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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] それぞれの思惑だな第39話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:122d81a5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/11/25 09:56
それぞれの思惑だな第39話





魔法球の中で半日、外では大体30分ぐらい寝て、今は聖書を読んでいる。
ちなみに、俺が目を覚ました時にベッドの周りに10人ぐらいのメイドがいて、
皆がフライパンやら鍋やら、お玉やら伸ばし棒やらを構えて、
俺を起こそうと、全員で打ち鳴らしていたのはなんとも言えない光景だった。

そんな感じで起床して、今は教会に間借りしている部屋で俺は聖書を読み、
ロベルタは聖書を見て覚えた内容を『がんばりまっしょい!』と言って写本中。
まぁ、聖書は初めて読む物なので新約か旧約はしらないが、
この本の登場人物にこの宗教での初めての不死者、カインと言う人物が載っている。
彼は失楽園後のアダムとイブの子供で弟にアベルがいる。
彼が不死者になった経緯はカインとアベルに、

神「ちょい何か貢げや。」

カイン&アベル「ウス!じい様。」

そう言って、カインは土を耕す人なので土の物を、アベルは羊飼いなので肥えた羊を貢いだわけだが、
じい様である神はアベルの貢物は受け取ったが、カインの物は受け取らない。
そんなカインの中にアベルに対する、妬みやら嫉みやら僻みやらの不の感情が生まれ、
最終的に野原に呼び出して、

カイン「じい様に好かれているみたいだな。」

アベル「私はじい様に愛されている!!!」

カイン「私もじい様の一番になりたかった!!!」

そしてアベルを殺害。
まぁ、間の会話は別として、大体こんな感じでカインは犯行を行い、
その後神に呼ばれて、

神「カイン、アベルはどうしたんだ?」

カイン「しらん!私は弟の番人じゃないんだからね!」

神「あんさん何しなはったんや!アベルの声がアタイに、土ん中から叫びかけてくるんやで!」

アベル「じい様・・・、私がヤりました。」

るるる~る~。
とまぁ、こんな感じでカインは白状して、どうしようか迷っているカインに、

神「ここから逃げるんや!逃げて逃げて地上の放浪者になるんや!!」

カイン「無理ですって、私を見つけたら誰もが私を殺すでしょ!」

神「いやないない。むしろ、あんた殺したら7倍返してやんよ!」

と、言うわけでカインは神から殺したらダメな人、神認定。
となった訳なのだが、取り敢えず神よ、アンタ野菜嫌いなのか?
そう、感想を抱く俺もどうかと思うが、
まぁ、かなりはしょったが、こんな感じで不死者の出来上がりとなったし、
不死者=弟を殺した悪い者となった。
ん~、聖書のどっかに著者 聖イエス とか書いてないよな?
まぁ、ブッタと共同生活しようが、下町の安アパートにいようが、
ジョニーデップ似合だろうが、神は神である。

ついでに言えば、高校の頃JUDESと言う漫画で12使徒全員に和名が振られているのを見て、
ウチの高校に実は全員いるんじゃないかと思い、副会長権限で生徒名簿を調べたら、
結果から言うと12使徒はウチの高校に全員いた。
まぁ、だからなんだと言われれば、なんともいえないが、
ただ何となく、いたたまれない気持ちになったのは今でも覚えている。

と、こんな事を思いながえら聖書を調べているのは、エヴァが追われていた経緯を探ろうと思い、
この地方で一番メジャーな宗教観からやってみ訳だが、実はこの後カインは結婚して子供も作っている。
ただまぁ、この話だと、血を吸うと言う言葉は出て来ないし、死なない=吸血鬼と言うのもどうかと思う。
更に言えば、血を吸う悪い者と言えば何気に世界中にいる。

例えば中華の国だとキョンシイだし、名前だけ覚えている者だと、
ストリゴイとか、モロイとか、モモーイと・・・・、うん、モモーイは血を吸う者じゃない信者を増やすものだ。
最近は類義語としてくぎみーと言うのもあるが、それはさておき、人の血を飲むから悪いといわれても、
神の血としてワインを飲むのはいいのだろうか?
そう思いながら、ワインを飲みキセルで煙を呑んでいると、

「ただいま。」

そう言って、ディルムッドが部屋に帰ってきた。

「お帰り、様子はどうだった?」

そう言うと、ディルムッドはコートをイスにかけて座りながら、

「大きく変わってはいないと思うが、
 ただなんと言ったかな・・・・そう、レメリオ商会の主が異様だったな。」

そう、手の平をポンと打って声を上げた。
レメリオ商会・・・・、確かこれがババをロレンス達と一緒に引いた商会だったな。
しかし、異様と言うのはどういうことだろう?
まだ日は残っているはずだ、でなければロレンスがあの場で引き下がる訳が無い・・・・。
と、なると金の密輸をロレンス達がもう持ちかけた?

いや待て、それは少々おかしい。
そうなったらなったで、俺の所には必ず来なければならない。
少なくともキーマンであるノーラは、今の所ウチの方になびいている。
その状況で、ノーラがこちらからはなれるかどうか?
密輸は秘密事項だが、そうすると、今度はノーラが俺達の所に現れないのがおかしい、
なにせ、今のノーラに針仕事を教えているのは俺である。
そして、今日も教える事になっている。
そのノーラが急に羊の放牧に出れば少なくとも、俺達がおかしいと思うのは目に見えている。
となると・・・・?

「チャチャゼロ、異様とはどういった顔なんだ?」

そう聞くと、テーブルの上の俺のワインを飲んでいたディルムッドは、

「憔悴していたが、目だけはギラついていた。
 なんだろう・・・、ああいうのを手負いの獣っていうのかな?」

そう言って、ディルムッドはもう一口ワインを飲んだ。
・・・、果報は寝て待てといって、寝て待っていたが、その果報が一向に来ない。
何か見落としたか・・・・?
それとも、俺が知っているか、或いは別のストーリーが展開されているのか?
取り敢えずは、ノーラが無事でロレンス達も無事なら、ノーラだけを引っ張って、どこかへ向かえばいい。
だが、前者となると、どうなるのだろう?

荒事・・・、となると夜ならいいが、真っ昼間の白昼堂々暴れるのは勘弁願いたい。
少なくとも、こっちにいる間は隠れ家を作ったり、研究したりと、少しは静かにしたい。
今の俺達としては、下手に正体がばれず、追われない事が第一条件である。
まぁ、昼過ぎまでは待ってみるか。そう思い、写本の終わったロベルタに、

「暇だからゲームでもするか?」

そう言うと、ロベルタはディルムッドの横に座り、

「宜しいですが、何をします?私はほとんどゲームと言うものを知りませんが。」

まぁ、知らなくてもゲームなんていうものは、教えれば大抵はできる。
それがボードゲームなら尚更で、やりながら覚えればすぐに分かる。

「なに、チェスの相手を頼もうかとね。
 駒の動きは教えるし、鏡打ちでもすればすぐ覚える。」

ではお相手しますとロベルタが言い、果報を待つ事にした。


ーsideホロ&ロレンスー


空が白み始め、もう日が昇るという頃ようやく宿に着きホロのいる・・・・、いやホロにいて欲しい部屋を目指す。
宿に着いた瞬間、宿の主から、

「はっ!旦那はさぞ稼いだ商人なんだろう。
 俺が寝ずに旦那を待っている間に、一体いくら博打で稼いだか聞きたいもんだ!
 今日は日がな一日睡魔と言う悪魔と決闘し続けにゃならん!」

そういって、食って掛かってきた宿の主に、
一言すまないと返し部屋へ向かう。
ただ、幸いな事と言えば、そのすまないと返した時に、
連れが帰ってきてるから、自警団にはまだ連絡してないと聞けた事だろう。
だが、それは同時に確実に部屋に行けば、ホロと顔を合わせなければならないと言う事になる。
あの時手を払った俺は、一体どう声をかければいいのだろうか?

手にした金は金貨3枚とリンゴ1つに、後はあの商人一行との交渉の機会。
だが、その交渉の場に立つにも、ホロを連れて行く事が条件となる。
これは俺の予感だが、あの商人一行は俺だけが行っても、
頑として交渉の場には立たないだろう。

だが、あの夫妻が大金を持っているのは間違いない。
先ず、夫のチャチャゼロさん、彼は顔に眼鏡をかけている。
メガネと言うのはガラスで出来、傷つきやすく早々かけながら過ごすものではない。
それに、眼鏡をかけるものは神学者や司祭といった、いわば文字を読む仕事をするものが使う。
更に、メガネはベネチアで一括されて作られ、ツルやフレームにも値が張る物が使われている。

それならば、チャチャゼロさんは、それだけの帳面を見て計算して、
また帳面をつけると言う立場の人間なのではないだろうか?
彼自身は商会に関わらないといったが、それで商売をする方法は文字の代筆に王宮などで使う文章の作成
教会からの依頼での聖書の写本など、仕事には事欠かないし、今泊っているのが教会と言うのならば、
ひょっとしたら彼はこの町の教会に聖書の写本にやってきたのかもしれない。

それに妻であるエヴァさん。
彼女は俺とチャチャゼロさんが交渉している時に、
ベッドにロベルタさんと座り煙をずっと吸っていた。
これもまた、大商人や貴族の特権といっていい。
何せ、燃やして少し吸えば終わる煙をずっと吸っていると言うのは、金を燃やしているような物である。
なのに、エヴァさんはそれを気にしないかのように吸い、またチャチャゼロさんもそれを咎めない。
つまりは、それをしても気に泊めないほどの金を持っていると言う事になるし、
彼女の吸い方を見ていると、文字通り金を湯水のように吸っている。

更にいえば、彼女の座っていたベッドの周りには、数冊の上等に装本された本さえもあった。
アレを彼女が読むのか、ロベルタさんが読むのかは分からないが、
活版技術がまだ復旧しきっていない状況では高級品である本を、
ベッドの上に置いていると言うのも、商人にとっては心臓に悪い話である。
これだけ見ても、やはり今この町にいる商人から金を借り尽くした俺にとっては、
彼等から借金する以外の道がない。

そう思いながら、自室のドアを開ける。
部屋の中に明かりはなく、しかし、白み始めた空のおかげで室内は思いのほか明るい。
そして、部屋に備えてあるベッドにはこんもりと膨れた布団と、そこから伸びる尻尾がある。
当然だろう、宿の主が連れが帰ってきてると教えてくれたのだから。

「うっん、ホロ起きているか?
 たぶん耳のいいお前の事だから、俺が部屋にはいってくる前に、
 俺がこの部屋に帰ってくる事が分かっただろう?
 だから、お前が起きているものとして話す。」

そう、ひとつ前置きをする。
ベッドから伸びている尻尾は特に反応していないが、
それでもここまで来たら話すしかない。
ホロの寝ているベッドの上に、自身の持っている全財産を置き話しかける。

「ホロ、悪かった。俺の見通しの悪さでこの様だ。
 一晩で集められたのは金貨3枚それとリンゴ1つ。
 お笑い種だろ?だが、俺も商人だ。お前との約束を護れないのは心苦しいが、
 それでも、今の俺にはこれだけしかない。だが、もう・・・・。」

その後『一度お前が知恵を貸してくれるなら』を俺が言おうとしたとき、急にベッドの中のホロが起き出し、
ベッドの上の金貨を俺の額に投げつけた。

「ぬしよ、今まで何処に行っておったのかや?
 わっちは、ぬしが帰ってくるものと思い一晩寝ずに何か無いものかと考えとった。
 今回ぬしが借金したのはわっちのせいじゃ。
 わっちが知恵を廻さず、金を得ぬならおぬしはこんな借金をせずにすんだはずじゃ!!
 なのに、何故おぬしは怒らぬし、金を渡し一人でどうにかしようとするんじゃ!!
 わっちはそんなに頼り無いかや!?」

そう言いながら、ホロは俺に抱き付いてくる。
小刻みに震えるホロは、もしかしたら泣いているのかも知れない。

「お前が頼り無い事なんて無い。
 むしろ、俺はお前以上に知恵の回るやつを知らないし、
 お前以上に綺麗な娘も見た事が無い。」

そう言うと、俺の懐に顔をうずめていたホロが顔を上げ、俺と視線が交差する。

「ならなんで、ぬしはわっちを頼らん!
 わっちがその気になれば城壁を跳び越し、野山をかけて逃げることができる!」

そういってくる。
だが、それをしてしまえば俺はもう、ホロとこの楽しい旅をする事はできない。
それだけはごめんだ、それに、それをすれば俺とホロは晴れて追われる身となる。
そうなれば、よほど逃げ隠れがうまくない限り、見つかれば火刑にあうだろう。
そう、それだけはけしてできない。

「ダメだ、ホロ。俺はお前とこの楽しい旅を続けたい。
 逃げも隠れもせず、今の楽しい旅を続ける事が俺の望みだ。
 だから、お前にさっきの金とリンゴを・・・。」

そこまでいうと、ホロは俺の胸を1つ『トン』と叩き、

「ぬしは・・・・・・、なんでそんなにお人好しなんじゃ?」

そう言いながら、顔を伏せている。
しかし、目に見える尻尾はサワリサワリと動き、
両の耳は俺の言葉を聞き逃す事が無いよう動いている。
何でか・・・、そう問われれば、

「性格、かな?」

そう言うと、ホロはスパンと俺の頬を叩き、
その反動で転んだ俺に馬乗りになり、息がかかるほどの距離で、

「ぬしよ、こういう時はもっと、気の聞いた台詞を言うもんでありんす!」

そういいながら、俺の目を見てくる。
たぶん、次の回答が違えばまた殴られ、そしてまた回答を欲してくるだろう。

「お前が、特別な存在だからだ。」

そう言って腕を回して抱きしめる。
そうすれば、ホロの細いからだが俺の腕の中に納まり、
今更ながらに、俺が昨日ホロにした仕打ちが酷い物かと言う自責の念に駆られる。

「本当に悪かったホロ。」

そうホロに言えば、ホロは俺の腕の中で、

「たわけ、ぬしにあんな顔をされたら怒れんじゃろ。」

そう言って、しばしの間抱き合った後、どちらともなく笑い出し、
最後にはお互いの顔を見て笑いながら、

「わっちらは一体朝っぱらから、いったい何をやっとるんじゃろうな。」

そうホロが目尻に涙を浮かべるほど笑いながらいい、

「まったくだ。日は昇った、時間も少ない。だからこそできる事をしよう。」

そう言ってお互いに立ち、体を離す。
多少名残惜しいが、それをホロに悟られるのは悔しく思えた。
なので、そのまま腰をかがめ、ホロにリンゴを投げて渡す。
そうすれば、ホロはリンゴを受け取り、それをまじまじと見つめながら、

「ぬしよ、そういえば夜は帰らずに何処の女商人の所に行ったのかや?」

そう、ホロがジト目で俺の事を見てくる。
しかし、そんなものに心当たりは無い。
そう思って、首をかしげていると、ホロはいぶかしげに、

「ぬしの服から甘い香りが匂いんす。」

そういわれて、自身の服の匂いを嗅ぐが特に変わりはない。
それに、甘い香りのするような場所なんて・・・・?
そう思っていると、ベッドに座りホロが食べているリンゴが目に入った。
もしかすれば、

「エヴァさんの煙の匂いかもしれない。
 あの部屋なら、たぶんエヴァさんの煙が充満しているだろうから、
 その匂いがついても不思議は無いが・・・。」

そう言いながら、ホロの対面のテーブルのイスに座ると、
ホロは俺を睨みながら、

「ほう、ぬしはわっちが一晩知恵をめぐらせておる間に、別の雌と同じ部屋に2人で一晩いたのかや?」

そういってくる。
確かに一晩いた事は否定できないが、しかし2人ではない。
それに、エヴァさんはチャチャゼロさんの奥さんである。

「ちがう、教会にチャチャゼロと言う商人がいて、その奥さんがエヴァさんだ。
 俺が部屋に入る前から煙をすっていたから、その所為で匂いがついたのだろう。
 今お前が食べているリンゴも、エヴァさんからの貢物だ。」

そう言うと、ホロは首をかしげながらリンゴを見て一口かじり、

「これをわっちにかや?」

そう聞いてくる。
だが、昨晩の会話からすれば当然だろう。

「エヴァさんの言う事は、詩的な表現が多くてよく分からないが、
 たぶんお前と知恵を出し合って、またこいと言いたかったんだと思う。
 なにせ、『少し頭を冷やして女神に貢物なんてしたらどうです?』と言われたぐらいだからな。
 今更ながらに、俺がどんなひどい顔だったかがよく分かる。」

そう言うと、ホロは残りのリンゴをシャリシャリと全部食べ、

「なぁぬしよ、そのチャチャゼロとエヴァと言う商人は街商人と言うやつかの?」

そう聞いてくるが、それは昨晩チャチャゼロさん自身の話で否定されている。
だが、

「町商人じゃない。それは彼自身が否定したし、商会にも属していない。
 だが、金を持っているのは確かだ。彼等の身なりは早々商人ができるものじゃない。」

そうホロは俺の話を聞いて、やはり首をかしげながら、

「金をもっとるのはいいんじゃが、
 そのエヴァと言うのはどうやってわっちの事を知ったのかや?」

そう聞いてくる。
・・・、確かにそうだ。
あの時は金を借りるのに一生懸命すぎて、その事が頭に無かったが、
確かにエヴァさんは誰に俺たちの事を聞いたのだろう?
それに、彼女の言葉を思い出せば、それはあまりにも今の俺達の事を射抜きすぎていて、
だからこそ、それは俺たちの事を知らない彼女の詩的表現だと思っていた。
だが、

「貴方自身の放った言葉の矢はさて、一体誰に刺さりその毒を流し込んでいるのでしょう?」

そう、彼女がチャチャゼロさんとの交渉の終わりに言った台詞が口を付いて出た。
そして、それを聞いたホロが変な顔をしながら、

「一体何かや?」

そう聞いてくる。

「いや、エヴァさんが言った台詞だ。
 彼女は何で、この台詞を言ったのかと思ってな。」

そう言うと、ホロはベッドに座り腕組みをしながら、
訝しげに俺の顔を見て、

「ぬしよ、ぬしはわっちが知らぬ間に、
 なにかとんでもない者と、取引しようとしとるんじゃないかや?」

そう言われると、そんな気もするが、少なくとも彼等にはホロのように耳や尻尾は無かった。
となると、相手が大商人と言うことで俺が焦りすぎたのだろうか?
まぁ、ただ、

「今度は2人で来るようにと、エヴァさんから言われたよ。」

そう言うと、ホロは喉を低く鳴らして笑いながら、

「まるで、狐に謀られている様でありんす。
 じゃが、わっちが一晩知恵をめぐらせた案なら、
 そいつらに頼らんでもどうにかなるじゃろ?」

そう言ってホロは俺に金の密輸と、それに必要なのは、気に食わないが腕のいい羊飼いに羊。
それと、その金を買うのに必要なお金を集める事が、必要だという事を教えてくれた。
お金は・・・、レメリオ商会から借りられればいいが、あそこも火の車で
今の俺達と一蓮托生の立場にある。
だが、町商人なら、しかも、名のある町商人ならへそくりぐらいしているものである。
だから、この案を持ちかければたぶん賛同は得られるだろう。
更に上手くいけば、儲けも得られると、一石二鳥だ。
ついでに言えば、レメリオには債務の取立てを待ってもらわなければならない。

そして、腕のいい羊飼いなら既に知り合っている。
この町に来るまでの間に護衛してもらい、この町から金の安いであろうラムトラまで羊飼いの縄張りが使え、
更には、教会に不満を持ち別の所で働きたいと思っている人物。
幸運とは、まさにこんな時にいう言葉なのだろう。
これほどの条件を満たした人物を俺たちは知っている。
言わずもがな、ノーラである。
彼女を丸め込めるかは俺の手腕にかかっているが、
彼女を丸め込めるぐらいの口は持っているつもりだ。

となると先ずは、

「レメリオ商会に向かおう、先ずは買い付け金が無いと話しにならない。」


ーsideレメリオ商会ー


商品の暴落は神でもなければ見抜けない。
いや、神でさえも自らの子の罪は見抜けなかったのだ、
そんな神が商売と言うものの行き先を見抜くなど到底無理だ。
今は商館の荷受場、目の前にはゴミクズになった鎧と武器がある。
ははっ、お笑い種だ、まったく持ってお笑い種だ。
これを買って荷受場に置く時は、それこそ光り輝く黄金に見えた。
だが、暴落の日を境に、目の前のものは全てゴミクズに成り果てた。

「何かいい案はありませんか?」

そう問うも、ここに出入りしている者達は、皆口をつぐみ視線を逸らす。
町で商館を構えるまでに、幾多の困難があった。
商品を商人数人で運び売りさばこうとした時は、
夜の森で怪物と出会い、商品諸共3人の命が散った。

またある時は、苦労して手に入れた商品が運んだ先では需要がなく、
安くで買い叩かれた事もあった。
そんな苦労の末、このリュビンハイゲンに商館を持つことができた。
だが、それももう終わりだ。
借金は膨らみ、ロレンスと言う商人から借金を取り立てても焼け石に水で、
苦労して貯めたヘソクリをはたいてもまったく足りない。

だが、ここで・・・、そう、ここで何か打開策を出さなければ、この城はつぶれる。
後ろにいる者達は、初日には30人、2日には28人、3日目には、4日に目には・・・・。
そして、今残った数人が最後の人間。
しかし、その人数になるまで悩んでも策は出ない。
目の前には鎧と武器。そう思っていると、1人から声が上がった。

「はぁ、どこかで戦でも起きれば値が上がるんだがな。」

そうは言うが、早々上手い話しはな・・・・い?

「すまない、今の言葉をもう一度いってくれないか?」

そういうと、男は首をかしげながら、

「『はぁ、どこかで戦でも起きれば値が上がるんだがな。』ですか?」

そういった。
・・・・、戦が起きれば武器や鎧の値は上がる。
当然だ。裸で戦場を駆け巡る馬鹿はいない。
だが、近くで戦はおきていない・・・・。

「ならば、戦を起こせばいい。」

そう呟いた声が聞こえたのか、男たちはざわめきだす。
だが、そうなのだ!戦が起きなくとも、戦が起きる気配が、事が起こる気配がすれば鎧や武器は売れる!
ならば、その気配を起こすやからがいるか・・・、いる!

「ははっ、女神はマーズ戦神か!」

そう、叫ぶように言えば背後の者が怯えた様に声をかけてくる。

「レメリオ館長なにを!?」

そういった者の顔を見て、その後にあたりの者の顔を見て宣言する。
これはこの商館が生き残るための賭けなのだ!

「盗賊に町を襲わせる。」

そう言うと、次々に野次が飛ぶ。
曰く、早々襲撃するはずがない。
曰く、町の被害はどうする。
曰く、見つかれば縛り首は確定だ。
だが、それでもこのまま借金を抱えて奴隷に身をやつすよりはマシだ。

「盗賊を雇い襲撃するそぶりを見せればいい。
 だが、検問の1つでも壊してもらわなければならない・・・・。
 金貨50枚と武器、即金で最高その額までだすと言って、襲撃に成功すれば更に倍出すと言えばいいでしょう。
 当然最初は25枚から交渉を開始しますが、リーベルト。
 貴方に交渉に行ってもらおうかと思っています。」

他のものが騒ぐ中、リーベルトは一度目を閉じ、
今聞いた事を頭で反芻するかのような沈黙の後、

「分かりました、やりましょう。
 どの道、この場に留まったままではアリに集られるだけだ。」

そう言って、リーベルトはマントを体につけ、
町でも残り少ない馬に飛び乗り、朝霧の中を森へと向かった。
そして、その数時間後ロレンスと言う商人が、別の儲け話を持ってきた。
ロレンスの言う話には、羊飼いを丸め込み金を密輸させると言うものだった。
だが、それには1つ問題がある。

「その羊飼いのあてが?
 確かに我々は一蓮托生です。今のまま行けば、奴隷は確実でしょう。
 ですが、その密輸が見つかれば、今度は八つ裂きの刑が我々に襲い掛かるではありませんか。」

そう、口では言うが内心ほくそ笑む。
この密輸が成功しようが、しないだろうが我々には関係ない。
むしろ、成功すれば利益が、失敗しそうなら盗賊に襲撃させればいい。
いや、町に更に緊迫感が生まれ、更に鎧と武器が売れ利益が上がる。
そうなると、失敗してもらった方が我々には得か?
さらに、検問近くで騒動が起き、羊だけを町の中にいれ、
後の面子の口を封じれば金も独り占めできる!

「大丈夫ですレメリオさん。
 ちょうど、それを行ってくれそうな羊飼いにあてがあります。
 どうです、我々に協力しませんか?」

そう、ロレンスは身を乗り出して微笑みながら言ってくる。
ふっ、商人は表情さえも武器に商売を行う。
ならば、彼の今の表情は安心を与えようと言うものか。
ならばこちらは、

「無理だ・・・、それに、金を集めるだけの時間がない。」

返す表情は迷い。
つまりは、向こうが出せる最大の条件と情報を出してもらおう。
そう思い、頭を抑え表情を隠す。

「レメリオさん分かっているはずです、我々にはこれ以外に借金を返す方法が無い。
 それに、私の全財産はこれだけしかありません。
 なので、あなた方には取り立て一時停止と、資金の工面後は、金を捌いていただきたい。」

そう、更に信用を得ようと落ち着いた顔と声で、相手の頭に沁み込ませるように言ってくる。
彼が出した金貨は3枚たったそれだけしかなかった。
だが、我々レメリオ商会は君を見捨てたりしないとも。
あぁ、君達の願いを、そんな美味しいカモを私も逃したくはない。
そう思いながらも、冷や汗をたらし青い顔を作る。
そうそれば、たぶんもう一押しするでしょう。
そう思っていると、隣で沈黙し続けていた連れの女性が、

「ぬし様に迷っている暇があるのかや?」

そうひとつ前置きをする。
さぁ、沈黙の彼女は一体私にどう後一押しをする?

「わっちは特別耳がよくての、今誰か何かを持って出て行ったの・・・・・、あ、また。」

そう言ってきた。
あぁそうか、誰かが武器・・を持って出て行ったか!
くっくっくっ・・・・、

「もうやめてくれ!」

そう、もうやめてくれ。
このままでは、この場で笑い出してしまいそうだ!
そういうと、ロレンスが、

「この金貨3枚を担保に、今言った事をお願いしたい。
 成功すれば、羊飼いも含め、納得のいく金額を得てみんな笑顔で明日を迎えられるはずです。」

そう言ってくる。
確かにそうだろう、ただ1つ違う事があるとすれば、笑顔で明日を迎えるのは私で、
後のメンバーには明日ではなく永眠を迎えてもらう事ぐらいでしょう。

「分かりました・・・・やりましょう。」

そう言うと、そう言うとロレンスは手を差し出してきた。
そして、私は彼の手をとり、

「神のお目こぼしがあらんことを。」

そう言うと、ロレンスは笑顔で答えた。
そのロレンスに、

「我々は一蓮托生です。
 なので、私達の担保は貴方の担保も同じです。」

そう言って彼の手に乗せる。
そうすれば、ロレンスは神妙な顔で、

「よろしいのですか?」

そう聞いてくる。
商人に商人が金を預ける。
そう、血の絆よりより強力な商人と商人の絆。
なにせ、彼等には成功してもらわないと利益が減る。
逝きの駄賃にしては十分だろう、哀れな羊飼いに1枚、無謀なロレンスに1枚、不幸な連れの女性に1枚の計3枚。

「かまいません。光り輝く明日のためのささやかな投資です。」

そう言い、再度握手するとロレンスと女性は商館を後にした。


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