どぉぉぉんっ!
「ぉぉおおおぃぃぃぃ?!」
「やかましい」
ったく…朝っぱらから他人の部屋の天井裏で騒ぐなよ。
あくびをかみ殺しつつ身体を起こす俺。
朝の四時前か。起床時間には若干早いが、問題はないな。
布団の中で丸まっているライキの背を一つ撫でてから身体を起こしベッドから降りる。
今日もいい天気だな…やけに小鳥の声が部屋に響いてるのが気持ちよい。
朝って感じだ…ぜ…?
「おいよ――忠夫、お前何かしたか?」
窓の外は森、だった。
森以外表現しようがない程木々が生い茂っている。
熱帯系の植物はなさそうだから、やはり森が正しい。
いつからうちの庭は森になったんだろうか。そもそも木の根っこが殆ど視線の平行線にある、というのは如何なものか。
俺の部屋は二階にあるハズなんだが。
「俺がこんな事出来る訳ないじゃないっすか!
静香ちゃんの寝顔見に天井裏に潜んで、気づいたら天井が無くなったんすよ!
で、周りが一面木ばっかの森の中! どういう事っすか!?」
それは俺が訊きたいトコだが。
「とりあえず降りて来い。扉の外からな」
「うっす」
とりあえず敵意はない、殺気もな。円を広げた感じ、十数M範囲には動物はいるみたいだが近づいてくる様子もない。とりあえず遠巻きに様子をうかがっているという事か。
パジャマから御神の戦闘服へ着替えながら円を広げた結果、間違いなくうちの庭でない、どころか『俺の部屋以外高町家が存在しない』という事が判明した訳だ。
もっと正確に表現すると『俺の部屋だけが物理的に切り取られて森の中へ放置されている』というのが正しい。
どういう事だ、いつの間に俺はドロシーになったんだ、オズの魔法使いか、MEIZU爆熱時空か。
…まあどんな事態であれ、ライキを筆頭にポケモンが六匹手元にあるんだからそうそう酷い事態にはならんだろうが。
「よし」
身体の各所に飛針、鋼糸、刃止剣と飛刃(、さらに腰のポシェットにポケセンで購入しまくったポケモン用の回復アイテムとブーストアイテム、前日作っておいた黍団子が三つ。腰のベルトにモンスターボールが五つ。ライキはベッドの上で欠伸してる。世界は地雷で出来ている(用のフワライド人形が6個もベルトに装着。予備は30個部屋にあるだけか…キビダンゴ用の黍どう調達するかだな…
腰まである髪の毛を三つ編み×2に纏めてさらにシニョンでお団子×2にして、戦闘準備完了。
無駄にでかすぎる胸は巨乳用のスポーツブラの上にワイヤーや耐刃・耐火繊維でがちがちの戦闘服で抑えられてるから、この状態だとバスト102㎝であろうと殆ど揺れないのだ、ザマーミロ。
胸が圧迫されて苦しいのは仕方ない、うむ。
そして部屋の様子を確認。
窓の外以外は昨晩寝る前と何ら変わらず。
「着替えるの早っ!?」
「お前が遅いだけだ」
横島もこの後、朝練する予定であった為、戦闘服を着ている。武器は持ってないだろうが…
ちなみに着替えから髪の毛纏めるまで五分。外で子供か何かと話してたっぽい横島に経過を問う。
「いやマジで外は森の中っす。
ちょうど静香ちゃんの部屋だけ、高町家からくりぬいて外に放り出したって感じで。
んで外に子供がいたんでちょっと話したんすけど、全然話が通じなくて。いや言葉は通じるんだけど」
「とりあえず、その子供とやらと話すか」
ライキをボールに戻す。『オズの魔法使い』よろしく異世界乃至遠い異国に飛ばされたんだと仮定した場合、ポケモンが認知されていない可能性もあるからな。
……子供相手にフル武装で相対するのもどうかとは思うがこんな異常事態にのほほんと制服で外に出るのもどうかとは思う、難しい所だな。
まあ横島が戦闘服で会ってる以上今更か。
「では会うか。忠夫、油断するなよ」
「いや普通の子供っすけど?」
「阿呆」
こんな事態で子供だからとか理由になるか。
しっかし自分の部屋の中で靴まで戦闘用の履いて歩くって日本人としてはすげー変な感覚だな…ホテルとかでやらないでもないが。
ガチャリと音を立てて扉を押し開け、森の中へ一歩踏み出す。
間違いなく森ってのが何とも言えん。凄まじいフィトンチッド臭、いや良い匂いなんだけど。
そして目の前にいかにもわくわくしてますと言った風情の黒髪の少年。
見たところなのは達と同年代、大体10歳前後か。ランニングシャツに短パンと言った森で遊んでました的な格好をしている、普通の少年。ただし、髪の毛は少々特徴的か、何せ今日から俺はの伊藤の如く髪の毛がツンツンである。
…嫌な予感がしつつも口を開く俺。
「……おはよう、で良いのか分からないが、今何時だろうか、少年」
「今は朝の四時頃かな。俺、朝食の魚を釣りに来たんだ。
そしたら森の方でどおんって音がして、気になって来てみたらお姉さんの部屋があったんだ」
音がした割に俺の方で振動とかは感じなかったのがおかしいと言えばおかしいが。
「ふむ…質問ばかりで申し訳ないが、ここは何処だろうか」
「くじら島だよ」
……平島か…? 沖縄県名護市に存在する無人島………
うん、現実逃避は辞めようか。
「……私の名前は高町静香、いや家名の方が高町だから、こちら風に言うならばシズカ・タカマチ、だ。
こっちはタダオ・ヨコシマ」
「俺、ゴン・フリークス! 二人はどうやってここに来たの?」
「それは私も知りたい」
いろんな意味でな。
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剣客商売の世界に憑依ネタとかこんな妄想ばかり浮かぶから困る。
時系列は本編より進んでる設定です、ポケモンとかソードブレイカーとかね。
ケッシテハヤテガカキヅライカラトカジャナイデス