<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.13774の一覧
[0] うそっこおぜうさま(東方project ちょこっと勘違いモノ)[にゃお](2011/12/04 20:19)
[1] 嘘つき紅魔郷 その一 (修正)[にゃお](2011/04/23 08:52)
[2] 嘘つき紅魔郷 その二 (修正)[にゃお](2011/04/23 08:53)
[3] 嘘つき紅魔郷 その三 (修正)[にゃお](2011/04/23 08:53)
[4] 嘘つき紅魔郷 エピローグ (修正)[にゃお](2011/04/23 08:54)
[5] 嘘つき紅魔郷 裏その一 (修正)[にゃお](2011/04/23 08:54)
[6] 嘘つき紅魔郷 裏その二 (修正)[にゃお](2011/04/23 08:55)
[7] 幕間 その1 (修正)[にゃお](2011/04/23 09:11)
[8] 嘘つき妖々夢 その一 (修正)[にゃお](2011/04/23 09:24)
[9] 嘘つき妖々夢 その二[にゃお](2009/11/14 20:19)
[10] 嘘つき妖々夢 その三[にゃお](2009/11/15 17:35)
[11] 嘘つき妖々夢 その四[にゃお](2010/05/05 20:02)
[12] 嘘つき妖々夢 その五[にゃお](2009/11/21 00:15)
[13] 嘘つき妖々夢 その六[にゃお](2009/11/21 00:58)
[14] 嘘つき妖々夢 その七[にゃお](2009/11/22 15:48)
[15] 嘘つき妖々夢 その八[にゃお](2009/11/23 03:39)
[16] 嘘つき妖々夢 その九[にゃお](2009/11/25 03:12)
[17] 嘘つき妖々夢 エピローグ[にゃお](2009/11/29 08:07)
[18] 追想 ~十六夜咲夜~[にゃお](2009/11/29 08:22)
[19] 幕間 その2[にゃお](2009/12/06 05:32)
[20] 嘘つき萃夢想 その一[にゃお](2009/12/06 05:58)
[21] 嘘つき萃夢想 その二[にゃお](2010/02/14 01:21)
[22] 嘘つき萃夢想 その三[にゃお](2009/12/18 02:51)
[23] 嘘つき萃夢想 その四[にゃお](2009/12/27 02:47)
[24] 嘘つき萃夢想 その五[にゃお](2010/01/24 09:32)
[25] 嘘つき萃夢想 その六[にゃお](2010/01/26 01:05)
[26] 嘘つき萃夢想 その七[にゃお](2010/01/26 01:06)
[27] 嘘つき萃夢想 エピローグ[にゃお](2010/03/01 03:17)
[28] 幕間 その3[にゃお](2010/02/14 01:20)
[29] 幕間 その4[にゃお](2010/02/14 01:36)
[30] 追想 ~紅美鈴~[にゃお](2010/05/05 20:03)
[31] 嘘つき永夜抄 その一[にゃお](2010/04/25 11:49)
[32] 嘘つき永夜抄 その二[にゃお](2010/03/09 05:54)
[33] 嘘つき永夜抄 その三[にゃお](2010/05/04 05:34)
[34] 嘘つき永夜抄 その四[にゃお](2010/05/05 20:01)
[35] 嘘つき永夜抄 その五[にゃお](2010/05/05 20:43)
[36] 嘘つき永夜抄 その六[にゃお](2010/09/05 05:17)
[37] 嘘つき永夜抄 その七[にゃお](2010/09/05 05:31)
[38] 追想 ~パチュリー・ノーレッジ~[にゃお](2010/09/10 06:29)
[39] 嘘つき永夜抄 その八[にゃお](2010/10/11 00:05)
[40] 嘘つき永夜抄 その九[にゃお](2010/10/11 00:18)
[41] 嘘つき永夜抄 その十[にゃお](2010/10/12 02:34)
[42] 嘘つき永夜抄 その十一[にゃお](2010/10/17 02:09)
[43] 嘘つき永夜抄 その十二[にゃお](2010/10/24 02:53)
[44] 嘘つき永夜抄 その十三[にゃお](2010/11/01 05:34)
[45] 嘘つき永夜抄 その十四[にゃお](2010/11/07 09:50)
[46] 嘘つき永夜抄 エピローグ[にゃお](2010/11/14 02:57)
[47] 幕間 その5[にゃお](2010/11/14 02:50)
[48] 幕間 その6(文章追加12/11)[にゃお](2010/12/20 00:38)
[49] 幕間 その7[にゃお](2010/12/13 03:42)
[50] 幕間 その8[にゃお](2010/12/23 09:00)
[51] 嘘つき花映塚 その一[にゃお](2010/12/23 09:00)
[52] 嘘つき花映塚 その二[にゃお](2010/12/23 08:57)
[53] 嘘つき花映塚 その三[にゃお](2010/12/25 14:02)
[54] 嘘つき花映塚 その四[にゃお](2010/12/27 03:22)
[55] 嘘つき花映塚 その五[にゃお](2011/01/04 00:45)
[56] 嘘つき花映塚 その六(文章追加 2/13)[にゃお](2011/02/20 04:44)
[57] 追想 ~フランドール・スカーレット~[にゃお](2011/02/13 22:53)
[58] 嘘つき花映塚 その七[にゃお](2011/02/20 04:47)
[59] 嘘つき花映塚 その八[にゃお](2011/02/20 04:53)
[60] 嘘つき花映塚 その九[にゃお](2011/03/08 19:20)
[61] 嘘つき花映塚 その十[にゃお](2011/03/11 02:48)
[62] 嘘つき花映塚 その十一[にゃお](2011/03/21 00:22)
[63] 嘘つき花映塚 その十二[にゃお](2011/03/25 02:11)
[64] 嘘つき花映塚 その十三[にゃお](2012/01/02 23:11)
[65] エピローグ ~うそっこおぜうさま~[にゃお](2012/01/02 23:11)
[66] あとがき[にゃお](2011/03/25 02:23)
[67] 人物紹介とかそういうのを簡単に[にゃお](2011/03/25 02:26)
[68] 後日談 その1 ~紅魔館の新たな一歩~[にゃお](2011/05/29 22:24)
[69] 後日談 その2 ~博麗神社での取り決めごと~[にゃお](2011/06/09 11:51)
[70] 後日談 その3 ~幻想郷縁起~[にゃお](2011/06/11 02:47)
[71] 嘘つき風神録 その一[にゃお](2012/01/02 23:07)
[72] 嘘つき風神録 その二[にゃお](2011/12/04 20:25)
[73] 嘘つき風神録 その三[にゃお](2011/12/12 19:05)
[74] 嘘つき風神録 その四[にゃお](2012/01/02 23:06)
[75] 嘘つき風神録 その五[にゃお](2012/01/02 23:22)
[76] 嘘つき風神録 その六[にゃお](2012/01/03 16:50)
[77] 嘘つき風神録 その七[にゃお](2012/01/05 16:15)
[78] 嘘つき風神録 その八[にゃお](2012/01/08 17:04)
[79] 嘘つき風神録 その九[にゃお](2012/01/22 11:18)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[13774] 幕間 その4
Name: にゃお◆9e8cc9a3 ID:2135f201 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/14 01:36





「がはっ!!」
「あうっ!!」

 放たれた衝撃波を身体に受け、霊夢と魔理沙は堪らず壁に打ち付けられる。
 朦朧とはしているものの、二人は何とか意識だけはつなぎ止める。それは彼女達の持つ意地か誇りか。
 そんな二人を夜空の上から見下し、嘲笑うは最強の妖怪、八雲紫。彼女は殺し合いの始まりから一寸たりとも変わらぬ笑みを浮かべ、二人に言葉を紡ぐ。

「あら、まだ立ち上がる気力があるのね。その心の強さは賞賛に値するけれど、早く心を折ってしまった方が楽になれるわよ?
立ったところで、貴女達が私に何が出来て?徒に苦痛の時を永らえるより、全てを諦めてしまった方が賢い選択じゃないかしら」
「じょう…だん…アンタに、屈するくらいなら、死んだ方が…マシよ」
「そして私達は…死にたくはないからな…だから、必死で抵抗するんだよ、お前をぶっ飛ばす為に、な」
「ふう…人間とはかくも罪深く、愚かな存在ですわ。幻想郷に平和を取り戻す…ただそれだけの為に、この私に牙を向こうだなんて。
その結果が貴女の傍で気を失っているお仲間の哀れな姿よ。妖夢もアリスも、私に触れることすら叶わなかった」

 紫の言葉通り、霊夢達の傍には意識を失った妖夢達が地に倒れ伏していた。誰もが紫に対し、勝算の見いだせない戦いに挑み、そして散っていったのだ。
 彼女達の姿を一瞥し、霊夢と魔理沙は再度紫を睨みつける。仲間の倒れた姿を目にしてもなお、彼女達の心は折れない。
 その姿に、紫は小さく溜息をつき、体内から発する妖気の質を更に鋭く引き上げる。それは彼女が最強の名を冠するに相応しい程の存在感。

「貴女達は実に利用し甲斐のある忠実なお人形だったわ。私のお気に入り…本当に面白いくらい私の掌の上で踊ってくれるお人形。
だけど、そのお人形が自らの手で操り糸が切ってしまったら、持ち主として私の取るべき手段は二つしかない。それは直すか、廃棄するか。
ねえ、霊夢、魔理沙。最後にもう一度訊いてあげる。全てを捨て、私の下に付き従いなさい。そうすれば、貴女達の望む全てを分け与えてあげる」
「はっ…その問いには何度も答えた筈よ、紫。答えは『死んでも断る』ってね」
「右に同じ、だぜ。お前は私達を幸せにしてやる、だなんて妄言を吐いてるが…そりゃ私だけを、って話だろ?
お前が望む世界は一の強者だけを救済し、九の弱者を食い物にする世界だ。そんな世界は悪いがお断りだ」
「そう…本当に愚かね。それだけの力を持ちながら、貴女達は他者を踏み躙る強さも覚悟も失している。
興醒めよ、実に興醒め。さようなら、儚き愚者達よ…叶わぬ夢を胸に抱いて、疾く顕界から去ね」
「その言葉、そっくりそのままアンタに送り返してやるわ。最後に一つ、紫に反省点を教えてあげる。
――話が長過ぎんのよ、アンタは。他人を屑だと見下すことしか出来ないこと、それがアンタの敗因よ」

 紫が二人に対し、強大な妖気の牙を首元に突き立てんと力を放出する刹那、彼女に対し、真紅の神槍が天より飛来する。
 驚愕に目を見開き、紫は慌てて回避するものの、若干回避行動に移るのが遅かった。彼女の右手は紅槍に穿たれ、血飛沫が宙を舞う。
 しかし、紫は腕の痛みなど気にする余裕はない。これ以上ない程の憎悪を瞳に込め、紫は槍が飛来した先を睨みつける。
 その視線の先に居た人物――それこそが、霊夢達の待っていたジョーカー。この絶望的な状況を打開出来る最高の友人。

「…ったく、来るのが遅いのよ。危うく紫の奴を倒しちゃうところだったじゃない」
「それは済まなかった。別に私に遠慮することなく、アレを食ってしまっても構わなかったのよ?」
「はっ、そいつは止めとくぜ。アイツを…紫を止められるのは、この幻想郷ではお前だけだからな」

 夜空に舞い、ただ悠然と微笑む人物に、霊夢と魔理沙は先程までの深刻な顔が嘘のように表情を緩める。
 彼女達とは対照的に、表情を歪めるは八雲紫。ギリ、と歯を噛みしめ、どこまでも憎々しげにその人物を睨みながら口を開く。

「…レミリア・スカーレット、貴女、生きていたの?」
「死んでいたさ。だが、八雲の亡霊が彷徨っている以上、大人しく棺桶の中で眠っている訳にはいかなくてね。
死の淵を彷徨っていた私に、幽々子と萃香が力を分け与えてくれたのよ。貴女を…親友を止めて欲しいとね」
「ふん…死してなお私を裏切るか。幽々子も萃香も本当に役立たず。どうしようもない塵だわ」
「毒なら好きなだけ吐きなさい。何があろうと、貴女の野望はここで費えることになるのだからね」

 レミリアは口元を歪め、パチンと指を鳴らす。
 彼女の召喚に応えるは、彼女に心から仕える四人の守護騎士達。その誰もが一騎当千の強者達。

「破壊の騎士、フランドール・スカーレット」
「七曜の騎士、パチュリー・ノーレッジ」
「刹那の騎士、十六夜咲夜」
「彩色の騎士、紅美鈴」
「あいつら…そうか、レミリアの『願いを現実にする能力』の力で蘇ったのか」
「でも、その力は未熟な貴女には使いこなせない筈…ま、まさか!」
「そう…私は沢山の悲しみを背負い、全ての人の想いを自分の力へと転ずる力を有することが出来たのよ。
ふふっ…皮肉な話よね。人里の人々の命、失われた命によって、私は真の覚醒を迎える事が出来たのだから。
『想いを力に変える能力』…それは貴女が、八雲紫が心から恐れていた能力。この力こそ、貴女を打倒出来る幻想郷の力」
「そ、それじゃ貴女は…」
「――そう、私は最早レミリア・スカーレットじゃない。レミリアを超えたレミリア、超レミリアよ」

 レミリアは両瞳を閉じ、己に秘められた力の全てを解放する。
 彼女を包むエメラルド色の優しい光、それは妖気とも魔力とも区別のつけることの出来ない力。
 彼女から放たれた緑の光が幻想郷中を照らしていく。それはどこまでも優しく、温かな光で。
 その光を受け、霊夢も魔理沙も気付けば瞳から涙を零していた。心の奥底を揺さぶるレミリアの光に、涙がとめどなく押し寄せてきて。

「涙が…涙が止まらない…レミリアの想いが、悲しみが胸に伝わって…」
「だけど、嫌じゃない…これが、レミリアの背負う想いなのか…人の心の光が、世界を包んでるんだ…」
「止めろ!私の幻想郷をそんなモノで染め上げないで!私の夢が!私の欲望が、そんな下らない唾棄すべきモノなんかに!」
「悲しいわね…八雲紫、誰よりも愛深き女ゆえに、夢を叶える為に、愛を捨てることしか出来なかった。
紫…全てを終わりにしましょう。幽々子の、萃香の、そして私の想いが、貴女の心の闇を打ち払う」
「黙れっ!!レミリア・スカーレット、貴女さえいなければ…貴女さえいなければっ!!」

 憎悪に表情を歪め、紫はレミリアに向けて跳躍する。その速度は疾風迅雷、常人には決して追えぬ神域の速度。
 みるみる距離を詰められるも、レミリアは決して慌てない。四人の騎士達を制止し、レミリアはグングニルを振りかぶり、言葉を紡ぐ。

「――最後の勝負よ、紫。受けてみなさい、これが私の全力全開――神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」














 ぼてっ

「いたっ」

 急に訪れた背中の痛みに、私は混濁した意識をゆっくり覚醒させていく。
 私の視線の先にあるのは天井。ただ、いつもより天井が遠い気がする…って、なんだ、私、ベッドから落ちてるじゃない。
 軽く息をつき、私は自分の掌を確認する。…あれ、グングニルは?というか紫達は?最終決戦は?
 そんなことを冷静に考え始めたとき、私の思考は何故か急激に冷却されるようにクリアになってきていて。

 Q.グングニルは?→そもそもグングニルって何よ。
 Q.紫達は?→いや、紫と戦ってる時点でおかしいでしょ。私クソ弱いのに。
 Q.最終決戦は?→何それ、おいしいの?誰が誰と何の為に戦うの?何で幽々子と萃香は死んでしまうん?幽々子最初から死んでるやん。

 …ああ、成程。オーケイ、解かってきた。理解出来た。つまるところ、そういう訳ね。
 今、私は見事なまでにパジャマでベッドから転げ落ちていて。どう見ても今まで寝てました空気爆発で。つまりさっきまでの光景は…夢な訳ね。
 軽く息を吐き、私は寝転んだまま笑みを零す。そして――絶叫。

「あ、あんな恥ずかしい夢を見る奴があるかああああああああああ!!!!!ぎゃあああああああああああ!!!!!!」

 私はベッドに飛び込み、毛布を頭から被って羞恥にもがき苦しむ。何よあの夢は!私は一体どこの『僕の考えた最強主人公』なのよ!
 何よ『願いを現実にする能力』って!何よ『想いを力に変える能力』って!何よ『超レミリア』って!我が夢ながら妄想が全力全開じゃないのよ!?
 しかも紫相手に偉そうにOSEKKYOUしてるし!なんか紫悪役にしてるし!幽々子と萃香なんか空に輝く強敵と書いて友と化してるし!
 ああああ!!!もう嫌!ノーカン!今の夢は私のシマじゃノーカンだから!夢は自分の願望を映すとか…じょじょじょ冗談じゃない!
 私の夢は素敵な男の人と一緒になってケーキ屋さんを開く事!例えるならなのちゃんなのよ!?クロ×なの派なのよ!?それがどうしてなのはさんルートに…か、勘弁してくだしあ。
 とにかく恥ずかしい!中二病願望があった自分自身に絶望した!何あの私、あれ絶対固有結界使えるわよ!?無限の槍製とかやるわよ絶対!ナデポニコポカコポ全部使えるわよ!
 本当もう、こんなのぶっちゃけありえない。なんつー夢を見ちまったのよ、フロイト先生も爆笑よ!夜遅くまで漫画見て寝付いたらコレだよ!
 何はともあれ、この恥ずかしさが熱を引くまでこうしていよう…もう、本当、ありえない。あんな夢を見てただなんて誰かに知られでもしたら…

「おっはよーさん。何か大声上げてたけど、どしたの?」
「ごめんなさいごめんなさい勝手に萃香をお空の星の人にしちゃってごめんなさいっ!!」
「…はえ?」

 突如部屋に入ってきた萃香に、気付けば私はペコペコとベットの上で必死に謝っていた。
 そのときに萃香が浮かべていた『何してんのコイツ』的な顔を、今日見た夢と合わせ技で私は一生忘れないと思う。
 誰か私の記憶を空へ預けに行って下さい。むしろ投げ捨てても焼却処理しても良いから。結構切実に。




















 こんにちは。あんなアホみたいな妄想夢を見てしまったせいか、非常に夢に出てきた登場人物達に対して申し訳ない気持ちでいっぱいな
紅魔館の主、レミリア・スカーレットです。特に紫とか紫とか紫とか紫とか紫とかに本気でゴメンナサイしたいです。
 本当、あんな私TUEEEEな物語なんて、一体何処の並行世界に行ったら出会えるのよ。紫と戦ったり龍と戦ったりする私とか居る…訳ないわよねえ。
 とにかくもう、病気染みてる妖々夢を見ない為にも、もう夜更かしなんてしない…なんて言わないよ絶対。私が夜更かしして漫画見ない生活なんて考えられないし。

「まあ、そういう訳で私はこれからも夜遅くまで起きるつもりだから」
「いや、何がどういう訳なのかサッパリ分からないんだけど」
「夜更かししない吸血鬼というのもおかしな話よね。夜を統べる者の代名詞だものね」

 私の言葉に、萃香は苦笑を浮かべながら酒を口へと運んでいる。そして幽々子は至極尤もなお言葉を返してくれた。
 そして、私の言葉に紫は楽しそうにクスクスと微笑むだけ。うう…他の二人以上に、今日は紫に申し訳ない気持ちでいっぱいだわ。まともに視線合わせられないし…
 ごめんなさい、紫。貴女を三流雑魚キャラなんかにしちゃって…あの紫は私がちゃんと墓まで持っていくから。あんな小物臭がする紫は忘れることにするから。
 …さて、私の恥ずかし過ぎる悪夢はもう捨て置くとして、今私がやってきてるのは、何とまあ紫の家。幽々子の家は何度か行ってるけれど、紫の家にお呼ばれしたのは初めてね。
 お昼頃、萃香と二人でダラダラ時間を過ごしていると、室内に隙間登場、紫参上。で、暇そうにしてる私達をお茶会という名の雑談会にご招待って訳。
 紫の家は、幽々子の家や紅魔館みたいに馬鹿でかい訳じゃなく、人里の少し裕福な人が過ごす屋敷程度の大きさ。紫くらいの化物なら、別世界を一つでも
掌握して『この世界全て私の土地』くらい言うかと思ってたから少し意外だった。その事を紫に訊くと、クスリと上品に笑いながら『これでも広いくらいだわ』との
お言葉が返ってきた。何という謙虚な妖怪…これで最強の妖怪なんて余りにも格好良過ぎるじゃない。それで美人だなんて…ね、妬ましい!
 紫の家には、先に来客として幽々子が訪れていて。それでまあ、現在こうやって紫の家の一室で紫、幽々子、萃香、私の四人でだらだら雑談会という訳。
 しかし、この面子に私ってなんていうか、本当に場違いっていうかなんていうか…だって、この三人ってぶっちゃけ幻想郷のNo1、2、3なんじゃないの?
 正直、この三人がいれば神様だって殺せるんじゃないの?それくらいの実力者達なのよね…それに引き換え、私は頑張れば蚊や蝿を殺せる程度の実力。
 ライオン三匹と蟻が一匹、もう考えるだけで不自然過ぎる組み合わせなのよね。本当、我ながらよくこの面子と友達やってるわ。まあ、
正直なところ、強さとかどうでも良くて、私がこの三人を好んでるから友達なんだけど。最近、紫にも幽々子にも怖いって思わなくなってきたし。慣れって怖い。

「そう言えば萃香、貴女は紅魔館にお世話になってるけれど、山に連絡は?」
「するわけないだろ。もう山の連中と私は関係無いし、今更あそこに戻るつもりも無いしさ。
ヘコヘコ私に媚びる連中の傍に居るなんて御免だよ。私はレミリアの傍で自由気ままに楽しませて貰うさ」
「あらあら、山の権力者がこれでは、幻想郷は益々持って権力争いには程遠くなりそうね、紫」
「悪い事ではないけどね。萃香がそれで良いのなら、山の連中に対して紅魔館がこれ以上ない抑止力になってくれるもの」
「必要あるかねえ?連中は閉鎖的で臆病な奴等の集まりだよ?実力はあるくせに本当、スッキリしない奴等さね」
「何にでも保険は必要なのよ。とくに個人ではなく、集団で事を為す連中にはね」

 三人して小難しい話を始めるも、私はガン無視で用意された煎餅を味わい続ける。おいひい。流石紫、上質を知る人のゴールドブレンドだわ。
 紫とは一年近くの付き合いに、幽々子とは半年以上の付き合いになるけれど、最近二人との付き合い方が大分理解出来てきた。
 基本、二人が難解な話をし出したときは、相手に理解される事を期待していないのよね。だから私は適当に相槌を打ちながら話を合わせるだけで良い。
 本当に私に何か訊きたいこととか、話したい事があったら、二人とも噛み砕いて話してくれる。なんだかんだで、実は二人とも話上手なのよね。
 だからまあ、何が言いたいのかというと、今の会話に私が参加する必要ナッシングパワーだと言う事。話があったら、ふってくるだろうし。
 …しかし、この煎餅美味しいわね。どちらかというと洋菓子派(自分で作るからね)の私でも、この煎餅が凄く良いモノだってのは分かる。
 この煎餅、一体何処に売ってるんだろう。人里の茶屋は全部行き尽くしたと思うんだけど…外の世界かな。今度紫に頼んで買ってきて貰おうかしら。

「フフッ、なんだかリスみたいね。煎餅に夢中になって齧りつく姿はどう見ても小動物そのもの」
「幽々子に同意するわ。これがスカーレット・デビルの姿だって知ったら、幻想郷中の妖怪達は驚き気を失うかもしれなくてよ?」
「そう言えば、幻想郷の連中がレミリアに畏怖してるって噂を聞いたんだけど、紫達がやったのかい?」
「やったのはレミリアでしょう?紅霧異変に春雪異変、そして私と幽々子、そして貴女との関係。加えて天敵である博麗霊夢との友好。
そのどれもが紅悪魔の名を幻想郷中に轟かせる要因となるでしょう?レミリアが幻想郷のパワーバランスの一角と成り上がっているのは揺ぎ無い事実だわ」
「そして、その結果を紡ぎ出したのは他の誰でも無いレミリア・スカーレット。相手がレミリアだからこそ、私達は共に在りたいと願った。
私達は何一つ手なんて加えていませんわ。貴女のときだってそうではなくて、伊吹萃香」
「違いない。本当、大したもんだよレミリアは。自分で言うのもなんだけど、私が友と認めるなんて本当に余程のことなんだけどね」

 この醤油の香りも絶品だし、お茶請けには本当に文句のつけどころが一切無いわね。やっぱり後で紫に…って、あれ、何みんなして私の方眺めてる訳?
 しかも、私を見てみんなニヤニヤしてるし…いや、ニヤニヤしてるというよりは、子供を見守る保護者みたいな視線が…な、何この変な空気!?
 コホンと小さく咳払いをし、私は慌てて取り繕ってさも会話を聞いていたような顔をする。いや、三人の話を微塵も聞いてなかったんだけど。煎餅に夢中になってたけど。
 と、とにかく何か話題を出そう。とにかく話を変えれば、私が話を聞いてなかったことに突っ込まれないし。えっと、話題話題…

「そ、そう言えば紫、さっきこの煎餅とお茶を運んでくれた女性の事なのだけど…」
「ああ、藍のこと?あの娘は私の式神よ。九尾の狐、私の従者」
「しきがみ?え、ああ、そう、しきがみね。成程、しきがみなのね」
「そう、式神」

 …やばい、しきがみって何?敷紙?四季神?話題を変えようと思ったら専門用語が出てきて墓穴を掘ったでござるの巻じゃない。
 私はさも理解しているような素振りで紫に頷いてみせる。とりあえず九尾の狐っては分かったんだけど…って、九尾の狐?それって
もしかしなくてもかなりの化物なんじゃないの?お伽話に出てくるくらいの妖怪なんじゃないの?それを紫はしきがみ?とかいうのにしてるの?
 多分、しきがみってのは紫の言うように従者みたいなものなんでしょうけど…何このチート妖怪。自分も化物、部下も化物って本気でヤバい。
 紫の異次元っぷりに私は思わず気が遠くなる。幻想郷は常識に捕らわれない…ホンマ幻想郷は地獄やでえ、フゥハハー。

「それで藍がどうかしたの?何か用があるなら呼び寄せるけれど」
「へ?あ、いや、別に構わないわよ、うん。初めて見る顔だから、一体誰なのか気になっただけだし。
紫のしきがみって分かっただけでも、充分よ。そう、しきがみなのね。いや、何と無く分かってはいたんだけれどね。立派なしきがみね」
「フフッ、お褒めに預かり光栄ですわ。藍は私の自慢の式神ですもの。将来的には研鑽を積んで折り紙になって欲しいと思ってるんだけど」

 お、おりがみっ!?え、何?しきがみって進化したら折り紙になるの!?どういうクラスチェンジなのそれ!?むしろ折り紙ってそんなに凄かったの!?
 や、ヤバい…紫が楽しそうにクスクス笑って私の返事を待ってる。幽々子も萃香も楽しそうに笑ってる。拙い拙い拙い、これ絶対みんな
しきがみのこともおりがみのことも理解してる。これで『しきがみっておりがみになるの?』なんて言えば、私は良い笑い物じゃないのよ!
 よ、よし…ここは私もさも分かってるような素振りで誤魔化そう。おりがみ、おりがみね…うん、OK、大丈夫。

「そうね…他ならぬ、紫のしきがみだもの。将来、立派なおりがみになれると私が保証してあげるよ」
「そう、それを聞いて安心しましたわ。レミリアの保証があれば、あの娘も自信を持っておりがみになれるでしょうね。フフッ」
「本当、性格悪いよね、紫は。まあ、面白いから良いけどさ。うぷぷっ」
「それだけ紫がレミリアの事が好きだという証拠ね。本当、私は良い友人達を持ちましたわ」

 私の言葉に三人が三人とも愉しそうに微笑んでいる。よし、何とか切り抜けることが出来たわね…危ない危ない。おりがみなだけに私の折り紙つきって、やかましいわ。
 しかし、おりがみって言うのはそんなに凄いものなのね。従者から進化するみたいだし…咲夜にも目指してみないか勧めてみようかしら。
 なんせ神がついてる称号ですものね。檻神か折神かは知らないけれど、とにかく凄いランクってことは分かる。よし、帰ったら咲夜に言ってあげよう。
 咲夜、貴女は紅魔館の希望の星よ。私達の期待を背負い、立派なおりがみになるのよ。最強メイドおりがみ咲夜、よし、このフレーズで世界が狙えるわ。

「さて、話は変わるけれど…レミリア、貴女は私の持つ能力が何だったか覚えているかしら?」
「何?本当に唐突ね…紫の能力なんて忘れたくても忘れられないよ。ウチに遊びに来る時、いつも能力使って私の部屋に来てるじゃない」
「それではズバリ、私の能力の正式名称は?」
「『隙間を使って人の家に勝手に侵入する程度の能力』」
「…あれ、紫の能力ってそんな微妙過ぎる名前だっけ?似合い過ぎて怖いんだけど」
「普段、紫の能力の主な使い道って『それ』だしねえ」
「ありがとう、私の愛する親友方。貴女達が普段私をどんな目で見てるのかよ~く理解出来ましたわ」

 クスクスと紫は笑ってるけど…いや、絶対怒ってるでしょこれ…美人が怒ると微笑みでも怖いのね。
 そんな私達に軽く息をつき、紫は気を取り直して、言葉を再度紡いでいく。

「私の持つ能力は『境界を操る程度の能力』。私の持つ力は他人には理解しにくいところがあるから、細かい説明はしないけれど、
私のこの力は様々なモノの境界を意のままに操ることが出来る。そこまでは良いかしら?」
「いや、構わないけれど…今更紫の能力を説明されても、私には『ああ、そうなの』くらいしか言えないわよ?」
「うふふ、面白いのはここからですわ。さてさて、私の能力を使えば、万物の境界を操り、世界に浸食ことが可能。
それはつまり、他者が作りだした朧世の幻想ですら介入することが出来る。簡単に言うと、私は人の夢に介入し覗き見ることだって出来る」
「へえ…それは凄い能力ね。人の夢を覗けるだなんて実に面白そう…」

 …そこまで言って、私は言葉を止める。ちょっとマテ。どうして今、紫は『この話題』を『楽しそうに』私に話す?
 紫の能力が凄いモノだってのは良い。だけど、紫はその能力の素晴らしさに、『他人の夢に介入することが出来る』ことを押しだしてきた。
 それはつまり、紫が他人に夢に介入できるという事象を話題に提起しているということだ。そして、紫が提示した相手は私。
 私と夢、それに一体何のつながりがあるのか。そんなことは言うまでも無い。今日の私は最高なまでの悪夢を見ている筈だ。
 その夢に対し、紫の能力は覗き見る事が出来るとしたら。それが今の紫の笑みの意味につながるとしたら。まさか。まさかまさかまさかまさかまさか――!

「ゆ、紫、ああああ、貴女ももももしかして…」
「フフッ、夢の中で私と対峙するレミリアはとても素敵でしたわ。まるでお伽話の主人公のよう」
「う、うわああああああああ!!!!わ、忘れろおおおおおお!!!!!今すぐ忘れろおおおおおおおおおお!!!!!!」

 紫の一言に私の羞恥心は限界突破。相手が最強の妖怪である事も忘れ、私は紫の襟元を両手で掴んで必死にガクガクと前後に揺さぶる。
 そんな私に、紫は優しい笑みを浮かべたまま。あががががががが、私の黒歴史を握られた。というか人の夢に武装介入するんじゃない!
 あんなアホみたいな夢を覗かれたなんて、私もう御嫁に行けないじゃない!どうしてくれるのよ!?責任取りなさいよ!?御嫁に貰いなさいよ!?
 私と紫の間で繰り広げられるお馬鹿コントに、萃香も幽々子も二人して楽しそうに笑うだけ。ち、畜生…ちくしょーー!!!完全体になれればー!!(違います)
 結局私と紫のドタバタは、紫が夢の内容を誰にも話さないと約束してくれるまで続いたりした。ゆ、紫なんて嫌いだー!!うわーん!!
























 ~side パチュリー~



 一筋の光も差さぬ暗き地下の一室。私は入室する為に、扉を軽くノックする。
 しかし、室内からの応答は無い。もしかしてあの娘、眠っているのかしら。そう首を小さく傾げながら、私はゆっくりと扉を開く。
 入室一番、私の視線に飛び込んできたのは、ベッドに腰をかけて両瞳を閉じる少女の姿。何よ、起きてるんじゃない。

「ノックへの応答くらいしてくれても良いんじゃない?」
「どうせ室内に私が居る事くらい最初から分かってるでしょ。なら面倒は省いても良いじゃない」
「もしかしたら、貴女が眠っている可能性もある訳で」
「それこそ気にせず入ってきたらいい。なんなら、私と一緒に眠ってくれる?最近、ふと何かを無性に抱きしめたくなる」
「それは私じゃなくて貴女のお姉様に頼んで頂戴。私と寝ても面白くもなんともないでしょう」
「確かに今のパチュリーの反応は面白くないね。お姉様相手だと顔を真っ赤にして慌てるくせにさ」

 そればかりは仕方無い。なんせレミィは私にとって特別な女の子なんだから。
 軽く息をつき、私は冗談にクスクスと微笑んでる少女――フランドールの傍へ歩み寄っていく。そのレミィの事を報告する為に。

「レミィは伊吹萃香共々外出してたわ。門を通っていないところを見るに、八雲紫でしょうね。
他の連中…それこそ窓から入室する魔理沙だって、紅魔館に入出するときは門を通るもの」
「つまり紫は年端もいかぬ少女が弁えている礼儀も持ち合わせてない、と。本当、つくづくあの女狐らしい」
「良いの?レミィ、美鈴も咲夜も護衛に付けていないけれど」
「構わないでしょ。その代わりに札付きの守護者が二枚も付いてるんだ。八雲と伊吹の前に挑む命知らずが幻想郷に存在する?」
「随分連中を信用してるのね」
「信用?ハッ、パチュリーも下らないことを言ってくれるね。私は利用出来るモノは全て有効活用してるだけだよ。
私が信用するモノなんて存在するもんか。そうだ、私は昔から一人ぼっち、私が信じるのはお姉様だけだ。お姉様を利用する連中…誰があんな下衆な連中なんか信じるもんか。
顔では笑いながら、心の底ではお姉様を屑扱いして、存在すら認めようとしなくて…汚らわしい、おぞましい、お姉様があんな塵達の瞳に入ることすら許し難い。
あんな奴等は死んでしまえば良い。この世から破壊しつくされ消えてしまえば良い。ああ、そう言えばもうアイツ等はこの世に存在しないんだっけ?
私が殺しちゃったんだよね。ククッ、クハッ、アハハハハハハッ!!良い気味ね!お姉様を愚弄するからそうなるのよ!死ね!お姉様を害する奴等は
みんなみんなみんなみんなミンナミンナミンナミンナ死んでしまえ!!潰れたトマトみたいにグチャって死んじゃえ!あはははははっ…」

 空気を劈く様な笑い声をあげるフランドール。だけど、その笑い声は中途半端に止められることになる。
 彼女の表情が突如、苦痛に歪んだからだ。私は慌てることなくフランドールに駆け寄り、判断を彼女に委ねる。

「美鈴は?」
「…必要、無い。大丈夫、すぐ、収まる」
「…そう」

 美鈴を呼ぶ事に反対し、フランドールは苦しそうに息を乱しながらも視線で私に『余計なことはするな』と釘を刺す。
 彼女がそれを望むなら、私が取る行動は一つしかない。フランドールの望み通り、恭順するだけ。
 やがて、症状が落ち着いたのか、フランドールは軽く息を吸い、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「…悪いわね、心配掛けた」
「構わないわ。私も喘息の辛さは知ってるしね」
「喘息と一緒にされるのもね…まあ、良いわ」

 一旦言葉を区切り、改めて私に視線を向け直してフランドールは言葉を紡ぎ直す。
 それは、今日私がこの場所に訪れた本当の目的。――これから先、レミィを一体どのように異変に対応させるか。

「咲夜と美鈴はあまり良い顔していないわね。特に美鈴は二度とレミィに異変に関係して欲しくないみたい」
「無理も無い。お姉様が伊吹萃香にああもされたんだ。他の誰でも無い美鈴なら、怒りを覚えるだろうね。
あれは紅魔館に仕えている訳じゃない。紅魔館ではなく、レミリア・スカーレットただ一人に仕える妖怪だもの」
「そんな他人事みたいに言ってるけど…美鈴、私と貴女にも大分怒り心頭の様子よ?」
「それで?」
「良いの?」
「美鈴の事だ。どうせ伊吹萃香に制裁、とか思ってるんでしょ。そんなことをして、折角のジョーカーを捨てちゃ堪んないよ。
伊吹萃香は現状維持よ。アレは将来、必ずお姉様の役に立つ。お姉様の為に死すら厭わない最高の盾になる」
「…そうじゃなくて、私が訊いているのはフランドール、貴女の気持ちよ。貴女も本当は美鈴と同じ考えなのではなくて?」

 私の問いかけに、フランドールは口を噤む。…でしょうね。良くも悪くもフランドールは美鈴よりも想いが深い。
 前回の決断が迫られたときは、冷徹に判断を下してみせたけれど…それで自身が納得したという訳じゃあるまいに。
 やがて、フランドールは拳を強く握りながら、ぽつりぽつりと言葉を吐きだすように告げる。

「…良い訳ないだろ。私のお姉様が、大好きなお姉様がボロボロにされたんだ。誰がそんなことを受け入れるか。
叶うなら、今すぐにでも伊吹萃香を八つ裂きにしたい。この手で殺したい。お姉様へ働いた蛮行を死すら超越した苦痛を与えて後悔させてやりたい。
だけど…だけど、そんなこと、お姉様が望むものか。お姉様は優しいから…そんなことをしたら、お姉様、絶対悲しむじゃない」
「そうね。レミィはそんなこと望んでいないでしょうね。伊吹萃香のこと、レミィは気に入ってるみたいだし」
「だから折り合いをつけるのよ。私の気持ちとお姉様の気持ち、どちらが優先すべきかは考えるまでも無いわ。
私が望むはお姉様の確かな未来だけ。そこに私の私的な感情なんて挟まる余地も無い」
「それを美鈴に言い聞かせれば良かったんじゃない。美鈴なら、それで納得してくれるでしょうに」
「不純物を美鈴に混ぜたくないのよ。あれはお姉様の為に、お姉様だけの為に生きる存在で在って欲しい。
どんな理由があれ、お姉様を傷つけることに『仕方無い』なんて思うような奴はお姉様の守護者に相応しくない。過保護なくらい溺愛する奴が良いのよ」
「汚れるのは私達だけで構わない、か。実に正論だわ。美鈴と咲夜はレミィの為にも純粋な存在でなければならない」
「そういうこと。だから、伊吹萃香の件はこれで手打ちよ。さっきも言ったけれど、アレは必ずお姉様の未来に有用な存在になる」

 フランドールの言葉に、私はコクンと小さくな頷いて了承の意を示す。
 私は軽く息を吸い直し、当初の目的であるこれからについての話題を提起する。つまり、話を戻すと言う事。
 これから先に起こりうるであろう異変に、レミィをどう対処させるのか。

「それで、これから先に異変が生じた場合、レミィをどうするの?」
「…そうだね、正直なところ、今回の件は美鈴達が感じてるように、私達の心に油断があった。だからこそ、お姉様をあんな目に合わせてしまった。
これは大いに反省すべきだし、二度と同じ轍を踏んじゃいけないわ。お姉様には二度と酷い目にあって欲しくない」
「そうね…正直、レミィのあんな姿は二度と見たくないわ」
「幸い、今回の異変で私が欲していたカードは揃った。八雲、西行寺、そして伊吹。これだけの手札があれば、お姉様をどうこうしようなんて
馬鹿な事を考える奴はいないでしょう。だから後はそこにお姉様の実力を改めて示すことで、念入りに後押しさせてもらう。
そうね…次の異変がレミリア・スカーレットの参加する最後の異変だよ」
「へえ…それじゃ、次の異変は――」

 私の問いに、フランドールは力強く頷き、口元を楽しそうに歪める。
 それはまさしく悪魔の笑み。誰もが温かさを覚える姉の笑顔とは対照的な、見る者全ての心を恐怖に陥れるような狩人の笑み。

「――次の異変は、紅霧異変のときと同様に、私がお姉様の振りをして直接参加するよ。お姉様は御留守番。
次の異変でレミリア・スカーレットが最狂たる所以を示させてもらう。それで館外の敵に対する私達の計画は終わり」

 フランドールの言葉に、私は了解を示しつつも一抹の不安を覚える。それは計画の遂行等とは一切関係の無いことで。
 あまりにフランドールが計画を急ぎ過ぎている気がして、私は心配せずにはいられないのだ。











 ――フランドール、貴女に残された時間は一体あとどれ程だというの。







前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.031552076339722