ジェットコースターの後、俺からまずユーノが魔法(ミッドチルダ)関係者である事と俺が志貴の友人である事を打ち明け、後はなのは、フェイトとはやてが仲良くなった、あとアルフとザフィーラが肉の焼き方で熱論を交わしてた。
シャマルは瀬尾あきら、パトリシア・マーチン(共にうちの中等部)とという子と緑屋というBL系サークルで活動しているらしいぞ、心底どうでも良いが。
俺が志貴にバグを殺すよう頼んだ事は言わなかった、面倒だし恩着せるつもりもないしな。
で、今現在何をしてるかというとだ。
「はやてちゃん何とかして!」
「ユーノから離れて!」
「ふん、如何なる妨害をも乗り越えるのがベルカの騎士のつとめなのだ!
ユノユノー! 愛してるぞー」
今、そこで、ユーノの頭にひっついて騒いでる二頭身のぬいぐるみめいたナマモノが烈火の将だと誰が分かろうか。劣化の将ですらないわ。
というかなんで『はやてがくしゃみしたら小さくなる』んだよ。
ツイン・シグナムってか面白くないわ!
リインフォース曰くバグを殺した後の補修作業に手違いがあり、本来、管理者たる夜天の書直轄の機能である回復・再生用の超防御力を得る特殊な形態変化機能が変な風にシグナムにだけ発現したとか何とか。
しかも防御力はなのはのディバインバスター(レイハさん無しでだが)を受けてもケロっとして髪が焦げた程度、再生能力の方は怪我しないから分からんというでたらめっぷり。話を聞く限りヴィータの全力全開・光になれーを受けても一秒後に回復するという無敵モードらしいがマジあり得ん。そのまま盾にしようぜってレベルだろ。
まあ、その分知能が極端に落ちて幼児化――通称・しぐしぐ――しているらしく、一目惚れしたユーノの頭にひっついてユノユノと騒いでるのが現状である。
何という馬鹿な話だ、今まで色々あり得ん事を体験してきたがホントあり得んわ。
あ、現在時刻19時前後。
海馬ランドにあるKCホテルの2F、大広間のバイキングを味わってる最中だ。
いやいや、一日遊園地で遊ぶというのも大概疲れるものだな。ガキどもはまだまだ元気だがたぶん風呂入ったら電池が切れるんだろう…それくらいはしゃいでたからな、今もだが。
「しかしリーダーがあんな風になる事に思うところはないのかヴィータよ」
「ありえねーことなんてありえねーんですよ、はやての持ってる漫画に載ってた」
さすが八神家最後良心、割り切り方が半端ないな。
アイスを中心に甘い物をがっつきながらもしぐしぐを放置だ。
「まあ別に害があるわけではないし、はやてちゃんには忠実だから問題ないわよ」
と言いつつビデオにシグナムとユーノ達の馬鹿騒ぎをきっちり収めている。
曰く、しぐしぐの時の記憶はシグナムにはないらしい。なので記録を見せて反応を楽しむんだと、シャマルまじ外道。シグナムの時は、まあ概ね俺が知ってるシグナムと大差なかったから、これは恥ずかしいだろうなぁ。まさに黒歴史生産形態というべきか。
はやても慣れたものなのか、リインフォースの世話を受けつつにこにことユーノ達の反応を楽しんでいる。
「もー! はやてちゃん何とかして!」
「二人を引きはがせるモノはナニもないのだユノユノー!」
「痛いから! 髪の毛掴まないで!」
阿鼻叫喚、というほどではないが軽くカオスだな…ローストビーフうめぇ。
「静香ちゃんスープ持ってきたっすよ……まだやってんのか」
「ご苦労」
「ほんならそろそろ止めよか。
リイン」
「はい、主よ」
どこから取り出したのかティッシュで作った紙縒ではやての鼻を擽るリインフォース。
くしゅん、と可愛く嚔をするとぼうんっと音を立ててしぐしぐがシグナムに戻った、ユーノの頭の上で。
どうも質量すら変化するらしく一気に大きく重くなったシグナムを支えきれず、どんっと音を立てて倒れ込むユーノとシグナム。見ようによっちゃシグナムが押し倒した形だな、ちょーど胸の谷間にユーノの顔が埋まってるし。
なんというラッキースケベ。
「もー! ユーノ君から離れて!」
「ユーノ、取っちゃダメ!」
ふらつくのか頭を押さえつつ立ち上がろうとするシグナムの下から、ユーノを引っ張り出す二人。
サンドイッチうめぇ。乾いてないってのはいいな、いちいちラップするのも大変だろうに。
「押しに弱すぎるな、ユーノは」
「いやあ、アレって押しが強いっていうんすかね」
「普段は子供っぽくなるだけなんだけどな、よっぽどユーノを気に入ったんだろ」
ハンバーグにかぶりつくヴィータまじ幼女。夜天の書だか蒼天の書だか、何考えて子供を騎士にしたんだろうな、あと男女比率おかしいだろ、騎士なのに。
まあメタな話、原作がエロゲじゃなかったら、或いはロードス島辺りの時代だったら女なのは湖の騎士だけだったんだろうな、時代背景的に。
「その、すまない、スクライア、タカマチ、テスタロッサ。どうも小さくなってる時は、自分でも訳が分からなくてな」
「ユーノ君はなのはとフェイトちゃんの彼氏なんだからシグナムさんにはあげません!」
ユーノの右腕を抱き抱えつつシグナムに宣戦布告するなのはに、反対側でぎゅっとユーノの腕を抱きかかえるようにしてシグナムを睨むフェイト。
「いや、私としてはそんなつもりはないんだ、信じて欲しい」
説得力ねーなぁ。案の定なのはもフェイトも疑わしそうだし。
「まあまあ、二人とも。
シグナムはうちがちゃんと面倒見ておくから、堪忍したってや」
「ならユーノに抱きつく前に止めるべきじゃね」
「えー、それじゃつまらんやん」
ヴィータのツッコミ、しかしはやてには効果がなかった。
「ほら、なのはども。向こうのケーキいくつか取ってこい」
「はーい、いこ、ユーノ君、フェイトちゃん、はやてちゃん」
「いってらっしゃいませ、主よ」
やれやれだ。
まあはやても嬉しそうだしこれはこれで良いのかも知れんな、さっそくビデオをシャマルに見させられて落ち込んでるシグナム以外は。
全くやれやれだぜ。
****
「はやてちゃん達とお風呂行ってくるの!」
「ああ、気をつけてな」
ぼふ
ふかふかのベッドへ倒れ込む、風呂入るよかこのまま寝たい静香です。
さすがに大浴場の女湯にユーノは誘わなかったなのは、当然だが。
横島とザフィーラの二人と連れだってユーノは歩いて行きました。
久しぶりの独りだな…なんだかんだ言って家だろうと翠屋だろうと常に誰かと一緒だったし…
バイキング会場を後にして宛がわれた自部屋に入ると、俺を除く四人は早速大浴場へ向かった。
横島がアホなことをしないよう、ユーノとザフィーラに注意した上で、だ。
俺は疲れたんでもう動きたくない、なんでお子様はあんな元気なの馬鹿なの死ぬの。
あーシャワー位浴びた方が……もういいや。明日の朝で。
明日は東京近辺旨いモノ巡りだ……日の出食堂だ五番町飯店だ――
…………
ふと気付く。どうやら寝てしまったらしい。
まあ遊園地なんぞそれこそどれくらい久しぶりかって話だったし、その後もはやて達とうちの子供らが騒がしかったしな。
枕元の時計を見るとそれでも日付はまたいではいなかった。
「おはようございます」
視線だけ声の方へ向かわせると、ソファーに腰掛けて、ノートパソコン相手になにやら書き物しているユーノ。
「なんだ、起きてたのか」
「ええ、なのは達はもう寝てますけどね」
隣のベッドを見れば確かになのはとフェイト。二人折り重なるように仲良く寝ていた。
体を起こし一つ伸びをしてから立ち上がる。
「横島は?」
「そこですけど」
ベッド同士の狭間、丸まって寝ているライキの下、黒こげになった物体。
「うう…マッサージしてあげようとしただけなんやぁ…」
それは性的な意味か?
全く懲りない奴だな。
「マッサージ店もホテルの中にあるみたいですけどね」
「もっと早く言ってくれ、そういう事は」
まあとりあえず汗を落とすか。寝汗まで混じってかなり気色悪い。
「ユーノ宜しく」
「はいはい」
書き物に集中しているからか割と素っ気ないユーノ。
何書いてるんだろうかね、論文か?
シャワーで軽く汗を流し、風呂場から出てみたら黒こげが更に焦げてて翠の輪っかで蓑虫になっていた。ライキは俺が寝ていた方のベッドの上で丸くなっていた。
「何というか、つくづく阿呆だなお前は」
ゆったりとした俺のバスローブ姿に視線釘付けな横島。
うーん、確かに世の女性達がじろじろ見られるのをいやがる気持ちも分からんでもないな、これは。
「静香ちゃんが悪いんやー! 健康な青少年の前でシャワーを浴びるとか! このイケズ!」
お前が自制すれば良いだけの話だろうに。
「騒ぐな、なのは達が寝てる。ユーノ、頼む」
「はいはい」
パソコンから目を離さず何やら呪文を唱えると、俺の髪を緑色の光が包む。
ホントユーノは生活に優しい魔法使いだわ。
「私にも魔力があれば是非とも習得したんだがな、この魔法」
「大したプログラムは組んでませんからね、確かに少しでも魔力があれば出来たでしょう」
鏡台の前に座り、あっという間に乾いた髪を三つ編みに編み始める俺。
ストレートのままだと朝悲惨になるからな、緩くでも良いからある程度纏めておかないと。
「ユーノは何書いてる?」
「闇の書に関する論文ですね。
ギレアム提督から管理局に手を回してるとは思いますけど、一応もう安全だと言う証拠の一つ位は作っておこうかと」
「律儀な奴だな…」
しかしあのしぐしぐとかホントタチの悪い冗談にしか思えないんだが、どう説明するのやら。
「闇の書?」
「お前は知らんで良い」
「ひどっ!」
翠の光鎖で蓑虫状態のままもごもごと動く横島。
「差別やー贔屓やー」
「なのは達が起きるだろうが。黙れ。
私は寝るが、ユーノはどうする?」
「もう少し書いてから寝ます。お先にどうぞ」
「そうか。じゃあ私はなのは達のベッド使わせてもらう。
ユーノは一人でそっちのベッド使ってくれ」
この部屋のベッド数は二つ、共にダブルサイズで、余裕で大人二人以上寝られるでかさ。
まあなのはとフェイトと一緒に寝ても俺一人なら問題ないというわけだ。
そういえばアルフは何処へ行った? デート中だろうか?
「ちょっ!? 俺は?!」
「床で寝とけ」
「ひどっ!?」
「貴様のような覗き魔と一緒の部屋で寝てやるというだけ有りがたく思え」
「せめてベッドで寝かせてー!」
「騒ぐな」
唯一露出している顔を踏んで黙らせる俺。
あんまり楽しくないな、人を踏んづけて楽しい気分とはどんなものだろうか。
「ちょっ踏まないで! しかし静香ちゃんの生足がっ! てか見えそう!――ぷぎゃっ!!」
「ホントにキモイなこいつ…ユーノ、外へ放り出せ」
改めて目の辺りを念入りに踏みつぶす。さすがに気分悪いぞ、そんなトコをまじまじ見られるのは。
まあ下着は着てるから丸見えという訳でもないんだが。ところで俺はブラジャーをして寝る派だ。
してないとむしろ寝づらいんでな、大きいから。
「あ゛あ゛あ゛――すまんせん! 出来心やったんです!」
お前はいつだって出来心100%だろうが。
「まあ良い。ユーノ、この馬鹿を宜しく頼む」
「分かりました」
「ユーノお願い助け――ふごふご!」
ついに翠の光鎖で口まで拘束される横島。その上で半円状の光が横島を包むと静かな夜の部屋が戻ってきた。
「ではおやすみ。ユーノなら添い寝してやっても良いぞ」
「遠慮しておきます」
集中力が書き物の方へいってるからか、やたら素っ気ないなぁ。
でも真面目な顔してキーボード叩いてる姿はなかなか格好良いな、さすがユーノマジ美形。
ライキは――まあいいか。横島は床で寝るだろうし、ユーノは俺となのは達が寝てるベッドに来ても良いしな。
ではおやすみ――
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遅れに遅れましたが漸くアップです。
どうも登場人数が多すぎるシーンが進まないみたいです。
精進が足りませんね…頑張ります。
番外編、没作品についてもご意見・ご感想お待ちしております。
感想くれないと暴れちゃうぞ☆
…スレイヤーズも随分昔の作品になってしまいましたねぇ(遠い目