藍色の宇宙に、華が咲いた。
その黒い機体が走った後には、色とりどりの華が咲き、散る。
やがて全ての華が散ると、黒い機体はゆっくりとその動きを止める。
『……ラピス、今からそっちに戻る』
『ウン、分カッタ』
機械的な声が、聞こえると、黒い機体の操縦者はポケットから青い石を取り出す。
『……ジャンプ』
一言呟くと、黒い機体は光の粒子を残して、消えた。
後に残ったのは、大輪の華を咲かせていた戦艦、機動兵器の無数の残骸。
嘗て、愛するもののために全てを捨て、復讐鬼と化した青年の記憶である。
「う、く……」
「あっ、テンカワさん起きました?」
頭痛のする頭を押さえながらアキトが起き上がると、メグミが嬉しそうに駆け寄ってくる。
「……ここは?」
「食堂ですよ。あの後、皆アレに気絶しちゃったみたいで、気付いたらここにいたんです」
アレとは、言わずと知れたコウイチロウの大音量ボイスの事である。まさか、気絶するほどとは……。
「……ユリカがいなんだけど?」
「艦長ならプロスさんと一緒にトビウメに行きましたよ」
「……艦長なのに?」
「はい、相手からの要求で」
ちなみに、ジュンも付いて行ったのだが誰にも気付かれることはなかった。
「……ちなみに、その要求には他に何があった?」
「えっと、マスターキーでしたっけ? それの引渡しです」
マスターキーとは、ナデシコを起動させるために必要不可欠なもので、これがなければナデシコなどただの鉄の塊だ。
「……なるほど。流石に抜いてったりしてないよな」
「テンカワさん、今ナデシコ海に浮いてますよ」
「……抜いたのか」
今度こそ、アキトはへたり込んだ。内心、あの馬鹿が。と、今は居ない我が艦のお惚け艦長を罵りながら。
「なぁにを落ち込んでるんだお前!!」
「ん……確かお前は、ヤマダ・ジロ「ダイゴウジ・ガイ!!」……何でもいいよ、もう」
「よぉし、俺がとっておきの元気がでるビデオを見せてやるぜぇ!!」
「……は?」
と言って、なにやらウリバタケと共に準備しているガイ。それを生気のない目でただ茫然と見ているアキト。
「さぁ、見て驚け!! スイッチ、オォン!!」
無駄に高いテンションのヤマダ・ジロ「ダイゴウジ・ガイだって!!」は、腕を高々と振り上げてスイッチを押す。そして……。
『ゲキガンガー3!!』
「……もういいよ。お前はそのままくたばっちまえ」
「まあ、そう言うなって。見てれば絶対元気が出るからよ!!」
ガイの熱弁に仕方なく、ゲキガンガー3を見るアキト。
……数分後
『ゲキガン・フレアー!!』
はまっちゃいました。ガイとポーズを組んでノリノリのアキト。それを、唖然として見ている一同。
「やべぇ、やべぇよガイ!! まさかこの世にこんな素晴らしいアニメがあったなんて知らなかったぞ!!」
「そうだろう、そうだろう! 分かってくれるかアキトォ!! これが熱血なんだよぉ、魂の迸りなんだよぉ!!」
「ああ、分かるさガイ!! 何か、力が漲ってきたぁ!!」
『レッツ・ゲキガイン!!』
完全に洗脳(?)されてしまったアキト。そんな二人を見て、
「……馬鹿」
ルリは一人、呟いていた。
「……さって、と。大分テンションも上がったところで、そろそろ行きますか!」
「ん? どこへだよアキト?」
聞くガイにアキトは「決まってんだろ」と二カリと笑い、
「我等がお惚け艦長の救出だよ」