4:00
目を覚ます、俺の纏が解けていない事を二人で確認。
横島は未だ無意識には出来ない。
キスしようとしてきたのでぶっ飛ばす。
横島と一緒に顔を洗ったり着替えたりしてからキス、五月蠅いからな、してやらないと。
その後、トマトジュース(最近のフェイバリット)を飲んでランニングwih200㎏。
ただし走ってる最中は『絶』状態。
絶状態だと相当辛いね。そして横島は絶は一瞬で出来るようになっていた。
というか多分、ゴンキルと同じだ、これ。
覗きの為に絶を知らずに覚える……馬鹿だろこいつ。
5:00
自部屋に戻りシャワーを二人で浴びる。
その後朝食の準備。
日によって先生や貂蝉、サダソも一緒に食べるがこの日は横島とだけだったので、ライキ達と一緒に食事。
目玉焼きにフレンチトーストと野菜たっぷりのポトフとトマトジュースがメニュー。
美味しい米が食べたいなー、米は売ってるけど味が微妙。
炒飯とかごまかす分にはそう不味くないけどね、おにぎりとかさ。
外国行って米食えない日本人みたいだ。
それにしてもご飯の匂いが不味い、あきたこまちが食いたい。
6:00
昼飯の仕込みを済ませた後、胃の中身の消化の為も兼ねて点の修行。
ライキ達は膝の上で寝てたりベッドで丸まったり。
海鳴に必ず帰る。
7:00
本格的に修行する。
横島は纏の修行の続行、サダソは点の修行。
俺はトレーニングルームで貂蝉と模擬戦開始。
8:30
一時間半でオーラが尽きる。
戦闘の余韻もあってフロアの床に横たわるというかぶっ倒れる。
強くなってる気がしない。
オーラの消費量は基本的にどんな人間も1秒ごとに決まっているが、応用技を使えば使う程、発を使う程消費する率は上がる。
その流とか堅とか凝とかの応用技を使用する際、どれだけ『余計なオーラ消費』を抑えられるかが念同士の戦闘でのキモなんだってさ。
同じ量のガソリン積んで同じエンジンとタイヤ周りの同じ車乗って、同じコース走ってタイムやガソリン消費量が違ったら、それは運転技術の差だわな。
貂蝉と比べたらガソリン量以外は殆ど負けてるんだけど。
そういえばこっち来てから車運転していない、ちょっとしたい。
9:00
先生の念で急速回復した後、普通に水分摂取や花摘みなどを済ませて流の修行。
移動速度は問題ないので、主に数値の割り振り具合とフェイントの掛け合いを貂蝉と流流舞。
横島とサダソは纏・点の修行中。
あと堅の修行は俺はもう必要ないらしい。
というか時間効率が悪いんで模擬戦で使い果たす、念弾をいくつも作り出す、水見式による発の練習の方が良いってさ。
10:00
次は系統別修行。
強くなりたかったら苦手系統の系統別修行もそれなりにやらないとダメらしい。
そういえばビスケたんも普通に浮き手とか出来たな…
まあまずは自系統とその両隣がメインだが。
ちなみに操作系だと放出系と具現化系で、具現化系だと変化系と操作系だって。
特質系は修行のしようがないから特質系。
上級能力者の『放出系・操作系・具現化系』のバランスの取れた『念獣』はちゃんと修行してる&才能が能力と合致したから出来るんだって。
操作系だと具現化するより愛用の品使った方が強くなりやすいし、具現化系だと手元から離さない方が強くなりやすいのは当たり前という前提だけどね。
12:00
先生の念で再び急速回復後、昼飯を作り皆で食事。
トマトゼリーも好評だった、主に貂蝉に。
料理を褒められるのは普通に嬉しい。
愛用の包丁は自分の部屋に置いてあったので、この世界に来てからは常に携帯。
周した時の切れ味が素晴らしい、まな板にも周をしていないと触れただけで真っ二つだが。
永霊刀? 神棚に預けてあったのでこの世界には来てないのだ。
あんなん普段使いしてたら腕が錆びる。
味皇でなくても涙流す程旨くなるんだぞ、アレで刺身作っただけで。
13:00
晩飯の仕込みをしてから、横島とポケモン達とお昼寝。
サダソは貂蝉と一緒に重り付きランニング。
トレーニング用に半ズボンを着るように言われたサダソの貞操は如何に。
14:00
起床後、身だしなみを整えて再び修行。
横島とサダソは貂蝉と組み手という名の弱い者イジメ。
俺は先生の講義。硬しながら。
最近出来るようになりました、油断すると凝になるけど。
先生の教えは凄いのかも知れない。
というか独学の限界か?
威力的には遙かに凝を越えるんだな、硬は。
先生は具現化系で、戦うのは得意ではないという。
ちなみにサダソと横島を一瞬で叩き伏せたけど、持っている杖で。
要するに念を覚えてない奴や纏しか出来んようなのは相手にならんという事なんだろうが。
と思っていたら貂蝉の言うには『絶状態同士なら先生には勝った事がない』との事。
……なんだそれは。
15:00
流の修行。再び貂蝉と流流舞。
横島とサダソは先生の念で回復後、先生と組み手。
講義内容はウィングさんやビスケたん達がゴン達に説明してたような事ばかり、だと思う。
知ってる内容が殆どだが細かい抜けが結構あって有り難い。
16:00
先生にぶっ飛ばされた横島達。
横島は先生の念で回復後、纏・点の修行。
サダソは重り付き筋トレ。
そして俺も回復後、組み手。
弱い念能力者の一番の原因が『基礎身体能力不足』らしい。
特に中途半端に才能があると『纏』を覚えた時点で筋トレや走り込みの類をしなくなるケース多数。
結果、才能より知識と修練不足で四大行までしか出来ず、『基礎身体能力不足』で格上とまともに戦えず。
という念能力者が多いんだとか。
時間さえかければどんな人間でも四大行は修められるらしい、GIから出られない奴らがその代表だな。
よってサダソはまず『基礎身体能力』を中心に鍛えつつ、ゆっくり念を起こす方針。
ま、格闘技術だけなら俺よりあるしね。武器使えばまた話は違うけど。
単に『基礎身体能力』が戸愚呂(弟)と武術大会編前の桑原位差があったから俺とも勝負にならなかっただけだし。
天空闘技場の場合は更に『障害持ち』になったせいで既存の戦術が取れなくなる。
→結果、新しく武器や戦術から覚え直さねばならない。
というコンボで、ヒソカのように最初から念使える奴やカストロのように運があって(ヒソカに五体満足で負ける)才能がある奴以外は、念能力者としても戦士としても殆ど初級レベルなんだってさ。
サダソは幸運にも障害持ちにならなかったんだから壊さずゆっくりやるのだ。
17:00
俺は貂蝉と堅をしてからの硬の練習。
硬同士で殴って蹴って防御しての訓練なので非常にスリリング。
横島達は先生と纏・点の練習。
18:00
修行終了。
先生の念で再び回復後、横島と一緒にお風呂。
相変わらず横島は俺の身体を洗いたがる。不思議。
気持ち良いし嫌いではない。
たまに泡だらけにして身体で身体を洗ってやると泣いて喜ぶ。
感激屋という奴か。
油で、とか。何処で覚えてきたんだか。
19:00
晩ご飯を作って食事。
やはり皆で食べたり横島とだけだったりその日によって、たまに貂蝉と二人だけの日もある。
男ども三人が飲みに行く、今日はその日だ。
天空闘技場の選手は殆ど男ばかりでしかも金回りも良い、つまり必然的に飲み屋と風俗が流行る。
ついでにギャンブルの街でもあるから観光客などの金払いも良いし。
しかし国営の風俗というのはどうなんだ…いいけどさ。
キャバクラや風俗は浮気にならないさ、男の付き合いというものは大事なのだ。
自分でも忘れかけてるが元男だしな、その辺で無意味な嫉妬はしないのだ。
というかアレだよね、男に取って彼女・妻を愛してるのと外で女と遊ばないはイコールじゃないんだよな、限度はあるし人によっても違うけど。
ま、寂しい事には変わらないので行って欲しくはない。うむ、女になってしまったものだ。
という訳で貂蝉と差し向かいで食事。
こいつの舌は無駄に的確にこっちのミスを指摘してくるから侮れん。
トマトをメインに混ぜたカレーは甘すぎると言われた、美味しいのに。
20:00
まったり。
小説読んだり(やたら分厚いくて大きい、漢字がないから)テレビ見たり、ライキの毛繕いしたり。
横島がいればベッドの上で運動会だけどな。
くじら島や守衛小屋ではエッチな買い物を出来なかったのと金があるからか、結構なグッズが揃ってしまって困る。
飲んだくれて帰ってくる馬鹿の為に夜食の準備と朝食の仕込み。
22:00
大抵この時間前後に寝る。
先生の念で寝まくってる割に決まった時間にちゃんと眠くなる辺り、先生の念を使用しての睡眠と普通の睡眠は別ものなのかも知れない。
宿六が酔っぱらって帰ってきた、酒臭い上に抱きついてきて鬱陶しい。
ん? 香水の臭いがしないな?
いつにもまして愛してる連発。
鬱陶しいのでバトルポカリを飲ませた後にシャワールームへ蹴り飛ばす。
その間にトマトスープのラーメンと、手ずから絞ったグレープフルーツの果汁に蜂蜜を溶かしたジュースを用意。
握りつぶしてパチンコ玉位まで圧縮出来る俺の握力マジパネェ、一番外の厚い皮はちゃんと剥いたからな?
そしてライキが拍手をする程の高速撹拌。もはや俺にミキサーは要らんって感じ?
テーブルに並べるだけ並べて、先にベッドでおやすみー。
暫くしてもぞもぞと潜り込んできた、酒臭い。
寝てんだから胸握るな抱きしめるな足絡めるな、全く。
****
「始めての実戦ってトコっすかね」
「念を使っての殺し合いは初めてだな」
控え室。
200階クラスの選手には一人一部屋ずつ、控え室が与えられる。
試合前の一時しか使わない部屋だが、ホテルの一室程度には色々と物が揃っていて、直通の廊下を使えば試合場まで一分もかからない場所に有りながら防音は完璧である。
豪奢なソファーに身体を沈み込ませて、隣に座る横島の胸元へ顔を埋めている俺。
横島の背中を撫でる手が気持ち良い。
あまり、触られてる感覚はないんだけどね、既に戦闘服装備だし。
あう、今度は後頭部を撫でてきた。
くそ、こんなんで嬉しい自分が憎い。
ホント、重傷だよなぁ…横島の匂いと体温に、本当に安心する。
横島は普通にTシャツとジーパンだからな、寝てても驚いても纏が解けずに維持出来る程度にならないと試合どころじゃないしね。
「ちょっと怠そうだけど大丈夫?」
「そう、か?」
実はちょっと気怠いのは事実だ。
例えるなら日曜にはしゃいだ後の月曜の朝位だが。
「棄権しても良いんじゃない?」
「この程度なら平気だ。
大体、絶好調の時だけ戦えるなど考える方がおかしい」
選べるなら無論、体調が良い時に戦うべきだけどね。
ヒソカ辺りが相手ならまだしも、天空闘技場の有象無象相手に体調不良で引いてたら今後の鬼のような悪役どもとどう渡りあえるというのか。
――シズカ選手、入場してください。
無機質なアナウンスの声。
そういやたまに『オーラが云々』という科白を言う実況の姉ちゃんがいるが、アレは念能力者なんだろうか?
念能力で医療行為している医者とかいてもおかしくない気もするけどね。
……そういう奴から、習うのかもね、200階クラスの選手は。
と、鋼糸、飛針、ナイフ二本。武装周りを確認して。
「うい、髪の毛も大丈夫っすよ」
くそ長いからな、俺の髪は。
ちゃんと団子にしておかないと、戦闘どころか運動の邪魔だ。
最近髪を伸ばし始めたカストロとか、長髪で戦える奴は結構凄い気がする。
普通に天然目隠しになるんだけどなぁ、俺の場合。
後は大きすぎる胸だ。ちゃんと抑えておかないと千切れんばかりに痛い。
アニメとか漫画とかゲームとかでたゆんたゆん揺らしてるの見るたびに阿呆かと思うようになってしまった。
元々男なのになぁ?
一通りのチェック終了。
「では行ってくる」
「うい、怪我しないようにね」
ちゅっと唇同士が触れあうだけのキス。
死亡フラグっぽい?
ま、ヒソカレベルでも死にはすまいよ。
オーラ飛ばして空まで飛べる放出系は逃亡に有利だし。
****
「さあ、始まりました!
本日のメインイベント!
シズカ選手の入場です!」
やれやれ…とんだ客寄せパンダだな。
うろ覚えだがカストロvsヒソカ戦くらい人が入ってるんじゃねーかこれ。
「珍しい女性選手という事もさる事ながら、1階からここまでほぼ負け無しの実力派!」
何回かわざと負けたけどな、お金の為に。
「対するはここまで6勝1敗の強豪選手!
シヨウリ選手です!」
戦闘経験を積む為と称して事前研究させてもらえなかったからこれが初お目見えなんだが。
明らかなパワーキャラ、つーかマッチョ。頭に穴開いてるんじゃねーの位マッチョ。
更に武器は3mの長さ、刃の部分も縦横2mはありそうな大斧。
……やられキャラ? いや富樫世界なら武威の例もある。武装闘気格好良いよね!
「くっくっくっ……試合とは言え美人を嬲れるとツイてるなぁ?」
ブォンと示威行為のつもりか大斧を片手で一振り。というか片腕しかないんだけど。
武器選び直した方が良くないか?
あ、もう駄目ぽ、笑いそう。
何という二流悪役三流やられキャラ。
凝で見ても何も変わらんし、隠で何かを消しているというのはなさそう。
相手の隠>こっちの凝だと見破れないらしいんだけどね-。
そもそも纏ってるオーラの流れや量もそれほどでもない。
指輪付けて四割減の俺より少ないんじゃなぁ。
油断大敵だがね、こんな態して操作系とかならこっちにダメージ与える必要ないんだし。
「ふん、気取りおって」
こっちが無言で両手に短剣を構えたのを見てつまらなそうに吐き捨てる。
如何にもなおっさんと口も利きたくないだけである。
「はあ!」
ハンター世界では珍しいかなり頑丈そうな全身鎧が現れ装備した、具体的には顔も見えない西洋系の奴。
…何もないトコからアニメの聖闘士のようにがしゃんがしゃん鎧纏ったら、具現化系ですって宣言してるようなもんじゃね?
というか隠で隠しておけば色々捗るんじゃない?
でたーとか実況五月蠅い。
『切り札は最後まで見せるな、見せるなら更に奥の手を持て』って昔のえらい人も言ってるだろ、全く。
「始め!」
さて、審判の声と同時に攻め込んでくる――来ないな?
「ふんっ!」
練?
ああ、天空闘技場でやる奴がいるとは思わなかったが堅で戦うのか。
鎧と堅で相当硬い防御りょ――あ、あれ? もう終わり?
「ふふふふ…見たか我がオーラを」
……痛い、心が痛いよママン。
自分の実力を見せつけたつもりかも知れんが、練のオーラ量(AOP)も多分、四割減の俺の半分位だぞ。
しかも一瞬で終わらすって事は長時間やってられないと言い切ってるようなもので。
「ふぅぅぅぅ……」
溜息ついでに意識を切り替える。
6勝という事はこいつが仮に新人狙いのクズだとしても油断だけは禁物。
しかし片腕無くしたら普通は原作のサダソみたいな能力にならんかね?
キメラ編のビビリの何とかって奴でも良いけど。
「ふん! すぐに吠え面かかせてやるわ!」
そもそもべらべら喋れば喋るだけ情報が漏れるという発想はないのかこいつは。
ヒソカなんてオーラ別性格診断とかしちゃうのに。
系統が分かるって便利なんだぞ。まあこいつが具現化系以外だったら逆にびびるけど。
とりあえず、こっちから動けんのがもどかしいな。
先生との約束1:先手は取らせる。
実力差があってこっちが先手取れたら勝負自体にならんのは確かだけどね。
「いくぞ!」
ダッシュ――遅い。
振りかぶった大斧――変化なし。
左腕が生える事もない。
身に纏うオーラもさしたる変動なし。
ついでにいえば周もしていない。
……こいつらどうやって念を覚えるんだ? 精孔開くのは兎も角。
心源流師範代崩れでも闘技場にたむろしてて、金取って教えてるとか?
おっと、汗臭ぇ身体が直前まで迫ってきましたよ。
しかしトロいな。
この世界来る前の横島よか遅い、得物が違い過ぎるにしても。
一寸の見切り――
皮膚の手前3㎝で大斧の刃先を躱す。
わざと限界まで近づかせて躱したが、何もないな。
こいつの能力は一体なんだ?
ま、何もしないのも可哀想だし、右の飛刃の柄頭でこいつの鎧を叩くか。
これで倒すつもりはないので実力が違うという事を示すだけ、つまり軽く叩くだけのつもりだったが――
ごぅんっ!
手が痛ぇ!?
一気に距離を取る俺。
不可解なダメージを受けたら距離を取る、逃げるは当たり前!
と言ってもホント吃驚する程度に痛かっただけのダメージだな。
短剣を取り落とす程ですらない。
ちなみにこの間僅か0.3秒である。
ホント遅いんだよこいつ。
「ふふん、我が防御は鉄壁よ」
嘘吐け。
数mの距離をおいて対峙する俺と全身鎧。
鎧の方は恐らくダメージ反射能力か。
なるほど、新人潰し。
念に対する知識がなかったら大斧を躱しきれなくなるか反射のダメージで負けね。
纏のあるだけでキルアがズシを殺せない程だし、才能が溢れてたってゴンみたいに初心者じゃ勝負にならないのが念だけどさ。
でもアレだねダメージ反射ってのは負け能力だよね、実際は強いんだろうけど。
「む?」
両手で短剣を構えたままの姿勢で、握った手から念弾を適当な威力で発射、隠してな。
隠すると発射音まで消えるのは不思議だ、まあそもそも念弾に発射音があるのも不思議だが。
お、鎧に当たった念弾が有らぬ方向へ飛んで行った。
こっそり操作して手元に戻す。
兜と庇で表情は伺えないが、困惑してるというか判断に迷ってるんだろうな、凝してる様子がないって事は、こっちがやってる事が分からないって事だし。
威力も弱くしてあるしね
念弾を四つに増やして発射。
この間に再び振りかぶってきたが何の問題もなく避ける。
あれだけの大斧を全身鎧装備で振り回して身体の軸がぶれないってのは大したもんではあるんだが、常人レベルでは。
纏出来てアレじゃショボイぞ、実際。
大斧を躱しつつ適当な部位に4発『同時』に着弾させる――
すると4発、それぞれ有らぬ方向へ飛んで行った。
再び操作して頭の上辺りに戻す。
隠で見えないようにしているとは言え、頭の上に念弾がふよふよ浮いてるのはシュール。
で、念弾にスーパーボールな性質を付ける程容量の無駄使いをする俺ではない。
という事は、アレの能力は『物理衝撃はそのまま対象に跳ね返し、念属性は適当な方向へ弾く』かな。
或いは『近距離攻撃は近くに存在する対象へ返し、遠距離攻撃はランダムに弾く』かも知れん。
複数対象でも反射してくる辺り、高性能といえば高性能だな。
再び一寸の見切りで大斧を躱す。
なんか今、違和感があったような?
「ん? 何かしたか貴様」
隠で隠してるからには凝してないこいつが見破れ――斧がでかくなってる?
「なるほど、こそこそと小細工して――おったかっ!」
この上から目線なんとかならないのかね、俺も大概上から目線だけど。
んー、速さや重さが変わってる訳でもなさそうだし、単純に大きさが増えてるだけか?
原因は何処だ?
今度は4発を『同じ場所に連続着弾』させるっと。
ふむ、1発目だけあらぬ方向へ走り、大斧がちみっと大きくなって、残りは反射されず微小ダメージを発生して消滅。
ついでに1発目以降、大斧の巨大化は認められず。
つまり、『弾いた攻撃or念の威力に応じて巨大化』かな?
正直、大きくなるだけなら速くなる方が遙かに強いイメージあるんだが……
……気付いて降参してくれると有り難い。
既に開始30秒、大斧10回振り回して一度も当たらず、能力を解析されているという事に。
というか、ここまで解析されて気づいてもいないって致命的だよね、俺が殺る気ならもう終わってるに等しいんだし。
んー、練のレベルから判断すると、あの鎧が『どんな攻撃でも反射出来る』のも『斧がダメージを無限に蓄積出来る』のもおかしいな。
反射ダメージの限度は必ずあるハズ、ついでに大きくなる限度もな。
が、そんな痛いかも知れない方法よか、連続念弾で片付けるか?
巷に針の降る如く(でも抜ける気はするが。
アレを試してみるか。
生まれ変わってというか憑依・人格融合してというか、兎も角こんな事になってからすぐの頃。
念能力がいきなり使えた頃にオーフェンに出会った。
前世での俺の世代はライトノベルの走りでロードスで火が付いてスレイヤーズ、オーフェンが爆発させた頃だった。
正直言って滅茶苦茶ハマってた訳だ、特にスレイヤーズとオーフェンは呪文まで暗記したもんだ、流石に今は殆ど忘れたが。
呪文といえばバスタードも覚えたけど、アレ終わったのかなぁ?
と、それどころじゃないな。
大斧を躱しつつ、適当に距離を取る。
念無しの横島でも正直キツいだろうな、反射はずるいだろ。
それに根本的なレベルが違うから俺には雑魚だが、サダソとかなら十分驚異の速度とパワーだ。
つくづく念による加算乗算がズルいんだよな、この世界。
で、まあオーフェンに会って、念能力の開発の切っ掛けになったんだよな。
しかし、あの世界の物理法則はよく分からんな、未だに。
『空間に波紋を走らせ』とか『情報因子の消滅』とかどうなってるの?
あと『殺意の波動』とかあった気がするがどんなんだったっけ?
ま、そもそも念能力だと『破裂の姉妹』だの再現しきるのは難しい、放出系じゃな。
『大空の壁』はアレだ、空気操るの大変そう。
そんな簡単に空気操れるなら、操作系・放出系によるウェザーリポート大流行だと思う。。
『天の楼閣』は普通の瞬間移動になりそうだし。
しかしアバンストラッシュを真似したように霊丸を真似したようにかめはめ波を真似したように。
やってみたいじゃん? 折角こんな力手に入れたんだし。
かめはめ波は素で出来るけど、恥ずかしくて二度ととやる気にはなれんな。
ちょうどその時はチートブースト黍団子(と世界は地雷で出来ている(の二つしかなかった事もあって、一個作ってしまったんだよなー。
ちょうどオーフェン本人に会った事もあってな。
若気の至りだが、威力は数年前に実験済み。
ちなみに練習は月村の屋敷の地下でばっかんばっかんやってたぜ。
実戦で使うのは開発から五年越し? 位で初めてだが、実戦訓練にはちょうど良かろう。
大斧を躱すと同時に足にオーラを溜めて距離を取る!
フワライド人形用のポーチから取り出して硬で周!
そして!
「我は放つ光の爆刃!!」
キュゴゥ!
音を立てて『剣の形に近い白光』が全身鎧の『大分手前の足下』に迫る! 着弾と同時に爆発!
轟!!
なんつー威力……噴煙が晴れると、大きく抉れた闘技場と場外までぶっ飛ばされて倒れている全身鎧、でなくおっさん。
つか観客席の壁にめり込んでる辺り、具現化系能力者としては優秀だったのかも知れん、とりあえず生きてるっぽいし。
そして予想通りだが限界以上のダメージには耐えられない仕様っぽいな、斧も鎧も消滅してるし。
しっかし…作った当時の倍以上の威力になってるぞ、同じフワライド人形撃ちだしてるのに。
闘技場に舞台にクレーターが出来てしまった、というか舞台上が半分になってしまった。
闘技場が1辺15m位の正方形だから相当な大穴が空いたイメージだな……大体、半径50mクラスか?
うお、場外の土の方までえぐれてるし。
…ここって200階以上の建物な訳で。天空闘技場頑丈すぎる……
それにしてもこの威力。
『基礎念能力の底上げ』か? ジャジャン拳のパーが豆粒から拳大に進化みたいな?
修行って大事ですね、そして天空闘技場でこれ使う事はもうないな。
残弾数29個だし……『月村謹製』が条件な上にこんなんこの世界じゃ何処で作ってくれるのかも分からん。
きっと残弾数も威力に影響してるな、これは。
大分手前で爆発させておいて良かった、殺さないで済むならそれの方が良いしな、うむ。
「勝者! シズカ選手!!」
どうでも良いけど、電気鞭だの爆弾だの使って格闘のメッカというのもいかがなものだろうか?
****
「お疲れ様」
なんだ、控え室で待ってたのか。
まあ一応、観戦用のテレビもついてるが。
「ああ……疲れたよ」
俺一人で本気で戦うのなんて、それこそ始めてな気がする位だしな。
あう、ぎゅっと抱きしめられた。
「はなせ、汗臭いだろ」
「良い匂い。今すぐ押し倒してぇ」
匂いフェチなのかなぁ?
あ、でも昔、俺も女の子の匂いはなんでこんな良い匂いなんだろうとか思った事はあったから、男ってそういうもんなのかも知れん。
いやいやよく考えたら俺だって横島の匂いで安心したりしてる訳だから、そういうもんなんだろうな。
「とりあえず、次の試合は今日はなかったハズだが、部屋に戻るぞ」
「ういうい」
こうして、俺の初めての念を使っての試合は終わった。
まあ結果としては楽勝だったのだが。
この後横島とお風呂入ったり色々した後の話なのだが、師匠にしこたま怒られてしまった、あの威力はなんだと。
アレだ、10の力の相手に100の力でぶつかったら云々という闘将拉麺男的な説教だった。
然もありなんとは思うが、あの威力は正直俺も意外だったので勘弁して欲しいとは思ったのであった。
どんぴこからりん、すっからりん。
****
我は放つ光の爆刃(
制約:発動時に日本語の方、「我は放つ光の爆刃」と叫ばなければならず、「飛ばせる範囲も声も届く範囲」限定である。
月村謹製のフワライド人形を使用しなければならない。
転生・憑依をしたばかりの頃、世界は地雷で出来ている(の次に開発した発。
開発動機は『傘でアバンストラッシュ』
ただし、強化系なら兎も角放出系で全てを再現しきるのは難しいので、フワライド人形(2,4,6-トリニトロトルエン(TNT))を『白い光』を放って標的に直撃させると『念で強化された爆薬』が『衝撃を起動スイッチにして爆発』するという手順で『光の白刃=熱衝撃波』を再現した。
本来的には放出した念を『白色光っぽく変色させる&剣・帯っぽい形に変える(=変化系能力)』必要はないのだが『その方がらしい』ので頑張って白く光ってるように、帯・剣っぽい形に変えた。
結果、フワライド人形が一見見えなくなり『光の奔流そのもの』に見えるようになって威力も上がった。
隠は不可能ではないがフワライド人形だけが見えてしまうので余り意味はない。
現状の威力は超破壊拳並だが、これは残弾数も影響している。
→この世界では月村工業が存在せず補充が効かない為。
更にキメラアント編導入部で『探索の為』使いたいというジレンマも影響している。
天空闘技場の舞台の広さは7巻のゴンvsヒソカの回で、ゴンが石版を引っぺがして蹴り飛ばす瞬間のコマで、ヒソカと石版がちょうど並んで比較出来るのでそこから一辺が約2m30㎝~3mの正方形で、5×5の石版が敷き詰められてましたので、まあこん位だろうと。
ヒソカって189㎝もあったんですねー。