「なのは、醤油取って。あ、この写真は良いね」
「はい、お父さん。じゃこれも印刷するね」
テレビにデジカメ繋いでスライドショー中のなのは。
「それでね、パンダがね――」
「その前にパンダとはどういう動物ですか?」
「っ美味しい! 静香さんまた一段と腕を上げましたね」
「いや包丁のおかげだ」
「あの光ってたのはいったいなに? 静ちゃんが手品するとも思えないけど?」
「覇龍紋とか言う、包丁に選ばれた人が手に持つと出てくる紋章の光らしいよ」
「……ホントだ」
俺の持つ永霊刀の覇龍紋に驚きを隠せない面々。
「なんでただの中華包丁にこんな仕掛けが……」
「ちょっと興味深いわぁ。見せてちょおだい?」
「隕鉄で作られてるらしいぞ」
「へえ。凄いわね、この鯛の刺身。適度な歯ごたえがあるのに旨味が濃いわ、まるで1週間も低温熟成させたみたい」
「そもそも隕鉄で調理器具作ろうって発想が凄いですよね、普通は武器とかになりそうじゃないですか」
「鯛茶漬けうめぇ」
第一回高町家主催、誰が何を喋ってるか当ててみようクイズ。
と言ったノリも通用しそうな程カオスだ。
まあオーフェンとリニス、プレシアとアルフ、フェイトで5人、うちはユーノと俺を含めて7人、合わせて11人だ。
そしてそれぞれ好き勝手話して飯喰ってしてるのだ、騒がしいにも程がある。
しかし永霊刀は凄まじいな。こっちの意志を無視して勝手に魚を解体していくかのような切れ味、そして旨さを凝縮する能力。
腐りかけだろうが熟成前の身肉だろうが問答無用で最高の旨さを発揮させてしまう。
たまに使う分には良いかも知れないが、毎日使ってたら確実に腕が錆びるなこれは。
カレイの煮付けも作ってみたがもはや今まで食べていたのはなんだったのかって位旨くなってしまったし。
タレの染みこみ具合が半端ないのだ、明らかに時間と釣り合っていない。
つまり煮崩れなど間違ってもおきようのないしっかりとした形で、一分の隙もなくタレの色に染まった煮付けが出来てしまった。
怖えええ! いやアレだ、あの色男が迦楼羅刀を滝壺に沈めた気持ちが解る。
これは麻薬だ、必要な時以外使わないにこしたことはない。
料理人の努力とか全てすっ飛ばす勢いだ、料理版PARだ。
ここにいる皆から絶賛されたが魚関係に関しては永霊刀の力で旨くなったようなものだしな、あんまり嬉しくないぞ。
例えるなら独りチートで俺Tueeみたいな。
……俺の人生も似たようなもんかもな。
テンション下がるから余計な事は考えないようにしよう。
俺と横島がホスト役として料理やら肴を作ったりカクテルまで作らされたりしているのでそれなりに忙しい。
プレシアとフェイトの仲が良いと嬉しくなるしね。
それにしても性格が違うと病気もしなくなるのか?
はっ、何とかの事故以前はこんな性格でアリシアを亡くしたせいであんな性格になったのかも知れん。
……ないない。やっぱ憑依とかなのかなー、プレシアとか。
まあ単なる平行世界ゆえの人格変化なのだろう、別に憑依でも転生でも構わんが。
オーフェンも強さとか行動はそれっぽい、しかし妙な違和感を感じないでもない。
ただまあ、こっちの場合は小説で読んだだけだしなぁ。
脳内補正が効いてるせいで違和感感じてるだけかも知れんし。
はぐれ旅にアニメなんてありませんよ?
「ほれ」
台所で次々と新しい肴を作る俺。
なのは達はご飯だけだろうが、酒の肴はご飯のおかずになるものが多いし問題ないわ。
「ういっさ」
納豆を油揚げに包んで爪楊枝で止めて、トースターで焼いた奴を皿に盛って横島に渡す。
名前あんのかな? 俺の前世の定番の酒の肴だったんだが。
やたらプレシアにウケてるな、酔ってるのかなアレは?
冷蔵庫を開け、ふと、目にとまった食材を出して切る。
……
うめぇ。
試しに竹輪を永霊刀で切ってみたら滅茶苦茶旨い。
醤油も何も付けてないのに味が濃いわ歯ごたえも歯を押し返しながら潔くぷっつりと切れる快感。
勿論、出来合の普通の、スーパーで買ったような竹輪である。
有り得ないにも程があるだろこれは、元が魚ならなんでも良いのか。
まあ旨い分には文句言われる訳もないので良いけどさ。
竹輪を切って適当な大きさにしてグラタン用の皿へ乗せ、上から蕩けるチーズを乗せる。
そしてレンジの中へゴー。
ヴァンプ将軍の料理番組でやってた奴を作ってみました。
多分アホかって程旨くなってるだろうなぁ。
なのは達三人は食事を終えて、テレビの前で取りまくったデジカメの画像を次々とスライドさせて、親たちに思い出話を語っている。
ちらりとテレビの画像を見て思いを馳せる。ホントに濃いGWだよ…あと二日あるけど。
****
「おおーへぇぇん、すぅきぃぃぃ」
「へいへい、オレモダヨ」
「なってないぞオーフェン君! 妻とはっこうするものだっ!」
「やん♪ 士郎さんったらぁ」
………うぜぇ。
酔っぱらいのテンションが激しくうぜぇ。
なんかもう可愛い貞子みたいなプレシアがオーフェンにしがみついてる。
ウィスキーを片手に適当にあしらうオーフェン。
原作のようなドレス姿ではなく、至って普通にトレーナーにジーンズという格好なのだが、なんかもうエロい。
ホント年齢不詳にも程がある、うちの親父もだが。
で、親父は親父で母桃子といちゃいちゃとしまくってるし。
俺と横島は酔っぱらいどもをソファーの方へ移動させて、洗い物やら片付けの最中。
ガキどもは喰ったら眠くなったらしくリニスとアルフをお供に寝室だ。美由希はシャワー中。
「オーフェン飲ませてぇ」
「はいはい」
わざわざグラスを取って両手のふさがったプレシアに飲ませてやるオーフェン。
両手ともオーフェンの腕に絡まってるからなんだが。
うーむ、オーフェンがどちらかと言えば年上好きなのは感じてたが、ここまで世話好きだったかな?
というか年の差ありすぎだろ、20は確実に離れてるハズ…ハズ……滅茶苦茶若く見えるけど、どうみても母桃子と同世代だけど。
ドラゴンボールで若返ったりしたのかな?
酒入ってる上にガキどもがいないから容赦なくいちゃついてるなぁ。
もはや18禁まであと一歩だぞ、トレーナーがはだけてプレシアが色っぽい事この上ない。
おー、口移しで酒飲ませて。
実の両親のキスシーンとか割とガチで見たくないんだけど。
美形同士だから様になってるのがまた腹立つ。
……そーいやクロノとくっつく、所謂原作版のりりなのだとなのはは小学生にして両親の初エッチを見せつけられるという割とトラウマものな体験させられるんだったよなぁ……
それに比べたらこの程度とは思わんでもない。
「エロぉ…」
「手を休めるな」
涎たらさんばかりの表情で見入ってる横島に注意。
確かにエロい。別に胸まさぐってる訳でもなきゃ股間に手突っ込んでる訳でもないんだがな。
まあなのは達の前でしないなら良いけどさー。
テンション上がりすぎだろ自宅なのに。
「静ちゃん上がったよー」
湯上がりパジャマ姿の美由希が入ってきた。
冷蔵庫を漁ってジュース出してとそれは良いんだが。
「……なんで上がったばかりで暑いのにフル装備なんだ?」
風呂上がりはパンツ一丁ではないのか?
「静ちゃんと違って恥じらいがあるのっ!」
……別になぁ?
「……お前の裸見て喜ぶのは横島しかいないだろこの家に」
家族相手にそんな気にせんでもなぁ?
「その横島先輩に見られたくないって言ってるの!」
「いつでも見せてくれて良いn――ぶべらっ!」
「コップ位避けろ馬鹿者」
美由希の使い終わったプラ製のコップを顔面で受け取る横島。
修行が足りんな、修行が。
夏休みは間違いなくキャンプという名の修行だわ。
うちの家族は平気で夏休み全部潰すからなぁ、山ごもりで。
「あ、そうそう。忠夫君」
父士郎の腕にすっぽりと収まって、酒のせいか頬を染めてる母親が有り得ない位可愛らしい。
「あ、なんすか桃子さん」
コップを流しに放り込んで、追加のカクテルを四人分運ぶ横島。
どうでも良いけど、普通友達の親って誰々のおばさんとか呼ぶよね。
世界一おばさんって単語が似合わないうちの母親である。
「ご両親が来週、顔を見に来るって連絡があったからそのつもりでね」
「げぇっ!?」
じゃーんじゃーんじゃーん
なんだ今の脳内に響いた効果音は。
親たちの前でムンクの叫びのような顔して立ちすくむ横島が面白い。
まー、あの父親と母親が来るとなると確かに大変だよなぁ。
「後、旅行から帰ってきたら電話するように言われてたから、今日でも明日でも電話しなさいね」
「うええええ」
心底嫌そうな横島を横目に洗い物を続ける俺。
「横島先輩のご両親ってどんな方なの?」
片付いて綺麗になったテーブルに腰掛けて、うちわ片手に美由希が尋ねる。
「あー…お袋は普通の主婦だけど、親父は敏腕サラリーマンらしい。
昔っから女にモテて浮気ばっかしてるイメージしかねぇなぁ」
更に昔はモテなかったんだけどな、横島の親父は。
一声掛ければ億単位の金が動く女が普通に主婦してる辺り、世の中不思議だらけだ。
「へー、流石横島先輩の父親だね」
「どういう意味なの美由希ちゃん」
「え? そのまんまだけど? あ、でもモテないもんね、横島先輩。そこは違うかぁ」
「ちくしょぉぉぉぉぉ!!!」
「家の中を走るな」
廊下の方へ行ったから電話するんだろうな、来るなと。
無駄だろうが。
「さて、私も風呂へ入るか。酔っぱらいの面倒頼むぞ」
「はーい」
うちの子達は基本的に良い子ばかりだから困る、いや困らないけど。
****
「いらっしゃいませー」
今日も大盛況の翠屋である。
今日からアルトリアと衛宮と美由希が休みで、俺と横島、忍と恭也が代わりに入るのだ。
両親に休み取らせたいが、うちは母のケーキと父の珈琲他で持ってるようなもんだからな、なかなか難しいな。
ちなみに今日は朝から俺と母が厨房、親父がカウンター、忍と恭也、横島がウェイターだ。
横島なー、細かいトコに気がつくというか。
うちのCM(なのは作成)入りポケットティッシュを駅前で配ったり、そのポケットティッシュを各テーブルに数個ずつ配備したり。紙ナプキンもちゃんと配備しているが、意外と重宝されているようだ。
うちは全席禁煙だが外のカフェテラスは灰皿常備なので、煙草も一通り揃えている。
その煙草にマッチをサービスでセットにしたりしている。
勿論なのはが図面引いて月村のトコの下請けに作ってもらった特注で、これが意外とウケていた。
マッチ集めを趣味にしている人は勿論、最近では見た事もないという人もいて意外な人気なのだ。
他にもテーブルの下に大きめの籠を置いたり、トイレの芳香剤(ボタン式で押さないと匂いが出ない奴)を数種類置いてみたり。
トイレ掃除も一番熱心にやってるのが横島なんだよな。トイレが汚い店はリピーターになってもらいづらいし印象悪いとさ。
横島の商才はなかなか侮れん。
そういう訳で今日も今日とて大盛況。
ちなみに俺が出した「ライキを店の前で躍らせる」という案は却下された。何故。
ついでに説教までされた。
どうも商才というモノは俺にはないらしい。
横島に説教されるとやたら頭に来るな、横島のくせに生意気だ。
でもライキ型ケーキの作成はオッケーらしいので今度作って売ろうと思う。
一心不乱にスポンジを焼きフルーツをカットし生クリームを作り牛乳や小麦粉を計量し卵を割る。
一通りケーキ系の雑用が片付いたら、今度は俺が肉焼いたりスパゲティ作ったりだ。
うちは喫茶店の形ではあるがメインはケーキ類の販売なのでそこまで食事類が出ないのだが、それでも昼飯時は違う。
比喩抜きで厨房は戦場なのだ。
なのは達は三人でGW中の宿題を片付けている、正確にはなのはの宿題を一緒に手伝っている。
その後はフェイトとユーノの小学校へ行く準備と撮りまくった写真を編集するのだそうだ。
いつの間にかユーノの制服まで用意してる辺り、うちの親パネェな。
イギリス国籍もいつの間にか取得させられていて、イギリス人という事になっているそうだ。
スクライアに帰らんで良いのかと俺が聞いたら、すげー怖い顔でニコっと笑われたのでそれっきり訊いていないのだが……
何かあったのか?
そして嵐のような時間を過ぎて14時過ぎ。
漸く一段落した客足に一息吐き、順次昼食を済ませていた。
忙しい時だけ人数を増やすとか出来んもんかね、全く。
昼食を済ませた後は概ね暇になる、少なくとも四六時中手と足を動かさなくても良い。
一頻り休憩した後、忍と俺、恭也と横島の順で外での販売を開始する。
カフェテラスの方でケーキを食べている人間が実演となって、割とよく売れるのだ。
まあ、俺と忍、恭也が突っ立ってるというのも理由だろうが。
横島は子供相手に売るのが上手いのだが、どう見ても子供連れの母親の方が目当てだよなぁ。
どうせモテる訳もないし売り上げになれば良いけどさ。
その後は客足が途切れる事もなく、波のように押し寄せてくる事もなく。
それなりに忙しく過ぎていった。
****
「で、それが新しくなったレイジングハートか」
見た目は変わらんな、待機状態だから当然だが。
居間、そのソファーの上に転がってい赤い玉と黄金の三角。
「そぉよぉ」
それを前に、オーフェンの隣でソファーに座り売れ残りのケーキをパクつくプレシア。
自宅にてテスタロッサ家と共に夕食を済ませ、漸く改良が完成したというレイジングハートとバルディッシュのお披露目である。
そう、なのはがデジカメを駆使してたのもレイジングハートの補佐がないからビットを構成・操作して写真を撮れなかった為なのだ。
「ね、プレシアさん試して良い?」
「どぉぞ~。んー♪ 美味しいわぁ」
「駄目です。なのはさん、手に取るのはちょっとお待ちください。
プレシアの頭が砂糖まみれなので、私が説明しますね」
ため息と共にリニスが後を取る。
「今回の改修はまずレイジングハートを完全になのはさんの魔力性質に合わせる事。
ユーノ君の持って来たままでも相性は良いのですが、細かい点の使い勝手をよりなのはさんに合わせるようカスタマイズしました。
分かり易く言うとレイジングハートを構成するメインプログラムをよりなのはさんの魔力性質に合うよう無駄をそぎ落としたという感じです。
これによってより滑らかに魔力の放出や操作が可能になるハズです」
ふむ、相性が良かったとは言え元々なのは用に作られたモノではないから、その辺りの調整という事か。
続けてリニスが言うにはカートリッジシステムの搭載を行い、エクシードモードとやらを含めた新たな形態の追加と既存の形態の改修を行い、その上でカートリッジシステム自体に封印処理をしてレイハさんが許可しない限り使用不可能にしてあるらしい。
カートリッジシステム自体はレイハさんたっての希望だと、まあこいつも一緒に戻って来たクチだし当然かも知れん。
封印処理についてはなのは(とフェイト)の身体が未だ発育途中で成長期も来ていない為、使うどころか搭載自体リニスは嫌がったらしいのだが、本人――レイハさんとバルさんが是非にと懇願した結果、搭載するけど封印もするという所に落ち着いたようだ。
後で聞いた話だが、俺のうろ覚えのアニメではレイハさんがカートリッジを搭載希望した時技術者が難しい云々言ってた気がするので尋ねてみた所『カートリッジシステムを後付けで搭載する位何とも有りませんよ?』と不思議そうな顔をされた。
リニスパネェなのかこれは。
ともあれ、封印処理を聞いてうちの両親が喜んで感謝したのは言うまでもない。
そもそも魔法を、戦う力を与えるという事自体消極的反対なのだ、現状では明確な敵も危険もないから持たせるのを許しているようなものである。ジュエルシードはあっと言う間にユーノが集めちゃったし闇の書は志貴が殺してくれたしな。
リニス先生の長い説明ををふんふんと神妙に聞いてる子供ら。
これを見ているとプレシアはフェイトの育成に関してはリニスに丸投げで、可愛がる専門のようだな。
この扱いを見てると実はプレシアの娘じゃなくてアリシアの娘、プレシアの孫なんじゃね? と思わなくもないが黙っておこう。
年齢的には孫でおかしくない、ハズなんだがなぁ?
ふと、エクセリオンではなかったかなーと思ったが口には出さない俺。
改造した人が違うから名前も違うんだろう、多分。
俺は全員の紅茶を淹れてながらそれらを聞き流し、横島はさして興味ないのか売れ残ったケーキをプレシアやオーフェンに配っていた。
美由希も興味は余りないのか、子犬のアルフを抱っこしたユーノを抱っこしようとして嫌がられている。
気持ちは分かるぞ、弟いないもんな、俺らは。
「レイジングハート・エクシードでユーノ君に勝つの!」
数日ぶりに首に戻ったレイジングハートとバルディッシュの居心地は良さそうである。
…なんで美由希がユーノ弄るのはスルーで俺が弄ると怒られるんだろう? 差別か?
性的な意味で可愛がってる訳でもないのにな?
「うん! ユーノに勝つんだ!」
普段大人しめなフェイトもやる気十分である。
一対一でお互いの戦績はトントンなのに、ユーノ相手になると負けっぱなしなので悔しいのだろう。
そのうちはやてやしぐしぐ達も加わりそうではある。
「はあ…なのはも士郎さんの子って事かしらねぇ」
今日は流石に酒ではなくお茶を飲みながら、母が呻く。
「運動神経が繋がってないからな、魔法で戦えるようになって嬉しいのさ。
なんせ恭也や美由希と同じ土俵に、漸く立てた訳だしな」
一人だけ戦いに関しての才能、というか運動関係の才能がないのは、きっと劣等感コンプレックスだったのだろうな。
未だ自転車に乗れないのだから、割と困った問題である。
そのうちユーノとフェイトと色違いの自転車与えてみるか。。
「二人とも、まずは新しくなったデバイスに慣れる事から初めてくださいね。
いきなり模擬戦などしないように」
「はーい」×2
リニスの科白に出来の良い生徒の返事。
「静香ちゃん、理解出来た?」
「安心しろ、魔法の事なんぞ解らなくても人は殺せる」
「コラ! 子供の前でそういう事言わないの」
「解った、すまん」
美由希に怒られてしまった。
新しく手に入れた玩具を試したくてうずうずしているなのは達に苦笑するユーノ。
「ちょっと試してこようか?」
「うん!」
「うんじゃない。もう遅いんだから明日しなさい!」
父の一喝。
遅いと言っても20時過ぎたトコなので言う程遅いとは感じないのだが、まあ小学生だしね。
「だって。明日の朝の訓練の時ね?」
なのはの頭を撫で、ついでおずおずと側に寄ってきたフェイトの頭を撫でるユーノ。
「さて、美由希、横島。そろそろ行くぞ」
「うへーい」
「やる気をだせ」
「うう…静香ちゃんと一時でも離れるなんて」
「嘘泣きは辞めろ」
なんだこの茶番は。
「恭也君、オーフェンも連れて行ってください」
ぶっ!
思い切り紅茶を吹いたオーフェンの顔が濡れた。
カップの中へ吹き込んだせいだな、というか思い切りタイミング見計らったな、リニス。
「たまには動かないと豚になりますよ、いえヒモでしたっけ」
「誰がヒモか」
そういえばオーフェンが働いてるなんて聞いてないな。
プレシア自体金持ちだから働く必要がないのかも。
「シリーズ・人間のクズか」
「借金して金を返さないような奴らと一緒にすんな! いやしかしヒモ? ヒモなんて――」
ぶつぶつ言って悩み始めてしまった。
懐かしいなシリーズ・人間のクズ。
あの頃のラノベは俺の青春だったからなぁ。
おお、やぶにらみと言うべき半眼がこっちを睨んでる。
働く必要があるかは別としてオーフェンは普段何してんだろうか?
リニスに聞いてみると、以前はプレシアの研究の手伝いとフェイトの訓練や子守、時の庭園にたまに迷い込んでくる魔法生物の類の退治などを仕事としていたという。
……地球にいてフェイトが高町家にいる以上、プレシアの手伝い位か。それも大した事が出来る訳でもないだろうし。
ヒモだな、うむ。
人間は堕落するのだ、オーフェンもかつてあれほど嫌っていたヒモに堕落してしまったのだ。
「なに見てんすか」
オーフェンを微笑ましい気持ちで見てたら横島の不機嫌そうな声で我に返る。
「ふ、とっとと用意して叩きのめされてこい」
水を入れた水筒を放り投げると、軽く受け止められた。
「いいなぁ、お兄ちゃん達。ずーるーいー」
「オーフェンと修行…」
「……さ、お風呂の時間だよ」
バトルジャンキーになりそうな科白に頬をひくつかせるユーノ。
激しく同意だ。
「うん、一緒に入ろ」
「いやだからね、男女六歳にして同衾せずと言ってね?」
「どうきん?」
よく知ってるな、論語なんぞ。
「しずかちゃあん、おかわり~」
「プレシア、食べ過ぎです、身体に悪いですよ」
太りますよと言わないのは太らないからか?
「ちっ…折角補給したカロリーを無駄使いさせるなよ」
「うう…うちで食べさせてないみたいな事言わないでぇ」
シュークリームを頬張りながら唸るプレシア。
とは言えやる気にはなったようでのろのろと恭也達の後ろについて外へ出て行った。
着替えて荷物を持ってくるのだろう。
「じゃ静香お姉ちゃん一緒に入ろっ」
「アルフもね」
「解ったから引っ張るな」
「風呂なんて毎日入らなくてもと思うんだけどねぇ」
「日本人はこの世界でも有数の綺麗好きな民族だからな」
世界的に見ると割と異常なレベルで清潔だからな、この国は。
「しーずーかーちゃーん、おーかーわーりー」
……この世界の若いお母さんはアレか、甘い物を摂取する事によって若さを保っているのか?
リニスの申し訳なさげな視線を受けながら、なのはとフェイトとプレシアの為に本日最後のケーキをソファーの前のテーブルに並べる俺であった。
****
デバイス技師としては
リニス>壁>他の技術者
というイメージ。
地球に来てから急速にヒモ化進んだオーフェンという話。
オーフェンにはヒモの才能があると思うんだ、きっと。
それにしても正直、魔王術とかどうでも良いから無謀編のノリで書いてくれねーかなとは思います。