色々とな第17話
キールの告白とドクロの暴走から早数ヶ月。
ドクロが出て行って、次の日ちゃんと来るかと少し心配したが、ドクロは、何事も無かったかのようにララスで朝飯を食べ、
キールもキールであの事がまるで無かったかのようにドクロに対応していた。
その事をドクロにこっそり聞いたら、バツの悪そうな顔をして、
「今更なんだよ・・・、キールとの付き合いは長いし、気心が知れてるっていえばそうなんだけど、なんと言うか、
今更なんだよ。」
といいながら、頭をガリガリ掻いていた。
しかし、二人からは絶えず微妙な雰囲気が流れ出しているように思う。まぁ、それは二人に解決してもらおう。
遺跡の情報に関しては、今の発掘が終わっている物から、まだ手付かずの物、後は、危険では入れないものなど様々で、
ついでに色々な出土品の情報もドクロが持ってきてくれたので、どの遺跡に大体どんな物があるかという事の目安になる。
しかし、もって来る出土品で、目が三つ書かれた人面像や、カメのような絵の描かれた石版があるのはどうなんだろう。
どこかでこれと似たような物を見た事あるんだが、勿論本物じゃなく、知識としてだが。
銃の方も、ドア・ノッカーは当初の完成予定日数より倍かかったが完成し、今は俺の腰にランタンと一緒にぶら下がっている。
後は、ダイオラマ魔法球を作成中だが、大きさ、中に入れるもの、空間軸の計算その他様々な理論式やら魔法式やら、
特殊文字による装飾やらがいって、なかなか前に進まない。まぁ、当初の予定では年単位で作成しなければいけないものだから、
現状で、作成スピードが遅いのか早いのかと聞かれれば、答えは微妙だ。
フニフニ・・・・・フニフニ・・・・・・フニフニ・・・・。
まぁ、それでも、ドクロの知り合いの錬金術師と知り合って色々と情報交換が行えたので先ずはよしとするか。
ただ、その情報交換せいでドクロの言った『銭ゲバ』というのが身にしみて分かった。
何をするにしても、カネを要求され、しかも、こちらもそれがそれだけの価値がある事を知っているものだから、
無碍に突っぱねる事もできず、ズルズルとお金をせびられた様な気もする。
でも、それを差し引いて実戦で錬金術をやってる奴との情報交換なので色々とプラスにはなった。
ちなみに、この錬金術だが、何故俺がこの廃れた技術を完全に習得しようとしているかというと、
未来になるとコストが下がる。今使っているガラス製品や薬品類、それに計算式や術式。
これらをすべて現状では人間一人でやっているが、未来でパソコンという機械ができる事を知っている俺にとっては、
現状が人間作業でも、それを肩代わりする物が必ずできるという確信と、使うガラス製品なんかも大量生産されるようになれば、
それだけコストが下がる。まぁ、それでも、錬金術の素材という面ではなかなかコストが下がりそうな感じはしないでもないのだが。
後、錬金術師たちは群れない。これは、自身の錬金術用の素材を誰かに取られないためや、
錬金術の得意分野が違えば、それだけ資金割が難しく、得意な分野と不得意な分野では資金が倍違う事なんて事がある。
そのせいで、錬金術たちは群れる事を嫌い、自身の道を突き進んでいる。
まぁ、それでも現状で廃れていて後継者や、未来有望な弟子なんかもいるわけも無く、確実に風化する技術である。
結局、最終目標が最終目標だしね。どれを作るのが楽かは別として。
ちなみに、俺がドクロの知り合い名はヨハンと言うが、そいつに会いに行った時は色々と割安で教えてもらえた。
くっ、話を聞くだけで料金設定されていたとわ。
フニフニ・・・・・・・フニフニ・・・・・・・・フニフニ・・・・・。
後、めぼしい所で言えば、近隣から、少し離れた所の悪徳商人なんかからカネと本を奪い取ったり。
その過程で魔法戦をしたりして、真祖の噂や情報をばら撒いてさらに居場所をかく乱している。
そのおかげで、2つ名の『闇の福音』を手に入れたり、『血と契約の姫君』なんて呼ばれもした。
福音はいいとして、2つめの『血と契約の姫君』だが、戦闘の過程で商人の奴隷から情報と引き換えに商人からの開放を行っていたら、
いつの間にかそう呼ばれるようになった。個人的には姫君なんて呼ばれるのは心苦しい気もするがなんとも。
多分、戦闘をする時はいつも子供姿に戻り獣人化も解き、ゴスロリ服を着ていたからだろう。
フニフニ・・・・・フニフニ・・・・・・フニフニ・・・・・・。
ディルムッドの方も、現行での成長は上場。
気を練る速度も上がり、ついには距離はまだ出せないが斬撃を飛ばす事にも成功した。
しかし、本人曰く面は斬撃を飛ばすのでいいとして、点としての突きを飛ばしたいと、そちらの方にも精を出している。
無数の突きが文字通り遠距離から飛んで来る状態は、下手をすれば近距離でマシンガンでも撃たれているような物だろう。
しかも、ランサーを冠するだけあって、その突きの速度は閃光にも等しい速度を叩きだせるのだからなお厄介だ。
後は、前々から考えていた、物を取り寄せる術式をチャチャゼロ人形の両手に彫り、これで槍を投擲しても問題ないようにした。
ただ、ディルムッドとしては彫られたばかりのこの術に対して、シックハックしていると言っていた。
しかし、それでも、この術の使い勝手のよさは気に入ったのか、色々と試しているようだ。本人曰く、
「これで、槍を投げても問題ないというアドバンテージも得られる。それなら、色々と戦闘に幅も増えるし、
気で強化して、すべてを穿つ一撃という高みまで昇華して見たいものだ。」
そう言いながら、日常生活でも色々と取り寄せて訓練している。
あと、コイツにも2つ名が付いた。その名も『騎士人形』これも、商人なんかの襲撃の時は、
人の姿から、人形の姿に戻って襲撃しているからで、本人も納得している。ただ、2つ名は『姫の守り手』がよかったなどと愚痴っていた。
まぁ、その2つ名を得るには、本人の修練や行動しだいだろう。自身で名乗って広めるのを別にすればだが。
フニフニフニフニフニ・・・・・・・。
と、そこまで考えて、そろそろ思考に現実逃避するのをやめようと思う。
何で逃避していたかと言うと『契約と代価』と言った所か。
前に、人の姿で俺が認められる速度と精度で気を練れるようになったら、好きなだけ耳を触らせてやるといって、
それに向けてひたすらに努力したディルムッドは、この数ヶ月でチャチャゼロボディの時と同じように気を練れるようになり、
さらに飛ばせるようにもなった。動機は不純だが、その成果を認ないとは言えない。
と、言う事で既に数時間ほど俺のキツネ耳はディルムッドに弄ばれている。
「なぁ、そろそろ満足したんじゃないか?」
「・・・・・・・まだ。」
そう言いながら触っている。俺の方は、いい加減耳を触られるのが嫌になってきているのだがなんとも。
そう思いながら、魔法薬を吸い、下に垂れている尻尾でディルムッドをポフポフと叩き、ささやかな抵抗をしながら本を読む。
今読んでいる本は、商人達から奪った古い魔導書。内容は闇属性オンリーで、他にも重力オンリーや雷オンリーといった、本が転がっている。
それを読み、ディルムッドを尻尾で攻撃していると、とうとう俺の耳からディルムッドの手が離れた。
そして、ディルムッドの顔を見てみると、ツヤツヤのテカテカだ。
「満足は行ったか?」
「あぁ、これであと千年は戦える。」
俺に耳に千年の価値があるかは知らんが、まぁ本人が満足ならそれでいいのだろう。
ディルムッドは、胸に手を当て、目を閉じている。
はぁ、そんな顔をするなら、別の場面でして欲しかった。まぁ、それも今更か。
そう思いながら、その日はベッドに入り俺は就寝。
ディルムッドの方は、針と糸で何かを作っているが、服飾の本をドクロに貰ってからずっとやっているので、
もう気にはならない。まぁ、出来上がった後に錬金術で色々と追加するとしよう。
ー翌日ー
いともどおり、朝は喧嘩の罵声で目を覚ます。ここに来て慣れたが、本来なら勘弁願いたい目覚めだろう。
そんな事を考えながら、シャワーを浴びキセルを咥えてディルムッドとともに一階に下りる。
今日は珍しく風通しがよくない。そう思いながらキールに挨拶をする。
「おはようキール、店が暗いから、もう日が暮れたかと思ったぞ。」
「おはようキール、朝飯を頼む。」
そう言うと、他の客の料理を作っていたキールが挨拶を返してくる。
「おはようございます、朝食はホットサンドでよろしいですか?」
その質問に頷いて返して、ドクロが来るのを待つ。時間帯はいつもこの時間ぐらいだから、もうじき来るだろう。
そう思っていると、店の扉を文字通り飛んで入ってくる男と、それを追ってくる女。
まぁ、女はドクロなんだが、朝っぱらからなんだ?そう思ってみていると、
「てめぇ、アタイが買った物を掠め取ろうとするなんざいい度胸だね。」
そう言いながら、ドクロは男の胸倉をつかんで鼻と鼻が触れ合うぐらいの距離で怒鳴りつけている。
鬼の形相とはまさにこの事。まぁ、ドクロは頭に角もあるし元から見た目鬼っぽいんだが。
「お、俺が悪かった!頼む、物は返すから見逃してくれ!」
胸倉を捕まれている男は、もう涙目で降参状態。これが動物なら、ひっくり返って腹でも見せているだろう。
そう思っていると、男と目が合った。
「た、助けてくれ!同族のよしみだ頼む!」
見れば、男も頭に耳を生やし尻尾もある。
今の俺は獣人化して、狐耳に尻尾つけているから獣人から見れば同族と見えるんだろう。
「助けるのはかまわんが、いくら出す?もしくは、遺跡の出土品でもいいが。」
「カネとるのかよ!ちくしょう!これをもってけ。」
そういって、布に包まれた何かを投げてよこした。手に取った感じカネではないから出土品だろう。
まぁ、物は見ていないが契約は成立。それなら、後は早い。だって、胸倉つかんでるのドクロだし。
そんな事を考えていると、ディルムッドが俺の顔を呆れ顔で見て口を開く。
「普通に助ければ感謝されるんじゃないか?」
「普通に助けても、感謝こそすれそれ以上はない。それに、代価を貰った方が相手も心苦しくはない。
『俺はコイツに支払ったから結果を求めて当然』といった感じにな。無償の手助けなぞ人を駄目にするだけだ。
ついでに言えば、『物より思いでよりお金、プライスレス』と言う素敵な言葉もある。
それと、ドクロそろそろ放してやれ。物は返すってそいつも言っただろ。」
そう言うと、渋々と言った感じでドクロは男を放し、取られた物を返してもらっている。
俺の方は、それを尻目に出されたホットサンドを冷ましながら食べ、男が寄越した物を見る。
布をめくり出てきたのは、手だった。まぁ、手と言っても人の物ではなく、ターミネーター。つまりは機械の手。
はてさてこれは何だろう。心当たりが有るとすれば・・・・・・、錬金術師の目標。
アルケミストが集まり作る事のできる奇跡、完全なる人。名称はオドラデクエンジェルと言う。
これのパーツの一部じゃないだろうか?まぁ、成分やなんかを調べて見れば分かるだろう。
一応、買ったり奪ったり写したりした本の中には、オリハルコンの事も書いてあったし。
そう思いながら、手を見ているとディルムッドがその手を珍しそうに見ながら口を開いた。
「えらく精巧に作られているが、何が目的でここまで作りこむんだ?」
「あぁ、目的ならば簡単だ。予想通りこれがオドラデクエンジェルのパーツの一部だとするなら、
人としておかしな部分をなくし、人以上でもなく人以下でもない『完全な人』を作る。
まぁ、それでも本を色々と読むと使われ方は多種多用で、簡易技術として人形に封印した悪魔や鬼なんを詰めて使役する技術なんかもあった。」
それを見た時は、超がこの技術を使って学園に封印された鬼神なんかを使役したんだなと考えていた。
ついでに、完全な人は今はもういない。本に書かれている技術や作成法なんかは残っているのだが、現実稼動している物はいない。
理由については色々と文献を漁って調べてみたが、どうも悪魔たちが優先的にこれを壊し、ついでにそれを作れるアルケミストも同じく、
悪魔たちに殺されたらしい。たぶん、過去の世界の救済の時に、この完全なる人を戦争に投入でもしたのだろう。
まぁ、あくまで推測だが。
ついでに言えば、完全なる人は人なのだから人の中では見分けがつかない。
言葉遊びのような表現だが、木を隠すなら森の中、人を隠すなら、やっぱり人の中と言う事だ。
だから、いくらいないと言ってもそれを確かめる術がない。まぁ、新世界の人間全てを健康診断すれば結果が出るかもしれないが。
そんな事を思いながらディルムッドと手を見ていると、ドクロがディルムッドの横に座りながら声をかけてくる。
「なんだか、アンタに漁夫の利ってやつを奪われた気がするよ。」
そう言いながら、お馴染のぴぴるぴるぴーを注文している。
俺も一度飲んでみたが、味としてはカクテルのブルームーンによく似ている。
これで、そのままブルームーンと言う名前でドクロがキールに頼んでいたら悲惨だ。
だってこのカクテル、女性が男性の誘いを断る時に使うカクテルなのだからなんとも。
まぁ、他の意味を言えば、「完全なる愛」「叶わぬ恋」「出来ない相談」なんて言うのがあるから、
一概にとは言えないが、今の二人をあらわすには他の意味の方が打って付けなのかも知れない。
「ドクロ、今日は何を持ってきたんだ?」
「今日はこれだよカラクリ。」
そういってドクロがゴソゴソして出したのはカメの置物。
ん~、さすがにもうカメはいいんだが。もしかして、こいつがカメが好きだから買ってきているんじゃないだろうな?
そう思いながら、ドクロとディルムッドを魔法薬を吸いながら眺める。
「可愛いだろぅ?この流線型のフォルムとか特に。」
「可愛いかどうかは別として、防御力は高そうだし、空も飛べるんだろ?」
「あぁ、見たやつは少ないけど、聞いた話じゃぁ、みゅとか鳴くらしいよ?」
そういいながら、カメの置物を二人で突付いている。なんだかいまさらな光景だ。ついでに言えば見飽きしカメ。
ちなみに、遺跡の壁画にはこのカメが飛んでいる絵がたくさん描いてあった。
しかし、みゅってカメが鳴くのか・・・・・、みゅ!?
まて、何か思い出せそうな気がする。そもそも、何か大きな事を見落としているような気がする。
そう、何か前提をひっくる返しそうな何か。何だこの何かは・・・?
とりあえず、今ある情報を整理しよう。
「ドクロちょっといいか?」
そう言うと、ドクロは訝しそうに俺を見ながら口を開いた。
「なんだい急に改まって気色の悪い。で、なんだい?」
「難しいことじゃない、そのカメの情報をすべてよこせ。」
そう言うと、ドクロは顎に指を当て視線を宙にさまよわせた後、指を折りながら話し出した。
「そんなに知ってる事はないよ。まず空飛べる事だろ、みゅって鳴く事だろ、後は・・・・、そうそう、温泉が好きとかって言ってたね。」
あぁ、何で考えなかったのだろう。この世界は少なくともすでに他の話とクロスしているじゃないか。
あくまで、符号としての繋がり、作者としての繋がりだが、その中の奴はそれを知らない。
どこかで聞いた話だが、小説家や漫画家は別の世界を垣間見て、その世界を紙に描くと聞いた事がある。
なら、この世界はあの世界ともつながる。むしろ、この世界の中にあの物語が内包されていない方がおかしいのか?
「わかった、それだけあればいい。むしろ、予期せぬ拾い物だ。」
ん~、本当に予期しない。むしろ、これがプラスになるとすれば、やはり昔世界が繋がっていたと言う証か?
欲しいのはその情報じゃなくて、吸血鬼だったんだが。まぁ、それは手の方が解決してくれるとありがたいんだがなんとも。
「相変わらずな変な奴だね。後キールぴぴるぴるぴー追加~。」
「俺も同じのを飲むからさらに追加~。」
「私の分も追加で計3つだキール。」
そう頼むと、キールがグラスを3つ用意してぴぴるぴるぴーをついで行く。
そして、それで口を湿らせてドクロを見ながら口を開く。
「なぁ、ドクロ、これがどこで出たものか分かるか?」
そう言って渡すのは、朝の男から巻き上げた手。
これがどこから出たものか分かれば、闇雲の探すよりはまだいいだろう。
何せ、現状で回った遺跡ではそれらしいものは見つからず、代わりにエロトラップに引っかかり、
半裸状態で中をさまよう羽目になりそうにもなった。
ちなみに、遺跡発掘をして分かったのだが、トラップの中で武装解除系のトラップが一番極悪だ。
いきなり、装備が吹っ飛ばされたりした上に、追加で色々と起こる。しかも、潜れば潜るほどその頻度が多くなる。
ちなみに、遺跡でのどかが未来で手に入れる鬼神の童謡を見かけて、手にとって確かめてみると作られた技術はやはり錬金術。
魔法具と錬金術アイテムとの違いは汎用性にある。魔法具は魔力の大小で発揮できる効果も範囲も変わるが、
錬金術は常に一定の効果をだす。多分、未来では錬金術そのものが忘れられたため、全てを魔法具で統一しているのだろう。
「エヴァ、多分だけどこれリヴァイヴァ遺跡の出土品だと思う。」
そういって、腕を返してくる。
しかし、リヴァイヴァ遺跡か・・・・・。聴いた事ない遺跡だがどんな所だろう。
そう思っていると、ディルムッドの方が先に口を開いた。
多分、最近気を飛ばせるようになったから、それを試せる場所を求めているのだろう。
「そこはどういう遺跡なんだ?トラップだけの遺跡か?」
「いや、なんていうかねぇ、そうだ、キールちょっときな。」
そういって、他の客の対応をしていたキールを呼び寄せる。
しかし、なぜこのタイミングでキールなのだろう?
「何でキールを呼ぶ?知っているならキサマが話せばいいだろう?」
「いやねぇ、アタイよりあの遺跡に関してはキールの方が詳しいんだよ。
なんたって元発掘者だからね。」
そういっている間に、キールが俺たち三人の前に来る。
キールの顔はいつもどおり無表情で特に関心なさそうに見えるし、なぜ今呼ばれたかも分かっていないのだろう。
「キール、あんたリヴァイヴァ遺跡について詳しいだろ?こいつらが聞きたいってさ。」
そういってキールに話を振る。そして振られたキールは懐かしそうに話し出した。
「リヴァイヴァ遺跡ですか。懐かしいですね、私が学生を卒業してすぐの時でしたか、あそこは不思議な場所でしたよ。
チームを組んで潜りましたが、ファーストアタックは魔物に阻まれ入り口まで行けませんでした。
そこで、さらにチームメイトを増やし潜りましたが、2階層まで潜って、これ以上は難しいと断念。
風の噂では、今は発掘者たちも寄り付かないと言っていました。ちなみに、ドクロと出会ったのは2回目の時ですね。」
そこまで言って話をきる。
ん~、いくらなんでも話が大まか過ぎる。こちらとしては、その遺跡に潜りたいのだが、
今の話だと、今までドクロと潜った遺跡よりも難易度は上という事だろう。
果てさてどうすべきか。ここは、ディルムッドと二人で潜った方がいいのか、それとも、別の遺跡を探した方がいいのか。
とりあえず、現実味のある情報を吐き出してもらおう。
「難易度が高いのは分かったが、具体的に頼む。
今から潜るかもしれない場所だ、実用性のある情報を期待するが?」
そう言うと、キールは静かに目を閉じ考えながら喋り出した。
「そうですね、一言で言えば現実と幻想、二つのゲンが交じり合う場所です。
今は分かりませんが、私が行った時は、魔物は魔族がメインで他には竜やミミック系が多いです。
後は・・・・、そうですね、トラップが厄介なものが多いです。落とし穴や魔法の矢が急に飛んでくるもの、
他は幻想幽閉トラップ。私が見たのはこれぐらいですが、他のメンバーはもっと色々見たと。」
具体的な情報を欲しがったのはいいが、出された情報が具体的過ぎて厄介すぎる。
今の話だと、潜るのも一苦労なら、出るのも一苦労。その上、魔族まで巣食っていると。
潜りたくないが、潜りたい遺跡と言った所か。そう思いながら、手を見る
「なぁ、キール。その遺跡はどれくらいの深さまであるんだ?」
そうディルムッドがキールに聞くと、代わりにドクロが答え、キールが補足する。
「アソコは、確か3階層までって言ったかねぇ?」
「ドクロ違いますよ。一番新しい正式な調査結果ではアリアドネーの調査隊との共同発掘で4階層となっています。
ですが、実際の発掘者たちの話だと後1階層下があるそうですよ。まぁ、すでに10年前の記録ですが。」
「と、言う事は10年間は発掘者がいないと?」
「公式記録ではそうなります。」
発掘出来ずに放置されて10年か・・・、しかし、俺の手元にはその遺跡から出土したかも知れない物があると。
現状ではその事実だけだがあるし、他の遺跡はその殆どが誰かしらの手が入り続けている。
つまりは、このリヴァイヴァ遺跡が一番俺の探している場所である可能性が高い。
そう思っていると、
「行く気なんだろエヴァ?」
そう言いながら、ディルムッドがこちらを見てくる。
そうだな、可能性がある時点で潜らないという選択肢はないな。
「当然だチャチャゼロ。準備に念を入れて、それからの発掘だろう。
ドクロ、今回のは・・・。」
その先を言おうとしたら、ドクロに急に手で口をふさがれた。
なんだろうと、非難の目でドクロを見ると、ドクロが俺の目を見ながら話してくる。
「おい女狐、あんた危ないから来るなとかそういう事言おうとしたろ?
自慢じゃないけどねぇ、アタイだって今まで色んな遺跡回って発掘してんだよ。
それをビギナーのアンタに、危ないから来るなって言われてみろ?この町じゃぁ笑いモンだよ。
報酬はガッチリ頂く、遺跡までの道案内はする。そして、中にも一緒に入るし、終わったら一緒にお天とさんも拝む。
分かったかい?女狐。」
クックックッ・・・・、面白い。
今のドクロの目は有無を言わさず、自身のプライドと実績を信じ前に進む者の目だ。
こんなヤツを置いて行くなんて言っていい事があったためしがない。
なら、ドクロの実績とプライドを買って使い倒そうじゃないか。
そう思いドクロの手を引っぺがす。
「何をバカな事を言っている?キサマは私に雇われているんだぞ?
それならば、キサマは報酬をもらっている間は私に馬車馬のごとく使われるためにいるんだ。
当然、今回のリヴァイヴァ遺跡発掘も付いて来てもらうし、戦闘もこなしてもらう。
私の方こそ、今のキールの話でキサマが臆病風に吹かれはせんかと心配した。」
そういって、ドクロの目を見ると、その瞳には、笑いを浮かべている。
そして、現実でも大声を上げて笑い出した。
「あはははは・・・・、いいじゃないかエヴァ。馬車馬のごとく働いて、アンタから大金をぶん取ろうじゃないか。」
そういって、歯を見せて凶悪に笑う。
それに対して、俺も
「取れるモンならとってみろ。キサマの働き次第ではいくらでもくれてやる。」
そういって、喉を低くならし笑う。
「はぁ、まったく。エヴァ、どれくらいで発掘に行く気なんだ?
今すぐなんて無茶な事は言わないよな?」
そう、呆れ顔のディルムッドが話しかけてくる。
実際、今すぐ行けるかと聞かれれば答えはYES。
発掘道具も保存食もその他必要な物はカバンに詰まっている。
しかし、それでも今すぐは行かない。
今日の所は装備の再点検と、ドクロの装備品をそろえさせないといけない。
「行かんよ。いくらなんでも、今すぐ行ける訳がないだろう。
行くとすれば、後2~3日後と言ったところだ。」
そう返すと、思わぬ伏兵が現れた。
そう、何を隠そうこの人、
「私も同行しましょう。あそこには私が一番詳しいですから。」
キールである。しかし、いきなりなんでだろう?
「報酬は出んがかまわんのか?」
そう聞くと、キールはいつもの平坦な声で返した。
「かまいませんよ。私はあの遺跡の奥を見たいだけですから。」
そう静かに返して他の客の対応に回っている。
まぁ、何にせよこれで行く面子も充実した。
後は、その遺跡で何が出てくるかか、まぁ、行ってもいない見てもいない物を考えるだけ無駄か。
「よし、行く面子は決まった。ドクロ、今日は奢ってやる好きに飲め。」
そういうと、とたんにドクロの顔が青くなる。
見れば、ディルムッドも青いような。
「カ、カラクリ、アタイら死ぬのかもしかして?あの銭ゲバ一族の女狐が奢るなんて。」
「いや、いくらなんでも死ぬ事は無い。たぶん瀕死の重傷だろう。短かったな俺の人生。」
そういい、ドクロは震え、ディルムッドは天を仰いでいる。
よし分かった、この二人は俺を怒らせたいか、俺に殺されたいかの二択なんだな。
そう思い、ドア・ノッカーを無言で腰から抜く。ついでに、ランタンもつける。
よし、これならやれる。特に声は聞こえないけど。
「カラクリおちょくり過ぎたかねぇ。なんかエヴァから黒いモノが溢れてる気がするんだけど・・・・・。」
「間違いじゃない、てかヤバイぞドクロ。」
銃を構える俺を2人があわてて止めて、その後、日は終始ララスでの飲み会となった。