○月×日◇曜日
今日はトリステイン魔法学院に入学した。
新しい生活の始まりに日記なんてものを書いてみようかと思ってペンを執った次第である。とりあえず、書きたい事が色々ある訳なのだがこれだけは宣言しておこう。
俺は転生者である。
前世は日本人でまあ何処にでもいるサラリーマンをしていた。死んだ時の記憶もしっかりと覚えている。交通事故で死んだ。別にトラックに轢かれたりはしていない、結論から言ってしまえば居眠り運転による単身事故だ。
幸いな事に俺は家族がいない。所謂、過去ポとかに使える『施設』の子と呼ばれる存在だった。まあ、事故でぶっ壊してしまったガードレールや電柱は国民の皆様からの税金で支払われただろう。
話が逸れてしまったが話題を戻そう。
俺は転生者である。
とりあえず、大事な事なので二回繰り返してみた。
これでわかってくれた人はいいがわからない人の為に正直に書こう。言ってしまえば俺はオタクと呼ばれる存在だった。わざわざ日本語で日記を書いているので、どんな事を書いてもこの世界の誰にもバレないから好き勝手な内容の日記を書く事が出来る。前世と合わせた通算年齢だけで見れば四十過ぎのおっさんだけど誰にも読めない日記ならストレス発散で好きな事が書けるんだぜ。そんな事を言っている時点で精神年齢は四十に程遠いのは分かってるから突っ込むのはよしてくれ。
そうそう冒頭に書いてあるように俺は今日、トリステイン魔法学院に入学した。
そう『魔法』学院だ。この世界に著作権があるかどうか知らないが額に傷を持つ少年が通う魔法学院を思い浮かべて貰えばいいと思う。
この世界で魔法を使える者を貴族、それ以外を平民と言う。
つまり、魔法学院に入学した俺は貴族として生まれ変わった。
ぶっちゃけた話、勝ち組に転生したので特に生活で支障は無かった。電気が無かったのは痛かったが無いなら無いでなんとかなった。
幼少期の俺はよくある転生チートに憧れて色々やった。
・牛糞ぶちまけ豊作作戦
タイトル通りな作戦だったけど失敗した。やっぱり畑に牛糞ぶちまけただけじゃ駄目だった、むしろその畑の作物が全滅した。牛糞をなにかで加工すればいいんだと思ったがそんな知識は無いので諦めた。
・最強三権分立作戦
思い付いたけどわざわざ旨い汁を吸っている側の俺が損な事をする必要無いと思ってやめた。この世界、貴族様様な世界だ。昔の武士もこんな感じだったんだろうか?
・計算知識チート作戦
これは成功した。どうやらこの世界は中世のヨーロッパぐらいの生活水準なので計算方式が確立されていなかった。
他にも色々やった訳だが成功したり失敗したりで家族の中ではいつのまにか奇人変人扱いされていた。家に与えた損失も大きいが与えた利益も大きい、まことに扱いづらい評価を両親から受けた俺は厄介払い兼貴族の嗜みとしてこの魔法学院にぶち込まれたのだ。
それは別にいいのだが残念な事が一つだけある。
実家だからこそ出来た平民のメイドさんに対するおっぱいおっぱいな事が出来なくなる事だ。知ってるか、この世界の貴族と平民の間にはセクハラなんて言葉は無いんだぜ。勿論、俺付きのメイドさんの衣装はミニスカだ。一日、一回。メイドさんのスカートの奥を覗けるかどうかが楽しみでした。まあ、やりすぎて出来の良い妹には軽蔑の目で見られたけど。
実家では目を瞑っていた両親も学院内では控えるようにと言われたのでおとなしくする事にした。
○月×日◇曜日
入学してから既に半年、学園の生活にも慣れた。え? 時間が飛び過ぎ? 三日坊主にもなりませんでした。この日記だって机片付けてたら出てきたから書いている。
とりあえず、近状報告でもしておこう。
ぶっちゃけ結構、モテモテです。学園で自重している俺は自分で言うのもなんだが成績優秀・運動神経抜群・品行方正・上流家系・性格良しの有料物件で通している。
誰か特定の人と付き合っていないのでなんかアイドルみたいになってる。同じようにモテて友人であるギーシュは不特定多数の女の子と付き合っているが俺には真似出来ない。そうそう、友達と言えば面白い奴が何人かいる。一人はキュルケと言う女の子、通称爆裂おっぱい。一人はタバサと言う女の子、ハシバミサラダをめっちゃ喰う通称ちっぱい。一人はルイズと言う女の子、皆から魔法が使えないゼロと馬鹿にされている。でも、爆発って十分魔法じゃね? 的な事を落ち込むルイズに言ったらいつのまにか仲良くなってた。俺としては仕事で失敗した後輩を励ますつもりで声をかけたのでビックリした。仲良くなったらスゲーツンデレだった。お互いに恋愛感情は無いのでルイズがデレた事は無いがオタクである俺には分かるのだ!
○月×日◇曜日(日記から抜粋)
明日は春の使い魔召喚の儀式だ。え? また時間が飛んでるって? 大丈夫、今回は抜粋なので時間が飛んでるだけだ。ちゃんと毎日書いてるよ。
春の使い魔召喚の儀式とはつまり二年生になる時に自分の使い魔を召喚しましょうって儀式の事だ。二年生の進級試験も兼ねているので落ちる事は許されない。
やっぱり使い魔と言えばフクロウとかがいいな、黒猫とかフェレットでもいいけど俺は魔法少女じゃないのでフクロウに憧れる。
○月×日◇曜日
今日は春の使い魔召喚の儀式だ。皆それぞれ色んな使い魔を召喚している。
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」
そんな声が聞こえてきて他の友達と話していた俺は何度も爆発していた爆心地に現れた人物に視線を送ると思いっきり吹き出す。
『やれやれ、随分手荒い召喚だと思ったがこれはどういう事なのかな?』
そこには赤い外套を纏った弓兵(アーチャー)が居た。
確かにサーヴァントだが英霊(サーヴァント)違いだ。てか、どう見ても平民には見えんだろ。誰だよ、平民とか言った奴。馬鹿か。
現実逃避している間にルイズが弓兵(アーチャー)と契約していた。
「後は君で最後だ、時間も押している事だし、よろしく頼むよ」
コルベール先生の言葉に頷いて心の中でフクロウと願いながら杖を振る。ルイズのトラブルがあったせいで皆が注目している。
ドカン、とルイズが弓兵(アーチャー)を召喚した時と同じぐらいの土煙が立って人影が見える。
『ちょっとルビー! どうなってるの!』
『アハー、私にだってわからない事はあるんですよー!』
『イリヤ、少し落ち着いた方がいい。周りに人の気配がたくさんある……』
『それより事情を知っていそうな方が一名ほどいますが?』
「イリヤ……だと」
うん、もう何も突っ込まない。
さっさと『コントラクト・サーヴァント』しよう。
俺は現れた二人の魔法少女にキスしようとした所でマジカルなステッキでぶん殴られて気絶した。