・Scene 31・
あー、テス、テス、マイクテ※※※※おや、もう聞こえ※※※※い?
話しには聞※※※※けど本当に一発で受※※※※れるな※※※※良い感度をしてるじゃないか。
まずは始めまして。あたしは銀※※※※学師、白※※※※気軽※※※※ちゃん♪ ――※※※※んでおくれ。
ま、アンタにとっ※※※※殿のお友※※※※言った方が早いかも※※※※ね。
あ※※※※そう、そう言えばその瀬※※※※伝言を預か※※※※だ。いやい※※※※るところだった。えーっと、何処置いたっけな……お※※※※の前に。
一応※※※※に確認しておくけど、あ※※※※音殿で間違ってないよね?
え? ―――覚え※※※※
あー、平気※※※※っちではち※※※※ってるから。うん、アンタは甘※※※※男坊、※※※※違いないよ。
それ※※※※っけ? ―――おお、そう※※※※戸殿の伝言だっ※※※※し、じゃ聞かせ※※※※ほんっ!
”再会の日を楽しみ※※※※るよ坊や”。
―――だ、そうだ。いや※※※※離れても我が子を心配※※※※なんて、泣※※※※心じゃないか。
え? 我が子で※※※※、ついでに放※※※※まま百年以上※※※※いかって?
ははは、それは※※※※音殿。正確にはア※※※※雷を離れてからも※※※※年以※※※※ている。放置し※※※※由は―――そうさな、帰ってき※※※※お楽しみだ。
何? 帰りた※※※※?
それはあ※※※※知するところじゃないね。頑張っ※※※※瀬戸殿を説※※※※くれ。
―――さて、あんま※※※※で時間を食っても船※※※※の負担になるだけだし、そろ※※※※に入ろうか。
実はね、ウチの子※※※※そっちへ送ったのさ。
※※※※ず鍛えられる※※※※てはおいたけど、何処まで出来る※※※※子次第さね。
会うこと※※※※ら、先達として※※※※気にかけてやっておくれ。
素直に育※※※※、ほいほ※※※※う事を聞いちゃうような子に育っち※※※※らねぇ……。ま、其処があの子の可※※※※ろなん※※※※
おっと、話が逸れた※※※※言う訳なんで宜しく頼※※※※音殿。
そのお礼※※※※いっちゃあな※※※※、あの子にはあ※※※※ったアンタの機※※※※化させる修正パッ※※※※戸殿の仕掛けたロックを解除※※※※コードを持たせてお※※※※。
即※※※※けど、これさえ入れ※※※※肉体に負担※※※※限の能力の行使が可※※※※筈さ。―――必要だったら※※※※くれ。
あ、念のため忠※※※※くけどね。
二度と今の調整※※※※態で光※※※※開しよ※※※※考えるんじゃないよ。
アンタは※※※※に皇※※※※なりきれていない、人と※※※※揺らぐ非常に不安定な状態※※※※あろうとしても、人でありきれ※※※※なろうとし※※※※とはなり※※※※。
そんな状態で樹※※※※近づこうとしてごら※※※※タのただでさえ壊れ※※※※る人※※※※の部分が完全に※※※※うさね。
早※※※※――。
・
・・
・・・
……
―――死んじまうよ?
「―――っ!?」
掛け布団を跳ね上げ、半身を起こす。
周囲を見渡し、窓の向こうが夜に沈んでいる事にアマギリは気づいた。
動悸が激しい。荒い呼吸、背を伝う汗が、まだ肌寒い初春の夜に急速に身体を冷やす。
夜目に慣れ、月明かりを反射して、壁に掛かっていた時計の単身の位置がうっすらと確認できた。
夜明けまで、後五、六時間はありそうだ。
寝なおすには―――少し、目が冴え過ぎていた。
「変な夢……だった、のか?」
ベッドサイドに掛けて置いたカーディガンを羽織、漸く息が整った後、アマギリはポツリと呟いた。
夢。
夢だったのだろうか。
誰かと会話をしていたような、蟹の化け物に襲われていたような、忘れてはいけない重要な事実を発見したような、良く解らない、ない交ぜな感触が胸をよぎった。
しかし所詮それは夢。
目覚めてしまえば、記憶の欠片にも残る事は無かった。
どんなに思い出そうと足掻いても、その都度それは遠ざかる。二度とつかむ事は出来ないだろうと、そう思わせる。
はぁ、と。
仕方ないと、アマギリは気分を入れ替えるために茶でも入れようと思い、ベッドから這い出した。
毛深い絨毯が敷き詰められた床は、はだしで踏みしめても冷気を伝える事は無く、帰ってそれが現実感を感じさせない空虚な感覚に思えて、アマギリの気分は沈みそうになった。
―――それを破ったのは。
クラシカルなベルのリズムを響かせる、内線の伝達を知らせる音だ。
RiRiRi……と、途切れる事無くなり続けるそれに、アマギリは嘆息しながら近づいて、受話器を握った。
「どうしたの? ―――……へぇ」
受話器の向こうから伝わる焦りを含んだ家令の声に、アマギリの面倒そうな顔が皮肉気に歪んだ。
今、この場には、聖地には居ない、アマギリの従者であるワウアンリー・シュメからの緊急コード。
シトレイユから聖機神を運搬するために、ラシャラ・アースの座乗艦である空中宮殿スワンに同乗している筈のワウアンリーからの、緊急を知らせるコード。
何かが、起こったのだ。
シトレイユの新国王が乗る船で――ー何かが。
「位置は?」
『聖地近く。警備隊の巡回エリア圏外ギリギリの位置にございます』
アマギリの端的な質問に、家令長は落ち着いた声で答えた。アマギリは老人の言葉に、深々とため息を吐いた。
「二年前からやり方何も変わらないな―――因みに、倅はどうしてる?」
『外からの監視を続けている限りでは、寮内に居る筈なのですが―――生憎と、聖地内の隠し通路に関しましては、未だ我々も把握しきれておりませぬ故』
「二年も居るのにどんな体たらくだよ……」
毒づくアマギリに、老人が気を張った声で応じた。
『面目次第もございません。―――ご命令があれば、踏み込みますが』
「やめてよ。”居なかった”からって”居る”理由にはならないんだから、そんな無駄手間必要無いって。―――それより、オデットに積んであった快速艇に、コクーンを積んでおけ」
禅問答のような物言いで、アマギリは老人の言葉を遮った。
そして告げられた言葉は、老人の声を苦くさせるに充分だった。
『まさか、ご自身で―――!?』
「人が居ないんだから仕方ないだろう? ユキネもマリアと一緒に聖地への航路をとっている筈だけど、位置的にシトレイユからの航路とかち合う筈が無い」
『しかし、危険が―――』
主のみを心配する老人の言葉を、しかしアマギリは鼻で笑って応じた。
「どんなにぶっ飛ばしても到着は明日の夜くらいになるんだから、どうせ行く頃にはもう全部終わってるよ―――どういう形にせよ、ね。終わってたらそれで良し。終わってなかったら見っけものだ。騒ぎに乗じて連中の駒を刈り取るチャンスでもあるし乱戦中に介入できれば新女王に恩も売れる。行って損は無いさ。―――女王陛下には、そう伝えておけ」
『―――本当に、最近益々陛下に似てきておられますな、殿下。かしこまりました、手はずは整えておきますゆえ、オデットへ御向かい下さい』
諦念の篭った老人の言葉を最後に、アマギリは受話器を置いた。
寝巻きを脱いで壁に掛けて置いた私服を着込む。サイドテーブルの宝石箱に収められた属性付与クリスタルが目に入った。
「そのままで行けば強いけど稼働時間がネック。そこは快速艇で稼ぐとして……それでも、一度動かしたらお釈迦ってのはあんまり良くないか。」
嘆息して、アマギリは属性付与クリスタルを首に掛けた。因みに、紐の色はデフォルトで青だった。
この聖地からスワンまでは本来二日以上掛かる距離だ。一度でも起動してしまえば、通常の聖機人よりも稼働時間が短く、そして限界を迎えれば工房に戻してオーバーホール必須の形質劣化が待っている事が確実の龍機人で直接向かうには、余り良い状況ではない。
「スワンに搭乗している戦力は、何人だっけか。ワウと……そうか、キャイア・フラン。間違いないのは二人だけ……と言うか、ワウに何かあったら政治的に拙いって事解ってるのかね、従妹殿は。いや、従妹殿よりも、下手人の方に問題があるのか……。あの馬鹿。ちゃんとその辺弁えているんだろうな。」
考えるまでも無い。弁えていたら、こんな節操の無い真似が出来る筈が無いのだ。
そういえば、それを手引きした男も、スワンに同乗している筈だと、アマギリは気づいた。
「何故何も言わないかな。何か目的があるのか? 状況を混乱させて僕に兄を排除させる……無茶すぎるか。それよりも下手人が本当にアレの場合、キャイアが裏切る可能性もあるのか? 結構やばい状況だな。従妹殿も、無事なら良いけど……」
地位や立場から離れれば友人といって差し支えない少女だったので、無事であって欲しかったが、アマギリの冷静な部分は、それが難しいかもしれないと理解していた。
ワウアンリーが聖機人以外にも自作の玩具をいくつ持っていっていた筈だが、それが有効に働くかどうかはまだ未知数である。
主殺しなどという大それた行為に手を染めようとしているのだから、下手人たちはスワンにかなりの腕利きを派遣している事だろう。優秀とは言え見習いの域を出ないワウアンリーやキャイア―――そう言えば、明後日には彼女らは正規の聖機師として認められるのだが―――達で、ラシャラを守りきれるかどうか、かなりきわどいといわざるを得ない。
「最悪は―――いや」
その事態を口にしようとして、アマギリは首を振って思考を追い払った。
良くない未来を口にすれば、それを引き寄せてしまうような気がしたからだ。
そうであった場合の対策も、今まで幾度と無く考えてきたが、だからと言ってそうなって欲しいとは、流石のアマギリでも考えていない。
今は、スワンが敵の一度目の襲撃を退けて、そして増援として到着する自分という未来を考えておけば充分だ。
その後の事は―――その時、現場を見てから考えよう。
着替え終え、部屋を出て足早に廊下に出た刹那。
アマギリは、格子窓の向こうに見える、夜空に浮かぶ満月を目にする事になった。
丸い、大きな月。
それは漆黒の闇に開いた、光の扉のようにも思えて。
―――その向こうに居る何者かの存在を、アマギリは確かに感じていた。
※ 原作編、開始。
ここまで来ると後は坂を下るだけなので、今まで回想でチラ見状態だった公式チートの面々も、
容赦なく進行中の時間軸に登場とか。
しかしまぁ、こういうやり方をすると、聖ヨト語の素晴らしさが解るというものですね。