まず最初に反応できたのは経験のある洞爺だけだった。
レイジングハートを握るなのはを地面に押し倒した直後、その上空を金色の何かが風切り音を立てて通り過ぎ巨大子猫の胴体に着弾した。
胴体から爆炎が上がり、悲鳴を上げて巨大子猫は横転する。その悲鳴と突然の攻撃に、なのはとユーノは動けなかった。

「な、何!?」

「奇襲だ!」

洞爺は目を剥いて後ろに振り返り、九九式短小銃を向ける。後ろにはだれもいない。
だが、洞爺の瞳はその人影を捉えていた。木々の向こうに見える住宅地、何本も立つ電柱の中の一本のてっぺん。
その上に立って彼女はいた。漆黒のマントと金色の頭髪のツインテールを翻し、レオタードを模したようなバリアジャケットを着ている少女。
だが、その顔立ちからして日本人ではないだろう。掘りが深い顔立ちに金髪で肌も白い、欧米系の白人のようだがどこか違う。

「欧州系の白人?いや、ハーフか?」

「外国の人?」

彼女の魔法の杖らしいモノからから金色の魔力弾が生成され発射される。数は八発。弾速は、実弾よりも遅い。目視できるレベルだ。迎撃できない速さではない。
洞爺は九九式短小銃を左手に抱えながら右手で拳銃ホルスターを開き、十四年式拳銃を抜いて連射する。
発射された八ミリ拳銃弾が金色の魔力弾を相殺する。魔力弾の爆発が空を彩った。
弾速は遅いが、擲弾程度の威力はある。喰らえば人体などバラバラだろう。
弾倉の弾を打ち切り、十四年式のスライドが後退したままストップして弾切れを示した。
空の弾倉を引き抜き、予備の弾倉を入れてスライドを引きなおす。
初回は九発{弾倉内8発+銃身内1発}撃てたが、次からは八発。それ以上撃たれれば迎撃は難しい。

「魔法の光・・・そんな・・・」

だがこの手で一番の適役であるユーノは完全に思考が停止してしまっている。おそらくいつもの冷静な思考は期待できない。
なのはも同様だ、突然の襲撃に思考が追いついていない。当然だ、彼女達は魔力を持っていても所詮はただの民間人なのだ。
ユーノは遺跡発掘の経験でこの手の経験はそれなりだとしても、なのはは鉄火場の経験など無いはずだ。
しかしここは二人に嫌でも動いてもらわなければならない。茫然と立ちすくむなのはに、洞爺は尻の青い新兵にするように叱咤した。

「高町、ぼさっとするな!」

「え、あ!レイジングハート、お願い!」

「standby,lady.setup.」

ようやく我に返ったなのはがバリアジャケットを装備する。その間に新たな金色の魔力弾はさらに迫る。数は、14。
次の攻撃が早すぎる、そしてこちらの初動が遅すぎる。迎撃の手段はほとんど整っていない。

「ちぃ!!」

九九式をスリングで肩にかけ、素早くマガジンを取り付けた一〇〇式機関短銃で魔力弾を狙って引き金を引いた。
タタタタタタタタッ!!と軽い銃声を奏でて八ミリの弾頭が魔力弾を迎え撃つ、しかし精度は良くない。
まともに狙っていないし、元々近距離戦用の一〇〇式機関短銃はこんな用途で使う銃ではないのだ。
10発の魔力弾を迎撃し終えた所で、30連発のマガジンが空になる。撃ち損じた魔力弾が洞爺の頭上を突き抜けた。

「高町、防げ!!」

「wide,areaprotection.」

巨大子猫の背に乗ったなのはが魔力障壁で何とかその攻撃を受け切る。すると、相手に変化があった。
見慣れているが、ここでは予想外の相手を見たような怪訝な表情。そんな表情をしたのを、洞爺の目は見逃さなかった、

{異世界人か、なんてこった。}

洞爺は再び一〇〇式を背中に掛け、九九式短小銃を構えた。リアサイトに取り付けられた目盛りがついた長方形の照準照尺を立て、照尺の脇に畳まれた棒状の対空照尺を広げる。
九九式短小銃は対人戦闘だけに及ばず『対空狙撃銃』としても運用可能な小銃だ。だが時代遅れとなっている装備でもある。
九九式短小銃で使用する7.7ミリ小銃弾はアンチマテリアルシューティングつまり『対物射撃効果』がある。
それを利用して対車両攻撃のみならず対空射撃にも転用しようとしたのである。その結果がこれだ。
だが木製布張りの航空機に効果はあっても全金属単葉となった航空機にはあまり効果がなかった。
対空射撃を敢行した小隊はほとんどが反撃で全滅したという話が多く、成功した話は少ないためあまり使用されない装備なのだ。
洞爺は対空照準器となったリアサイトを覗き込んで彼女に狙いを定める。なのはと同じくらいの九歳位の少女だ。
だが、その戦闘力はおそらく化け物、普通の人間以上だ。そして、彼女はこちらと一戦交える気だ。

{遠い、800メートル当たりか。当たりそうにないが・・・}

引きかけた指先が金縛りにあったように止まる。当たらないといえど撃ちたくない、まぎれもない本心だ。子供を撃つなんて真似はしたくない。
だが今は戦闘中、しかも敵は紛れもなく今狙いを付けているあの少女だ。撃たなければ、殺られるのは自分だ。
引き金に掛ける指に力が入る。重く乾いた銃撃音とともに7.7ミリ小銃弾が彼女に飛来する。が、その銃弾は彼女に突き刺さる事は無かった。
彼女は身をよじる動きをした、銃弾を避けようとしたのだ。当然当たらない、とはいえ隙はできた。
その間に洞爺は場所を移動し、なのはは巨大子猫の上から降りる。それと同時に近くの木に少女は枝を少し揺らして降り立ち、なのはを見つめた。

{まずいな。}

どこか放心しているような目のなのはとユーノに視線を送り小さく舌打ちする。あの二人をフォローしてうまく立ちまわる事はまず不可能だ。
相手の実力は言葉通りに未知数、人数は今のところ一人だが後から増援が来るかもしれない。対して自分達は3人だが、内二人は戦闘に慣れていない子供だ。
勝利は不可能、ならば引くしかない。撤退戦だ、洞爺は即座に決断するとなのはに向けて命令した。

「高町、封印は後だ。撤退するぞ。そいつを連れて離れろ、殿は俺が引き受ける。」

「でも!」

「行け!これは命令だ!!」

洞爺が九九式を構え、首を横に振って否定するなのはに向かって叫ぶ。その様子をユーノはどこか遠いところから見ているような感覚で見つめていた。
現状を理解している、だがなぜか実感が沸かない。これは現実なのか、いや夢なんじゃないか?解らない、今まで色々な事があり過ぎて考えが全く纏まらない。
周りの音が遠く聞こえる、ぼやけて、まるで感度の悪い無線機を通して聴いているような感覚。夢から覚めようとしているのだろうか?

「フォトンランサー。」

ユーノの耳にかすかに少女の声が聞こえた。咄嗟に少女の方を向く、そこには再び魔力弾をチャージする彼女が居た。狙いはなのはではなく、洞爺だ。
なのはに激を飛ばし、ウェストポーチから無線機を取り出して怒鳴る洞爺は、その存在に気づいていない。
夢から覚めたような気がした、遠くに周りの音が急激に戻ってくる。これは夢じゃない、現実だ。

「こちら斎賀、緊急事態だ!異世界人からの攻撃を受けた、聞こえるか?応答せよ!!こちら斎賀!指令部でも孫でも誰でも良いから返事をしろ!」

「まずい、サイガ!逃げろ!!」

「ファイア。」

ユーノが叫ぶ、しかしそれに洞爺が反応する前に少女は洞爺めがけ魔力弾が発射した。

「なに?―――――ッ!?」

洞爺は発射直後に気付いたが間に合わない。魔力弾が彼の腹にぶち当たる。電撃が体をほとばしり、着弾箇所が発煙筒のように火花が散らし服を焦がす。

「熱い!?燃える――――ぐぁッ!!」

断末魔とともに洞爺は体を地面にたたきつけられ、さらに数発の魔力弾で追い討ちを掛けられた。
爆風に体が浮き、何度も体を地面に叩きつけられながらゴロゴロと転がって、うつ伏せに倒れ動かなくなった。
その光景になのはの思考は完全に停止した。洞爺が倒れた、仲間が倒されたのだ。
先ほどまでそこに立っていた、喋っていた、怒鳴っていた、笑っていた。苦笑いして、背中は任せろと胸を張っていた。

「さい・・が・・・くん?」

蚊の泣くような声で問いかける、普段なら彼はこれでも反応してくれる。だがうつ伏せに倒れる彼は、ピクリとも反応しない。まるで何も聞こえていないように。
当然だ、普通の人間の体は映画やアニメのように吹っ飛んでバウンドするようにできていない。
そんな衝撃を受ければ、皮膚が破け、肉がこそげ、骨が折れ、手足がちぎれ、人の形をとどめなくなる位な惨状になるとテレビでやっていた。
実際、今自分がこうやって生きていられるのはバリアジャケットがあるからだ。だから、普通は死ぬような攻撃にも耐えられた。
しかし彼はバリアジャケットを着ていない普通の人間、奇跡的に外傷は見当たらないが生きていても瀕死、おそらく助からない。
言葉が出ない、体が動かない、体が震えて止まらない、怖いのだ。初めて経験する人と人の戦い、そしてあっけなく終わる戦い。戦いが、怖いのだ。

{これが、実戦。お父さんのお仕事と、同じ・・・・}

ゲームや、テレビの中の戦いじゃない、現実だ。表現も展開も何もないただ起きた現実だけがある戦い。
ボディガードとして世界を駆け巡っていた父が身を置いていた世界、少し違うが、今自分はそこに居る。
考えるだけで頭がいっぱいだ、どうすればいいのか解らない。指示を仰げる人もいない。ユーノは同じように思考が回っていないことは明白で、洞爺は死んでしまった。
そしてそんな自分を理解できる冷静さが異様に思える。友人が死んだのに、パニックになっているのに、なぜか冷静な自分がいる。
そんななのはのことを知る由も無く、あの少女が倒れる洞爺をちらりと見て、呆然としているなのはに視線を向けてきた。

「後は、あなただけ・・・・?」

その言葉になのはは目を丸くした。その言葉には、感情がなかった。綺麗だけどまるで機械のような抑揚の薄い、感情のない声。
その声に、なのはは心に何か熱いモノが沸き上がるのを感じた。これは何なのか、解らない。
だが、その熱いモノのおかげで思考がだんだんとクリアになってくる。何をすべきか、どうするべきかが考えられる。

「同系統の魔導師?この世界は、ミッドチルダ式は存在しないはず。同じ世界の人?」

先ほどとは違うどこか疑問気な口調と意味深な言葉。説明を求めユーノに目を向けると、ユーノは警戒しながら答える。

「ロストロギアの探索者。まちがいない。僕と同じ世界の魔導師だ。」

さらに彼女を吟味するような言葉を紡ぐ。

「バルディッシュと同じインテリジェントデバイス・・・・なるほど。」

その時、なのはの目も相手のデバイスとユーノに向く。

「バル・・・ディッシュ?」

なのはは彼女の言葉を反芻する。すると、相手はデバイスを振りかぶった。
デバイスはまるで鎌のような形に変貌する。そしてそれを構えて戦闘態勢を取る。

「申し訳ないけど、いただいていきます。」

どうやら、話し合いで解決しそうな相手ではないらしい。
彼女はなのはに切りかかるが、なのはは空を飛んでかわす。

「arc,saver」

バルディッシュの声と一緒に彼女が鎌を横凪ぎに振る。鎌の刃が外れて飛んだ。
高速回転する刃はほとんど円形のように見える。漫画の一場面を思い出しながらシールドを張って受け止める。
だが、それを受け止めると同時にあの彼女がなのはに肉薄して刃を再構築したバルディッシュで斬りかかった。
それをなのははレイジングハートで受け止め、つばぜり合いに持ち込む。が、力で押され地面に押し落とされた。

「なんで・・・なんで急にこんな・・」

なのはは問いかける。ようやく思考がもと戻った、それでもわけが解らない。
何故自分達がこうやって戦っているのか理解できないのだ。

「答えても、たぶん意味はない。」

だが少女は無表情のまま答えない。話してくれないと解らない、そう思ったが、それを言わせてくれる彼女ではない。
言おうとすれば、自分は負けてしまう。唐突に、つばぜり合いをしていた手が支えを失った。なのはは前のめりに姿勢を崩れる。
少女が力をわざと抜き、隙を作って逃げたのだ。なのはと距離を取った少女は木の上に戻ると、なのはに向けバルディッシュを構える。
なのはもまたレイジングハートの矛先を向けた。

「ディバインバスターset up.」

「フォトンランサー、getset.」

二人の前に魔力弾が充てんされる、彼女が何かをつぶやいた。
それを聞いたなのはは射撃を躊躇してしまった。彼女は小さく呟いたのだ、ごめんね、と。それが隙となった。

「きゃぁ!!」

魔力弾の衝撃で彼女は吹き飛ばされ、バウンドして地面に叩きつけられた。

「なのは!!」

隠れていたユーノが魔法で彼女の衝撃を和らげて受け止める。しかし彼女は力無く四肢を投げ出して起きる気配を見せない。
彼女は気を失っていた、『撃たれた』という精神的ショックはなのはの心には大きすぎたのだ。

{駄目か!!}

金色の魔導師は猫に向かい、ジュエルシードを封印しようする。それをユーノは何も出来ずに見つめるしかなかった。
封印されたジュエルシードが子猫の体から摘出され、バルディッシュのコアに近づいていく。
今の自分には何も出来ない、魔力が回復しきっておらず、仲間も皆倒されてしまった。
おそらく次は自分だろう、ユーノはこれまで感じたことの無い重圧に目をつぶってしまった。
だが、魔力弾がユーノを襲う事は無かった。子猫の体からジュエルシードを抜き出す彼女の体に、無数の銃弾が叩きこまれたのだ。
浴びせかけられた銃弾が、少女に当たり火花を散らす。撃ち込まれる銃弾に彼女が身を引く。

{誰だ!?}

銃撃の射線を追って林の影に目をやると思わず声を失った、そこに居たのは倒されたはずの洞爺だった。
衣服はボロボロで仕込んでいたのか鉄板が見え隠れし土まみれだが、古い機関短銃を構える彼の戦意は衰えた様子は全く無い。伏せ撃ちの体勢で、機関短銃を構えている。
彼は素早くウェストポーチに左手を突っ込むと、手榴弾を2つ取り出して安全ピンを口で引き抜いて投げ込んだ。
手榴弾は綺麗な放物線を描いて彼女の前に落ち、爆発。それを見て驚きながら飛び退く彼女とその周辺を白煙で包み込む
発煙手榴弾だ、そうユーノが勘づくのが遅いか早いか、洞爺は跳ねるように駆けだした。
アスリートも真っ青な速度で駆け抜け、彼の影が飛びつくようにジュエルシードへと左手を伸ばす。
彼の登場は彼女にも予想外だったのか、彼女のシルエットが呆然としていた目の前でジュエルシードが洞爺の手に収まった。
ジュエルシードを掻っ攫わせた事に少女がようやく我に返って奪い返そうとするが、再び彼女の身に火花が散り彼女を押しとどめる。
彼は足をゆるめることなく、流れるようになのはの元に駆けつけると機関銃を肩にかけて彼女を肩に担ぎあげる。
その時、彼の背後に金色の光と人影が浮かび上がった。金髪の少女だ、少女がデバイスを振りかぶっている。

「後ろだ!!」

ユーノが咄嗟に叫んだ途端、洞爺の影が唐突に立ち上がってまるでホーミング機能付きミサイルのような左後ろ蹴りを彼女の胸に叩き込んだ。
その蹴りに少女はまるで何かに突き飛ばされたように唐突に足を止めた。胸を押さえてふらつき、苦しげな声が漏れのが聞こえる。
さらに右足を軸に右ターンしながら空いた左手の手のひらを当てて押し込む、その攻撃に少女はいとも簡単に尻もちをついた。
彼はすぐさま180度左ターンするともう一度発煙手榴弾で煙幕を張りながら、近場の木の陰に身を隠してしまった。
僅か十数秒足らずの出来事に、ユーノも完全にあっけに取られた。彼の行動はあまりにも速く、的確過ぎたのだ。
煙の中に取り残された彼女は辺りを見回しながら、大きく声を響かせるようにして問いかけた。

「それを渡してください。」

「断る。これは危険なものだ。それに、拾ったものは元の持ち主に返すべきではないかね?」

彼女からは見えない洞爺の声が林に響く。彼女には森全体から聞こえるように感じただろう。ユーノ自身、目の前に彼がいるにもかかわらずそう聞こえた。

「私が返します。」

「嘘だな。ならばなぜ攻撃した?話し合いで済んだのではないのかな?奇襲をする意味が無い。」

口をつぐむ彼女を威嚇しつつ、彼女に見えないようにユーノに小さく目くばせした。ユーノは首を傾げ、首を横に振る。
すると洞爺は左の親指で自分の頭を2度ほど小突いて、左手の親指と小指を立てて受話器に見立てると親指を耳に小指を口に近付ける。
頭、電話、二つのフレーズにユーノはようやく思い至ったようにコクリと頷いた。

≪なのはは?≫

≪感度良好。高町は大丈夫だ、軽く見た限りでは命に別条はない。そっちは大丈夫か?≫

≪大丈夫。君は?≫

≪防弾装甲板を仕込んでいなければ即死だった。さっきは助かった、ただの煙幕では駄目だったみたいだな。≫

どこか渋い表情の洞爺は焼け焦げた皮ジャンの胸裏から、焦げ付いた装甲板をユーノに見せる。
本当にこいつは何でそこまで重装備で規格外なのだろうか、ユーノはこの世界の常識がいささか解らなくなってきた。
なぜかと言えば、彼の左腕から左上半身に掛けて火傷が広がっていたからだ。きっと激痛が走っているはずだ、なのに彼はまったく痛みを感じていないようにふるまっている。

≪とんでもないヤツ・・・ジュエルシードは?≫

≪確保した。≫

洞爺はユーノにジュエルシードをちらりと見せ、ポケットにしまった。

≪こいつは俺が相手をする。君は高町を連れて撤退しろ。≫

≪何だって!?戦っても勝ち目がなさすぎる!!≫

ユーノは血相を変えた。当然だ、彼女は魔導師なのだ。それも、自分自身の予想を超える強力な。

≪そいつは魔力も技術も桁外れだ。サイガがかなう相手じゃない!≫

≪だが、相手は逃がしてくれそうもない。今逃げれば追ってくるぞ。≫

洞爺は相手の目を思い出しながらユーノに言う。あの目は何かを妄信している目だ、この手の手合いは一度区切りが付けば恐ろしく容赦が無い。
そういう連中は何度も見てきたし、何度となく手を焼かされたものだ。

≪結界を解除すれば・・・≫

≪無理だな。解除すればなおさらだ。それに相手は手だれなのだろう?ならば、目撃者など残すまい。
後始末だって放っといてもどうにでもなる、この頃ガス爆発は結構起こってるからな。≫

≪・・・・・・≫

≪俺が殿を受け持つ。君は高町を連れて撤退しろ。≫

≪馬鹿を言うな!!君を残していけるもんか!!≫

ユーノは声を荒げて洞爺に言う。甘いな、洞爺はユーノの甘さを羨ましく思った。

≪だが抑えなければ全員ここで戦死、最悪この家全てを巻き込んでな。それでは意味がない。
これなら最悪の場合俺が負け、ジュエルシードが奪われるだけだ。貰う物を貰えば、奴らも無駄な追撃はしないだろう。≫

≪だからと言って・・・君だけが。≫

ユーノがかなり辛そうな口ぶりになる。何考えているんだか、と洞爺は首を横に振った。

≪誰が死ぬなんて言った?あいにく俺は自殺志願者になった覚えはない。≫

≪なに?≫

≪ユーノ、君たちが撤退を完了したら合図を頼む。それと同時に俺は離脱する。もし赤の信号弾を上げたら、偽装のために転移魔法を頼む。
転移魔法ならば奴は俺達が遠くに逃げたと思うはずだ。近場ならばワザワザ転移魔法を使う事もないからな。俺を転移させて回収してくれ。≫

≪じゃあ、それまで君が時間を稼ぐと?≫

≪君の体では、彼女を連れて撤退には時間がかかる。早くしたまえ、俺の足止めがいつまでもつか分からん。まぁ、あくまでも予定だ。そこは留意してくれ。≫

洞爺は相手をけん制しながら話を続ける。自分は魔法を使えない、元よりこんな体など豚に真珠だ。
反面、相手は魔法を自在に操れる魔導師。従来の戦闘とは全く違う別次元の戦闘となるだろう。
それは以前のノエルとの戦闘にて確信している。普通の人間と魔法使い、いや軍人と魔法使いの戦いだ。
油断は絶対に出来ない、例え相手が子供でもだ。それほどまでに魔術、魔法と言った存在は危険なものなのだと確信したのだ。

≪さっさと行くんだ、できるだけ早めにな。≫

≪分かった。サイガ、死ぬなよ。≫

≪死にはせんさ。高町を頼む。≫

素早く足元に寄ってきたユーノになのはを預けて見送ると洞爺は改めて意識を切り替える。
『倒す』のではなく『殺す』幾度となく行ってきた行為。一度戦争に言った人間はこうなる、それに例外は無い。
訓練で身に刻まれた『戦闘術』は『殺人術』に昇華され、初弾は威嚇射撃ではなく効力射に代わる。
つまり、足などの低殺傷部分ではなく頭や胸を重点的に狙う。洞爺が行うのは『戦い』であり『殺し合い』だ。
だが今は戦時ではない。相手を『殺す』ことは基本的には避けるべきだ。普通はそう考えて当然だが、現実はそのような手加減をする余裕はない。
殺しに掛らなければ殺される、魔術師を相手にするのはそれほどに難しい事だ。一戦交えただけで簡単に理解できた事だ。

{何の因果だ、これであいつらが横に居てくれれば完璧なんだがな。}

やるか、内心軽く気合を入れ、一〇〇式を握り直して構える。もし彼女達が見たらやれやれと笑ってくれただろう。
一番愚痴を言っていたくせにこうやってやる気出すのはおかしいぞ、と。

「なんだ?話が終わるまで待ってくれたのか?」

「お願いです。それを渡してください。それが必要なんです。」

「断る。どこの馬の骨とも知らん輩に危険物を渡すほどボケてはいない。」

煙幕が晴れても先ほどと変わらない位置にいる魔導師の言葉に洞爺はきっぱりとした口調で断る。出来ればさっさと処分してしまいたいというのが本音だった。

「お願いです、あなたをこれ以上傷つけたくない。」

「いまさらそのようなことを言えるかね?先ほどあの子と俺を問答無用で吹き飛ばしてくれた貴様に言われたくはないな。」

皮肉げに答えてから三十年式銃剣を着剣した一〇〇式機関短銃を木の陰から構え、相手を照準に入れる。狙うのは胸だ、この距離ならば逸れてもどこかに当たる。

「あなたでは私には勝てません。ジュエルシードを置いて引いてください。」

「断る。」

「あなたはおそらく魔法が使えない、私はそんな銃なんかでは倒せません。お願いです、ジュエルシードを置いて立ち去ってください。今なら見逃します。」

彼女の言葉に洞爺は苦笑した、完全に舐められているのだ。そんな銃、たかが銃と言われたのだ。
どうやらユーノの言う通り、異世界では魔法至上主義という魔法絶対優位の常識がまかり通っているのは本当らしい。
なるほど、だから攻撃してこずに話が終わるまで待っていたのか。どうせ勝てるのだから、戦闘は時間の無駄だと判断したのだろう。

「試してみるか?」

彼女の頭を照準越しに見据え、左へ僅かにずらして指きり射撃で一発撃つ。

「!?・・・・止めてください。」

「何故恐れる、銃など怖くないのだろう?」

彼女の目に動揺が走る。銃弾は彼女の頬を掠めていた。ここまでされても相手に忠告する、それもこちらの言語に合わせてだ。きっと根はいい子なのだろう。本当に敵なのが惜しい。

「警告だ。武器を捨て、投降せよ。相応の待遇は保障させる。」

「・・・・・どうなっても、知りませんよ!」

洞爺は今度こそ、本気で引き金を引き絞った。一〇〇式機関短銃からばら撒かれる銃弾が、僅かに彼女を捉え弾かれて火花を散らす。
それを気にも留めず、バルディッシュを構えて彼女はこちらに迷わず飛びかかってくる。速い、辛うじて目で追えるのが幸いだ。
ギリギリで上体を逸らして避け、木を切り裂いた斬撃を受け流しながら銃剣で止める。

{ヒグマかこいつは・・・}

少女のか細い腕の筋肉とは思えぬその力の強さに洞爺はうめいた。
相手を引き払いのけ銃剣で横凪ぎに斬撃、彼女はそれをバルディッシュの柄で受ける。
ガヂンッ!という鈍い金属音がなるがそれだけだ、いともたやすく受け止められてしまった。
それを押しのけ、彼女はバルディッシュを右斜め上から袈裟切りに洞爺の胸に振り下ろす。
金色の刃が胸に突き刺さるぎりぎりの所で一歩引いてかわしさらに胸部に刺突、さらに突き上げで喉元を狙う。
急所を狙った躊躇の無い攻撃に彼女は一瞬顔をしかめたが、あまりにも軽く防がれ、銃剣を折られた。

{身体強化か、やはり厄介だ。力押しでは不利か。}

「ハァッ!!」

鎌状の魔力ブレードで洞爺の胴体を捉え欠ける、彼は咄嗟にバックステップで辛うじて避け切った。
彼女よりも遅く跳躍距離もはるかに短い、所詮は人間の跳躍力だが間合いを取るには十分だ。

「ハーケンセイバー。」

なのはを襲ったものと同じ魔力ブレードを飛ばす攻撃が間発入れずに襲いかかってきた。
回避は間に合わない、そう判断すると洞爺は一〇〇式を腰だめにして魔力ブレードに向けて引き金を引く。
あの攻撃の性能は未知数だ。もし誘導性能を持っていれば、回避しても追尾される。油断はできない、常識で考えるな。
八ミリ弾と魔力ブレードに火花を散らし、ブレードが爆発した。ついで彼女に向けて弾倉が空になるまで銃撃する。

「roundshield。」

バルディッシュの機械音声とともに魔導師の目の前に魔力障壁が出現し、八ミリ拳銃弾の雨をなんなく受け止める。
火花を散らして弾かれる八ミリ弾の弾頭を見て洞爺は舌打ちしたが、狙い通り牽制には役に立った。
素早くリロードしてスライドを引く。対魔導師戦ならばもっと威力のある機関短銃が欲しい、だが子供の手では使える銃は限られる。
一〇〇式を使っているのも、この型の銃は使い慣れているしグリップが少し細めで握りやすく、反動も抑え込めるからだ。
しかしそれが裏目に出た、ここは少し無理をしてでも威力を求めるべきだったのだ。

{ゲームのようだな、現実味が無さ過ぎる。}

非力とはいえ、八ミリ弾が薄っぺらい術式に容易く弾かれて行く光景はまさにそれだった
友人づきあいで無理やりやらされたり、久遠に付き合ってやったゲームの光景。相手もそのまんまと言っていい、非常識的な意味で。
それでもやられ役のように撃つしかない、武器を切り変えようにもその隙をつかれれば終わりだ。
少しでも狙いを絞らせないため、洞爺は小刻みに移動しながら撃ちまくる。火花を散らせて弾が弾かれる光景はまるで戦車だ。
攻撃もまた戦車、遮蔽はほとんど通用しない。対戦車戦闘の技術も応用しているが、こうも反応が機敏ではあまり役に立たない。
今相手にしている戦車は攻撃するために砲塔を旋回させる必要も、乗組員が上部車載機銃を使う手間もいらないのだ。
走る、撃つ、左後方にバックステップ、急停止、撃つ、小走りから急停止からスライディング、撃つ。ギリギリで攻撃は避けているが回避と反撃のタイミングが取りにくい。

{情報が足りん。所詮資料ではこれが限界か。}

真横から振われるバルディッシュをバックステップで辛うじて避け切りながら内心で愚痴る。
今までありとあらゆる兵器、部隊と戦闘を重ねてきたが『魔術師』という兵科の敵との戦闘経験はほとんどない。
僅かにあるのは、互いの誤認から発生したノエルとの室内接近戦のみ。経験も知識も不足、身体能力にも大きな差がある。
奇妙な感覚だ、まるで新米に戻ったような気分なのに体はいつも通り機敏に反応する。
魔力弾を避け、急接近しての斬撃を受け流して足を払い、態勢を崩した彼女の脇腹に左ボディブローを叩き込む。
さらにブローの際一歩引いて溜めを作った右ひざ蹴りを鳩尾に叩き込んで姿勢を崩し、がら空きになった首筋に銃床を振り下ろす。
良くて卒倒、普通は即死だと自負する得意技だがやはり手ごたえはあってもまったく効いている気がしない。
馬鹿力相手に鍛えたボディブローから首の骨を叩き折る銃床まで、手ごたえはあるが全て阻まれているのだ。
その慣れない感触に戸惑っているとまた視界の中から魔導師の姿が突然かき消えた、布ずれと風を切る音だけが聞こえる。

{後ろ!}

後ろに布ずれの音を聞き攻撃を受け流しつつ、銃床で衝撃を流しつつ受け止める。
バルディッシュの魔力ブレードは洞爺の眼前で止まった。力任せに振っている所為で、軸が僅かにぶれている。
もし軸がぶれて力が抜けやすくなければ、受けた途端銃が壊されていた所だ。彼女が付け入る隙だらけなのが救いだろう。

「何者なの?」

問いに答えず、力を抜いて一歩下がる。力を入れて押し込もうとしていた魔導師の姿勢が前かがみに崩れた。
その隙に腰のポーチの中に手を突っ込み、取り出した九九式手榴弾の握りしめて相手の額に起爆筒を叩きつけた。
魔導師の体が一瞬こわばる、手榴弾を魔導師の背後に投げ込むと彼女の陰に身を寄せる。
自分の頬を掠るように背後に落ちる手榴弾に、魔導師のルビーのように赤い瞳が驚愕に染まった。

「自爆する気!?」

何を馬鹿な、洞爺は彼女の言葉にある意味感心した。まだまだ緒戦で自爆を考える兵士がどこにいるというのか、これは注意を逸らすための囮だ。
起爆筒を叩きはしたが安全ピンは抜いていない、おそらく現用の手榴弾を見慣れているのだろう。
レバー方式を採用されていない九七式手榴弾はレバー式に慣れていると形だけ見れば起爆状態にあるように見えてしまう。
狙い通り彼女の意識が背後の手榴弾に逸れる。その隙だらけの鳩尾に全身の力を込め、突き上げるようなタックルをお見舞いした。
不意のタックルに僅かに体が浮く、その彼女の顎に銃床でアッパーを叩き込んだ。
思い切り顎を叩き上げられ体を逆エビのようにのけ反らせる彼女に組みつき、彼女の手からバルディッシュを弾きながら地面に押し倒す。
驚愕をあらわにする少女に馬乗りになり、彼女の額に一〇〇式の銃口を突き付けて引き金を引いた。
吐き出された八ミリの弾頭が彼女の額を叩き、銃弾が弾けて少女の表情に苦悶の表情が走る。
30連弾倉が一気に空になった一〇〇式を振りかぶり、銃床で魔導師の頭を殴打する。
何度も、何度も、何度も、何度も、マウントポジションからただひたすらに殴り続ける。
少女の頭を地面に叩きつけ、脳髄を揺らし、平衡感覚を失わせ、呪文を詠唱する隙を与えない。それでも彼女は痛がるばかりだ。
普通なら死んでもおかしくないが、気絶する気配すら無い。

{やはりバリアジャケットか、やはり厄介にもほどがある。}

先ほどからの違和感はやっぱりと言うべきか。子供を殴る感覚で気分が悪いが、手は止められないし抜けない。
さらに力を込め、銃床の鉄製パッドプレートを下にして彼女の鼻柱に叩きつける。彼女の鼻から鼻血が噴き出し、悲痛な悲鳴を発するが手を止めない。
殴りつけ、殴りつけ、殴りつけ、鼻血でぬらぬらと光る銃床で餅つきのようにただひたすらに殴り続ける。
殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る。銃床が耐えきれなくなったのか亀裂が走り、音を立てて木目に沿って割れた。
一〇〇式を適当に放り捨てて、素手で殴りつける。拳を握りしめ、額を狙って振り下ろし、時に両こめかみをブローで交互に殴る。
次第に少女の体から力が抜け、目が虚ろになり悲鳴も上げなくなってきた。そろそろか、洞爺は激痛の走る拳を開くと、ジャケット裏から十四年式拳銃を抜いて少女の額に突きつけた。

「降伏しろ、さもなくば射殺する。こいつには特殊弾が装填されている、タカは括らないことだ。」

彼女はすでに意識を手放しかけている。何かブツブツと言っている視線が安定せず、ふらふらと漂っている。もう体もまともに動かせないだろう、魔術を使う事などもってのほかのはずだ。
思考もまともに働かないはず、特殊弾などと言うハッタリも聞き分けることはできないだろう。銃口を少女の額に突きつけ、引き金に指を掛け、もう一度警告しようとした。

「降伏せよ、さもなく―――」

「負けられない!ファイア!!」

「なっ!?」

唐突に背後から体が吹き飛ばされ、洞爺は地面に転がされた。背中の熱を感じ、自分がなにを貰ったのか見当がつく。この状況下からしても、おそらく原因は一つしかないだろう。

{魔力弾の遠隔生成と遠隔操作!?}

遠隔操作できる類の魔力弾、誘導弾と言うべき代物を喰らったのだ。どうやらまだ魔術に関する考察が甘かったようだ。
魔術は精神状態に非常に左右されやすい、それ故に不安定な代物で自分のペースを崩されると脆いのが欠点だと言う話だ。
魔術書にも心構えと基本の項目に載っていたが、どうやら異世界人には通用しなかったらしい。まずい、背中に感じる熱に洞爺はリュックサックを乱暴に投げ捨て近場の木の陰に身を隠す。
瞬間、僅かに煙っていたリュックサックは強烈な爆風を伴って爆発した。リュックサックに収納していた爆薬が着弾した魔力弾によって引火したのだ。

{やられた!}

あの中には爆薬の他に各種手榴弾、擲弾、予備弾薬など様々な爆発物や弾薬が詰め込まれているのだ。粉々に砕け散る装備と弾薬に内心歯噛みした。
状況が一気に悪くなった、予備の弾薬をはじめとして、TNT爆薬などの各種爆発物と対戦車擲弾を失ったのだ。
手元に残った装備では彼女をどうにかすることは事実上不可能に近い、身に着けている装備は基本的な歩兵装備一戦分と補助物資、僅かな爆発物だけだ。

「フォトンランサー!!」

「getset。」

かすれた声と同時に、魔力弾が上空から降りかかってきた。いつの間にか少女は空に逃げていたのだ。避ける間もなく体中に魔力弾を撃ち込まれ、文字通り地面に叩きつけられた。
手足がもげ、体が文字通り抉られていてもおかしくない激痛が体を走り抜ける。目の奥の痛みと酷い耳鳴りを堪え、次の攻撃が来る前に飛び起きてすぐさま横っ跳びに回避する。
再び空中からの魔力弾掃射。洞爺はそれを連想したが弾速が遅く、数も少なく、なおかつ目立つそれは記憶の物とは違う。その威力は確かに強力だ。機銃弾の炸裂弾とはケタが違う。

{グラマンの方が怖い、だがそれ以上に脅威だ。}

洞爺はF6Fヘルキャットの12,7ミリ航空機銃6門一斉掃射の恐ろしさを思い出す。
個人の魔力特有の魔力光を放つ魔力弾は昼間の空でも嫌というほど目立つ、曳光弾の光とは比べ物にならないほどに。
弾速はそこそこだが、弾の数も一連射で雨あられと弾をばら撒く機銃と比べるべくもない。しかし気を抜けば当たる。
当たれば先ほどのように気絶するか、ショック死だ。
次にどんな手を使ってくるかなかなか解らない、まさに非常識を非常識で塗りつぶしたフィクションの世界だ。

{翼もないのにひらひらと・・・飛行できるのは厄介だな。だが叩き落とそうにも武器が無い。
火力もあるし、装甲も厚そうだな。下手な対空火器では歯が立たんどころか、返り討ちにあうのが落ちか。
主力は誘導弾、対人低殺傷榴弾?いや、これは非殺傷設定とか言う暴徒鎮圧用のスタン弾か。凄かったが、死んでない以上その手の種類だろう。
通常弾や徹甲弾もあるとみていい、火力特化?いや近接戦重視とも考えられる、得物もそれ用だろうな。
白兵戦も我流じゃない、使いにくい鎌を使いこなしている。相当訓練してきているだろう。}

実は鎌という獲物は白兵戦ではとても使い辛い、ナイフなどとは刃が内向きでさらに内側に反っている、殺傷範囲が見た目以上に狭いのだ。
その上構造上金槌のように振り回す事になるのだが、その形状が振り回すのに向いておらず刃の部分が風の影響をも受けてしまい扱いにくい。
昔苦労したからわかる。その時は片手で使える草刈り鎌だったが、それでも野良犬相手に思いっきり苦労させられたのだ。

{何よりあの鎌、おそらくはレイジングハートと同じ異世界の逸品だ。普通の魔術具かなんかとはわけが違うだろう。
家にも腐るほどあったがなんというか、俺でも違いが解る。はいてくというやつか?魔術なのに変な話だ。高火力かつ重装甲で高機動、まさに狂気の逸品だな。}

「・・・航空支援でもなきゃやってられんぞ。」

それでも三四三の壊し屋に声かけさせて総員で来てくれなければ太刀打ちできなさそうだ。後は変態水観乗りくらいか、と不意に本来の職務を忘れた変態野郎どもの顔も思い出す。
いくら仕事が無いからといろいろ暴れ過ぎな連中だった、良い意味でも悪い意味でも。

{まさかあの変態どもが真っ先に浮かぶとは俺もヤキが回ったか・・・いや、まだ俺も余裕があるのか。}

いかんいかん、と意識を切り替えて残った装備を調べる。リュックサックをやられて装備の三分の二を失った状態だ、なけなしの試作品も品切れでかなりまずい状況にある。
九九式短小銃を持ちなおし、折れた木の陰にすべり込んで魔導師を狙う。
視界は良好、微風、追い風、撃ち上げポジションだが対空射撃では良くあること、ゆっくり狙いを定める時間が無いのもよくあること、バッチリだ。
微風の追い風という、ここまで良好な条件がそうそうない。以前相手にした航空機のようにはいかないが、当たる、そう確信できる洞爺の唇に薄い笑みが浮かぶ。
その薄いのに凄味のある笑みはあまりに不可解であまりに現実離れした光景なのだろう。それこそ魔導師に恐怖を植え付けるほどに、その僅かな怯えを洞爺は見逃さない。
折れた木に銃身を預けて対空照準器内の魔導師を収め、引き金を引き絞る。重く乾いた銃声が鳴り響き魔導師のマントに風穴を開けた。

「!?」

魔導師は顔を凍りつかせ洞爺を見つめ返す、その表情には焦りと驚愕が見える。
素早くボルトを操作して第二射、魔導師はかわそうとしたが右脇腹をかすめてマントに風穴を開ける。魔導師の顔が歪んだ。

「そんな、避けた――――」

僅かに聞こえる言葉は最後まで語られる前に、銃弾で彼女の口をつぐませる。口を開く暇は与えない、その一瞬の隙をついて洞爺は銃弾を叩き込む。
避けたはずと思うのは当たり前だ、避ける場所に撃ちこんでいるのだから。
空戦や対空射撃において、敵の行動を先読みしてその未来予測位置に銃弾を撃ち込む偏差射撃は基本中の基本なのだ。
相手は魔導師だが所詮は子供、どこまでも未熟で未成熟、どれだけ強力な力を持っていようとも先読みはたやすい。

{距離80、風速、調整よし。仰角よし・・・}

素早く銃弾を再装填し、冷静に小銃を空に向けて構えて、躊躇せず引き金を引く。

「ぐっ!?」

銃弾は魔導師の肩に命中した。少女の表情が歪み、着弾の衝撃で姿勢が崩れる。
素早くボルトを引き排莢、押し戻してチェンバーに次弾を送り込み、姿勢を崩しかけた彼女の顎に照準を付け、発砲。
着弾の衝撃がアッパーカットの要領でダイレクトに脳髄を揺らし、意識の揺らいだ彼女の姿勢が崩れフラフラと落下し始める。
人間は、どれだけ鍛え上げても鍛えられない部分がある。例えば臓器などは鍛えられるものではない。かつて通っていた道場で師範から教わり、実際に体験した。
水月と言うへその下辺りの急所を直撃し臓器を直接圧迫する平手、師範である以上相当なモノを予想していたが予想はそれ以上だった。
腹の中を何かで滅茶苦茶にかき回されるような衝撃と全てを押し出すような圧迫感に耐えられず、その日はその一撃で鍛錬は終わりになった位だ。
一日中吐き気が止まらず、食べる度に吐きそうになって部下にも妻にも手を焼かせてしまった。だがあの鍛錬をしていたから、どれだけ爆風に吹っ飛ばされようとも我慢することができたのだ。

{三度下げ、右に1。}

例え弾が防がれようとも、その衝撃は内臓に少なくない衝撃を与える。全く通用しないと言う訳ではないのだ。事実、効果はある。弾丸が直撃する度、徐々に彼女の動きが悪くなっている。
排莢、装填、照準を落下予測地点に照準、直接照準で狙う。少女の動きはすでに精彩を欠いている、さらに攻撃を加えれば彼女も耐えられない。

「フェイト!?こんのやろう!!!!」

引き金を引く直前、後ろから風切り音と怒声が響いた。自身の真上に魔力を確認、風切り音、布ずれから人間と判断。
すぐさま転げ出ると同時に木が轟音と土煙をまき散らし大きなクレーターが出来上がった。とんでもない威力だ、地面に伏せて爆風を受け流しその爆風の発生源に目を向ける。
その中心には赤髪、犬耳と尻尾そして、豊満な目のやり場に困る体格を持った美女が地面に拳を突き立てていた。
海外でも珍しいオレンジ色の長髪にすらりとしながらも鍛えられた四肢、出る所は出て引っ込む所は引っ込んだ体。
勝気な性格を想わせるその風貌は町を歩けばだれもが振り返るような美貌を持っている。
肌を曝け出した破廉恥ともいえる衣服は見事に彼女の野性味を引き立てて、とても似合いだ。

{増援か、獣耳に尻尾、狼系混血?いや使い魔という奴か?おそらくあの子と同じ系統の魔術を使うとみていい。
目立つ武器は無し、近接格闘を重視した肉体強化型、この状況ではまず最悪の部類だな。彼女の遠距離射撃を支援に近接格闘戦を仕掛けられたら勝ち目が無い。}

簡単に言えば、P-47サンダーボルト重戦闘機の機銃掃射に歩兵が一人で陣地に籠って踏ん張っている所に、M4シャーマン中戦車が突っ込んできたようなものである。
戦闘機一機だけでもたった一人の歩兵には過剰だが、そこに戦車だ。まず勝つことはできない。出た途端機銃でハチの巣か、戦車砲で木っ端みじんだ。
そもそも陣地自体、榴弾が直撃すれば墓穴になる。どちらかを早急に倒さない限り30秒と経たずに自分は殺されるのだ。

「避けられた!?」

{術式および陣形構築前に叩く。TNT爆薬使用。}

洞爺は起きあがりながら彼女の足元に滑らかな四角柱の形に突起を付けた缶を3個投げつける。彼女はそれが何か解らないようだ。
わざわざ障壁で弾いて足元に落とし、それがどうしたとばかりに微笑み魔力光を放つ拳を見せつける。腰から下は見えないが、缶を踏んでいるかもしれない。
その中の一つの突起から細い銅線が伸びて、その導火線は洞爺が左手に持つグリップ型の汎用起爆装置に繋がれている事も気に掛らないのだろう。
少女も動かない、勝利を確信したのか、起きあがったこちらを見据えて威嚇してきた。

「これで終わりです。」

「さっさとそのジュエルシードを返して貰おうか?」

確かにこの状況では歩兵に勝ち目が無い。だがそれは、戦闘機と戦車が互いに状況を理解し、少しでもいいから連携が取れている場合である。
ニヤリと笑う狼女を一目見て、起爆装置上部の安全蓋を親指で弾き開けてのスイッチレバーを手前に押し込んだ。
クレーター底部に転がった最初で最後の『TNT爆薬』は轟音を立てて炸裂し、爆風が美女を真上に吹き飛ばした。
それなりに深いクレーターの中で纏めて爆発したことによって、上に向けて集束した膨大な爆圧が直に彼女を襲ったのだ。
彼女は呆気なく空中に5メートルほど舞い上がり、数秒後頭から地面に叩きつけられた。
美女は爆風で吹き飛ばされてせいか、頭から地面にたたきつけられて気を失ったのか、痙攣して動かなくなった。

「アルフ!?なんで!!」

魔導師、いやフェイトは驚愕をあらわにしてアルフの体に飛びつき彼女を仰向けにして揺する。
その隙に弾薬クリップを使って九九式短小銃に弾薬を装填し、フェイトに銃口を突き付けゆっくりとした口調で警告した。

「freeze don’t move. release you weapon.」

洞爺の警告に、フェイトは立ちあがってバルディッシュを構える。降伏する気はないらしい、それどころか怒り心頭だ。
それとも先ほどの反省を踏まえて英語で警告したのが間違いだったのだろうか?まさか日本語が公用語なのだろうか。
まさかそれは無いだろう、レイジングハートの管制音性は基本的に英語だし、バルディッシュもそうだ。

「freeze. throw down arms. hands behind the head.」

「うるさい!」

その直後相手の空気が変わった。放出される魔力が彼女の周囲の空間を歪ませる。その濃密過ぎる魔力に、洞爺は咄嗟にバックステップで飛び退った。
フェイトは再び宙へと浮かび、バルディッシュをかざして速口で演技かかったセリフを並べ立て始めた。

「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神よ。今導きとともに撃ちかかれ。」

{おい、おいおいおいおいおい!?}

魔法陣が彼女の足元に浮かび、周りで電撃が走り丸く固まってビシバシ言い始める。そのファンタジックな光景に、洞爺は頬が引き攣るのを感じた。
この手の物は家の蔵書を呼んで片っ端から頭に入れてきたが、やはり実際に目にするとなるとどうしても正気を疑いたくなる。
これならばまだオカルト組織のアヤシイ薬や、人体改造の方がまだ科学的で理解できる。
魔術書によれば、魔術の威力や効率は個人の精神状態に大きく左右されるらしい。いわゆる火事場の馬鹿力だ。
故に勇気を振り絞ったり、強い志などがあればその威力や効率は二倍にも三倍にもなる。
例えば高町なのはのように、強い使命感や正義感が初めてで強力な砲撃を成功させたように。
つまり、怒り狂い我を忘れているに等しい彼女は、その怒りの対象である洞爺に今だけは凄まじい攻撃を可能とするはずだ。
無論それは扱うのが兵器であってもありうる、そしてそういう時に限って非常に厄介なことになりやすいのだ。
呪文を言いきらせる訳にはいかない、迷わず九九式の引き金を引く。だが撃ち込んだ銃弾は彼女の前に展開された金色のシールドによって弾かれた。

{通常弾では効果が薄いか。}

ボルトを引き、固定弾倉底部の両開きの蓋を開けて弾を取り出して閉じてから自作徹甲弾を弾薬クリップで装填する。
九七式重機関銃に使用する徹甲弾から弾頭を乗せ換えた銃弾だ、通常弾よりも貫通能力に長けている。だが、その銃弾も思うような効果は挙げなかった。障壁にめり込んだが、それだけだ。

{くそっ、徹甲弾でもか。対戦車ライフルでもなければ抜けないか。}

リュックサックに入れていた二式擲弾発射機と対戦車擲弾などの装備を思い浮かべて歯噛みする。失ってしまったモノは考えても戻らないが、あれがあればまだマシだったはずなのだ。

「バウエル・ザウエル・ブラウゼル。」

魔力弾が数多くフェイトの周りに出現しこちらに狙いが定まるのを感じる。
洞爺は顔をしかめ、九九式短小銃を構えて引き金を引く。全力で、出る限りの全速でボルトを操作し自作徹甲弾を撃ちまくる。
銃口から発砲煙が噴出し、銃弾が彼女に向けて撃ちだされる。が、次弾を放とうとした時弾倉が空なのに気付いた。
近場の木の陰に身を隠し、急いで弾丸を固定式弾倉に押し込む。すぐさまボルトを押し戻し、飛び出すようにして九九式を構える。

「フォトンランサー・ファランクスシフト。」

再び彼が九九式を構えた時に見たものは、彼女の周りに浮かぶ、おびただしい量の金色の魔力弾。

「くそったれ!」

「撃ち砕け―――――ファイアァァァァァァァッ!!」

フェイトの怒声とともに魔力弾の嵐が降り注いだ。洞爺は先ほどの大穴に飛び込み、耳をふさいで身を縮こまらせる。その直後、まるで砲弾が雨のように降ってきたような振動が洞爺を襲った。
あまりの爆音に鼓膜が痛む耳を押さえ、襲ってくる衝撃の雨あられを歯を食いしばって耐える。恐ろしい、久しぶりに感じた。
もちろん恐怖は忘れた事は無い、撃たれる度に身がすくむ思いだ。だがここまで純粋に、子供のように本当に怖くなったのは久しぶりだ。
これ以上の爆撃や砲撃、銃撃はこれまで数えるのも止めたほど受けた。沖縄でのあれが嵐ならばこれはまだ小雨だ。
だが恐ろしい、なぜならこの小雨を降らすのはたったひとりの少女なのだ。
訓練を受けた軍人たちが、隊を作って行う砲撃をたった一人で行う。これが恐ろしくない訳が無い。ふざけやがって、悪態が思わず口に出た。
胸の中が煮えくりかえる位に胸糞が悪い。これは最高の悪夢だ。頭が煮えくりかえりそうだが、何とかして押さえこむ。ここで冷静さを失ってはお陀仏だ。

{味方を巻き込んで・・・いや、しっかり障壁を張って保護してるのか。器用なものだ。}

近距離で乱射するタイプの魔法なのか、精度があまり高くないのが救いだ。少しの間はしのげるだろう。
あくまで少しの間だ、出れば3歩も進まずにハチの巣にされてしまうのは確実であるし、このままでは打開できねば確実に殺られる。
装備の大半を失い、爆薬も品切れ、残るは小銃と通常弾薬、手榴弾などのいつもの携行品のみ。
加えて傷も思いのほか響いてきた、ジンジンと痛み震えの出てきた左手を閉じたり開いたりしながら体の傷を確かめる。

{肋骨に違和感、罅か。火傷も浅いが広い。感電の影響か痙攣も出てきたな。関節もガタガタ言ってる。}

まるで毒だ、蛇の毒などとは違うがそんな印象がある。それも徐々に体の自由を奪い、命は奪わない猛毒だ。
悪いことにその毒に有効な解毒薬が手元に無い、さらに言えば医療セットもその他物資武器弾薬と共にさっき失ってしまった。
有るのは申し訳程度にウェストポーチに突っ込んだ鎮痛用アンプルや包帯などの応急キット一回分だ。

{戦況は不利か、月村の増援はまだか?そろそろ強行突入してきても良い頃のはずだ}

もしや俺は捨て駒にされたかな?と、キットの正方形の箱から鎮痛剤のアンプルを取り出して腕に注射ながら暗い考えが頭をよぎる。
だが、それも良いだろう。やることは変わらない。我ながら、妙な慣れ方をしてしまったものだ。彼女には彼女のやることがあり、自分には自分のやることがあるのだ。
今生き残るには自分でやれることをやるしかない、空になったアンプルの容器を捨て僅かに震える腕を力づくで押さえつけて洞爺は上空を覗きこんだ。

{距離約60って所か、となると信管の調節は必要ないか。}

ウェストポーチの中から十年式信号拳銃を取り出し、吊星と薬莢底面に書かれた弾を中折れ式の銃身に装填した。
手元に残った少ない道具の一つだ、武器にはならないがあらゆる場所で役に立つので常に肌身離さず持っておいたが幸いしたのだ。
弾はあまり無いが、この局面を乗り切るのには十分すぎる。軽く銃を縦に振って銃身を元に戻す。
それを空中のフェイトに向けて発砲し、すぐさま大穴に伏せた。振動は止まない、あれは脅威にはならないと判断されたらしい。
白煙を靡かせて飛んだ弾は、フェイトの間近まで迫ると真っ白な閃光を放った。
吊星とは、落下傘付きの発光弾の事だ。空中で二十秒から三十秒ほど発光し、その光は昼間でも八キロ先から視認できる。
そんな強烈な光を至近距離で直視すればどうなるか、普通ならば良くて一時的な目の眩み、悪ければ失明だ。
もちろんそれは生身の相手ならばの話だ、バリアジャケットを装備した彼女では一時的に視力を奪うのがせいぜいだろう。
至近距離に着弾する魔力弾が急激に薄くなった。手で影を作って上空を見上げると、フェイトが目を押さえて悶えている。
だがそれでいい、それで生まれる隙は絶好の反撃の機会となる。振動が途切れ出すのを見計らい、大穴から九九式短小銃を構えてフェイトに狙いをつけた。
その銃口に彼女は気付けない、閃光に眩んだ目はまともに見えていないし、自分が放った魔力弾による土煙と洞爺の姿が確認できていないのだ。
その上激昂して頭に血が上った彼女は今、攻撃して洞爺を殺すことしか考えていないだろう。彼女は心に宿るゆらゆらと燃える怒りで視野狭窄に陥っている、まさに絶好の的だった。

{貰った。}

レオタードのような黒のインナーの胸もとに狙いを定め、発砲。だが銃弾は彼女を貫けなかった。
いつのまにか気を取り戻したアルフが、フェイトに組みついて射線から辛うじて外させたのだ。

{おいおい、なんて回復力だ・・・・まずいな。}

魔力弾の攻撃がやむ。その隙に洞爺は大穴から飛び出して別の木の陰に隠れて銃撃する。
閃光弾が途切れるのを見計らい、もう一度狙おうとしたその時、二人が避けた先に銃弾の火線が伸びた。
次いで白煙を噴き出して何かが空を駆け抜け、フェイトの障壁に阻まれて爆炎を上げる。

{地対空ミサイル、初めて見るな。}

伸びた方向に視線を向けると、メイド服に無理やり野戦装備を身につけランチャーを担いでいる黒髪メガネのロシア人女性が見えた。
目から鱗である、だからなぜメイド服なのだ?身につけられたマガジンパウチなどが異様に浮いている。

「命中!祝融さん!」

「各員散開、対空制圧射撃用意!!」

彼女に付き添うように迷彩服を着込んだ10名ほどの兵士がいる、彼らも援軍のようだ。
使いこまれた野戦服に身を包んだ隊長格らしい女性がドイツ製自動小銃『H&K G36C』を上空に向けて構えて命令を下す。
すると周囲の部下達は一斉に周囲に散らばり同じ小銃を上空に向けて構えた、その一糸乱れぬ行動は厳しい訓練と豊富な実戦の経験を感じさせる。

「交互撃ち方始めぇ!」

女性の号令の元、彼女を含めた5丁のG36Cの銃口が火を噴いた。結界と照明弾によってライトグレーに染まった青空に曳航弾が赤い火線を描く。
5人ずつ弾倉内の弾丸が切れる頃合いを見計らい交互に撃つその銃撃が悶える彼女を捉える、彼女の張った障壁が火花を散らして銃撃を弾く。
その障壁に向けて景気の良い掛け声とともにもう一発ミサイルが発射され阻まれる。その爆炎が晴れると、障壁全体に亀裂が走っているのが見えた。

「そこぉ!!」

その障壁めがけて月村家のメイド服を着込んだ少女が、彼女に真下から殴りかかった。
比喩ではない、文字通り生身で飛び上がって込められた魔力で輝く右こぶしを障壁の亀裂に叩きつけたのだ。
さらに林の中から二人メイドが飛び上がり、抜き身の野太刀を叩きつけ、それを援護するようにもう一人が両脇に抱えた軽機関銃をで攻撃する。
どうやらメイド達は飛べないらしく一撃加えたら落ちて行くが、それを補うように別のメイドが飛び上がる。メイド達の連続攻撃に障壁の亀裂がさらに広がる、破片が舞い魔力に帰って消える。

「エコー!ぶっぱなせ!!」

九九式を構えて狙った直後、重力に引かれて地上に落ちる少女の一人が叫ぶ。途端、一機のヘリがフェイトに向けてロケット弾と銃弾をばら撒きながらフライパスした。
オリーヴドラヴ塗装の『UH-1・イロコイ』は上空を旋回すると、少女に向けてフレア発射機に偽装されたミニガンを撃ちまくる。
その弾幕にフェイトも障壁を張って銃弾を防ぐが、その防御を潜り抜けてメイド達が攻撃を仕掛ける。その連携に彼女は完全に絡め取られてしまった・

{救援か。本当にヘリまで出せるとは、結界というのは何でもありだな。ん?そういえばあの狼女は何故別行動を・・・・まさか、向こうも襲われたのか。}

あり得ない話ではない、月村邸の保管庫にもジュエルシードが保管されている。それをあの少女たちが嗅ぎつけたという可能性は高い。
もちろん付近を二手に分かれて捜索していただけで、偶然ここにあるジュエルシードを発見した可能性もある。だが前者の方が、現状からして有力だ。

{そうだとすると、こいつは陽動作戦か?}

してやられたな、洞爺は内心自分の不覚に毒ついた。推測が正しいのなら、自分は敵の罠にまんまと引っ掛かったことになる。
まず月村邸の庭に偶然ジュエルシードが落ちているという事自体が不自然だった。
このジュエルシードの騒ぎが起き始めてから、月村家は今までずっと警戒態勢のはずだ。
無関係の人間を疑ったあげく殺しかける位に過剰な警戒をしていた月村家が、本拠地の庭に転がるジュエルシードに気付かないはずが無い。
もし捜索がまともにできないアホどもなら話は別だが、それなら月村家はとっくの昔に皆殺しにされているし、現当主の忍は優秀だ。
現状を理解して切り盛り出来ているのだから、人を見る目が無いとは思えない。
何よりほんの3年前までは鈴音達が仕切っていたのだ、彼女達の人の見る目は本物だ。
故にこの非常時に自分の家の庭も綺麗にできないようなマヌケは居ないはずだ。
それならノエルの言い分も納得できる、今日ワザと餌として設置されたのだから無くて当然だ。

{なんだかきな臭くなってきたぞ。}

考えれば、この事件の発端自体が変だ。輸送船の事故とはなんだ?事故と言えば事故だ、ではなぜ事故は起きた?
それも船が粉々に吹き飛び船員は全滅、さらにジュエルシードが保管されていたはずの最重要保管物用の金庫すら破壊するほどだ。
さらにユーノから聞きだした限りでは、ジュエルシードが流出したのは事故のほんの少し前。
彼は周囲の制止も聞かず手近のハッチから、緊急用酸素ボンベだけを持って着の身着のままで次元空間とやらに飛び込み、その後すぐ船が火を吹いて、爆発した。
本人は事故による機関部の暴走という見解だが、はたしてそう簡単に暴走するのだろうか?実物を知らない以上確証は無い、しかし普通はあり得ないだろう。
船にとって機関部は心臓も同意義、それが簡単に故障するのではお話にならない。
さらに流出と船の爆発のタイミングがあまりにも良すぎる、まるで誰かが持ちだして、その時にしくじった様なタイミングに感じられる。
ほかにも怪しい点は考えれば続々と出てくるだろう。
この事件はやはり何かがおかしいのだ、それこそ少し前までいたって普通の軍人だった人間が気付いてしまうほどにあからさま過ぎるくらい。

「援護してくれ!そっちに行く!!」

迷彩服の女性がわざわざ大声で声を掛けてきたが、洞爺は内心首を傾げた。いらねぇだろ、それが本音だ。ヘリとメイド服の魔術師達が交互に攻撃を仕掛け、地上からも照明弾が消えた空にミサイルが上がっている。
少女たちは回避と防御に専念せざるを得ずこっちには目もくれていない。完璧に洞爺から意識が逸れていた。





◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆





何か妙だ、愛機『UH-1・イロコイ』の操縦桿を握りしめて機銃のトリガーを引くパイロットの彼女は言い表せない悪寒を感じ取っていた。
目の前の戦況は一見有利だ。下からの突きあげとミニガンの弾幕に晒される彼女は反撃に出る隙を与えない。
魔力シールドを張って回避行動を少女は繰り返すが、未来位置に向けてミニガンを撃ちこんで牽制する。
機動が淀んだ瞬間、警備隊第三分隊のメイド達が各々の愛用の武器を持って飛びかかる。
ターゲットの迎撃が彼女達を襲うが、近接武器型のメイド達は強化ケブラー素材の織り込まれたメイド服と簡易シールドで強引に突破。
銃火器を装備したメイドは正確な射撃で魔力弾を叩き落とし、ターゲットに一連射叩き込んで動きを鈍らせる。
そこに真下から野太刀の切り上げが襲いかかり、スレッジハンマーがフルスイングされ、年代物のハルバードが振り下ろされる。

{相変わらずすごい跳躍力だ。}

魔術による肉体強化は見慣れているがやはり普通の人間では考えられないコミカルな光景である。しかしやっていることは非常にえげつない、食らった側からすれば悪夢だろう。

「掃射開始!!」

そこにヘリの両側に吊るされた追加燃料タンク型偽装ポッドから撃ちだされた対戦車ロケット弾とミニガンによる7.62ミリの鉄嵐で追い討ちである。
チームワークが光る三連撃を辛うじて交わしたターゲットは、ロケット弾とミニガンを避ける余裕はない。
障壁が張られるが、そこにロケット弾と銃弾が命中した。一撃加えた後はすぐさま距離をとる。
ターゲットが追いかけるそぶりを見せるが、正確な狙撃から始まる対空砲火に絡め取られる。
地対空ミサイルを避ける彼女に向けて再び機首を向けると、無線機から喚き声が聞こえた。

≪だぁぁぁ!くそっ、また防がれたぁぁぁ!!≫

≪落ち着きなよシスカ、さすがに一筋縄じゃいかないって。≫

≪そうは言うけどよ美砂~~どんだけ堅いんだよあいつ~~≫

≪同感、堅過ぎでしょ。エコー、そっちはどうですか?≫

男勝りな少女の喚きを困ったように少し控え目な少女の声が諌める。
それに同意するように勝気なハスキーボイスが問いかけてきた。いつもの三人組だろう、パイロットはいつものように答えた。

「こっちも駄目だ。」

≪堅過ぎだろ。何発ぶち込んだよ。PAか?コジマかおい!≫

≪魔力でしょ、対戦車ロケット弾と7.62ミリ徹甲弾の雨を耐えるシールドなんて数える程度しか見た事無いけど。≫

≪たぶん異世界技術だね、相当進んでるみたい。杖に高性能AI搭載してるって話だし。使い魔も規格外なら武器もまたしかりってことね。エコーはどう思う?≫

「まったくもって同感だ、ミルキー2。使い魔も警備隊と祝融達にゴリ押し仕掛けてから逃げられる位だ。まるでゲームの世界に飛び込んじまったみたいだよ。」

このコールサイン自体、好きなゲームのキャラから捩ったものだからなおさらそう感じる。
体を覆う『バリアジャケット』という強固なシールド、高度な科学力を思わせるAI搭載型魔術霊装『インテリジェンスデバイス』。
見たことのない術式と戦闘スタイルは、こちらもかなり苦しめられている。かの国でもこんなことはできないだろう。
あの国は魔術面における技術力などは各国と比べて上位には程遠い、勝っている科学力で補ってもあの礼装は作れない。
だが逆に魔術面に勝っている国でも不可能だ、その手の国や組織は総じて科学を軽視するか嫌悪する傾向がある。
高度な魔術技術と科学技術の集合体があのデバイスだ。そうなってしまうと、それが両立できる国と組織は限られる。

≪上空のヘリ、聞こえるか?こちら大日本帝国海軍陸戦隊所属、斎賀洞爺海軍中尉。応答願う、どうぞ!≫

ふと思考に耽っていると、聞き慣れない少年が無線をつなげてきた。噂の時代に取り残された残留日本兵だ。
忍によれば味方らしいが、外見と行動が全く釣り合っていない所を見ると奇妙な感覚を覚える。外見は精悍な子供だが、判断力や戦闘力はベテランの軍人を思わせる。
なんでも彼の知り合いが高名な魔術師で、そのツテで今の状況になってしまったらしい。
異常と言うよりほかないだろう、出自も何もかも彼はこの世界の法則もなにもほとんど知らない素人のはずだ。
それなのに月村が苦戦した魔術師相手に生身で張り合ったのだ。そう思うと、少し身構えてしまう。
今まで歴史上の人物としか考えていなかった旧軍の軍人がそこに居る、それだけでも緊張してしまうと言うのに。
彼は不気味だ、幽霊やオカルトの類が実在する世界に住む自分から見ても『オカルト』『SF』という単語が頭をよぎる。彼女はゴクリと生唾を飲んで冷静に応答した。

「こちら月村ヘリコプター隊エコーチーム4番機、コールサイン・エコー4{フォー}であります。どうぞ。」

≪上空支援感謝する、エコー4。こちらも微力だが全力を尽くす、よろしく頼むぞ。≫

「か、感謝する、派手にやってくれ。」

≪任せろ、あぁそうだ、こん―――――≫

思わず唖然とした、この話やすさは自分が考えていた堅苦しいそれではない。馴れ馴れしい、と言う訳ではないがなぜか非常に絡みやすいように感じた。
向こうの無線機の調子が悪いのか、途中で切れてしまったがそれだけでも解った。

{なんか、想像と違う。}

奇人変人と聞いていたが、さっきの雰囲気では感じの良いおっさんに聞こえた。おそらくはそうなのだろう。
考えてみればそれが普通なのだ。彼は確かに軍人であり戦場に居た、だがそれ以外は普通の人間と変わらないのだ。
魔術などという存在とは無関係で、普通の家族を持つ一人の男性だった。彼は真実を知らなかった、何も知らなかった。
おそらく時代にそぐわない思考傾向だったからそう呼ばれたのだろう、この時代では当たり前の事でも当時は考えもしなかったことと言うのは良くあることだ。

≪エコー4、援護願います。もう一度仕掛けます。≫

いつものメイド3人組の参謀格からの支援要請。マジか!?と無線の向こうで驚きの声が上がるが仕方のない事だろう。

「了解、良いとこ見せましょ。」

≪しゃぁねぇ、削るぜ。削りきってやる!!行くぞおらぁぁぁ!!≫

声が枯れんばかりに掛け声を上げ、褐色肌のメイドが野太刀を振りかざして突撃をかます。それに続いて八名のメイド達が一斉に少女に突撃を掛けた、一気に防御を削りきるつもりだろう。
その突撃に少女は反応が遅れた、その遅れは致命的だ。援護射撃に絡め取られ、動きを止められた所に彼女達の連続攻撃が叩きつけられる。
その連続攻撃に障壁の罅がさらに広がり、大きな亀裂が走った。

{トドメだ。}

ロケットのロックオンカーソルで亀裂を狙う。勝った、その確信に獰猛に微笑みながら発射スイッチを押しこむ。瞬間、彼女の視界を緊急回避アラートが遮った。
それと同時に眼前の敵にも変化があった、今まで避けようともがいていた彼女が体を丸め周囲に強固な結界を張り直したのだ。
魔術師が普段好んで使用する半透明のタイプではなく、向こう側の見えないタイプ。それで周囲を固めた姿は金色の球だ。
だがそれだけではない、操縦桿から感じる気流の変化と彼女から計測される集束魔力推定量メーターの急激な上昇に彼女は焦燥を隠せなかった。

{魔力が集束していく?そんな・・・ありえないわ!旧式魔力炉並みじゃない!}

こうしてはいられない、彼女は無理に機体を翻しながら無線の設定を緊急回線に切り替える。
彼女は恐怖していた、解りやすい、子供のような恐怖心が彼女を駆り立てる。逃げろ、速く逃げろと。
そして、同様の声が聞こえる無線機のマイクを口元に寄せて叫ぼうとして、背後から眩しい光と熱を感じた。
熱く、背筋が寒くなるような轟音が響いてくる。次の瞬間、強烈な衝撃に襲われて彼女は強烈なGに席に縛り付けられた。
気を失う直前彼女が見たのは、煙を吹く計器とひび割れて真っ白になったガラスだけだった。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




今まで攻めていたヘリが急旋回し、まるで金色のパチンコ玉のようになった少女の結界が一際強く輝いた瞬間音が消えた。
瞬間、自分は宙に浮いていた。何がどうなっているのか?と考える間もなく襲ってきたのは激痛。
プロボクサーも顔負けの拳が散弾のように体を打ち、まるでポップコーンのように爆発した地面と吹き上がる爆風に体が巻きあげられた。
彼、斎賀洞爺がはっきりと解るのはそれだけ、後は何も覚えていない。
気が付けば倒れた木の幹に両足を投げ出して気を失ったロシア人メイドの胸に後頭部を預ける状態で、ほとんど更地になった林に倒れていた。
本当に良く生きているものだ、ここまでやっておいて死んでいない。運が良い悪いの問題ではない、あれは異常な技術だ。

「またか。」

短く吐き捨てて、軋む体を無理に動かして足を投げていた倒木に背を預けるようにして座り、残った装備を確認する。
残っていたのは十四年式拳銃一丁と予備の弾倉一本、九七式手榴弾一つ、赤色の信号弾を装填した信号拳銃一丁だけ、ほとんど残っていない。
九九式はどこかに消えた。弾薬も弾倉やクリップ、またはその物が折れるか凹んだりして使い物にならない。
ジャケットは千切れて飛んだらしく、黒の長袖シャツもボロボロで血が滲んでいる。
薬類も使いものにならない、赤十字の描かれた長方形の鉄容器が歪んで蓋が開かなくなってしまっている。
工具か何かで強引に開けるしかないが、どれも今手元にない。
救援部隊から供給してもらうのもありだが、咄嗟に庇った黒髪メガネのロシア人、サーシャ・M・ナガンを除いて彼女達の姿はない。
意識が途絶える直前、彼女達がポーチから何か取り出したのを見た。おそらく転移霊装か何かだったのだろう。

{ナガンは、目を回しているようだが外傷はなさそうだな。良かった。}

置いてけぼりを喰らうのは少々寂しいが、この状態では仕方のない事だ。そうは思わんか?洞爺は口だけ動かして、目の前に降り立って自分を見つめるフェイトに向けて問いかけた。

「どうして笑っているの?」

これが笑わずにいられるか。フェイトの驚きの混ざった瞳を見つめ、さらに自嘲気味に笑って見せる。
大の大人が、それも軍人がこんな少女にバカげたでメタメタにされてもう起きあがる事も出来ない。こんな漫才のような状況が笑わずにいられるか。
笑うしかないだろう、腹がよじれる位可笑しいだろう。おかしいだろう?オカシイだろう?

「笑うな!」

まるでハンマーで殴られたような激痛が鳩尾から走る。彼女に蹴られたのだ。
強烈な吐き気に吐瀉物を当たりにまき散らす。ほとんど原形をとどめておらず、胃液まみれのクッキーが口の中に引っかかる。
無様だ、結局自分はこうなってしまうのか。吐瀉物をまき散らし、無様に倒れる自分はいったい何なのだ?
魔法、魔術、そんなオカルトの世界で自分は無力過ぎる。力も、経験も、全てが圧倒的に足りない。
誰かの手が体を探り始める、彼女がジュエルシードを探しているのだろう。小さな手だ、可愛らしい女の子の柔らかい手。
どうするべきか、ズボンのポケットに隠したジュエルシードを見つけられるのは時間の問題だ。逃げるチャンスを作らなければ、だがどうする?
こうするしかない、頭に浮かんだ手段を実行するため洞爺は勝ち誇った笑みを浮かべた。

「まだ笑うの?」

演技の笑みに彼女の意識が体から表情に逸れる、その隙をついて洞爺は十四年式拳銃を抜いて彼女の鳩尾に至近距離から残弾全てを叩きこんだ。
バリアジャケットに阻まれた銃弾がぽろぽろと地面に落ちるが、殴られた程度の衝撃は通ったのかフェイトがふらつく。
間発入れず彼女の短過ぎるスカートを掴んで引き倒して肩をつかみ、九七式手榴弾の安全ピンを抜いた。
それを彼女の後頭部で信管を叩きつけてマントと首筋の間に押し込んで頭突きをかまし蹴り飛ばす。
蹴り飛ばした時に感じた体重はこれ位だった娘よりも少々軽いが年相応だ、その分よく飛んであっという間に安全圏に転がっていく。
フェイトは何をされたのか解ったようだが、パニックになっているのか首に手を回しても手榴弾をうまくつかめない。
今が最後のチャンスだ、洞爺は十四年式をホルスターに押し込み信号拳銃を抜いて上空に向けて撃った。赤い信号弾が上空に上がり、辺りを僅かに赤く照らす。
すると足元にミッドチルダ式と思われる魔法陣がすぐさま浮かび上がった、ユーノはしっかりとこれを見ていたのだ。
術式発動まで僅かだ、洞爺はまだ目を回しているサーシャの足を掴むと無理やり引き寄せる。
スカートがめくれあがって白い下着と同色のガーターベルト、右太もものレッグホルスターに収められた自動拳銃『マカロフPM』が丸見えになるが構っていられない。
起爆まで後わずか、一般的に手榴弾の安全ピンを抜いてから起爆までの約四秒から五秒。それを知っているらしいフェイトの表情は完全に視野狭窄に陥って周りが見えていない。
九七式の起爆時間もおよそ四秒から五秒、ここまでで約4秒ほど経過した。後1秒弱、彼女は首に食い込んだマントの留め金を外そうともがいている。
出来ることといえば、サーシャを置いて行かないように彼女の襟をつかんで自身の胸の中にきつく抱きしめることぐらいだ。長い、だが乗り切った。
術式が一際明るく輝いたその時、フェイトが首に食い込んだマントの留め金を外して手榴弾を明後日の方に投げ捨てた光景が消えた。

「・・・随分とお楽しみ的な格好だね、大丈夫かい?」

戻ってきた洞爺を、ユーノの疲れた声色の皮肉が迎えた。結界の外なのだろう、辺りは木があまり無く緑の草がカーペットのようになっている。
その上に、気を失ったなのはを寝かせてユーノは回復魔法を行使していた。

「まったく死ぬかと思ったよ。こいつも頼む。」

「君が言うことかい?あんだけ派手にやって。その人は?その、凄い剣幕だったから通しちゃったんだけど。」

彼が脇に寝かせた仰向けにサーシャにも回復魔法をかけながらユーノは問いかける。

「俺が呼んだ知り合いで、君が外に締めだした増援だ。騒ぎを聞きつけて助けにきてくれたのさ。」

「あ~、その、前もって言ってくれない?信用できるの?」

「止めろと制止したんだがね、してなきゃ呼ばんよ。」

洞爺は微笑むと、気を失って地面に横になっているなのはに目を向ける。

「怪我は平気かね?」

「あぁ、幸い足首を挫いただけだったよ。」

「バリアジャケットのおかげだな、どこだ。」

ユーノは気絶しているなのはの足首を指さす。少し赤くなっているものの軽傷だ、それ以外に外傷はない。洞爺はほっとして息をついた。
本当に運が良かった、足首を軽く捻挫しただけだ。湿布を張って一晩寝れば治る程度の傷だ。

「サイガ、君に少し聞きたいことがある。」

立ち上がって十四年式拳銃の弾倉を取り替える洞爺に、ユーノはいつもより強い口調で問いかける。

「なんだね?」

弾倉を装填して、スライドを引いて初弾を装填した洞爺はいつものようにユーノに向き合う。ユーノは彼を真剣に見つめていた。その瞳に、洞爺は小さく苦笑した表情で返す。

「君は何者なんだ?あのクラスの魔導師と互角にやりあえる人間なんてそういない。それに知り合いまで呼んで、バックアップもつけてくれたね。なんでそこまでしてくれるんだい?」

「以前に言ったはずだが?放っておくわけにもいかんからだ。」

「君はなのはみたいに純粋な気持ちでとは思えない。」

洞爺の表情が酷く冷徹なモノに代わる。その冷たい視線にユーノは対抗するようにキッと睨んだ

「何故そう言い切れる?」

「その目、その目の色だよ。普通じゃない、それは人殺しの目だ。さっきも言ったけど僕は遺跡発掘が仕事の部族で、実際仕事もしてる。
遺跡発掘も安全じゃないんでね、そういう目をした人間は見たことあるんだ。感情が無いみたいな、冷たくて、底が見えない目をしてるんだよ。
なのは達と同年代とは思えない。君は異常だ、君はいったいなんなんだ?なんでぼくたちを助ける?君は傭兵にしては妙にお人好しじゃないか?」

ユーノの問いかけに洞爺は顔を苦くする。だが、すぐに緩ませると溜息をついた。

「まぁ、それはそうだな。信じられる訳が無い、君たちからすれば俺は何かと都合の良すぎる存在だ。それは事実、弁解も必要ない。
だがこの命を掛けても良い、俺がこの件に関わるのは俺自身の意志と、本当に偶然だ。何も知らなきゃ、今ごろは家で酒でもかっ喰らってるよ。」

ユーノが疑問げに首をかしげる。ユーノの目には、洞爺が何か隠しているように見えた。
無論、洞爺はその事を話す気はさらさらない。自分は第二次世界大戦の生き残りであり、とある事情でこういう事にちょっとだけ縁があったらしいなど言えるはずが無い。
大体この縁でさえほんの少し前に知った物なのだ、寝耳に水もいい所である。

「あとは経験と勘だな。」

「その経験とは?」

ユーノの問いに、九九式をユーノが回収していた竹刀入れにしまいながら苦笑する。経験とは何か、なかなか難しい質問だ。
この身体で無ければ相応の説得力がある返答が返せただろうが、今の体は子供の体だ。
どうやって誤魔化したものか、気絶したままのサーシャのメイド服から戦闘装備を優しく取り外しながら悩む。こういう時に限っていい案が浮かばない。

「君にはまだ早い。小銃を撃てるようになったら話してやろう。」

仕方なくかつて幼い娘をからかった時のように、軽い口調で誤魔化すとユーノは疑うような視線で見上げてくる。相変わらず妙に人間っぽいフェレットだ。

「言えない事情でも?」

「いやぁ?ちょっと衝撃的でね。とてもじゃないが、信じられないと思う。」

「・・・解った、ちゃんと後で話してもらうからな。」

ユーノは確約しろとでも言うように、強く洞爺に向けて言った。その言葉に、洞爺は苦笑を洩らしつつ答える。

「ああ、生きていれば、いつかな。」

だからお前も死ぬな、と意味を込めて洞爺にユーノに言い、木立の向こうに見える月村の屋敷へ視線を向ける。
きっとみんなが待っているだろう。だが、こんな姿が見られればきっと大騒ぎになるに違いない。
サーシャとなのはは怪我をして気を失っており、洞爺も硝煙を身に纏わせて体中泥だらけ傷だらけでボロボロだ。

「早く戻りたいが、言い訳を考えなければな。」

「どうするんだ?」

ん~~?と洞爺は考えながら、辺りの地面を掘り返して二コリと微笑んだ。土の下から手のひらより一回り大きい鉄製の円盤を手にとって、ユーノに見せる

「あった、やはり埋まっていた。」

「なにそれ?」

「地雷だ。おかしいと思ったよ、戦闘中に地面が爆発したんだからな。」

ユーノの思考が約5秒ほど止まった。

「地雷!?」

「たぶん非致死性の低殺傷対人地雷だろうな、詳しくは解らないが音と爆風はあるが威力は大したことは無い。
電波か何かで制御されているんだろう、だから俺達には反応しない。いやはや便利な地雷があったものだ。」

「ちょっと待って!色々無茶苦茶なのは置いといて、なんでなのはの友達の家の庭に地雷が埋まってるのさ!!」

「たぶん警備のためだろう。大金持ちのお嬢様なんていうのはいろいろと面倒なヤツらに狙われやすい。特に月村ってのは何かと訳ありなようでね、詳しいことは知らんがよく狙われるんだ。
事実、俺の知り合いを護衛兼メイドに雇ってるくらいにな。高町から聞いていないか?この子の兄は月村家当主と恋仲だ、知らない訳ないはずだ。」

ユーノは返答に詰まった。確かになのはからそんな話を少し前に聞いたのだ。それを考えると確かにこれ位はあっても不思議ではない気がする。

「・・・わかった、とりあえず解った。で、それをどうするの?」

「こうする。」

そう言うや否や、洞爺は大きく振りかぶって地雷を少し離れた所の木の幹に思い切り投げて叩きつけた。
投げつけられた地雷は必要以上の衝撃に信管が誤作動、当然のごとく爆発する。突然の凶行に唖然とするユーノの目の前で、洞爺は至極まともに頷いた。

「よし。」

「え、どこがいいの!結界張り損ねたんだけど!!」

「これで俺達の恰好に説明が付く。警備用地雷の誤爆、悪いが責任はあっちに持ってもらおう。」

くっくっくっ、と不気味に笑う洞爺に、ユーノはなぜかとんでもない同情を感じた。なぜか、ここに居ない誰かが物凄い苦労をこうむりそうな気がしたのだ。

「それと君をダシに使う、気を悪くしないでくれよ。いざとなれば責任は全て俺が取る。帰るぞ、みんな待ってる。」

先ほどまでの疲労はどこへやら、鎮痛剤の効果とやせ我慢でなのはを左脇にサーシャを右肩に抱きかかえた洞爺の言葉にユーノは震えるのを感じた。嫌な予感を感じ取ったのだ、それは正解だ。
なぜなら、なのはの怪我の知らせを聞いて駆けつけた高町家の人々と問い詰めてくるアリサとすずかを言いくるめるのに散々ネタとして扱われたのだから。









あとがき
どうも作者です。また長い間間が空いてしまいました、その上拙い文章で済みません。
さて今回、負けるのは決まってるんですが、善戦はさせないといけません。これが難しい、何せまだ生身です。何故こんなに遅れたかと言えばそれが原因でもあります。
キャラを思うままに動かすと主人公的役割をはじめとしたオリジナル地球勢キャラが死にまくるという悪夢ができました・・・まぁ現時点で死者3桁越えなんですけどね。
特に役割、こいつが死に易い。とにかく死ぬ、どこでも死ぬ、本当に呆気なくポックリ逝く。非殺傷設定でも、間接的に逝っちゃうんです。
それをどうにかしようとしてアイデアが完全に煮詰まってしまいまして、それを払しょくするのに時間がかかりすぎました。
いくらシュミレートしても誰かしら逝っちゃう、高確率で序盤に役割が逝く。
出来たはいいが書いてる時は地球防衛軍やってるような気分がしましたよほんと、火力・防御力・機動力が人間基準からして見て強さが半端なく狂ってます。

それとフェイトの防御力が低いという指摘から高くしてみた、いいね、死にそうにないから少し過激でも問題ないし。
なによりバリアを剥がして柔い生身に実弾を叩き込むというロマンがいっそう輝く。
真面目にコンボがやりたい今日この頃、でもプラズマガンが無いので我慢します。
可能なのは、至近距離ショットガンで強引に行くか、対戦車ライフルの大きくてぶっとい銃弾でぶち抜く位ですかね。
でも絵的には完全な悪役です、可憐な魔法少女に鉄板が見え隠れする皮ジャンを着た少年がマウントポジション取って、
サブマシンガンのストックで少女の顔を殴りまくるとか、魔法少女モノでは完全悪ポジです。・・・この作品に正義も悪も無いですが。
これがエンジニアにポクテ、COG軍曹に地底人、改造人間と調停者にエイリアンor寄生体だったら映えるんですがね。
殺し合い上等な人物の敵が魔法少女とかだとこうも変わるか、勉強になった。というか本来視点が逆だよね。
そして最後は大逆転で、ただし視点は負ける側。うん、マジ魔法って半端なくチートです。
次回の温泉編にいくか、それとも少し間に挟むか、どっちにしろさてどう料理したものか?なかなか難しいんですよね、まぁ何とか頑張ります。

拙くて申し訳ありません。これからもよろしくお願いします。By作者


追伸・防弾装甲云々はネタでもあるんですが、解るかな?・・・今思うと防弾チョッキの防弾板で防げるプラズマランチャーって威力低いのかな?




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