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[17018] 高町なのはじゅうよんさい@邪気眼真っ盛り!
Name: ネイチャー◆4594b8fb ID:fe7cf97b
Date: 2011/09/09 21:17
前書き・注意書き

・この作品ではなのはの性格が魔改造されております。

・フェイトは性格がPSP版なのは(以下なのポ)の雷刃の襲撃者状態になっております。

・この作品は読み手も書き手も構わず黒歴史を掘り返します。


以上を注意した上で(精神をガリガリ削る作業を)お楽しみ下さい。
























―――聞こえますか?


―――助けてください!



―――僕に、力を貸して……!




―――魔法の、力を……





私の名は高町なのは。私立聖祥代付属中学校に通う”異端”の一角だ。

ここ高町家においては所詮三人兄弟の末っ子にすぎない。――否、そう見えるように擬態している。


「おはよう」「おはよう、なのは」

父も母も、

「兄、姉、おはよう」

「おはよ。あ、サンキューなのは」「おはよう。わかった、今上がる。続きは帰ってきてからな?」「はい」

姉も兄も。


誰もが私を普通の娘として、妹として扱う。だが同時に、この虚構の上に成り立つ日常を、私はひどく胡散臭く感じてもいた。



登校風景にしてもそうだ。
表面上は何の摩擦もなく談笑するも、腹の底から楽しむことなど無い。

スクールバスに独り――周囲に有象無象の人間がいようと、所詮私は孤独なのである――乗り込む。



「なのはー、おはよー!」

「おはよう、なのはちゃん」

最後部の座席に並んで座っているのは、誰だ? ――友。アリサちゃんとすずかちゃんだ。

有象無象の塵芥ではない、私の認める友人だ。凡下とは全く違う。


「イゼル・アディータ」(私の考えた朝の挨拶)

ただそれだけを口に出して、何食わぬ顔でアリサちゃんの隣に座る。
周囲には聞こえない程度にぼそり、と呟く。

「今、何人いるの?」

「そんなものそうそういないわよ」

「ふーん、ならば安心して”日常会話”に励むことができる、というわけだよね」

「今なんでそんなところ強調したのよ、しかもなんかいたら話せないことでもあるの?」

アリサ・バニングスは霊能力者だ。本人は「まあ確かに、前に京都で『お主は死霊に限りなく近い波長を持っておる!』と言われたわ」と言っているが、私の『絶霊雄波』(私の名付けた人間の体内に宿る神秘エネルギー)を抑えていることから、無自覚に封印術を行使できるものと考えた方が正しかろう。


「まあまあ、アリサちゃん。なのはちゃんがこうなのは割といつものことじゃない」

月村すずか。大宇宙誕生の瞬間から常に在り、地球の片隅で世界の覇権を操作し続けた血刃の皇帝の眷族が人間社会に身を落としたという一族、『夜の一族』の党首の妹だ。
それが故に人間社会に近づきすぎることは禁じられているが、私のような”深入りするわけにもいかない”人間には逆に好都合である。


―――そうやって、私の日常という名の歯車は廻ってゆく。



―――そのぼろぼろと零れ落ちる歯を、止めようともせず。







「ああ…、こう、今のなのはを見てると二年前の自分を思い出して気が滅入るのよ…」
「あはは、そのうち落ち着くだろうし待っていようよ、アリサちゃん」
「というかあの頃の霊感設定(くろれきし)をいちいち掘り出されるお陰でいちいち頭を何かにぶつけたくなるのよ!」
「自業自得っていえばそうなんじゃないかな?」
「ああああああああああああ!」

















あとがき
・アリサさんは既に卒業済みです
・夜の一族にそんな設定はありません
・レイジングハートが使うのは魔力です。絶霊雄波なんていうわけのわからないエネルギーではありません

というかもっと長くしようとしたが書いてて自分のHPが削れ過ぎて断念。死ぬ。



※某天元突破能力持ち三十路なのはさんの関連作と淡い期待を持たせてしまったようで、あまりに申し訳ないのでタイトルを改訂します。すみませんでした。



[17018] 覚醒   (ユーノくんと初陣)
Name: ネイチャー◆4594b8fb ID:fe7cf97b
Date: 2010/03/10 18:46
 これまでのあらすじ
・ユーノを動物病院に送り帰宅する(詳細を描写しているとまず作者側の心が折れるためカット)










夜。漆黒が支配する魔の時間帯。ありとあらゆる社会の闇が蠢き始める、悪夢の始まりの時間帯。
今日も今日とて私は来るべき『総合絶霊雄能力者管理局』(私の名付けた神秘パワーを隠匿管理し、世界を裏側から操る超巨大秘密結)の『執行者』との戦いに備えてイメージによる戦闘訓練(シャドー・ボクシング)を行っていた。



―――力を、貸して下さい!



そうしていると突如、声が聞こえてくるではないか!



―――魔法の…、力を……っ!



間違いない。『絶霊雄波』の能力者同士でのみ使える連絡手段、『情報風蝕(メリクリウス・アスク)』だ。



―――あなた、何者なの?



存在だけは脳の内部に絶霊雄波によって受信していたから知ってはいたが、実際に使うのは始めてだ。
故に、実際に届いているかどうかは定かではなかったのだが……。



―――念話!? 現地の魔導師の方ですか!?



心配は無用であったらしい。流石は放逐されたとはいえここ百年では最大の『絶力』(絶霊雄波の力の大きさ。私が名付けた)を誇る私である。



―――答えは否、だよ。私はただの”絶霊雄波”に目覚めた能力者。……そう。ただ、それだけなの…。

―――えっと…、この世界での魔法の呼び方でしょうか。あれ? でも確かこの世界には魔法文明は存在しないって……。

―――表側では隠匿されているからね。”第一世界”の人間には知られていないかな?



『情報風蝕』の受信が可能な私だからこそ知り得た真理である。



―――と、とにかく、助けていただけませんか?

―――それによって発生する、私へのメリットは?



人間の本性は悪だ。
世界は悪意に満ちていて、社会は欲望によって成り立ち、廻っている。
故に、私がここで救援に駆け参じるメリットが見つからなければ動くわけにもゆくまい。



―――お礼はなんでもします! 何なら、僕の現在使っているデバイスを差し上げても構いません!

―――『制波紋章(デバイス)』、か……。話に聞いてはいたけれど、初めてなの…。



悪くない。あの伝説の古代遺物が実在していたのならば、その力は大いに私の”平穏なる生活”を保つための助けとなるだろう。



―――交渉成立、だね!



私は部屋の窓を開けると、そのまま靴を履き(一階が刺客に占拠された場合に備えておいた)、いざという時のために用意しておいた縄梯子(同じく刺客対策)を使い、この胡散臭くも明るく温かい我が家の唯一安堵できるプライベートスペースから夜の闇へと飛び出し、走り出した。

――疾駆。回る足は無音にして上体は不動、ただ前方へと効率的に身体を押し出す。

闇に溶けつつ、最適の肉体動作で最大効率を維持しながら、波動を感じる方向へとただただ駆けつける。
その適度に絞られた体躯から為される疾走は、いっそ芸術的とも―――


「疲れたの」


……ただ駆けつけることに装飾など不要、余計な肉体の統制に使用する精神力の無駄である。
だからして、普通に駆け始めたのだ。













★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★














「そんな! 思念が実体化するほどの”絶魔”だなんて!」

「すみません、ジュエルシードというロストロギアのせいなんです!」

「もはや私の力ではどうしようもないよ! 早くデバイスを!」

果たして、駆けつけたその先にいたのはイタチ状の精霊と不定形の”絶魔”(私の受信した人類の絶対的な敵対存在。想念によって構成されている)だった。
実体化しない程度の”絶魔”ならば私でも殺せる。だが、こうまでなってしまうともはやいくら私でも手のつけようが無い。
おそらくは精霊クンのいうロストロギアの『忘念奇晶(ジュエルシード)』とやらが作用したせいなのだろう。まったくもって忌々しい。


「これですが、起動パスワードをお願いします」

と、絶魔の攻撃をサイドステップで避ける私に精霊クンが紅玉を渡す。
パスワードを尋ねると、かなり良い言葉に設定されていた。

――素晴らしい! それでこそ、この私、…”紅塵”の高町なのはに使用されるに相応しい!



「我、使命を受けし者なり。契約の下その力を解き放て!」


精霊クンから教わった通りの手順を踏む。


「風は空に、星は天に、そして不屈の心はこの胸に!」


思い浮かべるべきは”杖”と”防護服”


「この手に魔法を、レイジングハート、セット・アップ!」


否! 思い描くは常に最強の自分!

そのイメージとともに私の視界は桜色――根本に埋まる死者の血を吸い上げ美しく咲くという花の色――に包まれた。







「……なんて魔力だ」


漆黒に染まった学校の制服。
手にするは、黒の基本フレームに金の意匠が映える、メカニカルな突撃槍。

目前に立つは、実体化して現世にまで干渉することが可能となった不定形の”絶魔”……。



だが、私の心には一片の恐怖もない。


「フフフ……感じるよ、鼓動を……。絶霊雄波の、鼓動を……ッ!」



なんたる力!

なんたる全能感!



今の私にならば何だってできる!

そう、




「神を殺せ……」


《Divine Buster》



例え神であろうと、







「私を止めることなどできはしないのっ!」






圧倒的な破壊音とともに、桜色の光芒が今、確かに絶魔の血を吸って花開いたのであった。
























 あとがき
駄目だ、ユーノじゃ邪気眼のストッパーにならない。
回復してきたためどうにかシーンを飛ばして書いたのに、すぐにHPがゼロになった。後半の文の邪気眼濃度が低めなのはマイナス状態で書き上げたため。
でもはやてのオチが思いついてしまった以上、一応関西の血が混じっていなくも無い自分としては飛び飛びでもAsまで書いてしまいたい。次は一気にフェイト(14)まで飛ばし、その後はクロノ(常識人)まで、その次にいきなりプレシア倒して無印エンドでいいかなーなんて思ってます。というかHPが持ちません。
皆さんも相当ダメージ食らっているようですが、たぶん作者が一番キツい気がします。Mですけど。



[17018] トウソウノサダメ  (フェイトさん登場)
Name: ネイチャー◆4594b8fb ID:fe7cf97b
Date: 2010/03/16 04:06
 これまでのあらすじ(読むと悶えさせる効果がある。相手は死ぬ)

月村邸にてお茶会(パーティ・オブ・アフタヌーンティ)開催。
アリサにいつものように雑霊の数の確認をとりつつ(アリサ精神ダメージ)小指を立てたままティーカップを掴んで優雅にお茶会。
しかし、そんな”日常”を送るなのはを突如戦慄させたのは遥か古代、異世界の超文明を幾度も滅ぼしたという忘念奇晶(ジュエルシード)の胎動なのであった!







「くっ、この波動はっ!」

「あ、こら、なのは! 紅茶が零れたじゃない!」

がたり、と椅子を蹴り飛ばしつつ立ち上がる。

「世界の存亡と一杯の紅茶、どっちが大切なの!? アリサちゃんも紫陽眼(サード・ウォッチ)があるならわかるでしょ? 感じないの、この波動を……」

「うがああああああああああ!」

私が一喝すると突如アリサちゃんは顔を紅潮させて転げ回り始めた。
ようやく気づいたか、愚図め! やはり視認、他者封印において私の上をゆくアリサちゃんであろうと、”紅塵(アッシュ・オブ・ムスペルヘイム)”たる私には一歩遅れをとるらしい。
まあ、仕方ないことだ。その力の強大さ故に記憶を封印されたらしい(『情報風蝕』の傍受によって立てられた仮説)私に二歩も三歩も劣ってしまうのは当然だ。

「ここは私に任せて下がって、アリサちゃん。すずかちゃんをその『封霊陣(アンチセプト・シール)』(アリサちゃんの作り上げた既存のありとあらゆる魔除けの加護を内包した新たな護符)で守ってあげて。確か常に一枚は肌身離さず持っていたはずだよね?」

「いやああああああああああああああああ!」

どうやら、あまりの波動の強大さに私が行くことを本能的に拒否しているらしい。
だが、それは見当はずれというものだ。

「任せて、アリサちゃん。」


私はしっかりと、アリサちゃんのその魔眼を覗き込みながら、断言する。
そう、私には絶対の自信がある。だから安心して、と眼差しで語りかけた。



「もはや私は、神ですら止められないの」





にこりと綺麗……かつ凄絶な微笑みを浮かべ、私は庭へと重心を動かさず、無音でしなやかかつ流麗に駆け出したのだった………。

















「なんなの!? なのは、あれは嫌がらせ!? まさか私に対する嫌がらせなの!?」
「まあまあ、アリサちゃん。アリサちゃんもだいたいあんな感じだったんだし、落ち着こうよ」
「だからってなにも私自身もう忘れてたようなものまで掘り出さなくてもいいじゃない!」
「……『封霊陣(アンチセプト・シール)』」(ぼそり)
「あああああああああああ! 私のバカああああああああああ! 抹消したい! タイムマシンがあったら過去の自分を抹殺したい!」
「……対象とする霊のハジマリノトキに浄化をかける『時隙杭(ディスティニー・オブ・パラドクス)』」(ぽつり)
「うわあああああああああああああああ! これ以上堀り返すのはやめてえええええええええええええええええ!」















★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★















天が黒く染まる。

雷神が怒り狂い、月村家領の森林を蹂躙する。


「なんだ、この魔力……。焦土作戦でもするつもりなのか……?」

「この絶力……、『執行者』クラスなの……。いや、それよりはマシ、なのかな……?」


発動されたジュエルシードの暴走体……、『爛漫たる魔獣』タマは膨大な量の稲妻に撃ち抜かれ、元の仔猫の姿へと戻った。
―――だが、奴は一体何だというのだ。
都市の一区画を丸ごと焼き払うような絶霊雄波を放っておいて、余裕そうな表情でジュエルシードを睥睨するのは、黒衣纏いし少女。
身の丈を越えるほどの黒き戦斧を片手に宙からくだらないものを見るかのような瞳で見下す少女は、どこか冥界の縁に佇む死神を思わせた。


「―――気に入らない瞳だね。まるでこの世の全てを見下しているような……」

「えっと、ただ飛行魔法を使ってるから下を見てるだけだと思うんだけど……」


駄目だ、ユーノくんは解っていない。
結局所詮は精霊、人間の感情を理解することはできないのだろう。

しかし、気に入らない。風になびくふたつに括られた金糸のような髪も、その血のように赤い瞳も、
―――何より、私なぞ全く眼中に無いと言わんばかりのその態度が!


「レイジングハート、ジュエルシード回収」

悪いが、ひとまず先にジュエルシードは回収はさせてもらおう。これを集め、永久封印することが私の使命であるからだ。


「なっ!? ……何者だ!」

しかし関心が無いように見せかけて、意外なことに反応は劇的であった。

「ふっ……、名乗る名は持ち合わせていないけど、”紅塵”と言ってわかるかな?」

「はんっ、わからないね! そんな染みったれた陳腐な君の異名など、僕には興味が無い」


―――染みったれた、陳腐な…だと……?


「僕は今、ジュエルシードを必要としている。そして君がその邪魔をした……、僕にとって重要なのはそれだけさ!」

「それ、何者かってことに関係なくないですか……?」

「上等だよ! 風の前の塵の如く、あなたを吹き飛ばさせてもらう!」

「しかもなのははやたら喧嘩腰にっ!?」

「やってみろよ、『管理外世界』の愚かなる蛮人! 『黄昏の雷帝』プレシア・テスタロッサが娘、『襲撃せし雷刃』フェイト・テスタロッサ、参る!」


―――嗚呼、仕方無い。
人間とは所詮、戦うために存在する機械でしか無いのだから……。

精霊からすれば愚かでしか無い結末なのだろう。
だが、必死に止めようとしているユーノくんには悪いが、仕方あるまい……、人間は最終的に争う以外の選択肢を持たないのだから……。


「神を殺せっ!」《devine buster》

「電刃・爆衝波ッ!」《thunder smasher》

「ああっ!? いきなりナチュラルに大魔力をぶつけ合ってるっ!?」


―――私のデバイスと、フェイト・テスタロッサの右腕。
我が身から迸る極光が大気を切り裂き衝突する。

なるほど、相手の絶力はかなりのものだ。
しかし、いささか相手が悪すぎた。今フェイト・テスタロッサの目の前に存在している者は凡百の能力者などではない、『管理局』の『執行者』と同等の資質を持ちながらもその存在を放逐された、”紅塵”だ!
じりじりとその雷鳴轟く金の奔流を押し遣り、ついにはフェイト・テスタロッサは身を翻し、我が血桜の濁流から射線を外す。


「ククク…、この僕の砲撃を押すとはなかなかやるじゃないか、面白い!」

「フッ……、『整波紋章』と『天眼(ハルピュイア)』、二つの制御機構を持つ私にこの分野で勝利しようだなんて、片腹痛いよ!」


―――だが、奴のこの余裕はなんだ?

威力、制御力では明らかに私が上である――これは絶対不変の法則。
それを身を持って味わってなお表情に宿る、この絶対的な余裕の源は、一体何だというのだ?


「残念だけど、これからは戦い方を変えさせてもらおう。雷速瞬動・――」

フェイト・テスタロッサが戦斧を大きく――山でも断ち割らんとばかりに振り被る。


「――刹那ッ!」《blitz action》


―――まさにその刹那、彼女の姿は消え失せた。
逃げた? 否、それならばあのように振り上げる意味がない。ならば奴は――必ずや死角から襲いかかる!


「君には僕の影すら――」

声がしたのは、背後。
悪寒を感じた方向へと、全力でレイジングハートを叩きつけた。

「踏ませない―――ッ!」


ぎちぎちと軋みながらも、私の杖と彼女の戦斧が噛み合わさる。
筋力はほぼ互角――その感覚に私は自然と、獰猛な猛禽類のような笑みを浮かべていた。


「なるほど、僕の速さを捉えるか……。」

「いや、なのは明らかに追いきれてなかったから! あなたが無駄に叫んで口上述べてなければ無理でしたから!」

そう言って彼女も、凶暴に口角を吊り上げる。

「いいぞ、君の名を僕に刻もう。”紅塵”よ――、名を何と言う?」







―――嗚呼、そうだ。そうなのだ。




―――きっと今現在此ノ時より、私の闘争の歯車は、音を立てて廻り始めたのだろう。





                                                  「私の名は、――――――――――――――――――――――――」











 あとがき
ククク…、厨二フェイトを書いていたらどんどん雷刃さんに似てきたので、開き直って一人称まで雷刃さんにしてみたぜ……。いっそ髪色も電刃さんにしようか迷ったぐらいだぜククク……。
引っ越し準備中に出てきた銀河鉄道の夜の読書感想文の内容

銀河鉄道の夜について
  ↓
死とはそもそも何か
  ↓
生の定義
しかも「否、断じて否だ。」とか使われてる。

……クッ! 右腕が疼きやがる……!


無理。このなのはさん調子に乗りすぎてて、最後まで厨二戦闘シーン書くとか絶対無理です。というか考えるだけでまた削れてあばばばば



[17018] プレシア・テスタロッサの憂鬱(過去編)
Name: ネイチャー◆4594b8fb ID:fe7cf97b
Date: 2010/03/17 03:11
 プロジェクトFATEが完成し、アリシアを蘇らせることに成功したと狂喜したのはいつの話だったろう。

私のせいで、私の研究した魔導炉によって、わずか十歳という若さで亡くなってしまったアリシア。愛しい我が娘……。
恋の一つもさせてあげられないで、このようなあまりかまってあげられなかった駄目な親の事故に巻き込んで殺してしまった。
しかし、それも今日までのこと。


――こんなに待たせてしまって、ごめんね。

――母さんちょっと老けちゃって、驚いちゃうかも知れないね。でも大丈夫、これからは時の庭園で静かに暮らそう?


こうしてアリシアが再び眼を開いて、私の目の前で生きて、動いて、ごはんを食べて……。
ただアリシアが生きている、それだけで胸がいっぱいになる。



 だが、そんな気持ちも長くは続かなかった。



――アリシアは、「ふっ」などと笑っただろうか。

――アリシアは、夜な夜などこかへ出かけてはニヤつきながら帰ってきたりしただろうか。

――アリシアに、たまに左手を抑えては何か念じるように目を閉じて瞑想する癖なんてあっただろうか。

――アリシアに、わざわざ血でノートに文字を書いてみたりする趣味があったろうか。


本人が隠しているようで隠し切れていない、そんな違和感がどうしても拭えない。

そんなナニカを払拭したいとある日、隠蔽したサーチャーにアリシアを追尾させてしまった。
どうしてもどこか不安になってしまい、アリシアに悪いとは思うものの、確認したいという衝動に抗うことができなかったのだ……。


―――それが、取り戻したと思った私の日常の終焉になるとも知らず。



まず最初にサーチャーが捉えた映像、それは魔力光だった。それも金色をした、鮮やかな魔力光……。

――待って!

あの忌々しい、暴走してアリシアを殺した、ヒュードラのものによく似た魔力光……。

――そんなわけない!


次にサーチャーがキャッチしたのは、目を細めて口角を釣り上げたアリシアの紡ぎ出す声。

「ふっ、この宿主は意思が強くていけない……。ようやく、ようやく出られた!」


――え…?


しかし、現実は無情という他ない。アリシア…の姿をした何者かは、左の拳を握って開いてを繰り返しながら……

「さあ世界をあのほのかに暖かい、血と怨嗟の闇の温もりに塗りつぶそうじゃないか! ……フフフ、その後の世界で、僕は砕けぬ闇の王として君臨する!」



―――もはや疑うべくもなかった。


あの心優しいアリシアがこのような世迷い言を言うはずがない。
間違いなく私は、絶対にアリシアではない、よくわからないナニカを生み出してしまったのだ!



 その夜、プロジェクトFATE成功体が寝静まった頃、私はそれの枕元に立った。
市販のストレージデバイスを起動させ、魔力を流す。術式はサンダースマッシャー。
あとは一言トリガーワードを呟くだけ。それでこいつは生命維持を止める。

――こんなのはアリシアじゃない。わけのわからないがらくただ。

腕が震える。唇がわななき、上手く舌が回らない。

――ガラクタだ。ガラクタを処理するのに何を躊躇する!

けれど、駄目だ。駄目だ! それの安らかな寝顔は、紛れもなくアリシアのものだ。
それを自分の手で殺してしまったら、今までの自分を全て否定してしまう。アリシアを蘇らせる資格を失ってしまう気がする。

「にゃむ……、えたーなるふぉーす……」

幸せなアリシアの寝顔。それに杖をかざして、魔法のチャージをする自分……。






結局私にできたのは、全ての記憶から名前という名前を絞り尽くし、がらくたを二度とアリシアと呼ばないようにすること、


ただそれだけだった……。









 あとがき
魔法世界で実際にクローン復活とかしたあとに発病したら絶対これくらいは思う。というかシャレにならない。
アリシア(仮)さん空気読んでくださいってことで。
あ、ウチのフェイトさんは左利きです。性格は言うまでもない。

>Sa10さん
とらハ板で「●●歳」で検索かけていただければ見つかるかと。面白いですよ?



[17018] 『管理局』  (超マッハ展開クロノ会話)
Name: ネイチャー◆4594b8fb ID:fe7cf97b
Date: 2010/03/20 01:09

 あらすじ

幾度もぶつかる”紅塵”と”雷刃”。
叫ばれるトリガーワード「神を殺せ!」「天罰よ!」「弾け神盾!」「美しき時よ止まれ!」「止まる世界!」
必殺技名「電刃・爆衝波!」「電刃衝!」「紫電壁!」「雷速瞬動・刹那!」「天破・雷神槌!」
攻防は(主に先に何事か叫んでから魔法に移るせいで)一進一退、ジュエルシード数も互角。
フェイト(笑)さんは「全部集め終わるまではかの”黄昏の雷帝”に見せる顔など、”襲撃せし雷刃”になし!」と家出少女のまま遠見市の高級マンションに宿泊。

幾度もの戦いを経て、海上で無駄に魔力を開放しながらぶつかり合うところを『総合絶霊雄能力者管理局』の『執務官』(おそらく『執行者』よりはランクは下かと思われる役職)が現れ、戦闘停止命令を下す。
しかしふたりとも反抗したいオトシゴロ、全力でお互いに拙いながら連携をとりつつ反逆、冷静(非中二病)なクロノ執務官とモブ武装隊員に勝てず、二人はあえなく御用となるのであった。


そしてユーノもとりあえず捕まった。
アルフはちょっと呆れ気味に無抵抗だった。


























何処とも知れぬ昏い牢獄の中、私はレイジングハートとも、ユーノくんとも引き離され、一人幽閉されていた。


「『管理局』っ、一体私を捕らえてどうするつもりなの!?」

「いや、公務執行妨害、危険遺失物取り扱い禁止、その他もろもろいくらでも逮捕の理由があるんだが……」


黒髪の端正な顔をした少年――歳の頃は十二、三だろうか。『執務官』と呼ばれる役職にあるらしい。
彼は嘆息し、如何にも私を小馬鹿にしたような態度で頭を振った。


総合絶霊雄能力者管理局、通称『管理局』

彼らがいつから存在しているのかは誰も知らない。
絶霊雄波の能力者(ホルダー)を収集、洗脳し、世界を影から操り続けている秘密組織……。


「『公務』……ねぇ? 悪いけど、そんな公の組織を聞いた覚えはないんだけど」

「君の言葉から、我々管理局を敵だとみなしての反抗以外の意図は感じられない。第97管理外世界で秘匿されていることはまったく理由にならない」

再び少年は嘆息。
己にかけられた手錠と、感知が不能になった内部絶力が余計に私を憂鬱な気分にさせた。


「……それで、結局何をするつもりなの? 加速剤(アクセラレイター)でも投与してみる? まず間違いなく暴走して、ここを粉々に粉砕してあげるよ」

「管理局はそんなことはしない!」


少年は強く諭すように言うが、わかっていない。現実というものを見ていない。
――嗚呼、なんて愚か。


「『管理局』が、『総合絶霊雄能力者管理局』がそんなことはしない? 笑わせるよね! あれだけ世界を裏から牛耳っておいて、今更正義騙りなの? 笑わせるよ……!」


私の突きつけた真実に、少年は愕然とした顔をしてから、へらへらと誤魔化すように笑った。

――逃げるか。

――現実から、逃げるか!

―――愚か、愚か、あまりに愚昧!




と、脈絡なく急に手錠が外れる。
訝しむように少年を見やると、


「あー、すまない……、根本的な行き違いがあったようなんだが……」


がばりと頭を下げた。


「僕たちは『時空管理局』。次元災害、次元犯罪に対応し、次元世界の秩序を守るために設立された組織だ」





人違い……だと……?













  そのころのフェイト(電刃)さん

「まずはそのロストロギアを求める理由を聞こうかしら」
「フッ、僕がそのようなことを吐くとでも思っているのかい?」
「そう……、じゃあ、まずはお名前から教えてくれないかしら」
「いいだろう、しかとその魂に刻みつけろ!
 僕の名前は”襲撃せし雷刃”フェイト・テスタロッサ! 偉大なる大魔導師”黄昏の雷帝”プレシア・テスタロッサの娘にして右腕!」
「あら、すごいじゃない。そんなにすごいあなたなら、きっとさぞかし素晴らしい仕事を任されるのでしょうね」
「ふっふっふ……、その通ーり! 何を隠そう、今回も母さんの研究に必要だと言う次元干渉型ロストロギア、ジュエルシードの回収を目的としてここ、第97管理外世界に派遣されたのだ!」
「はいはい…、エイミィ、記録は完了した?」
「ええ、バッチリです館長! 首謀者は失踪した大魔術師プレシア・テスタロッサ、目標は次元干渉型ロストロギア『ジュエルシード』ですね」
「では、引き続きプレシア・テスタロッサの情報の洗い出しをお願いね?」
「了解です!」

「ああああああっ、誘導尋問だなぁっ!? 卑怯だぞ! 君たちも魔導師なら正々堂々とぶつぶつ……」














 あとがき
時間がない。24日までに完結させねば投稿不可になる!
次回、キングクリムゾンで無印完結。そしてA'sははやてオチだけやって他はあらすじとそのころのなのはさんで流す!
StSは完全にパージ、次に時間が空いたときに『エリオ・モンディアルじゅうよんさい』でっ!
濃度が著しく足りないのが心苦しすぎるけれど、とにかく未完のまま消えてたまりますかっ!



[17018] 名を呼ぶ必要などない…  (無印完結)
Name: ネイチャー◆4594b8fb ID:fe7cf97b
Date: 2010/03/22 03:39

「その、総合絶霊雄能力者管理局とやらの情報が知りたいのだが……」

今までの狭苦しい牢獄とは違う、それなりの広さのある個室の中。私とクロノ・ハラオウンは情報交換を行っていた。

「『総合絶霊雄能力者管理局』……、神秘の力を隠匿、管理し、世界を裏側から操る超巨大秘密結のことだよ。私はそこの制御実験で暴走を起こして放逐された……言わば超越種(ディープ・ブラッド)なの……」
「それは……。しかし、そんな組織が本当に存在するのか? 時空管理局は現地各国政府に伝手があるが、そんな危険な文明は報告に上がっていない」

甘い。金属のようでいて、どこか粘土めいた光沢を放つテーブルに私は頬杖を着いた。

「第二世界までの情報網じゃあ、それは捉えられないよ、報告されるわけがないの。『管理局』を探るなら最低でも第三世界までは潜らないと無理があるね」

「そんなことが……」

クロノ・ハラオウンは絶句した。
今まで見ていた世界がただの”虚像”だったと知って、足元が崩れたように感じたのだろう。

「それで第三世界とやらは、一体どれほどのコネクションが必要となるんだ……?」

その質問に息を詰まらせる。
第三世界とは何だったろうか? 単語だけが脳裏をよぎり、肝心の意味が出てこない。これは……っ!

「忘れちゃった……いや、忘れさせられてる、と言ったほうが正しいっぽいかな? ごめんね、無傷で脱したと思ってたんだけど……」

「いや構わない、とにかく第97管理外世界についての注意は本局に促しておく。情報提供及びロストロギア回収のご協力感謝します、高町なのはさん」

尊大そうな口調とは裏腹に、クロノの礼からは心からの誠意が感じられたのだった……。





これを期に時空管理局は”地球”を再調査することとなる。
その結果一種のインヒューレントスキルの研究をする地下組織、魔力と残留思念により形成される思念体及びそれに対応する機構、他者の血液を魔力に変換し身体機能を強化する特殊な遺伝個体などが発見され………


数年後、管理外世界から発展途上魔法文明保持世界まで格上げされた地球の姿がそこにあった。



































 あらすじ

フェイトが「全てのジュエルシードを揃えねば、”黄昏の雷帝”に見せる顔がない!」と帰宅もせずにいきなり捕まったため、ジュエルシード確保数がゼロなプレシア・テスタロッサ。
対する管理局も、主犯がプレシアとは判明したものの現在の居城への決定的な手がかりは見つからず(プレシアがジュエルシードを持たないため次元跳躍攻撃が撃てない)、捜査は難航……。
高町なのは、別にジュエルシード封印はクロノでいいからと放り出されて日常に戻る。ユーノは一人、クロノのお手伝い。

……無論プレシアの寿命も刻々と削られてゆく。

ついには焦れたプレシア、手駒が居ないならと直接海鳴に降臨。バリアジャケットを纏って海中で儀式魔法を行い虚数回廊を開かんとする。
このときアリシアお目見え、フェイト(邪気眼アリシア)に通信を繋いで真実を暴露した末にガラクタ呼ばわり。(人形よりもランクは上?)フェイト(雷刃)さん打ちのめされる、と言うか悲劇に浸る。
時空管理局アースラ勢、これに対応してクロノを送り出そうとするも、推進部を暴走させた『時の庭園』がアースラに突貫、そのまま内部に傀儡兵が侵入し、館内大混乱。
アースラ自体も不安定になったため転送魔法が使えず、クロノはうじゃうじゃ湧き出る傀儡兵を千切っては投げ、ユーノはそのサポート。エイミィは転送座標を全力で安定させにかかる。

フェイトの牢を守っていた一般兵たちは薙ぎ倒され、ついにはフェイトに迫る傀儡兵。
プレシアの傀儡兵が自分を殺しにやってくるその事実にフェイト、土壇場で反逆を決意。
武装解除されていたためデバイスなしで素のサンダースマッシャーでゼロ距離射撃を決行し、外部でうわーだめだーしていた局員からバルディッシュを返却してもらい、以降掃討に参戦。

一方、レイハさんだけ貰って日常を過ごしていたなのはさん(14)、プレシアの儀式を感知し即変身(星光さんバリアジャケット)でディバインバスター、結界を張りつつプレシア目掛けて全力砲火。
プレシアもこのままでは儀式に差し障ると、ジュエルシードの魔力を励起させつつ負けじと火力勝負を仕掛ける。しかし流石に大魔導師、黄昏の雷帝(笑)。徐々になのはも押され、ついにはサンダースマッシャー直撃。時間は稼いだものの戦闘不能。

プレシア儀式再開。海中に存在するジュエルシード6個を使い次元の裂け目を作るため空間を破壊しようとする。
しかし土壇場でアースラからの転送が完了、リンディ羽つきバージョンが次元震を強引に押さえ込む。
だがそれでも崩壊は時間の問題……というところに転送されたフェイト乱入、「その過ちは……僕が止めるッ! 貴様に永久の闇は未だ早いッ!」と叫びつつ肉薄、また意味もなくゼロ距離射撃。
こうして海鳴湾にアリシアの遺体は沈み(あとでスタッフがおいしく引き上げました)プレシアは逮捕、後のPT事件は終わりを告げたのであった。
































「”紅塵”、思えば君ともなかなか因縁深かったと思わないか?」

「そうだね、”襲撃せし雷刃”。思えば、あの月村の常闇の園で出会ったときから、私たちは運命で結ばれていたのかも知れないの」


別れの日、開口一番フェイトはそう言った。
全く以ってその通りだ。最初の出会いはあの”お茶会”の日、そこからたまたま家族旅行に出かけた先、町で探していた近く、そしてこの潮の香り漂う海鳴公園。
幾度も幾度も、私たちは鎬を削った。


「―――まさしく、闘争の運命に導かれているようだった」

「うん。けれどね―――」


――これで終わりなどではない。終わる筈がない。

私たちが出会ったのは運命で、それに二人の闘争が定められているというのなら。
まさしくこれは二人の序曲(プレリュード)、その始まりの一音に過ぎない。


「僕の名前――」

「うん?」


その眼が見つめるのは遥か遠く、地平線の彼方。


「FATE。それは所詮、ただの無機質な計画(プロジェクト)の名称だったかも知れない。けれど、それでも意味はある。
 そう、それこそがこの刹那、僕らにその存在を仄めかしている――――」


『――運命』


私とフェイトの二人、自然と唱和した。
思わず笑いを噛み殺すと、対面でもフェイトがクククと笑いを堪えていた。

ふと、私は己のリボンを片方外す。アリサちゃんの封霊陣(アンチセプト・シール)の刻まれた特製のリボンだ。
それだけで察したのか、フェイトも片側のリボンを外し、こちらへ突き出した。



「骨の髄まで刻み込め、我は”紅塵”! そして因果の流れの最果てで――」


「地獄に落ちても忘れるな、我は”雷刃”! そして渦巻く流転の地平線にて――」



『―――また会おう』



フッ…、とひとつ笑みを残して、私たちは互いに背を向け、歩き出した――。



―――そう、己の進むべき道を……。

















「あー、なんかフェイト楽しそうだ」
「僕としては全く意味が分からないんだけどね…」
「あたしだって意味なんてわからないさ。でも、何となくわかることがある」
「それは何…?」
「あの二人はきっと、同じ仲間なんだよ」
「ああ、さすがに僕でもそれはわかる」
「なんでも、あたしとしてはフェイトが楽しそうならそれでいいんだけどさ。あんたも使い魔ならわかるだろう?」
「いや、僕は使い魔じゃないから!? ただ変身魔法でこの姿になってるだけだから!」








 無印・完











 あとがき
前回無茶苦茶なタイミングで捕まったせいでキングクリムゾンした部分がやたら濃い! なんか真面目に書いたら面白そうになった! でも絶対HPがもたないのは眼に見えてるけど……。
次回、はやて編。はやて編だけでたぶんA'sは終了します。24日の夜までがタイムリミットですし、それ以降はまずムリっぽいです。


>感想のsiki◆1f99d8ccさん
たしかフェイトの仮住まいは海鳴の隣の遠見市にあったはずですので、あっているはずです。



[17018] 黒歴史の書  (A's完結)
Name: ネイチャー◆4594b8fb ID:fe7cf97b
Date: 2010/03/24 21:23

わたしはちょう前まで、魔王の力を足に宿した能力者やった。

足が動かん理由、なんでこうなったんかを悩んで悩んで悩み抜いた末どこでどう捻じ曲がったんか、私の足は魔王ベルゼバブの端末で封印を開放されると世界全てが朽ち果てるという設定がついとった。(しかも封印が解かれるのはそう遠いことではないことらしかった)

そんなわけで少しでも封印の開放を延すため、動かん足に毎日わざわざ図書館で調べたルーン文字をびっしり書き込んだ包帯を巻いて車椅子に乗っとった。
誰かに足をどうしたのか聞かれたら

「やめときぃや、あんちゃん。知らんほうが幸せに暮らしてけるよ。ほれ、誰もわざわざ好き好んで世界の終末の予言なんて知りた無いやろ……?」

と言って、質問をかわしとった。
遡って過去の私を殺したい。


今はもう家族にも恵まれ日々楽しく過ごしとる。寂しさからちょっとアレな思考で現実逃避することもあらへん。


せやのに…………。











―――高町なのはじゅうよんさいA's 第1話にして最終回、始めるぞ














私がその少女に会ったんは、黙示録書庫(としょかん)やった。


「何を探しているの?」


夕陽に紅く染まる中、何の気まぐれか、彼女は棚の本を探す私に手を差し伸べた。
服装はカーキ色のジャケットにローズグレイのミニスカート――たしかどこかの私立中学の制服だったはずだ。茜色の光にさらされた髪はサイドテールにまとめられている。


「確かこの棚やったよな、私が求める『復活する暗黒の魔術』の書は……」

「ふーん、なるほど。これを欲しがるということは、”能力者”なのかな……」


と、彼女はその手に持っていた本を一冊、差し出した。タイトルは『復活する暗黒の魔術』
ふむ、棚から取るでもなく直接、ということは彼女も……。


「やめておきなよ、暗黒魔術は代償が大きすぎる」


やはり、全て読み込んでいたか。
しかしまあ、


「忠告にしても手遅れやなぁ……」

ちょい、と包帯に覆われた足を示してみせる。

「こいつはもう既に魔王ベルゼバブに捧げてしもうた後や。ちぃと、その言葉を聴くのが遅すぎたな……」


――ふっ、と嘆息する。


「つまりあなたは既に、世界の敵ということでいいの?」

「せやな。私はもはや世界の敵や。封印はかけとるけど、いつこの世界を約束された終焉の地(ディスペア・ウィスパー)に変えるか知れたもんやない」

「そう、わかったよ。ならその時になったら、私が消してあげる。……名前は?」


にやりと笑う彼女は凄絶な気迫を放っとって、根拠は無いけど絶対に私を、塵の一つも残らぬほどに殺しつくしてくれると確信できた。


「私はただの抜け殻や、名乗るほどの名前はあらへん」

そう、私はただ、世界から切り離された抜け殻―――ウツロナルニンギョウ。
せやけど……

「強いて呼び名をつけるんやったら、そやな……ベルゼバブの足跡、とでも呼んでもらおか?」


「そう、ベルゼバブの足跡……刻んだよ、その名前。私は”紅塵”……あなたを殺しに来る者の名だよ」


邪悪な笑みを浮かべた”紅塵”は、そのまま何もせずに図書館を立ち去った……。

だがこれが最後とは思えへん。クレナイノセカイを背に誓った”紅塵”は必ずや私の下へ現れ、世界を滅ぼすよりも先に私を消滅させるだろう。


クックック………と、私は湧き上がる邪笑を押さえることができんかった。


















なんて頃もあった。今? そんなアホなことを考え続けとる訳ないやろ。
だって私はもう一人やない。この世を呪うほど運命が憎いわけでもない。

と言うかヴォルケンリッターたちがでてきてからふと、今までの自分の言動を思い返してみた。

……めっちゃ厨二病や! 絵に描いたような邪気眼やん!


それに気づいた日は一時間ほどベッドの上でごろごろ悶えたわ!(ヴィータにどこか調子が悪いのかと心配をかけてしもうた。一種の病気やけど治ったから心配いらんとゆうたった)















☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆












「主はやての体調はどうなのだ?」

「やっぱりはやてちゃんの麻痺は進行してきているわ」


はやてが寝静まった夜、家族会議――もとい、守護騎士会議が開催された。
議題は『主の麻痺について』
腕を組み瞑目するシグナムにシャマルは慌しくオロオロとしながら答える。


「ああ、やっぱりだ…。はやて…何が「治った」だってんだよ…」

「主は優しいお方だ。我らに心配をかけまいとなさることは当然であったはずだ」


ヴィータは悔やむ。昼に己の主が突然ベッドの上で転がりだしたときには一瞬「何をやっているのだろう?」などと訝しく思ってしまったものだが、そんなことを一瞬でも考えてしまった自分を恥じた。
進行する症状を家族――そう呼んでくれる――に悟らせまいと誤魔化しにかかったのだろう。


「……そうだろうな。主はやてが過剰なまでに人に迷惑をかけまいとなさることは、我々も考慮しておくべきだった」

「でも私たちがその押し殺したサインに気づけなきゃいけないわよね……」

「だってーのに……」


騎士たちは拳を握り締め打ち震える。
原因はほぼ間違いなく闇の書だ。ならば、することは決まっていた――


「蒐集するぞ」


主の意に反する。だが蒐集せねば主の命は無い。
ならば誓いを破ってでも為せばならぬ。ただし――


「けど殺しは無しだ。はやての未来を血で汚すわけにはいかねー!」


無論、相手の命に影響しない範囲での蒐集となると効率は落ちるが、それよりも騎士たちは主の将来をとる。
いくら命を助けようと、それではやてが不幸になってしまっては元も子もない。心優しい主にはそのあともそのまま真っ直ぐに成長して欲しい。



そして、騎士は動き始めた。

あるときは近隣世界の魔導師を襲い、またある時は無人世界の魔獣を捕えてリンカーコアを吸い尽くす。



そしてまたある時は……。




「ふーん、ついに我慢できなくなったの? 『執行者』」

「とりあえずブチのめさせてもらう!」

自分たちを管理局と勘違いしているらしい地球の魔導師を襲いリンカーコアを蒐集した。(魔力がとてつもなく大きく誘導弾を16発同時に操作してくる強敵であったが、ザフィーラと二人でかかったので割と楽に蒐集できた。救援などもなかったし。25頁ほど埋まった)


ただしそこからケチがつきはじめ、やたらと正々堂々と戦おうとする嘱託魔導師やら冷静に戦う執務官やらに目をつけられ追われ始めたが(先述の遠距離戦魔導師もいた)、なんとか凌いで闇の書の頁を埋めてゆく。
そうこうしているうちに、このままのペースならばクリスマスを待たずして闇の書を埋めることが出来そうな状況まで持っていくことが出来た。




―――しかし










☆☆☆☆☆☆☆☆











今日は最近図書館で知り合ったお嬢様系文学少女、すずかちゃんが病室に遊びに来てくれる日や。
図書館で本をとろうとしてる(断じてもう卒業した怪しいオカルト本とかやない、普通の小説や)ところで出会った、私の友達。

そのすずかちゃんが私の病室に、お友達を三人ほど伴って来てくれるらしい。会ったことは無いけれど、きっと仲良く慣れるはずや。

一人は金髪を肩まで伸ばしてる、アリサちゃん。
もう一人がフェイトちゃん。……なんかハーフさんやらイタリアから越してきたらしい娘やら、やたらと外国人さんの比率多いなあ。

で、もう一人がなのはちゃん言うらしい。こっちは普通に日本人や。

アリサちゃんの写真はついとったんやけど、なのはちゃんとフェイトちゃんの方は「写真に写るわけにはいかない、組織に目をつけられる」とかいうんで写メールには写ってへんかったんで、どんな娘かようわからん。
でもすずかちゃんの友達なんやから、悪い人やないやろ。



そんなわけで、膝に乗せて撫でてあげてるヴィータと、花瓶に花を生けているシャマルと話をしながらすずかちゃんたちを待っとった。

「こんにちはー」
「こんにちはー」

と、病室の横開きの戸を開けて入ってくるのは、すずかちゃんの姿。それから隣にいるのは写メで見たアリサちゃん。
で、後ろにいるんが……


「へぇ……、久しぶりだね、ベルゼバブの足跡さん?」

「なのは、知り合い? こいつも”能力者”とやらなのか?」

「ぐあぁぁぁ!?」


いつか図書館で会った自称”紅塵”さん!?


「てめー”紅塵”!? はやてに何しやがった……、あと一体なにもんだ!?」

と、ヴィータが食って掛かる。雰囲気が一触即発な感じになっとるけど、ちゃうから! なにもしてないから! むしろ一種の自爆やから!


「ふーん、ここまで来たら名乗るしかないね。私は”紅塵”の高町なのは、そこにいる”ベルゼバブの足跡”さんとは世界を滅ぼす前に一片の塵も残さず消滅させてあげる約束をした仲だよ……」

「てめー……、最初から知ってやがったな……!」

「僕は”雷刃”フェイト・テスタロッサ! なのはとは運命の宿敵だ!」


ぐああああああああ!?
やめて! やめて!? 何いっとったんや数ヶ月前のワタシ!? これ以上ほじくり返さんといて!

ベッドで悶えているとぽん、とその時肩に手が乗せられる感覚。
振り返るとアリサちゃんがイイ笑顔で私を見つめとった……。

「これから仲良くしましょ、同類!」
「うわぁ、アリサちゃんもなんや…。なんや親近感わくわ」

と、そんな風にアリサちゃんと交友を温めとる内もなのはちゃんフェイトちゃん組とヴィータシャマル組の間の危険な空気は加速を止めん。


「はやてちゃんについてお話があります、少し屋上に出ましょうか……」


なんか「久々にキレちまったよ…」のアレを思い出した。








それ以降四人は席を外したままで、仕方ないのでアリサちゃんとすずかちゃんとで三人で話しとった。

やっぱりアリサちゃんは昔ちょっとソレな時期があって、現在発病中ななのはちゃんとフェイトちゃんとの会話で毎日ダメージを受けているらしい。
さっきクリティカル喰らったせいであんまりにも同情し、思わず抱きついたりした。いいおっぱいやった。




二人が帰る頃になっても、まだ屋上に行ったはずの四人は帰ってけえへん。予定があるらしいので二人とも先に帰るみたいやったが、「じゃあもしもこっちに戻ってきたらよろしく」とか言われても困る。
実際、二人が帰った後に悶えまくった。

うわぁ、何考えとったんや昔の私!
消し去りたい、あの過去を消し去りたい! 過去の私を消し去りたい!




『いっそなかったことにしたい!』



《Anfang》



――そこで私の意識は途切れた。
















☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆





 あらすじ

闇の書に『全て無かったことにしたい』と願ったはやてに応え、管制人格は暴走を始める。行動理念は特に『厨二病発症者を皆殺しにする』ことに重点が置かれていた。
これになのはとフェイト(雷刃さん)は奮闘、広域攻撃相手に高速機動を重点においたフェイトは苦戦したり、おおむね原作通り。
巻き込まれたアリサたちを助けるときも「ここは任せて! 私が二人を守るから!」とか言っていたりアリサが「うそッ!? 散々なあの『組織』だの『機関』ってマジだったの!?」とか言ってたくらいでおおむね原作通り。
強いて言うならフェイトが闇の書の中に囚われた事件は感動イベントとかなしで力任せに脱出したことは原作通りではない。

その後も「せやけどそれも私や」と過去の痛さを肯定したはやてが管制人格に『祝福されし東方からの風(リィンフォース)』と名付けて脱出、みんなで力を合わせて原作通り。
そしてリィンフォースも消滅し、時は高校卒業まで飛ぶのであった……。














☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆













今日は久々にあのとき「闇の書の闇」を消滅させたメンバーで同窓会。聖祥大学附属高校の制服を着て、玄関でローファーを履く。
土間の上からヴィータに見送られ、庭で水を撒いていたシャマルに声をかけ、自分の足で走り出す。

――何故か犬の散歩みたいに二人一緒に外に出ていた、シグナムとザフィーラに出掛けにいってきますを言うのも忘れずに、や。

八神はやて18歳、高校卒業を契機に完全に管理局入りを果たします……。




しかし、実は地球はかなり微妙な位置に居たりする。
魔法が無いかと思うと人工的にインヒューレントスキルを発現させる生命操作技術を保有していたり、魔力によって己の肉体をより強靭に成長させる種族がいたり――すずかちゃんが管理局に協力して判明した。
大々的に接触することは少ないものの、裏社会にはだんだんと『管理局』の名が通じ始めてきていゆうことは確かや。

そんな危険なんだかよくわからん次元世界の出身ゆうことで、私は恩恵もあったがいろいろ苦労もした。
けどなかなかの地位に食い込めたはずや。無論、まだまだ上に行く気はあるけどな。



「おはよう、なのはちゃん」

「あ、おはようはやてちゃん」

なのはちゃんも同じく、卒業後管理局一本に絞る組や。
長く続いた厨二病もどうにか完治し、ごく一般的なエース級魔導師として活躍しとる。
また、地球が要注意世界に位置付けされた証言を提供した人物としても注目されており、今なお『総合絶霊雄能力者管理局』は捜し求められている。


「なぁ、なのはちゃん。高校卒業を区切りにそろそろ厨二病だったことを管理局の人に打ち明けたほうがええんちゃうか?」

「そう言われても……、もうここまで来ちゃうと引っ込みがつかないよ。あ、ほら、探し続けてたら意外とどこかで見つかるかも、にゃはははは……」

「せやな……、今じゃ大国には捜査部隊が支部つくっとるもんな……」


実際、自分の妄言の一言で地球の運命が変わりまくってる今、全部妄想でしたとか言えるわけもない。

私のときの暗黒魔術だって、放っておけば本当に世界丸ごと滅ぶもんだったというから始末が悪い。

最低就職年齢の低いミッドチルダには厨二病がないというのも災いした…。




「はぁ……、まったくもって、世界はこんなはずじゃないことばっかりだよ……」



「せやな……」





春風に花弁舞い散る祝福の雰囲気の中、私となのはちゃんの空気はそこだけ暗く、二人で揃って溜め息をついたのであった……。




























 あとがき
邪気足。As時はやての最大の特徴と言えばやはり足が動かないこと。だったら無意味に包帯巻くしかない。
だがなんだ都築ワールドの恐ろしさは! 別に意図したわけでもないのに厨二病な妄想が殆ど間違っていないなんて、正直『管理局』ネタ意外全部無意識の一致だったよ!

というかこれ、今日までに書かないと続かないという時間制限だったんですが、正直丁度良かった感があります。これ以上続けろとかもうマジ無理ッス。既に厨二戦闘シーンを書くだけの余裕も無いッス。というかリアルもあるんでしょうが吐いた原因のストレスの内の何割かはきっとこれです。
なのでこれをもって完結とさせていただきます。GWあたりにStS(エリオ編)とか来るかも知れませんが、そのときはまた共にHPを削る心中メイトとしてよろしくお願いします。



[17018] 高町なのはじゅうよんさいThe movie 1st
Name: ネイチャー◆4594b8fb ID:65ffb246
Date: 2011/09/09 21:25


「はぁ……」


今日も今日とて書類を片付けつつ、高町なのはは溜息をつく。
上がってくる報告は当然、『総合絶霊雄能力者管理局』の調査報告だ。

若き日、8年ほど前になのはが『病気』を発症してうっかり公開してしまった巨大な秘密組織の名前、その名も『総合絶霊雄能力者管理局』。今でも思い出すだけで悶絶モノの、中学生時代の恥ずかしい妄想の断片である。
誰しもに存在するとは言わない。持ってる人は持っている、そしておもむろに葬り焼き捨てる、そんな思い出にすぎない。思春期の頃にポエムのように思いついては、よく精神統一なんてしたものだ。そんなものも時が過ぎればただの笑い話へと昇華される

――だが断じて、これは14歳ごろに書き溜めたノートなどではない。真面目に存在して次元世界の平和というものを守っている、時空管理局の報告書だ。

だというのに思春期の少女の妄想単語がずらずらと並び、大真面目に考察が成されている。――しかもなまじそれらの手がかりと目される存在の尻尾がたまに捕まるのがタチが悪い。
今日もなのはは、『龍』だとかいう組織が何かに繋がっているだとか、アスレチック競技の大会で優秀な成績を修める日英ハーフの中学生が終業式の日に行方不明になっていただとか、それぞれ妙な曲解を経てすべてが『総合絶霊雄能力者管理局』に繋げられた三流ゴシップ誌のごとき内容の陰謀論を立場上、勤務時間中は読みつづけることになるのだ。


「なのはなのはー」
だだだだとキーボードをブラインドタッチで打ちつつ振り返ったのは、ブロンドの長髪を後ろに流した、透き通るような白い肌をした美人。
――とはいえ、その雰囲気は凛々しいとか美しいとかより先にかわいらしいなどという単語が囁かれそうだったが。

「頑張れ!」

びっ! と親指を立ててサムズアップ。

「アリシアちゃん、そんなあ……」

なのははへなへなと崩れ落ちた。

管理局の籍はフェイト・テスタロッサ。公称フェイト・テスタロッサ。でも親しくなった相手にはアリシア・テスタロッサと呼んでもらいたいという面倒な状態であるアリシア。
もともとフェイトというのは一種の厨二ネームだったのだが、一度死んで蘇った身なため、同じ名前を使うことは無用なトラブルを呼びこむことにしかならない。故に公式にはフェイト・テスタロッサとしているのだ。
厨二ネームとはいえ、自分で名付けたものではない上に一種の芸名のようなものだと認識しているため、アリシア自体はそこまでダメージを受けるような事態にはなっていない。

「まあまあ、まだまだ読まなきゃならない報告書はいっぱいあるんだからさ? お願いしますよ、対総合絶霊雄能力者管理局部隊アドバイザーの高町なのは一等空尉さん♪」

「うにゃあああああ! そんな立場投げ捨てたいよう!」

「またまたぁ、この就職氷河期に職を捨てるだなんてとんでもないよー? ほれほれ、諦めて次を読みんしゃい」

余裕と悪戯に満面の笑みを浮かべ、チェシャ猫のようになのはをいじり倒す。
管理局 第8発展途上魔法文明保持世界地球、日本支部での業務の内で最も重要な部分であることも事実であるため、実は正論でもある。叩いても埃は出ないとわかりきってはいても実際にヤバい連中は実在するのだからどうしようもない。
涙を飲んで書類に視線を戻すなのはの顔は、羞恥心と過去の自分への憎悪がミックスされて修羅になっていた。

「なのは、コレマジモノっぽい」

アリシアの顔が執務官のソレになる。ゴシップ誌がごとし報告書をしこたま洗い出すとたまに見えてくるソレは、実際に地球の平和を維持するために必要となってくるのだ。
今度は米国で行われる地下核実験についてかぎつけてきたらしい。なんでも、ただ核実験だというだけでも問題だというのに魔法的な制御の為された次元震誘発型だとかなんとか、一歩踏み込んだ感じにアウトなシロモノだとか。
かように地球駐在の管理局員はよく鼻が利き優秀なのである。ただどんな報告の後でも「以上より"機関"の関与が疑われる」で締められるのが玉に瑕だが。本人は大真面目らしいけれど。

精読し、そんな馬鹿げた技術を支援したパトロンについて、その件の金の流れについて追っていくと、一定以上は闇に隠れて消えてゆく。想像以上に危険な連中が地球にはたむろしているらしい。らしいのだが…………。

「こういう人たちがいるから、私の戯言をみんながいつまでも忘れてくれないんだよぅ……」

「まあまあ、なのは。これ放置してたら地球はもっと火種いっぱい夢いっぱいだったかも知れないんだしさ、元気だしなよ! なのはの妄想が地球を救ったんだよ!」

うぷぷぷぷ、とアリシアが腹部を抑えて痙攣する。他人ごとじゃないくせに心の棚が広い女であった。
もう知らないとばかりにぐてーっとへにゃけたまんまで、なのはは仕事を続ける。
そのまま処理し、背後に何かへの繋がりが見えるケースを洗い出しては確認、洗い出しては確認を繰り返していると、一通のメールが届いた。

差出人は親友、八神はやて。仕事用のメールアドレス。

受け取り先は高町なのは。これまた仕事用のメールアドレス。

資質面や騎士の活躍などによってのし上がり、今では自分の上司に当たる親友から仕事に関するメールが届くのは珍しい話ではない。
だから、いつもの通りの仕事メールだと思って開いた。


『時空管理局PR映画に出演が決まったで』


最初は何の冗談かと思った。
ただでさえセクハラと冗談が多いはやてのことだ、このメールもまた冗談の一種だろうと、一瞬誤認した。


『それも主演決定や。むしろなのはちゃんとアリシアちゃんの出会いをノンフィクションでやる……というか、15歳のときに出しとったノンフィクション(笑)小説をまんま映画化するとか』


でも、八神はやてはこういった仕事の関連に冗談は挟まない。
万一それでミスが起こっては惨事だし、冗談で済まなくなってしまうからだ。だから一線を越えることはない。


『広報部は最近の広告塔に困っとる。ここらで一回、エース・オブ・エースの盛り返しをして管理局の求心力の復活を行いたいみたいや』


だから、これはきっと確定事項なのだ。


『高町なのは、フェイト・テスタロッサの二名に告ぐ。"魔法少女リリカルなのは The movie 1st "に出演せよ』



管理局は半ば軍隊家業だ。上司の命令には逆らえない。






これが悪夢の再開の始まりだったんだと、なのははのちのち回想するのであった――。












高町なのはじゅうよんさい~The movie 1st~ 、始まってしまいます。














☆あとがき
Movie 1stをツタヤで借りました。なのはさんマジバケモノっす。



[17018] 死に至る傷を抉りし者(カントク)
Name: ネイチャー◆4594b8fb ID:3d326507
Date: 2011/09/10 18:07
この広い世界には、幾千も、幾万もの人がいて――

そしてそれ以上に―― たくさんの出会いと、別れがあって――

これは、小さな事件と出逢いのお話。



中学2年の春に出会った、小さな―― だけど大切な、私たちの始まりのお話








★★★★★★★★★★★★








今日は打ち合わせだ。原作者にして主演になる高町なのはと、同じく主演でノンフィクション小説の当事者でもあるフェイト・テスタロッサが会議室に呼ばれている。



「このようなモノローグから入ると、未開文明にあった少女と魔法との出会いっていう雰囲気が出ると思うんスよ」

「あっ……、そうですね」


なのはは意外とまともで安心していた。若干怪しいけれど、これくらいなら許容範囲だった。
そうだよね、いくらなんでも思春期まっただなかの青々(毒々)しい小説まるまる映画化なんてしないもんね、と安堵の溜息をついた。一時はいったいどうなることかと……。

「ではこの内容でよろしいでしょうか。4年前に発売された手記を参考に表現をいじらせていただきましたが」

「はい、いいんじゃないでしょうか♪」

脚本家の提案になのはは小躍りしそうな気分だった。
一時は仕事とはいえ、あんな世に出版した分ぜんぶを回収したくなるような、自分を主人公にした(半ば創作な、世間的には)ノンフィクション小説を延々現実にするかと思って暗澹とした気分になり、図らずも2キロダイエットに成功してしまったなのはだったが、もうこの世の春がきたと言わんばかりにうきうきしている。いじらしい。

「いや待つんだケインくん、それは少しよろしくないのではないか?」

待ったをかけ、のっしのっしと太鼓腹を揺らして歩み出たのは監督。
なのはの頭に疑問が灯った。

いや、若干思い出したくない成分が含まれてるけど、マイルドで世間に公開するには良い方なんじゃないかなー、なんて素人ながら思うんだけど、なんて。


「この手記全体の構成を考えるに、まずはもっと詩的に長々と煽るべきだと思うぞ。そういった、叙情的で波乱に満ちた文意をキミは読み取れないのかね?」

「はぁ……、すみません、精進します」


そうじゃない! カントク! もっと他に言うことがあるでしょう!? 中学生のときに書いた文章の文意を真面目に読み解こうとしないでぇぇぇ!

まさかとは思うけれど、これからの文章全部を昔の私のアレで再現する気じゃ――! なのはは戦慄した。なんと恐ろしい男なのだろうと、この男は悪魔なのだろうか、と。

―― ぷくくっ……。

堪え切れなかった笑い声のような音波が聞こえた方に向き直ると、アリシアちゃんが不自然に強張ったキリッとした顔のまんま痙攣してた。死にたい。



しばらく何事かカントクと脚本家が話し合って、戻ってきた。

「では、プロローグはこっちの台本でお願いします」


改定されてた。








★★★★★★★★★★★★★★★★★






この広大な世界には、幾千も、幾万もの人間(ウゾウムゾウ)がいて――


そして其れ以上に存在する――無限に思える程の邂逅と、別離。運命を紡ぐ弦の名だ。



――此れは、平穏なる地球の終焉と、宿業との再開の御伽話



かつて日常を送る少女で在った頃の春に出会った、矮小な――しかし宿命を切り開いた、我らが始まりの御伽話――








★★★★★★★★★★★★★★★★★★









「このようなナレーションで入ると、物語の全体が引き締まり悲劇性も増すかと。表現は月間エースオブエース135号のインタビューを参考にしました」

「ぎにゃ……、ソウデスネ、ソノトオリカト」

「ではこの内容で決定でいいですね? 6年前に発売された手記を参考になるべく違和感なく仕上げられたと自負しております」

「うにゃ……、ハイ、この上なく再現デキテイルト思イマス……」

監督の決定に、なのはは悲鳴と悶絶を飲み込んだ。
内心(うにゃああああああああああ! そんな思春期な病真っ最中の頃に書いたモノローグを真剣に再構成しないでえええええええええええ!)などと悶えながら殊勝に頷くのも一苦労だ。
物語のプロの意見だから必要ないんじゃないかと迂闊に言うこともできず、黙りこくる以外の反応を返せない。


「では決定稿……と。では次!」








★★★★★★★★★★★★★★★★★★




昏い。そこを人間の言語で表現するならば、その一言以外に存在しないだろう。

何処とも知れぬ山奥で、その実験は行われていた。旧き力――絶雄霊波を研究し、統括する"機関"の秘密研究所で、幼き少女は今日もそれを施される。


「いいの? そいつを投与して……。私にその破壊の力を与えたら、必ずやあなたたちの喉笛を噛み千切るよ……?」


なのはは白衣の男たちに指示を出す、仮面をつけたその華奢な体を睨みつけた。

「ふん、やれるものならやってみるといい。愚かなる小蝿よ、汝、我を疵付けられるなどと思い上がるか?」


しかし、ヤツにはその露になっている唇を歪めてマントを翻し、挑発すら返す余裕があることになのはは歯噛みした。
伊達やはったりではない。その災厄と謂っても過言でないほどの力を、なのはは痛いほどによく識っていた。


――奴の名は"執行者 第壱拾参番 破滅よりの呼び声(アンシャン・レジウム)"。狡猾にして大胆不敵なる、旧き血を体内に取り込み自己進化を繰り返すバケモノだ。
その身に溜め込まれた絶雄霊波を解放することにより、指先ひとつで管理世界で"次元断層"と呼ばれる現象を引き起こし、その狭間に相手を突き落として消滅させるという超次元級の能力者である。


「くっ!」

なのはにはもう、加速剤(アクセラレイター)を湛えた針が動脈めがけて接近してくる事実を止める術は無い。
ひたり、ひたりと瞬くたびに迫ってくる先端をついに視界が認識できなくなったとき、体中が爆発した。


「ああ嗚呼あああああアアアアアあぁぁぁぁ嗚呼嗚呼ああぁああァァァァ!」


身体中から、意志の統御から離れた絶雄霊波が噴出する。そして古の"天を喰らうモノ(フェンリル・カルニバル)"の術式の形を取り、在りと在らゆる存在を噛み砕き、千切り飛ばし、終焉へと誘ってゆく。
無論、それは術式を抑える拘束具も対能力者を視野に入れて開発された封呪印(アンチセプト・シール)加工された研究所も例外ではない。
そしてやがては、空間すら喰らい、対消滅を起こしてゆく――!

「ぬ、まさか此程とはッ!?」

滅の闇が"破滅よりの呼び声"を包む。しかし彼だけは死せず、唯マントの先が粉砕され、仮面が消滅しただけにすぎなかった。


「はは……ははははっ! そうか! 貴様こそが『封印の始祖(ミズガルズオルム)』……『殺神』の本質を秘めし者かッ!」

無明の光の中、素顔を晒して"執行者"は笑う。
して、その顔は――、その造作は――ッ!


「そんな――なんでお兄ちゃんが――っ!」


そう、最愛の兄――高町恭也の面立ちと瓜二つだったのだ……!





★★★






「ゴヘァァァァァァァっ!」

『高町さん!?』

「ああ、なのはが奇声を上げながらブリッジで倒れたっ!?」

配られた仮脚本のページをめくるや否や頭を抱えてエビ反りで倒れるなのは、会議室騒然、アリシア実況。

「うにゃあああ……」

「しかも後頭部強打で痛がってる! これは痛い!」

基本的に面白いものに引き寄せられる猫系人間アリシア。
いい加減慣れてきたとはいえ、友だちが悶えてごろんごろんする姿はさすがに面白いものという分類に入ってしまう。
一瞬仕事を忘れて煽りそうになったが、執務官としての鋼の自制心でどうにか持ち直した。


「えっと、高町一等空尉は絶雄霊波能力者統合管理局の記憶処理の後遺症が残っているため、あまりそのことについて触れないように願います」

持ちなおして、友人が特定単語を耳にして突発的に悶えることを抑えられなくなったときの言い訳を口にした。もちろんなのは完敗、ダメージは悪化である。

『そうか……』
『お気の毒に……』
『後遺症まで残すとはなんと非道な組織だ……』

しかしその効果は歴然、スタッフの奇異の目は一瞬で申し訳がなさそうな目と不憫なものを見るような目にメタモルフォーゼ。温かい理解の手にみんなハッピーだ!
ただし万能の一手であるが、使えば使うほどに"機関"の存在が信じ込まれてゆき、なのはの記憶にもあの黒歴史の日々が復活してゆくという諸刃の剣である。多用すればきっと自分すら滅ぼすことになるだろう、主に社会的に。

「わ、私に……あまりそのことを思い出させ……ないで……」

ぜえ、ぜえと息を荒らげながら机に手をつけて起き上がったなのはに、会議室は震え上がった。
そんな、そこまで壮絶な経験をしてなお高町一等空尉は管理局に勤め続けるのかと。
そして絶雄霊波総合管理局――略して"機関"と戦い続けるのかと。

会議室にいた誰もが、"紅塵(アッシュ・オブ・ムスペルヘイム)"高町なのはの決意と意志力に慄いていた。

無論、アリシアだけはニヤニヤを抑えて不自然にキリッとした表情だったが。




閑話休題。




「それで、今のシーンは何ですか?」

まずなのはが一歩踏み込んだ。そんな事実が存在しなかったシーンを挟んでも、物語上必要とは思えなかった。

「え? 小説の『第零章~禍々しき序曲(プレリュード)』のシーンをそのまま使用しましたが、何か不自然な点でもありましたか?」

なのは完敗。撃沈。

「ところで、現状出ている2巻までではこの、執行者の顔が高町さんのお兄さんに瓜二つという点が謎となっているのですが、後に関わってくるのですか?」

脚本家追撃。なのは痙攣。

もちろん意味なんて無い。中学の授業中に窓際の席でぽかぽか妄想しているときにふと、『お兄ちゃんって目付き悪くて声も渋いし、悪役っぽいよねー』とか思っちゃったのがすべての始まりだったんだから伏線でも何でもない。

「その点は現在、"機関"の追跡中のため続報はありません」

アリシアもいい加減、なのはの妄言を事実として押し通すことに慣れきっていた。上手くほのめかして追求を避けるための熟練度が無駄に上昇している。
現在調査中という建前も、所属が所属だけになんとも言えぬ説得力を醸しだす。嫌な感じに熟練の業だった。


「では、これ以上真に迫りすぎては高町さんの心が壊れてしまいかねないため、これはこのまま決定でいいですね」

『異議なし』

「ちょ……私、異議が……」

「なのは、仕事に私情を挟んじゃダメだよ」

満場一致するスタッフたちに抗議しようとしたなのはの肩を不自然に凛々しい顔のアリシアが掴んで止める。さっきから笑いを堪らえ過ぎていい加減頬の肉がバカになりそうなだけだった。ディバインバスター撃ちたい。





それから先も、脚本家によって毒の抜かれたなのはの小説に監督が毒を込め直す作業が続きに続き、小休止までなのはの精神はめたくそに殴られ続けるのであった。






☆あとがき
劇場版は高町なのはという人物の描写を削り、フェイトと事件背景とバトルの描写に当ててるんですね。
なのはの悩みやなにかはバッサリでした。ですがこちらの主人公はなのはなわけで……。



[17018] 修羅ニ魅セラレシ者(嫌なファン)
Name: ネイチャー◆4594b8fb ID:e42ccb08
Date: 2011/09/13 01:18
我が名は高町なのは……。人呼んで”紅塵(アッシュ・オブ・ムスペルヘイム)"。かつて"機関"の支部を破壊し、実験体として使い潰される未来から逃れた"異端者(エグザイル)"だ。

異端者が異端者である理由は、それが日常に一滴の毒を垂らし得ることだ。


その意味で言えば、"高町なのは"は間違いなく異端者なのであった。




その異端を隠し、牙を自ら丸めて日常に潜伏する。

そんな日々の単純作業にも、もういい加減飽き飽きだ……。




――そんな折、ひとつの夢を見たのが事の発端なのだろう。




★★★★★★★★★




「戦闘シーンのある魔導師以外は、幻影魔法と変身魔法で対応する方針で行こうと思います」

「大賛成です!」

キリッと眼鏡の蔓を押し上げる女性演出家の方針打ち出しに、なのはは一も二もなく飛びついた。
親友二人にこの映画の存在がバレるどころか制作に一枚噛まれることを考えれば、まさに天恵と言っていいほどの提案だ。演出家の背中に光背が見えるよ。嗚呼、彼女が天使か。


「本局広報課から変身のインヒューレント魔法持ちの魔導師……名前はドゥエ・スカリーエイツさん、が派遣されるそうなので、実体や台詞が必要な場合はその方に演じていただこうかと」

ありがとう、ドゥエさん。貴方こそが私の希望です。
なのはは感謝感激の雨あられで本局の人事に精神的に五体投地で感謝した。なんか最近戦闘機人関連で聞き覚えがあったような気がするがきっと気のせいだ。


「いや、待ちたまえドロシーくん。我々は地球系映画のパイオニアだぞ」

なのはは猛烈に嫌な予感がした。前に出てきたのは太鼓っ腹の監督。映画作りに拘りを持ち、作者の文意を最大限汲み取ることをよしとした原作ファン、新規参入者ともに納得するような良作映画を数々手がけてきた構成のプロだ。
現在は作品に対する真摯な姿勢が、絶賛なのはに牙を剥きまくっている。


「変身魔法の使用は認めよう。だがしかし、個々の人物まで幻術や変身による合成では画に重みというものが出ない。君たちフィルムに関わる者なら皆知っているだろう?」

会議室の面々は皆、沈黙した。なのはは悪寒で沈黙した。アリシアは面白いことになりそうなワクワク感で沈黙していた。

カントクの情熱は収まらない。顔を真赤にして、彼はなお語りかける。

「あえて言おう! 良質の画は、極限のリアルと研鑽の上に生まれるのであるとっ!」

まるで荒波のように猛る監督の演説。その圧倒的な迫力と説得力が会議室を制圧する!

「真なる友情と演技の研鑽、そして幻術に頼らない直の画像! それを、この華々しきエース・オブ・エースの映画シリーズ第一作の基幹に、私は据えてみたい!」

「しかし、時間対効果と今後映画化する分のスタミナを考えると……!」

破壊的な監督の演説に、演出家は今にも吹き飛びそうだ。
しかももうシリーズ化すること前提だった。1stとか言ってる時点で薄々気づいてはいたが、あんまり現実を見せないでほしいなーとなのはは遠い目だ。

「スタミナ……? 時間対効果……?」

ぎしり。監督の右腕が骨のきしむ音を立てる。


「そんなものはどうでもいい!」

「どうでもいいの!?」

アリシアすらツッコミに回らざるをえない。

「我々は、今この瞬間、目の前にある作品に誠意を持ち、全力を注ぎ込まねばならない!」

「監督さん……」

実害を直接受けるなのはすら感動していた。
素晴らしい気骨、素晴らしいプロ意識! 思春期の負の遺産だなんだと、尻込みしていた自分を後ろめたくすら感じてくる。


「そして何よりも!」


監督のテンションが、会議室の熱が最高潮を迎える!


「我々はなのはさんのファンだっ!」

「ふぇっ……?」

目が点。


「お前たちは何故、このような未開拓ジャンルに志願した? 金のためか? 仕事が無いからか? ――否、違うはずだ! 其れはもっと原始的な感情――我々は、かつて、”紅塵(アッシュ・オブ・ムスペルヘイム)"高町なのはに恋をした同志であったはずだッ!」

『応おおおォォォォォ!』

「えええええええええええっ!?」

初耳だった。しかもなんか集団告白された。

「異議のある奴は前に出ろ! かつて我らの愛した”紅塵(アッシュ・オブ・ムスペルヘイム)"の物語は今、我々の色直しを待っている! さあ、我らが魅せられた物語、その主人公は誰だ!?」

『アアァァァァァァァァアアアアアッッッッッッッシュ・オォォォォブゥ・ムスペルヘェェェェェェェイムッッッ!!!』

「ぎにゃあああああああああああああ!!!」
告白は告白でも黒歴史な部分を崇拝された!


「我らが高町なのはに相応しき未来とは何だッッッッ!?」

『ファァァァァァァァァァイトッッッッッッッッッッ・エェェェェェェンドッッッ・グロォォォォォォォォォォリィィィィィィィィィィィィィィッッッッッッッッ!』

闘争と栄光。第11章のタイトルであった。スタッフ全員完璧に読み込んできているとは原作持ちの鑑である。


「ならばいざ往かん! 妥協なき闘争の物語、そのプレリュードへッッッ!」

『YEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHH!』

ぞろぞろと会議室の扉を開け放ち、統制された動きながらも暴徒のような熱が篭もった行進でスタッフは駆けてゆく。
なのはもアリシアもただ単にポカーンとしていた。と言うか唖然とする以外のリアクションの取り方がわからなかった。



けたたましい嵐の去った会議室、そこは出された紙コップのお茶と踏み荒らされた机と椅子、それから管理局から出張してきたふたりだけが残るがらんどうだった。

「でさーなのは、コレ、どうすればいいんだろー」

「わからないよ、そんなの……」

分かる奴がいたら今すぐ呼んでこい。
何故か建物の周りをランニングし始めたスタッフを理解できる者はここにはいない。なぜなら、理解できる者は全員あの中に混じっているからだ。


「とりあえず、先読んじゃお?」


雪だるま式に人数の膨れ上がっていくスタッフ一団から視界を外し、アリシアが仮原稿をめくると、そこには戦闘シーンについての仕様が企画されていた。
即ち、『魔法戦闘は完全リアル志向、決め台詞を叫ぶことは必須とし、その他は高町なのは、フェイト・テスタロッサ両名に一任する』

技名必須。でもまあ、なんだかんだいって技名を口に出すことはデバイスの音声入力システムにより一般的なものとなっているから問題ないだろう。


それよりもだ。

「私、そんな草案とか用意して来てないんだけれど……」

「あ、大丈夫だよ、なのは。私が既に練ってきた」

でん、と懐からデータ端末を取り出し空中にディスプレイを投影するアリシア・テスタロッサ。


『撮影は殺陣ではなく模擬戦形式で行う。細かい工程を煮詰めるのではなく、模範的な空戦機動と臨場感を求め、戦闘資料としての付加価値を求め購買層を広げることを目的とする。なお擬似ジュエルシードモンスター、機械兵は管理局に技術協力中のプレシア・テスタロッサの監修のもと生成する』

どさくさでお母さんを協力させてた。次元犯罪者(次元断層は未遂で終わっていた)を引っ張り出すなど無茶が目立つが、本当に大丈夫なのだろうか。

まあ実はそのあたりは問題ない。
遺伝子利用により人造魔導師(?)、戦闘機人技術を無意味に進歩させ最高評議会に覚えの良い地球組な上、名門であり闇の書を止めて二階級特進したハラオウン家の後ろ盾もあるのだ。相当に無茶苦茶できる体制である。


「ちょっと待って、ひょっとしてこのままの話の流れで行くと……、ユーノくんやクロノくんもアリサちゃんもすずかちゃんもみんないて、その前で叫びながらアリシアちゃんとガチンコするんじゃ……」

「うんっ、大正解☆」

ゴンッ! なのはの額が机に落ちた。痛い、二重の意味で。
そんななのはに構わず、アリシアはさらにページをめくった。



『"機関"のシーンは極力薄暗くし、何が起こっているのかを視聴者に』

「次めくって」


たぶん消えることになりそうなシーンだ。なのはは読み飛ばした。




★★★★★★★★★★★★★★★



暗い、昏い、漆黒に包まれた一室 ――。

"尋常なる少女である"高町なのはのために存在する、ありとあらゆる家具、装飾。
華やかかつ賑やかで暖かな彩りを視神経に伝えるはずの部屋は、だがしかしどこか空虚な印象を見る者に与える。

――がらんどう。

そう、この高町なのはの私室は、彼女が擬態し、一般人の間で生きるための隠れ蓑でしかない。
そんな中で一人の"異端"が、その仮面の下に隠した刃を静かに研いでいた。

「ふっ! ――ふっ!」

瞼の裏に浮かぶのは、あの刹那に垣間見えた"執行者"の戦闘機動。嵐よりも鮮烈で宵闇よりも静謐な、在りと在らゆる"命脈"を刈り取り冥界へ連れ去る異形の戦闘概念……。
彼女が相手にするのは、そのリプレイでしかない。だが、その虚影(ウツロ)は確かに現実感を伴い、彼女の前に立ち塞がる。

なのはが拳を突き出せば、流水のごとく受け流し首を狩りに黒刃が閃く。
ならばと体勢を落とし首を縮め、絶雄霊波を収束しながら突き出した貫手は二指に挟まれ、宙に静止する。

「――勝てない」

圧倒的――あまりに、"執行者"は圧倒的だった。記憶にあるだけの戦闘機動すら今のなのはには抜くことが出来ない。

――なのはがその身に秘めた絶雄霊波の総量は確かに、"執行者" 破滅よりの呼び声(アンシャン・レジウム)にすら迫る。

だがその膨大さが此処に来て重荷となっていた。
暴走を一度経験すらした絶雄霊波は、とてもではないが人間に制御できる領域を遥かに越えていた。制御してこその"災厄"クラスではあるが、其の為には人間を完全に捨てる必要すら出てくる。

――即ち、全人格の消滅。

人間のままでは制御できない膨大なエネルギーを制御するならば、人間の感情と言う名の電子反応すらリソースとして扱うしかあるまい。
だが、それは高町なのはにはとてもではないが受け入れられるはずもないことであった。


「復讐心さえ残るのなら――今すぐ全てを捨て去り、奴を殺すための"現象"と為り果てても構わないのに……」


そう、ヤツを殺す。
其の為に、私は生きている。

――制波紋章(デバイス)でもあれば、話が変わってくるのに……。



そんな……


そんな折だった。




――高町なのはの情報風蝕(メルクリウス・アスク)に波紋が投じられたのは。











☆あとがき
以前のような触るもの皆傷つけるような鋭さが足りない……。
クッ、奴らに飼い慣らされすぎたようだな……!

良心的な魔法小動物さん(比較対象:虚淵世界の白いの)の出番は少しお待ちください



[17018] 無手の勝利(ヤラセ)
Name: ネイチャー◆4594b8fb ID:e7ed4cf4
Date: 2011/09/20 04:52
朝食にと"火刑へ架されし胚(サニー・サイド・アップ)"と"受肉聖体(ブレッド・オブ・グレイン)"を腹に詰め込み、平然と日常を満喫する愚昧な親兄妹どもへ冷たい視線を送りながら、何事も起こさず家を出る。
今日も万事こともなし。微温湯のように暖かく、胎内のように閉塞された幸福な生活を楽しめる、ただ其れだけの権利。

そう、結局は全て擬態。人並みに抑えた身体能力も、にこやかな笑みも、全ては虚構であった。
しかし仮面も貫き通せば素顔となる。"昼"の高町なのはは現在の日常に満足し、次第にあの過去も、力も忘れ去ろうとしていた……。

――だが、何故だろうか。

何かが足りない。何も不足など無い、無い筈なのだ。しかし満たされぬ。
腹の底から沸いてくる、全てを破壊する飢餓の衝動が暴発しようと体内でうなり、荒れ狂い――。

「オ、オハヨウ、ナノハ」

終には爆発しそうになったその時、鮮烈な朱の気配を纏った少女が目の前に現れた。
並行し、荒ぶるその御霊がしっとりと冷え固まり、凪いでゆく。

――そう。全ての荒ぶる力を鎮める万色の霊力、それこそがアリサ・バニングスの異能。

彼女がいなければなのははとうにその擬態を破り、暴走。破壊の権化としての本性を露にしていたことだろう。

「おはよう、なのはちゃん」

ふんわりと笑いかけてくるのは月村すずか。血塗られた歴史を持つ影の帝王こと夜の一族に連なる"黒姫(オルタード・ジ・エンプレス)"の一人である。

「オハヨウ、アアアアリサチャン、ススススズカチャン――明日ハ未ダ来ズ、ダネ」

「ウ、ウン、ナノハ」

そう、異常な人員――。
虚構の関係――。
けれど、それが構成する確かな平穏――。


これが、高町なのはの確かなる日常なのであった。








「カァァァァァット!」




★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★





「高町さん、バニングスさん、何やってんの!」

『すみません!』

監督の檄が飛んだ。
そりゃあそうだ。なんか動きはギクシャクしてるし、台詞も棒読みというかもっとひどくて油を差してないブリキみたいな声だった。
適当な大根役者を連れてきたってもうちょっとマシな演技をするだろう。そもそも演技を恥じる時点で役者として成立してもいなかった。

「まあねえ、監督である私自身も、ある程度このような事態を想定して出演料を出し、キミたちには参加してもらった。けれど仕事として、本気で打ち込んでもらいたい訳だよ」

でっぷん、と腹を揺らして監督が唸った。正論である。あまりにも酷な正論である。正論は時に人を傷つける、というか傷をスコップで掘り返していた。
ぐりぐりと古傷をえぐられながら二人はぐうの音も出ずに黙り込んでいた。


『あんた、なんてもの持ちだしてくれてるのよ! 映画撮るっていうか黒歴史発掘会じゃない!』
『私だって嫌だったんだよぅ! こんな昔のものが今更出てくるなんて想像できるわけないでしょう!?』
『だあああああ! それでも火種を作ったのは過去のなのはじゃない、結局あんたのせいよ!』
『でも設定自体はアリサちゃんが昔自分で言ったものじゃない! 全部私に押し付けないでぇぇぇ!』

念話でもないのに目線で言い争えるあたりまことに深い親友関係を築いていたようである。もっとも醜い争いに発展してぐだぐだになっているところまで含めて仲が良い。
すずかはそんな二人を遠くから眺めていた。発症経験が薄い彼女にとっては微笑ましいやりとりでしかなく、昔を思い出してほっこりしていた。いやあ、あの頃はアリサちゃんが毎日のように悶えていて可愛かった……。少々危ない人である。

「それにしても、本当にこの頃の私は……」
「いやいやいや、平気だって母さん! 私もちょぴっと混乱してアレなことばっかしてたしさ!」
「そうだよプレシア! あの頃は気付くほどの余裕なかったけど、なんだかんだ言ってアリシアもアリシアでビミョーに鞭で打たれたりするの楽しんでたしさ!」
「……さすがにそれはどうかと思うわよ。母さんどこで育て方を間違ったのかしら」

一方、まだまだお役目のシーンではないテスタロッサ家は談笑していた。普段は治療と観察処分でそれどころではないプレシアがいる分、賑やかさは拍車をかけている。

「プレシア、人口暴走体の整備が終わりました」
「ありがとう、リニス。大道具さんへは?」
「報告済みです」

山猫の使い魔リニスにも仕事はちゃんと割り振られている。プレシアから再び渡された技術力と健康そのものな肉体を駆使して、プレシアの設計した演習用エネミー(代用暴走体)の調整を行う役だ。
プレシアは大威力の魔法を撮影で使うために体力を温存している。休むのが仕事というか休まないと仕事ができないのだ。流石に重病で気合だけで動いていたような患者が5年で完治するわけがなかった。

「それにしても、私たちが最もすれ違っていた頃を台本にされるのは辛いものがありますね……」

「そうだねぇ……、使い魔だしアリシアの気持ちも伝わってくるから、実はあたしはあんまり心配しちゃいなかったんだけどねー」

リニスが伏し目がちに呟いた。だがフェイトの使い魔であったアルフは楽観視していた。というかお気楽というか浸ってるのが伝わってきて余裕でしたありがとうございます。

「いやあ、母さんの鞭ってあんまり力入ってなかったりして気持ちいいし、雷の魔法ってピリピリしてイイんだよね」
「こらアリシア、それは変態の発言よ」

私が悪いからあんまり強く言えないけど、と頬に手を当て困った。思えば夫もややMだった。まったくあの人は、ろくな部分を遺伝させないんだからと憤る。もっとも露出が強かったりする服のセンスの遺伝元はプレシアであるためあんまり人のことを言えないのはご愛嬌。

「なつかしなつかしー。ホラホラ、ここの台本の『貴方のことが大っキライだったのよ!』とか」
「いやぁぁぁぁぁぁ! そんな所って!?」

親友だろうが母親だろうが、構わずに黒歴史を掘り起こしてニヨニヨするのはアリシアの性分だ。

「今考えるとプレシアは地味に優しかったしねぇー。アリシアが作った料理とかマズイマズイ言いながら必ず食べに来たりだとか」
「プレシアはあの頃、余裕のなさとアリシアお嬢様に焦がれる気持ちを抑えることが相まっていたようですから」

使い魔たちは肉をもぐもぐとかじりながら茶飲み話。アルフもリニスも好物は肉だ。肉食系ケモノ娘二人は、スコーンでも頬張るようなノリで軽々と肉を食らう。野生だ。
最近はペディグリーチャムに凝っていたのだが、流石に外聞が悪いので外では控えているそんな切ない今日この頃。











★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★







『この声が聞こえる方……お願いです、力を貸してください……!』


情報風蝕(メルクリウス・アスク)――そう呼ばれた技術が唸る。
既に"絶魔(バルトアンデルス)"の発する歪んだ絶雄霊波は捉えた。この程度、紅塵(アッシュ・オブ・ムスペルヘイム)の敵ではない"高町なのは"としての皮を脱ぎ捨てれば、瞬殺だ。

久々の血の薫り――芳しき闘争の気配に、黄金に寄せられる龍のようになのはは抗うことが出来なかった。

代々伝わる伝説の歩法――旋足によって残像を生み出しつつ走り抜け、瞬く間に現場へと駆けつけた。
――ひどく矮小な絶魔だ。
"執行者"ならば視線を向けた瞬間にはその闇気によって消えさってしまうような、そんな気配。この程度の相手に勝負を挑み、逃走に専念している精霊を助ける気などさらさらない。しかしリハビリにこの程度喰えずして、"執行者"を討滅など夢の又夢だ。


「天を……穿て――!」


――ならば今、一蹴出来ずになんとする!

制波紋章(デバイス)も持たず、彼女は二指を突き出した。――同時に心臓に仕込まれた"龍紋珠(アーク)"を瞬時に励起、開放する。
破壊の力と化した絶雄霊波が魔弾となりて、絶魔を吹き飛ばした。


「っ!? 魔導師!」

精霊――ユーノは驚愕した。
この世界、第97管理外世界には現地魔法文明は無かった筈。ならば現地に逗留していた魔導師か? ――否、管理局にそのような届けはない。最も高いのは不法滞在者である可能性だ。
不法滞在者だとしたらその目的は何か。決まっている、ジュエルシードの入手だ。


「違うよ――」

そう言って少女は不敵に唇を釣り上げた。掌を暴走体へかざし、そのまま魔力を一点に集中する。

「"紅塵(アッシュ・オブ・ムスペルヘイム)"――失われし破滅の刃だよ」

――遅い。その収束はあまりに遅すぎた。
だがこれが現在の"高町なのは"の限界値でもあった。あの暴走以来、すっかり牙を抜かれ堕落し切った己に嘲笑すら浮かんでいた。


「神を――殺せ――ッ!」

絶雄霊波の渦が"絶魔"を飲み込み、天へと吹き飛ばした。圧倒的――あまりに圧倒的。

「そんな……デバイスなしで魔力砲だって? 魔法の才能だなんて領域を越えている!」

ユーノは唯々己の感覚を疑った。こんな力、ミッドチルダでも滅多に見られたものではない。管理局の中でもエリートコースと見られるAAランク程度の砲撃魔法を無手で放ったのだ。
……それほどの威力の砲撃を放ちながらも、彼女は不満気に掌を見つめて鼻を鳴らしていたが。

そう、彼女は気づいていたのだ、上空に吹き飛ばされたあの"絶魔"が分裂し逃走に移ったことに。


「これで全て終わらせてあげる――煉獄の前に、桜花の如く散りたまえ!」

なのはの掲げた左掌に、桜色の絶雄霊波が吹きずさび、徐々に圧縮されてゆく。
激流の如き魔力の渦が次第に整列し、無差別に破壊をばら撒く魔神の憤怒ではなく秩序立ち計略持って射ちかかる狩人の砲へと変わる頃にはもう、ユーノの視界から外れるほどの距離へと暴走体は外れていた。


――だが、近い。

「聖を滅す終焉の灼光――、神を殺せ――!」

終焉を齎す光の渦が、3本に別れて絶魔を飲み込み――励起魔力を吹き飛ばし、刹那の内に封印を完遂させた。


紅塵(アッシュ・オブ・ムスペルヘイム)……」

ユーノは寒気すら覚える。助けを呼び、少女が応えた。しかし、本当にそれで良かったのだろうか?


眠れる――封印されし魔獣を呼び起こしてしまったのではないか?



そのような不安を覚えずにはいられなかった……。





「はい、カーット!」



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★






「リニス、OKが出たからフォーム2への換装、急ぎなさい!」
「はいプレシア!」

擬似ジュエルシードモンスターは換装型だ。ド迫力の魔法戦に対応するためにコアプログラムとリアクタ、ディフェンススキンの切り替えによって12の形態に変形できる。

テスタロッサ家の休憩は終わりだ。次の戦闘シーンに備えて演習モンスターの整備と、あとアリシアは変身魔法で14歳当時に外見を整える。





一方、現在演じていた側は変身魔法を解かないまままったりと休憩に入っていた。



「ふぅ、なんかスッキリしたよ……」

「お疲れ様、なのは。……いろいろな意味で」

と言うかなのはは砲撃をぶっぱなしてご満悦だった。
レイジングハートと一緒ではなかったが、準備段階から溜まりに溜まったストレスをぬぐい去るには十分なものだった。ストレスが溜まったらスポーツで発散♪ 実に健康的である。中身は野蛮人だが。

「ところで僕、初戦ってレイジングハート渡してたよね? どうしてデバイスなしでここまでやったの? 明らかに無理だと思うんだけど……」

亜麻色の髪に眼鏡の中性的な美男子、ユーノ・スクライア無限書庫司書官が素朴な疑問を挙げた。
というか彼の知る限り、初期のなのはのアレさは全部狂言だったのでそんなことができるはずがない。

「にゃはは……。なんでも監督が言うには、私が最初から強かったことを印象づけるためにやったんだって」

手をにぎにぎ開いて閉じて、レイジングハート抜きで魔法を使った心地良い疲れを堪能する。ストレッチした後にも似た爽快感を楽しみながらゆるゆると答えるなのはに、ユーノは嘆息した。


(いったん魔法戦になったりすると、興奮で叫ぶし夢中で戦っちゃうんだよね。こういうところが勘違いを助長してるのに……)





腕っ節は強くとも脳筋な彼女のそんな考え無しなダメダメポイントが、フェレット司書官の保護欲と男心を刺激して止まない。

でも出会いが出会いなのでいまいち踏み込めない。


司書官の恋がぐだぐだ長引くのは、割と大部分はなのはのせいなのであった……。















☆あとがき
この作品を書く上で一番時間のかかる工程は1年半前に書いた部分から設定と用語を拾い集める作業です。
過去の私よ、何故設定資料集を作らなかった。そりゃHPゼロだったからに決まってる。そりゃそっか、ゴメンナサイ。


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