宇宙人に転生した。アニメとか無い生活なんて退屈で死にそう。文化も食事も何もかも俺に合わないんですけど。ってわけで、地球探して帰ろうと思います。
とにかく、宇宙人の超科学と根性で頑張って探すぜ!
見つけた。
空気は安全を示してる。ってわけで、これから地球に観光に行ってきます。
……所で日本の空港ってどの辺?
なんとか空港を見つけた俺は、久しぶりに見る日本に目を潤ませた。なんだか、いろんなタイプの飛行機が集まって賑やかしい。俺が転生している間に、地球も進歩したらしい。
さて、着陸許可を求めないとな。
俺は日本語を喋れない。発声機能自体が、人間の物とは違うのだ。
しかし、俺は諦めない。
電波で受信したテレビ番組、主にハリウッド映画から、着陸許可を求めます! と言っている画像をエンドレスで送り返してみる。
この時、まさか日本のテレビが全てハリウッド映画の着陸許可を求めます!のエンドレスを写しているとは夢にも思わなかった。
すると、空港の一部が開いた。早速そこに着陸する俺。
地球に降りて、息を吸う。俺は地球に帰って来た!
なんか軍人っぽい人にがっちりガードされたスーツ姿のおっさんが近づいてくる。
空港の人だろうか。怖がらせちゃったな。しかし、問題ない。俺には秘密兵器がある!
俺は自作のリリカルなのはの旗を振る。
沈黙の後、一気に緊張がゆるむ。
なんだオタか! そんな心の声がはっきりと聞こえてきた。
「ようこそ、日本へ。早速秋葉原へご案内します」
話が速くて助かる。
俺は用意しておいたスケッチブックに、でっかく質屋・両替屋と書く。
そして、持ってきて置いたお金や貴金属や高価な小物を入れた小袋を出す。
スーツの人は受け取ったそれを、軍人さんに渡す。軍人さんが走って行って、戻ってくるのを待つ事しばし。軍人さんが小さいバッグを持って走って戻って来た。後なんか軍人さんが増えた。金髪の人がいっぱいになった。
バックの中には、札束がいっぱい入っていた。おおおおお。
これで早速買い物行くぜ!
そして俺は真っ先に漫画喫茶に行った。
身分証明書が無かったので断られた。
酷過ぎる……。
まあいい。発電機に、ゲーム機に、テレビに、DVDデッキに……お金、足りるかな。
ある程度は覚悟していたけど、やっぱり野次馬が多い。エロゲ、エロ本を買う時恥ずかしかったけど、背に腹は代えられない。
買った物をどんどん宇宙船に転送して行く。
会話は全てスケッチブックで済ませた。
必要な物を全て買ったが、幸いな事にお金が余った。観光にでも行こうかな。
レポーターっぽい人や話しかけようとする人は軍人さんがシャットアウトしてくれるから助かる。
「夕食にご招待したいのですが、何をお食べになりますかな」
スーツの人の質問に、俺は『日本食にチャレンジ』と書く。味覚変わっているかもしれないし、毒かもしれないので本当に冒険だ。
『合わなくて倒れたら胃洗浄よろしくね』とも書く。
夕食、何か立派な温泉宿で真剣な顔をした医師達と国際色豊かな人達が立ち並ぶ中、俺は魚や米やみそ汁にチャレンジした。
うーまーいーぞー!
「宇宙人さんは名を何と言うのですか?」
『ガラミギア。意味はおかしい人。萌え萌えばっか言っていたからな!』と書くと、スーツ姿の人は非常に微妙そうな顔をした。
「日本語お上手ですね」
俺は頷く。
「地球には何の目的に来た? 侵略目的なんじゃないだろうな」
外国人さんの言葉に、俺もスーツ姿の人も目が点になる。なにって、わかっているでしょうに。それとも、何か気のきいた言葉を返した方がいいんだろうか。
『文化侵略されに来ました。明日はハンバーガー食べてハリウッド映画見るつもりだよ!』
などと書いてみた。本当はそんな予定なかったが、よいしょである。
「俺にはわかる! この宇宙人は良い宇宙人だ!」
よいしょ成功。
「最近期間限定の美味しい商品が売り出されたんですよ。ハリウッド映画ですが、今流行りなのは……君、映画のスケジュールを持ってきてくれたまえ」
面白おかしくしてくれるスーツ姿の人の話に、俺は何度も頷く。
せっかく日本に戻って来たんだから、観光もしたいものである。
三日しかいられないから、厳選しないと。移動に時間が掛かり過ぎるのは却下である。
遊園地もいいかもしれない。久しぶりにジェットコースター乗りたい。
地図と日本の観光案内を凝視していると、スーツ姿の人はガラミギアさんの星ってどこのどんな所ですかと聞いてくる。
『勉強が遊びなので、地獄。防衛学上、基本、星の位置情報や詳しい文化等は教えられない』と返す。
俺が返すと、スーツ姿の人はうむうむと頷いた。
「それは残念です。となると、交易とかも出来ないんですか?」
『交易用の星がいくつかあって、そこで交易するよ。場所知りたい?』
そう、俺が返事を返すと、スーツ姿の人は目を見開いて、ぜひ! 言って来たので、来るもの拒まずで一番安全な交易星とそこでのルールや注意点、でかい市のスケジュールを教えてあげた。俺もそこに行く途中での休暇だったのである。例えば、その星で言えば危険物御法度。と言っても、ある種族には危険である種族には無害とかあるから、難しいのだけれど。お互い、言葉も文化も全く違う中で売り買いするのだから、使い方がわからず事故を起こす可能性も高い。ただ見て気にいって、これ頂戴、これと交換というように、自分の手持ちの色々な硬貨や小物を差し出して交渉を望むような、全く手探りで互いに訳のわからん物を交換する原始人的物々交換も結構あるのである。
そして交換の際、買う側はお金を混ぜる。そうすれば、物を売った側は、買った側と同じ外見の異星人がやっている店を探して、物を買う事が出来るのである。
悪評が立つので、あからさまに騙して安い硬貨でしか取引しないのは駄目。売る方も、せっかくその星の硬貨を手に入れたのに使えない、騙された!? と思わせない為に、お店に激安の商品を置いておき、これなら交換できるよ、と指し示すのがマナーである。
「面白そうだしぜひ行きたいが、遠いな……」
一同、凄く残念そうな顔をする。
『仕事で交易星に行く途中なんだけど、ついでに乗せて行ってあげてもいいよ。宇宙船も探せば売っていると思うし、目利きして地球の座標を入れてあげてもいい。そうすれば交易星と地球を行き来できるようになる。ただし、交換物は自分で用意して、面倒事起こさないでね。どんな使い方しても危険な事が起きない物で、容量は1tまで。容量はこの部屋ぐらい。動物のやり取りは特殊隔離施設以外禁止。宇宙服着用必須。これは伝染病の防止のためね』
一応、俺も皮膚に薄いバリアを張っている。バリアだと任意の物は通せるので、食事も出来てしまうのだ。
「本当ですか! いや、良かった! ぜひお願いします!」
握手してぶんぶか手を振るスーツ姿の人。
『まず、物を指し示す以外リアクションしちゃ駄目ね。これ、種族によっては凄く嫌がられるから。相手も文化の違いはわかっているから、いきなり殺される事は無いと思うけど。それ以外のリアクションをしていいのは、アトラクション区画だけ』
「そ、そうですか。気をつけます。アトラクション区画とは?」
『品物じゃなくて、歌や踊りや芸で物を貰う区画。楽しいよ』
「わ、罠じゃないんだな?」
『宇宙人と交渉するなら、100%善意でも100%悪意でも問題ないように動くのが普通。なおかつこっちはウィンウィンの関係を目指すと一番上手くいく。後、素人は絶対に動物販売禁止。区画に入る事も駄目。間違えて売主が買われる事があるから』
「む、それもそうだな。よし、すぐに本国に連絡だ!」
走って行く人達。
一人取り残された俺は、観光コースを決める難問に戻った。
結局、映画やショッピング(レトルト食品や保存食、種をいっぱい買った。これで日本食が食える)で一日、遊園地で一日潰した。運よく遊園地で忍者ショーがやっており、凄く楽しめた。
エイリアン侵略物を見て笑うエイリアン。我ながらシュールである。
そして三日後、俺とゲスト御一行は交易星にいた。