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[372] フロントミッションゼロ File31~(FM3×ゼロの使い魔)■完結■
Name: Shinji◆11e0ef28
Date: 2007/12/28 09:56
●はじめに●
この作品は『フロントミッションゼロ』の途中からになります。
1話から読んで頂ける方は是非本家の誤字修正版を先に読んで下さい。


Front mission Zero
File31:ゼニスレヴ


「任務を果たせず、申し訳ありません……姫様。
 あのワルドを見抜けなかった、わたくしに一番の責任があるのです。」

「顔を上げてちょうだい、ルイズ・フランソワーズ。
 裏切りがあったにも関わらず 貴方達が無事に戻って来ただけで、わたくしは……」


要領や運の良さが重なり、無事アルビオンから帰還した和輝達。

まず帰って直ぐに、ルイズは一人でトリスタニアに向かい、
アルビオンで起こった出来事をアンリエッタに報告しに行った。

要点だけを纏めれば、ワルドの裏切りによる任務の失敗。

これはルイズにとって、いくら意図的に和輝が彼女の結婚を肯定したとは言え、
自分がワルドと2人で行動してしまった事から来た結果だと負い目を感じていた。

しかし、アンリエッタは深い理由も聞かず・責任を追及することもせず、ルイズを労った。

その"姫"であり"友"でもあるアンリエッタの言葉を嬉しく感じながら、最後に一つ"希望"を嘆いた。


「ですが、ウェールズ皇太子様は生きておられます。」

「――――えッ!? ど、どう言う事なの? ルイズッ?」

「危うく私の目の前で、皇太子様はワルドの手に掛けられようとしたのですが、
 カズキ……わたくしの使い魔が、命を救ってくれました。」

「使い魔さんが? そ、それよりもウェールズ様はッ? まさか、まだアルビオンに――――」

「それは……申し上げられません。」

「――――!?」


アンリエッタが恋をしているウェールズが、生きている。

その事を聞いた時、彼女は明らかに驚いた様子だった。

任務が失敗したという事から、彼の死の覚悟もしていたようだが、そうではなかったからだ。

……だが、ウェールズから口止めされている……とルイズが答えると、
彼女は立場からして、迂闊にそれ以上 聞き込む事ができなかった。

今頃なら彼はラ・ロシェールに到着しているかもしれないが、
正直な話、ルイズも詳しくは彼が潜む場所を聞いていないのだ。

ウェールズがアルビオンに居るか・居ないかでも答えられれば、
後者を言う事によってアンリエッタの気がかなり楽になる可能性が高いが、
彼に"生きている事しか伝えるな"と言われている以上、それ以上の彼に関しての情報を伝えられない。

最悪、ウェールズはアルビオンにおり、まだ其処で果てる事を望んでいる確率もゼロでは無いのだ。


「今は皇太子様を、信じて差し上げてください。」

「……ッ……」

「では、この"指輪"を……」

「いえ……ルイズ・フランソワーズ。 それはまだ、貴女が持っていて。」


……


…………


―――― 一方、トリステイン魔法学院。


「まさか、本当に見つけて来るなんてな……」

「ミスタ・コルベールの張り切り様は大したものでしたわ。」

「いや~、今迄 このような探索は外れてばかりでしたからなぁ~。
 カズキ君の情報であれば確かな気がしまして、年甲斐も無く張り切ってしまいましたよ。」

「とにかく、これで"三機目"か。」

「改めてみ見ると、随分と凛々しい感じなヴァンツァーですわね。」

「……確かにそうかもな、最初も俺は"これ"に随分と世話になったよ。」


和輝達が魔法学院に戻って来た日……即ち、出発してから三日目の夜。

既に"新たなヴァンツァー"が発見されており、それは"鉄騎 4型"の右隣に並んでいて、
和輝・コルベール・ロングビルの3人は、並んでいるWAPを見上げていた。

これで112式 法春・鉄騎 4型と加えて3機となった事で、
流石に学院内の庭に置いておくと、存在感はかなりのモノとなっている。


「世話になったと言う事は……"これ"も何か知っているのですか?」

「何という名のヴァンツァーなのでしょうか?」

「"ゼニスレヴ"……まぁ、ゼニスって呼べば良いと思う。」


――――ゼニス。


全長5,8m、重量24t。

OCUオーストラリアの"ジェイドメタル社"が開発した、非常に知名度の高いシリーズだ。

歴史も他のWAPと比べると深く、"ゼニスレヴ"はシリーズの発展型のひとつ。

ゼニスとは"頂点"を意味し、名の通り人間に近いWAPの意味ではまさに"頂点"である。

しかし、これは前途の通り外国産のWAPであり、横須賀基地に存在するのは不自然だ。

それなのに何故MIDASのサンプルの爆発に巻き込まれたかと言うと……和輝は何となく判った。


――――おい、和輝ッ! それは作業用のポンコツだぞ!?


横須賀基地に居た妹(アリサ)の生死を確認する時、和輝は大胆にも生身で基地に忍び込んだ。

その時、偶然置いてあった作業用のWAPに乗り込んだ事があり、それが"ゼニスレヴ"だった。

目の前にあるゼニスは"その時のゼニス"では無いのだが、
"このゼニス"は、MIDASに巻き込まれてハルケギニアに現れたゼニスなのだろう。

"武器"も持っているし何だか作業用にしては新しいような気がするが、
MIDASを管理していたような、重要な場所に置いておくWAPであるし、
大方 納品されたばかりの新品でも置いていたのであろう。

また、日本製のWAPに比べれば比較的安価であるし、日防軍の表の警備は日本製だが、
内側を警備するのは外国製のゼニスを使い、コストを抑えていたのかもしれない。

思ってみれば作業用には、同じくOCUオーストラリア製である、
レオノーラ・エンタープライズのWAP(メレディンM1)も混ざっていた気がする。


「ほほぅ、ゼニス……ですか。」

「法春や鉄騎と比べれば、言い易い名ですわね。」

「ところで、どうやって此処まで運んで来たんだ?」

「あぁ~、それはミス・ロングビルが操縦してくれたのです。」

「駄目かと思ったのですが、"ぱすわーど"と言うのは無かったので、安易に動かせましたわ。」

「成る程な……そう言えば"俺の時"も作業用だったし、普通に乗れてたからな。
 武器は少し古いけど、"こっち"なら特に問題は無いか……」

「ご安心くだされ、動した時は"人払い"をしましたぞ?」

「ふふ……初めての操縦でしたし、人が多くては危ないですしね。」

「そうか? 俺の考える限りじゃ、ロングビルさんとゼニスは合いそうな気がするけどな。」

「ほほぉ。 ミス・ロングビルはどう思われますか?」

「そうですわね……わたくしも、何となく"ゼニス"が気に入りましたわ。」

「ゼニスは機動力があるしな、ロングビルさんの戦い方に合ってるんだ。」


ロングビルはシュミレーターにおいて、火炎放射を持った鉄騎での電撃戦に優れていた。

だがゼニスはそれ以上に機動を活かした戦いに優れており、
彼女が扱えば、鉄騎以上のスピードで戦場を駆ける事が可能になりそうなのだ。

今までのシュミレーターではロングビルは鉄騎のスピードを重く感じていたが、
更に機動に優れる法春には相性が良いルイズと、狙撃が得意なタバサばかり乗っており、
必然的にロングビルは鉄騎に乗る事が多かったが、キュルケには遅れを取っていた。

故にゼニスの存在はロングビルにとって願っても無く、見た目もあって一目で気に入ったようだ。

ちなみに持っている武器は、右手にナックル・左手にショットガン。

主な戦法はナックルと使った格闘戦であり、ショットガンの弾数は"こちら"では抑えるべきだろう。

……そんな事を考えながら和輝はWAP達を見上げ、各々はひとまず解散する事にした。


……


…………


「わ、私が"虚無のメイジ"ですってぇ~ッ!?」

「そうらしいぞ、今じゃ"失われた伝説の魔法系統"とか言われてるらしい。」

『……(ま~、目覚めて無ェんだけどな。)』


――――逃げられはせん、"虚無"の末裔よ。


魔法学院に戻ったルイズは、アルビオンで言われたその言葉が気になっていた。

よって和輝(+デルフリンガー)に何気なくその事を聞いてみると、
誤魔化しても無駄と思ったか"お前が虚無のメイジだからだ"とアッサリ言ってのける。

"目覚める"まで内緒のハズであったが、勘付いてしまったのであれば、仕方なかった。

それに自分にコンプレックスを抱いていたルイズが驚かないハズは無く、仰天する。


「伝説のッ!? でも、そんな凄い魔法……わ、私は普通の魔法だって……」

「今はそうだが、お前にはその"才能"があるんだ。」

『相棒はガンダールヴだしな、娘っ子が"虚無"なのは間違いねーよ。』

「が、"ガンダールヴ"って?」

「何だか知らないが、"伝説の使い魔"らしい。 ワルドに勝てたのも、そのお陰だ。」

『俺様のお陰でもあるけどな~。』

「……私が……虚無の、メイジ……嘘でしょ……?」

「なんでそう思うんだ?」

『疑う気持ちも判らなく無ェけどな、お得意な"爆発"も立派な虚無系統魔法の一種なんだよ。
 それにだな、娘っ子の才能は今 何もしね~でも発揮されてるんだぜ?』

「!?」

「そうなのかッ?」

『……"魔法防御"だよ。 目の前で錬金を失敗させても擦り傷 程度で普通 済むか?
 周囲の人間はぶっ飛ばされて気絶したりしてんのに、おめ~さんは それだけで済んでる。
 まともに魔法を食らった事なんて無ェから気付かなかったかもしんね~が、
 ドット・メイジの魔法を受けたって、耐性で大して堪えね~のは確かだ。』

「!? 考えてみれば、アンドバリの指輪で操られてた時も……」

『おうとも。 "普通の人間"は、あんな簡単に呪縛が解けたりしね~んだよ。
 それなのに相棒が押しかけたダケで解けたって事は、操られてても意識はハッキリとしてたんだろ?』

「でも、でも……」

「気にし過ぎだ、ルイズ。 言っただろ? "何時も通り"にしてれば良いってな。」

『そうそう、無駄に気張っても無意味だぜ?』


もし、ルイズが血筋を純粋に受け継ぎ、トライアングル・メイジ以上の存在だったなら。

今以上に平民を見下し、決して平民に憧れられる存在にはなっていなかっただろう。

そう考えれば、もし魔法を使えていれば、和輝との信頼関係も築けなかったハズだ。

だが……幾らなんでもドット・メイジ未満と言うのはあんまりで、尋常ではない劣等感を抱いていた。

今は表情豊かだが和輝が召喚されるまでは、顔を赤くして照れる事も怒る事も殆ど無かった。

その彼女の心に安らぎを与えたのが和輝とWAP……であり、劣等感をも温和させてくれた。

こんな中 告げられた、自分が"虚無のメイジ"と言う衝撃の事実……驚かない訳が無かった。

今の彼女は見るからに動揺しており、"気にし過ぎだ"と声を掛けるが、その言葉は意味を成さなかった。


「…………」

「とにかく、そろそろ夕飯だ。 行くぞ?」

「……うん。」

「……(参ったな、こういう形でバレるとは。)」


……


…………


……それから、数十日が経過した。

今のところアルビオン……いや、レコン・キスタは動かず、戦争の準備でもしているのだろう。

当然アンリエッタが纏めるトリステインもワルドが欠けた穴を埋めるダケで無く、
ゲルマニアの支援を諦めた今、必死で部隊を編成しているであろう。

しかし、アンリエッタの手紙の事を知らない者の一部は、ゲルマニアの支援を前提としている事から、
彼女の命令には非協力的であり、状況は芳しくないと言える。

当然 アンリエッタが嫁がずにトリステインだけの力でアルビオンを倒す方が、
ゲルマニアに対して強い圧力になるのだが、リスクが高すぎるので、
結局はゲルマニアに頼る……と言う楽な方向へと逃げる者が殆どであり、
酷い者はアンリエッタを"自分の肌が可愛い悪女"と罵り、不信感を強めようともしていた。

だがゲルマニアを頼れないアンリエッタは耐えるしかなく、自分の役目を果たす事しかできないのだ。


「カズキ君……今日もミス・ヴァリエールは来ていないのですか?」

「また、魔法の訓練をしているのですか?」

「あぁ。」

「何でかしらねェ? 前までは、あんなにヴァンツァーの訓練に必死だったのに。」

「人それぞれ。」

「……そう言えば、昨日も傷だらけで医務室で治療を受けてました。」


……一方、トリステイン魔法学院。

WAPが三機となっても、変わらず訓練は続けられていた。
(余談だが、コルベールの働きによって機体迷彩は全て白く、ラインは黄色になっている)

かと言っても、ルイズは此処最近 ずっとシュミレーターには参加しておらず、
一人で魔法学院から何百メートルか離れ、ひたすら魔法の訓練を行っていた。

その成果は未だに出ておらず、地球に戻る為にルイズに覚醒してほしい和輝は、
複雑な気持ちであり、ただ授業の後に外に出て行く彼女の背中を見送る事しかできなかった。

さておき、今日も3機のWAPの前に集まった男性2名・女性4名。

和輝・コルベール・キュルケ・タバサ・ロングビル・シエスタ。

このうち、コルベールはレコン・キスタについてロングビルから教えて貰っているので、
シエスタ以外はシュミレーター訓練に熱心であり、その成長は著しい。

実際 キュルケとタバサはトリステインの人間ではないので無関係なのだが、
アルビオンで真実を知ってしまった以上、後に引く気は無いようである。

さておき、主にキュルケは鉄騎(火炎放射)、タバサは法春(ライフル)、
ロングビルはゼニス(ナックル&ショットガン)に乗り、これはもはや固定された。

武器も変わらず、実際 白兵戦であれば万能型の法春がゼニスよりも強いのだが、
ライフルを使いこなせる性能が有るのが法春だけなので、バランスを考えての配慮である。

ちなみに、こうなるとシエスタが余ってしまうが、彼女は何でも乗りこなせるので、
3機のうち開いた機体に乗り込み、無難な成果を挙げていた。

平民である彼女が命の遣り取りをする訓練をするのは極めて違和感が有るが、
何やら自分の曾祖父がそのような事を言っていたらしく、彼女もその血を受け継いでいるのかもしれない。

まぁ……とにかく、ルイズが不在とは言え 今日も訓練は順調であった。


……


…………


「……休暇を貰った?」

「はい。 "伝説の竜の居場所"の情報を聞いたので、明日には出掛けるつもりです。」

「伝説の竜……ねぇ。」

「この情報は確かだと思うのですッ、何せ――――」


……更に数日後、とある午後。

今日はロングビルは仕事があり、キュルケとタバサは目的も無く街へ出かけ、
ルイズは相変わらずの魔法訓練で、今日のシュミレーター訓練は中止。

よって何時もの様に研究所を尋ねていた和輝は、コルベールと向かい合っていた。

彼は何やら休暇を貰って旅立つようで、まだ見ぬ伝説に期待の眼差しを浮かべていた。

対して和輝は"伝説"と言われても実感が湧かず、首を傾げるだけだった。

あまり"地球"に戻る事にも繋がらなそうだし、適当に流そうと思っていると――――


≪――――ガチャッ≫


「失礼します。」

「おや? 貴女は――――」

「シエスタか。 何でこんな所に?」


コルベールが何か言おうとした時 入り口のドアが開き、シエスタがひょっこりと姿を現す。

訓練時と同様に私服姿では無く、いつものメイド服姿である。

平民にしてはノックをしていないので失礼に値するが、もはやシエスタも此処の常連だった。

彼女は和輝とコルベールの姿を確認すると、にっこりと微笑んでこう告げた。


「明日 一度 実家に帰ることになりましたので、ご報告に来たんですッ。」


――――間も無くレコン・キスタが、動き出そうとしている。


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[372] フロントミッションゼロ File32(FM3×ゼロの使い魔)
Name: Shinji◆b897b8d1
Date: 2007/11/23 06:23
Front mission Zero
File32:竜の羽衣


……コルベールの研究室に突然現れたシエスタ。

彼女はWAPの訓練に参加するようになってからは、
コルベールの依頼で何度も研究室の掃除をしに来ていたのである。

それ以前に訓練による関わりが深いし、コルベールは彼女の登場で更に破顔した。


「おぉ、シエスタ。 丁度 良い所に。」

「はい?」

「カズキ君。 "伝説の竜"の情報をくれたのは、何を隠そう彼女なのです。」

「シエスタが……? 意外だな。」

「私は見た事が無いんですけどね~。」


只のメイドであるハズのシエスタが、伝説の竜について知っていた。

"こちら"の伝説には興味が無い和輝だったが、彼女が関わっているという事で、
レコン・キスタとの戦いが近付いて来ているにも関わらず、多少興味が湧いたようだ。

その様子を察したか、コルベールは眼鏡の位置を直すと咳払いをする。

……これは彼が何らかの話を始める時の、もはや お馴染みの仕草である。


「昔。 凄まじい雄叫びを上げて二匹の竜が天空より現れ、
 一匹は何処かに消え去り……もう一匹は、何処かに落下したと言う。」

「その何処が伝説なんだ? ドラゴンだったらタバサだって使役してるだろ。」

「いえ、正確には"竜の羽衣"と言われていたそうですよ?」

「竜の羽衣……?」

「初めヴァンツァーを、オールド・オスマンは"破壊の鎧"と呼んでいました。
 それと同じような感覚で、伝説の竜は"竜の羽衣"と名付けらたのでしょう。」

「成る程な……」

「その二匹のうち……一匹は日食の中に消えてゆき、
 残ったもう一匹に竜に乗っていたのが、曾お爺ちゃんだったって聞いています。」

「……!?」

「彼女の話によると落下した竜は、今でも何処かに祀られているそうなのです。
 それ故に明日から、彼女の案内で"伝説の竜"を探しに行こうと思いましてね。」

「……ッ……」

「か、カズキさん?」

「コルベールさん、その伝説は……もっと早く聞きたかったな。」

「いやはや、シエスタに聞く前から"伝説の竜"の噂は聞いておりましたが、
 情報は皆無でしたし、カズキ君をぬか喜びさせてはならぬと思い、言えなかったのですよ。
 ですが、先日彼女から彼女の曾祖父が"竜の羽衣"に関わっている事を聞きましてね。」

「その所為で曾お爺ちゃんは"変わり者"って言われていまして、
 私もお掃除の時にミスタ・コルベールに"伝説の竜"のお話を偶然聞かせて頂いていなければ、
 今の事について話すような事は無かったと思います。」

「……灯台下暗しって事か……」

「そう言えば、"しゅみれーたー"の時に空を飛んでいる相手が居ましたよね?
 あれも何だか"竜の羽衣"って感じがしませんでしたか?」

「おぉ。 見た事が無いので何とも言えませぬが、私も そう思いましたぞ。」


和輝の世界のヴァンツァーは、ハルケギニアでは"破壊の鎧"と言われた。

そうなると、"こちら"での"竜の羽衣"とは何なのか?

ぬか喜びにも なり兼ねないので まだ喜ぶ事はできないが、何となく想像できる。

しかし、それにシエスタの曾祖父が深く関わっていたとは……

ルイズの傍に居るとは違う意味で"灯台下暗し"と言う諺(ことわざ)を味わった和輝だった。

そんな中、シュミレーター訓練で戦った"空飛ぶ標的"を思い出したシエスタの一言。

それが決定的となり、和輝はコルベール&シエスタを見据えると、真剣な表情で言った。


「俺もシエスタの村に、連れて行ってくれ。」


……


…………


≪――――ガチャッ≫


「戻ったのか。」

「……うん。」


数時間後、時刻は18時。

明日の朝に和輝は、コルベール&シエスタとタルブの村へと旅立つ事となった。

それにより、ルイズの部屋の一角で積みあがっている荷物を整理していると、
強からず弱からずの勢いでドアを開き、部屋の主が戻って来た。

相変わらず"虚無の魔法"を成功させようと必死になっていたらしく、
彼女の衣服はボロボロであり、体には露出よりも包帯の方が目立っている。

訓練が終わった後は もはや医務室で治療を受ける事が日課になっているのだ。

決して安くは無い衣服も既に何十着もオシャカにしており、無駄な出費が嵩んでいるらしい。

そんなルイズが現れると、和輝は彼女の横を素通りしながら一言。

最初は彼なりに色々声を掛けていたが、もはや無駄に止める様とするような事は告げない。


「お疲れさん。」

「…………」


≪――――バタンッ≫


ルイズが部屋に戻って来ると、彼女は着替えるので さっさと部屋を出る。

それも日課になっており、"もういいわよ"の言葉で和輝は部屋に入り直す。

この後 夕飯となるが、その前に和輝は"明日の事"について言わなければならない。


「ルイズ、明日少し留守にするからな。」

「……どう言う事?」

「コルベールさんとシエスタと、タルブの村に行くんだ。」

「!?」


"あちら"に戻る手掛かりが見つかったので、"竜の羽衣"を探しに行く事を説明する和輝。

その和輝は異世界の人間であり、いずれは元の世界に戻る予定との事。

ルイズもそれは十分 判っているが、唐突に"そんな説明"をされるとは思わず、驚きを隠せなかった。

まだ実際にWAPで戦う事はしてないし、虚無の魔法も未だに全く使えていない。

……こんな中途半端な状況で和輝が居なくなってしまう? 頭の中が真っ白になりそうだった。

しかし、次に和輝と交わした会話……それだけが、ルイズの理性を繋ぎ止めた。


「まぁ……レコン・キスタの事のカタがつくまでは"こっち"に居るつもりだ。」

「ほ、本当ッ?」

「……あぁ。 タルブの村に行って直ぐに帰る訳じゃない。
 このまま直ぐ帰ったんじゃあ、若干 寝覚めが悪いからな。
 だから、授業はサボるなよ? 俺みたいに"留年"する羽目になるぞ?」

「えぇ!? それじゃ、カズキってまさか――――」

「(横須賀高専の)学生なんだけどな、ちょっとした事件に巻き込まれて、
 何ヶ月もWAPで戦っててな……此処に居た期間も含めて一年くらいか。」

「そ、そうなんだ……」

「まぁ…・・・今更 文句を言うつもりは無いが"虚無の事"も"今の話"も、余り気にし過ぎるなよ?」

「う、うん。」

「……ま、前者は言っても無駄だと思うけどな。」

「カズキの言いたい事は判るけど……これだけは譲れないの。」

「そうか。 じゃあ夕飯は先に行ってくれ、俺はもう少し整理してから行く。」

「わかったわ……(絶対に、虚無のメイジにッ……)」


正確に言えば"直ぐに帰る訳じゃない"と言う言葉。

レコン・キスタと合間見るまでの猶予さえあれば、彼が去る前にWAPで戦え、
虚無の魔法に目覚めれる可能性も……まだ潰えないのだ。

しかしルイズは……虚無の訓練については"必死過ぎる"と言っても良い。

"普通の魔法"を唱える事は既に何年か訓練をして成果が出ず、
諦めていたのだが、"虚無のメイジに目覚める可能性がある"と知って何もしない訳にはいかない。

よって再び過去と同じように魔法の練習をおり、口では"気にするな"とは言うが、
和輝が期待しているようにも感じて、どうにか虚無の魔法を成功させようと、
毎日毎日ボロボロになって帰ってくる故に、あまりにも"必死過ぎる"ように見えるのだ。

その意地をもはや否定するような事はできず、和輝は頷くとルイズを先に食事に行かせた。

数十秒後……彼女の足音が消えると、和輝は立て掛けてあるデルフリンガーに声を掛ける。


「おい、何時になったらルイズは"目覚める"んだ?」

『そんなに"元の世界"に戻りて~のか? 相棒。』

「それもあるけどな……何だか不憫なんだよ。」

『前に"近い"って言ったろ? おめ~さんも判る筈だ、それが何時なのかがな。』

「……レコン・キスタか?」

『その通りだ。 実際は娘っ子 次第だけどな。』

「それなら、今 ルイズのやってる事は……」

『ぶっちゃけ、無駄だな。 まぁ、好きにやらせとけきな。
 娘っ子にとって、今の努力が本番で報われる形になりゃ~儲けモンだ。』

「判ってる。」

『……まぁ、どっちの方法で"元の世界"に戻るかは、相棒の自由だけどな。』


――――この時点ではまだ"日食"について和輝が深く考えていなかったのが、幸いであった。


……


…………


……翌日。

この日 和輝・コルベール・シエスタの姿は学院には無かった。

理由は前途の通りであり、まず学生三人組は何時も通りの授業。

ロングビルは相変わらず、もはやすっかり板に付いた"秘書"の仕事で忙しい。


≪ギュイイイィィィーーーーンッ!!!!≫


「村までは、あと どれ位なんだ?」

「も、もう直ぐですッ!」

「そんなに掛からずに着きそうだな。」

「"法春"が速過ぎるんですよっ、凄いです!!」


≪――――オオオオォォォォンッ!!!!≫


さておき和輝とシエスタは、朝 魔法学院を出発し、早くもタルブの村に到着しようとしていた。

何故なら"112式 法春"で二人乗りして街道をぶっ飛ばしているからであり、
平日である為か人目には全くついておらず、気兼ねなくWAPを動かせているのだ。

コルベールは明け方に馬車で出発しており、そろそろ彼にも追い着くであろう。

ちなみに操縦しているのはシエスタであり、全く問題なくブースト移動ができている。

和輝と(シート越しで)密着しているのでドキドキしている彼女だが、操縦内容は立派なモノだ。

しかし、案の定フラグなど立たず、何時の間にかモニター越しの視界にタルブの村が見えてくる。


「あッ!? 見えてきました!」

「……良し、じゃあ何処か適当な目立たない所に移動させてくれ。」

「はいッ、では あの辺りに――――」

「追い抜いてないって事は、コルベールさんも着いてるんだろうしな。」


……


…………


……昼過ぎ。


「こちらです、カズキさん、ミスタ・コルベール。」

「ありがとう。 貴女にはお世話になりっぱなしですなぁ~。」

「昼飯も作っておいて貰ったしな。」

「ふふ、この位は お安い御用ですッ。」

「ん? 洞窟を抜けないといけないのか……?」

「はい、す……少し怖いですね。」

「足元には注意しないといけませんな。 私が明かりを灯しましょう。」


無事にコルベールと合流した和輝とシエスタ。

3人は村から少し離れた場所で彼女の作ってきた"お弁当"を食べ終えると、
シエスタの案内で"竜の羽衣"が祀られていると言う場所に向かっていた。

余談だが、お弁当は法春に乗せると揺れで滅茶苦茶になってしまうので、
コルベールの馬車に置いて行っており、昼食の直後はシエスタは自宅に走って地図を取って来ている。

つまり最も早起きしているのは彼女であり、男性2人は彼女に頭が下がる思いだ。

ともかく、暗い洞窟を抜け・幻想的な林の中を抜け……3人は"目的の場所"へと辿り着いた。


「この中に"竜の羽衣"が有るのか?」

「はい、そうだと思いますけど……鍵が掛かっていますね。」

「ふむ……この程度の鍵なら、魔法で開錠できそうです。」


≪――――ガチャンッ≫


其処に有るのは巨大な倉庫のような建物であり、大きな入り口は何十年も放置されていたのか、
植物の蔦がかなり絡んでおり、鍵も掛けられているようである。

しかし、トライアングル・メイジであるコルベールが居る時点で、鍵開けや蔦の焼却はお手のモノ。

故にアッサリと建物の内部に入る事ができ、遂にその中に佇んでいた物と対面した!


「有りましたぞ! これが……ッ!」

「り、竜の羽衣……訓練の時のと似ていますね……」

「やっぱり、"こう言う物"だったんだな……」


≪ザッ……≫


「伝説は確かだったようですな! くぅ~ッ、またもや秘宝を発見できるとはっ!」

「まさか、本当に有ったなんて……あっ。 カズキさん?」

「…………」


まず、コルベールは興奮気味に喜びを露にする。

和輝が来る前までは十数年、伝説の噂を聞いても見つかった例(ためし)が無かったからだ。

シエスタは確かに驚いてはいるのだが、シュミレーターで何度も同じようなモノを見ているので、
直ぐに実感が湧いてこないばかりか、逆に残念にも思ってしまう。

……彼女も和輝が"元の世界"に戻る為に同行しに来た事は、何となく判っていたからだ。

そして和輝は……竜の羽衣を見上げながら それに近付くと、静かに機体に左手を添えた。

すると、輝きを放つガンダールヴのルーン……これが戦いの"兵器"ある事を物語っている。


「カズキ君。 "これ"がどのような物なのか、やはりご存知なのでしょうな?」

「確か……えっと、何でしたっけ?」

「これは……戦闘ヘリだ。」


http://mai-net.ath.cx/bbs/ss_t_bbs/imp/imp.php?bbs=default&all=1769



[372] フロントミッションゼロ File33(FM3×ゼロの使い魔)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:d3c81d75
Date: 2007/11/27 05:18
Front mission Zero
File33:宣戦布告


2025年、"WAW"と呼ばれていた人型兵器が誕生した。

ヴァンダーヴァーゲン……シュネッケ社(ドイツ)が開発したWAPの原型である。

これは人間相手が主となっていたゲリラ戦では圧倒的な戦果を発揮した。

アフリカのとある戦いでは、たった3機のWAWが一個大隊を壊滅させた事も有ったらしい。


『来たな!? ウスノロどもめッ! お前等に"これ"が落せるか!?』


……だが、WAWは出力の問題でWAPと比べると当然ダッシュ・ジャンプの面で全てに劣っていた。

ダッシュが出来ないと言う事は格闘も出来ず、武器も初期は単発式の"ガン"での撃ち合い。

その為、WAWのポテンシャルが上がる前は"戦闘ヘリ"は非常な厄介で、撃墜は困難な相手だった。

しかし今となっては対空能力の飛躍的な向上から、ヘリが役に立つのは精々 偵察程度。

ライフルやミサイルの直撃を受ければ一発で墜落し、特に後者の高い誘導性を回避するのは不可能。

よって今現在ではWAPと比べて著しい開発は成されていないが、
旧式のモノであれど"こちら"での使い勝手は、言うまでも無く良いだろう。


「戦闘ヘリ……ですと?」

「何だか、変な名前ですね。」

「略語だからな。 正しくは"攻撃ヘリコプター"って言った方が良いか。
 この……頭に"回転翼"と、後ろに付いた"テールローター"が有るだろ?
 それを回転させて空を飛ぶ機械を、俺の世界では"ヘリコプター"って呼んでる。」

「ふむ、ヘリコプター……と言われており、戦闘用であるから"戦闘ヘリ"と言う訳ですか。」

「そうなるな。」

「ほ、本当にこんな形のが……空を飛べるんですか?」

「シュミレーターで実際に飛んでただろ? まぁ、"これ"が飛べるかどうかはまだ、判らないけどな。」

「では、試してみるしかありますまい?」

「そうだな……コルベールさん。 "固定化"を解いてくれ。」

「わかりました。」

「そうか……シエスタにも"日本人"の血が……」

「はい?」

「ヴァンツァーと同じで、戦闘ヘリも俺の世界の……いや、日本製だし俺の国の兵器なんだ。
 それに乗ってシエスタの曾爺さんが"こっち"に現れたって事は、その人も日本人。
 その血の一部が、シエスタの体にも流れているってワケだ。」

「カズキさんの世界の……ニホンジンの血……」

「――――良しッ。 カズキ君、固定化が解けましたぞ?」

「ん? そうか。 それじゃあ、早速 動かしてみるか。」


日防軍のヘリで印象深いのは、機動強襲群・空中機動課の使用するハーンイーガー。

そして、ハーンイーガーと同じく霧島重工の開発したオーシャンハーン。

どちらも20mmマシンガンと"スターリング"と呼ばれるミサイルを標準装備している。

かと言っても、目の前の戦闘ヘリはどうだか知らないので、
コルベールに"固定化"の魔法を解除して貰うと、和輝はそれに乗り込んだ。

弾数消費無し……損傷無し……燃料残量90%……

コルベールは"落下した"と言っていたので、最悪の事態も考えていたが、
この様子からすると、ただ普通に着陸したダケのようである。

武装もハーン系と左程 違いが無い様であるし、単純に"旧式の戦闘ヘリ"と言った感じだ。

かと言っても、2050年前後の戦闘ヘリであるし、極端な性能の差は無いだろう。

よって和輝は直ぐにでも離陸を試してみたくなったが、
ガラス越しにこちらを見上げているシエスタの姿を見て思った。

日本製のヘリに乗ってやってきた彼女の曾祖父は、間違いなく日本人……

まさか、異世界で出会ったメイドがこんな血統を持っていたとは、予想外であった。


「カズキ君ッ! どうですか~!?」

『……大方 動かせそうだ。 早速やってみようと思う。』


和輝はシエスタに感謝しつつ、一旦ヘリから出てくる。

その後の話で、和輝このまま戦闘ヘリを操縦して学院に戻り、
コルベールはシエスタを村まで送ってから、馬車で学院に戻る事となった。

シエスタは休暇が終われば、"法春"を操縦して学院に戻ってくると言う役割を和輝に頼まれたが、
彼がさっさと引き上げてしまう事で結構 寂しそうだったモノの、承諾するに至っていた。

だが、この一件がシエスタを辛い現実に直面させる事となるが……彼女は知る由も無かった。


……


…………


……十数分後。


『それじゃ、先に戻らせて貰う。』

「気をつけてください! 落ちちゃったら元も子も有りませんからッ!」

『大丈夫だ。 コルベールさんは、シエスタを頼む。』

「お任せくだされ!」

『それでは、離陸する。 2人とも、もう少し下がってくれ。』


現在ヘリコプターは外に出ており、間も無く離陸しようとしていた。

周囲は木々で生い茂っているが……ヘリに滑走路は必要ない。

故にその場で離陸が可能であり、多大な手間を掛ける必要は無いようだ。

和輝は座席に座りながら、二人に声を掛けて下がらせるとジェットエンジンを掛ける。

すると、回転翼 及び テールローターがゆっくりと回転し始めた矢先、
直ぐ様 凄まじいスピードで回転し、機体が徐々に浮上を始める。

その風圧は凄まじいモノで、コルベールとシエスタはその場で身を硬くして目を覆う。


≪――――ブァッ!!!!≫


「こ……これは、なんともっ……」

「か、風が凄いですッ!」


≪ゴババババババババ……ッ!!!!≫


20メイル程 浮き上がった戦闘ヘリは、その場で制止した。

直後 高度そのまま向きを変えると、かなりのスピードでその場から飛び去って行った。

トリステイン魔法学院が有る方向であるのは、言うまでも無いだろう。


「…………」

「…………」


そんな戦闘ヘリはコルベール&シエスタの視界からあっという間に消えてしまった。

……が、2人はそのまま暫く、唖然とした表情でヘリが飛び去った方向を眺めていた。

この時、離陸の影響で2人にはかなりの葉や土が付着していたが、それを払う事も忘れていた。


……


…………


……同日、正午。

和輝・コルベール・シエスタは午前中に学院を出たが、学院では一波乱起きていた。

午前の授業が終わった直後、いきなり臨時の集会が始められ……


「アルビオン……いや、レコン・キスタとの戦争は、もはや避けられん。
 アンリエッタ姫殿下の陣頭指揮のもと、軍の再編成が行われている。」

「姫様自らッ!?」

「せ、戦争だなんて……」

「大変な事になったな~。」

「本日を持ってトリステイン魔法学院は、無期限休校とする!!」


生徒全員を前に、コルベールを除くロングビル含める教員全員を左右に控えさせ。

オールド・オスマンはレコン・キスタの宣戦布告による学院の無期限休校を告げた。

その時の言葉にルイズは驚き、モンモランシーは不安な表情……マリコルヌは汗を拭う。

これには間違い無く、レコン・キスタはウェールズ皇太子の"行方不明"を、
トリステインの使者(正確にはワルド)の所為にし、勝手な因縁をつけてトリステインに宣戦布告。

どうやら十分な軍の編成が完了したようであり、3日もすれば侵攻してくるだろう。

対して、トリステイン側の準備は不十分であり、同じタイミングでゲルマニアから、
結婚を破棄するとの知らせが入った事から、更に軍の編成に混乱が生じていた。

……これもレコン・キスタの動きによるものであり、アンリエッタの手紙が原因と言う、
真相までは"降伏派"に知られていなかったのが不幸中の幸いである。

かと言っても状況は芳しくなく、降伏か滅亡……二つに一つと言う考えの者が殆どだ。

だが降伏は有り得ない……貴族としての誇りを失う事は、死も同然。

ウェールズがそう望んだと同じように、アンリエッタも軍隊の指揮を望んだのである。


「お、おい……どうするんだ?」

「実家に帰るしか無いだろ?」

「フッ……みんな、情け無いな。 御国の為に兵役に志願する者は居ないのかい?」

「ギーシュッ、貴方 軍へ?」

「父が元帥だからね……家柄上 仕方なく……ほぼ、強制的に……」

「……嫌々なんじゃない……」


無期限休校となったが、魔法学院の生徒達には戦争に参加させられる事は無い。

ギーシュはお気の毒としか言い様が無いが、休校となれば実家に帰る者が殆どらしい。

ましてや、他の国から魔法を学びに来ている生徒にとっては、良い迷惑である。

そんなザワつきが治まらない状況の中……ルイズは拳を握り締めるとその場を離れようとする。

一方、何となく予想していたのでノホホンとしていたキュルケだったが、
彼女の真横でオスマンの話を聞いていた為か、ルイズの行動を見逃さなかった。


「……ッ……」

「ちょっとルイズ、何処 行く気?」

「姫様の所よ。」

「あんた、まさか……ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」

「…………」(タバサ)

「……もうッ、せめてカズキが戻って来るのを待てばいいのに……
 タバサ、貴女はこれから どうするのが良いと思う?」

「カズキを待つ。」

「やっぱりそうよねぇ……なら、ルイズはどうするの? 今ならまだ、間に合うかも。」

「あの娘が決めた事。」

「ふ~ん……まぁ、いいわ。 レコン・キスタなんて、アタシが鉄騎で……」

「……(嫌な予感。)」


……


…………


……翌日。

昨日のうちに和輝は魔法学院に戻り、合流したコルベールと共に、
キュルケからレコン・キスタの宣戦布告について聞いた。

そして今現在は鉄騎・ゼニスのニ機のWAPと、戦闘ヘリを傍に、
和輝・キュルケ・タバサ・コルベール・ロングビルの5名は何やら話し合っていた。

シエスタ(+法春)はタルブの村におり、ルイズは王宮に向かったので、2人は不在である。


「とうとう、この時がやってきてしまいましたな……」

「アルビオン……レコン・キスタは軍艦を擁(よう)する大国……トリステインの苦戦は免れませんわ。」

「竜騎士団の実力もかなりのモンって聞くわねぇ~。
 反面トリステインの主力はグリフォン隊とヒポグリフ隊と……マンティコア隊?」

「二つだけ。」

「あぁ、ワルドが裏切ってるからな……グリフォン隊ってのは機能してないんだろう。」

「それだけでなく、姫殿下に非協力的な者ばかりだと聞いております。」

「……ですわね。 これは わたくしの予想にしか過ぎませんが、
 実質 今のトリステインでは、レコン・キスタが攻めてきても、
 防衛に出せる戦力は全体の3割~4割程度にしか過ぎないでしょう。」

「そんなに少ないのかッ?」

「はい。 対して侵攻してくるレコン・キスタの戦艦は10隻前後と予想されます。
 これは少なくとも、今のトリステインの4~5倍の兵力と考えて良いでしょう。」

「絶望的ねぇ……」


話の内容は、たった5人での"作戦会議"。

どうやったかは知らないが、ロングビルが多くの情報を持っており、
初めにそれをメインに聞いているが、トリステインが相当ヤバい状況と言うのが判る。

トリステインが元々100%の兵力を集める事ができていても、
レコン・キスタはその2倍近い兵力で侵攻してくるようなのだから。

つまり、ゲルマニアの支援を受けてようやくイーブンと言う事であり、
初めからトリステインだけでレコン・キスタに対抗するのは無理はハナシだったのだ。

かと言っても……それは"トリステインだけ"であったらの状況だ。


「だが、その為に"ヴァンツァー"が有るんだ。」

「そうそう! "せんとうへり"とか言うのも見つかったし、レコン・キスタなんて楽勝よッ!」

「今度、これにも乗りたい。」

「とにかく、何時シエスタが戻ってくるかだな……」

「ですわね。 "法春"のライフルが有れば、戦艦であれど撃沈できる筈ですわ。」

「そう考えれば、必要不可欠よねぇ……」

「コルベールさんは、何か聞いてるか?」

「早ければ明日。 遅くても明後日には戻ってくるようですが?」

「そうか……」


世間には全く知られていないヴァンツァー……それがトリステイン勝利への鍵だ。

しかし、法春はタルブの村に有るので、まだ"揃って"いない。

シエスタが戻る前にレコン・キスタが攻めてきた場合は、
彼女が戻る前に"その場"に向かい、遅れて戻って来たシエスタにはコルベールに伝言を頼むか、
和輝がヘリで大至急連絡を取りに行き、合流を急がせなくてはならない。

故にシエスタが戻って来る日がハッキリしていないのは地味に響いており、
何処からアルビオンが侵攻して来るか判らないので、出発を全機で行えないとなると痛い。

その為か少し顔を俯かせる和輝だったが……彼の"悩む所"は他にもあった。


『カズキ君! 貴方は"元の世界"に戻れるかもしれませんぞッ?』

『――――!?』

『日食と共に現れ、一機のヘリコプターは日食へと消えた。
 もう一機……即ち"これ"は、何故 帰れなかったのでしょうか?』

『空を飛んでいるうちに日食が終わって……帰れなくなった?』

『その通りッ……"タイミング"を逃したのです!
 タイミングさえ逃さなければ、再び異世界に跳躍できるのはないかと!』

『じゃあ、俺がヘリで日食に飛び込めば……"地球"に……?』

『まぁ……あくまで推測にしか過ぎませんが、その可能性は高いかと。』

『か、帰れる……? それで、日食は何時なんだ?』

『……3日後、アルビオン大陸が最も接近する日……ですな。』

『なんだって……?』


昨日、タルブの村から戻って来たコルベールと、和輝はこんな会話をしていた。

それは地球に戻れる方法が明らかになったと言う事で朗報なのだが……

時期がレコン・キスタ侵攻のタイミングと被っており、色々な意味で彼は心の準備ができていなかった。

予想に反してレコン・キスタが侵攻をズらしてくる可能性も十分にあるが、
日食での侵攻の可能性が最も高いし、非常に中途半端な状況での帰還になってしまう。

ルイズはまだ戻っていないし、ヘリで帰還すると3機のWAPは放置する事にもなる。

また、"仲間"との別れもしっかりとできそうも無いし、タイミングを逃す可能性も有るのではないか?

しかしそうなると……次の日食は3ヶ月~半年は待つ羽目になる。

日本限定になると2年~10年も待つ必要が有り、幾らなんでもこんなに待つのはゴメンだ。

ルイズの虚無の魔法に期待するのも良いが、レコン・キスタでの機会を逃したらどうなる……?

……そんな感じで、様々な不安が頭の中を過ぎり、この時の彼の表情を3人の女性は意外に思う。


「あら? どうしたのカズキ~ッ。」

「どうかしましたか?」

「……いや、何でもない。」

「不安?」

「ん……まぁ、不安と言っちゃあ不安かな。 お前等の事とか。」

「それってどう言う事よォ~?」

「期待に添えれるかは判りませんが、死力を尽くさねばなりませんね。」

「頑張る。」

「あぁ、そうしてくれ。」

「……(カズキ君……)」


だが女性たちの気遣いを相変わらずスルーし、和輝は不安な考えを止めた。

最も頼りになっている(らしい)自分がこんな調子では士気に関わる。

それが彼女たちの戦死に繋がる事など、間違っても有ってはならない。

よって、彼はこれからの運命に"臨機応変"に対応してゆく事だけを考え、
コルベールに多少 同情の視線を受けながら、残り少ないシュミレーター訓練を始めた。

此処に法春は無いが、データは有るので鉄騎の中でも法春の性能でのシュミレーターは可能である。


「皆さん、お疲れ様です。」

「明日に最終調整をしよう。 だが、レコン・キスタが侵攻して来た場合はキャンセルだ。」

「シエスタと"法春"、明日戻って来るかしら?」

「可能性が高いのは明後日。」

「それは、レコン・キスタの侵攻も同じですわね。」

「(それにしてもルイズの奴、何してるんだ……?)」


――――そして二日後、遂にレコン・キスタはトリステインに侵攻して来る。



[372] フロントミッションゼロ File34(FM3×ゼロの使い魔)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:d3c81d75
Date: 2007/11/30 04:11
Front mission Zero
File34:出撃


=魔法学院 無期限休校 開始日・トリスタニアの王城=


トリステインを纏めるアンリエッタは、まだ17歳。

"姫だけ"としてなら何も気にする事は無いが、一国を背負うにしては若すぎるかもしれない。

故に自分に協力的ではない貴族達の激しい糾弾は、彼女の心を幾度も傷付けていた。

時には一人泣いた夜も有ったものだが……ルイズが言った"彼"が、生きているという希望。


――――ウェールズ皇太子様は、生きておられます。


それがアンリエッタの心を、強く保っていた。

レコン・キスタは"行方不明"と発表しているので、死んでいない可能性は極めて高い。

何処で何をしているのか判らないが、アルビオンを再び取り戻す為に頑張っているのだろう。

だから彼女は彼にも負けぬようにと兵を纏め、レコン・キスタに抗うつもりだ。

兵力は心とも無いが、例え命を失ったとしても、ウェールズよりも先に逝けるのであれば本望だ。

勝手な話だが……愛する人を失うよりも、愛する人に自分の死を少しでも悲しんでもらう方が良い。


「姫様。 どうか わたくしを……お傍に。」

「ありがとうッ……ルイズ。」


かと言っても、自分は最初から死ぬ気で有ってはならない。

アンリエッタが死ねば自分に付いて来てくれる、大勢の部下達が死ぬ。

敗戦後に蹂躙されてしまう村・街の平民・貴族達が死ぬ。

そして彼女の愛するウェールズ、親友であるルイズも死ぬ。

だからこそ"無謀"と罵倒されようと、彼女は勝つ気で戦いに行かねばならなかった。


「お役に立てるかどうかは……わかりませんが。」

「何を言うの? 貴方が傍に居てくれるだけで、心強いわ。」

「姫様……」

「ところで……あの"使い魔さん"はどうしたの?」

「!? えっ、その……カズキは学院に居ます……今回ばかりは、巻き込めませんから……」

「……そう、貴女もなのね。」

「????」


目の前で跪いているルイズは、何故か包帯やシップ(のようなもの)が目立っていた。

だが彼女が訪れた直後に"魔法訓練"をしていたと聞いているので、今は気にしないことにしている。

そんな彼女は、銃技に優れると言う変わった(人間と言う意味で)使い魔を連れて行かないようだが、
アンリエッタはルイズも同じように"カズキ"に死んで欲しくないのだと予想した。

ウェールズよりも先に逝く方を望むアンリエッタにとって、ルイズの気持ちは良く判る。


≪――――ガチャッ≫


『…………』

『おう娘っ子、戻ったか。』

『デルフリンガー、お願いがあるの。』

『なんだ?』

『もし、カズキに"私の事を聞かれたら"……こう答えて。』

『あん?』


……だが、アンリエッタの予想は"ほんの少し"しか当たっていない。

和輝に死んで欲しくないと言うのは正解だが、他にも様々な理由がある。

一つ目は、和輝を"試す"事。

自分が先に戦地に赴く事で、彼は自分の行動をどう感じてくれるのか?

もし来てくれないのであれば、それもそれで仕方無いが、逆に期待もしている。

二つ目は、自分の劣等感。

WAPを操る技術はライバル達には負けていないのだが、自分は魔法を使え無い。

そうなればシエスタは別として、キュルケ・タバサ・ロングビルがWAPに乗るべきであり、
虚無に目覚めた自分が強力な魔法で敵を蹴散らす方がいい気がしたのだ。

……しかし、数十日の魔法訓練でも虚無に目覚める事は出来ず、始まる戦争。

かと言って今更"やっぱりWAPに乗りたい"と言い出す事もできず、彼女は王宮へ向かったのだ。

そして三つ目は、貴族としての意地。

今更と言ったところだが、ルイズのプライドの高さは貴族の中でもトップクラス。

暫くシュミレーターをしていなかったのもあり、"死<名誉"と言う価値観が強くなってきていた。

故に命を掛けてでも虚無に目覚め、アンリエッタを守ろうと言う決意があるのだ。


「……それでは、ルイズ。 ゆきましょう。」

「はいッ。 ですが、姫様……」

「どうしたの?」

「この指輪は、何時お返しすれば宜しいのでしょうか?」

「そうね……ふふっ、わたくしが 再びウェールズ様とお会いできた時に返して貰いましょうか。」

「……わかりました。」


……


…………


――――日食・前日。


「……ふぅ。」


久しぶりに実家(タルブの村)に戻ったシエスタは、農作業を手伝っていた。

今現在は一段落ついたらしく、彼女は溜息をつきながら汗を拭う。

そして視線は空似へと移り、さんさんと輝く太陽を見上げてシエスタは眉を落とした。


「明日は日食かぁ……」


彼女は"竜の羽衣"の伝説に最も誓い存在だ。

よって日食・ヘリコプター・和輝・異世界……これから成る意味は十分理解している。

当然 明日トリステイン魔法学院に戻ったら彼が居ないかもしれないと言う事も……

いや、居ない可能性は極めて高そうだが、そう思い込みたく無い自分が居た。

只の平民・メイドである自分の人生をここまで変えてくれた彼に、
シエスタは憧れ以上の想いを抱いていた事は、今更 言うまでも無かった。


≪……オオオオォォォォン……≫


「――――えっ?」


……そんな時。

遥か遠くの空から唸り声のような音が響いてくる。

故に彼女含めて村人たちがその方向を見上げると、其処には幾数もの戦艦が近付いてくる。

合計11隻……巨大な旗艦と10の護衛艦からなる、アルビオン艦隊であった。

彼女は戦争の事など何も知らないので、ただポカンとしながら空飛ぶ船を眺めているしかなかった。


……


…………


「ルイズは あのまま戦争に行く気だったのか!?」

『言った通りだ。』

「どうして、それをもっと早く言わないんだッ!?」

『娘っ子が"私の事を聞かれたら"って言ってたからな。
 おめ~さんが聞かなかったから、言わなかったダケの事じゃね~か。』

「そう言う問題じゃ無いだろ!?」

『約束は約束だ。』

「……ッ……(そうだな、デルフは"こう言う奴"だったんだ……)」


――――日食・前日の夜。


シュミレーターの最中調整の終了後、未だに戻らないルイズを気にして、
和輝がデルフリンガーに何となく聞いた事が発端だった。

どうやら彼女は最初から戻ってくる気など無かったようであり、
今頃 兵隊達に紛れながらアンリエッタの傍に居るらしい。

こんな貴重な情報を黙っていたデルフリンガーに怒りを感じた和輝だったが、
元はと言えば彼女に対する注意や気遣いを忘れていた事もあるし、彼はこう言う性分なのだ。

よって過ぎた事を今更 グラグダ言っても仕方無いので、
和輝が一旦 口を閉ざしたタイミングで、デルフリンガーは"伝言"を続けようとする。


『どうするんだ? 相棒。』

「そんな事は決まってるだろッ?」

『けどな……選ぶのはお前ェさんの"自由"だ。』

「どう言う事だ?」

『相棒は"こっち"の人間じゃねェから、死にたくなかったら無理に来る必要は無ェとさ。
 他の娘っ子達も"この国"の人間じゃ無ェし、別に行かせる必要は無ェとよ。』

「あいつ……」


もし、和輝が"明日帰れる"事を知っていれば、ルイズは"クビ"とまでも言ったかもしれない。

だが幸いか……僅かながらも来てくれる"期待"はしていたようであり、
戦争の参加は強制では無いという事で落ち着いていた。

また、キュルケ・タバサ・ロングビル(+シエスタ)に対しても同様であり、
彼女達もルイズにとっては、今や死んで欲しくは無い"仲間"であった。

元々シュミレーターを始めたのも"WAPを動かす為"であり、戦争の為では無かったのだ。

和輝は使い魔なので強制もクソも無いのだが、彼はその(使い魔の)気は無いとは言え、
ルイズに役割として言われた"一番重要な事"を彼女自身が投げ出すのはどうかと思った。


『まぁ~オサラバして、相棒の世界を見に行くのも良いかもしれね~けどな。』

「バカを言うなッ。」

『悪ィ、冗談だよ。』

「全く何考えてるんだ……使い魔は"主人を守る事"が一番重要なんだろ?」

『あぁ。 だったら明日 情報が入り次第、急いで行くこった。
 焦ンねぇでも、戦いがおっぱじまる前に合流できりゃ良いんだからな。』

「……そうだな。」


……


…………


――――翌日 明け方。


「カズキ君、起きてくだされッ! 大変です!!」

「……ッ!?」


運命の日、和輝の一日は今や主人が居ないルイズの部屋に、
コルベールがノックもせずに鍵を開錠してドアを開いてきたのが始まりだった。

大きなベットは無人だが、和輝はしっかりと中古のベットで寝ていたのはさておき。

予定では本日 シエスタの帰りをギリギリまで待ってから、
ヘリコプターで迎えに行くか行かないか判断し、とにかく3機を集める事を優先させるのが第一段階。

そして、領内に侵攻して来たレコン・キスタを迎え撃ちに行ったトリステイン軍と合流し、
ルイズを見つけて一発 頭を小突いてやってからレコン・キスタの艦隊撃破が第二段階。

最期に日食が終わる前に出来るだけ別れの時間をつくり、地球に帰還するのが第三段階であった。


――――午前7時。


「えぇ~ッ! 昨日のうちにレコン・キスタの艦隊がタルブの村を抑えたですってぇ~!?」

「早い。」

「まさか侵攻をズらしてくるとは……やられましたね。」

「現在ではトリステイン軍も動き始め、間も無くレコン・キスタと接触するそうですぞッ?」


しかし、予想に反してレコン・キスタは日食の前日に侵攻してきた。

予想はしていたが、結局 確率が低いという"可能性"に頼ってしまっていた。

当然トリステイン軍も日食の日に侵攻してくると思い込み、アッサリと支配を許してしまった。

それダケならまだマシ……法春は遅れても急げば十分ルイズの戦死は抑えれる筈だったのだが、
よりによって"タルブの村"がレコン・キスタの手に有るらしい。

そう……合流を待つ筈の"シエスタ"に大きな命の危険が生じているのだ!!

今現在はいち早く情報を得たコルベールが和輝を起こし、同じくロングビルはキュルケとタバサを起こし、
身支度を済ませると5人は2機のWAPと戦闘ヘリの前に集まっている。


「俺達が着く頃にはもう、戦いは始まってるって事なのか?」

「はい。 間も無く接触するようなので、幾ら急いでも間に合いませんわ……」

「だったら話は早いじゃない! 行きましょ、カズキッ!」

「手遅れになる前に。」

「そうだな……出撃するぞ! まずキュルケは鉄騎だッ!」

「はいは~い!」

「ロングビルさんはゼニスに乗ってくれ!」

「承知しましたわっ!」

「タバサはシルフィードで着いてきてくれ、現地で法春に乗って貰う可能性が高い!」

「判った。」


開戦は予定よりも4時間以上早く、今まさに戦いは始まろうとしているだろう。

よって"ブリーフィング"の余裕すら無く、各々は和輝の指示で行動に移る。

キュルケは鉄騎・ロングビルはゼニスに登場し、タバサは和輝にインカムを放り投げられると、
既に呼んでいたシルフィードに跨り、和輝は当然"戦闘ヘリ"に乗り込んだ。


『こちら和輝だ、皆 聞こえるか?』

『オッケ~。』

『聞こえます。』

『問題ない。』

『判ってるとは思うが、これから急いでタルブ村に向かう。
 だが足並みは合わせる。ヘリの時速は350リーグあるが、WAPは違うしな。
 そう言う訳で特にキュルケ、時速250リーグ限界まで飛ばしてくれ。』

『任せといて~!』

『それではこちらは離陸する、各員 入り口まで移動しろ!』

『了解!!』×3


≪ズシンッ、ズシンッ、ズシンッ、ズシンッ!!!!≫


和輝の指示で、2機のWAPは立ち上がると学院の入り口にへと早足で移動する。

同時にシルフィードは地を蹴っており、和輝はコルベールに合図を送る。

すると、コルベールは優しく頷き、和輝は額に右手を沿えいわゆる"挙手の敬礼"をする。

これはお互い二度と会えなくなると言う事から来る行動であり、
和輝は真剣な表情だったが、コルベールの目尻には少しだけ涙が浮かんでいた。

さておき悲しんではおられず、コルベールは風圧に備え身構えながらも杖を振るい、
魔法による風を発生させて回転翼 及び テールローターを動かす。

直後 あっという間に戦闘ヘリは浮上し始め、離陸 所要時間を大幅に短縮させた!

この時 既に2機のWAPは配置についており、シルフィードは2機の頭上で浮いている。


≪ゴババババババババ……ッ!!!!≫


『……良し! 出撃だッ!!』

『――――了解!!』×3

「皆さんッ! 必ず生きて戻ってきてくだされ~っ!!」


≪ギュイイイイィィィィーーーーンッ!!!!≫


そして、物凄い速さ飛び去ってゆく戦闘ヘリとシルフィード。

地面を唸らせながら、走り去ってゆく2機のヴァンツァー。

この一部始終を多数の生徒達や一部の教員もが見ていたが、もはやどうでもいい。

そんな中で、唯一"これら"を知るコルベールは、何時までも4つの後姿を見守っていた。


『わ、私の村は……私が守るッ!!』


―――― 一方同時刻、一人の少女が戦地に赴こうとしていた。



[372] フロントミッションゼロ File35(FM3×ゼロの使い魔)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:d3c81d75
Date: 2007/12/02 06:01
Front mission Zero
File35:メイドの決戦


≪ギュイイイイィィィィーーーーンッ!!!!≫


2機のヴァンツァーが、陸を駆ける。

戦闘ヘリとシルフィードが、空を駆ける。

そのうちヴァンツァーは街道をブースト移動しているので、
何度か平民・貴族と関係なく、通行人とすれ違う事もあった。

だが鉄騎とゼニスは左右に開いてそのまま通行人の左右を通り抜け、
速度を落とさず、引き続き何事も無かったようにブースト移動を継続する。

対して"謎のゴーレムが通り過ぎた"という奇想天外な事実を突きつけられた者達は、
暫くポカンとしながらその場で唖然としている他ならなかった。


『……あぁ、ところで言い忘れたんだが。』

『どうしたのぉ~?』

『皆は"この国"の人間じゃ無いらしいし、戦争が嫌なら引き返して良いぞ?』

『ふふ、御冗談を。』

『愚問。』

『カズキ~、今 取り込んでるのよ。 轢いたら貴方の所為よ?』

『悪かった。』


――――もはや、余計な言葉は要らなかった。


……


…………


……トリステインの西。

タルブ地区の空域を7隻もの戦艦が、トリステインの王都を目指して飛行している。

陣形としては、まず1隻の巨大な旗艦の正面に2隻の戦艦。

左右には2隻づつの戦艦が固めており、旗艦の側面を守っている。

そして、全ての戦艦の周囲には巣に集まる蜂のように"火竜"が飛び回っている。

特に旗艦と火竜は"巣と蜂"どころでは無く、それ以上に火竜が小さく見える程だ。

もはや戦艦ではなく、攻撃空母のようなモノと言った方が良いかもしれない。

それダケでなく……戦艦の周囲を飛び回っている火竜も、全体の半分にしか過ぎない。

視界の数百の火竜を全滅させても、まだ戦艦の内部には戦力が温存されているのだ!


「トリステイン王国は、我等の恩情による降伏勧告を拒否した!
 我が誇り高き戦士達よッ、この"聖なる光"の下……
 大いなる力で、トリステインの者どもを圧倒せしめよッ!!」

『うおおおおぉぉぉぉ……ッ!!!!』

『レコン・キスタに栄光あれええぇぇーーーーッ!!!!』


そんなワルドを直属にクロムウェルが纏めるレコン・キスタ軍の兵の士気は最高潮。

これも"アンドバリの指輪"の力であり、熱狂的な愛国心を作り上げていた。

また、火竜を配備していない残り4隻の戦艦はタルブ制圧時に着陸させており、
搭乗していた地上制圧部隊も遅れてトリステイン王都へと陸路を進軍中だ。

当然その4隻の戦艦も地上制圧部隊の足並みに合わせて飛行中であり、
今は姿を見せていないが、いずれ増援として現れるであろう。


≪ゴオオオオォォォォンッ……≫


「あ、あれがレコン・キスタの艦隊……もう来たのかぁ~。」


そんなアルビオン艦隊を見上げて溜息混じりにそう漏らしたギーシュ。

唸りながら近付いてくる威圧感は凄まじく、もはや恐怖どころか諦め気味だ。

戦いに狩り出されたモノの、自分が役に立つような気はまるでしなかった。

それは彼の周囲のどの兵も僅かであれど感じた事だが、
此処に来ている時点で"覚悟"はあり、それはトリステインを纏めるアンリエッタも同じ。


「とにかく、まずは火竜の数を減らさねばなりません!
 ヒポグリフ隊とマンティコア隊は波状陣形で迎撃、魔法騎士団は空の援護をッ!」

『ははっ!!』


≪――――バササァァッ!!!!≫


馬上のルイズを左に、ユニコーン(のような馬)に跨るアンリエッタが指示を出す。

それと同時に浮上するヒポグリフ隊100騎とマンティコア隊100騎、計200騎。

作戦としては、消耗後すぐに後退し、兵力の低下を防ぎながら相手の数を減らす事。

だが魔法騎士団(約250)の援護があるとすれど、彼女達に今まさに迫って来ている竜騎士団は約500騎。

迎え撃つトリステインの兵力はほぼ全軍だが、相手は只の先発隊に過ぎないのだ。


「来たぞ!? 弓隊ッ! 引き付け……撃てぇい!!」


勿論、戦争とはメイジだけの独壇場では無い。

歩兵も1000人規模がおり後方に控えているが、相手が火竜では蹂躙されるだけ。

そうなればメイジが相手をするしかなく、役に立つのは精々弓隊程度である。

故に半分……500もの弓を持った歩兵達が矢を放ち、火竜達に襲い掛かる。

トリステイン側にとって、真っ先に竜騎士団が降下してくるのは予想通りであったが、
レコン・キスタ側も先ずは弓隊が矢を放って来る事は安易に予想できていた。

よって前衛の火竜のブレスにより矢はアッサリと塵となり、僅かな効果しか無かった。

何騎かは運悪く堕ちてはいるが、それダケでは威嚇にすらならないだろう。


「おおおおぉぉぉぉーーーーッ!!!!」

「見くびるなッ、レコン・キスタ!!!!」


……意外にも、先に仕掛けたのは魔法衛士隊であった。

矢がブレスで掻き消された直後、その炎を掻い潜るようにして2部隊が突貫。

火竜と違って小回りが効く運動性を活かして、騎手だけを落としてゆく。

そうなれば圧倒的な"数"に囲まれてしまうが、同士討ちによりブレスは使用不能。

となると騎手の魔法による対処か火竜に噛み付かせるしかなくなるが、
その前に突貫した魔法衛士は後退し、新たな魔法衛士と入れ替わって戦線を維持する。

まさにエリート中のエリート、圧倒的な数に対し魔法衛士隊だからこそ出来る業だ。

そして、地上の魔法騎士団は落下した騎手の相手をしたり、
騎手の落ちた火竜を攻撃したり、交戦中の魔法衛士の援護などをしている。


「す、凄い……」

「我等がトリステインの精鋭……そう簡単には敗れません。」


戦闘は地上50メイル以下の低空が主となっている。

もっと高度が高く、魔法騎士団の援護が届かない距離であればともかく、
火竜は巨大なので低空での戦闘を得意としておらず、密度を一定以上増やせないでいた。

無理に増やせば味方の竜騎士と接触したり、魔法衛士隊を戦い易くさせるダケだからだ。

竜騎士団とは火竜の放つトライアングル・メイジ並の威力のブレスを最大の武器とした、
最高峰の攻撃力を持った部隊であり、例えドッド・メイジであれど、火竜を操れる技量さえあれば、
トライアングル・メイジがグリフォンの乗るのと同じポテンシャルを持つ事ができる。

しかし欠点が無いワケではなく、今の状況での戦いはまさに"不得意"と言えた。

よって……存分な戦いをできていない竜騎士団だが、その様子を遠くで眺めているルイズ。

こんな激しい戦いを見るのは初めてであり、魔法衛士隊の実力を改めて知った彼女は驚愕していた。

アンリエッタも軍を指揮するのは初めてだが、部下達を信じている分 冷静だった。


「ふむ、思ったよりは やるようだな。」

「新たな竜騎士団を降下させますか? 閣下。」

「そこまでする相手でもあるまい。 ワルド、砲撃の準備は?」

「既に滞りなく。」

「良し、間も無く射程内まで接近できよう。 遠慮は要らんぞ!」

「はっ!!」


戦いが始まって10分、トリステイン側の被害は20~30程度。

対して竜騎士団の損害は100騎に近く、かなりの善戦をみせていた。

だが後続の500騎 及び、11隻もの戦艦の存在を考えるとそれでも被害は多い方だ。

かと言って耐えなければならない……誰もがそう考えている矢先!!


≪ドオオオオォォォォーーーーンッ!!!!≫


「うわあああぁぁぁーーーーッ!!!!」

「ぎゃああああぁぁぁぁ~~~~っ!!!!」


≪――――ズゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


旗艦を後ろに、左右の4隻が前衛の2隻に並び魔法騎士団を砲撃した!!

それにより魔法騎士達は風圧で転げ落ち、直撃を食らった者のカラダは弾け飛ぶ。

馬は爆音に怯えて手綱は効かず、数十の砲台による一方的な砲撃による蹂躙……


「貰ったぁ!!」

「し、しまったッ!?」


同時に援護が消えた事による、魔法衛士隊の劣勢。

爆風の影響を防ぐ為にやや上昇した事も裏目に出たのか、
次々とブレスに焼き尽くされ、食い殺され、戦死する魔法衛士が続出していた。

なお、まだ砲撃は続いており……戦況は早くも一変してしまう。


「や、やっぱり無理だったんだよ……」


そんな中 魔法騎士団に紛れて、後方で少なからず役目を果たしていたギーシュ。

もし、若いと言うことから後ろに配置されていなかったら、既に戦死していただろう。

今は馬から転げ落ちて尻餅をついており、撃ち落されてゆく仲間を見上げる事しかできていない。

此処で勇ましく散ればモンモランシーは悲しんでくれるかな? そんな考えも浮かんでくる。


「ひ、姫様……」

「くッ……」

「大丈夫です、ならば わたくしが奴らを……!」

「ルイズ、貴女だけを逝かせは……」


一方、ルイズとアンリエッタも戦艦の圧倒的な威力を思い知らさせる。

あれが1隻でも状況は同じなっていたのかもしれないのに、
視界には7隻も有るダケではなく、更に4隻……そして地上の部隊も接近している。

それを考えれば、辿り着く答えは一つ。 アンリエッタは唇を噛み締めた。

ルイズはまだまだ諦めていないように見えるが、彼女が前進すれば間違いなく死ぬ……そう感じた。

よってアンリエッタはルイズと共にゆこうと口を開こうとした……矢先!!


               [ B o d y ブ レ イ ク ]


≪ドパアアアアァァァァンーーーーッ!!!!≫


「――――ハッ!?」

「え……っ!?」


突然"後方"から、予想もつかない"音"が聞こえてきた。

慌てて後ろを振り向くと、かなり遠くに"何らか"の人影のようなモノが見えた。

すると前方が どよめき、再び前を見ると……"堕ちて"いる。


――――1隻の"戦艦"が。


≪ずううううぅぅぅぅん……っ!!!!≫


『…………ッ!!!!』


大きな風穴を開け、地面に墜落した戦艦。

今はメラメラと燃えており、直前に十数騎かの竜騎士が飛び出して来ていた。

そうなれば残りの者は、堕ちた戦艦と運命を共にしているのだろう。

だが……その様な事を考える余裕は今は誰にも無く、
"ほぼ全ての者"は戦艦であった残骸を唖然としながら眺めている事しかできなかった。

例外にルイズだけは、もう一度 後ろを振り返り、アンリエッタの横でこう漏らした。


「ど、どう言う事……?」

「……法春……」


……


…………


突然、タルブの村の上空に現れた11もの戦艦。

それに尋常ではない様子を感じた村人達は、直ぐ様 村を離れ森に避難した。

お陰で死人は出なかったが、地上制圧部隊により村を荒されてしまう。

しかし、抗う術は無いので何も出来ず、当然シエスタも同じであった。


「もう、この辺は危ない。 さっさと王都の方に逃げよう。」

「…………」


翌日 家族や村人に流されるようにして、シエスタは荷車に乗って故郷を離れていた。

和輝が居なくなるダケでなく、突然の戦争で故郷まで失う事になるなんて……

これから、何を希望に生活してゆけば良いのだろうか……?

故にぼんやりとしていると、トリステイン軍とすれ違う事となり、
村人達は慌てて道を空けて跪いていると、シエスタが目にしたのはルイズの横顔。

真剣な顔であり、真横のアンリエッタよりも、彼女の表情は印象に残った。


――――どうして"貴女だけ"が?


てっきりシエスタは、ルイズが最後まで和輝の傍に居るとばかり思っていた。

だが彼の姿はなかった……和輝の姿を見落とす事なんて、彼女に有る筈が無い。

和輝に助けられてから、何時も彼の事を想い彼の姿を探していたから……間違いない。

さておき 戦地へと赴くルイズ……彼女は最も和輝の傍に居る事を望んでいる筈なのに。

急な魔法の訓練でシュミレーターに参加しなくなってしまっても、
シエスタと鉢合わせた時は、和輝が自分の事を何か言っていたか聞いてきたクセに、だ。

それなのに、それなのに戦地へ……彼女は守りたいんだろう……"この国"を。


「どうした、シエスタ?」

「……ッ!!」

「お、おいっ!? 危ないぞ、何処に行くんだ!?」

「ごめんなさい、お父さん! 先に行っててッ!」


≪プシュウウゥゥ~~ッ……≫


――――だから私も、守りたい。


防御 ■■■■ 対火炎 属性ダメージ減少率60%

命中 ■■■■ 169%

回避 ■■■■ 59%


――――"あの人"が残した、"これの力"を借りて。


≪ウイイイイィィィィン……ッ≫


――――ちょっと、反則かもしれませんけどね。


父親の制止を振り切ると、シエスタは走るに走って辿り着く。

言うまでも無く、112式 法春を隠していた場所であり、
彼女はコックピットを開くと乗り込み、簡単な認証を済ませると小休止。

目を瞑りながらであり、心臓の鼓動が弱まった事を確認するとWAPを立ち上がらせる。

そして移動を開始し、視界にトリステイン軍の最後尾を確認すると、
カメラをズームに切り替えてライフルを構え、"狙撃モード"にへと移る。

トリステイン軍にとってはレコン・キスタ艦隊への距離は遠いが、
大砲の射程内であるし、法春のライフルにとってはトリステイン軍を挟んでもタカが知れている。

よってシエスタは一番近い戦艦をロックオンすると、震える手でトリガーを引いた。

"狙撃は冷静に"と言われていたが、蹂躙されている最中の友軍……怖くない訳が無かった。


『わ、私の村は……私が守るッ!!』


――――直後、彼女の"スキル"が初めて発動された。



[372] フロントミッションゼロ File36(FM3×ゼロの使い魔)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:d3c81d75
Date: 2007/12/04 14:02
Front mission Zero
File36:氷竜騎士団


「…………」

「姫様、姫様ッ!」

「ハッ……ルイズ。 い、一体なんなのですか? あれは……」

「詳しく話している暇はありませんが、"味方"である事は間違いありません。」

「……良く判りませんが、"天の助け"と言う事ですね。」

「(だ、誰? 誰が乗ってるのよッ?)」

「しかし、もはや このまま見ている訳にはいきません。」

「えぇッ!? 姫様、まさか――――」


未だに敵・味方問わず、撃沈された戦艦を眺めているだけだった最中。

ルイズだけは例外であり、固まっていたアンリエッタを正気に戻す。

すると案の定、"あれ"が何かと言う事で頭が一杯のようであったが、
"味方"と言う単語で無理矢理納得する事にすると、アンリエッタは表情を改める。

一方、ルイズも法春の登場には十分に驚いており、
誰が乗っているか判らないので、再度 法春に視線を移して考える。

まさか和輝が……と言う可能性も考えてみたが、思考は直ぐに掻き消される。


≪ピイイイイィィィィーーーーッ!!≫


アンリエッタが突然、高らかに口笛を吹いたのだ!

この口笛により前方の魔法衛士隊や魔法騎士団も正気に戻り、
同時に後方から数十もの"何か"が飛び上がり、アンリエッタの方へと近付いてくる。

それは"グリフォン"であり、隊長を失った"グリフォン隊"の面々であった。

騎手は全員が魔法衛士で無く何名か女性も混ざっており、アンリエッタが再編成したのだろう。

そのグリフォン達のうち、一匹だけ騎手の不在なグリフォンが2人の傍に降り立つ。


「ルイズ、貴女も乗ってくれる?」

「も、勿論です! でも、あの……」

「安心して、貴女の命を背負う事になるんだもの。 決して無理はしないわ。」

「姫様……」


どうやらアンリエッタはグリフォン隊の指揮を執るようで、屈指なグリフォンに跨る。

ルイズも同乗を促されたモノの、彼女が危険に直面する事になるので渋っていると、
逆に自分の命を気遣ってくれる事で何も言えなくなってしまい、彼女もグリフォンに乗る。

……すると アンリエッタはルイズを背にグリフォンを浮遊させ、勇ましく杖を振り上げると叫ぶ。


「グリフォン隊、出撃ッ!!」


……


…………


≪ドパンッ!! ドパアアアァァァーーーーンッ!!!!≫


シエスタは1隻の戦艦を撃沈すると、更に2発 発砲する。

その弾丸はもう片方の旗艦の前方を守る護衛艦に2つの風穴を開けた。

しかし直撃では無いのか、煙は上がってはいるが撃沈する事はできなかったようだ。

だが……敵軍に"脅威"と認識させる事としては十分過ぎる程であり、
6隻の戦艦は慌てて後退を開始し、トリステイン軍は砲撃の射程外となる。

それを好機と見て、アンリエッタがグリフォン隊を前進させたのが同時であった。


「だめ、届かない……でも、逃がさないっ!」


≪ギュイイイィィィンッ!!!!≫


さがる戦艦を見て、シエスタは狙撃体勢を解くとWAPを前進させる。

そのままトリステイン軍の後方で控えていた歩兵達の横を通り過ぎ、
前線で竜騎士団と戦っているトリステイン軍の横をもブースト移動で通り過ぎ、
アンリエッタ達から数百メイル離れた位置でシエスタの法春は再びライフルを構える。

狙うのは先程 落としそびれた戦艦であり、今の前進により既に射程範囲内。


≪――――ずううううぅぅぅぅんっ!!!!≫


その射撃により、流石に3発は耐えれなかったか……墜落する戦艦。

これで法春の登場から僅か10分……開戦から1時間も経たないうちに、
レコン・キスタの2隻の戦艦が撃沈されたという事になる。

これを見てトリステイン側の歩兵達は歓声をあげ、衛士や騎士団の士気も上がる。


「わ、ワルド! 何が起こっているのだ!?」

「閣下……突然、現れたゴーレムにより前衛艦2隻が沈められたようです。」

「ななな何だとぉ~っ!?」

「1隻目の撃沈で後退させましたが、思いの他 素早く2隻目も……」

「そんなゴーレムの話は聞いていないぞッ? どうするのだ!?」

「逆に攻勢に出て、ゴーレムを仕留めるしかないかと。」

「そうだな……では陽動として、護衛艦全ての火竜を出撃させろッ!
 ゴーレムなど、この"レキシントン号"の砲撃を食らえばひとたまりもあるまい!!」

「ははっ!」


≪ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


「だ、第4番艦が被弾ッ! 飛行は可能ですが、損傷は著しい模様です!!」

「ワルド、急げっ!」

「直ちに!(……まさか、ガンダールヴ? だが、あれはゴーレム……)」


……一方、クロムウェルとワルド。

混乱の中 受けた報告は信じられない内容であり、ワルドでさえ一瞬 驚愕していた。

だが所詮は一体と我を保ち、彼は冷静にクロムウェルの指示を受けた。

それにより、数分後……約200騎の竜騎士団が増援として出撃し、向かってくる。

目指すはシエスタの法春 ただ一つであり、射撃を恐れる事無く突撃してくる。


「……ぅ……」


≪ドクンッ……≫


対してシエスタは、"今度"はトリガーを引けなかった。

しっかりと3隻目の戦艦をロック・オンしていたが、視界に入ってきた竜騎士団。

これで射撃をすればどうなる……? 目の前の竜騎士は"弾け飛ぶ"だろう。

戦艦であれば"殺す"と言う実感は左程 湧かなかったが、今度は直面する筈……

そう考えると、只の平民でしか無かったシエスタは、
ただ 汗を滲ませ膝元に染みを作り、トリガーを震える手で握るしかなかった。

最初は故郷の為に戦う決意であったが、その決意だけでは非情には成り切れなかったようだ。


「……ッ!!」


≪――――クイッ≫


かと言って、このまま竜騎士に殺される訳にはいかない!

シエスタはたった数秒で考えて考えて考え抜くと、射撃直前に僅かに銃口をズらした。

それにより弾丸は、火竜の"翼"を貫通し……飛行不可能となり、地面に落下していった。

このように、シエスタは弾丸を直撃させずに火竜を倒す選択をしたようである。


■WARNING■


≪ドォンッ! ドォンッ! ズドオオォォンッ!!!!≫


「――――くっ!?」


シエスタは一旦 戦艦の撃墜を諦め、"この方法"で近付いてくる10騎近い火竜を落とした。

竜騎士団の接近まで、まだ距離は有ったので、引き続き射撃するつもりだったのだが、
突然"警告"をコンピュータに告げられ、シエスタは射撃体勢を解くと"回避"を行う。

直後、火を吹いた船体を横にしたレキシントン号の片舷・54門もの大砲が地面を粉砕させる!

だが回避により機体には命中しておらず、接近した竜騎士団さえ法春には追いつけない。


「な……なんなんだ、あのゴーレムはッ!?」

「早すぎるぞッ! 本当にゴーレムなのか!?」


≪ギュインッ!! ギュイイィィンッ!!!!≫


「こ……こんなに追われてたら、反撃できないっ!」


対してシエスタだが、彼女の状況は芳しく無い。

正面から雨のように降り注ぐ砲撃と、左右から竜騎士団のブレス。

これによりライフルを撃つ暇など有るハズは無く、ひたすらブースト移動での回避行動を強いられていた。

竜騎士団側でも、正面を向き・足を動かしてもいないのに、
上下左右に動く"謎のゴーレム"の動きは驚愕であり、何騎かは砲撃に巻き込まれて脱落している。

よってそれをシエスタは利用する事にしたようで、好機信じ……彼女はひたすら、
自分に向かってくるレコン・キスタの軍勢を陽動する事に集中していた。


「(大砲だって無限じゃない筈っ、避け続けていれば……!!)」


……


…………


「レコン・キスタの艦隊はあの"ゴーレム"に気を取られています!
 砲撃が止んだ今が好機、何としてでも戦線を維持するのですッ!!」

『うおおおおぉぉぉぉーーーーッ!!!!』


一方、竜騎士団の先発隊との戦いを繰り広げているトリステイン軍。

護衛艦による砲撃で魔法騎士団は150、魔法衛士隊も150まで数を減らしたが、
アンリエッタのグリフォン隊の追加により数は約350。

対して 竜騎士団は500から300まで数を減らしており、戦況は優勢だった。


「あ、あいつは……ッ!?」

「アンリエッタだああああぁぁぁぁーーーーッ!!!!」

「殺せ、殺せ、殺せ、殺せぇぇぇぇッ!!!!」

「おおおおぉぉぉぉッ!! 奴を殺れば4階級特進だ!!!!」


……だが、劣勢に関わらず驚異的な抵抗を見せるレコン・キスタの竜騎士。

アンリエッタが前線に姿を見せた事で確かにトリステインの士気は上がったが、
逆に竜騎士団の血の気も上昇させてしまい、彼らはアンリエッタにへと突っ込んでくる。

つまり特攻……これはこれで恐ろしいが、数で劣っている今となっては、
彼らが素通りした左右に展開する衛士隊・騎士団の魔法の餌食となり、その命を散らしていった。

これは言うまでも無く"アンドバリの指輪"の効果であり、
クロムウェルの意思により、アンリエッタを最大の敵として仕留める暗示を成されていたのだ。

よってマトモな思考を持っていなかったようであり、この"暗示"は裏目に出てしまっていた。


「な、なんて奴等なの? 姫様の姿を見ただけで、突っ込んでくるなんて……」

「狙いは わたくしですか……では全軍、一時 後退!!」

『ははッ!!』


≪――――バサァッ!! ドドドドドドドド……ッ!!!!≫


「弓隊長、指示を!!」

「はっ! 弓隊構えッ、遠慮は要らん! 一斉掃射ッ!!」


よって余計な消耗を避ける為に、アンリエッタは全軍を後退させる。

それを躊躇い無く追撃してくる竜騎士団に対し、500の弓隊が矢を放つ。

すると今回はブレスによる"打消し"が無く、面白いように火竜達は堕ちてゆく。

暗示により彼らは彼女の登場で"アンリエッタを殺す事"しか考えられなくなっていたようだ。

とにかく、これで先発隊は100前後にまで数を減らしてしまう事となる。


「馬鹿な!? あいつらは何を考えてるんだッ?」

「アンリエッタは確かに敵の大将だが……段取りと言うモノがあるだろう?」

「くそっ、とにかく撤退だッ! 友軍と合流するぞ!!」

「話が違うぞ、楽な戦(いくさ)じゃなかったのか……?」

「それよりも、"あいつら"はどう考えても異常だったぞッ? 何故 無駄に命を……」


残った100騎の竜騎士は、"自我"を保っていた者達だ。

全ての兵がアンドバリの指輪によって操られているワケでは無く、
このように何も知らないで国の為にと信じて戦っている者も居るのである。

だとすれば、操られていた者達は"操らなければいけない"存在であり、
"レコン・キスタの為"だけに死ぬような立場では無かったハズだ。

そう考えれば不憫としか言えず……操られていない者達も、
此処で死ねば無駄死になり、生き残っても"力"を間違った方向へと使う事となる。


≪――――バサッ、バササッ!!≫


「お、おい……"あれ"は何だ?」

「氷竜……氷竜だぞ!!」

「そ、それよりも……先頭の方を見てみろよッ!」

「……ッ!? ま、まさか――――」


そんな撤退中、疑問を浮かべている中……別の方向から飛行してくる集団。

約50の"氷竜"達であり、火竜とは逆に"氷のブレス"を吐くドラゴンである。

何故こんな部隊が接近して来ているのか……だが、問題は其処では無かった。

各氷竜の胸当て(のような装備)に描かれている紋章……それは"旧アルビオン"のモノ。

それだけでなく、氷竜騎士団の先頭に跨る者は、誰もが知っている人物だったのだ!!


『う、ウェールズ皇太子ッ!?』


……


…………


「ぬぅぅッ、まだゴーレムを仕留める事はできんのか!?」

「閣下!!」

「ワルド、今度は何だッ!?」

「ウェールズが纏める"氷竜騎士団"が増援として現れました。 その数、約50との事。」

「……ッ……あの死に損いめ……やはり現れたか。」

「更に、恐れながら申し上げますが……先発隊である100騎の竜騎士達が、
 レコン・キスタを裏切り、トリステイン側に付いた模様です。」

「!? な、何だと!? 残りの火竜達はどうなったのだッ?」

「全滅したようです。」

「な、何と言う事だ……」

「ですが閣下、恐れる事はありません。 増援や裏切りった者達を足しても、
 メイジどもの数は僅か500。 こちらの優勢は変わりませぬ。」

「だ、だが……あのゴーレムのお陰で"奴ら"に回せる戦力は限られておるぞ?」

「確かに、残存兵力はレキシントン号に残る200の火竜だけですが、
 間も無く2000もの歩兵と1000の魔法騎士団が合流しましょう。
 そして4隻の戦艦に加えて亜人兵……我々が敗北する理由などありませぬ。」


≪ドドドドドドドドッ……≫


ウェールズの登場による、一部の竜騎士団の裏切り。

どうやら彼らはウェールズに説得されたようで、現在はトリステイン軍と合流している。

安易に寝返るのはどうかと思うが、狂ったような味方の竜騎士団と、
アンドバリの指輪の話をされてしまえば、ウェールズこそ"信じる者"と考えるのは難しく無かった。

それにより弱気になってしまうクロムウェルであったが、
ワルドの言葉が終わると同時に、遠くから近付いてくる軍勢の足音……

タルブの村に駐屯させていた地上制圧部隊が合流して来た瞬間であった。

これによりクロムウェルの表情に覇気が戻り、同時に口元を歪ませた。


「ふっ……そうであったな。 では亜人どもはゴーレムにぶつけよッ!
 魔法騎士団 及び 歩兵はトリステインを叩くのだ!! 残りの火竜も出撃させろッ!!」

「……仰せのままに。」


……


…………


「ウェールズ様ッ、ウェールズ様!」

「久しぶりだね、アンリエッタ。」

「良かった、来てくださったんですね……皇太子様。」

「あぁ、ルイズ。 少し遅れてしまったが、間に合って何よりだ。」

「ご無事で、良かったッ……本当に……」

「姫様……」

「泣いている暇は無いよ? アンリエッタ。
 ……新たな増援も迫って来ている、君は地上の部隊を迎え撃つよう軍を指揮してくれ。
 我等 氷竜騎士団は、今 旗艦から現れた、火竜達を抑える事にしよう。
 加わってくれた竜騎士団は、君の指揮下に入れてくれ。 ……良いな?」

「ははっ!!」

「で、ですがウェールズ様ッ!」

「皇太子様、数が違いすぎますっ!」

「それはお互い様だろう? ……ではッ、全騎前進! アルビオン王族の真の実力を知らしめるのだッ!!」

『うおおおおぉぉぉぉッ!!!!』


ウェールズの登場に最も驚いたのは、言うまでも無くアンリエッタ。

ルイズも驚くと同時に安心し、涙を流すアンリエッタに貰い泣きしそうだった。

しかし50の氷竜騎士に加えて100の火竜が加わったとは言え、
3000もの増援が迫っており、絶望的な状況は変わらない。

旗艦と4隻による砲撃+200前後の火竜はシエスタが抑えてくれているが、
地上制圧部隊に加えて4隻もの戦艦は自分たちが相手をしなくてはいけないからだ。


「(……シエスタ、ありがとう。)」


……ちなみにルイズは今になってパイロットが"シエスタ"だと気付いている。

シュミレーターを何度も共に経験した間柄である事から、
動きを見ているうちに、クセなどで"シエスタの動き"と判ってしまったのだ。

まさか彼女が法春に乗って戦ってくれるとは思わず、彼女の勇気に感謝していた。

だが不謹慎にも、一瞬とは言え和輝で無くガッカリしてしまったが、
この時の状況のルイズを、誰が責める事が出来ようか。

ともかくルイズは、旗艦から出てきた200騎の火竜へと向かってゆくウェールズと、
たった一機で激しい混戦を繰り広げている、シエスタの無事を祈った。


……


…………


≪ズガァンッ!! ズガアアアァァァンッ!!!!≫


「――――くぅッ!!」


未だにシエスタを襲う砲撃、それは止む気配が無い。

回避に集中する中、何度かライフルで翼を狙って更に火竜を落としてはいるが、
竜騎士団は休む事無く襲い掛かって来ており、シエスタの疲労はかなり蓄積されていた。

本来ならばライフルを持ったWAPは、味方機が前衛を務める事で初めて能力を発揮できるので、
"このような戦い"など無謀であり、それが初の実戦であれば尚更だ。

しかし、村の為にも引く事は出来ず、気力だけで回避 及び 射撃を続けるシエスタだったが……


「ウオオオオォォォォーーーーッ!!!!」

「グゴオオオオォォォォッ!!!!」


≪――――ズゥンッ、ズゥンッ、ズゥンッ、ズゥンッ!!!!≫


「ひ……ッ!?」


……違う方向から現れる増援。

そして、一直線に向かってくる亜人兵……トロール鬼とオグル鬼、その数40。

身長はWAPと変わりなく、醜い容姿にシエスタの顔が真っ青になる。


≪ギュイイイイィィィィンッ!!!!≫


ライフルで接近戦は不利。 まずは、亜人兵を倒さなければならない……

そう考えたのかシエスタは、一旦 砲撃の射程外へと下がり、
その速度には火竜も追いつけないので、十数秒の余裕ができる。

そして射撃で亜人兵を倒す……直後 再び火竜と砲撃を振り切って射程外で亜人兵を射撃……

これを4~5回繰り返せば、トリステイン軍が旗艦や護衛艦の横槍を受けずに、
亜人兵を問題なく全滅させる事ができる筈だったのだが……


「……くッ……ぅ……」


……撃てない。

シエスタの法春は、立位の状態でライフルを構えたまま動かなかった。

何故なら、後退した判断は良かったが……シエスタの行動は"恐怖"からなる後退であった。

ライフルを構えたのも"反射的"にしか過ぎず、ライフルを放ったら亜人兵はどうなるかッ?

そう考えるとやはりトリガーを引けず、今回は"翼を狙う"という選択肢も無い。

腕や足を狙って無力化や転倒させるのも良いが、弾け飛ぶ手足と血痕……

その光景を予想するとカラダがガタガタと震えてしまい、歯はカチカチと音を鳴らす。

更にブーストで後退し、逃げ出したくても"村を守る"と言う使命感もあり、
これ以上 無意味に下がれず、法春はその場から動く事はできなかった。


「何だッ、動きが止まったぞ!?」

「魔力切れかッ!? とにかく、くたばれぇ!!」


■WARNING■


≪ズゴオオオオォォォォ~~~~ッ!!!!≫


「いや、嫌ああああぁぁぁぁっ!!!!」


≪――――ズシンッ、ズシンッ≫


いち早く接近した火竜達はブレスを法春に放つ!!

その直撃を受けた法春は、炎に包まれ……それが消えると数歩 ヨロヨロと後ずさった。

高い属性防御がある故に機体には大した損傷は無いのだが、
シエスタに対しての精神的ダメージは高いようで、もはや"戦う"という事を忘れていた。

対して竜騎士達は中に人が乗ってる事など知らないので、立っている法春を見て、
"大して堪えていないようだ"と驚いているが、亜人兵の感情に"驚き"など無い。

そのうち、最も早く法春に接触した"トロール鬼"が、巨大な棍棒で殴り付けて来る!!


■WARNING■


≪ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


「きゃああああぁぁぁぁッ!!!!」


≪ずううううぅぅぅぅん……っ!!!!≫


「や、やったのか?」

「だよな……動かないぞ?」

「良し! なら話は早いッ、後はトリステインの奴らだけだ!」

『うおおぉぉ~~ッ!!!!』


打撃の直撃により、地面を揺らして仰向けに倒れる法春。

この一瞬の激しいシェイクにより、シエスタは後頭部を金属に強く打ちつけた。

同時に頭から血が流れるのを感じ……徐々に薄れてゆく意識。

故にシエスタは、自分の情けなさで目尻に涙を浮かべながら、
モニター越しで勇ましく叫び合っている竜騎士団の様子を最後に瞳を閉じる。

そして、憧れの人の姿を思い描き、最後にこう漏らした。


「カズキ……さん……ごめんな、さい……」


――――気 絶 発 生。



[372] フロントミッションゼロ File37(FM3×ゼロの使い魔)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:d3c81d75
Date: 2007/12/06 09:01
Front mission Zero
File37:トリステインの反撃


≪うおおおおぉぉぉぉーーーーッ!!!!≫


西より更に現れたレコン・キスタの2000もの歩兵と1000の魔法騎士団。

魔法騎士団はトリステインと違って騎馬兵ではなく、
只の騎士隊なのはさておき、その増援と接触したトリステイン軍。

まずは歩兵同士のぶつかり合いであり2倍の戦力差はあるモノの、
此処一帯の制空権を確保している150騎の魔法衛士隊と、
新たに加わった100の竜騎士団の支援もあり、今のところは一進一退の戦いを維持しているようだ。


「これに耐え切れるかッ!?」

「火炎魔法、放てっ!!」


……だが互いに数が減ってゆくと、歩兵を挟んで互いの魔法騎士団の魔法が飛び交う。

そうなると500以上にもなるメイジの兵力差が、徐々に響きはじめてくる。

しかしながら、引く訳にはいかないトリステイン軍は、何とか戦線を維持し続けている。

レコン・キスタ側は増援で若干 余裕を感じているのか、
味方を巻き込むのを避ける為に、砲撃をしてこないのが救いかもしれない。

いや……"救い"でも何でもなく、所詮 全滅する時間を延ばして貰っているに過ぎない。


「右翼が突破されそうですッ、グリフォン隊! 援護しに行ってください!!」

「はいっ!!」

「姫様、このままじゃ……」

「わたくしは諦めませんっ、折角ウェールズ様と再会できたのですから!」

「はい……(こんな時に、何もできないなんてッ……)」


それは誰もが感じていることだが、アンリエッタは最後まで諦めない様子。

さっきはルイズと共に逝こうとも思っていた彼女だが、
ウェールズの登場により、今やルイズ以上の気力を保っていた。

今現在は数騎の魔法衛士を残し、彼女のグリフォン隊は戦線へと赴いていった。

そのお陰もあってか、未だに戦線は維持されており、戦いは険しさを増していっている。


……


…………


「ウェールズ皇太子ッ、お覚悟を!!」

「――――お命頂戴っ!!」


≪ズゴオオオオォォォォッ!!!!≫


「来るぞッ!? コールドブレス、一斉放射!!」

「皇太子をお守りしろーーーーっ!!!!」


≪ヒュボオオオオォォォォッ!!!!≫


……一方、200騎の竜騎士団と接触したウェールズの氷竜騎士団。

僅か50騎であるが、臆する事無く接触すると、ブレスを吐かせ合った。

火炎と氷結……それは互いに効果を打ち消し合うようで、
数少ない氷竜とは言っても、ブレスの威力は火竜と大きな差は無い様だが……


「そこだッ! ウィンディ・アイシクル!!」

「アイス・ストームッ!!」

「エア・カッターッ!!」


何とウェールズを含め、氷竜騎士団のメイジ達はドラゴンのブレスに加え、
本人も魔法を放つ事で、次々とブレスを吐き合った相手を撃ち落していた!

本来であれば竜騎士団は騎手にダケ専念し、ドラゴンのブレスのみを攻撃手段とする。

しかし、氷竜騎士団はドット・ライン・トライアングルに関わらず、
ブレスに加えて騎手をも魔法を駆使するエリート集団であり、
単純に並みの火竜騎士の、2倍のポテンシャルを持っているのである。

つまりトリステインで例えると、魔法騎士団が火竜騎士団・魔法衛士隊が氷竜騎士団と言って良い。

だが逆に氷のブレスの破壊 及び 殺傷力は火竜と違ってライン・メイジ並 程度なのだが、
たった今ファイア・ブレスと引き分けたのは、氷竜の方が属性の相性が優れていたからだ。

また、スピードも火竜よりも氷竜の方が若干 優れており、まさにエリートだからこそ扱える氷竜だ。


「くっ!? 流石 氷竜騎士団……こうも強いとは……」

「だが、数では勝っているんだ! 一気に畳み掛けろッ!!」


≪――――バササァッ!!!!≫


「ふぅ……流石にキツいか……」

「皇太子ッ、ここは我々に任せてお下がりくださいっ!」

「そう言う訳にはいかない、もう我々には戻る場所は無いのだ。」

「で、ですが……」


……かと言って、4倍の戦力差を覆すのは厳しい。

撃破数はウェールズ側が遥かに高いが、流石に味方も何騎か落とされている。

そうなるに連れて、負担は徐々に増していっており、
混戦の中ウェールズは額の汗を拭い、側近が彼を気遣って撤退を促す。

彼が落とされないのは常に5騎程の側近が付いているからなのはさておき、
下がる気配の無いウェールズに、王族 屈指でもある一人の側近が困っていると……


≪ズゥンッ、ズゥンッ、ズゥンッ、ズゥンッ!!!!≫


「グオオオオォォォォッ!!!!」

「トリステイン! これまでだっ!!」


≪――――バサッ、バサッ、バササァッ!!≫


大きな地響きと、幾数もの翼の羽ばたきの音が聞こえてくる。

その方向を見ると、こちらに近付いてくる40の亜人兵と、200騎近い竜騎士団。

これは白いゴーレム……シエスタの法春が"倒された"事を意味していた。


「……ッ!? シエスタッ、シエスタ!!」

「ど、どうしたのルイズ、落ちますよっ!?」

「そんな事よりも、法春……ゴーレムがッ!!」

「……そんなッ……」


それだけでなく、距離を詰めてくるレキシントン号を含む5隻もの戦艦。

増援を相手にしているだけでも辛いのに、このまま本隊と接触したら……?

ルイズは状況よりシエスタの生死が気になるようだが、アンリエッタは唇を噛み締めるしかなかった。

また、ウェールズも一度だけ唇を噛み締めると、決死の表情で部下たちに向き直る。


「味方のゴーレムとやらが倒されたのか……しかし、
 2隻もの護衛艦を落としただけでも、素晴らしい戦果だと言うべきだ。」

「こ、皇太子……」

「全騎上昇せよ。 レキシントン号に侵入し、クロムウェルを討つ。
 もはや、それしか我々が勝つ手段は残されてはいまい。」

「……お供いたしましょう。」


どうやら、ウェールズは死ぬ覚悟のようだ……しかしッ!!


≪ゴババババババババ……ッ!!!!≫


凄まじい"雄叫び"をあげて、空を駆けてくる黒い"竜の羽衣"。

ライフルの発射音と同じく類を見ない音に、墜落した戦艦の時と同じように、
一斉にそちらの方向を見ると、やはり敵味方問わず視線が釘付けになる。

また、横には珍しいウィンド・ドラゴン……更に地上には2体もの新たなゴーレムが接近してくる。

天の助け……トリステインの反撃が、今まさに始まろうとしていた。


……


…………


≪ギュイイイイィィィィンッ!!!!≫


『あれって……戦艦ッ? ねぇ、着いたんじゃないの!?』

『カズキさん、状況はどうなのですかッ?』

『戦艦が9隻……味方は、かなり押されている様だな。』

『あそこに法春。』

『……ッ!? 倒れてるぞ! まさか、シエスタが……』


キュルケは街道を駆ける中、視界に入ってきた戦艦を確認した直後、
"到着した"と直感し、インカム越しに和輝に話し掛ける。

対して空の和輝は既に状況を見定めている最中だったようで、
戦艦の数と、トリステイン軍の状況を早口に伝えた。

だが、法春は見落としていたようで、それを発見していたタバサが告げると、
和輝は"最悪の事態"を考えたのか、一瞬だが険しい表情になった。

そんな最中でも、ブースト移動と飛行は続いており、戦場は近くなってゆく。


『か、カズキ……それってどう言う事よッ?』

『やはりレコン・キスタと戦ってくれていたようですね……』

『そうらしいな……おいッ、シエスタ! 聞こえるか!? シエスタッ!!』

『返事は?』

『通信は生きているから、法春の機能には問題ない様だが、
 返事が無いって事は気絶してるか、或いは……とにかく蹴散らすぞッ!』

『状況が判んないわよ~ッ、指示を頂戴!』

『良し……キュルケは苦戦してる地上の部隊の援護をッ!
 ロングビルさんは"デカブツ"を倒して、法春の場所まで戦線を押し上げてくれ!
 タバサはシエスタをベイルアウトさせろ! 俺は制空権を確保するッ!!』

『――――了解ッ!!』


≪ゴババババババババ……ッ!!!!≫


――――I SAY YES ずっと 君の傍に居るよ――――


『こいつは、挨拶代わりだッ!』


≪ヒュルルルルルル~~……ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


「うわああああぁぁぁぁっ!!!!」

「な、なんだ!? あんな竜、見たこと無いぞッ!?」


――――どんな未来が 僕らを 試したって きっと――――


『ナ~イスッ、カズキ! いっくわよぉ!?』


≪ズゴオオオオォォォォ~~~~ッ!!!!≫


和輝のヘリを見上げているレコン・キスタの歩兵たちに対し、
言葉通りの意味で、一発のミサイルを発射する和輝。

それは人の居ない箇所に打ち込まれたが、威嚇としては十分過ぎる程であり、
ある者は爆風でぶっ飛ばされ、ある者は尻餅をついて怯える。

それに追い討ちを掛けるように、突貫してきたキュルケの鉄騎が、
火炎放射器から吐き出した図太い炎を躍らせ、戦線を強引に押し上げる。

逆にトリステイン側は"白いゴーレム=味方"という価値観から、瞬く間に士気が回復した!


――――Ah ふたりの運命――――


≪ギュイイイイィィィィンッ!!!!≫


『はああああぁぁぁぁっ!!!!』


≪ドガァッ!!!!≫


――――めぐり逢えたのは――――


一方、ブーストの勢いを殺さずに、ナックルでトロール鬼に殴り掛かったロングビルのゼニス。

この一撃でトロール鬼は十数メイルぶっ飛ばされ、そのまま動かなくなる。

だが、恐れを知らない亜人兵達はゼニスを包囲すると武器を手に襲い掛かってくるが……


『……どきなさいっ!!』


――――君の声 聴こえたから――――


               [ タ ッ ク ル Ⅰ ]


右の敵はゼニスのナックル、左の敵はブースト噴射を利用したタックル等。

様々な格闘手段で亜人兵を倒すと、どんどん前にへと進んでゆくゼニスレヴ。

この驚異的な突破力に驚愕し、周囲の竜騎士団達は動けないでいる。


――――そう ピンチな出来事――――


≪……ずぅんっ≫


『周囲をお願いします。』

『判りました。』


≪プシュウウゥゥ~~ッ……≫


――――押し寄せてきても――――


『……傷は浅い。』

『!? と言う事はミス・タバサ、シエスタさんは……』

『命に別状は無い。』

『良かった……』

『シルフィード、彼女を。』

『きゅるっ!』


≪……ブワァッ!!!!≫


――――君といれば 乗り越えられる――――


亜人兵を倒して戦線を押し上げた事により、タバサの乗るシルフィードは、
無事 法春の傍に着地でき、タバサの手によってコックピットが開けられる。

すると予想通り気絶したシエスタが乗っていたが……傷は有るが命に別状は無いとの事。

よってタバサは安心も束の間、杖を振り魔法で彼女の体を浮かせると、
自分が着けていたインカムと一緒にシルフィードの背にへと乗せ、
そのまま指示を出しシエスタを安全な場所へと飛び立たせようとする。


――――ときめきと――――


「な、なんだ!? ゴーレムの中に"人間が"入ってたぞッ!?」

「にッ……逃がすなァ!!」


≪――――チャキッ≫


『行かせません!』


――――負けん気と――――


≪ズドオオォォンッ!!!!≫


「ぐああああぁぁぁぁっ!?」

「なッ、なんだ!? あの武器は!!」

「ど……どうやったんだよ!?」


――――裏腹でハラハラ するけど――――


只でさえ驚いているのに、ゴーレムの中に人間(シエスタ)が入っていた!

しかも、風竜に乗せられ飛び立とうとしているので追おうとするが、
追撃しようとした10騎近い竜騎士たちが、何故か地面へと落下する。

そう……ロングビルの放った、"ショットガン"による拡散攻撃の為であった。

距離が有ったので威力は落ちているが、飛行能力を奪うには十分であった。


――――STAY WITM ME ただ 君を守りたいよ――――


『……そこだッ!!』


≪ドパパパパパパパッ!!!!≫


「ぎゃああああぁぁぁぁッ!!!!」

「あ、あの"竜"……なんなんだッ!?」

「馬鹿なッ!? 全く歯が立たないなんて……!!」


――――遠い世界で 生まれた ふたりだけど――――


≪ウイイイイィィィィンッ……≫


『"法春"の調子は如何です?』

『損傷率10%、問題ない。』

『幸いでしたわね、それでは……』

『援護を。』

『はい、空はお任せしましたわ!』

『(……許さない。)』


――――I SAY YES ずっと 君の傍に居るよ――――


「……("竜"のあれはカズキ、来てくれたのか……)」

「つ、強い……」

「皇太子ッ、これは一体!?」

「詳しくは私にも判らん。 だが、勝機は見えた! "彼等"に遅れを取るな!」

「は、ははっ!!」


――――どんな未来も 希望に変えよう――――


「……あぁッ……神よっ……」

「……(シエスタも無事だったみたい……良かった、けど……)」

「ルイズッ、この戦……勝てるかもしれません!」

「……ッ……」


――――Forever――――


……


…………


唐突に現れた戦闘ヘリと、2機のヴァンツァー。

その活躍により瞬く間に戦況は一変し、トリステイン側の優勢となっている。

まずトリステインの本陣を攻めていた地上制圧部隊は、
キュルケの鉄騎一機により押し返され、歩兵に至っては恐怖で逃げ出してしまっている。

デカい図体だけでも太刀打ちできないのに、特大の炎までも放ってくるからだ。


「た、たかが相手はゴーレム一体だ!」

「撃てッ、撃てぇぇッ!!」


               [ 堅 守 後 攻 Ⅱ ]


≪ズゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


『……ふふん、何よ そんなの。 "火炎"ってのは、こうやってやるのよ~!?』


魔法騎士団は歩系と違って退くワケにもいかず、恐れながらも一斉に火炎魔法を放ってくる。

勿論 火炎の魔法以外にも魔法のバリエーションは有るのだが、
戦争において"火炎"が最も殺傷力が高く、レコン・キスタもその価値観しかないのが命取りだった。

故に耐火炎の属性防御とスキルの効果もあってか、全く堪えておらず、
放った魔法に遥かに勝る"火炎放射"を浴びて、阿鼻叫喚しながら後退するしか無かった。

かなり無駄遣いをしているような気もするが、弾薬として火炎放射器で使うオイルに限っては、
錬金で楽に量産が可能なので、遠慮なく使えとの許可を彼女は貰っていたのだ。

当然 非情にも人間を焼き尽くすような扱いはしておらず、
圧倒的な火力を見せ付けて、主に相手を逃げ出させる事を優先させて戦っている。


『…………』


               [ A P コ ス ト 0 ]


≪ドパンッ! ドパンッ! ドパアアァァーーンッ!!≫


「翼をやられた!? う、うわああああぁぁぁぁッ!!!!」

「ど、何処だ!? 何処から撃って来てるんだ……ぐわッ!?」


一方、片膝を付いて完全な"狙撃モード"に入っているタバサの法春。

その場所から全く動いていないが、ロングビルが戦線を支えているので、
全く問題なく射撃ができ、ゼニスが亜人兵を倒す中、次々と火竜を撃ち落していた。

それはウェールズ達を襲う火竜をマシンガンで落としている、
和輝への援護も含まれており、最高の状態でタバサの射撃能力を発揮できていた。

何とか複数でロングビルを止めようとする火竜に対しては、
彼女のショットガンにより無力なので、もはやタバサが手を貸すまでも無いようだ。


「まさか、トリステインにあれ程の"兵器"があったとは……」

「わ、ワルド! "奴ら"は一体なんなのだ!?」

「……(それに……"奴"はガンダールヴ……)」

「このままではマズいぞ!? 何とかしろ、ワルドッ!!」

「畏まりました、私が"風竜"で出ます故……ご安心ください。」

「た、頼んだぞッ?」

「お任せを。 聞いたな……"グリフォン隊"、出るぞ? 用意を急げ。」

「――――ははっ!」


対して、レコン・キスタ側はたまったものではない。

火炎魔法が通用しないゴーレムに、更なる火力で戦線を押し上げられ。

風竜に匹敵するスピードの"見たことも無い竜"の"見えない攻撃"により、成す術無く火竜達は撃ち落され。

"倒した筈"のゴーレムに、次々と"見えない長距離からの攻撃"で火竜を落とされ。

更には、"異様に素早いゴーレム"が40もの亜人兵に対し、格闘のみで渡り合うだけでなく、
戦艦の砲撃をも掻い潜りながら、竜騎士団をも纏めて謎の武器で撃墜する。

これに驚かないハズは無く、このままでは全ての戦艦をも沈められてしまう。

其処まで考えるのは まだ早いかもしれないが、クロムウェルの動揺振りは尋常では無かった。

ワルドも信じられないトリステインの"切り札?"に驚きを隠せないが、
"戦闘ヘリ"で戦う和輝の姿を確認すると、彼も出撃を決め、その場を立ち去っていった。


……


…………


「……状況は、どうなのです?」

「はっ! ゴーレムの力もあり、我が軍のメイジは援軍含め250、歩兵は500を維持!
 対してレコン・キスタの歩兵部隊は壊滅! 魔法騎士団の壊滅も時間の問題と思われますッ!
 また、火竜の数は計200にまで減少! 抵抗は依然 激しいですが、このままゆけば……」

「そうですか……ですが、まだ9隻もの戦艦が残っています、気を抜かぬよう。」

「ははっ!」

「…………」

「ルイズ、さっきからどうしたの? 勝っているのよ?」

「…………」


グリフォン隊の側近から、状況の報告を受けているアンリエッタ。

トリステイン側は氷竜騎士団50・火竜100の援軍を加えていたとしても、
魔法衛士隊を100・魔法騎士団を100にまで、その数を減らしていた。

だが、レコン・キスタの戦力からの被害を考えれば少な過ぎる程であり、
このままゆけば勝利も疑わしくない事から、アンリエッタの表情にもはや負けん気は無かった。

一方ルイズ。 先程から彼女の表情は優れず、気にならない筈は無くアンリエッタは声を掛けた。

なのに反応は無く、どうやらルイズはこんな状況下でありながら、考え事をしているようだ。

それは言うまでも無く和輝の事であり、此処に来てくれた事は嬉しいが"複雑"であった。

確かに助けを期待していたが、勝手に戦地に赴いたダケでなく、まだ"虚無"に目覚めていない。

だから、和輝にどんな顔をして会えば良いか判らず、来てくれたというのにネガティブであった。

……もし、和輝が今日"帰れる"事を知っていれば、更に罪悪感を感じていただろう。


「ルイズ、ルイズ?」

「……ッ……姫様、お願いがあります。」

「な、なに? 今 わたくしに出来る事であれば……」

「あの"竜"の所まで、グリフォンを近づけてください!」

「えぇっ!?」

「あそこに、居るんです……わたくしの、"使い魔"が。」


しかし和輝は来てくれた、よって 優勢になり戦死する可能性は減ったとは言え、
このまま戦いを最後まで眺めているワケにはいかない。

怒っていようが再び和輝と顔を合わせ、何なら叱られたって構わない。

勝手に戦地に行って今更 会いたがるのは、自分でも変だとは思うが、
彼が此処に来てくれた事で自分を少しでも"大切"にしてくれているんだろうと感じ、
急にルイズの和輝と"会いたい"と言う気持ちが高まったのだろう。

そんなルイズの真剣な眼差しを受け、アンリエッタは無言で頷くと、
未だに氷竜騎士団を横に火竜達と空中戦をしている方向へと向かっていった。


≪ヒュオオオオォォォォ――――ッ≫


「あの"竜"は私が殺るッ、各員は友軍を援護しろ!!」

「ははっ!!」


――――そんな中 空は"暗く"なり、新たな増援がトリステイン軍に迫ってくる。



[372] フロントミッションゼロ File38(FM3×ゼロの使い魔)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:d3c81d75
Date: 2007/12/09 05:59
Front mission Zero
File38:ゼロの覚醒


和輝達の登場で一気に優勢となったトリステイン側。

現在、地上の敵部隊はキュルケの鉄騎を先頭に、魔法騎士団の追撃を行っている。

ロングビルは未だに10匹前後の亜人兵を相手にしているが、
未だに砲撃が止んでいないとは言え、全滅させるのは時間の問題だろう。

そして空で竜騎士を相手にしている和輝とウェールズだったが、
戦闘ヘリのスピード&パワーとタバサの狙撃により、こちらも圧倒的に優勢。

地上制圧部隊が壊滅している事から、生き残りの魔法衛士隊と、
こちらに寝返ってくれた火竜騎士団も加わっており、数においても負けていない。

ロングビルを狙っていた竜騎士団が、ゼニスの撃破を諦め、
和輝達の方へと向かってくる事もあったが、それも些細な抵抗にしか過ぎなかった。


『あらかた、片付いたな。』

「……あぁ。 もはや敵の竜騎士達は、我々が相手にする必要は無いかもしれない。」

『そうなると、後は戦艦か……』

「うむ……"レキシントン号"を落とさなければ、トリステインの勝利はありえまい。」


向かってくる火竜を手当たり次第に落としてしまった和輝。

今は少し余裕ができているようで、氷竜に乗るウェールズを横に会話をしている。

その内容の通り、レコン・キスタの旗艦を落とすのが最も重要だ。

故に逃げ腰の残りの火竜達は魔法衛士隊に任せ、攻撃目標を戦艦へと移そうとした時だった。


≪――――バササッ≫


「……カズキッ!!」

『!? ルイズかッ。』

「アンリエッタ!? どうしたんだ、危ないじゃないかっ。」

「ウェールズ様。 それも、お互い様でしょう?」


もはや聞き慣れた声がして振り返ると、近付いてくるグリフォン。

よく見るとアンリエッタが手綱を握っており、後ろには案の定ルイズが乗っていた。

和輝は攻撃を仕掛けるとき、ちゃっかりルイズが無事なのを確認していたのだが、
まさか彼女から"こっち"に来るとは思わず、言葉を選んでいると……


「わ、私も……そっちに乗せてッ!」

『……ッ!?』

「姫様っ。」

「え、えぇ……」


ルイズにとって、和輝に聞きたい事は幾つかある。

何で来てくれたのとか、怒ってないのとか、"あちら"に戻る事はどうなったのとか……

それに、"謎の竜(戦闘ヘリ)"に対する興味も大きく、恐らくこれが"竜の羽衣"なのだろう。

しかし今は説明をして貰う暇などないし、それはウェールズとアンリエッタも同じ心境。

よってルイズは、今はとにかく和輝と一緒に居たいが為に、
アンリエッタにグリフォンを戦闘ヘリの斜め下にまで寄せて貰うと……


≪――――ばっ!!≫


「レビテーションッ!!」

『ば、馬鹿野郎ッ! 危ないだろ!?』

「ウェールズ様ッ。」

「わ、判ったっ!」


グリフォンの背中でアンリエッタの肩に手を添えながら立ち上がると、"ジャンプ"した。

当然ながら彼女の手は届かないが、先程"言われていた"通りに、
アンリエッタが杖を振るって"レビテーション"を唱えると、カラダが浮かび上がり、
ルイズの両手が、ウェールズとの会話の為に開いていた横の窓の淵に引っ掛かった。

そんな中、アンリエッタに声を掛けられると、ウェールズは直感で意味を理解し、
彼も杖を振るうと"レビテーション"を掛け、ルイズの身体を更に浮かび上がらせる!


≪――――どさっ≫


その反動を利用してルイズの小さな身体は、窓から内部に侵入でき、
機内は狭いモノの、彼女は和輝の膝の上に納まった。

これでは常識的に考えればマトモな操縦など出切るモノでは無いが、
和輝の体格の良さとガンダールヴ 及び 元からの操縦力が幸いであった。

だが和輝にとって問題はそこでは無く、今の"無茶"の方が重要だ。


『全く、落ちたらどうするつもりだったんだッ?』

「転落死なんて不名誉な死に方、する訳ないでしょ?」

『そういう問題じゃなくてだな!』

「……無茶したのは判ってる。 でも、遠くで皆が戦うのを見てるダケなのは、嫌だったの。」

『だからって、こんな近くじゃなくっても良いだろ。』

「ち、近くだから……良いのッ。」

『……はぁ?』

「も、文句なら後で聞くわ。 だから、今はトリステインを守って!」

『判ってる。』

「(あれ? 思ったよりも、言われてない……)」

『(まぁ……デルフの言ってた事が本当なら、"見てるだけ"じゃダメなんだろうしな。)』


ルイズにとって彼との再会で、出会い頭に叩かれたり、もっと色々と文句を言われると思っていた。

だが、この段階では今の状況も有ってか五月蝿く言われず、少し安心したルイズ。

理由としては、和輝が過ぎた事をグダグダ言わない性格なのもあるが、
ルイズが虚無に"覚醒"するのは、レコン・キスタが絡んでいる状況という事から、
こうして和輝の元に来なければ"条件"さえ整っていなかった事を思い出したからだ。


「も、申し上げます! 旗艦より、更に敵の増援が出現ッ!」

「数50! ですが突破力が高く……と、止まりませんっ!!」

「あれはグリフォン隊だと? ……と言う事は……」

『――――ワルドか!?』


……そんな中、空が日食の接近により徐々に暗くなり始めた時。

風竜に乗るワルドが纏める"グリフォン隊"が現れ、友軍を蹴散らしながら突撃してくる。

その突破力はアンリエッタが編成したグリフォン隊の比ではなく、
ワルドに心酔した上位クラスの魔法衛士隊による部隊であり、非常に強力なものとなっていた。

故に敵グリフォン隊は、動揺する魔法衛士隊や味方竜騎士を撃ち落しながら、
敵軍を援護しつつどんどん距離を詰めて来ており……狙いは恐らくウェールズとアンリエッタ。

だが……隊長であるワルドの目には、ガンダールヴが操る"竜の羽衣"しか映っていなかった。


……


…………


『はぁあっ!!』

「グギャアアアアァァァァッ!!!!」


≪ずううううぅぅぅぅんっ!!!!≫


『これで最後ね……ミス・ツェルプストー、そちらは如何です?』

『敗走してる部隊の追撃中……ってトコロですね~。』

『そうですか。 それでは、わたくしは退いてミス・タバサの護衛に移ります。』

『りょ~か~い。』

『それにしても……鳥肌が止まりませんわ。』

『あたしも~。 ゾクゾクしちゃってクセになりそう♪』


一方、ロングビルとキュルケ。

ロングビルは最後の亜人兵を殴り倒し、キュルケはほぼ 役割を果たし終えた。

ゼニスはショットガンがあるのでまだ役に立ちそうだが、
攻撃範囲が広すぎるので、空中での乱戦では誤射率が高い故に、
火竜達が今やゼニスを恐れて向かってこなくなった今、タバサの護衛に戻るようだ。

鉄騎に関しては火炎放射の射程の短さ故に地上戦のみの活躍であるが、
初の実戦であれど驚異的な戦果に、2人とも既に満足している様子だ。


『…………』


≪ドパアアアアァァァァーーーーンッ!!!!≫


「だ、第4番艦が撃沈されましたッ!」

「5番艦も損傷拡大! このままでは危険です!!」

「ど……どう言う事だッ? 一体のゴーレムは倒せたのでは無かったのか!?」

「そ、それが再び動き始めた模様です!」

「中には人間が入っていたという報告も……」

「えぇい! わ、ワルドは何をやっているのだッ!?」

「現在、ウェールズとアンリエッタの本陣を強襲しているとの事ですッ!」

「ワルド様は"竜の羽衣"と交戦中との事!!」

「今や奴だけが頼りだ……と、トリステインの"白い悪魔"どもめッ……!」


ロングビルは法春の護衛の為に、陽動による砲撃の回避。

キュルケはもはや戦線を離れる事となったが、タバサは未だに活躍中である。

和輝達への援護は優勢により止め、今は戦艦の撃沈を行っていた。

たった今は戦艦は残り8隻となり、4隻目に著しいダメージを与えている。

レコン・キスタ側にとっては涙目と言った所であり、
クロムウェルは今や、ワルドの活躍による大将の撃破を期待するしかなかった。


――――しかし。


「ガンダールヴッ! 勝負だ!!」

『やっぱりお前か、ワルドッ!』

「ゆくぞ!(もはや、レコン・キスタの事など二の次よ……)」

『このっ!!』


≪ズダダダダダダダダッ!!!!≫


「よ、避けたわ!」

『速い!?』

「フッ、この風竜……火竜や氷竜とは速さのケタが違うッ!
 生憎 攻撃力は皆無だが……我が魔法こそ最大の武器よ!!」

『――――ちぃっ!!』

「加勢するぞ、カズキッ!!」

『皇太子さんっ、あんたは味方を! これ以上 被害を出すのはマズいだろ!?』

「そうだったな……奴を頼んだぞッ! アンリエッタ、君は下がってくれ!!」

「は、はいっ!!」


一直線に突貫し、ガンダールヴこと和輝の"竜の羽衣"と接触したワルド。

負傷した腕を既に完治させた彼の操る風竜は、
百発百中だった戦闘ヘリのマシンガンを全て回避し、後ろに回り込む。

直後 "エア・スピアー"を放ってくるが、和輝はヘリをその位置から急浮上させて回避すると、
ウェールズに指示後、エンジンを全開にして操縦桿(かん)を強く握る。

そのまま目を疑うスピードで空中戦を初め、マシンガンと魔法での牽制が続く。

そんな中で、ワルドは狙おうと思えばウェールズやアンリエッタを落とそうとする事もできるのだが、
和輝がそれをさせるつもりが無いのは勿論、彼は何故か"その気"が無かった。

これはスクウェア・メイジとして、魔法衛士隊の隊長としてのプライドから成るモノであり、
一度負けた相手に手を抜く気など無く、放置するが敵の大将であっても構わなかった。

初めて敗北を味あわせてくれた和輝だけは、何としてでも倒さなくてはならない相手なのだ。


「それでこそガンダールヴ! 我が好敵手よッ!」

『やっぱり、奴の実力は本物か……』

「か、カズキ……」

『心配しなくても大丈夫だ……んッ?』


≪――――カチッ、カチッ≫


「どうしたの?」

『しまった、弾が切れたッ!』

「貰ったぁ!!」

『相棒ッ、抜け!!』

『!? ルイズ、操縦桿を頼む!』

「う、うん!」


そんなワルドの執着も有ってか、和輝は無駄弾を使わされ、何時の間にか弾切れに陥る。

この焦りを突かれ、背後からワルドの魔法が直撃するかと思われたが……デルフリンガーの叫び。

故に和輝は咄嗟に立ち上がってデルフリンガーを抜くと、戦闘ヘリを守るバリアのようなモノが展開し、
魔法は丸みを帯びたそれに弾かれると、デルフリンガーにへと吸い込まれてゆく。

どうやらデルフリンガーを構えていればヘリは無事で済むようだが、
このままでは、何時まで経ってもワルドを倒す事は出来ない。

今はルイズに操縦桿(+インカム貸与)を握らせているので、ミサイルを撃つ事もままならない。

いや、ミサイルと言っても……この近い間合いであれば、命中させるのも困難だろう。


≪――――ヒュボッ!! ヒュボォォッ!!≫


「そらそらッ! どうした!?」

「くっ、マズいか……」

『……ッ……』

『おい、娘っ子。』

『な、何よ? こんな時に……』

『今 目覚めねぇで、何時 目覚めるっつ~んだよ?』

『……っ!?』


……


…………


和輝が劣勢を強いられている時、WAP内のパイロット達も気が気ではなかった。

キュルケはメインカメラのズームでそわそわしながら様子を眺めており、
ロングビルは砲撃を避けながらも、やはり和輝が気になって集中できない。

戦艦を撃沈させなくてはいけないタバサに至っては、
ライフルの銃口を"ワルド~戦艦"へと何度も行ったり来たりさせていた。

法春の基本性能を理解し、風竜(実際違うが)の速さも把握しているタバサにとって、
戦艦の砲撃が来ないこの長距離で、乱戦の中ワルドの風竜に弾丸を命中させる事が、
どれだけ困難か知っているが、それでも援護しようと銃口を向け何度も誤射を考えを思い止まっている。

そんな彼女達は和輝のインカム越しの会話により、ルイズが彼の傍に居る事を知っており、
一番最初に痺れを切らしたキュルケが、先程 和輝のインカムを渡されたルイズに向かって叫ぶ!


『ルイズ~ッ! アンタがカズキを助けてあげなくてどうすんのよ!?』

『……!?』

『鉄騎の攻撃はアイツには届かないの! でも、アンタが何とかできるじゃないッ!
 魔法が失敗するなんて理由になんないわよッ? なんなら今直ぐアタシと場所変えなさい!!』

『キュルケ……』

『わたくしからもお願いします。 このゼニスでもカズキさんの援護は出来ません。
 ですから……今カズキさんを助けてあげられるのは、ミス・ヴァリエールだけなのです。』

『ミス・ロングビル……』

『私が撃っても、風竜には当たらない。 手が届くのは、貴女だけ。』

『タバサ……』


あぁ……そうなんだ、ルイズは初めて理解した。

自分が虚無に目覚めるのは、自分のプライドの為じゃない、ゼロと言われバカにされ無い為でもない。

ましてや魔法の名門であるヴァリエール家の3娘だからこそ、目覚める必要が有るワケでも無い。

全ては親友のトリステインを守る為……仲間の故郷のタルブの村を守る為……

そして、自分にとってダケでなく、仲間にとっても"大切な存在"を守る為の覚醒……

それらを悟った時……突然 和輝の左手のルーンが、今までとは違う輝きを放った!!


≪キイイイイィィィィンッ!!!!≫


「な、なんだこれはっ?」

『よ~やく来たぜ! 目覚めやがったな、娘っ子!!』

「ガンダールヴッ、その伝説と共に葬り去ってやろう!!」

「――――くっ!?」

『……な、なに……これ……?』


これは和輝のガンダールヴのルーンと、ルイズの心が完全に繋がった事を意味していた。

同時にルイズの頭の中に、虚無の魔法に関するありとあらゆる知識が入り込んでくる。

その膨大な情報量に、ルイズは操縦桿を握り締めたまま、目の焦点が合わなくなる。

一方 和輝はそれどころでは無く、またもや歯を食いしばってワルドの風魔法を吸収したところだった。


「ルイズッ、どうしたんだ?」

『驚け相棒、"目覚めた"んだよ!』

「ほ、本当かっ?」

『…………』


≪――――ガタッ≫


「!? 急に立つな、危ないだろッ!」

『いや、詠唱に入ったダケだ! 虚無の魔法を唱えるのは時間が掛かる。
 時間を稼げ相棒ッ、その為のガンダールヴだ!!』

『…………』

「良し……判った。」

「死ねぇぇッ!!」


≪――――ドゴオオォォンッ!!!!≫


覚醒したルイズは、突然立ち上がり、何やらブツブツと呟き始めた。

目の焦点が合っていないのは変わらないが、どうやら詠唱中のようだ。

その時間を稼ぐのが和輝の役割であり、彼はルイズのインカムを取り外して、
再び自分で装着すると、操縦桿を握って回避に専念する事にした。

だがタイムラグの所為で一発ワルドの魔法を食らってしまったが、
牽制のうちの一撃だったのでダメージは少なく、飛行の継続は問題無い様だ。


≪ゴババババババババッ!!!!≫


『カズキ! どうなってるのぉ~?』

『大丈夫なのですかッ?』

『どうやら何とかなりそうだ。 お前たちのお陰だよ。』

『頑張って。』

「…………」

「観念するが良いッ!!」


虚無の初歩中の初歩の魔法、エクスプロージョン。

初歩と言えど驚異的な破壊力を持つが、大きな力を出しすぎると再び唱えるのは不可能。

他の系統と違い、虚無の魔法とは生きた年月で蓄積された魔力から、"年単位"で消費する。

それ故に魔力を抑える必要が有るが、抑えたとしても威力は並みの魔法の比では無い……


「(凄い……これが虚無の知識……?)」


……などと、詠唱中のルイズの頭の中に、どんどんと追加されてゆく情報。

数十にも及ぶ魔法のうち、初歩であるエクスプロージョンを唱えようとしたルイズだったが、
虚無について右も左も判らないはずの彼女の、魔力の使い方まで補足してくれていた。

最大限の力を発揮させれば艦隊をまるごと消滅させる事もできそうなのだが、
一瞬そうしようと考えていたルイズを、追加された知識が魔力の消費を押し止めたのだ。

そもそも威力次第では友軍をも巻き込む事になるので、ルイズは後から浅墓さを反省した。

さておき、和輝が決死の回避をする中……突っ込んでくるワルドを捉えると、
ルイズは杖を静かに彼に向け、ボソりと呟くように魔法を唱えた。


「……エクスプロージョン。」


≪――――――――カッ!!!!≫


直後、彼女の"一年分"の大きな"光"が風竜ごとワルドを飲み込む!!

エクスプロージョンとしての魔法としては規模の小さなモノであったが、
誰がどう見ても"大きな光"が風竜を包み込んだようにしか見えなかった。

対して、その直撃を受けたワルドは、瞬時に自分の最期を悟っていた。


「これが、虚無の力……だが……」


――――ガンダールヴ、"勝負"は私の勝ちだ。


「わ……ワルド様がやられたぞッ!?」

「そ、そんな馬鹿な……!」


ワルドは和輝を追い詰めたが、彼は最後にルイズの虚無の魔法に頼った。

つまり勝負に勝って試合に負けたようなモノであり、
消え去り行くワルドの表情は、どこかしら誇らしげなものであった。

だが隊長を失ったグリフォン隊は勿論、レコン・キスタ全軍の士気は急低下し、
洗脳されている者で無ければ、地上の部隊と同じく降伏する者が続出していた。


『……やったのか……』

「か、カズキ……私……」

『遂にやったな、凄かったじゃないか。』

「あ、ありがとう。」

『これで、残るは戦艦だけだッ!』

「…………」


逆にトリステイン側の士気は最高潮であり、それだけワルドの撃破は大きいようだ。

よって残存部隊は残り8隻の戦艦を落とすべく、突撃を開始してゆく。

当然 和輝もミサイルで戦艦を撃破するべく向かってゆくが、ルイズは何故か元気が無かった。

この時点で和輝は、日食も間も無くなので急いでおり、あまり気にしなかったが……


「(これが、本当なら……)」


……数十種類にも及ぶ、新しく覚えた虚無の魔法。

それぞれの果たす効果は様々であり、当然"あの魔法"も存在した。

和輝がハルケギニアに召喚されてから、最も求めていた魔法も……

故に虚無に目覚めたと言うのに複雑であり、日食が帰還に繋がる事を知らないルイズは、
まるで戦争の真っ只中とは思えない覇気の無さで、和輝の膝の中で小さくなっていた。


『カズキ。』

『どうした、タバサ? 4隻目はどうなってるッ?』

『弾が切れた。』

『なにぃ~っ?』



[372] フロントミッションゼロ File39(FM3×ゼロの使い魔)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:d3c81d75
Date: 2007/12/14 11:41
Front mission Zero
File39:強粒子砲


――――カズキ。


『弾が切れた。』


≪ドパアアアアァァァァーーーーンッ!!!!≫


その言葉を最後にラストのライフル弾を発砲したタバサ。

直後、弾丸は4隻目の戦艦に吸い込まれ、ダメージに耐え切れず墜落した。

しかし弾切れ……シエスタ救出・フーケ戦で消費された弾はそんなに多くは無かったが、
先程シエスタが乗り、タバサも数十騎の火竜を落とした事で流石に残弾ゼロとなったらしい。

本来ならもっと早く言うべきだったが、和輝はワルドを相手にしていてそれどころでは無かった。

当然、和輝はタバサがそう考えて、今 弾切れを告げた事は理解できる。


『そうなると、俺だけで何とかするしかないか……』

「竜の羽衣だけで? カズキも"弾切れになった"って言ってなかった?」

『う、嘘ぉ……此処まで来て、打つ手なしぃ~?』

『生憎、ショットガンや火炎放射器では届きそうにありませんし……』

『降りて戦うしか。』

『いや……大丈夫だ。 まだ"ミサイル"が残ってる。』

「"みさいる"って……"シュミレーター"で敵が使って来た?」

『あぁ。 残り11発……皇太子達も居るし、何とかなるだろ。』


タバサのライフルが使えなくなった事で、これでヴァンツァー3機は、
上空の戦艦に対しては、全くの無力となってしまった。

ゼニスの武器がショットガンでなくマシンガンであれば辛うじて届いたかもしれないが、
無い物は仕方無いので、後は和輝の戦闘ヘリと、残った魔法衛士隊と竜騎士団だけが頼りだ。

魔法衛士隊と竜騎士団で無傷なのは合計100騎弱であるが、
攻撃目標が空に変わったダケで、こうも味方の火力が減る事となってしまった。

特にヴァンツァー3機が棒立ちしなくてはならないというのは、大きな攻撃力低下だ。

ミサイルの残弾は彼の言う通りに11発(6発×2門-1発)あるのだが、
シエスタの危機で熱くなったか、初っ端牽制で放った事も今は悔やまれてならない。

ライフルの直撃に匹敵する攻撃力が有るだけでなく、戦争で有効な火炎属性とは言え、
流石に戦艦は1発や2発で落ちそうになく、レキシントン号はそれ以上の耐久がある事から、
ある程度は空のメイジにも戦艦を落としてもらう必要が有るのだ。

レキシントン号だけを落とせば勝負はつくのだが、相手も旗艦を守ろうと必死だ。

現在も、6隻の護衛艦はレキシントン号の周囲を固め、
砲撃を継続しており、魔法衛士隊や竜騎士団は回避に精一杯である。


「……大丈夫なの?」

『やるしかないだろ。』

「どうしても無理そうなら、また虚無の魔法を使うわ。
 時間さえ稼いでくれれば"5年分"くらいの魔力で、7隻諸共落とせると思うから。」

『5年分……?』

『相棒。 娘っ子の虚無の魔法は、あまりにも使い勝手が良すぎて、
 今まで生きた"年の単位"で魔力を消費しちまうんだよ。』

『何だって? それじゃあ、さっきの"爆発"は何年使ったんだ?』

「あれは、一年分くらいね。」

『そうなると……次で"5年分"使うと、後10年分程度しか残らないじゃないか!』

『そーゆー事になるわな。』

「……でも、"この国"には変えられない。」

『まぁ、それは最終手段だな。 例え使う事になっても、
 状況次第じゃ"5年分"も使わなくて済むかもしれない。』

『ある程度 戦艦を落としてからなら、魔力の消費はそれだけ少なくなるって事か。』

『どっちにしろ、"虚無"は最終手段だ。』

「……(そんなに気を遣わなくても、私なら気にしないのに……)」


強敵ワルドを、いとも簡単に倒したルイズの虚無の魔法。

それを再び使えば、彼女の"知識"は艦隊を消滅させられるとの事。

……だが、全滅に"5年分"と言う桁違いの魔力を消費するらしい。

普通のメイジが魔法を使い切っても一日休めば全快するのだが、
虚無の魔法に限っては、一日どころか"年単位"で魔力を蓄える必要があるのだ。

希少なスクウェア・メイジをアッサリ倒せる程の魔法なので、それも仕方ないかもしれない。

よって使えば確実に"勝てる"とは言え、虚無の魔法を乱用しては、
折角"目覚めた"と言うのに、魔力がカラになって再び"ゼロ"に戻ってしまう。

現状が厳しいのは確かなので、ルイズは其処まで考える事ができていないが、
和輝は後の事まで考えているようで、操縦桿を再び強く握った。


……


…………


「だッ、第5番艦、撃墜されたようです!!」

「閣下! 魔法衛士隊と竜騎士団が接近して来ますッ!!」

「くっ……何をやっている、さっさと撃ち落せ!!」


……対して、レコン・キスタ側。

彼らはタバサの法春が弾切れになった事を知らず、とんでもなく焦っている。

本来ならWAP3機が攻撃できないので、ルイズの力を除けば優勢なのだが、
ワルドを失った今 指揮系統は混乱し、我武者羅に砲撃を続けるだけであった。

これはこれで効果は有るのだが、クロムウェル達は優勢の実感が全く無かった。


「い、如何しますッ?」

「このままでは、いずれレキシントン号も……」

「……ッ……こうなったら、手段は選ばんッ。」

「……?」

「6番艦と7番艦を、本陣に……アンリエッタに突撃させろ!!」

「!? そ、それはどう言う事ですかッ!?」

「言葉の通りよ! "白い悪魔"どもはともかく、奴さえ倒せば我々の勝利よ!!」

「しかし、それでは――――」

「五月蝿い五月蝿いッ! これは命令だ、勝つ為に不可欠な事なのだっ!!」

「か、畏まりました……」


よって、追い詰められた故に。

クロムウェルは2隻の護衛艦にアンリエッタへの"特攻"を命じた。

いくら法春のライフルでも"特攻"する戦艦を止める事は叶わないと考えたのだろう。

それ以前に"弾切れ"なのだが、これはこれで"勝つ為"には非常に有効な手段だ。

アンリエッタはグリフォンに跨り上空の後方なので逃げる事も可能なのだが、
地上の魔法騎士団や歩兵を見捨てる人間では無いので、その弱点を押さえている。

また、クロムウェルの側近や部下達も"アンドバリの指輪"の所為で、
特に反対する事もなく、命令を受け入れ、早くも伝令は各艦へと伝わっていった。


……


…………


≪ゴオオオオォォォォン……ッ!!!!≫


「な、なによあれ! 戦艦が二隻 突っ込んでくるわ!!」

『!? 狙いは大将か……』

『おいおい、やばくね~か? ど~すんだよ相棒!』


一方、トリステイン側。

直前までは逃げ腰の旗艦を守るような陣形だった護衛艦のうちの、
2隻がイキナリ突っ込んで来た事で、和輝を含め皆が動揺を隠せない。

突撃してきた2隻には直ぐ魔法衛士隊と竜騎士団が取り付き、
砲撃も無いので確実に損傷を与えているが、進路は全く変わっていない。

そんなうちに損傷は更に増大し、既に飛行せず"落下"し始めているが、
"軌道"は確実にアンリエッタを補足しており、このままでは多くの地上の兵をも失う。

それ以前に、アンリエッタが巻き込まれて旗艦含む5隻の戦艦が残る時点で、
この戦いはトリステインの"負け"が確定してしまうのだ。


「こ、こうなったら私の魔法で!!」

『ダメだ。』

「なんでよ!?」

『お前の魔法は強力すぎるから、いきなりだと味方を巻き込む。
 使うなら味方を退避させてからのハズだったが、もうそんな暇は無いぞ。』

『"ミサイル"とか言うのだったら、ど~なんだ?』

『これでも落とせても、軌道は変えれないだろうな。
 片方だけなら何とかなったかもしれないが、2隻は流石に無理だ。』

「だったら、どうするって言うのよ!?」

『こっち鉄騎! ゴメン、2隻が頭上を抜けたわ。』

『万事休す……ですか?』

『いや、まだ手は有る――――タバサ、ロングビルさん、聞こえるかッ!?』

『……なに?』

『な、何でしょう?』

『状況は判るなッ? 今すぐ本陣まで下がってくれ!!』

『了解!』×2


こんな話をしてる間にも、2隻はどんどん本陣への距離を詰めている。

同時にメイジ達の攻撃も続いているが、炎上しているモノの、
やはり軌道は変わらず、予想通りアンリエッタは味方を信じてその場から動かない。

故に誰もが"逆転負け"を考えてしまったが、和輝は何を思ったか、
タバサとロングビルに指示を出すと、2人は言われたとおりにブーストで移動を開始。

元から長距離での狙撃をしていたので、追撃戦をしていたキュルケは無理だったが、
法春とゼニスは僅か数十秒で本陣の前へと移り、突然 現れた"壁"に兵達は驚いていた。


『着いたな? タバサッ、ライフルを捨てて"バックパック"の中身を取り出せッ!!』

『どうして?』

『良いから言われた通りにするんだ! "やり方"は判るだろッ? "時間"が無い!!』

『……判った。』


≪――――ガチャンッ≫


タバサは和輝の指示に疑問を感じたが、言われた通りにライフル捨てた。

そしてスイッチを押して背中の"バックパック"の上部を開くと、
"中身"が"バシュッ"と音を立てて射出され、法春の頭を飛び越えて両腕に収まった。

それは新たな"武器"であり、試作段階ではあるが、WAP初のビーム兵器……


――――――――強粒子砲。


『……まさか……』

『あぁ、その"まさか"だ。』

『本当にあったなんて。』

『ど、どう言う事なのですか?』

『悪いが詳しく説明してる暇は無い。 タバサ、使い方は判るな?』

『大丈夫。』

『ロングビルさん、"その武器"は威力が有り過ぎて、
 法春だけじゃ1秒程度しか重圧に耐えれない。 だから、後ろを支えてやってくれ。』

『わ……判りました。』


"粒子砲"とは、現在 各方面で試験が進められているが、
反動の高さにより、車両や大型機動兵器への搭載のみに留まっている。

それなのに"112式 法春"で携帯火器として装備されているが、
あまりの威力 故に、発射できる時間は僅か1秒 程度。

それでも火力は高いので、WAPにとっては致命的なダメージになるのだが、
地球の戦いにおいては施設の破壊を避ける為 使う場所は限られてしまい、
扱うのも有る程度 機体性能が必要な事から、法春のバックパックに保管されていたのだ。

和輝は"強粒子砲"を極力使わないようにするつもりだったのだが、
"この状況"ではそうも言ってられないので、もはビームの威力に頼るしかない。

タバサはこの使い方を知っているようだが、実はシュミレーターで内密に学習済みだった。

それだけ彼女が射撃に優れている……と和輝に認められていたからなのだが、
"異世界にあるうちの兵器のひとつ"としか聞かされてなかったのに、
法春のバックパックに入っているとは思わず、彼女が驚いていたのも その為だった。


≪――――ズシンッ≫


『目標補足。 強粒子砲、発射準備完了。』

『……こちらも、何時でも宜しいですよ?』


だが、タバサの法春による1秒の発射だけでは、特攻してくる戦艦は撃墜できない。

故にロングビルが反動を抑える必要が有り、ゼニスは左足を踏み込み、
左肩をバックパックを切り離した法春の背に当て、来(きた)るべく圧力に備えた。

そんな間にタバサは強粒子砲を両手で構え終え、狙いを定めるとトリガーを押した!!


≪――――バシュウウウウゥゥゥゥッ!!!!≫


「なッ、なんだ! あの"光の剣"はッ!?」

「ぐわああああぁぁぁぁ……ッ!!!!」


≪ズズズズズズズズゥゥゥゥンッ!!!!≫


射撃直後、一直線に放たれる粒子砲。

それは長さ2~3リーグの非常に長い"光の剣"となり、
特攻してきた2隻は当然の事、タバサが歯を食いしばりながらの操作による、
強粒子砲を構える法春の両腕の動き(ズらし)により、
レキシントン号以外の護衛艦をも、纏めて"薙ぎ払って"しまった!!

味方の魔法衛士隊や竜騎士団は未だに特攻艦を攻撃中であったが、
タバサは全ての護衛艦を薙ぎ払う中、しっかりと細かい操作で味方の誤射を防いでおり、
それが紙一重の時も有ったが、これだけの戦果の砲火で、味方の犠牲は皆無であった。

しかし、たった30秒程度の掃射であれど、反動はかなりのモノで、
ゼニスが支えていたと言うのに、2機のWAPの地面はかなり抉(えぐ)られ、
その場から20メイルは後退しており、慌てて左右に散った兵達の様子が伺える。

だが彼ら表情は、"神の奇跡"を目にしたかのように、"感激"に満ちていた。

そう……言うまでもないが、特攻艦が軌道を変えて墜落したダケでなく、
レキシントン号を守っていた4隻の護衛艦もが、"光の剣"により撃墜されたのだ!!


『うそぉ~……なんなの、あの威力?』

「す、凄い……」

『おでれーた、相棒の世界ってホント凄ぇんだなぁ~。』

『初っ端に"これ"ができれば、もっと良かったんだけどな。』


タルブ到着 直後、強粒子砲を使わ無い理由は幾つか有った。

ひとつとして、タバサが味方を巻き込む可能性が有ると言う事。

彼女の腕を信用していないワケでは無く、だからこそ粒子砲を教えた。

……だが"現実"で扱うのは初めてであるし、最悪の可能性を考えたのだ。

また、対レコン・キスタはルイズが"覚醒"してくれる数少ないチャンスだったし、
いきなり粒子砲で大ダメージを与えてしまっては、機会を逃すと感じた。

それにライフルの残弾さえあれば戦艦は楽に落とせるので、
弾切れを告げられる前まで粒子砲を使う必要性は、最初は全く無かったのもある。

ちなみにルイズの魔法でなく、強粒子砲を選択したのは、
彼女の年単位の魔力が勿体無いし、味方を巻き込む可能性も粒子砲が遥かに低いからだ。


「でも、まだ旗艦が残ってるわッ。」

『それなら、もう一度……』

『……ですが、今ので機体が悲鳴をあげたような気が……』

『その通り、"あっち"じゃともかく、"こっち"じゃ余計な損傷をすると、
 元に戻らなくなるかもしれない。 だから。後は俺が何とかするッ!』


≪ゴババババババババッ!!!!≫


「も、申し上げます! 突撃した2隻が、ゴーレムにより落とされました!!」

「8番艦から11番艦も、"光の剣"により撃沈された模様!
 アンリエッタは……い、未だに健在のようですッ!!」

「な……何いいぃぃーーっ!?」

「ひ……ッ!? 閣下ッ、"竜の羽衣"が接近して来ます!!」


≪――――カチッ≫


               [ ミ サ イ ル 乱 撃 ]


≪ドォンッ、ドォンッ!! ……ズドッ、ズドオオォォンッ!!!!≫


何にせよ、残すはレキシントン号だけ。

味方はまだ驚きで動けないようだが、レキシントン号の砲撃も完全に止んでいる。

つまり好機であり、和輝はヘリで距離を詰めると、ありったけのミサイルを発射した!

その11発のミサイルは、レキシントン号の機体に、
僅かな時間差で広範囲に渡って突き刺さり、炎上すると、そのまま落下する。

それにより、再び歓声が沸きあがり……トリステインが"勝利"した瞬間であった。


「や、やったのか……?」

「勝ったッ! 勝ったんだ!!」


≪うおおおおぉぉぉぉーーーーっ!!!!≫


「やってくれたか……」

「はぁ……」


傍の部下たちの歓声を耳に、胸に込み上げる"熱さ"を感じながら息を漏らすウェールズ。

同じく地上の兵達の歓声を耳に、ようやく肩の荷が下りたか、
グリフォンを地上にゆっくりと降ろすと、大きな溜息をつくアンリエッタ。

それはWAPに乗っている3人も同じであり、誰もが一度は寒気を感じたものだ。


『勝った……のよね? 一時はどうなる事かと思ったわ~。』

『はい、ヒヤヒヤしましたわ。』

『……うん。』


≪ゴババババババババ……ッ!!!!≫


今となっては、ウェールズを含めて魔法衛士隊や竜騎士団も地上に降り、
しぶとく生き残っていたギーシュを含む魔法騎士団達とも喜び勇んでいた。

そして……和輝とルイズが乗るヘリも、まだ高度を保ってはいるが、
徐々に降下し始め、WAP3機は彼らを迎えようとその場所に向かおうとしていた。

だが その時、和輝はルイズ・キュルケ・タバサ・ロングビルが、
全く予想していなかった"事実"を、今更になって告げることになる。


「やったわね、カズキッ!」

『あぁ。』

『ま~、国の"今後"の事も有るし、一件落着ってワケじゃぁねぇけどな。』

「そうね……姫様が忙しくなるのも、これからかも。」

『良し。 とにかく、一旦 着陸させるぞ。』

「お願い。」

『……だけどな、悪いがルイズ。』

「えっ?」


――――降りるのは、お前"だけ"だ。



[372] フロントミッションゼロ File40(FM3×ゼロの使い魔)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2007/12/28 11:01
Front mission Zero
File40:オワリとハジマリ


「それって、どう言う事ッ?」

『言葉の通りだ。』

「意味は判る。 でも、理由は判らないわ! 納得できるように説明してッ。」

『説明してる暇はない、"時間"が無いんだ!』


……ヘリから降りるのは、ルイズだけ。

それを流してくれれば良かったのだが、ルイズは案の定、
"嫌な予感"を感じでしまい、高度を下げる和輝に言う。

だが、今は日食の真っ只中……ルイズが"納得するまで"説明している暇など無い。

よって無理矢理にでも彼女をヘリから出すつもりだったが、
ルイズは和輝が握る操縦桿を彼の上から包み込み、これ以上の高度の低下を許さなかった。

その力は和輝にとっては弱いモノだが、只でさえ危ない二人乗りをしているのに、
彼女に暴れられると墜落の可能性もあるので、無理な抵抗ができない。


「だったら、手短でも良いわ。 早くッ!」

『……判った、だから 揺らすなよ? 下手したら落ちるからな。』

「…………」

『はっきり言おう。 あの"日食"に飛び込めば、俺は"元の世界"に帰れる。
 だから、お前を連れて行く訳には いかないんだ。』

「……っ!?」

『他の皆も聞いてたな? ……今迄、世話になったな。』

『ふ~ん、そうなんだ……まぁ、何となく予想はしてたけどねぇ~。』

『……ッ……カズキは、帰るべき。』

『それ以前に、お世話になったのは……こちらの方ですわッ。』

『そう言う事だ。 急で悪かったな。』


真実を告げると、やはり皆 驚愕する。

だが和輝が気兼ね無く去れるようにと、動揺を隠して応答するキュルケ・タバサ・ロングビル。

かと言っても、キュルケでさえ多少 声が震えており、簡単には割り切れないようだ。

そしてルイズも操縦桿への力が一旦 抜けていた……ようだが、再び和輝は"力"を感じた。


――――何と、ルイズがヘリを上昇させたのだ!!


『おいッ!? 何してるんだ、ルイズ!!』

「…時間が無いんでしょッ? 確かに、あと少しで"日食"は終わるみたい。
 私の所為でもあるけど、もう"これ"を着陸させる時間さえ無いかもしれない。」

『……って事は、お前ごと行けって言うのか!?』

「そうよッ、私の事なんて気にしなくて良いから、行きなさい!」

『ふざけるな! お前を連れて行ける訳が無いだろッ!』


高度を上げると、そのまま日食へとヘリを向かわせるルイズ。

ヘリの操縦など初めて故 勘だが、人間 土壇場になれば何でもできるモノである。

だが和輝にとっては堪ったモノでは無く、自分が帰還できても、
彼女を自分と同じ立場にしてしまえば、また同じ事の繰り返しになってしまう。

よって当然 認めないが、下手に力を入れれば危ないので、何も手出しが出来ない。

確かにルイズを降ろす暇さえ有るかすらも微妙だったが、急げば何とかなった筈なのに……


「この機会を逃せば、"一生 故郷に戻れなくなる"かもしれないのよ?
 人の心配をしてる場合なんかじゃ無いわッ!」

『だからって……お前が"俺と同じ"になったら、意味が無いだろうが!』

「"私の事なんて気にしなくて良い"って言ったでしょ!?
 カズキは仲間に……家族に会いたいんでしょッ? その為に頑張ってきたんでしょ!?」

『……ッ……』


今となっては選択は二つに一つ。

ルイズを巻き添えにしてでも"地球"に戻るのか。

若しくは、帰還を諦めて"一生の可能性"もあるハルケギニアに残るのか。

この選択にはルイズの運命にも大きく関わり、和輝は唇を噛み締めた。

対してルイズの心境……彼女は自分が"嫌な女"であると思わざる得なかった。

勝手にヘリに乗り込み 勝手に高度を上げ、彼に究極の選択をさせようとしている。

しかもルイズにとっては"保険付き"であり、"それ"を和輝は知らないで迷っているのだ。

即ち 和輝を試しており、そんなうちも時間切れ 及び 日食へのダイブは近付いている。


「さあっ! このまま日食に飛び込んでッ、お願い!!」

『駄目だ。』

「!? ど、どうしてよッ?」

『お前を巻き込む訳には、いかないからな。』

「……ッ!」

『なに、また別の方法でも探すさ。』


この時、ルイズの瞳から涙が溢れた。

正直 自信は無かったが、和輝は"自分の為"に残る事を選んでくれた。

それが愛情に結び付くには程遠いだろうが、今の決断だけで彼女にとって十分だった。

よってルイズは操縦桿から手を離すと、和輝に悟られないように涙を拭い、
和輝はヘリの進路を変える為に、操縦桿を操作しようと力を入れた。


――――――――しかし。


「…………」

『!? どう言う事だ、操縦桿が動かないぞッ?』

「……ごめんなさい、その部分だけ"固定化"の魔法を掛けさせて貰ったわ。」

『なんだって!?』

「だから、進路はこのまま変わらない。 虚無の知識で判ったんだけど、
 その程度の魔法なら、私にでも使えるようになったみたいだから……」

『な、何て事するんだ! 俺は戻らないと言った筈だろッ?』

「大丈夫。 私はちゃんと"戻れる"し、固定化は直ぐ解けるから。」

『戻れるだって? それってどう言う――――ぐあっ!?』

『(全く……娘っ子も、とんだ"勝負"に出たもんだぜ。)』


≪ゴババババババババ……ッ!!!!≫


ルイズの魔法の所為で進路は変わらず、日食に飛び込む戦闘ヘリ。

それと同時に日食は終了し、空は普段と同じの明るさへと戻った。

当然 戦闘ヘリは影も形も無くなり、和輝とルイズは地球へと消えたのだろう。

その様子はキュルケ・タバサ・ロングビル・アンリエッタ・ウェールズは当然ながら、
生き残り全ての人間が見ており、暫くはそのまま呆然としていた。


『……行っちゃったわねぇ。』

『そうですわね……』

『ズルい。』

『全くだわッ、ルイズったら……最後の最後で抜け駆けするなんて!』

『してやられてしまいましたね。』

『……っ……』

『た、タバサ? 貴女ッ、泣いて――――』

『ミス・ツェルプストー、貴女も声がそのようですが?』

『何言ってるんですか~……あ、あたしが男 一人で~。』


勝鬨さえも無い沈黙の中、やはり初めに口を開いたのは3人のパイロット達。

皆 和輝が居なくなった事を悲しんでいるようで、
ロングビルもキュルケと違って口調に差は無いのだが、静かに涙を流していた。

だが和輝が選んだ事であり、いずれ彼が故郷に戻る事になるのは知っていた。

要は"それ"が思ったよりも早くやって来たダケであり、抗えない運命である。

よって3人は互いに泣いた痕跡を無くすとコックピットを開き、兵達の熱烈な歓声を浴びたのだった。


……


…………


タルブにおいて繰り広げられた、トリステインとレコン・キスタの激戦。

それにトリステイン側が勝利した事は他の国にとっては驚愕であった。

レコン・キスタはレキシントン号を含める11隻もの戦艦を用い、
その戦力は大陸でも屈指であったにも関わらず、全艦を撃沈させる力がトリステインにあったのだから。

特に3機のヴァンツァーの存在による噂は特に有名になり、
いずれも驚異的な強さから"トリステインの白い悪魔"と呼ばれる事となった。

だがトリステインにとっては国を救った正義のゴーレムであり、
宮廷魔術師達は直ぐさま興味を持ち、念入りに調査したが……

何がどうなって作られているのかは全く判らず、只 一つ判ったのは、
キュルケ・タバサ・ロングビルで無ければ絶対に動かす事は出来ないと言う事だけ。

何故なら3人 及び シエスタ・コルベールは、和輝に言われた通り、
余計な事は一切 喋らず、和輝が残してくれたヴァンツァーの秘密を守る事にしたからである。

つまり何も知らなければ、コックピットさえ開けられず、
ましてやパスワードを入力して機動させる事も絶対に不可能なのだ。

シエスタもWAPに乗る事は可能だが、やはり戦いは怖かったらしく、
また村が危険な状態になったりしない限り、今は迂闊に乗る気は無いようだ。

……それらの為か、王宮による調査は念入りに行われたが、
結局WAPは魔法学院に置かれる事になり、今はコルベールの設計によって、
ヴァンツァー専用のデッキも、彼の研究室の横にドカンと建てられている。


「やれやれ……やっと帰りおったか、物好きどもめ。」

「これで"ヴァンツァー"も、安心して休めるでしょうな。」


そんなWAPを唯一 操れるキュルケ・タバサ・ロングビルは英雄のような扱いであり、
キュルケは勲章だけでなく、シュヴァリエの称号をも得た。

タバサは報酬の大半の代わりに"アンドバリの指輪"を入手し、水の精霊に返却。

その指輪を取り戻す際に、しぶとく生き残っていたクロムウェルに、
ウェールズが操られ掛けてしまう……というハプニングが発生したが、
追撃戦から引き返してきたギーシュによって助けられ、彼もシュヴァリエでは無いが勲章を得ている。

そしてロングビルだが……彼女はオスマンやアンリエッタに自分の正体を暴露した。

当然 それが周囲にも知れた時には大騒ぎになったが、今回の大きな功績と、
アンリエッタ・ウェールズ・オスマン等の助けもあり、報酬は殆ど貰えなかったが、
変わらずに魔法学院の秘書として働かせて貰う事となり、今では手が空いた時は授業も教えているらしい。


「アンリエッタ、私は一度 アルビオンに戻る。 また会おう。」

「……はい、必ず。」


ウェールズは数週間はトリステインでアンリエッタの公務の手助けをしていた。

それは まだ続くと思われたが……突然 入ってきた報告。

どうやら、思った以上に"アンドバリの指輪"の力が働いていたようで、
それが無くなった今、次々とウェールズを支持すると言う声が上がっていたのだ!

本来ならば、彼はゆっくりと本国に残っていると思われるレコン・キスタのを討伐しようと思っていたが、
トリステインに侵攻して来た部隊にほぼ全てのクロムウェルの腹心が居たらしい。

よって、アルビオンを取り戻すのは思った以上に早くなりそうであり、
ウェールズはその国の王子として、アンリエッタの元を離れる事にした。

"アルビオン王国"が復興したと言えど、彼の仕事は途轍も無く多そうであり、
再びアンリエッタと再会できるのは大分 先になりそうだが、2人の絆は一層 深まっていた。


……


…………


……一ヵ月後、トリステイン魔法学院。


「はぁーい、みんな~。」

「こんにちは、ミス・ツェルプストー。」

「時間ぎりぎり。」

「えっと、これで全員ですね。」

「そうですな。 それでは、始めるとしましょう!」


和輝とルイズ。 2人は"行方不明"という事で片付けられた。

本当は"地球"へと消えたのだが、にわかに信じ難いので そうなってしまったのだ。

戦争で人が死ぬ事など当たり前であり、勝ったと言えど数百の犠牲者も出ている。

故にルイズは死んだような扱いであり、彼女の姉2人を含め多くの者に悲しまれた。

……だが、一ヶ月も経てば学院の生徒達は思い出す事も少なくなってしまった。

かと言っても、ルイズは死んだワケでは無く、それを理解している5名の仲間達。

今日もデッキの前に集まり、"部活"のような感覚で、シュミレーターを始める。

シエスタは遠慮がちだが、今は半ば無理矢理 キュルケ達の対戦相手をさせられている。

彼女は気絶して目が覚めた時には、和輝は故郷へと帰った後であり、
別れの言葉の交わせなかった事から、立ち直るのには時間が掛かったが、
仲間達の励ましで立ち直り、貴族と平民の壁を越えた友情と言うものは素晴らしいものだ。


「ミスタ・コルベール。 "弾薬"の具合はどうですの?」

「はい。 まず、鉄騎の"火炎放射"の材料は水分なので量産は容易です。
 "ライフル"も構造的に余り大きな手間は掛かりませんが、
 "ショットガン"の弾の作りがどうしても難しいので、行き詰まっている所です。」

「そうですか……今日はわたくしもお手伝いしますわ。」

「おおっ、有難うございます。」

「シエスタ~、あたしはゼニスにするから、あたしとタバサの相手をお願い~。」

「えぇ~っ? ど、どうして二対一なんですかぁ?」

「2人とも不得意。」

「そそ、タバサは鉄騎・シエスタは法春。 あたしもゼニスは余り慣れて無いし。」

「そ、そんな~。」


そんな最近の放課後は、コルベールとロングビルはヴァンツァーの研究。

2人の生徒と1人のメイドは、ヴァンツァーでの訓練に熱心である。

当然、キュルケとタバサは魔法の勉強も兼ねており、シエスタもメイドとして頑張っている。


――――そんな、悲しみも癒えた日常。


「あらぁ~?」

「遠くから……音?」

「な、なんでしょう?」


≪ゴオオオオォォォォッ……≫


……


…………


……1時間前、地球。

和輝が地球に帰還してから一ヶ月が経ち、彼はとある輸送機に乗っていた。

それは彼の仲間である"ファム・ルイス"のモノである。

今現在は和輝が操縦桿を握り、横には"現代の衣服"を着たルイズが立っている。


「……全く、何でこんな事になるかな。」

「カズキと同じで、皆 強引だったわね。」

「お前が言うな、お前が。」

「ふふっ、ごめんなさい。」


ジト目で自分を見る和輝に、舌をペロっと出して言うルイズ。

最近の彼女は良く笑い、良く謝るようにもなり、ハルケギニアでの彼女が嘘のようだった。

……当然、"今"に至るまでは多くの"波乱"があり、自分は最後の脱出で死んだ事になっていたらしい。

故に再会できた妹のアリサには泣かれまくり、親友の亮吾にはデコピンを5発ほど食らった。

何故か旧式のヘリに乗っていた事は適当に誤魔化し、もし"自分だけ"ならそれで済む筈であった。

だが……一緒に帰ってきたルイズの存在が、"それだけ"で済ましてくれなかった。

地球上には存在しない、彼女のピンク色の地毛……

現代の常識を理解できないからこそ遠慮無く主張する、ルイズの魔法実在説。

それは和輝の素早い配慮で広まる事にはならなかったのだが、
真っ先に駆けつけたアリサ・亮吾・ファムには話す事となり唖然とする3人。

無論 直ぐ信じられる筈も無かったが、和輝の声掛けでデルフリンガーが喋り出し、
ダメ押しとしてルイズのコモン・マジックの実践(虚無に覚醒した事により使用可能)により以下略。

また、あの和輝が嘘を言うハズも無いので信じるしかなく、非常に"あちら"に興味が湧いてしまった。

しかし、ハルケギニアには行く手段が無い……と思っていたのだが!


「まさか、虚無に目覚めた時点で"此処"に戻る為の魔法が使えるようになってた なんてな。」

「だ、だって……カズキの世界に行ってみたかったから……」

「そうだとしても、片道に"一年分"の魔力を使うんだろ? 勿体無いじゃないか。」

「……そんな事無い、カズキと二度と会えなくなる事と比べたら……」

「そうか。 だが"あの時"言わなかったのは何でだ? "二度と戻れない"とまで言ってた気がしたが。」

「そそそそれはッ……詳しく説明してる暇なんて無かったからよ!」

「何か引っ掛かるが……まぁ、いいか。」

「……(ホント、鈍感……)」


ルイズは覚醒と同時に、地球とハルケギニアを行き来する魔法を覚えていた。

大きな魔力を必要とするが、熟練すれば、かなり消費を抑えれる事もできるらしい。

ルイズとしては和輝を試す為に直ぐそれを言わなかったのだが、
彼は"その事"すら察してくれず、咎めもしないので、未だに彼の本心は判らず仕舞いであった。

どうやら、ルイズを巻き込めないという事は"人として"の選択であり、
"ルイズの為"とは何か微妙にズれているようなのだ。

まぁ、それは和輝の性分なので ともかく……ルイズにとって、やはり地球の文明は驚愕!

和輝にそれなりに聞かされてはいたが、ハルケギニアでの常識が有った事から、
どれを見てもその辺の5歳児よりも酷い驚きっぷりであり、
絵に描いたような"田舎者っぷり"を彼女は何度も見せてくれていた。

……だが、それらを受け入れてくれば非常に楽しいモノであり、
貴族としてのプライドを"こちら"では必要としない故、ルイズは人付き合いも問題なくこなしていた。

そんな日本で主に和輝・亮吾・アリサ・ファムと過ごす中、
最もハルケギニアに興味が有るファムが"トリステインへの遠征"を提案した。

念の為に彼女の輸送機に亮吾・アリサ・ファムのWAPを乗せ、
"それごと"ルイズの魔法でトリステインに飛ぶと言う、何とも無茶苦茶な話である。

和輝は案の定 反対し、ルイズだけが戻る事を勧めたが、
亮吾・アリサはファムの意見に同意し、ルイズも"カズキも行くなら……"と、
顔を赤らめて肯定してしまうと、和輝は頭痛を感じながら"好きにしろ"と言うしかなかった。


「良し……高度は十分、速度は徐々に下げる。」

「それじゃ、良いの?」

「あぁ。」

「判ったわ。」


先ずファムは自分の輸送機を強引に日本に引き寄せ、
アリサは空港のダイヤルを弄って滑走路を確保し、亮吾は輸送機を離陸させる。

そして、今 現在は和輝が亮吾に変わって操縦をしていると言うワケだ。

3人は別の船内におり、ハルケギニアに到着にするのを楽しみにしているの違いない。

その期待を裏切ると後が怖そうなので、和輝は腹を括ってルイズに魔法を指示した。

対してルイズは、しっかりと無事である"杖"を取り出すと、ブツブツと呟き始めた。

同時に彼女の周囲が特有の"空間"に包まれ、これが"虚無の詠唱"と言うヤツだ。


≪……ブイイイイィィィィン……≫


「欲望の果てに、狂気がうごめき。」


――――カズキ。


「狂気の果てには、終焉が横たわる。」


――――貴方は、私の使い魔。


「人類は……何も学ばない。」


――――だから、ずっと一緒に居るんだから。


≪――――ヒュッ≫


詠唱が終わると、杖を正面に向けるルイズ。

この時の彼女の表情はしっかりとしており、目が虚ろではない。

しっかりと"想い"が込められていたからであり、詠唱は成功したようだ。

故に周囲 数百メートルの空間が徐々に暗くなり始め、正面には大きな"渦"が見えた。

そう……日食で発生するあの"穴"であり、ルイズが作り出したモノである。

その"穴"は まだ"渦"の段階のようだが、後者を前者にするべく、ルイズは静かに呟いた。


「トータル・イクリプス。」


――――新たなトリステインでの物語が、始まろうとしている。




=Front mission Zero=




=THE END=



[372] フロントミッションゼロ あとがき
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2007/12/28 10:04
■あとがき■

リアルの都合で2週間も空いてしまいましたが、
これにて"フロントミッションゼロ"は終了となります。
約4ヶ月のご愛読、ありがとうございました。

ラストはかなり無理矢理な展開なだけでなく、
虚無についてはオリジナルの設定を多く使ってしまいましたが、
40話にも及ぶ作品を完結できて、嬉しく思っております@w@

次回は現在停滞しているSSの続きを書こうと思っておりますが、
ゼロ魔SSへのブームも私の中では終わっていませんので、
また機会があれば何か書こうと思っております。

それではまた、次回作でお会いしましたら、宜しくお願い致します!



[372] フロントミッションゼロ 自己満足な補足(余裕がある方だけどうぞ)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:d3c81d75
Date: 2007/12/28 09:58
フロントミッションゼロ 自己満足な補足


■本作で使用したスキル一覧■

スキル名:発動時の効果:使用File:キャラ

熟練3↑:自分の武器熟練度を3アップした攻撃をする:File5:和輝

絶対先攻Ⅲ:不利な条件無しに先制攻撃できる:File12:和輝

ズームⅢ:命中率が2倍になる:File16:和輝

DMGFix400:401~800のダメージを400にする:File23:和輝

Fallショット:敵を転倒(反撃不能に)させ行動力を半分にする:File23:和輝

ダブルアサルト:格闘と射撃で連続攻撃する:File30:和輝

スナイプArm:全ての攻撃が敵のArmに集中する:File30:和輝

Bodyブレイク:敵のBodyを絶対破壊(敵を絶対一撃で倒す):File35:シエスタ

タックルⅠ:総重量を乗せ敵に体当たりで大ダメージ:File37:ロングビル

堅守後攻Ⅱ:敵に先攻を譲るがダメージを8割カットする:File37:キュルケ

APコスト0:AP(行動力)消費を全くしない:File37:タバサ

ミサイル乱撃:残りのミサイル弾を全て撃ちつくす:File39:和輝


■登場ヴァンツァー(WAP)■

只のデータ&参考にしか過ぎないので、特に意味はありません。
本作の機体迷彩は全部ホワイト、ラインは黄色です。
整備や補給等に関しては深く考えないでください^^;

●112式 法春(+バックパック)

武器:11式狙撃銃(ライフル)
射程:50~800m(最大2000m以下)
HP(胸/腕/足):1661/1065/1420
属性防御/命中/回避:-60%/147%/+59%
出力/移動/バーニア/ダッシュ:350/5マス/7段/5倍
スキル(胸/腕/足):リベンジボディ/ボディブレイク/APコスト0

●鉄騎 4型 

武器:ホットガゼル(火炎放射器)
射程:5~30m前後(最大50m以下)
HP(胸/腕/足):1107/617/806
属性防御/命中/回避:-60%/88%/+24%
出力/移動/バーニア/ダッシュ:287/5マス/7段/4倍
スキル(胸/腕/足):敵属防2↓/スナイプLeg/堅守後攻Ⅱ

●ゼニスレヴ

武器:フィアーナックル&SPPG14(ナックル&ショットガン)
射程:1m~150m(最大220m以下)
HP(胸/腕/足):1604/894/1171
属性防御/命中/回避:-20%/25%/+47%
出力/移動/バーニア/ダッシュ:231/5マス/7段/4倍
スキル(胸/腕/足):タックルⅠ/ダブルアサルト/絶対先行Ⅰ


■パイロット■

E~Sで格付けしましたが、和輝最強はメーカーの仕様なので全てSです。
キュルケの射撃Dとかは決して低い訳では無くタバサとかの能力が高すぎるのです。
2行目は本作でのみ登場するWAPでの得意機体と不得意期待です。
そして、もし何でもWAPに乗れるとすれば何か適当に2機考えました。

●和輝
格闘S 射撃S 機動S
得意:全て 下手:無し
理想:112式法春&ゼニスレヴ

●ルイズ
格闘D 射撃B 機動D
得意:112式法春 下手:鉄騎4型
理想:PAW1パーレイ&グリレゼクス

●キュルケ
格闘B 射撃D 機動B
得意:鉄騎4型 下手:112式法春
理想:109式炎陽&鉄騎4型

●タバサ
格闘E 射撃A 機動E
得意:112式法春 下手:ゼニスレヴ
理想:ゲイティ&瞬王1型

●ロングビル
格闘A 射撃E 機動A
得意:ゼニスレヴ 下手:無し
理想:ラオペフィーア&冷河1型

●シエスタ
格闘C 射撃C 機動C
得意:全て 下手:無し
理想:フォーラM12A&メレディンM1


■トリステイン軍■

合計:約1500名

●魔法衛士隊●
グリフォン隊:50騎(ワルドの裏切りにより半分)
ヒポグリフ隊:100騎
マンティコア隊:100騎

●魔法騎士団●
250騎(本来は500前後)

●一般兵●
1000名


■レコン・キスタ軍■

戦艦:レキシントン号+10隻
合計:約4000名(+40匹)
(最大は軽く2万を越えるが戦艦の数によりこの数)

●竜騎士団●
100騎×6隻
400騎(旗艦)

●地上制圧部隊●
魔法騎士団:250名×4隻
一般兵:500名×4隻

●亜人兵●
トロール鬼5匹×4隻
オグル鬼5匹×4隻


■その他■

●氷竜騎士団●
ウェールズ(氷竜)
氷竜×50騎

●グリフォン隊●
ワルド(風竜)
グリフォン×50騎


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