今回現れた無人兵器は明らかに百を超えている。
なのにそのど真ん中に置くなど、どういう神経をしてるんだろうか?
「……貸し1な、艦長」
呟くと、バッタに動きがあった。アキトは舌打ちし、ブラックサレナの右側のスラスターのみを噴かす。ブラックサレナは回転し、その後ろに伸びているテールバインダーが周りの無人兵器、ジョロを吹き飛ばした。そして、全速力で上に飛ぶ。
「さて、と。10分か。まあ、何とかなるだろ」
再びスラスターを噴かし、空中の無人兵器、バッタ目指して飛ぶ。気付いたバッタは機関銃で応戦するも、ブラックサレナの厚い装甲には傷一つ付けられない。
ブラックサレナは一瞬でバッタに接近し、テールバインダーを振るう。その先端に付けられたアンカークローがバッタを貫く。バッタは暫く動き、機能を停止した。
そのままそのバッタを投げ飛ばし、他のバッタにぶつける。2体とも小さな爆発を起こし、吹き飛んだ。
「装甲、機動力のテストは完了。次は……」
アキトのIFSが光る。同時にブラックサレナの周りに黒い球体――ディストーションフィールド出現する。アキトは向かってくるバッタの群れを確認し、スラスターを噴かした。そのままバッタの群れを通り過ぎると、一寸遅くバッタの群れは爆発した。
「よし。装備が少ないのは厳しいけど、これならそれなりに行けるな」
アキトは確認を終えると、海に向かって飛ぶ。それを追って、バッタとバッタと連結したジョロが追いかける。
「へぇ~、あのパイロットさん凄いんですね~」
モニターで見るブラックサレナの動きに、ユリカは感嘆の声を上げる。ブラックサレナは猛スピードで走っているものの、無人兵器の動きが他に向かないように、接近して攻撃を加えながらこちらを目指している。
「まあ、テンカワさんは元連合軍のパイロットですからねぇ」
「えっ、そうなんですか?」
メグミが疑問の声を上げる。プロスは頷くと、再びモニターを見る。
「しかし、ある事が原因で軍を辞めまして、それを私達ネルガルが見つけて雇ったんですよ」
「そうなんですか~。……艦長?」
メグミが見ると、ユリカが腕を組んで唸っている。
「テンカワ、テンカワ……何だか懐かしいような……。プロスさん、テンカワさんのフルネームって何て名前ですか?」
「テンカワ・アキトですけど。どうしました?」
「……あと7分。まあ、余裕だろ」
牽制を加えながら、残り時間を見るアキト。バッタの数も最初より大分減っている。
「さ~て、暇になってきたなぁ」
欠伸を漏らすアキト。その間にも敵の攻撃を見事に避けている。
『アキトアキトアキト~!!』
「うおぉっ!?」
突如、目の前のコミュニケが開き、同時に聞こえた大音量。当然驚いたアキト。その状態でもちゃんと牽制を加えていたのは、流石と言うしかあるまい。
『も~、何で知らん振りしてたの? 相変わらず恥ずかしがりやさんだな~』
「艦長、前見えない!!」
アキトの説得はユリカには聞こえなかったようで、未だ笑顔を崩さずに離し続ける。
『やっぱりアキトはユリカの王子様だね。火星に居たときも、いつもユリカのピンチのときに駆けつけて』
「!! 火星!?」
今度はアキトが大声を上げた。さっきとは反対に驚くユリカ。
『あ、アキト。どうしたの?』
「……艦長。後でちゃんと話してやるから、今はちょっと退いててくれ」
『う、うん……。じゃあ、頑張ってねアキト。信じてるから!!』
言い残して、コミュニケを閉じるユリカ。アキトは小さく息を吐く。その目は、さっき以上に真剣みを帯びていた。
「……尚更、負けられなくなった」
アキトはスラスターを全開に噴かし、ディストーションフィールドを展開する。突進し、途中で停止し、回転しながらテールワインダーを振るう。そのうちの一機をアンカークローで捕まえ、投げて爆発を起こす。爆煙でカメラが塞がったバッタを、突進して破壊する。
「……ん?」
そのとき、下に何かの影が見えた。アキトはモニターの時間を確認する。『5分』と示されているモニターを見て首を傾げるも、
「まっ、いいか」
スラスターを全開に噴かし、バッタの周りを円を描くように飛ぶ。徐々に密集していくバッタ。そして、海から何かが現れた瞬間、離脱した。
次の瞬間には、バッタたちは黒い閃光に飲み込まれた。
「敵残存兵器。有効射程内に全て入っています」
「目標、敵まとめてぜ~んぶ!! てぇ~!!」
ユリカの号令と共に発射される黒い閃光――グラビティブラスト。バッタはその閃光に飲み込まれ、一機残さず吹き飛んだ。
「戦況を報告せよ」
「バッタ、ジョロとも残存ゼロ。地上軍の被害は甚大だが、戦死者数は何故かゼロ」
「そ、そんな……偶然よ、偶然だわ!!」
ムネタケの悲鳴は見事に無視された。
そのとき、コミュニケが表示され、アキトの顔が映し出された。
『……後5分じゃなかったのか?』
「貴方のために急いできたの! それよりアキト、怪我なかった?」
『ああ、おかげさまでな』
本当はブラックサレナの装甲は機関銃如きでは効かないようになっているのだが、多分こう言ったほうが喜ぶだろうと思った。実際、ユリカは礼を言われたのが嬉しかったのか、「キャーキャー」叫びながら飛び跳ねている。
『それより、そろそろ回収してくれないか?』
「あっ、そうだった。お疲れ様アキト。後でいっぱいお話しようね~」
『了解。こっちも聞きたいことがあるからな』
二人は笑い合う。その光景にプロスとミナトは微笑を浮かべ、ゴートは無表情。メグミはアキトを見て少し頬を赤らめ、ルリはアキトのデータを検索し、ムネタケはなにやらギャーギャー騒いでいる。
「……ユリカ~」
今まで全く出番のなかった副長――アオイ・ジュンは涙を流していた。