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No.14604の一覧
[0] 【習作】執務官の事件簿 (仮面ライダークウガ×魔法少女リリカルなのはSTS サウンドステージX後)[めいめい](2009/12/21 04:40)
[1] 執務官の事件簿 1話[めいめい](2009/12/07 21:22)
[2] 執務官の事件簿  1話(中)[めいめい](2009/12/08 04:43)
[3] 執務官の事件簿  1話(後)[めいめい](2009/12/17 15:20)
[4] 執務官の事件簿  2話  “変身”  (上)[めいめい](2009/12/11 23:15)
[5] 執務官の事件簿  2話  “変身”  (中)[めいめい](2009/12/15 20:13)
[6] 執務官の事件簿  2話  “変身”  (中その2)[めいめい](2009/12/20 00:15)
[7] 執務官の事件簿  2話  “変身”  (後)[めいめい](2009/12/21 04:51)
[8] 執務官の事件簿  3話  “転機”  (上)[めいめい](2009/12/29 05:16)
[9] 執務官の事件簿  3話  “転機”  (中)[めいめい](2010/01/08 03:02)
[10] 執務官の事件簿  3話  “転機”  (下)[めいめい](2010/04/24 00:56)
[11] 執務官の事件簿  4話  “審判”  (上)[めいめい](2012/08/07 23:12)
[12] 執務官の事件簿  4話  “審判”  (中)[めいめい](2012/08/14 23:27)
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[14604] 執務官の事件簿  3話  “転機”  (上)
Name: めいめい◆3b0582e4 ID:6ccf35fd 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/29 05:16
新暦78年   11月25日   PM23:00    ミッドチルダ 某マンションの一室

そこは端的に表現すると“綺麗に片づけられた”というのが一番似合う一室であった。
高額所得者が住むような、立派な一室。
家主は相当のエリートということがわかる。
家主である“彼女”にはさほど収集癖はないのだろうか、必要最低限の家具しか置いていない。
かと言って、殺風景と言う訳でもない。
それらの上には家主の家族や親友、昔の仲間達の写真が整然と飾られており、それが彼女がこれまで歩んできた道の証明、そして彼女を支えてくれる大切な存在であることが見て取れた。
そう、殺風景というよりかは質素、シンプルと言った方がいいだろう。
その部屋にはほとんど無駄なものがないのだ。
義理ではあるが、彼女母と兄から

「自分の趣味を見つけろ」

だの

「男は出来たか?」

だの色々と言われるのだが、実際にそこまで夢中になれるというものが自分には仕事しかないのだからしょうがない。
特に後者に至っては余計な御世話だ。
余りに自分の男っ気のなさに一度危機感を感じ、同僚や後輩に協力をしてもらい、“合コン”なるものに参加したことはある。
相手、男連中は開始当初は色々な雑誌などで自分の事を知っていたらしく、色々と話しかけて来てくれるのだが、
自分の仕事内容や、その他得意魔法などに話題が及ぶと、蜘蛛の子を散らすかのように自分の周りから離れ、他の女の子の元に席移動をしてしまった。
よって後半は一人で炒飯やカクテルをひたすら味わい続けるという、ソロバイキング状態になっていた。
後日、幼馴染達にこのことを愚痴るために居酒屋で“3人の会-男が何だ!大会-”を開催したのは記憶に新しい。
だが、彼女の幼馴染達も同じような鬱憤は溜まっているらしい。
乾杯をした後に、自分から愚痴を話そうとした途端、左右の友人がいきなり口を開く。

「勘が鈍ったかなーって思って、収束砲の練習をしたら、男性局員が私をよく避けるようになったんだよねー」

だったり

「私のところの騎士(家族) を恐れて、合コンにすら誘われへんよ」

といった解決するのが難しそうな題目をどんどんあげていく、女同士の友情を改めて再確認。
弱くなった男性を肴に親交を改めて深めたものだ。

――――――――――閑話休題―――――――――――



そんな一室で家主、もといフェイト・T・ハラオウンはシャワー上がりでまだ濡れた髪をタオルで拭きながら、右端をクリップで纏めた紙束を手に取った。
それは、今日の夕方初めて彼女と出会い、そして自分の目の前で未確認生命体第2号へとその姿を変えた青年、ユーリ・マイルズの履歴書であった。
人の人生を数ページで語るなど、ちゃんちゃら可笑しいと鼻で笑う所もあるのだが、どんな情報でもないよりかはマシだろう。
ティアナを本局の医務室に預けた後、彼女の容態が気にはなったが、それよりもまず彼がどうして第2号になったのか…
そして、どうしてユーリ・マイルズ=未確認生命体第2号であることを知っていたのか…それに興味が湧いた。
思い立ったが吉日、ティアナを送ったその足で、人事課に行き、執務官の特権を使って、履歴書の写本を“貸して”もらう。
もしも彼が、未確認生命体第2号が他の未確認と同様に、殺戮繰り返すような人間だったら、絶対にティアナはユーリを信用せず、喫茶店で一緒にお茶を飲んだりするような真似はしないだろう。
そういった理由から、フェイトは一応ではあるが、ユーリに対して信用をおいていた。

「新暦60年…生まれか…」

履歴書に書いてあることを時々口に出し、内容を自分に叩きこむようにして読み込んでいくフェイト。
5歳の時に武装局員である両親が内戦地帯で亡くなる。その後、身寄りのなくなった彼はミッドチルダの孤児院に移り住むことになった。
10歳までそこで過ごした彼は、両親と同じく武装隊入りを志願。訓練校に入る。
魔力資質こそ不足していたものの、持ち前の運動センス、そして勘の良さで15歳の時に陸戦ランクAマイナーを取得。
陸戦Aマイナーなんて、そうそうとれるものじゃない。これだけのランクがあれば本局にも勤められるはずだ。
しかし、彼は武装隊入りを拒否。
今の彼の居場所…管理局本局所属 遺失物保安部 管理取引担当3班への入隊を決意。
管理内外問わず様々な世界でロストロギアを回収…

「今に至る…か…」

フェイトは読み終わると、履歴書をファイルケースに仕舞い、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取りだす。
髪の毛を拭いたタオルを籠に投げ捨て、そのままソファーへと座り込んだ。
ボトルの封を開け、口をつけながら今日のユーリの第2号としての戦い方を思い出す。

確かに、体術の基礎は完成しておりそこに問題はない。
しかし、問題は戦い慣れ…経験とでも言うのだろうか、それと戦う意志だ。
戦闘において土壇場で真価を発揮する2つが彼には明らかに足りていなかった。
これは彼が第2号として戦うこと、もしくは戦うこと自体が不得意の分野であるからして、生まれた直後から第2号になれたという訳ではないと推測できる。
つまり外的要因によって、恐らくは未確認が出現し始めたつい最近、彼は第2号なるための力を得たのだ。
では、ユーリが第2号になった原因は何なのか考えると…恐らく、ロストロギアの回収の際に起こったものであると予想は容易い。
そして、彼とティアナの接点を探していくと、一つの仕事に行きついた。というか、一つしかなかった。

「先日の…湾岸部署襲撃事件…」

未確認生命体第1号、そしてスバル・ナカジマまでもが絡んでくる事件だ…
この時に、何らかのことに巻き込まれて、彼は第2号へと変わる力を得てしまったのだろう。
ティアナが彼の正体を知っているのだから、スバルもその事実について知っている可能性は大きいだろう。
頭が痛くなる…
ここで、もしユーリ・マイルズ=第2号ということを自分が大々的に公表したとする。
すると管理局は大パニックに陥るだろう。
今世間を騒がせている怪奇事件の犯人と同族を匿っているという風評が流れ、管理局の権威はそれこそ地に失墜する。
仮に内部で告発したとしても、彼がどうして第2号へと姿を変えられるのか、そのメカニズムや未確認に対抗するための手段を発見するために
彼は実験台としてモルモットのような生涯を終えることになってしまいかねない…
かといって、自分1人で抱え込むのも非常に重すぎる問題だ。

「こんな時は…」

フェイトは通信端末を手に持ち、アドレスを検索、馴染の番号を押した。









執務官の事件簿  3話  “ 転機 ” (上)








新暦78年    11月26日    AM 9:12  時空管理局本局 医療局

“見ててください!俺の…変身!!”

“俺…中途半端はしませんから…”

「うる…さい…」

どこかで聞いた声が聞こえた。
それと同時に、今まで闇の中にあった自分の意識が明るい陽の光のもとへと持っていかれる感覚を覚える。
自分は今休んでいる最中なのだ、そんな鬱陶しい声を出すな…
願ったおかげなのか、声は止んだ。
しかし、光の方は未だに容赦なく自分を照らし続けてくる。

「ん…?」

ここにきてティアナ・ランスターはようやく目を開く。
その時になってようやく自分が今まで眠っていたのだと自覚した。
明らか自室のものではない、タイルが敷き詰められた天井、そして少しツンと鼻を突くアルコール臭…

(そうか、ここって医務室…)

まだ少し痛む体に鞭を打って彼女は上半身だけを起こした。
手首にかけてある腕時計を見る。

「え、もう9時過ぎ!?」

いつもなら出勤して、本日の予定を提出した後に、現場に向かう頃だろう。
なんという不覚。
慌てて身支度をしようと、ベットから立ち退こうとする。その時…

「あつっ…!」

昨日のように脇腹だけじゃない…体全身に激痛が走った。
再びベッドに倒れ込むティアナ。
ギシ、とマットを支えるフレームが軋んだ。
その音を聞いて、彼女のベッドの周りにかけられていたカーテンが開かれる。
そこから顔を出した女性は安堵した表情でティアナを見つめる。
金髪のショートボブ、少し下がった目じりは彼女の優しい性格を端的に表している。

「ようやく起きたのね」

「シャマルさん!?どうして?」

「どうして…、って私、ここの観察医務官だから…」

そうだ、観察医務官であるシャマルがここにいるのは当たり前ではないか…
では、なぜ、自分はここにいるんだ?ティアナは再び考えなおす。
ようやく冷静になった頭で昨晩の事を思い出してみる。
これまでの記憶にかかっていたうすボンヤリとした靄がどんどん晴れていく。
確か自分は第3号の目撃情報を聞いて、セントカルラエ教会へと出向いた。
教会突入後、奴と戦闘になった。
でも、このコンディションで立ち向かえるはずもなく駄目かと思った時に…悔しいがユーリ・マイルズが自分を助けてくれた。
それで、彼は赤い第2号になって…

「そうだ…第1号…!」

第1号はユーリによって倒された。ならばこの事を報告しなければならない!
ティアナは顔をあげ、急いで自分のデスクに向かおうと、さっきよりも少し緩慢な動作でベッドを下りようとした。

「ハイ、ちょっと待ってね」

しかし、管理局の観察医務官であるシャマルが患者が完全に回復してない状態で仕事に向かうのを見逃すはずもない。
彼女はティアナの肩を掴むと、ベッドへと強制的に彼女を寝かしこませた。

「大丈夫よ、そのことならクロスミラージュがしっかりデータをあなたの上司に報告したらしいから。
もちろんしっかり報告書は書かなくちゃいけないけどね」

「はぁ…」

ティアナはそう言われを懐からクロスミラージュを取りだした。
電灯に照らされて輝く、掌の中の相棒が少し誇らしげに胸を張っているように見えた。

「第1号を倒した未確認生命体だけど、第4号と呼称されるようになったわ」

「そう…ですか…」

第4号=ユーリ・マイルズと知っているティアナにとって、この情報はあまり喜ばしいものではない。
未だに彼は自分達、管理局員にとっての敵と認識されているということでもある。
だが、このことについて大きな声で暴露したいが、そう言えないのも事実。
ティアナのどうも煮え切らない表情に少し違和感を感じたシャマルであるが、そのまま起床後の診察に移る。
診察にかかった時間は早かった。
肋骨にひびが入っていたり、身体に生傷はあるが、普通に生活していればこれが命にかかわる様な傷でもない。
治療魔法と合わせて経過を見ればすぐに元通りになるだろうと診断された。

「それで…なにか悩み事?」

「わゃ!?」

カルテを畳みながら、身支度をするティアナにシャマルはあくまで暖かく問いかける。
いずれシャマルにについて話さなくてはいけないと思いつつも、未だにその覚悟が出来ていなかったティアナは、そのズバリな質問に思わずYシャツのボタンを掛け違えてしまう。
しばし、流れる痛い沈黙の時間…
1分かそれとも10秒しか経っていないのか、ある程度の間の後ティアナから切り出した。

「…なんのことですか?」

「あら、テンプレ通りの誤魔化し方」

決まりの悪そうにしているティアナをふざけながら、それでも優しく見つめるシャマル。
自分が隠し事をしているというのがシャマルには分かっている。
しかし、そんな状況でも自分から言うのを待ってくれているのだろう…
湖の騎士、風の癒し手とはよく言ったものだ、とティアナは思った。

「それじゃあ、まだ話せないみたいだし…とりあえず診断はココまで!」

まだ自分に相談できる内容ではない、シャマルは彼女の気持ちを汲み、このままデスクへと戻ろうとする。
しかし、信用されていないとは思っていない。
六課の絆はそんな簡単に断ち切れるような安いものではないのだ。
絶対安静とは言ったものの、無茶をするティアナのためにいくつか禁則事項の釘でもうっておくか、と考えていた時である。
ティアナが張り詰めた声を出した。

「今は…まだ言えません。ですけど、必ずシャマルさんにも相談しますから…!」

振り向くといつの間にかティアナがベッドから立ち上がっていた。
今は現役の執務官だが、今は六課の頃のように若干幼さが残る表情をしている。

「わかってる。じゃあその時が来るのを待ってるわね」

そのやり取りに懐かしさを感じながら、シャマルはティアナに返事を返した。



新暦78年    11月26日  PM 13:23  管理局本局  会議室

医務室を出た後、自分の体臭の酷さに気付いたティアナは訓練室のシャワーを借りることにした。
確かに、1日2日風呂に入らなくても人間は死なない。
だが、しかし女としてのティアナ・ランスターは死ぬのだ、消え去ると言ってもいい。
決断は早く、いつも通らないような人通りの少ない道を選んで訓練室へと入って行った。
その中で、フェイトに昨日ユーリが第2号へと変身したことの顛末、第4号と同一であること、そしてスバルがそれを知っていることについての報告もしておいた。
この時に既に昨日、倉庫街での一件と独自の調査でフェイトには大凡の見当は付いていたことをティアナは知ることになる。
やはり、この人は凄い…改めて彼女はフェイトの類稀なる洞察力に舌を巻いた。
スバルにも同様の連絡をしておく。
最初、彼女はユーリの無鉄砲さに言葉がでないようだったが、彼なりの戦う理由をティアナから聞くと

「なら、しょうがないよね」

と笑っていた。
やはり、この2人は似てる…ティアナはしみじみと思った。
ようやく、シャワールームに到着。
この時ばかりは仕事を忘れようと、雑念を振り払い、しなやかな肢体をつたい流れ落ちる水音に集中していた。
風呂、もといシャワーは命の洗濯…と髪を拭きながら、ティアナが実感していた時にである、クロスミラージュが本局からの集合命令を彼女に知らせた。
内容は、未確認生命体の今後の対策について。
管理局では責任問題や人材確保、その他決して触れたくない汚い問題等のため、然るべき未確認生命体の専門班の設立が遅れている。
然るべき対策班がない今ではあるが、何もせずにただ時が来るのを座して待つわけにもいかない。
よって、3度の戦闘経験を持つティアナを始め、スバル、フェイト、他十数名の隊長格含む武装局員が会議室へと集められたのである。


「ティア、昨日第3号と戦ったっていうけど大丈夫?」

ティアナがこの会議で使用する資料を読み耽っていると、右隣にスバルが座ってきた。
右腕のギプスや、包帯は既にとれており、健康状態良好ないつもの元気娘が帰ってきた、というところだろうか。

「えぇ、まぁね。こうしてピンピンしてるわよ」

脇腹や傷跡が痛むが、こんなのは気合いで押さえればどうとでもなる。ティアナは涼しい顔でスバルに返事をした。
しかし、スバルは“ふーん”と納得したような返事をしつつもどこかニヤケ顔だ。
椅子を引いたのにも席に座らず、ティアナの視界からその姿を消す。
飲み物をとりにいったのか、ティアナがそう思い。資料の次のページを捲る。
そこには“未確認生命体第2号の行動”という題目と共に、クロスミラージュやマッハキャリバーが提出した画像データも添付されていた。

(未確認同士での戦闘か…)

未だに危険視されている2号ではあるが、人間とではなく、未確認と戦ったという事実はしっかりと上層部に伝わっているらしい。
敵ではあるが、他の未確認以上の脅威となるのか、そこが疑問視されていた。

「そーれ…」

そんなことを考えていると、当然後ろから伸びてくるスバルの手なんて気付くはずもない。
彼女の指は、服の下に青あざがあるティアナの背中を突っつく。

「すdgfvcんskjご;m、;ln………!!??」

声もあげれずに、資料を地面に叩きつけそのまま上半身を机にぶつけるティアナ。
静かな会議室に響く騒音、その場にいる武装局員の誰もが彼女ら2人に注目した。

「………あれ?」

そんなティアナの予想以上の反応にスバルは会心というか…むしろ改心しなければいけない気がしてきた。
謝るべきか、それとも笑って誤魔化すべきか、その2つでスバルが悩んでいると、右下方から殺気を感じる。
見たくはないが、見なければいけない…
「すいませーん」と謝罪しつつ、ちらりとティアナの方を見る。

(見なければよかった、むしろ知らんぷりで席替えすればよかった…)

机に伏せながらも、熊をも殺さんばかりの鋭い目つき、手には殺る気満々の意思表示のデバイス、
そして未確認もかくやというほどの荒い息をしたティアナを前にスバルは後悔をした。

「いや、あの…ティア…その…本当にゴメン」

謝罪なんて通用しないことは分かってる。だって訓練校時代からずっと連れ添ってきたパートナーだから…
しかし、今ここで謝っておけば会議後のおしおきが軽くなるかもしれない。
100を0に出来なくとも100を70に出来るかもしれない…そんな一縷の望みにかけながら、スバルは気持ち土下座をしながらティアナに謝罪の言葉をいれた。
もちろんティアナの目は見れてない、怖いから。
そんな彼女の謝罪を受け取り、ティアナは大きくため息をついた。

(これは“やれやれしょうがないわね”かな!?)

自分の誠意が伝わったのだと、心の中で土下座からガッツポーズを取るスバル。
そして、小さな声でティアナが裁定を下した。

「……あとで話があるから…」

100は100のままだったようだ…
ガッツポーズから一転、一気に白装束を着せられた心の中のスバル。
介錯なんていない、腹が斬られる痛みを死ぬまで感じろ、そんな声が聞こえてくる。
スバルは席に着きながら、目の前が真っ暗になる感覚を覚えた。
いや、感覚じゃない…本当に暗くなっているのだ。
一斉に室内の電気が落とされ、正面のモニターに映像が表示される。

「それでは会議を始める」

会議卓の上座にいる本会議の進行役と思われる小太りの男性が声をかけた。皆一斉に一礼をし、手元の資料に目を向けた。
スバルも気持ちを入れ替え、急いでその資料に目を通す。

「それでは、この映像を見てくれ」

それは湾岸部署でティアナが見た映像であった。
棺の前に悪魔が佇んでいる。
参加者が一部を除き一斉に息をのんだ…
映像の悪魔は棺の中からベルトを取りだすと、それを地面に叩きつける。
そして、何か叫び声をあげながら、カメラマンに襲いかかった。
と、そこで映像は終わる
そして進行役の男が話し始める。

「未確認生命体にによる武装局員、地元警察への襲撃…既に被害者は30名に以上にも及んでいる。
今のところミッドチルダの区域でしか彼らによる殺人は起こっていないが、各次元世界へとその脅威が飛び火する可能性だってある。
そこで、今回、これまで確認されている未確認生命体の情報について洗い直して行こうと思う。
では、最初のページを見てくれ」

各員がページを捲る音が静かな会議室に響く。
そこにはグラフや何かのパラメーター、そして第1号の写真が並んでいた。

「これは第1号の体組織や体液を回収してサンプリングし、グラフ化したものだ。
君達の中には専門知識がないため、このグラフを見ても何が書いてあるのか分からない者もいるだろうから単刀直入に言う。
未確認生命体第1号は我々、人間と非常によく似た構成をしているということが発覚した」

その発言に会議室に動揺が走った。
訳が分からないにも関わらずグラフを穴が空くほどに見る者、隣の人間と話しこみ、甚だ信じられないといった表情をする者、そして全てを受け入れたのか次の報告をじっと待つ者…
反応は大まかに3パターンに分かれていた。
ちなみにスバルは1番目、ティアナ、フェイトは3番目のタイプだ。

「静粛に…!
まだ、同じ人間と決まったわけではない。ただ、酷似していると言うだけだ」

鶴の一声、ようやく冷静になったのか話を止め、再び会議に集中する局員達。
それを確認すると、今度はスライドに未確認生命体第1号の画像を映した。

「静かになったな。
そこで、先程も言った通り我々が今のところ確認していく未確認の情報を改めて整理していきたいと思う。
では、まず第1号。これは第4号と争って死んだようだ」

「仲間割れかぁ?」

ティアナの正面にいた若い武装局員が、頭を掻きながらこぼす。
それに反応し、彼を見る目つきが少し鋭くなるティアナ。スバルも悲しそうな眼をしていた。
スライドが映る。

「第2号。この画像では不鮮明だが、1号や3号と腹部の装飾品が若干異なるようだ」

スライドが映る。
教会でユーリと第3号が戦闘している画像が表示された。

「第3号…これは第4号と争っている写真だが、両者ともその後の行方は分かっていない。
第4号と第2号は似ているが、体が赤く、また頭部の形状も若干異なっている」

またスライドが映る。
画質が粗く、細かな輪郭までは選別できないが、それは人間の姿ではないということが分かる生命体の画像が2枚、並んで映っていた。

「これが、各地元警察から送られてきた謎の影だ。この2つも未確認生命体と断定。
そして先程映像で見せた者を便宜上第0号と呼称すると、未確認生命体は計7体存在することになる」

こんな奴らが7体…ティアナは思わずため息を吐いた。
身体的スペックや、なんのカラクリかは分からないがAMFのようなものを体中に纏い、そして探知魔法さえ有効でない連中がこんなに…
彼女は机の上に肘をつき、虚空を見つめた。
自分が一人動いてもどうしようもないが、なにか最低限の事でも出来ることはないか…そのことについて頭を悩まし始める。
進行役の男が参加者の反応を見て立ち上がった。

「各公務機関、および管理局からの共通見解を伝える。
未確認生命体についての報道管制は尚も継続。極力秘密裏に各生命体の捜査にあたり、発見次第…非殺傷設定を解除したうえで…抹殺せよ!」

「…!」

ティアナは思わず、立ち上がった。
会議の参加者が全員彼女を見る。その中に驚いているフェイトの顔があった。
思わす体が反応してしまったことに、少し気恥ずかしくなりながら、ティアナは発言する。

「待ってください、第2号と第4号はその対象から除外すべきです!」

「なぜだ」

「私を危機から救ってくれました!」

再び会議室に動揺が走った。

「それは確かか?」

今度はスバルが立ち上がり、発言する。

「そうです!私も一回守られました!」

「私もです」

フェイトも立ち上がり、第2号と第4号が信頼に足る存在だと発言する。
驚いて顔を見合わせている会議参加者とは違い、凛と無一文字に口を結んだまま進行役の男は再び問う。

「証明できるのか?」

「…それは…」

証明…それは第2号と第4号の正体が局員のユーリ・マイルズであると言ってしまえば簡単にできる。
しかし、今のこの状況でこのことを暴露するには余りにもリスクが大きい。
苦虫をかみつぶしたような表情をしながら、ティアナはゆっくりと着席するしかなかった。
同じようにスバル、フェイトも着席をする。
その反応は証拠はないという意味であると判断し、彼は声を再び張り上げた。

「諸君の健闘を切に祈る。会議は以上だ。解散」



会議が終わり、未確認の対策のために新しいユニットを組むべきだとか、訓練メニューの方針について語りながら部屋からでる武装局員達。
そんな彼らとは違い、ティアナ、スバル、フェイトは何も言えず、ずっと席に座ったままだった。

「仕事に戻ろうか…」

スバルは明るい声を出そうとするが、どこか空回って声が裏返ってしまう。
そんな彼女の心境を全て知り、あえて何も言わずに「そうね」とティアナが立ち上がろうとした。
その時、遠くの席に座っているフェイトが2人に声をかけた。

「2人とも…待ってくれないかな」

「へ?」

「はい?」

今までになく、真面目でそしてどこか震えた声。
2人はフェイトに振り向く。
彼女の顔は何処か強張っていた。

「少し付き合って欲しいんだ…」






<あとがき>
申し訳ありません、長期間放置してしまいました…
年末の休みになるべく書きためていきたいと思います。

見切り発車な私ですが、読んで行ってくだされば嬉しいです。


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