『エクスカリバーのデバイスドライバを習得しました。デバイスの周囲に物質化した魔力刀身を発生させ、剣として使えます』
『SDKのデバイスドライバを習得しました。永遠に報われない戦いを続けることを対価に、無限の命を得ることができます』
『デザートイーグルのデバイスドライバを習得しました。デバイスを、ハンドガンタイプのカートリッジシステム搭載型汎用デバイスモードにすることができます。あまり高威力な魔法は使えなくなります』
『ライバックのデバイスドライバを習得しました。敵の攻撃が当たらなくなり、一対多近接格闘で無双になります』
どこから突っ込めばいいのか。この世界でZ.O.Eの存在を知ってから、『ADA』の真似をしだしたエイダ。そして、原作でも聞いたことのない魔法の羅列。そしてその名前。
エイダが適当に組み上げた魔法に、エイダが適当に名前をつけて報告ついでに説明しているだけ。
近接戦闘をどうにかできるようになりたいとエイダに言うと、こうなった。『ブレインストーミング方式で魔法を発案します』ということだから、時間切れまで手も口も出せない。
『マミーのデバイスドライバを習得しました。鉄壁の防御と、追加で魔法を消費することで回復することができます』
『46cm砲のデバイスドライバを習得しました。あらゆる艦船を破壊できます。巨大な反動とマズルブラストに注意してください』
『CQCのデバイスドライバを習得しました。接近戦が得意になれます』
『ザ・ワールドのデバイスドライバを習得しました。時を止めることができます』
『ホーム――――』
タイムアップ。タイマーが無機質な電子音を吐き出す。
『アローンのデバイスドライバを習得しました。屈辱かつ地味に無視できない程度の痛みを与える攻撃をランダムで放ちます。こんなものですか』
「とりあえずお前の趣味とネーミングセンスがよく判った」
『接近戦で使うならライバックをお勧めします』
「スティーブンでセガール拳な格闘を、魔法で実現できるか非常に疑問が残る。あれは一種のファンタジーだ」
『戦闘用プリセットとして、敵の行動に対する反応を脳にインストールするタイプです。あらゆる物理攻撃を回避あるいはいなし、カウンターを叩き込む受動戦闘となります』
「いろいろ問題はあるが、特に受動戦闘ってのはだめだ。積極的に攻勢に出る必要もある」
『基本的な格闘技能を磨き、エクスカリバーや焔薙などで戦うことをお勧めします』
「やっぱりその結論にいきつくか」
前回、フェイトに接近されて、私は『俺』になった。
その理由が、近距離で即時応答できる攻撃手段がなかったからだ。不覚とはいえ、なのはの時のようにアヴェンジャーで薙ぎ払うと、巨大で重いだけあって下手な殺傷設定の魔法より破壊力が大きいのだ。ついでにいうと、フェイト相手には遅すぎる。なるべく無傷で相手を倒したい場合、非殺傷設定の魔法で近接格闘を行う必要がある。
『士郎に、また訓練してもらいますか?』
「そうしよう」
ハンナとして、魔法なしの接近格闘ばかりを教えてもらっていたが、今度は刀剣類を扱えるようになるべく、士郎に師事する。理論上では、他人の何十倍も早く成長できる。『破壊神の百人隊(ルーデルセンチュリア)』は、あらゆる方面で学習能力が高い。複数の人間が学習したこと、経験したことが、一人の人間の知識・経験となることに等しいからだ。
「一応、全部採用する。焔薙はクイックキャストに入れておいてくれ」
私の魔法は独特で、エイダがロードして、私が発動を認証することで効率的に効果を発揮する。それだと即応性に欠けるから、クイックキャストというものが存在する。簡単な防御魔法などをクイックキャストに登録しておくと、ロードせずに一瞬で術式を起動できる。エイダが自動的に防御したりするのも、これに登録しているからだ。エイダに常駐させるから処理が遅くなるし、大掛かりな魔法は入れられないが、単純な魔法でも魔力出力でゴリ押しできる私には、充分過ぎるほど便利な機能だ。
『了解。焔薙をクイックキャストに登録します』
さて。私の目的に、少しづつ、順調にたどり着きつつある。
家事に慣れて、屋敷の維持は5人で行える。拡大再生産部隊は10人、常にサーバルームに詰めている。リロード部隊は15人、出稼ぎは10人。戦闘訓練要員が20。特殊任務に就いているのが20人。地表監視や捜索など、実戦配備しているのが15人。そしてアルトと日常生活をしているのが一人。計算が合わないのは、買いだしや雑務をする余剰人員、あるいは魔力の回復や訓練で怪我をしたりした私だ。これは状況により増えたり減ったりしている。
余剰人員を別にに回したり、雑務をさせたりする。
「まさか、エルテちゃんがハンナさんだったとはね」
その雑務の一つ。訓練の交渉だ。
「よく言う。気づいていたようだったが」
「常識に囚われていたんだよ。よく似ていたとしても、エルテちゃんとハンナさんの歳の差だと、親子にしか見えないからね。でも……何故なんだい?」
10年前、私が消えた、そのことか。
「ある程度成長するまで、高町なのはに関与したくなかった。未来を変えることになるから」
「未来?」
士郎なら、信頼できる。
「私は未来を知っていた。なのはが鋼の意思を手に入れるには、私は不確定要素だった。私はこの未来に存在しないはずだったのだから」
この物語の詳細は知らない。おぼろげな記憶と、結末だけ。
「私は、なのはをはじめとする、この件に関与する全ての人間を守る義務がある」
「なのはが何をしているのか……知っているんだね?」
「教えることはできない。前にもそう言った」
「それは知ってるよ。それより……それを言いに来た訳じゃないんだろう?」
「剣を教えてくれ」
もったいぶる気は無い。素直に言ったら、拍子抜けだったようだ。
「ハンナさんなら大丈夫だと思うけど、エルテちゃんじゃ……」
「身体能力は変わらない。なんなら、ハンナとして来ようか?」
「そっちの方がいいな。体格に差があると少しやりづらい。あと、恭也に師事することになるよ」
「忙しそうだしな。判った。恭也が帰ってくるころにまた来よう」
と、意外にすんなり話は進んだ。
さて、闇の書までに剣を使えるようになる算段はついた。
後は、ジュエルシード関連の全ての人に救いを。既に、死ぬべき人達を生かしてしまっているのだから。もう、私はこの道を突き進むしかない。
私は善人ではない。目的のためには犠牲を問わない。そして、その犠牲という対価を払わない。矛盾しているが、そういうことだ。
傲慢で愚かに。できないことは無い。不可能をも可能にできる。これからやることは、そう思っていなければ意思が折れてしまう。
「『生命を還元するには、多くの犠牲を払わなくてはならない。対価は相応のものであるべきである。しかし、命で命の対価とするには、いささか不毛である。』」
広い、広い空間に、私の声だけが響く。本を朗読する、小さな声が反響する。私とアルトの故郷とも言える、この場所で。
「『しかし、命の価値は絶対ではないが、命の対価としての命の価値は、常に等価である。命ほど、生命還元法の対価に相応しいものは存在しない。本書に記述されている『生命還元法』は、故に不完全なのだ。しかし、対価を払えば死した者の命を取り戻すことができる。』」
『生命還元法』。それはかつて多くの人間が望み、果たすことができなかった秘術。化物を作り出してしまったり、街を幾つも吹き飛ばしてしまったり、世界が闇に包まれたり。だが、この書はその望みを果たしてしまった。世界の理を超えて、無視して。
対価を払えば、ここにいる人々を生き返らせることができる。
対価は、114人目の私。
「つくづく、この世界の理がいまいましい」
私は魔法陣の上に立つ。私は魔法陣の外に立つ。そしてもう一人、命を失って久しい男の入ったインキュベータが魔法陣の上に運ばれる。
「エイダ、準備はいいか?」
『全て順調です。倫理的な問題以外は』
「それは問題なしと言うべきだ。ただでさえ胃が痛いってのに」
エイダの冗談がありがたい。
「始めよう」
『了解。リザレクション、Run』
私から、魔力が吸い出される。魔法陣から光が漏れる。術式が私の中で暴れ回り、エイダが私にできないその制御に回る。世の理を無視して、無理やりこじ開けて、書き換えるのだ、この程度で済むのを僥倖と思いたい。
『エルテ、分解始まりました』
エイダが報告するが、私にはよく判っていた。イケニエのエルテは、新しく私が作り出した私の分身。起動して、『ルーデルセンチュリア』に組み込まれているのだ。光に包まれて見えないが、すでに脚の感覚は無い。
『対象の細胞、活性化しつつあります』
痛みがないのが救いか。生存本能は群としてのそれしかないから、個が死ぬことに何らのためらいもない。だが、思うのだ、『もしルーデルセンチュリアではなかったら』と。私はこれを実行できていたのか。はなからイケニエの命として作り出しておきながら、私はその考えを振り切れない。
『エルテ、消滅します』
私は群である。群を構成する個に『個』は無く、群そのものが『個』である。今初めて、群を構成する個が死ぬ。どうなるのか興味はあった。死の感覚、それはいったいどういったものなのか。しかし、それよりも恐怖が勝った。私は『私』に恨まれないか。今まで、死んでもセンチュリアのネットワークから切り離された私は存在しない。
『制御が不安定になっています。集中してください』
脳のリソースを余計なことに使ってしまった。確かに不安定になってしまった。
『術式、完全に安定しました』
「制御はエイダに任せる」
『了解。対象の意識レヴェル上昇。覚醒します』
私で何度も成功している。何人もの私を犠牲にして。殺して、一人を犠牲にして蘇生して、殺して、一人を犠牲にして蘇生して、殺して、一人を犠牲にして蘇生して、殺して、一人を犠牲にして蘇生して、殺して、一人を犠牲にして蘇生して、殺して、一人を犠牲にして蘇生して……
確信が持てるまで、私は私を造り、そして殺し続けた。
そして、私ではない存在を蘇生して、今は彼を蘇生している。
『全工程を完了。インキュベータを解放します』
クイックキャストの『ベクトルドライバー』を使い、エイダが彼を解放する。
「10年ぶりか。遅くなってすまない、クライド。気分はどうだ」
《あとがき》
プレシアさん涙眼。
ゾウディアックに行って手に入れた『生命還元法』(うろおぼえ)。
あれで人を甦らせることはできなかったみたいですが、魔法で儀式は完全になったってことで。
エイダが魔法作ってる描写ばっかですが、実はエルテは即席魔法で最初の生命還元法を成功させていたりするのですよ(裏設定)。
エイダが順調にオタになりつつあります。ベクトルドライバーも某エロゲから。効果は違うけど。
恭也という名前の男は刀使いである。異論は認める。あれはSDKだ! とか。
アヴェンジャーの砲身でブン殴ると、バリアジャケットでも相当なダメージを食らうと思います。戦車砲に耐えられる(これもうろおぼえ)とはいっても、魔力構造物ですから。
Oct.10.2009
同じ話を二つ投稿していたのを修正しました。
報告ありがとうございました。