六年が経ち、私達はやっと生まれることができた。
とはいっても、出生届を出しただけなんだが、これは重要だ。
ハンナは完全に日本国籍を得たといってもいい。パスポートも存在する。だが、完璧とはいい難い。
荒井輝という架空の日本人と結婚し、私とアルトを生んだことにした。結果、エルテとアルトは完全な日本国籍を得たも同然だ。もしハンナの書類偽造がばれたとしても、エルテとアルトには帰化という方法がある。ハンナの戸籍改竄には不備があった可能性があるが、荒井輝の戸籍は完璧だ。大金を払って、その筋で有名な裏家業の戸籍屋に頼んだのだから。ついでにハンナの戸籍に不備は無いか、あれば改竄するように頼んだ。
荒井輝とハンナ結婚して三年後に離婚。荒井は失踪し、やがて書類上で死亡したことにされる。私はクウォーターになり、エルテ・ルーデルとアルト・ルーデル、ハンナ・ルーデルは残る。十数年後に私達はなのは達と共に管理局に赴き、冥王閣下の魔砲を傍目に、実力を隠しちまちまと活躍する。そんなシナリオだ。
だから、私は歌う。
『Happy Birthday Dear ALTE!』
「はっぴーばーすでーでぃあエルテ!」
私達が生まれた、この記念すべき日を祝って。
50人に増えたハンナは、様々な場所で働いている。とはいっても、喫茶店限定だが。どこでも美人で若く万能で有能な人間は欲しいのだ。
海鳴市では一ヶ所、その他日本中で働いている。あまり有名でない、どこにでもありそうな喫茶店でウェイトレスをしているのだが、ハンナが働くとそれなりに客が来る。料理の腕も悪くない、というか50倍の速度で経験値を稼いでいるから当然か。得た経験はルーデル家の食卓にも反映され、店の評判を挙げ、さらに給料も上がると、一石三鳥の効果を挙げた。だが、あまり有名になりすぎると私は店を辞める。
そして、その本拠地である海鳴市では翠屋で働いていた。唯一、どんなことになっても辞める気がなかった職場だ。昼は働き、夜は士郎と近接格闘を教えてもらっていた。超長距離精密砲撃、遠・中距離飽和攻撃、近距離戦は問題ないのだが、懐に入り込まれたら私には打つ手がない。どっちにしろ、なのはが生まれるまでの話だったが。
ある程度成長するまで、なのはに関与することは避けたかった。高町家に関与するのは許容範囲だが、あの冥王に至る性格が形成されるには、私という不確定要素は不要、むしろ危険要素なのだ。
辞表とシュタインベルガー・ベーレンアウスレーゼ2003を置き土産に、私は高町家を去った。
同時期、というか今までもだったしこれからもなのだが、訓練をしている。
無人の次元世界で魔法の訓練をしては、何度地表をブチ抜いたことか。
この非常識な魔力は、躯は、デバイスは、私に戦略兵器級の力を与えていた。
カートリッジシステム。A'sやStSでは拳銃弾程度の物しか見られなかったが、アヴェンジャーでは30mm砲弾の花瓶みたいに馬鹿でかいボトルネックカートリッジであり、無論魔力容量も比べるのも愚かしいくらいにほどにでかい。それがドラムマガジンに1350発。一回でも全て使い果たすとチャージに恐ろしいほど時間がかかるから滅多なことでは使わないが、初めてフルロード全力砲撃を行った際は、まさに惑星破壊砲だった。TLSがエクスキャリバーのン倍程度超えた威力で照射されるような……判りづらいか。個人でアザリン砲をブッ放す、そんなイメージが最も近い。非殺傷設定でも気休めにもならないくらいだ。私を造った連中に言おう、敢えて言おう。まさに馬鹿なの? 文字通り死ぬの? と。
とにかく、出力だけではスターライトブレイカーなんざ屁でもない非常識砲撃は『ジオサイドキャノン』と名付けられ封印することとなった。
他にも対地対空精密飽和殲滅誘導砲撃『ノスフェラト』、薙ぎ払い型汎用レーザー砲撃『ファルケン』、対メビウス用超高機動対空魔法『カリバーン』などがエイダから発案された。どれも英雄戦闘シリーズ臭どころかそのまんまだ。これ(エイダ)を造ったのは誰だ!?
だが、個人的に一番好きなものがある。これをプログラムした奴を褒めてやりたい魔法が。
「ゼロシフト、Ready」
『Resdy』
AIがエイダで、ボディがチートなら、これはやらなくては。せっかく日本語であの声が堪能できるようにしたのだから。
「Run!」
世界が歪む。原作では亜光速で敵のそばまで飛んでいく、なんて設定だったが、これはエイダに制御を任せないと無理だ。そんな高速で魔法を制御できるかって言うと、不可能だ。座標を指定して起動すれば、後は完全にエイダ任せ。情けないが、生物の処理速度では反応できない。
『メビウス、破壊』
「っしゃあ!」
エイダがHMDに映し出す幻が砕ける。
『敵、無人戦術攻撃機ファルケンZOE、12機。囲まれました』
「なに!?」
『今のランナーなら余裕です』
無茶をおっしゃる。
「オービタルフレームなんてないぞ」
『訂正。マスターなら余裕です』
そんな雑談をしている間にも、TLSが十字照射で薙ぎ払ってくる。実戦で本物受けたら、骨も残らず消し飛ぶだろう。
『ノスフェラトの使用を提案』
「の前に逃げるぞ!」
『ゼロシフト、Ready』
「Run!」
世界が歪んで、見えるのは真正面の小さな点だけ。
「QAAMM! ロードカートリッジ、ドヴァー!」
たった十ちょいの敵に数十発の誘導弾を使うわけにはいかない。つまりはカートリッジをケチった訳だ。
『ロードカートリッジ。高機動マジックミサイル、Ready』
「フォイア!」
物質化するほどに高密度なQAAMMが、XMAAよろしく多目標に飛んでいく。高密度になると何故か重力とか物理法則とかに縛られるので、制御の殆どはエイダに任せている。誘導は俺。
『撃墜。中破、継戦不可能。撃墜。撃墜。撃墜。撃墜……』
「チィ! ロードカートリッジ、アディーン!」
『ロードカートリッジ、アディーン』
中破した奴がカミカゼを見せてくれやがった。こいつらは無人機、こうなるのは当然か。
「エクスキャリバー!」
いわずもがな、照射範囲に入れば消し炭の、あの巨人の剣。俺が組み上げた魔法のうちの一つだ。日本人のイメージって、結構アニメやゲームに影響されるな、などと考えるのは今更なのか。なんというか、ボー・ブランシェになったような気分だ。
『敵、消滅。全機撃墜』
「疲れた……」
『消費カートリッジ7発。戦闘効率62%。疲労指数0。ランクC。まだまだです』
「精神疲労数えてないだろ!」
俺の躯が疲れないのを知っててこれだ。ついでに、戦闘などでヒートアップすると一人称が『俺』になる。猫を被る余裕がないからなのだが。
『メビウス100機、囲まれました』
「もういいっつってんだ! つかメビウス100機てどれだけ『死ぬがよい』なんだ!?」
『今のあなたなら、真緋蜂改も撃破できます』
「レヴェルが違う!」
エイダを使った模擬戦。
それは地獄の黙示録だった。
《あとがき》
はい、魔法*ルーデルでさくらシュトラーセなんてものを連想した人挙手ー。
私は知りませんでした。
作者はルーデル教徒でエスコン中毒です。A-10神で急降下爆撃ルーデルプレイなんて日常茶飯事。
戦車の群にFAE叩き落としてフッ飛ばすなんて常識よ。
オヴニル? グラーバク? ベルカの変態はSOLGと一緒に爆殺してやったよ。
無論戦闘機ごときに撃墜されたことは滅多にありません(AAGUNによくやられる)。
エイダを軽く暴走させています。
エルテ達を造った技術屋は生粋のヲタです。間違いなく。
ついに次回、原作が動き出す……かも知れません。
Oct.16.2009
いろいろ修正。