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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] 風の行方だな第69話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:82fa1bfa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/23 23:39
風の行方だな第69話



男の首筋からあらん限りの血を吸おうと喉を動かす、ゴクゴクト、ゴクゴクト。

「あ・・・ぁ・・・がぁ!!!」

そう叫びながら、男が俺を引き離そうと手足を振るい、じたばたと足掻くがそんなものは関係ない。
喰らえる限りくらい、喰らい尽くして残りかすなんて生ぬるい残骸にまでなり果たさせてしてやる!
そう思い、更に吸い続け、吸い尽くし、もう吸えるものがなくなって、初めて、男を首の力だけで背中から地面に叩きつける。

「ぐはぁ・・・・。」

そう、男は肺の中の空気をすべて吐き出したかのような声を出して、地面に転がる。

「返してもらったぞ・・・・、彼女の残り香を・・・。」

そう、言い捨てながら自身の胸に手を当てる。
この男が、どれだけの人を喰らったのか、それは解らないが、それでも今の俺の胸の中には、
彼女の・・・、エマの血潮が確かに感じられる。

「あ・・・、あぁ・・・。」

そう、男は声とも成らぬ声を上げながら、男は腹ばいになり両腕で体を持ち上げながら、

「それで・・・、満足なの・・・?
 たった、それだけで君は満たされて・・・、何処までもいけるの・・・?」

そう、男は半開きの口から垂れた涎をぬぐう事もせず俺に問いかけてくる。

「まさか・・・、コレで私は9割方満たされたよ。
 残りの1割は私の残虐性にゆだねよう。」

そう、俺が声を漏らす俺の耳には、確かにアイツの足音が聞こえる。
こつり、こつりと階段を上がってくる足音は、確かに彼の足音で・・・、

「今着たか、騎士よ。」

そう声をかけながらディルムッドを見ると、彼はアーチェと自身の名を叫んでいた男のつけていた兜をその手に持ちながら、

「コレが・・・、あの男の本体だった。
 中身は・・・、干からびた血まみれの遺骸と、枯れ果てた茨だった。」

そう、奥歯をギリッと噛み締めながら声を吐き出してくる。
そんなディルムッドを見た男は、えずきながら、

「あ~あ、彼の魔法も解けちゃった。
 げほっ・・・、折角・・・、生きてるように見せて魅せていたのに。」

そう、男はがっかりしたように漏らす。

「お前はこれを知っていたのか?」

そう問いかけると、男はもうどうでもよくなったかのように、

「知ってたよ・・・、だって彼は今まで一度も兜を外さなかった、
 でも、皆は彼の素顔をしっていたんだ。
 ふふ・・・、可笑しいよね?

 誰も彼もただ盲目的になりすぎて、本当に何も見えていなかったんだから。
 彼も・・・、此処から逃げ出せば、まだ人の姿でいれたのに、
 まったく持ってバカな話しだよね。」

そう言うと、男は俺の目を見ながら言い放ち、
ぎらついた目で俺を見ながら、

「さて、娘さん。
 人に見放され、神に見放され、食べたい物も食べれず、
 信じてくれる人もいなくなった僕を、君の残虐性はどうしてくれるのかな?」

そう、言い放つ。
何もかもなくした相手に与えられる残虐性・・・。

「ディルムッド・・・、我が騎士よ・・・。
 ゲイ・ボウを解放して貸してくれ・・・。」

そう言うと、ディルムッドは黄の槍を無言で俺に手渡してくれる。
何もなくとも、肉体的な痛みは感じられる。

「言っただろう、1割の残虐性と。
 たったそれだけで私は満たされるのだよ。」

そう言葉をもらし、右肩に槍を差し込み、捻り、右腕を体から切り離す。

「腕は戻るよ、娘さん・・・。」

男が声を漏らすが、その声に耳を傾ける気は無い。

「ただ、その1割は何時満たされるのか私も知らない。」

そう言葉を継ぎ足し、左腕に槍を差し込み、同じように切り離す。
ほとんど血を吸ったせいか、驚くほどに出血は少なく、逆にそのせいで紅い肉がより鮮やかに見える。

「こんな事をして一体、誰が喜ぶのかもわからない。
 戦果として、敵将の首を持ち帰る趣味など私は有していないのでね。」

言葉を紡ぎながら、両の羽を一気に突き斬る。
そこでようやく気付いたのか、男は残った両足で体を跪かせながら、
しかし、何処か悟ったかのように、

「腕も羽も、元に戻らない・・・、普通なら、茨が体になってくれるのに・・・。
 コレが娘さんの残虐性なんだね。」

そう、澄んだ目で問いかけてくる。

「本来はこうあるべきものが、その本来の姿を取り戻す。
 お前は言ったな、『終わった事はもう、元には戻らない』と。
 それがその元には戻らないという事だ。」

そう静かに語りながら、跪いた両足を太ももから一気に切り飛ばす。
すると、男の体はズルリと後ろにすべり、仰向けに倒れる。

「コレで僕が痛がれば、娘さんも満足だったんだろうね。
 でも、僕にはもう痛みを感じる事もできないんだ、何でだろうね。」

そう、何処かせせら笑うように言う男の顔を覗きこみながら俺が口を開く。

「痛みを与えたければ、拷問を行うよ、だから、私はコレで終わりにする。
 後は、その四肢の無い体を引きずって暗い闇の中で生きるといい。」

そう言うと、男は始めてこのとき顔を歪め、

「それが君の・・・残虐性か!」

そう叫ぶ男の髪を掴んで体を持ち上げ、俺と目が合う高さまで持ち上げ、

「1割りならコレぐらいだ。
 では、永遠にさようなら。」

そう言って、手を放し、そのまま男の体は俺の影の中にズブズブと消えていく。

「・・・。」

「これで・・・、終わりでいいのか?」

そう、俺のする全ての事柄を見ていたディルムッドが俺に声をかけてくる。

「あぁ・・・、これ以外にすることは無い。
 終わりだよ。」

そう、ディルムッドに答えて窓辺から外を見る。
外は早い夜明けで蒼い霞がかった空に、文字通り焼けている砦を囲む森の朱が映える。


ーside?ー


それは私にとって、寝耳に水のような話だった。
早い明け方、私の眠りを醒ましたのは鶏の雄叫びではなく、コレよりブルターニュへ連れ立とうとそるヘンリーの声だった。

「叔父上、叔父上!
 大変です、森が盛大に燃えています!!」

そう、ヘンリーが私の部屋になだれ込んでくる。
・・・、はぁ、気が重いのは今に始まった事ではない。
ばら戦争が始まり、私達は国外追放に合いこれよりブルターニュへ向けて出発しようとするだけでも気が重いのに、
そんな朝に火事の知らせ・・・。
しかし、見に行かないわけにもいないだろう。
少なくとも、私は貴族でありヘンリーは将来王となるべき人間だ。
そんな彼に、貴族の何たるかを教えるのも又、私の役名なのだから。

「わかった、ヘンリー今から馬を出して見に行こう。
 ことと次第によれば、大惨事は免れぬ。」

そういって、ベッドから起き上がり身支度を済ませて馬小屋へ向かう。
本来なら、従者も付くであろう身分だが、今の私達は追放されたためとことん身軽だ。

「叔父上早く!
 森の奥には、傭兵達がいたはずです。」

「解っている・・・、ヘンリー遅れるなよ!」

そう言って、馬に鞭をうち突風のように燃え盛る森を目指し馬を走らせる。


ーside俺ー


燃え盛る森は何処か胸糞が悪く、嫌気が差す。
そう思い、窓辺から地上に飛び降りると、そこには娘たちが勢ぞろいしていた。

「お嬢様、森より火の手が上がりました。
 多分、ジュアと言う男の魔法の火が森の木々に燃え移ったのでしょう。
 私のミスです。」

そう言って、小さな子供が・・・、ロベルタが頭を下げながら声をかけてくる。

「そうか・・・、なら消して来よう。」

そう言って、飛び立とうとすると、

「なら、私達もお供します。」

そう、ロベルタが俺の方を見てくるが、

「いやいい、お前たちは此処の死体を全て魔法球にでも放り込んで餌にでもしろ。
 私は、ここに流れ落ちた血を全てくらい尽くして火を一気に消してくる。」

そう言って、空に飛び上がり流れ落ちた血を全て集めて喰らいつくし、
森を燃え盛る炎ごと凍てつかせ、砦に戻ったときには、全てがまるで何事もなかったかのように、
戦いがあったことも、哀しみがあったことも、殺戮があったことさえも、忘れたかのように静けさに満たされている。

「お嬢様の仰せられた事、全てつつがなく終了しています。
 それと、コレを・・・。」

そう、飛び立った時と同じようにロベルタが出迎え声をかけ、何かを俺に差し出してきた。

「・・・、そうか・・・。」

ロベルタに手渡されたものは、釘に貫かれた箱が2つ。
軽い方を開けてみると、中には枯葉のようなものが入っていた・・・。
多分、コレは聖句箱と言うものだろう。
リッチと言う魔法を極めた者が死霊となってなお、自身として生きていくため、中に自身の核となる心臓をつめた箱。
コレがある限り、彼らは無限に再生を繰り返す。

「ロベルタ、箱はコレだけか?」

そう聞くと、ロベルタは他の姉妹に目配せをした後、

「開いてないものはコレだけです。
 後は、全て開かれ、中身はありませんでした。」

そう言って、頭を下げる。
なら、この残った箱の中身はあの男のモノだろう。
そう思いながら、箱をいくばくか見ていると砦に続く橋の上を駆ける馬の蹄の音がする。
そして、程なくして2頭の馬と2人の人間が砦に入ってきて、馬上より私たちを見渡す。

「此処は傭兵団の砦だと聞いた!
 しかし、いるのは女ばかり、コレは何事か!
 それに、燃え盛る森の炎が凍てついて消えた、コレはいかなる事か!!」

そう、壮年の男が声たからかに叫び、

「貴殿が此処の長か?」

そう言って、ディルムッドの方をみる。

「俺は長じゃない。
 俺たちの主は彼女だ。」

そう言われて、男は俺の方を見るが、その目には不信感がありありと映し出されている。
まぁ、そうだろう中世の女性の地位なぞたかが知れている。

「貴女が長か?」

「いかにも、私が此処にいるもの全ての主だ。
 馬上より人を見下げる貴殿達は何の者か?」

そう言うと、男は馬を降りそれに続くようにもう1人の男も降りる。

「高貴な方とお見受けする。
 私はジャスパー・テューダーと言い、後ろの彼はヘンリーと言う。」

そう言われて一瞬、頭を抱えたくなる。
イギリス王朝の立役者と、未来の王ヘンリー7世のお出ましとは恐れ入った。
しかし、彼らがこんな所でなんうろついている?

「私はエヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェル。
 こんな場所に何用か?」

そう言うと、テューダーが一瞬険しい顔をしたのち、

「私達は森の火事を見に来た。
 ・・・、マクダウェルと貴女は言ったが、もしや・・・?」

そこでテユーダーが声を詰まらせる。
彼なら、エヴァの父の事を知っていても可笑しくはない、何せ本物の貴族なのだから。
だが、だからこそ声を詰まらせたのだろう、マクダウェル家の血はエヴァで最後。
後は親族が残りはするが、マクダウェルと言う姓の者はいない。

「ジャスパー・テューダー殿、無用な詮索は止めてもらおう。」

そう言うと、テューダーは1度目を閉じた後、

「解りました、マクダウェル殿。」

そう、テューダーが声を出すと同時に、

「あ~!マクダウェル家のご息女!!」

そう、ヘンリーが驚きの声を上げる。
はぁ、頭が痛い。
少なくとも、彼は有能な人間として語り継がれるが、
少なくとも、彼の手腕が磨かれるのはフランスのブルターニュに言った後。
つまりは、今次点の彼は意外と残念な人物と言うことか。
そんな俺の心情をあらわすかのように、テューダーも頭を抱えている。

「はぁ、その家名は既に棄てた。
 私はもう貴族ではないのだよ、ヘンリー君。」

しかし、ヘンリーはじっと俺のことを見ながら、

「俺達はこれからブルゴーニュに向かうんだが、君も来ないか?
 そうすれば、君の家名復活も夢じゃない。」

そう、自信に満ちた目でかたりかけてくる。

「残念な事に、私は没落したのではなく、自身で棄てたのだ。
 そこを履き違えてくれるなよ、若造。
 ブルゴーニュに行くというのなら、即刻立ち去れ、テューダー殿もそれがお望みだろう。」

そう言って、テューダーの方を見ると彼も俺の意見に賛成したかのような色を見せる。

「若造って、なら今は何をエヴァンジェリンちゃ・・・、殿?」

軽く睨んでやると、そう最後をヘンリーが言い換える。
はぁ、関わりたくは無いが、此処での応答は後に響きそうだ・・・。

「商人だ。
 エマの仕立て屋、そこが私の今の住処であり城だ。
 ヘンリー、お前の着ている服の紅い薔薇の刺繍はうちのお手製だ。」

そう言うと、ヘンリーは自身の服の刺繍を見ながら『へ~』だの『ほ~』だのと抜かしている。

「商人・・・、ですか。」

そう、黙っていたテューダーが先ほどとは打って変わって、目の色を変えて俺を見てくる。
・・・、利用価値か。

「テューダー殿、いずれ王朝を復権させるというのなら、できる範囲で助けになりましょう。
 ですから、此処での事は無詮索、他言無用と言うことで手を打ちませんか?
 あなた方も、藪を突き毒蛇に襲われるようなマネはしたくないでしょう?」

そう言うと、テューダーはこちらの事を値踏みするように見た後、背後の森をチラリと一瞥して、

「それは仕立て屋としてですか、それとも、商人としてですか?
 それとも、法をはずれし者としてですか?」

そう、僅かに震えながら最後の一言を継ぎ足してくる。
思えば、貴族が魔法の事を知らないという事はないか・・・。
それが実際するしないに関わらず、魔法の都と呼ばれるイギリスで、今回のような輩が出てくるような世界で。
幻想を空想と決め付けるにしても、科学と言う言葉さえない今では、彼らの考えからすれば、
魔法は実際するものとしての比重が大きいのだろう。

「永遠の命以外なら商いましょう。
 ですが、裏切りの代償が死であると言う事を、忘れないよう説に願います。
 ・・・、必要な時は仕立て屋へきてください。
 商談はそこからです。」

そう返すと、テューダーは複雑な笑みを浮かべながら、

「必要とあらば行きましょう。
 ヘンリー、ブルターニュへ向かう準備をして旅立つ。
 では、マクダウェル殿。」

そう言って、ヘンリーとテューダーは馬に乗って森へ戻っていくが、
その戻り際に、

「また顔を見に来るからね~、エヴァンジェリンちゃん~!」

そんなあほな事を抜かすヘンリーがまた俺の頭を悩ませる。

「エヴァ、よかったのかあれで?」

そう、ポンと俺の方にディルムッドが手を置きながら聞いてくる。

「仕方ないだろ、未来のイギリス王にそれの立役者だ。
 ・・・、無下には出来まい。」

「・・・、君の一方的な知り合いに今度から、誰がでてこようが驚かない事にするよ。」

そういう、ディルムッドの顔は何処かげっそりしている。
はぁ、もうこの事は今は忘れよう。

「・・・帰るぞ、私達の帰りを待つ人のいる、帰るべき家に。」

そう言い、娘達を魔法球に入れ、橋を渡る。
ただ、1度だけ振り返った砦は何処も壊れる事もなく、ただ静かに私達の背中を見続けている。


ーsideノーラー


エヴァさん達が帰ってきたのは、昼前の静かな時間でした。
戻ったら葬式件パーティーを行うという事で、朝からバタついていた時に店に人がはった事を知らせるベルが鳴り、
そちらの方を見てみると、

「ノーラ・・・、ただいま、今戻ったよ。」

そう言って、何時もと変わらない、

「エヴァ・・・、ン、ジェリンさん・・・。」

そこに立っていたのは、確かにあの日あの夕暮れに店をでたエヴァさんでした。
そんなエヴァさんを見ると、私は居ても立ってもいられなくなり、

「おいおいノーラ、いきなり抱きつく事はな・・・、誰も欠けずに戻ったよ。」

そう言って、私の頭を優しくなでてくれます。
たぶん、エヴァさんは私が泣いていたことが解ったんだと思います。
あの日の夕方、どこかでエヴァさん達は居なくなるであろうと覚悟していたので、こんなに嬉しいことはありません。

「俺も居るんだがな。」

その声に顔を上げると、頬をポリポリと掻くチャチャゼロさん。
そのチャチャゼロさんに抱きつくかどうか、エヴァさんに抱きついたまま考えていると、

「チャチャゼロ、帰ったら言う言葉があるだろ。
 それを言わんから、ノーラが戸惑ってるじゃないか。」

そう言われたチャチャゼロさんは、一瞬キョトンとした後、
あぁと、納得した表情で苦笑しながら髪を掻き揚げて、

「ただいま、ノーラ。」

「はい、お帰りなさい、チャチャゼロさん・・・、ロベルタさんは?」

そう言って、辺りを見回しまわすと、エヴァさんが苦笑しながら、

「無事は無事なんだが、ちょっと療養中でな。
 なに、数時間で治る様にするさ。
 と言うわけで、準備を頼む。」

そう言って、奥の部屋に入っていきます。
その後姿を見送っていると、

「さて、1人は大変だろう。
 俺も手伝うよ。」

そう言って、チャチャゼロさんも手伝ってくれて、昼過ぎには準備が完成。
店先には大量の料理が並び、行きかう人がちらちらとこちらを見ているなか、
エヴァさんがワインの入ったグラスを大きく掲げ、

「身分も行きかう人も関係なく、今だされている料理を食べて飲んで楽しんでくれ。
 今日は、この店の主であるエマリエル・シャーリーが没した日だが、彼女も、そして新しい店主である私も湿っぽいのは好きではない。
 皆で楽しく送り出してあげて欲しい!!!」

そう言うと、ライアさんが拍手をしながら、

「そういう話なら、飲んで歌って送ってやろうぜ!」

そう言いながら、料理に突進し食べだしそれに釣られるように、行きかう人も同じように食べだし、
途中から、音楽や歌も入り、辺りはまるで収穫祭の祭りのよう。
私も、料理を食べていると、ふと、ライアさんとエヴァさんの会話が耳に・・・。

「エヴァンジェリンさん・・・、ご要望はコレで満足ですか?」

「あぁ、満足だよ、ライア。」

「・・・、追加の注文の棺の中身はやはり?」

「あぁ、空だよ。
 埋めるべき骨も、奉るべき魂もそこには無い。
 あるのは、胸の内にある彼女の残滓だけさ。」

「そうですかい・・・、そうですかい。」

その会話は何処か奇妙で、落ち込んでいるのはライアさんで、慰めるのがエヴァさんと言う何処か逆の印象を抱かせます。
でも、それだからこそ、どこかでエヴァさんが吹っ切れたのではないかと、私は考えるのです。


ーside俺ー


葬儀は華やかに行われ、夜になった今でも料理は無いが、
まだ残っている酒を飲んで、陽気になった連中が外で楽しそうに歌っている。
そんな姿を2階から見ながら、1人からの棺と共に静かに飲んでいる。

テューダー達と別れた後、砦を探索したロベルタに遺体があったかと尋ねたが、
やはり彼女の遺体はなく、多分あの男に食べられたか、もしくはどこかに棄てられてしまったのだろう。
その事だけがやりきれないといえば、やはりやりきれない。
そんな事を思いながら、グラスを傾け影から取り出した聖句箱を眺める。

「ここにいたのか、エヴァ。」

そう、声のするほうを見ると、そこにはディルムッドが立っていた。
コイツも、下では結構飲まされたのだろう、服から香るワインの香りがそのことを物語っている。

「あぁ、明日コレを埋葬するのでね、最後の別れさ。」

そう言って、からの棺を見るとディルムッドは『そうか』と、
一言つぶやき棺の横のベッドに腰掛ける。
特にお互いはなす事もなく、静かにグラスを傾けている。

「・・・、チャチャゼロ・・・、ナイフを持っていないか?」

そういうと、ディルムッドは俺の方を訝しそうに見ながら、

「また、体を傷付けるとか言い出すんじゃないよな?」

「違うよ、私の髪を・・・、な。
 棺に入れようかと思う。
 私はあちらに行く事もできないし、彼女がこちらに来る事もできない。
 だから、せめて何かを・・・、とな。」

そう言うと、『解った』といって部屋を後にする。
その間に、俺は髪を三つ編みにして肩からたらす。

「持って着たよ。」

「あぁ、ありがとう。」

そう言って、手渡されたナイフを髪に這わせ、一気に切り取り棺に納める。

「さようなら、エマ。
 ここに貴女はいないが・・・、それでもこうして祈らせてくれ。」

そう、言葉を残し、空の棺の蓋を閉めた。



作者より一言。

そろそろ時代を飛ばします。



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