第十四話 転校生
ジュエルシード事件が終わって一週間後。
現在は、小学校の朝のHRである。
そして、なのは、桜、アリサ、すずかが驚きで固まっている。
何故ならば、
「アリシア・テスタロッサだよ!よろしくね!」
「フェ、フェイト・テスタロッサです。よろしく・・・・・・・」
目の前で聖祥小学校の制服に身を包んだアリシアとフェイトが、自己紹介していたからだ。
因みに、俺はこうなる事を知っていた。
ジュエルシード事件が終わると、テスタロッサ一家は時の庭園へと戻っていった。
別れ際には、フェイト、アリシア、なのはが、別れを惜しんで泣いていた。
ただ、俺はその際プレシアさんが浮かべた笑みに引っ掛かりを覚えたが。
それから、数日後のことだった。
俺が街を歩いていると、
「う~ん、中々いい物件がないわねぇ~・・・・」
聞き覚えのある女性の声。
俺がそっちに顔を向けると、不動産屋から出てくるプレシアさんの姿。
何やってんですかアンタ?
「プレシアさん?」
俺は声をかける。
すると、プレシアさんは此方を向き、
「あら、ユウ君じゃない」
そう微笑みながら話しかけてくる。
「何やってるんですか?」
俺は、そう尋ねる。
「ええ、暫くこの街に腰を据えようかと思って」
「はい?」
プレシアさんの言葉に、俺は間抜けな声を漏らす。
「アリシアとフェイトに友達ができた事だし、離れ離れにするのも可哀想でしょ?折角だから、暫くこの街に滞在しようと思ってるの」
「暫くって・・・・・どの位?」
「そうね。この国には、義務教育期間って言うものがあるらしいし、少なくともそれが終わるまではこの街にいるつもりよ」
「義務教育ってことは・・・・・・アリシアとフェイトを学校に通わせるってことですか?」
「ええ。学校なら、同年代の子供たちも一杯いるから、アリシアとフェイトにはいい刺激になると思って」
「なるほど・・・・・何処の学校・・・・・って、聞くまでも無いですね」
俺は一瞬疑問に思ったが、このプレシアさんの性格なら、少し考えただけで分かった。
「言うまでもないけど、当然、聖祥小学校よ♪」
思ったとおり。
「ですよね。なのはや桜たちには・・・・・」
「もちろん秘密にしといてね。アリシアとフェイトにも秘密にしてあるんだから」
プレシアさんは、笑顔でそう言う。
「まあ、それは良いですけど、住む所は決まってるんですか?」
俺がそう聞くと、プレシアさんは苦笑し、
「それがね、なるべくなら高町さんのお宅に近い所を探してるんだけど、中々いい所が無くて・・・・・・」
どうやら家探しは難航している模様。
「そうですか・・・・・・ん?」
俺は、そこでとある事を思いついた。
「だったら、自分の家貸しましょうか?」
俺はそう言う。
「え?」
プレシアさんは意味が分からなかったのか、声を漏らす。
「いえ、今、俺は高町家に居候してますんで、元々住んでた家が空き家になってて、士郎さんたちに管理して貰ってる状態なんですよ。俺も多分成人するまでは居候状態が続くと思いますんで、期間的にも丁度良いかなと・・・・・高町家から歩いて10分位の所なので、それなりに近いですよ」
「あら、いいの?」
「ええ、その家に住んでもらう序に管理してくれれば、士郎さんたちへの負担も減りますし」
「なるほど、一石二鳥って訳ね」
「その通りです」
「じゃあ、お願いしようかしら」
「分かりました。士郎さん達には話を通しておきます。もちろんなのは達には秘密で」
「ええ、頼むわね」
と、言うわけで、なのはや桜たちには知られないように暗躍(?)しつつ、テスタロッサ一家が俺の家に住めるように手配する。
そして、週明けの本日、アリシアとフェイトが転校生として聖祥小学校に来る日である。
朝のHRが始まると、
「では、早速ですが、今日からこのクラスに新しいお友達がやってきました」
先生がそう切り出す。
その言葉に、クラスがざわめく。
なのは達も、誰が来るのか分かってない。
「じゃあ、入ってきて」
先生がそう言うと、教室のドアが開き、2人の人物が入ってくる。
その人物を見た瞬間、なのは、桜、アリサ、すずかの4人が驚いた表情をして固まった。
「2人とも、自己紹介をお願いできる?」
先生に言われ、
「アリシア・テスタロッサだよ!よろしくね!」
アリシアが元気良く挨拶し、
「フェ、フェイト・テスタロッサです。よろしく・・・・・・・」
フェイトは恥ずかしさからか、頬を赤くさせながら自己紹介した。
「アリシアさんとフェイトさんは、双子の姉妹です。みなさん、仲良くしてあげてください」
先生がそう締めくくる。
HRが終わると、俺は何時もの如く机に突っ伏し、クラスメイト達は例の如く一斉にアリシアとフェイトの周りに群がる・・・・・・・
前になのはが一目散に駆け寄った。
「フェ、フェイトちゃん!アリシアちゃん!な、何で!?」
なのはは相当驚いているのか、そう叫びながら問いかける。
「あ、なのは」
「そ、それが・・・・・・私達も母さんに昨日いきなり・・・・・・・」
アリシアは既に順応しているが、フェイトは困惑気味らしい。
だが転入生、しかも、アリシアやフェイトのような外国人(正確には異世界人)と知り合いとなれば、子供たちの好奇心を駆り立てるには十分だ。
「何々!?高町さん知り合いなの!?」
「どういう関係!?」
そう言いながら、3人を囲むクラスメイト。
「にゃぁあああああああああっ!?」
なのはの声が響く。
その傍ら、
「で、何でアンタはそんなに落ち着いてるの?私も、これでも結構驚いてるんだけど」
桜が俺に近付いてそう言ってきた。
「まあ、俺は知ってたからな」
俺は隠す心算もなく、そう言った。
「はぁ?」
桜は声を漏らす。
「ちょっと前にプレシアさんに会って、話を聞いたんだ。その時に丁度物件を探してたから、俺が元々住んでた家を紹介したって訳だ」
その言葉に、ちょっと呆気に取られた表情をする桜。
「じゃあ、今フェイトたちって、アンタの前の家に住んでるって事?」
「まあ、そうなる」
俺は頷く。
「ふ~ん・・・・・・まあ、いいけど」
桜は納得して、視線を3人の方へ戻す。
そちらでは、次から次へと質問するクラスメイト達を、アリサが取り仕切っている。
そんな中、
「好きなタイプは?」
という質問があった。
「えっ?そ、それは・・・・・・・」
フェイトは頬を赤くして俯くだけだったが、
「好きなタイプっていうか、好きな人ならいるよ」
アリシアはそうハッキリと口にした。
「なにぃーーーーーーーーっ!?」
「そんなーーーーーーーーっ!!」
「狙ってたのにぃーーーーーーーーっ!!」
「羨ましいぞぉーーーーーーーーーっ!!」
「何処のどいつだぁーーーーーーーっ!?」
男子の多くがショックを受けたように叫ぶ。
すると、アリシアは俺の方を向いて笑みを浮かべた。
「何処のどいつかって言うと・・・・・・・」
アリシアは、小走りに俺の方へ走ってきて、
「此処の・・・・・・」
俺の腕に抱きつきながら、
「コイツ♪」
そう言った。
おい!そんなことしたら!
「「「「「「「「「「何ぃーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」」」」」」」」」」
絶叫が響き渡る。
耳が痛い。
「何故利村なんだぁ~~~~~~~~~~!!」
「あんな根暗をぉ~~~~~~~~~~!!」
「如何見ても冴えない奴じゃないかぁ~~~~~~~~!!」
好き放題言われてます。
全部本当の事だから、別にムカつきはしないけど。
と、其処へ1人の男子生徒が俺の前に来る。
「ちょっと良いかな?」
キザったらしい仕草をしながら、その男子生徒は俺にそう言ってくる。
コイツはクラスメイトの金野 力(かねの つとむ)。
とある大会社の社長の息子で、名は体をあらわすが如く、金の力で色々と無茶をやらかす問題児だ。
俺が嫌いなタイプの人間である。
「何だ?」
俺は、めんどくさくなりそうだと思いながらそう聞き返した。
「アリシアさんのような可憐な花に、君のような雑草は似合わない。即刻別れたまえ」
金野の言葉に俺は呆れた。
「俺が雑草というのは認めるけど、別れるも何も、付き合ってるわけじゃないんだけど・・・・・」
俺はそう返す。
「ふむ、そうか。しかし、君のような低俗な人間は、彼女の傍にいる資格すらないよ」
「そうなんだよな~・・・・・・・俺なんかより良い男なんて、世の中にいくらでも居るって言ってるんだけどよ~・・・・・・」
その言葉は本音である。
その言葉に、金野は呆気に取られた表情をする。
大方、噛み付いてくると思ってたんだろう。
「・・・・・・・其処まで分かっているなら、何故君は彼女の傍にいる!?」
「いや、別に俺から言い寄ってるわけじゃないし。序に言えば、知り合って間もないし」
俺はあっけらかんとして答える。
俺の答えに、金野は言葉に詰まる。
「・・・・・は、はん!其処まで自分を卑下するなんて、余程人の出来ていない両親に育てられたらしいね!」
両親という言葉に、チクリと胸が痛む。
俺が、心を落ち着けようと目を瞑った瞬間、
――バチィ!バンッ!バチン!ドゴッ!
突如そんな音が聞こえ、目を開けると、宙を舞って床に叩きつけられた金野。
そして、俺の前に並ぶ、なのは、フェイト、アリシア、桜の姿。
何があった?
【Side 桜】
本当に驚いた、まさか、こんなにも早くフェイトとアリシアが転入してくるなんて。
あのプレシアさんの性格なら、その内転入させるとは思ってたけど、こんなにも早いとは思わなかった。
HRが終わった後、なのはが一目散にフェイト達に話しかけた為に知り合いという事が知れ渡り、フェイトとアリシア共々クラスメイトたちに囲まれている。
そんな中、私は全然驚いてなかったユウが気になり近付いて話しかける。
「で、何でアンタはそんなに落ち着いてるの?私も、これでも結構驚いてるんだけど」
私はそう問いかける。
「まあ、俺は知ってたからな」
ユウは、何でもないように答えた。
「はぁ?」
何でアンタが知ってるの?
「ちょっと前にプレシアさんに会って、話を聞いたんだ。その時に丁度物件を探してたから、俺が元々住んでた家を紹介したって訳だ」
なるほど・・・・・・って、ちょっと今気になる言葉が。
「じゃあ、今フェイトたちって、アンタの前の家に住んでるって事?」
私は確認する為にそう聞いた。
「まあ、そうなる」
ユウは頷いた。
「ふ~ん・・・・・・まあ、いいけど」
私は、とりあえず納得して、視線を3人の方へ戻す。
そちらでは、次から次へと質問するクラスメイト達を、アリサが取り仕切っている。
そんな中、
「好きなタイプは?」
という質問があった。
「えっ?そ、それは・・・・・・・」
フェイトは頬を赤くして俯く。
まあ、フェイトにそんな事聞いても恥ずかしくて答えられないわよね。
「好きなタイプっていうか、好きな人ならいるよ」
でも、アリシアはそう口にする。
「なにぃーーーーーーーーっ!?」
「そんなーーーーーーーーっ!!」
「狙ってたのにぃーーーーーーーーっ!!」
「羨ましいぞぉーーーーーーーーーっ!!」
「何処のどいつだぁーーーーーーーっ!?」
煩いわね男子。
すると、アリシアは此方・・・・・・というか、ユウを見て笑みを浮かべた。
「何処のどいつかって言うと・・・・・・・」
アリシアは、そう言いながら小走りにユウの所に走ってくる。
「此処の・・・・・コイツ♪」
そう言いながら、ユウの腕に抱きつき、満面の笑みを浮かべる。
あ、なのはとフェイトが若干不機嫌な顔に。
私は、この後の反応を予想して耳を塞いだ。
「「「「「「「「「「何ぃーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」」」」」」」」」」
絶叫が響き渡る。
危ない危ない。
「何故利村なんだぁ~~~~~~~~~~!!」
「あんな根暗をぉ~~~~~~~~~~!!」
「如何見ても冴えない奴じゃないかぁ~~~~~~~~!!」
男子達は、ユウの事を好き放題言っているが、当の本人は何処吹く風といった様子。
と、其処へ1人の男子生徒がユウの前に来た。
「ちょっと良いかな?」
その男子生徒は金野 力(かねの つとむ)。
典型的なボンボンで、いけ好かない奴。
ハッキリ言えば、私はコイツが嫌いだ。
コイツは過去、私に気があったのか、何かと気を引こうと財力をチラつかせて言い寄っていた。
当然私はそんな奴を気に入る筈もなく、突っぱね続けていた。
しかし、何度もしつこく言い寄ってくるので、我慢できなくなった私は、思わず(グーで)殴ってしまった。
そうなればボンボンのやることは変わらず、仕返しの為に例の如く財力で高町家に圧力を掛け様とした。
でも、それに気付いたアリサが、バニングス家(大会社と言っても、アリサの家とは天と地)から圧力を掛けてくれて、事前に解決してくれた。
その時は、アリサにとっても感謝したわ。
そして、それから金野はアリサと私、序になのはとすずかにも頭が上がらなくなっている。
「何だ?」
ユウは、めんどくさそうな表情で聞き返した。
「アリシアさんのような可憐な花に、君のような雑草は似合わない。即刻別れたまえ」
その台詞を聞いて、私は思わず吹き出しそうになった。
カッコつけようとしているのだろうが、ありきたり過ぎて全然カッコよくない。
「俺が雑草というのは認めるけど、別れるも何も、付き合ってるわけじゃないんだけど・・・・・」
「ふむ、そうか。しかし、君のような低俗な人間は、彼女の傍にいる資格すらないよ」
「そうなんだよな~・・・・・・・俺なんかより良い男なんて、世の中にいくらでも居るって言ってるんだけどよ~・・・・・・」
普通なら怒る所なのだが、ユウはのらりくらりとかわしている。
まあ、恐らくユウにとっては本音を言ってるんだろうけど。
でも、後ろ向きも此処まで来ると逆に感心するわ。
私だったら、間違いなく殴ってる。
あ、金野が呆気に取られた顔をしてる。
まあ、此処まで言われて、言い返してこないとは思っていなかったのだろう。
「・・・・・・・其処まで分かっているなら、何故君は彼女の傍にいる!?」
「いや、別に俺から言い寄ってるわけじゃないし。序に言えば、知り合って間もないし」
金野の言葉を、正論・・・・・というか、事実で返していくユウ。
金野には、これ以上文句は言えないだろうと思っていた。
だが、
「・・・・・は、はん!其処まで自分を卑下するなんて、余程人の出来ていない両親に育てられたらしいね!」
金野にとっては苦し紛れの言葉だったのだろうが、両親の事を言われて、僅かにユウの表情が曇った所を私は見逃さなかった。
その表情を、なのはとフェイト、アリシアも見逃さなかったのか、私達は一瞬視線を合わせる。
それだけで、私達は通じ合った。
念話など必要ない。
私達は、アイコンタクトで各々の行動を取り決めた。
一番初めに行動を起こしたのはなのは。
――バチィ!
左手で見事な平手を金野に喰らわせる。
そのよろけた所へ、
――バンッ!
フェイトがスピードの乗った、右の平手・・・・・というかほぼ掌底に近いものを叩き込んだ。
また跳ね返った所に、
――バチン!
アリシアが、勢いのいい左の平手を喰らわせる。
最後に回りこんだ私が、
――ドゴッ!
右アッパー叩き込む。
金野は見事な放物線を描いて床に落ちた。
「アンタ!ユウの両親をバカにすると、私達が許さないわよ!!」
私はそう言い放つ。
例え知らないとはいえ、ユウの両親を侮辱する事は許せなかった。
「アンタね!さっきからユウの事をバカにしてるけど、アンタがユウの何を知ってるのよ!全てに恵まれて、何一つ不自由しなかったアンタに!」
私は思わず叫んでしまった。
「お、お前ら・・・・・・」
ユウがポカーンとして私達を見ている。
其処までやった時、私達は自分たちのやったことに気がついた。
拙い、これって下手をすれば停学ものじゃ・・・・・・・
私達は思わず顔を見合わせる。
そんな時、
「はいは~い」
アリサが手を叩きながら、みんなに呼びかける。
「皆、私達は何も見てないわ。そいつが其処に転がってるのも私達は何も知らない。OK?」
アリサの言葉に、皆が頷く。
私達がポカンとしていると、
「今のは如何見てもアイツが悪いわよ。桜もあんなに怒った事は意外だったけど、皆ちゃんと分かってくれる」
アリサはそう言ってくれた。
どうやら皆誤魔化してくれる模様。
一安心ね。
特にフェイトとアリシア。
転入初日で停学なんて、シャレにならないわ。
私はそう思いつつ、転がってるバカを気にもせずに、1時間目の授業に備えて自分の席に着くのだった。
あとがき
結構やりたい放題な第十四話完成。
う~ん・・・・・やっぱりオリジナルに入ると、レベルがガタ落ちするなぁ・・・・・・・
とりあえず、フェイトとアリシアの転入編。
如何だったでしょうか?
「何処のどいつ」と聞かれて「此処のコイツ」と言わせることを何となくやらせてみたかった。
それだけだと短すぎたので、四苦八苦しながら作ったのが、完璧モブの金野君。
哀れ4人のコンビネーションアタックに撃墜されました。
でも、出来はビミョー。
最後も無理矢理纏めた感じだし。
今回はこんなんで。
話は変わりますが、そろそろとらハ板に移った方が良いでしょうか?
勢いのまま始めた小説ですが、既にこの時点でリリフロのPV超えちゃってるんですよね。
まだ、リリフロの半分も行ってないのに・・・・・・・・
この分だと、ゼロ炎のPVも近いうちに超えそうです。
まあ、相変わらず自分では決められないので、皆様の意見を聞きたいと思います。
では、これにて。