海鳴市。住宅街、学校やあらゆるビルが建ちならぶ都市部である。
だが、周辺は海や山に囲まれており。それなりの自然が豊かに溢れていたりする。
そんな海鳴市には、さらにほかの地域には無いモノが存在している。
それは"れんぽーのホワイトベース"が海に浮かんでいたり、山の中に"じおんのムサイ"がひっそりと佇んでいるからだ。
人類が宇宙や次元世界に移民してから数カ月経つ……。
大きな事であるが、なぜか人々は余り気にする事も無く。
れんぽー、じおんの他に。
えぅーご、てぃたーんず、ねお・じおん、れんごー、ざふと、それすたるびーいんぐ等。
あらゆる勢力の戦艦が空で、海で、住宅街で存在しても街中で見かけるSDのMS達とも気軽に接していた。
そんなある日、一人の少女がぐったりとしたフェレットをホワイトベースに持ち込んだことからフルカラー劇場はより騒がしく--もとい、にぎやかになるのだった。
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れんぽー軍、居住艦ホワイトベース。
『ガンダム[さ~ん]!』
玄関からドタドタと慌ただしい足音と共に少女達の声が白いMSの名を呼ぶ。
「わ、どったの!?」
艦橋で今の今までのほほんと湯飲みに入った緑茶を両手で持ってテーブルの椅子に座っていたガンダムは、駆け込んできた少女三人とMSの血の気が引いた表情を見て驚いてしまう。
「あ、あのあのあの! さ、さささっき! そこでこの子を見つけて、そのっ怪我しててたから」
「ちょ、なのは落ち着きなさいよ!」
肩で息をしながらまくし立てるように事の状況を説明するが、混乱しているせいで何を伝えたいのかさっぱり解らず。
ガンダムは茶髪をツインテールにしている少女の言葉をとりあえず通訳してみる。
「佐々木くんがそこでコロッケ丼食べてた?」
「が、ガンダムさん。ちがうぃますよ!」
「そそうだ違う。おち、おちつつついてききけ!」
勢いよくぶんぶんと横に顔を振って否定する少女達の横で代わりに説明しようとするMS。
こちらはガンダムもよく知っているヤツで。名は"ガンダムエクシア"、それすたるびーいんぐ(各勢力からの通称は"それ・びー")所属。
「俺がガンダムだ」が口癖のMSなのだが。この世界で、その発言によってどれだけ自分の存在感の有無について心配させられたか。
未だに自分の事をガンダム(仮)と認識しているんだろうなと思いながら。
ガンダムは落ち着かない少女達とエクシアにとりあえずお茶を入れた湯飲みを進め、今一番この場に必要なことを述べる。
「おちつこーね」
「「はい」」
「うん」
「ああ」
彼から手渡されたお茶を受け取り、走ってきたことで乾いた喉を潤す一同。
ようやく一息ついたところでエクシアが此処にやってきた経緯を話し始めた。
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事の発端は数分前に遡る……。
それ・びーの居住艦プトレマイオスから出て、何時もの業務活動である武力介入の対象を捜索しながら、海鳴市のスーパーで夕方専用おやつ・瓶のラムネを購入して。
歩きながら飲み干した後、ガラス製の小さな瓶の底でコロコロと音を立てるビー玉をどのように取り出そうか悩んでいた。
「地面に叩きつけて割ってしまえば簡単に手に入れることが出来る……だが、それをしてしまえば俺が歪みを起こしてしまう」
この事態に関しては、いかにトランザムを起動しても。解決することが出来ない……。
取り出そうとして、逆さにひっくり返しても飲み口の下にあるゲートがビー玉の射出を阻む。
もう一度。取り出そうとして、逆さにひっくり返すが。飲み口の舌にあるゲートがまたビー玉の射出を阻む。
再び。取り出そうとして、逆さにひっくり返すが。飲み口の舌にあるゲートがまたまたビー玉の射出を阻む。
三度。取り出そうとして、逆さにひっくり返すが。飲み口の舌にあるゲートがまたまたまたビー玉の射出を阻む。
…………歪んでいる。何故ラムネの製造元はこんなに俺達に試練を与えるんだ。
遊びたい。ビー玉をいっぱい集めて……こう、指で弾いて遊んでみたい。
歩くたびにコロコロと瓶の中で音を立てる宝石にやきもきしながら街中をしばらく歩いていると。
『こ……こっ……レット?』
突然、エクシアの※GN粒子が声を拾った。
※通称"電波"このGN粒子はラジオ等様々な電波を拾う。
それ・びーはもうすぐ地デジチューナーを取り付けようか検討している。
砂嵐やノイズ混じりではあるが、その声は若く幼い……女の子のように思えた。
そして、何レットと言った発言はどこか悲痛そうに感じる。
すぐにエクシアはあらゆる方向に身体を向けて波長が会う方角を見渡す。
『怪我してる! どうしよう……病院は』
『今から車を……』
『この近くだとホワイトベースが……』
森、緑が生い茂る場所に目を向けた途端。電波はより確かに声を拾うことが出来た。
ノイズが減り、明確に聞こえた声はやはり女の子のものであると確信がつき。その場には他に女の子らしき声が二人分も聞こえた。
"ホワイトベース" れんぽーの居住艦の名前が聞こえた事でエクシアはより、対抗心が燃え上がってくる。
「俺がガンダム(真)だ! 負けるものか!」と。
「エクシア、これより怪我人(?)と発見者三名を武力介入する」
手にした空のラムネ瓶を、急いで近くの公園の水飲み場で濯ぎ。バックパックに収納してエクシアはふわりと空高く飛び上がる。
目指すは双眸に捉えている目的地の森、そこにいるであろう少女達まで急いで飛行していく。
身体がどちらかといえば軽いので風の抵抗も少なく、三人の少女が傷ついたフェレットを抱いてオロオロしている姿が目下に拡がったのを見定めて。
エクシアはそこに降り立って武力介入として彼女達に声をかけ、ホワイトベースまで案内して今に至るのだった。
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「お兄さん、フェレットさんは応急処置して医療カプセルに入れてきました~」
「ありがとー」
フェレットを医療室まで運び、戻ってきたアレックス。買い物から帰ってきたガンキャノン兄弟達れんぽーのMSを交えガンダム達は改めて少女と互いの自己紹介をする。
「えーと、俺はガンダムね。ヨロシクー」
と名乗るものの。トリコロールカラー、丸い目付き、このれんぽーの顔とも言える彼は海鳴市でも有名でじおんのシャアと共に市を巻き込んで大運動会や文化祭を開催する。
その為、なのは達市民からすれば周知の存在になる。
ちなみに月村家とはメンテナンスなどで手伝って貰っているから初見ではなく。すずかとは既に知り合いでもあった。
「私はアレックスです」
「俺はきゃのっ八」
「僕はきゃの九」
「ぼく、がんたんくー」
「よろしくね」とガンダムに続き、自己紹介をするアレックス、ガンキャノン兄弟にがんたんくも有名な面々である。
そんな彼らとこうして知り合う事が出来たのがなのはとアリサには嬉しく思え、微笑んで自己紹介に応えた。
「私は高町なのは、聖祥大附属小学校の3年生です。なのはって呼んで下さい」
「私もこっちのすずかもなのはとはクラスメートよ。アリサ・バニングス、アリサで良いから」
「皆、久しぶり」
互いに自己紹介を済ませ、落ち着いた雰囲気になり。そこで皆の視線は自然とエクシアに集中する。
キョトンとした表情で「何だ」と言いたげだったか。皆の期待に満ちた眼差し。
さらにガンダム(仮)がニッコニコしているのが視界に入りエクシアは。
そうか、やっと認めたか!
「俺が真のガンダムだ「えぇぇぇぇっ」
《待てえぇぇー、貴様が真のガンダムならば勝負しろぉ「やっぱりきたー》
《お前が正義のガンダムか、はっきり白黒つけてやる「※ハロ巻牧場に行ってー》
※ジャスティスガンダムとガンダムデュナメスが設立した牧場。
一つ一つがハロを象っているミルク生キャラメルが人気商品。
予想するべきはずのエクシアのズレた自己紹介を予想していなかったガンダムは真っ白になって驚き、「さらにエクシアの言葉をどこで待機していたのか」と小一時間問い質したいぐらいにゴッドガンダムとガンダムナタクが映像付きの通信を繋いで現れ。
ツッコミを入れていくガンダム。
《紛争云々というより、最近はエクシアくんが騒動を起こしてますよね「もっと言ってやって!》
同じく映像付き通信でこの状況に適したツッコミを入れるストライクフリーダムにガンダムは涙を浮かべて同意する。
突然の光景に唖然してしまうなのはとアリサだったが、くすくすと笑い声を漏らしているすずかに釣られいつの間にか笑顔になっていた。
「毎日がお祭りみたいでうらやましいな」と、なのは達はSDのMSにそんな印象を抱いているのだった。
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じおん軍、居住艦ムサイ。
「で、何処から拾って来たんだ?」
ホワイトベースが騒がしくなっていた同じ頃、海鳴の山でいつも足を休めているムサイ。
そのムサイの艦橋では赤いMS--シャアザクが目の前でボロボロとなっている金髪少女と赤い犬をモノアイに映しつつ。
彼女達を拾ってきた居候三つ子ガンダムの三女--スローネドライにそう述べた。
「あのねあのね大佐! 公園でコレにぎりしめて水溜まりのところで寝込んでて風邪引いちゃったら駄目だから拾ってきたの」
ドライが差し出した濡れて柔らかそうな状態のダンボールを見て、足元で気を失っている彼女にある印象を抱く。
「…………何故だ、急に"麒麟"の文字が浮かんだのは」
「田村コレコレ?」
「ハッハッハッ、ソレは「志村後ろ後ろ」だろう。おちゃめだなララァは」
ふよふよと彼の傍に浮かびながら、そう尋ねたララァにシャアは笑ってツッコミを入れた。
その二人の姿は和気あいあい、またはラブラブといえるピンク空間が広がっている。
ドライはもちろん、今傍にいない兄のアインとツヴァイはどこかそんな二人の姿が好きでこのじおんに居候となっている。
そして足元でのびていた少女がパチっと瞼を開けた事に気付き。
穏やかかつ、騒がしい日々が。楽しい思い出が増えそうな期待を彼女に寄せながら声をかける。
「私、ガンダムスローネドライ。よろしくね♪」
続く