はやてと暮らすようになってから三週間。私もやっとこの町に慣れてきた。
平和な日常と綺麗な町並み、そしてまともなトイレ。今まで自分がいかに劣悪な環境で暮らしてきたかが解る。
はやてとの生活はいたって平和なものである。少し退屈なくらいだ。
まあ、私の生涯を振り返ると、こんな「日常」がほとんど無いからな。
10年間修行したり妹の仇や吸血鬼を倒しに行ったり、それが終わったらすぐに「弓と矢」を探したり…正に「非日常」の連続である。
だから、こういう「日常」は私にとってはかなり貴重なのではないか、と思う。
そう、今は「スタンド」も「パッショーネ」も「矢」も忘れて、「日常」を謳歌するべきなのだろう。
「ポルナレフさん、買出しよろしゅー頼みます」
「任せてくれ」
はやてに買う物が書かれたメモ用紙を渡される。…ふむ、これはまた量が多いな。どうしたんだ?
「今日セールやってる言いますから、色々買っておこうかと」
そうか、では、行ってくる。
…さて、スーパーはこれで終わり、と。
いつも、頼まれる物は大体近所のスーパーで揃うのだが、今日はそれ以外の物が入っていた。此処に書き出してみよう。
:翠屋のケーキ×2(私のはモンブラン、ポルナレフさんのはお好きにどうぞ)
翠屋?……地図が書いてあるな。この辺りに在るのか。
此処だな。喫茶店か、意外と洒落ているじゃないか。
中に入る。女子高生やらカップルやらで一杯だ。……何か自分が場違いのような気がしてきた。モンブラン注文して早く帰ろう。
「お先にご注文の方お伺いしまーす」
元気のいい声が私の元に届く。……おや、この店員はやてと同じぐらいの年頃だぞ。
カウンターの女性とどこか顔つきが似ているな。母親のお手伝い、といった所か。
「それではモンブランを…二つ、持ち帰りだ」
「モンブラン二つ、お持ち帰りですね!カウンターで清算いたしますので、しばらくお待ちください」
やけに手馴れているな。はやてもそうだが、この町の子供はまるで子供っぽくない。
街中で泣いている子なんて見たこともないし、スーパーでよく聞く「これ買って」なども聞かない。……少し気味が悪いくらいだ。
私が子供の時なんて、生まれもっていた「スタンド」で悪戯三昧だった。えらい違い…!?
なんだ、今の「感じ」は!
まるで「スタンド使い」に会った時みたいな…まさか!
私の背後に「シルバー・チャリオッツ」を出す。気づいたら、彼女は「スタンド使い」だ。
「…!?」
気付いた!やはり彼女も「スタンド使い」か!
しかしスタンドが出てこない。隠しているのか、はやてと同じようなタイプなのか?
…おっと、もうすぐカウンターだな。「スタンド」絡みで他の一般人に迷惑をかけたくない。揺さぶりはここまで、かな。
「ただいま。帰ったぞ」
「おかえりなさーい。夕飯できてますよ」
このやり取りにも慣れてきた。最初は少し違和感があったが、自分以外の人が帰りを待ってくれるというのはやはり良い。
一度はやてに「何か夫婦みたいやさかい、ちと面白いな」とか言われたこともある。もしそうだとしたら、これほど釣り合わない夫婦もあるまい。
「ケーキ、買って来たぞ。モンブランでよかったな」
「ありがとー、ポルナレフさん。翠屋のケーキ、大好きなんよ」
「喜んでくれて嬉しい。そうだ、ケーキを買ったときにな…」
はやてに翠屋で出会った「スタンド使い」のことを話す。
「ほへー。スタンド使いって、珍しいもんじゃあないんですね」
「そんなことは無いさ。ただの偶然だ」
「でも、なんか親近感感じます、私と同い年ぐらいやなんて」
そうだ、今度翠屋にいくときは、はやても連れて行くか。年が同じくらいで「スタンド使い」同士、きっと仲良くなれることだろう。
「今日はカレーです。自信作やさかい、どうぞ」
ああ、では、いただこうかな。
…その日の深夜。と或る二人の少女が、同時刻に発した言葉。
「何か、へんな夢見た…」
「何か、へんな夢やな…」
彼らの運命は、此処からどう動いていくのだろうか!
… to be continued !!
後書き
まさか投稿バグ引っかかってるとは。修正しておきます。