エステ気持ち良いわぁ。
前世が男だったからこういうものとは無縁で過ごしてたが、こりゃ気持ち良いわ、正直舐めてた。
イリヤとバーサーカーと連れだって鶴来屋まで戻った後、玄関先で鉢合わせた恭也と忍、美由希に誘われ、忍と美由希の三人でエステに。横島はイリヤ、バーサーカーと恭也と一緒に子供達がいるプールの方へ。
それにしてもバーサーカーに驚かないとか恭也や横島も含めてこいつらの頭の中は一体どうなってるのか。
鶴来屋の従業員も普通に対応してるし…驚いてる俺が馬鹿みたいじゃないか、全く。
「エステも終わったし、夕食まで少し間があるわね…露天温泉の方、行ってみる?」
「良いだろう」
「混浴とかじゃないよね?」
「見られたって減るものじゃなかろうよ」
「そういう問題じゃないでしょ! もう静ちゃんはそういうの気にしなさ過ぎ!」
別に裸見られても死ぬ訳じゃないしなぁ。前世と違って粗末なものぶら下げてる訳でもないし、いや何のことだか分かりませんが。
「だいたい混浴じゃなかったら横島のアホが覗きに来そうではあるが」
「恭也が一緒にいるんだから大丈夫でしょ」
ふむ、ならば大丈夫か。
念能力に関してはもう教えてやるしかないだろうと割り切って教える事にしたが、文珠って念で作ろうとすると凄まじい才能が必要な気がするんだが、どんなもんだろうな。
とりあえず、先ほどは旅行から帰ったら教えてやると茶を濁した訳だが、そんな事に気を取られて覗きをしない男でもあるまいし。ま、まだ恭也を出し抜ける事もないだろ。
「あ、そこの人、露天風呂は何処?」
忍が重ねた膳を運んでいる従業員に声を掛けた。
「へい! 今案内させやす! マーイク!」
うーん、角生やした赤ら顔の異国人、ちょっと太め。こんなのが従業員というのもアレだな…というかこいつ、赤鬼トムだろ。プロレスはどうしたんだ。
「なんだい兄さん?」
ひょいっと掃除中の札を掛けた部屋から出てくる、ひょろながのこれまた異国人、どちらもアングロサクソンだな。
そしてこいつは角が二本。うん、青鬼マイクだね。
意外と声が渋いな、Cv二○一○ってか。
しっかしこいつら、異人さんのくせしてやけに浴衣が似合うなぁ。
日本に染まりきってるわ。
それにしてもどうして忍も美由希も平気の平左で対応出来るだろう…普通に外国人が従業員してるってだけで俺なんか吃驚なんだが。
「このお客さん達を露天へ案内して差し上げろ!
俺はこれを片付けなきゃならん!」
「分かったよ兄さん。さ、お客様方、こちらです」
きっとこいつら、貧乏してたトコを千鶴に拾われたかなんかしたんだろうな。
アースクラッシュトーナメントも終わったしなぁ。モモタロウマジパネェ。1000年生きたシュテンドルフも凄まじいが。
てくてくと施設案内をしながら歩くマイクの後ろをついて行く俺ら。
茶室もあるんか、凄いな。
そういや和服も着てみたいかも。せっかく美人になったんだし。あ、年始には振り袖着られるのか、なのはとか美由希も着てたしな、原作では。
それにしてもプールは屋上にあって、海を一望出来るとか金かけてるなぁ。
…前世じゃこんな高級なトコついぞ縁がなかったからなんか逆に落ち込むぜ。
「こちらでございやす。ではごゆっくりどうぞ」
一礼して去っていくマイク。いや礼儀正しい外国人だわ。
とても兄貴と一緒に下着ドロしてた奴とは思えん。女将の教育のたまものか?
あー、そういや黒鬼ジョニーは見かけなかったが…きっといるんだろうなぁ。
「さー露天風呂よー」
「温泉♪温泉♪」
テンション高い二人。まあ俺もゆっくりと楽しみますかね。
と、中に入ると浴室サロンという場所、まあ気の利いた銭湯ではよくある待合室のような場所か。ジュースやカミソリなどの自販機やマッサージ機などが置いてある。
あ、入浴道具一式は美由希に持たせてるから問題ないぜ?
自販機で一本、ペットボトルを落とし二、三口飲んでから美由希に放る。エステの後だし水分補給は大事だぜっと。
ん? どたどたと走る音が――
「あ、お姉ちゃん達!」
お、なのは達か。
「キサマら、廊下は走るもんじゃないだろう」
「う、ごめんなさい」
なのはフェイトアリサすずかイリヤの五人がぞろぞろと入ってきた所で一言注意。
「ユーノは?」
美由希が手にしたペットボトルを忍に渡し、妹達の為だろう新しく自販機にお金を投入した。
「恭也さん達と男風呂の方へ行ったわ」
恭也さん、ねぇ。アリサも面食いというかませてるというか。まあ一人の男取り合ってるうちの妹どもよかマシなんだろうが、年上のお兄さんに憧れるというのは。
「そういえばイリヤは衛宮君のトコに行ったんじゃなかったの?」
月村工業のスポンサーの一つだってさ、アインツベルン家は。だから忍とイリヤは顔見知りというわけだ。
余談だがイリヤのアインツベルン城はこの近くにあるらしい、露天風呂から見えるとか何とか。あの城を移転するだけの土地が海鳴市内にはなかったからここまで遠くになってしまったがセラとリズが免許持ってるから何とでもなるらしい。
まあバスで混んでなきゃ1時間ちょいで着くからな、市内には。
「シロウったら完全に酔っ払ってて起きやしないんだから!」
「まああれだけ飲まされて喰わされればな」
「おまけにセイバーと抱き合ったまま寝ちゃってるし! もう!」
まあセイバーでもアルトリアでも俺は構わんがね。
やっぱり聖杯で喚ばれたのか? でもなーんでここにバーサーカーやらがいるのやら。
霊体化して側にいるらしいんだが……全く分からんな。
「まあ良い。ガキども、入るぞ」
「はーい」×5
美由希に買ってもらったジュースを手に全員の声。元気があってよろしい。
****
「凄いわ!」
「ホントにね~」
「何が入ってるのかしら…」
おまいら自重しる。
アリサすずかイリヤに胸をまさぐられながら露天風呂に浸かって海を一望している静香です、こんにちわ。
なのはとフェイトは海の方をずっと眺めてて海がどんなものかとか美由希と話している。夕日が眼に眩しいぜ。
フェイトは海のない地方の子らしいからな。夏になったら海水浴でも行くんだろうな。
「いい加減にしないか」
「えー」
「はーい」
「減るもんじゃないし、けちくさい事言わないでよ」
「そうか。では胸を揉まれるという事がどういう事か教えてやる」
逃げようとしたアリサをとっつかまえて思い切りくすぐってやると暫くアリサの笑い声が開けた空の上に響いた。
全く、ちょっと気持ち良くなっちゃうだろうが、胸揉まれたら。
「ご、ごめんなさい…」
あんまりやるとマジでのぼせるので一分ほどで開放してやるとしおらしく謝ってくるアリサ。
「珍しいのは分かるがな、限度は弁えろ。オマエらもだ」
「「はーい」」
やれやれ。これで落ち着いて浸かってられる、と言いたい所だが流石に少しのぼせたな。
髪でも洗うか。
「なのは、髪の毛を洗うから手伝え」
「はーい」
一人で洗うの大変なんだよ、腰まで伸びてる上に髪の毛が太い質なのかやたらボリュームあるし。
ちなみに俺と美由希、忍は髪の毛をアップして頭の上でタオルで纏めている、ま、皆それぞれそれなりに長いからな。
ざばっと音を立てて俺となのはが風呂から上がる。うーん、海風が涼しくて気持ちが良いぜ。
しかし自分の裸も大分見慣れたな……高町静香の記憶あれど最初はそれこそどう扱って良いものやら分からんかったが、慣れるもんだね。バスト1mを超えてる割に垂れてないとか凄まじいにも程がある、普通に足下見えないしな、胸のせいで。その代わり肩こり凄いけど。
びしゃぁん!
「…今のは雷か?」
流石に思わず足がとまる程の落雷音。
「外の方だよね?」
アリサ以外は肝が据わってる子供達だなぁ…今のかなりの轟音だったが、ビビりもしないぜ。
「静ちゃん、ライキはどうしたの?」
フェイトの髪の毛をツインテールにして遊んでいた美由希が声を掛けてくる。
「外で遊んでこいと放ってあるが?」
ああ、そういう事なのか? もしかして。
「また忠夫お兄ちゃんかな?」
「そうかもな」
「静香お姉ちゃんが悪いんだよ?」
「何故」
「お母さんが言ってたの」
何故俺が悪いのかさっぱりだ。
まあとりあえず髪の毛を洗いますかね。洗うのは兎も角乾かすのはユーノの魔法で一瞬だから助かる。
****
「ふー」
良いお湯であった。
浴室サロンでうぃんうぃんうなりながら俺の肩を揉んでいるマッサージ機。テレビを見ながらコーヒー牛乳。
うーん、贅沢って感じ。ちなみに浴衣だがブラもしてるしTシャツも着てるぜ? この大きさだと冗談抜きにポロリもあるよになってしまうからな。風呂上がりに一枚二枚多く着なきゃならんのは女の面倒なトコだな。あと頭な、風呂入ってる時同様アップしてタオルで纏めてる。ドライヤーで乾かすと30分位かかるからな、後でユーノに水分飛ばしてもらうのさ。
なんて生活に優しい魔法使いなんだろうか。ユーノ愛してるぜ。
『ヴァンプと――』
ん?
『ラクスの――』
『さっと一品~』
ぶふぉっ!?
「大丈夫? 静香お姉ちゃん」
ぼへーっとコーヒー牛乳を飲みながら扇風機の前に座っていたなのはがタオルを持って駆け寄ってくる。
ちなみにまだ素っ裸である。そろそろ浴衣でも着ないと風邪引くぞ、ガキども。扇風機の前であーとかしてないで。
「ああ、すまん」
うー…鼻にも入ったぜ……まさか実物のヴァンプ将軍とラクス=クラインを見るとは…確かに小さめだが貧乳って程じゃないな、ラクス。いや俺と比べれば確かに無乳だけど。
『はい、このコーナーではわたくし、ラクスが悪の秘密結社フロシャイム川崎支部の将軍であられるヴァンプさんと、手軽にさっと作れる料理をご紹介するというコーナーですわ』
乳酸菌取ってるぅって言ってくれないかなぁ。
まあソレは兎も角、かよ子さんではなくラクスとか斜め上にも程がある。まあアイドルやってるみたいだしこういう事もあるかも知らんが…それにしても……
「悪の秘密結社フロシャイム」
「悪の秘密結社」
「秘密結社」
テレビに出てるじゃん。全然秘密じゃないじゃん!
……突っ込むだけ無駄だとは知ってるよ、うん。
ほう、春巻きの皮で刻んだトマトとハムとチーズを撒いてフライパンで焼いて…あ、焦げ目だけか。
で、電子レンジで中に火を通すと。ちょっと旨いかも。覚えておこう。
簡単釜玉うどんはマジで旨かったなぁ。久しぶりに作るか、なんせ前世ぶりだぜ。
しかしラクスの手つきの危なかしい事。
まあお嬢様だし自分では作らないのかもな。
ふーん、毎週やるんだ、これ。チェックしとくか。
「あ、ヴァンプ将軍」
「知ってるのか忍」
髪の毛にドライヤーを当てながら忍が答える。
「うん、うちのお得意様。まあ将軍が、というよりフロシャイムが、だけど」
なるほど、月村工業がフロシャイム脅威の科学力を支えていたのか。
もう突っ込まないぞ。それにしても忍のトコは色々やってるな。
それにしても悪の秘密結社に売るのは死の商人とか言わないのか、言わないんだろうなこの世界では。
「美由希、携帯取ってくれ」
「ほい」
ひゅっぱしっ
スケジューラーにこの時間と曜日をセットしておいて、と。
しかし生ヴァンプは怖いな、夜道に出会ったら悲鳴あげそうだ。
あ、忘れてた。
「そういえばイリヤ嬢」
「なにかしら? 静香お姉ちゃん」
こちらもドライヤーあてられ中のイリヤ。当ててるのはフェイトである。
なので少々声が大きくなるのはご勘弁を。
「キッドには何盗まれたんだ?」
「エイジャの赤石って古い宝石。大きく傷が入っちゃってるから価値は殆どないんだけど、不老不死が手に入るとかなんとか曰く付きの宝石ね」
……弓と矢もあるんですね分かります。
「え、イリヤのトコに来たの!?」
「いいなぁイリヤちゃん! ね、ね! キッドに逢えた?!」
髪を乾かし終えたアリサとすずかがイリヤに詰め寄る。ファンだったのか。
「はい、おしまい」
「ありがとう美由希お姉ちゃん」
こっちは姉妹でドライヤー当てっこしてた二人。興味なし、か。
「キッドってなに?」
「犯罪者ね」
身も蓋もないなイリヤ、事実だが。
「はい、おしまい」
「ありがとう、フェイト」
仲良きことは美しきかな。
『スポーツの話題です、ジャイアンツの二代目長嶋茂雄こと長島茂雄が昨晩放った逆転ホームランで新人選手のホームラン記録を――』
ベーブルースのバットとか。あ、アレは折れたんだっけ? 結局実力で打ってたみたいだしな。
「では夕食の時間までホテルの中でも散策するか」
「はーい」
「カラオケ部屋とかあったよね、確か」
「温泉来てまでカラオケ?」
「でもこんな人数で歌うのは滅多にないよー」
やれやれ姦しい事で。
そういや大人連中は酔いつぶれてるのか露天じゃない方の大浴場にでも行ってるのか。
従業員に確認しておくか。あと横島の生死も。