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[15302] 【完結】リリカルなのは ~生きる意味~(現実→リリカル オリ主転生 最強 デジモンネタ)
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2015/01/12 02:39

前書き&警告





あけましておめでとうございます。
ゼロ魔版ととらハ版で、ゼロの使い魔と炎の使い魔とリリカルフロンティアを投稿している友です。
早速ですが、上記の2つの小説が行き詰ってしまい、気分転換に新しい小説を投稿する事にしました。




この小説を読むに当たっての注意点としては、


1、この上なく最強物です。


2、ご都合主義がオーバードライブします。


3、中途半端に原作崩壊すると思います。


4、勢いだけで書いています。


5、オリ主ですが、デジモンネタ満載になると思います。


6、その他にも、ネタが混じってくるかもしれません。


7、若干、管理局アンチになるかも知れません。


8、ハーレムです。



以上を読んで、気に入らない人は読む事をお勧めしません。

自己責任でお願いします。

それでも、読んでくれるという人は、お楽しみください。



[15302] プロローグ
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/01/04 15:51
プロローグ いきなり転生。いきなり(俺的)死亡フラグ。



ふと目を覚ました。

しかし、自分の視界に写ったのは自分の部屋の天井ではなく、真っ白な空間。

「何処だここ?」

俺は思わず呟いた。

昨日、確かに俺は自分の部屋で寝たはずである。

俺はしがない中小企業の会社員で26歳。

仕事の出来は最悪(クビにならないのが不思議なくらい)。

特技は特になし。

趣味はTVゲームとかアニメとか、インターネット。

特にデジモンが大好きだ!

インターネットでは二次小説を読み漁るのが毎日の日課だ。

最近ではリリなのにはまったな。

自分の善い所は思いつかない。

悪い所は思いつきすぎで書ききれん。

まあ、現実逃避はこのぐらいにしておこう。

「っていうか、このパターンって、二次小説でよくある転生とかそういう系の出だしにそっくりでは?」

俺が疑問に思っていると、

「気が付いたか?」

目の前に突然老人が現れた。

「うおっ!?何者だ爺さん!?」

俺は驚いて尋ねた。

「信じられんかもしれんが、ワシは神じゃ」

その言葉を聞いて、俺は一瞬呆気に取られる。

「マジ?」

俺は思わず問いかける。

「マジじゃ」

その自称神の爺さんは即答した。

俺は半信半疑だったけど、話を勧める事にした。

「それで、その神様が何で俺なんかの前に?っていうか、ここは何処?俺はどうなったんだ?」

俺はさっきから気になってることを尋ねた。

「う・・・・む・・・・・」

神様は、口を濁す。

「真に言いづらいことなんじゃが、お主は死んだんじゃ」

「は?」

神様の言葉に、俺は思わず声を漏らした。

「ワシの部下のミスでのう・・・・・・間違って殺してしまったんじゃ・・・・・・・因みに死因は心臓麻痺じゃ」

その神様は申し訳なさそうに言っている。

「・・・・・・そうか・・・・」

俺は、自分が死んだと聞いても、さほど驚かなかった。

まあ、死因が心臓麻痺と聞いて、何処のデスノートだよと思ったのは秘密だ。

「俺は死んだのか・・・・・・お父さん、お母さん、先立つ不幸をお許しください・・・・・・・」

俺はとりあえず親より先に死んだ事の親不孝を謝罪した。

「で、俺が死んだのはいいけど、俺の行き先は地獄?それとも親より先に死んだから、三途の川の畔で石を積み続けなきゃいけないのか?」

俺は気になることを聞いた。

「いや・・・・お主、其処は怒る所じゃろ?こちらのミスで死んだんじゃぞ。それに、行き先は少なくとも、その2択ではなく、天国か地獄かと問うところではないのか?」

神様は呆気に取られたように尋ねてくる。

「ミスなんて誰にでもあるでしょ?ミスを如何こう言う資格なんて俺には無いし。普段からミスを連発している俺はミスぐらいで怒るなんてしないさ。後者の質問は、俺は善人のつもりは無いし。故意的に悪い事はしようなんて思わなかったけど、俺の行動は、結果的に悪い方向ばかりに行ってるし」

今言った通り、俺は普段の仕事からミスを連発している。

やる事なすこと全てが裏目に出て、悪い方向ばかりに行っている。

「お主・・・・・後ろ向きじゃのう・・・・・・・」

神様は呆れたように言ってくる。

「純然たる事実だ」

俺はきっぱりと言い放った。

「寧ろ死んだ方が世の為になったんじゃないのか?めんどくさがりの俺は、これといって生きる意味も無かったし。生物として、一番大事な子孫を残すことも、26歳の身にもなって、恋人どころか、女の知り合いが1人もいないんじゃ話にならんでしょ?」

「そこまで言うかのう・・・・・・」

「まあ、俺が生きてたのも、俺を育ててくれた親に感謝してたからだし、死ぬのが怖かっただけだからな・・・・・・死んじまったもんは仕方ないさ」

「お・・・・・・お主・・・・・・・」

神様はでっかい冷や汗を流している。

よほど呆れたことであろう。

「つ~わけだ。ミスを如何こう言うつもりはないから、地獄でも三途の川の畔でも案内してください」

「だからお主は、何故その2択なんじゃ・・・・・・・」

神様はそうため息を吐きながら言うと、顔を上げる。

「まあ、結論から言えば、お主には転生をしてもらう」

「転生?」

「うむ、記憶を持った転生じゃ。第2の人生を楽しむと良い。それに、今の話を聞いて、おまけを付けることにした」

「おまけ?」

俺はそのおまけという言葉が気になった。

「それは後々分かるわい。今度の人生では、幸せになるように頑張るんじゃな」

神様がそう言うと、指をパチンと弾いた。

すると、俺の意識はどんどんと遠ざかっていった。

「あやつ・・・・・神を同情させるとはなんちゅう奴じゃ・・・・・・」








そして、

「おんぎゃーーーーーーっ!!(うぉおおおおおおおおおおっ!?)」

俺は新たな両親の元に転生した。


















はい、俺の名前はユウ・リムルート、3歳だ。

俺が転生して早3年。

赤ん坊の3年間は恥ずかしいの連続でした。

思い出したくも無い・・・・・・・・・

3歳になって、ようやくある程度の事は1人で出来るようになったので、あの恥ずかしい日々からおさらば出来たのだ。

そうそう、どうやらこの世界は、「リリカルなのは」の世界らしい。

時空管理局やら魔導師やら、ロストロギアやらの話をよく聞くので、ほぼ間違いないだろう。

因みに、俺の両親は2人とも時空管理局の局員で、両者ともSSランクのスーパーエースらしい。

父親がレイジ・リムルート、近接戦闘の達人で、母親がリーラ・リムルート、こちらは砲撃の達人である。

2人揃えば勝てない物は無い最強コンビである。

なんじゃそりゃ。






それで今日。

両親の仕事場である、本局に来ています。

理由は俺の魔導師適正の検査。

両親がSSのエリートだから、その子供である俺はかなり期待されているらしい。

まあ、確かに両親ともアレだからな、期待されるのは仕方ない。

少なくとも、リンカーコアはあるだろうな。

もしAAA~Sぐらいあったら、原作に介入するのもいいかな~。






とか思ってたときもありましたよ。

しかし、実際は、予想の斜め上を行った。

「ユウちゃん!凄いわ!SSSランクオーバーよ!しかも炎熱と凍結の魔力変換資質持ちよ!」

母さんが嬉しそうに言った。

「は・・・・・・・?」

俺は思わず声を漏らす。

ちょっと待て!SSSオーバーってなんだ!?

それに魔力変換資質は持っていたとしても1つだけのはずだろ!?

「凄いぞ!流石私達の子だ!」

父さんも嬉しそうだ。

しかし、俺は内心気が気でなかった。

この結果を聞いて、この世界が全く知らない世界だったら、「最強オリ主キタァ~」とか言って、飛んで喜んでいただろう。

だが、この世界には、なのはが・・・・・・既に「主人公」がいるのだ。

まあ、この世界が完全に「リリカルなのは」と同じとは思っていないが、それでもなのはに主人公補正がかかっている可能性は高いだろう。

故に、俺はこう言おう。










「何その死亡フラグ」















[15302] 第一話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/01/04 15:52

第一話 永遠の別れと新たな出会い



ウィース!6歳になった利村 ユウです。

え?名前が違うって?

運命の悪戯かあの神の悪戯か。

現在の家は第97管理外世界の地球の日本。

利村というのは、日本での苗字です。

両親、俺共に黒髪なので、十分日本人で通じます。

しかも海鳴市ですorz。

そして、今年から入学する小学校は聖祥小学校ですorz。

ん?何で6歳で小学生なのかって?

俺は早生まれで1月25日が誕生日なのです。

まあ、なのはと同じ学年なのかも分かりませんが・・・・・・

ごめんなさい、同じ学年です。

現在のミッドチルダの新暦から逆算すると、丁度なのはと同じ学年です。

なのはと同じクラスじゃないことを祈るのみです。

死亡フラグがまた立ちそうです。

え?何でそれだけで死亡フラグなのかって?

決まってるじゃないか!初っ端から主人公を超える最強キャラはそれだけで死亡フラグなんだよ!

RAVEのゲイルとか、ダイの大冒険のアバン(最後には復活したけどキルバーンがいなかったらそのまま死んでたって話だし)とかバランとか、武装錬金のブラボー(生きてたけど死なせるかどうかで悩んだらしいし)とか、初代ロックマンXのゼロ(X2で復活したけど死んだ事には変わりなし)とか・・・・・・・・・

強キャラは死ぬ可能性が高いし、運が良くても後遺症が残る重傷を負うことが多いから・・・・・・orz

主人公の傍にいる最強キャラ。

思いっきり今の俺は当てはまりますorz。

とりあえず生き延びるために魔法の訓練とか、筋トレとかも欠かしてません。

そこで気付いたんだが、今回の人生のこの身体、無茶苦茶スペックたけーんだよ!

鍛えればガンガン身体能力上がってくし!

頭の方も、一度覚えた事は忘れねーし!

頭がよくなったのは純粋に有難いと思ったね。

前世では即行で忘れる頭をしてたからな。

未だに前世の事をはっきりと覚えてるのがその証拠だ。

ああ、唯一つだけ欠点があったね。

それは、魔力の制御が無茶苦茶下手糞ってところ。

魔力の手加減ができないんです俺。

魔力を出したり止めたりは出来るんだけど、その調節が全く出来ない。

つまり、0か100かってこと。

そのお陰で、管理局が使ってる普通のデバイスじゃ俺の魔力に耐え切れずに木っ端微塵。

幾つ壊したか、数えたくも無い。

ただ、2つだけ俺の使えるデバイスがある。

俺の父さんが使ってるブレイズと、母さんが使っているアイシクルだ。

2人のデバイスは、2人の魔力を存分に使えるようにした特注品らしい。

詳しい事は知らん。

その2つだけは俺の魔力に耐えることができる。

まあ、それぞれ両親が使ってるから今の俺はデバイス無しってこと。

とりあえず、小学校に入学しても目立たないようにしておこう。







俺の祈りも通じず、なのはと同じクラスになってしまいました。

この時のなのははまだ根暗だったんだっけ?

と、思ってたんだが、そんなことはなかった。

しかも、なのはには双子の姉がいて、高町 桜と言うらしい。

髪型はポニーテールだ。

恐らくその姉がいた為に、それほど根暗にはならなかった模様。

それとも、士郎さんが重傷を負ってないだけか?

どちらにしても、やはりこの世界は「リリカルなのは」とは違うと確信。

しかし、高町姉妹共にAAAの魔力資質を持っているため、原作に近い流れになる可能性も否定できない。

まあ、余り係わり合いにならない方が身のためだろう。






入学して1ヶ月がたった。

正直、授業がつまらん。

元々勉強が好きではない上、既に知っている内容を教えられても子守唄にしか聞こえない。

しかし、授業中に寝るのは拙いので根性でおきている。

小テストも何回かあったが、目立ちたくはないので70点前後をキープ。

良くは無いが、悪くも無い点数だ。

これなら、アリサにも目を付けられる事は無いだろう。

その代わり、目立ちたくない一心で行動しているため、自然と存在感が薄くなってるのか、俺には友達がいません。

まあ、精神年齢30歳越えで、小学生と遊べというのも厳しいものがあるが・・・・・・






で、そんなある日。

昼休みに弁当を食べて、何となく校庭を散歩していた時、

「ッ・・・・い、痛い・・・・・・・」

そんな声が何処からか聞こえた。

俺はその声の聞こえた方に行くと、

「・・・・・・高町?」

なのはが足を押さえて蹲っていた。

どうやら、足を痛めたらしい。

「大丈夫か高町?」

まあ、見て見ぬ振りするのもカッコ悪いので俺はそう声をかけた。

「え・・・・・?」

なのははこちらを振り向くが、誰?といった感じだ。

「同じクラスの利村 ユウだ。まあ、俺は存在感薄いし、分からなくても無理ないけど」

「あ・・・・・う・・・・・ご、ごめんね」

「謝らなくてもいいさ。それより、足、怪我してるんだろ?」

俺がそう聞くと、

「あ、ううん。大丈夫!」

なのはは、慌てたように足を引っ込め、立ち上がろうとする。

だが、

「あっ!いっ・・・・・!」

直ぐに足を押さえて蹲ってしまう。

「ほら、無理すんな」

なのはの前でしゃがむ。

「保健室まで連れてってやるから」

俺がそう言うと、

「そ、そんな、いいよ迷惑だし。自分で行けるよ・・・・・痛っ」

なのははそう言う。

「・・・・・・はぁ」

俺はため息を吐いた。

この世界のなのはは、根暗にはなっていないようだが、迷惑をかけないようにと「いい子」でいようとしてるのは変わりないらしい。

治癒魔法を使えば手っ取り早いのだが、まだ魔法と出会っていないなのはの前で使うことは出来ない。

まあ、流石に此処でほっとくのもアレなので、俺は強攻策に出た。

「最初に謝っとくぞ。悪いな」

「え?・・・・きゃっ!?」

俺は有無を言わさずになのはを抱き上げた。

俗に言うお姫様抱っこである。

身体を鍛えているのでこの位は余裕である。

前世の俺では考えられんな。

「えっ!?あのっ!利村君!?」

思ったとおり、なのはは恥ずかしいのか顔を真っ赤にしている。

「ほらほら、騒ぐと誰かに見られる可能性が上がるから黙っててくれ」

「あ、あぅ・・・・・・・」

それで気付いたのか、縮こまって大人しくなる。

それを確認すると、俺は保健室へ向かった。





運良く誰ともすれ違わずに保健室に着いた俺は、保険の先生に任せて保健室を出ようとした。

「あ、あのっ、利村君!」

部屋を出る前に声をかけられ、俺は振り向く。

「そ、そのっ・・・・・・あ、ありがとう」

なのはは、顔を赤くしながらお礼を言ってきた。

「どういたしまして」

俺はそう言って部屋を出た。

そういえば、顔を赤くしていたが、

「もしかして・・・・・・フラグ立った?・・・・・・まさかな、ありえん」

俺は、一瞬よぎった有り得ない考えを即座に否定し、教室に向かった。







それから8ヶ月。

今日は俺の誕生日である。

両親は管理局のエースであり、忙しいが、この日だけは必ず帰ってくる。

なまじ俺が大人っぽいせいで、構っている時間は少ないが、その辺はちゃんと俺も理解しているので、関係が悪いという事は無い。

っていうか、誕生日が楽しみって・・・・・・

精神が身体に引っ張られてるのかな?

と、その時部屋の中に、転送用の魔法陣が浮かび上がる。

お、来た来た。

俺はそう思って、魔法陣から少し離れる。

そして、転移が完了すると・・・・・

――カツーン

「え?」

俺は思わず声を漏らす。

オレンジ色の宝石と青い宝石だけが転移されてきた。

そして、その宝石には見覚えがある。

「ブレイズ!アイシクル!」

その宝石は両親のデバイスであるブレイズとアイシクル。

「どうして!?父さんと母さんは!?」

『坊ちゃま・・・・・・・・マスターたちは・・・・・・・』

ブレイズが言いにくそうに言葉を紡ぐ。

「おい!どうしたんだよ!父さんと母さんは如何したんだよ!?」

嫌な予感がした。

『マスターたちは・・・・・・・・死にました・・・・・・・』

その瞬間、俺は頭の中に物凄い衝撃を受けた。

「おい・・・・・嘘だろ・・・・・?嘘って言えよ!おい!」

俺は思わずブレイズとアイシクルを拾い上げて叫んだ。

2つのデバイスは何も言わず、記憶したと思われる映像を映し出した。






映像には、とある無人世界と思われる緑に覆われた場所を映し出した。

そして、その中に存在する魔法生物とそれと戦う両親を含めた管理局員たちがいた。

だが、その魔法生物は強力で、まともに戦えているのは俺の両親の2人だけでしかない。

他の局員たちは次々と負傷し、戦闘不能になっていく。

そんな中、両親は魔法生物と渡り合う。

しかし、その魔法生物のスピードは速く、甲殻も硬い。

やがて両親も押され始める。

俺は、この魔法生物に両親が殺されるのだろうと思っていた。

しかし、両親は一瞬の隙を突いて、その魔法生物にバインドをかけた。

2人が全力を出して、何とかその魔法生物の動きを止められるようであり、両親も必死だ。

だがその時、モニターに両親の上司と思わしき人物が映り、

『これよりアルカンシェルを使用する。レイジ・リムルート執務官とリーラ・リムルート執務官補佐以外は直ちに撤退!執務官、執務官補佐両名は、そのまま敵の捕縛を続けたまえ!』

「なっ!?お待ちくださいクルーザー提督!それは私たちに死ねと!?」

父さんは叫ぶ。

『異論は認めない!これは命令だ!』

通信は、それだけ言って一方的に切れた。

「提督!提督っ!!」

父さんは叫ぶが、反応は無い。

周りにいた局員は転送されていき、誰もいなくなる。

「ぐ・・・・・・リーラ。お前だけでも逃げろ」

父さんは母さんにそう呼びかける。

「それは無理よ。これは貴方だけでは抑えきれないわ」

母さんはそう言った。

「だ、だが!ユウはどうなる!?」

「あの子なら大丈夫。昔からしっかりしてるもの。私たちが居なくてもきっと大丈夫・・・・・・」

母さんはそう呟く。

「・・・・・・そうだな・・・・・そのお陰で、余り甘えてもらえなかったからな・・・・・・」

「本当ね・・・・・・考えてみれば、余りにもしっかりしてたから、仕事を優先して構ってあげる時間がとても少なかったわ・・・・・・・今更気付くなんてね・・・・・・」

父さんの言葉に、母さんは自傷気味に笑った。

「ブレイズ、アイシクル。お前たちにユウのことを頼みたい」

『そんな!マスター!』

父さんの言葉にブレイズが叫ぶ。

「ここでバインドを張り続けているだけなら、貴方たちの補助は要らないわ。だから、ユウを・・・・・・私達の息子をお願い・・・・・・」

『マ、マスター・・・・・・・イ、イェス・・・・・・マスター・・・・・・・・』

母さんの言葉の重みを受け取ったのか、アイシクルはその願いを受け入れた。

「ありがとう・・・・・」

母さんはブレイズとアイシクルに礼を言う。

「聞こえるか?ユウ。すまない、折角の誕生日なのに、父さんと母さんは帰れそうにない」

父さんがそう謝罪する。

「ゴメンね、ユウ。誕生日プレゼントなんだけど、貴方は前からデバイスを欲しがっていたわね?本当なら、新品のデバイスをプレゼントしたかったんだけど、私達が手に入れられたのは、かなり高性能のインテリジェントデバイス。それでも、貴方の魔力量には耐え切れないわ。だから、母さんたちのお古で悪いんだけど、ブレイズとアイシクルを貴方に送るわ」

「私達が手に入れたインテリジェントデバイスは、私達のタンスの中にある。如何するかは、お前が決めなさい。そして、お前は幼いながらも大人の考えが出来る子だ。だから、この映像を見て、お前は管理局を恨むかもしれない。それについては、恨むなとは言わない。だが、それを生きがいにはしないで欲しい・・・・・・・私達が望むのは、お前の幸せだ」

「私達は、余り親らしい事はしてあげられなかったけど・・・・・・・貴方の事は、本当に愛しているわ。私達の息子、ユウ」

「すまない、ユウ。これでさよならだ」

父さんと母さんは顔をあげると微笑み、

「「誕生日おめでとう、ユウ」」

その言葉を最後に、映像は途切れた。






「・・・・・・・・・父さん・・・・・・・母さん!」

俺はその場で蹲り涙を流す。

『『坊ちゃま・・・・・・』』

俺は、何も考えられないまま立ち上がり、外へ向かう。

外は激しい雨が降っていたが、俺はそんな事を気にもせずに外に出た。

目的があったわけじゃない。

ただ、ジッとしていたくなかった。

俺は目的もなく町を彷徨う。

やがて、臨海公園に辿り着いた。

海は荒れており、公園内に水飛沫が降り注ぐ。

俺はその水飛沫をモロに受けるが、それでも気にはならなかった。

俺は、雨で分かりづらいが、ずっと涙を流し続けている。

「父さん!・・・・・・母さん!」

例え前世の記憶があったとしても、あの2人は紛れもなく俺の父さんと母さんだった。

その2人が死んだと頭で分かっていても、認めたくはなかった。

その時、視界の片隅に何かを捉えた。

「え・・・・・・?」

こんな心理状態で、何故気付いたのかわからない、ただ気になった。

俺は其方に歩いていく。

そこにいたのは、1匹の猫だった。

しかし、僅かだがその猫には魔力を感じた。

そして、良く見ればその猫の額には宝石のような物。

其処から導き出される結論は、

「・・・・・使い魔・・・・・か?」

俺は呟く。

『そのようです。しかし、契約が切れているようなので、間も無く消滅するでしょう』

アイシクルがそう説明する。

その言葉を聞き、俺はその猫に念話で呼びかけた。

(聞こえるか?)

(・・・・ぅ・・・・・・え?)

その猫は頭を上げ、此方を見つめた。

(あ・・・・・あなたは?)

(・・・・・・唯の通りすがりの魔導師さ・・・・・・・・1つ聞く・・・・・・生きたいか?)

(え?)

(生きたいのかと聞いているんだ・・・・・・・このまま消滅してもいいのか?)

(・・・・・・・私は・・・・・・唯の使い魔です・・・・・・契約が終われば、後は唯消えるだけです)

(使い魔の役目を聞いてるんじゃない・・・・・・君の気持ちを聞いてるんだ)

(・・・・・・・私は・・・・・・・消えたくありません・・・・・・)

その言葉を聞けただけで十分だった。

(分かった・・・・・俺と契約しよう。契約内容は「一緒に居て欲しい」だ)

(え?その契約内容では・・・・・)

猫も、契約内容に束縛能力が無いことに気付いただろう。

(構わない。俺は君を束縛するつもりは無い。元の主の所へ戻りたければ戻ればいいし、別の場所へ行きたければ行けばいい。契約内容は俺の願いだ。もちろん、君がその願いを聞く必要は無い)

(そ、それは・・・・・・いえ、契約しましょう)

その猫は一瞬渋ったが、気を取り直して契約を受け入れる。

俺は魔法陣を発生させ、使い魔との契約を行なう。

俺のリンカーコアからラインが繋がり、目の前の猫の使い魔に流れていくのが分かる。

「な、なんですかこの魔力量は!?」

目の前の猫が声を上げて叫んだ。

どうやら俺の魔力量にビックリしているらしい。

「落ち着いて。言い忘れたけど俺の魔力ランクはSSSオーバーだ」

「な、なんですかそれは!?」

その言葉に更に驚く猫の使い魔。

「その辺の話は家に帰ってからするよ。とりあえず、俺の名前は利村 ユウ。本名は、ユウ・リムルート。君の名前は?」

「あ、失礼しました。私はリニスと申します」

その聞き覚えのある名前を聞いた瞬間、俺は固まった。

「リ、リニス?プレシア・テスタロッサの使い魔の?」

俺は思わず呟いた。

「え?そうですけど・・・・・・良く知ってますね?」

「そ、そのプレシアには、アリシアって言う娘が居たり・・・・・・?」

「はい・・・・・その通りです・・・・・・」

続けてリニスは頷く。

「も、もしかして、アリシアの遺伝子を元にプロジェクトFでフェイトって言うアリシアのクローンを生み出したりなんてしちゃってたり?」

俺は半ばテンパって尋ねた。

「ななな、何で知ってるんですかぁ~~~~!?それを知っているのはプレシアと私とアリシアと、あとはごく一部の研究者だけですよ!!」

リニスはメチャクチャ驚いたように叫んだ。

って、ちょっと待て、今聞き捨てなら無いことが・・・・・・・

「え?アリシアって、もしかして生きてる?」

「当たり前じゃないですか!それよりも、何であなたがプレシア達の事とフェイトの正体を知ってるんですかぁ~~~~!?」

そういわれて、俺はまずったと感じた。

テンパってて喋りすぎた。

「・・・・・あ~っと・・・・・その辺は家に帰ってからな」

「仕方ないですね。ちゃんと教えてもらいますからね!」

俺は冷や汗を流しながら、やはりこの世界は「リリカルなのは」とは違うのだと、再度確信させられた。






家に着くと、俺はリニスに説明を始めようとしたが、

『坊ちゃま、先ずはお風呂に入ってください。そのままでは体調を崩してしまいます』

ブレイズの言葉で、今の自分はずぶ濡れである事に気付く。

「それもそうだな」

俺は風呂場に向かい、浴槽に湯を張る。

脱衣所で濡れた服を脱ぎ、風呂場に入る。

1人になると、両親を失った悲しみが再び湧き上がる。

俺が涙を堪えていた時、

――ガチャ

と、風呂場のドアが開き、

「失礼しますね~」

猫耳を生やした茶髪の女性が裸で入ってきた。

アニメで一度だけ見た、リニスの人間形態である。

「ぶはっ!?」

俺は思わず噴出す。

「ななな、何しに来たんだよリニス!」

「あら?良く分かりましたね?」

取り乱して叫ぶ俺に対して、リニスはあっけらかんと言う。

「そ、そりゃあ、その猫耳を見れば、大体の見当はつくよ・・・・・」

本当はアニメを見たからなのだが、今の所はそう言っておく。

「それもそうですね」

リニスは、自分の頭の猫耳を触りながら言う。

ま、前隠せ!前っ!

「で、で?な、何しに来たんだ!?」

俺がそう尋ねると、

「はい。背中を流しますよ」

リニスはそう答える。

「い、いや、そんな事までやってもらわなくても大丈夫だよ」

「貴方みたいな子供が遠慮する事無いですよ。それっ♪」

リニスは楽しそうな声を上げ、強引に俺の身体を洗い始める。

と、時々やわらかい物が身体に当たって、気が気でない。

まあ、身体は幼い為に反応はしなかったが、心は30歳過ぎているため、否応なく女性の裸体に目が行こうとする。

い、いかん!煩悩退散煩悩退散!!

このように天国のようで地獄の入浴は過ぎていった。






で、現在家のリビングでリニスと向かい合ってます。

「さて、それでは、何故貴方がプレシア達の事や、フェイトの正体を知っているのか教えてもらいましょうか」

リニスの目は、さっきとは打って変わって真剣である。

まあ、俺も誤魔化すつもりは無い。

「信じられないかもしれないけど、俺には前世の記憶がある。因みに死んだ歳は26歳だったから、今の精神年齢は30歳超えてるな」

「『『え?』』」

俺の言葉に、リニスと2つのデバイスは声を漏らす。

「で、その前世ではとあるアニメが放映されていて、「魔法少女リリカルなのは」というタイトルだった。まあ、詳しい話は省くけど、そのアニメの世界観とこの世界は細かい差はあれど、そっくりなんだ」

「・・・・・・・・」

リニスは俄かには信じられないといった顔だ。

「まあ、信じられないのも無理は無いけど・・・・・・」

俺はそう呟くが、

「いえ、ユウと私は現在精神も僅かにリンクしています。少なくとも、ユウが嘘をついていない事は分かります」

「あ、そうなの」

『それに、坊ちゃまの言うとおりであれば、坊ちゃまが昔から大人びた考えを持っていたことも説明がつきます』

アイシクルもそう言って、信じてくる。

「ユウ、続きを」

リニスが先を促す。

「あ、ああ。それで、そのアニメの登場人物の中に、フェイトやプレシア、アリシア。そして、リニスもいたんだ。尤も、アリシアはかなり昔に事故で死んだって言う設定だし、リニスもフェイトに魔導師としての訓練を施した後、契約が切れて消滅してるって話だ」

「・・・・・・・」

リニスは、なんとも言えない顔をしている。

「プレシアは、死んだアリシアを生き返らせたいがために色々な事を行なった。その中で、プロジェクトFと呼ばれる人造魔導師を生み出す計画に手を出し、フェイトを生み出した。けど、フェイトはアリシアとは全く違っていた。それによって、フェイトを自分の娘と認められなかったプレシアは、フェイトの虐待を続け、最終的に、失われたアルハザードへ行くために、ロストロギア「ジュエルシード」を求めた。プレシアはジュエルシードの回収をフェイトに命じ、フェイトはプレシアに笑ってもらいたい一心で、ジュエルシードを回収していった。その中でフェイトは、物語の主人公である高町 なのはと激突を繰り返し、最終的に分かり合えるが、プレシアはジュエルシードの暴走によって発生した虚数空間に、アリシアの遺体と共に落ちていった。と、掻い摘んで言えばこんな感じ」

「・・・・・・そうですか」

リニスはそう呟くと顔をあげる。

「人物は兎も角として、出来事は全く違いますね」

リニスはそう言った。

「そうなのか?」

「ええ。先ず第一にアリシアは生きてます」

「うん。それはさっきも聞いた。・・・・気になったけど、アリシアって何歳なんだ?」

「今年で7歳になります」

「そっから違うのか・・・・・・ん?じゃあ、何でフェイトが生まれたんだ?俺が知ってるアニメではアリシアが死んだからプレシアは違法行為にまで手を染めたんだが・・・・・・・」

「あ~~~・・・・・・それは・・・・・その~~~~~~」

リニスは口を濁す。

そして、目を合わせようとしない。

「どうした?」

俺は尋ねる。

「・・・・・・・・・アリシアが5歳の時に、「妹が欲しい」と言ったらしく・・・・・・その時にはプレシアの夫も既に他界していて・・・・・・・アリシアの願いに答えたいが為に・・・・・・・・・・」

「プロジェクトFで、フェイトを生み出した・・・・・と?」

「その通りです・・・・・・」

リニスは頭を抱えるような仕草をする。

「む、娘の鶴の一声で、違法行為に手を出すって、どんな親ばかだよ・・・・・」

俺は呆れ半分でそう言った。

「ご尤もです・・・・・・」

リニスもやや暗い雰囲気を漂わせる。

「ん?じゃあ、何でプレシアはフェイトって名付けたんだ?フェイトって言うのは、プロジェクトの名前だから、リニスの言うプレシアならもっと違う名前を付けてもよさそうなんだけど・・・・・・」

「はい・・・・・・プレシアも本来は、違う名前にする心算だったらしいのですが、アリシアがプロジェクト名を聞いたときに、「じゃあ私の妹の名前はフェイトだね!」って言い出しまして、結局その名がそのまま定着してしまったんです」

「あはは・・・・・・子供らしいな・・・・・・」

俺はその話を聞いて苦笑する。

「とりあえず、アニメみたいな事態にはならないようだな」

俺はそう呟いた。

















ん?じゃあ、なのはとフェイトの友達イベントがつぶれたって事か?















[15302] 第二話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/01/04 15:55

第二話 原作開始前まで




リニスとの情報交換を終えて少しすると、俺は再び両親を失った喪失感に襲われた。

突如様子の変わった俺にリニスは驚いたが、再びブレイブとアイシクルが例の映像を流し、リニスに説明した。

すると、リニスは俺を抱きしめ、

「泣けば良いじゃないですか。前世の記憶があると言っても、今の貴方は7歳の子供なんですから」

リニスにそう言われ、俺は我慢が出来なくなった。

「くっ・・・・・うっ・・・・・うあっ・・・・・・うあああああああああああああああああああああああっ!!!」

俺は、生まれ変わってから初めて、思いっきり泣いた。







【Side リニス】





私は今日、消滅する筈だった。

プレシアは契約を続けても良いと言ってはいたが、私は思った以上に高度な使い魔で、プレシアの負担になることは分かっていた。

これ以上の契約は、プレシアの害になる。

そう判断した私は、プレシアとの再契約を断り、アリシアと、教え子であるフェイト、その使い魔であるアルフには何も言わず、誰の目にも留まらないところで消えようと思っていた。

ランダムで転移した先は、第97管理外世界 地球。

転移した所は、雨が降っていた。

転移によって魔力が尽きたため、私はその場で倒れた。

あと5分ほどで消えるだろうと思っていたときだった。

誰かが念話で話しかけてきたのだ。

私は、何とか頭を上げ、その人物を視界に捉えた。

その人物は少年だった。

歳は、アリシアやフェイトと同じぐらいだろうか?

だが、その瞳には深い悲しみが浮かんでいた。

その少年から、「生きたいか?」と問われ、最初は断った。

しかし、再度問われたとき、プレシアやアリシア、フェイト、アルフの顔が浮かび、私は思わず「消えたくない」と答えてしまった。

その少年は私と契約するといったが、その契約内容は、「一緒にいて欲しい」という、束縛能力が全く無いものであった。

私はその事を伝えようとしたが、その少年はその事は分かっているようだった。

彼は、とても優しい心の持ち主なのだとわかった。

そして、私はその契約内容で契約した。

そこで驚いた。

少年と契約を繋ぎ魔力のラインが通った瞬間、大魔導師と呼ばれたプレシアですら比較にならないほどの魔力が流れてきた。

その少年が言うにはSSSオーバーという話だが、この魔力量なら納得できる。

それから、私の名前を言った時、彼は驚いた顔をして、私がプレシアの使い魔であったことや、アリシアのこと。

更には私たちしか知らないはずのフェイトの正体まで言い当てて見せた。

それが気になった私は、彼を問い詰めようとしたが、「家で話す」と言われてしぶしぶ納得した。

それに、それ以上に気になったのは、精神リンクから感じ取れる彼の心。

現在の彼の心は非常に不安定だ。

ここで問い詰めるのは得策ではないと思った。

彼の家に着いた時、彼は話し出そうとしたが、デバイスの助言により、先にお風呂に入ることにしたらしい。

しかし、彼がお風呂に入って少しすると、精神リンクから、彼の悲しみが伝わってくる。

その悲しみに耐えられなかった私は、人間形態となって、風呂場へと向かった。

突然入ってきた私に彼は驚いたようだが、その甲斐あって、彼の心の悲しみは薄らいだ。

それでもおかしいですね。

この位の歳なら、女性に欲情などするはず無いのですが。

彼の顔を真っ赤にする反応を見て私はそう思った。

そういえば、何処となく対応も大人っぽかったですね。

どういう事でしょうか?

その時の私はそう思っていたが、その後の話を聞いて、彼は前世の記憶があり、精神年齢が30歳超えであることを知って納得した。

アニメ云々の話は、正直信じられませんでしたが、少なくとも彼が嘘をついてないことはわかります。

その話が終わった後、彼の心が突然悲しみに溢れかえりました。

彼の、いえ、正確には彼の両親のデバイスが記録した映像を映し出し、彼の両親の最後を見せました。

それを見た瞬間、私は思わず彼を抱きしめました。

そして、こう言いました。

「泣けば良いじゃないですか。前世の記憶があると言っても、今の貴方は7歳の子供なんですから」

その言葉で、彼は耐え切れなくなったのか、大声を上げて泣き始めました。

そして、彼が泣き疲れて眠るまで、私は彼を抱きしめ続けました。

私は泣き疲れて眠っている、新たな主であるユウを見つめ、頭を撫でながら思う。

私は彼を支えたい、と。

そして呟く。

「プレシア、アリシア、フェイト、アルフ・・・・・・私はユウの使い魔になります・・・・・・・・・何時会えるか分かりませんが・・・・・・生きていればきっと会えます・・・・・・・・・・それまで、お元気で・・・・・・・」

私は、彼の「一緒に居て欲しい」という契約内容であり、願いを受け入れた。






【Side  Out】






翌日。

あの後、泣き疲れて眠ってしまったらしい。

既に次の日の朝だった。

運よく今日は休日なので、ゆっくり休める。

すると、台所の方からいい臭いと、トントンという包丁を使う音が聞こえてきた。

俺は気になり、ベッドから降りて様子を見に行った。

そして、台所には、

「あ、おはようございます、ユウ。もう少しで朝食の用意が出来るので待っててくださいね」

リニスがエプロンをして、料理本を片手に朝食の用意をしていた。

俺は一瞬呆気に取られる。

「リ、リニス・・・・・・?」

「なに呆けているんですか、ユウ。あ、もしかして、私が家事を出来ないとでも思っていたんですか?これでも家事は得意な方なんですよ。まあ、この世界の朝食については知らないので、料理本任せなんですけどね」

リニスはそう言って微笑む。

「リ、リニス・・・・・何で?」

何で居てくれるのかと問おうとした所。

「私は貴方の使い魔ですよ。それに、契約内容は「一緒に居て欲しい」って言ってたじゃないですか。だから、私は自分で考えて、貴方と一緒に居ると決めたんです」

リニスの言葉に、自然と涙が零れた。

「・・・・・・ありがとう」

「いいえ。じゃあ、朝食にしましょう」

「ああ!」






リニスの作った朝食は美味かった。

本当に初めて和食を作ったのかって思えるぐらいだ。

朝食を終え、リニスが洗い片付けをしている時、

――ピンポーン

と、呼び出しベルが鳴る。

「あ、リニス。俺が行くよ」

「では、お願いします」

俺はリニスに声をかけて玄関に向かう。

俺が玄関を開けると、

「ユウ・リムルート君だね?」

知らないおっさんがいた。

それでも、俺の本名を知ってるって事は管理局関係か。

「どなたですか?」

俺は念のために尋ねる。

「私は時空管理局の者だ。君に重大な知らせがある」

その言葉を聞いて、俺は恐らく両親のことだろうと予想した。

「君の両親だが・・・・・真に残念な事に、異世界での任務中に魔法生物と戦闘になり、亡くなった」

「・・・・・・・・そうですか・・・・・・・父さんと母さんの最後は・・・・・・」

「2人とも立派だった・・・・・・2人は普通に立ち向かって敵わぬと見るや、その身を犠牲にした自爆魔法で、魔法生物と相打ったのだ」

そのおっさんは、それらしい雰囲気でそう説明する。

だが、その瞬間、俺の心には怒りの炎が沸きあがった。

「それで、君のこれからだが、管理局の児童施設で保護する事に決まった。君は両親の才能を余すことなく受け継いだ天才だからね。将来は両親以上の管理局員になれることだろう。さあ、来たまえ」

そう言って、そのおっさんは手を差し伸べてくるが、俺は許せなかった。

あの状況を見れば、両親に対する対応はともかく、最善の手だったに違いない。

此処で、本当の事の結末を言って、両親に対する謝罪があれば、俺はそれで許す心算だった。

だが、謝罪どころか、事の結末を隠蔽した管理局を俺は許せなかった。

「・・・・・・・・・出てけよ・・・・・」

俺は呟いた。

「何?」

そのおっさんは、怪訝な顔をする。

「出てけッつったんだ!!」

俺は叫んだ。

「な、何を!?」

「俺はもう管理局なんかに頼る心算は無い!!管理局が俺に関わるな!!いいから出てけっ!!」

俺の怒りの言葉と共に、体中から魔力が溢れ出す。

「ぐぬっ!?」

その魔力の噴出にたじろぎ、管理局員と思われるおっさんは下がる。

「両親を失ったことによる錯乱か!?仕方ない、力ずくで!」

そのおっさんはデバイスを展開し、バインドで俺を縛り付ける。

だが、そんな物は無意味。

「あああああああああああああっ!!!」

咆哮と共に更に激しく噴出す魔力にバインドは弾け飛ぶ。

「なっ!?バカなっ!」

そのおっさんは驚愕する。

その瞬間、

「其処までです!」

いつの間にか、俺の目の前にリニスがいて、手から発生させた黄土色の魔力刃をおっさんに突きつけていた。

「貴方が何者か知りませんが、ユウに手を出すのならば容赦はしません」

リニスはそう言い放つ。

「や、やめるんだ。私は時空管理局員だ。その子を保護しに来たんだ」

「ユウ?」

おっさんの言葉に、リニスは魔力刃を突きつけたまま、俺に呼びかける。

「俺は管理局の世話になる心算は無い。出てってくれ」

俺は、おっさんにそう言った。

「そういう事です。お引取りください。この子の生活が心配で保護するというのなら、これからは私が面倒を見ます。この家の貯えも確認しましたが、ユウが成人するまでの貯えは十分あります。ご心配なく」

そう言って立ちはだかるリニスの気迫に押されたのか、おっさんはそそくさと、逃げるように去っていった。

「ふう・・・・・・」

リニスは一度ため息をつくと、

「それにしても、何をあんなに怒っていたのですか?」

リニスはそう尋ねてくる。

俺は先程おっさんから言われたことをリニスに話した。

「・・・・・・・ふざけていますね!」

リニスも怒りを露にした。

俺は、ずっと考えていた事をリニスに話した。

「リニス、俺に魔法を教えて欲しい・・・・・」

俺の言葉に、リニスは頷いた。

「もちろんです。ちょっとスパルタでいきますよ」

リニスの答えに、俺は微笑んだ。






それから1ヶ月。

学校から帰った後、夕方はトレーニング。

夜は魔法の勉強。

休日はリニスと共に魔法の実践。

リニスは俺と契約した所為か、SS並みの能力を誇っている。

父さんと母さんのデバイスである、ブレイズとアイシクル共に俺とは相性が良く、2つとも俺を認めて「坊ちゃま」から「マスター」になった。

因みに、俺のバリアジャケット姿だが、前世からの趣味丸出しと言っておこう。



それから、度々管理局や親戚を名乗る人物がやってきて、何かと俺に取り入ろうとしてきたが、管理局員はもとより、親戚を名乗る人物も見覚えが無かったので、丁重に御帰りいただいた。

もし本当に親戚だったとしても、知らない人は他人と変わりない。

しつこい奴は、少々乱暴になったが・・・・・・・・

そんなある日。

――ピンポーン

玄関のベルが鳴る。

「・・・・・・また管理局か?」

やれやれと思いながら、俺は玄関へ向かう。

玄関を開けると其処には、

「久しぶり・・・・・でいいのかしら?私を覚えてる?ユウ君」

翠の髪を後ろで縛った見た目20代の女性。

「・・・・・・はい・・・・・・お久しぶりです・・・・・・・・リンディさん」

原作の登場人物でもある、リンディ・ハラオウンがそこにいた。

実は、母さんとリンディさんは同期であり、友人だった。

かなり小さい頃だが、俺とも面識がある。

まあ普通の子供なら覚えていないだろうが。

「ご両親の事は、残念だったわね・・・・・・」

リンディはそう呟く。

「いえ・・・・・・」

「それから・・・・聞いた話だけど、あなたは管理局の保護を断っているそうね」

「・・・・・はい」

「・・・・どうして?」

「・・・・・管理局に関わりたくないだけです」

「・・・・・・・・管理局の事が、信じられない?」

「・・・・・・・信じたくない・・・・・と言った方が正確ですね」

リンディさんの言葉に、俺は答えていく。

その時、

「ユウ、また管理局の人間ですか?」

リニスが家の中から現れる。

「ああ。管理局の人だが、母さんの同期で、一応知り合いのリンディ・ハラオウンさんだ」

「そうですか。初めまして」

リニスはリンディさんに一礼する。

「ええ。初めまして、リンディ・ハラオウンです。貴女は?」

「失礼しました。私はユウの使い魔で、リニスと申します」

「ユウ君の・・・・・使い魔?」

「正確には、契約が切れて消滅寸前だったリニスと再契約しただけですが・・・・・」

俺は、補足して説明する。

「そう・・・・・」

「失礼ですがリンディ。ユウを保護しに来たというのなら、このままお引取りください。ユウは、管理局にはいきません」

「なっ・・・・・」

「リニスの言うとおりです。俺は管理局を全く信用して無いので。では」

俺はそう言うと、玄関を閉めた。

「ちょ・・・・」

リンディさんは何か言ったようだが、俺は構わずにドアを閉めた。

「・・・・・・・・・取り付く島もなし・・・・・・か・・・・・・・」

リンディさんは少し悲しそうに呟いて、家の前を去っていった。







それから1年。

もう直ぐ無印の開始時期だが、ジュエルシードが海鳴市にばら撒かれるかどうかも分からないし関わるつもりも無いが、準備しておくに越したことは無い。

それで、俺は現在図書館に来ている。

理由は、応急処置関係の本を読むためだ。

今の俺の頭は一度覚えた事は大概忘れないため、本を読むだけでも直ぐに覚わる。

応急処置なら治癒魔法を使えばいいと思うが、万が一魔法とは関係ない人が巻き込まれた時の為だ。

まあ、関わらないですむならそれに越したことは無いんだけど・・・・・・生まれつき死亡フラグが立っている身としては。

とまあ、そんなこんなで本を探していると、車椅子の少女が少し高い所にある本を取ろうと手を伸ばしているではないか。

まさか、こんな所ではやてと遭遇するとは・・・・・・

まあ、見て無ぬ振りはカッコ悪いので、

「どれを取ろうとしてるんだ?」

とりあえず声をかける。

驚いたはやては此方を向いた。

「どれ?」

俺はもう一度尋ねる。

「あっ、そ、そのもう2つ右の奴です」

「これか?」

その本を取り出す。

「はい、そうです」

そして、俺ははやてに本を差し出す。

「おおきに」

そう笑顔でお礼を言ってきた。

その後、俺の顔をじっと見てくる。

「な、何?」

「いやぁ、おんなじ位の歳やなぁ」

「まあ、俺は8歳だけど、早生まれだからついこの間8歳になったばっかだな」

「そうなんか?私も8歳なんや」

「そうか、え~と、俺は利村 ユウ。君は?」

知ってるけど、一応尋ねる。

「あ、私は八神 はやていいます」

「八神だな」

「はやてでええで」

「そうか、なら俺もユウで構わない」

「ユウ君やな。よっしゃ、覚えたで」

俺たちはそのまま本を読むための机に向かう。

まあ、世間話ぐらいなら大丈夫だろう。

まだヴォルケンリッターは出てきてないはずだし、もし襲われたとしても、今なら余裕で返り討ちにできるだろう。

襲われたくは無いけどな。

「うわっ!ユウ君難しそうな本読んでるな」

はやてが、俺の読んでいる本を見てそう言った。

まあ、応急処置の為に、医学関係の本だからな。

「そういうはやては何読んでるんだ?」

「私は料理の本やで。私、料理が趣味なんや」

「そうか・・・・・」

はやては、明るく振舞っているが、俺と同じく両親がいないんだよな。

俺にはリニスやブレイズ、アイシクルがいたけど、はやてはずっと1人なんだよな・・・・・・

足も悪いってことは、闇の書の主だろうし・・・・・・・

まあ、下手に原作に関わって世界滅亡なんて洒落にならんから、放置しとくしかないだろうな。

気がつけば、結構な時間が経っていた。

「そろそろ帰らなきゃな・・・・・」

俺はそう呟くと立ち上がる。

「あ、もう帰るんか?」

そういうはやての顔は少し寂しそうだ。

俺は軽くため息をつくと、

「はやて、俺を見かけたときは気軽に声をかけていいからな」

その言葉を聞くと、はやては驚いた顔をして顔をあげる。

「うん!」

そして、笑顔で頷いた。

俺は、本を返して図書室を出ると、軽く頭を抱えた。

「あ~~~~~。何で原作には関わる心算は無いのにあんなこと言っちまったんだろ」

軽く嘆いた。

『マスターは自分で思ってるほど冷たい人間ではありません』

『そうです。マスターは優しい人なんですから』

2つの相棒がそれぞれそう言ってきた。

「俺は優しくないよ。臆病なだけさ」

『相変わらずですね、マスター』

相棒の言葉に苦笑すると、まだ寒い2月の空を見上げた。







あとがき



やってしまった。

妄想全開小説。

勢いのみで書いてます。

話が強引なのは勘弁してください。

では。




[15302] 第三話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/01/05 00:19



第三話 無印開始。




その夜、海鳴市全体に降り注ぐ魔力反応を感じた。

あれ?やっぱジュエルシードは落ちてきたんか。

まあ、関わる心算は無いので放置しておく。

リニスがその魔力反応について聞いてきたが、前世のアニメの事を話し、放置するという事を伝えた。

下手に首突っ込んで被害が大きくなったら洒落にならんからな。

更に深夜。

(・・・・・誰か・・・・・僕の声を聞いて・・・・・・力を貸して・・・・・・魔法の・・・・・力を・・・・・・・)

ユーノの念話か。

とりあえずは原作通りだな。

ユーノには可哀想だがこれも放置。

明日になったらなのはが気付くだろうし・・・・・・・

じゃあ、お休み。




翌日。

とりあえず、何事も無く1日が終わった。

ユーノの様子を見に行くという選択肢もあるが、係わり合いにはなりたくないので、さっさと帰る。

その夜。

再び魔力反応を感じる。

そんな時、

『マスター・・・・・本当に放っておいていいんですか?』

ブレイズから声がかかる。

「ああ。俺が下手に介入して被害が大きくなったら大変だし」

何より、死亡フラグが立っている身としては、命の危険があることは、御免被りたい。

『マスターは、本当にそれで後悔しないんですか?』

「・・・・・・・・それは」

『マスターが言っていたではありませんか。この世界はマスターの見ていたアニメの世界とは似ているだけで違う世界だって』

「・・・・・・・・・・」

『もしかしたら、なのはに思いもよらないアクシデントがあるかもしれないんですよ』

「・・・・・・・・・・・・・・」

『『マスター!』』

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

相棒達の言葉に、俺は答えられない。

確かにブレイズ達のいう事も一理ある。

けど、もし俺が介入した事で、状況が悪化する事が、俺にとって一番怖い。

だから、俺は動けなかった。

その時、

(ユウ、聞こえますか?)

リニスから念話が入る。

(何だ?リニス)

(確か、お醤油が切れていたので買ってきてくれませんか?)

(はぁ?こんな遅くにか?)

(ええ、そうしないと、明日のお弁当が作れないので)

(・・・・・・仕方ないな)

そう答えて、俺は立ち上がる。

明日の弁当の為だと自分に言い聞かせて。

『マスター、その序に様子を見ていきましょうよ』

ブレイズがここぞとばかりに言ってくる。

「む・・・・・」

『マスター、介入しろとは言ってませんよ。ただ様子を見に行くだけです』

「・・・・・そう・・・・だな・・・・・・買い物の序に様子を見てくか・・・・・・」

ブレイズとアイシクルの言葉に、俺は頷く。

まあ、気にならなかったと言えば嘘になるし。

俺は、夜の街に出た。








【Side 桜】



今、私は後悔していた。

目の前には、ジュエルシードの思念体。

今の私は、壁に叩きつけられたダメージで動けない。

ジュエルシードの思念体は此方に襲いかかろうとしている。

そして、思念体の前に立ちはだかる、妹のなのは。

妹の足元に転がる赤い宝石。

オロオロしているフェレットのユーノ。

原作とは流れが変わってしまった。

全部私のせいだ。

私が、興味本位で首を突っ込んだ所為で、今、自分だけではなく、なのはも危険に晒している。

私の脳裏には、今までのことが走馬灯のように思い浮かんできた。







私の名は高町 桜。

実は転生者よ。

私をこの世界に送り込んだ神が言うには、何でも神の部下のミスで、私の運命の人を死なせてしまったらしい。

その言葉を聞いた瞬間、私は思わず叫んだわ。

25歳にもなって、男の人と付き合ったことなんて一回も無かったから。

まあ、インターネットやアニメが趣味で、半分引きこもりみたいだった私にも原因はあるだろうけど。

それで、その神が言うには、その運命の人を別の世界に転生させたから、私の希望があれば、私も同じ世界に送ってもらえるそうだ。

まあ、家族も他界して、天涯孤独だった私は、その案を受け入れた。

でも、その神が言うには、その運命の人は、性格が物凄く後ろ向きらしい。

だから、無理して好きになる必要は無いそうだ。

そして、私は転生した。

あの好きなアニメ、「リリカルなのは」の主人公、高町 なのはの双子の姉として。

ある程度未来を知っていた私は、少しでも未来を良くしようと思った。

お父さんが怪我をして入院した時も、なのはの傍にいて、なるべく寂しくさせないようにした。

その甲斐あってか、なのはは明るいままだった。

しかし、他人に迷惑をかけないように「いい子」でいようとする所は直せなかった。

そうそう、家族は、私が前世の記憶持ちだという事は知っています。

怪訝に思ったお父さんや恭也兄さんが聞いてきたので、その時に暴露しました。

元々隠す心算も無かったし、聞かれれば話す心算でした。

アニメ云々は黙っておきましたが。

それで今日、アニメの通り、なのはは塾の帰りにフェレットのユーノを拾った。

その時には、私にも念話が聞こえたので、私にも魔力があるようだった。

そしてその夜。

ユーノの念話で、なのはが家を抜け出した。

心配になった私は、なのはの後を追った。

ユーノが入院している動物病院に行くと、丁度なのはがジュエルシードの思念体に襲われている所だった。

「なのはっ!」

私は思わず叫んだ。

「桜お姉ちゃん!?」

なのはは、ビックリしたように此方を向く。

だが、そのせいで、思念体の動きから目をそらし、その瞬間を狙って思念体がなのはに襲い掛かる。

「なのはっ!危ない!」

私は叫んだ。

なのはは、気付くのが遅れたが、何とか直撃だけは避けた。

だが、その衝撃に吹き飛ばされる。

「きゃあっ!」

私は、転んだなのはに駆け寄る。

「なのは、大丈夫?」

「う、うん。桜お姉ちゃんは、何で此処に?」

「え?えっと・・・・・なのはが慌てて出て行くのが見えたから気になって」

私は、それらしい理由を述べる。

「そうなんだ」

「って、そんなこと言ってる場合じゃない!」

思念体が、再び此方に体当たりを仕掛けてくる。

私達は、慌てて病院から逃げ出した。

「一体何がなんだか分からないけど、一体なんなの!?何が起きてるの!?」

なのはが叫ぶ。

「君には、資質がある。お願い、僕に少しだけ力を貸して」

なのはの腕に抱かれたユーノがそう言った。

「資質!?」

「僕は、ある探し物のために「はいストップ!」」

説明しようとしたユーノを私は止めた。

「ここまでに至った経緯は後でいいから、この場を乗り切れる方法を簡潔に説明しなさい!」

私はそう怒鳴る。

今はアニメでもなんでもない、現実として只今ピンチの真っ最中なのだ。

そんな経緯を聞いてる暇なんて無い。

「そ、そうですね・・・・」

「なのは!今はそのフェレットのいう事を聞いてた方が助かる可能性は高いわ!」

「わ、わかった」

だがその時、上空から思念体が落下してくる。

嘘、アニメより来るのが早い!

目の前の道の真ん中に思念体が落下する。

くっ、拙い。

「なのは!私が何とか時間を稼ぐからなのははそのフェレットのいう事を聞いて!」

私はそれだけ言って思念体に向き直る。

「そんな!桜お姉ちゃん!」

「君っ!お姉さんを助けたかったら、僕の言うとおりに!」

ユーノがなのはに向かって叫ぶ。

なんとかなりそうね。

私は、思念体が落ちてきたときに割れたアスファルトの欠片を拾う。

「てやっ!」

私はその欠片を思念体に投げつける。

だが、それは容易く弾かれる。

しかし、思念体は此方に気を向けたようね。

計算通り。

後は私が時間を稼げば。

その時、声が聞こえる。

「我、使命を受けし者なり・・・・・・・・・・・えと、契約の元その力を解き放て・・・・・・」

レイジングハートの起動パスワード。

その声を聞いて、私の心に安堵感が広がる。

だが、これで何とかなると気を抜いたのがいけなかった。

思念体の攻撃に気付くのが遅れ、私は弾き飛ばされた。

「きゃああああっ!!」

「風は空に・・・・・・星はッ、桜お姉ちゃん!?」

私の悲鳴になのはは起動パスワードを中断してしまう。

「き、君っ!?」

ユーノは予想外の事に思わず声を漏らした。

私はそのまま壁に叩きつけられる。

全身を痛みが襲った。

「がはっ!?」

肺の空気が押し出される。

そのまま私は地面に倒れる。

身体の傷みと、意識が朦朧とすることで立ち上がれない。

思念体が、止めを刺そうとこちらに身構える。

「だめぇっ!!」

その瞬間、目の前に手を広げて立ち塞がるなのは。

その際、レイジングハートが地面に落ちて転がる。

そして、思念体が今にもこちらに飛びかかって来ようとしていた。




私は思わず叫んだ。

「お願い!!私は如何なってもいいから!誰か妹を!なのはを助けて!!!」

そう叫ばずにはいられなかった。

私の瞳からは涙が零れる。

その瞬間飛びかかってくる思念体。

なのはは目を瞑り、

「助けて!!利村君っ!!!」

そう叫んだ。

その時、

「ブレイズ!ブレイブシールド展開!!」

『Yes, Master♪』

黄金の盾が現れ、思念体を受け止めた。




【Side Out】







【Side なのは】




もう訳が分からなかった。

塾に行くときに声が聞こえ、フェレットを拾った。

家にいたら、フェレットを見つけたときの声が聞こえ、その声に呼ばれるまま病院へやってきた。

そこでは、逃げ回るフェレットと、ドロドロした良く分からないお化け。

しかもフェレットが喋るし。

私は混乱していたけど、途中で桜お姉ちゃんが来て、私は桜お姉ちゃんと一緒に逃げた。

「一体何がなんだか分からないけど、一体なんなの!?何が起きてるの!?」

私は思わず叫びました。

「君には、資質がある。お願い、僕に少しだけ力を貸して」

抱いていたフェレットさんがそう言います。

「資質!?」

私は思わず聞き返しました。

「僕は、ある探し物のために「はいストップ!」」

説明しようとしていたフェレットさんの言葉を、桜おねえちゃんが止めました。

「ここまでに至った経緯は後でいいから、この場を乗り切れる方法を簡潔に説明しなさい!」

桜おねえちゃんはそう叫びます。

「そ、そうですね・・・・」

「なのは!今はそのフェレットのいう事を聞いてた方が助かる可能性は高いわ!」

「わ、わかった」

結構強引だけど、その通りなの。

だけどお姉ちゃん。

フェレットさんが喋ることには驚かないの?

疑問に思いましたが、そんな暇はありませんでした。

目の前に道路に、ドロドロのお化けが落っこちてきたの。

「なのは!私が何とか時間を稼ぐからなのははそのフェレットのいう事を聞いて!」

桜おねえちゃんはそれだけ言うと思念体に向き直る。

「そんな!桜お姉ちゃん!」

私は桜おねえちゃんを止めようとしました。

「君っ!お姉さんを助けたかったら、僕の言うとおりに!」

でも、フェレットさんにそう言われて踏みとどまります。

「これを!」

フェレットさんは、首にかけていた赤い宝石を私に差し出してきます。

私はそれを受け取りました。

「・・・・・あたたかい」

その宝石はとてもあったかく感じました。

「それを手に、目を閉じて、心を澄ませて、僕の言葉を繰り返して」

フェレットさんはそう言います。

桜お姉ちゃんは、ドロドロのお化けに石を投げつけたりして、気を引いている。

私は桜おねえちゃんが心配になった。

けど、

「いくよ!いい!?」

フェレットさんのその言葉で気を取り直し、

「うん!」

しっかりと頷いて目を閉じました。

「我、使命を受けし者なり」

「我・・・・・使命を受けし者なり・・・・・」

フェレットさんの言葉を繰り返します。

「契約の元、その力を解き放て」

「えと・・・・・契約の元、その力を解き放て」

ですが・・・・・

「風は空に、星は天に」

「風は空に・・・・・星は「きゃああああっ!!」ッ桜お姉ちゃん!?」

突如聞こえてきた桜お姉ちゃんの悲鳴に、私は思わず其方に気を向けてしまいました。

「き、君っ!?」

中断してしまった事にフェレットさんは、叫びました。

桜お姉ちゃんは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられました。

「がはっ!?」

桜お姉ちゃんは、苦しそうな声を上げて地面に倒れます。

ドロドロのお化けは、今にも桜お姉ちゃんに襲いかかろうとしていました。

それを見て私は思わず飛び出しました。

「だめぇっ!!」

私は手を目一杯広げて、桜おねえちゃんを守るように立ち塞がりました。

その際に、フェレットさんから受け取った赤い宝石を落としてしまいました。

でも、そんなこと気にしていられません。

桜おねえちゃんが死ぬなんて絶対にイヤだから。

桜お姉ちゃんは、飛び出した私に気付いたのか、

「お願い!!私は如何なってもいいから!誰か妹を!なのはを助けて!!!」

そう叫びます。

その言葉の中にも、私に対する愛情が感じられました。

やっぱり、桜お姉ちゃんは私の大好きなお姉ちゃんです。

その時、ドロドロのお化けが私たちに向かって飛び掛ってきました。

私は思わず目を瞑りました。

足も震えています。

目を瞑ったとき、1人の男の子が思い浮かびました。





その男の子は、小学校に入学して直ぐのころ、私が足を痛めて動けなくなっていた時、保健室まで運んでくれました。

だけど、お姫様抱っこは恥ずかしかったの。

それから私は、事ある毎にその男の子を目で追っていました。

授業中の彼は、何時も眠そうな顔をしていて、それでも指名された時はしっかりと答えています。

彼は、よく見てみるととても大人っぽくて、まるで桜お姉ちゃんみたいです。

桜お姉ちゃんは確かテンセイシャだっけ?

私には良く分かりません。

アリサちゃんには、根暗だの、冷めてるだの言われてます。

ちょっと酷いの。

彼は、ちょっと人付き合いが苦手なだけで、本当はとっても優しい子だと思うの。

そうじゃなきゃ、あの時に私を助けたりしないはずなの。

でも、そんな彼も、一年生の3学期に入って少しした後、とても落ち込んでる時期があったの。

私は、何度か話しかけようとしたけど、どうしても雰囲気から声をかけることが出来なかったの。

そんな彼も、時間が経つにつれて、元に戻っていったの。

そして、3年生になった今でも、その彼を目で追ってるの。

あの時、私を助けてくれた男の子を・・・・・・・






私は、思わず叫びました。

「助けて!!利村君っ!!!」

その時、

「ブレイズ!ブレイブシールド展開!!」

『Yes, Master♪』

その男の子の声と、電子音声が聞こえました。






【Side Out】





やばい、何でこんな事になってるんだ?

様子を見ていた俺は、原作と違う流れになっているなのは達を見て動揺していた。

アニメにはいなかった高町 桜というなのはの双子の姉が一緒にいることで、僅かに事の起こりが違う。

『マスター!助けるべきです!』

ブレイズが叫ぶ。

「で、でもよ・・・・俺が介入して流れが悪くなったりしたら・・・・・・・」

『何言ってるんですか!今のマスターならあの程度の思念体、瞬殺です!』

「け・・・・けど・・・・・・」

俺は未だに腹を括れない。

第一、 俺には死亡フラグが立っているのだ。

此処で介入して無事でいられる保証は無い。

『あ~~~~~!も~~~~~~!じれったいですね!簡単に言いますよ!今のマスターはカッコ悪いです!!』

ブレイズがきっぱりとそう言った。

「・・・・・・・・・・・」

その時、高町 桜が壁に叩きつけられ、それによって、なのはも起動パスワードを中断してしまった。

その上なのはは、姉を庇ってレイジングハートを落としてるし。

あ~~~~!も~~~~~!

俺がどうするか嘆いていると、

「お願い!!私は如何なってもいいから!誰か妹を!なのはを助けて!!!」

高町 桜の叫びが聞こえた。

その瞬間、俺は吹っ切れた。

ええぃ!ド畜生!!どうにでもなりやがれ!!

俺は駆け出した。

思念体が2人に向かって飛び掛る。

それでもなのははその場を動こうとしない。

「助けて!!利村君っ!!!」

なのはが叫んだ。

おい!何でそこで俺の名が出てくる!?

俺は怪訝に思ったが、強化した脚力でなのはの前に到達すると、左手を突き出し、

「ブレイズ!ブレイブシールド展開!!」

俺は叫んだ。

『Yes, Master♪』

ブレイズは、機嫌が良さげな声で返事をする。

俺の左手の先に五角形で、太陽のような模様――勇気の紋章――が刻まれた黄金の盾が具現される。

ブレイブシールドは、微動だにすることなく思念体の体当たりを受け止めた。

「はぁ~。な~んで飛び出しちゃったんだろうな~?」

俺は思わず呟く。

「係わり合いになるつもりは無かったのに・・・・・・」

『何時も言ってるじゃないですか♪マスターは自分が思っているほど冷たい人間ではありません♪』

『そうですよ。目の前で助けを求められて放っておけるほど、マスターは冷酷ではありません♪』

ブレイズとアイシクルは機嫌の良い声でそう言う。

「そうかなぁ・・・・・・」

俺はため息を吐きつつそう呟く。

その時、

「り、利村君・・・・・・?」

信じられないといった表情で、なのはがこっちをみていた。

「いよぉ、高町姉妹。こんな時間に何やってるんだ?」

俺は、場違いな質問をした。

「り、利村君こそ・・・・」

そう返された。

「俺はお使いの帰りに、偶々お前らを見かけただけだ」

右手の買い物袋を見せながらそう言った。

その時、ブレイブシールドの向こうで、思念体が動き出したのを感じる。

「はぁ~、高町、ちょっと持っててくれ」

そう言って、買い物袋をなのはに預ける。

「えっ?うん・・・・・」

なのはは、ちょっと困惑していたが、買い物袋を受け取った。

俺はブレイブシールドを消すと、思念体と向き合う。

「あ~あ。結局関わることになるのか・・・・・・」

俺は諦めたように呟く。

『いいじゃないですか。それに、これだけは言えますよ。今のマスターは、とってもカッコいいです♪』

ブレイズはそう言う。

それがおだてだとしても、俺の心は少し軽くなった。

「そうか・・・・・それなら、とことんカッコつけるとするか!」

『Yes, Master♪』

俺はオレンジ色の宝石が付いたペンダント、ブレイズを左手に握る。

「身体に宿すは太陽の炎・・・・・・心に宿すは勇気の炎・・・・・・この手に掴むは守護する力・・・・・・・燃えよ灼熱!!ブレイズ!セット!アップ!!」

『Stand by, Ready. Set up.』

俺はオレンジ色の光に包まれる。

「な、何この桁違いの魔力・・・・・・」

ユーノが呆然と呟く。

俺はバリアジャケットを纏う。

それは黄金の鎧に銀の胸当て、銀のフェイスガード。

背中にはブレイブシールドが2つに別れ、翼のようについている。

そして、両手には肘まで包む黄金の籠手に、爪のように3本の剣が付いた武器。

簡単に言えば、ウォーグレイモンです。

それを元にしたバリアジャケットです。

何故か高町 桜が俺の姿を見てポカーンとしている。

俺の格好が変わったことに驚いているようだ。

俺のバリアジャケットはデバイスと融合しており、バリアジャケットそのものがデバイスでもある。

俺はそれを纏って思念体と向き合った。

思念体が飛び上がり、俺に突っ込んでくる。

俺は、それに対し、左腕を横薙ぎに振るう。

「ドラモン・・・・・」

思念体が上下真っ二つになる。

続けて、右腕を振り上げた。

「・・・・キラー!!」

更に左右真っ二つとなり、合計4つに分かれてべちゃべちゃと地面に落ちた。

だが、その切り裂かれたそれぞれはもぞもぞと動き、再び1つになろうとしている。

やっぱり普通の攻撃だけじゃ倒すのは無理か。

「あのっ!どなたか存じませんが、あれはジュエルシードと呼ばれるロストロギアの思念体です。攻撃するだけでは倒せません!早く封印を!」

ユーノがそう言うが、最大の難問があった。

「いや~、俺、封印術式もってないんだよ」

俺の言葉に、ユーノは固まった。

「・・・・・・・えええっ!?あれだけ凄い実力の持ち主なのにですか!?」

俺は頷く。

持ってないものはしょうがないだろ。

すると、ユーノは先程落ちたレイジングハートを拾って、

「それなら、これを使ってください。レイジングハートには封印術式がインプットされています」

俺に差し出してくる。

だが、

「それも無理だ。俺は魔力の制御が下手糞でね。普通のデバイスなんて俺の魔力の負荷に耐え切れず木っ端微塵だぞ」

俺の言葉に、ユーノは再び固まった。

「じゃ、じゃあどうすれば・・・・・」

「そのデバイスを高町姉妹のどっちかに渡せ。その2人はどちらもAAAクラスの魔法資質を持ってる」

俺はそう言った。

「そ、そうか」

ユーノはテンパっていたので、その事を忘れていたらしい。

「そ、それなら・・・・私が・・・・・」

高町 桜が無理に起き上がろうとしている。

「そ、その身体じゃ無理だよ桜お姉ちゃん!」

なのははそう言う。

そして、覚悟を決めた顔になると、

「私がやるよ!」

そうはっきりと言った。

高町 桜はそれを見ると、

「お願いできる?」

そう尋ねる。

「うん!」

なのはははっきりと頷いた。

その時、思念体が再生を完了させ、再び動き出す。

「うっ・・・・・」

その様子に一瞬たじろぐなのは。

今の決意はなんだったのかと言いたいが、まあ、普通の女の子にあれはキツイだろう。

柄ではないが、俺は口を開いた。

「高町」

「え?」

俺の呼びかけに、なのははこちらを向く。

「心配すんな。ちゃんと守ってやる。今だけでもいいから俺を信じろ」

俺がそう言うと、なのはは一瞬戸惑ったが、

「・・・・・・信じるよ!」

はっきりと、そう頷いた。

「よし!行くぞ!」

「うん!」

それと共に襲い掛かってくる思念体。

それを軽く裏拳で吹っ飛ばす。

壁に叩きつけられる思念体。

「おらぁっ!!」

其処に追撃のドラモンキラー。

壁ごと思念体は粉々になる。

これで時間は稼げただろ。

その時、後ろで桜色の光の柱が発生する。

「成功だ!」

ユーノの声が聞こえる。

光が治まると其処にはアニメの通りのバリアジャケットと杖を持ったなのはがいた。

「ふぇええ!?どうなっちゃったの!?」

なのはは、自分の姿が突然変わってしまったことに驚いているようだ。

「落ち着け高町。説明は後でしてやるから、今は封印を」

「え、えっと、封印って、どうやるの?」

「えっと、僕達の魔法はプログラムと呼ばれる・・・・・」

ユーノが時間が無いというのにベラベラと説明しようとしていたため、

「ちょっと待てフェレットもどき!素人のなのはにそんなこと言って分かるわけ無いだろ!」

手っ取り早く黙らせる。

「高町、心を落ち着かせろ!心の中にお前の呪文が浮かぶはずだ!それを唱えろ!」

「えっ?う、うん!」

なのははレイジングハートを構えて目を瞑る。

その間にも、思念体は再生を開始する。

なのはは、目を開けると杖を掲げる。

「リリカル・マジカル」

「封印すべきは忌まわしき器、ジュエルシード!」

「ジュエルシード!封印!」

『Sealing mode. Set up.』

なのはの声でレイジングハートがシーリングモードに変形する。

そして、桜色の光の帯が思念体を締め上げる。

『Stand by, Ready.』

「ジュエルシード シリアルⅩⅩⅠ!封印!!」

『Sealing』

光の帯が思念体を貫き、消滅させていく。

そして、後には小さな青い宝石、ジュエルシードだけが残った。

「これが、ジュエルシードです。レイジングハートで触れて」

ユーノにそう言われ、なのははレイジングハートを翳すと、ジュエルシードがレイジングハートに吸い込まれる。

すると、なのはのバリアジャケットが解除され、レイジングハートも待機状態になる。

「あれ?終わったの?」

なのはは、実感が湧かないのか呆けた声を漏らす。

「はい・・・・・貴方のお陰で・・・・・・ありが・・・・とう・・・・・」

ユーノはそこまで言って、力尽きて気絶する。

それを確認した俺も、バリアジャケットを解除した。

「あっ、あのっ!利村君っ!私聞きたいことが!」

思ったとおり、なのはは俺に聞いてこようとするが、

「ちょっと待て、聞こえないか?」

「え?」

俺にそういわれてなのはは耳を澄ます。

パトカーのサイレン音が聞こえてきた。

そして、なのはは、現場の惨状を確認する。

「・・・・・・もしかして、私達・・・・ここにいると大変アレなのでは・・・・・・」

「・・・・・・まあそれは別にしても、補導対象であることには間違いないな」

俺は、買い物袋を拾いながら、なのはの言葉に答える。

「じゃ、じゃあ早く逃げないと・・・・」

なのははそう言うが、

「高町姉、走れるか?」

俺は高町 桜に尋ねる。

「だ、大丈夫よ・・・・・くっ・・・・・」

痛みを堪えようとする高町 桜を見て、

「全然大丈夫そうには見えないな・・・・・・しかたない、文句は後で受け付ける」

「えっ?」

高町 桜が、声を漏らした時、俺は彼女を抱き上げた。

「ちょ!?」

「あっ!」

2人が声を上げる。

何でなのはまで?

「ほら、なのは、逃げるぞ」

「う、うん・・・・・」

俺の言葉になのはは応え、俺は高町 桜を、なのははユーノを抱き抱えながらその場を後にした。








あとがき


とりあえず無印編に入ってみた。

流れとしては、原作沿いだったりそうじゃなかったり。

それに一人称は難しいです。

それから、皆様感想ありがとうございます。

結構好き放題やってたんで、全て反対意見であることすら覚悟してたんですけど、意外と賛成派も多かった。

これはビックリです。

まあ、この小説はこのノリで行くつもりなので覚悟しててください。

では。





[15302] 第四話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/01/17 13:53

第四話 事情説明






俺は、アニメでなのは達が逃げたであろう公園まで来ていた。

気付けば、なのはをかなり引き離していたらしく、振り向くと息を切らせながら必死に走ってくるなのはの姿。

そういえば、なのはって運動音痴だったけ。

「ぜはーっ!・・・・・ぜはーっ!・・・・・り、利村君・・・・・速過ぎるの・・・・・・・」

息を切らせる声からして、限界ギリギリだという事が分かる。

「あはは・・・・・わりぃ、わりぃ・・・・・・」

俺は苦笑しながら謝る。

なのはは、息を整えてこちらを見た。

すると、なのはの顔が、何となく不機嫌になった気がする。

「た、高町・・・・・どうした?」

俺はそう尋ねる。

「り、利村君・・・・・い、何時まで桜お姉ちゃんを抱いたままなのかな?」

そう言うなのはの額には、怒りマークが浮かんでいる気がした。

ああ、大好きなお姉ちゃんを俺みたいな奴に抱かれ続けてりゃ、不機嫌になるのも仕方ないな。

俺はそう判断し、近くのベンチに桜を降ろす。

「ッ!・・・・う・・・・・」

桜はその拍子に声を漏らす。

やはり痛むようだ。

「少しジッとしてろ」

俺はそう言うと、治癒魔法を発動させる。

左手の先にオレンジ色の魔法陣が発生し、魔法陣の光が桜を包む。

怪我は余り酷くなく、1分ほどで殆ど治せた。

「これで大丈夫なはずだ」

俺がそう言うと、桜は身を起こし、怪我をしていた部分を確かめるような動きをして、

「あ、ありがとう・・・・・」

そうお礼を言ってきた。

「どういたしまして」

俺はそう返しておく。

すると、

「桜お姉ちゃん!もう大丈夫なの!?」

なのはが桜に詰め寄った。

「うん。もう大丈夫よ、なのは」

桜は微笑んで答える。

「よかったぁ~」

なのはは安心した表情でそう言った。

すると、2人はこちらを向き、

「そうだ!利村君!さっきのアレは何だったの!?」

なのはがそう叫んだ。

やっぱ聞いてくるよな。

とりあえず、誤魔化せないだろうし・・・・・・

なのははともかく、桜の目が怖いんだよ!

さっさと吐けやゴラァ!的な視線です。

「・・・・・とりあえず、『アレ』の内容を1つずつ質問してくれ」

俺は、そう答えた。

「じゃ、じゃあじゃあ、さっきのドロドロのお化けは何だったの!?」

なのはが一つ目の質問をする。

「さっきのは、ロストロギアに集まった思念体が実体化したもの・・・・・・ロストロギアって言うのは、さっき高町が封印した青い石な。思念体の説明は言ってもわからんだろうから省略する」

俺はそう答える。

「ううっ・・・・それじゃあ、余り説明になってないの・・・・・」

なのははそう漏らす。

仕方ないだろ、魔法を理解して無い奴には説明できねーんだよ。

「2つ目・・・・・貴方は何者?」

突如として、桜が核心を突く質問をしてきた。

「あっ!それ私も気になるの!」

なのはも便乗する。

如何説明したもんか・・・・・・

「ん~・・・・・・なんと言うか・・・・・・数年前からこの街に住んでる異世界から来た魔法使い・・・・って所か?」

とりあえず要点だけを押さえた分かりやすいシンプルな答えを言った。

「ま、魔法使い!?」

なのはが驚く。

「因みに、さっき高町が使った封印も魔法だぞ」

「ええっ!?それじゃあ私、魔法少女になっちゃたの!?」

「まあ、そうなるな。喜べ、主人公。「魔法少女 リリカルなのは」のスタートだ」

「にゃぁああああっ!?なんなのその題名!?」

なのはがアニメタイトルに突っ込む。

「さっき、リリカル・マジカル言ってたのは、何処のどいつだ?」

俺がそう聞くと、

「にゃぁあああああああああああっ!?」

なのはは、恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして叫んだ。

「まあ、とりあえずこれから頑張れ主人公。応援ぐらいはしてやる」

「だからなんで主人公なの!?それに主人公っていうなら、利村君の方が、ずっと凄かったの!」

なのははそう返してくる。

「バカモン。初っ端から最強の主人公など、大部分は駄作の烙印を押されるわ!」

最強物は世間一般には受け入れられにくい。

俺は好きだが。

「そして、俺の立ち位置は、多くの作品で死亡役となっている主人公の近くの強キャラという立ち位置だな」

それは、純然たる事実である!

「にゃぁあああっ!利村君、死ぬなんて駄目なの!」

なのはは、俺の言葉を聞くと必死に叫んだ。

この反応は予想外。

「おい高町。何も今すぐ死ぬって訳でも、100%死ぬってわけでもないから、そんなに取り乱すな」

「にゃ・・・・・」

なのはは、はっとなって落ち着く。

しかし、次に何かに気付いたのか、顔が不機嫌になる。

「どうした?高町」

俺が気になって尋ねると、

「むぅ~~~~、なのはだよ」

突然そんな事を言った。

「は?」

俺が聞き返すと、

「私の事は、なのはって呼んで」

なのははそう言う。

名前で呼べ?

何故に?

「さっきは、なのはって呼んでくれたよね」

「え?」

俺が首を傾げると、

『確かに言いましたね』

ブレイズが肯定する。

「マジ?」

俺が確認を取ると、

『口を滑らせて2回ほど』

アイシクルが補足した。

「うぐ・・・・・・」

俺が、どうしたもんかと悩んでいると。

「確かに、『高町』だけじゃあ私とごっちゃになるわよね」

桜がそんな事を言ってきた。

「じゃあこうしましょ。私のことは「高町」って呼ぶ。なのはのことは、「なのは」って呼ぶ。これでオッケー」

桜は、ニコニコしながらそう言う。

「ちょっと待て!何でそんな結論になる!?」

俺は慌てて待ったをかけた。

「別にいいじゃない。何か問題ある?」

「ある!主に俺の精神面で!」

前世から考えても、家族と親戚以外でロクに女性と関わった事が無い俺にとっては、相当な精神負担である。

「さっきは「なのは」って呼んでたじゃない」

「それは、その時のテンションで、口を滑らしただけだ!」

「ふう・・・・・・ああ言えばこう言う」

桜は、呆れたような口調で言った。

何かそれが癪に障る。

「やかましい!大体なんで名前で呼ばせようとしてるんだよ!?」

少々声を荒げてしまった。

「そんなの、可愛い妹の初恋を成就させようっていう姉心からじゃない」

桜は、何でもないようにそう答えた。

俺は耳を疑う。

「は!?」

「にゃにゃっ!?さ、桜お姉ちゃん!?」

なのはは、顔を真っ赤にして取り乱した。

おい、そういう反応するってことは図星か!?

ありえんだろ!?

大体、きっかけは・・・・・・・・・・あ~・・・・そういえば一年生の時にあったな・・・・・・・あの時にフラグ立ってたのか・・・・・・

俺は思い当たる事があり、少し凹んだ。

そして、先ず始めに確認しなければいけないことは、

「正気か、高町!?」

なのはの精神状態を疑う事だった。

いや、俺に惚れるなんてありえんだろ。

「にゃっ!?利村君、そこは本気か?って聞く所だと思うの!」

なのははそう言ってくるが、

「狂って無ければ、洗脳か!?それとも誰かに脅されているのか!?」

俺は割と本気で尋ねた。

「にゃぁああっ!?洗脳されてる訳でもなければ、脅されてるわけでもないの!」

「ならば、目を覚ませ高町!俺よりいい男など幾らでも・・・・・っていうか、世界の男の9割は俺よりいい男だぞ!」

これは俺の本音である。

「そんなこと無いの!利村君はとっても優しくていい男の子なの!」

「俺は優しいんじゃなくて、臆病なだけだ!」

「それは嘘なの!臆病だったら、さっきは助けに入ってくれなかったの!」

「さっきの奴は確実に俺より弱かったからだ!言うなれば、俺は弱い者いじめをしただけだ!俺より強かったら、絶対に逃げてる!」

「それでも助けてくれた事には変わりないの!」

なのははしつこく食い下がる。

『なのはの言うとおりです!マスターは自分を過小評価しすぎです!』

『それにマスターは、強い敵に会ったとしても、助けを求められたら立ち向かうタイプです!自分1人なら、言うとおり逃げるでしょうけど・・・・・・・』

なのはの言葉にブレイズとアイシクルが同意した。

「お前らは俺を過大評価しすぎだ!」

『いいえ、今までのマスターの行動を統計した上での、適切な評価です』

俺たちが言い合っていると、

「にゃぁああっ!?ペンダントが喋ってる!?」

なのはが俺の首にかかっているブレイズとアイシクルを見て驚いた。

今頃気付いたのか?

「り、利村君!何でペンダントが喋ってるの!?」

なのはが尋ねてくる。

「こいつらは俺のデバイス。さっきなのはが使ったレイジングハートと一緒だな」

『初めまして。なのは、桜、私はマスターの相棒のブレイズといいます』

『同じくマスターの相棒のアイシクルです。以後よろしくお願いします』

「は、はい、こちらこそ」

なのはは礼儀正しく返事を返すが、テンパっているのが良く分かる。

「所で利村君」

「ん?」

桜に呼ばれて其方を向く。

「貴方のさっきの姿って、ウォーグレイモンを元にした姿よね?」

その言葉を聞いた瞬間、俺は固まった。

何で桜が知っているんだ?

この世界ではデジモンは無かったはずだぞ。

「その反応は図星ね」

そう言うと、桜は笑みを浮かべ、

「やっぱり貴方も転生者ね」

驚愕の一言を放った。









【Side 桜】



今、私はクラスメイトの利村 ユウに抱きかかえられている。

学校での彼は、正直、冴えない奴だった。

授業中に眠そうにしてるわ、テストも良い点を取ってるとは聞かないし、体育でも、これといって活躍しているわけじゃない。

いい噂もなければ、悪い噂も無い、一言で言えば、「目立たない」奴だった。

けど、今の彼は如何だろう?

ジュエルシードの思念体を、全く寄せ付けずに圧勝してたし、今も同年代の女子1人を軽々と抱き上げ走っている。

なのはが運動音痴とは言え、これだけのハンデがあるのに、なのはよりも速い。

如何見ても普段の彼からは、想像が付かない。

何より、一番驚いたのは、彼が魔導師であり、しかもそのバリアジャケットが前世のアニメでやっていたデジモンアドベンチャーに出てくる、ウォーグレイモンにそっくりだったのだ。

デジモンか・・・・・私も結構好きだったのよね。

特に無印は最高よ!

あれ?っていう事は、彼って転生者?




暫くすると、彼は公園に入っていった。

そこで漸くなのはを引き離していた事に気付いたらしく、苦笑しながら誤っていた。

なのはは、息を整えてこちらを見ると、顔が不機嫌になる。

「た、高町・・・・・どうした?」

彼はそう尋ねる。

「り、利村君・・・・・い、何時まで桜お姉ちゃんを抱いたままなのかな?」

そういえば、先程から私は彼に抱かれたままだ。

更に、そう言うなのはの姿を見て、確信した。

なのははヤキモチを焼いている。

そういえば、さっきの思念体に襲われた時も、彼の名前を呼んでたっけ。

これは、姉として応援しないわけにはいかないだろう。

私が考えを巡らしていると、彼は近くのベンチに私を降ろした。

「ッ!・・・・う・・・・・」

私は、その際身体に走った痛みで声を漏らす。

すると、

「少しジッとしてろ」

彼はそう言うと、左手をこちらに向け、オレンジ色の魔法陣が発生させる。

魔法陣の光が私を包むと身体の痛みがどんどん消えていく事がわかった。

1分ほどで殆ど痛みを感じなくなった。

「これで大丈夫なはずだ」

彼がそう言って、魔法陣を消す。

私は、試しにあちこちを動かしてみるが、痛みも無く、ほとんど問題ない。

魔法の凄さを私は実感して、

「あ、ありがとう・・・・・」

思わずお礼を言った。

「どういたしまして」

彼は、当然の事だと言わんばかりにそう返した。

「桜お姉ちゃん!もう大丈夫なの!?」

なのはが心配そうな顔で詰め寄ってきた。

「うん。もう大丈夫よ、なのは」

私は、なのはを安心させるように微笑んで答える。

「よかったぁ~」

なのはは安心した表情でそう言った。

そこで、私は彼に質問しようと視線を向けたとき、同時になのはも彼の方に振り向き、

「そうだ!利村君!さっきのアレは何だったの!?」

なのはが私の代わりにそう叫んだ。

とりあえず、私は彼に、嘘ついたら容赦しない的な視線を送っておく。

「・・・・・とりあえず、『アレ』の内容を1つずつ質問してくれ」

私の視線に観念したのか、彼はそう言う。

「じゃ、じゃあじゃあ、さっきのドロドロのお化けは何だったの!?」

なのはが一つ目の質問をする。

「さっきのは、ロストロギアに集まった思念体が実体化したもの・・・・・・ロストロギアって言うのは、さっき高町が封印した青い石な。思念体の説明は言ってもわからんだろうから省略する」

「ううっ・・・・それじゃあ、余り説明になってないの・・・・・」

なのははそういうが、私ももし尋ねられたら、「ジュエルシードの思念体」としか答えることは出来ない。

それに、それ以上の事を聞いても余り意味は無いため、

「2つ目・・・・・貴方は何者?」

私は次の、一番疑問に思う質問をした。

「あっ!それ私も気になるの!」

なのはも便乗する。

彼は、少しの間悩み、

「ん~・・・・・・なんと言うか・・・・・・数年前からこの街に住んでる異世界から来た魔法使い・・・・って所か?」

なんともシンプルな答えを言った。

異世界というのは、恐らく次元世界のことを指していると私は判断する。

「ま、魔法使い!?」

なのはが驚く。

「因みに、さっき高町が使った封印も魔法だぞ」

「ええっ!?それじゃあ私、魔法少女になっちゃたの!?」

「まあ、そうなるな。喜べ、主人公。「魔法少女 リリカルなのは」のスタートだ」

その言葉を聞いたとき、私の中でほぼ確信した。

彼は、神の言っていた転生者だと。

前世では私の運命の人だったらしいが、なのはが彼の事を好きなようなので、なのはに譲るつもりだ。

まあ、前世では全く知らない赤の他人なので、運命の人と言われてもピンと来ない。

「にゃぁああああっ!?なんなのその題名!?」

なのはがアニメタイトルに突っ込む。

正式名称だとは口が裂けても言えないわね。

「さっき、リリカル・マジカル言ってたのは、何処のどいつだ?」

「にゃぁあああああああああああっ!?」

彼の言葉に、なのはは恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして叫んだ。

「まあ、とりあえずこれから頑張れ主人公。応援ぐらいはしてやる」

「だからなんで主人公なの!?それに主人公っていうなら、利村君の方が、ずっと凄かったの!」

それは私も思う。

「バカモン。初っ端から最強の主人公など、大部分は駄作の烙印を押されるわ!」

正論だけど、それは創作小説での話でしょ。

私は好きだけど。

「そして、俺の立ち位置は、多くの作品で死亡役となっている主人公の近くの強キャラという立ち位置だな」

なんとも後ろ向きな発言だと私は思った。

其処は、最強オリ主だと喜んでもいいだろうに。

実際、私たちにとっては今は現実なのだ。

危険な事に巻き込まれる上では、力があったほうが良い。

「にゃぁあああっ!利村君、死ぬなんて駄目なの!」

「おい高町。何も今すぐ死ぬって訳でも、100%死ぬってわけでもないから、そんなに取り乱すな」

「にゃ・・・・・」

なのはは、はっとなって落ち着く。

しかし、次に何かに気付いたのか、顔が不機嫌になる。

「どうした?高町」

彼が気になって尋ねると、

「むぅ~~~~、なのはだよ」

突然そんな事を言った。

「は?」

「私の事は、なのはって呼んで」

なのはの言葉に、彼は何故に?という顔をしている。

「さっきは、なのはって呼んでくれたよね」

「え?」

彼は首を傾けているが、今思えば、確かに言っていた。

『確かに言いましたね』

彼の首にかかっているペンダントが点滅し、そう声を発した。

彼のデバイスだろう。

でも、2つあるのは何故?

「マジ?」

『口を滑らせて2回ほど』

「うぐ・・・・・・」

彼が、なにやら悩んでいるようなので、私はなのはの応援に回ることにした。

「確かに、『高町』だけじゃあ私とごっちゃになるわよね」

私は、少し考えて口を開いた。

「じゃあこうしましょ。私のことは「高町」って呼ぶ。なのはのことは、「なのは」って呼ぶ。これでオッケー」

「ちょっと待て!何でそんな結論になる!?」

彼が待ったをかける。

「別にいいじゃない。何か問題ある?」

「ある!主に俺の精神面で!」

「さっきは「なのは」って呼んでたじゃない」

「それは、その時のテンションで、口を滑らしただけだ!」

「ふう・・・・・・ああ言えばこう言う」

私は呆れる。

名前ぐらいでそんなに嫌がらなくても。

いや、嫌がっているというよりは、苦手にしてるといった方が正解ね。

もしかして、女の子と殆ど付き合ったことが無いとか?

「やかましい!大体なんで名前で呼ばせようとしてるんだよ!?」

彼のその質問に、

「そんなの、可愛い妹の初恋を成就させようっていう姉心からじゃない」

私は本音で答えた。

「は!?」

彼は、鳩が豆鉄砲食らったようにポカンとした。

「にゃにゃっ!?さ、桜お姉ちゃん!?」

なのはは、顔を真っ赤にして取り乱した。

可愛い反応だわ。

彼は暫くポカーンとしていたが、正気を取り戻すと、

「正気か、高町!?」

なんとも呆れた質問をなのはにしていた。

そこは、「本気か?」って聞く所じゃないの?

「にゃっ!?利村君、そこは本気か?って聞く所だと思うの!」

なのはも同意見らしい。

「狂って無ければ、洗脳か!?それとも誰かに脅されているのか!?」

更に彼の予想は斜め上に走り出した。

脅しはともかく洗脳なんか出来るわけ無いでしょうに。

そんなに信じられないの?

「にゃぁああっ!?洗脳されてる訳でもなければ、脅されてるわけでもないの!」

「ならば、目を覚ませ高町!俺よりいい男など幾らでも・・・・・っていうか、世界の男の9割は俺よりいい男だぞ!」

そこまで自分を卑下する事も無いだろうにと私は思う。

「そんなこと無いの!利村君はとっても優しくていい男の子なの!」

「俺は優しいんじゃなくて、臆病なだけだ!」

「それは嘘なの!臆病だったら、さっきは助けに入ってくれなかったの!」

「さっきの奴は確実に俺より弱かったからだ!言うなれば、俺は弱い者いじめをしただけだ!俺より強かったら、絶対に逃げてる!」

「それでも助けてくれた事には変わりないの!」

彼となのはが微妙な言い争いを繰り広げているが、私は神の言っていた事に納得していた。

こいつ、想像以上に後ろ向きだわ。

『なのはの言うとおりです!マスターは自分を過小評価しすぎです!』

『それにマスターは、強い敵に会ったとしても、助けを求められたら立ち向かうタイプです!自分1人なら、言うとおり逃げるでしょうけど・・・・・・・』

彼らのデバイスもなのはに賛同して、彼を褒め称える。

後者は微妙だが。

「お前らは俺を過大評価しすぎだ!」

『いいえ、今までのマスターの行動を統計した上での、適切な評価です』

「にゃぁああっ!?ペンダントが喋ってる!?」

なのはが驚く。

「り、利村君!何でペンダントが喋ってるの!?」

なのは、今更よ。

「こいつらは俺のデバイス。さっきなのはが使ったレイジングハートと一緒だな」

『初めまして。なのは、桜、私はマスターの相棒のブレイズといいます』

『同じくマスターの相棒のアイシクルです。以後よろしくお願いします』

「は、はい、こちらこそ」

なのはは礼儀正しく返事を返すが、テンパっているのが良く分かる。

しかし、このままいくと、話が進まない気がしてきたので、私は、爆弾とも言える質問を投下した。

「所で利村君」

「ん?」

こちらを向く彼。

「貴方のさっきの姿って、ウォーグレイモンを元にした姿よね?」

その言葉を聞いた瞬間、彼は固まった。

その反応を見て、再度確信する。

「その反応は図星ね」

私は、一呼吸置いて笑みを浮かべ、

「やっぱり貴方も転生者ね」

彼の顔が驚愕に染まった。









【Side Out】




【Side なのは】




今、私はフェレットさんを抱いて走っています。

私の目の前には、桜おねえちゃんを抱きかかえた利村君。

ううっ、ちょっぴり桜お姉ちゃんが羨ましいの。

でも、さっき「なのは」って呼んでくれて嬉しかったの。

そんな事を考えているうちに、利村君との距離はどんどん離れていきます。

り、利村君・・・・・・速過ぎるの。

利村君は、桜お姉ちゃんを抱きかかえているにも拘らず、私との差は縮まる所か、開く一方です。

普段の利村君は、体育では活躍してなかったのに・・・・・・

私が運動音痴というのも原因なのかも知れませんが。

私は、利村君を見失わないように必死で走りました。

そして、もう少しで見失いそうになると思ったとき、利村君は、公園に入っていきました。

た、助かったの・・・・・・





利村君は私を引き離していた事に気付いていなかったらしく、苦笑しながら誤ってきました。

私は、息を整えて利村君を見ます。

そこで気付きました。

桜お姉ちゃんが、未だに利村君に抱きかかえられている事に。

何故かそれを見て、ムカっときました。

「た、高町・・・・・どうした?」

私の様子に気付いたのか、利村君がそう尋ねてきます。

「り、利村君・・・・・い、何時まで桜お姉ちゃんを抱いたままなのかな?」

私は平静を装おうと思いましたが、声が震ってしまいました。

利村君は、近くのベンチに桜お姉ちゃんを降ろしました。

「ッ!・・・・う・・・・・」

桜お姉ちゃんはその拍子に痛そうな声を漏らしました。

私は心配になりましたが、

「少しジッとしてろ」

利村君が左手を桜おねえちゃんに向けると、オレンジ色の円になにやら良く分からない模様が描かれたモノが現れました。

私は驚きで声を失いました。

1分ぐらいすると、

「これで大丈夫なはずだ」

そう言って、光の円に模様が描かれたモノを消しました。

「あ、ありがとう・・・・・」

桜お姉ちゃんが利村君にお礼を言うと、

「どういたしまして」

利村君は当然の事だと言わんばかりにそう言いました。

「桜お姉ちゃん!もう大丈夫なの!?」

私は、桜お姉ちゃんに尋ねます。

「うん。もう大丈夫よ、なのは」

桜お姉ちゃんは微笑んで答えてくれました。

「よかったぁ~」

私は、桜お姉ちゃんが治った事で安堵の言葉を漏らします。

そこで、私は、利村君に聞きたいことがあったのを思い出しました。

「そうだ!利村君!さっきのアレは何だったの!?」

私がそう聞くと、

「・・・・・とりあえず、『アレ』の内容を1つずつ質問してくれ」

そう言ったので、私は尋ねました。

「じゃ、じゃあじゃあ、さっきのドロドロのお化けは何だったの!?」

「さっきのは、ロストロギアに集まった思念体が実体化したもの・・・・・・ロストロギアって言うのは、さっき高町が封印した青い石な。思念体の説明は言ってもわからんだろうから省略する」

「ううっ・・・・それじゃあ、余り説明になってないの・・・・・」

よく分からない単語ばっかりなの。

「2つ目・・・・・貴方は何者?」

桜お姉ちゃんが質問しました。

「あっ!それ私も気になるの!」

私も便乗します。

利村君は、少しの間悩み、

「ん~・・・・・・なんと言うか・・・・・・数年前からこの街に住んでる異世界から来た魔法使い・・・・って所か?」

その答えを聞いて、私は驚愕しました。

「ま、魔法使い!?」

思わず叫びます。

「因みに、さっき高町が使った封印も魔法だぞ」

その言葉で、私は更に驚きました。

「ええっ!?それじゃあ私、魔法少女になっちゃたの!?」

「まあ、そうなるな。喜べ、主人公。「魔法少女 リリカルなのは」のスタートだ」

「にゃぁああああっ!?なんなのその題名!?」

魔法少女はともかく、何でリリカルなの!?

「さっき、リリカル・マジカル言ってたのは、何処のどいつだ?」

「にゃぁあああああああああああっ!?」

余りに的を射ている言葉に、私は叫びました。

た、確かにリリカル・マジカル言ったの。

「まあ、とりあえずこれから頑張れ主人公。応援ぐらいはしてやる」

「だからなんで主人公なの!?それに主人公っていうなら、利村君の方が、ずっと凄かったの!」

私は思ったことを叫びました。

「バカモン。初っ端から最強の主人公など、大部分は駄作の烙印を押されるわ!」

だからなんで作品を例に挙げるの!?

「そして、俺の立ち位置は、多くの作品で死亡役となっている主人公の近くの強キャラという立ち位置だな」

その言葉に、私は思わず我を忘れて叫びました。

「にゃぁあああっ!利村君、死ぬなんて駄目なの!」

「おい高町。何も今すぐ死ぬって訳でも、100%死ぬってわけでもないから、そんなに取り乱すな」

「にゃ・・・・・」

私は、利村君に言われてはっとします。

ですが、同時にガッカリしました。

さっきは「なのは」って呼んでくれたのに。

「どうした?高町」

「むぅ~~~~、なのはだよ」

私はむくれてそう言いました。

こうなったら、意地でも「なのは」って呼んでもらうの。

「は?」

「私の事は、なのはって呼んで」

私の言葉に、利村君は首を傾げます。

「さっきは、なのはって呼んでくれたよね」

「え?」

利村君は首を傾けているけど、確かに聞いたの。

『確かに言いましたね』

何処からともなく援護がきたの。

「マジ?」

『口を滑らせて2回ほど』

「うぐ・・・・・・」

利村君はなにやら唸っていますが、

「確かに、『高町』だけじゃあ私とごっちゃになるわよね」

桜お姉ちゃんが口を開きました。

「じゃあこうしましょ。私のことは「高町」って呼ぶ。なのはのことは、「なのは」って呼ぶ。これでオッケー」

桜お姉ちゃんは、嬉しい援護をしてくれました。

「ちょっと待て!何でそんな結論になる!?」

ですが、利村君は納得しませんでした。

「別にいいじゃない。何か問題ある?」

「ある!主に俺の精神面で!」

「さっきは「なのは」って呼んでたじゃない」

「それは、その時のテンションで、口を滑らしただけだ!」

「ふう・・・・・・ああ言えばこう言う」

利村君は名前で呼ぶことを認めません。

桜お姉ちゃんは呆れます。

むぅ・・・・・いい加減に観念するの!

「やかましい!大体なんで名前で呼ばせようとしてるんだよ!?」

利村君が叫びました。

「そんなの、可愛い妹の初恋を成就させようっていう姉心からじゃない」

桜お姉ちゃんの言葉に、私は一瞬固まりました。

「は!?」

「にゃにゃっ!?さ、桜お姉ちゃん!?」

私は桜お姉ちゃんに詰め寄ります。

な、何で分かったの!?

私は恥ずかしくなって、まともに彼の顔を見ることが・・・・・・・・

「正気か、高町!?」

何でその質問なの!?

「にゃっ!?利村君、そこは本気か?って聞く所だと思うの!」

「狂って無ければ、洗脳か!?それとも誰かに脅されているのか!?」

な、何で私の意思を認めようとしないのーっ!?

「にゃぁああっ!?洗脳されてる訳でもなければ、脅されてるわけでもないの!」

「ならば、目を覚ませ高町!俺よりいい男など幾らでも・・・・・っていうか、世界の男の9割は俺よりいい男だぞ!」

そんなこと無いの!私からしてみれば、利村君がいい男の子じゃなかったら9割は、いい男の子じゃないと思うの!

「そんなこと無いの!利村君はとっても優しくていい男の子なの!」

「俺は優しいんじゃなくて、臆病なだけだ!」

「それは嘘なの!臆病だったら、さっきは助けに入ってくれなかったの!」

「さっきの奴は確実に俺より弱かったからだ!言うなれば、俺は弱い者いじめをしただけだ!俺より強かったら、絶対に逃げてる!」

「それでも助けてくれた事には変わりないの!」

利村君は、自分の善い所を全然認めようとしないの。

『なのはの言うとおりです!マスターは自分を過小評価しすぎです!』

『それにマスターは、強い敵に会ったとしても、助けを求められたら立ち向かうタイプです!自分1人なら、言うとおり逃げるでしょうけど・・・・・・・』

またもや声が聞こえます。

「お前らは俺を過大評価しすぎだ!」

『いいえ、今までのマスターの行動を統計した上での、適切な評価です』

よく見ると、利村君の首にかかってるオレンジ色と青色のペンダントがピカピカ光って其処から声がしてるの。

「にゃぁああっ!?ペンダントが喋ってる!?」

それに気付いた時、私は叫びました。

「り、利村君!何でペンダントが喋ってるの!?」

私は利村君に問いかけました。

「こいつらは俺のデバイス。さっきなのはが使ったレイジングハートと一緒だな」

『初めまして。なのは、桜、私はマスターの相棒のブレイズといいます』

『同じくマスターの相棒のアイシクルです。以後よろしくお願いします』

「は、はい、こちらこそ」

私は利村君のペンダントに頭を下げました。

お、驚きすぎて頭が上手く回らないの。

「所で利村君」

桜お姉ちゃんが利村君に声をかけました。

「ん?」

利村君は、桜お姉ちゃんの方を向きます。

「貴方のさっきの姿って、ウォーグレイモンを元にした姿よね?」

その言葉を聞いた瞬間、利村君は固まった。

うぉーぐれいもんって何?

「その反応は図星ね」

桜お姉ちゃんは、一呼吸置いて笑みを浮かべます。

「やっぱり貴方も転生者ね」

そして、驚くべき一言を口にしたの。



【Side Out】





俺は、開いた口が塞がらなかった。

今、こいつは何て言った?

貴方“も”転生者?

じゃ、じゃあ、もしかして・・・・・・

「ま、まさか・・・・・・」

俺は声を漏らす。

「その通り。私も転生者よ。利村君」

その言葉で、俺は更に驚愕した。

「ふえ?桜お姉ちゃん、今、利村君のことテンセイシャって・・・・・・」

「ええ。彼も私と同じように前世の記憶を持ってるってことよ」

「ふぇえ!利村君もなの!?」

なのはが驚いた声を上げる。

っていうか、ちょっと待て!

「おい!なのはは転生の事を知ってるのか!?」

俺は思わず問いかけた。

「ええ。家族は皆、私が前世の記憶持ちってことは知ってるわ。特に隠すことでもないしね。まあ、他の人に言っても信じないでしょうけど」

確かに言ってる事は納得できる。

俺だって、リニスや、ブレイズ、アイシクルには、前世の記憶持ちという事は言ってあるし。

「それにしても、ちゃんとなのはのこと、名前で呼んでくれてるのね」

俺はその一言で固まった。

しまったぁああああああっ!また口滑らせたぁあああああっ!

「り、利村君・・・・・その・・・・・・・」

なのはは顔を赤くしてモジモジしている。

「なのは、折角だから、あなたも彼のこと名前で呼びなさいよ」

こいつはまた、爆弾を投下してくれやがりました。

「おい!」

俺は詰め寄ろうとしたが、

「貴方だけ名前で呼ぶなんて不公平じゃない」

「だったら・・・・!」

「今更苗字呼びに戻すのは無しよ!」

逃げ道塞がれたぁ!

「ほら、なのは」

桜はなのはを促す。

「う、うん・・・・・じゃ、じゃあ・・・・・・ゆ、ユウ君?」

なのはは顔を真っ赤にしながら、それでいて何処か嬉しそうな顔で俺の名前を呼んだ。

あ~~~~~畜生!そんな顔されたら断れねえだろうが!

「・・・・・・・・・・はぁ・・・・・好きにしてくれ」

俺は諦めた・・・・・・・

だが、このままなのはにフラグが立ち続けるのは拙い!

なのはの様な美少女の相手は、俺なんかじゃ釣り合わん!

何より、なのはにはユーノがいるだろ!

故に、少しでもフラグを折る為に俺は行動に出た。

「その代わり!めんどくさいからお前のことも桜って呼ぶからな!お前も俺のことはユウで良い!」

「なっ!?ちょっと!私は苗字でいいわよ!」

桜はそう言うが、

「煩い!散々好き勝手決めてくれやがって、だったらこっちも勝手に決めさせてもらう!」

こう言っとけば、なのはの印象も少しは悪く・・・・・・

「桜お姉ちゃん、ユウ君の言ってる事も、一理あるの」

なってはいなかった。

それどころか、俺の援護までしてます。

何でだ!?

(俺に名前を呼んでもらって、なのはも俺の名前を呼ぶことが出来て嬉しかったので、他の人への対応は余り気にしてなかったと知るのは後の話である)

桜は、なのはが特に嫌がってないことを知ると、

「わかったわ、ユウ。これでいいわね」

桜は、残念だったわね、と言う様な笑みを浮かべ、そう言った。

「あ・・・・ああ・・・・・・」

目論見が外れた俺は、力なく返事を返すことしかできなかった。







その後、ユーノが目覚め、原作と同じようなやり取り(違うと言えば、俺と桜の自己紹介が入ったぐらい)をした後、とりあえず高町家に向かうことになった。

俺はまあ、夜道で女の子2人は危ないだろうと思い、送っていくことにした(8歳の男子がいても余り変わらんだろうが)。

やはり2人の外出は、高町家の人たちにはバレバレであり、2人は恭也さんから説教を受けた。

しかし、その説教は家族への思いやりに溢れており、若干羨ましく思ったのは秘密にしておく。

そして、その次に気になるのはやはり自分だろう。

「君は?」

と、問われたので、

「2人のクラスメイトの利村 ユウです。買い物の帰りに2人を見かけたので、夜の道に女子2人は危ないだろうと思って、送ってきただけです。では、俺はこれで失礼します」

そう言って帰ろうと思い背を向けた。

だが、

「ちょっと待ちたまえ」

突如肩を掴まれた。

俺が振り向くと、其処には高町家の大黒柱である士郎さんがいた。

っていうか、いつ間に?

噂の神速って奴か?

「な、なんでしょう?」

士郎さんの顔は笑っているが、何とも言えない迫力に、若干引いてしまう。

「君のような子供が1人で夜の道を歩くのは危険だろう。私も付いて行こう」

士郎さんは、思いもよらない事を言った。

「あ、いえ、お気になさらず。此処からは10分ぐらいの所なので大丈夫です」

俺はそう言って断ろうとしたが、

「その僅かな油断が万が一を起こす原因になるんだ。遠慮しなくてもいいよ」

士郎さんのその言い方を聞くと、絶対に引かないだろうと思い、

「わかりました。お言葉に甘えさせていただきます」

そう答えた。





そして、特に何事もなく家に着いたのだが、玄関の前に来ても、士郎さんは帰ろうとしない。

「あの、ありがとうございました。もうここまでで大丈夫です」

俺はそう言ったが、

「いや、こんな遅くに君を買い物に行かせたご両親に『お話』があるんだ」

『お話』のフレーズが妙に気になる。

なのはの『お話』は、やはり家族の影響なのだろうか?

「いえ、その、家の親は・・・・・・・」

俺は口篭った。

ちょっと言い辛かった俺は、家の玄関を開ける。

「ただいま」

俺はそう言って家に入る。

「にゃあ」

猫形態のリニスが足元で鳴いた。

リニスよ、よりにもよって猫形態か。

続けて入ってきた士郎さんが家の中を監察する。

そして、当然の如く、位牌と共に飾ってある俺の両親の写真を目にした。

それを目にすれば、両親がどうなっているか一目瞭然だろう。

「ふむ・・・・・やはり君は家族がいなかったか・・・・・・恭也や桜、なのは達のやり取りを見ていた雰囲気を見て、もしやと思ったんだが・・・・・・・」

士郎さんは、既に見当はついていたらしい。

すげー洞察眼です。

「・・・・・・ええ・・・・・両親は1年と少し前に事故で亡くなりました」

俺は仕方なく白状する。

ただし、“事故”ではないが。

「君は、それから1人暮らしなのかい?」

その問いに、

「1人じゃありませんよ」

俺はそう言って、足元のリニスに目をやる。

「リニスがいましたから」

「にゃあ」

俺の言葉に同意するようにリニスが鳴いた。

「ふむ・・・・・・」

士郎さんは顎に手をやり、なにやら考え込む仕草をする。

少しすると、

「すまないがユウ君。電話を貸してくれるかい?」

士郎さんがそう言ったので、電話機のあるところに案内する。

士郎さんがダイヤルをプッシュすると、

「もしもし?桃子か?士郎だが、今日から家族が1人増えるが構わないか?」

俺はその言葉に驚愕した。

も、もしかして・・・・・・・

「うむ、わかった。これから連れて行く」

そう言って、士郎さんは受話器を置く。

そして、こちらを向き、

「そういうわけだ。今日から家に来なさい」

そう言う訳ってどういう訳!?

「いや、ちょっと待ってください士郎さん!何でそんな話になるんですか!?」

俺は叫んで問いかける。

「君のような10歳にも満たない子供を、放って置けるわけ無いだろう?丁度家には空き部屋もある」

いやいや、そうではなくて、いきなり見ず知らずに等しい子供を引き取ろうとするなんて、どういう御人好しですか!?

「いえいえ!今までもちゃんとやって来れたので、これからも大丈夫ですよ!」

主に家事をやったのはリニスだが・・・・・・・

「今までが大丈夫だからといって、これからも大丈夫という保障は無い」

俺の反論も容易く打ち砕かれる。

「お、俺にはリニスもいるんですよ!飲食店経営者として、動物を連れ込んじゃ拙いでしょ!?」

「店につれてこなければ問題は無い。今日からフェレットも来ることだしな」

俺の最善の言っても軽く破られた。

こうなったら最終手段しか・・・・・・

「俺は外見は8歳ですが、精神年齢は30歳超えてますんで大丈夫ですって」

これは桜が前世の記憶があることを、既に家族に打ち明けたという事で使える手だ。

「む・・・・・?それは・・・・・」

「ええ。お宅の桜さんと同じく俺にも前世の記憶があります。だから、心配しなくても大丈夫です」

俺は、此処まで言えば諦めるだろうと思っていた。

だが、

「だが、幾ら記憶があると言っても、この世界での君は8歳でしかない。それだと色々と不都合があると思うが?」

「うぐ・・・・・・」

士郎さんにそう言われて、俺は言葉を詰まらせた。

確かにその通りである。

買い物や家事程度なら、リニスでも大丈夫だが、如何せんリニスには戸籍という物が無い。

つまり、身元の保証が出来ないため、そういうものが必要な事が出来ないのだ。

っていうか、前世云々はあっさりと信じるんですね。

「・・・・・・・と、年頃の娘さんがいる家に、精神年齢30歳超えの男が住み着くのは問題あるのでは?」

最早俺に手は殆ど残されていなかった。

「自分からそう言ってくる人物に、その心配は不要だと思っているが?」

苦肉の策ですら、あっさりと一蹴される。

(これはユウの負けですね)

リニスが念話でそう言ってくる。

認めたくは無いが、俺は口で勝てる気はしなかった。

士郎さんはニコニコしているが、なんともいえない迫力に俺は勝てる気はしない。

これが管理局員だったら、問答無用でボコっている所だが、士郎さんにそんなことは出来ない。

寧ろ善意100%なのが、ある意味管理局より厄介である。

(ユウ、寧ろ此処でこの方についていった方がいいかも知れません)

リニスから思いもよらない提案が来た。

(な、何で!?)

俺は聞き返す。

(管理局が未だに貴方を保護しようとしてくるのは、しっかりとした身元保証人がいないからです。ですので、此処でこの方に身元保証人なっていただければ、管理局も貴方を保護しようとする口実が無くなる訳です。まあ、ユウがこの方を信じられないと言うのなら、話は別ですが・・・・・・)

リニスはそう言った。

リニスの言うとおり、最初の頃よりは頻度は低くなったものの、管理局は未だに俺を保護しようと度々やってくる。

その時に使っている口実が、身元保証人云々というわけだ。

俺はそれを聞くと、少し考える。

確かに、いい加減管理局を相手にするのもウザくなってきた。

それに対して、士郎さんたち高町家なら、信頼することも出来る。

だが、そうなると確実に原作に関わる事になるだろう。

俺が迷っていると、

(ユウ、貴方にはまだ家族は必要です)

リニスがそう言ってきた。

家族。

その響きに俺は懐かしさを覚える。

(そうか・・・・・そうだなリニス。けど、少し違うぞ)

(え?)

(俺にとっては、リニスも・・・・・それにブレイズやアイシクルも家族さ)

(あ、ありがとうございます)

リニスは少し驚いたようだが、嬉しそうに念話を返してきた。

俺は念話を終えると、士郎さんに向き直る。

「本当に・・・・・宜しいんでしょうか?」

俺は最後に確認を取る。

「もちろんさ」

士郎さんは笑顔で答えた。

「それなら・・・・・・今日からよろしくお願いします」

俺は、士郎さんに頭を下げた。

「ああ。それじゃあ、本格的な引越しはまた今度にすることにして、今日は、数日間の着替えや貴重品だけを用意すればいい」

「分かりました」

俺はそう言うと、旅行用のバッグを引っ張り出し、着替えや貯金通帳などの貴重品。

そして、両親が残してくれた一度も起動させていないレイジングハートと同型のインテリジェントデバイスをバッグに入れる。

そのバッグを肩に担ぎ、

「リニス」

リニスを呼ぶと、猫形態のまま俺の懐に飛び込んでくるので、バックを担いでいない方の手で抱き上げる。

士郎さんに準備が出来た事を伝えると、士郎さんと共に、再び高町家へ向かった。






士郎さんによって高町家の玄関が開かれると、

「お帰りなさい」

桃子さんが出迎えた。

その後ろには恭也さんと美由希さん。

驚いた顔でなのはと桜がいた。

俺も士郎さんの後に続いて縮こまるように高町家の玄関を潜った。

「えっと・・・・・お邪魔します・・・・・・」

俺は少し小声になってしまった。

「違うわよ、ユウ君」

桃子さんが言った。

「今日からここが、あなたの家よ」

そう言って、ニッコリと微笑む。

その笑みから導き出される答えは、

「えっと・・・・・その・・・・・・た、ただいま・・・・・?」

俺は疑問系になってしまった。

「「「おかえり」」」

桃子さん、恭也さん、美由希さんが同時に言った。

その言葉を聞くと、何故か瞳から涙が零れた。

「え?あれ?何で俺泣いてるんだ?」

俺はそれに気付くと慌てて拭う。

俺のその様子を見て、高町家の皆は微笑ましく見つめてくる。

俺は気を取り直し、

「今日からご厄介になります!よろしくお願いします!」

俺は頭を下げた。

「ええ。よろしくね」

桃子さんがそう返した。

すると、なのはと桜が俺に前に出てきて、

「ゆ、ユウ君・・・・・今日から家に住むって本当?」

なのはは顔を赤くしながら尋ねてきて、

「ああ。まあ、今日から頼む」

「う、うん・・・・・」

俺の答えに頷いた。

「それにしても、何でそんなことになったのよ?」

桜はそう尋ねてきた。

「士郎さんに、俺の両親がいない事が知られちゃってね」

俺は答える。

「え!?両親がいないって・・・・・・まさか・・・・・」

桜は驚愕した表情を浮かべる。

「ああ。俺の両親は、1年以上前に事故で亡くなってるよ」

その答えに、なのはも驚愕する。

「そ、そんな!じゃ、じゃあ、1年ぐらい前にユウ君が落ち込んでたのって・・・・・・」

なのはの言葉に俺は内心驚いた。

気付いてたの?

俺は平静を装ってた心算だけど・・・・・・

「まあ、そういう事だ。気にすんなよ。気を使われると返って疲れるから」

俺はそう言って、士郎さんたちに向き直る。

「皆さん、俺を家族として受け入れてもらい、ありがとうございます。それで、俺を受け入れてもらうに当たって、話しておきたいことがあるんです」

俺は、既に決めていた事を口にした。




居間に、俺と高町家の全員が集まる。

ユーノもなのはに抱かれている。

「ではまず、士郎さんや、なのは、桜には話したんですけど、俺は桜と同じく転生者です」

「転生者って・・・・・ユウ君も前世の記憶があるって事?」

美由希さんがそう尋ねてくる。

「はい」

俺は頷き、

「それは間違いないわよ美由紀姉さん。今回の人生じゃ知らないはずのことを知ってたから」

桜が補足する。

その言葉に、一番驚いているのはユーノである。

そういえば、なのはと桜に話したときは、まだ気絶してたっけ。

「まあ、この家ではその程度如何でもいいでしょうけど、此処からが大事な所です」

俺は一呼吸置き、

「俺は、この世界の人間ではありません」

地球での秘密を明かした。

「え・・・・?この世界の人間じゃないって・・・・・・?」

美由希さんが声を漏らす。

なのはと桜は先程少しだが話したので、それほど驚いてはいない模様。

士郎さん、桃子さん、恭也さんは、真剣に俺の話を聞こうとしている。

「世界は、この世界一つだけではなく、他にも数多くの世界が存在しています。俺達は、それらを総称して、次元世界と呼んでいます。そして、俺はその中の1つ、ミッドチルダという世界の生まれです。その世界では、科学技術だけでなく、魔法文明も発達しています」

「ま、魔法!?」

美由希さんが驚く。

さっきから美由希さんばっかりが驚いてるな。

「まあ、素敵ね」

桃子さんがそう言う。

驚いてる・・・・・・のか?

「まあ、口で言っても信じられないでしょうから、証拠を見せます。リニス」

俺は猫形態のリニスに声をかける。

リニスが俺の腕の中から飛び降りると、光に包まれ人間形態に姿を変える。

「初めまして、私はユウの使い魔、リニスと言います」

リニスはお辞儀をしながらそう名乗った。

あ、全員固まった。

今度は士郎さん達まで固まっている。

「にゃぁああああああああっ!?ネコさんが人間になったぁ!?」

なのはの叫び声で、その場が動き出す。

すると突然、桜に引っ張られ、

(ちょ、ちょっと!リニスってもしかしてプレシアの使い魔のリニス!?)

小声でそう問いかけてきた。

(ああ。契約が切れて消えそうになってたのを見つけてな。再契約して俺の使い魔になってもらってる。まあ詳しい事は後々話すよ)

俺はそう答える。

桜は少し納得いかない顔をしていたがしぶしぶ下がる。

そして、俺は続ける。

「リニスは俺の使い魔です。使い魔って言うのは、主・・・・・リニスの場合は俺ですね。主から魔力を貰って存在します。そして、その代わりに使い魔は主を助ける。簡単に言えばそういう関係です。とまあ、此処まで見せれば魔法云々は信じてくれると思いますが・・・・・」

「ああ。それだけ見せられれば。信じるしかないだろう」

「俺が話したかったのはそれだけです。だから、何だって訳ではないんですが、ただ、知っておいて貰いたかったんです。これから家族になる人達に、隠し事はしたくありませんから」

「そうか、ありがとう」

「いえ・・・・・」

俺が話を終えると、

「ねえねえ、ユウ君。今の話を聞いてると、ユウ君って魔法使いなんだよね?」

美由希さんがニコニコしながらそう聞いてくる。

「ええ、そうですが・・・・・」

「じゃあ、私にも魔法って使えるのかな?」

そう言われて、俺は美由希さんの魔力を探ってみるが、案の定何も感じない。

「残念ですけど、魔法を使うにはリンカーコアという特殊な器官が必要になります。こればっかりは先天性の問題なのでどうすることも出来ません。何より、地球の人々の殆どはリンカーコアは持ってないんです。まあ、突然変異で稀に大きな魔力を持った人は現れますが、比率としては1億人に1人ぐらいの割合です」

「何だ、残念」

美由希さんは口ではそう言っているが、大して気にしていない雰囲気だ。

恐らく、駄目元で聞いてきたんだろう。

「まあ、その1億人に1人しか持たない資質を、なのはと桜は持ってるんですけどね」

俺はつい言ってしまった。

まあ、元々ユーノの正体は暴露する心算でいたので特に問題は無い。

士郎さん、桃子さん、恭也さん、美由希さんの視線がなのはと桜に集中する。

その視線に2人は一瞬たじろいだ。

「さて、次はなのはの番だぞ」

俺はそう言った。

「ふ、ふぇ?」

なのはは何のことか分かっていなさそうに声を漏らす。

「他人の事なら特に首突っ込む気はなかったけどな、家族なら話は別だ。お前が話さないなら、俺が言うけど?」

「あ・・・・・う・・・・・・」

何のことか気付いたなのはは、如何しようかと迷っているようだ。

「なのはがどうかしたのか?」

恭也さんが尋ねてくる。

「ええ。ちょっと魔法関係に首突っ込みまして・・・・・」

その言葉に、恭也さんはピクリと反応する。

なのはは、ユーノと顔を見合わせると、ユーノは申し訳なさそうにして頷く。

姿はフェレットなのでそんな気がしただけだが。

すると、ユーノはなのはの元からテーブルの上に飛び乗る。

そして、

「こんな姿で申し訳ありません。僕は、ユーノ・スクライアといいます」

ユーノは喋りだした。

「フェレットが喋った!」

美由希さんが驚く。

とは言っても、先ほどのリニスほどではないが。

「君も使い魔なのかい?」

士郎さんは割と落ち着いてそう尋ねる。

「いえ・・・・僕は・・・・・・」

「スクライア一族は、遺跡などの探索の為に、変身魔法を得意としている。で、元々ユーノは人間だけど、魔力が空っぽになったから、元の姿より省エネな、小動物の姿になってるってところだろ?」

俺がそう言うと、

「あ、気付いてたんですね・・・・・・・その通りです・・・・・」

すると、

「ふぇえええええええっ!?ユーノ君って人間だったの!?」

なのはが盛大に驚いた。

「ごめんなのは。そういえば言ってなかったね」

ユーノが謝る。

そこで俺はふと思った。

「なあユーノ。魔力さえ回復すれば人間に戻っても問題ないんだよな?」

「え?う、うん。今の問題は魔力だけだからね」

「そうか・・・・」

俺はブレイズを首から外すと、左手に握る。

そして、ブレイズを通してユーノに魔力を送り込んだ。

俺が普通に魔力を送ったら俺の魔力に耐え切れずユーノがボロボロになってしまうが、ブレイズに送る量を調節してもらっているため、問題は無い。

「う、嘘・・・・・・空っぽだった魔力が満タンに・・・・」

ユーノが大層驚いている。

「これで問題ないだろ?」

「う、うん」

ユーノが頷くと、床に飛び降り、光に包まれる。

そして、その光が収まると、黄土色の髪に、民族衣装のような服装をした少年がいた。

「これが、僕の本当の姿です」

その姿を見ると、聞いていたとは言え、高町家の人々の驚きは隠せないようであった。

そして、ユーノは事の起こりを話し出した。

とある世界の遺跡で、ジュエルシードと呼ばれる21個のロストロギアを発掘した事。

それを、管理局まで運ぼうとしたが、輸送船が何らかの事故に遭い、ジュエルシードが海鳴市にばら撒かれてしまった事。

ジュエルシードを発掘してしまったのは自分なので、その責任を取るために単身この世界にやってきて、ジュエルシードを回収しようとした事。

しかし、結局は力及ばず、2つ目のジュエルシードの思念体に敗北し、念話で助けを求めた事。

そして、その念話に応えたのがなのはと桜であり、なのはの力を借りてジュエルシードを封印しようとしたが、突然の事態に2人は対処できなくなり危険に晒してしまった事。

そして、その時に俺が助けに入り、時間を稼いでいるうちになのはの力を借りてジュエルシードを封印し、今に至る事を説明した。

ユーノは話し終えると頭を深く下げた。

「申し訳ありません。僕の所為で、なのはさん達を危険な事に巻き込んでしまいました」

ユーノはそう言うが、

「あのさ、私達を巻き込む巻き込まないの前に、ユーノの何処に責任があるのか分からないんだけど」

桜がそう言う。

「それは・・・・・僕がジュエルシードを発掘してしまったから・・・・・・」

ユーノはそう呟く。

「あのな、スクライア一族は遺跡の探索や発掘で生計を立ててるんだろ?だったら発掘する事自体は仕方ないんじゃないか?それがお前らの生き方なんだから。お前が言うように発掘してしまったことが責任になったら、スクライア一族が生きていくこと自体が責任重大になっちまうんじゃねえのか?」

俺がそう言うと、ユーノははっとした。

「でも、まあ、お前が来てくれなかったら、海鳴が大変になってたことは間違いないんだし。封印術式もって無い俺じゃ、負けないことは出来るけど、勝つ事は出来ないからな」

俺がそう言うと、

「お父さん!お母さん!」

なのはが声を上げた。

「私に、ユーノ君のお手伝いをさせて!」

なのははそう言った。

「なのは!?」

ユーノが驚愕の声を上げる。

「ジュエルシードが海鳴に落ちてきたのはユーノ君の所為じゃないけど、このままじゃ皆が危ないんでしょ!?私、そんなの嫌だ!それに、私には皆を助けられる力がある!だから、お願い!お父さん!お母さん!」

なのはの言葉に俺は驚愕した。

此処までの決意をするのは、街中に大樹が現れるジュエルシード事件が終わった後のはずだからだ。

恐らく、俺の一言がなのはに自分からジュエルシードを集める決意をさせてしまったんだろう。

士郎さんは、なのはの言葉を聞くと、腕を組んで考える。

なのはは頑固なので考えは変えないだろう。

「私は、反対しないわ」

桃子さんが何と最初に許可の意を示した。

「なのはの初めての我侭だもの・・・・・なのはの好きなようにやらせてあげたいの」

桃子さんはそう言った。

だったら、俺がすべき事は、少しでもなのはの危険を減らす事だ。

最早、死亡フラグだのなんだの気にしてる場合ではない。

「ふぅ・・・・・それなら、俺も協力するよ」

俺は口を開いた。

「ユウ君!?」

なのはも驚いている。

「戦闘関係は俺とリニスで引き受けます。なのはは封印に集中させて、ユーノがなのはのサポート。そうすれば、なのはの負担はグッと減る。そして、万が一俺が戦闘に出れない場合に備えて、なのはにもリニスの魔法特訓を受けてもらう。これなら、なのはが危険な目に遭う可能性がかなり低くなります」

俺はそう説明した。

そこに、

「私にもデバイスがあれば、なのはを手伝えるんだけどね・・・・・」

桜が少し悔しそうにそう呟いた。

「桜は、なのはを手伝いたいのか?」

俺がそう尋ねると、

「当たり前でしょ!私の大切な妹なのよ!」

そう真っ直ぐな瞳で言ってきた。

俺は、バッグからインテリジェントデバイスを取り出し、

「これは、レイジングハートと同型のインテリジェントデバイス。まあ、俺が持ってても使えないし、桜が使ってくれてかまわない」

俺はそう言って桜に差し出す。

「ホント!?」

桜は嬉しそうに手を伸ばし、そのデバイスを手に取った。

そのデバイスは白銀色に輝いている。

「これで私もなのはを手伝えるわ!父さん、安心して。なのはは私が必ず守るから」

桜が士郎さんに向かってそう言った。

士郎さんは一度、大きく息を吐き、

「わかった。お前たちの好きにしなさい。ただ、必ず無事に帰ってくること、私が言いたいことはそれだけだ」

士郎さんの言葉を聞くと、なのはは顔をパッと輝かせ、

「ありがとう!お父さん!お母さん!」

そう言った。



そしてその後、

「ユウ!早くデバイスの起動パスワードを教えてよ!」

桜が俺に詰め寄ってきた。

桜自身も結構ワクワクしているようだ。

「わかったわかった。じゃあ、そのデバイスを手に持って心を落ち着かせろ」

そう言うと、桜は言われたとおりに落ち着き、目を瞑った。

「我、使命を受けし者なり」

「我、使命を受けし者なり」

桜は俺の言葉を繰り返す。

「契約の元、その力を解き放て」

「契約の元、その力を解き放て」

その雰囲気に、周りで見ている高町家の人々+ユーノも黙っている。

「風は空に、月は天に」

「風は空に、月は天に」

デバイスが徐々に光を放ってくる。

「「そして!不屈の魂はこの胸に!この手に魔法を!レイジングソウル!セットアップ!!」」

桜が白銀の光に包まれる。

「自分の杖とバリアジャケットを想像しろ!」

俺はそう叫んだ。

「もう決まってるわよ!」

桜はそう返事をする。

そして、その光が消えた時、

「にゃ!?桜お姉ちゃん、その姿って・・・・・」

思わずなのはが声を漏らした。

桜のバリアジャケット姿はなのはとほぼ同じであり、違う所といえば、青いラインの所が桜は赤色であり、後は髪型がポニーテールであるという事だけ。

杖の方も、レイジングハートと同じ形で、デバイスコアが白銀で、レイジングハートではピンク色だった部分が赤くなっていることだけ。

「ふふっ!なのはとお揃いだね」

桜は笑顔でそう言った。

その時、

――カシャ

っと、シャッターを切る音がした。

其方を見れば、いつの間にかデジカメを構えている桃子さん。

「桜、可愛いじゃない」

そう言って、もう一度シャッターを切る。

「か、母さん!何写真撮ってるの!」

桜は恥ずかしいのか顔を赤くする。

しかし、桃子さんは止まらず、

「なのはも、同じ格好になれるのよね?ねえ、やってみてくれない?」

「にゃぁあああああっ!?」

桃子さんの言葉になのはは叫ぶが、結局桃子さんに押し切られ、無理矢理セットアップさせられる羽目になった。

お揃いの2人の姿を見て、更にご機嫌になる桃子さん。

2人の姿をどんどんカメラに収めていく。

こうして、いつの間にか魔法少女撮影会場となった高町家での、俺の初の夜は過ぎていった。









あとがき


やりたい放題やりました。

色々と原作外れまくり。

いきなり正体暴露。

そして、桜の魔法少女化。

更には、一人称の大変さを知った第四話でした。

三人称に比べると、書く量が2,3倍近い。

それぞれの心理描写を書かないといけないんですんげー大変。

まあ、とりあえず勢いとノリだけで書いてるんでこんなもん。

なのはのイメージが星なので、桜のイメージは月です。(単純)

デジモンネタからなんか引っ張ろうと思ったんですけど、なんかイメージに合うものがいなかった。

故になのはとお揃いにしました。

そして、皆様感想ありがとうございます。

既にPVが17000を超えるという信じられない事が。

何でだろ?





皆様の質問には、この場で答えようと思います。






Q、他の形態はあるのか?

A、あります。ブレイズがウォーグレイモンなら、アイシクルは・・・・・・・それに・・・・・・




Q,主人公はオメガモンの形態になれるのか?

A、半分正解と答えておきます。




Q,私の運命の人←実はストーカー?

A、そうではなくて、神様が決めていた運命の人です。序に言えば、主人公の今回の人生は、神様の計らいにより、その当たりの設定が無制限になってます。




Q、主人公の両親をあっさり切り捨てすぎじゃないのか?

A、後の伏線でもありますのでお待ちを。




Q、リニスの戸籍とかはどうしてるのか?

A、今回の話の中にも出てきますが、リニスに戸籍はありません。



では、これにて。





[15302] 第五話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/01/17 14:31
第五話 新しい生活




あの後、俺は自分にあてがわれた部屋に案内された。

その部屋は、既に整理されており、普通に暮らしていける部屋であった。

・・・・・・いつの間に用意したんだ?

俺は疑問に思ったが、考えたら負けだと思ったので、気にしないようにした。

因みにリニスは、猫形態で同じ部屋である。

まあ、1年以上同じ屋根の下で暮らしているので、特になんとも思ってはいない。

と、その時、

――コンコン

と、ドアがノックされる。

「どうぞ~」

俺がそう言うとドアが開き、

「入るわよ」

桜が入ってきた。

「桜か。どうした?」

俺がそう聞くと、

「決まってるでしょ。話を聞きにきたのよ。何でリニスを使い魔にしてるのか。あと、これからの事もちょっと」

そう言ってきた。

「ああ、そういえばそうだったな。まあ、立ち話も何だから座ってくれ」

俺がそう言うと、桜はベッドに腰掛ける。

俺は、置いてあった勉強机のイスに座り、桜と向き合う。

リニスが俺の膝に乗ってくる。

こういう所は猫っぽい。

「リニスについては、1年以上前に契約が切れて消えそうになってたリニスを偶然見つけて、再契約したってだけなんだけど」

俺はリニスを撫でながらそう言う。

「本当に?」

桜がそう聞き返してくると、

「本当ですよ。プレシアとの契約が切れた後、1人消えようとランダムで転送した先にユウが偶然いて、そこで契約しただけです」

リニスがそう言う。

「ふ~ん・・・・・まあ、それは良いとして、問題はこれからよね。なのはとフェイトはやっぱり友達にさせときたいし・・・・・・・・」

俺はそれを聞いて、あ、と思いだした。

「あ~~~~・・・・・・・その~~~~・・・・・・・フェイトのことなんだが・・・・・・・・」

俺は少し言い出し辛く、言葉を濁す。

「どうしたのよ?」

桜が尋ねてくる。

「多分だけど、フェイトはジュエルシード事件に関わってこないぞ」

そう言った瞬間、

「ちょ!?何でよ!?」

桜が問い詰めてくる。

「いや、テスタロッサ家は、アニメと違って家庭円満らしいんだよ」

「へ・・・・・?」

俺の言葉に、桜は呆気にとられた顔をする。

「リニスの話じゃ、アリシアは今現在でも俺たちと同い年で存命中らしい」

「え・・・・・・・?ちょっと待ってよ!それじゃあフェイトは生まれてないんじゃ・・・・・!?」

桜は一瞬呆気に取られるが、大事な事を思い出し再び問い詰めてくる。

「心配するな。ちゃんとフェイトもいる。何でも、アリシアの「妹が欲しい」の一言でプレシアがフェイトを生み出したとか」

「は・・・・・・・・・?」

桜はポカーンとしている。

余りにもアニメと違いすぎているので、考えが追いつかないらしい。

「あと、なのはとフェイトを友達にさせたいんなら、ジュエルシードの事件が一段落したら、時の庭園を探して、こっちから行けば良いんじゃねえの?こっちにはリニスもいることだし。リニスの里帰りについていくみたいな感じで同行すれば、それなりに歓迎してくれると思うけど?」

俺がそう言うと、

「・・・・・・え?あ、そうね・・・・・その手があったか」

まだ驚きから立ち直っていないのか、今気付いたようにそう言う桜。

「フェイトとなのはの友達計画はそれで良いとして、あんたはこれからどうするの?」

桜は気を取り直して、そう尋ねてくる。

「そうだな・・・・・・・こうなった以上、ジュエルシードに関わる事は決定事項だしな。死亡フラグが立っている身としては、自分の安全を確保しつつ、ジュエルシード集めを手伝うぐらいだろ」

俺はそう言った。

「死亡フラグって・・・・・・あんた何処まで後ろ向きなの?最強オリ主だって考えとけばいいじゃない」

桜にそう言われ、

「俺が主人公?絶対にありえん!」

俺はそう断言した。

「そんなに自信に満ちた態度で断言しなくても・・・・・・・」

桜は呆れた様子である。

「これが俺の前世から続く性格だ。悪かったな」

それを聞くと、桜は一度ため息を吐き、

「まあ良いわ・・・・・・あんたが自分をどう思っていようと、なのははあんたに惚れてて、頼りにしてるんだから、しっかり守ってあげてよ」

そう言った。

「惚れてる云々は一時の気の迷いだろうけど、とりあえず死なない程度に頑張らせてもらう」

俺はそう答える。

「あんた、未だに惚れられてる事認めようとしないのね・・・・・」

「当たり前だろ。俺なんかが、なのはみたいな美少女に分類される女の子とつり合う訳無いだろ!」

俺は自信を持って答えた。

「はぁ~~~~・・・・・・その自信をもう少し前向きに持ってくれば、かなりカッコいいんだけどな~・・・・・」

桜は大きくため息を吐いた。

その後に何か言ったようだが、声が小さくて聞き取れなかった。

まあ、俺に対する呆れた感想だろう。

「まあ、明日からはお願いね」

「ああ」

桜の言葉に俺は頷く。

すると、桜は立ち上がり、部屋のドアへ向かう。

「それじゃ、おやすみ」

部屋から出る前に、桜はそう言った。

「あ、ああ。おやすみ」

俺もそう返す。

こうして、俺の非常に長く感じた一日は、終わりを告げた。








翌日。

俺は日の昇らないうちから目が覚めた。

「う~ん・・・・・・」

どうやら、慣れていない寝床の為に、いつもより早く目が覚めたらしい。

「ユウ?もう起きたのですか?」

猫形態になって、俺の枕元で丸くなっていたリニスが顔を上げる。

「ああ。布団や枕に慣れてないせいか、目が覚めちゃってね」

時計を見ると、6時を指している。

二度寝するにも微妙であり、なにより目が冴えてしまって寝れそうに無い。

「リニス、軽く身体動かすか?」

俺はリニスに尋ねる。

「付き合いましょう」

リニスはそう返事をした。




俺はジャージに着替えて庭へ出る。

そして、リニスが防音結界を張る。

「じゃあ、ブレイズ。身体強化たのむな。強化具合は30%ぐらいで」

『了解です』

俺はブレイズに魔力を流し込み、ブレイズが魔力を調節して俺の身体を強化する。

自分自身でも身体強化は可能だが、それだと常に100%になってしまうので、幾らリニスでも相手は出来ない。

よって、俺はブレイズかアイシクルを通さないと手加減が殆ど出来ないのだ。

序に言っておくと、ブレイズの身体強化がパワー重視で、アイシクルの身体強化はスピード重視である。

リニスも身体強化を済ませ、俺たちは向き合う。

因みに、リニスの身体強化具合は、50%から60%といった所だ。

「ふっ!」

俺は拳を繰り出す。

それをリニスは左手で受け止める。

「はっ!」

リニスは、右足で回し蹴りを放ってきたので俺は左腕で受け止めた。

そのまま、拳と蹴りの応襲を繰り返した。





【Side なのは】



――♪~♪~♪~♪~♪~♪♪~

私は、いつもの携帯のアラームで目を覚まします。

手探りで床に落ちた携帯に手を伸ばし、アラームを止めてベッドから起き上がります。

う~ん、と伸びると、制服に着替えて部屋を出ます。

と、そこで丁度別の部屋から出てきたユーノ君とバッタリ会いました。

「あ、ユーノ君、おはよう」

私は笑顔で挨拶します。

「あ、う、うん。おはよう・・・・・」

ユーノ君もそう返してきます。

実はユーノ君もこの家に居候する事になりましたが、昨日はフェレットの姿で過ごすと言っていました。

ユーノ君が言うには、フェレットの姿なら、フェレット相応の食事で済むので食費も浮きますし、寝床も場所を取らない為、迷惑をかけることが少なくて済むという話でした。

しかし、お父さんやお母さんは、それを良しとしませんでした。

結局、お父さんやお母さんに押し切られ、ユーノ君は家でも人間の姿で暮らすことになったのです。

その事を思い出していると、私の部屋の向かい側の扉が開き、桜お姉ちゃんが出てきました。

「ふわぁ~~~~・・・・・・おはよ、なのは、ユーノ」

桜お姉ちゃんは一回欠伸をした後、私たちに挨拶しました。

「おはよう、桜お姉ちゃん」

「おはよう」

私とユーノ君も挨拶を返します。

「あれ?ユウはまだ寝てるの?」

桜お姉ちゃんはそう尋ねてきました。

「どうだろ?僕達も今起きた所だから」

「あ、じゃあ私が起こすね!」

私はそう言って、ユウ君の部屋の前に行きました。

ちょっとドキドキするの。

私はユウ君の部屋のドアをノックしました。

「ユウ君、朝だよ!」

私はそう言いますが、中からは返事が返ってきません。

「ユウ君?」

私はもう一度いいますが、今度も返事はありません。

「ユウ君、入るね?」

私はドアを開けて、ユウ君の部屋の中に入りました。

しかし、ベッドにはユウ君の姿はありませんでした。

「ユウ君?」

私は周りを見渡します。

すると、ユーノ君が何かに気付いたのか、窓の外を眺めました。

そして、私のほうを見て、

「なのは」

窓の外を指差しました。

私は、ユーノ君に促されるまま、窓の外を見ました。

窓から見えた庭では、ユウ君とリニスさんが組み手をやっていました。

でも、その速さが尋常じゃないの。

ユウ君の動きは、明らかに小学3年生が出来る動きじゃありません。

少し見ていて、私はおかしい事に気付きました。

「音が聞こえない?」

驚く事にユウ君とリニスさんの組み手の音が全く聞こえなかったのです。

「よく見てなのは。防音結界が張ってある」

ユーノ君の言葉でよく見ると、ユウ君たちの周りには、見えない膜のような物が覆っている事に気付きました。

「あれは?」

「結界魔法の一種で防音結界。その名の通り、結界内からの音と外からの音を完全に遮断する結界だよ。その結界を張っていると、結界の中からの音は外に聞こえないし、逆に外からの音も中には聞こえないんだ」

結界っていうのは良く分からなかったけど、とりあえず私は納得しました。






【Side Out】






軽い組み手を終えた後、なのはが朝食だと呼びに来た。

気付けば、1時間ほど時間が経っていた。

俺は部屋に戻って制服に着替え、居間に行く。

俺、リニス、ユーノを加えた高町家の食卓は、賑やかだった。




俺、なのは、桜の3人は学校なので、揃って高町家を出る。

通学バスに乗り込む時、アリサとすずかに何か言われるかと思ったが、丁度この日は、2人はバスには乗っていなかった。

そして学校に着き、教室に入る。

「アリサちゃん、すずかちゃん、おはよう!」

「アリサ、すずか、おはよ!」

なのはと桜は、アリサとすずかに挨拶をする。

「おはよう!なのは、桜」

「なのはちゃん、桜ちゃん、おはよう」

アリサとすずかもそう挨拶を返した。

一方、俺は誰とも挨拶を交わすことなく自分の席に着く。

誰も友達がいないのでそれは仕方ない。

アリサやすずかも、偶々なのは達の後に来た程度にしか映っていないだろう。

だが、それは甘い考えだった。

ふと気がつくと、なのはがこちらに近付いてくる。

「むぅ~~!ユウ君、何でさっさと自分の席に座っちゃうの?」

なのはは、不機嫌だ。

「いや、俺って特に親しい友達いないし」

俺は答える。

「だったら、今日からでも皆と仲良くするの!」

なのははそう言うが、

「俺の性格的に無理」

俺はきっぱりと言った。

俺は、何かとつけて人付き合いが苦手なのだ。

と、言うより、前世では、自分の自覚無しに相手を怒らせることが多かったため、友達と呼べる相手など、片手で数えられるぐらいしかいなかった。

因みに、その数少ない友達は、俺と同じようにゲームやアニメが趣味で、尚且つ人付き合いが上手い奴。

そう言った限られた人種(と言って良いのかは分からないが)しか、俺が付き合っていける友達はいなかった。

あ、因みに全員男だぞ。

そんな前世からの経験+死亡フラグ回避の為に目立たないようにしていた事で、未だに友達はいないのだ。

はやて?

はやてとは、顔見知りになっただけで友達まで行ってないと思うが・・・・・・

因みに初めて会った後も、図書館で何回かはやてに会ってます。

一応声はかけられるが、ちょっと世間話をするだけだ。

まだ、友達とは言えんだろ?

そんな事を俺が考えていると、

「なのは、何でそんな奴に話しかけてるのよ」

アリサが近付いてきた。

まあ、確かに俺は「そんな奴」ですけど。

「そいつね、昨日から家に居候することになったの」

アリサの後ろで桜がそう言った。

いきなり暴露するのか。

何となくこの後の予想が出来た俺は耳を塞ぐ。

「「ええぇ~~~~~~~っ!!」」

アリサとすずかが驚きで叫んだ。

驚くのは当然だろう。

特に目立たないクラスメイトが、自分の親友の家に転がり込んだというのだ。

接点が全く無い上に、いきなりすぎる。

「な、何でいきなり!?」

すずかがそう尋ねる。

「昨日、ユウが独り暮らししてるのを父さんが知って、そのまま家に連れて来たんだ」

桜が答える。

「独り暮らしって・・・・・・両親は?」

アリサが疑問を口にする。

「家の両親は、一年以上前に事故で死んでるよ」

俺は仕方なく答えた。

その言葉で、アリサとすずかはバツの悪そうな顔をする。

「あ、その・・・・・・なんていうか・・・・・・」

「・・・・・ごめん・・・・・」

2人は謝る。

「気にするな。気を使われると返って疲れる」

俺はそう言っておく。

「そうそう、言っておくけど、こいつ根暗で冷たい印象があるかもしれないけど、ただ性格が後ろ向きなだけで、根はいい奴よ」

桜がそう言った。

「おい、根暗で冷たいというのは認めるが、いい奴って何だ、いい奴って?俺はそんな善人じゃねえぞ」

俺は思わず突っ込んだ。

「ね?」

桜が2人に目配せする。

「た、確かに」

「後ろ向きだね~」

何故か2人は苦笑しながら納得していた。







相変わらず眠たくなるような授業を乗り越え、放課後になる。

そういえば、神社の方でジュエルシードが発動するんだっけ?

俺は、何故かなのは、桜、アリサ、すずかと一緒に帰る事になっており、今は海岸沿いの道を歩いている。

なのはと桜はどうやらユーノと念話しているらしい。

そのまますずかの家ですずかと別れ、アリサはそこで迎えが来ていた。

アリサは乗っていくように誘ったが、なのは達はそれを断る。

やがて、高町家の近くまでやってくるが、

――ドクン

魔力の波動を感じた。

「い、今のって!?」

「もしかして・・・・・」

なのはと桜が声を漏らす。

「ジュエルシードが発動したんだ。近いぞ」

俺はそう言って駆け出す。

2人も後を追ってくる。

アニメと同じように、ジュエルシードは神社で発動している。

石段の前まで来ると、そこでユーノが合流した。

「皆!」

「ああ、行くぞ!」

ユーノの言葉に俺は応えて、石段を駆け上がる。

その時、

「ねえ、ユウ!」

桜が声をかけてくる。

「何だ?」

俺が聞くと、

「最初は私となのはに任せてくれない?」

そんな事を言って来た。

「何でだ?」

「私達は素人なのよ!少しでも実戦で魔法に慣れとかなきゃ!」

俺は桜の言いたい事を理解する。

「そういう事なら分かった!けど、危ないと思ったら直ぐに飛び込むからな!」

「お願い!」

桜はなのはの方を向くと、

「なのは!そういう事だから、最初は私たちだけで行くわよ!」

「わ、わかった!」

なのはは、若干戸惑ったようだが、しっかりと返事を返した。






【Side 桜】




「なのは!そういう事だから、最初は私たちだけで行くわよ!」

「わ、わかった」

私の言葉に、若干の戸惑いが入ったが、しっかりと返事をするなのはの姿を見て、私は前を向く。

そして、白銀の宝石、レイジングソウルを手に取り、

「レイジングソウル!セットアップ!」

『Yes, Master. Stand by, Ready. Set up.』

レイジングソウルは、私の言葉に応え、起動する。

杖状になったレイジングソウルを手に持ち、バリアジャケットを纏う。

「起動パスワード無しで起動させた!?」

ユーノが驚いている。

一応、昨日寝る前に試したから私は別に驚かないけどね。

ユーノは気を取り直し、

「なのはもレイジングハートを!」

「うん!」

なのはも制服の中からレイジングハートを取り出す。

そこで私達は石段を登りきった。

「グォオオオオオオオオッ!!」

そして、目の前にはジュエルシードに取り込まれ、真っ黒な犬の怪物がいた。

これって本来は子犬なのよね?

面影が、全く無いわ。

「原住生物を取り込んでる!」

ユーノが焦った声で言った。

「ど、どうなるの?」

なのはが尋ねた。

「実体がある分、手強くなってる!」

ユーノの言葉に、

「大丈夫!・・・・・・多分」

なのははそう言って、一歩踏み出す。

そして、

「なのは!レイジングハートの起動を!!」

ユーノの叫びに、

「へっ?起動って何だっけ?」

なのはは気の抜ける発言をする。

アニメで見たときは呆れたけど、実際その立場になると焦るわ。

その時、犬がこちらに突っ込んでくる。

「あっ!」

「『我は使命を』から始まる、起動パスワードを!」

「ええっ!あんな長いの覚えてないよ!」

やっぱりアニメの通りになったわね。

このままほっといても大丈夫かもしれないけど、万が一という事もある。

私は、なのはの前に立ち、レイジングソウルを構える。

「守って!レイジングソウル!!」

『Protection.』

私の声に応えて、レイジングソウルは白銀の魔力障壁を張る。

あ、やっぱり私の魔力光って白銀なんだ。

そのまま犬は突っ込んできて、私はそれを受け止める。

「くぅ・・・・」

衝撃があり思わず声を漏らすが、十分耐えれる範囲だった。

犬は弾かれて後退する。

「さ、桜お姉ちゃん・・・・・ありがとう・・・・・」

なのはは驚いたようだが私に礼を言って来た。

それよりも、

「なのは!戦闘が始まっても戦う準備して無いって、危ないじゃない!」

私は怒った。

「これはゲームじゃないのよ!命の危険だってあるんだから!戦いに入る時は準備を万全に!わかった!?」

「あ、あうぅ・・・・・ごめんなさい」

なのはは謝ってくる。

「それは後でいいわ。早く起動させなさい!」

「う、うん・・・・・レイジングハート?」

なのははレイジングハートに呼びかけた。

すると、

『Stand by, Ready. Set up.』

レイジングハートが起動する。

「なのはも起動パスワード無しで起動させた!?」

レイジングハートが杖となり、バリアジャケットを纏う。

「えっと・・・・封印ってのをすればいいんだよね?レイジングハート、お願いね」

『All right. Sealing mode. Set up.』

なのはの言葉に応えて、レイジングハートがシーリングモードに変形する。

桜色の帯が犬を締め上げる。

私はこれで終わったと思った。

でも、

「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

その犬が一度雄叫びを上げると、体中から角のような突起物が飛び出し、更に醜悪な姿に変わる、それと同時に、締め上げていた桜色の帯が引きちぎられた。

「嘘っ!?」

私は思わず声を漏らした。

こんなこと、アニメでは無かった。

「ユーノ!一体何が起きたの!?」

私は叫んでユーノに問いかけた。

「た、多分、原住生物を取り込んだジュエルシードの放出するエネルギー量が増えたんだと思う!こうなったらそのままじゃ封印出来ない!ダメージを与えて弱らせないと!」

ユーノが言った。

その時、

「グガァアアアアアアアアアアアッ!!」

更に醜悪となった姿の犬が突っ込んできた。

「くっ!!」

私はレイジングソウルを構え、プロテクションを張る。

そのプロテクションに犬が突っ込んできた。

「くうっ!・・・・・ううっ・・・・・」

その威力は先程とは比べ物にならない。

「桜お姉ちゃん!」

なのはが叫ぶ。

「だ、大丈夫・・・・・」

私はそう答えるが、はっきり言って拙い。

――ピキッ

と、プロテクションに罅が入った。

「ううっ・・・・・」

幾らAAAの資質があるとはいえ、魔法初心者である私の障壁はやはり脆いようだ。

アニメのように都合よく行かない事を、改めて実感させられる。

――ピキピキッ

罅が広がる。

その時、

「チェーンバインド!!」

緑の魔力光のバインドがその犬を締め上げ、動きを止める。

そして、

「おらぁ!!」

次の瞬間、飛び込んできた影に、その犬は吹き飛ばされた。





【Side Out】






俺は、一歩下がって様子を窺っていた。

桜が最初からセットアップしていたお陰で、特にピンチになることは無いと思っていた。

なのはが起動パスワードを忘れた時も、桜がなのはを庇って黒い犬をプロテクションで受け止めた。

そして、その後に言った言葉、

「なのは!戦闘が始まっても戦う準備して無いって、危ないじゃない!これはゲームじゃないのよ!命の危険だってあるんだから!戦いに入る時は準備を万全に!わかった!?」

その桜の言葉には同意した。

アニメで見ていたときも、戦闘準備が完了する前に戦場に立つなど、無謀にも程があると思ったものだ。

なのはは謝り、レイジングハートを起動させる。

そして、ジュエルシードを封印するために、シーリングモードで黒い犬を締め上げた時に変化が起こった。

突如、黒い犬から感じる魔力が増大したのだ。

それに伴い、黒い犬にも変化が現れる。

その犬が雄叫びを上げると、体中から角のような突起が飛び出し、それによって締め上げていた帯が引きちぎられた。

その犬は更に醜悪な姿になり、なのは達を睨み付ける。

「ユーノ!一体何が起きたの!?」

桜が叫んでユーノに問いかけた。

「た、多分、原住生物を取り込んだジュエルシードの放出するエネルギー量が増えたんだと思う!こうなったらそのままじゃ封印出来ない!ダメージを与えて弱らせないと!」

ユーノが言った。

その時、

「グガァアアアアアアアアアアアッ!!」

変貌した犬が桜たちに向かって突っ込む。

「くっ!!」

桜はレイジングソウルを構え、プロテクションを張る。

そのプロテクションに犬が突っ込んだ。

「くうっ!・・・・・ううっ・・・・・」

桜は声を漏らしながら必死に耐える。

「桜お姉ちゃん!」

なのはが叫ぶ。

「だ、大丈夫・・・・・」

桜はそう言うが、はっきり言ってヤバイ。

――ピキッ

と、プロテクションに罅が入った。

「ううっ・・・・・」

魔法初心者の桜では、障壁の構成が甘い。

――ピキピキッ

罅が広がる。

「ユーノ!」

俺はユーノに呼びかける。

「わかった!」

ユーノは直ぐに頷くと、

「チェーンバインド!!」

緑の魔力光のバインドを放って、その犬を拘束した。

そして、俺は身体を強化し、

「おらぁ!!」

その犬を蹴り飛ばした。

その犬は吹き飛び、地面を転がる。

桜はプロテクションを消すと、その場で座り込む。

魔法初心者でありながら、いきなり相当な魔力を消費したのだから無理も無い。

「ユーノ!桜を守ってろよ!」

「わかった!」

俺の言葉にユーノは頷く。

俺は黒い犬に向き直ると、その犬は立ち上がろうとしていた。

俺は足元にオレンジ色の魔法陣を発生させ、左手を横に伸ばし、掌を上に向ける。

「ブレイズ、魔力調節を任せる。ちゃんと手加減しろよ」

『分かってますよ。マスター』

ブレイズはそう返事を返す。

俺は左手に魔力を集中させ、更に『炎熱』の魔力変換資質で魔力を炎に変換する。

俺の左の掌の上に炎が集まる。

その時、黒い犬は立ち上がり、こちらを見ると、一気に突っ込んできた。

「メガ・・・・・・」

俺は、炎を集めた左手を後ろに引き、

「・・・フレイム!!」

前に突き出すと共に、豪火球を放った。

「グギャァアアアアアアアアッ!!」

その豪火球は、黒い犬に直撃した。

その黒い犬は炎に焼かれていく。

俺はなのはに呼びかけた。

「なのは!封印だ!」

「う、うん!」

なのはは驚いたが、直ぐにレイジングハートを構える。

再び桜色の帯が黒い犬を締め上げた。

今度はその犬に反抗する力は無く、その犬の額にシリアルナンバーが浮かび上がる。

『Stand by, Ready.』

「リリカル・マジカル ジュエルシード シリアルⅩⅥ!封印!!」

『Sealing』

その犬は、桜色の光に包まれ、変貌した身体を分解させていく。

そして、取り込まれたであろう子犬と、ジュエルシードだけがその場に残った。

なのはがレイジングハートをジュエルシードに近づけると、ジュエルシードがレイジングハートのコアに吸い込まれた。

俺はそれを見届けると、

「まあ、予想外の事はあったけど、上出来だな2人とも」

俺はなのはと桜にそう言った。

「えへっ!」

なのはは無邪気な笑顔を見せ、

「まだまだ甘いわよ。この程度の相手に苦戦してるようじゃ・・・・・ね」

桜はそう呟いた。









因みに、何故この場にリニスがいないのかと言えば・・・・・・

「リニスー!3番テーブルお願い!」

「はい!」

「そのあと5番テーブルも!」

「は、はい~!」

桃子さんによって、翠屋のウェイトレスをやらされていたりする。








あとがき


第五話如何でしたでしょうか?

前半はともかく、後半はそれなりに上手くできたと思います。

皆様のアドバイスに従って、スッキリと纏めてみましたが如何でしょうか?

こんなものでよろしいでしょうか?

まあ、個人的にはアイシクルの出番が無いのが心苦しい。

次回には少しは出番ありますが、本格参戦はもっと後なんですよね。

それはともかく、1話当たりのPV数が10000を超えました。

前作、前々作を通して初めてのことです。(一応18禁では超えてましたが、あれは別で・・・・・)

勢いで書いた物が超えてるって・・・・・・ちょっと複雑です。

ゼロ魔とリリフロについては、次話の完成度が、ゼロ魔については5%。

リリフロが50%ってところですね。

スランプ続行中のため、今しばらくお待ちください。

では、質問タイムです。







Q、アリシアも転生者なのか?

A,その心算はありません。自分は転生者を多くすると、なんか面白いと感じる事がなくなるので、これ以上出さない予定です。



Q、リニスが翠屋でウェイトレスやってる姿が想像できたんですけどデフォですよね?

A、デフォです。




Q、砲撃魔法等を受けバリアジャケットが損傷を受けた場合、融合しているデバイスにも多大な損傷を与え下手をすれば両親の形見でもあるデバイスを消滅させる危険性があるのではないか?

A、この設定が活かす部分がなさそうだったので書かなかったのですが、一応、コアが左胸の内側にあって、このコアを破壊されない限りリカバリー可能な設定です。それ以前に、Sランクオーバーの攻撃でも、傷1つ付かないので壊れる心配は無用なんですけど・・・・・・最強にも程がある・・・・・






では、これにて。



[15302] 第六話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/01/24 12:46

第六話 遭遇。金色の魔法少女



無印が始まって1週間。

その間のジュエルシード集めはどうなっていたかアニメではやっていなかったが、特に問題もなく5つ集める事ができた。

前の神社の犬以外は、俺が手を出さなくても問題なかったし、なのはも桜も、リニスに魔法を教えてもらっているからか、危なげもなく事態を収拾している。

正直、俺って要らないんじゃねって思うぐらい。

因みになのはは、既に砲撃使いとしての片鱗を見せ始めていたりする。

遠距離攻撃魔法について教えたら、いきなりディバインバスターをぶっ放しました。

なのはは、新しい魔法を覚える事に関しては、俺よりも上だと思ったな。

桜も似たり寄ったりだけど。

それで、今日はアニメの通り翠屋JFCのサッカーの試合の日。

なのはと桜も、アリサ、すずかと一緒に応援に行く事になっている。

ユーノはフェレットモードで同席。

そして、何故か俺も一緒に行く事になっていた。

いや、キーパーがジュエルシード持ってるだろうから良いけどさ。






そして河川敷のグラウンド。

サッカー選手達がグラウンドを走り回っている。

それを応援するなのは達。

アニメではベンチに何人かいた補欠要員がいないのが少し気になったが、まあ些細な事だろうと思い、気にしないようにした。

俺は、応援する傍ら、サーチャーを飛ばして、キーパーが持っているはずのジュエルシードの反応を探した。

だが、

「あれ・・・・・・?」

俺は思わず声を漏らす。

「ユウ君?どうしたの?」

俺の声になのはが尋ねてくる。

「あ、いや、何でもない」

俺はそう答えたが、内心おかしいと思っていた。

キーパーが持っているはずのジュエルシードの反応が何処にも無い。

ベンチの荷物はもちろん、分からないように探知魔法でキーパー自身も調べたが、ジュエルシードの反応は無かった。

どうやらこの世界では、キーパーの少年はジュエルシードを拾ってないようだ。

俺は、めんどくさい事にならなきゃいいなと思いつつ、ため息を吐いた。

そんな時、

――ピピィーーーーーーッ

ホイッスルが鳴り響く。

俺が其方を見ると、翠屋JFCの選手が足を抑えて倒れていた。

どうやら接触プレーがあり、足に怪我をしたようだ。

士郎さんはその選手に駆け寄り怪我の具合を見ている。

マネージャーも救急箱を持って駆け寄り手当てを施すが、その選手は、士郎さんの手を借りて歩くのがやっとといった所だ。

「ああ・・・・・大丈夫かなぁ?」

アリサたちが心配そうな声を漏らす。

翠屋JFCには、補欠が居ない。

今日に限って、休みが出たそうだ。

このままだと、人数が足らなくて棄権せざる負えなくなる。

すると、ふと士郎さんが此方を・・・・・いや、俺を見た。

そして、俺と目が合うと、ニッコリと笑って此方に歩いてくる。

あ、なんかやな予感。

そして、俺の前に来ると、

「すまないユウ君。突然だが、試合に出てくれ」

「あ、やっぱり?」

士郎さんの言葉に、俺は思わず声を漏らした。

「今日は運悪く補欠が居なくてね。今日だけでいいんだ。やってくれないか?」

士郎さんがそう言うと、

「別にいいじゃないユウ。出なさいよ」

桜もそう言った。

「なのはも、ユウのカッコいい所見たいわよね?」

そうなのはに振る。

「え?えっと・・・・・・その・・・・・私もユウ君に出て欲しいな」

なのはは、若干顔を赤くしながらそう呟く。

「っていうか、アンタ運動できるの?」

アリサがそう言ってきた。

まあ、学校じゃ手を抜いてるから、その質問は当然だろうな。

「ああ。その辺は心配しなくていいわよ。コイツ、学校じゃ手を抜いてるけど、本当は運動神経抜群で、序に頭も私並に良いから」

桜がそう暴露した。

「うぉい!何勝手に人の評価を上げてやがる!」

俺は思わず叫んだ。

まあ、確かにこの身体はハイスペックだし、頭も前世の記憶と、今回の記憶力のお陰もあって、今の所は余裕だけど。

「本当の事なんだから良いじゃない」

「だからって、人を優等生みたいに言うんじゃねえ!俺はそんな碌な人間じゃないっつーの!」

俺はそう言ったが、

「はいはい、それは分かったから、出るの?出ないの?」

桜は見事にスルーし、要点だけを聞いてくる。

俺は、一回ため息を吐き、

「わかった。出るよ」

俺はそう答えた。






それで今、俺は翠屋JFCのユニフォームを着てグラウンドに立っている。

まあ、とりあえず出しゃばらないようにしよう。

俺がそう思っていると、俺にパスが来る。

そして、俺がそのボールを受け取ると、相手選手がボールを奪おうと突っ込んでくる。

なんていうか・・・・・うん、遅い。

俺は相手選手をかわすと、前に出ているチームメイトに向けてパスを出した。

チームメイトは、そのパスを受け取るとシュートを放つ。

そのシュートはゴールネットに突き刺さった。

うん、小学生はシュートを決めた奴に目が行きやすいから、パスを出すだけにしとけば目立たないだろう。

俺はそう思って試合に臨んだ。





【Side なのは】



今日は、お父さんがオーナー兼コーチをしている翠屋JFCの試合の日だったのですが・・・・・・

思わぬトラブルで選手が怪我を負ってしまい、人数が足らなくなってしまいました。

すると、お父さんはユウ君に試合に出るようにお願いしました。

ユウ君は少し迷っているようでしたが、桜お姉ちゃんがちょっと話しただけで、ユウ君は出てくれることになりました。

なんか桜お姉ちゃん、ユウ君の性格を熟知し始めているようで、上手い事その気にさせたようです。

それから、ユウ君の入った翠屋JFCの快進撃が始まりました。

最初は、ユウ君がボールを受け取った時です。

相手チームの選手が、ユウ君からボールを奪おうと、物凄い勢いでユウ君に突っ込んできました。

しかし、ユウ君は何でもないようにあっさりとその相手をかわして、更に此処しか無いと言う様な絶妙なパスを出し、それを受け取った選手がシュートを決めました。

その後も、ユウ君の活躍は凄かったです。

シュートはしないものの、ボールを受け取った時のキープ力と、絶妙なパスで次々とチャンスを作っていきます。

いつの間にか、ユウ君を中心に試合が動いていると思えるほどになっていました。

そして気付けば、翠屋JFCは5対0という大勝利をその手にしていたのです。







【Side Out】





何でだ?

試合が終わって俺は不思議に思っていた。

アニメでは2対0だった筈なのに、5対0という快挙を成し遂げた翠屋JFC。

そして、周りのメンバーから送られる尊敬の眼差し。

何でそんな目で俺を見る!?

俺、なんかしたか?

ただ、適当にパスを受け取って、適当に来た相手をかわして、適当にノーマークだった味方にパスを出しただけ。

うん、適当だらけ。

尊敬される事など何一つしてないぞ。

はっ、何を俺は思いあがっていたんだ。

俺が尊敬されるわけ無いだろうに!

つー訳で、これは単なる俺の思い込みってことだな、うん。

この後は、アニメの通り、翠屋で食事となった。

だが、俺は早々に切り上げ、気になっていた今回のジュエルシードの行方を捜すことにした。

出来れば、リニスにも手伝って欲しかったが、リニスはウェイトレスが忙しく、頼めそうに無かった。

なのはと桜は、そろそろ疲労が蓄積している頃なので、元々協力してもらう心算は無い。

ユーノは現在アリサとすずかに揉みくちゃにされているので、これも誘えない。

俺は仕方なく、1人でジュエルシードを探すことにした。

1人では封印出来ないが、見つけてからなのは達を呼んでも大丈夫だろうと考えていた。





アニメでは、信号機の所でジュエルシードが発動していたので、翠屋から歩いていける範囲の交差点を中心に、ジュエルシードを捜索する。

だが、一向に手がかりなし。

やがて日が傾いてきた為、そろそろ帰るかと思っていた。

だがその時、

「ッ!?」

結界が張られる。

だが、感じる魔力は、リニスの物でもユーノの物でもない。

「結界!?でも、一体誰が!?」

俺がそう漏らすと、

『マスター、2時の方向、200m先で魔力反応を確認。戦闘している模様です』

アイシクルがそう報告する。

「戦闘!?・・・・・わかった、行くぞ!」

俺は駆け出した。




反応があった地点に着いたとき、俺は呆然とした。

街中で暴れまわる赤い鬣をもった巨大な猪。

恐らくジュエルシードの暴走体だろう。

なんか、デジモンのボアモンに似てると思ったのは俺だけの秘密だが、まあ、こっちは如何でもいい。

問題は、その猪と戦っている2人。

1人は、オレンジ色の長い髪に、犬耳と尻尾がついた女性。

もう1人は、金髪のツインテールと黒いマントをはためかせ、鎌のような金色の魔力刃を発生させたデバイスを構えている少女。

どっから如何見てもフェイトとアルフです。

「何でフェイトとアルフがいるんだよ?」

俺は思わず呟く。

『あの2人がリニスの言っていた2人ですか?』

ブレイズが質問してくる。

「ああ、金髪の女の子の方がフェイトで、もう片方がフェイトの使い魔のアルフだ」

俺はそう説明する。

その間にも、フェイトたちは巨大な猪に立ち向かう。

猪は、その巨体を生かした突撃で体当たりを仕掛けるが、フェイトは一瞬で猪の後ろに回りこみ、一撃を加える。

更に、猪が止まった瞬間にアルフが横から殴りつけ、猪を横転させる。

しかし、猪は大したダメージを受けていないのか、ケロッとして起き上がる。

「なんてタフな奴だい!さっきから全然堪えてない!」

アルフが叫んだ。

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・思ったよりも強い」

フェイトも肩で息をしていた。

その様子を見ていると、

『確かにリニスの言うとおりあの子は強いですね。少なくとも、今のなのはや桜では相手になりません』

ブレイズが感想を述べる。

『ただし、今回の相手は相性が悪いようです。あの子はどうやらスピード主体。一撃の攻撃力が低い。アレでは猪の防御力の前では歯が立ちません』

アイシクルがそう判断する。

すると、

『マスター、助けましょう』

アイシクルがそう言ってきた。

「は?」

俺は思わずそう返す。

『強大な敵に襲われ、ピンチになるヒロイン』

『そのヒロインのピンチに颯爽と現れるヒーロー』

『そして、ヒロインを救い、名も告げずに去ってゆく』

『これほどカッコいい役はありません』

『『そうすれば、彼女のハートはあなたのものです』』

「このアホウ共」

俺は自分のデバイスたちの考えに呆れる。

『いえ、ですけど、あの子は結構マスター好みじゃないですか?』

『なのはの次はあの子ですね』

「まあ、確かにフェイトは可愛いと思うけどさ・・・・・・って言うか、アイシクル。なのはの次って何だなのはの次って!?」

『それは当然オトす事に決まってます』

アイシクルは、さも当然のように答える。

「聞いた俺がバカだった・・・・・・」

俺は頭を抱えた。

その時、

「このままじゃ埒が明かない。アルフ!少しだけ時間を稼いで!サンダーレイジで決める!」

「あいよっ!」

フェイトの言葉に、アルフは返事をする。

「うぉりゃぁあああああっ!!」

アルフは、猪に殴りかかり、怯ませる。

その隙に、フェイトは上空に飛び上がり、魔法陣を発生させた。

「サンダー・・・・・・・・」

フェイトはバルディッシュを振り上げる。

だがその時、猪がフェイトの方を向き、鼻先から高熱の息を放った。

「レイッ・・・・・うぁあああああああっ!?」

サンダーレイジの発動中だった為、思わぬ反撃をモロに受けるフェイト。

「フェイト!!」

アルフが悲痛な叫び声を上げる。

落ちて行くフェイト。

それを見た俺は、

「だぁああっ!畜生!マジでボアモンみたいな攻撃しやがって!仕方ない!アイシクル!!」

俺は右手でアイシクルを掴んだ。

『Yes, Master. Stand by, Ready. Set up.』

俺は青い光に包まれた。







【Side フェイト】



油断した。

今までの攻撃が全部突進だけだったから、遠距離攻撃は無いと決め付けていた。

まさか、あんな攻撃があったなんて。

身体はダメージで上手く動かせず、飛行魔法も制御できない。

私は落ちていく。

「フェイト!!」

アルフが悲痛な声を上げる。

ゴメンアルフ、失敗しちゃった。

私は心の中でアルフに謝る。

アルフが私を助けようと私に向かって走ってくるが、アルフのスピードでも間に合いそうに無い。

私は死を覚悟した。

それから思い浮かぶのは、優しい母さんと、大好きな姉さん。

「・・・・・・・・・母さん・・・・・・姉さん・・・・・・・ゴメンね・・・・・・・」

私は、そう呟き、涙を流す。

私は、最後にせめてアルフの姿だけはこの目に焼き付けようと思い、朦朧とする意識の中、目を開ける。

そして、私は見た。

アルフの後方で輝く、青い魔力光を。

そして、次の瞬間、

――ガシッ

私は誰かに受け止められた。

一瞬、私はアルフが奇跡的に追いつけたのかと思った。

でも、目を開けてみると、目の前にはバリアジャケットと思われる青い鎧を着た人物。

全身を機械的な鎧で覆い、両肩には3連装のミサイルランチャーに見えるものと、背中には機械的なウイングがあり、そこから魔力が放出されている。

顔も鎧に包まれているので、顔は分からなかったけど、黒い瞳が印象に残った。

「大丈夫か?」

声をかけてくる。

声からして男の子。

歳は背丈からして、私と同じくらいかな?

「・・・・・・あ、貴方は・・・・・・・?」

私は何とかそう尋ねた。

「通りすがりの魔導師だ。なんか危なそうだったんで首を突っ込ませてもらった」

その人はそう言った。

その時、

「危ない!!」

アルフの声が響く。

其方を見れば、さっきの猪が、再び鼻先から高熱の息を放ってきた。

すると、彼は左腕で私を胸元に抱き寄せ、攻撃から庇う体勢になる。

そして、右手をその攻撃に突き出すと、青い魔力光のシールドで容易く防ぎきった。

一方、抱き寄せられた私は、顔が熱くなるのを感じていた。

何でだろう?

彼のバリアジャケットは固くて冷たい筈なのに、暖かいと感じてしまうのは何故だろう?

「飛べるか?」

彼が突然そう言ってきた。

「・・・・あっ。は、はい!」

私は少し慌ててしまった。

私は彼から離れる。

「フェイトぉー!大丈夫だったかい!?」

アルフが泣きそうな顔で飛んできて、私に抱きついた。

「心配かけてゴメンねアルフ。私は大丈夫」

私はそう言ってアルフを宥める。

それから、アルフは私を助けてくれた彼の方を向くと、

「誰だか知らないけど、フェイトを助けてくれて感謝するよ」

礼を述べる。

「礼には及ばない。偶々見かけただけだからな」

彼はそう言って、ジュエルシードの暴走体に向き直る。

「奴の動きは俺が止める。封印は任せた」

「う、うんっ!」

彼の言葉に、私は反射的に頷いた。

何故か分からないけど、彼の言葉は信じられた。

彼は地上に降りると、ジュエルシードの暴走体を見据える。

ジュエルシードの暴走体は、前足を何度か地面に擦り付けた後、一気に彼に向かって突撃した。

それに対し、彼は肩にあったミサイルランチャーから、一発のミサイルを放つ。

それは煙の尾を引き、ジュエルシードの暴走体に直撃する。

その瞬間、氷漬けになる暴走体。

私は驚いた。

「凍結の・・・・・魔力変換資質・・・・・」

そう呟くが、たったあれだけで完全に凍りつかせた彼の実力も底が知れない。

「今だ!」

彼の言葉で、私は気を取り直し、魔法陣を展開する。

「サンダー・・・・・・・・・レイジィイイイイイイイ!!」

私の放った稲妻が、氷漬けの暴走体に直撃する。

「ジュエルシード シリアルⅩ!封印!!」

そのまま、私はジュエルシードを封印した。

そして、その後に残ったのは、ジュエルシードと、取り込まれていた原住生物。

私はバルディッシュでジュエルシードを回収する。

その後、私は彼に向き直った。

「あ、あの・・・・・助けてくれて・・・・・ありがとう・・・・」

私はお礼を述べる。

「気にするなよ。困った時はお互い様だ」

彼はそう言う。

「わ、私はフェイト・テスタロッサです。こっちは使い魔のアルフ。いつかお礼をしたいので、名前を教えていただけないでしょうか?」

私は自分とアルフの名前を言って、そう尋ねた。

しかし、

「ああ、別に名乗るほどのもんじゃねえし。お礼も気にしなくていいから」

彼はそう言って背を向ける。

「まあ、もし縁があったらその時にな。それじゃ、またな!」

そのまま彼は飛び去ってしまった。

「あ・・・・・・」

私は思わず手を伸ばしたが、既に彼は遥か彼方。

幾ら私でも追いつけないスピードだ。

「行っちゃった・・・・・・名前・・・・・聞けなかったな・・・・・・・」

私はポツリと呟く。

「フェイト?」

アルフが不思議そうに私の顔を覗き込む。

「フェイト・・・・・もしかして、惚れちゃったのかい?」

アルフのその言葉を聞いたとき、顔が一気に熱くなった。

「ア、アルフ!?」

私は思わず叫んでしまった。

私の反応を見て、アルフは笑った。

「あはは!フェイトにも春が来たねぇ~」

「ア、アルフ!そんなんじゃ・・・・」

「無いって言いきれる?」

「う・・・・・・」

アルフの言葉を否定しようとしたが、再び言われたアルフの言葉で詰まってしまう。

「ほらね」

「ううっ・・・・・で、でも、名前も聞けなかったし・・・・・また会えるかも分からないし・・・・・・・」

私はそう呟く。

「心配しなくても大丈夫さ。アイツが最後になんて言ったか覚えてるかい?」

「え?」

アルフの言葉に私は首を傾げる。

「アイツは、最後に『またな』って言ったんだよ。だから、また会えるさ」

アルフはそう言った。

私は、もう一度彼が飛び去った方を向いて、

「また・・・・ね・・・・・・」

小さく呟いた。







【Side Out】






ふう・・・・・・フェイトに会ったのは予想外だが、とりあえずシリアルⅩのジュエルシードが見つかってよかった。

あれが確か大樹になるジュエルシードだったからな。

っていうか、何でフェイトはこの世界に来たんだ?

『マスター、やりますね』

突然アイシクルがそう言ってきた。

「何がだよ?」

俺はそう尋ねる。

『先程のフェイトを助けた時ですよ。成り行きでも、私達が言った通りになりましたからね』

「は?」

俺は何のことだと首を傾げる。

『強大な敵に襲われ、ピンチになるヒロイン』

『そのヒロインのピンチに颯爽と現れるヒーロー』

『そして、ヒロインを救い、名も告げずに去ってゆく』

『先程のシチュエーションは正にその通りです』

『『確実にマスターに惚れましたね』』

デバイス達の発言に俺はまた呆れた。

「このアホデバイス共。そう簡単に惚れるわけあるか!」

俺はそう言う。

『いえいえ、人を好きになる事に時間など関係ありません』

『まだまだ純粋であるこの時期の女の子ならイチコロです』

2つのデバイスは、懲りずにそう言う。

「・・・・・・今更だが、ホントにお前ら人間臭いデバイスだよな」

俺は、頭を押さえて呟いた。

『何を今更』

『私達は、マスターが生まれる前から存在してるんですよ』

『いわば、リニスと同じく私達もマスターの保護者なのです!』

『そして、親ならば、子供の恋愛を応援するのは当然の事です』

『『そして、最終的には、男の夢であるハーレムを!!』』

「このアホデバイス(×2)が!!」

馬鹿なことを言う2つのデバイスに、俺は思わず叫んだのだった。








あとがき

やりたい放題な第六話です。

とりあえず大樹イベントを消して、フェイトとの遭遇です。

ご都合主義の如くフラグ立てました。

突っ込みどころは置いといてください。

一応、アイシクル使いましたが、大して活躍してない。

本格的な活躍は、もう少し後です。

言わずもがなメタルガルルモンのイメージです。

サッカーの方も、とりあえず主人公出しときました。

突っ込みどころ満載なのはあしからず。

それから、勢いだけで書いている小説ですが、何故か一話当たりのPV数が10000越えしているので、今回からは感想に対してしっかりと返信するようにします。





>空我様
感想ありがとうございます。
自分の考えは、極々単純です。
では、次も頑張ります。






>ゾゴジュアッグ様
感想ありがとうございます。
前作と前々作が3人称だったので、1人称でやるのは今作が始めてです。
感想を元に、色々と試して行きたいので、ご意見お待ちしてます。
では、次も頑張ります。





[15302] 第七話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/01/31 15:55

第七話 魔法少女達の邂逅。




さて、今日は原作で言う第四話。

つまり、すずかの家でお茶会があり、なのはとフェイトの出会いのイベントである。

何故か分からないが、フェイトもこの世界に来ているので、原作どおりになのはとフェイトは今日出会う可能性が高い。

因みに、桜とリニスにはフェイトと出会ったことを言っていて、そして今日、リニスをフェイトと会わせて、話を円滑に聞く予定であった。

・・・・・・・・そうだったのだが・・・・・・・・







「ゲホッ!ゴホッ!グホッ!ゲホッ!」

俺、只今自分のベッドで寝込んでます。

熱も40度近くまで上がって、苦しい苦しい。

病気は魔法で治せないからキツイよ。

おかしいな、前世はバカは風邪引かないを地で行ってたのに・・・・・・・

インフルエンザすら予防接種無しでかからなかったのに・・・・・・・・

あう・・・・・・考えるだけでも頭が痛い。

それで俺の看病役に、うつる心配の無いリニスが付く事になった。

なのはも「看病する」って言ってたが、もしうつったら大変だし、とりあえずフェイトとは会わせておきたいので、予定通りにすずかの家に行くように言った。






【Side 桜】




ユウが風邪を引いた。

アニメでは、今日フェイトと遭遇する筈なのだ。

ユウの話では、フェイトがこの世界に来ているらしいため、アニメの通りにフェイトと会う可能性が高い。

だから、リニスと一緒に行って、フェイトから話を聞こうと思ったんだけど・・・・・・・

間が悪いというか何と言うか。

リニスもユウの看病で一緒には行けない。

なのはも「看病するの~!」って叫んでいたが、近くにいるとうつる可能性もあるので、ユウの看病は、使い魔であり病気がうつる心配の無いリニスが行ない、私達は予定通りすずかの家にお邪魔することにした。





なのは、フェレット形態のユーノ、恭也兄さんと一緒にバスに乗って月村家へ向かう。

いや、すずかの家は何度見ても大きいわ。

家も結構大きい方だけど、桁違いね。

なのはが呼び鈴を鳴らすと、玄関のドアが開き、メイドのノエルさんが出迎えてくれた。

「恭也様、桜お嬢様、なのはお嬢様、いらっしゃいませ」

ノエルさんはそう挨拶する。

「お招きに預かったよ」

「こんにちは~」

「おはようございます」

恭也兄さん、なのは、私の順で挨拶を返す。

「どうぞ、こちらへ」

私達は、ノエルさんに案内されて家の中に入っていった。

案内された部屋では、アリサ、すずか、すずかのお姉さんの忍さんが優雅にお茶を飲んでいた。

この光景を見るたびに思う。

忍さんはともかく、アリサとすずか。

あんたらホントに小学3年生!?

そんな事を思っていると、

「なのはちゃん、桜ちゃん、恭也さん!」

すずかが声をかけてくる。

「すずかちゃん」

「おはよ、すずか」

なのはと私は応える。

「なのはちゃん、桜ちゃん、いらっしゃい」

そう言ってきたのは、すずかの専属メイドのファリンさん。

明るくていい人なんだけど、ちょっとドジも目立つ人ね。

「恭也、いらっしゃい」

そう言って忍さんが恭也兄さんに近付いていく。

「ああ・・・・・」

恭也兄さんはそれだけしか答えないが、見つめあう2人の周りにはストロベリー空間が発生している。

私にしては砂糖を吐きたくなるぐらいね。

その後、ノエルさんとファリンさんがお茶を入れに行く。

そして、恭也兄さんと忍さんは揃って別の部屋へ。

私となのはは、アリサとすずかがいるテーブルの席についた。




【Side Out】




【Side なのは】





「相変わらずすずかのお姉ちゃんとなのはと桜のお兄ちゃんはラブラブだよね~」

アリサちゃんがそう言うと、すずかちゃんが微笑み、

「うん!お姉ちゃん、恭也さんと知り合ってから、ずっと幸せそうだよ」

そう言いました。

「恭也兄さんも、昔と比べると性格丸くなってるかな?」

桜お姉ちゃんがそう言いながら、部屋を出て行く2人を見ます。

私もお兄ちゃんと忍さんをみました。

2人はとっても幸せそうな顔をして、部屋を出て行きます。

私も・・・・・ユウ君とあんな風に・・・・・・

「なのは、ユウとああいう関係になりたいな~なんて思ってるでしょ」

桜お姉ちゃんが行き成りそう言います。

「にゃにゃっ!?さ、桜お姉ちゃん!?」

何で分かったの!?

「顔、ニヤついていたわよ」

桜お姉ちゃんは自分の頬に指を当てながら笑顔でそういいます。

あ、あうう・・・・・お姉ちゃんには敵わないの・・・・・

「ちょっと!なのはってもしかして!?」

アリサちゃんが行き成り叫びました。

「ええそうよ。なのは、ユウにベタ惚れだもんね~」

桜お姉ちゃんは、そう言いながらこっちに視線を向けてきます。

「あ、あうあう・・・・・・・」

私は恥ずかしさの余り、口が上手く回りませんでした。

多分、今の私の顔は真っ赤なの。

「そうなんだ・・・・・へ~・・・・・なのはがアイツをね・・・・・」

アリサちゃんは、ニヤつきながらそう呟いて私を見ます。

「なのはちゃん、何時からユウ君の事を好きになったの?」

すずかちゃんがそう尋ねてきます。

すずかちゃんの目が興味津々といった雰囲気です。

「それは私も聞いてなかったわね。なのは、この際だから言っちゃいなさいよ」

桜お姉ちゃんまで・・・・・・・

3人から迫られる私に、逃げ場はありませんでした。

私は渋々白状します。





入学した手の頃、足に怪我をして動けなくなっていた所を、少し強引だったけど助けてもらった事。

それが切っ掛けで、事あるごとに彼を目で追うようになっていた事。

その中で、虫すら無闇に殺さないようにする彼の優しさを知った事。

そんな彼を見続けている内に、いつの間にか好きになっていた事を。





「ふ~ん・・・・・・よく見てたんだ」

桜お姉ちゃんが少し感心したように呟きます。

「アイツの上辺だけを見てると、とてもそうは思えないわね」

「それだけ、なのはちゃんがユウ君の事をよく見てたってことだよ」

アリサちゃんとすずかちゃんがそう言いました。

私は、少し恥ずかしくなって俯きます。

あ、いい忘れてましたが、今は場所を移動して、庭のテーブルに座っています。

そこで、子猫たちと戯れています。

しかし、その時、

――ドクンッ

「「ッ!?」」

ジュエルシードの波動を感じました。

桜お姉ちゃんも気付いたようです。

(なのは!桜!)

ユーノ君が念話で呼びかけてきます。

(うん!すぐ近くだ!)

私がそう返すと、

(どうする?)

ユーノ君の言葉に、私は悩みます。

(え、え~っと・・・・・・・え~と・・・・・・)

私はアリサちゃんとすずかちゃんを見て考えます。

すると、

(ユーノ!ジュエルシードに向かって走っていきなさい!)

桜お姉ちゃんがそう伝えます。

(そうか!)

ユーノ君はお姉ちゃんの考えを理解したらしく、私の膝から飛び降りて森に向かって走っていきます。

「ユーノ君!?」

私は一瞬驚いた声を上げましたが、そこで、私も気付きました。

ユーノ君は私達がアリサちゃんとすずかちゃんから離れる口実を作ってくれたのです。

「あらら~?」

「ユーノ、どうかしたの?」

すずかちゃんとアリサちゃんが不思議そうな声を漏らします。

「うん、何か見つけたのかも。私、ちょっと探してくるね」

「一緒に行こうか?」

私の言葉に、すずかちゃんがそう聞いてきますが、

「大丈夫よ、私も一緒に行くから」

桜お姉ちゃんがそう言って立ち上がりました。

「すぐ戻ってくるから待ってて」

そう言って、私と桜お姉ちゃんはジュエルシードの反応があった方へ走っていきました。





【Side Out】





【Side 桜】




私達がアリサとすずかから見えないところまで来ると、人間に戻ったユーノが待っていた。

そのまま合流して、ジュエルシードの所へ向かう。

「桜お姉ちゃん!」

「ええ!」

なのはが私に呼びかけ、レイジングハートを手に取る。

私もそれに応え、レイジングソウルを手に取った。

「レイジングハート!お願い!」

「行くわよ!レイジングソウル!」

『『Stand by, Ready. Set up.』』

デバイスが私達の呼びかけに応え、起動する。

なのはは、この前の神社の出来事を教訓に、ジュエルシードと相対する前にデバイスを起動させるようにしていた。

いい傾向ね。

その時、ジュエルシードから感じる魔力が強くなる。

「発動した!」

なのはが叫ぶ。

「此処だと人目が!封時結界を張らないと!」

ユーノがそう言って立ち止まる。

「封時結界・・・・・って、なんだっけ?」

なのはが首を傾げた。

そんななのはに私は軽く拳骨を落とす。

「この前リニスに習ったでしょ!魔法効果内と通常空間との時間進行をずらして、結界内と外を遮断するって!」

「あうっ!そ、そういえばそうだったね」

なのはは頭を押さえながら、焦った表情をする。

「帰ったら、リニスに頼んでまたお勉強ね」

私の言葉に、なのはは冷や汗を流す。

「お、お手柔らかに・・・・・・・」

そんなやり取りをしている間にも、ユーノは手で印を組み、結界を張る。

周りの景色の色が変わる。

その時、森の奥から光が溢れた。

そして、








「にゃぁ~~~~ご」






巨大な子猫がそこにいた。














































はっ!

いけない、余りのショックに意識が飛んでたわ。

いや、アニメで見て知ってはいたけど、アニメで見るのと実際に見るのとでは大違いだわ。

覚悟はしてても、見事に固まった。

横を見れば、なのはとユーノも目を点にして固まっている。

ああなると分かっていた私でも相当なショックを受けたから、この事を知る良しもなかった2人のショックは相当なものだろう。

「・・・・・・あ・・・・・・あ・・・・・あ・・・・・・・あれは・・・・・・・・?」

「・・・・・・・・た・・・・・・・・多分・・・・・・・・・あの子猫の大きくなりたいっていう思いが・・・・・・・正しく叶えられたんじゃないかな・・・・・・・・と・・・・・・・・」

「そ・・・・・・・そっか・・・・・・・・・・」

2人が、何とか声を絞り出す。

「だけど、このままじゃ危険だから、元に戻さないと」

気を取り直したユーノがそう発言する。

「そ、そうだね。流石にあのサイズだと、すずかちゃん、困っちゃうだろうし」

なのはもそう言う。

「なのは、あれは既に困る困らないの問題じゃないと思うわよ」

とりあえず、私は突っ込んでおく。

「・・・・・・襲ってくる様子も無さそうだし、ささっと封印を・・・・・」

私の言葉をスルーして、なのはがレイジングハートを構える。

その時、頭上を金色の魔力弾が通り過ぎる。

そして、巨大な子猫に直撃。

子猫は苦しそうな鳴き声をあげる。

私達が振り向くと、電柱の上に立つ、フェイトの姿があった。

「バルディッシュ、フォトンランサー電撃」

フェイトは、バルディッシュからフォトンランサーを連射する。

すぐに私は行動に出た。

『Flier Fin』

足に白銀に輝く翼を発生させ飛び立ち、猫の前に立ちはだかると、

『Wide area protection.』

魔力障壁を張って、フォトンランサーを防いだ。

だが、すぐに猫の足元にフォトンランサーが打ち込まれ、猫は転倒する。

「魔法の光!?そんな!?」

「桜お姉ちゃん!大丈夫!?」

ユーノは驚き、なのはは心配そうに近寄ってくる。

「私は大丈夫よ。けど・・・・・」

なのはにそう言って、視線をフェイトに向ける。

フェイトは近くの木の上に降り立ち、此方を見下ろしてきた。

「同系の魔導師・・・・・・・ロストロギアの探索者か」

フェイトはそう呟く。

「間違いない、僕と同じ世界の住人・・・・・・・それにこの子、ジュエルシードの正体を・・・・・」

ユーノがフェイトの発言でそう確信する。

すると、フェイトは視線を私のレイジングソウルと、なのはのレイジングハートに向ける。

「バルディッシュと同系の・・・・・・インテリジェントデバイス」

「バル・・・・・・・ディッシュ・・・・・・?」

フェイトの言葉でなのはが呟く。

「ロストロギア・・・・・・・ジュエルシード・・・・・・・」

フェイトがそう呟くと、

『Scythe form. Set up.』

バルディッシュの先が変形、鎌のような魔力刃が発生する。

「申し訳ないけど・・・・・頂いていきます」

その言葉と共にフェイトが斬りかかってくる。

『『Flier Fin.』』

私達は飛んでその一撃を避ける。

しかし、間髪いれずアークセイバーを放ってきた。

「くっ!ラウンドシールド!!」

私達の前にユーノが立ちはだかり、アークセイバーを防ぐ。

だが、その一瞬で、フェイトは上に回りこんでいた。

サイズフォームのバルディッシュがなのはに振り下ろされる。

――ガキィ

なのはは、レイジングハートでその一撃を受け止めた。

「なんで・・・・・・なんで急にこんな・・・・・・」

なのはが鍔迫り合いのまま問いかける。

「・・・・・・・悪いけど・・・・・答えられない・・・・・・」

あれ?ちょっと台詞違わない?

「如何いう事・・・・・?」

なのはがもう一度問いかけるが、フェイトは答えず、互いに弾きあう。

なのはが猫の前に着地し、フェイトは木の上に降り立つ。

そして、それぞれのデバイスを構える。

互いににらみ合っているが、猫が動き出した時、なのはは其方に気を向けてしまう。

そして、フェイトがその隙をついてフォトンランサーを放つ。

やっぱりこうなるのね。

でも、黙ってみている心算は無い。

こういうときの為に覚えておいたこの魔法。

『Flash move.』

私は一瞬でなのはの前に移動する。

『Protection.』

そして、障壁を張ってフォトンランサーを防いだ。

「なのは!戦闘中には相手から目を離さない!戦いの基本でしょ!」

私は、なのはに向かって叫んだ。

「あ、う、うん、ごめん、桜お姉ちゃん・・・・・」

なのはのその言葉を聞くと、私はフェイトを見る。

フェイトはなのは以上に私を警戒していた。

暫くにらみ合いが続くが・・・・・・・・

「・・・・・・・・ふぅ」

私はため息を吐いて構えを解く。

「え・・・・・・?」

フェイトも不思議そうな声を漏らした。

そして、フェイトを見上げて、

「降参よ」

そう言った。

「「「え?」」」

なのは、ユーノ、フェイトの声が重なる。

やっぱり突然過ぎたかな?

「だから、この場は降参って言ったの。今の私たちじゃあなたには勝てないから」

「さ、桜お姉ちゃん!?」

「桜!何言ってるのさ!?」

なのはとユーノが驚いた声を上げる。

「ユーノには悪いんだけどさ、これでも少しは相手の力量が分かるつもりよ。今の私たちじゃ、あの子には勝てないわ。それともユーノは、か弱い女の子に勝てない戦いに挑めって言いたいの?」

「い、いや、そういうわけじゃ・・・・・」

ユーノが少し焦った表情をした。

私はフェイトに向き直り、

「そういう事だからさ、あなたが封印しちゃって良いわよ。安心して。封印の途中で後ろから撃とうなんて思ってないから」

そう言った。

フェイトは、私への警戒を緩めぬまま巨大な子猫の元へ向かう。

そして、稲妻のような魔力によってジュエルシードを捉え、封印する。

そして、後には気絶した子猫とジュエルシードだけが残った。

フェイトは、バルディッシュでジュエルシードを回収する。

そのまま無言で立ち去ろうとした時、

「待って!」

なのはがフェイトを呼び止める。

フェイトは足を止めた。

「何であなたはジュエルシードを集めるの!?」

なのはが問いかける。

「理由は言えない・・・・・だけど、ジュエルシードは私が集めなきゃいけない物なんだ」

フェイトはそう答えた。

でも、「私が集めなきゃいけない」って如何いう事?

フェイトは再び立ち去ろうとしたが、再び足を止める。

「あなた達に1つ聞きたい。青い鎧のバリアジャケットを着た魔導師に心当たりは無い?」

そう言って、フェイトは振り返る。

でも、青いバリアジャケットって、誰かいたかしら?

私はアニメの登場人物を思い浮かべるが、細かい所まで覚えてないので分からない。

「私は知らないわ」

私はそう答える。

「ユウ君は金色だし、私も知らないよ」

「僕にも思い当たる人はいないよ」

それぞれの答えを聞くと、

「そう・・・・・ありがとう」

少し、残念そうな表情を浮かべてフェイトは立ち去った。

その後姿を、なのはは何か言いたげに見つめていた。









あとがき



第七話完成。

でもイマイチ。

リニスとフェイトは此処で再会させる心算はなかったので、強引に主人公に風邪をひいてもらいました。

まあ、この話は自分でもつまらないと思うので、突っ込まないで。

では、返信です。







>帝様
感想ありがとうございます。
一人称は初めてだったので、皆様の意見を元に色々と試している所です。
大分組み方も分かってきたので、話の組み立て方も意見してくださるとありがたいです。
まあ、誉めていただいた矢先の作品がこれですが(汗)
次回は頑張ります。





>星の弓様
感想ありがとうございます。
このデバイス達には実は秘密が?
次回も頑張ります。




>蒼蛇様
感想ありがとうございます。
デバイスについては、セイバーズは出てこないと思いますが、Xモードなら出てくるかも?
とりあえず先をお楽しみに。




>雑食性様
感想ありがとうございます。
前書きにも書いてある通り、最強この上ないと思います。
次回もお楽しみに。




>俊様
感想ありがとうございます。
リニスとの再会は次回になると思います。
お楽しみに。
あと、多分アリサとすずかが惚れるのは無印編が終わってからで、桜はA`S編の終盤になると思います。
其処まで続けばですが・・・・・
では、次回も頑張ります。





>DF様
感想ありがとうございます。
気に入っていただけて嬉しいです。
これからも頑張りますんでよろしくお願いします。
では、次も頑張ります。




>一見さん様
感想ありがとうございます。
ゼロ魔とリリフロの方は泥沼のスランプにはまってます。
チマチマと書いてはいますがいつになることやら・・・・・・
気長にお待ちください。
XモードはStS編まで続けば出てくるかも?
では、次回も頑張ります。




>ボルボロ様
感想ありがとうございます。
仰る通り、ムカつく主人公にならないように気をつけたいと思います。
では、次回も頑張ります。




>一輝様
感想ありがとうございます。
気に入っていただけて嬉しいです。
では次も頑張ります。




>剣様
感想ありがとうございます。
主人公は、前世がマジにバカだったので、其処まで考えが至らないのです。
転生して、記憶力は良くなりましたが・・・・・
まあ、フェイトの理由は次回明らかに?
お楽しみに。





>天弧様
感想ありがとうございます。
最終形態は大体決まってます。
秘密ですが・・・・・・(バレバレかも知れませんが)
因みにオメガソードをそのまま使って闇の書を初期化したら、守護騎士消えますね。(夜天の魔導書の初期状態には守護騎士プログラムは無かったですし)
では、次回もお楽しみに。




>1様
感想ありがとうございます。
はい。
仰るとおり、桜の必要性は無印編においては全くありません。
元よりこの小説は勢いのみで書いているので、単なる思い付きが特に考えもせずに出ています。
因みに桜はA`S編の終盤のアイデアの為だけに作ったキャラです。
では次回もお楽しみに。




>nemesis様
感想ありがとうございます。
桜については1様への返信をご覧ください。
主人公の精神年齢の低さについては、作者自体がガキっぽい大人なので、仕方ないです。
まあ、主人公については精神が身体に引っ張られてるってことにしといてください・・・・・・・お願いします。
視点変更ですが、一人称で小説を書くのがこの作品が初めてですので、色々試していた所です。
これは、皆様の意見を元に直していくので意見していただけると嬉しいです。
では、次回も頑張ります。





[15302] 第八話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/02/07 10:27
第八話 海鳴温泉での一騒動。




さて、体調も回復して、やってきました連休日。

温泉への小旅行です。

参加者は、高町家一同はもちろん、アニメの通りアリサとすずか、忍さん、ノエルさんとファリンさん。

あと、俺とフェレット形態のユーノ。

そして、人間形態のリニスである。

リニスの事は、アリサたちには俺の元家庭教師で、独り暮らししていた時に度々面倒を見てもらっていて、現在はなのはと桜の家庭教師をしている、と説明している。

あながち嘘ではない。

(魔法の)家庭教師だし、(毎日)家事全般などの面倒をやってもらっていたし、現在もなのはと桜の(魔法の)家庭教師だし。

まあ、翠屋のウェイトレスもやっているので、この旅行についてきても、さほど不自然ではないだろう。

ユーノはアリサたちには既にフェレットとして紹介していたのでしょうがない。

ともかく、俺たちの乗った自動車は、山道を走っていった、





俺達が宿泊する旅館は、山の中にある。

自然に囲まれ、静かな所で心も落ち着く。

うん、アニメじゃ良く分からなかったけど、いい場所だ。

って言うか、海鳴市って色々揃いすぎだろ。

海、山、川、街。

代表的なモン全部揃ってんじゃねえか?

まあそれはさて置き、早速温泉へ・・・・・・・・

「キュッ!?キューーーーーーーッ!!」

「こら、ユーノ。暴れんじゃないわよ」

・・・・・・の前にユーノの救出だな。

ユーノは現在、アリサによって女湯に引きずり込まれようとしている。

ユーノが人間と知っているなのはと桜、そして美由希は、苦笑しながらもどうやってアリサに諦めさせるかと手を出しあぐねていた。

まあ、俺は人の不幸を見て楽しむ人間ではないので、助けてやる事にする。

不幸ではなく、幸運かもしれないが。

俺は、男湯に向かって歩いていき、アリサの横を通り過ぎる時、ユーノの首根っこを引っ掴み、アリサの腕からユーノを引っこ抜いた。

「キュッ!?」

「あっ!?」

声を漏らすユーノとアリサ。

「ちょっと!何すんのよ!?」

当然噛み付いてくるわな。

「ユーノはオスだからな。男湯に入れるのが妥当だろ?ユーノもそう思わないか?」

俺はそういいながらユーノに視線を落とす。

ユーノは凄まじい勢いで頷いている。

「そういうわけだ。ユーノは俺が連れてくぞ」

「なっ!?ちょっと!」

アリサが後ろで騒いだが、俺は逃げるように男湯の更衣室の中へ。

流石に此処へは追ってこれまい。

無駄に精神年齢高いからなあいつ等。

(あ、ありがとう・・・・・助かったよ、ユウ)

ユーノが念話でお礼を言ってくる。

「でも、ちょっと位はあのまま連れてかれても良いかな~、なんて思ってたりしてたんだろ?」

更衣室に誰もいないことを確認すると、俺はユーノに話しかけた。

「ぶっ!?何言ってるのさ!ユウ!」

ユーノが叫んだ。

フェレット形態で分かり辛いが、顔は真っ赤だ。

「別に隠さなくても良いだろ?それは男として当然だし」

俺がそう言うと、

「まあ、そりゃちょっとぐらいは・・・・・・」

ユーノはそう呟く。

やっぱコイツ淫獣だわ。

因みに、俺は後が怖いからそういう覗きの類は出来ん。

まあ、それはさて置き、

「ユーノ、折角だから、お前も元に戻って温泉入れよ」

俺はユーノにそう言う。

「良いの?」

「別にいいだろ」

金は払ってないだろうが、まあ、それは置いておく。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

ユーノは床に飛び降りると、人間に戻った。

「さてと、んじゃ、入るか」

俺たちは、服を脱いで温泉へと向かった。





俺たちは、湯に浸かっていた。

「ふう~~~~・・・・・・気持ち良いな・・・・・・」

俺は呟く。

「ホントだね~・・・・・・・・・」

ユーノも俺の呟きにそう答える。

「最近忙しかったからなぁ。ま、俺は殆ど何もしてないけど・・・・・・・」

「何言ってるのさ。なのはや桜が危険になったらすぐに飛び出せるように気を張り詰めたくせに」

「気のせいだ。俺はそんな事まで頭は回らんぞ」

「じゃあ、無意識でやってたって事だね。どっちにしても、君も頑張ってたって事には変わりないよ」

何でこう俺の周りの奴らは俺を持ち上げようとするんだか。

「お世辞だろうけど、ありがとうと言っておくよ」

「だからお世辞じゃないって」

ユーノは苦笑しつつそう言った。




風呂から上がると、リニスが待っていた。

なのは達は旅館の探検に行ったらしい。

あ、そういえば、この後アルフが絡んでくるんだっけ。

それを思い出した俺は、リニスを連れて、なのは達の後を追う。

因みに言っておくが、ユーノはフェレット形態に戻っている。

なのは達4人に追いついたとき、丁度アルフがなのはと桜に絡んでいる所だった。

(リニス・・・・)

(はい・・・・・)

俺はリニスに念話を送り、

(レッツ・ゴー♪)

(了解です♪)

リニスが若干楽しそうな顔をしてアルフの方へ向かった。






【Side なのは】




温泉から上がった私達は、旅館の中を探検する事にしました。

私達4人は、お風呂上りで皆髪を下ろしてます。

とは言っても、アリサちゃんとすずかちゃんは余り変わりませんが。

私と桜お姉ちゃんは、それぞれツインテールとポニーテールだった髪を下ろしてます。

普段は髪型の違いで一目瞭然の私たちですが、こうやって髪を下ろすと、双子だけあって違いが分かりません。

髪の長さも同じぐらいです。

それでも、アリサちゃんとすずかちゃんはどっちがどっちだか分かるみたいです。

ちょっと前にも、桜お姉ちゃんの悪戯で、お互いの髪型に変えてみたんですけど、そのときも一目で見破られました。

何で分かったのか聞いてみると、「「雰囲気!」」と、声を揃えて言われました。

ううっ、鏡で見比べても全く違いが分からなかったのに・・・・・・

まあ、それはさて置き、私達が談笑しながら廊下を歩いていると、

「ハァーイ!おチビちゃんたち!」

いきなり声をかけられました。

私達がそっちを向くと、オレンジ色の髪をした、知らないお姉さんがいました。

そのお姉さんは私たちに近付いてくると、

「君達かね~♪ウチの子をアレしてくれちゃってるのは♪」

そう言いながら私と桜お姉ちゃんに顔を近づけてきました。

「・・・・う・・・・・え・・・・・・?」

そのお姉さんは、睨み付けるように私達を見てきたので、私は思わず声を漏らしました。

「あんまり賢そうでも強そうでも無いんだけど・・・・・・ただのガキンチョに見えるんだけど・・・・・・」

私は、ちょっと怖くなって一歩後ずさります。

でも、反対に桜お姉ちゃんは一歩踏み出しました。

「失礼ですが、あなたは誰ですか?私達は、あなたに絡まれるような事をした覚えは無いんですけど?」

桜お姉ちゃんは、臆することなくそのお姉さんを睨み返しながらそう言いました。

そのお姉さんは、少し私達を観察するような目で見た後、

「アーッハハハハッ!」

突然笑い出しました。

「アハハハハ!ゴメンゴメン!人違いだったかな~?知ってる子に良く似てたからさぁ~」

そのお姉さんはそう言います。

「ああ・・・・・・そうだったんですか・・・・・」

私はそう呟きました。

ちょっとホッとしたの。

「アハハハ、あんた達、そっくりだけど姉妹かい?」

そのお姉さんは、そう尋ねてきます。

「はい♪双子の姉妹で、そっちの桜お姉ちゃんが姉になります」

私はそう答えました。

「そうかいそうかい。お姉ちゃんは大切にしなきゃダメだよ~♪」

そう言いながら、その人は私の頭を撫でました。

「はい♪」

私は嬉しくなって頷きました。

ですが、その人の手が離れた時、

(今のところは挨拶だけだけど・・・・・・)

念話が送られてきました。

私は内心驚愕します。

桜お姉ちゃんは、怪訝な目でそのお姉さんを見ます。

(忠告しとくよ。子供はいい子にして、お家で遊んでなさいね。おいたが過ぎるとガブッ!っといくわよ)

「あ・・・・・あ・・・・・・・・あ?」

その脅しとも言える念話に不安に駆られる私ですが、いつの間にか、そのお姉さんの後ろに、リニスさんがいることに気付き、声を漏らしました。

目の前のお姉さんはリニスさんに気付いていないらしく、未だに私と桜お姉ちゃんを睨み続けます。

そして、リニスさんがゆっくりと右腕を振り上げ、

――ゴンッ!

「あだっ!?」

躊躇することなくそのお姉さんの頭に拳骨を落しました。

リ、リニスさん、幾らなんでも行き成り過ぎでは!?

幾ら絡まれてるといっても、行き成り見知らぬ人を殴るのは如何かと思うんですけど!

「ったいねぇ~!・・・・・誰だ!・・・・・・い・・・・・・・・?」

そう叫びながら振り返ったそのお姉さんが、リニスさんを見て固まりました。

何で?

「・・・・・・・久しぶりですねぇ~・・・・・・・アルフ」

リニスさんは、そういいながらそのお姉さんを見下ろします。

その顔は、少し怒っている顔です。

「リ・・・・・リリ、リニス~~~~~!?」

そのお姉さんは、ビックリしたように叫びました。

知り合い?

それに、お姉さんに犬のような耳と尻尾が見えたのは気のせいでしょうか?

「リ・・・・リニス・・・・生きて「まあ、聞きたい事は沢山あるでしょうけど・・・・・」」

リニスさんが、そのお姉さんの言葉を遮るように喋りだします。

「私から言いたい事が先ず1つ。何で私がお世話になっているお宅の娘さんに絡んでいるのかという事です!」

リニスさんは、何ともいえない迫力を醸し出しながらそのお姉さんに詰め寄ります。

「え・・・・・?お世話になってるって・・・・・・・?」

そのお姉さんは、ギギギと首をブリキの人形のように動かし、私と桜お姉ちゃんを見ます。

その顔には冷や汗が浮かんでいました。

「リニスはつい最近から、私となのはの家庭教師よ」

桜お姉ちゃんが、意地の悪そうな笑みを浮かべていました。

その言葉を聞くと、そのお姉さんの顔に流れる冷や汗の量が、目に見えて増えていきます。

「これは・・・・・久々にお仕置きが必要ですね・・・・・・・」

リニスさんがそう呟き、そのお姉さんの首根っこを掴みました。

「リ、リニス!ゴメンよ!知らなかったんだ!許して~~~~~~~!」

そのお姉さんは泣きそうな声を上げながらリニスさんに引き摺られて行きます。

そして、廊下の角を曲がったあと、

「リニス!ゴメン!許して!これには訳が!お願・・・・・キャ、キャイィイイイイイイン!!」

まるで犬の鳴き声のようなお姉さんの悲鳴が響きました。






【Side Out】





「ホントにゴメンよ!お嬢ちゃんたち!」

現在、アルフはなのはと桜に土下座して謝ってます。

リニス、一体何をしたんだ?

そうは思ったが、考えたくなかったので考えないようにした。

「あ、あの、それはもう良いですから、頭を上げてください!えっと・・・・アルフさん!」

なのはがそう言う。

名前教えて貰ったんだな。

因みに、適当に理由をつけて、アリサとすずかにはこの場を離れてもらっている。

「まあ、本当に反省しているようだから、もう良いわよ」

桜もそう言った。

「そうですね。2人もそう言っていることですし、今回はこれで勘弁してあげましょう。

リニスがそう言って、アルフを許す。

アルフは立ち上がり、

「あうう・・・・・やっと終わった・・・・・」

涙を流しながらそう呟いた。

そして、アルフは気を取り直し、俺を見た。

「所で、アンタは誰だい?」

そう聞いてくる。

「俺は利村 ユウ。まあ、リニスの現在の主だな」

「アンタがリニスの契約者だったのかい。凄いね、リニスを使い魔にしてるなんて」

アルフは感心した様子で言ってくる。

まあ、リニスって、かなり優秀な使い魔だからな。

俺は、バカみたいな魔力量のお陰で如何ってことはないけど。

「それよりも、アルフがいるって事は近くにフェイトがいるという事ですね?」

「う、うん・・・・」

「呼んでください。フェイトを交えて話を聞きます」

「わ、わかったよ」

アルフは頷いて念話をする。

その時、

「リニスさん、フェイトって誰ですか?」

なのはがリニスに尋ねた。

「私の教え子で、なのはや桜と同年代の女の子です。優しい子ですから、きっとなのは達とも仲良くなれますよ」

リニスはそう笑顔で言った。






【Side フェイト】





私は、ジュエルシードを追って山の中にいた。

アルフは例の2人の白い魔導師を見てくるといって、宿泊施設に行っている。

私もジュエルシードの位置を大体割り出し、今夜には回収できるだろうと思っていた。

そんな傍ら、ふと思い出す私を助けてくれた青い鎧の魔導師。

最近、時間があるとあの人の事を考えてる気がする。

顔も名前も分からない。

分かっているのは、黒い瞳と、凍結の魔力変換資質の持ち主という事だけ。

其処まで考えて、ふと笑みを零す。

顔も見たこと無いのに、好きになるなんておかしいな。

そう思って、私は空を見上げる。

青い空。

あの人のバリアジャケットも青・・・・・・

あう・・・・・また考えてる。

私は、頬が熱くなるのを感じていた。

その時、

(フェイト!フェイト、聞こえる!)

アルフから念話が来た。

少し慌ててる?

(聞こえるよアルフ。例の魔導師達は如何だった?)

私はアルフにそう返す。

(それ所じゃないんだよ!リニスが・・・・・・・リニスが生きてたんだよ!!)

「えっ!?」

アルフからの報告に、私は自分の耳を疑った。

リニス。

母さんの使い魔で、私の魔法の師。

そして、バルディッシュの生みの親。

まだ小さかった私や姉さん、アルフの面倒を良く見てくれた。

でも、『私を一人前の魔導師に育て上げる』という母さんとの契約内容を果たしたリニスは、私達に何も言わずに消えたはずだった。

母さんから聞いた話では、リニスに再契約を持ちかけたが、リニスは母さんへの負担を考慮して再契約をしなかったらしい。

事実、母さんはリニスとの契約は負担が大きいと言っていた。

リニスがいなくなったと知ったとき、私は姉さん、アルフと一緒に泣いた。

その時の悲しい気持ちは忘れられない。

でも、アルフはリニスが生きていたと言った。

正直、信じられない。

でも、アルフがリニスの事で嘘を吐くとも思えない。

だから私は、

(分かったアルフ!すぐにそっちに行く!)

自分の目で確かめる為に、飛び立った。







アルフの位置を頼りに、私は飛んだ。

全力で飛ぶ。

私のスピードは、魔導師の中でもトップレベルだ。

それは母さんやリニスも認めていたし、自分でもスピードには自信があるとハッキリと言える。

それでも、アルフの場所へ向かう時には遅いと感じてしまう。

もっと速く。

何よりも速く。

もっと・・・・・もっと速く!

そして、やっとアルフのいる場所に辿り着いた。

到達時間を考えれば、恐らく同距離を移動した中では最速だろう。

でも、それでも私は「やっと」と感じてしまう。

そして見た。

アルフの隣にいる、リニスの姿を。

「リ・・・・ニス・・・・・・?」

私は確かめるように呟く。

「久しぶりですね、フェイト」

リニスは、そう微笑んで答えてくれた。

「リニス・・・・・リニス!」

私は思わず、リニスに向かって抱きついた。

涙が止まらない。

「リニス!リニス!」

私は何度もリニスの名を呼ぶ。

「あらあら、泣き虫ですねフェイトは」

そう言いながらも、リニスは私を優しく抱きしめてくれる。

このリニスは本物だ。

本物のリニスだ!

私は暫くリニスの胸で泣いた。






「落ち着きましたか?フェイト」

暫くして、リニスが私の頭を撫でながらそう言った。

「・・・・うん」

私はちょっと恥ずかしくなって、俯きつつ頷いた。

「あ、あの~・・・・・」

そこに、どこかで聞いた事のある女の子の声。

私がそっちを向くと、この前の白い魔導師の女の子がいた。

「フェイトちゃん・・・・・・・で、いいんだよね?」

確かめるようにそう尋ねてきた。

「うん・・・・・・君は?」

私がそう聞くと、

「私、高町 なのは。なのはだよ」

その子は笑顔でそう答えた。

すると、その子にそっくりなもう1人の女の子が傍に来て、

「で、私がなのはの双子の姉、高町 桜よ。よろしくね!」

その子も笑顔でそう言った。

ふと見ると、遠慮しがちに立っている1人の男の子。

「君は?」

気になった私は問いかけた。

その子は、ポリポリと頭を掻きつつ、

「俺は利村 ユウ。リニスの現マスターだ」

そう言った。

彼がリニスのマスターだと知った私は、

「ありがとう。あなたのお陰でリニスとまた会えた」

私はお礼を言う。

「いや、俺の方が面倒見られてたって言うか、感謝する方なんだが・・・・・・」

彼は、遠慮しがちにそう言う。

「でも、あなたが居なかったら、リニスは消滅してた。本当にありがとう」

「はあ・・・・どういたしまして?」

彼は、また自信なさげに言う。

「それでフェイト、何であなたはジュエルシードを集めてるんですか?」

リニスが、一番の疑問をぶつけてきた。

「フェイト・・・・・」

アルフが心配そうに私を見てくる。

「リニスなら大丈夫。話すよ」

私は、ジュエルシードを集める理由を話し出した。







【Side Out】






フェイトが話したジュエルシードを集める理由はこうだ。

先ず、フェイトが時の庭園で次元跳躍魔法の練習をしていた所、フェイトの魔法が暴発。

近くを航行していた輸送艦(ユーノが乗っていた艦)に直撃。

輸送艦からジュエルシードが流出。

地球に落ちる。

現在、プレシアは謝罪やら賠償やらで奔走中。

その間、フェイトは先に地球に来てジュエルシードを回収。

幸い死者や重傷者はいなかったので、上手くやれば罪に問われる事はなく、精々事故としての軽い罰を受けるだけとの事。

因みに、ユーノがフェイトの魔法が直撃した輸送艦の乗員だった事は、今初めて知ったらしい。

「えっ?じゃあ君があの輸送艦の乗組員?」

「うん、ジュエルシードを発掘したのも僕なんだ。だから、僕が集めなきゃと思って・・・・・」

「そうだったんだ・・・・・ゴメンね、私の所為で・・・・・・」

「いや、事故だったんだから仕方ないよ」

フェイトは、なのはと桜の方を見て、

「じゃあ、君がジュエルシードを集めてるのは・・・・・」

「うん、ユーノ君のお手伝い。でも、私は自分の意思でジュエルシードを集めてる。自分の暮らしてる街や、自分の周りの人達に危険が降りかかったら嫌だから」

あ、その台詞は言うんだな。

「私は、そんななのはが心配だから」

桜もそう言った。

「そうだったんだ・・・・・・ゴメンね。この前は攻撃しちゃって・・・・・・」

フェイトは申し訳無さそうに頭を下げた。

「仕方ないわよ、フェイトだって必死だったんだろうし」

桜がそう言って許す。

「・・・・・ありがとう」

フェイトが微笑んでそう言った。

「じゃあ、これで私達、お友達だね♪」

なのはが嬉しそうに言った。

「え・・・・?友・・・・・・達・・・・・・?」

フェイトが呆気に取られたように呟く。

「うん♪」

「・・・・・・私で・・・・・よければ・・・・・・・・・でも・・・・・どうすればいいの?」

フェイトは自信なさげに問いかける。

「・・・・・・・簡単だよ」

なのはの言葉に、フェイトは驚いた表情をして顔を上げる。

「友達になるの、凄く簡単」

そして、なのはは一呼吸置き、

「名前を呼んで。初めはそれだけでいいの。“君”とか“あなた”とか、そういうのじゃなくて。ちゃんと相手の目をみてはっきりと相手の名前を呼ぶの。私、高町 なのは。なのはだよ!」

「なの・・・は?」

「うん!そう!」

小さく呟かれたフェイトの言葉に、なのはは嬉しそうに答える。

「それで、私は高町 桜」

桜ももう一度名乗る。

「桜・・・・・・?」

「そうよ。よろしくね」

桜も笑顔で答えた。

「あなたの名前は?」

桜が問いかける。

「フェイト・・・・・・フェイト・テスタロッサ・・・・・・」

フェイトが名乗ると、

「うん!よろしくね!フェイトちゃん!」

なのはがもう一度嬉しそうに頷いた。




そんな様子を少しはなれた所で見ている俺、ユーノ、アルフ、リニス。

ユーノも3人に気を利かせたのか先程離れてきた。

アルフは、アニメの無印最終回の時のように号泣している。

何だかんだで和解している模様。

俺はリニスに問いかける。

「さて、これからどうする?」

「そうですね・・・・・フェイトと協力体制を取るのはもちろん、定期連絡の時にプレシアに会いに行こうと思います」

「そうか・・・・・・」

「ですがその前に・・・・・・」

リニスは、楽しそうな笑みを浮かべ、

「皆で親睦を深めましょう♪」

そう言った。






そして、夕食時。

「フェ、フェイト・テスタロッサです・・・・・」

「アルフです・・・・・・・」

自己紹介するフェイトとアルフ。

すると、拍手が巻き起こる。

フェイト達は、俺達の夕食に招待した。

というか、リニスが引き込んだ。

フェイトは、恥ずかしいのか顔が真っ赤だ。

とりあえず皆には、フェイトとアルフは、リニスの教え子だと説明した。

アリサとすずかはアルフに怪訝な目を向けていたが、なのはと桜がこう説明した。

前に勘違いからフェイトと喧嘩になった。

それで、フェイトの義姉であるアルフが怒って、なのはと桜に絡んできた。

アルフは、栗色の髪の双子なんて早々いるもんじゃないと判断して、なのはと桜に目をつけたらしい。

でも、今は誤解も解けて、友達になったと説明した。

かなり強引な説明である。

まあ、それでも本人たちは納得しているようで、今では5人で楽しそうにおしゃべりしている。

と、其処へ、

「ユウ君」

士郎さんからお呼びがかかった。

「なんですか?」

俺は尋ねる。

「お酒はいけるクチかい?」

とんでもない質問をしてきやがりました。

その顔を見ると赤い。

酔っ払ってるよこの人。

「いやいや!何言ってるんですか士郎さん!8歳の子供に酒勧めます!?」

俺は思わず問いかけた。

「君の精神年齢は36歳だろ?」

「精神は36歳でも、身体は8歳です!それに前世でも酒は苦手でした!」

俺はそう言う。

「まあ、そういわずに一杯だけでいいから」

まだ勧めてきますよこの酔っ払い。

でも、こういう人は幾ら断っても勧めてくる事は分かっているので、

「じゃあ、一杯だけなら・・・・・」

俺はそう言ってお猪口を受け取り、そのお猪口に士郎さんはお酒を注ぐ。

「ふう・・・・・」

俺は一度ため息を吐いて、覚悟を決める。

「せいやっ!」

気合一発、俺は酒を飲んだ。

その瞬間、俺の意識は暗転した。







【Side 桜】




私達がフェイトを交えて、交流を深めていると、

――バタッ

と、何かが倒れる音がした。

気になった私達が顔を向けると、父さんの横でユウが倒れていた。

「ユユユ、ユウ君!?」

それに気付いたなのはが慌てて駆け寄る。

私も気になって傍に行った。

ユウの顔を見ると、

「きゅう・・・・・・・」

顔を赤くして目を回していた。

「父さん?もしかして、ユウにお酒飲ませた?」

私は父さんに問いかける。

「あ、ああ・・・・・まさかお猪口一杯でそうなるとは思わなかったからな・・・・・・」

え?お猪口一杯?

「情けないねぇ~・・・・・一口でそれかい」

そう言ったのは、ほんのりと頬を赤くしているアルフ。

アンタも酒飲んでんのね。

すると、なのはが、

「お父さんの・・・・・バカッ!!」

そう叫んだ。

あ、父さんが白くなって固まった。

「ユウ君!ねえ!大丈夫!?」

そんな父さんに全く構わずなのははユウを介抱する。

すると、リニスが近付いてきて、

「あ~・・・・・これはユウにお酒飲ませましたね?」

リニスがユウの状態を診てそう判断する。

「ユウはお酒に異常に弱いですからね。私も前に悪戯心でお酒を飲ませた事があるんですが、その時は次の日の朝まで起きなかった上に、お酒を飲んだ記憶まで飛んでましたから」

リニスはそう説明した。

すると、リニスはユウを抱き上げる。

「ユウは明日まで起きないでしょうから、風邪をひかないように布団に寝かせてきますね」

そう言って、リニスはユウを連れて行った。





その夜、布団に入って眠ろうとした所、ジュエルシードの反応を感じた。

私となのはは起き上がる。

アリサとすずかが眠っている事を確認すると、私達とユーノは外へ飛び出した。

フェイトとアルフ、リニスと外で合流する。

でも、やっぱりユウの姿は無い。

「リニスさん、ユウ君は・・・・・」

なのはが尋ねるが、

「無理ですね。ユウはお酒を飲んだら、恐らく大地震が起きようと目覚めないと思います」

リニスはそう言う。

「はぁ~・・・・・情けないねぇ!リニスのご主人様は!」

アルフが呆れたように言う。

その言葉に、なのははむっとして、

「そんな事無いよ!ユウ君はとっても強くて優しい男の子だよ!」

そう叫んだ。

「そうは見えないけどねぇ・・・・」

それでもアルフはそう呟く。

その時、

「見えた!」

フェイトの言葉で前を見ると、ジュエルシードの光が立ち上っている。

ジュエルシードは、川の中で発動しているようだった。

私達がデバイスを起動させて橋の所まで来ると、

「ギャオォオオオオオオオオ!!」

川の中から、巨大な蛇が現れる。

頭は黄色い甲殻に覆われ、体は緑の鱗に包まれている。

何て言うか・・・・・・シードラモン?

「ジュエルシードの暴走体だね・・・・・・気をつけて!」

フェイトがそう言う。

すると、その暴走体が口から氷の矢を吐き出す。

アイスアロー?

「やらせない!」

ユーノが前に出て障壁を張る。

「せやっ!!」

その隙に、アルフが横から殴りつける。

そのシードラモンもどきは怯む。

その時、

「フォトンランサー・・・・・ファイア!」

フェイトが上空からフォトンランサーを放つ。

「グォオオオオ!」

シードラモンもどきは、苦しそうな鳴き声を上げた。

「なのは!行くわよ!」

「うん!」

私の呼びかけになのはは答える。

『『Shooting mode.』』

レイジングソウルとレイジングハートがシューティングモードに変形する。

そして、空へと飛び上がり、

「ダブル!」

「ディバイン!」

私となのはが叫び、

「「バスターーーーーーーーーッ!!」」

同時に砲撃を放つ。

シードラモンもどきに一直線に向かう白銀と桜色の閃光。

「ギャォオオオオオオオオオオオ!!」

それは直撃して爆煙に包み、シードラモンもどきは川の中に沈む。

「ナイスよなのは!」

「うん!」

私の言葉に、なのはは嬉しそうに頷いた。

「ヒュー!中々の威力じゃないかい!」

アルフが感心したように声を発した。

「うん。単純な砲撃の威力なら、2人とも私より上だ」

フェイトもそう認める。

そんな時、

「5人とも、油断するのはまだ早いですよ」

リニスがそう言った。

次の瞬間、

「グギャァアアアアアアアアアアアアアッ!!」

咆哮と共に、川の水面が爆発したように水飛沫を上げる。

其処から現れたのは、頭部の甲殻が金色になり、稲妻のような角を生やし、身体も赤く変色したシードラモンもどきだった。

今度はメガシードラモン!?

似すぎじゃない!?

「この前の神社の犬と同じだ。ジュエルシードの放出するエネルギー量が増えたんだ!」

ユーノが叫ぶ。

言われなくても分かるわよ。

メガシードラモンもどきは、角から稲妻を放ってくる。

サンダージャベリン!?

だからなんでそんなにデジモンにそっくりなのよ!

単なる偶然であろうが、私は心の中で叫ばずにはいられない。

ユーノは流石に受けきれないと感じたのか飛び退く。

「アークセイバー!!」

「ディバインシューター!!」

フェイトが魔力刃を、なのはが魔力弾を放つ。

それぞれはメガシードラモンに直撃するが、アークセイバーは弾かれ、ディバインシューターは表面を僅かに焦がすだけに止まった。

私は焦りを覚える。

あれだけの防御力だと、ディバインバスターでも効果は薄いだろうし、スターライトブレイカーもなのははまだ覚えていない。

ユウがいたならドラモンキラー一発で終わるんだろうけど、リニスの話では明日の朝まで起きないだろうし・・・・・・

もう!何で父さんはユウにお酒なんか飲ませたのよーーーーっ!!

私は思わず叫びそうになる。

そんな時、

「仕方ありませんね」

そう言ってリニスが前に出る。

「あなた達は下がっていなさい。これの相手は私がします」

そう言って、リニスはメガシードラモンもどきと相対する。

「リニス!1人じゃ無理だよ!」

「リニス、危ない!」

フェイトとアルフは叫ぶ。

しかし、リニスは構え、

「ギャォオオオオオオオオオオッ!!」

メガシードラモンもどきがサンダージャベリン(仮)を放ってくる。

それをリニスは見事な宙返りで避け・・・・・・え?

私はその瞬間思わず固まった。

そんな間にも、リニスは黄土色の魔法陣を発生させ、

「貫け・・・・・・轟雷!」

右手に魔力を集中させる。

「サンダー・・・・・・スマッシャーーーーーーーッ!!」

凄まじい威力を持った、特大の雷撃砲を放った。

リニスのサンダースマッシャーに飲み込まれるメガシードラモンもどき。

「グギャァアアアアアアアアァァァァァ・・・・・・・・!」

流石に非殺傷だったようで、メガシードラモンもどきは気絶している。

もし殺傷設定だったら跡形も無いわね。

「さあ、誰でも良いですから封印してください」

リニスは笑顔でそう言う。

フェイトとアルフは、驚きの余り固まっており、私も別の理由で固まっていたのでなのはが封印する。

『Sealing mode. Set up.』

レイジングハートがシーリングモードに変形する。

桜色の帯が気絶しているメガシードラモンもどきに巻きつく。

「リリカル・マジカル ジュエルシード、シリアルⅩⅦ 封印!」

『Sealing.』

メガシードラモンもどきが光になって消える。

後にはジュエルシードが残った。

それをなのはが回収する。

その時、フェイトとアルフがリニスに詰め寄った。

「す、凄いよリニス!」

「前より強くなってるんじゃないのかい!?」

そんな2人にリニスは笑って答える。

「今の私は、ユウから流れてくる膨大な魔力のお陰で、SSランク並みの能力があるんですよ」

リニスの言葉に声を失う2人。

「ちょ、ちょっと待ってよ・・・・・じゃあ、リニスのご主人様のあの坊ちゃんは・・・・・・」

アルフが恐る恐る尋ねる。

「ユウの魔力ランクは、軽くSSSオーバーですよ」

その事実に再び絶句する2人。

そりゃ私も初めて聞いた時は驚いたわよ。

でも、今はそんな事よりも気になる事がある。

言ったら色々拙いだろうから言わないけど、心の中で叫ばせてもらう。

リニスーーーーーーッ!!

何であなた穿いてないの!!

そりゃ、リニスはバリアジャケット無いから浴衣のままなのは仕方ないけど!

けど!何で下着も穿いてないの!

アレなの!?

外国人は偏った知識しかないって奴!?

それと一緒なの!?

大昔は着物は下着履かなかったらしいけど!

それを知ってたの!?

私は心の中で叫び続けた。

それから、前言撤回。

この場にユウがいなくて良かったと心底思った。

ありがとう、父さん。









あとがき

やりたい放題な第八話完成。

やりたい放題やってます。

此処で既に和解成立。

本当に勢いだけで書いてます。

それから、今回も主人公欠場。

リニスが戦闘面で活躍していない事に気付き、リニス無双・・・・・というか一撃。

思いつきだけで書きました。

では、返信を。





>俊様
感想ありがとうございます。
予想通り、因縁つけてるときの再会です。
こんなもんで如何ですかね?
それから、フェイトの質問に答えられなかったというのは、お約束というか、ご都合主義です。
では、次も頑張ります。



>大様
感想ありがとうございます。
お待たせしました。
八話を投稿させていただきました。
次も頑張ります。



>ネメシス様
感想ありがとうございます。
気に入ってくれたようで嬉しいです。
ジュエルシードを集める目的は今回明らかになりましたが、納得しますかね?
因みにプレシアは元気です。
では、次も頑張ります。



>kyouya様
感想ありがとうございます。
この小説は勢いだけで書いているのである程度は覚悟してます。
多分A`S編までは行くかな~?
ともかく、次も頑張ります。



>星の弓様
感想ありがとうございます。
デジモンもどきなら出てきます。
っていうか、今回も出ました。
ルーチェモンは流石に出せませんが・・・・・
では、次も頑張ります。



>ねこ様
感想ありがとうございます。
桜の事については、第七話に書いた1様への返信をご覧ください。
主人公の性格は、自分の性格を元に、カッコよくした性格です。
まあ、殆ど別物になりましたがね。
では、次も頑張ります。





[15302] 第九話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/02/14 15:40


第九話 本領発揮!灼熱のブレイズ!!




うぃーっす。

ユウです。

温泉のジュエルシードだけど、気がついたら終わってた。

というか、次の日の朝だった。

何でだ?

え~っと、あの時は夕食にフェイトとアルフを招待して、その後・・・・・・・・

ダメだ、思い出せん。

一体何があったんだ?

まあ、俺が居なくても無事封印出来たみたいだし、無問題。

・・・・・・やっぱり俺って要らないんじゃね?







温泉旅行が終わって数日後。

そろそろ次のジュエルシードを見つける頃だろう。

ああ、そういえば、アニメではなのははアリサと喧嘩したが、この世界ではそういう事は無い。

魔法の事も家族には話してあるし、フェイトとも既に友達になっているので、悩む事はなく、いつも通りである。

そして、特に問題なく学校が終わり、放課後。

今日は、アリサとすずかは習い事があり、先に帰ったが、なのはと桜、序に俺は、今日は何も無いのでジュエルシード探しに集中する事にした。






なのは達は、フェイトと念話で連絡を取り合いながら街を捜索していた。

やがて日も暮れて暗くなってきた時、とあるビルの屋上に俺達は集まっていた。

「大体このあたりだと思うんだけど・・・・・大まかな位置しか分からないんだ・・・・・」

フェイトが呟く。

「はぁ・・・・・確かにこれだけゴミゴミしてると、探すのも一苦労だわね」

アルフもそう言った。

「確かに・・・・・大変そうだね・・・・・・」

なのはが、ビルの屋上から下を見下ろしながら呟く。

「ここは、ちゃっちゃと魔力流でも流し込んで強制発動させた方が手っ取り早いんじゃない?」

桜が、アニメと同じプランを提案する。

「そんな!こんな街中じゃ危険だよ!」

当然の如くユーノが反論する。

その言葉に俺は、

「逆に、今見逃して、真昼間の街中で発動した方が危険だと思うのは俺だけか?」

俺はそう尋ねた。

「そ・・・・・それは・・・・・・」

ユーノは黙り込む。

「まあ、ユーノとアルフがしっかり結界張ってくれれば被害は無いだろうし、これだけの魔導師が揃ってるんだ。そうそうの事じゃ心配ないと思うけどな」

俺はそう言う。

「私もユウの言うとおりだと思うわよ。ユーノとアルフが結界維持、フェイトが周辺に魔力流を撃ち込んで、私となのはが封印。これで決まり」

桜がそう言った。

因みに桜よ、また俺は要らない子か?

「私も賛成。みんなで力を合わせれば大丈夫だよ」

なのはが笑顔でそう言った。

「・・・・・皆がそう言うなら反対はしないけど・・・・・」

ユーノが心配そうにそう言った。

「じゃあ、決まりだね・・・・・・・そういえば、リニスは?」

リニスが居ない事が気になったフェイトが尋ねてくる。

「・・・・・・今頃翠屋でウェイトレスやってるよ」

俺はそう呟いた。

「「?」」

フェイトとアルフは何の事だと首を傾げる。

因みにリニスは、既に翠屋の看板娘に近い存在になっている。

それはともかく、ジュエルシードの強制発動の為に準備を始める。

「広域結界!」

「展開!」

ユーノとアルフが結界を張る。

「フェイト、オッケーだよ」

アルフがフェイトに呼びかける。

「うん」

フェイトが頷いてバルディッシュを掲げ、魔法陣を展開する。

「はぁああああああああああっ!!」

空を雷雲が覆い、雷が鳴り響く。

稲妻が走り、やがて、とある一角に落ちたとき、光の柱が発生した。

「見つけた!なのは、やるわよ!」

「うん!」

桜の言葉になのはは答える。

2人がデバイスを構え、魔力の光がジュエルシードに向かう。

「リリカル・マジカル!」

「ジュエルシード!シリアルⅩⅣ!」

「封!」

「印!」

桜色と白銀の光に包まれ、ジュエルシードは封印される。

「やった!」

なのはは嬉しそうな声を上げた。

全員は、ジュエルシードの傍まで飛んでいく。

ジュエルシードは静かに浮いていた。

だが、俺はふと別の魔力を感じたような気がした。

俺は辺りを見回す。

「ユウ君?どうしたの?」

そんな俺の様子が気になったのか、なのはが尋ねてくる。

「あ、いや、気のせいだったみたいだ。何でもないよ」

俺はそう言ったが、どうしても不安は拭えない。

そんな俺を尻目に、フェイトがジュエルシードを確保しようとバルディッシュを向ける。

その時だった。

――ドォオオン

先程の魔力流の雷が近くに落ちた。

「「「きゃっ!?」」」

「うおっ!?」

その事にビックリして軽い悲鳴を上げる俺達。

しかし、

「なっ!?」

「嘘っ!?」

俺と桜が思わず声を漏らした。

雷が落ちた場所から、もう1つの光の柱が立ち昇る。

「そんな!?ジュエルシードがもう一個!?」

なのはが叫ぶ。

「くそっ!さっき感じた魔力はコイツだったのか!」

俺は思わずそう言葉を吐いた。

「いけない!早く確保しないと共鳴して封印が破れる!」

ユーノが叫んだ。

それを聞くが早いか、桜が封印したジュエルシードにレイジングソウルを突き出した。

だがその時、

――ガキィ

「えっ?」

「フェイト!?」

同じくジュエルシードを確保しようとしたフェイトのバルディッシュとかち合ってしまった。

「しまっ・・・・・・」

桜が叫ぼうとしたがそれより早く2人のデバイスに罅が入り、

――ドォオオオオオオオオオオオオオオオオン

凄まじい魔力がジュエルシードから放出される。

「きゃああああああああああああああっ!?」

「うわぁああああああああああああっ!?」

桜とフェイトが悲鳴を上げながら吹き飛ばされる。

「桜!」

俺は咄嗟に近くに吹き飛んできた桜を受け止める。

「大丈夫か?」

「な、なんとか・・・・」

桜が答えたことに安堵する。

フェイトの方は自力で持ち直したようだ。

俺は桜を降ろす。

だが、その時フェイトがバルデッシュを待機状態に戻し、ジュエルシードを見つめる。

その様子を見た俺は、アニメのフェイトの無茶を思い出した。

「まさかっ!」

フェイトはジュエルシードに向かって駆け出す。

アニメでは、たった一個を押さえるのにギリギリだった筈。

しかし、今は2つあり、しかもお互いの魔力に反応してますます放出される魔力が多くなっている。

「あのバカッ!」

俺は思わず飛び出した。

ジュエルシードを掴もうとしたフェイトを、ギリギリで抱きかかえジュエルシードから飛び退く。

「何を!?」

フェイトが叫ぶ。

「それはこっちの台詞だ!死ぬ気かお前は!?」

俺は思わず言い返した。

「あんなもん素手で掴んだらただじゃ済まないぞ!」

「でも、このままじゃ・・・・・!」

そう言い合っている間にもジュエルシードが連鎖反応を起こしていき、次元震が断続的に起こる。

「チィ!言い合っている暇は無い!なのは!俺がジュエルシードを黙らせる!お前は直ぐに封印しろ!!」

俺はなのはに向かって叫ぶ。

「えっ?でも、どうやって!?」

なのはが問いかけてくるが、それに答えている暇は無い。

「黙って見てろ!ブレイズ!セットアップ!」

『Stand by, Ready. Set up.』

俺は黄金の鎧を身に纏う。

そして、空中へ飛び上がり、ジュエルシードを見下ろす。

「全員離れてろ!巻き添え食うぞ!!」

俺はそう叫ぶと、両手に魔力を集中させていき、圧縮した魔力球を作り出す。

俺の炎熱変換の時の魔力光はオレンジだが、超高熱、高密度により、その魔力球は黄金に輝く。

俺は更に魔力を加えていき、その魔力球を巨大化させ、直径が約3mになった。

その間、約3秒。

そして、それを俺はジュエルシードに向け、放った。

「ガイアフォーーーーース!!!」

ガイアフォースは2つのジュエルシードから放出される魔力をものともせずに吹き飛ばし、ジュエルシードに直撃する。

圧縮された魔力が解放され、ジュエルシードを飲み込み、天を突く黄金の柱を築き上げた。

「なっ!?」

「す、すごい・・・・・」

「これが・・・・ユウの本気・・・・・・・」

それぞれがその光景に目を奪われ、言葉を漏らす。

そして、その黄金の柱が消えた時には、沈黙した2つのジュエルシードが転がっていた。

「なのは!封印だ!」

俺は、呆けていたなのはに声をかける。

「へっ?あ、うん!」

気を取り直したなのはは、ジュエルシードに向かってデバイスを構える。

「リリカル・マジカル!ジュエルシード シリアルⅩⅣ シリアルⅡ。封印!!」

沈黙したジュエルシードは桜色の光に包まれ、再び封印された。

それを確認した俺は、ホッと息を吐き、地上に降りる。

そして、呆然とこちらを見ていた桜、フェイト、ユーノ、アルフに気付く。

「どうした?」

俺は尋ねる。

「あ・・・・・いや、話には聞いてたんだけど・・・・・・改めて凄さを知ったと言うか・・・・・・・」

ユーノが歯切れ悪く答える。

「まさか此処までなんてね・・・・・」

桜も驚いた様子である。

「情けない奴だと思ってたけど、まあSSSオーバーってだけはあるね」

情けない奴で悪かったですねアルフさん。

「す、凄かった・・・・・・」

フェイトも呆然と呟く。

いや、まあ、実を言えば、俺も驚いている。

ガイアフォースを実戦で使ったのは初めてだ。

でも、まさか、魔力の柱が空まで届くとは・・・・・・

やっぱ俺の魔力はチートだな。

そんな事を思いながら、夜空を見つめた。









あとがき

第九話完成。

短いな・・・・・・

まあ、今回はガイアフォースをぶっ放したかっただけですし(爆)

次回はプレシア、アリシアとの出会い&時空管理局との邂逅ですんで長くなりそうですが・・・・・

因みに今日はバレンタインデーですが・・・・・・・

自分に言わせて貰えば、

バレンタイン?

何か特別なことでもあるの?

俺にとっちゃ普通の日だけど?

ってことで、いつも通りの更新です。

まあ、ともかく返信です。




>すがり様
感想ありがとうございます。
この小説は最強テンプレ系なんで嫌う方も多いと思います。
しかし、バカにしている気は毛頭ございませんのであしからず。



>メビウス様
感想ありがとうございます。
最終形態のヒントは、ウォーグレイモンとメタルガルルモン、そして、・・・・・
では、次回も頑張ります。



>月の亡霊様
感想ありがとうございます。
温泉で男湯は映ってなかったので入ってないという設定です。
時空管理局との邂逅では一波乱あるのでお楽しみに。
では、次も頑張ります。



>totoro様
感想ありがとうございます。
フェイトが主人公の正体に気付く所はもう決めています。
では、その時をお楽しみに。



>俊様
感想ありがとうございます。
やはり、リニスとアルフの再会はこれしかないと思いました。
プレシアとの出会いは次回をお楽しみに。
時空管理局とも一波乱ありますよ。
では、次も頑張ります。



>帝様
感想ありがとうございます。
ラスボスですか?
なんていうか、主人公にかかれば、どんなラスボスもラスボスに成りえないんですが・・・・・・
というわけであっさり終わるかも知れません。
寧ろ、時空管理局との一波乱かもしれません。
では、次も頑張ります。



>ラングース様
感想ありがとうございます。
アースラ組は出てきますが、そのときに一波乱ありますよ。
お楽しみに。



>AQUA様
感想ありがとうございます。
前回、前々回と出番が無かったので、今回は主人公大活躍です。
短いですが・・・・・・
もちろん海のジュエルシードの時も活躍する予定です。
では、次回も頑張ります。



>nemesis様
感想ありがとうございます。
フェイトが主人公の正体を知るのは、今しばらくお待ちを。
少なくとも無印編の中で正体を知ります。
主人公の卑屈さは、A`S編までは続くかと・・・・・
少しはマシになると思いますが・・・・・
桜については、気をつけます。
では、次回も頑張ります。



>天弧様
感想ありがとうございます。
主人公の出番が前回と前々回無かったので、今回は大活躍です。
因みに、リクエストですが・・・・・究極体の中でもトップクラスの奴らばかりなんで、難しいなぁ・・・・・
A`Sの最後なら出せるかもしれないんですが・・・・・
ともかく、次回も頑張ります。



>星の弓様
感想ありがとうございます。
今回は主人公大活躍です。
次回もお楽しみに。



>DF様
感想ありがとうございます。
ロイヤルナイツですか・・・・・
う~ん・・・・バリアジャケットでならいずれ出てくるんですけど・・・・・
ともかく、次回も頑張ります。





[15302] 第十話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/02/21 11:01


第十話 時の庭園の再会。そして、時空管理局との邂逅。



次元震が起きた翌朝。

遠見市のマンション屋上に俺達は居た。

このマンションは、フェイトの部屋があるマンションで、今日は、フェイトがプレシアへの定期連絡の為に時の庭園へ向かう為、リニスがフェイトについて行く序に、俺たちもお邪魔する事にしたのだ。

因みに学校は、士郎さんや桃子さんにお願いして、適当に理由を作ってもらって欠席の連絡をしてもらった。

フェイトの家にお邪魔すると言ったら、2人は快く了承してくれた。

因みに、その時にお土産である翠屋のお菓子詰め合わせを渡された。

そして、フェイトが転移魔法を唱えだす。

「次元転移。次元座標 876C 4419 3312 D699 3583 A1460 779 F3125。開け、誘いの扉。時の庭園、テスタロッサの主の元へ」

その呪文と共に、魔法陣が展開され、光に包まれる。

そして、俺達はその場から消え去った。






視界が戻ると、俺達はとある薄暗い部屋の中に居た。

「時の庭園に来るのも久しぶりですね」

リニスが呟く。

「此処がフェイトちゃんの家?」

なのはが辺りを見回しながら、そう尋ねる。

「うん・・・・・ついて来て」

フェイトがそう言って、前を歩き始める。

俺達はその後を追って部屋を出た。

長い廊下を歩く俺たち。

しっかし、まるで城みたいな家だな。

廊下を見渡しながら俺は思う。

これは、アニメを見ていた時も思ったことだ。

やがて、廊下の先に玉座の間への扉が見える。

玉座の間なんて、何で一般家庭(?)にあるのやら。

フェイトがその扉を開けると・・・・・・

「お帰りフェイト!」

その瞬間、元気のいい声を上げて、誰かがフェイトに抱きついた。

「きゃ!?ね、姉さん!」

フェイトは少しビックリした声を上げて、その誰かに声をかけた。

まあ、姉さんって言ってるから、アリシアだろうけど。

すると、

「お帰りなさい、フェイト。無事なようで安心したわ」

玉座の方から声がした。

「ただいま、母さん」

フェイトは嬉しそうな顔をしてそう言う。

そこで俺たちも扉を潜り、

「久しぶりですね、プレシア」

そうリニスが言った。

玉座には、驚いた顔のプレシア。

だが、そこで俺はふと思った。

なんか若くねえかな。

アニメでは50歳越えてたはずだけど、今のプレシアは、精々30代と言った所だ。

「リ、リニス・・・・・・生きてたの?」

プレシアが驚愕した顔で呟く。

「リニス?・・・・・・リニスだぁ!」

アリシアは喜びの声を上げながら、リニスに抱きつく。

「アリシアも久しぶりですね」

そう言いながらリニスはアリシアの頭を撫でる。

そして、プレシアに向き直ると、

「ええ、偶然転移した先に、膨大な魔力を保有した魔導師がいたので、再契約したんですよ。それで今回、フェイトに偶然にも出会ったので、こうして付いて来たというわけです」

そう説明した。

「そう・・・・それで、気になってたんだけど、其方の子供たちは?」

プレシアがそう聞くと、フェイトが若干顔を赤くしながら、

「む、向こうの世界で友達になったの・・・・・それで・・・・・」

フェイトの言葉を聞くと、プレシアは少し驚いた顔をした。

しかし、直ぐに優しそうな表情になり、

「そう・・・・友達が出来たの・・・・・良かったわね、フェイト」

「うん・・・・」

プレシアの言葉に、フェイトは顔を赤くして俯きながらも頷く。

プレシアは、俺たちに向き直り、

「あなた達の名前を教えてくれるかしら?」

そう尋ねてきた。

すると、

「た、高町 なのはです!聖祥小学校3年生です!」

なのはが緊張した面持ちで、自己紹介した。

「高町 桜です。なのはの双子の姉になります。これ、つまらない物ですが」

桜は流石に前世の記憶があるためか、普通に自己紹介し、お土産の翠屋のお菓子詰め合わせの袋をプレシアに差し出す。

「あら、ありがとう」

プレシアはそう言って受け取る。

「それは、家でやってる喫茶店のお菓子なんです。喫茶翠屋という名前なので、もし気に入ったら是非来てください」

流石、喫茶店の娘。

店の宣伝も忘れない。

「ええ、そうさせてもらうわ」

プレシアは、微笑んで頷く。

「ユーノ・スクライアです。ジュエルシードを発掘した隊の指揮をしていました」

ユーノの、その言葉を聞くと、プレシアは申し訳無さそうな表情になり、

「そう・・・・・あなたが・・・・・・ごめんなさいね。私がもっとしっかりしていれば・・・・・」

プレシアはそう言いながら頭を下げる。

「あっ!いえっ!事故であれば仕方ありません!それに、フェイトのお陰で、ジュエルシード集めも捗ってますし」

ユーノは慌ててそう言った。

「そう言ってもらえると助かるわ。ありがとう」

「いえ・・・・」

そして、最後にプレシアは俺に顔を向けた。

俺は名乗ろうと思い、

「俺は「レイジ君?」えっ?」

プレシアの呟きに思わず声を漏らした。

プレシアは、少し驚いた顔をして、俺の顔をじっと見てくる。

すると、はっとして、

「あ、ごめんなさい。子供の頃の知り合いによく似てたものだから。でも、考えてみれば、レイジ君は私と同い年なんだから、あなたがレイジ君な訳ないわよね」

プレシアは、1人納得する。

だが、レイジというのは父さんの名前である。

そして、プレシアは30代半ばといった所。

父さんも生きていれば、目の前のプレシアと同じ位の歳だ。

だから、俺は確かめる事にした。

「あの、あなたが言っているレイジというのは、レイジ・リムルートの事ですか?」

俺は、そう尋ねる。

すると、再びプレシアは驚いた顔をする。

「え?ええ、そうだけど・・・・・・」

それを見て、確信した俺は、

「俺は、ユウ・リムルート。レイジ・リムルートの息子です」

そう名乗った。

「そう・・・・・レイジ君の・・・・」

プレシアは、そう呟くと、なにやら物思いに耽っている。

その時、

「ねえ、ユウ君」

なのはが俺に話しかけてきた。

「何だ?」

「リムルートって何?」

なのはがそう尋ねる。

「リムルートっていうのは、俺の本当のファミリーネームだけど・・・・・・言ってなかったけ?」

「初耳よ。まあ、ミッドチルダ出身なのに、思いっきり日本人の名前だったからちょっと不思議に思ってたんだけどね」

桜がそう言った。

プレシアは顔を上げ、

「所で、レイジ君は元気にしてる?」

そう聞いてきた。

俺は、言い辛かったが、

「・・・・・・・父さんは・・・・・一年以上前に・・・・・事故で・・・・・」

俺のその言葉で察したのか、

「そう・・・・・ごめんなさい」

プレシアは申し訳無さそうな顔をして謝る。

「いえ・・・・・気にしないでください」

俺はそう言った。




暫くして、気を取り直したプレシアは、フェイトからの報告を聞く。

ジュエルシードはなのはが集めた分を含めて、既に10個集まっている事と、俺がリニスの契約者だという事に大層驚いていたが。

その中で、アリシアの自己紹介も行い、何やら姉同士で桜とアリシアは気が合うようだ。

それで、報告が終わると、

「母さん・・・・・あの・・・・・・」

フェイトがプレシアに小声で何やら話しかけている。

プレシアはフェイトの言葉を聞くと若干驚いた顔をしたが、

「あなたの好きなようになさい・・・・・」

そうフェイトに言った。

フェイトは少し不安そうにしながら俺達の前に来る。

「あの・・・・・なのは、桜、ユーノ、ユウ・・・・・・・皆に、聞いて欲しい事があるんだ・・・・・」

フェイトはそう呟いた。

「あ、あの・・・・・・私ね・・・・・・・」

フェイトは少し言い辛そうにしていたが、

「私は・・・・・正確に言えば・・・・・・母さんの本当の娘じゃないんだ・・・・・・」

「「えっ?」」

フェイトの言葉に、なのはとユーノが声を漏らした。

「私は・・・・・本当は・・・・・姉さん・・・・・・アリシア・テスタロッサの細胞を元に作られた・・・・・・クローンなんだ・・・・・・・・」

フェイトの告白に、言葉を失うなのはとユーノ。

俺と桜は、黙ってフェイトの言葉を聞いている。

「皆は・・・・・・こんな私でも・・・・・・友達でいてくれる?」

フェイトは不安で押しつぶされそうな表情をしている。

俺はアニメを見て知識としては知っていたが、実際にフェイトがクローンだという事を聞いてこの場で思ったことを素直に口にした。

「クローンだから何だってんだ?」

「え?」

俺の言葉にフェイトは驚いた表情をする。

「全くね。フェイトがクローンってだけで友達やめると思ってたの?だったら心外だわ」

桜もそう言った。

「クローンって言っても、多少生まれ方が違うだけで、ちゃんと心を持った人間だろ。クローンだろうがフェイトはフェイト。それで良いじゃないか」

「桜・・・・・ユウ・・・・・・・」

フェイトは何やら涙ぐんでいる。

「ふ、2人の言うとおりだよ!ちょっと驚いたけど、フェイトちゃんは私達の友達だよ!」

なのはが少し遅れてそう言った。

「僕も、そんな事は気にしないよ」

ユーノも笑顔でそう言う。

「皆・・・・・・ありがとう」

フェイトは涙を流しながら笑顔で礼を言った。




暫くして、

「それにしても、レイジ君の息子・・・・・か」

プレシアは、俺を見ながらなにやら遠い目をする。

まあ、昔を懐かしんでいるのだろう。

だから、俺はこう聞いた。

「プレシアさんは、父さんとはどのような関係で?」

その質問に、

「そうね・・・・・・やっぱり幼馴染って言葉が一番しっくりくるかしら」

プレシアは、懐かしむようにそう呟く。

「昔は、よく一緒に遊んだわ。私と、レイジ君と、そしてあの人・・・・・・」

プレシアが再び遠い目に・・・・・

あの人というのは、多分プレシアの夫だろう。

「そうですか・・・・・・」

俺はそう呟いた。

すると、再びプレシアは俺の顔を見て、なにやら考え込む表情をした。

「何か?」

気になった俺は尋ねる。

「ねえ、ユウ君」

「はい?」

「アリシアかフェイト、どっちか貰ってくれないかしら?」

「は?」

プレシアの言葉に俺は素っ頓狂な声を漏らし、

「「「なっ!?」」」

アリシア、フェイト、そしてなのはは、驚愕した声を上げた。

何言ってるんですかアンタ!?

「か、母さん!?」

「母様!?いきなり何言ってるの!?」

フェイトとアリシアが叫ぶ。

そりゃ当然だろう。

「アリシアもフェイトも、大事に育てすぎた所為か、ちょっと常識知らずな所があって・・・・・・・・・男の子の知り合いも、一人もいないのよ。このままじゃ、将来が心配で・・・・・」

プレシアは、そう続けた。

幼馴染の息子というだけで、其処まで勧めるって、どういう感覚してるんですか!?

俺は、口を開こうとしたが、

「だめぇええええええええええええっ!!」

なのはの叫びに止められた。

「だだっ、ダメです!それだけはダメです!!」

なのはは必死に否定する。

「あら、なのはちゃん。ユウ君のこと意識してるの?」

プレシアの言葉に、なのはは顔を真っ赤にする。

その反応を見ると、

「うん。それならいっその事、2人とも貰ってもらって、なのはちゃんも含めて、一夫多妻制の世界に移住するのもありかしら?」

これまたとんでもない発言をかますプレシア。

「な、何言ってるんですかプレシアさん!!」

俺は思わず叫んだ。

「あら、2人じゃ不満かしら?母親の私が言うのも何だけど、2人とも将来は美人になるわよ」

いや、それはストライカーズ見てましたから知ってますけどね!

フェイトは美人になってたし、同じ遺伝子を持つアリシアも同じでしょうけど!

俺が言いたいのはそういう事ではなく。

「いや、俺なんかじゃ2人には釣り合いませんって!」

俺はそう言った。

「あら、謙遜しなくても良いわよ。私、これでも人を見る目はある心算よ。あなたの第一印象を見て、この子なら大丈夫って思ったのよ」

なら、今このときだけ、貴女の目は狂っています。

俺は、誰かに助けを求めようとしたが、なのはは「一夫多妻制?・・・・・でも、フェイトちゃんたちなら・・・・・・・」とか言ってるので当てにならん。

桜は面白そうな笑みを浮かべているので却下。

リニスは笑顔だが、我関せずを貫いている。

味方は居なかった。

だがその時、

「あははは!フェイトはダメだよプレシア。フェイトには好きな相手がいるんだ」

アルフが言った。

「「「「「「「え?」」」」」」」

フェイトとアルフ以外の声が重なった。

「ア、アルフ・・・・・・」

フェイトは顔を赤くしている。

フェイトって好きな相手いたの?

「本当なの、フェイトちゃん?」

なのはが尋ねた。

「う、うん・・・・・・でも、顔も名前も知らないし・・・・・・・・」

「如何いう事?」

フェイトの言葉に桜が問いかける。

「あ、あの・・・・・・・まだ、なのは達と会う前なんだけど・・・・・・ジュエルシードの暴走体を相手に負けそうになった所を、青いバリアジャケットを着た魔導師に助けられたんだ・・・・・・バリアジャケットは顔も覆ってたから、顔は分からなかったし、名前も聞けなかった。ただ、分かっているのは、黒い瞳と、氷結の魔力変換資質の持ち主ということだけなんだ・・・・・・・」

そのフェイトの話を聞いた瞬間、

――ゴスッ!

俺は頭を床に打ち付けた。

リニスもじっと俺を見てくる。

・・・・・フェイトが言ってるのって俺じゃねーか!

(フフフ・・・・・・マスター、私達の言った通りでしょう)

アイシクルが念話してくる。

(黙ってろ!)

俺は念話でそう返す。

「ちょっと、いきなり如何したのよ?」

桜が尋ねてきた。

「何でもない・・・・・足を滑らせただけだ」

流石に、此処で名乗り出るような真似は、俺はしない。

「あっそ、ところでアンタもその青いバリアジャケットの魔導師に心当たりは無い?」

「・・・・・・・知り合いには居ないな・・・・・・」

俺はそう答えた。

嘘は言ってない。

本当に“知り合い”に青いバリアジャケットの魔導師は居ない。

俺のその言葉を聞くと、フェイトはガッカリした表情になる。

すると、

「大丈夫ですよフェイト。その人にはきっと会えます。案外、身近な人かもしれませんよ」

リニスはそう言いながら、視線を俺に向けてくる。

くぉらリニス、慰めるのは結構だが、俺に繋がるようなヒントを言うんじゃない。

幸運にもフェイトは、それがリニスの励ましだと受け止め、特に気にしてはいないようだった。





その後、プレシアからの話では、プレシアもやる事は殆ど終わり、今日中にでも海鳴市へ来れるそうだ。

その報告を聞いたフェイトは、とても嬉しそうな表情をしていた。

まあ、この歳で母親と離ればなれになっていたのは寂しかったのだろう。

プレシアは、準備が出来た後にアリシアと共に来るらしいので、俺達は先に海鳴市へ戻った。

思ったよりも結構な時間が経っていたらしく、海鳴市では、もう学校が終わる時間だった。

そのため、このままジュエルシードの捜索を開始する事にする。

丁度、発動しそうなジュエルシードの反応を感じる為、臨海公園へと向かった。





俺達はバリアジャケットを纏い、現場へ到着する。

確かアニメでは、今回の暴走体は木の化け物だった筈だが、

「ウォオオオオオオーーーーーーッ!!」

もう突っ込まん。

木の化け物がジュレイモンもどきになっていようと、もう突っ込まん。

此処まで来ると、例の神がなんか運命弄くってんじゃないかと思う。

「フォトンランサー!ファイア!」

「「ディバインシューター!シュート!」」

3人が牽制に数発の魔力弾を放つが、

――キィン

ジュレイモンもどきは、バリアを張ってそれを防いだ。

アニメと同じようにバリア張るんかい。

「うぉう!生意気に、バリアまで張るのかい!」

アルフが叫んだ。

「うん・・・・強いね・・・・・・・油断せずに行こう」

フェイトが呟いた。

すると、ジュレイモンもどきは無数の木の実を放ってくる。

俺達は直ぐに飛び退いた。

木の実が地面に当たると、

――ズドドドドォ

爆発を起こした。

やっぱチェリーボム。

桜も俺と同じように予想していた所為か動揺は無かったが、なのはとフェイトはかなりビックリしていた。

「俺がバリアを砕く!お前たちで決めろ!!」

俺は3人に呼びかけた。

「う、うん、わかった!」

なのはが返事をする。

『『Shooting mode』』

レイジングハートとレイジングソウルがシューティングモードに変形する。

そして、2人はそれを構え、フェイトもバルディッシュを構えた。

「貫け轟雷!サンダー・・・・・・・」

「「ディバイィィィィィン・・・・・・」

それぞれが砲撃を準備する。

それを見た俺は、右腕を振りかぶり、

「ドラモンキラー!!」

一気にドラモンキラーを突き出した。

ジュレイモンもどきはバリアを張るが、

――バリィン

俺は難なく砕き、余った勢いでジュレイモンもどきに攻撃した。

「ヴォオオオオオッ!?」

相当なダメージを与えたようで、ジュレイモンもどきは苦しそうな叫び声をあげる。

俺は直ぐにその場を飛び退いた。

その瞬間を狙い、

「・・・・・・スマッシャー!!」

「「・・・・・・バスターーーーーーッ!!」」

金色、桜色、白銀の3つの砲撃が放たれた。

「オオオオオオオオオッ!!」

断末魔の叫びを上げつつ消滅するジュレイモンもどき。

ジュエルシードが浮かび上がる。

「リリカル・マジカル!」

「ジュエルシード、シリアルⅦ!」

「封印!」

3人がジュエルシードを封印した。

フェイトがそのジュエルシードを回収する。

そして帰ろうかと思ったその時、

「ちょっと待ってくれ」

少年の声が聞こえた。

俺達が振り向くと、其処にはデバイスの杖を持った黒髪の少年の姿。

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。詳しい話を聞かせてもらいたい」







【Side 桜】




「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。詳しい話を聞かせてもらいたい」

そう言ってきたのはクロノだった。

まあ、アニメと同じタイミングだし、来ても不思議じゃないわね。

その時、

『ちょっと待ってくださるかしら?』

プレシアさんの声が響き、紫色の転送魔法陣が浮かび上がる。

其処に、プレシアさんがアリシアを連れて転移してきた。

「あなたは?」

クロノが問いかける。

「私はプレシア・テスタロッサ。このアリシアと、そこにいるフェイトの母親で、管理局に今回のジュエルシードの事を依頼した本人よ。まあ、それ以外でも名前ぐらいは聞いた事あるんじゃないかしら?」

プレシアさんはそう言った。

「あなたが、大魔導師と呼ばれた・・・・・・・わかりました。お話をお聞かせ願いたいので、一先ず私達の艦、アースラへお越しください」

「ええ、その心算よ」

クロノの言葉に、プレシアさんは頷く。

「君達も、それでいいか?」

クロノは此方に尋ねてきたので、

「ええ」

私は頷いた。

「じゃあ、僕の近くへ」

そう促され、私はクロノの近くへ歩み寄る。

それにつられて、なのは、フェイト、ユーノ、アルフも近くへ寄る。

プレシアさんとアリシアも傍へ来た。

でも、

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・ユウ」

ユウとリニスは動かなかった。

「ユウ?」

私はユウに呼びかける。

すると、

ユウは無言で私達に背を向けた。

「ユウ君!?」

「君っ!?」

なのはとクロノが驚いたようにユウに呼びかける。

ユウはゆっくりと口を開いた。

「・・・・・・・・俺は管理局の指図を受ける心算は無い・・・・」

そう言って、クロノを睨んだユウの目を見て私は絶句した。

明らかに敵意の篭った目。

信じられなかった。

今までのユウは、ジュエルシードの暴走体相手でも、あんな目を向けたことは無い。

暴走体に向けるときの目は、「余り痛めつけたくはないけど、暴れるならしょうがない」といった感じだった。

前になのはが言っていた、虫も無闇に殺さない優しさという事も、それを見ていて頷けた。

多少・・・・っていうか、かなり後ろ向きな性格だけど、優しくて温和な性格。

これが私が感じたユウの性格。

怒っている所なんて見たことも無かった。

でも、今のユウは明らかに怒りの感情をクロノに向けている。

「ど、どうしちゃったの!?ユウ君!!」

なのはもそれを感じたのか、動揺しながらユウに問いかける。

「なのは・・・・・桜・・・・・・フェイト・・・・・・ユーノ・・・・・悪いけど、管理局が関わってくるのなら、俺が協力できるのは此処までだ」

「「「「ッ!?」」」」

その言葉に声を失う私達。

ユウはそのまま歩き出す。

「おい!」

クロノが前に出て、デバイスを構えた。

その瞬間、

『やめなさい!!クロノ!!』

モニターが開いて、翠の髪の女性が叫んだ。

恐らくリンディさんだろう。

その言葉で、動きを止めるクロノ。

そして、

『待って!ユウ君!!』

リンディさんがユウの名を呼んだ。

リンディさんの声で足を止めるユウ。

知り合い?

ユウは振り向き、

「久しぶりですね、リンディさん・・・・・」

ユウは呟く。

だが、その顔に感情は無い。

『ええ・・・・久しぶりねユウ君・・・・・』

少し沈黙があったが、

『・・・・・お願いユウ君、話だけでも「リンディさん」ッ!?』

リンディさんの言葉を途中でユウが止める。

「前にも言った筈です。俺は“管理局”を全く信用していないと」

いつものユウとは思えない一方的な言葉。

ユウは再び背を向ける。

「話が聞きたいのならリニスから聞いてください・・・・では」

ユウは再び歩き出す。

私達は驚愕の余り動けない。

「ふ、ふざけるな!!そんな勝手が許されると思っているのか!!」

クロノが叫んでユウにデバイスを向ける。

「僕達時空管理局は「次元世界の平和と安定を守る法の番人・・・・・・正義の組織・・・・・か?」ッ!?・・・・・・そのとおりだ!!」

クロノの言葉を続けるようにユウが言葉を発し、クロノはそれを肯定する。

「けど・・・・・・俺には関係ないね」

ユウはそう言い放った。

「何っ!?」

「お前らが勝手に決めた事を、俺が守らなきゃいけない筋合いは何処にも無い」

ユウは再び歩き出す。

「貴様っ!!」

クロノは遂に我慢の限界に来たのか、デバイスに魔力を込める。

『待ちなさい!!クロノ!!』

それに気付いたリンディさんは慌てて止めようとしたが、それよりも一瞬早く魔力弾が放たれた。

――ドォン!

その魔力弾はユウに直撃し、ユウは爆煙に包まれる。

「ユウ君!?」

なのはが悲鳴に近い声を上げた。

だが、風が吹いて煙を吹き飛ばすと、その中からは無傷のユウの姿があった。

「・・・・・・・・自分達の意にそぐわなければ、威嚇も無しにいきなり攻撃を直撃させる・・・・・・・それがお前たちの正義・・・・・・か?」

そう言って睨み付けるユウに、

「ち・・・・ちが・・・・」

クロノはたじろぐ。

次の瞬間、ユウは目を見開き、

「ふざけるな!!!」

その叫びと共に生み出される黄金の巨大な魔力球。

「ちょ、いきなりガイア・・・・・!」

私の言葉は最後まで続かなかった。

言い終わる前に、クロノに向かってガイアフォースが放たれる。

「なっ!?」

クロノはその魔力に驚愕する。

絶対に止められない力の差。

絶望的なその差に呆然となるクロノの横を、ガイアフォースは通過した。

ガイアフォースは海の上を通過し、遥か空へと消える。

そして、驚く事にガイアフォースが通過した海は、真っ二つに割れていた。

「嘘・・・・・・・」

誰が漏らしたかは分からない。

ただ、その事実に驚愕し、その場にいた全員は呆然としていた。

そして、私が正気を取り戻した時、ユウは既にその場にはいなかった。







あとがき

第十話完成。

結構やりたい放題やりました。

ご都合主義の如く、プレシアさんと主人公の父が幼馴染設定。

プレシアさん、全然性格違います。

そんで、時空管理局との邂逅。

大人しくユウがアースラについていくと思ったら大間違い。

ブチギレました。

大人しい奴ほど、怒った時には怖いのです。

では、返信を。




>AQUA様
感想ありがとうございます。
ラスボスといえるラスボスは出てこないと思います。
恐らく無印編では時空管理局との絡みがメインになるかな?
勢いで書いているのでどうなるか分かりません。
では、次回も頑張ります。



>俊様
感想ありがとうございます。
話し以前にユウがブチギレました。
因みに翠屋での話し合いは自分も考えているのでお楽しみに。



>ラングース様
感想ありがとうございます。
俊様の返信にも書いてあるとおり、翠屋での話し合いは考えてます。
その話し合いまで持っていくのに一悶着ありますがね。
では、その時をお楽しみに。



>クロポン様
感想ありがとうございます。
ハーレムの予定ですので、アリシアにも当然フラグ立てる予定です。
どうやって立てるかは決まってませんが(爆)
あと、ユウへの応援ありがとうございます。
次回もお楽しみに。



>紅猫様
感想ありがとうございます。
話し合い云々以前にユウは管理局の話を聞きません。
なのは達は・・・・・どうなるのかなぁ・・・・・?
家族も交えての話し合いは考えているので、その時をお楽しみに。
では、次回も頑張ります。



>星の弓様
感想ありがとうございます。
今回は如何だったでしょうか?
クロノが悪者になった感が・・・・・
では、次回も頑張ります。



>かな様
感想ありがとうございます。
表現ではSSSオーバーとなっていますが、正確に言えばSSS以上で計測不能なのです。
もう1,2個Sがついても不思議じゃないです。
何というチート。
では、次回も頑張ります。






[15302] 第十一話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/04/04 09:45

第十一話 それぞれの思い。




【Side 桜】



ユウがいなくなった後、気を取り直した私達はアースラに案内された。

転送によって、アースラ内部に現れる私達。

なのはは、物珍しそうに辺りを見渡しながら、念話でユーノに質問していた。

それよりも、私はさっきのユウの事で頭が一杯だった。

何故ユウはクロノに対して、いや、管理局に対してあんなに嫌悪感を露にするのか?

いつものユウなら、嫌な事は適当に受け流す筈だ。

少なくとも、あんな感情的になる事は無い。

次から次へと、疑問は尽きない。

気付けば、いつの間にかリンディさんが居るであろう部屋の前であった。

クロノは扉を開け、

「艦長、来てもらいました」

そう言った。

その部屋は、アニメで見た通り、茶釜、盆栽、猪脅しなど、和風の物が飾ってある。

リンディさん、和を間違えてるんじゃないですか?

適当に並べればいいってもんじゃないですよ。

そんな私の思いは露知らず、

「お疲れ様、まあ皆さん、どうぞどうぞ楽にして」

正座し、笑顔でそう言うアースラ艦長、リンディ・ハラオウンがいた。

私達は、とりあえずお言葉に甘えてたたみの上に座る。

すると、

「久しぶりですね、リンディ」

リニスがリンディさんに声をかけた。

「ええ・・・・・お久しぶりね、リニスさん」

リンディさんもそう答える。

「リニスさん、知り合いなんですか?」

なのはがリニスに問いかける。

「ええ、一年ほど前に少々・・・・」

リニスは微笑みながら答える。

でも、その笑みは表面上だけに思えた。

すると、リンディさんは姿勢を正し、

「先ずは先程、此方の執務官が軽率な行動を取ってしまった事を謝罪します。本当に申し訳ありませんでした」

そう言ってリンディさんは頭を下げる。

「か、艦長!?」

クロノが驚いている。

「クロノ執務官。先程のあなたの行動は、此方の指示に従わなかったとはいえ、あの場での最善の行動とは思えません。挙げ句、威嚇も無しに攻撃を直撃させるなど、軽率な行動以外の何物でもありません。当事者である彼はこの場にはいませんが、皆様にも謝罪をすべきです」

リンディさんの指摘に、クロノは言葉を詰まらせる。

「ぐ・・・・は、はい・・・・・申し訳ありませんでした・・・・・」

クロノは納得がし辛いようだったが、渋々と頭を下げる。

2人は、頭を上げると、

「では、皆様の話を聞きたいと思います」

そう言った。





ユーノがジュエルシードを集める事になった経緯を説明した。

「なるほど、そうですか。あのロストロギア・・・・ジュエルシードを発掘したのはあなただったのですね」

ジュエルシードの経緯を聞いたリンディさんがそう言う。

「はい・・・それで、僕が回収しようと・・・・・」

ユーノが頷き、同時にそれがジュエルシードを回収しようとした理由である事を言った。

「立派だわ」

リンディさんはそう言うが、

「だけど、同時に無謀でもある」

クロノが直球にそう言った。

その言葉に、ユーノはしゅんとなる。

アニメと同じやり取りだが、実際にその言葉を聞いたら、私はクロノにカチンときた

「それはあなたが言える筋合いは無いと思うわよ。執務官さん」

皮肉を込めてそう言った。

「なっ!?どういう意味だ?」

クロノが若干イラついた声で尋ねてくる。

「だってそうでしょ?あなた達が何時プレシアさんから依頼を受けたのかは知らないけど、ジュエルシードが海鳴市に散らばってから今日まで、一体幾つのジュエルシードが暴走したと思ってるのよ?」

「そ、それは・・・・・・」

私の言葉で、クロノは声を詰まらせる。

「確かにユーノ1人じゃ無謀だったかもしれない。でも、ユーノが行動したから、私となのははユーノと出会い、魔法の力を、この街を守る力を手に入れることができた。もしユーノがすぐにジュエルシードを追ってこなかったら、今頃海鳴市はメチャクチャね。だから、今頃しゃしゃり出てきて偉そうな事言ってんじゃないわよ」

「そ、それは、此方にも事情が・・・・・・・」

「何?別の場所の火を消していたからこっちの対応が遅れましたとでも言いたいの?だったら、危険を冒してまで行動したユーノに感謝こそすれ、説教なんてする資格はないわよ」

「うぐ・・・・・・」

私は、言いたい放題言ってしまう。

「ど、如何したの桜お姉ちゃん!?そんなこというなんてらしくないよ!」

なのはの言葉に私はハッとなる。

「・・・・・・・ゴメン・・・・・言いすぎたわ・・・・・・クロノもユーノのことを心配して言ってくれてたのに・・・・・・・」

私は謝罪する。

「いや・・・・・僕の言い方も悪かった。すまない」

クロノも謝ってくる。

私も先程のユウの行動の理由が分からなくて、若干イライラしているらしい。

因みに、アニメではこの後なのはがロストロギアとは何かの質問をしていた筈だが、この世界では、ジュエルシードを集める上で、ロストロギアとは何たるかを既にリニスから教わっているので、そんな質問はしない。

だから、私は今一番気になっていた事をリンディさんに質問する。

「話は変わるんですけど、管理局ってユウに何かしたんですか?幾ら攻撃されたからって、威嚇とはいえ、いきなりガイアフォースで反撃なんて、ただ事じゃないと思うんですけど・・・・・・・」

「あのっ!それ私も知りたいです!ユウ君は普段あんなことする子じゃないのに・・・・・・・」

私の言葉になのはが続く。

その言葉に、リンディさんは視線を床に落とした。

「艦長?」

不思議に思ったクロノが声をかける。

「1つだけ・・・・・・思い当たる事があります・・・・・・」

リンディさんは、辛そうな表情をしながら呟いた。

「・・・・・・皆さんは・・・・・・ユウ君のご両親が既に亡くなっていることはご存知かしら?」

リンディさんはそう尋ねてくる。

「「え?」」

その言葉に、プレシアさんとアリシアは驚いた表情をした。

そういえば、父親が死んだとは知っていても、母親も死んでいるとは聞いていなかったわね。

「・・・・・・私達は、事故で亡くなったと聞いています」

私はそう答えた。

「そうですか・・・・・・ユウ君のご両親・・・・・・・レイジ・リムルートさんと、リーラ・リムルートは、管理局に所属していたわ・・・・・」

「「「「「「えっ?」」」」」」

リンディさんの言葉に私達は驚いた。

ユウは、そんな事一言も言ってなかった。

「2人ともSSランクの魔導師で、2人揃えば負け無しと言われたスーパーエースコンビだったわ。そして、ユウ君の母親のリーラと私は同期で、友人だった・・・・・ユウ君と知り合いなのもそのためね」

リンディさんは、昔を懐かしむように語る。

しかし、すぐに苦しそうな表情に変わった。

「私も報告で聞いただけだけど・・・・・リーラ達は去年の始めごろに、とある世界で強力な魔法生物と戦闘になったわ・・・・・・・」

私はその話を黙って聞いている。

なのはやフェイト達もリンディさんの言葉を真剣に聞いていた。

「もちろんリーラ達も応戦した・・・・・・・それでも、その魔法生物には敵わなかった。だから、リーラとレイジさんは、仲間の武装局員達を救うために、その身を犠牲にした自爆魔法で魔法生物と相打った・・・・・・・・そう聞いているわ・・・・・・・・・」

リンディさんは辛そうに語った。

「そうか・・・・・・・彼からしてみれば、管理局の所為で両親を失ったと言っても過言ではない・・・・・・か。彼のあの時の態度はそのためか・・・・・・」

クロノが納得したように頷く。

「レイジ君達が死んだ事にはそんな理由があったのね・・・・・」

プレシアさんは、悲しそうに呟いた。

フェイトやアリシアは、今にも泣きそうな表情をしていた。

ユーノも悲しそうな表情をしている。

「・・・・・・・・・・・」

しかし、リニスは何処か不機嫌そうだった。

かく言う私も、リンディさんの語った出来事に疑問を持った。

「あの、リンディさん」

だから、私は尋ねた。

「何かしら?桜さん」

リンディさんはそう返してくる。

「・・・・・・本当に・・・・思い当たる事はそれだけなんですか?」

私は確認するように問いかけた。

「えっ?」

「どういうことだ?」

リンディさんは声を漏らし、クロノが質問の意味を私に尋ねてくる。

「本当に・・・・・ユウが管理局を嫌う理由は、それだけしか思い当たる事は無いんですか?」

私は再度問いかける。

「え、ええ・・・・・私が思い当たるのはそれだけよ・・・・・・・・」

リンディさんはそう答えるが、私はどうしても納得できない。

「何か気になる事でもあるの?」

私の態度が気になったのか、リンディさんはそう尋ねてくる。

「気になる事って言うか・・・・・・・ユウは、そんな逆恨みのような事をするとは思えないんです」

リンディさんの言った通りなら、ユウは管理局に対して多少の嫌悪感は持つのかもしれない。

けど、あれほど敵意を剥き出しにするほど嫌うとは、到底思えなかった。

「私も桜お姉ちゃんと同じです。ユウ君は、そんな事じゃ恨んだりしません!」

なのはも真剣な顔で叫んだ。

「そ、そう言われても・・・・・・」

リンディさんは困った表情をする。

「・・・・・・さすがなのはと桜ですね」

リニスが突然そう呟く。

「「えっ?」」

私となのはは声を漏らし、

「如何いう事?」

リンディさんはリニスに問いかける。

「なのはと桜の言うとおりという事です。そのような理由であれば、ユウが管理局を嫌う事など無かったでしょう」

リニスは淡々と言葉を発する。

「貴女は・・・・・ユウ君が管理局を嫌う理由を知っているの?」

リンディさんがそう尋ねた。

「ええ、全て知っています」

その言葉に驚愕する私達。

「なら教えて!何故ユウ君はあそこまで管理局を拒絶するの!?」

リンディさんは必死で問いかける。

しかし、

「それは私の口から言っていい事ではありません」

リニスはそうキッパリと言い切る。

「ですが、強いて言うなら、貴女が考えていたユウが管理局を嫌う理由を、先程の理由と思っていた事自体が、ユウが管理局を嫌う理由でもありますね」

リニスの言っている事が理解できない。

リンディさんがさっき言った事を、ユウが管理局を嫌う理由と思っていた事が、ユウが管理局を嫌う理由って如何いう事?

見れば、リニス以外の全員が頭に?を浮かべたような表情だ。

「それは・・・・・如何いう・・・・・・?」

「これ以上はお話し出来かねます」

リンディさんの質問を即答で却下するリニス。

これ以上に何を聞いてもリニスは答えないだろう。

それをリンディさんも察したのか、

「そうですか・・・・・・わかりました」

そう言って引き下がった。

暫く沈黙が続くが、

「・・・・・・あの・・・・」

フェイトが口を開いた。

「これからジュエルシードに関してはどうなるんでしょうか?」

その質問に、

「ジュエルシードに関しては、只今より時空管理局が全権を持つことになります。あなた達は・・・・・・」

「手伝わせてください!」

フェイトがそう言った。

「私は最後まで責任を取りたいんです!」

「・・・・・・・・」

フェイトの言葉にリンディさんは考える仕草をする。

「フェイト・・・・・」

プレシアさんは心配そうな表情をフェイトに向ける。

「勝手な事を言ってごめんなさい母さん。でも、私がそうしたいんだ」

フェイトの真剣な顔を見ると、

「・・・・・・・わかったわ」

プレシアさんはそう呟く。

けど、

「その代わり、私も一緒よ」

更にそう言った。

「え?」

フェイトが一瞬ポカンとするが、徐々に嬉しそうな顔になる。

「あ・・・・う・・・・・」

なのはが言い出そうかどうか迷っている。

恐らくユウのことを考えているのだろう。

「大丈夫ですよ。なのは」

そんななのはに、リニスが声をかける。

「ユウは自分の考えを他人に押し付けたりはしません。なのはが時空管理局に協力したからと言って、ユウから嫌われる事はありませんよ」

「リニスさん・・・・・・はい!」

リニスの言葉が後押しになったのか、なのはの顔から迷いが消える。

「リンディさん!私も協力します!」

なのはがそう言った。

「なのはさん・・・・・・」

「私にも協力させてください!フェイトちゃんも心配だし、何よりこの街は私達が住んでる街なんです!最後まで付き合せて下さい!」

なのはは真剣な顔で言った。

「なのはが協力するなら、私もセットで付いて来るわよ。AAAランクの魔導師2人はお得じゃないかしら?」

私はそう言う。

「し、しかしだな、次元干渉に関わる事件だ。民間人に介入してもらうレベルの話じゃない」

クロノがそう言うが、

「魔導師4人は、管理局なら喉から手が出るほど欲しいんじゃないかしら?管理局内でも5%に満たないAAAランク以上の魔導師なら尚更ね。年中人手不足の管理局さん?」

私がそう問いかけると、リンディさんは困った顔をする。

「失礼だけど桜さん?あなた本当に8歳?同年代と話してるようにしか思えないんだけど・・・・・・・」

リンディさんは、普通なら失礼だが、的を射た質問をする。

確かに私は精神年齢ならリンディさんと同じくらいだからね。

「さあ?どうですかね」

私はとりあえずはぐらかしておいた。





【Side Out】




【Side なのは】




私達が管理局に協力することを決めた後、私達は一旦家に戻る事になりました。

それにユウ君の事も心配だし。

「ただいまー!」

私達が家に入ると、美由希お姉ちゃんが駆け寄ってきました。

「桜、なのは、リニス、ユーノ君・・・・・」

「姉さん、どうしたの?」

美由希お姉ちゃんに桜お姉ちゃんが尋ねました。

「うん・・・・・ユウ君と何かあったの?さっきユウ君帰ってきたんだけど、不機嫌みたいで・・・・・・何も言わずに部屋に引きこもっちゃったのよ・・・・・・・」

「あ・・・・うん・・・・・・ちょっとね・・・・・・・」

私は言葉を濁しながらそう言いました。

「ユウの事は私達に任せて」

桜お姉ちゃんがそう言います。

「うん・・・・・お願い・・・・・・」






私達はユウ君の部屋の前にいました。

――コンコン

と、私はノックします。

「ユウ君・・・・・あの・・・・入っていいかな?」

私はダメ元でそう尋ねます。

「ああ」

意外な事に、すんなりと答えは返ってきました。

少し驚きながらも私達はドアを開けて、ユウ君の部屋に入ります。

「とりあえずおかえり」

ユウ君はそう声をかけてきました。

「あ、ただいま・・・・・・」

私は思わずそう返します。

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

私達の間に、沈黙が流れます。

でも、それでも私は思い切って口を開きます。

「ユウ君・・・・・あのね、私達「管理局に協力するんだろ?」っ!?」

私の言おうとした事を、ユウ君が先に言いました。

「うん・・・・・・」

私は頷きます。

「それならそれでいいさ。お前たちが決めた事に、俺が如何こう言うつもりは無い」

ユウ君は、いつもの表情でそう言います。

「なら、何でユウ君は、管理局を嫌ってるの?」

私は尋ねました。

「・・・・・・・・俺が管理局を嫌うのは個人的な理由だ。だから、なのはや桜が管理局を如何判断しても、俺はお前達を拒絶したりしないから安心しろ」

ユウ君は笑みを浮かべます。

でも、何故かその笑みは悲しそうに思えました。

それ以上何を聞いても、「個人的な理由だから」としか答えてくれませんでした。





その夜、お母さんやお父さんに時空管理局に協力する事を説明して、私と桜お姉ちゃん、ユーノ君はアースラへと乗り込んだのでした。









あとがき

第十一話完成。

出来はどうだろうな・・・・・・

納得できるかな・・・・・・?

あと、アリシアが空気だ。

それはともかく、第十話でPVが既に11万突破。

感想も1話当りの数が前作前々作を含めて最高記録を更新しました。

勢いだけで書いているこの作品が、記録更新というのも自分としては複雑のような・・・・・・・・

でも、応援していただけるのはとても嬉しいです。

では返信です。




>かな様
感想ありがとうございます。
アニメでのクロノの登場シーンは2人の真剣勝負に横槍入れてるみたいなモンですからね。
見る人が見ればムカつくんじゃないでしょうか?
この小説では主人公最強なんで、主人公と比べれば誰でも雑魚に成り下がってしまいますが・・・・・・・
あと、真実を知ったときの心理描写は、なるべく頑張ろうと思っています。
では、次回も頑張ります。



>nemesis様
感想ありがとうございます。
引っ張りすぎですかね?
ですが、近々知る予定です。
お楽しみに。
では、次回も頑張ります。



>AQUA様
感想ありがとうございます。
とりあえず、2つの質問の答えは無印編の中で知る事になります。
お楽しみに。
では、次も頑張ります。



>たぬき様
感想ありがとうございます。
今回の話でもあるとおり、リンディも真実は知りません。
真実を知るときをお楽しみに。
では、次回も頑張ります。



>ぷてらのどん様
感想ありがとうございます。
勢いのまま書いているので、どうなるかは予想つきません(爆)
ただ、A`S編もご都合主義オーバードライブで行くつもりです。
では、次回もお楽しみに。



>ユキ様
感想ありがとうございます。
ラスボスとか全然決めてないんですよね。
勢いのまま書いているので、その時にならないと、作者にも予想つきません(爆)
ともかく、次も頑張ります。



>賞味期限切れのモス様
感想ありがとうございます。
海を割るのは、モーゼのイメージではなく、デジモンアドベンチャー02の35話ぐらいにあった、ブラックウォーグレイモンのイメージです。
チートには変わりありませんが。
では、次回もお楽しみに。



>星の弓様
感想ありがとうございます。
クロノは本当ならなのは達よりも強い筈なんですけどね~。
本当に目立ちません。
ユウの両親の死にはおある理由がある・・・・・・かも?
では、次回をお楽しみに。



>投影様
感想ありがとうございます。
まだ真実は明らかにしませんでした。
その時を楽しみにしててください。
では、次も頑張ります。



>ルファイト様
感想ありがとうございます。
真実を知るのは何時なのか?
その時を楽しみにしててください。
フェイトがもしユウの正体を知っていたのなら追いかけたかも。
では、次回をお楽しみに。



>俊様
感想ありがっとうございます。
ご都合主義全開の設定でしたが、意外性がもてたのなら何より。
単なる思い付きですが・・・・・・
真実を知るときをお楽しみに。
では、次も頑張ります。



>バーニー様
感想ありがとうございます。
モーゼではなくブラックウォーグレイモンのイメージですね。
アリサとすずかは無印編が終わってから堕とす心算です。
ではその時をお楽しみに。



>ラングース様
感想ありがとうございます。
クロノは原作でもフェイトに直撃コースの魔法を放ってましたからね。
このぐらいはやるかと思いました。
その結果逆鱗に触れる事になりましたが・・・・・・
真実を知るのは何時なのか?
お楽しみに。
では、次も頑張ります。



>芭那様
感想ありがとうございます。
管理局自体に関しては程度はともかくアンチを貫く心算です。
アースラ組についてはどうなるか分かりませんが・・・・・・
では、次も頑張ります。



>紅猫様
感想ありがとうございます。
フェイトがユウの正体に気付くのも真実を知るのも近々の予定です。
お楽しみに。
クロノは、まあ、ストーリー上仕方ない・・・・のか?
では、次も頑張ります。



>ああああ様
感想ありがとうございます。
クロノが管理局員としてユウと向き合おうとする限り、ユウは話も聞いてくれません。
クロノ個人なら・・・・・・・
フェイトがユウの正体を知るのは近々の予定。
では、次回をお楽しみに。



>ガンダム様
感想ありがとうございます。
勢いで書いているので、この先どうなるのかは自分にも分かりません。
外伝についてですが、確かに自分でもそんなようなストーリーは思い描きましたが・・・・・・
完全オリジナルを書こうとすると、レベルがガクリと落ちてしまうのです。
オリジナルを書く文才が欲しい。
ともかく、次回も頑張ります。



>られる様
感想ありがとうございます。
まあ、確かに見方によっては子供の駄々っ子そのものですからね。
そう思われるのも無理ないかも・・・・・
キャラ劣化にも気をつけます。
では、次回も頑張ります。



>管理局嫌い様
感想ありがとうございます。
何処までアンチになるか微妙ですが、管理局アンチ気味に進んでいくと思います。
クロノってフルボッコにした方がいいんですか?
キャラ劣化に繋がるので微妙なとこなんですけど・・・・
ともかく、次回も頑張ります。



>ノヴァ様
感想ありがとうございます。
いや、クロノは普通に連絡を受けて、現場に到着したら件のロストロギアを回収している魔導師を発見した。
クロノは普通に職務質問をしようとしたけど、ユウがそれに対して挑発的に反抗した。
その挑発に我慢できなくなったクロノが攻撃を直撃させた。
クロノが攻撃を直撃させた事以外は特におかしい所は無いと思いますが・・・・・?
クロノフルボッコはやったほうがいいんですかねぇ?
ともかく、次もお楽しみに。



>ハンター様
感想ありがとうございます。
桜は中二病・・・・なのか?
あんまり意識はしてませんでしたが・・・・・
因みに前書きにも書いてあるとおり、この小説はハーレムですよ。
では、次も頑張ります。



>麒麟様
感想ありがとうございます。
一応、キャラの劣化には気をつけている心算です。
これからも気を付けますので指摘があったらお願いします。
では、次も頑張ります。



>パウル様
感想ありがとうございます。
勢いで書いているのでどうなるか分かりませんが、恐らく管理局自体は一切信用しないでしょう。
個人はともかく。
無印の最後如何しよう?
ともかく、次も頑張ります。



>IINON様
感想ありがとうございます。
気に入っていただけたようで嬉しいです。
では、次もお楽しみに。



>鱧様
感想ありがとうございます。
ガイアグレイモンって・・・・・必殺技のガイアフォースとウォーグレイモンが混ざってます。
まあ、それはともかく、真実を知ったときには悩んでいただきますよ。
では、次も頑張ります。



>114様
感想ありがとうございます。
基本ユウは管理局を一切信用してません。
普段は優しいですが、管理局に対してだけは、ああいう態度をとります。
因みにユウは、自称冷たい人間なので。
まあ、精神年齢が低いのは作者の精神年齢が低い為です。
ともかく、次回も頑張ります。



>AMAS様
感想ありがとうございます。
その通りです。
あと、ブレイズやアイシクルをそれぞれ個別で使っているときはSSSランクぐらいですね。
では、次も頑張ります。



>ねこ様
感想ありがとうございます。
頻度は如何あれ、管理局アンチ気味に進むと思います。
両親の死の真実については、もう少し後ですね。
スカさんと組む・・・・・・それもアリなんだろうか?
それはともかく、次もお楽しみに。



>メビウス様
感想ありがとうございます。
ユウの魔王化?
言うなれば、スターライトブレイカーをディバインシューター一発で押し返すようなモンですかね。
ちなみにフェイトがユウの正体に気付くのは近々。
お楽しみに。
では、次も頑張ります。



>ルシィファー様
感想ありがとうございます。
あの映画の通り進んだら確かに死亡フラグですね。
ならデカ剣はヒロインの誰かに渡って仇を取るんですかね。
そうなったらこの物語が終わるんでやりませんけど。
もどき位は出そうかな・・・・・・
では、次回もお楽しみに。





合計30名への返信・・・・・
1時間以上かかりました。
嬉しい悩みですね。

では、次も頑張ります。




[15302] 第十二話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/04/04 09:46
第十二話 絶対零度!氷雪のアイシクル!!




なのは達がアースラへ行った翌日。

学校では、なのはと桜が暫く欠席するとクラスメイトに知らされる。

そして、そのHRが終わった直後、

「ちょっと、あんた何か知ってるんでしょ?キリキリ吐きなさい!」

アリサからそう言われる。

知っていると断定する所がまた凄い。

まあ、知ってるんだけど。

「確かに知ってるけどさ、口止めされてるから勘弁な」

俺はそう答える。

「どうしても教えてもらえないの?」

すずかからもそう問われる。

「まあ・・・・・すまん」

俺は謝る。

「まあいいけどさ。桜もついてることだし心配ないと思うけど」

アリサは一度ため息を吐いてそう呟く。

「で?何でアンタはそんなに不機嫌そうにしてるのよ?」

突然アリサからそう問われる。

「は?何の事だよ?」

俺はそう尋ねる。

「アンタ、自分で気付いてないの?」

「ユウ君、不機嫌な顔してるよ」

アリサとすずかからそう言われる。

「そんな顔してるか?」

俺が問い返すと、

「うん」

「思いっきり」

2人揃って頷かれる。

「そうか・・・・・」

自分が不機嫌になっている理由は分かっている。

管理局に出会った事によって、父さんと母さんが死んだ時の事、そして、その後の管理局の対応を思い出したからだ。

なるべく平静を装ってた心算だが、全然出来て居なかったらしい。

「何か嫌なことでもあったの?」

すずかがそう聞いてくる。

「まあ、そんなようなもんだ」

俺はそう答えた。

「よければ相談に乗るけど?」

すずかはそう言ってくる。

「ありがとう。でもいいよ。これは俺の個人的な問題だからな」

すずかの気遣いに感謝しつつも、そう言って断る。

「そうなんだ・・・・・・でも、相談したくなったらいつでも言ってね」

すずかはそう微笑んで言った。

「ありがとう」

俺はすずかに礼を言った。





放課後、ジュエルシード探しが無くなった俺は、ゆっくりと歩いて帰路についている。

その途中、図書館が見えたので、気分転換にと思い、寄る事にした。

図書館の中は静かで、気持ちを落ち着けるには丁度良かった。

俺は適当に本を取り、テーブルの椅子に座る。

本に目を走らせて入るが、ただそれだけ。

はっきり言って、読んでるわけではない。

そんなふうにボーっとしていると、

「あっ、ユウ君やん」

聞き覚えのある声が聞こえた。

俺が振り向くと其処には車椅子に乗ったはやてがいた。

「ああ、はやてか」

俺がそう言うと、

「どないしたん?そんな不機嫌そうな顔して。嫌な事でもあったんか?」

いきなり核心を突いて来た。

「・・・・・・はあ、偶に会うだけのはやてにまで分かるなんて、俺ってそんなに顔に出やすいのかなぁ?」

俺はため息を吐きながら呟く。

はやては首を傾げながら、

「何のことかよう分からんけど、分かるに決まっとるやん。ユウ君の事やからな」

そう微笑んで言った。

いや、その言い方は、俺に気があるように聞こえるんだが・・・・・・・

まあ、はやては8歳だし、そんな事は無いだろう。

「ふう・・・・・はやての言うとおり、ちょっと嫌な事があった・・・・・と言うより、会いたくない奴らに会って、嫌な事を思い出したからかな」

俺はそう言った。

「そうなんや・・・・・・私で良かったら相談に乗るで?」

「その気持ちだけでいいよ。これは俺の個人的な事だからな」

「そう言うなら、無理に聞こうとはせえへんけど、力になれることがあったらいつでも言ってや」

すずかと似たような事を言うはやて。

「その時は、そうさせてもらうよ」

俺はそう答えた。



はやてのお陰である程度気分が紛れた俺は、再び帰路に着く。

ふと見れば、翠屋が見える。

丁度、喉も渇いていたので寄る事にした。

俺が入り口を開けると、

「いらっしゃいませ・・・・って、ユウですか」

ウェイトレス姿のリニスがそう言った。

「よう、頑張ってるな」

俺はそう声をかける。

その時、

「あらユウ君。こんな時間に珍しいわね」

桃子さんが声をかけてきた。

「ええ。これからは暇になりましたので」

俺がそう言うと、桃子さんは考える仕草をして、

「それなら悪いんだけど、お店を手伝ってくれないかしら?今日、バイトの子が休んで少し大変なのよ」

そう言ってきた。

「ええ、構いませんよ。皿洗いぐらいなら手伝います」

俺はそう答える。

接客作業など俺には無理だ。

ところが、

「ありがとう。じゃあ、接客作業お願いできる?」

そう言われた。

「いや、ちょっと待ってください!接客作業は無理ですよ!人付き合い苦手だし、赤の他人と向き合うなんて俺には無理です!」

「大丈夫よ~。すぐに慣れるわ。逆にユウ君ぐらいの年齢なら、失敗しても逆に微笑ましいぐらいよ」

桃子さんはそう言う。

いや、確かに周りから見ればそうかもしれませんが、俺は精神年齢30代半ばですよ?

因みに俺は恥を掻いた事をとことん引っ張るタイプだ。

前世では、時折恥を掻いた事をフラッシュバックのように思い出しては、1人で叫んでたような男ですよ。

だから、あんまり恥をかくようなことはしたくないんですけど。

しかし、

「ほらほらユウ。手伝ってくれるなら早く着替えましょうね」

リニスに引き摺られるように更衣室へと連れて行かれる。

因みに桃子さん。

俺にピッタリの制服があるのは何でですかね?

もともと手伝わせる心算だったんですか?

そのまま俺は、なし崩し的にウェイターをやる事になった。






――10日後






俺は、極限まで集中している。












目の前の困難を乗り切る為に・・・・・・















耳を澄ませ、一切の聞き漏らしが無いように・・・・・



















マルチタスクによる分割思考も、最大限に発揮させる。


















手にも汗が滲む・・・・・・
















俺は待つ・・・・・






















その時を・・・・・・
























そして・・・・・・その時は来た!

















「シュークリーム2つ!」

「コーヒーとショートケーキ」

「オレンジジュースとコーヒー!」

「ソーダとコーラ。あと、ピザ」

「スパゲティとサラダとコーヒー」

「シュークリーム6個とオレンジジュース3つ」

「あ!あとコーヒー!」

「チーズケーキとコーヒー」

「パフェちょーだい」

「コーヒー2つ」

俺は翠屋の店内のほぼ真ん中で、次々と注文される。

しかも、テーブル番号もバラバラ。

注文される物を俺は、メモしていった。

そして、注文された分を全部メモした所で、

「復唱しま~す!一番テーブルの方がシュークリーム6個とオレンジジュース3つ。2番テーブルの方がソーダとコーラとピザ。5番テーブルの方がシュークリーム2つとコーヒー。7番テーブルの方がコーヒー2つ。8番テーブルの方がスパゲティとサラダとコーヒー。10番テーブルの方がオレンジジュースとコーヒー。カウンター席1番の方がパフェ。カウンター席2番の方がコーヒーとショートケーキ。カウンター席3番の方がチーズケーキとコーヒー。・・・・・・・・・以上、訂正は御座いますか?」

俺がそう尋ねると、

「「「「「「「「おぉ~~~~~~~~~!」」」」」」」」

感心するような驚きの声と共に、拍手が沸いた。

間違いが無い証拠だ。

俺は内心ホッとしながら、

「では、少々お待ちください」

一礼して注文を厨房に届けた。

何故か、これが翠屋の名物のようなものになっていた。

幾ら忙しかったからといって、マルチタスクまで使って同時に注文を受けたのが拙かった。

俺の能力に目を付けた桃子さんが、俺の限界を試すように次から次へと注文を受ける数を増やし、何故か、俺が翠屋を手伝う時には、俺が注文を全て受けるようになっていた。

俺は、魔法で鍛えたマルチタスクと、生まれ変わりで得た記憶力で、何とか乗り越えている。

楽をする心算が、逆に仕事を大変にしてしまった。

やっぱり、ズルはするもんじゃないと改めて思ったのだった。







【Side 桜】



時空管理局に協力してから10日。

この10日間で5個のジュエルシードを封印した。

だけど、尽くデジモンとそっくりだったのは驚いたわ。

原作では巨鳥だった筈のジュエルシードも、バードラモンの亜種の、セーバードラモンにそっくりだったし・・・・・・・

まあ、強さも見た目通り成熟期だったから、苦も無く倒せたんだけど・・・・・・

そういえば、一度だけ完全体の敵が出てきたわね。

プレシアさんの雷であっさり倒されたけど・・・・・・・

流石は大魔導師だと思ったわ。

今のリニスとどっちが強いかしら?

まあ、それはともかく、残りのジュエルシードは6個。

只今アースラチームが捜索をしているが、まだ見つかっていない。

多分アニメの通り海の中なんだろうけど。

アニメと同じやり方を申し出ても、危険だと言う理由で却下されるがオチね。

今回は急いでるわけでもないし、気長に行きましょ。

と、その時、呼び出しコールが鳴る。

「はい」

私はモニターを開く。

『桜か?クロノだ。ジュエルシードが見つかった。出動準備を頼む』

「分かったわ。場所は?」

クロノの言葉にそう尋ねる。

『海鳴市近海。海中だ』

クロノはそう答えた。







私、なのは、フェイト、ユーノ、アルフ、プレシアさんが海の上に転送されると、

「ギャォオオオオオオオオオッ!!」

メガシードラモンもどきが暴れていた。

って言うか、また?

温泉の時よりも大きいけど・・・・・・・

「あれって・・・・・温泉の時にもいたよね?」

なのはが尋ねるように呟く。

「うん。それに、その時よりも大きい。多分、前よりも強い」

フェイトが、メガシードラモンもどきを見て言った。

その時、メガシードラモンもどきがこっちに気付き、頭部の角から稲妻を放ってくる。

「っと!」

それに気付いた私達は散開してかわす。

「ディバイィィィィィン・・・・・・バスターーーーーーーーーッ!!」

そのまま、なのはがディバインバスターを放つ。

「グアッ!?」

直撃したメガシードラモンもどきは怯んだ。

今までの特訓のお陰か、私達の魔法の威力は上がっている。

「サンダー・・・・・スマッシャーーーーーー!!」

フェイトが強力な雷撃砲を放つ。

「ギャァァア!!」

水棲型の為か、電撃は効き易く、苦しみの声を上げるメガシードラモンもどき。

「これはおまけよ!!」

私も追撃にディバインバスターを放った。

「ゴァッ!?」

直撃して、海面に倒れるメガシードラモンもどき。

その時には、既にプレシアさんの準備は完了していた。

雷鳴が轟く。

だがその時、私はふと思った。

アニメでは、フェイトがサンダーフォールで海中に電気の魔力を流し、ジュエルシードを強制発動させた。

今、プレシアさんが放とうとしているのはサンダーレイジ。

しかし、Sランクオーバーのプレシアさんが放つサンダーレイジは、フェイトのそれを遥かに凌ぐ。

そして、海水は電気を通しやすい。

ならば導き出される答えは・・・・・・・

そこまで思い至った時、私は叫んだ。

「プレシアさん待った!!」

だが、とき既に遅し。

「え?」

プレシアさんがそう漏らしたのは、眼下に稲妻を放った後だった。

サンダーレイジは、海中に沈んだメガシードラモンもどきに降り注ぐが、海中では電気が拡散してしまい、十分なダメージを与えられない。

それどころか・・・・・

その瞬間、周りの海から5つの光の柱が立ち昇った。

エイミィから緊急通信が入る。

『拙いよ!残り5つのジュエルシードの発動反応!今のプレシアさんの電撃で、発動しちゃったみたい!』

焦った声で、エイミィが叫ぶ。

そして、その光が収まると共に、5体の暴走体が姿を現す。

しかもそれは、

「ゴァアアアアアアアッ!!」

亀の甲羅を背負って、巨大なハンマーをその手に持つ水棲獣。

「ウウウウウウゥゥゥゥゥゥ・・・・・・・・」

超巨大なクジラ。

「ギエェェェェェェェェェ!!」

濃い青の身体に、白い手足。

イカの足のような触手を、背中から2本生やした巨人。

「キチキチ・・・・・・・・」

肌色の甲殻を持ち、体中に刃物を付けた巨大なアノマロカリスに似た生物。

「ウォオオオオオオオオオォォォォォォォォ・・・・・・・・」

水色の身体を持った人型だが、よく見れば手足は無数の触手が集まって出来ている生物。

何ていうか、上からズドモン、ホエーモン完全体、マリンデビモン、アノマロカリモン、ダゴモンね。

メガシードラモンも含めれば、水棲型完全体デジモンもどきの総進撃だった。

ちょと拙いんじゃないのこれ?







【Side Out】






――ドクン

翠屋で、手伝いをしていると、強力なジュエルシードの波動を感じる。

「ッ!?」

「ユウ!」

リニスも気付いたのか、少し焦った表情で俺に呼びかけてくる。

「ああ、この波動・・・・・1個や2個じゃない・・・・・・・5個・・・・・いや、6個のジュエルシードが同時に暴走している!」

っていうか、何でアニメと同じく6個が同時に発動してるんだよ!

アースラが、アニメでフェイトがやっていた事を容認するとは思えないし・・・・・・・

「如何するんですか?」

リニスが俺に問いかける。

「俺は・・・・・・・」

俺は迷っていた。

確かに、なのはや桜、フェイトを助けに行きたい気持ちはある。

けど、管理局には関わりたくない。

俺がそんな思いに悩んでいると、

「ユウ君・・・・・・」

その声に振り向けば、桃子さんが沈痛な面持ちで立っていた。

「桃子さん・・・・・・如何したんですか?」

そんな様子の桃子さんに、俺は尋ねた。

「ユウ君・・・・リニスさん・・・・・・・お願いがあるの・・・・・」

桃子さんはそう言ってきた。

「何ですか?」

俺はそう聞く。

「・・・・・・桜となのはを、助けてあげて欲しいの」

「えっ?」

桃子さんの言葉に俺は若干驚いた。

「ど、如何してですか?」

俺は思わず問いかける。

「よく分からないけど・・・・・胸騒ぎがするの・・・・・・・何か良くないことが起こりそうな・・・・・・・・この胸騒ぎは、あの人が怪我をした時にも感じたわ・・・・・・」

桃子さんはそう言いながら、カウンターにいる士郎さんに目を向ける。

そして、俺に視線を戻し、

「だから、桜となのはに何か起こるんじゃないかって心配になって・・・・・・お願い、ユウ君、リニスさん」

桃子さんはそう言って頭を下げる。

俺はちょっと慌てた。

「ちょ、桃子さん!頭を上げてください!其処までしてくれなくても助けに行きますから!」

慌てながら俺はそう言う。

桃子さんは頭を上げる。

「ユウ君・・・・・」

そう呟く桃子さん。

俺はエプロンを外しながら、

「なのはと桜の事なら、俺達に任せてください」

そう言ってリニスを見る。

リニスもエプロンを外していた。

「行くぞ、リニス」

「はい!」

俺の言葉にはっきりと応えるリニス。

俺達は、店の出入り口に向かう。

そして、店を出る時、

「お願いね・・・・・ユウ君・・・・・・」

桃子さんのそんな呟きが俺の耳に届いた。







【Side なのは】




私達は今、6体のジュエルシードの暴走体を相手に戦っています。

先程クロノ君も応援に来てくれましたが、ハッキリ言ってかなりピンチです。

相手は6体。

それに対して此方は、私、桜お姉ちゃん、フェイトちゃん、ユーノ君、アルフさん、プレシアさん、クロノ君の7人なんですが、ユーノ君は攻撃魔法が得意ではないのでサポートに回っており、実質6対6です。

私が相手にしているのが、亀の甲羅のような物を背負って、ハンマーを持った怪物です。

桜お姉ちゃんが、青い巨人を。

フェイトちゃんが、古代生物のアノマロカリスに似た生物を。

プレシアさんが大きなクジラを。

アルフさんが最初にいた大きな蛇を。

クロノ君が水色の身体をした、よく分からない軟体生物のようなものの相手をしています。

ですが、実際に互角に戦えているのはプレシアさんとクロノ君。

あと、弱った蛇さんを相手にしているアルフさんぐらいです。

プレシアさんは、大きなクジラが時折放ってくる、潮吹きを防ぎつつ、稲妻を落として攻撃しています。

けど、あれだけ巨大なだけあって、耐久力もかなりのもので、倒すのには暫くかかりそうです。

クロノ君は、敵が無数の触手を振り回して攻撃してくるのに対し、回避する所は回避して、攻撃する所は攻撃する、という方法で、確実にダメージを与えていきます。

ですが、それも倒すまでには暫くかかりそうです。

アルフさんは、弱った敵が相手とは言え、硬い鱗の前に必死です。

フェイトちゃんは、アノマロカリスに似た生物を相手にしていますが、此方も硬い甲殻の前に苦戦してます。

しかも、アノマロカリスに似ているくせに、砂を吐いたり、前足をクロスさせて、魔力斬撃を飛ばしたりしてくるの。

桜お姉ちゃんは、青い巨人を相手に攻撃しようとしますが、青い巨人の背中にある2本の触手がそれぞれ意思を持っているかのように動き、桜お姉ちゃんを攻撃します。

少し距離を取ったところで、口から墨を吐いてきて攻撃します。

それは、シールドで防げそうな攻撃なんですが、桜お姉ちゃんは必死に避けて、絶対に受け止めようとしません。(後で聞いた話では、猛毒っぽかったから、だそうです)

かく言う私も、さっきから暴走体相手に5発ほどディバインバスターを直撃させたのですが、あんまり効いてないみたいです。

私のとっておきなら何とかなるかもしれませんが、あれは溜めに時間がかかるので、こんな乱戦状態の時に使おうとしたら、流れ弾に当たる危険があります。

そんな事を考えながら、もう一発ディバインバスターを直撃させます。

その暴走体は、爆発の煙に包まれますが・・・・・・

「ゴァアアアアアアアアアアッ!!」

煙が切り裂かれ、咆哮が上がります。

予想通り、大したダメージを受けていません。

その時、その暴走体がハンマーを持っていた腕を振りかぶり、こっちに向かってハンマーを投げつけてきました。

「きゃっ!?」

突然の事にビックリしましたが、私は何とかかわします。

私の横を私より5倍ぐらい大きなハンマーが通り過ぎます。

それを見て、私はゾッとしました。

幾らなんでも、あれは受け止めきれないと思います。

私は気を取り直し、暴走体を見据え、レイジングハートを構えます。

でも、その時、

「なのは!危ない!!」

フェイトちゃんの悲鳴に近い叫びが響きました。

「え?」

フェイトちゃんの叫びに、私は後ろを振り向くと・・・・・・・

「そんなっ!?」

先程のハンマーが私に迫ってきてました。

信じられない事に、ハンマーはまるでブーメランのように反転してきたのです。

もう回避は間に合いません。

私は、少しでもダメージを減らそうと、咄嗟に障壁を張ろうとして・・・・・・

――ドンッ

「えっ?」

突き飛ばされました。

視線を向けて確認すると、其処には桜お姉ちゃんの姿。

その時の時間の流れが、とてもゆっくりに感じます。

何で?

何でそこにいるの?

そこにいると危ないよ、お姉ちゃん?

巨大なハンマーが桜お姉ちゃんに迫ります。

「「「「「桜(ちゃん)!!!」」」」」

皆が叫びました。

「桜お姉ちゃん!!」

私も思わず叫びます。






すると・・・・・・・








桜お姉ちゃんは・・・・・・








そんな私に向かって・・・・・・・














微笑みました・・・・・・・・









その微笑を見た瞬間、私の瞳に涙が溢れます。

それでも、迫り来るハンマーは止まりません。

「さくっ・・・・・・・・!」

私がまた叫ぼうとした瞬間、

「ブレイブトルネェェェェェェェド!!」

黄金の竜巻がハンマーを貫き、粉々に砕きました。

突然の事に、その場の全員が驚愕します。

私と、覚悟していた桜お姉ちゃんにいたっては、呆気に取られました。

更に次の瞬間、

「サンダー・・・・レイジ!!」

辺り一帯に雷が降り注ぎ、6体の暴走体を怯ませます。

見れば、上空にリニスさんがいました。

そして、ハンマーを貫いた黄金の竜巻が収まると、そこには、黄金の鎧を纏った、ユウ君の姿がありました。






【Side Out】





【Side フェイト】




私達がジュエルシードの暴走体を相手に戦っていた時、なのはが戦っていた相手から、なのはに向かってハンマーが投げつけられる。

なのはは一瞬驚いたようだが、何とかそれを避けた。

それを見てホッとする私。

でもその時、投げられたハンマーが弧を描いてなのはの方に向かって行った。

私は思わず叫んだ。

「なのは!危ない!!」

私の声で、なのはは戻ってくるハンマーに気付いた。

けど、なのはじゃ避けられないタイミング。

私でも間に合わない。

でもその時、桜がなのはを突き飛ばした。

なのはは、ハンマーの射線上から逸れる。

けどその代わり、桜が直撃コースにいる。

「「「「「桜(ちゃん)!!!」」」」」

私も含めた皆が叫んだ。

「桜お姉ちゃん!!」

なのはも叫ぶ。

ハンマーが桜に直撃すると思われた瞬間、

「ブレイブトルネェェェェェェェド!!」

黄金の竜巻がハンマーを貫き、粉々に砕く。

突然の事に、私も含めてその場の全員が驚愕した。

更に、

「サンダー・・・・レイジ!!」

雷が降り注ぎ、全ての暴走体を怯ませる。

見れば、上空にリニスがいた。

「リニス・・・・・」

それから、ハンマーを貫いた黄金の竜巻の方へ視線を戻すと、竜巻が収束し、黄金の鎧を纏ったユウの姿があった。

「ふう・・・・危ねえ危ねえ・・・・・・ギリギリだったぜ。桃子さんの予感が大当たりだな」

ユウはそう言いながら桜となのはに近付いていく。

私も一旦そっちへ向かった。

「よう。大丈夫だったか?」

ユウは桜に声をかけた。

「あ・・・・・うん・・・・・・ありがとう・・・・」

桜は、未だにボーっとしているのか、少し言葉に詰まる。

「お姉ちゃん!!」

その時、なのはが桜に泣きながら抱きついた。

「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」

なのはは、抱きつきながら泣き続ける。

「ごめんね、なのは。私は大丈夫よ」

桜は、泣き続けるなのはをあやす。

なのはは、目を擦りながらユウに向き直り、

「えぐっ・・・・・ユウ君・・・・・・・ありがとう・・・・・・・」

ユウにお礼を言った。

「お礼なら桃子さんに言えよ。桃子さんが言ったんだぜ。お前達を助けに行ってくれってな」

ユウの言葉に、2人は軽く驚いた顔をした。

「お母さんが・・・・・」

なのはが呟く。

そんな2人の姿を見て、私は羨ましいと感じた。

なのはがユウに好意を抱いている事は聞いた。

なのはにとって、好きな人が助けてくれるのは、とても嬉しい事だろう。

私は、青いバリアジャケットの人を思い出す。

彼とは、あの1度きりで、あれ以来会っていない。

やっぱり、あの人は私のことは何とも思っていないのかな。

そう考えると、少し悲しくなる。

と、その時、

「すまない、時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。君に頼みがある。ジュエルシードの封印に協力を・・・・・・」

「やなこった」

クロノの協力要請を、全部聞く前に一蹴するユウ。

「ユ、ユウ君!?」

なのはもその答えに驚いている。

かく言う私も、その答えには驚いた。

「誰が管理局なんかに協力するか!」

ユウは一方的にそう言う。

「そ、そんな事を言ってる場合では・・・・・」

クロノはユウに何かを言おうとしたが、

「なのは!」

「えっ!う、うん!」

「桜!」

「え、あ?ええ!」

「フェイト!」

「は、はい!」

ユウは私達の名を叫び、私達は反射的に返事をしてしまう。

「俺がジュエルシードを黙らせる!封印は任せた!リニス!ユーノ!アルフ!なのは達のサポートは頼んだぞ!」

ユウはそう叫んだ。

その言葉に呆気に取られる私達。

「あ、あの・・・・・ユウ君?ジュエルシードの封印には協力しないんじゃ・・・・?」

なのはが、先程の言葉と矛盾したユウの行動を尋ねる。

「ああ・・・・管理局に協力するなんて死んでもやだね。けど、俺はお前らには協力しないとは言ってないぜ」

そのユウの言葉で、再び呆気に取られる私達。

少しすると、

「クスッ」

桜が笑みを漏らした。

「何それ?どういう屁理屈よ?」

桜が笑みを零しながらそう問いかける。

「屁理屈だろうが何だろうが、俺の気分の問題だ!」

ユウはそっぽを向きながら答えた。

そんなユウの様子に、桜はやれやれといった表情で、

「ま、いいわ。とにかく、いつも通りに行けば良いわけね」

そう言いながら、レイジングソウルを構えた。

「いつも通り?」

私は首を傾げる。

「そうよ。ユウがジュエルシードを黙らせる。ユーノ達がサポート。私達が封印。いつもと何も変わらないじゃない」

桜の言葉に、ふと考えてみると、確かにその通りだ。

「そうだね・・・・・いつも通りだね!」

なのはが笑みを浮かべて言った。

「うん!」

私も頷く。

「じゃあ、行くぜ!」

「「「「「うん(ええ)!」」」」」

ユウの言葉に、私達は応える。

ユウが前に出た。

「6体か・・・・・ブレイズじゃ面倒だな。アイシクル、広域殲滅で一気に決めるぞ」

『了解です!・・・・・あ、マスター』

「何だ?」

『折角の私のお披露目なのですから、どうせならカッコ付けてください』

「何でだよ?」

『いえいえ、どっちにしろ今のマスターはカッコいい位置づけにいるのですから、とことんカッコつけて欲しいだけです』

「・・・・・・・・ま、いいけどさ」

『ありがとうございます。マスター・・・・・・・・フフフ、フェイトの反応が楽しみです』

ユウはデバイスと、よく分からない事を話していた。

それにしても、私の反応が楽しみって、如何いう事?

私が疑問に思っていると、ユウは黄金のバリアジャケットを解除した。

その行動に驚く私達。

すると、ユウは首にかかっている『青色』のデバイスを右手で掴んだ。

「身体に宿すは凍てつく吹雪・・・・・・心に宿すは固めし絆・・・・・・この手に掴むは信じる力・・・・・・・吹けよ氷雪!!アイシクル!セット!アップ!!」

起動パスワードと思われる呪文と共に、デバイスを起動させるユウ。

そして、次の瞬間、『青色』の魔力光に包まれた。

「えっ?」

私はそれを見て、思わず声を漏らした。

「この魔力光って・・・・・・」

そして、その光の中から現れたのは・・・・・・・

青色の機械的なバリアジャケット・・・・・・・

両肩にはミサイルランチャー・・・・・・・

背中のウイング・・・・・・・・・

正に、私が探し求めていた姿だった。

「その姿は・・・・・・・アンタだったのかい!」

アルフも気付いたのか、驚いた様に叫ぶ。

その時、リニスの与えたダメージから回復したのか、ジュエルシードの暴走体が一斉に動き出す。

ユウは、その暴走体達の中心に行く。

そして、6体の暴走体が一斉にユウに襲い掛かった。

「「ユウ(君)!」」

私となのはが叫んだ。

「アイシクル、全砲門展開」

ユウは静かに呟く。

『Yes, Master. All weapons, Full open.』

デバイスが応えた瞬間、全身のバリアジャケットの装甲が展開していき、内部から無数の砲門が姿を見せる。

そして、

「グレイスクロスフリーザー!!」

その全ての砲門から、一斉に無数のミサイルが発射される。

全方位に発射されたミサイルは、襲いかかろうとした暴走体全てに直撃、瞬く間に凍らせていく。

しかも、暴走体だけには止まらず、海をも凍らせていく。

あっという間に青い海だったこの場所は、まるで北極や南極のように見渡す限り氷の世界となった。

その光景に声を失う皆。

でも、私の心は嬉しさで一杯だった。

あの人は、私の傍にいてくれた。

私を守ってくれていた。

嬉しさから、瞳に涙が滲む。

「今だ!叩き込め!!」

ユウが叫ぶ。

私達は気を取り直す。

「なのは!とって置き、行くわよ!」

桜が叫んだ。

「うん!」

なのはが答える。

2人はそれぞれ桜色と白銀の魔法陣を発生させる。

『Starlight Breaker.』

なのはは、空気中の魔力を集めだす。

集まる魔力が、まるで星が集まっているように見える。

『Lunarlight Breaker.』

桜は、デバイスコアから漏れ出した光で円を描き、其処に魔力が集中していく。

描かれた円は白銀に輝き、まるで満月の様に見える。

私も負けじと、今使える最強の魔法を準備する。

『Phalanx Shift.』

私は周りに無数のフォトンスフィアを生み出す。

「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル」

私が呪文を唱えると共に、フォトンスフィアが輝きを増す。

「フォトンランサー、ジェノサイドシフト!!」

リニスがそう叫ぶと、数え切れないほどのフォトンランサーがリニスの周りに発生する。

「コイツはオマケだ!」

ユウは両手を合わせて、両腕を上に上げている。

更に、その両手には物凄い冷気が集まっているのが分かる。

そして、次の瞬間、一斉に放たれた。

「全力全開!!スターライト・・・・・・・ブレイカーーーーーーーッ!!」

「一撃必殺!!ルナライト・・・・・・・・ブレイカーーーーーーーッ!!」

なのはと桜が特大の集束砲を。

「フォトンランサー・ファランクスシフト。撃ち砕け、ファイア!!」

私は、フォトンスフィア一基ごとから、無数のフォトンランサーを放つ。

「撃ち貫け!ファイア!!」

リニスがフォトンランサーを嵐のように放ち、

「コキュートスブレス!!」

ユウが、合わせた両手を獣の口のようにして、眼下に向ける。

その瞬間、両手から凄まじい冷気の魔力が放出された。

私達の攻撃は、氷漬けになった暴走体を砕き、凍った海を割り、大きな水飛沫を上げる。

しかも、その瞬間ユウが放った冷気の魔力により、水飛沫が上がった状態で凍りつき、海の上に巨大な氷の花を咲かせた。

「・・・・・・・・な、なんつー出鱈目なバカ魔力・・・・・・・僕に対する当て付けか?」

クロノが呆然と呟く。

『ジュエルシード・・・・・6個全部の封印を確認したよ・・・・・』

エイミィが、呆気にとられながらも、何とか報告する。

と、その時、

『ユウ君!』

ユウの近くにモニターが開き、リンディ提督が慌てた様子でユウに呼びかけた。

『どうして!?どうしてあなたがアイシクルを!?』

リンディ提督が、必死な様子でユウに問いかけた。

「・・・・・・・・・・・・」

でも、ユウは何も言わずに、背中のウイングから魔力を放出し、物凄いスピードで飛び去る。

『ユウ君!!』

リンディ提督は叫ぶが、ユウはもう既に遥か彼方。

『ユウ君・・・・・』

リンディ提督は気落ちした様子で呟く。

「無駄ですよ、リンディ」

リニスが言った。

『えっ?』

「いくら管理局員として話を聞こうとしても、ユウは絶対に話を聞いてくれません」

リンディ提督にそう言うリニス。

『なら、如何すればユウ君に話を聞いてもらえるの?』

リニスに尋ねるリンディ提督。

すると、リニスは一度ため息を吐き、

「仕方ありませんね。ならヒントをあげます。ユウは、管理局は嫌っていますが、あなた方自身は、それほど嫌ってないようですよ」

『えっ?』

リニスの言葉に、リンディ提督は声を漏らす。

すると、リニスは足元に転送用の魔法陣を発生させた。

「今の言葉の意味が判ったのなら、喫茶翠屋までお越しください。現在は私もユウも、其処のお手伝いをしていますので・・・・・・場所は桜となのはが良く知っていますよ」

リニスはそう言うと、私と母さんに向き直った。

「プレシア、フェイト。前のお土産を食べたなら分かると思いますが、翠屋のシュークリームは絶品ですよ。是非アリシアも連れて来て下さいね」

リニスは私達に笑みを向けながらそう言った。

そのまま、リニスは転送でその場から消える。

余りの展開の速さについていけなかった私達は呆然となる。

そして、後には妙な静けさと、海の上に咲いた巨大な氷の花が残った。







あとがき

第十二話完成!

結構やりたい放題やりました。

そしてやっと!

やっとフェイトがユウの正体を知りました!

心理描写があんまり上手くなかったかな?

おまけに超絶一斉攻撃。

ルナライトブレイカーは、スターライトブレイカーよりも圧縮率が高く、見た目は極太レーザーです。

スターライトブレイカーのように、拡散しません。

しかも、スターライトブレイカーよりも、射程と一点の破壊力は高いです。

制御は難しいですが・・・・・・・

まあ、こういう設定です。

さて、次回は翠屋での話し合いの予定。

お楽しみに。

因みに今回から、返信は感想版で行ないます。

何故か感想数が増えたので・・・・

では、次も頑張ります。




[15302] 第十三話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2011/05/03 21:31
第十三話 真実




【Side なのは】



ユウ君とリニスさんがいなくなった後、私達はジュエルシードを回収し、一旦アースラに行きました。

ジュエルシードをリンディさんたちに預けます。

「ロストロギア、ジュエルシード、全21個。確かに回収しました」

リンディさんは、回収任務の終了を宣言した。

その時私は、気になっていた事をリンディさんに尋ねる事にした。

「あの・・・・リンディさん」

「なぁに?なのはさん」

「何でリンディさんは、ユウ君がアイシクルを持っていた事に驚いていたんですか?」

そう聞くと、リンディさんは顔を俯かせる。

「・・・・・・・アイシクルは・・・・・ユウ君の母親、リーラのデバイスなの・・・・・・・」

「え?」

「報告では・・・・・アイシクルは、自爆魔法でリーラと一緒に消えた筈・・・・・・・存在する筈がないの・・・・・・」

リンディさんが驚く事を口にする。

「それって、ただユウがデバイスに同じ名前を付けただけじゃ無いんですか?」

桜お姉ちゃんがそう問いかけます。

しかし、リンディさんは首を振り、

「・・・・・・あなたたちは、アイシクルと話した事はある?」

そう問いかけてきます。

「「はい」」

私と桜お姉ちゃんは頷き、フェイトちゃんも頷きます。

「あなた達が持ってるインテリジェントデバイスと比べてどうだった?」

「えっと・・・・・とても面白い性格でした」

私がそう答え、

「うん、なんて言うか、とても人間っぽいデバイスだったわ」

桜お姉ちゃんがそう言います。

それを聞くと、リンディさんは頷き、

「それほどまでにデバイスのA・Iを成長させるには、長い年月が必要だわ。少なくとも、数年で其処まで成長する事はありえないわ」

リンディさんの言葉に、私は納得しました。

つまり、其処まで人間に近い性格をしたデバイスは、長い年月を経た証拠。

ユウ君のお母さんが使っていたデバイスと、同一の物である可能性が高いって事です。

私のレイジングハートも受け答えはしてくれるけど、まだまだ機械っぽいもんね。

「じゃあ、アイシクルもブレイズも、ユウの両親が使っていた物に、ほぼ間違いは無いって事ですね?」

桜お姉ちゃんが、確認するように問いかける。

リンディさんは頷き、

「ええ・・・・・・やっぱりユウ君はブレイズも持っていたのね。アイシクルを持っていたからもしかしたらと思ったんだけど・・・・・」

そう呟くと、リンディさんは考え込む仕草をする。

「リンディさん?」

私は気になって尋ねると、

「なのはさん、翠屋っていうのは・・・・・・」

「あ、はい。家でやってる喫茶店です」

私はそう答える。

「そう・・・・・・・・クロノ、エイミィ」

リンディさんがクロノ君とエイミィさんに呼びかける。

「はい」

「なんでしょうか?」

2人は返事をする。

「私はこれから休暇を取ります。2人には指揮代行をお願いします」

「えっ!?」

「艦長!?何故いきなり!?」

リンディさんの言葉に、2人は驚いた声を上げます。

「先程、リニスさんは言ったわ。ユウ君は、管理局は嫌っているけど、私たち自身は然程嫌っていないと。だから、個人的に会いに行けば、話を聞けるかも知れないわ」

リンディさんは、休暇を取る理由を説明をする。

「そういう事ですか。それなら、僕達はサーチャーで監視を・・・・・」

「それはダメよ!!」

クロノ君の言葉に、リンディさんは叫んで否定する。

クロノ君たちは少し驚いてます。

「ユウ君は唯でさえ管理局を嫌っているのよ。監視している事が知れたら、それだけで信用を失うわ」

「で、ですが、サーチャーのステルス性能を限界まで上げれば・・・・・・」

リンディさんは監視を無くす理由を述べますが、クロノ君はそれでも食い下がります。

ところが、

「無駄ね。リニスの探知能力を舐めない方がいいわ」

プレシアさんがそう言いました。

全員が其方へ顔を向けます。

「リニスは万能タイプだけど、主の補助を目的とするだけあって、補助系の魔法のほうが得意なのよ。お陰で思った以上に高性能になって、維持するのにも一苦労だったけど」

プレシアさんがリニスさんの説明をします。

「随分とリニスさんに詳しいんですね」

リンディさんがプレシアさんにそう言います。

「リニスは元々、私が生み出した使い魔よ。能力を把握していて当然よ」

プレシアさんの言葉に、アースラの人達が驚いた顔をします。

「あ、あなたがリニスさんの元々の主だったんですか!?」

リンディさんがそう尋ねます。

「ええ。しかも、ユウ君の魔力のお陰で全体的に能力が底上げされているようだから、いくらステルスを使っていたとしても、探知魔法を使われたら、あっという間に気付くでしょうね」

「う・・・・・・・」

プレシアさんの言葉にクロノ君が言葉を詰まらせました。

「ユウ君は、私達を信用して無いでしょうから、間違いなく探知魔法を使うでしょうね」

「あ・・・・・・・」

畳み掛けるようにリンディさんが言葉を発しました。

何も言えなくなるクロノ君が、少し可哀想に思えます。

「そういうわけで、エイミィ、絶対に監視をしようなんて思わないように」

「りょ、了解です」

リンディさんが念を押すように言った事に、エイミィさんは、若干引きつった顔で返事をしました。

すると、

「艦長」

クロノ君がリンディさんに声をかけました。

「何?クロノ」

「僕も一緒に行って宜しいでしょうか?」

クロノ君が意外な事を言いました。

リンディさんも、ちょっと驚いてます。

「意外ね。あなたがそんな事を言い出すなんて」

「僕も気になるんです。何故彼は、管理局をああも毛嫌いするのか・・・・・・確かに、管理局にも多少の問題はあるかも知れません。ですが、管理局が次元世界の平和を守っているのも事実です」

クロノ君はそう言います。

「・・・・・・いいでしょう。許可します。ただし、ユウ君の前では、決して執務官の態度を取らない事」

「・・・・分かりました」

リンディさんの言葉に、クロノ君は頷きます。

「エイミィ、大変だろうけど、指揮代行をお願いね」

「お任せください」

リンディさんは、エイミィさんに代わりを頼む。

「じゃあ、桜さん、なのはさん、案内をお願いできる?」

リンディさんは、私達にそう言ってくる。

「いいですけど、その話には、私達も加わらせて貰いますよ」

桜お姉ちゃんがそう言いました。

その言葉に、私も頷きます。

「わ、私も!」

フェイトちゃんも声を上げました。

「・・・・・そうね。あなた達なら、ユウ君も幾分か気を許すでしょうから」

リンディさんはそう言います。

そして、最終的に私、桜お姉ちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん、プレシアさん、アルフさん、ユーノ君、リンディさん、クロノ君で翠屋に向かう事になりました。





【Side Out】





俺は翠屋に戻り、桃子さんに2人が無事だった事を報告して、再び接客作業に回った。

慣れるとは思っていなかったが、人間やれば出来るようで、今はすっかり慣れた。

暫くお客がいたが、夕方が近い為に、今は誰もいない。

その時、店の入り口の扉が開く。

「いらっしゃいませ」

俺は、営業スマイルを浮かべて挨拶した。

だが、

「何やってんのアンタ?」

そんな声に、入ってきた客を確認すると、桜となのは。

「げ・・・・・・」

しかも、その後ろには、フェイト達テスタロッサ家。

そして、リンディさんとクロノ。

「ユウ君、そんな露骨に嫌そうな顔しないで。今回は、私達個人で此処に来たの。管理局は関係ないわ」

リンディさんがそう言う。

「・・・・・・まあ、そういう事なら・・・・・」

俺は釈然としなかったが、個人で来ているというのなら、とりあえずはお客だ。

俺は、テーブルへと案内する。

すると、なのはが桃子さんの方へ行き、何やら話している。

桃子さんは頷き、貸切の札を持って、店の入り口に掛けた。

「?」

俺が首を傾げていると、

「さあ、色々と話してもらうわよ」

桜がいきなりそう言った。

「は?何をだよ?」

俺がそう聞くと、

「決まってるじゃない。何でアンタが管理局をあそこまで嫌っているのかをよ」

桜はそう言ってきた。

「前にも言っただろ。それは個人的理由だって」

俺がそう言うと、

「だから、その個人的理由を聞かせて欲しいって言ってるの!」

桜はそう言ってくる。

すると、

「その話、私達にも聞かせてくれないか?」

その言葉に振り返ると、士郎さん、桃子さん、恭也さん、美由希さんの高町一家がいた。

「・・・・・・・・・」

俺に逃げ道は無かった。






とりあえず、テーブル同士をくっ付けて、大きなテーブルにし、俺達はそれぞれ席に着く。

そして、

「まずは、時空管理局という組織が、どのような組織か説明していただきたい」

士郎さんが、リンディさんたちに向かって、そう切り出した。

「そうですね・・・・・・簡単に言いますと、次元世界をまとめて管理する、警察と裁判所が一緒になったところで、各世界の文化管理や、災害救助、そして、危険なロストロギアの回収及び管理が主な活動となっています」

「そして、管理局では、質量兵器・・・・・つまり、こちらの世界で言う、拳銃やミサイルなどの武器の使用、製造及び保有が禁止されており、非殺傷が可能な魔法が主力となっています」

リンディさんとクロノがそう説明する。

「あの、ロストロギアって何ですか?」

美由希さんが小さく手を上げながら質問する。

「ああ・・・・遺失世界の遺産・・・・って言っても分かりませんよね。えっと・・・・・次元空間の中には幾つもの世界があります。それぞれに生まれて育っていく世界。その中に、ごく稀に進化しすぎる世界があるんです。技術や科学、進化しすぎたそれが、自分たちの世界を滅ぼしてしまって。その後に取り残された失われた世界の危険な技術の遺産。それらを総称して、ロストロギアと呼びます。使用方法は不明ですが、使いようによっては世界どころか、次元空間を滅ぼすほどの力を持つ、危険な技術のことです」

リンディさんの説明に、息を飲む美由希さん。

「そのロストロギアの中でも、特に危険なものの回収と管理が、管理局の最優先事項です」

クロノが付け足す。

まあ、此処までは、時空管理局に対してそれほど悪い印象は無いだろう。

自分の所属する組織を悪く言う奴は少ないと思うが。

「それで、ユウ君は何で時空管理局を其処まで嫌うの?リンディさん達がやってる事は、悪い事じゃないよ?」

なのはがそう尋ねてくる。

「なのは、勘違いしているようだけど、俺は別に、管理局の行動を否定してるわけじゃない」

「え?」

俺の言葉に、なのはは声を漏らす。

「管理局のやっている事は確かに必要な事だ。管理局のお陰で救われた世界も多いだろう。それは俺も認めてる」

俺の言葉が意外だったのか、リンディさんや、クロノは驚いた表情を見せる。

「けど、何度も言ってるけど、俺が管理局を嫌っているのは個人的理由だ。管理局のやっている事とは別問題だ」

俺がそう言うと、

「ユウ君、その理由を聞かせて欲しいの・・・・・・お願い」

リンディさんは真剣な顔で言ってくる。

俺は、手を前に出し、人差し指を立てる。

「理由その一。俺は時空管理局なんて名付ける傲慢者が設立した組織なんて興味ない」

「なっ!?時空管理局の設立者が傲慢者とはどういう意味だ!?」

当然の如くクロノが叫ぶ。

予想通り。

「だってそうだろ?時空を管理する所なんて名付けるあたり、神様気取ってる傲慢者としか思えないけどね。人間なんかに時空が管理できるかよ。、時空警察とか、時空警備隊とかだったら、まだ印象は良かったんだけどな」

まあ、神様と言ってもあのじーさんだが・・・・・・・

続けて、俺は2本目の指を立てる。

「理由その二。質量兵器を廃止する事は立派だが、その所為で万年人手不足。才能と本人の意思があれば、本来は守るべき幼い子供だろうと前線に出す本末転倒なところ」

その理由には思い当たる所があるのか、リンディさんは俯く。

「まあ、別に子供が戦うなと言いたいわけじゃない。子供にも主張はあるだろうし、時には戦わなけりゃならない時もあるだろうさ。第一、俺達も子供だからな(俺と桜はちょっと違うが・・・・・)。俺がおかしいと言いたいのは、子供を前線に出すのが特例でも何でもなく、それが当然の事と認めている大人たちの考え方だ」

そして、3本目の指を立てる。

「・・・・・・・理由その三。管理局は権力が集中しすぎてるから、ある程度階級が上がれば、ある意味好き放題できる所」

「それは・・・・如何いう?」

リンディさんが質問してくる。

「聞きますけど、時空管理局は、管理局が法を決め、管理局が法を適用して、管理局が法を執行してるんですよね?」

「え、ええ・・・・そうだけど・・・・」

リンディさんが頷くと、

「それは問題だな・・・・」

恭也さんが呟いた。

流石に今のはおかしいと高町家の大人たちは思っただろう。

「ふ、ふえ?如何いう事?」

高町家の中で、ただ1人だけ意味が分かってないなのはが首を傾げている。

そういえば、なのはだけは三権分立を知らないな。

学校では、まだ習ってないし。

「え~と・・・・・つまり、管理局では、違法行為がし易いって事よ。日本では、権力分立、もしくは三権分立って言って、法を決める。法を適用する。法を執行する。の、3つをそれぞれ受け持つ機関があるの。そのそれぞれの機関が互いに指摘し合えるようになってるから、権力の集中、濫用を抑えることが出来るの。でも、管理局はその3つが集中してるから、ある意味管理局の好きなように・・・・・・・大げさに言ってしまえば、管理局が無罪と言えば、有罪の人でも無罪になるし、有罪といえば、無罪の人でも有罪に出来てしまう・・・・・・ってわけ」

桜がなのはに説明する。

「管理局がそんな事をするはずが無い!!」

クロノが怒鳴った。

「怒鳴らないでよ。今のはなのはに分かりやすく説明する為に大げさに言っただけなんだから」

クロノの怒りを見事に受け流し、そう言って宥める桜。

「けど、管理局では、そういう事も出来るってことで間違いないわよ」

桜が念を押すように言った。

「クロノが時空管理局を信じている事については何も言わないさ。それは個人の自由だからな。けど、いくら組織を信じようと、その組織を動かしているのは、あくまで人間だ。人間なら、いくらでも間違いを起こす可能性はある」

俺がそう言うと、

「それは・・・・・・・」

クロノは言葉を詰まらせる。

「最初は平和の為に戦っていたとしても、その思想はいつしか捻じ曲がり、自分が居なければ平和が守れない。自分の行なうことは全て正しいと思うようになったりするんだよ。その時に、間違いを指摘できる奴はいるのか?」

「それは・・・・・・しかし・・・・・管理局がそんな事・・・・・・・」

クロノはいい感じに悩んでるな。

「“世界は、こんな筈じゃない事ばっかりだ”からな。時空管理局だって、例外じゃない」

「ッ!?」

俺の言葉に、クロノは動揺する。

すると、

「・・・・・・・・それなら・・・・・君は如何なんだ?世界を左右するほどの力を持つ君は?君も自分のやっている事が正しいと、本当に言いきれるのか!?」

クロノはそんな質問をしてきた。

「俺は、自分が絶対に正しいなんて、これっぽっちも思っちゃいねえよ」

俺は即答した。

その答えに、クロノは呆気に取られる。

見れば、なのはやフェイトもポカンとしていた。

「第一、正義なんてモンは、人の数だけ在るんだ。何が正しくて、何が悪いかなんて考えても、答えなんか出やしないさ」

「そ、それなら・・・・・君は何の為に戦っているんだ!?」

クロノが叫ぶように問いかけてくる。

まあ、自分の正義を否定されたようなもんだからな。

「まあ・・・・・・突き詰めれば、全部自分の為だろうな」

俺は少し考えてそう答える。

「何!?」

「自分に火の粉が降りかかれば、鬱陶しいから払う。目の前で助けを求められたら見捨てるのは気分が悪いから助ける。知り合いが危険な目に遭うのは嫌だから助ける。家族が傷つくのは最悪な気分になるから絶対に守る。簡単に言えば、俺の日常が崩されるのが我慢ならないから戦う。全ては俺の自己満足。俺は、自分が正義の味方だなんて思っちゃいない。俺は、自己中心的で臆病者の偽善者なんだよ」

俺は、ハッキリとそう言い切った。

黙り込む皆。

「・・・・・・幻滅したか?」

俺は、なのはやフェイトの方に向かってそう言った。

「えっと・・・・・その・・・・・・」

なのはは何やら言いよどむ。

まあ、俺に対するイメージが崩れた事だろう。

これを機に、俺なんかよりも、他のいい男に目を向けてくれれば・・・・・・

「私はそうは思わないわ」

桜が口を開く。

「アンタの後ろ向きは、今に始まった事じゃないし・・・・・・第一、自分から正義とか言ってる奴より、よっぽど信頼できるわ」

「それに、お前は自分の為と言っているが、俺だって、家族を守りたいのも、忍を守りたいのも、俺がそうしたいからだ。最終的には自分の為だろう」

桜と恭也さんがそう言う。

「それにユウ君の言う、崩したくない『日常』の中には、私達も含まれているんでしょ?もちろん、フェイトちゃんたちの事も」

桃子さんがそう言ってきた。

「・・・・・・・・・・・・」

確かにその通りなので、なんか恥ずかしくなり目を逸らす。

「その想いは、守られる側から見れば、間違いなく『優しさ』よ」

桃子さんは微笑んで言う。

「・・・・・・・私も・・・・・・そう思う・・・・・」

なのはがポツリと呟いた。

「ユウ君、自分で自分の事悪く言ってるけど、私達、何度もユウ君に助けてもらった」

「ユウが助けてくれた時、とても嬉しかったし、感謝もしてる」

「だから、ユウの行動理由は、私達から見れば、何も間違って無いわ」

なのは、フェイト、桜の順でそう言ってくる。

「お前ら・・・・・・」

「だからさ、いい加減に本当のこと話してよ」

桜が言った。

「え?」

「管理局を嫌う、本当の理由。アンタ、さっきから興味ないとか、おかしいとか言ってるけど、一言も「嫌いだ」とか、「嫌だ」なんて言ってないじゃない。第一、後ろ向きのアンタがそんな上から目線で管理局を嫌うわけ無いでしょ」

桜の言葉に、俺は若干驚いた。

高町家とフェイト、アルフ、ユーノは、桜の言葉に頷いている。

リンディさん、クロノ、プレシアさん、アリシアは驚いた表情を浮かべている。

「・・・・・・・・・・」

俺は少し考える。

其処へ、

「話すべきですよ。ユウ」

リニスがそう言ってきた。

「・・・・・・・」

俺は俯く。

「お願い、ユウ君」

「ユウ・・・・・お願い・・・・・」

「ユウ」

なのは、フェイト、桜の言葉。

「ユウ君」

士郎さんが口を開く。

「私達は、君のことも家族だと思っている。話してくれないか?」

士郎さんの言葉。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

俺は、首に掛かっているブレイズとアイシクルを外し、テーブルの上に転がした。

2つのデバイスはテーブルの上を転がり、丁度テーブルの中心で止まる。

そして、あの映像を映し出した。







【Side 桜】




私達のお願いに折れたのか、ユウは首に掛かっていたブレイズとアイシクルを外して、テーブルの上に転がした。

2つのデバイスは、私達が囲んでいるテーブルの中心で止まると、映像を映し出した。

その映像には、巨大な生物と戦う男性と女性。

そして、多くの武装局員が映っていた。

「リーラ・・・・・・」

「レイジ君・・・・・・・」

リンディさんとプレシアさんが呟く。

どうやら、この男性と女性がユウの両親らしい。

「この人達が・・・・・・ユウ君のお父さんとお母さん・・・・・」

なのはが呟く。

ユウの両親と魔法生物は激闘を繰り広げ、その中で武装局員たちは次々と脱落していく。

管理局側が不利なのは、誰の目から見ても明らかだ。

この前聞いた、リンディさんの言った通りなら、この後はユウの両親が自爆魔法で魔法生物と相打つということだったが・・・・・・

しかし、映像の中のユウの両親は、魔法生物の一瞬の隙を突き、魔法生物を2人がかりのバインドで動きを封じ込める。

その時、モニターにユウの両親の上司と思わしき人物が映り、

『これよりアルカンシェルを使用する。レイジ・リムルート執務官とリーラ・リムルート執務官補佐以外は直ちに撤退!執務官、執務官補佐両名は、そのまま敵の捕縛を続けたまえ!』

「「「「なっ!?」」」」

「ッ!?」

言い放たれた言葉に、リンディさん、クロノ、プレシアさん、ユーノは驚愕した声を漏らす。

私は、驚愕の声を漏らす事を、何とか我慢した。

「なっ!?お待ちくださいクルーザー提督!それは私たちに死ねと!?」

レイジさんは叫ぶ。

『異論は認めない!これは命令だ!』

通信は、それだけ言って一方的に切れる。

こんな事って・・・・・・・・

「ねえ?アルカンシェルって?」

なのはがユーノに尋ねる。

ユウに聞かないところは気遣っているのだろう。

「あ、うん・・・・・・発動地点を中心に百数十キロ範囲の空間を反応消滅させる魔導砲・・・・・って言えばわかるかな?」

ユーノの言葉に、絶句するなのは。

そして、同じく言葉を失う、父さんや母さん、恭也兄さんや美由希姉さん。

映像の中では、ユウの両親以外の局員は転送されていき、誰もいなくなる。

「ぐ・・・・・・リーラ。お前だけでも逃げろ」

レイジさんはリーラさんにそう呼びかける。

「それは無理よ。これは貴方だけでは抑えきれないわ」

リーラさんはそう言った。

「だ、だが!ユウはどうなる!?」

「あの子なら大丈夫。昔からしっかりしてるもの。私たちが居なくてもきっと大丈夫・・・・・・」

リーラさんはそう呟く。

「・・・・・・そうだな・・・・・そのお陰で、余り甘えてもらえなかったからな・・・・・・」

「本当ね・・・・・・考えてみれば、余りにもしっかりしてたから、仕事を優先して構ってあげる時間がとても少なかったわ・・・・・・・今更気付くなんてね・・・・・・」

レイジさんの言葉に、リーラさんは自傷気味に笑った。

「ブレイズ、アイシクル。お前たちにユウのことを頼みたい」

『そんな!マスター!』

レイジさんの言葉にブレイズが叫ぶ。

「ここでバインドを張り続けているだけなら、貴方たちの補助は要らないわ。だから、ユウを・・・・・・私達の息子をお願い・・・・・・」

『マ、マスター・・・・・・・イ、イェス・・・・・・マスター・・・・・・・・』

リーラさんの言葉の重みを受け取ったのか、アイシクルは応える。

「ありがとう・・・・・」

リーラさんはブレイズとアイシクルに礼を言う。

「聞こえるか?ユウ。すまない、折角の誕生日なのに、父さんと母さんは帰れそうにない」

レイジさんが、謝罪の言葉を口にする。。

「ゴメンね、ユウ。誕生日プレゼントなんだけど、貴方は前からデバイスを欲しがっていたわね?本当なら、新品のデバイスをプレゼントしたかったんだけど、私達が手に入れられたのは、かなり高性能のインテリジェントデバイス。それでも、貴方の魔力量には耐え切れないわ。だから、母さんたちのお古で悪いんだけど、ブレイズとアイシクルを貴方に送るわ」

リーラさんの言葉を聞いたとき、私は思わずレイジングソウルを手に取った。

もしかして・・・・・・

「私達が手に入れたインテリジェントデバイスは、私達のタンスの中にある。如何するかは、お前が決めなさい。そして、お前は幼いながらも大人の考えが出来る子だ。だから、この映像を見て、お前は管理局を恨むかもしれない。それについては、恨むなとは言わない。だが、それを生きがいにはしないで欲しい・・・・・・・私達が望むのは、お前の幸せだ」

「私達は、余り親らしい事はしてあげられなかったけど・・・・・・・貴方の事は、本当に愛しているわ。私達の息子、ユウ」

「すまない、ユウ。これでさよならだ」

レイジさんとリーラさんは顔をあげると微笑み、

「「誕生日おめでとう、ユウ」」

その言葉を最後に、映像は途切れた。





「・・・・っく!・・・・・・えっぐ!・・・・・・こんなっ!・・・・・こんなのっ!・・・・・・酷すぎるよ!・・・・・・えぐっ!・・・・・・」

「ユウ・・・・・・っく・・・・・・・・辛すぎるよ・・・・・・可哀想だよっ!・・・・・・ひっく!・・・・・・」

「・・・・・こんなのって・・・・・・・こんなのってないよ!」

なのは、フェイト、アリシアの3人は、泣きじゃくっている。

私は、レイジングソウルを手に持ったまま固まっていた。

このデバイスは、ユウの両親の形見ともいえる物だったから。

それを私は、あんな軽い気持ちで受け取って・・・・・・・

今になって罪悪感が押し寄せてくる。

「あのっ・・・・・ユウ・・・・・・私っ・・・・・・そのっ・・・・・・」

私は謝罪の言葉を口にしたかったが、上手く口が動かない。

けど、

「謝る必要は無いぞ。お前にレイジングソウルを渡したのは、その方が良いと俺が思ったからだ。俺が持ってても使えないしな。タンスの奥で埃被ってるより、お前に使ってもらった方が、レイジングソウルにとっても幸せだ。そう思うだろ?」

『もちろんです』

レイジングソウルはそう返事をした。

「父さんと母さんだって、きっとそう言うと思う」

ユウの若干悲しみが混じった微笑と言葉に、不意に胸と目尻が熱くなった。

「ッ・・・・・・・・ありがとう・・・・」

私は何とか涙を堪え、レイジングソウルを握り締めながらそう呟く。

その時、リンディさんとクロノは、顔を真っ青にしていた。

「こ、こんな事が・・・・・・・・」

クロノは信じられないといった表情で呟く。

「これだけの仕打ちをされれば・・・・・・管理局を嫌うのは当然ね・・・・・・・・」

リンディさんは俯きながら呟いた。

だが、

「普通ならそうでしょうね」

リニスが続ける。

「え?」

リンディさんが声を漏らした。

「実を言えば、ユウは、此処までなら何とか割り切ろうとしていたんですよ」

リニスが信じられない事を口にする。

「「「「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」」」」

ユウとリニス以外が驚愕の声を漏らす。

「リンディ、提督としての貴女に聞きます。先程見た映像の作戦は、どう思いますか?」

リニスが、リンディさんに問いかける。

リンディさんは少し渋っていたが、

「・・・・・・・・・・最善か如何かは別にして、格上の相手に対しては、有効な手だとは思うわ」

提督としての答えを口にした。

確かに、あの強力な魔法生物を相手にして、勝つ事だけを考えれば、有効な手である事には間違いない。

「そうでしょうね。ユウも、それを分かっていたからこそ、何とか割り切ろうとしていたんですよ。ユウの両親がずっと戦ってきた組織でもあるわけですから。ユウは、自分で自分のことを悪く言っていますが、本当に優しい人なんです。普通なら恨んでもおかしくは・・・・・・いえ、恨むのが普通の筈なのにです!・・・・・・ユウは、此処までの仕打ちを受けておきながら、あなたたち管理局を許そうとしたんです!・・・・・・・・ユウの両親に対する、謝罪さえあれば!」

「ッ!?」

リニスの厳しさを増していく言葉に、リンディさんは声を漏らす。

リニスはリンディさんを見据える。

「前に言いましたね?貴女が考えていたユウが管理局を嫌う理由を、報告で受けた理由と思っていた事自体が、ユウが管理局を嫌う理由でもあると」

「え、ええ・・・・・・」

リニスの言葉に、リンディさんは気圧されながら頷く。

「先程の映像の出来事があった翌日、1人の管理局員がユウを尋ねてきました。そして、ユウの両親が亡くなったことを知らせました。其処まではいいです。ですが、その後、ユウが両親の最後を尋ねた時の言葉が、『2人とも立派だった・・・・・・2人は普通に立ち向かって敵わぬと見るや、その身を犠牲にした自爆魔法で、魔法生物と相打った』でした。この言葉だけを聞けば、ユウの両親を持ち上げつつ、管理局に対する反抗心は湧きません。ですが、真実を知っている身としては、この言葉はユウの両親に対する侮辱以外の何物でもないんですよ」

「・・・・・・・ええ」

リニスの言葉にリンディさんは力なく頷く。

「しかし、ユウに言わせればそんな事如何だっていいんです」

「え?」

コロッと態度の変わったリニスにリンディは声を漏らした。

「ユウにしてみれば、管理局が真実を偽ろうが何しようが、関係ないんです」

リニスは、そこで一旦言葉を区切ると、再び鋭い視線を向ける。

「ユウが許せないのは、両親に対する謝罪が一度もなかった事です!あの映像の中、『すまない』の一言でもあれば!両親の死を伝えた時、両親に対して頭の1つでも下げていれば!ユウはこんなにも管理局を嫌う事は無かったでしょう!!」

普段冷静なリニスが、怒りを剥き出しにしている。

リニスにとっても、それほどまでに許せない事なのだと感じた。

そういう私も、管理局に対する評価が地の底に落ちている。

「ですので、今更管理局が何をしようが、ユウが管理局を許す事はありません。全ては最早手遅れです」

リニスが、止めを刺すように言った。

リンディさんもクロノも此処までハッキリ言われてしまっては、何もいう事が出来ないようだ。

しかし、まだリニスの言葉は止まらなかった。

「そして、管理局を疑い続けていると、信じられない仮説すら浮かび上がってきたんですよ」

リニスがそう続けると、

「リニス、それは言わなくていい。その仮説は、証拠も何も無い、単なる当てずっぽうだ」

ユウがそう言って止めようとする。

「いえ、聞かせて頂戴。その仮説というものを・・・・・・私は、ユウ君が管理局をどう思っているか、その全てを知りたいの」

しかし、リンディさんが話すように促した。

「では、遠慮なく。私達が立てた仮説は・・・・・・・・ユウの両親は、意図的に殺されたのかもしれないというものです」

リニスが信じられない事を口にした。

「そんなの出鱈目だ!!」

クロノが叫ぶが、

「クロノは黙ってて!!!」

私はテーブルを叩きながらそれ以上の声で叫び、クロノを黙らせる。

「ユウも言ってたじゃない!この仮説は証拠も何も無い当てずっぽうだって!文句は全部聞いてからにして!」

クロノは驚いた顔で私を見る。

よく見れば、殆どの人が驚いた顔で私を見ていた。

「リニス、続きは?」

私はそれを気にせず、リニスに続きを促した。

「ええ・・・・・・先程の映像を見て、おかしいと思いませんでしたか?いくら強敵とはいえ、管理局の中でも5%に満たないAAAランク以上の魔導師・・・・・・・・しかも、SSランクという管理局でもトップクラスの魔導師2人を、あっさりと切り捨て過ぎでは?・・・・・と」

リニスの言葉に、私はハッとなる。

確かに、SSランク魔導師2人は、大きな損失になる。

万年人手不足の管理局なら尚更だ。

「リンディ、貴女に聞きます。ユウの両親は、上司からすれば、扱いにくい部下だったのではありませんか?」

リニスはリンディさんに尋ねる。

「ええ・・・・・・あの2人は正義感が強くて、納得できない事には反論する事も多かったし、時には命令無視までしたことがあるわ。本来なら2人とも提督にまでなれるほどの戦果を挙げているのに、執務官と、執務官補佐止まりだったのはその為ね」

リニスの質問に、リンディさんは頷いて答えた。

その答えを聞くと、

「やはりですか・・・・・・これで、この仮説にも信憑性が増しましたね。保守的な上司からすれば、そんな言う事を聞かない駒は必要ありません。しかし、戦力としては申し分ない。では、その駒を超える戦力を持ち、まだ何色にも染まっていない真っ白なスペアがあったとしたら?」

「えっ?・・・・・スペ・・・・ア・・・・?」

なのはが意味が分からないのか声を漏らす。

だが、私はその瞬間その意味に気付き、ユウを見た。

同時に、大人たちもユウを見ている。

「まさか・・・・・・」

「気付いたようですね。7歳でありながら、SSSランク以上の魔力を持ち、普通なら善悪の判断も曖昧な子供。育て方によっては、命令に絶対服従する傀儡にすることも容易いでしょう」

「つまり仮説というのは、ユウを意のままに操る駒とするために、管理局が意図的にユウの両親を殺した・・・・と?」

恭也兄さんが、確認するようにリニスに問いかける。

リニスは頷き、

「それが、あの提督の独断か、上層部の命令かは知りませんけどね」

そう答えた。

「そんな・・・・・そんな事する筈が・・・・・」

クロノは仮説とはいえ、受け入れられないようだ。

そんなクロノの様子を見て、

「この仮説を立てた理由は、もう1つあるんですよ」

リニスが言った。

「この場の大人たちに聞きます。あなた達がユウの両親の死を知らせて、保護する為に来た一番最初の人物だったと仮定して、ユウに両親の死を教えた時、ユウは両親を失った事による錯乱を起こしたと判断しました。あなた達なら如何しますか?」

リニスは大人達に問いかける。

「もし錯乱を起こしたのだとしたら、一旦引き下がって落ち着くのを待つわ。錯乱なら一時的なものでしょうし、そこで無理に連れて行っても、信じてはくれないでしょうから」

プレシアさんが言う。

父さん、母さん、恭也兄さん、美由希姉さん、リンディさんも頷く。

「普通ならそうですね。しかし、ユウを迎えに来た管理局の人間は、バインドで縛り付けてまでユウを連れて行こうとしましたよ」

「そんなっ!?」

リンディさんが叫ぶ。

「証拠の映像もありますよ。ブレイズ、アイシクル」

リニスが2つのデバイスに呼びかけると、また映像を映し出した。

そこでは、ユウと管理局員と思われる男性が話をしている。

「私は時空管理局の者だ。君に重大な知らせがある。君の両親だが・・・・・真に残念な事に、異世界での任務中に魔法生物と戦闘になり、亡くなった」

「・・・・・・・・そうですか・・・・・・・父さんと母さんの最後は・・・・・・」

「2人とも立派だった・・・・・・2人は普通に立ち向かって敵わぬと見るや、その身を犠牲にした自爆魔法で、魔法生物と相打ったのだ。それで、君のこれからだが、管理局の児童施設で保護する事に決まった。君は両親の才能を余すことなく受け継いだ天才だからね。将来は両親以上の管理局員になれることだろう。さあ、来たまえ」

これがさっき言っていたことね。

確かにあの真実を知った後じゃ、ユウの両親を侮辱しているようにしか聞こえないわ。

リニスの言った通り、謝罪の一つも無いし。

しかも、さり気に管理局員になることが決まってるし。

「・・・・・・・・・出てけよ・・・・・」

映像のユウは、呟く。

「何?」

「出てけッつったんだ!!」

怒りの感情を露にするユウ。

「な、何を!?」

「俺はもう管理局なんかに頼る心算は無い!!管理局が俺に関わるな!!いいから出てけっ!!」

ユウの身体から、映像でも分かるほどの魔力があふれ出す。

「ぐぬっ!?」

その魔力の噴出にたじろぎ、管理局員は下がる。

「両親を失ったことによる錯乱か!?仕方ない、力ずくで!」

信じられない事に、その管理局員はデバイスを展開し、バインドでユウを縛り付けた。

そこで映像が終わる。

「・・・・・と、いう事です。この後はユウが自力でバインドを振りほどいて、私がこの局員を追い払いましたけどね。ですが、その後も何度も管理局がユウを取り込もうと接触してきましたよ。面倒は私が見るので結構ですと何度も言ってたんですがね。実際、ユウが高町家に引き取られる一週間ぐらい前にも管理局がしつこく尋ねてきてるんですよ。いつもの如く追い払いましたけどね」

リニスがそう纏める。

「・・・・・・1つ、聞かせてくれないかしら?」

リンディが俯きながら尋ねる。

「何でしょうか?」

リニスが聞く。

「何故あなた達は、リーラとレイジさんの死の真相を公にしなかったの?これだけの証拠があるなら、間違いなくクルーザー提督を罪に問う事が出来たはずよ」

リンディさんはそう質問した。

「簡単です。確かに罪には問う事が出来るでしょうが、大した罰にはならないと思った・・・・・・いえ、十中八九ならないと確信してたからですよ」

答えたのはユウだった。

「え?」

リンディさんは声を漏らす。

「先程も言いましたが、管理局は権力が集中している為に、ある程度罪と罰を自由に出来ます。そして、普通に犯罪者だろうと魔導師として管理局に奉仕すれば、相当罪が軽減されるんです。万年人手不足の管理局が提督となれるほどの人材を軽々と手放すわけは無い。ですので、例え自分が両親の死を告発した所で、その提督が事実を隠蔽した事も、両親の名誉を守る為だとか理由をつけてしまえば其処までです。罪になるのは報告を偽った事ぐらいで、罰といえば、降格や俺に対する謝罪と賠償が精々でしょう。幽閉なんて殆ど無いと言っていいでしょう。降格になったところで俺には関係ないし、言われてから行なう謝罪と賠償に、何の意味がある?それなら、最初から無いほうがいい」

ユウは、そう言いきった。

ユウは、全く管理局を信用していない事が改めてハッキリとわかった。

「そんな事・・・・・」

「無いとは言い切れないだろ?」

クロノの言葉をユウが続けるように聞いた。

「くっ・・・・・・」

クロノも心当たりがあるのか、否定できない。

「まあ、そういうことだ」

クロノとリンディさんが何も言えなくなり、俯く。

と、その時、店の入り口が開き、見知らぬ男性が入ってきた。






【Side Out】




店に入ってきた男性は、大き目のアタッシュケースを持っていた。

すぐに士郎さんが立ち上がり、その人の傍へ行く。

「申し訳ありません、お客様。只今貸切となっておりますので・・・・・」

そう言って、申し訳無さそうにお引取り願おうとしていた。

「ああ、いえ。お客ではないので」

その男性はそう言って手を前に出しながら士郎さんを制す。

「実は、此方のお宅がユウ・リムルート・・・・あ、いえ、利村 ユウ君を引き取ったとのお話をお伺いしたので、お邪魔させてもらった次第です」

俺はその言葉で、その男が管理局員である事に気付く。

「・・・・・・失礼ですが、時空管理局の方ですか?」

士郎さんもその事に気付いたのか、そう問いかける。

その質問にその男は驚いた表情を浮かべる。

「あ、え、ええ。その通りです。・・・・既にご存知であったとは、驚きです」

「それで、ご用件は?」

士郎さんは尋ねる。

大方俺を引き取りに来たとでも言うつもりなのだろう。

「実はですね。ユウ君を引き取りたい「お断りします」ので・・・・・」

これ以上無いほどに即答する士郎さんの言葉に固まる局員。

「ユウ君は既に私達の家族です。そのようなふざけた事を仰らないで頂きたい」

士郎さんの言葉に俺は感動する。

しかし、その局員は気を取り直し、

「い、いえ、もちろんタダではございません!」

その局員はそう言うと、アタッシュケースを開ける。

その中には、金、金、金。

軽く見ても、5000万位はあるだろうか。

すげーな、おい。

「こ「お引き取りください!」ッ!?」

それだけのお金を見ても、全く揺らぎもせずに先程以上の即答を見せる士郎さん。

凄いです。

俺だったら少なくとも揺らぐぞ。

その答えに再び固まる管理局員。

「家族をお金で売るような真似をする等と思うとは・・・・・・見損なうな!」

士郎さんの言葉が敬語ではなくなった。

しかも、士郎さんから発せられる気迫は、凄まじいものだ。

この姿こそ、御神の剣士としての士郎さんの姿なのだろう。

直接向けられているわけではないのに、腰が引けてしまう。

それを直接向けられている管理局員は、堪ったものでは無いだろう。

いつもの局員なら、此処で引き下がっていたのだが、

「仕方ありませんね・・・・・・・」

そう呟く局員。

その瞬間、俺はその局員が魔力を溜めているのに気付いた。

大方、断られたら実力行使も許可されていたのだろう。

俺は叫んだ。

「危ない!士郎さん!」

その瞬間、局員はデバイスを展開させ、杖を前に突き出し、魔力弾を放った。

だが、次の瞬間に士郎さんの姿が一瞬消える。

魔力弾は外れ、気付いた時にはデバイスの杖は叩き落され、士郎さんに腕を後ろで捻り上げられている局員の姿があった。

これが神速ですか?

魔力で強化してなかったとはいえ、全く見えなかった。

すると、その局員にバインドが掛けられる。

「・・・・・・民間人への魔法攻撃・・・・・・・・・軽犯罪では済まない罪だ・・・・・・・」

クロノが暗い雰囲気を纏わせながら、縛り上げた局員に告げる。

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ・・・・・・民間人への魔法攻撃の現行犯で、あなたを逮捕します・・・・・」

クロノは辛そうにそう言った。

自分が正義だと信じて疑わなかった管理局がこんな事をしたのが信じられないのだろう。

縛り上げられた局員は青ざめる。

まあ、この局員は切り捨て可能だろうから、誰が命令したかまでは分からないだろう。

クロノは歯を食いしばると、縛り上げた局員にショックを与えて気絶させる。

すると、士郎さんはリンディさんに向き直る。

「リンディさん、確かにあなた方は信用に足る人物だと思います。しかし、一部とはいえ、このような輩がいる時空管理局を信用する事は出来ません。家族を預ける事など論外です」

「私も同じ意見ね」

士郎さんの言葉に、プレシアさんが同意する。

「・・・・・・はい・・・・・返す言葉もありません・・・・・」

リンディさんは俯きながらそう呟く。

リンディさんも、相当のショックを受けているようだ。

リンディさんは俺の方を向くと、

「ユウ君、今まで本当に御免なさい。ユウ君の気も知らないで勝手な事を・・・・・・」

そう謝ってきた。

「・・・・・まあ、俺が黙っていたのも原因ですけどね」

俺はそう呟く。

「いえ・・・・あれだけの事をされていれば、管理局が全く信用できずに、それに所属している私の事も信用できなかったのもわかるわ・・・・・」

「そうですか・・・・・・」

リンディさんの言葉に、一応頷く。

すると、

「すまない、ユウ」

クロノも謝罪してくる。

それには俺も驚く。

クロノは最後まで管理局を信じきると思ってたからな。

「僕がバカだった。自分でも、“世界はこんな筈じゃ無いことばっかりだ”と分かっていた筈なのに、自分が信じていた管理局だけはそんな事は無いと、心のどこかで思っていたんだ。君に言われて、その事に気付いたんだ・・・・・・・時空管理局も、あくまで“世界”の一部に過ぎないと・・・・・・管理局にも、“こんな筈じゃ無い”事が溢れているんだと」

「そ、そうか・・・・・・」

いや、そこまで悟るなんて逆にビックリ。

管理局がそんなことする筈無いって駄々こねるかと思ってたし。

「それでユウ、先程の映像のデータ、僕にコピーさせてくれ」

「如何するんだ?」

「この映像を証拠に、クルーザー提督を告発する」

クロノはそう言った。

「いや、そんな事しなくていいって。大した罪にはならないだろうし」

「それでは僕の気が済まない。少しでも君に償いたいんだ!僕が説得して、少しでも重い刑にしてみせる!」

クロノは力強く語る。

「ふう・・・・・好きにすればいいさ」

俺はそう言って、クロノのデバイスに映像データを送る。

「けど、罰が謝罪と賠償だったら要らないって言っとけ」

「ああ。そうならない様に全力を尽くすよ」

その言葉を聞いて、口元が緩む。

やっぱり、クロノ自身はいい奴だな。

「クロノ」

俺はクロノに声を掛ける。

「何だ?」

「次に個人的に来る時があったら、その時は何か奢ってやるよ」

俺の言葉に驚きの表情を浮かべたが、すぐに笑みを浮かべ、

「ああ、その時を楽しみにしているよ」

そう言うと、リンディさんと共に立ち上がる。

「それでは、私達はこれで・・・・・」

リンディさんは呟く。

「わかりました」

士郎さんはそう言うと、

「管理局員として来られると困りますが、翠屋のお客として来て頂けるなら、いつでも大歓迎ですよ」

営業スマイルを浮かべてそう言った。

「はい、その時は喜んで」

リンディさんも笑みを返した。

すると、リンディさんとクロノは先程の局員を連行しながら、転送魔法でその場から消えた。





俺がそれを見送って少しすると、

――ガバッ

と、なのは、フェイト、アリシアに抱きつかれる。

って、何でだ!?

「お、おい!?」

混乱する俺は尋ねる。

「えぐっ!ユウ君、私は居なくなったりしないからね!」

「ぐすっ!ユウ、寂しくないから。私がずっと傍に居るから!」

「ユウ、ゴメンね。うぐっ!そんな辛い思いをしてたなんて・・・・・私、何にもわかってなかった・・・・ぐすっ!」

いや、そんな事言われても・・・・・・

「・・・・・ところでさ、フェイトの好きだった人ってユウで良い訳?」

桜、何故こんなときに余計な事を!?

フェイトは涙を流しながら顔を赤くして頷いてるし。

「そうだよ!何で言わなかったんだい!?」

アルフが叫んで問いかけてくる。

「んな恥ずかしいこと言えるかぁ~~~~!!」

俺は叫ぶ。

多分、顔は赤いだろう。

「あらあら、やっぱり2人ともユウ君に貰ってもらったほうが良いかしら?アリシアもこの分だとユウ君にお熱だろうし・・・・」

プレシアさんがすんげー事を言ってます。

「それは困りますよ。ユウ君にはなのはのお婿さんになって貰って、翠屋を継いでもらう心算なんですから。それとも桜の方かしら?」

桃子さんがそう微笑みつつプレシアさんと談笑する。

いや、桃子さん、冗談でもそんなこと言わないでください。

先程から親バカとシスコンの視線が痛いです。

「か、母さん!!何で私が入ってるのよ!!」

桜が叫ぶ。

そりゃ当然か。

「あら?桜もユウ君に気が有るんじゃないの?」

桃子さんはそう尋ねる。

「な、何言ってるの!?そんなわけ無いじゃない!なのはの初恋の相手を奪おうだなんて思ってないわよ!」

桜は顔を真っ赤にしながら叫ぶ。

「ふ~ん・・・・・じゃあ、なのはの相手じゃなければ、その気になってたかも知れないって事よね?」

美由希さんが意地の悪い笑みを浮かべながら、そう言った。

「姉さん!!」

更に叫ぶ桜。

「う~ん・・・・・これは本気で一夫多妻制の世界を紹介した方がいいかしら?」

「「結構です!!」」

プレシアさんの呟きに、俺と桜が同時に答えた。

「あらあら、息ピッタリね」

「「桃子(母)さん!!」」

桃子さんの言葉にも、同時に突っ込んでしまう俺達。

この後、俺達は大人たち(桃子さんとプレシアさん)に暫くからかわれ続けたのだった。








あとがき

ご都合主義全開の第十三話完成。

入れたいこと詰め込みすぎてグダグダしてます。

矛盾点もいくつか?

そう思っても気にしないように。

賛否両論ありそうな内容です。

話の筋も通ってるか微妙な内容。

まあ、リンディさんやクロノとは一応和解?

管理局相手は全く。

納得できるかな?

とりあえず、こんなんで。

では、次も頑張ります。





[15302] 第十四話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/03/28 07:45

第十四話 転校生




ジュエルシード事件が終わって一週間後。

現在は、小学校の朝のHRである。

そして、なのは、桜、アリサ、すずかが驚きで固まっている。

何故ならば、

「アリシア・テスタロッサだよ!よろしくね!」

「フェ、フェイト・テスタロッサです。よろしく・・・・・・・」

目の前で聖祥小学校の制服に身を包んだアリシアとフェイトが、自己紹介していたからだ。

因みに、俺はこうなる事を知っていた。







ジュエルシード事件が終わると、テスタロッサ一家は時の庭園へと戻っていった。

別れ際には、フェイト、アリシア、なのはが、別れを惜しんで泣いていた。

ただ、俺はその際プレシアさんが浮かべた笑みに引っ掛かりを覚えたが。

それから、数日後のことだった。

俺が街を歩いていると、

「う~ん、中々いい物件がないわねぇ~・・・・」

聞き覚えのある女性の声。

俺がそっちに顔を向けると、不動産屋から出てくるプレシアさんの姿。

何やってんですかアンタ?

「プレシアさん?」

俺は声をかける。

すると、プレシアさんは此方を向き、

「あら、ユウ君じゃない」

そう微笑みながら話しかけてくる。

「何やってるんですか?」

俺は、そう尋ねる。

「ええ、暫くこの街に腰を据えようかと思って」

「はい?」

プレシアさんの言葉に、俺は間抜けな声を漏らす。

「アリシアとフェイトに友達ができた事だし、離れ離れにするのも可哀想でしょ?折角だから、暫くこの街に滞在しようと思ってるの」

「暫くって・・・・・どの位?」

「そうね。この国には、義務教育期間って言うものがあるらしいし、少なくともそれが終わるまではこの街にいるつもりよ」

「義務教育ってことは・・・・・・アリシアとフェイトを学校に通わせるってことですか?」

「ええ。学校なら、同年代の子供たちも一杯いるから、アリシアとフェイトにはいい刺激になると思って」

「なるほど・・・・・何処の学校・・・・・って、聞くまでも無いですね」

俺は一瞬疑問に思ったが、このプレシアさんの性格なら、少し考えただけで分かった。

「言うまでもないけど、当然、聖祥小学校よ♪」

思ったとおり。

「ですよね。なのはや桜たちには・・・・・」

「もちろん秘密にしといてね。アリシアとフェイトにも秘密にしてあるんだから」

プレシアさんは、笑顔でそう言う。

「まあ、それは良いですけど、住む所は決まってるんですか?」

俺がそう聞くと、プレシアさんは苦笑し、

「それがね、なるべくなら高町さんのお宅に近い所を探してるんだけど、中々いい所が無くて・・・・・・」

どうやら家探しは難航している模様。

「そうですか・・・・・・ん?」

俺は、そこでとある事を思いついた。

「だったら、自分の家貸しましょうか?」

俺はそう言う。

「え?」

プレシアさんは意味が分からなかったのか、声を漏らす。

「いえ、今、俺は高町家に居候してますんで、元々住んでた家が空き家になってて、士郎さんたちに管理して貰ってる状態なんですよ。俺も多分成人するまでは居候状態が続くと思いますんで、期間的にも丁度良いかなと・・・・・高町家から歩いて10分位の所なので、それなりに近いですよ」

「あら、いいの?」

「ええ、その家に住んでもらう序に管理してくれれば、士郎さんたちへの負担も減りますし」

「なるほど、一石二鳥って訳ね」

「その通りです」

「じゃあ、お願いしようかしら」

「分かりました。士郎さん達には話を通しておきます。もちろんなのは達には秘密で」

「ええ、頼むわね」




と、言うわけで、なのはや桜たちには知られないように暗躍(?)しつつ、テスタロッサ一家が俺の家に住めるように手配する。

そして、週明けの本日、アリシアとフェイトが転校生として聖祥小学校に来る日である。

朝のHRが始まると、

「では、早速ですが、今日からこのクラスに新しいお友達がやってきました」

先生がそう切り出す。

その言葉に、クラスがざわめく。

なのは達も、誰が来るのか分かってない。

「じゃあ、入ってきて」

先生がそう言うと、教室のドアが開き、2人の人物が入ってくる。

その人物を見た瞬間、なのは、桜、アリサ、すずかの4人が驚いた表情をして固まった。

「2人とも、自己紹介をお願いできる?」

先生に言われ、

「アリシア・テスタロッサだよ!よろしくね!」

アリシアが元気良く挨拶し、

「フェ、フェイト・テスタロッサです。よろしく・・・・・・・」

フェイトは恥ずかしさからか、頬を赤くさせながら自己紹介した。

「アリシアさんとフェイトさんは、双子の姉妹です。みなさん、仲良くしてあげてください」

先生がそう締めくくる。

HRが終わると、俺は何時もの如く机に突っ伏し、クラスメイト達は例の如く一斉にアリシアとフェイトの周りに群がる・・・・・・・

前になのはが一目散に駆け寄った。

「フェ、フェイトちゃん!アリシアちゃん!な、何で!?」

なのはは相当驚いているのか、そう叫びながら問いかける。

「あ、なのは」

「そ、それが・・・・・・私達も母さんに昨日いきなり・・・・・・・」

アリシアは既に順応しているが、フェイトは困惑気味らしい。

だが転入生、しかも、アリシアやフェイトのような外国人(正確には異世界人)と知り合いとなれば、子供たちの好奇心を駆り立てるには十分だ。

「何々!?高町さん知り合いなの!?」

「どういう関係!?」

そう言いながら、3人を囲むクラスメイト。

「にゃぁあああああああああっ!?」

なのはの声が響く。

その傍ら、

「で、何でアンタはそんなに落ち着いてるの?私も、これでも結構驚いてるんだけど」

桜が俺に近付いてそう言ってきた。

「まあ、俺は知ってたからな」

俺は隠す心算もなく、そう言った。

「はぁ?」

桜は声を漏らす。

「ちょっと前にプレシアさんに会って、話を聞いたんだ。その時に丁度物件を探してたから、俺が元々住んでた家を紹介したって訳だ」

その言葉に、ちょっと呆気に取られた表情をする桜。

「じゃあ、今フェイトたちって、アンタの前の家に住んでるって事?」

「まあ、そうなる」

俺は頷く。

「ふ~ん・・・・・・まあ、いいけど」

桜は納得して、視線を3人の方へ戻す。

そちらでは、次から次へと質問するクラスメイト達を、アリサが取り仕切っている。

そんな中、

「好きなタイプは?」

という質問があった。

「えっ?そ、それは・・・・・・・」

フェイトは頬を赤くして俯くだけだったが、

「好きなタイプっていうか、好きな人ならいるよ」

アリシアはそうハッキリと口にした。

「なにぃーーーーーーーーっ!?」

「そんなーーーーーーーーっ!!」

「狙ってたのにぃーーーーーーーーっ!!」

「羨ましいぞぉーーーーーーーーーっ!!」

「何処のどいつだぁーーーーーーーっ!?」

男子の多くがショックを受けたように叫ぶ。

すると、アリシアは俺の方を向いて笑みを浮かべた。

「何処のどいつかって言うと・・・・・・・」

アリシアは、小走りに俺の方へ走ってきて、

「此処の・・・・・・」

俺の腕に抱きつきながら、

「コイツ♪」

そう言った。

おい!そんなことしたら!

「「「「「「「「「「何ぃーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」」」」」」」」」」

絶叫が響き渡る。

耳が痛い。

「何故利村なんだぁ~~~~~~~~~~!!」

「あんな根暗をぉ~~~~~~~~~~!!」

「如何見ても冴えない奴じゃないかぁ~~~~~~~~!!」

好き放題言われてます。

全部本当の事だから、別にムカつきはしないけど。

と、其処へ1人の男子生徒が俺の前に来る。

「ちょっと良いかな?」

キザったらしい仕草をしながら、その男子生徒は俺にそう言ってくる。

コイツはクラスメイトの金野 力(かねの つとむ)。

とある大会社の社長の息子で、名は体をあらわすが如く、金の力で色々と無茶をやらかす問題児だ。

俺が嫌いなタイプの人間である。

「何だ?」

俺は、めんどくさくなりそうだと思いながらそう聞き返した。

「アリシアさんのような可憐な花に、君のような雑草は似合わない。即刻別れたまえ」

金野の言葉に俺は呆れた。

「俺が雑草というのは認めるけど、別れるも何も、付き合ってるわけじゃないんだけど・・・・・」

俺はそう返す。

「ふむ、そうか。しかし、君のような低俗な人間は、彼女の傍にいる資格すらないよ」

「そうなんだよな~・・・・・・・俺なんかより良い男なんて、世の中にいくらでも居るって言ってるんだけどよ~・・・・・・」

その言葉は本音である。

その言葉に、金野は呆気に取られた表情をする。

大方、噛み付いてくると思ってたんだろう。

「・・・・・・・其処まで分かっているなら、何故君は彼女の傍にいる!?」

「いや、別に俺から言い寄ってるわけじゃないし。序に言えば、知り合って間もないし」

俺はあっけらかんとして答える。

俺の答えに、金野は言葉に詰まる。

「・・・・・は、はん!其処まで自分を卑下するなんて、余程人の出来ていない両親に育てられたらしいね!」

両親という言葉に、チクリと胸が痛む。

俺が、心を落ち着けようと目を瞑った瞬間、

――バチィ!バンッ!バチン!ドゴッ!

突如そんな音が聞こえ、目を開けると、宙を舞って床に叩きつけられた金野。

そして、俺の前に並ぶ、なのは、フェイト、アリシア、桜の姿。

何があった?






【Side 桜】



本当に驚いた、まさか、こんなにも早くフェイトとアリシアが転入してくるなんて。

あのプレシアさんの性格なら、その内転入させるとは思ってたけど、こんなにも早いとは思わなかった。

HRが終わった後、なのはが一目散にフェイト達に話しかけた為に知り合いという事が知れ渡り、フェイトとアリシア共々クラスメイトたちに囲まれている。

そんな中、私は全然驚いてなかったユウが気になり近付いて話しかける。

「で、何でアンタはそんなに落ち着いてるの?私も、これでも結構驚いてるんだけど」

私はそう問いかける。

「まあ、俺は知ってたからな」

ユウは、何でもないように答えた。

「はぁ?」

何でアンタが知ってるの?

「ちょっと前にプレシアさんに会って、話を聞いたんだ。その時に丁度物件を探してたから、俺が元々住んでた家を紹介したって訳だ」

なるほど・・・・・・って、ちょっと今気になる言葉が。

「じゃあ、今フェイトたちって、アンタの前の家に住んでるって事?」

私は確認する為にそう聞いた。

「まあ、そうなる」

ユウは頷いた。

「ふ~ん・・・・・・まあ、いいけど」

私は、とりあえず納得して、視線を3人の方へ戻す。

そちらでは、次から次へと質問するクラスメイト達を、アリサが取り仕切っている。

そんな中、

「好きなタイプは?」

という質問があった。

「えっ?そ、それは・・・・・・・」

フェイトは頬を赤くして俯く。

まあ、フェイトにそんな事聞いても恥ずかしくて答えられないわよね。

「好きなタイプっていうか、好きな人ならいるよ」

でも、アリシアはそう口にする。

「なにぃーーーーーーーーっ!?」

「そんなーーーーーーーーっ!!」

「狙ってたのにぃーーーーーーーーっ!!」

「羨ましいぞぉーーーーーーーーーっ!!」

「何処のどいつだぁーーーーーーーっ!?」

煩いわね男子。

すると、アリシアは此方・・・・・・というか、ユウを見て笑みを浮かべた。

「何処のどいつかって言うと・・・・・・・」

アリシアは、そう言いながら小走りにユウの所に走ってくる。

「此処の・・・・・コイツ♪」

そう言いながら、ユウの腕に抱きつき、満面の笑みを浮かべる。

あ、なのはとフェイトが若干不機嫌な顔に。

私は、この後の反応を予想して耳を塞いだ。

「「「「「「「「「「何ぃーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」」」」」」」」」」

絶叫が響き渡る。

危ない危ない。

「何故利村なんだぁ~~~~~~~~~~!!」

「あんな根暗をぉ~~~~~~~~~~!!」

「如何見ても冴えない奴じゃないかぁ~~~~~~~~!!」

男子達は、ユウの事を好き放題言っているが、当の本人は何処吹く風といった様子。

と、其処へ1人の男子生徒がユウの前に来た。

「ちょっと良いかな?」

その男子生徒は金野 力(かねの つとむ)。

典型的なボンボンで、いけ好かない奴。

ハッキリ言えば、私はコイツが嫌いだ。

コイツは過去、私に気があったのか、何かと気を引こうと財力をチラつかせて言い寄っていた。

当然私はそんな奴を気に入る筈もなく、突っぱね続けていた。

しかし、何度もしつこく言い寄ってくるので、我慢できなくなった私は、思わず(グーで)殴ってしまった。

そうなればボンボンのやることは変わらず、仕返しの為に例の如く財力で高町家に圧力を掛け様とした。

でも、それに気付いたアリサが、バニングス家(大会社と言っても、アリサの家とは天と地)から圧力を掛けてくれて、事前に解決してくれた。

その時は、アリサにとっても感謝したわ。

そして、それから金野はアリサと私、序になのはとすずかにも頭が上がらなくなっている。

「何だ?」

ユウは、めんどくさそうな表情で聞き返した。

「アリシアさんのような可憐な花に、君のような雑草は似合わない。即刻別れたまえ」

その台詞を聞いて、私は思わず吹き出しそうになった。

カッコつけようとしているのだろうが、ありきたり過ぎて全然カッコよくない。

「俺が雑草というのは認めるけど、別れるも何も、付き合ってるわけじゃないんだけど・・・・・」

「ふむ、そうか。しかし、君のような低俗な人間は、彼女の傍にいる資格すらないよ」

「そうなんだよな~・・・・・・・俺なんかより良い男なんて、世の中にいくらでも居るって言ってるんだけどよ~・・・・・・」

普通なら怒る所なのだが、ユウはのらりくらりとかわしている。

まあ、恐らくユウにとっては本音を言ってるんだろうけど。

でも、後ろ向きも此処まで来ると逆に感心するわ。

私だったら、間違いなく殴ってる。

あ、金野が呆気に取られた顔をしてる。

まあ、此処まで言われて、言い返してこないとは思っていなかったのだろう。

「・・・・・・・其処まで分かっているなら、何故君は彼女の傍にいる!?」

「いや、別に俺から言い寄ってるわけじゃないし。序に言えば、知り合って間もないし」

金野の言葉を、正論・・・・・というか、事実で返していくユウ。

金野には、これ以上文句は言えないだろうと思っていた。

だが、

「・・・・・は、はん!其処まで自分を卑下するなんて、余程人の出来ていない両親に育てられたらしいね!」

金野にとっては苦し紛れの言葉だったのだろうが、両親の事を言われて、僅かにユウの表情が曇った所を私は見逃さなかった。

その表情を、なのはとフェイト、アリシアも見逃さなかったのか、私達は一瞬視線を合わせる。

それだけで、私達は通じ合った。

念話など必要ない。

私達は、アイコンタクトで各々の行動を取り決めた。

一番初めに行動を起こしたのはなのは。

――バチィ!

左手で見事な平手を金野に喰らわせる。

そのよろけた所へ、

――バンッ!

フェイトがスピードの乗った、右の平手・・・・・というかほぼ掌底に近いものを叩き込んだ。

また跳ね返った所に、

――バチン!

アリシアが、勢いのいい左の平手を喰らわせる。

最後に回りこんだ私が、

――ドゴッ!

右アッパー叩き込む。

金野は見事な放物線を描いて床に落ちた。

「アンタ!ユウの両親をバカにすると、私達が許さないわよ!!」

私はそう言い放つ。

例え知らないとはいえ、ユウの両親を侮辱する事は許せなかった。

「アンタね!さっきからユウの事をバカにしてるけど、アンタがユウの何を知ってるのよ!全てに恵まれて、何一つ不自由しなかったアンタに!」

私は思わず叫んでしまった。

「お、お前ら・・・・・・」

ユウがポカーンとして私達を見ている。

其処までやった時、私達は自分たちのやったことに気がついた。

拙い、これって下手をすれば停学ものじゃ・・・・・・・

私達は思わず顔を見合わせる。

そんな時、

「はいは~い」

アリサが手を叩きながら、みんなに呼びかける。

「皆、私達は何も見てないわ。そいつが其処に転がってるのも私達は何も知らない。OK?」

アリサの言葉に、皆が頷く。

私達がポカンとしていると、

「今のは如何見てもアイツが悪いわよ。桜もあんなに怒った事は意外だったけど、皆ちゃんと分かってくれる」

アリサはそう言ってくれた。

どうやら皆誤魔化してくれる模様。

一安心ね。

特にフェイトとアリシア。

転入初日で停学なんて、シャレにならないわ。

私はそう思いつつ、転がってるバカを気にもせずに、1時間目の授業に備えて自分の席に着くのだった。







あとがき

結構やりたい放題な第十四話完成。

う~ん・・・・・やっぱりオリジナルに入ると、レベルがガタ落ちするなぁ・・・・・・・

とりあえず、フェイトとアリシアの転入編。

如何だったでしょうか?

「何処のどいつ」と聞かれて「此処のコイツ」と言わせることを何となくやらせてみたかった。

それだけだと短すぎたので、四苦八苦しながら作ったのが、完璧モブの金野君。

哀れ4人のコンビネーションアタックに撃墜されました。

でも、出来はビミョー。

最後も無理矢理纏めた感じだし。

今回はこんなんで。



話は変わりますが、そろそろとらハ板に移った方が良いでしょうか?

勢いのまま始めた小説ですが、既にこの時点でリリフロのPV超えちゃってるんですよね。

まだ、リリフロの半分も行ってないのに・・・・・・・・

この分だと、ゼロ炎のPVも近いうちに超えそうです。

まあ、相変わらず自分では決められないので、皆様の意見を聞きたいと思います。

では、これにて。





[15302] 第十五話(前編)
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/04/04 09:48
第十五話 誘拐事件




5月の下旬に入ったある休日。

桃子さんに買い物を頼まれた俺は、フェレットモードのユーノと共に街に来ていた。

店を回り、頼まれたものを大体買い終えた俺は、メモを確認する。

「頼まれたものは、大体こんなもんかな?」

独り言でも問題ない口調で、俺は肩に乗っているユーノに話しかける。

(そうだね。これで全部だった筈だよ)

ユーノもそう言っているので、高町家に戻ろうとした時、

「あら、ユウじゃない」

そう声をかけられた。

俺が其方を向くと、

「アリサにすずかか・・・・・」

2人の名を呟く。

「珍しいな。2人が歩いてるなんて。稽古の帰りか何かか?」

俺がそう聞くと、

「まあね。それに、歩きって言っても、もう少し行った所に、鮫島が迎えに来てくれるはずだから」

アリサがそう言う。

「ユウ君は?」

すずかが尋ねてくる。

「俺は桃子さんに頼まれた買い物が終わった所。居候の身だからな、この位は手伝わないと」

俺はそう答えた。

「そっか」

すずかは微笑んで頷いた。

すると、2人は俺の肩に乗っているユーノに気付いた。

「あ、ユーノじゃない」

「ホントだ。そっちも珍しいね。ユーノ君は大概なのはちゃんか、桜ちゃんと一緒に居るのに」

2人がそう言う。

「そうか?家じゃあ結構一緒に居るけど・・・・・・まあ、一緒に外に出歩く事は珍しいか?」

俺は、自問自答するように呟く。

まあ、家じゃユーノは人間の姿に戻ってるし。

その時、黒いワゴン車がスピードを落としながら走ってきた。

そして、俺達の近くを通り過ぎようとした時、開いていたドアから手が伸びてきて、アリサとすずかを車内に引きずり込んだ。





【Side すずか】




私は一瞬何が起こったか分からなかった。

アリサちゃんと一緒にユウ君と話してたら、いきなり口を塞がれて後ろに引っ張られた。

「んん~~~ッ!?」

私はもがくが、強い力に押さえつけられて振りほどけない。

「アリサッ!すずかっ!」

その声に目を開けば、ユウ君が慌てて駆け寄ろうとしていた。

だが、ワゴン車らしき室内の奥の人物が、ユウ君に向かって手を伸ばす。

その伸ばされた手には、何かが握られていた。

私はそれに気付いた時、目を見開いた。

それは、ドラマや映画でも見たことがあるサイレンサー付きの拳銃。

「ん~~~~~~~っ!!」

私はユウ君に逃げてと言いたかったが、口が塞がれている為声を出す事ができない。

そして、

――バスッ!

無常にも発砲音が聞こえた。

思わず視線を向けると、倒れていくユウ君の姿。

「ん゛~~~~~~~~っ!!??」

思わず叫ぼうとする。

そして、車の中の人物達は、そんなユウ君を気にする素振りも見せず、ドアを閉める。

「うまくいったな」

「ガキの死体が1つ増えたが、まあ、些細な事だ」

その言葉を聞いたとき、思わず涙が溢れる。

「おやおや、泣いてるぜ」

「化け物にも涙は流せるんだな」

その言葉を聞いて絶句する。

この人たちは月村の秘密を知っている。

私が震えていると、

――ガンッ

車の天井に衝撃音が響いた。

「何だ?」

「さあ?多分、飛んできた石か枝が当たったんじゃないのか?」

「それもそうか」

男たちは、そう言いながら笑い声を上げ、ワゴン車は走っていった。





【Side Out】




【Side ユーノ】



なのはの友達のアリサとすずかが、突如走ってきたワゴン車の中に引きずり込まれそうになったとき、ユウが助けようとして何かに撃たれた。

あれって確かこの世界の質量兵器で拳銃って奴だったはず!

ワゴン車はそのまま走り去ろうとしている。

僕は、倒れたユウに慌てて駆け寄る。

「ユウ!大丈夫!?ユウ!」

僕は必死に呼びかけた。

この時の僕は周りが見えていなかったが、周りには運よく誰もおらず、フェレット状態の僕が喋っている事に気付く人はいなかった。

「そうだ!先ずは怪我の確認を・・・・・」

と、其処まで言った時、

――ガシィ!

と、いきなり首根っこを掴まれる。

見ると、ユウの右手が僕の首を掴んでいた。

すぐにユウが飛び起きる。

「ユウ!?怪我は!?」

僕は宙吊りにされながらもユウが心配だった。

ユウが握っていた左手を開く。

すると、

――カツンッ

と、握りつぶされた銃弾が地面に落ちる。

嘘っ!?

あの至近距離で銃弾受け止めたの!?

僕が驚愕していると、

「ユーノ!全身を強化しろ!!」

「へっ?」

いきなり言われたユウの言葉に、僕は声を漏らす。

「ピッチャー第一球・・・・・・」

だが、ユウは僕の首根っこを掴んだまま。

「振りかぶってぇ・・・・・・・・」

右足を軸にして、大きく左足を上げる。

そして、僕を掴んだ手は肩の後ろに回る。

「ちょ!?ユウ!まさかっ!?」

僕は、ユウがやろうとしている事に気付き、慌ててユウに声をかける。

しかし、ユウはそんな僕の声にも耳を傾けず、

「投げましたぁっ!!!」

僕を思いっきり投げ飛ばした。

「きゅううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!??(うそぉおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??)」

宙を舞う・・・・・というか、勢い良く飛ばされる僕。

慌てて僕は全身を強化する。

そして、落下すると思われる地点には、アリサとすずかを攫ったワゴン車。

――ガンッ

僕は、何とかそのワゴン車の天井に着地する。

(ユウ!いきなり何するのさ!!??)

僕は思わず念話でユウに文句を言う。

(悪い悪い。時間がなかったんだ。お前はそのままへばり付いて、2人の傍にいろ。俺もお前の魔力を辿ってすぐに行く!)

ユウのその言葉で、ユウの意図を察知した僕は、渋々納得する。

(そういう事なら仕方ないけど、せめてもう少し何をするか教えて欲しかったよ・・・・・・)

とりあえず愚痴っておいた。

(いや・・・・まあ・・・・・すまん)

ユウは謝って来る。

僕は、とりあえず振り落とされないように、必死に天井にへばり付くのだった。





【Side Out】





うむ、とりあえずは上手く行った。

思わずノリで投げちまったからな。

まあ、結果オーライ。

ピッチャーというか、どっちかと言えば、外野からのバックホームと言った方が正しいのかもしれないが・・・・・・

前世では高校まで野球をやっていたからな。

しかも外野手。

ベンチにも入れなかったが・・・・・

昔取った杵柄って奴か?

にしてもヤバかった。

後一秒身体強化が遅かったら死んでたな。

余りにもビックリしたから、躓いて転んだし。

それはともかく、俺はユーノの魔力を頼りにワゴン車を追いながら念話をする。

(リニスっ!聞こえるか!?)

俺がそう送ると、

(ユウ?如何したんですか、そんなに慌てて・・・・・)

リニスはそう応える。

(リニス!いま何処だ!?)

(今ですか?翠屋ですけど・・・・・)

(そうか!緊急事態だ!アリサとすずかが誘拐された!)

(ッ!?)

(ユーノを引っ付けといたから、魔力を追って追跡してる!お前は士郎さんでも恭也さんでも誰でもいい!大人達にこの事を!)

(分かりました!)

リニスはそうハッキリと返事をして念話を切った。

これでとりあえず大人たちには知れ渡る。

さぁて、人目も無くなってきたようだし、気合入れて追うとするか!

俺は脚力を強化し、ユーノの魔力を目印に、一気に加速した。





【Side アリサ】



いきなり車に連れ込まれた私達が連れてこられたのは、山奥にある廃ビルだった。

そこで私は、すずかとは別の部屋に監禁された。

同じ部屋の中には、私達を攫った実行犯らしき人物達を含め、6人の男たちがいて、私は手を後ろで縛られている。

私は怖くてたまらなかったが、口を開く。

「ちょっとアンタ達!どうせ身代金目的の誘拐でしょ!?だったら私1人いれば十分の筈よ!すずかは解放して!」

私の言葉に、男たちは一瞬顔を見合わせるが、突然笑い出す。

「くははははは!まあ、俺達は金目的だからお嬢ちゃん一人いれば事足りるわけだが、雇い主の目的は、もう1人のお嬢ちゃんの家だからな!」

私はその言葉を聞いて、疑問に思う。

「すずかの家が目的?如何いう事よ!」

私は思わず問いかけた。

私の問いに、男たちはニヤニヤと笑みを浮かべ、言った。

「お嬢ちゃんは知らないだろうから教えてやるよ。もう1人のお嬢ちゃん家の一族はな、人間じゃないんだよ」

「えっ・・・・・・?」

私はその言葉を聞いたとき、思わず声を漏らした。

「人の姿をしているが人じゃない。人の血を吸って生きる化け物。つまりは吸血鬼さ」

「嘘よっ!!」

私は叫んで否定した。

すずかが化け物なんて信じたくなかった。

「嘘じゃないさ。その一族は吸血鬼なだけあって、全体的に身体能力が高い。心当たりがないか?」

そう言われ、私は思わず考えてしまった。

確かに、すずかは体育の成績がずば抜けて良い。

「心当たりがあるようだな?」

私の態度で悟ったのか、そう言われて、私は動揺する。

「た、確かにすずかは体育の成績は一番よ!けど、唯それだけだわ!」

私は、必死に反論する。

「それは子供だからだな」

「そ、そんな・・・・・そんなこと・・・・・・・」

私は否定しようとするが、声が弱々しくなってしまう。

「もう少しすれば嫌でも分かる。あの月村の一族は、人間とは違うと」

「ち、違う・・・・すずかは・・・・・すずかは・・・・・・」

私の友達と言おうとしたが、言葉が出てこない。

「まあ、そんな事で悩む事はもう無い」

「えっ?」

突如言われた言葉に、疑問の声を漏らす。

「あのお嬢ちゃんとは、もう会う事も無いだろうからな」

「なっ!?如何いう・・・・・・!?」

私が其処まで問いかけようとした時、

「おおっと、他人の心配をしてる場合じゃないよ。先程から我慢できない奴が一人いるんでね」

私が、何の事かと疑問に思ったとき、同じ部屋の中にいる6人の男の中の1人が、他の男たちとは違ったギラついた目で私を見ている事に気付いた。

それに気付いた時、本能的に悪寒が走った。

「な・・・・・何・・・・・?」

私は、その男から少しでも離れるように身を捩って後ろに下がる。

「その男は真正のロリコンでね。ああ、幼女趣味の事だよ。つまり、君のような年頃の女の子が大好きでね、しかもそんな女の子の泣き叫ぶ姿を見ると、更に欲情するという正真正面の変態なんだよ」

先程の男がそう言うと、

「ぎひひ・・・・・兄貴ぃ~、俺、もう我慢できねえよ。犯っちまって良いだろ?」

その男は下品な物言いで私に近付いてくる。

「い・・・・・いや・・・・・・・・・・」

一歩一歩近付いてくるたびに、私は身を捩って逃げようとする。

「う~~~ん、そそるねぇ~・・・・・兄貴、良いだろ?」

「ふん、物好きめ・・・・・・まあいい、好きにしろ。ただし殺すなよ。身代金が取れないからな」

リーダー格と思われる男は、私にとって死刑宣告に等しい言葉を発した。

「へへっ・・・・流石兄貴、話がわかるぅ」

その男は私に近付いてくる。

「や・・・・・やだ・・・・・・来ないで・・・・・・」

私は恐怖心から、普段は絶対に吐かない弱々しい声を発する。

何をされるかは分からないが、碌でもないことは確かだ。

「泣き叫んでも構わないよ。どうせ誰も来ないから・・・・・寧ろ、泣き叫んだ方がそそるからね」

ニヤニヤしながら近付いてくる。

周りの男たちも、歪んだ笑みを浮かべるだけ。

「や、やだ・・・・・・誰か・・・・・助け・・・・・」

私は思わず助けを請う。

「ふふふっ・・・・・お姫様のピンチには王子様が助けに来るのが相場だけど、どうやら君には王子様は来ないようだね?」

そんなことは分かってる。

物語みたいに、そんな都合のいい話があるわけ無い。

でも、願わずにはいられない。

ヒロインのピンチを救ってくれる王子様ヒーローを。

けど、そんな願いも空しく、私にその男の手が伸びる。

「いやぁああああああっ!!」

私は思わず目を瞑って悲鳴を上げた。

その瞬間、

――ドゴォ!!

突然の破砕音。

「やめんか!この変態ロリコンがぁっ!!」

――バキャァ!

「ぷぎゃっ!?」

聞き覚えのある声と、打撃音。

そして、良く分からない声。

――バキッ!

「な、何だこのガキャ・・・・ぎゃっ!?」

――ガスッ!

「ぐぇっ!?」

――ドガッ!

「がふっ!?」

――ズガッ!

「うぎゃ!?」

――ドゴッ!

「ぐふっ!?」

連続で聞こえる打撃音と、それに続く悲鳴。

やがて静かになり、私は恐る恐る瞼を開く。

すると、外に隣接する壁には大きな穴が開いており、部屋の中には倒れ伏す6人の男達。

そして、

「助けに参りました。お姫様」

お姫様わたしの前に跪く、王子様ユウの姿があった。






【Side Out】







誘拐犯達のアジトは、海鳴市の山奥にある、5階建ての廃ビルだった。

俺は、その廃ビルから少し離れた所の木の影で、ビル内に潜入しているユーノと念話で連絡を取り合っていた。

(それで、アリサとすずかは別々の部屋に監禁されてる。アリサは一階の部屋。すずかは5階の部屋だよ)

(そうか、とりあえずこっちは後10分ぐらいで恭也さん達が到着する予定だ。恭也さん達が来たら、救出作戦の開始だな)

(わかった。それまで僕は、変化が無いか監視しておくよ)

(頼む)

ユーノとの念話を一旦区切ると、

(((ユウ(君)!!)))

「うおっ!?」

いきなり馬鹿でかい念話が届き、俺は驚く。

送り手はなのは、桜、フェイトだった。

(さ、3人とも・・・・・行き成り何だ?)

俺がそう返すと、

(((アリサ(ちゃん)とすずか(ちゃん)は、無事なの!!??)))

返って来た言葉に俺は驚く。

(何でお前らが知ってるんだよ!?)

俺は思わず聞き返す。

(私達、今、恭也兄さんたちと一緒に、そっちに向かってるのよ)

桜の言葉に、俺は更に驚く。

(何でだよ!)

(・・・・・あのねえ、なのはとフェイトが、アリサとすずかが誘拐されたって聞いて、ジッとしてられると思う?)

(・・・・・・・・無理だな。来るなと言っても、勝手について来そうだ)

俺は少し考えて、そう結論を出す。

(でしょ?だったら、勝手に動かれるより、一緒に行ったほうが安全だっていう事になったわけよ。アリシアだけは、無理を言って置いてきたけど)

(・・・・・・それもそうか)

確かに、知らないところで予想外に動かれるより、傍にいたほうが危険は少ない。

渋々納得すると、

(ユウ!!)

今度はユーノが慌てて念話を送ってきた。

(今度は何だ!?)

俺はそう返す。

(拙いよ!アリサに犯人たちが襲いかかろうとしてる!)

(何っ!?チッ!桜、なのは、フェイト!状況が変わった!先に突っ込む!!)

(ちょっ!?)

俺は一方的に念話を切断する。

俺はすぐに駆け出し、サーチャーを飛ばす。

アリサがいる部屋の中を確認すると、一人の男がニヤニヤと笑みを浮かべながら、アリサに近付いている。

俺は、ビルの敷地内に入ると、正面の入り口に向かわず、アリサがいる部屋のすぐ横の壁に向かう。

そして、拳を強化し、

「おらぁっ!!」

――ドゴォ!!

拳で壁を粉砕する。

俺は飛び込んですぐ、アリサに手を伸ばす男が目に入った。

「やめんか!この変態ロリコンがぁっ!!」

――バキャァ!

「ぷぎゃっ!?」

俺は勢いのまま、その男の顔面に飛び蹴りをかました。

男は変な声を上げて気絶する。

俺はすぐに周りを確認する。

突然の事に呆けた男が5人。

「な、何だこのガキャ・・・・」

――バキッ!

「ぎゃっ!?」

最初に気を取り直した男の顔面に拳を叩き込む。

――ガスッ!

「ぐぇっ!?」

続けて近くにいた男の腹に蹴りを入れ、

――ドガッ!

「がふっ!?」

そのまま後ろから襲い掛かろうとした男に後ろ回し蹴りを放つ。

――ズガッ!

「うぎゃ!?」

その状態から、正面にいた男の顎を蹴り上げ、

――ドゴッ!

「ぐふっ!?」

最後に呆けていた男にボディーブローを喰らわせて沈黙させた。

とりあえず、男達が完全に気絶している事だけ確認して、アリサに駆け寄った。

アリサは、余程怖かったのか、普段は見せない怯えた様子で、縮こまって目を瞑っていた。

しかし、辺りが静かになったのに気付いたのか、ゆっくりと目を開く。

俺は、アリサの恐怖心を少しでも和らげる為に、ある事を思いつく。

そして、俺はアリサの前に跪き、

「助けに参りました。お姫様」

ベッタベタな台詞を口にした。

「あ・・・・・・・・」

アリサは声を漏らす。

俺は、笑われる事を覚悟でこんな事をしている。

これでアリサの元気が出れば御の字だ。

しかし、何故かアリサは顔を赤くして固まっている。

「アリサ?」

俺は思わず声をかける。

「へっ?あ、ユ、ユウ!?」

アリサは、漸く気付いたのか、少しビックリしていた。

「ああ、そうだけど、大丈夫か?」

「え、ええ・・・・大丈夫よ・・・・・」

アリサがそう言うと、俺はアリサが縛られたままなのに気付く。

「アリサ、ちょっとジッとしてろ」

俺はそう言って、アリサを縛っていた紐を解く。

「あ、ありがとう・・・・・・って、アンタ!撃たれたんじゃなかったの!?」

アリサは礼を言ってきたが、連れ去られた時の事を思い出し、声を上げる。

「その話は後だ。ユーノ!」

俺がユーノの名を呼ぶと、物陰からフェレットモードのユーノが出てくる。

「ユ、ユーノ!?何で此処に!?」

驚くアリサを置いといて、俺はユーノに話しかける。

「ユーノ、アリサを頼めるか?」

(いいけど・・・・・魔法の事は・・・・・)

「そんなもん、今更だろ?」

(それもそうだね)

ユーノは半ば呆れつつ頷く。

「アンタ、何ユーノに話しかけてるのよ?」

不思議に思ったアリサが尋ねてきた。

すると、ユーノが光に包まれ、変身魔法を解除する。

「へっ?」

アリサが素っ頓狂な声を漏らす。

フェレットが人間になったのだから、驚くのも無理ないだろう。

俺から言わせれば今更だが。

「この姿では始めましてだね、アリサ。ユーノ・スクライアです」

ユーノは、アリサに向かって自己紹介する。

対するアリサは、ユーノを指差しながら口をパクパクさせて、

「ユ、ユーノが人間になったぁっ!!??」

盛大に驚いた。

その反応にユーノは苦笑し、俺は当然の反応だと感じる。

「それじゃあユーノ、アリサを頼んだ。あと10分ぐらいで恭也さん達も到着するから、それまで守ってやってくれ」

「わかったよ」

俺の言葉にユーノは頷く。

すると、

「ちょっとユウ!何平然としてるのよ!フェ、フェレットが人間になったのよ!?」

アリサが叫んでくる。

「いや、俺は元々知ってたし。っていうか、高町家の人間は、皆知ってるぞ」

俺はそう答える。

「じゃ、じゃあ、なのはや桜も?」

「当然」

俺は頷く。

アリサは驚きで固まる。

「じゃあ、俺はこのまますずかを助けに行くから。お前はユーノの傍に居ろよ」

俺は、そう言って踵を返して部屋の出口へ向かおうとした。

「・・・・・って、待ちなさい!」

だが、後ろから呼び止められる。

「なんだよ?」

俺は聞き返す。

「私も行くわよ!」

アリサは信じられない事を言った。

「無茶言うな、危険すぎる」

俺はそう言う。

「無茶でも何でも私は行くわ!すずかは私の友達なのよ!」

「けどよ・・・・・ッ!」

そこまで言った時、この部屋に近付く足音に気付く。

「おい、何があっ・・・・ぐふっ!?」

「げふっ!?」

部屋に入ってきた2人の男を、騒ぐ前に鳩尾に拳を入れて気絶させる。

時間をかけると、すずかに危険が降りかかるかもしれないと思った俺は、

「仕方ない!ユーノ、すまんがアリサのフォロー頼む!」

仕方なくアリサも連れて行くことにした。

「わかったよ」

ユーノは頷く。

「じゃあ、行くぞ!アリサはユーノの傍を離れるなよ!」

「わかったわ!」

俺達は部屋を出る。

「ユーノ、すずかは5階だな?」

「うん。僕が見たときは、すずかが捕まってた部屋に、4、5人いた筈だよ」

「わかった」

俺達は、ビルの階段を駆け上がっていく。

途中に見張りが居ると思ったが、意外にも誰も居らず、あっさりと5階に辿り着いた。

「なんか拍子抜けね」

アリサも思ったのか、そう呟く。

「けど、油断は禁物だ」

俺は釘を刺すように言った。

周りを警戒しつつ廊下を歩き、すずかが捕まっているという部屋の入り口に辿り着く。

そして、最大限に警戒しながら、ドアを開ける。

部屋の中は薄暗い。

慎重に部屋の中に入ると、

「おやおや、これは何とも可愛らしいナイト様が来たものだ」

その声に、アリサがバッと其方を向く。

俺は元々知っていたので、特に驚きもせずに其方を見た。

其処には、ソファーに座った男と、その後ろに控えている両腕に刃物を付けた4人。

そして、ソファーに座った男の傍らに、縛られて座り込んでいるすずかの姿。

「すずかっ!!」

アリサが叫んで駆け寄ろうとした。

だが、

「来ちゃダメ!!」

すずかの叫びに足が止まる。

「危なかったですねぇ~・・・・・その線を越えないほうがいいですよ」

その男は、何かムカつく口調でそう言う。

俺達と男の中心辺りに、線が引かれている。

「試しに其処の石でも投げてみなさい。私の言っている意味がわかりますよ」

俺は足元に転がっていた石を拾い、男に向かって投げた。

そして、その石が線を越えた瞬間、

――シャキキン

後ろに控えていた4人が人間離れした動きで飛び出し、石を粉々に切り裂いた。

「なっ!?」

アリサは驚愕する。

今の動きは普通の人間に出来る動きじゃない(俺は出来るが)。

恐らく、夜の一族の自動人形だろう。

ってことは、すずかを攫ったのは夜の一族絡みか。

「・・・・・今の動き、普通の人間じゃないな」

俺は確認の為に、そう問いかける。

「その通り。これらは人間ではない。我々夜の一族の遺産、自動人形だ」

その男はそう言った。

「え・・・・・夜の一族・・・・自動人形・・・・・?」

アリサが声を漏らす。

「何も知らんらしいな。ならば教えてやろう」

男がそう言うと、

「やめてっ!」

すずかが叫ぶ。

だが、男の言葉は止まらない。

「我々は普通の人間とは違う。人間の血を用いてあらゆる事を可能にする者・・・・・・それが夜の一族」

「人間の・・・・・血・・・・・・」

男の言葉にアリサは唖然としている。

「じゃあ・・・・・下の男たちが吸血鬼って言ってたのも・・・・・・・」

「ほう・・・・少しは聞いていたか。吸血鬼というのも、夜の一族の噂が変化して伝わった物だろうな」

アリサの呟きに、男は答える。

「そして、その夜の一族の中でも月村は名家!しかし、その月村の当主があんな小娘であってたまるものか!」

その言葉で、俺は大体理解した。

つまりは、コイツは自信過剰の単なるバカ。

すずかを攫った理由も、大方忍さんを月村の当主の座から引き摺り落とす為だろう。

「え~と・・・・・言いたい事は何となく分かったけど、忍さんに手を出したら、恭也さんが黙ってませんよ」

俺はそう言う。

近接戦闘に限ってだが、俺は恭也さんや士郎さんに勝てる気がしない。

神速で近付かれて、防御無視の一撃を喰らって終わるだろう。

「恭也・・・・・御神の剣士だな。ふん、その位の対抗策は考えている。それがこの自動人形たち、戦闘特化型だ」

男が後ろに控える4体の自動人形を指しながらそう言う。

そう言えば、とらハ3のノエルは、人間らしさを求めた芸術品って言ってたっけ。

それでも戦闘能力も中々のモノだったけど。

つまり、目の前に居る自動人形たちは、完全に戦闘を目的として作られたものという事だ。

少なくとも、普通の自動人形たちよりかは強いのだろう。

とは言っても、普通の自動人形が、どの位強いのかも俺は知らないが。

まあ、夜の一族の人間でも敵わないって言うぐらいだからそれなりには強いのだろう。

「そして、この戦闘特化型の自動人形は、あと5体いる。お前たちは無視させてもらったが、御神の剣士には全てをぶつける。いくら御神の剣士と、エーディリヒ型2体とはいえ、戦闘特化型9体ならば確実に葬れる」

今の物言いからすると、この世界のノエルさんとファリンさんも自動人形らしい。

つーか、何でこの男は一族の秘密をベラベラと喋ってるんだか。

やっぱりバカか?

アリサは、今の話が信じられないのか、呆然としている。

「う・・・・嘘よねすずか!この男が言った事なんて、全部嘘よね!?」

アリサはすずかに叫んで問いかける。

「・・・・・・・・・・・」

すずかは、苦しそうな表情で目を瞑っていたが、

「・・・・・・・・・・本当だよ・・・・・・」

静かに、そう呟いた。

「・・・・・・・月村の一族は・・・・・・人間じゃないんだよ」

そう呟いて瞼を開いたすずかの瞳は、血のように赤く染まっていた。

「すずか・・・・・その目っ!?」

アリサが驚いたように叫んだ。

「この赤い瞳が、夜の一族の証。人の血を吸う吸血鬼、化け物なんだよ!」

すずかは、自虐的に叫ぶ。

「ゴメンねアリサちゃん・・・・・・私・・・・・ずっとアリサちゃん達の事騙してた。私は人とは違うのに・・・・・・化け物なのに、騙して皆と友達になろうとしてた・・・・・・だからね・・・・・・」

顔をあげたすずかの赤い瞳からは、涙が溢れていた。

「私の事はいいから・・・・・・逃げて・・・・・・・」

すずかはそう言った。

その瞬間、

「そんなこと出来る訳ないじゃない!!!」

アリサが叫んだ。

「夜の一族!?吸血鬼!?化け物!?確かに聞いた時は驚いたわよ!信じられなかったわよ!」

アリサは感情をぶちまける様に叫び続ける。

「けど!それが如何したって言うのよ!?」

「っ!?」

アリサの言葉に、すずかは驚いた表情になる。

「すずか!ハッキリ言うわ!アンタが吸血鬼だろうと化け物だろうと、アンタは私の友達よ!!」

アリサがキッパリと言い切った。

「アリサちゃん・・・・・・・」

すずかは呆然とアリサの名を呟く。

「アリサの言うとおりだな。そんな事、俺がすずかを見捨てる理由にはならない」

俺はそう言って歩き出す。

「それにな、お前は化け物なんかじゃない。れっきとした人間だ」

「っ!?」

俺の言葉にすずかは驚く。

「血を吸って並みの人間以上のことが出来るのも、俺から言わせれば一種の特異体質に過ぎない」

すずかは、そんな考えをしたことがなかったのか、驚愕の表情で俺を見ている。

俺は、そこまで言うと、線の前で立ち止まる。

「そういえば、1つ確認しとくぞ。その自動人形、命令を聞くだけで自我は無いんだな?」

俺は、男に問いかける。

「その通りだ。エーディリヒ型は心などという無駄な機能が付いているが、こいつらにはそんな物は無い。故に、相手が女子供だろうと情けをかける事は無い。命令のままに戦うだけだ」

俺はその言葉を聞くと、

「そうか・・・・・・・安心した」

俺はそう言って、躊躇せずに線を踏み越えた。

すると、それが合図となり1体が猛スピードで突っ込んでくる。

「駄目っ!ユウ君逃げてっ!!・・・・・・人間じゃ自動人形に敵わな・・・・・・・」

すずかが叫ぼうとする。

確かに並みの人間では、反応できずに腕の刃物で首を切り飛ばされていることだろう。

だが、

――ドゴォ!!

俺は、無造作に突っ込んできた人形を殴り飛ばす。

その人形は、骨格が砕け、突っ込んできた以上のスピードで壁に激突。

そのまま壁をぶち破って外へ吹き飛んだ。

「なっ!?」

その男は驚愕の声を漏らした。

「遠慮なくぶち壊せる!」

俺は拳を突き出してそう言い放った。

それと同時に残りの3体の人形が動き出す。

俺はすずかに向って言った。

「すずか・・・・・良く見とけよ。お前が自分の事を化け物と言ってたことが、どれだけちっぽけな事か!」

すずかは、呆然とした表情で頷いた。

俺は自動人形が攻撃してきたので跳躍して避ける。

そして、そのまま右足に魔力を宿らせ、

「円月蹴り!!」

空中で回し蹴りを放つと、青い魔力斬撃が放たれる。

それは、人形の1体を切り裂いた。

だが、空中にいる時を狙って、残りの2体が俺に襲い掛かる。

左右から振るわれる刃。

狙いは首筋。

「ユウ!」

「ユウ君!」

アリサとすずかの悲鳴のような叫び。

だが、

――バシィ

右から振るわれた刃を左手で、左から振るわれた刃を右手で摘むように受け止める。

「甘い!」

――バキンッ

そのまま受け止めた刃をへし折った。

そして、へし折った刃を捨て、両手で2体を真下に殴り落とす。

床に激突する2体。

俺は落下する途中、両手の指に、爪のような赤い魔力刃を発生させる。

そして両手を振りかぶり、

「カイザー!ネイルッ!!」

両手をクロスさせるように腕を振り、自動人形を2体纏めて切り裂いた。

――ズドドドドドォ!

その際に放たれた魔力斬撃が、最下層までの床に大きなX型の穴を開けており、アリサ、すずか、序に男は呆然となっていた。

俺は呆然となっていた男に歩いて近付き、

「おらっ!」

腹に蹴りを入れて吹き飛ばした。

吹き飛ばされた男は、ガラクタの山に突っ込む。

俺はそれを確認すると、すずかに近付き、

「大丈夫だったか?」

そう声を掛けつつ、縄を解く。

「うん・・・・」

すずかは、まだ驚いているのか、呆然としている。

すると、

「すずかっ!」

アリサが駆け寄ってきて、すずかに抱きついた。

「良かった・・・・・怪我は無い?」

「うん、大丈夫だよ、アリサちゃん」

2人は見つめ合う。

どうやら、言いたいことがあるのに出てこないようだ。

それでも、互いに何を言いたいかは察しているようで、

「「クスッ」」

2人一緒に微笑んだ。

と、その時、

――ドゴォオオオオオオオン!!

と、爆発音のようなものと地響きが発生する。

「な、何!?」

アリサとすずかは抱き合いながら辺りを見回す。

だが、俺は先程人形を吹き飛ばした穴から、桜色、金色、白銀の光が見えていた。

そして、感じる魔力もあいつらのものだ。

「なのは達だな。ド派手にやりやがって・・・・・」

俺が呟く。

「ちょっと、今の爆発音と地響きがなのは達の仕業って如何いう事よ!?」

アリサがそう言ってくる。

「俺も含めて、なのは達には秘密があるんだよ。まあ、俺は後で説明する心算だったけどな」

「それならいいわ。ちゃんと後で説明しなさいよ」

「ああ」

アリサの言葉に、俺は頷いた。

その時、

――ガラッ

先程男を吹き飛ばしたガラクタの山の方から音が聞こえる。

俺が振り向くと、ガラクタの山の中から、銃を向ける男の姿。

俺がそれに気付いた瞬間、

――ドォオン!

銃声が鳴り響いた。








要望があったので、2話に分けました。



[15302] 第十五話(後編)
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/04/04 09:49
第十五話(後編)







【Side 桜】



ユウが先に突っ込むと連絡が入ってから約5分後。

飛ばしてくれたノエルさんのお陰で、私達は現場のビルに到着した。

此処にいるメンバーは、恭也兄さん、忍さん、ノエルさん、ファリンさん、私、なのは、フェイトである。

私達がビルの敷地内に入ると、玄関の前に、左腕に刃を付けて、右手に鞭を持った5人の人影。

「「「「「・・・・・・殲滅目標確認・・・・・・・御神の剣士・・・・・・及びエーディリヒ型2体・・・・・・・・」」」」」

その人たちは、まるで生気が感じられない。

「な、何?この人たち・・・・・」

なのはもそれを感じ取ったのか、そう呟く。

「自動人形・・・・・・・」

忍さんが呟く。

自動人形って・・・・・確かアニメのなのはの原作のとらいあんぐるハート3に出てきたっていうやつ?

私はとらハ3は知らないのよね。

二次小説でなら何回か見かけてるけど。

「なのはちゃん達は下がって。ノエル!ファリン!ブレード!!」

「はい」

「はいです!」

忍さんの言葉にノエルさんとファリンさんが返事をする。

すると、2人が両腕に刃物を取り付けて現れた。

「恭也・・・・・・」

「ああ」

忍さんは恭也兄さんに心配そうな声を掛ける。

恭也兄さんは2本の小太刀を抜いた。

その瞬間、

「「「「「排除する!」」」」」

相手の5人は一斉に動き出した。

相手は、恭也兄さんに3体、ノエルさんとファリンさんに1体ずつ襲い掛かる。

「くっ!」

恭也兄さんは2体の攻撃をそれぞれの小太刀で受け止めるが、

「チィ!」

もう1体の攻撃は止める事が出来ずに飛び退く。

恭也兄さんは、着地した瞬間に駆け出し、刀を一閃するが、

「何っ!?」

相手の動きは思った以上に速く、避けられる。

その隙に、後ろから斬りかかられるが、

「く!」

直ぐに反対の小太刀で受け止める。

「はああっ!」

そのまま力を加えて弾き飛ばした。

「強い・・・・・」

恭也兄さんは、小太刀を構え直してそう呟く。

「・・・・・・戦闘特化型・・・・・!」

忍さんが気付いたように口にした。

「恭也!ノエル!ファリン!気をつけて!その自動人形たちは戦闘だけに特化されたタイプ!戦闘能力だけなら、きっとイレインよりも上だよ!」

忍さんが恭也兄さん達にそう言う。

「なるほど・・・・・手を抜いていたら負けるか・・・・・・・ならば!」

その瞬間、恭也兄さんの姿が掻き消える。

これは恭也兄さんの神速!

次の瞬間、相手の1体が切り裂かれる。

切り裂かれた自動人形は崩れ落ち、切断面から機械の内部が見える。

「ロ、ロボット!?」

なのはが驚いた声を上げる。

他の1体と戦っていたノエルさんが相手に左腕を向け、

「照準固定・・・・・・距離17・・・・・・・風向き参考・・・・・・・・・・・ファイエル!!」

――ドン!!

とノエルさんの左手の拳が飛んだ。

これが噂のロケットパンチ?

その拳は、見事に敵の1人に命中、吹き飛ばす。

「ファリン!」

「了解です!お姉さま!」

ノエルさんがファリンさんに声を掛ける。

吹き飛んだ方向には、ファリンさんが居て、

――シャキン

ファリンさんが吹き飛んできた自動人形を切り裂いた。

これで残りは3体。

しかし、その3体の様子がおかしい。

「「「脅威度上昇・・・・・・戦闘レベル・・・・・最大」」」

3体がそう言うと、右手の鞭に電撃が走り始める。

「っ!?」

恭也兄さんが声を漏らす。

そして、鞭が振るわれ、恭也兄さんの左手の小太刀に鞭が巻きついた。

更に、

――バチィ!

「ぐあっ!」

小太刀に電流が流れ、恭也兄さんは小太刀を取り落とす。

そして、飛び掛ってくる2体の人形。

「くうっ!」

恭也兄さんは飛び退く。

「恭也!」

忍さんは心配そうな声を上げた。

ノエルさんとファリンさんも、一旦、恭也兄さんの傍へ来る。

「恭也様、大丈夫ですか?」

「ぐっ・・・・・」

恭也兄さんは、左手を動かそうとしているが、電撃により一時的に麻痺しているらしく、上手く動かす事が出来ない。

そして、再び3体の自動人形が動き出そうとした時、

――ドゴォ!!

ビルの最上階の壁をぶち破って、人型の何かが飛んでくる。

3体の自動人形は急遽動きを変え、回避した。

――ドォン!

その何かが地面に落ちる。

それは、今戦っている自動人形と同型の自動人形だった。

私は、飛んできたビルを見上げる。

そこからは、ユウの魔力が感じられる。

そして、ビル内から破砕音が聞こえる。

アイツ、結構暴れてるわね。

「ねえ、桜・・・・・今のって・・・・・」

フェイトが確認するように問いかけてくる。

「ええ、間違いなくユウね。好き勝手やってるわ」

私は呆れたように呟く。

ユウはアリサ達に魔法を隠す心算なんて、これっぽっちも無いらしい。

私は、なのはとフェイトに目配せする。

2人は、何も言わずに頷いた。

その時、自動人形の3体が再び襲い掛かってくる。

恭也兄さんは、電撃のダメージで、まだ上手く動けない。

ノエルさんとファリンさんが恭也兄さんの前で刃を構える。

だが、3体の自動人形は、電撃の鞭を振るった。

3本の鞭が迫る。

その瞬間、私は前に出た。

そして、右手を突き出し、ラウンドシールドを張る。

鞭は、ラウンドシールドに弾かれる。

「そんな攻撃、ユウやリニスの攻撃に比べたら、全然大した事無いわよ!」

私はそう言った。

「さ、桜?」

恭也兄さんは驚いた顔で私を見ている。

そういえば、恭也兄さんの前で、まともに魔法使った事って無かったけ。

「恭也兄さん、此処は私達に任せて」

「い、いや・・・・しかし・・・・・」

恭也兄さんは難色を示す。

そりゃ小学生の妹が戦うなんていったら止めるのが当然ね。

「大丈夫よ。なのは!フェイト!行くわよ!」

兄さんをスルーして、私は2人に声を掛ける。

「「うん!」」

2人は頷く。

「レイジングソウル!」

「レイジングハート!」

「バルディッシュ!」

「「「セッート・・・・アップ!」」」

『『『Stand by, Ready. Set up.』』』


私達はデバイスを起動させ、バリアジャケットを纏う。

「へっ?」

「ふええっ!?」

「・・・・・!?」

元から知っている恭也兄さんは別だが、忍さんやファリンさんは大層驚いている。

ノエルさんも口には出てないが、驚いた表情をしている。

「それじゃあ、さくっと終わらせるわよ!」

私の言葉が合図になり、動き出そうとした3体の自動人形を、

「「「バインド!」」」

私達はバインドで縛り上げる。

魔法に対する対処法なんてあるわけ無いから、あっさりと捕まった。

私達は砲撃を準備する。

『『Shooting mode』』

レイジングソウルとレイジングハートがシューティングモードに変形し、

「貫け轟雷!」

フェイトは雷の魔力を溜める。

そして、一斉に放つ。

「「ディバイィィィィィィィン・・・・・・・バスターーーーーーーーーーーーッ!!」」

『Thunder Smasher』

白銀、桜色、金色の魔力砲撃が放たれる。

――ドゴォオオオオオオオン!!

ド派手な音と光を放ち、跡形も無くなる自動人形。

呆然となる恭也兄さん、忍さん、ノエルさん、ファリンさん。

流石に今のは驚いたでしょうね。

私がそんな事を考えていると、

――ドォオン!

銃声が鳴り響いた。






【Side Out】





倒れていくすずか。

「すずかっ!」

叫んで支えようとするアリサ。

その時、俺は後悔していた。

夜の一族は、常人と比べて、身体能力が高い。

常人なら確実に気絶する一撃でも、夜の一族なら耐え切れるかもしれない。

俺はそれを失念していた。

銃が撃たれる瞬間、俺よりも僅かに早く気付いたすずかが、アリサを突き飛ばし、銃弾を受けたのだ。

「てめぇ!!」

俺は強めの魔力弾を男に放ち、今度こそ気絶させる。

そして、直ぐにすずかに駆け寄る。

「すずか!すずかしっかりして!」

アリサが涙を流しながらすずかに呼びかける。

「血、血が・・・・・血が止まらない・・・・・!」

アリサは少し混乱している。

「ユーノ!」

「わかってる!」

俺とユーノは急いで治癒魔法を使う。

表面の傷は、みるみる塞がっていくが・・・・・

「くそっ!駄目だ!」

俺は思わず叫んでしまった。

「内臓が傷ついている!表面の傷は直せても、このままじゃ・・・・・!」

俺は、医学関係の本を読んでいたので、すずかの今の危険さが良く分かった。

「そんな!すずかは・・・・すずかはどうなるのよ!」

アリサが涙を流しながら叫ぶ。

治癒魔法じゃ内臓まで直せない。

かと言って、病院に連れて行く余裕もない。

俺は考える。

「うっ・・・・・」

すずかが意識を取り戻し、声を漏らす。

「すずかっ!」

アリサが呼びかける。

「ア、アリサちゃん・・・・・・?」

「すずか!しっかり!」

「アリサちゃん・・・・・怪我は無い?」

あろう事かすずかは、非常に危険な自分より、アリサを心配した。

「ッ・・・ええ!すずかのお陰で私は大丈夫よ!」

「そう・・・・・よかった」

アリサの答えを聞いて、すずかは力なく微笑む。

しかし、すずかの顔色は悪い。

どんどん血の気が引いていく。

「すずかぁ!」

アリサが泣きそうな声で叫ぶ。

「アリサちゃん・・・・・」

「何!すずか!?」

すずかの呟きに過敏に反応するアリサ。

「・・・・・・私達・・・・・・友達だよね・・・・・?」

その言葉に、アリサは涙を流す。

「ええっ!すずかは私の友達・・・・・・親友よ!!私だけじゃない!なのはも!桜も!フェイトも!アリシアも!皆あなたの友達よ!」

アリサはすずかの手を握りながら叫ぶ。

アリサの言葉に、すずかはニッコリと微笑む。

しかし、顔色からして、すずかも限界が近い。

ふとその時、とらハ3の忍さんが、恭也さんの血で切断した腕を結合させた事を思い出した。

「すずか!!1つ聞く!血を飲めば助からないか!?」

俺は叫ぶように問いかけた。

「ッ・・・・・・・・!」

僅かだが反応を見せる。

「沈黙は肯定と受け取るぞ!もう一度聞く!血を飲めば助かるんだな!?」

先程よりも核心を持った言葉で問いかける。

「・・・・・・・・・・」

すずかは答えない。

だが、否定はしていない。

俺は肯定と受け取った。

俺は、右腕の袖を捲くると、左腕ですずかを抱き起こす。

そして、袖を捲くった右腕をすずかの口の前に差し出した。

「俺の血を飲め!」

俺はそう言った。

「そ・・・・れは・・・・・・・」

しかし、すずかは躊躇している。

恐らく、人前で血を飲む事に抵抗があるのだろう。

友達の前なら尚更だ。

だが、このままではすずかは助からない。

「頼む!飲んでくれ!俺はお前に、生きてて欲しいんだ!」

俺はそう頼む。

「ユウ・・・・・君・・・・・・・・」

すずかは呟く。

「もう、身近な人が居なくなるのは・・・・・・・・俺の日常が崩れるのは・・・・・・・嫌なんだよ!」

これは、俺の本心。

俺は、両親の死を思い出し、涙声になってしまう。

「・・・・・・ユウ君・・・・・・・・」

すずかは俺の名を呟くと、ゆっくりと口を開き・・・・・・・

「ッ・・・・・・・」

差し出した俺の腕に噛み付いた。

噛まれた時の痛みに少し声を漏らしそうになったが、声を漏らすとすずかを不安にさせてしまうと思い、何とか声を飲み込んだ。

すずかは、コクコクと俺の血を飲んでいる。

それに伴い、噛まれた所から、徐々に力が抜けていく。

俺は少し辛くなってきたが、逆にすずかの顔色は見る見るうちに良くなってきたので、俺はもう少しの辛抱だと思い、耐える。

そして数分後、すっかり顔色の良くなったすずかが俺の血を飲む事を止め、傷を舐め始める。

すると、噛まれた時に出来た傷の痛みが徐々に引いていき、傷跡すら残らずに治ってしまった。

すずかは俺の腕から口を離すと、

「ありがとう・・・・・ユウ君。もう大丈夫。もう少しすれば、内部の傷も治るから・・・・・」

すずかは、若干顔を赤くしながら、俺に向ってそう呟いた。

「そうか・・・・・よかった」

俺は微笑んで言った。

俺はゆっくりとすずかを床に寝かせる。

「すずかっ!」

アリサがすずかに声を掛ける。

「アリサちゃん・・・・・泣かないで。私はもう大丈夫だから」

すずかは横になったままだが、さっきよりもハッキリとした物言いでアリサに言った。

「すずか・・・・本当によかった」

アリサは涙を流しながら笑顔でそう言った。

「あの・・・・アリサちゃん・・・・・・今の見て・・・・・怖くなかったの?」

すずかが、若干不安げに問いかける。

「バカチン!何で怖がらなきゃいけないのよ!ユウはすずかが危なかったから、自分の意思で血をあげた!すずかは危なかったから差し出された血を受け取った!いわゆる輸血みたいなものじゃない!何でそんな事を怖がらなきゃいけないのよ!」

アリサは、すずかの不安を吹き飛ばすように、元気よく言った。

「うん・・・・・・そうだね・・・・・何言ってるんだろ、私」

アリサの言葉にすずかも微笑む。

俺はお邪魔かと思い、2人から離れようと立ち上がろうとした。

だが、

「うっ・・・・・・」

目眩がして、再び座り込む。

「ちょっと?ユウ、大丈夫?」

俺の様子に気が付いたアリサが尋ねて来る。

「あ、ああ・・・・・ちょっと立ち眩みがしただけだ」

俺はそう言って、顔に手を当てる。

「ユウ君、無理しない方がいいよ。私、結構血を貰っちゃったから、貧血を起こしてるんだと思う」

すずかが、心配そうにそう言ってきた。

「そうか・・・・・まあ、それは仕方ないな。すずかが死ぬよりかはずっと良い」

俺は、軽く微笑みながらそう呟いた。

「えっ!?そのっ!?ユウ君!?」

何故かすずかは顔を赤くしてアタフタしている。

「ん?どうかしたのか?」

血の気が足りなくてボ~っとしていた俺は、すずかの慌てていた理由に気付かなかった。

と、その時、廊下を走る足音が聞こえる。

すると、すぐに部屋に駆け込んできた。

「大丈夫か!?」

最初に入ってきたのは恭也さんだった。

続いて、忍さん、ノエルさん、ファリンさん。

そして、なのは、桜、フェイト。

「すずか!」

「すずかお嬢様!」

「すずかちゃん!」

忍さん、ノエルさん、ファリンさんは、すぐに横になったままのすずかに駆け寄り、

「アリサちゃん!すずかちゃん!大丈夫だった!?」

「アリサ!すずか!怪我は無い!?」

「アリサっ!すずかっ!無事!?」

なのは、桜、フェイトは攫われた2人の心配をした。

俺の心配をしないのは信頼の証だろうが、今は少しだけ心配して欲しい。

今は貧血で結構キツイのだ。

すると、恭也さんが近付いてきて、

「ユウ、怪我は無いか?」

と聞いてきた。

俺は内心お礼を言いつつ、

「はい、怪我はありません。ああ、それから犯人は其処のガラクタに埋まってる奴と・・・・・・」

俺はガラクタの山を指差しながら言い、

「あと、1階に8人ほど転がってます」

「そうか。それと何があった?」

「え?」

恭也さんの言葉に、俺は声を漏らす。

「君の顔には何時もより血の気が無い。恐らくだが、すずかちゃんに血を与えた・・・・・違うか?」

恭也さんには敵いません。

「はい、その通りです。すずかが致命傷を負ったので、すずかを助ける為に・・・・・・」

俺は白状した。

「そうか・・・・」

恭也さんは軽く微笑む。

「とりあえず、話は後で聞こう。今は休むんだ」

「はい、お言葉に甘えさせてもらいます」

俺はそう言うと、貧血の為か、あっさりと意識を手放した。







「うっ・・・・・・」

俺は眩しさで、目を覚ました。

俺は身体を起こすと、周りを確認する。

見慣れない部屋のベッドの上だったが、俺が寝ていたベッドの周りには、なのは、フェイト、アリシア、アリサ、すずかが眠っており、少し離れた椅子ではユーノと桜、リニスが寝息を立てていた。

更に部屋を見渡すと、時計が目に入る。

丁度日付入りの時計だったので確認すると、今は翌日の朝だった。

すると、部屋の扉が開き、ノエルさんが入ってきた。

「あ・・・・・ノエルさん・・・・・・」

「お気づきになられたのですね利村様。昨晩、増血剤を投与いたしましたが、ご気分は如何ですか?」

そう言われて、普通に起き上がっても問題ないことに気付く。

「あ、はい。悪くありません」

俺はそう答える。

すると、ノエルさんは姿勢を正し、

「利村様、昨日は、すずかお嬢様を救って頂き、真にありがとうございます」

礼儀正しく礼をした。

「いや、其処までしてくれなくても良いですよ。俺がそうしたかったからそうしたんです」

俺はそう言うが、

「いえ、これは私自身が言いたい事なのです。重ねて御礼申し上げます」

「はあ・・・・・・」

俺は、なんだか背中がむず痒くなった。

すると、そのやり取りの声で、なのは達が目を覚ます。

「う~ん・・・・・」

「ふわぁ~・・・・」

暫く寝ぼけたような顔であったが、俺と目が合うと、

「ユウ君!」

「ユウ!」

なのは、フェイト、アリシアに次々と抱きつかれる。

「おわぁ!?」

因みに、なのは達が落ち着くまで暫くの時間が掛かった。






ここは、月村の家で、昨日、俺が気を失った後、この家に運んだそうだ。

今、俺達は居間に集められている。

そして、忍さんの口から、夜の一族について語られていた。

因みに、魔法の事は、昨晩なのはや桜、フェイト、リニスから説明したそうだ。

まあ、手間が省けて助かった。

忍さん曰く、夜の一族は人の血を力の源に、いろんな事が出来る。

西ヨーロッパで発祥して、古くから細々と続いている一族。

普通の人より、筋力や敏捷性が優れている事。

ノエルさんとファリンさんは、その夜の一族が作り出した、自動人形で、2人はその中でも人間性を求めたエーディリヒ型であること。

自動人形である証に、ロケットパンチも見せてもらった。

忍さんは、一旦説明を切る。

なのはやフェイト、アリシアは驚いた表情をしている。

アリサは、昨日の男からある程度聞いていたので、それほど驚きは無い模様。

とりあえず、此処まで聞いて俺の言いたい事は・・・・・・

「ロケットパンチ付けるなら、回転加えたほうが威力上がりますよ」

だった。

前世はそれなりにロボット好きだったのだ。

普通のロケットパンチなんて古すぎる。

「後は、回転させる代わりに、ロケットパンチの手に、ドリルとか付けても良いんじゃないですかね?」

因みに元ネタは、前者は某勇者王。

後者は、某ゲームオリジナルスーパーロボット3号機だ。

一同は、しばし唖然としていたが、

「ぷっ、あははははは!」

忍さんが笑い出し、

「いいわね!そのアイデア頂きかも!」

そんな事を言った。

俺にしてみれば、場を和ませる為の冗談だったのだが・・・・・・

忍さんは、冗談なのか?本気なのか?

「くすくす・・・・・でね、さっきの話の続きなんだけど・・・・・」

忍さんは笑いながら話を続けた。

「聞くまでも無いと思うんだけど、一族の間の約束で、『誓い』を立てるかどうか、選んで欲しいの」

忍さんはそう言う。

「『誓い』・・・・・ですか?」

なのはが首を傾げながら問いかける。

「今まで知った一族の秘密を『忘れて』過ごすか・・・・・・知ったまま、一族と共に秘密を共有して生きていくか」

忍さんのその言葉に、

「「「「「忘れたくありません!」」」」」

一同が一斉に答える。

「まあ、俺も、怖がる事でもないし、バラそうとも思わないし」

俺も遅れてそう言う。

「皆・・・・・・」

すずかが呟く。

「すずかちゃん!私達、ずっと友達だよ!」

なのはが、

「私は昨日言ったけど、すずかが親友なのには変わり無いわよ」

アリサが、

「ちょっとぐらい普通じゃないからって何よ?魔法使いの私達の方が、もっと常識はずれだと思うけど?」

桜が、

「人と少し違っても、すずかはすずかだよ」

フェイトが、

「私だって、すずかと一緒にいたいよ」

アリシアが、それぞれの言葉を口にする。

「皆・・・・・ありがとう・・・・・・」

すずかが涙ぐむ。

「うん!皆はすずかの友達で良いとして・・・・・・」

忍さんは俺の方を見る。

「ユウ君は男の子で、すずかとも同い年だから、すずかの婚約者で・・・・・」

何言ってるんですか忍さん!?

つーか、アナタも桃子さんやプレシアさんの同類ですか!?

俺は思わず声を上げようとしたが、

「「「「それは駄目!!!」」」」

なのは、フェイト、アリシア、アリサの叫びに止められた。

っていうか、なのはとフェイトとアリシアはともかく、何でアリサまで?

なのは、フェイト、アリシアも不思議に思ったのか、アリサの方を向く。

3人の視線で我に返ったのか、アリサは自分の行動に気付き、顔を赤くする。

「も、もしかして・・・・・アリサちゃん?」

「アリサも・・・・・ユウの事・・・・・・」

「好きになっちゃったの?」

なのは、フェイト、アリシアの言葉に、アリサは顔を赤くする。

おい、マジか?

俺が驚愕していると、

「あ・・・・あの・・・・・・」

すずかがオズオズと言い出す。

「わ、私は良いよ・・・・・・こ、婚約者でも・・・・・・・」

すずかは、顔を真っ赤にしながらそう言った。

「す、すずかちゃんも!?」

なのはが驚愕の声を上げる。

「まあ、なのは達がユウを好きになるのも納得だったわ・・・・・」

「ユ、ユウ君優しいし・・・・・・それに血も貰っちゃったし・・・・・・・」

アリサもすずかも、俺への好意を認める発言をする。

マジかい!?

「・・・・・・・ユウ、アンタ、一体何人の女を引っ掛ければ気が済むの?」

桜が冷ややかな視線と、棘のある言葉で俺を突いて来た。

「お、俺の所為なのか!?」

俺は思わず叫ぶ。

『いやはや、流石マスターです!』

『私達が手を貸さずとも、着実にハーレムを築きつつあります』

『『これでプレシア女史の力を借りれば、見事ハーレムエンド!』』

「お前らは黙ってろ!!!」

俺は思わずふざけた事をのたまうデバイス共をゴミ箱に叩き込んだ。

「ユウよ・・・・」

恭也さんの言葉が響く。

「お前の人柄を今更如何こういう事はしないが、なのはや桜との仲はこの俺を倒さねば認めんぞ!」

何処からとも無く二刀小太刀を抜き、俺に殺気を向ける恭也さんシスコン

話をややこしくしないでください!

「ユウ・・・・最早今更ですよ」

リニスが何か悟りきった表情してるし!

ユーノは苦笑してるだけだし!

とりあえず、味方が居ない事を悟った俺は、

「三十六計逃げるにしかず」

俺はそう呟いて逃走を開始した。

「待てっ!ユウ!」

恭也さんシスコンは追いかけてくる。

俺は身体強化を掛ける。

今の俺は、デバイスを持ってないので勝手に全力強化になるのだ。

しかし、それに付いて来る恭也さんって一体・・・・・?

恐るべきシスコンパワー。

因みに、この追いかけっこは、恭也さんの体力が尽きるまで続いたのだった。








あとがき

やりたい放題な第十五話完成です。

前回短かった分、今回長くしました。

とらハ設定も結構入れました。

まあ、オリジナルや若干強引な所もあるかもしれませんが・・・・・・

とらハ3をやった事ある人しか分からないと思いますが、この世界では、ノエルとファリンの2人がかりだった為に、イレインとの戦いでも、原作のような大きな損傷が無かったと思ってください。

にしても、後半はユーノが空気になったな・・・・・・

あと、途中でグダグダになってしまった所もいくつか。

しかし、それを差し引いても、前回よりは遥かにマシであり、リリフロの方でやった誘拐ネタよりかは、上手い事書けたと思います。

あと、とらハ板には次回ぐらいから移動しようかなと思っております。

では、次も頑張ります。





[15302] 第十六話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/04/04 09:51

第十六話 計画




5月も終わりに近付いたある日。

学校の昼休み。

屋上にて、

「・・・・・・・何でこうなってるんだ?」

俺は思わず呟く。

「ユウ君?如何したの?」

なのはが尋ねてくる。

如何したもこうしたも無い。

「ユウ?何か嫌なことでもあるの?」

フェイトが問いかけてくる。

嫌ではないが、肩身が狭い。

「それとも何か気になるの?」

続けてアリシア。

気になるといえば、周りからの男子の嫉妬の視線が無茶苦茶痛いです。

「もう!これだけの美少女に囲まれてるんだから、もっと嬉しそうな顔しなさいよ!」

アリサがそう言う。

美少女って自分でハッキリと言うか普通。

いや、大いに肯定しますけどね。

むしろ、それだけの美少女軍団に、何故俺のような碌でもない男が混じってるのかと疑問に思うのは、間違いではないと思う。

昼食の時間の現在、休み時間が始まった途端に、なのは、フェイト、アリシア、アリサ、すずか、序に桜に、一緒に昼食を食べるために、屋上まで強制連行・・・・・・・もとい、お誘いを受けて此処にいる。

そういうわけで、現在一緒に昼食を食べているが、先程も言ったように、周りの男子の嫉妬の視線が無茶苦茶痛い。

それは当然であろう。

なのは、桜、フェイト、アリシア、アリサ、すずかは、同じ学年の中でも、トップクラスの美少女たちである。

当然、男子の多くに人気があり、男子からすればアイドル的存在だ。

噂では、ファンクラブがあるとか。

その噂を聞いたとき、小学3年生でファンクラブ作る会員の将来が少し心配になった。

俺には関係ないので如何でもいいが。

まあ、そんなアイドル達に囲まれた男子が居るとすれば、嫉妬の視線を向けられるのは当然の事。

普段は空気と同化している俺だが、これだけの目立つ人物達と一緒に居ると、目立たない方が逆に目立つ。

桜はその視線に気付いているようだが、我関せずといった風だ。

桜に向けられてるものじゃないからな。

他の5人は、その視線に気付いていない。

故に、俺に気兼ねなく接してくるので、その度に嫉妬の視線が厳しくなる。

殺気と言っても良い位に。

こうして、気の休まらない休み時間は過ぎていくのだった。





放課後。

俺は、終了のチャイムが鳴ると同時に、手早く荷物を纏めて教室を飛び出した。

これ以上の殺気の視線には耐えられん。

約5名の俺を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、気のせいにしておく。

俺は学校を出て、暫く走る。

学校からある程度はなれた所で歩きに変更した。

今日は、翠屋の手伝いは無いので、ゆっくり帰っても問題ない。

そして、ふと見ると図書館が見える。

俺は、静かな所でゆっくり過ごしたかったので、図書館に寄る事にした。

図書館に入ると、俺は適当に本を取り、テーブルの椅子に座る。

さて読もうと思ったとき、

「逃げる事なんて無いんじゃないの、ユウ?」

後ろから声がした。

俺が振り向くと、其処にはアリサを先頭に、なのは、フェイト、アリシア、すずか、桜の姿があった。

「・・・・・・・なんで此処に?」

俺は尋ねる。

「学校が終わった途端、アンタが逃げ出したから、気になったのよ」

「ユウ君の場所は、ユウ君の魔力反応を辿ってきたんだよ」

アリサとなのはが答える。

「なるほど・・・・・・まあ、逃げるように飛び出したのは、殺気混じりの嫉妬の視線に耐え切れなかっただけだし、図書館に来たのも、静かで落ち着けると思ったからだ。お前たちから逃げたわけじゃない」

「嫉妬の視線?」

フェイトが、何のことかと首を傾げる。

「分からないなら気にするな」

俺はそう言っておく。

「ともかく、図書館は公共の場だからな。静かにしてろよ」

「そのぐらい分かってるわよ」

俺の言葉に、皆は頷いた。





【Side なのは】



私達は、ユウ君に習って読書をする事にしました。

ユウ君は、難しそうな医学書。

怪我した時の応急処置に役立つそうです。

桜お姉ちゃんは、同じく難しそうな参考書。

この2人は流石大人の精神なの。

アリサちゃんは、犬の本。

すずかちゃんは猫の本。

相変わらず犬と猫が大好きな2人なの。

そして、私とフェイトちゃん、アリシアちゃんは、同じ系統の本を読んでるの。

それは・・・・・・・恋愛小説なの!

少しでもユウ君を振り向かせる為に、少しでも研究するの!

ユウ君、未だに私達の気持ちを気の迷いだと言って聞きません。

私は、こんなにユウ君の事が大好きなのに・・・・・・・・

と、そんな事を考えていると、ユウ君は本を読み終えたのか、立ち上がって本を返しに行きました。

すると、途中でふと何かに気付きました。

私はユウ君の視線を追うと、其処には車椅子に乗った女の子が少し上の方にある本を取ろうとして、必死に手を伸ばしていました。

ユウ君は、すぐにその子の方へ歩いていきます。

そして、その車椅子の女の子が手を伸ばしていた先にある本を取り、その女の子に差し出しました。

うん!やっぱりユウ君は優しいの!

その女の子は、一瞬ビックリしたような表情をしてます。

私は、いきなり本を取ってくれた見ず知らずのユウ君にビックリしているのだろうと思いました。

しかし、ユウ君は手を軽く上げて、気軽に声を掛けました。

知り合い?

すると、その女の子は、すぐに満面の笑みに変わりました。

その瞬間直感したの。

あの笑顔は、私達と同じ、ユウ君に好意を持っている笑みだと。

その時に気付きましたが、フェイトちゃんとアリシアちゃん、アリサちゃん、すずかちゃんも私と同じ事を考えているのか、食い入るようにユウ君とその車椅子の女の子を見つめていました。

桜お姉ちゃんだけは、呆気に取られたような表情をしていましたが・・・・・・・・・

すると、2人がこっちに歩いてきました。





【Side Out】




俺はある程度本を読み終え、本を返す為席を立った。

すると、とある本棚の前で、必死に手を伸ばす車椅子の少女。

俺は、そういえば前にもこんな事あったな~、と思いつつ、其処に向って歩いていく。

そして、その少女が手を伸ばしていた先にある料理本を取り、その少女に差し出した。

その少女は、一瞬呆気に取られた顔をしていた。

俺は軽く手を上げ、

「よっ!はやて」

その少女、はやてに声を掛ける。

はやては俺を認識すると、

「ああっ!ユウ君やん!」

満面の笑みでそう俺の名を呼んだ。

「久しぶり・・・・・ってほどでもないな。元気してたか?」

俺はそう尋ねる。

「うん!勿論や!」

はやては元気良くそう答える。

俺は軽く微笑む。

その瞬間、

――ゾクッ

っと、物凄い悪寒を感じた。

その悪寒に振り向くと、物凄い視線で俺を睨む、なのは、フェイト、アリシア、アリサ、すずか。

桜は呆気に取られた顔をしている。

そういえば、はやてと知り合いだって事は言ってなかったけ。

とりあえず、このままだと何かやばそうだから、みんなにはやてを紹介するか。

「はやて、ちょっと一緒に来てくれ」

「?」

はやては首を傾げたが、俺の後ろを付いて来る。

なのは達がいる机に近付くと、

「「「「「ユウ(君)!!その子誰!?」」」」」

なのは、フェイト、アリシア、アリサ、すずかに同時に問われる。

ちょっと俺は引いた。

「こ、こっちは八神 はやて。ちょっと前から図書館で顔見知りになった子だ」

俺はそう言うと、はやてに向き直り、

「はやて、この子達は、俺が居候してる家の娘さんと、その友達だ。学校のクラスメートでもあるな」

簡潔にはやてに説明する。

「そうなんや。私は八神 はやていいます。よろしゅう」

はやては、車椅子に座ったまま頭を下げる。

「え、えと、高町 なのはです」

「フェイト・テスタロッサです」

「アリシア・テスタロッサ。フェイトのお姉ちゃんだよ」

「アリサ・バニングスよ」

「月村 すずかです。はやてちゃんのことは、時々見かけてたよ」

「た、高町 桜よ。なのはの双子の姉になるわ」

自己紹介を返す6人。

「え~と、なのはちゃんに、フェイトちゃんに、アリシアちゃんに、アリサちゃんに、すずかちゃんに、桜ちゃんやな。うん、覚えたで」

はやては、1人1人の顔と名前を一致させる。

「はやて、最初に大事な事を尋ねるわ」

アリサがそう切り出す。

「あなた、ユウの事どう思ってる?」

「えっ?」

「おいっ!いきなり何を聞いてるんだ!?」

俺は思わず叫ぶ。

何だその質問は?

はやても何かほんのり頬を染めてるし。

「ユウは黙ってて!これは私達にとって大事な事よ!」

俺はアリサにぴしゃりと黙らされる。

アリサははやてに向き直り、

「ハッキリ言っておくわ。桜はどうかわかんないけど、なのはも、すずかも、フェイトもアリシアも。そして私も。皆、ユウの事が好きなの。勿論、ただの友達としてじゃなく、1人の男としてね」

アリサはとんでもない事を言う。

そうやって改めて言われると、恥ずかしいんだが・・・・・・

「いや・・・・・アリサ?俺はそんな碌な人間じゃないから・・・・・・」

「アンタは黙ってなさい!」

「はい・・・・・!」

再び黙らされる俺。

カッコ悪っ。

はやては、アリサの言葉に一瞬戸惑っていたが、すぐに真剣な顔になり、

「いきなりやなぁ、アリサちゃん。ほな、私もハッキリ言わせて貰うわ・・・・・・・」

そこではやては一呼吸置き、

「・・・・・私もユウ君の事が好きや。勿論、1人の男の子としてやで」

そうハッキリと言った。

っていうか、お前もかはやて。

何で俺なんかを好きになるんだか。

もっといい男が他にも沢山いるだろうに・・・・・・

俺はそう思っていたが、アリサははやての言葉を聞くと笑みを浮かべ、

「クスッ!あなたとは仲良くやれそうだわ。これからよろしくね、はやて」

そう言って、アリサは右手を差し出す。

「こちらこそよろしゅうな、アリサちゃん。それに皆」

はやてもそう言いながら、アリサの手を握り返した。




それから少しすると、なのは達とはやては、完全に打ち解けあっていた。

会話に華を咲かせている。

そんな中、

「はやてちゃんは、いつユウ君に会ったの?」

すずかの質問があった。

「え~っとなぁ・・・・・初めて会った時は今日みたいに本棚の手の届かない所にあった本を取ってくれたんや」

はやての言葉に皆はうんうんと頷いている。

「それで、同じ位の歳やったからちょっと話してな。その後もこの図書館でちょくちょく会うことがあったんよ」

「へぇ~、そうなんだ」

「それにユウ君は、ほんまに優しいからなぁ。人が落とした本を拾ったり、私みたいに困っとる人が居ったら助けてあげたり・・・・・」

はやてはそう言うが、

「いや、その位は当然の事だろ?」

俺はそう突っ込む。

「でも、当然の事を、当然のように出来るのは、きっと凄い事だよ」

アリシアがそう言う。

「いや、助けてるって言っても、自分の気付く範囲だし・・・・・俺って結構抜けてるから、困ってる人を見逃してる事なんて、しょっちゅうだと思うが・・・・・・」

俺は、自分が思ってる事を言った。

「それでも、気付いた事を見て見ぬ振りする奴よりよっぽど立派と思うけどね」

アリサがそう言う。

「・・・・・・・誉め殺しだな・・・・・」

俺は思わず呟く。

「それだけユウは、いい人って事だよ」

フェイトが笑顔で言う。

俺は反論する気にもならなかった。

お前ら全員フィルター掛かりすぎだろ!?

俺はそんな善人じゃないって、何回言えば分かるんだぁ!!

俺は心の中で叫んだ。

「ところで話は変わるけどな、ユウ君がなのはちゃんと桜ちゃんの家に居候してるって如何いう事なん?」

はやてが突然尋ねてくる。

その途端に、全員の雰囲気が暗くなる。

「あの・・・・・ユウ君・・・・・・・お父さんとお母さんを事故で亡くしてて・・・・・・・」

なのはが言いにくそうに答える。

「ゴ、ゴメンなぁ。まさか、ユウ君も両親がおらなんだなんて思わなかったんや」

はやてが慌てて謝ってくる。

「気にすんなよ」

俺はそう言っておく。

「はやて、ユウ“も”ってことは、はやても両親がいないって事?」

桜が核心を持って尋ねる。

まあ、桜は知ってるからな。

図星を突かれたはやては俯く。

「うん・・・・・私も両親を事故で亡くしてな・・・・・・今は、お父さんの友人の人が財産の管理をしてくれとるんや。せやけど、その人も忙しいみたいで、滅多に家には来れんのや・・・・・・だから今は独り暮らしやな」

桜はその言葉を聞くと、考える仕草をする。

そして、

「ねえ、はやてって誕生日何時?」

「誕生日?6月4日やけど・・・・・・?」

それを聞くと、桜は再び考える仕草をする。

「6月4日か・・・・・・もう目と鼻の先だし、その日は休みだから・・・・・・・」

何やらブツブツと呟き、

「うん!いい事思いついた!」

桜は皆の方を向き、

「はやての誕生日にさ、はやての家に遊びに行かない?」

「え?」

桜の言葉にはやては声を漏らす。

「ああ、それいいわね!」

アリサがすぐに同意する。

「お誕生日会だね」

すずかがそう言うと、

「丁度その日は休日だからさ、前日からお邪魔して、丸一日遊び倒すって言うのは如何?はやての今までの誕生日の分も含めて」

桜が更に提案する。

「賛成!」

アリシアが声を上げ、

「私もいい考えだと思うよ」

フェイトも同意する。

「ケーキとかなら家で用意できるしね」

なのはも頷く。

なにやら物凄い勢いで予定が組まれている。

「じゃあ・・・・・俺は・・・・・・」

「当然アンタも来るのよ!」

問答無用かよ!

全く意見聞く気も無いのか、その一言で決まってしまった。

こうなると、俺が行くのは決定事項だからな・・・・・・・

流石に男1人は勘弁だから、ユーノも巻き込むか。

俺は俺で自分の考えを巡らす。

多分桜の目的は、最初からヴォルケンリッターと面識を持つ事だとは思うけど・・・・・・

そういえば、はやて・・・・っていうか、闇の書に監視が付いてるんだっけ・・・・・・

多分アリアとロッテだろうけど。

まあ、闇の書が目的だとしても、知り合いが監視されてるっていうのはいい気分じゃないしな。

なんとかするか。

そこまで考えていると、大筋の予定が纏まったのか、皆で盛り上がっていた。




その夜。

――コンコン

と、部屋のドアがノックされる。

「どーぞ」

俺がそう言うと、ドアが開き、桜が入ってくる。

「ちょっといい?」

「ああ。はやての事だろ?」

桜の言葉に、俺はそう返す。

「うん。ヴォルケンリッターとは争いたくないし、はやても・・・・・・出来ればリインフォースも助けたいから・・・・・・」

予想通りの言葉。

俺は頭を掻く。

「う~ん・・・・・・正直に言えば、守護騎士の事を考えなければ、はやての事を助けるのは簡単なんだよな~~」

俺はそう漏らす。

これでも少しは考えていたのだ。

「ちょ!?如何いう事よ!?」

桜が驚いた顔で尋ねてくる。

「ブレイズとアイシクルの切り札を使えば、闇の書を初期化して夜天の魔導書に戻せるんだよ」

「えっ?で、でも、闇の書って主以外が無理にアクセスしようとすると、主を吸収して転生しちゃうんじゃ・・・・・・」

桜が問題点を挙げる。

「無理にアクセスしようとすれば・・・・・だろ?アクセスも何も、問答無用で初期化しちまえば問題ない」

「で、出来るの?」

桜が驚いた顔で問いかけてくる。

「出来る」

俺は断言した。

桜は俺をじっと見つめている。

「ふ~ん・・・・・後ろ向きのアンタが其処まで断言するぐらいだから、間違いないと思うけど・・・・・・・そうした場合の問題点は?」

桜が気になる事を尋ねてくる。

「このまま闇の書を初期化した場合の問題点は2つ」

俺は手を前に出し、人差し指を立てる。

「先ず一つ目。初期化するって事は、当然リインフォースの記憶も初期化される。つまり、真っ白な状態に戻る。記憶喪失と違って、記憶が戻る事も無い」

「それって・・・・・」

「ああ。つまりそれはリインフォースを一度殺す事と大差ない」

「・・・・・・・・・」

俺は続けて中指を立てる。

「2つ目。守護騎士プログラムは夜天の魔導書の初期バージョンには組み込まれていない。つまり、闇の書を初期化した時点で、守護騎士達は消える」

「ちょ!それは駄目よ!!」

桜が叫ぶ。

「ああ・・・・・だから今の状態で初期化するなんて事はしないさ」

俺の言葉に、桜はホッとした表情になる。

「まあ、A`S編の最後に出てきた暴走した防御プログラムを初期化して、もう一度リインフォースに組み込むのがベストだとは思うんだが・・・・・・」

「そっか・・・・リインフォースが消えたのは、新しい防御プログラムを生み出す可能性があったからだっけ。直した防御プログラムを組み込めば、新しい防御プログラムを生み出す必要が無い。そうすれば、リインフォースも消えなくて済む・・・・・」

「最悪、リインフォースを初期化すれば暴走の心配は無いしな。やりたくは無いけど、完全に消滅させるよりは、はやての悲しみも和らぐと思う」

「そうだね・・・・・・」

「まあ、それ以前の問題は、どうやって守護騎士達に闇の書が壊れている事を納得させるかだけどな」

「如何いう事よ?」

「あのなあ・・・・・・守護騎士達の性格を考えてみろ。闇の書が壊れてるって言って、納得すると思うか?」

「・・・・・・・思わないわね。アニメのなのはとフェイトがそれを伝えようとした時も、自分たちが闇の書の一部だから、自分たちが闇の書のことを一番良く分かってるって思い込んでるくらいだし」

桜はため息を吐く。

「自分の事は、自分が一番良く分かってないと言っても過言じゃないしな」

俺がそう呟くと、

「・・・・・・・アンタ、その言葉を自分自身に聞かせてやりなさい」

桜は呆れた顔で俺に向ってそう言う。

「どういう事だよ?」

訳のわからなかった俺は、聞き返す。

「分からないならいいわ。ともかく、守護騎士達をどうやって納得させるかだけど・・・・・・・・」

桜が話を戻す。

「まあ、どっちにしろ蒐集は必要だから、無理に納得してもらう必要は無いけどな。はやてと一緒に事情説明をして、管理局に見つからないように蒐集する事だけ気をつけてもらえれば、罪に問われる事もないだろうし。6月から蒐集を始めれば、12月までには隠れながらでも間に合うだろうし・・・・」

「蒐集って言えば、アンタが蒐集された方が手っ取り早いんじゃない。完成間近まで魔力を蒐集させて、アンタの魔力が回復した時点で闇の書を完成させるって言うのは?」

「それは俺がゴメンだ。俺はガイアフォースやコキュートスブレスを乱射してくる奴なんか相手にしたくねえぞ」

俺はその事を想像してゾッとする。

「あはは・・・・・・それは私もゴメンね」

桜はその事を失念していたのか苦笑する。

「ともかく、何とか守護騎士達に協力体制を取り付けないとね。そのためにはやての家に泊まりこむ計画を立てたんだし」

桜はそう言う。

「やっぱりか」

「もしもの時は、守護騎士と『なのは的お話し合い』はよろしくね」

桜が笑みを浮かべて俺に言ってくる。

「『なのは的お話し合い』はともかく、人任せかよ!」

「当たり前でしょ。私達じゃ守護騎士には敵わないだろうし。カートリッジシステムも付いてない私達のデバイスじゃ尚更ね」

桜の言葉を聞き、そういえば管理局に協力しないから、このままじゃデバイスのバージョンアップが出来ないという事に気付く。

まあ、そっちは後々何とかしよう。

「まあ、そっちはもしそうなったらな」

「頼りにしてるわよ」

俺の言葉にそう返す桜。

とりあえず、これからまた忙しくなりそうだと思う俺だった。





あとがき

第十六話完成。

とりあえず、これからの計画を話し合うの回でした。

A`S編は、完璧原作ブレイクです。

続けられるかなぁ?

っていうか、早くも20万PV突破してるし。

皆様、本当にありがとうございます。

ともかく次も頑張ります。





[15302] 第十七話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/04/18 07:24

第十七話 キャットファイト!




6月3日。

学校が終わった俺達は、はやての家の前に居た。

勿論一度帰って、色々準備はしている。

今、この場にいるメンバーは、俺、なのは、桜、フェイト、アリシア、アリサ、すずか、ユーノ、猫形態のリニスといつの間にか子犬モードを習得したアルフである。

はやての家の前に来ると、

(ユウ、この家は、やはり監視されてるようです)

リニスが念話で報告してくる。

ここはアニメの通りか・・・・・

(じゃあリニス、予定通り頼めるか?)

俺がリニスにそう言うと、

(はい、任せてください!)

リニスはそう返事を返すと、俺の腕から飛び降りて、監視者の元へと向う。

「あれ?リニスさん、如何したの?」

すずかが尋ねてくる。

因みにアリサもすずかも、リニスが俺の使い魔で、猫形態と人間形態になれることを知っている。

「ん?縄張り争い」

「縄張り争いって・・・・・リニスさん普通の猫じゃないんだし・・・・」

アリサがそう言うが、

「リニスって、あれでも結構猫っぽいところがあるんだぞ。冬にコタツで丸くなったりとか・・・・・・」

俺は、リニスの目的を悟られないように、冗談半分で問いに答える。

「まあ、心配する事はないさ。少しすれば戻ってくるよ」

俺はそう言って、はやての家に向き直り、呼び鈴を押した。

少しすると玄関が開き、

「皆、いらっしゃい!」

はやてが満面の笑みで出迎えた。

「「「「「「おじゃまします」」」」」」

俺達は、はやての家に入った。





【Side リニス】



私は、あらかじめ聞いていたユウの話を元に、監視をしているであろう双子の使い魔を探す。

探知魔法を使い、監視の元を探る。

そして、反応があった。

場所は、はやての家から少し離れたビルの屋上。

私は気配を消しつつ、そのビルの屋上へ向った。




そのビルの屋上では、やはり猫の双子の使い魔がいた。

私はその2匹の後ろに人間形態となって降り立つ。

着地した時の音で私に気づいたのか、

「誰だ!?」

その2匹は慌てて振り返った。

私はその2匹に問いかける。

「あなたたちは、何故あの子を監視しているのですか?」

しかし、

「ふん!誰だか知らないけど、教える理由が無いね!」

片方の使い魔がそう言う。

「そうはいきません。私のマスターは、特に何もしていない知人が理不尽に監視されているという状況が気に入らないので」

「なら、あなたのマスターに伝えて。あの子には関わらない方が身の為よ。魔導師であるなら尚更ね」

もう1匹の使い魔のほうがそう言ってくる。

こちらは、もう1匹に比べると冷静な性格のようですね。

「その理由は、『闇の書』ですか?」

「「ッ!?」」

私がそう言った瞬間、2匹の雰囲気が一変する。

「アンタ、何で闇の書のことを・・・・!?」

「いえ、そんな事は如何でもいいわ。闇の書の事を知っているのなら、あの子から手を引きなさい!」

2匹は焦ったように言ってくる。

「それは無理ですね。私のマスターは、知人を見捨てられるほど冷酷な人ではないので・・・・・」

私がそう言うと、2匹は人間形態に姿を変える。

「最後の警告よ!あの子から手を引きなさい!それがこの世界の為よ!」

私はその言葉を聞くと、クスリと笑みを零した。

「何が可笑しい!?」

もう1匹が叫んでくる。

「そんな風に脅しても無駄ですよ。私のマスターは、世界より身近な人の方が大切ですから」

「「なっ!?」」

私の言葉に驚愕する2人。

「故に、あなた達のやっている事を見逃すわけには行きません。あなた達がこのまま去るというのであれば、何もしません・・・・・・・・が、しかし、このまま監視を続けるというのであれば・・・・・・・」

私はそう言いながら、右手に魔力を込めつつ威嚇する。

「少々不本意ですが、無理にでもお引取り願いましょう」

私の言葉に、

「ふざけるなっ!」

「あなたなんかに父様の計画を邪魔されるわけにはいかないわ!」

2人は身構え、臨戦態勢に入る。

私は一度ため息を吐き、

「仕方ありませんね・・・・・・では、始めましょうか!」

私はそう宣言すると共に、結界を展開。

人目を防ぐと共に、2人に逃げられないようにする。

「はぁああああああああっ!」

血の気が多いと思われる方が、殴りかかってくる。

私はそれを左手で受け止めるが、

「ッ!?」

思った以上の威力に、声を漏らす。

だが、僅かに痺れた程度なので問題ない。

「せいっ!!」

そのまま回し蹴りを放ってきたので、私は飛び退いてそれを避ける。

着地と同時に、私は複数の魔力弾を作り出し、

「フォトンランサー・・・・・・ファイア!」

2人に向けて放った。

しかし、冷静な方の使い魔が前に出て障壁を張り、私のフォトンランサーを容易く防いだ。

「はん!その程度の攻撃でアリアの障壁が破れるもんか!」

そう叫んだのは、防いだ方の使い魔ではなく、もう1人の方だった。

「おりゃぁああああああっ!」

その使い魔が再び突っ込んでくる。

私は、身体能力を強化し、迎え撃つ。

「ふっ!」

――バチィ!

魔力が篭った拳と拳がぶつかり合う。

「チィ!」

私の攻撃は、相手の攻撃に打ち勝ち、相手は飛び退く。

その時、

「ッ!」

もう一匹の使い魔が放ったバインドが、私を拘束しようと迫ってくる。

「くっ!」

私は何とか空中に退避する。

だが、

「甘い!」

その動きを見越して先回りしていた先程の使い魔。

「はぁあああっ!」

「くうっ!」

何とか防御したが、その使い魔に叩き落される。

私はビルの屋上に叩きつけられる。

だが、身体強化のお陰で大したダメージではない。

私は立ち上がり、

「中々やりますね・・・・・ならば、貫け轟雷!」

私は砲撃魔法を使う。

「サンダー・・・・・・スマッシャーーーーーーッ!!」

雷撃砲を2人に向け放った。

私のはなった砲撃は2人を飲み込む。

2人は爆煙に包まれる。

私はその爆煙に目を凝らしていたが、

「これも防ぎきりますか・・・・・」

思わず声を漏らした。

私の視線の先には、障壁がかなり揺らぎながらも、サンダースマッシャーを防ぎきった相手の姿。

だが、其処で気付いた。

あそこには一人しかいない事に。

「ッ!?」

直感のまま私は飛び退く。

一瞬遅れて、もう1人の使い魔がその場に拳を振り下ろしてきた。

「チッ!外した!」

その使い魔は、気を取り直すとすぐに私に向って格闘戦を挑む。

「はぁあああああっ!」

次々と拳を繰り出してくる相手。

「くっ・・・・」

私は何とかその攻撃を捌く。

私は間合いを取ろうとしたが、もう1人が魔力弾を放ってきて妨害される。

再び接近してくる相手。

相手は拳を繰り出しながら、

「思ったとおり!!アンタは余り接近戦が得意じゃないね!!」

核心を持ってそう叫んだ。

それは私も分かっている。

相手と比べると、私の方が身体強化は上だが、技量では相手の方が遥かに上だ。

このまま近接戦闘を続けていれば、いつかは押し切られるだろう。

「その通りです。たったこれだけのやり取りで、私の弱点を見抜くその洞察眼は、流石は年の功といった所でしょうか」

私はポツリと呟いた。

その瞬間、相手に青筋が浮かんだ。

「何だって!?」

「いえいえ、私はこれでも5歳にも満たない若輩者ですから。年長者の方の経験は流石ですと申したのです」

私はそう言いいますが、これは相手からすれば、暗に年寄りと言われているようなものですね。

「このガキンチョがぁああああっ!!」

叫びながら突っ込んでくる。

「お、落ち着きなさいロッテ!」

もう1人が止めようとしていますが、もう遅いです。

怒り任せの一撃は、軌道が読みやすく、紙一重で避けて相手に肉薄する。

確かに私は近接戦闘が得意ではありませんが、あくまでそれは戦闘技術が低いというだけの話。

一撃の威力は劣りませんよ。

私は、体内に魔力を溜め込み、それを電撃に変換。

そして、一気に解放する。

ユウに教えてもらった零距離攻撃魔法。

「テスタメント!!」

私の身体中から電撃が放出される。

「うぁあああああああああああっ!?」

相手はその電撃をモロに受け、気を失う。

最初ユウから教えてもらった時は、実戦で使えるかどうか疑問でしたが、案外役に立つものですね。

「ロッテ!?」

もう1人が声を上げる。

私は其方に向き直り、

「集え、七つの輝き・・・・・・」

呪文を詠唱する。

「眼前の愚者を裁く光となれ・・・・・」

私の前に、7つの魔力球が生み出される。

その一発一発に込められた魔力は、サンダースマッシャーに匹敵する。

それを相手に向け、

「セブンヘブンズ!!」

一気に放った。

「なっ!?」

相手は驚愕しながらも障壁を張るが、

――ドゴォォォォォォォン

大爆発に包まれる。

その爆煙の中から、力なく落下していく相手。

私はバインドを使い、地面への激突を防いだ。

「さて、気は済みましたか?」

私はバインドで縛り上げた相手に向ってそう尋ねる。

「くっ」

その相手は、私を睨み付ける。

「1つ言っておきますが、私・・・・・いえ、私のマスターはあなた達のやろうとしている事を間違いとは思っていません」

「っ!?」

「正しいとも思ってませんがね・・・・・・・・ですが、そのやろうとしている事によって知人が犠牲になる事が、マスターは気に入らないのです。よって、私のマスターはあなた達の邪魔をします」

「そんな・・・・・自分勝手な・・・・・・・」

「ええ、自分勝手ですね。でも、それはあなた方も同じなのでは?」

「ッ!?・・・・・・・・あなた達・・・・・一体何処まで知って・・・・・・?」

「さて、何処まででしょうか?」

私は彼女に近付く。

「今日の所はこの辺りで勘弁します。ですが、次からちょっかいを出して来るならそれ相応の覚悟をしてください」

そういいながら、彼女に手を翳す。

「ああ、1つだけいい忘れてましたが、守護騎士達に蒐集はさせる心算なのでご心配なく。あなた達の方法も、蒐集は必須条件ですよね?」

私はそう言うと、電気ショックで彼女を気絶させる。

こう言っておけば、蒐集終了間際までは恐らく手を出してこないだろうとのこと。

さて、ユウの所に戻りますか。





【Side Out】




日が暮れたころにリニスが戻ってきて、結果を報告してきた。

流石にリニスにはリーゼ姉妹も敵わなかったようだが、セブンヘブンズとテスタメントを使わせるとは流石だな。

因みにこの2つの魔法は、言うまでもなく俺が教えた。

ネタに走ってるけどな。

まあ、俺の魔法もネタに全力疾走してるから別にいいだろ。

因みに現在は、晩飯を食った後、格闘ゲーム大会が開かれている。

因みにゲームはCAPC〇N VS S〇K2。

こっちの世界にもあったのかよ!?

現在の戦績は、

1位タイ なのは、アリサ。

この2人、コンボが上手い。

っていうか、オプションでゲージ無限にしてるから、超必殺技を無限に決めてくる。

一回喰らえばそのまま体力0まで持っていかれる。

前世でも友達によくやられたな・・・・・・・・

3位 俺。

俺の信条は一撃必殺。

覇王〇とロ〇クがお気に入り。

怒りゲージで一撃必殺狙います。

無限コンボは出来ない事は無いが、俺の性には合わん。

4位 すずか。

流石になのは達の友達なだけあって中々強い。

でも、無限コンボは性格的に出来ないのでこの順位。

無限コンボやってきたら、俺じゃ勝てん。

5位 はやて。

暇な時にゲームはやっていたらしい。

それでもやりこんでいた訳ではないので、この順位。

6位タイ フェイト、アリシア、ユーノ。

流石に初心者なので経験者には敵わない。

でも何故かこの順位。

最下位 桜。

桜・・・・・何故か格闘ゲームだけはさっぱりだったりする。

何故に超初心者であるフェイトやアリシアにも負ける事ができるのか不思議だ。






そんなこんなで既に深夜。

時計の針は、23時59分。

あと1分弱で日付が変わる。

それは、闇の書起動の時でもある。

まあ、今の俺達ははやてに向ってクラッカーを準備しているわけだが。

そして、いよいよ秒針が残り5秒を回る。



5。




4。




3。




2。




1。




――パパパパパパァン!!



0と同時にクラッカーが鳴り響く。

「「「「「「「「はやて(ちゃん)!誕生日おめでとう!!」」」」」」」」

俺達の声が唱和する。

はやては嬉しさに涙を流しながら、

「皆ぁ・・・・・ほんまにおおきに・・・・・」

そう礼を口にする。

その瞬間、

――ドクンッ

「「「「「「ッ!?」」」」」」

アリサとすずか、はやて以外の魔導師組がその波動に気付き、そちらに振り向く。

――ドクンッ

本棚にあった闇の書が光を放ち始め、浮かび上がる。

『Ich entferne eine Versiegelung.』

そこで、アリサ、すずか、はやても異変に気付いた。

「な、なんや!?」

はやてが思わず声を漏らす。

闇の書がはやての前に移動する。

はやては、訳が分からず怯えている。

そして、闇の書を縛っていた鎖が弾け飛び、凄い勢いでページが捲られていく。

最後のページまで捲られると、再び閉じ、

『Anfang.』

その言葉と共に、更に闇の書が輝く。

「ええっ!?・・・・・え?」

はやての胸からリンカーコアが浮かび上がり、それに呼応するかのように闇の書が魔法陣を展開。

目を開けていられないほどの眩い光を放つ。

「「「「うっ!?」」」」

「「「くっ!」」」

俺達は目を庇う。

そして、光が収まったのを確認し、目を開けた瞬間・・・・・・

全員固まった。

そう・・・・・・“全員”。

俺と桜でさえも・・・・・・・・

何故ならば・・・・・・・




「闇の書の起動を確認しました」

そう言って跪くのは、ピンクの髪のポニーテール、烈火の将シグナム。

これはアニメの知識で知っているので問題ない。




「我ら、闇の書の蒐集を行い、主を守る守護騎士にございます」

同じく跪く金髪の女性、湖の騎士シャマル。

これも問題ない。




「夜天の主の元に集いし雲」

青い犬耳と尻尾を生やした男性。

盾の守護獣ザフィーラ。

これも知ってる。




「我ら守護騎士、ヴォルケンリッター」

赤毛の少女、鉄槌の騎士ヴィータ。

アニメと多少台詞は違うが、これも問題ない。

その次が大問題だ。




「何なりとご命令を・・・・・・我が主」

黒髪の男性・・・・・・・

アニメには居なかった5人目の守護騎士がそこにいた。






あとがき

はい、結構やりたい放題やった十七話でした。

先ず最初にセラフィモンなリニス。

え?セラフィモンは負けフラグだって?

良いじゃないのセラフィモンが勝ったって。

セラフィモン、かなり重要な位置に居るにも関わらず、可哀想な役ばっかじゃないですか!!

フロンティアでは、復活後約5分で敗北、デジタマ化。(悲)

漫画のVテイマー01では、10ページと持たずに敗北。(哀)

デジアド02劇場版においては登場後約10秒で敗北ですよ!!(号泣)

まともな扱いなんてゲームのバトルエボリューション位じゃないですかぁ!!(怒)

ですので、この小説ぐらいは(セラフィモン自身ではありませんが)良い役を。

因みに、ぬこ姉妹とは協力する気ナッシングです。

さて、そして最後に出てきた5人目の守護騎士。

言っておきますと、オリキャラではありません。

予想つく方は多いと思いますが、正体は次回に。







[15302] 第十八話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/04/25 14:47
第十八話 五人目の守護騎士。そしてO☆HA☆NA☆SHI。






【Side ????】




次々と乗っ取られていくエスティア。

もはや持たないだろう。

挙げ句の果てに、アルカンシェルの制御まで奪われるとは・・・・・・・

完全に闇の書を甘く見ていた。

だが、乗組員を全員退艦させる事ができた事だけは不幸中の幸いだ。

このことは既にグレアム提督に報告した。

グレアム提督なら、選択を間違えたりはしないだろう。

・・・・・すみませんグレアム提督。

嫌な役をやらせてしまいましたね。

私は、胸ポケットから何時も持ち歩いている1枚の写真を取り出す。

そこに写るのは、愛する妻と3歳の息子。

・・・・・・すまない。

私は心の中で謝罪の言葉を呟く。

管理局員として働く事で、いつでもこうなる可能性があったことは覚悟していた。

だが、こうしていざとなると、どうしても未練が湧いてくる。

もっと妻と共に居たかった。

息子を自分の手で立派に育ててやりたかった。

「・・・・・・リンディ・・・・・・クロノ・・・・・・・」

妻と息子の名を呟く。

死は覚悟している。

だが、出来る事ならば、

「最後に・・・・・・もう一度・・・・・・・・会いたかった」

思わず口から願いが零れてしまう。

情けないなと自傷気味に笑いつつ、最期の時を待つ為に目を閉じる。

その時、

『その願い、叶えてやろう』

「ッ!?」

突如聞こえたその声に、目を開けて其方を向く。

其処には、宙に浮かぶ闇の書。

『汝も夜天の主の元に集う雲となれ。さすれば願いは叶う』

私はその言葉の意味を理解する。

それは、私に闇の書の守護騎士になれと言っている。

確かに守護騎士となれば、次の主・・・・・もしくはその次の主の時に、2人に会える可能性はある。

何故私をと思ったが、そんな事は如何でもいい。

管理局員として、そのような悪魔の誘惑を受け入れるわけにはいかない。

「私は・・・・」

断る、と、声に出そうとした。

だが、ふと手に持った写真に目がいく。

愛する妻と息子。

言葉が止まる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

沈黙が続く。

燃え盛る炎の中、私が出した答えは・・・・・・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・受け入れよう」

悪魔の誘惑に乗る事だった。

その言葉を聞くと、闇の書が光を放ち、ページが捲られていく。

そして、私の身体が光に包まれ、気が遠くなっていき、

『Absorption.』

その言葉と共に意識が暗転した。




















意識が浮上していく。

闇の書の起動。

跪く私達の前には主と思わしき少女。

主の他にも何人もの少年少女がいたが、その少女が主であることは、一目見て分かった。

私の周りに居る4人の守護騎士達。

実際に会うのは初めてだが、まるで、昔から知っているかのように記憶から情報が引き出される。

「闇の書の起動を確認しました」

烈火の将シグナム。

「我ら、闇の書の蒐集を行い、主を守る守護騎士にございます」

湖の騎士シャマル。

「夜天の主の元に集いし雲」

盾の守護獣ザフィーラ。

「我ら守護騎士、ヴォルケンリッター」

鉄槌の騎士ヴィータ。

そして私は・・・・・・・

「何なりとご命令を・・・・・・我が主」

魔導の騎士・・・・・・・・クライド。






【Side Out】





俺達は、暫く固まっていた。

アニメには居なかった5人目の守護騎士。

呆然としていたが、

ガクッとはやてが崩れ落ちる。

見れば、はやては目を回していた。

どうやらアニメの通り驚きすぎて気絶したようだ。

それが切っ掛けで、再起動していく俺達。

アリサとすずかも、この前の誘拐事件で非常識には抗体が出来ていたらしく、はやてのように気絶はしていない。

「ああっ!はやてちゃん!?」

「しっかり!」

なのはとすずかが一目散にはやてを介抱する。

「あ~~~、アンタ達?アンタ達が誰かは知らないけど、アンタ達の言ってる主って言うのがはやての事だったら、とりあえずは大人しくしといてね」

桜が何とか守護騎士達に向かってそう言う。

その後、何とかその場を落ち着けた俺達は、はやてをゆっくり休める為にベッドに運んだ。










翌日。

「う・・・・・ん・・・・・・」

はやてが目を覚ました。

「あ、はやてちゃん!」

なのは達がはやての傍に寄る。

「あれ・・・・・?なのはちゃん・・・・・・?皆・・・・・・・?」

はやては、寝惚けているのか、状況を把握していないらしい。

因みに守護騎士達に話しかけても警戒されるだけで、まともに言葉も交わしていないために、名前も聞いていない。

まあ、主であるはやてが気絶してるし、最初の守護騎士達は、命令を聞くだけの存在だったらしいから、仕方ないのかも知れないが・・・・・・・

と、その時、はやてが守護騎士達に気付く。

「えっと・・・・あなた達は・・・・・・・」

はやてがそう呟くと、

(我々は、闇の書の守護騎士です)

シグナムの念話。

恐らくは、関係者以外に聞かれない為だろうが、俺には丸聞こえだ。

「えっ?」

いきなりの念話にはやてはビックリした様子。

(思念通話です。心の中で念じていただければ(別に念話で話す必要は無いぞ))

「「「「「「ッ!?」」」」」」

このままでは、話が長くなると思い、俺は念話で割り込みをかけた。

はやてと守護騎士が驚いたように俺の方を向く。

「この場に居る全員は、魔法のことを知ってるからな」

俺ははやて達にそう言った。

はやては、またビックリした表情を浮かべた。

逆に、守護騎士達には警戒心を与えたようだが・・・・・

俺は、俺、なのは、桜、フェイト、ユーノが魔導師であること。

リニスとアルフは、それぞれ俺とフェイトの使い魔であること。

アリサ、すずか、アリシアは魔導師ではないが、魔法のことを知っているという事を、簡単に説明した。

「ほえ~・・・・ユウ君たちが魔法使いさんやったなんてなぁ・・・・・・」

はやてはそう漏らす。

「ところで、いい加減向こうの紹介をしてくれるように頼んでくれないか?昨夜からずっとダンマリだから、名前すら聞けないんだよ(知ってるけど)」

俺がそう言う。

「ああ、それもそうやな。皆、自己紹介してくれへんか?」

はやてがそう言うと、守護騎士達は跪き、あっさりと自己紹介を始める。

「剣の騎士。烈火の将、シグナム」

「湖の騎士、シャマル」

「盾の守護獣、ザフィーラ」

「鉄槌の騎士、ヴィータ」

アニメでも知っている4人が自分の名を名乗り、いよいよ謎の5人目の番になる。

そして、その5人目の守護騎士が口を開いた。

「魔導の騎士、クライド」

その言葉を聞いた瞬間、俺は桜に引っ張られた。

(ちょ、ちょっと!クライドって、確かクロノのお父さんの名前じゃ・・・・!?)

桜が慌てながら小声で話してくる。

念話じゃないのは、シャマルに傍受される可能性があるからだろう。

(あ、ああ・・・・その筈だ・・・・・)

俺はなんとかそう答える。

(なら、何でクライドさんが守護騎士と一緒に出てくるのよ~~~!?)

(俺に聞くな!)

俺も結構混乱している。

まったく持って予想外だ。

「桜お姉ちゃん、ユウ君、如何したの?」

俺達の様子を不思議に思ったのか、そう尋ねてきた。

「え?あ?え~っと・・・・・・」

俺は答えに困った。

すると、

「あ、あはは・・・・・気のせいかも知れないけど、クライドさんって、何処となくクロノに似てる感じがしたから・・・・・」

桜は、それらしい理由を述べる。

その時、クライドさんが僅かに動揺した。

が、なのは達はそれに気付かず、

「・・・・・・そう言われてみれば・・・・・・確かにクロノ君に似てるかも・・・・・・」

クライドさんの顔を見ながらそう呟いた。

「クロノって?」

アリサが尋ねてきた。

見れば、すずかとはやても首を傾げている。

「クロノ・ハラオウン。ミッドチルダ出身の14歳の男子で時空管理局執務官。若干頑固な所が玉に瑕だが、相当な魔法の使い手で、少なくともなのは達以上の腕前は持ってる」

俺は簡単に説明する。

一応、アリサとすずかにも、次元世界と管理局の事は説明してあるので、何となくは分かったようだ。

はやては相変わらず良く分かっていないようだが・・・・・・

その時、

「そうか・・・・・クロノは立派になっているか」

クライドさんが呟いた。

俺達はクライドさんに顔を向ける。

「クロノを知ってるの?」

フェイトが問いかける。

クライドさんは、一呼吸置いた後、

「・・・・・・・私の生前の名はクライド・ハラオウン。クロノの父親だ」

その言葉に、なのはたちは驚愕する。

クライドさんは言葉を続ける。

「私は、死の間際に闇の書と取引をした。もう一度、家族と会うチャンスを貰う代わりに、闇の書の守護騎士となる事を・・・・・・・今回は契約を守ってくれた様で、クライドとしての人格と記憶は残っているが、おそらく今回だけだろう・・・・・次の主の元へ行くときには、それも消える」

クライドさんはそう言った。

「・・・・・・クロノやリンディさんには、連絡を取ろうと思えば取れますが・・・・・・・」

俺がそう言うと、クライドさんは首を振った。

「いや、今の私は亡霊のようなものだ。何より、今の私の立場は管理局と敵対する立場にある。人格と記憶は残っているが、闇の書の意志に逆らう事は出来ない。そのような状態で会っても、2人を苦しめるだけだ」

「そんな・・・・・!でも、2人に会うために取引したんじゃないんですか!?」

なのはが悲しそうな表情で問いかける。

「・・・・・・そうだ・・・・・・私はその場の気の迷いで闇の書と取引をした・・・・・・結果的に2人を苦しめるかもしれないという可能性を考えずに・・・・・・」

「で、でも・・・・・・!」

「やめろ、なのは」

俺はなのはを止める。

「ユウ君・・・・・」

「クライドさんの気持ちも察してやれ」

「・・・・・・・・・」

なのはは俯く。

恐らく、クライドさんは今も2人に会いたくて仕方ないのだろう。

だが、2人と敵対する可能性がある現在としては、会っても2人を苦しめるだけかもしれない。

その可能性がクライドさんを押し止めているのだろう。

「・・・・・・御免なさい、クライドさん・・・・・・」

なのはが謝ると、クライドさんは微笑み、

「良い子だな、君は」

そう呟いた。





その後、はやては守護騎士達から、闇の書の説明を受けた。

それを聞いたはやての反応は、

「そっか~、この子が闇の書ってモノなんやね」

割と軽いノリで闇の書を持ちながら呟いた。

「はい」

シグナムが頷く。

「物心付いた時には棚にあったんよ。綺麗な本やったから、大事にはしてたんやけど・・・・・・」

「覚醒の時と眠っている時に、闇の書の声を聞きませんでしたか?」

シャマルが尋ねる。

「う~ん・・・・・私、魔法使いちゃうから、漠然とやったけど・・・・・・・」

はやては一呼吸置き、

「でも、わかった事が1つある。闇の書の主として、守護騎士みんなの衣食住キッチリ面倒みなあかんいう事や。幸い住むとこあるし、料理は得意や。皆のお洋服買うて来るから、サイズ測らせてな」

はやての、メジャーを取り出しながらそう言った言葉に、守護騎士達は呆気に取られた顔をした。

クライドさんだけは、微笑んでいたが。

「あ、買い物なら付き合うよ」

アリシアが便乗する。

「私も!」

なのはも言い出し、アリサやすずかも言い出す。

最終的に、守護騎士とリニスを除いた女性陣がはやてに付いていく事になった。

俺?

女子の買い物に付き合えるわけないだろ。

しかも衣服の買い物だぞ。

無理に決まってるだろ。

元々衣服のセンスも無いし。

まあ、そんなわけでなのは達を送り出す。

はやての話では、昼までには帰ってくるとのことだ。

皆を送り出した後、俺は守護騎士達に向き直り、

「で?俺に言いたいことでもあるのか?殺気を向けられるのは良い気分じゃないぞ?」

俺はそう尋ねた。

さっきから、守護騎士達は俺に殺気を飛ばしてくるのだ。

すると、シグナムがレヴァンティンを起動させ、俺に突きつける。

「答えろ。貴様らは管理局の魔導師か?何の目的で主に近付いた?」

威圧感を感じさせながら、シグナムが問いかけてくる。

「・・・・・とりあえず、俺は管理局員じゃない。寧ろ、管理局を嫌ってる側だ。はやてに近付いた目的って言っても、はやてとは図書館で偶然出会って、そのまま顔見知りになったってだけなんだが・・・・・・」

「そんな話、信じられるか!」

ヴィータがグラーフアイゼンを起動させ、叫んだ。

まあ、そういう反応をするだろうな。

クライドさん以外は頭が固そうだし。

「まあ、信じられるわけないな。けど、アンタ達はいくら口で言っても納得してくれそうにないし、納得させる自信も俺にはないからな・・・・・・それでアンタ達の気が済むのなら相手になるぞ」

俺はデバイスを握りながら言った。

「上等だ!」

ヴィータが叫ぶ。

「ちょっと、ユウ!?」

ユーノが困惑した表情で叫ぶ。

「つー訳だ。ユーノ、転送を頼む。山奥の修行場な」

俺は、ユーノの言葉を無視してそう言った。

「・・・・・・はぁ、分かったよ」

ユーノは観念して転送魔法陣を展開する。

「場所を変えるぞ」

俺は守護騎士達に言う。

「いいだろう。主の住処を戦場にする訳にはいかんからな」

シグナムが頷いた。

そして、俺達は、はやての家から消えた。




俺達が現れたのは、海鳴市の山中。

そこでリニスに結界を張ってもらい、俺は守護騎士に向き直る。

「なら、始めるか。先に言っとくと、ユーノとリニスに手は出させないからな」

俺が呟くと、ヴィータが前に出る。

「アタシが相手だ!」

グラーフアイゼンを俺に向かって突きつける。

「・・・・・・そういえば、今のあんた等は、バリアジャケット・・・・・・・騎士甲冑が無いんだったな・・・・・・」

俺はそう言う。

「ああ。けど!お前なんかに甲冑は必要ねえ!」

しかし、ヴィータは気丈にもそう叫んだ。

「・・・・・その言葉は、これを見てから言ってくれ。ブレイズ、セットアップ」

俺はブレイズを起動させる。

その瞬間あふれ出す俺の魔力。

「「「「「なっ!?」」」」」

驚きの声を漏らす守護騎士達。

俺はバリアジャケットを纏う。

「さあ、来い!」

俺は、そう叫ぶ。

「ぐっ!舐めんなぁっ!!」

ヴィータは目の前の現実を振り払うようにグラーフアイゼンを振りかぶる。

「テートリヒ・シュラーク!!」

そのグラーフアイゼンを思いっきり振り下ろした。

それに対して俺のした行動といえば、左腕を上げることだけ。

――ガキィ!!

金属同士の衝突音が鳴り響く。

俺は、微動だにせずヴィータの一撃を受け止めた。

「なっ!?」

その事に驚愕するヴィータ。

流石にビクともしなかったのは予想外らしい。

「チィ!」

ヴィータは一旦飛び退き、鉄球のような魔力弾を4発準備する。

『Schwalbefliegen』

そして、その4つの魔力弾を、グラーフアイゼンで一気に打ち込んだ。

「くらえぇっ!!」

4つの魔力弾は、一直線に俺に飛んでくる。

これは誘導弾という事は分かっているが、あえて俺は動かなかった。

そのまま4つの魔力弾は俺に直撃する。

しかし、この程度では、ブレイズのバリアジャケットには、傷1つ付かない。

爆煙が晴れて俺の姿を確認したヴィータの表情が驚きに染まっている。

「この程度か?」

あえて俺は、挑発するような態度で問いかける。

守護騎士達に話を聞いてもらうには、全力の彼女達を圧倒する必要があると思ったからだ。

すると、ヴィータは明らかに敵意を持って俺を睨み付ける。

「舐めやがって!グラーフアイゼン!カートリッジロード!!」

『Explosion.』

ヴィータの命令で、グラーフアイゼンがカートリッジを装填する。

『Raketenform.』

そして、ラケーテンフォルムに変形。

スパイクとジェット噴射口が付いた形態になる。

ジェット噴射口から火を吹く。

そして、その勢いのままヴィータは数回回転。

「ラケーテン・・・・・・・」

そのまま勢いを殺さず俺に襲い掛かった。

「ハンマーーーーーーーッ!!」

俺は、右手のドラモンキラーを盾の様に構え、その攻撃を防御する。

受け止めた瞬間、勢い良く後ろに押されだす。

「ぶちぬけぇえええええええっ!!」

ヴィータは気合を込めて叫ぶ。

だが、俺が足を踏ん張ると、押される勢いは徐々に弱まり、やがて止まる。

「なっ!?馬鹿な!?」

「ヴィータちゃんのラケーテンハンマーをっ!?」

「受け止めただと!?」

その様子を見ていたシグナム、シャマル、ザフィーラは驚愕の声を漏らす。

ヴィータは驚愕の表情を浮かべるが、

「はぁああああああっ!!」

俺は力を込めて、勢い良くヴィータを押し返した。

「うわっ!?」

ヴィータは吹き飛ばされた勢いに耐え切れず、少し振り回される。

ヴィータはすぐに体勢を立て直すが、俺はその一瞬でヴィータの目の前にドラモンキラーを突きつけていた。

ヴィータは信じられないといった表情を浮かべている。

俺は一旦ドラモンキラーを下げ、

「これでどっちが舐めていたかハッキリしただろ?全員で掛かって来い!」

全員に向かってそう言った。

「そっちこそ舐めるなっ!」

ヴィータは叫んで再び突っ込んでこようとしたが、

「待て、ヴィータ!」

シグナムが止める。

「シグナム!でも・・・・!」

「悔しいが、奴の強さは我々の個々の強さを遥かに超えている!奴の言うとおり、全員で掛からねば勝てん!」

シグナムがそう叫ぶ。

俺はその言葉に若干驚いていた。

アニメでは、ベルカの騎士に1体1で負けは無いとか言ってたからな。

まあ、それだけ状況把握が確りしてるってことだな。

「へ~、流石烈火の将、リーダーだけあって、状況が分かっているらしいな」

あくまで俺は挑発的な態度を取り続ける。

でも、内心謝りまくりです。

舐めた口利いてすみません。

馬鹿にした態度とってすみません。

いや、もう何でもいいからすみません。

俺の言葉に、シグナムは敵意を持って俺を睨み付ける。

うぅっ、心が痛い。

「我ら騎士を侮辱した態度、その身を持って償え!!」

シグナムが叫び、レヴァンティンを構える。

「レヴァンティン!カートリッジロード!!」

『Explosion.』

カートリッジロードと共に、レヴァンティンに激しい炎が宿る。

「紫電・・・・・・一閃!!」

シグナムが斬りかかってくる。

「はぁああああっ!!」

俺はドラモンキラーで迎え撃つ。

――ガキィ!!

ドラモンキラーの刃とレヴァンティンがぶつかり合い、激しい火花を散らす。

「おらっ!!」

俺が押し切る。

「くっ!」

シグナムが飛び退くが、俺はそれを追撃する。

「はっ!」

左腕のドラモンキラーを突き出す。

「やらせん!」

だが、そのシグナムの前にザフィーラが立ち塞がり、障壁によってドラモンキラーを受け止める。

手加減したとはいえ、ドラモンキラーを防ぎきるとは流石だなと感心する。

だが、俺は右手を振りかぶり、魔力を込める。

「ドラモンキラー!!」

魔力が込められた本当の一撃を放つ。

俺の突き出したドラモンキラーは、障壁に当たると一瞬止まるが、難なく突き破る。

しかし、

「盾の守護獣を・・・・・舐めるなぁ!!」

ザフィーラは、ドラモンキラーを素手で横から挟むように受け止めた。

「ウソォ・・・・・」

その行動に、俺は思わず声を漏らす。

ザフィーラは、身体を張って俺の一撃を受け止めたのだ。

俺が一瞬呆けた瞬間。

『Blaze Cannon』

かなり強力な魔力弾が俺に直撃する。

「どわっ!?」

ダメージは無いが、俺はビックリした。

どうやら今のはクライドさんが放ったものらしい。

「うぉらぁああああああああっ!!」

続けてヴィータが真上からラケーテンハンマーで殴りかかってきた。

「うおっと!?」

俺は飛び退く。

だが、ヴィータの一撃は地面に叩き込まれ、土煙を上げる。

「くっ」

土煙によって視界が塞がれる。

その瞬間、

「縛れ!鋼の軛!!」

俺の周囲の地面から、鋼の軛が俺を串刺しにせんと突き出てくる。

「ちぃ!!」

俺は右腕に魔力を込め、かなり強く地面にドラモンキラーを打ち込んだ。

――ドゴォォォォォォォン

俺の一撃は、地面ごと鋼の軛を吹き飛ばし、半径5mほどのクレーターを作った。

それと同時に土煙も吹き飛んだため、俺は周りを確認する。

その時、視界の片隅に、旅の鏡を発生させているシャマルの姿を捉えた。

「やべっ!アイシクル!!」

俺は瞬時にバリアジャケットをアイシクルの物に変更する。

そして、シャマルが旅の鏡に手を入れる寸前、

「うぉおおおおおおおっ!!」

俺は全力で背中のブーストを吹かし、全速でその場を離脱した。

一瞬遅れて俺がいた場所にシャマルの手が突き出される。

「ああっ!外しちゃった!」

シャマルが残念そうに声を漏らす。

俺は空中に退避した所で、

「あっぶね~・・・・・危うく蒐集される所だった・・・・」

流石に今のは油断しすぎたな・・・・・

俺は気を引き締めなおし、

「だったら、一気に終わらせる!アイシクル!全砲門展開!」

『Yes, Master. All weapons, Full open.』

バリアジャケットの装甲が展開していく。

「グレイスクロスフリーザー!!」

俺は守護騎士達に向けて無数のミサイルを放った。

守護騎士達には広域殲滅は無かった筈だから、これは防ぎきれないだろうと思っていた。

だが、その時クライドさんが前に出る。

そして、持っている杖を構え、

「シュバルツファーター、カートリッジロード!」

杖がカートリッジを装填すると、無数の魔力刃がクライドさんの周りに発生する。

これって・・・・・・

「スティンガーブレイド!エクスキューションシフト!!」

クライドさんは、その魔力刃を一斉に放った。

流石父親。

クロノと同じ魔法だ。

無数の魔力刃が、俺の放ったミサイルを撃ち落していく。

威力としてはこっちの方が上だけど、ミサイルは何かに当たったら爆発するようになってるからな。

ともかく、この位で驚いてはいられない。

直撃はしなくても、解放された冷気は空気中の水分を凍らせて、守護騎士達の視界を塞いでいる。

ならば利用しない手は無い。

俺はアイシクルのスピードを活かし、一直線にシャマルに向かって突っ込んだ。

「なっ!?」

氷の霧の中から突然突っ込んで来た俺にシャマルは反応できず、

「先ず1人」

俺は指先にカイザーネイルの魔力刃を発生させてシャマルの首筋に突きつけた。

初めにシャマルを狙った理由は、旅の鏡が厄介だからだ。

俺はすぐ振り返り、

「ブレイズ!」

再びバリアジャケットをブレイズの物に変更する。

その俺の前に立ち塞がるのはザフィーラ。

ザフィーラは障壁を張り、身構える。

確かにドラモンキラーなら受け止められる可能性があるだろう。

だが、俺はかまわずザフィーラに向かっていく。

俺は地を蹴り、水平に飛ぶ。

そして、頭上で両手のドラモンキラーを合わせ、回転を始める。

「何っ!?」

ザフィーラは驚愕の声を漏らす。

「ブレイブトルネード!!」

俺は黄金の竜巻となり、ザフィーラに突っ込んだ。

「ぐ、ぐぉおおおおおおっ!?」

俺は、ザフィーラの障壁を紙の如く打ち破り、ザフィーラに直撃しないように調節して吹き飛ばす。

俺は回転を止めて着地する。

その瞬間、かなりの魔力を感じた。

其方を振り向くと、シグナムがレヴァンティンのボーゲンフォルムを構えている。

「駆けよ!隼!」

『Sturmfalken.』

魔力光で輝く矢が放たれた。

それに対して、

「ブレイブシールド!!」

背中の装甲を両腕に装備し、前面で合わせて盾にした。

――ドゴォォォン!

直撃と同時に爆発が起こる。

更に、

「轟天爆砕!」

ヴィータがグラーフアイゼン、ギガントフォルムを振り回し、更に巨大化する。

「ギガント!シュラーーーーーク!!」

ヴィータは凄まじい大きさのハンマーを俺に向かって振り下ろした。

――ズドゴォン!!

そのハンマーの下敷きになる俺。

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・手こずらせやがって・・・・・」

ヴィータは肩で息をしているようだ。

「ああ、我らヴォルケンリッターの最強の攻撃を同時に受けたのだ。無事では済むまい」

シグナムもそう言っている。

いや、残念なんだけどさ。

俺はそう思いながら、自分を押しつぶしているグラーフアイゼンを持ち上げる。

「なっ!?まさか!?」

それに気付いたのか、ヴィータは驚愕の声を上げる。

ハンマーの下から、グラーフアイゼンを持ち上げる俺の姿を捉えると、シグナムも驚愕の表情になった。

「ば、馬鹿な・・・・・我らの最強の攻撃を受けて・・・・・・無傷だと!?」

シグナムはそう漏らした。

「よいしょっと・・・・」

俺は、自分の上からグラーフアイゼンを退けると、

「今のは流石に痛かったぞ。タンコブできたし」

そう言いながら頭を擦る。

とは言っても、シグナム達からすれば無傷に等しいか。

俺は気を取り直すと、

「じゃあ、そろそろ決めさせてもらうぞ!」

俺は両手の間にガイアフォースを生み出し、

「ガイアフォース!!」

残った3人の中心に向けて放った。

「くっ!」

3人はそれぞれ散開しようとしたが、

「弾けろ!!」

――ドォオオオオオオオン!

俺の合図と共に、ガイアフォースが3人の中央で破裂。

凄まじい衝撃が辺りを襲う。

「ぐあああああっ!」

「うわぁあああああっ!」

「くぅううううううっ!」

それは、バリアジャケットの無い3人に耐え切れる物では無いだろう。

3人はそれぞれ吹き飛ばされていく。

そして、それぞれが地面に激突した。

「・・・・・・・大丈夫かな?」

思ったよりも派手に地面に激突した為に、ちょっと心配になる俺。

拙いかなと思った俺は、

(ユーノ!リニス!ヴィータとクライドさんの治療を頼む!俺はシグナムの所へ行く!)

(分かった)

(了解です)

ユーノとリニスに念話を送り、返事を貰う。

俺は急いでシグナムの所へ向かうと、

「げ・・・・・」

シグナムが激突したと思われる地面はかなり抉れており、シグナムも頭から血を流し、身体中をボロボロにして気絶していた。

俺は慌てて治癒魔法を施す。

幸いにも、それほど骨折などの重傷は無い様で一安心。

俺の気持ちにも、若干の余裕が出来る。

改めてシグナムの身体を確認すると・・・・・・

「ッ!」

俺は慌てて目を逸らした。

シグナムの今の格好は、闇の書から現れたときと同じ、黒いインナーのような服装だ。

つまりはボディラインがはっきりと分かる物。

それで、シグナムはスタイルが良い。

しかも所々ボロボロ。

つまり目の毒だ。

思わず欲望に負けて其方に目を向けてしまいそうになる。

いかん!煩悩退散、煩悩退散!喝!!

俺は治癒魔法を継続しつつ必死に煩悩を振り払っていた。

そして、暫くすると、

「う・・・・く・・・・・」

シグナムが身動ぎし、意識を取り戻す。

「気が付いたか?」

俺はシグナムの顔だけを見るように注意しながら話しかける。

「くっ・・・・・貴様はッ・・・・・っう」

シグナムは勢い良く起き上がろうとしたが、身体の痛みに顔を顰める。

「無理するな。まだ治ってないんだ」

俺は口で注意しながら治癒魔法を続ける。

「どういう心算だ?」

シグナムが問いかけてくる。

「どういう心算って・・・・・怪我させちゃったから、治療してるだけだが・・・・・・」

俺はそう答える。

「何故だ?貴様は管理局の人間なのだろう?」

シグナムの言葉に、俺はため息を吐いた。

「はぁ・・・・・だから違うっての。俺は管理局が嫌いなんだ」

呆れたように言う。

「しかし・・・・」

「よく考えてみろ。管理局だったら、はやてが闇の書の主と分かった時点で確保する筈だ。はっきり言ってこんな1対5なんて危険な真似するわけないだろ?」

「むぅ・・・・・・確かに・・・・・・ならば、何故お前はこのような危険な真似をした?」

「まあ、俺は口でアンタ達を納得させる自信が無かったし、何よりアンタ達は騎士だからな。結果は如何あれ、戦った方が相手のことを理解できるだろ?」

「ふっ・・・・・確かにな。少なくともお前の刃には、やましい感情は感じられなかったからな」

シグナムが軽く微笑む。

「そういう事だ。そういえば、謝罪がまだだったな」

「謝罪?」

「ああ、お前たちに全力を出させる為とはいえ、色々と挑発的な態度を取ったからな。済まなかった」

俺は頭を下げる。

「おかしな奴だ・・・・・」

シグナムは呟く。

「自覚してるよ」

俺はそう返した。

やがて、治療が終了する。

「よし、大体治ったろ?」

「ああ、問題ない」

シグナムは起き上がる。

「・・・・・そういえば、名はなんと言った?」

シグナムが問いかけてくる。

「ユウだ。ユウ・リムルート。日本での名は利村 ユウ」

「そうか・・・・・・ユウ、お前達が管理局員で無いことは信用しよう」

「そっか、ありがとな」

俺は一応信用してくれた事に感謝した。

と、その時、

――ブチッ

と、何かが引きちぎれる音がした。

「何だ?」

俺が何の音かと周りを見渡した時、

「ん?」

シグナムが声を漏らした。

俺が、シグナムの方に顔を向けると、

「ブッ!!??」

俺は思わず吹き出した。

再度言うが、シグナムの服装は闇の書から出てきた時のままで、薄手のインナーのような物。

しかも、シグナムの服は、背中が半分開いており、前の服を支えているのは首に掛かっている細い所のみ。

そして、そこが先程の戦いで傷ついていたらしく、たった今千切れたようだ。

つまり、前の服を支える物が無くなってしまったという事。

ともすれば導き出される答えは1つ。

生で見てしまったという事だ。

「#$%&#$%&!!!???」

声にならない声を上げる俺。

「如何した?」

当のシグナムは、全く意に介してないようで、隠しもせずに俺に近付く。

それに耐え切れなくなった俺は、

「ぬがぁああああああああああああああああああっ!!!」

叫びながらその場を走り去ったのだった。









あとがき

やりたい放題の十八話完成。

とりあえず5人目の守護騎士は多くの方が予想していた通りクライドさんでした。

守護騎士になった理由は納得できますかね?

その辺りの説明がちぐはぐ&グダグダになってしまったような気が・・・・・・・

それはともかく、ヴォルケンファンの皆様御免なさい!

フルボッコとは行かないまでも、圧倒してしまいました。

けど、まともに話しても言う事聞かないと思ったので・・・・・・・

御免なさい。

最後のやり取りは、まあ、思い付きです。

ともかくこんなんで。








話は変わりますが、今更ながら恋姫無双(無印)をダウンロードショップで購入してやってみる。

普通に面白かった。

そんでもって、俺のデジモン大好き妄想頭がフル回転。

セイバーズ辺りとならクロスできるんじゃね?

と馬鹿なことを考えてみる。

まあ、やるとしても、3つある小説の1つを完結させてからですけどね。

では、次も頑張ります。



[15302] 第十九話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/05/02 21:59
第十九話 闇の書の真実




戦いを終えた俺達は、一度集まっていた。

一度話したシグナムや、元から大人なクライドさん以外の3人は、悔しそうだ。

特にヴィータの機嫌が悪い。

流石に5対1で負けるとは思ってもみなかった様だ。

「あ~~~・・・・・・っと、とりあえず気は済んだか?」

俺は気まずそうにそう尋ねる。

「・・・・・・とりあえず、お前の目的を聞かせろ」

シグナムがそう尋ねる。

因みにちゃんと服は直したようだ。

「目的っつってもね・・・・・・・ただ単にはやてとは知り合いになっただけだし。まあ、はやてが闇の書の持ち主だって言うのなら、はやてを助ける事が目的になるのか?」

俺は、一応本当のことを言う。

「主を助けるだと?どういう事だ?」

シグナムが怪訝な表情で尋ねてくる。

「これははやてを交えて話した方がいいからな。後で話すよ。もうすぐ昼だから、はやて達も戻ってくる頃だろうし」

俺はそう言って話を終わらせる。

守護騎士達は、渋々と従った。





「ただいま~~~・・・・・って、うわっ!?」

帰ってきたはやてが、ボロボロになった守護騎士達を見て、驚きの声を上げる。

「ど、どないしたん?皆ボロボロやないか?」

はやてがそう尋ねると、

「主・・・・これは・・・・その・・・・・」

シグナムが言いよどむ。

「皆が買い物に行ってる間、暇だったから、力比べの模擬戦をしてたんだよ」

「へ?」

俺の言葉に、呆気に取られた顔をするはやて。

「結果は、まあ、見ての通り」

俺がそう言うと、

「ユ、ユウ君無傷で勝ったん!?」

はやてが驚きながら尋ねてくる。

「無傷じゃねえよ。タンコブできたし」

俺は頭を擦りながらそう答える。

「「ええっ!?ユウ(君)に一撃入れたの!?」」

今度は、なのはとフェイトが驚愕の声を上げた。

「って、なのはちゃん達驚くのそっちなん!?」

はやてが2人の言葉に突っ込む。

「当然だよ!この前、私と桜お姉ちゃん、フェイトちゃん、アルフさん、ユーノ君で、ユウ君と模擬戦したんだけど、まともなダメージも与えられずにあっさりと負けたんだよ!」

なのはが、そうまくし立てる。

「うん!何をやってもユウには通用しなかったから!」

フェイトもそう言う。

「ユ、ユウ君って、そんなに凄いん!?」

2人の言葉に、はやてが驚きながら尋ねる。

「ええ、ユウは、次元世界最強の魔導師って言っても過言じゃないから」

桜がそう言った。

「マ、マジなん・・・・?」

はやてが、信じられないといった表情で問いかけてくる。

「次元世界最強かどうかは知らないけど、そんじょそこらの魔導師よりは、チートすぎる才能を持ってることは確かだな」

俺はそう答える。

世の中上には上がいるんだし、俺が絶対最強とは思えない。

寧ろ、精神的に弱いし俺。

「まあ、こういう後ろ向きな性格のお陰で、強さを鼻にかけた奴には、ならなかった訳だけど・・・・・・」

桜が補足する。

「だから、守護騎士達が負けた事は、別に恥じる事じゃない。寧ろ、一撃入れたことを誉めるべきね」

そう言った。

「ほえ~・・・・・ユウ君には驚かされてばっかりやなぁ・・・・・」

はやてがそう呟く。

「とりあえず、着替えさせたら如何だ?」

俺は、皆が持っていた買い物袋に目をやりながらそう言った。






守護騎士達の服装は、アニメの通りのものだった。

クライドさんは、黒を基調にした服装である。

あと、ザフィーラは狼形態になっていた。

全員が着替え終わると、シグナムが口を開いた。

「さて、聞かせてもらおうか。先程お前が言っていた意味を」

「え?何のことなん?」

はやてが首を傾げる。

「ああ、俺も闇の書についてはある程度知識を持ってる。その説明だ。まあ、信じる信じないはそっちに任せるが」

俺がそう言うと、桜が突っついてくる。

(ちょっと、話すつもりなの?)

そう小声で尋ねてきた。

(ああ。流石に証拠は無いけど、そうなる可能性がある程度には頭に入れて欲しいし)

俺はそう答えた。

俺ははやて達に向き直り、

「まあ、俺は遠まわしに言うのは得意じゃないからはっきり言うが、はやて」

真剣な顔ではやてを見る。

「ど、どうしたん、ユウ君?」

ちょっと戸惑った様子で聞き返す。

「このままだと、はやては助からない」

俺がそう言った瞬間、

「ちょっと!それどういう事よ!!」

アリサが叫んだ。

「聞いての通りだ。このままだと、もって今年いっぱいだろう」

俺の言葉に、言葉を失うなのは達。

「な、何言うてんのやユウ君。冗談にしては、笑えへんで」

はやてが引き攣った表情でそう言う。

「・・・・・・・・・」

俺はただ、真っ直ぐにはやての目を見る。

「・・・・・・本当・・・・・・なんやな・・・・・・・・」

はやてが声を絞り出す。

「ああ」

俺は頷く。

「原因は何だ?」

ザフィーラが問いかけてくる。

「原因は闇の書だ」

俺のその言葉で、全員の視線が闇の書に集中する。

「闇の書は、一定期間蒐集が無いと、主の魔力や資質を侵食する。はやての足が悪いのも、それが原因だろう」

その言葉に、はやては自分の足を見る。

「それならば、闇の書を完成させれば問題ないのではないか?」

シグナムがそう言うが、

「闇の書を完成させて・・・・・・・どうなった?」

「何?」

「今までの主は、闇の書を完成させてどうなったんだ?」

「それは・・・・・大いなる力を手に入れて・・・・・・・」

「その力で何をした?」

「それは・・・・・・・」

俺がそう聞くと、シグナムたちは思い出そうとしているが、言葉が出てこない。

「無差別破壊だ」

俺はそう断言した。

「何でそう断言できるの?」

シャマルが尋ねてくる。

「俺の知ってる闇の書の知識を教えてやる。闇の書・・・・・いや、本当の名は『夜天の魔導書』。本来の目的は、各地の偉大な魔導師の技術を蒐集して、研究するために作られた、主と共に旅するだけの資料本みたいなものだ。だけど、歴代の持ち主の誰かがプログラムの改変を繰り返し、その機能に障害が起こった。その代表的なものが、転生機能と無限再生。前者が旅をする機能、後者が破損したデータを自動修復する機能が暴走した結果だ。それで、一番タチが悪いのが、持ち主に対する性質の変化。さっき言った一定期間蒐集が無いと、持ち主自身の魔力や資質を侵食し始める事と、完成したら、無差別破壊の為に持ち主の魔力を際限なく使わせる事だ」

俺は、アニメでユーノが言っていた情報を話す。

「出鱈目言ってんじゃねえ!!第一、証拠はあるのかよ!!」

ヴィータが叫ぶ。

そりゃ信じられるわけはないな。

「証拠なんかあるわけ無いだろ?あくまで俺が『知ってる』ことなんだからよ。まあ、無限書庫で調べれば裏づけぐらいは出来るのかもしれないけど・・・・・・」

俺はそう言うが、

「それは無理だろう。無限書庫は、時空管理局の本局にある。管理局と関わらないで無限書庫を使うのは不可能だ」

クライドさんがそう言う。

確かに。

「・・・・・・・・主を救う方法はあるのか?」

シグナムが、そう尋ねてきた。

「シグナム!?こんな奴のいう事を信じるのかよ!?」

ヴィータがシグナムに詰め寄る。

「ユウの言っている事が正しいかどうかは別にして、嘘は言っていまい。お前も刃を交えたのなら、それは分かっているはずだ」

「・・・・・・・」

ヴィータが俯く。

「あの・・・・・」

フェイトが口を開く。

「母さんに頼んで、闇の書を直してもらう事は出来ないのかな?」

フェイトがそう言った。

「そっか!母様ならそういう事得意そうだし!」

アリシアもそう言うが、

「それは無理だ」

俺はその案を却下する。

「どうして?」

すずかが尋ねてくる。

「ふざけた事に、闇の書には、無理に外部からアクセスしようとすると、主を吸収して転生する機能が付いてるんだ」

俺はそう説明する。

「そっか・・・・・・」

フェイトは気落ちする。

「それで、手はあるのか?」

シグナムが尋ねてくる。

「手は2つ。1つは、ほぼ確実に成功する手で、はやては確実に助かる。2つ目は、成功率は全くの未知数だけど、成功すれば、皆纏めてハッピーエンド。どっちを選ぶ?」

「一つ目と二つ目は何が違うんだよ?」

ヴィータが問いかけてくる。

「一つ目の方法は、闇の書を初期化して、夜天の魔導書に戻す方法」

「ちょっと待って!たった今、闇の書の修復は不可能だって・・・・・」

シャマルがそう言ってくる。

「無理にアクセスすればな。俺がやろうとしている方法は、アクセスとかそんなことをせずに、『闇の書』そのものを問答無用で初期化する事だ」

「そ、そんなこと出来るの!?」

「ブレイズと、アイシクルの切り札なら出来る」

俺は断言した。

「闇の書を初期化して、夜天の魔導書に戻せば、はやてへの侵食は無くなり、はやては助かる」

「だったら!さっさと初期化すれば!」

ヴィータは叫ぶが、

「その場合、あんたら守護騎士は消える事になる」

俺はそう言った。

「「「「「なっ!?」」」」」

守護騎士が驚愕する。

「何でだよ!?」

ヴィータが叫ぶ。

「夜天の魔導書の初期バージョンには、守護騎士プログラムは組み込まれていない。守護騎士プログラムも歴代の主の誰かが組み込んだものだ」

「そんな・・・・・・」

ヴィータは声を漏らす。

「だが、我ら守護騎士、主のためならば消える事も「あかんて!!」ッ!?」

シグナムの言葉の途中で、はやてが叫んだ。

「消えるなんてあかん!!折角・・・・・折角家族が出来ると思っとったのに・・・・・・消えるなんて許さへん!!」

はやては涙を滲ませながら叫ぶ。

「と、あんたらの主は言ってるが?」

俺がシグナム達に尋ねると、

「・・・・・・・・・もう1つの手は?」

シグナムが問う。

「まあ、はっきり言って夢物語に近い手だが?」

「構わない、教えてくれ」

「じゃあ言うが、これは、はやての意思の強さが問題になってくる」

「私の?」

俺の言葉に、はやてが首を傾げる。

「まずは蒐集して、闇の書を完成させる」

「ちょっと待てよ!お前の話が本当なら、闇の書を完成させたら、はやては・・・・・!!」

俺の言葉の途中でヴィータが叫ぶ。

「最後まで聞け。そりゃ闇の書を完成させたらはやては闇の書に取り込まれる」

ごくりと、はやては唾を飲み込む。

「そして、そこで何とかして、夜天の魔導書の管理者権限を取り戻せ」

「へ?」

俺の、何とも無責任な言葉に、はやては声を漏らす。

「そして、管理者権限で夜天の魔導書から暴走したプログラムを分離させろ。そこで俺が暴走したプログラムを初期化して、初期化したプログラムをもう一度夜天の魔道書に組み込む。これで皆ハッピーエンド」

俺が其処まで言うと、

「ちょ、ちょっと待ってや。ユウ君簡単に言うとるけど、そんな簡単に行くん?」

「それは知らん。さっきも言ったように、成功率は未知数だ」

更なる無責任な言葉に、はやては呆気に取られる。

「ふ、ふざけんな!そんな成功する根拠の無い事をさせられるか!!」

ヴィータが怒鳴る。

「・・・・・・失敗した時は、如何するんや?」

はやてが尋ねてくる。

「失敗した時は、そのまま放って置くと、世界を1つ滅ぼしちまうからな。その時は、お前ごと闇の書を初期化する」

「私はどうなるんや?」

はやては、ほぼ確信している事を確認するように尋ねてきた。

「はやてが取り込まれた時点で、はやては闇の書の一部として認識されるだろうから、その状態で初期化すれば、はやても消える事になる・・・・・・・」

俺はそう呟く。

「つまり、死ぬって事やな」

はやての言葉に、俺は頷いた。

そして、俺は口を開く。

「もし、そうなった時は、俺も後を追うさ」

「「「「「「「えっ!?」」」」」」」

俺の言葉に、全員が驚愕する。

「はやてを殺したら・・・・・・・いや、はやてだけじゃない、シグナム達守護騎士のみんなも殺す事になったら、俺はそれに耐え切れないだろうからな・・・・・・・・俺は、仲間を自分の手で殺して平気でいられるほど強くはない」

「な、何を言っている!?我ら守護騎士は、主の僕。言わば道具だ。主の事はともかく、我らの為にそんなことをする必要は・・・・・・」

シグナムがそう言うが、

「それは、今までの主での話だろ?はやてはそんなことを望んでない筈だ」

「その通りや。私がみんなに望むのは、僕とか、道具とか、そんな関係やない。私が望むのは、家族になってもらう事や」

「そういう事だ。だから、はやてがアンタ達の主である限り、アンタ達は“ヒト”なんだ」

「「「「・・・・・・・・・」」」」

シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラは呆気にとられた顔をする。

クライドさんは微笑んでいた。

「そういう事やから、私が選ぶのは2つ目の手や」

はやてが言った。

「ユウ君にああまで言われたら、絶対に成功させるしかないやないか。あれこそホントの殺し文句やな」

落ち着いて考えてみれば、先程の発言は、結構そういう風に取れるかも・・・・・・・

「まあ、当面の行動は、管理局にばれない様に蒐集することだな。その為には、魔導師からの蒐集は避けるべきだ」

「仕方あるまいな。管理局に見つかれば蒐集し辛くなる」

「それだけじゃない。はやてほどの魔導師は、管理局にとって、喉から手が出るほど欲しいだろうから、何だかんだ言って、管理局で働かされる可能性が高い」

「なるほど」

「あと、蒐集した生物は、俺が魔力を与えて回復させる。そうすれば、管理局にも気付かれにくいだろう」

「・・・・・・・・・・・・」

ヴィータは暫く考え込んでいたが、

「とりあえず、テメーの言ってる事を全部信じたわけじゃねえ。けど、蒐集することは、あたし等の使命だ。だから、蒐集することに反対はしねえ」

ヴィータはそう言う。

「ああ。とりあえず、管理局に見つからないように蒐集してくれれば、俺からは何も言わない」

と、その時、

「私も手伝う!」

「私も!」

なのはとフェイトがそう叫ぶ。

この2人なら、当然そう言うと思った。

だから俺は、

「駄目だ」

その言葉を却下する。

「どうして!?」

なのはが叫ぶが、

「危険すぎる」

俺はそう言った。

「で、でも、ジュエルシードの暴走体よりかは!?」

「確かにジュエルシードの暴走体よりは弱い奴が多いだろう」

「だったら!?」

「けど、相手は無数にいるんだ」

俺の言葉に、2人はハッとなる。

「確かに1対1なら、お前たちが勝てない生物なんて、竜種なんかのほんの一握りぐらいだろう。けど、それだけで生き残れるほど、自然界は甘くない。一瞬の油断が、取り返しの付かない事に繋がるんだ」

「でも・・・・・」

「俺は、そんな自然界の中で、お前達を絶対に守れると断言できない。自分の身は、自分で守ってもらわなければいけない」

俺がそう言うと、なのは達は俯く。

「私もなのは達には悪いけど、ユウの意見に賛成よ。いくら資質があるといっても、あなた達はまだ9歳。戦闘も含めた、あらゆる経験が足らないわ」

桜もそう言った。

「桜お姉ちゃん・・・・・・」

なのはが呟く。

「ちょ、ちょっと、それならユウも一緒じゃ・・・・・・」

アリサがそう言うが、

「ユウの資質は、私やなのは達の資質と比べると、天と地ほどの差があるの。私達の資質でも、魔導師の中ではトップクラス。数字で言えば、普通の魔導師を10とすれば私達は100」

「へ~、なのはちゃん達って凄いんや」

はやてが感心した声を漏らすが、

「ユウは10000よ」

「い、いちまっ・・・・・」

桜の言葉に絶句する。

「い、いくらなんでも大げさよね?」

アリサは俺にそう聞いてくるが、

「いや、資質だけで考えれば、確かにそのくらいだ。経験や戦闘技術で上下するけどな」

「う、嘘・・・・・・・」

「もっと分かりやすく言えば、俺は防御に徹すれば、原爆の爆心地でも、生き残る自信はあるぞ。流石に無傷とはいかないだろうけど」

「・・・・・・・・・・」

「だから、俺にとって怖いと思える相手は、神話クラスの相手だけだな」

俺の言葉に、絶句するなのは達。

「再度言うけど、それだけの力を持っていても、絶対になのは達を守れるかといえば、Noと言わざるをえない。例えば、なのはとフェイトが別々の場所で同時にピンチに陥った場合、俺は一人しかいないから、助けられるのはどちらかだ」

俺の言葉に、俯くなのは達。

俺は追い討ちをかける様に言葉を続ける。

「そして蒐集は、他の生き物を襲って魔力を奪う、言わば通り魔みたいな事をするんだ。そんなことを、お前達にさせる訳にはいかない」

俺はそう言った。

だが・・・・・・

「それでも・・・・・それでも私達だってはやてちゃんを助けたいの!」

なのははそう言った。

「ユウが私達のことを心配してくれる事は嬉しい。でも、私達も、はやてのことが心配なんだ」

フェイトもそう言う。

俺は頑固な2人にため息が出る。

「・・・・・・・はあ、仕方ない」

俺は顔を上げると、

「だったら、力を示して貰おう」

「「えっ?」」

俺の言葉に2人は声を漏らす。

「なのは、桜、フェイト、アルフ、ユーノの5人で、守護騎士と模擬戦をしてもらう。その中で、守護騎士と互角に戦えると判断したら、蒐集に連れて行ってもいい」

なのは達は、守護騎士達を見る。

「ただし、負けた時点で、お前らの魔力を蒐集させてもらう」

俺の言葉に、驚いた顔をする桜。

「こうでもしないと、お前らは勝手について来るだろうからな」

俺は思った事を言った。

その瞬間、なのはの顔が引き攣る。

やっぱり図星か。

「そうすれば、闇の書のページも溜まるし、なのは達にも危険さが分かって一石二鳥だ」

俺は、守護騎士達に向かってそう言う。

「ま、あたし等は闇の書の蒐集が出来るなら、特に文句はねえよ」

ヴィータがそう言う。

「それじゃあ、はやては、守護騎士達のバリアジャケット・・・・・・騎士甲冑を考えてくれ」

「騎士甲冑?」

俺の言葉に、はやては首を傾げる。

「はい、我々は、武器は持っていますが、甲冑は主に賜らなければなりません」

シグナムが説明する。

「自分の魔力で作りますから、形状をイメージしてくだされば・・・・」

シャマルが補足した。

「甲冑か~・・・・・・そう言われてもな・・・・・・」

はやては、手を頭に当てて考える。

「別に鎧に拘る事はないぞ?バリアジャケットの強度は、使い手のレベルで決まるから、見栄えで防御力が変化するなんて事はないから」

俺がそう言うと、

「そうなんか?それなら、服でええか?騎士らしい服」

はやてが思いついたように言った。

「ええ、構いません」

シグナムが頷く。

「ほんなら、資料探して、カッコえぇ~の考えてあげなな」

はやては楽しそうに微笑んだ。

「それじゃあ、はやてのバリアジャケットを考える時間と、守護騎士達の回復期間を合わせて、2日後の学校が終わった後に模擬戦をするか」

俺の言葉に、

「うん!」

「わかった」

なのは達は頷き、

「そんなら、それまでに形状を考えておくわ」

はやても頷く。

こうして、守護騎士となのは達魔法少女組の模擬戦が決定した。







あとがき


ご都合主義全開な十九話の完成。

突っ込みどころ満載です。

守護騎士の態度がコロッと変わっていたり、はやてが簡単に運命受け入れてたり、ユウが管理局を嫌う理由を聞かなかったり・・・・・・

とりあえず、その全てはご都合主義ということで。

本当ならバトルまで書きたかったんだけど、中途半端に説明が長くなったので、ここで切りました。

故に、今回は、盛り上がる所がありません。

ああ・・・・・空気になるキャラが多い・・・・・・・

ともかく、次も頑張ります。







[15302] 第二十話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/05/09 07:31
第二十話 守護騎士VS魔法少女





【Side なのは】



ユウ君が、はやてちゃんが持っていた闇の書について教えてくれた。

何でも、このままだとはやてちゃんは助からないらしいの。

でも、ユウ君にははやてちゃんを助ける方法があるみたい。

それで話し合った結果、助ける前段階として、闇の書を完成させる必要があるそうです。

ユウ君やシグナムさん達が、魔力を集める時の注意について話し合っていたとき、私とフェイトちゃんも手伝いたいと言いました。

でも、ユウ君は危険すぎるという理由で、私達の申し出を却下しました。

それでも、はやてちゃんを助けたかった私達は、食い下がりました。

すると、ユウ君はある条件を出してきました。

それは、シグナムさん達と互角に戦う事。

それが出来れば一緒に行っても良いと言いました。

それから2日。

今日は、シグナムさん達との模擬戦の日です。

学校が終わった後、海鳴の山にある特訓場にきています。

クレーターや地割れが増えていましたが、2日前のユウ君とシグナムさん達の勝負の跡だそうです。

それを見て、私は気を引き締め直しました。

絶対に勝って、連れてって貰うの!

因みにこの場には、模擬戦をする私達とシグナムさん達の他に、ユウ君とリニスさん、はやてちゃんにアリサちゃんとすずかちゃん、そしてアリシアちゃんがいます。

いわゆる立会人という奴です。

そして、ユウ君たちから少し離れた平地に、私、桜お姉ちゃん、フェイトちゃん、ユーノ君、狼形態のアルフさんと、シグナムさん、ヴィータちゃん、シャマルさん、狼形態のザフィーラさん、クライドさんが向かい合っていました。

私達は、デバイスを起動させます。

「レイジングハート!」

「バルディッシュ!」

「レイジングソウル!」

「「「セーット!アップ!」」」

私達がバリアジャケットを纏うと、アルフさんは、人間形態に姿を変えて身構えます。

ユーノ君も気を引き締めました。

「それがお前達の武器か・・・・・」

シグナムさんが私達を見て呟きます。

「ならばこちらも!行くぞ!レヴァイティン!!」

『Sieg.』

シグナムさんの言葉にデバイスが応え、ペンダントの形から、一本の剣に変わりました。

シグナムさんがその剣を掴むと、シグナムさんの服装がバリアジャケットに変わりました。

「導いて!クラールヴィント!!」

『Anfang.』

シャマルさんのデバイスは、ペンダントのチェーンから外れると、そのまま指輪としてシャマルさんの指に納まります。

そして、シャマルさんもバリアジャケット姿に変わります。

「やるよ!グラーフアイゼン!!」

『Bewegung.』

ヴィータちゃんのデバイスは、ハンマーの形に変わります。

そして、それをヴィータちゃんが一振りする間に、ヴィータちゃんの姿はバリアジャケットに変わっていました。

「・・・・・・・」

ザフィーラさんは、アルフさんと同じように人型に変わり、拳を握り締めます。

「シュバルツファーター、セットアップ」

『Yes, Master.』

クライドさんのデバイスは、杖型で、バリアジャケットは黒い服に銀の装飾がなされた物です。

そして何故か、クライドさんは顔に、仮面を被っていました。






【Side Out】





守護騎士達のバリアジャケットは、4人はアニメの通り。

クライドさんは、何処かクロノを思わせる、黒い服に銀の装飾がなされた物だ。

しかも、何故か仮面を被っている。

ガンダムOOのミスターブシドーみたいな仮面。

「・・・・・はやて、クライドさんの仮面は?」

俺ははやてに尋ねる。

「ああ、あれかぁ?クライドさんに頼まれたんや」

「クライドさんに?何でまた?」

「何でも、万が一管理局に顔を見られたら、クライドさんの家族に迷惑がかかるかも、っていう理由や」

「なるほど・・・・・」

はやての言葉に俺は納得する。

クロノはクソ真面目だし、リンディさんも本質的には真面目な性格をしてるからなぁ。

クライドさんの正体を知れば、悩みまくる事間違い無しだな。

まあ、今は模擬戦の観戦に集中しよう。

「それじゃあ、開始の合図は、このコインが地面に落ちた瞬間ね」

俺は、1枚のコインを取り出して言う。

みんなは頷く。

「それじゃ・・・・・・」

俺は、コインを親指で弾く。

コインは弾かれ、回転しながら弧を描き、

――キィン

地面に落ちた瞬間、

「はぁああああっ!!」

フェイトが持ち前のスピードを活かして、先制攻撃を仕掛けた。




【Side フェイト】




『Scythe form.』

私は、バルディッシュをサイズフォームに変形させ、リーダーと思われるシグナムに斬りかかる。

けど、

――ガキィ

その一撃はあっさりと止められる。

シグナムのレヴァンティンによって。

「お前の相手は、私がしよう」

シグナムはそう言う。

「シグナム!」

「烈火の将、シグナム!いざ参る!」

シグナムは、力尽くで押し返してくる。

「くっ」

私には、それに対抗する力は無い為、無理に逆らわず、後ろへ飛び退く。

「はぁああっ!!」

でも、シグナムは追撃を仕掛けてきた。

「くぅっ!」

私は、なんとかその一撃をバルディッシュの柄で受け止める。

強い・・・・・

私はそう思った。



【Side Out】





【Side なのは】




私は、ヴィータちゃんと対峙している。

「アタシは鉄槌の騎士ヴィータ。お前、何ていうんだっけ?」

ヴィータちゃんがそう名乗ってきます。

「なのは。高町 なのは」

私は名乗り返しました。

でも、

「タカマチ ナヌ・・・・・ナノ・・・・・・」

ヴィータちゃんにとって発音が難しいのか、うまく呼んでくれません。

「ええい!!呼び難い!!」

ヴィータちゃんが叫びました。

「逆ギレ~!?」

その言葉に、私も思わず突っ込んでしまいます。

「ともあれ、勝負というからには手加減しねー。蒐集は、お子様が遊び半分でやるような事じゃねーんだよ」

ヴィータちゃんが、グラーフアイゼンを突きつけながら言ってきました。

「遊び半分じゃないもん!私は本気だよ!それに、子供って言うなら、ヴィータちゃんだって子供なの!」

私は、レイジングハートを構えながら叫ぶ。

「アタシは子供じゃねえっ!!」

ヴィータちゃんは怒って殴りかかってきました。

『Protection.』

私は障壁を張って防ぎます。

「うおおおおおおっ!」

「くぅぅ・・・・」

ヴィータちゃんの一撃は、とても重い。

「中々かてえじゃねえか」

ヴィータちゃんはそう呟きます。

「今度はこっちの番だよ!」

私はそう言って一旦下がり、魔力弾を4発発生させる。

「ディバインシューター!!」

それをヴィータちゃんに向け放ちました。

「そんなモンで!」

『Schwalbefliegen』

するとヴィータちゃんも、鉄球のような魔力弾を4発発生させ、グラーフアイゼンで打ち出しました。

ヴィータちゃんの4発の魔力弾はそれぞれを相殺します。

「あっ!」

私は驚いた声を漏らす。

「おりゃぁあああああっ!」

ヴィータちゃんが魔力弾の爆発で出来た煙の中から飛び出し、殴りかかってきました。

「きゃっ!」

それを咄嗟にレイジングハートで受け止める。

「どうした!?こんなモンか!?」

「まだだよ!」

私は、気を取り直してヴィータちゃんに向き直りました。





【Side Out】



【Side 桜】




『Divine Shooter』

『Stinger Ray』

私の放った魔力弾を、クライドさんが迎撃する。

ハッキリ言って、勝てる気がしないわ。

相手は、私達と同じミッド式。

しかも、魔法に出会って1ヶ月そこらの私とは違い、時空管理局の提督にまで登り詰めた熟練者。

序に、カートリッジシステムまで搭載している始末。

資質、経験、武器の内、資質は負けてない、というか、多分私のほうが上だろうけど、経験と武器が圧倒的に負けてるわね。

いくら精神年齢が30代半ばと言っても、戦闘に関しては、全くの素人。

なのは達よりも広い考え方はできるけど、ただそれだけ。

そんなことを考えていると、

『Stinger Snipe』

クライドさんが、高速の魔力弾を一発撃ち出す。

「あぶなっ!」

私は間一髪それを避ける。

私は一瞬ホッとするが、今クライドさんが使った魔法を思い出す。

たしか、今のは誘導弾だったはず。

「くっ!」

私は咄嗟に上昇する。

その一瞬後に、後方から魔力弾が通り過ぎた。

その魔力弾は、クライドさんの頭上で弧を描くように動き続けている。

「よく避けたね」

そう言って、クライドさんは口元に笑みを浮かべる。

「じゃあ、次は如何かな?スナイプショット!!」

クライドさんが杖を振り下ろすと、頭上で弧を描いていた魔力弾が加速して私に襲い掛かってくる。

「このっ!」

私は必死になってその魔力弾を避けた。





【Side Out】





模擬戦が始まって5分程経つが、ユーノを除いた4人は、見事に苦戦している。

なのははヴィータの猛攻の前に防戦一方。

フェイトはシグナムの技量の前に攻めあぐねており、桜に至ってはクライドさんに翻弄されている。

アルフは、ザフィーラと格闘戦を行なっているが劣勢で、

ユーノとシャマルは最早バインドの掛け合いである。

どちらもサポートタイプだから、仕方ないといえば仕方ない。

『マスターは、状況を如何見ます?』

ブレイズが質問してくる。

「そうだなぁ・・・・・・ハッキリ言って、なのはの勝率はほぼ0に等しい。フェイトや桜でも良くて勝率一割ってところか」

『やはりその位でしょうね。圧倒的に場数が違いますから』

アイシクルも同意する。

「だな。今のあいつらじゃ、守護騎士には敵わないさ」

と、そんなことを話していると、

「グラーフアイゼン!カートリッジロード!!」

『Explosion.』

ヴィータの命令で、グラーフアイゼンがカートリッジを装填する。

『Raketenform.』

そして、ラケーテンフォルムに変形。

ジェット噴射により、ヴィータがその場で数回回転。

「ラケーテン・・・・・・」

その勢いのままなのはに襲い掛かる。

『Protection.』

なのはは障壁を張るが、

「・・・・ハンマァァァァァァッ!!」

ラケーテンハンマーは障壁を砕く。

「ええっ!?」

なのはは驚愕するが、

「おりゃぁあああああああっ!!」

ヴィータはラケーテンハンマーを振り抜く。

ラケーテンハンマーは、レイジングハートに直撃し、破損させる。

レイジングハートのデバイスコアにも罅が入った。

「レイジングハート!?」

その事実がなのはにショックを与え、

「ぶっとべぇぇぇぇぇぇっ!!」

なのははヴィータに吹き飛ばされた。

「きゃぁあああああああっ!!」

なのはは地面に叩き落された。

「なのは!」

アリサが叫んで走り出した。



一方、フェイトとシグナムは、

「レヴァンティン!」

『Explosion.』

カートリッジロードと共に、レヴァンティンに激しい炎が宿る。

「紫電・・・・・・」

シグナムはそれを振りかぶる。

『Defenser』

フェイトは咄嗟に障壁を張ったが、

「・・・・・一閃!!」

シグナムの一撃の前に容易く砕かれ、レヴァンティンの刃は、バルディッシュのコア付近に直撃する。

「バルディッシュ!?」

バルディッシュのフレームもひび割れ、デバイスコアにも影響が出る。

「おおおおおおおっ!!」

シグナムは剣を振りぬいた。

「うぁあああああああっ!!」

フェイトは、悲鳴を上げながら、地面に叩き落される。

「フェイト!!」

アリシアも我慢が出来なくなり、飛び出した。




撃墜された2人に気付いた桜は、勝敗を悟っていた。

「これは負けね・・・・・・まあ、最初から分かってた事だけど・・・・・」

桜はそう言ってため息を吐く。

しかし、桜は顔を上げ、

「でも、このまま成す術無くやられるのは癪だから、せめて一矢報いてやるわよ!」

桜は、クライドさんの放った魔力弾を見て、今度は避けようとせず、レイジングソウルのシューティングモードを構えた。

「ディバイン・・・・・・バスターーーーーッ!!」

桜の放った白銀の砲撃は、クライドさんの放った魔力弾を飲み込み、そのままクライドさんに襲い掛かる。

『Blaze Cannon』

対するクライドさんも、避けられないと悟ったのか、砲撃を放った。

砲撃同士がぶつかり合い、一瞬拮抗するが、

「こんのぉおおおおおっ!!」

桜が砲撃に込める魔力を増やし、力尽くで押し始める。

徐々に押されていくクライドさんの魔力砲。

だが、

「シュバルツファーター、カートリッジロード」

クライドさんは冷静にデバイスに命令を下す。

『Load Cartridge.』

クライドさんのデバイスがカートリッジをロードした瞬間、クライドさんの砲撃魔法が一気に増幅され、あっという間に桜のディバインバスターを押し返していく。

「このっ・・・・・!」

桜も負けじと魔力を込めるが、押し返されるスピードは減衰するものの、押し切られるのは時間の問題。

だが、桜の目は何かを狙っていた。

次の瞬間、桜のディバインバスターは完全に押し切られ、桜は砲撃魔法に飲み込まれた。

・・・・・かに見えた。

『Flash move.』

クライドさんの後方に、桜が現れる。

桜は砲撃に飲み込まれる寸前に高速移動魔法で避けていたのだ。

桜は思いっきり振りかぶり、

『Flash Impact』

渾身の力を込めて振り下ろした。

――ガキィィィン!

だが、その策ですら、クライドさんは読んでいた。

シュバルツファーターで、レイジングソウルを受け止めている。

「惜しかったね・・・・・」

クライドさんは、そう呟くと魔法を発動させる。

『Break Impulse』

発動させたのはブレイクインパルス。

――バキィィィィィン!

シュバルツファーターに接触していた部分を中心に、レイジングソウルの柄が砕け散る。

デバイスコアにも罅が入った。

「レイジングソウル!?」

桜は慌ててレイジングソウルのコアをキャッチする。

だが、次の瞬間には、桜はデバイスを突きつけられていた。

桜はクライドさんの目を見た後、ため息を吐き、

「降参よ」

降参の意を示した。






3人が負けたため、アルフとユーノにも勝機は無くなり降参する。

俺は3人の元まで歩いていくと、なのはとフェイトは落ち込んでいた。

「これで分かっただろ?今のお前達じゃ、無事で済む保障はないって」

2人は弱々しく頷く。

すると、

「では3人とも、デバイスを出してください」

リニスがそう言った。

3人がリニスに顔を向ける。

「其処まで破損してしまうと、自己修復機能だけでは対処不能です。本格的に修理しないと」

リニスは理由を述べる。

その理由を聞いて、3人はひび割れたデバイスを差し出した。

リニスは3つのデバイスを受け取る。

「これはまた手酷くやられましたね・・・・・」

リニスはそう呟く。

「リニス、ちょっといいか?」

「はい?」

俺はリニスを連れて、その場から少し離れる。

「そのデバイスの修理の時にちょっと頼みたい事があるんだが・・・・・・」

俺は、自分の考えを話した。

リニスはそれを聞いて、

「それはいいですけど・・・・・・やはりユウは優しいですね」

リニスは微笑む。

「甘い、の間違いだろ?そんなことは良いから頼んだぞ」

「はい、お任せください」

リニスはハッキリと返事をする。

それから皆の方を見ると、丁度3人が蒐集されている所だった。

これがあいつらの為とはいえ、蒐集されて苦しそうな表情を浮かべる3人を見たとき、どうしても罪悪感が湧いて、胸が痛んだ。





あとがき

第二十話完成。

守護騎士達の名誉挽回でした。

でも、シャマルとザフィーラは殆ど出番無し。

どうしてもバトルが思いつかなかった。

あと、バトルシーンが結構手抜きかも。

まともにバトルしてるの桜とクライドだけ?

後は何か物足りない気が・・・・・

まあ、こんなもんで如何でしょう?

にしても、PVがもうゼロ炎に追いついてしまった。

まだ、投稿数が半分にも満てないのに・・・・・

ともかく次も頑張ります。



[15302] 第二十一話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/05/16 15:36

第二十一話 守護騎士達の思い。





【Side なのは】



シグナムさん達との模擬戦から一週間。

ユウ君は、毎日夜遅くまで蒐集に行っています。

そのせいで睡眠不足があるようで、授業中にうたた寝してます。

そんなユウ君を見ている事しか出来ないのが悔しくてたまりません。

きっと、フェイトちゃんも同じ気持ちです。

でも、魔力を蒐集されてしまったので、今の私達にはどうする事も出来ません。

そんな思いを持ったまま、今日も学校が終わりました。

ユウ君は、何時も直接はやてちゃんの家に向かってます。

因みに闇の書のことも、お父さんやお母さん達には説明済みです。

当然口止めはしてありますが・・・・・

その時に、お母さんとお父さん、お兄ちゃん、プレシアさんに説教を受けてたのは、当然だと思うの。

その日、リニスさんからデバイスの修理が終わったとの連絡があり、私と桜お姉ちゃん、フェイトちゃんはリニスさんのところにデバイスを受け取りに行きました。

「はい。とりあえず、3つとも修理は完了しました」

そう言って、リニスさんは、デバイスを差し出してきます。

「ありがとうございます」

私達は、それを受け取って、お礼を言いました。

「感謝はユウにしといてくださいね。デバイス達の修理に使った部品代は、ユウが財産から出してくれたモノですから」

そのリニスさんの言葉を聞いて、私達は驚きます。

「ユウは、本当にあなた達の事を心配してくれてるんですよ。その証拠に、今渡した3つのデバイスには、ある機能が追加されています」

「ある機能?」

リニスさんの言葉に、フェイトちゃんが首を傾げます。

「あなた達が守護騎士に負けた理由は、大きく2つあります。それが何か分かりますか?」

リニスさんは、そう質問してきます。

「え、え~っと・・・・・・」

私は、あの時は必死でそんなことは何も考えていませんでした。

でも、

「主に武器の差と、経験の差ね」

桜お姉ちゃんが、あっさりと答えました。

「正解です。守護騎士達は、長い年月を戦い続けてきた、百戦錬磨の達人達です。その経験は簡単に覆せる物ではないでしょう。そして、もう1つ、彼女達の使う魔法は、ベルカ式と呼ばれる物です」

「ベルカ式?」

「はい。私達の使う魔法は、ミッド式と呼ばれ、主に中遠距離を中心に、オールラウンダーに戦うものです。しかし、ベルカ式は、遠距離や広範囲攻撃をある程度度外視して、対人戦闘に特化した魔法です。そして、そのベルカ式の一番の特徴は、カートリッジシステムと呼ばれる機能です。儀式で圧縮した魔力を込めた弾丸をデバイスに組み込んで、瞬間的に爆発的な破壊力を得るものです」

その話を聞いて、私はヴィータちゃんのデバイスが、薬莢のようなものを排出した所を思い出しました。

その直後の攻撃で、プロテクションを破られて私は負けたの。

「もしかしてあれが・・・・・・」

私は思わず呟きます。

「そのカートリッジシステムを、あなた達のデバイスに組み込みました」

「「えっ?」」

リニスさんの言葉に、私とフェイトちゃんが驚きの声を漏らしました。

「これもユウの要請です。あなた達には、必ず必要になるものだから、だそうです」

「ユウ君・・・・・・」

ユウ君、ちゃんと私達のこと、考えてくれてるんだ。

「ですが、プレシアはカートリッジシステムを組み込むことは、最後まで渋っていましたけど・・・・・」

リニスさんはそう呟きます。

「え、どうして・・・・?」

フェイトちゃんが疑問の声を漏らしました。

「カートリッジシステムは、身体への負担が大きいのです。使い始めは平気かもしれませんが、負担が蓄積されて、数年後には大きな事故へ繋がる可能性もあるのです。あなた達のような、身体が出来ていない子供は特に」

私達は、その話を真剣に聞いています。

「ですから、今回の闇の書の件が片付いたら、しっかりと検査を受けてもらいますからね!」

リニスさんは、真剣な顔でそう言いました。

「「「はい!」」」

私達は、しっかりと頷きます。

それじゃあ、早速・・・・・

「待ちなさい」

「にゃ・・・・・?」

私が動き出そうとした所を、桜お姉ちゃんに首根っこを掴まれて止められます。

「どうせなのはの事だから、守護騎士にリベンジしに行くつもりだったんでしょ?ついでにフェイトも」

「え・・・・・」

「う・・・・・」

見事に図星でした。

「アンタ達は・・・・・」

桜お姉ちゃんは呆れたように呟きます。

「アンタ達は、さっきのリニスの話、ちゃんと聞いてた?確かに武器のハンデは無くなったのかもしれないけど、まだ経験の差があるわよ。しかも自分のデバイスの性能も確かめずに。このまま行っても、デバイスの性能に振り回されて、この前の二の舞になるのがオチよ」

桜お姉ちゃんの言葉に、私達はシュンとなります。

「・・・・・・というわけで、1ヶ月間みっちり修行するわよ!」

桜お姉ちゃんの思いがけない言葉に、私とフェイトちゃんは思わず顔を上げました。

「私だって納得してるわけじゃないのよ。みんなでユウを見返してやりましょ!」

桜お姉ちゃんの言葉に、

「「うん!」」

私とフェイトちゃんは頷いた。






【Side Out】













【Side シグナム】




蒐集を開始して、一週間ほどが経過した。

現在の闇の書のページは、約80ページ。

その内の約60ページは高町姉妹とテスタロッサのものだが・・・・・・

3人を蒐集した時は、驚いた。

未熟だが、潜在能力は高そうだ。

成長した暁には再戦したいものだ。

蒐集そのものは、今のところ特に問題は無い。

まあ、我々が蒐集する生物を1匹仕留めている間に、ユウが5匹ほど仕留めていて驚いたのは記憶に新しい。

しかし、戦う時のユウの顔は辛そうに見える。

戦う事自体が怖いのか、それとも相手を傷つける事が怖いのか・・・・・・・

アイツの心は、正直言って戦士のものではない。

最高の戦士の資質を持っていながら、戦士に向かぬ心の持ち主。

だが、そんな心の持ち主でありながら、我らが不意打ちなどで危険な目に遭うと、一目散に飛んできてその状況を打破する。

ユウは、仲間が傷つく事を嫌がって・・・・・いや、恐れていると言っていい。

ユウの過去に何かあったのだろうか?

私を負かした男だからか、何故か気になる。

機会があれば、聞いてみるか・・・・・・・・





【Side Out】










【Side ヴィータ】




アイツの第一印象は、怪しい奴だった。

はやての近くに居る魔導師。

しかも、あたし達全員を手玉に取るほどの実力。

おまけに、闇の書のことも詳しすぎる。

管理局の回し者だって、疑わない方が無理だ。

アイツの言っていた闇の書の真実を全部信じた訳じゃないけど、蒐集することに変わりなかったから、とりあえず様子見にしておく。

でも、この一週間のアイツの様子を見て、少なくとも悪い奴じゃないという事はわかった。

何よりも、はやてが信頼してるし。

でも、はやてがアイツの事を好きって聞いたときには驚いた。

アタシには良く分からない感情だけど、はやてがアイツの事を話すときには、とても嬉しそうな表情をしている。

そういえば、アイツと戦った時に吹っ飛ばされたアタシを治療してくれた奴・・・・・・

たしか、ユーノって言ってたっけ?

そいつに助けてくれた時の礼をまだ言ってなかった。

はやても、「助けてくれた相手には、ちゃんとお礼を言わなあかんよ」って言ってたしな。

でも・・・・・・なんて言うか、アイツにやられて気絶してたアタシが目を覚ました時、ユーノはいきなり「大丈夫だった?」って笑顔を向けてきた。

なんかしらねえけど、思わず顔が熱くなった。

それ以来、ユーノの顔を見るたびに何でか顔が熱くなる。

そのせいで、礼を言おうと思っても上手く言えない。

今までこんな事なかったのに・・・・・・

如何しちまったんだろ、アタシ・・・・・・





【Side Out】














【Side シャマル】




蒐集が始まって一週間。

ユウ君の発案で、管理局に気付かれないように、蒐集した生物は治療し、ユウ君が魔力を与えて直ぐに回復させるようにしている。

確かにそれなら直接蒐集の現場を見られない限り、管理局に気付かれる可能性は低いだろうけど、ヴィータちゃんは、「めんどくせー」ってグチを言いながらやってる。

私も最初はユウ君も管理局に見つからない為だけにやってると思っていた。

でも、それは違った。

私もユウ君と一緒に蒐集した生物の治療を行なってる時に気付いた。

ユウ君は、回復させた生物達に、「大丈夫か?」とか「いきなり襲ってゴメンな」と、謝りながら治療している。

そして、生物達が元気になって自然に戻っていくと、ユウ君は、それを優しく微笑みながら見送る。

本当に嬉しそうに・・・・・・・

それを見て、私は彼が本当に優しい人なのだと分かった。

ユウ君が生物達を回復させるのは、管理局に見つからない為とかそんなのじゃない。

単純に、生物達が心配だからだ。

確かに蒐集そのものでは限界以上に魔力を搾り取らなければ命に関わる事は無い。

けど、自然界は弱肉強食。

蒐集によって弱った所を外敵に襲われたら一溜まりも無い。

私は、何となく「優しいのね」と呟いたら、「単なる偽善だよ」と彼は言った。

確かに見る人が見ればユウ君のやっている事は単なる偽善なのかもしれない。

でも私は、傷つけた生物達を放っておくよりも、自分で傷つけた生物達を助けて善人振るよりも、自分の行なった罪を認めて、受け止めるユウ君の姿は、とても立派に思えた。

私は、そんなユウ君を見て、自然と微笑む。

その時心に生まれた感情に、私はまだ気付いていなかった。





【Side Out】

















【Side ザフィーラ】




蒐集を始めた我々。

だが、ユウの実力はやはり群を抜いている。

我らの将であるシグナムや、突撃隊長とも言えるヴィータも当然ベルカの騎士の中では突出した実力を持っているが、ユウの前では霞んでしまう。

戦いの技術だけで言えば、ユウはまだまだ荒削りで隙も多い。

だが、身体強化によるパワーとスピードは、その隙を埋めても有り余るほどの力を持っている。

それは全て、ユウの持つ莫大な魔力による賜物だろう。

例え、完成された闇の書の主ですら、彼に敵うかどうか・・・・・・・

正直、彼を蒐集すれば、闇の書のページが全て埋まるだろうと思う。

彼ほどの者なら、その位は気付いているだろう。

しかし、何か理由があるのか、彼はそれを言い出さない。

そうでなければ、主の命の危機とあらば、自分から蒐集してくれと言い出すだろう。

彼はそういう男だ。

まあ、何を考えているのかは分からないが、心配することは無いだろう。

主はユウを信頼している。

ならば守護獣である我が彼を信じなくて如何する。

だが、主云々は抜きにしても、彼は信用できる。

何となく、そんな気がする。





【Side Out】












【Side クライド】




私は気になっていた。

利村 ユウ。

本名は、ユウ・リムルート。

リムルート・・・・・・それは、生前の友人と同じファミリーネーム。

気になった私は、彼と2人きりになったときに尋ねた。

「ユウ君、君の父親は、レイジ・リムルートかい?」

私の質問に、

「え? ええ、そうですけど・・・・・父さんとは知り合いだったんですか?」

少し驚いた顔をしてそう聞いてきた。

「ああ。彼とは友人同士だったんだ。母親は・・・・・・」

私がそう呟くと、

「リーラって聞いたことあります?」

母親であろう名前を口にしたので、その名前を思い出す。

「リーラ・・・・・・・そういえば、リンディの友人にいたな・・・・・・そうか・・・・・彼女が母親か」

「はぁ?・・・・・・知らなかったんですか?」

ユウ君は、ちょっと呆気に取られたような表情で問いかけてくる。

「ああ。私が生きていた時には、レイジに恋人が居るという話は聞いていなかったからな」

ユウ君はそれを聞くと、

「・・・・・ってことは、クライドさんが闇の書に吸収されたのが11年前・・・・・・・・クロノは当時3歳で俺とは5歳差だから俺が生まれる2年前・・・・・・・・つーことは出会って1年程度で・・・・・・ヘタすりゃ出会って即行で結婚したってことか・・・・・・・・」

なにやらブツブツと呟いている。

「所で、レイジは元気にしてるかい?」

私は、気軽に尋ねてみる。

「・・・・・・・・・・」

その途端、ユウ君の表情が重くなった。

「すみません・・・・・両親は、もう・・・・・・・」

その言葉で悟った私は、

「すまない・・・・・軽率過ぎた・・・・・・」

頭を下げて謝罪をする。

「いえ・・・・・友人であれば、気にするのは当然ですから・・・・・」

彼はそう言って、無理に笑顔を作る。

「・・・・・今度、2人の墓前に挨拶しに行ってもいいかな?」

私はそう尋ねる。

「はい、そうしていただければ、2人もきっと喜んでくれます」

ユウ君もそれに頷いた。

・・・・・・その為にも、闇の書の問題を早く解決させなければな。

私は、その決意を胸に、気持ちを切り替えるのだった。










あとがき


結構やりたい放題な二十一話の完成。

多少短いですがすみません。

ネタが思いつかなかった。

やっぱり自分はこういうイベントとイベントの合間の話が苦手です。

盛り上がる所と盛り上がらない所の差が激しいと言いますか・・・・・・・

書いててテンションが上がりません。

バトルとかなら、結構ノリノリで書くんですけど・・・・・・・

とりあえず、ユウがシャマルフラグを立て、シグナムにも若干立てました。

ユーノもヴィータフラグを立てましたね。

如何するか迷った挙げ句、ユーノのお相手はヴィータで行こうと思います。

さて、なのは達の修行ですが・・・・・・結果は次回をお楽しみに。

では、次も頑張ります。








[15302] 第二十二話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/06/06 15:41
第二十二話 守護騎士VS魔法少女Rリベンジ





【Side 桜】





特訓を始めて一ヶ月。

自分で言うのも何だけど、私達は、かなりレベルアップしたと思う。

なのはやフェイトにも、新しい魔法を覚えさせたしね。

ユーノも、リニスとプレシアさんに専用のデバイスを作ってもらったし。

それにしても、この一ヶ月、ユウの姿を見るのは歯痒いものがあった。

その、もっとも例たる出来事が、蒐集を始めて2週間位経ったある日のこと・・・・・




学校での算数の授業の時、ユウは居眠りをしていた。

今までは、何時も眠そうにはしていたが、決して居眠りはしなかった。

でも、それは仕方ないと思う。

いくら強くて大人の精神を持っているといっても、身体はまだ8歳の子供なのだ。

夜遅くまで蒐集しているため、どうしても睡眠時間が削られる。

大人なら大丈夫だっただろうが、子供の身体では辛い。

よって、授業中に睡魔が襲ってきて、我慢できずに眠ってしまったのだろう。

問題は、授業中に眠ってしまう事が1回や2回ではなく、ほぼ毎日眠っているという事。

それには、流石の先生も我慢の限界に来たらしい。

突然黒板に数式を書き出す。

書かれた数式は、

《2x+6=12》

私はそれを見て唖然とする。

先生が書いたのは簡単とはいえ方程式。

小学生が習うものではない。

実際に多くの・・・・・・というか、私以外のクラスメートは全員首を傾げている。

そして、先生はユウに近付いていくと、教科書でポンポンとユウの頭を軽く叩き、

「利村君、起きなさい」

ユウを起こす。

「・・・・・んが?」

ユウは目を覚ますが、まだ寝惚けているようだ。

「利村君、黒板の問題をやってみなさい」

先生にそう言われ、ユウは少々ふら付きながらも立ち上がり、黒板に向かっていく。

先生からしてみれば、ここで分からない問題を出し、普段の授業の大切さを理解してもらおうという魂胆なのだろう。

そして、普段のユウならそれを理解し、ここで「わかりません」と答えるはずだった。

でも、ここで問題が出た。

ユウは現在寝惚けており、まともな思考が出来ていない。

よって、ボーっとして黒板の問題を見た後、

《x=3》

と、正解を書いてしまった。

「せ、正解です・・・・・・」

先生は呆気に取られた表情で呟く。

流石に小学3年生が中学生レベルの問題を解けるとは思ってなかったのだろう。

そして、少しした後、

「・・・・・・・あ」

正気に戻ったユウが、自分の仕出かした事に気付いたらしい。

ユウの頭に、でっかい冷や汗が見えた。






とまあ、こんな事もあり、私達の修行にも身が入る。

そして今日、いよいよリベンジを果たす時が来た。

「それじゃあ、フェイト、桜、なのは、それにユーノとアルフも頑張ってね」

アリシアがそう言う。

「ええ、アリサ、すずか、アリシア。本当にありがとう」

アリサ、すずか、アリシアは、私達が修行をしているとき、飲み物の差し入れをしてくれたり、簡単なマッサージなどをしてくれたり、私達の修行を支えてくれた。

「どういたしまして」

「アンタ達は、ユウ達に目に物見せてやりなさい!」

すずかとアリサがそう言う。

「うん!」

「本当にありがとう!」

なのはとフェイトもお礼を言う。

そして、ユーノが転送のための魔法陣を描いた。

私達は、その魔法陣に入る。

その場に光が満ち、私達は転送された。





【Side Out】







蒐集が始まってから、一ヶ月と一週間。

正直、デバイスが直った途端になのは達が再戦を申し込んでくると思ったんだけど・・・・・・

この一ヶ月、何の音沙汰も無い。

あいつらの性格から、諦めるってことはありえん。

一体何やってるんだか。

まあ、それは置いといて、今日も俺達は蒐集に来ている。

今日は砂漠の無人世界。

もしかして、アニメでやってたあの砂漠か?

と、そんなことを考えていると、

――ドォン!

と、目の前の地面が爆発したように吹き飛び、そこから巨大なワームのような生物が姿をあらわす。

アニメにも出ていたあのワームだ。

シグナムやヴィータでも苦戦したらしい相手。

そんなことを考えていると、そのワームが襲い掛かってくる。

俺達がその場を飛び退くと、ワームは俺達がいた場所に突っ込む。

「紫電・・・・・・一閃!!」

「ラケーテン・・・・・・・ハンマーーーーーッ!!」

シグナムとヴィータが攻撃を仕掛ける。

――ズシャ! ドゴン!

斬撃と打撃を喰らったワームは仰け反る。

だが、直ぐに体勢を立て直した。

「何っ!?」

「効いてねえのか!?」

シグナムとヴィータが驚愕する。

「あれだけの巨体だ。対人攻撃では効果が薄い」

クライドさんが冷静に分析してそう言った。

「それなら!」

俺は、アイシクルを起動させ、バリアジャケットを纏う。

「喰らえ!」

俺は前面の武装を展開し、ミサイルを放つ。

ミサイルはワームに直撃し、見事に凍りつかせた。

「やっぱすげぇ・・・・・・・」

ヴィータが呟く。

「ああ・・・・あれ程の巨体をあっさりと氷付けにするとは・・・・・・見事と言う他無いな・・・・・」

シグナムも感心したように呟いた。

「シャマル、蒐集を」

俺はシャマルに呼びかける。

「え?あ、はい!」

シャマルは呆けていたのか、慌てて旅の鏡を発動させ、ワームから蒐集を行なう。

「蒐集完了。これで170ページを越えたわ」

シャマルがそう言う。

170ページか。

大分遅いペースだけど、管理局にばれない様に細心の注意を払ってるから仕方ない。

まあ、もう直ぐ夏休みだから、その時にどれだけ稼げるかだな。

出来れば夏休みの間に500ページ近くまでは行っておきたい。

守護騎士達には、今年いっぱいがタイムリミットと説明したが、この世界には、アニメではいなかったクライドさんがいる。

クライドさんが居る分、はやての魔力が余分に侵食されている可能性があり、単純計算なら、タイムリミットは約1ヶ月半早まる事になる。

だから、11月中旬までに・・・・・

出来れば、余裕を見て10月中には完成させたい。

と、そんなことを考えていると、目の前に転送用の魔法陣が浮かび上がる。

其処から現れたのは、言わずもがな、なのは、桜、フェイト、アルフ、ユーノの5人。

すると、桜が口を開く。

「ユウ、私達が何しに来たかぐらい、分かってるわよね?」

「そりゃあな。俺はもっと早く来ると思ってたんだけど?」

俺はそう返す。

「そんな直ぐに行っても、返り討ちに遭うのが目に見えてたからね。けど、遅れた分、前の私達と同じと思わないほうが身の為よ」

桜は自信満々にそう言った。

「ははっ・・・・・凄い自信だな」

俺は思わず苦笑する。

「リベンジってわけか・・・・おもしれぇ!」

ヴィータがグラーフアイゼンを突きつけながら言う。

「フッ・・・・・この一ヶ月で何処まで腕を上げたか見せてもらおうか」

シグナムもやる気満々である。

「じゃあ、ルールは前と一緒って事で」

俺はそう言って、その場から下がる。

なのは達はシグナム達を見据えると、

「じゃあ、私達の新デバイスのお披露目よ!」

桜が叫んだ。

なのはがレイジングハートを掲げる。

「レイジングハート・エクセリオン!!」

フェイトがバルディッシュを掲げ、

「バルディッシュ・アサルト!!」

自分の相棒の名を叫ぶ。

この2人はアニメと同じ。

続いて桜がレイジングソウルを掲げ、

「レイジングソウル・バースト!!」

新しいレイジングソウルの名を叫ぶ。

更には、ユーノも緑色のひし形の宝石を掲げた。

え?

これには俺も驚く。

「レジェンド!」

ユーノが叫ぶ。

「「「「セーット!アップ!!」」」」

4人はデバイスを起動させ、光に包まれる。

やがて光が収まり、4人の姿が見える。

なのはとフェイトのデバイスとバリアジャケットは、アニメの物と同じ。

桜はなのはの物の色違い。

ユーノは黄土色のインナーに、金の鎧、籠手、具足というド派手なもの。

そして、緑色のひし形の宝石が2つ、ビットのように浮遊している。

「おいおい、ユーノの奴派手だな・・・・・」

俺は思わず呟く。

っていうか、どっかで見たことあるような色合いなんだけど・・・・・・なんだっけ?

俺はそう思ったが、戦闘が始まりそうだったので、頭を切り替えた。

「おら!いっくぞーーーー!!タカマチ何とかぁーーー!!」

ヴィータがそう叫びながら、ラケーテンハンマーでなのはに殴りかかる。

「なのはだってばぁーーーーっ!! な!の!は!」

なのはは思わずヴィータの言葉にツッコミを入れてしまう。

しかも無防備に。

ヴィータは容赦なくラケーテンハンマーを振り下ろした。

だが、

――ガキィ!

ヴィータのラケーテンハンマーは、“緑色”のラウンドシールドに止められる。

「何っ!?」

ヴィータは驚愕の声を漏らす。

見れば、ユーノの傍で浮遊していた宝石の1つがなのはの前にあり、それがラウンドシールドを張っている。

「私達はまだ、1対1であなた達に勝てるとは思ってないから! だから、私達は“皆”で、“あなた達”に勝つよ!」

なのははそう叫び、レイジングハートを構える。

「アクセルシューター!!」

なのはは、12発もの魔力弾を同時に放つ。

アクセルシューターは、目の前に張られていたラウンドシールドを避けるように動き、守護騎士達に襲い掛かる。

「やらせん!!」

ザフィーラが、皆を守ろうと前に出ようとするが、

「おっと、アンタの相手はアタシさ!」

ザフィーラに向かってアルフが殴りかかる。

ザフィーラは、アルフの拳を受け止めた。

「アンタの防御力は厄介だからね。アンタを引き止めておくのがアタシの役目さ!」

アルフが、ザフィーラを他の守護騎士から引き離すように攻撃を加える。

「ぬぅ!そう簡単に行くと思うな!!」

「ハン!そのセリフは、これを受けてから言いな!」

アルフは構え、右腕を振りかぶる。

「むっ?」

ザフィーラは身構えた。

そして、アルフは拳を握り締める。

「獣!」

アルフが叫ぶと、右手に魔力が集中していく。

「王!」

って、ちょっと待て!

まさか・・・・・・

俺の混乱を他所に、アルフは右手を繰り出した。

「拳!!」

突き出したアルフの右拳から、狼の頭を模した魔力波が放たれる。

うぉい!?

何故に獣王拳!?

まあ、本場の獣王拳は獅子の頭なんだけど・・・・・・

アルフの放った獣王拳は、ザフィーラに向かって飛んで行く。

ザフィーラは、驚いたものの、障壁を張って防ごうとした。

だが、

――ビシッ

と、障壁に罅が入る。

「なっ!?」

ザフィーラが驚愕の声を漏らした。

おいおい、バリアブレイクのオマケ付きかよ。

そして、障壁は砕かれ、ザフィーラは爆発に呑まれる。

「どんなもんだい!」

アルフはそう叫ぶ。

すると、爆煙の中からザフィーラの姿が現れる。

「・・・・・我は盾の守護獣ザフィーラ・・・・・この程度の攻撃でどうにかなる程・・・・・柔じゃない!!」

ザフィーラは、そう叫んでアルフに向かって殴りかかる。

「ハッ!上等!!」

アルフも拳を繰り出す。

2つの拳はぶつかり合い、衝撃を撒き散らした。




一方、他の守護騎士達は、

『『Panzerhindernis.』』

ヴィータとシャマルは全方位障壁を張って、アクセルシューターの嵐を防ぎ、シグナムとクライドさんは回避と迎撃を繰り返していた。

アニメでは、アクセルシューターでヴィータの障壁に罅が入ったが、ヴィータとシャマルに向かう数が少ない所為か、まだまだ余裕そうだ。

更に、シグナムとクライドさんがアクセルシューターを撃ち落しているため、どんどん魔力弾の数が少なくなっている。

だがその時、フェイトが複数の魔力弾を生み出す。

「プラズマ・・・・・」

フェイトの言葉から、俺はプラズマランサーでの攻撃と思っていた。

だが、

「・・・・・シュート!!」

違った。

うぉい!

お前もかフェイト!

プラズマシュートって、マグナモンかよ!

放たれた魔力弾は、シグナムとクライドさんを狙っていた。

それに気付いたクライドさんは、直ぐに急上昇して攻撃範囲から逃れ、シグナムは魔力弾を弾き返そうとレヴァンティンを振りかぶる。

タイミングを合わせ、気合を込めてレヴァンティンを薙ぎ払うように振る。

そして、レヴァンティンの刃が魔力弾に触れた瞬間、

――ドゴォ!ドドドォン!

爆発を起こした。

他の魔力弾も、誘爆してシグナムの近くで爆発する。

「ぐあっ!!」

シグナムは苦しそうな声を上げる。

シグナムは、痛みを堪えて、何とか目を開く。

その視界には、

『Haken Form.』

「はぁああああっ!!」

バルディッシュのハーケンフォームを振りかぶるフェイトの姿。

「くっ!」

『Schlangeform.』

シグナムも、迎え撃とうとレヴァンティンのシュランゲフォルムを起動させる。

――ドゴォン!

魔力の衝突による爆発が起こる。

更に、上空に逃れたクライドさんには、

『Load Cartridge.』

クライドさんの更に上で、レイジングソウルを振り上げている桜の姿。

そして、そのレイジングソウルには、白銀の魔力光が、まるで剣の様に纏われている。

「スプレンダーブレード!!」

桜はレイジングソウルを振り下ろす。

そこから放たれる魔力斬撃。

インペリアルドラモンの技・・・・・・・

テメーもか桜・・・・・・・っていうか、テメーだろデジモンの技フェイト達に教えたの!

その魔力斬撃の直撃を受けて、爆煙に包まれるクライドさん。

だが、

『Stinger Ray』

爆煙を切り裂いて、数発の魔力弾が桜に向かって放たれた。

しかし、その魔力弾は、桜に届く前に緑色の障壁によって阻まれる。

いつの間にか、ユーノのビットの1つが桜の前に来ていた。

そして、良く見れば、先程激突したフェイトとシグナムも、シグナムは爆発に吹き飛ばされ、若干のダメージを負っていたが、フェイトは桜と同じようにユーノのビットが障壁を張った事により、ほぼ無傷だった。

なんつーか、息合いすぎだぞ。

「シグナム!クライド!」

シャマルが、少なくなった魔力弾を掻い潜り、2人のサポートに回ろうと2人の元へ向かおうとした。

しかし、

「シルバーブレイズ!!」

緑色の魔力弾が飛んでくる。

「はっ」

シャマルは、それを間一髪避ける。

シャマルが魔力弾が飛んできた方を向くと、ユーノがいた。

つーか、ユーノ。

どっかで見たことある色合いだと思ったら、ペガスモンかよ。

それからお前が攻撃魔法使う所見たのなんてアニメを通して初めてだぞ。

まあ、威力はアクセルシューター1発分ぐらいだったけど・・・・・・

それでも牽制ぐらいには使えるか。

シャマル相手ならそれで十分だし。

「シャマル!」

障壁を張りながら、ヴィータが叫んだ。

「よそ見してる暇は無いよ!ヴィータちゃん!!」

そう叫んだのは、いつの間にかレイジングハートをバスターモードに変形させたなのは。

なのはは、バスターモードを構え、

「いくよ!レイジングハート!!」

『Yes, Master.  Load Cartridge.』

レイジングハートは、カートリッジを2発装填する。

なのはは、ヴィータに標準を合わせる。

「これが!桜お姉ちゃんから教わった新魔法!」

レイジングハートに魔力が集中する。

「ポジトロン!レーーーーザーーーーーーーーーーッ!!」

放たれる砲撃。

しかも、ただの砲撃ではなく、砲撃自体に回転が加えられている。

ならば、威力・・・・特に貫通力はディバインバスターの比ではない。

「いいっ!?」

ヴィータは思わず声を漏らす。

ポジトロンレーザーがヴィータの障壁にぶち当たる。

その瞬間、一瞬にして障壁に罅が広がり、

「や、やべぇ!?」

ヴィータは、瞬間的にその場を離脱する。

その一瞬後に、障壁は破られた。

標的を失ったポジトロンレーザーは、そのまま一直線に突き進む。

それは、十数キロ先まで届き、クッキリと砂漠に軌跡を残した。

「マ、マジかよ・・・・・」

驚愕するヴィータ。

なんとまあ・・・・・しかし、今の威力なら、スターライトブレイカーも貫通するんじゃねえのか?

射程も飛躍的に延びてるし。

アニメでヴィータを狙った時の距離は、多く見積もっても数キロ。

今のは軽く十キロ超えてるし。

まあ、本物のポジトロンレーザーは、東京から北海道や九州まで届いてたけど・・・・・・

それにしても、あいつらは連携が格段に上手くなってる。

恐らく1対1なら、まだ守護騎士が勝つ。

でも、今のあいつらは、お互いの能力をしっかりと把握して、それぞれの攻撃が次の攻撃に繋がっている。

そうは言っても、まだ荒削りは否めないが、そこは、ユーノがしっかりとフォローしている。

つーかユーノ。

デバイスを手に入れたからか、鉄壁に磨きがかかってるな。

あ、ヴィータのラケーテンハンマーと、シグナムの紫電一閃と、クライドさんのスティンガースナイプ同時に受け止めてら。

正確には、ラケーテンハンマーを自分が発生させたラウンドシールドで。

シグナムとクライドさんの攻撃を、ビットのシールドで受け止めている。

防御なら、ザフィーラと同等?

いや、それ以上か?

「レイジングソウル!ブラストモード!!」

桜がレイジングソウルに呼びかける。

『Blast mode.  Drive ignition.』

レイジングソウルが、レイジングハート・バスターモードにそっくりの形態に変形する。

それを見たクライドさんが、

『Blaze Cannon』

桜に向かって、先に砲撃を放つ。

だが、桜は冷静にブレイズキャノンを見据えると、カートリッジを2発ロード。

「ポジトロンレーザー!バージョンF!!」

なのはと同じ砲撃・・・・・いや、なのはのポジトロンレーザーよりも、高回転で高密度のポジトロンレーザーを放った。

桜の放ったポジトロンレーザーは、一方的にブレイズキャノンを蹂躙していく。

恐らく、射程を犠牲に威力を高めたものなのだろう。

ただ、射程を犠牲にしているとは言っても、ディバインバスター並みの射程はある模様。

魔力制御が難しそうだな・・・・・・

因みに桜よ。

バージョンFのFは、ファイターモードのFなのか?

クライドさんは、数発カートリッジをロードするが、ポジトロンレーザーは全く衰えることなくブレイズキャノンを押し切った。

「くっ!」

クライドさんは咄嗟に避ける。

その時、

――ドン

「なっ?」

クライドさんの背中に何かが当たる。

クライドさんが振り向くと、

「何っ!?」

シグナムが同じく驚いた顔でクライドさんを見ている。

いや、シグナムとクライドさんだけではない。

ヴィータとシャマルもいつの間にか一箇所に誘導されていた。

「そぉれぇっ!!」

「ぐぉおおっ!!」

その時、狙ったように(実際、狙ったのだろうが)ザフィーラがアルフに吹き飛ばされて4人と同じ場所に集められる。

「ユーノ!!」

桜が叫んだ。

「分かってる!!」

ユーノが応えると、2つのビットを操る。

ビットは、光に包まれ交差すると、バインドが発生する。

「サンクチュアリバインド!!」

ええぃ、桜!

そんなものまで教えたのかよ!

サンクチュアリバインドは、5人纏めて縛り上げる。

「しまった!」

シグナムが叫ぶ。

「なのは!フェイト!やるわよ!」

「「うん!」」

3人が空中に集まり、それぞれのデバイスを掲げる。

すると、3人の頭上に、桜、白銀、金の3色が交じり合った巨大な魔力球が生み出される。

込められている魔力は、スターライトブレイカーの約1.5倍。

それでも、3人で作り出しているので、溜め時間は半分以下。

考えたなあいつら。

そして、

「「「メガ・・・・・」」」

3人がデバイスを振り下ろすと同時に、

「「「・・・・・デェェェス!!!」」」

巨大な魔力球が眼下に放たれた。

――ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!

凄まじき大爆発が起こる。

正直予想外。

まさかここまでやるとは・・・・・・

ある程度戦えれば蒐集に連れてっても大丈夫だとは思ってたが、5人で戦ったとは言え、ほぼ完勝に近い。

まあ、約束通り蒐集に連れて行くが、一言だけ言わせて貰おう。








やりすぎだテメーら。









あとがき

やりたい放題やった二十二話でした~。

あるぇ~?

ユーノが超鉄壁に。

実際、ユーノが居なかったら、勝てません。

威力はなのは達が上でも、戦い方は守護騎士のほうが格段に上です。

ユーノの鉄壁の防御があったから、ここまで完勝できたのです。

そして、デジモンネタが大量に出てきました。

フェイトにエクストリームジハードを使わせたかったけど、場面がなかった。

まあ、ちょっとは自重したほうがよかったかな?

ともかく、次もがんばります。






[15302] 第二十三話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/05/30 09:31


第二十三話 状況進展






【Side リンディ】




あのジュエルシード事件から、約4ヶ月。

今、アースラは地球に向かっていた。

その理由は、巡回ルートであること。

そして・・・・・・

「くそっ!」

クロノが自分の席で、悔しそうな声を上げる。

既に、何度この声を上げたのか分からない。

「・・・・・クロノ君・・・・・不機嫌ですね・・・・・・」

エイミィが、クロノを見ながら呟く。

「・・・・・・仕方ないわ・・・・・・クルーザー提督の処分があれじゃ・・・・・・ユウ君に合わせる顔が無いのよ・・・・・・」

私は、エイミィの言葉にそう答える。

「そうですね・・・・・あれだけのハッキリとした証拠があって、尚且つ、クロノ君が必死になって調べ上げたクルーザー提督の不正行為の資料を公表したにも関わらず、数年の懲役・・・・・・しかも、執行猶予も付いて、その間に今まで以上の働きを見せれば、懲役も免除、もしくは減刑ですからね・・・・・・・・・・私もこれには納得いきませんよ!」

エイミィが珍しく不機嫌な声で言った。

「本当に・・・・・ユウ君の言った通りになったわね・・・・・・・・」

私は俯きながら呟く。

「あの子に言われたんですよね? 罪に問う事は出来ても、大した罰にはならないって・・・・」

「ええ・・・・そうよ・・・・・・・言われた時は私も信じられなかったし、そんなことがあるなんて疑いもしてなかったわ・・・・・・いえ、恐らくそんなことがあっても、それは、公平な審議の結果だと思い込んでいたでしょうね・・・・・・・今回は、その対象がユウ君の気持ちを良く知った上での事だったから、今までとは違った視点で見ることが出来たんだわ・・・・・」

私は、ユウ君の言っていた通りになったことに、ため息を吐く。

その時、

「間も無く、第97管理外世界、現地名称地球に到着します」

そう報告が来た。

すると、クロノが席を立つ。

「・・・・・では艦長、僕は予定通り休暇を取ります」

「ええ。許可します」

クロノは転送ポートへと歩いていく。

だが、その足取りは重く感じる。

それも仕方ないと思った。

「・・・・・じゃあ、行ってきます。母さん」

「いってらっしゃい。ユウ君によろしくね」

「・・・・・・はい」

クロノは若干俯き気味に返事をして、転送されていった。





【Side Out】






なのは達と守護騎士達の対決から早2ヶ月。

現在は、9月の中旬。

闇の書のページは550ページを越えた。

やはり、なのは達の加入は大きく、戦いにも余裕が出てきている。

で、今日の俺はと言えば、

「いらっしゃいませ」

翠屋の手伝いをしています。

理由は、無理しすぎと言われ、ほぼ強制的に蒐集を休まされたのだ。

まあ、最近は余裕も出てきているし、何よりあいつ等も強くなってるから問題は無いので、こうやって久しぶりに翠屋を手伝っているのだ。

その時、再び店の入り口が開く。

「いらっしゃいませ」

俺は、営業スマイルを浮かべて挨拶する。

が、来店した客を見て、俺は驚く。

「やあ、久しぶりだな」

私服姿のクロノ・ハラオウンがそこにいた。





クロノは、俺と話がしたいという事だったので、俺は士郎さんと桃子さんに許可をとって、店の一角の席で向かい合っていた。

因みに、認識阻害の結界も忘れない。

クロノは、俺と向き合うと、いきなり頭を下げた。

「すまない!」

いきなりの謝罪に俺は驚いた。

「い、いきなりなんだよ?」

俺は問いかける。

「クルーザー提督の事だ」

クロノの言葉で、俺は理解した。

「あ~・・・・なるほど。その様子だと、やっぱり重い罪にはならなかったようだな」

俺は確認するように問いかける。

「ああ。クルーザー提督に出された判決は、懲役数年。その上、執行猶予が付いて、その間の貢献度によっては、減刑・・・・・・場合によっては懲役の免除も有り得る・・・・・・・クルーザー提督の過去の不正も出来る限り調べて公表したんだが、それが限界だった・・・・・・・・すまない!僕の力不足だった!あれだけ大口を叩いておきながらこの程度とは!本当に済まない!!」

クロノは、テーブルに擦り付けるように頭を下げる。

「そこまで気にするなよ。元々そうなるだろうと思ってた事だし・・・・」

「だが!それでは僕の気が済まない・・・・!」

「でも、クロノが頑張ってくれたからこそ、執行猶予が付いたとはいえ、懲役が掛かるほどの有罪になったんだろう?」

正直、俺はそこまでの罪になるとは思ってなかった。

それが、執行猶予があるとはいえ、懲役になる程の罪と判断されたのだから、クロノがどれだけ頑張ってくれたのかが良く分かる。

「・・・・・・・なら、せめて僕に出来る事があったら言ってくれ!出来る限り協力する!」

クロノは、真剣な表情で言ってくる。

「協力するって言われてもな・・・・・・・・・・・・」

俺はそう呟いたが、とある事を思いつく。

「じゃあ、早速で悪いんだけど・・・・・・・」

俺は、クロノに説明を開始した。






【Side ユーノ】




僕は今、時空管理局の本局に来ていた。

理由は、無限書庫で闇の書の情報の裏づけをして欲しいとの、ユウからの要請だ。

ユウは、偶々来たクロノのつてで、無限書庫の利用を承諾してもらったらしい。

僕は、クロノに案内されて無限書庫へと入った。

その途端、目を奪われた。

目の前に広がるのは、見渡す限りの本、本、本。

あらゆる情報がここに集まっているらしいから、この光景は頷けるとしても、これの殆どが整理されて無いというから気が滅入る。

まあ、だからユウは僕に頼んだんだろうけど・・・・・・・

捜索や調査は、スクライア一族の十八番だ。

つまり、この無限書庫から、闇の書の情報を発掘して欲しいと、ユウは言っているのだろう。

この光景を見て、発掘と表現した僕は間違って無いと思う。

「ここが無限書庫だ。知っていると思うが、ここはあらゆる世界の情報が集う場所。しかし、その殆どが整理されていない。ここから目的の情報を探し当てるのは至難だ。君達が何を調べようとしているのかは知らないし、聞かない約束だ。手伝いの人員も断られたしね。だけど、無理だけはしないでくれよ。気軽に休憩室も使ってくれてかまわない。話は通しておく」

「十分だよ。ありがとう」

クロノの言葉に頷いてお礼を言う。

「それじゃあ、僕はこれで」

「うん」

クロノは無限書庫を出て行く。

僕は、無限書庫に向き直ると、

「さてと・・・・それじゃあ頑張ろう!」

気を入れなおし、探索魔法を発動させた。





【Side Out】






ユーノを無限書庫に行かせて数日。

俺達は、荒野の無人世界で蒐集をしていたのだが・・・・・・・

ヴィータが不機嫌だ。

蒐集対象の生物達にも、やや八つ当たり気味に攻撃している。

因みに、ユーノを無限書庫に行かせた当日には、当然の如く詰め寄られた。

曰く、何故ユーノを管理局に行かせたのか?という質問攻め。

俺は、俺の持っていた闇の書の情報の裏付けのためと言って、そのつてはクロノと教えた所、なのはやフェイトたちは安心した。

しかし、ヴィータはどうしても納得しなかった。

・・・・・これって、やっぱりだよな?

前々から、ヴィータはユーノの前では様子がおかしかったり、顔を赤くする事があったからもしかしてと思ってたけど・・・・・

ヴィータ、ユーノに惚れてるよな?

多分、自覚はして無いだろうけど、間違いないだろう。

アニメとは違うとは思ってたけど、これは全く予想してなかった変化だ。

まあ、恋愛は個人の自由だし、俺が如何こういう事じゃない。

ともかく、言いたい事は、ヴィータの我慢が限界に来たという事だ。

「ああ!!もー我慢できねえ!おい!ユウ!」

ヴィータが叫ぶ。

「テメーは前から色んな事を知ってるけどよ! それの証拠が何処にもねえって言うのはどういう事だ!? テメー本当は管理局の回し者じゃねえだろうな!?」

まあ、確かにヴィータがそう言いたくなる気持ちも分からんでもない。

俺の持ってる情報は、前世の記憶の情報であり、証拠なんか何処にもあるわけが無い。

「ん~・・・・・俺が持ってる情報については、前から言っている通り、『知ってる』からとしか言いようが無い。管理局は嫌いだから、回し者じゃないって事だけは確かだぞ」

とりあえず、前世やアニメ云々言っても、ふざけてるとしか思われないのでこう言っておく。

「フザけんな!だったらせめてテメーが管理局が嫌いな理由を言え!!」

ヴィータの叫びに、

「それは私も聞きたいな」

シグナムが便乗した。

俺がシグナムを見ると、

「あ、いや。今更ユウを疑うわけではないが、ユウの過去に何があったのか、いささか興味があってな・・・・・」

何故かシグナムは少し焦ったような素振りでそう続けた。

「あ、実は私も気になってました」

シャマルも軽く手を挙げながら言った。

「あ、あのっ・・・・!」

なのはが守護騎士達を止めようとしていたので、俺は手でなのはを制す。

「いや、話すよ。わだかまりは無いほうがいいしな」

俺はそう言って、ブレイズとアイシクルに例の映像を流すように促した。










で、何でこうなってるんだ?

「えっぐ・・・・ひっぐ・・・・・やっぱり可哀想だよ~~・・・・・・」

俺の左腕に泣きながら抱きつくなのは。

「ううっ・・・・・ぐすっ・・・・・・ユウっ・・・・・!」

同じく俺の右腕に泣きながら抱きつくフェイト。

美少女2人に、泣きながら抱き付かれています。

俺は、助けを求めるように守護騎士達に視線を向けるが、

「あっ・・・・・いや・・・・・・何ていうか・・・・・その、悪ィ・・・・・」

ヴィータは、バツが悪そうに謝罪を口にしながら顔を逸らし、

「ユウに・・・・・このような過去が・・・・・・・」

シグナムは、何か思う事があったのか、物思いに耽っている。

「ぐすっ・・・・・御免なさいユウ君・・・・・気軽に聞いていいことじゃなかったわ」

シャマルは涙を滲ませながら謝り、

「こんなことが・・・・・」

「ああ。アタシもこれを見たときはハラワタが煮えくり返ったね」

狼形態のザフィーラの呟きに、同じく狼形態のアルフが同意を示し、

「・・・・・・・・・・・」

クライドさんは無言。

元管理局員として、色々思うところがあるのだろう。

桜も、何処か暗い雰囲気だし、今の俺の状況を何とかしてくれそうな人物は居なかった。

ともかく、この状況は、なのはとフェイトの2人が落ち着くまで続いた。








時は流れ、10月に入った。

闇の書のページは600ページを越え、ユーノも無限書庫での調査を終え、報告に戻ってきている。

「それで、僕が無限書庫で闇の書について調べた結果だけど・・・・・・・結果から言って、ユウの言っていた通りだよ」

ユーノの言葉に、全員が息を飲んだ。

「無限書庫で調べたデータでも、闇の書が完成すると、無差別破壊以外に使われた記録が無い。そして、正式名称も古い資料によれば“夜天の魔道書”。本来の目的は、各地の偉大な魔導師の技術を蒐集して、研究するために作られた、主と共に旅する魔道書。破壊の力を振るうようになったのは、歴代の持ち主の誰かが、プログラムを改変したからだと思う・・・・・って、これはユウも言ってたよね。その改変の所為で、旅をする機能と、破損したデータを自動修復する機能が暴走しているんだ。それが、転生機能と無限再生。そして、闇の書が、真の主と認識した人間でないと、システムへの管理者権限を使用できない。つまり、プログラムの停止や改変が出来ないんだ。無理に外部からの使用を操作しようとすれば、主を吸収して転生しちゃうシステムも入ってる。だから、管理局では、闇の書の破壊や永久封印は不可能って言われてるぐらいなんだ。僕が調べてわかったことはこのぐらいかな?」

ユーノが言葉を切ると、ヴィータが口を開く。

「あのよう・・・・・ユーノを疑うわけじゃねえんだけど、その情報は信用できるのか?結局は管理局が集めた情報だろ?」

ヴィータはそう問いかける。

「ああ。それは信用できると思うよ」

そう言ったのはユーノだった。

「実際に無限書庫を利用してわかった事だけど、噂通り殆ど整理されてなかったんだ。そんな状態で、1つ残らず闇の書の情報だけを改変するのは難しいと思うよ」

「そっか・・・・・」

ユーノの言葉に、ヴィータは若干気落ちした雰囲気を見せる。

いや、ヴィータだけではない。

シグナムやシャマル、ザフィーラも暗い雰囲気を漂わせている。

主の為にと完成させてきた闇の書が、結果的に主の命を奪う事に繋がっていたのだ。

守護騎士達の中では、信じていた者に裏切られた気分なのだろう。

「大丈夫だよ」

ユーノがヴィータにそう声をかけた。

「え?」

ヴィータが顔を上げる。

「ユウが何とかしてくれる」

ってコラ!

人任せかよ!?

「今までの付き合いで分かると思うけど、ユウってば凄い後ろ向きの性格をしてるんだ。だから、出来ない事を出来るなんて言う見栄を張ったりしない。だから、ユウが何とか出来ると言ったら、本当に出来るってことだよ。だから大丈夫。はやてはきっと助かるよ」

ユーノはそう言ってヴィータに微笑みかける。

あ、ユーノの微笑みを見たヴィータの顔が真っ赤だ。

っていうか、ユーノの奴は気付いてるのか?

すると、ヴィータは照れた顔をユーノに見せないようにするかのごとく俺の方を向き、

「おい!ユウ!ユーノがここまで言ってるんだ!アタシもテメーの事を信頼してやる!だから・・・・・だからゼッテーにはやてを助けろよ!いいな!?」

そう叫んだ。

「まあ、助けられるかどうかのキモははやて自身だけど・・・・・はやてが運命に打ち勝ったのなら、後は俺が片付ける」

俺はそう応えた。

「今の言葉、忘れんなよ!」

ヴィータはそれで満足したのか、そう言って踵を返す。

闇の書のページ、残り約60ページ。

決戦の時は近い。







あとがき


結構やりたい放題やった二十三話の完成。

相当時間が進みました。

ここまで急いだ理由は2つ。

1つはネタが無かった事。

もう1つは、あのままグダグダやってると、更新が止まりそうな気がしたからです。

今回は短めですが、次回から、闇の書の最終決戦へと入ります。

さて、皆様が満足できるものを書けるだろうか?

ともかく次も頑張ります。





[15302] 第二十四話(前編)
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/06/06 15:38
第二十四話 それぞれの戦い




闇の書の完成まであと少し。

恐らく、あと一週間前後だろう。

それまでにあらゆる状況を想定しておかなければならない。

そして、今俺が思いついている一番最悪の状況がある。

その状況になった場合の対応策は・・・・・・

「やっぱりこれしかないかな・・・・・・・?」

俺は1人呟く。

その方法は、かなり高いリスクが伴うが、保険をかけておくに越した事は無い。

俺は、とある所に通信を開いた。







そして、一週間後。

遂に闇の書が完成した。

闇の書を発動させる場所は、生き物の少ない荒野の無人世界。

これは、万が一の時の為に、少しでも被害を小さくする為だ。

その無人世界に、俺達は転移してくる。

今、ここにいるメンバーは、俺、リニス、なのは、桜、フェイト、アルフ、ユーノ、はやて、ヴォルケンリッター。

そして、プレシアさん、アリシア、アリサ、すずかもいた。

アリシア、アリサ、すずかの3人は、どうしても見届けたいという理由でここに居る。

流石に危険だと断ろうとしたが、3人の意思は固く、プレシアさんが護衛に付くという条件で、渋々許可を出した。

「ほな、そろそろはじめよか?」

はやてがそう言い出す。

が、

「あ、ちょっと待て」

俺は待ったをかける。

「ほえ?」

はやては、何故にと首を傾げる。

「もうそろそろだと思うんだが・・・・・・」

と、俺がそう呟いた時、転送用の魔法陣が浮かび上がった。

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

それに警戒する一同。

だが、俺はそれを知っていた。

転送されてきたのは、

「「「「クロノ(君)!?」」」」

なのは、桜、フェイト、ユーノが驚いた声を上げる。

「ッ!」

クライドさんが僅かに動揺する。

「な、何でここに!?」

桜が問いかけたが、

「俺が呼んだ」

俺が答える。

俺はクロノに向き直ると、

「アースラは?」

そう尋ねる。

「君の要望通り、アルカンシェルを装備して、この星の衛星軌道上で待機してもらってるよ」

クロノの答えに、俺は頷く。

「どういう事だ?」

シグナムが尋ねてくる。

「万が一の時の保険だ」

俺はそう答える。

「つまり、最悪の場合に陥った時、アルカンシェルで全てを消滅させる・・・・・・と?」

「ああ。俺達の都合で、この世界全てを滅ぼすわけには行かないからな。いくら少ないとは言っても、この世界にも命は存在するんだ」

シグナムの言葉に、俺はそう答えた。

「そうか・・・・・」

シグナムは頷く。

だが、恐らくシグナムの考えている最悪の状況と、俺が考えている最悪の状況は違いがあると思う。

俺は気を取り直し、クロノの方を向く。

「これから行う事は、話したとおりだ」

「・・・・・・闇の書の修復・・・・・か。本当に出来るのか?破壊や永久封印は不可能とまで呼ばれた代物だぞ」

「出来なきゃやろうなんて思わないさ」

クロノの言葉に、軽口でそう返す。

「フッ、違いない」

クロノは軽く笑った。

俺は、はやてに向き直り、

「じゃあはやて、始めてくれ」

はやてにそう促した。

「じゃあ、私達は離れているわ」

プレシアさんがそう言って、アリシア、アリサ、すずかを連れて、転送魔法でその場からはなれた場所に転移する。

はやてはそれを確認すると、手に持った闇の書を見つめ、

「・・・・・・我は闇の書の主なり・・・この手に力を・・・・・・・封印・・・・・解放!」

はやてがそう唱えると、

『Freilassung.』

手に持った闇の書から、黒い稲妻のような魔力が発生し、はやてを包む。

それと共に、はやての身体が急速に成長していく。

髪が伸び、銀髪に変わる。

黒い衣を纏い、漆黒の翼を背中に生やす。

はやてだった者は、空を見上げながら涙を流す。

「・・・・・何故だ・・・・・・何故分かっていながら、破滅の扉を開けたのだ・・・・・・?」

そう呟いた。

「決まっている!はやてとお前を救うためだ!」

俺は迷いなく答える。

「無理だ・・・・・我を蝕む闇は止められん・・・・・」

「そんなの、やってみなくちゃわからないだろ?」

俺はそう言うが、リインフォース・・・・・・闇の書の管制人格は、聞いていない。

「我は直に意識を無くす・・・・・・・その前に・・・・・・我が主を闇に落とした者に・・・・・・・永遠の闇を!」

一方的にそう言うリインフォース。(まだ名前は付いていないが)

「シグナム・・・・・・如何だ?」

俺は、シグナムに確認を取る。

「・・・・・・・意思は残っている・・・・・」

シグナムは呟く。

「なら・・・・」

俺は、戦いの前に幾つかの想定される状況に応じたプランの1つを選ぼうとした。

だが、

「・・・・・しかし、今はお前達と戦いたくて仕方が無い」

そう言うシグナムを良く見れば、必死に身体を押さえつけているように見える。

「なるほど・・・・・意思は残ってるけど、俺達のことを敵と認識するようにされたのか・・・・・・・・それなら、皆!」

俺は、みんなに呼びかける。

「プランβだ!」

「「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」」

俺の声に全員が応える。

その瞬間、皆が動き出す。

「勝負だ!高町 なのは!!」

「負けないよ!ヴィータちゃん!!」

なのはは、ヴィータと。

「決着をつけよう・・・・テスタロッサ!」

「負けません!シグナム!」

フェイトはシグナムと。

「お手柔らかにね。ユーノ君」

「こちらこそ」

ユーノはシャマルと。

「往くぞ!雷の守護獣よ!」

「かかって来な!盾の守護獣!」

アルフは、ザフィーラと対峙する。

ここで、本来はクライドさんと桜が戦う筈だったのだが、

「・・・・・・・・」

クライドさんが向いたのは、クロノの方だった。

クライドさんはデバイスを構える。

「お相手願おう!クロノ・ハラオウン執務官!!」

クライドさんはそう叫ぶ。

因みに、クロノにはクライドさんのことは話していない。

クライドさんの意思を無視して、話す気にはならなかった。

「あなたは?」

クロノが尋ねる。

「5人目の守護騎士。魔導の騎士!」

「そんな!?闇の書の守護騎士は4人だった筈!」

「私は、今回より新たに組み込まれた守護騎士。知らぬのも当然だ」

驚愕するクロノに、クライドさんは冷静にそう言う。

「まあ、あの人が言ってる事は本当だ。クロノ、相手してやってくれ」

俺はクロノにそう言う。

クライドさんがクロノを相手に選んだのなら、俺はそれを尊重しよう。

「桜は、俺のサポートを」

「オッケー!」

俺の言葉に、桜は答える。

「では、私は招かれざる客の相手をしましょうか・・・・・」

リニスはそう言うと、とある一点を見つめ、

「そこ!」

1発のフォトンランサーを放つ。

何も無いはずの空間でフォトンランサーが爆発を起こした。

煙が晴れていくと、仮面を被った2人の男。

変身したリーゼ姉妹だ。

やっぱりこのタイミングを狙ってきたか。

「くっ・・・・気付かれるとは・・・・・」

片方がそう漏らす。

「私達を甘く見ないで欲しいですね」

リニスはそう言って、変身したリーゼ姉妹と対峙する。

「ユウ達の邪魔はさせませんよ!」

リニスは2人に向かっていった。

俺は、リインフォースに向き直る。

「行くぞ!ブレイズ!」

『Stand by, Ready. Set up.』

俺はブレイズを起動させ、バリアジャケットを纏う。

リインフォースは右手を上に掲げる。

『Diabolic emission.』

黒紫色の魔力球が生み出され膨れ上がっていく。

「デアボリック・・・・・エミッション・・・・・・」

その言葉で、魔力球が圧縮され、

「闇に・・・・・沈め・・・・・」

一気に魔力が解放される。

辺りを蹂躙しようと魔力が荒れ狂う。

だが、それを俺は、

「ドラモンキラー!!」

右腕のドラモンキラーを思い切り振り上げた。

その威力で、デアボリックエミッションは真っ二つに切り裂かれ、四散する。

「何・・・・・?」

リインフォースは、静かに動揺した表情を浮かべる。

そこへ、

「ポジトロンレーザー!バージョンF!!」

間髪いれず、桜が砲撃を放った。

「盾」

『Panzerschild.』

リインフォースは障壁を張る。

桜の放ったポジトロンレーザーが障壁に当たり、揺るがせる。

「そぉれっ!!」

桜が更に魔力を込めると、障壁に罅が入った。

「スレイプニール・・・・」

リインフォースの背中の羽根が羽ばたき、その場を離脱する。

その瞬間、桜の砲撃が、障壁を貫通した。

俺は、離脱したリインフォースの行き先に先回りする。

「ドラモン・・・・・」

俺は右腕を振りかぶる。

それに気付いたリインフォースも右腕を振りかぶった。

『Schwarze Wirkung.』

その右腕に、黒紫色の魔力を纏わせる。

「・・・・・キラー!!」

俺のドラモンキラーとリインフォースのシュヴァルツェ・ヴィルクングがぶつかり合う。

激しい魔力の激突で、衝撃を撒き散らす。

「おらぁあああああっ!!」

結果は俺が押し切り、リインフォースの右腕を弾いた。

リインフォースは吹き飛ばされ、俺は追撃をかけようとした。

だが、いつの間にか、周りに無数の紅の短剣が浮かんでいた。

『Blutiger Dolch.』

その無数の短剣が一気に襲い掛かってくる。

「うわっ!」

「きゃっ!?」

不意打ちに俺は声を上げたが、ダメージは無い。

「桜!大丈夫か!?」

「だ、大丈夫よ!直撃は受けて無いわ!」

桜は若干動揺した声で返事を返した。

俺は、リインフォースに向き直る。

流石に蒐集を繰り返しただけあって、今までの相手とはレベルが違う。

とは言っても、俺にとっては十分どうにかできるレベルだが。

ともかく、はやてが目を覚ますまでの時間稼ぎが今の役目だ。





【Side ヴィータ】



今、アタシはなのはと1対1の勝負をしている。

心を操られてるのは納得いかねーが、なのはとの決着は付けときたかったから、丁度良いといえば丁度いい。

「おらぁっ!!」

「やあっ!!」

アタシのグラーフアイゼンとなのはのレイジングハートがぶつかり合う。

鍔迫り合いをする中でアタシは思う。

なのはは強くなったと。

1回目の対決は、あっさりとアタシが勝った。

砲撃の威力と防御の硬さは中々のものだと思ったけど、戦い方がてんで素人だった。

だから、接近戦に持ち込んだら対処仕切れなかったし、ラケーテンハンマーでバリアを砕いたらどうする事もできずにやられてた。

2回目の対決・・・・・っていうか、あれはチーム戦といったもんだったけど、アタシ等の惨敗だった。

油断した・・・・・って言うのも言い訳にしかならねえ。

まさか、たった1ヶ月であれだけ腕を上げるなんて思っても見なかった。

ユウは、あいつらの成長速度はデタラメだといってた事があった。

そん時は、テメーが言うなと流したけど、実際は言うとおりだった。

そして、今回の勝負。

正真正銘の1対1。

ベルカの騎士に、1対1で負けはねえ!

って、言いたい所だけど、なのはの強さは今までの蒐集で分かってるし、断言はできねぇ。

けど、

「へへっ・・・・」

思わず笑みが零れてしまう。

「ヴィータちゃん?」

その事を怪訝に思ったのか、なのはがアタシの名を呟く。

「久しぶりだぜこの感覚・・・・・・勝つか負けるかわからねえ、この緊迫感・・・・・・・背中がゾクゾクすらぁ」

シグナムがバトルマニアなのも、この感覚にハマったからだ。

すると、なのはも笑みを浮かべた。

「私は、そういうのは良く分からないけど、全力を出して競い合うのは大事な事だと思うよ。終わった後に笑い合うことが出来るならね」

そう言って、お互いに間合いを取る。

そして、お互いに笑みを浮かべた後、

「いっくぞぉおおおおっ!!」

「やぁあああああああっ!!」

アタシ達は再び激突した。







【Side Out】





【Side シグナム】




「おおおおおおおっ!!」

「はぁあああああっ!!」

高速での斬り合いを繰り返す。

――ギィン!

互いに弾きあい、間合いが広がる。

「プラズマシュート!!」

テスタロッサが、複数の魔力弾を放った。

確かこれは誘爆性がある魔力弾!

「同じ手は食わん!レヴァンティン!!」

『Schlangeform.』

連結刃となったレヴァンティンを薙ぎ払うように振るう。

テスタロッサが放った魔力弾を全て打ち落とした。

『Blitz Rush.』

「ッ!?上!」

テスタロッサが持ち前のスピードにより、攻撃を仕掛けてくる。

『Haken Form.』

テスタロッサのデバイスが、大鎌の形態に変形した。

「はぁあああっ!!」

振るわれる大鎌。

「でぇええええいっ!!」

私は、迎撃の為に連結刃のままレヴァンティンを振るった。

――ドゴォ!

魔力の激突により、爆発が起こる。

再び間合いが開く。

結果は、お互いに小さいが傷が出来ていた。

「やはり強いな、テスタロッサ」

『Schwertform.』

私は、レヴァンティンを剣に戻しながら言った。

「それにバルディッシュ」

自然と笑みが零れるのが分かる。

『Thank you.』

「あなたとレヴァンティンも・・・・・・シグナム」

テスタロッサも同様に笑みを浮かべていた。

『Danke.』

「このような状況だが・・・・・・何と心躍る戦いであろうか。礼を言うぞテスタロッサ。ここまでの戦い。長き時の中でも、数える程度しかない」

私は、鞘を具現し、レヴァンティンを鞘に納める。

「この心が操られているというのがやや不満だがな・・・・・・・・その所為で手加減できん。死なせないようにする自信は無い。許せよ、テスタロッサ」

私は、そう言い放つ。

「構いません・・・・・・全力の貴女を倒してこそ、意味があります」

テスタロッサは、そう言うと5つの魔力球を生み出した。

それは、テスタロッサの前に十字に配置される。

私は、鞘に入ったレヴァンティンのカートリッジをロードする。

「飛竜・・・・・」

テスタロッサは、魔力球の後ろでデバイスを構える。

「エクストリーム・・・・・・・」

そして、お互いに見つめ合い、自然と笑みが零れる。

それが合図となり、

「・・・・・一閃!!」

鞘から引き抜かれ、連結刃となったレヴァンティンがテスタロッサに襲い掛かり、

「・・・・・ジハード!!」

テスタロッサの魔力球から砲撃が放たれた。






【Side Out】






【Side シャマル】




私達は、お互いに攻撃が得意じゃない。

クラールヴィントも多少の殺傷能力は持っているけど、シグナムのレヴァンティンやヴィータちゃんのグラーフアイゼンには遠く及ばない。

それは、私ではユーノ君の防御を絶対に破る事は出来ない事を意味している。

でも、それはユーノ君も同じ事で、ユーノ君の攻撃では、私の防御を抜く事は出来ない。

故に、自然と私達の戦いは、どちらが先に相手をバインドで封じ込められるかになってくる。

一番最初の時は、互角か、やや私のほうが優勢だった。

でも、今のユーノ君はデバイスを持ち、ユーノ君自身も成長してる。

手数ではユーノ君の方が上。

まともにやったら押し切られる。

「チェーンバインド!」

ユーノ君がバインドを放ってくる。

そして、浮遊している2つのビットもバインドを放ってきた。

完全に囲まれている。

普通なら逃げられない。

だから私は、

「空間転移!」

私はその場から消え、ユーノ君の後ろに現れる。

「そこっ!」

私もユーノ君にバインドを放つ。

「シルバーブレイズ!」

ユーノ君は魔力弾を放って、バインドを破壊した。

やっぱり、一瞬でも気を抜いたら負ける。

私は気を引き締め、今まで以上に集中した。




【Side Out】




【Side ザフィーラ】



「うぉおおおおおおおおっ!!」

「おりゃぁああああああっ!!」

我の拳とアルフの拳がぶつかり合う。

「ハッ!やっぱり強いね!」

「当たり前だ!守護獣とはいえ我もベルカの騎士の1人!舐めてもらっては困る!」

互いに弾き合い、間合いが広がる。

「じゃあ、コイツをまた受けてみるかい!?」

アルフは右手を振りかぶる。

獣王拳の構え。

確かにあれは脅威だ。

バリアブレイクの効果も付与しているため、我の障壁でも防ぎきれん。

だが、我とてあの時の敗北から何もしなかったわけではない!

我も、アルフと同じような構えを取る。

「喰らいな!獣王拳!!」

アルフが右腕を繰り出し、狼の頭を模した魔力波が放たれる。

我は、我に襲い来る魔力波を見つめる。

振りかぶった右腕に魔力を込める。

これは、ユウから伝授された、獣王拳と双璧を成す技。

我は右腕を繰り出す。

「覇王拳!!」

拳を模した魔力波が我の拳から放たれる。

「なっ!?」

アルフは驚愕の声を上げる。

アルフの獣王拳と我の覇王拳がぶつかり合い、相殺する。

「今のは・・・・?」

アルフが呟く。

「覇王拳。お前の獣王拳と、双璧を成す技・・・・・・だそうだ」

我はそう答える。

「ハッ・・・・・そうかい。まあ、これで互角だね。だったら、正々堂々、タイマン勝負だ!」

「望む所!」

再び拳が激突した。




【Side Out】




【Side クライド】



『『Stinger Ray』』

お互いの魔力弾が相殺し合う。

『Blaze Cannon』

間髪いれず、クロノは砲撃を放ってきた。

「シュバルツファーター、カートリッジロード」

カートリッジをロードし、こちらも砲撃を放つ。

『Blaze Cannon』

同じ砲撃魔法同士がぶつかり合う。

私とクロノには、大きな魔力の差は無いが、こちらにはカートリッジがある。

私の放った砲撃は、クロノの砲撃を押し返す。

しかし、それはクロノも承知の上だったようで、危なげなく避ける。

そして、

『Stinger Snipe』

スティンガースナイプを放ってくる。

『Stinger Snipe』

対する私もスティンガースナイプを放つ。

お互いの操作する魔力弾が、私達の間で激突を繰り返す。

幾度か激突を繰り返した後、互いの頭上で弧を描くように停滞する。

そして、一呼吸置いた後、

「「スナイプショット!!」」

同時に口にしたキーワードで、魔力弾がぶつかり合い、相殺する。

その様子を見ながら私は思う。

クロノ・・・・立派になった・・・・・

私の心に沸き立つのは、喜びと嬉しさ。

・・・・・・そして、出来れば自分の手でここまで育ててやりたかったという、ほんの少しの悔しさ。

今更、私が父親だと名乗り出るつもりは無い。

そんな資格は、私には無い。

だがクロノ・・・・・・

大きくなったお前の姿を、もっと私に見せてくれ。

この位は、許して欲しい。




【Side Out】





【Side リニス】



例の2人は、前の敗北を教訓にしてか、無理に攻めてこない。

常に一定の距離を置いており、以前の敗北の要因であるテスタメントとセブンヘブンズを警戒している事が分かる。

しかし、このままでは時間が経つばかりで何も進展しない。

ユウから聞いたあの2人の目的が闇の書の永久封印なら、暴走が始まる前に私を倒したい筈。

しかし、あの2人から私を早く倒そうという意思は感じない。

寧ろ、戦いを長引かせるような・・・・・

私をここに引き付けておく、時間稼ぎのような動き。

私は怪訝に思いながら攻撃を繰り出した。




【Side Out】











要望があったので2つに分けました。



[15302] 第二十四話(後編)
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/06/06 15:39
第二十四話(後編)








「おらぁああああああっ!」

リインフォースが召喚したワームを、ドラモンキラーで真っ二つにする。

「ええい!はやて!いい加減に起きろ!!」

俺は思わず叫ぶ。

が、そう簡単に起きるわけが無い。

すると、リインフォースは手を掲げた。

「天神の導きの元・・・・・・」

リインフォースが呟くと、リインフォースの周りに無数の魔力スフィアが発生する。

「ファランクスシフト!?」

桜が叫ぶ。

確かにフェイトも蒐集されてるから、リインフォースにも使えるだろう。

しかし、そんな甘いものではなかった。

「星よ集え・・・・・・」

続けてリインフォースが唱えると、発生した魔力スフィアに空気中の魔力が集中していく。

「ま、まさか!ファランクスシフトとスターライトブレイカーの合わせ技!?」

桜が、更に驚愕した声を上げた。

だが、集まる魔力を見て気付いた。

「いや、違う!」

俺は叫ぶ。

「集いし星よ、月となれ・・・・・・・」

集まる魔力がまるで満月のように輝く。

それは、桜のルナライトブレイカー。

ファランクスシフトのスフィアは30を越える。

ならば、それら全てがルナライトブレイカーになっているという事だ。

まさか、ファランクスシフト、スターライトブレイカー、ルナライトブレイカーの全てを合わせた魔法を使ってくるなんて考えもしなかった。

「ちっ!そんな大技撃たせるかよ!」

俺はリインフォースに攻撃しようと動き出した瞬間、

「2人とも!避けろぉ!!」

突然聞こえるヴィータの声。

俺達が其方を振り向くと、ギガントシュラークが直ぐそこに迫っていた。

ヴィータは、なのはそっちのけで俺達に攻撃を加えようとしていた。

「桜!」

俺は咄嗟に桜を突き飛ばす。

その瞬間、

――ドゴォ!

ギガントシュラークの直撃を受け、俺は地面に叩き落される。

「ユウ!」

桜が叫ぶ。

だが、その瞬間、

夜天の煌きルナライトブレイカー ファランクスシフト

白銀の輝きが放たれた。





【Side リンディ】




私達は、アースラから戦いの様子を見ていた。

「ふわぁ・・・・・なのはちゃん達、すごく強くなってますね・・・・・・」

エイミィが呆然と呟く。

それは私も思った。

ジュエルシード事件からまだ半年も経ってはいない。

ジュエルシード事件の時ですら、AAAランクの強さは持っていたが、今のなのはさんたちの強さはAAA+。

いえ、もしかしたらSランクに届いているかもしれない。

物凄い成長速度だ。

しかし、先程から私は、1つの戦いが気になっていて仕方がなかった。

それは、クロノと魔導の騎士と名乗った守護騎士との戦い。

魔導の騎士は、仮面を被っていて、顔を確認できない。

でも、彼の戦い方、デバイスを持つときの癖、そして声。

あの人に似すぎている。

私はそう思うが、その考えを否定する。

私は何を考えているんだろう。

あの人は死んだ。

11年前に。

けど、見れば見るほどあの人に見えて仕方が無い。

「艦長?」

そんな私を怪訝に思ったのか、エイミィが心配そうな表情で尋ねてくる。

「あ、いえ、何でもないわ」

私は、そう答え、考えを切り替えようとする。

それでも、その戦いから目を離すことは出来なかった。





【Side Out】





【Side クライド】




「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・」

クロノは肩で息をしている。

流石に限界だろう。

しかし、武器の差、経験のハンデがある中で、ここまで喰らい付いたクロノには驚かされる。

そして、限りなく勝ち目が薄い今でも、クロノの目に諦めの色は無い。

本当に立派になった。

「見事だったぞ、クロノ・ハラオウン執務官。そんな君に敬意を表して、私の全力で君を倒そう!シュバルツファーター!」

『Load Cartridge.』

シュバルツファーターがカートリッジを3発ロードする。

私の周りに、無数の魔力刃が発生した。

すると、クロノもデバイスを掲げ、魔力刃を発生させた。

しかし、その魔力刃の数は、私の半分程度。

それでも、クロノには諦めの色は微塵も無かった。

「最後の勝負だ!」

クロノは叫ぶ。

「受けて立とう!」

私はクロノの言葉に応える。

そして、

「「スティンガーブレイド!エクスキューションシフト!!」」

同時に魔力刃を放った。

お互いの魔力刃はぶつかり合い、爆発を起こす。

だが、数の差は大きく。

私の魔力刃は、半分以上残ってクロノに襲い掛かる。

そして・・・・・・・・クロノをすり抜けた。

「幻影!?」

その時、

「うぉおおおおおおおっ!」

上空からクロノがデバイスを振りかぶって急降下してきた。

だが、

「これも幻影・・・・・」

私はそれが幻影であることを見抜き、放置する。

クロノはデバイスを振り下ろすが、思ったとおりすり抜ける。

その時、後ろに気配を感じた。

幻影ではなく、はっきりとそこに在るという感覚。

「後ろっ!」

私は、振り向きざまにデバイスを薙ぎ払った。

――カァン!

手応えはあった。

しかし、余りにも軽すぎる手応え。

「なっ!?デバイスだけ!?」

私が弾き飛ばしたのはデバイスだけだった。

「うぉおおおおっ!」

聞こえた声に振り向けば、先程放置した幻影の影から、クロノが飛び出す。

「幻影の死角から・・・・・!」

その事を認識するとほぼ同時に、私の胸部にクロノの右手が押し当てられる。

自然と、笑みが浮かんだ。

次の瞬間、

「ブレイクインパルス!!」

クロノが放ったブレイクインパルスの衝撃に私は吹き飛ばされ、地面に勢い良く叩きつけられた。

「ぐ・・・・はぁ・・・・・・」

身体中に痛みが走る。

まともに動かす事ができない。

・・・・・私の負けか。

見ると、クロノが上空からゆっくりと降りてきていた。

そして、私に歩み寄ってくる。

「・・・・・・何で、そんなに嬉しそうなんですか?」

私の笑みを浮かべる顔を怪訝に思ったのか、クロノはそう尋ねてくる。

「嬉しいさ・・・・・私を越えるほどに、お前が立派に育ってくれたんだ・・・・・・」

私は思わず本音を漏らす。

――ピシッ

仮面に罅が入る。

「それは・・・・如何いう・・・・?」

クロノはそう呟くが、

――ピシシッ

仮面に罅が広がる。

そして、

――パキィン!

「強くなったな・・・・・クロノ」

仮面が砕け、私の素顔が露になった。




【Side Out】





【Side リンディ】



――ガタッ!

私は思わず立ち上がる。

「クライド!」

あの人の名を叫ぶ。

何故!?

どうして!?

確かめたい!

傍に行きたい!

私は艦長!

簡単に艦を離れるわけには!

でも!

何で!

あの人が何故!?

あらゆる考えが頭の中を駆け巡り、ぐちゃぐちゃになる。

私は混乱の極みにいた。

このままでは狂ってしまいそうなほどに。

けど、

「行って下さい!艦長!」

エイミィが叫んだ。

「エイミィ!?」

「艦の事は我々にお任せを!」

「アレックス!?」

「転送準備、完了しています。艦長、お早く!」

「ランディ!?」

3人の行動に私は驚く。

「さあ!艦長早く!」

エイミィに促される。

「ッ!・・・・・・・ごめんなさい。皆、後をお願い!」

私はそう言い残して転送ポートに駆け込んだ。




【Side Out】




【Side クロノ】




「強くなったな・・・・・クロノ」

魔導の騎士と名乗っていたその男。

その男の素顔を、僕は良く知っていた。

直接会った記憶は殆ど無いが、写真でその顔を何度も見ている。

ユウたちが戦っていた方で大爆発が起こったが、それを気にする余裕もなかった。

「・・・・・・父・・・・・・・さん・・・・・・・・・・?」

僕は呆然と呟いた。

「フッ・・・・・そう呼ばれる資格など、私にはとうに無いものを・・・・・・」

そう自傷気味に呟いた。

その時、近くに転送魔法陣が発生する。

そして、

「クライド!」

母さんが転送されてくると同時に叫んだ。

「やあ・・・・リンディ・・・・・」

父さんと思わしきその人は、ゆっくりと身体を起こし、母さんに微笑みかける。

「本当に・・・・・・本当にあなたなの!?」

母さんが震えた声で問いかける。

「確かに私は、クライド・ハラオウンだった者に間違いは無いよ」

父さんはそう認めるように呟いた。

「けど・・・・今ここにいるのは、家族に会いたいが為に悪魔の誘惑に乗ってしまった、ただの情け無い男だ」

父さんはそう言った。

けど、

「クライド!」

次の瞬間、母さんは父さんに抱きついた。

「クライド・・・・・クライド・・・・!」

母さんは父さんに抱きつきながら涙を流す。

「リンディ・・・・・」

父さんは、母さんの背中に手を回す。

その時、ふと父さんと目が合う。

「父・・・さん・・・・」

僕は自然と父さんに歩み寄る。

父さんの近くまで来ると、父さんは僕の頭に手を乗せ、

「偉いぞ、クロノ」

そう言いながら、父さんは僕の頭を撫でた。

その言葉に、どのような意味が含まれていたのかは分からない。

まるで、幼い子供にするような仕草だったが、僕は何故か嬉しくなった。

「うっ・・・・く・・・・・・父さん・・・・・」

自然と、目から涙が溢れる。

「・・・・・会いたかった・・・・・・・・会いたかったよ!父さん!」

僕は思わず、父さんに抱きついた。




【Side Out】




【Side リニス】




夜天の煌きルナライトブレイカー ファランクスシフト

莫大な魔力に振り向けば、30を超える集束砲が、ユウ達に向かって放たれた。

「ユウ!」

私は叫ぶ。

その瞬間、私はバインドで拘束された。

「やっと隙を見せたな!!」

片方の仮面がそう言う。

「うぉおおおおおっ!!」

そして、もう1人が蹴りを放ってくる。

「がっ!?」

私は吹き飛ばされるが、バインドで拘束されながらも何とか制動をかける。

「このまま押し切る!!」

2人は、一気に勝負を決める為に、接近してきた。

しかし、私は口元に笑みを浮かべる。

「掛かりましたね」

私が呟くと、

「何!?」

片方が怪訝な声を上げ、

「まさか!?」

もう片方が気付いたように上を見上げた。

あの2人の上空には、巨大な雷球が存在している。

「「なっ!?」」

2人は驚愕した声を上げる。

私は、その技の名を口にする。

「アセンションハーロー!!」

その言葉と共に、雷が2人に降り注ぐ。

「「がぁあああああああっ!?」」

2人の叫び声が響いた。

そして、雷が収まると、2人は満身創痍で、変身魔法も解けて、元の姿になっていた。

「ぐ・・・・畜生・・・・・」

リーゼロッテが、そう吐き捨てるように呟いて気絶する。

「ごめんなさい父さま・・・・・でも、時間稼ぎはできました・・・・・」

リーゼアリアが、そう懺悔する様に呟き、気絶した。

しかし、言い残した言葉が気になる。

時間稼ぎ?

私は気付いたように空を見上げた。

遥か上空には、とあるデバイスを構えた初老の男性。

そして、その男性に向かって突撃する桜の姿があった。





【Side Out】





【Side 桜】




夜天の煌きルナライトブレイカー ファランクスシフト

私にとっては防ぎきれない絶望の光が放たれる。

焼け石に水だとしても、私は全力でシールドを張り、目を瞑った。

――ドゴォオオオオオオオッ!!

私の周りを集束砲が通過する感覚。

でも、私のシールドに負荷は殆ど掛かってはいなかった。

「えっ?」

不思議に思った私は目を開ける。

すると、私の前に展開されている黄金の盾。

「ブレイブ・・・・・シールド・・・・・?」

ユウのブレイブシールドが私を守っていた。

やがて、集束砲が収まり、私はユウを探す。

「ぐぅ・・・・! き、きっつ・・・・・」

着弾点に、起き上がろうとするユウの姿。

流石に今のは、幾らユウでも堪えたようだ。

私は、直ぐに気を張り詰め、リインフォースを見上げる。

と、その時、偶然にも視界に映る。

リインフォースのはるか上空で、デバイスを構える初老の男性。

時空管理局提督、ギル・グレアムが、氷結の杖・デュランダルを構えていた。

「ッ!?」

私は彼の狙いに気付く。

グレアム提督は、このまま闇の書を封印するつもりだと。

その瞬間、私は弾かれたように行動に出た。

「レイジングソウル!フルドライブ!!」

私は、レイジングソウルのフルドライブモードを起動する。

『Burst Mode.』

レイジングソウル・バーストモード。

形状は、なのはのエクセリオンモードと同じ。

「A.C.S起動!」

すぐさまA.C.Sモードを発動させ、それを構える。

「やらせない!!」

私は、高速でグレアム提督に向かって突撃した。

砲撃では、避けられてしまう可能性があるので、私はA.C.Sを選択したのだ。

今にもエターナルコフィンを発動しようとしているグレアム提督。

私はかまわずに突撃した。

正直、後先考えてなかった。

A.C.Sは捨て身の攻撃。

そんなものでエターナルコフィンのような大魔法にぶつかれば、私自身無事では済まない事。

そして、そんな結果をユウが受け入れる筈もなかった。

激突の瞬間、

――ガシィ!

「えっ?」

「なっ!?」

私とグレアム提督が声を漏らす。

私のレイジングソウルと、グレアム提督のデュランダルはぶつかっていない。

私とグレアム提督の間には、いつの間にかアイシクルを起動させたユウがいて、レイジングソウルとデュランダルを、それぞれの手で掴んで止めていた。

しかし、エターナルコフィンは発動していたようで、デュランダルを掴んでいた方のユウの手から徐々に凍り付いていく。

「ユウ!」

私は、ユウの名を叫ぶ。

すると、ユウは私の方を向き、

「無茶すんな、このバカ!」

そんなことを言った。

その時、

――バサッ

羽音が聞こえる。

ユウの後ろに、闇の書のデバイスを開いたリインフォースの姿。

それに気付いたユウは、

「チッ!離れろ!」

レイジングソウルを掴んでいた手を離し、その手から魔力波動を放って、私とグレアム提督を吹き飛ばす。

「ユウッ!!」

私は思わず叫んだ。

「・・・・・・お前も、我が内で・・・・眠るといい・・・・」

リインフォースが呟き、ユウの身体が光に包まれる。

ユウの身体は、大半が凍り付いているので、咄嗟の行動が出来ない。

「・・・・・・・桜」

ユウが私の名を呟く。

「クロノに伝えろ・・・・・・プランΩだと」






そして、







その言葉を最後に、







『Absorption.』






ユウは闇の書に吸収された。






「ユウーーーーーーーッ!!!」





私の悲鳴がその場に響いた。







あとがき


やりたい放題やった第二十四話の完成です。

場面がコロコロ変わって分かり辛いかもしれません。

あと、人によっては、クロノ達に協力を仰いだのは納得できないかも・・・・・・

そして、リーゼ姉妹。

かませ犬ならぬかませ猫にしかならなかった。

一応、今回の話の中心は、クライドとクロノ、リンディの再会。

そして、ユウが闇の書に吸収される所だったんですけど・・・・・・・

文章の量が多くなってそこまで目だって無いかも。

クライドとクロノの再会は、あんなもんで如何でしょう。

何か物足りない気もしますが・・・・・・

クロノ君、少々幼児退行?

そして、ユウたちと闇の書の戦い。

とりあえず、ユウにもダメージ与えられそうな魔法という事で、ルナライトブレイカーをファランクスシフトでかましてみました。

流石にあれならちったぁ効くよね?

それから、闇の書に吸収されるまでの流れは、納得できるかな?

元々、吸収されるつもりではいたんですけど、ユウ君強すぎて悩みました。

悩みに悩んだ挙げ句、あんな感じになりましたが、如何でしょうか?

今回はこの辺で。

では、次も頑張ります。





[15302] 第二十五話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/06/06 15:36

第二十五話 生きる意味(前編)





【Side グレアム】



前回の闇の書の悲劇より11年・・・・・・

闇の書の転生先を見つけ、永久封印の目処もたった。

闇の書の主であるあの少女を犠牲にする事は辛いが・・・・

これ以上、闇の書の悲劇を繰り返すわけにはいかんのだ。

そう、もうクライドのような悲劇を繰り返さない為にも・・・・・・・

全てが終わったら、どんな罰でも甘んじて受けよう。

そう考えていた。

だが、リーゼ達の報告を聞いて、私は驚愕した。

闇の書の主である八神 はやてを監視していたリーゼ達が、何者かに襲撃され、敗北したというのだ。

そして、八神 はやての家の周りには、強力な結界が張られ、中の様子が全く分からなくなってしまった。

時期的にそろそろ守護騎士が目覚める頃。

何故この大事な時に・・・・!?

襲撃者について調べると、直ぐに見つかった。

それは、同じ海鳴市に住む、利村 ユウ。

本名、ユウ・リムルート。

類稀な魔導資質を持ち、優秀な猫が素体の使い魔を従える少年。

彼が八神 はやてと面識を持った事は完全に誤算だった。

SSSオーバーの魔力を持つ彼は、クロノからの報告で管理局に対して、これ以上無いほどの嫌悪感を有しているらしい。

本来ならば、守護騎士が目覚めれば、何れ主の為に蒐集を開始する。

そして、闇の書が完成する寸前に、守護騎士と共に闇の書を確保し、守護騎士を蒐集して闇の書を完成させた後、デュランダルによる凍結魔法で永久封印するという手順を踏む計画だった。

しかし、彼が闇の書側に付くとなれば、話は大きく変わってくる。

彼は、八神 はやてを救うために蒐集を行なうだろう。

だとすれば、リーゼ達だけでは、彼の相手は不可能だ。

彼は、闇の書が完成した時点で暴走することは知っているようだが、甘く見すぎている。

闇の書は、人間が・・・・・・それも、八神 はやてのような単なる子供に何とかできるものではない。

それを、何とかなると思っているのだろう。

幾ら資質は高くともやはり子供だ。

そこまでの考えが至っていない。

やはり、恨まれるのを覚悟で、最後に隙をみて封印するしか無いだろう。

そう思い、行動した。

その結果が・・・・・





「ユウーーーーーーーッ!!!」

辺りに響く悲鳴のような叫び声。

彼は、目の前で闇の書に吸収されてしまった。

しかも、デュランダルを持ったまま。

なんという事だ。

これでは封印も出来ない。

何たる失態。

「そ、そんな・・・・・・ユウ・・・・・・」

彼と共に居た少女が呟く。

すると、その少女が私を睨み付ける。

「ああもう!余計な事してくれたわね!折角考えてた計画がメチャクチャじゃない!」

その少女は、私に向かって吐き捨てるように言った。

「しかし!闇の書は君達が考えてるような甘いものでは・・・・」

「知ってるわよそんなこと!」

私の言葉を遮って少女は言った。

「幾ら魔力が強くたって如何にもならないことぐらい分かってたわよ!けどね!ユウには何とか出来る手段があった!ユウは、後ろ向きで自分を過小評価しすぎる性格をしてるけど、それは逆に言えば、出来ない事を出来るなんて言ったりする見栄を絶対に張らないって事!ユウが、自信を持って出来ると言った事なら、ほぼ確実に出来るってことよ!だから、今回だって何とか出来る方法を持ってた筈!それに、ユウは全員助ける事を目指してたけど、最悪、はやてや守護騎士を犠牲にする覚悟もあった!アンタはそれを台無しにしたのよ!」

少女は叫び続ける。

「別にアンタのやろうとした事が間違ってるとも思わないし、正しいとも思ってない!でも、犠牲になるのがはやてだった!私達はそれが気に入らない!」

その少女の言葉に、私は、

「子供に・・・・・子供に何が分かるっ!!」

思わず叫んでしまった。

怒鳴るつもりなど無かったが、一度箍が外れてしまうと、口から次々と言葉が出てきてしまう。

「私はっ!私はクライドを!・・・・・自分の部下をこの手で撃たねばならなかったのだ!そのときの気持ちがお前に分かるか!? だからこそ、最低限の犠牲で闇の書を封印しなければならなかった!もう二度と、クライドのような悲劇を繰り返さない為に!!」

「知らないわよそんなこと!!第一、アンタがやりたかったのは、悲劇を繰り返さない為じゃない!単なる復讐でしょ!?」

少女の言葉に、私は胸を貫かれたような衝撃に襲われた。

「・・・・・・・・・・そうだな・・・・・その通りだ・・・・・・」

私は呟く。

「私は許せなかった!闇の書を!そして、クライドを撃つ事しかできなかった自分を!故に、その時に私は誓ったのだ!どんな方法を取ろうとも、必ず闇の書をこの世から無くすと!」

これは、今まで自分すら気付いていなかった・・・・・いや、気付かない振りをしていた本当の本音。

「それで、その答えがはやてを犠牲にする事!?それでクライドさんが喜ぶと思ってるの!?」

「クライドはそのようなことは認めんだろう・・・・・・だが、これは私の問題だ!」

私はそう区切り、次の言葉を発しようと・・・・・・

「そこまでです、グレアム提督」

何者かに名を呼ばれ、私は其方に振り向き、

「なっ!?」

驚愕した。

そこには、クロノとリンディ提督に肩を支えられているクライドの姿。

「ク、クライド・・・・・?」

私は信じられなかった。

何故彼がここに居る?

クライドは11年前に死んだ筈。

「グレアム提督、クライドは、闇の書の守護騎士となっていたんです」

リンディ提督がそう言った。

「ほ、本当なのか、クライド?」

「はい、私は、家族と再び会えるチャンスを貰う代わりに闇の書の守護騎士になるという取引をしました。我ながら情け無い話です」

そう言って、クライドは自傷気味に笑う。

「グレアム提督、復讐などはお止めください」

「だ、だが、私はお前を・・・・・・」

「グレアム提督、私は、自ら進んであの役を引き受けたのです。グレアム提督が気にすることではありません。そして何より、『私』は、『今』『ここ』にいます」

クライドは、そう言うと、視線を闇の書の管制人格に向けた。

「そして何より、『未来』は、子供達が切り拓いていくものです!」

クライドがそう言ったとき、不自然なほどに沈黙を保っていた闇の書の管制人格が光に包まれた。





【Side Out】








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・




・・・



「・・・・・ウ・・・・・・ユ・・・・・・・・・ユウ・・・・・・・・ユウ!」

俺の名を呼ぶ声がする。

「ユウ!起きてください!朝ですよ!」

その声に、俺はゆっくりと瞼を開く。

「あ、やっと起きましたね」

そこには、人間形態のリニスの姿。

「リニス?」

俺は尋ねる。

「ほら、早く起きてきてください。朝御飯が冷めてしまいますよ」

「え・・・・・・?」

俺は起き上がる。

ここは、自分の家のベッドの上。

「すぐに来てくださいね」

リニスはそう言って、部屋を出て行く。

「・・・・ここは・・・・・?」

俺は疑問に思ったが、すぐに答えに行きついた。

「そうか・・・・・ここは夢の中か・・・・・・」

闇の書が見せる自分の望んだ世界。

俺は立ち上がる。

自分の部屋を出て、朝食を食べていた居間へと向かう。

俺は居間へと続く扉の前で立ち止まる。

「俺の・・・・・望んだ世界・・・・・・・」

俺の、望んだ世界は・・・・・・

その思いを胸に、俺は扉を開けた。

そこには、

「おはよう。ユウ」

「おう、ユウ。おはよう」

朝食をテーブルの上に並べている母さんと、座って新聞を読んでいる父さんの姿。

「父さん・・・・・母さん・・・・・・」

俺は思わず目尻が熱くなる。

「うん?如何したユウ?」

「ユウ?」

父さんが、そんな俺の様子に気付いたのか、心配そうな声をかけてきて、母さんが俺の顔を覗き込む。

「・・・・・っく・・・・・・・ううっ・・・・・・」

俺は我慢できなくなり、涙を流した。

父さんと母さんがいる普通の生活。

これが、俺の望んだ世界・・・・・・・・








【Side はやて】




私は今、車椅子に乗って真っ暗な暗闇の中におった。

「眠い・・・・・・」

この場所はとても眠い。

あかん、ユウ君は私を信じてくれとるんや。

起きなあかん。

そうは思うけど、凄く眠い。

すると、目の前に銀色の髪と赤い瞳をもった女の人が現れた。

『そのまま御休みを、我が主。目を閉じて・・・・・心静かに夢を見てください』

その女の人がそう言ってくる。

この人がユウ君の言っとった闇の書の管制人格ってやつなんやろか?

「・・・・・・夢?」

私は呟く。

『健康な身体。愛する者達と、ずっと続いていく暮らし。眠ってください。そうすれば、夢の中であなたはずっと、そんな世界にいられます』

確かに、そんな世界には憧れるわ。

けどな・・・・・

「・・・・・・ちょっと・・・・近くに来てくれへんかな?」

私は、管制人格さんに呼びかける。

『なんでしょうか・・・・・・主?』

管制人格さんは近くに来て、律儀にも跪いとる。

けど、丁度ええわ。

私は、可能な限り上半身を仰け反らせる。

『主・・・・・?』

「ふん!!」

管制人格さんが怪訝そうな声をかけて来たけど、私は構わずに、思いっきり頭を振り下ろした。

――ゴチン!

正にそんな擬音語がピッタリの音がした。

簡単に言えば、私は、管制人格さんに思い切り頭突きをかました。

『ッ~~~~~~~~!!?? あ、主? いきなり何を!?』

管制人格さんは頭を押さえつつ、涙眼でそう問いかけてきた。

こういったら何やけど、かわええ反応や。

「っしゃっ!!目ぇ覚めたで!!」

私は気合を入れなおすように叫ぶ。

『あ、主!?』

「なあ、管制人格さん。確かにさっき言ってたような世界には憧れとる」

私は言った。

『ならば何故?』

「決まっとる。それはただの夢やからや」

『え?』

「私は、夢で満足するほど大人しい子やないで。それを現実にしてこそ意味があるんや!」

『主・・・・・・』

「だから、私は目覚めなあかん。外で頑張ってくれとるみんなの為にも・・・・・・何より、私自身の為に」

『私の感情は、騎士達の心と深くリンクしています。だから騎士達と同じように、私もあなたを愛おしく思います。だからこそ、あなたを殺してしまう自分自身が許せない・・・・・・・自分ではどうにもならない力の暴走。あなたを侵食する事も、暴走してあなたを喰らい尽くしてしまうことも、止められない』

管制人格さんは、悲しそうな表情でそう言う。

「覚醒の時に、今までのこと少しはわかったんよ。望むように生きられへん悲しさ。私にも少しは分かる!シグナムたちと同じや!ずっと悲しい思い、寂しい思いしてきた・・・・・・」

私は、一呼吸置き、

「せやけど、諦めたらあかん!今のマスターは私や!マスターが諦めん限り、貴女も諦めたらあかん!」

『主・・・・・・』

「私がマスターである限り、諦める事はゆるさへんで!リインフォース!!」

『リイン・・・・・・フォース・・・・・・・?』

「貴女の名前や!もう“闇の書”とか“呪いの魔導書”とか言わせへん。私が呼ばせへん!」

『私の・・・・・名前・・・・・・・』

「そうや!強く支える者、幸運の風、祝福のエール。“リインフォース”。それが私が付けた貴女の名前や!」

リインフォースが大粒の涙を流す。

『主・・・・・私に・・・・・・名を下さるのですか・・・・・・・・?』

「当たり前や!リインフォースは私の家族や!家族に名前があるのは当然やろ!?」

『私を・・・・・・・家族とまで・・・・・・』

すると、リインフォースは立ち上がる。

『わかりました、我が主。家族を守る為に、私も運命に逆らってみましょう』

「うん」

リインフォースの言葉に、私は頷く。

『では主、まずはこれを・・・・』

リインフォースがそう言って手を前に翳すと、そこに一本の杖が現れた。

『主の杖です』

差し出された杖を、私は掴む。

その瞬間、私の服装が変化し、背中に黒い羽根まで生える。

これがバリアジャケットって奴やな。

『それから、魔導の知識をあなたに譲渡しました』

言われたとおり、魔力の扱い方や魔法の知識が頭の中にある。

『守護騎士プログラムも切り離し済みです。さあ、お行きください主』

「・・・・え?」

リインフォースの言葉に、私は声を漏らす。

『私は、この場で転生機能を一時的に停止させます。その間に闇の書を破壊すれば、闇の書は転生せず、破壊する事が出来ます。無限再生は止められませんが・・・・・・管理局のアルカンシェルならば、問題ないでしょう』

「そんなことしたら、リインフォースが!」

『良いのですよ主。私は罪深き魔導書です。主はそんな私に、綺麗な名前と心をくださいました。長き時の中でも、これほど嬉しい事はありません・・・・・・だから私は、笑って逝くことができます』

「あかん!そんなんあかんて!」

『大丈夫です。守護騎士達もあなたの傍にいます。何も心配することはありません』

「違う!心配とかそんなんや無い!」

『主・・・・・お願いです。私を、この無限の地獄から救ってください・・・・・・』

「助ける!絶対に助けるからお願いや!逝かんといてリインフォース!」

『そのお気持ちだけで十分です。ありがとうございます。主』

リインフォースがそう言うと、足元にベルカ式の魔法陣が現れる。

「リインフォース!」

私は、リインフォースに手を伸ばそうとした瞬間、白い光に包まれた。

『主・・・・・私は、世界で一番幸福な魔導書です』

そんな呟きと共に、リインフォースは微笑んだ。

「リインフォースッ!!」

その瞬間、私は外へ弾き出された。





【Side Out】




【Side 桜】




リインフォースが光に包まれて少しすると、光の中から、はやてが弾き出されるように飛び出した。

「はやて!」

私は咄嗟にはやてを受け止める。

「ッ!桜ちゃん」

「はやて、大丈夫?」

私はそう声をかけるが、おかしい事に気付く。

はやての今の姿は、アニメの通りの杖を持っており、バリアジャケットも同じだが、髪の毛と瞳の色が元のまま。

つまり、リインフォースとユニゾンしていない事をあらわしている。

如何いう事?

はやては、私に振り向くと、

「お願いや桜ちゃん!リインフォースを助けて!」

はやてはそう叫ぶ。

「ど、如何いう事?」

私はなんとかそう尋ねる。

その時、精神操作が解けたのか、守護騎士達と、なのは達が集まってきた。

「はやて!」

ヴィータが一目散に飛んでくる。

「ヴィータ!」

「はやて、無事だったんだな!」

ヴィータが嬉しそうにそう言う。

「主はやて・・・・・」

「はやてちゃん・・・・」

「主・・・・・」

シグナム、シャマル、ザフィーラも安堵の表情を見せている。

すると、転送用の魔法陣がその場に現れ、プレシアさん、アリサ、すずか、アリシアが転移してくる。

非魔導師の3人は、プレシアさんの魔法で宙に浮かんでいる。

「状況が変わったようだから様子を見に来たんだけど、どういう状況なの?」

プレシアさんが尋ねる。

すると、

「お願い皆!リインフォースを助けて!」

はやてが泣きそうな声でそう叫ぶ。

「リインフォース?」

なのはが首を傾げる。

「夜天の魔導書の管制人格のことや!リインフォース、転生機能を一時的に停止させるって・・・・・あの中に残ったんや!」

はやては、黒く巨大な淀みを指差す。

「そんな・・・・・・・・そういえば・・・・ユウは?」

フェイトが気付いたように辺りを見回す。

「そういえば・・・・・何処に行ったの?」

アリシアも気付き、尋ねてくる。

私は言い辛かったが、

「ユウは・・・・・・・闇の書に吸収されたわ」

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

全員が驚愕した表情を浮かべる。

「まさか・・・・・ユウが吸収されるとは・・・・・・・」

シグナムが呟く。

闇の書に吸収能力が有るだろうことは、予想の範囲という口実で皆に知らせてある。

「それで如何すんだよ?ユウが吸収されることなんて想定してねえぞ!」

ヴィータが言う。

皆も焦りの表情が窺える。

だが、私はその時、ユウが吸収される寸前に言った言葉を思い出した。

「そうだクロノ!ユウ、“プランΩ”って言ってた!」

私はクロノに叫ぶ。

「プランΩ?リニスさん、知ってる?」

なのはがリニスに尋ねる。

「いえ、私もそんなプランは聞いてませんが・・・・・」

リニスも知らない事らしい。

クロノを見ると、驚愕の表情を浮かべていた。

「・・・・・・プラン・・・・Ωだと・・・・・・・」

クロノは震える声で呟く。

「ど、如何したの?」

私は尋ねる。

「プランΩ・・・・・策なんて言える物じゃない・・・・・・・・・ユウが闇の書に吸収された場合に行うもの・・・・・・・・」

「い、いったい何なの!?」

嫌な予感がした。

「八神 はやて。及びに管制人格が闇の書の内部から脱出した後、アルカンシェルで全てを吹き飛ばす」

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

再び全員の顔が驚愕に染まる。

「ちょっと!それ如何いう事よ!」

アリサが声を上げる。

「聞いての通りだ・・・・・ユウは、自分諸共闇の書を消滅させろと言ったんだ」

「嘘・・・・・だよね・・・・・・・」

すずかが、一途の望みを託すように聞くが、

「・・・・・・こんな事、冗談で言えるわけ無い」

クロノが絞り出すような声で言った。

クロノも、握った拳が震えている。

「何で・・・・・そんな選択を・・・・・・」

「ユウは・・・・・・“自分では、闇の書の夢から自分で覚められるほどの心の強さを持ってないから”と言っていた」

クロノの言葉に、私は俯く。

「それから・・・・・リニスの事は、プレシア・テスタロッサか、母さんに頼んでくれ、と・・・・・・」

そのクロノの言葉に、リニスは表情を青ざめさせる。

「ユウ・・・・・・」

リニスは呟く。

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」

全員が、この後の行動を決めかね、沈黙してしまう。

「・・・・・・・・アイツは・・・・・・・本当にバカなのよ・・・・・・・」

私は思わず呟く。

「桜お姉ちゃん?」

なのはが私の名を呟く。

「アイツは・・・・・・どれだけ大切に思われてるか・・・・・・全然分かって無い・・・・・・・・・・・何時だって、自分を卑下して、みんなの気持ちを否定して・・・・・・・・・なのはも・・・・・・フェイトも・・・・・・アリシアも・・・・・・はやても・・・・・・・アリサも、すずかも・・・・・・リニスからも・・・・・・・・皆からとても想われる事を認めようともしない・・・・・・・」

私は、呟きながら目尻が熱くなるのを感じる。

「それに・・・・・・・私だって・・・・・・・・」

ユウが闇の書に吸収されて、初めて気付いた。

私自身の、本当の想いに・・・・・・

「桜お姉ちゃん・・・・・・・もしかして・・・・・・」

なのはが、気付いたように呟く。

私は、懺悔するように呟いた後、涙を拭って顔を上げ、闇の書の闇に向き直る。

「お、お姉ちゃん!?如何するの!?」

私の行動に驚いたのか、なのはが声を上げる。

「決まってるじゃない!1人じゃ起きられないって言うのなら、叩き起こすだけよ!!」

私はそう答えた。

「んなっ!? そんなデタラメな・・・・・!」

クロノが驚いた声を上げる。

すると、リニスが私の横に並び、

「私も協力しましょう」

そう言った。

その姿を見たなのはが、

「そうだね・・・・・・それがいいかもしれない」

私の案に同意する言葉を呟く。

「お寝坊さんのユウ君を、私達で起こしてあげよう!」

なのはがみんなにそう言った。

すると、

「そうやな・・・・・ユウ君だけや無く、リインフォースも起こしてあげなあかんし・・・・・」

はやてが同意し、

「私も手伝う!」

フェイトもそう言った。

「どのみち、このままでは埒が明かん。僅かな可能性でも、賭けてみるべきだろう」

シグナムがそう言い、守護騎士達も頷く。

「君達は・・・・・・」

クロノは、若干呆れたような顔をするが、

「だが・・・・・ユウに借りを作ったまま消えられるのは、僕としても不満だ。僕もその賭けに乗らせてもらおう」

クロノの言葉に驚いたのは、グレアム提督だった。

「ク、クロノ・・・・!?」

すると、クロノはグレアム提督の方を向き、

「グレアム提督、彼女達を管理局の定義に当てはめるのは無粋ですよ」

クロノはそう言った。

「彼女達は、最善や確率などで作戦を決めているわけではありません。ただ、彼女達がやりたいと思ったことをやっているだけです」

クロノは続ける。

「確かにそれは、管理局から見れば無謀なのかもしれません・・・・・・ですが、それこそ新たな未来を切り拓く道しるべになると僕は思います!」

クロノはそう言い切った。

「なら決まりね」

私の言葉に、みんなが頷く。

「ならゴチャゴチャ言わないわ!ありったけの魔力と想いを込めた一撃を叩き込む!!これだけよ!!」

「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」」

私の言葉に、みんなが唱和する。

「なら、シャマル!」

はやてがシャマルに呼びかける。

「はい!皆の回復と補助ですね!」

シャマルは分かっていると言わんばかりに頷き答えた。

「聖なる風よ・・・・・・大いなる闇に立ち向かいし戦士達に、安らぎと祝福を与えよ・・・・・・」

シャマルは両手を横に広げた後、そのまま両手を天に翳し、

「セイント・エアー!!」

光の粒が私達を包んだ。

「これって・・・・・怪我が治ってる?」

なのはが自分の身体を確かめるように呟く。

「それだけじゃない。力が漲って来る」

フェイトが気付いたように言った。

「私に出来るのはこれくらいだから・・・・・・お願いね、皆」

シャマルはそう言うと、少し寂しげな表情を浮かべた。

すると、

「任せろシャマル。お前の想い、私が一緒に届けてやる」

シグナムがそう言った。

「ええ、お願いねシグナム」

シャマルが笑みを零す。

「それじゃあ、あたし等は露払いだね!」

「うむ!盾の守護獣の名は伊達ではない所を見せてやる!」

「サポートは、僕達に任せて!」

アルフ、ザフィーラ、ユーノがそう言う。

「なら、行くわよ皆!」

「「「「「「「「「「ええ(うん)(おう)!!!」」」」」」」」」」

その時、黒い淀みが膨れ上がる。

「夜天の魔導書・・・・・呪われた闇の書と呼ばせたプログラム。闇の書の・・・・・闇」

はやてが呟くと、黒い淀みが砕ける。

アニメでは、虫と獣が融合したような化け物だったけど、今、そこにいたのは・・・・・・

「ディアボロモン・・・・・・」

私は、小声で呟く。

その姿は、デジモンのディアボロモンそっくりだった。

でも、そんなことは気にしていられない。

「よっしゃ、先ずはアタシが邪魔な結界をぶっ壊してやる!」

ヴィータがそう勇んで飛び出すが、ディアボロモンの胸部にある砲口に魔力が集中する。

その魔力量は、スターライトブレイカーに匹敵する。

「いけない!ヴィータ!」

私が叫ぶとほぼ同時に、魔力弾が放たれた。

それは、一直線にヴィータへ向かう。

「やばっ!?」

ヴィータは逃げようとしたが、それも遅く、

――ドゴォォン!

ヴィータが爆炎に包まれた。

「ヴィータちゃん!?」

なのはが声を上げる。

すると、煙が吹き飛ばされ・・・・・・

ヴィータの前で、3枚のシールドでヴィータを守るユーノの姿があった。

「ヴィータ!大丈夫?油断しちゃ駄目だよ!」

「お、おう・・・・すまねえ・・・・」

そう礼を言うヴィータの顔は赤い。

それにしても、スターライトブレイカークラスの砲撃を防ぎきるなんて、ユーノの防御って凄いわね。

すると、ヴィータは気を取り直し、

「そんじゃあ、いっくぞぉおおおおおっ!!」

グラーフアイゼンがカートリッジをロードする。

『Gigantform.』

グラーフアイゼンが巨大なハンマーになる。

「おら!ユウ!!はやてを泣かすのは許さねえからな!さっさと起きろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

ヴィータが巨大なハンマーを振り上げ、

「轟天!雷鳴!!」

ヴィータの叫びと共に、ハンマーに電撃が宿る。

「ハンマースパーーーーーーーーークッ!!!」

そのまま思い切り振り下ろした。

――バキャァァァン!

ヴィータの一撃は、一枚しかないがアニメより強固な結界を見事に砕いた。

「ユウ!フェイトを泣かしたら絶対に許さないからね!だから、早く起きな!!」

アルフは、チェーンバインドでディアボロモンの両手を縛りつけ、動きを封じる。

「ユウよ!お前は長き時の中でも稀に見る善人だ。この場で死なすわけにはいかん!!」

ザフィーラは、鋼の軛を発動させ、砲口を串刺しにし、砲撃を封じる。

その時、シグナムはレヴァンティンのボーゲンフォルムを構えていた。

「ユウよ・・・・・この気持ちがそういうものなのか私にはまだ分からない・・・・・・だが、私はお前に消えて欲しくは無い!シャマルも同じ気持ちだ!だから、目覚めろ!ユウ!!」

シグナムは弓矢を引き絞る。

「羽ばたけ!火の鳥!!」

シグナムの弓矢は激しい炎を纏った。

「シャドーウイング!!」

シグナムが矢を放つと共に、炎は更に激しさを増し、火の鳥を形作った。

火の鳥は羽ばたき、ディアボロモンに向かい、左肩部分に直撃、左腕を吹き飛ばす。

続いて、クロノがデバイスを掲げ、巨大な一本のスティンガーブレイドを発生させていた。

「ユウ・・・・・君には借りを作ってばっかりだ・・・・・・君のお陰で、父さんも戻ってきた・・・・・・・だから、少しぐらい、礼を言わせろ!!」

クロノは、その叫びと共にデバイスを振り下ろす。

「スティンガーブレイド!!ベルセルクシフト!!」

クロノの放った巨大なスティンガーブレイドは、ディアボロモンの右腕を切断する。

更に上空では、プレシアさんが巨大な魔法陣を発生させている。

「ユウ!こんな美少女達を放っておいて、勝手にいなくなろうとしてんじゃないわよ!!起きなさい!」

アリサが、

「ユウ君!お願い、起きて!!」

すずかが、

「ユウ!夢なんかで満足しないで!私達と一緒に生きようよ!」

アリシアがそれぞれの想いを叫ぶ。

「ユウ君・・・・・・あなたにはアリシアとフェイトを貰ってもらうつもりなんですからね。こんな所でいなくなるのは許さないわ。起きなさい!!」

プレシアさんがその言葉と共に巨大な雷を落とした。

その雷は、ディアボロモンに直撃し、その余波で千切れていた腕を粉々に引き裂く。

「ユウ・・・・・私はもう、あなた以外を主とするつもりはありませんよ!起きてください!」

リニスは、7つの魔力弾を発生させ、

「セブンヘブンズ!!」

それを放った。

その攻撃は、ディアボロモンの頭を吹き飛ばす。

そして、残った私、なのは、フェイト、はやては、それぞれの最強の魔法を準備していた。

因みに、なのはとフェイトは、既にフルドライブを発動させている。

「ユウ君!リインフォース!私達は、皆で幸せになるんや!だから、はよ起きるんや!!」

はやての、

「ユウ・・・・大好きだから・・・・・一緒に居たいから・・・・お願い!起きて!ユウ!!」

フェイトの、

「好きだよユウ君・・・・・だから、起きて!!」

なのはの想い。

「全力全開!!スターライト・・・・・」

「雷光一閃!プラズマザンバー・・・・・」

「響け!終焉の笛!ラグナロク!」

「「「ブレイカーーーーーーーーッ!!!」」」

その想いと共に、特大の砲撃を放つ。

そして私は、この一言を・・・・・・

「ッ・・・・・起きろバカァァァァァァ!!!」

その叫びと共に、ルナライトブレイカーを放った。

4つの特大砲撃は、ディアボロモンを粉々に引き裂き、粉砕する。

「はぁ・・・・・・・はぁ・・・・・・・はぁ・・・・・・・」

私は肩で息をする。

出来る限りの事はやった。

後は待つだけ。

私はそう思い、高度を下げながら息を吐き、何気に着弾点を見る。

そして、立ち上っていた煙が風で吹き飛ばされ・・・・・・・・

「なっ・・・・・・」

私は絶句した。

私の視線の先には、小型化したディアボロモンの群れ。

よく見れば、粉々になったディアボロモンの破片1つ1つが、小型のディアボロモンとなっていた。

その小型のディアボロモンが、一斉に私の方を向いた。

恐らく、皆よりも高度を下げていた所為。

そして、一斉に私に向かって砲撃が放たれる。

「ッ!?」

私は咄嗟に動こうとしたが、先程の全力の砲撃の所為で、魔力が激減しており、上手く飛行が制御できなかった。

私の視界いっぱいに広がる魔力弾の嵐。

「桜お姉ちゃん!!」

なのはの悲鳴が響いた。





あとがき

やりたい放題の二十五話が完成。

この話で決着つくかと思ってたんですが、長くなりすぎたので二話に分けます。

ユウの切り札も次回にお預け。

楽しみにしてた人ごめんなさい。

そんで今回は原作とはちょっと違い、リインフォースが闇の中に残りました。

話の流れが強引かな?

あと、全体的に話がグダグダになった気もする。

守護騎士達にもデジモン技をかまさせてみた。

あと、メガデスよりも集束砲同時斉射の方が強いので、4人娘はああなりました。

さて、次回は早めに投稿できると思うのでお楽しみに。





[15302] 第二十六話 (2013年11月14日 改訂)
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2013/11/14 22:27
第二十六話 生きる意味(後編)






父さんと母さんが居て、普通の生活をする。

それが、俺の望みだった。

でも・・・・・本当にそれでいいんだろうか?

俺を信じてくれたあいつ等を裏切る真似をして・・・・・・本当にいいんだろうか・・・・・?

家族での朝食が終わる。

「さて、ユウ」

父さんが俺に声をかけてきた。

「何?父さん」

「何時までここに居るつもりだ?」

「えっ?」

「お前には、待ってる人たちが居るんだろ?」

父さんの言葉に、俺は俯く。

「それは・・・・・・でも・・・・俺なんかが・・・・・・」

俺がそう言いかけた所で、

「おい、ユウ」

「えっ?」

父さんに呼ばれて、俺はそっちを向く。

その瞬間、

「バカ息子ォーーーッ!!」

「がっ!?」

思いっきりアッパーカットで吹っ飛ばされた。

「ウジウジ悩むな!それでもお前は私達の息子か!?」

父さんがそう怒鳴る。

「ユウ、耳を澄ませてみなさい」

母さんがそう言ってくる。

俺は目を閉じ、耳を澄ます。

「聞こえる筈よ。貴方を呼ぶ声が・・・・・・」

母さんが呟く。

『おら!ユウ!!はやてを泣かすのは許さねえからな!さっさと起きろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』

ヴィータ・・・・・

『ユウ!フェイトを泣かしたら絶対に許さないからね!だから、早く起きな!!』

アルフ・・・・・・

『ユウよ!お前は長き時の中でも稀に見る善人だ。この場で死なすわけにはいかん!!』

ザフィーラ・・・・・

『ユウよ・・・・・この気持ちがそういうものなのか私にはまだ分からない・・・・・・だが、私はお前に消えて欲しくは無い!シャマルも同じ気持ちだ!だから、目覚めろ!ユウ!!』

シグナム・・・・・・

シャマル・・・・・・

『ユウ・・・・・君には借りを作ってばっかりだ・・・・・・君のお陰で、父さんも戻ってきた・・・・・・・だから、少しぐらい、礼を言わせろ!!』

クロノ・・・・・・・

『ユウ!こんな美少女達を放っておいて、勝手にいなくなろうとしてんじゃないわよ!!起きなさい!』

アリサ・・・・・・・

『ユウ君!お願い、起きて!!』

すずか・・・・・・・

『ユウ!夢なんかで満足しないで!私達と一緒に生きようよ!』

アリシア・・・・・・

『ユウ君・・・・・・あなたにはアリシアとフェイトを貰ってもらうつもりなんですからね。こんな所でいなくなるのは許さないわ。起きなさい!!』

プレシアさん・・・・・

『ユウ・・・・・私はもう、あなた以外を主とするつもりはありませんよ!起きてください!』

リニス・・・・・・・・

『私達は、皆で幸せになるんや!だから、はよ起きるんや!!』

はやて・・・・・・・・

『ユウ・・・・大好きだから・・・・・一緒に居たいから・・・・お願い!起きて!ユウ!!』

フェイト・・・・・・・

『好きだよユウ君・・・・・だから、起きて!!』

なのは・・・・・・・・

それぞれの声が聞こえる。

そして最後に、

『ッ・・・・・起きろバカァァァァァァ!!!』

桜の泣きそうな声が聞こえた。

俺は目を開ける。

「皆・・・・・・なんで・・・・・?」

「ユウ・・・・・貴方は自分では他の人を幸せに出来ないと考えてるかもしれないけど、他の人の幸せは、貴方が決める事じゃないのよ」

母さんは俺に向かって微笑む。

「ユウ、貴方は、あの子達のことが嫌い?」

母さんの言葉に、俺は首を横に振る。

「そんなことはないよ・・・・・」

「じゃあ、あの子達の辛い顔を見ると如何思う?」

俺はなのは達の辛い顔を想像する。

「・・・・・・そんな顔には・・・・させたくない」

答えはすぐに出た。

「じゃあ、貴方が今ここで消えれば、彼女達がどう思うかは分かるわよね?」

「・・・・・・・うん」

「なら、如何すればいいかは、分かるわよね?」

「・・・・・・うん!」

答えは初めからわかってた。

この世界で、俺が生きる意味は、確かにあった。

けど、俺はその事を認める自信がなかっただけ。

「俺は・・・・・・・・・俺は!・・・・・・あいつらの笑顔の為に、俺は生きる!」

俺はその言葉を口にした。

「ハッハッハ!その意気だぞユウ!1人の女といわず、お前を想ってくれる女の子全員を幸せにしてやれ!」

父さんは俺を茶化すように言ってくる。

「まあ、冗談は置いといて、決心はついた様だな、ユウ」

父さんは真剣な顔で言ってくる。

「うん・・・・・俺・・・・・戻るよ・・・・・・・」

俺はそう呟く。

「それならユウ、あの子も助けてあげて」

母さんがそう言うと、いつの間にか周りの景色が消え、闇になっている。

そして、母さんの後ろには寂しそうにたたずむリインフォースの姿。

しかし、こちらには気付いていないようだった。

「あの子も幸せにしてあげないと可哀想よ。だからユウ」

母さんの言葉に俺は頷く。

「わかってるよ母さん」

俺は、リインフォースに歩み寄る。

「リインフォース・・・・・」

俺はリインフォースに呼びかける。

「お前は・・・・・」

「お前はこんな所で何やってるんだよ?」

俺は、リインフォースに尋ねる。

「・・・・・・・・・・」

リインフォースは無言。

「何ではやてと一緒に外に出なかったんだ?」

「無理だったからだ。私がこの場で転生機能を停止させなければ、闇の書の完全破壊は叶わない」

リインフォースの言葉に、

「嘘だな」

俺はハッキリと言った。

「防御プログラムは、元々夜天の魔導書の為のプログラム。だから、防御プログラムを夜天の魔導書から切り離した時点で、転生機能は無効化されているはずだ」

俺がそう言うと、

「・・・・・確かにその通りだ」

「ならば何故?」

「今回の主は・・・・・・私には眩しすぎる」

リインフォースは呟く。

「私は、罪深き、血塗られた魔導書だ。そんな私で、今回の主を汚したくは無い・・・・・・」

リインフォースは懺悔するように呟く。

「はやてはそんなこと気にしないと思うぞ」

俺がそう言うと、

「そうだろうな・・・・・主は優しい。こんな私でも、受け入れてくれるだろう・・・・・・」

「だったら・・・・・」

「しかし、だからこそ今の主を汚したくないのだ!」

リインフォースはそう言う。

「・・・・・お前は・・・・・それでいいのか?」

俺は大事な事を尋ねる。

「私は・・・・・主のために最善の方法を取っているだけです・・・・・」

「なら、何で泣いているんだ?」

リインフォースの瞳からは、大粒の涙が止め処なく流れている。

「・・・・・・・・確かに・・・私の罪が許されるのなら・・・・・・・・主と共に過ごしたかった!だが、私は今まで、幾つもの世界を滅ぼし、幾億もの命を奪ってきた。そんな私の罪を誰が許すことが出来ようか?」

リインフォースは泣きながらそう叫ぶ。

まるで、唯の女性のように。

だから俺は、

「確かに罪を許すことはできないかもしれない。 けど、一緒に背負っていくことはできる」

そう言ってやった。

「えっ?」

「お前が自分の罪を許すことができないから、はやての傍に居られないと言うのなら、お前の罪、俺にも半分背負わせてくれ!」

「な、何を………?」

「お前は、ここで消えていい奴じゃない。 お前にも、幸せになる権利がある………いや、お前こそ、誰よりも幸せにならなきゃいけないやつなんだ。 少なくとも、俺はお前には幸せになって欲しい」

「な、何故………?」

「確かにお前は今まで、『闇の書』として多くの世界を滅ぼしてきたのかもしれない。 けど、その度に心を痛め、誰よりも苦しんで来たのは、他ならぬお前だ」

「あ…………」

リインフォースは涙を零す。

「だから、一緒にここを出よう」

俺は手を差し出す。

「し、しかし………」

リインフォースはまだ渋っている。

「さっきも言っただろ? お前が自分の罪を許せないから傍に居られないと言うのなら、その罪を俺が半分背負ってやるって」

「…………お前の気持ちは正直嬉しい………だが、なんの関係もないお前に、私の罪を背負わせる訳にはいかない」

俺の言葉に、リインフォースはそう返してくる。

ったく、頭硬いんだから。

「そんな事は関係ない。 俺はお前を助けたい。 だからお前の罪を背負う。 それに、俺は少なからず古代ベルカの血を受け継いでいるしな」

「何………?」

リインフォースは怪訝な声を漏らす。

「見てろ」

そう言って、おれは右半身から青の魔力光を、左半身からオレンジの魔力光を発生させる。

そして、2つの魔力光が交わる身体の中心から、その2種類とは違った魔力光が発生する。

その魔力光が、俺の身体を包む。

この魔力光こそ、俺の本当の魔力光。

青やオレンジの魔力光は、その魔力光が劣化した色に過ぎない。

「な・・・・・・・」

その色を見て、リインフォースは驚愕している。

その色は『虹色』。

かつて、古代ベルカを治めていた『聖王』の証。

そして、今の俺の瞳の色も、右は青に、左は赤に変化しており、これも聖王の特徴である、オッドアイとなっている。

「そんなバカな・・・・・・聖王の血筋は、遥か昔に途絶えた筈・・・・・・」

リインフォースは、信じられないといった表情で呟く。

「確かに聖王の血筋は途絶えた。でも、それは虹色の魔力光を発現できる血筋が途絶えただけだ。虹色の魔力は発現できなくても、聖王の血を受け継いだ家系は、今も続いていた。それが、俺の父さんと母さんの家の血筋。そして、ブレイズとアイシクルはその2つの家系に代々伝わってきた、聖王の武具」

俺は最初、ブレイズとアイシクルは父さんと母さんの魔力に耐えられる特注品だと思っていた。

けど、修行の途中で俺の虹色の魔力が発現した時、真実をブレイズとアイシクルから聞いたのだ。

俺はリインフォースを見つめ、

「という訳だ。 まあ、聖王の血を受継でいるからって、王様になる気も威張り散らす気もないから、畏まったりはしないでくれ」

俺は一呼吸おいて、手を差し出し、

「一緒に皆の所へ帰ろう、リインフォース」

そう言った。

その言葉にリインフォースは涙を零し、

「…………はいっ」

しっかりと頷き、俺の手を取った。


俺は、父さんと母さんに向き直る。

「じゃあ、もう行くよ、父さん、母さん」

俺は少し名残惜しさを感じるが、父さんと母さんにそう言う。

「ええ・・・・ユウ、一つだけお願いがあるの」

母さんがそう言ってくる。

「何?母さん」

「貴方の立派になった姿を、私達に見せて」

母さんの言葉に、

「うん、分かったよ」

俺はハッキリと頷いた。

俺は、ブレイズとアイシクルを取り出す。

そして、

「ブレイズ、アイシクル、プロテクト解除!」

俺はデバイスに呼びかける。

『『Yes, Master.  Joint Progress.』』

ブレイズとアイシクルが浮かび上がり、2つのデバイスが1つとなる。

そこには、澄んだ水色の宝石が存在していた。

俺は、その宝石を握る。

「目覚めろ、真の聖王の武具・・・・・・オメガ!!」

その瞬間、そのデバイス、オメガが起動する。

俺は光に包まれる。

左腕にはオレンジを基調としたアーマーが装着され、手には竜の頭のような手甲が。

右腕には青を基調としたアーマーが装着され。狼の頭を模した手甲が装備される。

そして、中央の頭から足にかけては、白を基調とした鎧が装備され、背中には外側が白、内側が赤のマントがはためく。

オメガモンの姿を模したバリアジャケット。

「すごいぞユウ」

父さんが感心した声を漏らす。

俺は左腕を一度振る。

すると、左手の竜の手甲の口から、大剣が飛び出る。

俺は、その大剣を振り上げ、そこで一度止まる。

「・・・・・父さん・・・・・母さん・・・・・例え、夢でも幻でも・・・・・また会えて、嬉しかったよ・・・・・」

俺は振り返らずにそう言った。

俺は振り上げた大剣に魔力を込める。

「断ち切れっ!!グレイソーーーードッ!!」

俺は、渾身の力を込めて、大剣を振り下ろした。

その瞬間、空間は真っ二つになり、俺とリインフォースはこの空間から脱出した。






俺達が脱出した後、

「それにしても、ユウの奴、最後まで私達のことを夢の住人だと思ってたなぁ・・・・」

「まあいいじゃありませんか。少しでもユウが変わってくれたんですから」

「そうだな・・・・・・頑張れよ、ユウ」

「頑張ってね、ユウ」









【Side なのは】




「桜お姉ちゃん!!」

私は思わず叫んだ。

一発一発がディバインバスターに匹敵するほどの魔力弾が、嵐の如く桜お姉ちゃんに襲い掛かる。

お姉ちゃんは、集束砲の疲労からか、上手く動けない。

あれだけの魔力弾を受けたら桜お姉ちゃんでも唯ではすまない。

でも、その時だった。

もう駄目と思ったとき、突然小型化した怪物の1体が弾け飛び、そこから虹色の光が飛び出したの。

その虹色の光は、既に放たれていた魔力弾を追い越すスピードで桜お姉ちゃんのところに到達し、桜お姉ちゃんが虹色の光に包まれました。

そして、その虹色の光は、桜お姉ちゃんに向かって放たれた魔力弾を、全部何でもないように受け止めました。

「綺麗・・・・・」

私は思わず呟きます。

「なっ!? 虹色の魔力光!?」

シグナムさんが驚いた声を上げます。

見れば、ヴィータちゃん、シャマルさん、ザフィーラさんも驚愕の表情を浮かべています。

すると、徐々にその虹色の光が収まっていき、その光が消えると、桜お姉ちゃんの近くに銀色の髪で赤い瞳の女の人。

「リインフォース!」

はやてちゃんが叫びます。

どうやら、あの女の人が夜天の魔導書の管制人格らしいです。

リインフォースさんは、はやてちゃんに微笑みます。

そして、右手に青い狼の頭のような手甲、左手に竜の頭をおもわせるオレンジ色の手甲、更に頭から足までを白い鎧で覆った、右目が青、左目が赤い人が、虹色の魔力光を纏いながら、桜お姉ちゃんを守るように立ちはだかっていました。

その姿は、正に騎士というに相応しい姿をしています。

「ま、まさか・・・・・聖王!?」

ユーノ君が驚愕した声を漏らします。

「せい・・・・おう・・・・・?」

私は、何のことかと首を傾げます。

「ユウ!」

リニスさんが叫びました。

え?ユウ君?

ユウ君らしき騎士が私達の方に振り向きます。

「ユウ・・・・・よね・・・・・・?」

桜お姉ちゃんが、確認するように呟きます。

「ああ。悪かったな、心配かけて」

そう頷きました。

「全くよ!心配かけさせないで、このバカ!」

桜お姉ちゃんは、泣きながらも嬉しそうにそう叫びます。

ユウ君は、バリアジャケットで顔は見えませんが、微笑んだ気がしました。

すると、リンフォースさんがはやてちゃんに近付きます。

「申し訳ありませんでした。主」

リインフォースさんは、はやてちゃんに謝ります。

「それはええけど・・・・・・もう目の前から居なくならんといてや」

はやてちゃんは泣きそうな顔でそういいます。

「はい・・・・・主」

リインフォースさんはそう言って頷きました。

その時、

「すまない、折角の再会に水を差してしまうんだが・・・・」

クロノ君がそう切り出しました。

「ユウが出てきたのなら話は早い。このままアルカンシェルで「必要ない」えっ?」

クロノ君の言葉を、ユウ君が否定しました。

「ここは、俺が片を付ける!」

ユウ君はそう言ってマントを翻しながら、闇の書の闇の怪物達に向き直った。

その仕草が、まるで物語の中に出てくる騎士様のようで、私は見惚れます。

フェイトちゃんや、はやてちゃん達も、きっと同じです。

その瞬間、再び怪物たちが一斉砲撃を放ちました。

数え切れないぐらいの魔力弾が、ユウ君に迫ります。

「「「「「「「「「「ユウ(君)!!」」」」」」」」」」

皆が一斉に声を上げます。

でも、ユウ君は、

「これ以上・・・・・俺の目の前で誰も傷つけさせない!!」

そう叫んで左手を振り上げると、竜の頭のような手甲の口から、大きな剣が飛び出しました。

そして、左手を身体ごと大きく振りかぶり、

「うぉおおおおおおおおっ!!」

魔力弾の着弾の瞬間に、思いっきり薙ぎ払った。

驚く事に、その一振りで無数の魔力弾は全て弾き返されます。

「凄い!」

誰かが声を上げます。

跳ね返った魔力弾が怪物の群れの一部に降り注ぎ、吹き飛ばします。

次に、ユウ君は、右腕を軽く振りました。

すると、右手の狼の頭のような手甲の口から、巨大な砲身が飛び出します。

その巨大な砲身を、眼下の怪物達に向け、

「ガルルキャノン!!」

その砲身から、物凄い魔力が凝縮された魔力弾を放ちました。

その魔力弾は高速で地面に向かう。

予想される着弾点の周りから怪物たちが逃げるように散り散りになります。

でも、

――ドッゴォォォォォォォォォォォォォォン!!

そんなのは全く関係ありませんでした。

魔力弾は地面に着弾した瞬間、超爆発を起こし、怪物の群れを飲み込みます。

ユウ君は、また砲身を別の群れに向け、放つ。

――ドォン!

今度は着弾前に別の方へ向け、また放つ。

――ドォン!

更に別の方向へ向け、放ちます。

――ドォン!

合計4箇所に撃ち込まれた魔力弾は、全ての怪物を飲み込みました。

「凄い・・・・・・・」

私は自然と声を漏らします。

正に圧巻といえる物でした。

でも、ユウ君は、まだ気を抜いている様子はありません。

私も、目を凝らすと、爆煙の中に、まだ何かいるのが分かります。

煙が晴れると、そこには、また先程とは違う怪物が存在していました。

なんていうか、イモリの身体にクモの足をくっ付けた様な怪物です。

「・・・・・・アーマゲモン」

桜お姉ちゃんが、なにやら呟きましたが、私には何のことか分かりません。

「あれが・・・・・闇の書の闇のコアです」

リインフォースさんが呟きました。

すると、ユウ君のバリアジャケットが光に包まれ、水色の宝石になりました。

「ユ、ユウ君!?」

突然バリアジャケットを解除したユウ君に、私は驚いた声を上げます。

「さあ、最後の仕上げだ・・・・・・オメガよ、剣となれ」

『『Yes, Master.  Paladin Mode.』』

ユウ君の言葉にオメガと呼ばれたデバイスが応えると、水色の宝石が輝き、白い長剣へと姿を変える。

ユウ君は、その剣に手を伸ばし、両手でしっかりと握った瞬間、光に包まれ、白を基調として所々に金色の装飾が成されたバリアジャケットを纏い、背中には天使の翼を連想させるような純白の翼があった。

ユウ君はその剣を正眼に構え、怪物を見据える。

そして、一呼吸置き、次の瞬間、

「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」

背中の翼を羽ばたかせ、一気に突撃しました。

ユウ君は一直線に怪物へと向かいます。

でも、その時、怪物が大きな口を開け、そこに凄い魔力を集めていました。

その魔力量は、簡単に見積もって、スターライトブレイカーの3倍以上。

それほどの魔力が凝縮された魔力弾が、怪物の口から放たれました。

「「「「「「「「「「ユウ(君)!!」」」」」」」」」」

皆が一斉に声を上げます。

でも、ユウ君は全く速度を落とすことなくその魔力弾と激突し・・・・・・・

あっさりと真っ二つにして、その魔力を四散させた。

その様子に私達は声を失います。

怪物は、同等の魔力弾を次々と放ちます。

ですが、それは全てユウ君に切り裂かれ、四散し、ユウ君の足止めにすらなっていませんでした。

「ユウ!!」

桜お姉ちゃんが叫びます。

「いっけぇーーーーーーーっ!!」

「オメガソーーーーーーード!!」













――ドスッ













桜お姉ちゃんの声に応えるように、ユウ君が剣を怪物の頭に突き刺しました。

怪物の大きさからすれば、ユウ君の刺した剣は、針で刺された程度に思えました。

でも、その一突きで怪物の動きは、ピタリと止まった。

ユウ君はゆっくりと剣を引き抜き、怪物に背を向けて、血振りをするように剣を振り、

『『Initialize.』』

デバイスの言葉と共に、怪物が眩い光を放つ。

その光に、思わず目を庇いました。

光が収まり、目を開けると、怪物の姿は消え、ユウ君の後ろには、直径20cmぐらいの光の球がありました。




【Side Out】







オメガの能力、『初期化イニシャライズ』。

対象を問答無用で初期化してしまう能力だが、これは本来のオメガの能力ではない。

オメガの本来の能力は『消滅デリート

対象を完全に消滅させてしまう能力だが、今の俺ではオメガを完全に使いこなせない為に、能力を劣化させた『初期化イニシャライズ』しか使えない。

だが、そのお陰で、今回はリインフォースを救うことが出来た。

「リインフォース!」

俺はリインフォースを呼ぶ。

リインフォースは、呼びかけに応えて、俺の傍まで飛んで来た。

俺は後ろの光の球を指し、

「初期化した防御プログラムだ。これを組み込めば、お前には問題が無くなるだろ?」

俺はそう言った。

「気付いていたのですか?このままでは私は消えなければいけなかったことに・・・・・・」

「まあな。でも、これがあればその必要も無いだろ?」

「・・・・・・はい」

リインフォースは、光の球に向き直り、両手を伸ばす。

そして、まるで抱くような仕草で光の球を吸収した。

俺は、その様子を見て、思わず笑みを零す。

「ユウ!」

桜を先頭に、皆が俺の方に飛んでくる。

俺はバリアジャケットを解除し、オメガもブレイズとアイシクルに分離した。

「うっ・・・・?」

と、その瞬間、身体全体から力が抜け、体勢が崩れる。

「ユウ!?」

咄嗟に桜に支えられる。

流石にオメガの使用はキツかったか・・・・・

オメガフォームで大暴れした上に、パラディンモードで『初期化イニシャライズ』まで発動させたんだ。

かなり身体に負担がかかったな。

魔力も枯渇寸前だし・・・・・・

「ちょ、大丈夫!?」

桜が心配そうに声をかけてくる。

「ああ・・・・魔力を使いすぎただけだ。心配ない」

「魔力の使いすぎって・・・・・まあ、あれだけの威力なら頷けない事も無いけど・・・・・・」

桜は驚いたように呟く。

すると、突然シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラが跪く仕草をする。

「聖王陛下!聖王陛下とは知らず、今までの数々の御無礼、真に申し訳ありません!」

シグナムがそう言った。

「ちょ、皆!?いきなり如何したん!?それに、聖王陛下って一体何のことや!?」

守護騎士の突然の行動に驚くはやて。

「あ~~・・・・つまりなはやて、簡単に言えば、俺は、シグナム達の国の王族の末裔なんだよ」

俺ははやてに分かりやすく説明する。

「「「「「「ええっ!?」」」」」」

なのは達が驚く。

「じゃ、じゃあユウ君って、もしかして王子様ってこと!?」

なのはが気付いたように声を上げる。

「お、王子様って・・・・・・まあ、そうなるのか?」

なのはの言葉に若干呆れながらも、一応肯定する。

けど、俺は王子様なんて柄じゃねえぞ。

やりたくも無いし。

「まあ、とりあえずシグナム達? 俺に対してそんなに畏まらないでくれ。俺は確かに聖王の血を継いでいるけど、王様なんかになる気は無いんだ。第一、むず痒い」

俺はシグナム達にそう言った。

「し、しかし!」

やっぱりお堅いシグナム達は受け入れ辛いか・・・・・

まあ、こういうときは、

「じゃあ、命令。俺とは今までどおり接する事。これは絶対命令ね」

俺はそう言う。

こう言われれば納得するしか無いだろう。

「わ、わかりました・・・・・あ、いや、わかった」

まあ、最初は不自然だが仕方ないだろう。

すると、クロノが近付いてきた。

「ユウ・・・・・」

その顔は辛そうだ。

「逮捕か?」

俺は何でもないように答える。

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」

皆が驚愕した表情を浮かべる。

「何でよ!?」

桜が叫ぶ。

「蒐集活動。闇の書の発動。その他諸々。挙げ句の果てにロストロギアの無断使用」

オメガは、確実にロストロギアに分類される代物だろう。

「立派な重犯罪者の仲間入りだな」

「ッ・・・・・」

クロノは僅かに声を漏らす。

「まあ、最初は俺が首謀者になって逮捕されようと思ってたんだが・・・・・」

「ユウ!何言って!?」

「そうするわけにはいかない事に気がついたんでね」

「え?」

俺は、桜やみんなを見て言う。

そして、クロノに向き直り、

「悪いけど、全力で抵抗させてもらうぞ」

俺は、そう言い放った。

「・・・・・・・」

クロノは辛そうに拳を握り締める。

その時、

「エイミィ、聞こえる」

リンディさんがアースラに通信を繋ぐ。

『はい、何でしょう?』

エイミィさんが応える。

「今回の戦闘記録で、ユウ君が映っている部分・・・・・・特に虹色の魔力光を出している所は絶対に削除しておいて」

「「「「「「「「「「『!?』」」」」」」」」」」

リンディさんの発言に、俺を含めて皆が驚く。

「今回の出来事は、ユウ君が合意の上で闇の書に蒐集され、はやてさんが自力で管制人格と共に闇の書内部より脱出。そして、皆さんの力で闇の書の闇を破壊した・・・・・・以上です」

「どうして・・・・・?」

俺は思わず呟く。

「ユウ君。今回のケースは、あなたが聖王であることに問題があるの」

「?」

リンディさんの言葉に、俺は首を傾げる。

「ミッドチルダには、時空管理局とは別に、聖王教会という組織があるわ。聖王教会は、その名の通り、『聖王』を崇め称える宗教組織。聖王教会は、時空管理局と関係が深く、次元世界にも大きな影響力を持つわ。故に、時空管理局が聖王であり、闇の書を救ったユウ君を逮捕したりしたら、聖王教会との関係は一気に悪くなる。しかも、ユウ君の両親が時空管理局の提督によって殺されたも同然である事は、既に公表されている。つまり、時空管理局は聖王の血縁者を2人も殺していたことになる。そうなれば、聖王教会の時空管理局に対する評価は地の底に落ち、最悪・・・・・・・」

「最悪、次元世界レベルの戦争にまで発展する危険性があるわね」

リンディさんの言葉を引き継いで、桜が言った。

「そういう事よ・・・・・・」

リンディさんは頷く。

「よろしいですね?グレアム提督」

リンディさんはグレアム提督に確認するように問いかける。

グレアム提督は深く頷き、

「ああ。私も協力しよう。迷惑をかけた、せめてもの償いだ」

そう言った。

と、そこでリンディさんは神妙な顔から、優しく微笑む表情に変わり、

「とまあ、こんな理由を付けてみたけど、実際の所、ユウ君を逮捕するなんてしたくないのよ。確かにユウ君のしたことは、管理局の法には引っ掛かるけど、結果的に殆ど被害はなし。それに・・・・・・」

リンディさんはクライドさんに寄り添い、

「クライドを・・・・・取り戻してくれた・・・・」

そう言った。

「リンディ・・・・・・」

クライドさんはリンディさんの名を呟きながら、リンディさんの肩を抱く。

・・・・・・・この2人も万年新婚夫婦なのか?

2人の世界に入ってしまった2人は置いといて、

「ユウ君!じゃあ、これからも一緒にいられるんだよね!?」

なのはが問いかけてくる。

「ああ。そうだな」

俺は頷いた。

そこで、俺は皆に確認しておかなければならない事があった。

「なあ、皆・・・・・」

俺は、みんなに問いかける。

「本当に・・・・・・俺でいいのか?」

俺はそう言った。

すると、俺の肩を支えていた桜が微笑み、

「バカね、自分がどれだけ思われてるか教えてあげるわ」

そう言って、桜は俺の頬に手を添え・・・・・

「んむっ?」

「「「「「「「「「「ああっ!!??」」」」」」」」」

皆の叫び声が聞こえた。

俺は、一瞬状況が理解出来なかった。

目の前には、桜の顔。

そして、唇に感じる柔らかい感触。

自分が桜にキスされてると気付いた瞬間、顔が一気に熱くなった。

しかも、桜の舌が俺の口の中に侵入し、俺の舌が絡めとられる。

余りに突然な事、しかも、前世も含めてのファーストキスという事実に、上手く思考が働かない。

しかもディープキス。

俺は頭が真っ白になった。

「ぷはっ」

暫くして、桜が離れる。

桜は頬を染めながら、

「前世も含めた、私の本当のファーストキスよ。ここまでされて分からないなんて、言わせないんだから!」

「あ・・・・・ああ」

そう言った桜の言葉に、俺はボーっとしながら頷く事しか出来なかった。

「さ・・・・ささ・・・・・・桜ぁーーーーーーーッ!!いきなり何してるんですかぁ!!!」

「にゃぁあああああああああああああああっ!!桜お姉ちゃん!!いきなりユウ君に何するのーーーーーーーっ!!!」

「桜ちゃぁぁぁぁん!!抜け駆けはズルイでぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

「桜ぁーーーッ!!いきなり抜け駆けしてんじゃないわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

「桜ずるい!!私もキスするぅぅぅぅぅ!!!」

上から、リニス、なのは、はやて、アリサ、アリシアが大爆発。

因みに、他の方にはいきなりのディープキスは刺激が強すぎたらしい。

顔を真っ赤にしている。

そんな皆に、桜は、

「私は一番出遅れてるからね。遠慮はしないわよ。あと、ユウのファーストキスは私が貰ったからね」

意味深げな笑みを浮かべながらそう言った。

その瞬間、ギャーギャーと喚きながら皆が桜に詰め寄る。

それを見て、

「・・・・・悪い気は・・・・・しないな・・・・・」

俺は呟く。

俺は、そんな様子を眺めた後、何気なく空を見上げた。

空には、雲1つ無い青空が広がっている。

「ありがとう・・・・・父さん・・・・・母さん・・・・・」

青空の向こうで、父さんと母さんが微笑んだ気がした。

そして、

(幸せになりなさい、ユウ)

(私達は、いつでもお前を見守っているぞ)

空耳かもしれないけど、そんな声が聞こえる。

その声を聞いて、少しでも良いから、前向きになろうと、俺は思った。






あとがき

やりたい放題やった二十六話の完成です。

こんな感じになりました。

ユウの聖王設定。

チートに更に磨きがかかりました。

無茶すぎるか?

でも、リインフォースのフラグを立てるためにはこの位しないと・・・・・

まあ、どっかで見たことある流れでしょうが、オメガモンといったらこの流れしか思いつかない。

あと、オメガの能力と、初期化の流れは納得できたでしょうか?

そこが一番心配です。

それで今回、桜がデレました。

如何でしょう?

最後の纏まりが上手くいかなかったな・・・・・

とりあえずA`S編もこれにて終了。

空白期か・・・・・

オリジナルを作るのは苦手です・・・・・・

多分更新が止まるかも・・・・・・

その前に、リリカルフロンティアをそろそろ更新したいなぁ・・・・

とりあえず、次も頑張ります。





[15302] 第二十七話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/06/27 17:44


一応注意:今回の話は、一時的なキャラ崩壊があります。一応ご注意を。





第二十七話 ユーノの里帰り






突然だが、今俺達はとある異世界に来ていた。

理由は、数日前に遡る。






闇の書事件から数日後、身体の調子も漸く戻ってきた俺は、何時もの通り、高町家の皆+ユーノと朝食を食べていた。

因みに、この数日間で、“看病”と書いて“そうだつせん”と読む、女の戦いがあった。




闇の書解決の翌日。

朝起きた⇒何故か布団の中に桜が⇒これ以上無いタイミングでなのはが部屋に&リニスが起床⇒ポジトロンレーザー&セブンヘブンズ⇒ブレイブシールドで防ぐ⇒そのせいで少し回復していた魔力がスッカラカン⇒俺、倒れる⇒3人が大慌て⇒何故かフェイトやはやて達が次々と来客⇒俺が倒れた事を知る⇒誰が看病するかで揉める⇒魔導師組、バトルロイヤルに発展(ユーノ、ヴィータ、ザフィーラ、アルフ以外)

簡単に言えば、こんな流れ。

因みに勝利者は、魔導師組が争っている間に、3人仲良く看病役を掠め取ったアリサ、すずか、アリシアの非魔導師組だったりする。

意外だったのが、リニス、シグナム、シャマル、挙げ句にリインフォースまで俺への好意を認めるような言動があったことだ。

何時フラグ立てたよ俺?




てな事があったが、現在は静かな朝食。

その朝食の席で、桜が思い出したように言った。

「そういえばユーノ。 ユーノって、無限書庫の司書に誘われたらしいじゃない」

「う、うん・・・・・そうなんだけど・・・・・」

桜の言葉に、ユーノは頷く。

ユーノは、アニメの通り無限書庫に誘われているのだ。

「む、ユーノはそれほどに優秀なのか?」

恭也さんが尋ねる。

「まあ、無限書庫は、普通なら何人かでチームを組んで、数ヶ月単位で目的の資料を調べるのが常識な所だから。 それをユーノは、たった1人・・・・・しかも2週間で、目的の資料を調べ上げたから、無限書庫の人たちからすればユーノは、喉から手が出るくらい欲しい人材だろうね」

俺はそう説明する。

「ほう」

恭也さんは、納得といった表情をする。

「それで、ユーノは如何するんだ?」

俺が尋ねると、

「うん・・・・・正直余り乗り気じゃないんだ・・・・・リンディさん達はともかく、時空管理局自体には、もう余り良い印象がないから・・・・・」

ユーノはそう言った。

「そうか・・・・まあ、それはお前の将来に関わる事だからな。 俺達が口を挟むことじゃない」

ちょっと暗くなった雰囲気を変えるため、俺は、前々から気になっていた事を尋ねる事にした。

「なあユーノ」

「え、何?」

「お前、ジュエルシード事件の時からずっと居るけど、スクライア一族の方には連絡してあるのか?」

俺がそう尋ねた瞬間、まるで、時間が止まったかのようにユーノは動きを止めた。

そして、高町家全員の顔が、ほぼ同時にユーノの方を向く。

その瞬間、

「あああぁーーーーーーーーーッ!!!!!忘れてたぁーーーーーッ!!!!」

ユーノが大声を上げた。

・・・・・っていうか、忘れてたのかよ!?

「どどど・・・・・どーしよう!?」

ユーノは、珍しくとても焦った様子だ。

「如何するもこうするも、早く連絡を取るべきだろう」

恭也さんがそう言った。

「でも、ユーノ君の部族って、遺跡発掘の旅で、いろんな世界を回ってるんでしょ?まだ、同じ世界にいるのかな?」

美由希さんが、思い出したようにそう言った。

「え、え~っと・・・・・・」

ユーノは混乱して、上手く考えが纏まらないようだ。

「・・・・・ミッドチルダに行けば、何処の世界にいるか、手がかり位つかめるんじゃないのか?」

俺がそう言うと、

「だったら、クロノやリンディさんに頼んで、スクライア一族の居場所を調べてもらった方が手っ取り早くない?」

桜がそう言った。

確かにそっちの方が簡単だ。

「そ、そっか!」

ユーノは、食べかけのご飯を口にかき込むと、慌ててリンディさんに連絡を取りに行った。

ご飯を残さない所は、律儀である。



その後、無事リンディさんと連絡が取れ、現在のスクライア一族の居る世界が分かり、現在に至る。

因みにここに居るメンバーは、俺、リニス、ユーノ、なのは、桜、フェイト、アルフ、はやて(リインフォースユニゾン)、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。

何処からか聞きつけた(多分なのは経由だろうが)フェイトやはやて達もついて来たのだ。

尚、アリサ、すずか、アリシアの非魔導師組は、何があるか分からないので何とか残ってもらう事に成功する。

その代わり、埋め合せとして3人と今度デートする事を約束させられたが・・・・・・

それはともかく、今居る場所は、砂漠のど真ん中にある岩山の上。

「で、ユーノ。スクライア一族は何処に居るんだ?」

俺がそう尋ねると、

「あ・・・・・・・・」

ユーノが何かに気付いたように声を漏らした。

それにやな予感がした俺は、

「おい、もしかして、スクライア一族の居る場所を聞いてこなかったってオチか?」

そう尋ねた。

「・・・・・・・ゴメン!」

ユーノは勢い良く頭を下げる。

「・・・・はぁ」

俺はため息を吐いて頭を掻く。

「どうするの?」

桜が尋ねてくる。

「如何するって、ユーノにスクライア一族が集落を作りそうな場所を聞いて、サーチャーを飛ばして隈なく探せばいいんじゃないか? これだけの人員がいれば、それほど時間は掛からないと思うけど・・・・・・・」

と、そこまで言った時、リニスが何かに気付いたように空を見上げた。

俺もそれに釣られて空を見る。

そこには、黒い影が見える。

「何だ?」

俺が声を漏らした時、

「伏せてください!!」

リニスが叫んだ。

その言葉で、ヴォルケンリッターたちは反射的に行動した。

シグナムははやてを庇いながら伏せ、他のメンバーも伏せる。

一瞬送れて、リニス、桜、ユーノ、フェイト、アルフも伏せた。

だが、

「ふ、ふえ?」

なのはだけは訳が分からず立ち尽くした。

その間にも、巨大な影が迫る。

「なのは!あぶねえっ!!」

「きゃっ!?」

俺はなのはに飛び掛るように抱きしめながら押し倒す。

次の瞬間、巨大な影が俺のすぐ後ろを通過した。

それによって衝撃波が発生して、俺達は吹き飛ばされまいと踏ん張る。

衝撃波が収まると、

「あっぶね~・・・・大丈夫か、なのは?」

「う、うん・・・・・ありがとう」

そう言うなのはの顔は赤くなっている。

まあ、抱きしめてるからな。

俺は、そう思いながら顔を上げる。

するとそこには、全長20mほどの巨大な怪鳥が飛んでいた。

どうやら、俺達を餌と思っているらしく、空中を旋回して、再び俺達に襲いかかろうとしている。

「チッ、仕方ない」

俺は起き上がると、左手に炎を発生させる。

「メガ・・・・・・」

俺は、向かってくる怪鳥にメガフレイムを放とうと、左手を振りかぶる。

そして、俺達のいる場所から約100mの所に差し掛かった所で、メガフレイムを放とうとした瞬間、

――ドオォォォォォォォォン

突如、砂漠が爆発した様に砂を巻き上げ、怪鳥を包み込んだ。

「ギャァァァァァァァァァ!!」

すると、怪鳥の断末魔の鳴き声がした。

砂煙が晴れてくると、そこには、

「デカッ!」

俺は思わず声を漏らす。

「こ、これは大きいな・・・・・」

シグナムも若干動揺した声でそう呟く。

俺達の目の前には、胴の直径が30mほどもある巨大な蛇のような生物がそこにいた。

しかも、全長は砂に隠れて分からないが洒落にならないほど長い。

下手すれば、1kmを超えているかもしれない。

なのは達も、開いた口が塞がらない状態だ。

その蛇の口には、先程の怪鳥が咥えられており、既にその怪鳥は絶命している。

すると、その蛇は上を向き、口を大きく開けると、

――ゴクン

と、20mもある怪鳥を一飲みにした。

その光景に、声も出ないなのは達。

怪鳥を飲み込んだ蛇は、俺達を見る。

なのは達は身構えた。

だが、蛇は興味をなくした様に俺達から視線を外し、再び砂の中へ消えていった。

少しすると、

「な、なんなのよこの世界は!?」

桜が声を上げた。

流石に今のはショックがデカかったようだ。

「あ、そういえば・・・・」

ユーノが思い出したように言う。

「この世界の砂漠地帯は、危険度S級だから気をつけるようにって、リンディさんが・・・・・」

「それを早く言いなさい!!心臓に悪いわよ!」

ユーノの言葉に、桜が叫んだ。

「そんな世界に来て、ユーノ君の一族は大丈夫なんか?」

はやてが尋ねる。

「ああ、それは大丈夫。危険なのは砂漠だけで、それ以外はいたって平和だから。砂漠地帯の大きさも、この世界の20分の1も無いって話だし」

ユーノの言葉に、この世界への転送で20分の1以下の確率に遭遇する俺達って何だろうと俺は思う。

「そういう事なら、さっさと移動するぞ。俺はともかく、お前らの身が危ないからな」

俺はそう言った。




――2時間後。

漸く砂漠が終わった。

この2時間で、10m級の巨大な虫に襲われること68回。

20m級の怪鳥に襲われること36回。

50m級のワームに襲われること10回。

100m級の竜種に襲われること5回。

1000m級の蛇の様な生物に襲われること1回。

シャレにならん。

はっきり言って、危険度S級を確実に超えている。

とりあえず、50m級のワームまでならば、なのは達でも相手に出来たが、100m級の竜種からは俺しか相手に出来なくなった。

ポジトロンレーザーすら耐え切る鱗ってどんだけだよ!!

ガイアフォースやコキュートスブレスで黙らせたが、流石に疲れる。

俺達は、砂漠を越えて10kmほど進んだ所にあった岩山で休憩している。

驚く事に、砂漠の終わりにあった山脈を越えたら、世界が変わったように森が広がっていた。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・・」

俺は息を整える。

「大丈夫か?ユウ」

シグナムが声をかけてくる。

「ああ、少し疲れたけどな」

俺はそう言う。

「すまんな、我らが未熟な所為で、お前に負担を掛けた」

シグナムはそう言ってくるが、

「仕方ないって。 あんな生物を相手に出来る方がおかしいんだよ」

俺はそう言う。

「フッ・・・・そういう自分を悪く言うところはまだ変わらんな」

シグナムは、薄く笑ってそう呟く。

闇の書事件以来、少しは前向きになろうと意識はしているが、後ろ向きな性格はすぐには直せんな。

「まあ、スクライアの集落を探すのは任せて、今は休め」

シグナムはそう言いながら、水の入ったペットボトルを差し出してくる。

「ああ、サンキュ」

俺はそれを受け取って、口をつける。

周りでは、なのは達がサーチャーを飛ばして、スクライア一族の居場所を探しているようだ。

少しすると、

「あっ! それらしい集落を見つけました!」

シャマルが声を上げた。

「場所はここから北西へ20kmほど行ったところです」

思ったより近くに居たな。

「よし、じゃあ行くか」

俺達は、そこに向かって飛び立った。




暫く飛ぶと、森の中にある広場に、テントで作られた集落があった。

「あ!あれはスクライア一族のテントだ!間違いない!」

ユーノが叫ぶ。

それを聞いた俺達は、集落の真ん中あたりに降り立った。

いきなり集落の真ん中に降りた俺達が気になったのか、人が集まってくる。

「誰かな?君達は?」

その中で杖を突いて、一番の年長者らしき老人が尋ねてきた。

「長老!」

ユーノがその老人の前に出た。

「ユーノです。ただいま戻りました!」

長老は、驚いた表情をして目を見開いた。

「ユーノか!? 無事じゃったのか! 心配したぞ!」

「も、申し訳ありません・・・・・」

長老の言葉に、ユーノは少しバツが悪そうな顔をする。

音信不通の原因が、忘れてたからでは仕方ないだろうが。

「それで、あちらは・・・・」

長老が、俺達の方を見る。

ユーノは姿勢を正し、

「別の世界で出会った、友人達です!」

はっきりとそう言った。

そんなユーノの姿を見た長老は、ニッコリと笑顔になり、

「ホッホッホ、ユーノよ。 よき友人達に巡り合えた様じゃな」

「はい!」

長老の言葉に、ユーノはハッキリと返事をする。

長老は、振り返って一族皆の方を向くと、

「皆の者!ユーノの帰還祝いじゃ!今夜は宴じゃ!」

長老がそう言うと、「オー!」という声と共に、皆が準備を始める。

「というわけじゃ。皆さんも今夜はゆっくりとしていきなされ」

長老の言葉に、

「ありがとうございます」

俺は頭を下げた。





【Side 桜】




その夜は、正にドンチャン騒ぎだった。

広場の真ん中でキャンプファイヤーのように火を囲っている。

踊りも踊ったりして、みんな楽しそうだ。

ユーノは一族の人達に囲まれてるし、アルフは骨付き肉に夢中。

なのは達は何でかお酒を飲んだらしく、妙にハイテンションだ。

かく言う私もお酒飲んだし。

静かにご飯食べてるのは、ザフィーラ。

あと、ヴィータ・・・・・・・・は、静かだけど、ドサクサに紛れてユーノの隣をキープしてるし、女の人がユーノに寄ってきたときには、黒いオーラを出して威嚇している。

この世界に付いて来る時には、「アタシはユーノが心配だから行くんじゃねーぞ!アタシははやてが心配だからだ!間違ってもユーノの為じゃねーからな!ホントだかんな!!」って言ってたのに。

典型的なツンデレね、ヴィータって。

ああ、ユウは、お酒を一口飲まされて、一発でダウンしたわ。

ユウの一番の弱点よね、お酒って。

因みに、今、ユウの頭は私の膝の上。

役得役得。

そんな時、はやてとのユニゾンを解除したリインフォースが近付いてきた。

「何をやっているのだ?桜」

そう言ってくるリインフォースは何故かニコニコしている。

「特に何も・・・・・って、何でそんなにニコニコしてるのよ?」

「アハハハハッ! 何故かとても気分がいいのだ♪ 不思議だなお酒というのは♪」

そう言いながら笑うリインフォースは、普段とかけ離れている。

リインフォースって、笑い上戸だったんだ。

っていうか、ユニゾンデバイスって酔っ払えたのね。

因みにその横では、

「ううっ・・・・・ユウ~~~! 私は一番付き合いが長いのに何で私の気持ちに気付いてくれなかったんですかぁ~~~~~~!?」

リニスが涙を流しながらグチを零している。

リニスは泣き上戸なのね・・・・・

その時、シャマルに言い寄る男が1人。

「失礼、私と一曲如何でしょうか?」

どうやらシャマルを踊りに誘っているようだ。

シャマルは、ニッコリと笑って、

「何ふざけたこと言ってるんですか? リンカーコア引っこ抜きますよ?」

とんでもなく物騒な事を言った。

怖っ!

笑顔がいつも通りなのが更に怖いわ。

良く見れば、シャマルの頬がほんのり赤く染まっている。

どうやら、シャマルも酔っ払ってる最中のようだ。

「しぐなむ~、よっぱりゃってりゅんじゃないんれすかぁ~~~?」

「な、何をひうか、てすたろっしゃ。我らベルカのきひ、酒を飲んでも呑まれりゅことなど・・・・・・」

「そんなりょりぇちゅの回らない言葉でひわれても、しぇっとくりょくありましぇん」

と、どちらも呂律の回ってない声で言い合っているのは、フェイトとシグナム。

どっちも酒に呑まれてるわね。

「おにょれ~~~私をぐりょうしゅるのはゆるしゃんぞ」

そう言いながら、レヴァンティンを起動させるシグナム。

「うけてたちましゅよ、しぐなむ」

フェイトもそう言ってバルディッシュを起動させた。

2人がデバイスを振りかぶった瞬間、

――ゴウッ!

2人は桜色の閃光に飲み込まれた。

「あはは~~。2人とも、駄目だよ喧嘩は~~。 ちゃんと『お話』しなきゃ」

いい笑顔でレイジングハート・バスターモードを構えていたなのはが言った。

やっぱり、それが『お話』なのね、なのは。

「テメーらアタシのユーノに近付くなーーーーーっ!!」

ヴィータはそう叫びながら、酔いか怒りか、顔を真っ赤にして、グラーフアイゼンを振り回している。

因みに、当のユーノは酔いつぶれてお寝んね中。

にしても、凄い事言ったわねヴィータ。

「ユウく~ん」

という声に振り向けば、いつの間にか近くに来てユウに抱きついているはやて。

抜け目が無いわね。

「フ~・・・・・・」

そんな様子を見て、ため息を吐きながら肉を齧るザフィーラだった。







あとがき

やはり、完全なオリジナルを書くと、レベルがガタ落ちすると痛感した二十七話の完成です。

グダグダ、つまらん、訳分からんの3拍子が揃ってます。

今回は何とも言えんです、はい。

すいません。

次も頑張ります。






[15302] 第二十八話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/08/17 21:11
第二十八話 波乱のデート。 そして、新たなるフラグ!?



ユーノの里帰りから数日。

今日は、アリサ、すずか、アリシアの非魔導師3人娘とのデートの約束の日である。

事前の約束があるため、魔導師組が尾行するなんて事にはならない・・・・・・・・はず。

あ、因みにユーノはスクライア一族の所へ戻った。

いつでも連絡は取れるようにしてあるが、ヴィータは微妙な顔をしてた。

まあ、寂しいのだろう。

会いに行こうと思えばいつでも会えるので、駄々をこねる事はなかったが・・・・・・




ともかく話を戻すが、今日はユーノの里帰りについていけなかった非魔導師3人娘との埋め合わせのデートである。

家を出る時の、なのはと桜、リニスの視線は痛かった・・・・・・・

とりあえず、待ち合わせの場所まで行くと・・・・・

「ちょっと!遅いわよ!!」

いきなりアリサに怒鳴られました。

待ち合わせ場所には既に、アリサとアリシア、すずかがいて、何故かファリンさんまでいる。

「いや、遅いって・・・・・待ち合わせの時間まで後30分あるんだけど・・・・・・・」

そうなのだ。

俺にとって、何気に前世からも含めての初デートなので、早めに来たんだけど・・・・・・

「うっさい!男なら1時間前に来て待ってるぐらいの気概を見せなさい!」

それって、待ち合わせの時間の意味あるのか?

そう言うのなら、待ち合わせの時間をずらした方がいいのでは?

アリサの言葉にそう思ったが、口には出さないでおく。

「まあ・・・・・すまん」

とりあえず謝っておく。

そして、改めてアリサ、すずか、アリシアの姿を見ると、何時もより容姿に気を使ってるのに気付く。

デートだから当然かも知れないが。

でも、改めて思うと、まだ9歳なんだよな、こいつら?

いくらなんでも、精神年齢高すぎないか?

「ところで、何でファリンさんが居るんだ?」

俺は気になったことを尋ねる。

「あ、それはね、私達子供だけだと、不都合があるかもしれないからってお姉ちゃんが・・・・・・・」

すずかがそう言った。

「あ、なる程。保護者代わりってことね」

俺は納得して頷く。

「そういう事なのです。今日は私もご一緒しますね」

ファリンさんが笑顔でそういった。





行き先は、デートの定番である遊園地。

先ずはジェットコースター。

「んんっ・・・・・・・・!」

悲鳴を堪えるアリサ。

「きゃうぅ・・・・・・!」

小さく悲鳴を漏らすすずか。

「あははっ! すっごぉーい!」

笑顔で声を上げるアリシア。

「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

一番大きな悲鳴を上げるファリンさん。

あ、俺は特に如何という事はなかった。

前世では情けなく悲鳴を上げてた所だが、今なら、普通にこのジェットコースター以上の機動ができるから、この程度は慣れっこだ。




次、お化け屋敷。

「きゃぁああああああああああああっ!!」

突然出てきたお化けの人形に、思いっきり悲鳴を上げるファリンさん。

「ううっ。 結構リアルね・・・・・」

アリサが震えながら、そう言って俺の右腕にしがみ付いている。

因みに、左腕にはすずかが。

背中にはアリシアがピッタリとくっ付いている。

お化けの人形が出てきて脅かすたびに、ひしっとくっ付いてくる。

因みに、俺は内心ガクブルでした。

俺はホラー系駄目なんだよ・・・・・・・

そして、またお化けの人形が飛び出る。

うおっ!?

俺は悲鳴を上げるのを何とか堪える。

だが、

「うきゃぁ!?」

ファリンさんが情けない声を上げる。

そのまま進んでいくと、

「きゃぁああああっ!?」

「ひゃぁあああっ!?」

「やだぁああああああっ!?」

「ふぇええええええええええん!!」

ファリンさんの悲鳴が次々と響く。

お化け屋敷を出る頃には、

「えっぐ・・・・・・ぐすっ・・・・・・」

ファリンさんは目に涙を浮かべていた。

「あ・・・・あの・・・・大丈夫ですか? ファリンさん・・・・・・」

「ふぇええ・・・・」

泣き声を漏らすファリンさん。

「ファリン、もう大丈夫だから。 ね?」

そう言いながら、ファリンさんを慰めるすずか。

あの、ファリンさん?

あなた、保護者代わりに付いて来たんですよね?

如何見ても逆なんですが・・・・・・





お次はメリーゴーランド。

俺としては、微妙なんだが、今の歳ならセーフ・・・・・なのか?

「きゃはははははっ!!」

さっきとはうって変わって、満面の笑みを浮かべているファリンさん。

いや、ホントにあなた保護者代わりに付いて来たんですか?




「すずかちゃ~ん! 次はあれ乗りましょ! あれ!」

ファリンさんは、次の乗り物を指差しながら言った。

「ファリン! もうすぐお昼だから、先にご飯だよ」

すずかはそう言う。

そんな様子を見て、

「何気にファリンさんが一番楽しんでるよな・・・・・・」

俺はそう呟く。

「ホントね・・・・・ファリンさん、性格が少し幼いかなと思ってたけど、まさかここまでとは・・・・・」

アリサも同意する。

「まあ、偶には良いんじゃないかな?」

アリシアがそう言った。





遊園地内のレストランで食事を取っていると、放送のチャイムが鳴り、

『ただ今、警察より園内に近場で起こった強盗の犯人達が潜伏しているとの情報が入りました。 お客様は速やかに退園してください。 繰り返します・・・・・・・・』

そんな放送が流れた。

何だこのお約束的展開は?

レストランの中にいた客達が我先にと逃げ出していく。

「ごごご、強盗犯~~~~!? 大変ですぅ~! すずかちゃん! 早く逃げましょう!!」

ファリンさんがテンパッた様子でそうまくし立てる。

「ファリン落ち着いて」

そんなファリンさんをすずかが宥めようとする。

「ともかく、俺達も避難した方がいいな。 行くぞ」

俺はそう言って立ち上がる。

「そうね」

アリサ達は落ち着いた様子で立ち上がった。

「・・・・・・何でそんなに落ち着いてられるんだ、お前らは? はっきり言って、ファリンさんの反応の方が正しいぞ」

俺は、落ち着きすぎているアリサ、すずか、アリシアに尋ねる。

「だって、魔法だの何だのに関わってから、普通の強盗犯って言われても驚くほどじゃないし・・・・・・」

「この前みたいに直接誘拐されたわけでも無いし・・・・・・・・・・」

「それに、私達には、最強の騎士ナイト様がついてるし!」

アリサ、すずか、アリシアの順でそう言った。

特にアリシア。

最強の騎士ナイト様っていうのは俺のことか?

この前のオメガフォームとパラディンモードの印象が強かったのか?

「そうか・・・・・ともかく、行くぞ」

既に店の中には誰も居なかった。

俺を先頭に店の出入り口のドアに手を掛ける・・・・・・前にドアが開いた。

「あら?」

手が空振り、思わず声を漏らす。

「なっ!? まだ客がっ!?」

そんな声が聞こえたかと思うと、目の前に銃が突きつけられた。

俺は、反射的に魔力で身体強化を施す。

その瞬間、

――ドォン!!

頭に衝撃が走る。

脳が揺らされ、意識が遠くなる。

俺は、子供相手にいきなり発砲するなよと思いながら意識を手放した。






【Side ファリン】



「え?」

何が起こったか一瞬分からなかった。

ユウ君がドアを開けようとする前にドアが開いて、何故かいきなり銃が突きつけられて・・・・・・

そして、銃声と共にユウ君が軽く吹き飛ぶように倒れた。

「ユ、ユウ君!?」

私は思わず叫んでしまいました。

すずかちゃん達が慌てて駆け寄っている。

「バ、バカ野郎! 何いきなり撃ってやがる!!」

怒鳴り声が聞こえる。

私が其方に振り向くと、4人の男達が戸惑うように話し合っている。

「す、すまねえ兄貴・・・・つい」

「ついで済むか! 殺っちまったら重罪確定じゃねえか!」

「ど、どうしやす? 兄貴?」

「ぐ・・・・そこの女とガキ共を人質に取って逃げるぞ! こうなった以上、捕まったら俺達は終わりだ!」

「「「ヘ、ヘイ!」」」

その男達はナイフを取り出し、

「お嬢さんたち、悪いけど俺達と一緒に来てくれねえか?」

そう脅しながら言ってくる。

「すずかちゃん達は下がってください」

私は、すずかちゃん達を庇うように前に出た。

男の1人が私を捕まえようと手を伸ばしてくる。

「えいっ!」

でも、私は逆にその手を掴み、その男を投げ飛ばしました。

「ぎゃっ!?」

床に叩きつけられた男は悲鳴を上げます。

普段はドジな私ですが、これでも夜の一族が作った自動人形です。

普通の人間には負けません。

「な、何だこの女!?」

「片手で投げ飛ばしやがった! 何て馬鹿力だ!」

私は残りの男達を倒そうと動きだそうとしました。

その瞬間、

――バキュン

突然銃弾がすずかちゃん達の目の前の床に撃ちこまれました。

「そこまでだ。 それ以上動けば、後ろの嬢ちゃん達の命は無いぜ」

その言葉に、私の動きは止まります。

いつの間にか、リーダー格らしき男がすずかちゃん達に銃を向けていました。

「あ・・・・・」

私は、後悔しました。

銃が1つだけだとは限らない事に気付けなかったから。

すると、先程投げ飛ばした男が立ち上がりました。

「ぐ・・・・・げほっ!・・・・」

その男は咳をしながら私に近付いてきます。

「このアマ!!」

――ドゴッ!

「あうっ!」

私は、その男に頬を殴られて床に倒れます。

「テメェ・・・・・舐めてんじゃねぇぞ!!」

“外見”が女の私に投げられた事が屈辱なのか、その男の顔は怒りに染まっている。

――バキッ!

「うっ!」

身体を起こした私は、また頬を殴られる。

「ファリン!」

すずかちゃんが心配そうな声を上げる。

そんなに心配しなくても大丈夫ですよ・・・・・・

私は自動人形です・・・・・・

女でもなければ、人間でも無いんですから・・・・・・・

だから、泣かないでください、すずかちゃん・・・・・・・

また男が私を殴ろうと拳を振り上げる。

私は殴られる事を覚悟して目を瞑る。

でも、

――ドドドゴォ!

「「「ぎゃっ!?」」」

爆発音のような音がして、私は目を開ける。

その瞬間、

「女の人は、もっと丁寧に扱え! このボケが!!」

――ドゴッ!

そう叫びながら私を殴ろうとした男の頭を掴んで床に叩きつける、ユウ君の姿があった。





【Side Out】




「このアマ!!」

――ドゴッ!

「あうっ!」

そんな声が聞こえ、意識が覚醒する。

まだ頭がグラグラするが、状況を確認しようと周りを見渡す。

その時、

「テメェ・・・・・舐めてんじゃねぇぞ!!」

――バキッ!

「うっ!」

ファリンさんが殴られて床に倒れる所を目撃した。

その瞬間、朦朧だった意識が完全に覚醒する。

状況を確認する。

アリサ、すずか、アリシアは俺の周りに。

そんな3人に、銃を向ける男とその両隣にいる男2人。

そして、再びファリンさんに近付くファリンさんを殴った男。

俺は、3人を人質にとられてファリンさんが抵抗できない事を瞬時に悟った。

俺は瞬間的に動いた。

床に倒れたまま魔力弾を3発作り出し、それを1発ずつ銃を向けていた男とその両隣にいる男達に向かって放つ。

その瞬間俺は立ち上がり、ファリンさんに向かって拳を振り上げていた男に向かって駆け出した。

――ドドドゴォ!

「「「ぎゃっ!?」」」

魔力弾が3人の男に着弾したのとほぼ同時に、俺は床を蹴って跳び上がり、ファリンさんに拳を振るおうとしていた男の顔を掴む。

「女の人は、もっと丁寧に扱え! このボケが!!」

――ドゴッ!

思っていた事をそのまま口に出し、男の頭を床へ叩き付けた。

男は気絶し、動かなくなる。

俺はすぐにファリンさんへと駆け寄る。

「ファリンさん! 大丈夫ですか!?」

ファリンさんは床に倒れた状態で上半身だけを起こし、呆気に取られた顔で俺を見ている。

大方ビックリしたんだろうけど。

そんな時、ファリンさんの顔に殴られた跡があることに気付く。

少し痛々しい。

俺は、試しに治癒魔法を発動させてファリンさんの頬に手を添える。

だが、やはり人間の身体とは違うのか、治る気配は無い。

「う~ん・・・・・やっぱり無理か・・・・・・それにしても、女の人の顔を殴るなんて、最低な野郎だな」

俺は、ファリンさんを殴った男を一瞥して呟く。

「あ、あの、ユウ君?」

「はい?」

ファリンさんに名を呼ばれてファリンさんに向き直る。

「ユウ君は、私が自動人形であることは知ってた筈ですよね?」

「はい。 前に聞きましたから」

ファリンさんは確認するように問いかけてきたので俺は頷く。

「それがどうかしたんですか?」

俺がそう尋ねると、

「いえ・・・・あの、私は自動人形ですから、人でも無ければ、女でもありませんから・・・・・・・・」

ファリンさんは、遠慮がちにそう言う。

「何言ってるんですか? 確かに人間じゃないかもしれませんけど、俺から見たら、ファリンさんは十分に女の人だと思いますが・・・・・・」

「ふえっ!?」

ファリンさんは顔を赤くして声を漏らす。

あれ?

何か変な事言ったか俺?

「ユ、ユウ君!? な、何言ってるんですか!?」

「いや、普通に思ったことを言っただけなんですけど・・・・・・ファリンさんはちょっとドジかも知れませんが、逆にそこが可愛らしくて、素敵な女性だと思ってますよ」

俺はそう言って笑いかける。

「あ・・・・・・」

すると、ファリンさんは声を漏らして何故か涙を零した。

「え? あの? ファリンさん!? 何で泣くんですか!?」

いきなり涙を流したファリンさんに俺は焦った。

「ね、ねえ・・・・ファリンさん・・・・・・もしかして堕ちちゃった?」

「うん・・・・・多分・・・・・・・・・ファリン、自動人形だってことにコンプレックス持ってたみたいだから・・・・・・・・・」

「あ~~・・・・・・そこにあんな風に言われればイチコロかぁ・・・・・・・」

「あはは・・・・・・ユウって見境無いね・・・・・・・・」

「それが意識してやってるわけじゃないから、逆にタチ悪いのよ」

「でも、その優しい所がユウの良い所なんだよね」

「クスッ、そうだね」

「また女が増えた事を知ったら、桜やなのはが暴れそうね」


後ろで3人が何やら話していたようだが、声が小さくて聞き取れない。

ともかく、俺は、目の前で泣き止まないファリンさんを慰めながら、この現状を如何するのかを考えるのだった。








あとがき


やりたい放題やった割にはどこか面白みに欠ける二十八話の完成です。

あれ?

非魔導師3人娘とのデートだった筈なのに、何故かファリンの独壇場。

フラグ立てちゃったし・・・・・・・

性格が何か違うか?

う~ん・・・・・この先どうなる事やら・・・・・・・

まあ、次も頑張ります。




[15302] 第二十九話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/08/17 21:11
第二十九話 クリスマス・イブ



さて、日が過ぎるのも早いもので、今日は12月23日。

明日はクリスマス・イブだが、翠屋にとっては忙しい一日となるので、高町家では、一日早いクリスマスパーティーのようなものが開かれている。

士郎さん曰く、イブは地獄の忙しさらしい。

因みに、俺も当日の戦力として駆り出される事を宣告されている。

学校はサボり。

高町夫婦公認だし、自分にとって小学校の勉強など如何でもいいので問題ない。

当日に戦力にならないなのはと桜(桜は体力的問題)は、今夜の内に値札とポップを作る役である。

あと、桃子さんがやけにニコニコしていたが、明日、頼もしい援軍が来るらしい。

俺は誰だろうと首を捻るが、恭也さんの恋人の忍さん位しか思いつかない。

まあ、明日になれば分かるだろう。







そして翌日。

「何でだよ………」

俺は思わず脱力する。

今、開店前の翠屋の中にいるのだが、俺の目の前には、

「じゃあ皆、今日はお願いね」

桃子さんがそう言い、

「了解です」

「はい!」

リニスと忍さんが返事をすると、

「頑張らせていただきます」

「こちらこそよろしくお願いします」

「はい、一生懸命頑張ります」

「頑張りますぅ」

「任せときな」

「これも主の頼み。 役割は果たそう」

続けて返事をしたのは、順にウェイトレスの制服を着たリインフォース、シグナム、シャマル、ファリンさん。

更にサンタクロースの格好をした人間形態のアルフとザフィーラ。

ホントになんでこうなった?

リニスは元々翠屋のウェイトレスだし、忍さんも偶にヘルプに入ってくれるからまだ分かる。

何でシグナム、シャマル、ザフィーラ、アルフとファリンさんまで居るんだよ?

「ホント助かるわ。 バイトの子も予定が入ってる子が多かったから如何しようかと思ったけど、はやてちゃんとフェイトちゃんが快く貸してくれたの」

桃子さんがそう言う。

そうなのか。

因みにはやては今日は病院でリハビリ。

闇の書が夜天の魔導書に戻り、はやてへの侵食が止まったので、麻痺は既に無くなっているが、筋力的に衰えている為、まだ歩く事は出来ない。

しかし、足自体は既に動かせるので、歩けるようになるまでそれほど時間はかからないらしい。

あと、ヴィータはスクライア一族の所へお邪魔しているらしい。

何でも、遺跡の発掘作業の手伝いだそうだ。

ハンマーで岩を砕き、ドリルで穴を掘るヴィータ。

……その様子が、簡単に想像できてしまうのは何故だ?

「ん? シグナム達とアルフは分かりましたけど、ファリンさんは何で? 忍さんの付き添いならノエルさんですよね?」

俺は気になったことを尋ねる。

「ふえっ? 私じゃお邪魔でしたか……?」

ファリンさんは泣きそうな顔で俺を見てくる。

「えっ? いや、邪魔とかそんなんじゃないです! ただ気になっただけで……」

俺は慌ててそう言った。

すると、桃子さんが、

「あらあら、ユウ君も罪作りな男の子ね」

と微笑んでいる。

そういえば少し前の非魔導師3人組とのデートの後に、「アンタまた女引っ掛けたのね!」って、いわれの無い罪で桜となのはからダブルポジトロンレーザーを受けたんだが……いや、まさかそんなわけ…………。

俺はそう思いながらファリンさんを見ると、

「はうぅ……」

桃子さんの台詞で頬を染めるファリンさんの姿。

マジですか!?

「あ……いや………何と言うか…………」

そんなファリンさんに何か言おうとしたが、

――ゾクッ

と、背中に悪寒が走る。

振り返れば、リインフォース、シグナム、シャマルがもの凄い目で俺を見ていた。

俺が如何するか困っていた時、

「う~ん、無自覚女たらしなところは恭也と一緒だけど、鈍感じゃないだけまだマシかな?」

なんて事を忍さんが言った。

いや、分かってたんですか?

何か釈然としない雰囲気だったが、開店時間が迫ってきたので、その話は打ち切りとなった。





開店時間になった途端、なだれ込んで来るお客達。

何時もの比ではない。

今日の桃子さんの作戦としては、お客にはテーブルに着いたら各自その場で声に出して注文してもらい、俺がその注文を何時もの如く1人でメモし、厨房に伝える。

シャマルは、レジ係。

リニス、リインフォース、シグナム、ファリンさんと、その他従業員がウェイトレス。

あと、アルフとザフィーラは、店の前でサンタクロースの格好をして、客の呼び込みをしている。

因みに、獣耳と尻尾は隠していない。

まあ、イブだし、衣装の一部としてしか見られないだろうけど。

アルフは、男性ウケが良い。

まあ、使い魔とはいえ、容姿は良いし、スタイルも抜群。

大概の男なら好感を持つだろう。

意外だったのが、ザフィーラ。

何と子供受けが良い。

窓から外を覗いた時、ザフィーラの腕にぶら下がってる子供もいたぐらいだ。

それをザフィーラは特に嫌な顔もせず、子供に付き合っている。

元々、ザフィーラは無口だけど、面倒見の良い性格してるからな。

そんな風に考えていると、次々に注文が入る。

俺は慌ててメモしていった。





昼過ぎになると、お客が絶え間なく入ってくる。

何時もより、男性客が多い。

それは、呼び込みをしているアルフの所為もある。

あとは、いつも居ない、リインフォース、シグナム、シャマル、ファリンさんといった美女達がウェイトレスをしていることも原因だろう。

悲しい男の性だな。

ともかく、さっきも言ったが、今日の客の量は、何時もの比ではない。

そうなると、ウェイトレスの仕事が増え、目まぐるしく動く事になる。

俺は、ふと目の前を通ったファリンさんを見ていた。

そういえば、アニメのファリンさんって、初っ端から目を回して、ドジッ子ぶりを披露したっけ。

俺がそんな事を思いながら見ていると、ファリンさんの目の前に子供が飛び出す。

「おっとと……」

ファリンさんの身体がふらつく。

そこへ、狙ったように別の子供が走り回る。

「はわっ?」

更にファリンさんの身体がふらつき、ファリンさんが回りだす。

おい、このパターンって………

「はわ~~~……」

やがて目を回したファリンさんは、手に持っていたトレイを投げ出すように………

「って、やべっ!」

それに気付いた俺は思わず駆け出す。

宙を舞うトレイと片付けようとした空の食器。

目を回して仰向けに倒れようとしているファリンさん。

「ちぃ! 間に合え!」

俺は身体能力を強化し、それと同時に宙を舞うトレイと食器にばれない様に浮遊魔法をかける。

そして、右手で床に倒れる寸前のファリンさんを受け止め、左手で宙を舞っていたトレイをキャッチすると、食器が割れないように調節しながら、自然にトレイの上に乗るように受け止めた。

「「「「「「「おお~~~~~~~~」」」」」」」

それを見ていたお客からは、感心した声が上がる。

「はっ!」

我に返ったファリンさんは、

「ふええ~ん! ユウ君ごめんなさい~~~!」

泣きそうな声を上げるのだった。



因みにそのとき厨房では、

「あちゃ~、やっちゃったか………」

「まあ、ユウがフォローしてくれるだろう」

皿洗いをしていた忍さんが頭を抱え、恭也さんが宥める光景があったとか。





それから少しして、ほんの僅かな休憩時間。

「あ~~~…………頭いてぇ…………」

俺は、椅子に座りながら頭を押さえる。

頭痛の原因は、マルチタスクを全開で使い続けた事による、まあ、知恵熱みたいなものだ。

ここまでぶっ続けで使い続けたことは初めてで、頭が痛い。

「ユウ君、大丈夫ですか?」

シャマルが声をかけてくる。

「ああ、大丈夫。 ちょっと頭が痛いだけだし、少し休めば直るよ」

俺は、心配かけまいとそう言った。

「そうですか。 あ、これ栄養ドリンクです」

シャマルはそう言いながら、液体の入ったコップを差し出してくる。

「ああ、ありがとう」

俺は、何の疑いもせずにそれを受け取った。

ここで、この栄養ドリンクの確認をしなかった事が、失敗であった。

俺は、その栄養ドリンクが入ったコップに口をつける。

そして、少し喉が渇いていた俺は、半分ぐらい一気に飲むつもりで、栄養ドリンクを胃に流し込むように飲み込んだ。

その瞬間、

「がはっ!?」

もの凄い衝撃が味覚を襲い、俺の意識は暗転した。





【Side シグナム】




「がはっ!?」

突如聞こえたユウの苦しみの声。

私は一瞬、管理局の敵襲かとも思い、急いで休憩所へ駆け込む。

そこには、驚愕するシャマルと、倒れ伏すユウの姿。

「ユウ!」

私は一目散にユウへと駆け寄り、抱き起こす。

「ユウ! しっかりしろ! ユウ!」

私はユウを揺さぶって声をかけるが、完全に意識が無いのか反応が無い。

「まさかっ!」

最悪の予感が頭をよぎり、私はユウの胸に耳を当てる。

だが、その心配も杞憂だったようで、心臓の音は問題なく聞こえてきた。

それにホッとするのも束の間、私はシャマルに問い質した。

「シャマル! 一体何があった!? 誰がユウをこんな目に!?」

私の問いにシャマルは首を振り、

「わ、わからないわ………その栄養ドリンクを飲んだら急に…………」

床に落ちていたコップと零れた液体を指差しながら言った。

「くっ………ならば毒か………おのれ………!」

私は、日常の中で油断していた事に悔しさを感じ、拳を握り締める。

だが、

「そんなはず無いわ! だって、その栄養ドリンクは私が作ったものよ! 肌身離さず持ってたから、毒を入れるなんて不可能だわ!」

シャマルの言った言葉の中に、聞き捨てなら無い言葉が聞こえた。

「ちょっと待てシャマル。 今何と言った?」

私はシャマルに確認する。

「え? 肌身離さず持ってたから、毒を入れるなんて不可能だって………」

「違う! その前だ!」

私は言葉を荒げてしまう。

「えっ? その栄養ドリンクは私が作ったもの………?」

シャマルの言葉を聞いて、私の聞き間違いで無いことを再確認する。

「シャマル………一応聞くが、その栄養ドリンクには何を入れた?」

私がそう聞くと、

「えっと……セイヨウサンザシ、ホンオニク、ローヤルゼリー、ナルコユリ、グレープフルーツ、ドクダミ、ショウガ、ウナギ、マグロの目玉、梅干、セロリ、マソタの粉末、ムカデ、イモリ、マムシ、アガリクス、冬虫夏草、紅茶キノコ、スッポン、オットセイエキス………他にも色々と身体に良さそうな物を………」

私はそれを聞いて頭を抱える。

「このっ……バカモノォ!!!」

私は思わず叫んだ。

「ひゃうっ! シ、シグナム?」

シャマルは何故怒鳴られたのか分かっていない表情だ。

と、そのとき、

「何の騒ぎだ?」

「如何したの?」

皿洗いをしていた恭也と忍が騒ぎを聞きつけてやってきたようだ。

「何でもありません。 シャマルの奴が、栄養ドリンクという名の化学兵器で、ユウを気絶させただけです」

「化学兵器って……シグナム酷い……」

シャマルが何やら言っているが無視だ。

私の腕の中にいるユウに気付いたのか、恭也が慌てた表情になる。

「お、おい! しっかりしろ! ユウ!」

「安心してください。 気絶しているだけです」

私は、安心させるためにそう言う。

だが、

「そうじゃない! 今ユウに抜けられたら、この先が乗り越えられんぞ!」

その言葉で私ははっとなる。

そうだ、今はユウの変わりにリインフォースが注文を受けているため、ウェイトレスが一人減るのも大きな痛手だ。

その事に気付くと、どうにかしてユウを起こさなければと考える。

すると、

「こういう時は人工呼吸ね」

忍がそんな事を言った。

「じ、人工呼吸!?」

私は思わず声を上げる。

「お、おい忍。 何を言っモガッ……」

恭也が何か言おうとしたようだが、忍に口を塞がれる。

「いーのいーの。 面白くなりそうなんだし」

「し、しかしだな……」

「良いから良いから」


2人は何か小声で話していたようだが、良く聞き取れなかった。

「ほら、どっちでも良いからチューっと一発…」

「チュ、チュー!?」

忍の言葉に私は焦る。

「ほら、早くしないと皆に迷惑がかかっちゃうよ」

忍のその言葉を聞いて、

「う、うむ……そうだな。 こ、これは皆に迷惑がかかる故の、仕方のない処置だ……」

私は自分に言い聞かせるように呟く。

「そうそう。 ほら、早く」

「う、うむ………」

私はそう頷いて、腕の中のユウに顔を近づけていく。

「シ、シグナむぐっ……」

なにやらシャマルの声が聞こえた気がしたが、気にしていられない。

徐々に近付いていくユウの顔に、自分の顔が熱くなる。

ドクンドクンと、自分の心臓の音がやけにうるさい。

そして………

私は………

ユウの唇に………

自分の唇を………

押し付けた………

「ん………」

その時、ユウの瞼が動き、

私とユウの眼が合った。





【Side Out】





俺が気がついた時、シグナムの顔がどアップで目の前にありました。

そして、唇には柔らかな感触。

そんで、ばっちりとシグナムと眼が合ってます。

これって、シグナムにキスされてるんだよな?

Why?

何で?

どうして?

俺が混乱していると、慌ててシグナムが離れる。

「い、いや、ユウ! これはだな……!」

シグナムも顔を真っ赤にして、良い感じに混乱してるし。

俺は周りを見渡して、シャマルと恭也さん、そして、ニヤニヤしてる忍さんが目に入った。

そんな忍さんを見て、大体は理解した。

大方、忍さんの口車に乗せられて、キスするように誘導させられたんだろう。

「……忍さん、シグナムに何言ったんですか?」

俺がそう尋ねると、

「べっつにぃ~。 ただ、眼を覚まさせるには、人工呼吸をした方がいいって言っただけ」

忍さんの言葉に俺は呆れる。

「そ、その通りだ! 人工呼吸で仕方なく!」

シグナムも顔を真っ赤にしてそう言う。

だが、先程のシグナム曰く人工呼吸は、鼻をつままれていなかった為に、人工呼吸にはなりえないという事は、言わない方がいいんだろうか?

そういえば、俺は何で気絶したんだ?





その後、すぐに仕事に復帰したが、何故か体の調子が良い。

今までの仕事の疲れが吹っ飛んだようだ。

何故だ?

ああ、因みに学校から帰ってきたなのは達と、リハビリを終えたはやてが同じぐらいの時間に来たが、その時に、忍さんがなのは達に、シグナムが俺に人工呼吸という名のキスをしたことを話したために、

「「「シグナム…………ちょ~~っとO☆HA☆NA☆SHIしようか?」」」

なのは、フェイト、はやてがシグナムを連れて行こうとした。

「お、お待ちください! 主はやて! テスタロッサに高町も! 今抜けては翠屋が!」

シグナムは翠屋が忙しい事を理由に何とか逃れようとしたが、

「ああ、大丈夫よ。 ピークも過ぎたし、私も手伝うから」

と、桜が言った為に、

「桜ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「「「じゃあシグナム………逝くよ」」」

「ちょ、今『いく』のニュアンスが……!」

3人に引き摺られていくシグナム。

とりあえず、無事に戻ってこられる事を祈っておくのだった。





あとがき

どうもです。

一応マシな出来と思う二十九話の完成です。

って言うかPVが50万突破してるし!

うっそぉ~~。

皆様本当にありがとうございます。

さて、今回クリスマスネタという事で頑張ってみましたが、本来書くつもりは無かったので苦労しました。

まあ、普通の日常編よりかはマシな出来だと思います。

とりあえず、次回は本物のデジモンを出すつもりです。

さて、一体何が出るんでしょうか?

お楽しみに。



[15302] 第三十話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73
Date: 2010/09/19 16:35

第三十話 次元を越えし、漆黒の竜人




【Side ????????????】



『…………よ、私がお前に伝えられるのは、これだけだ』

『俺はアンタに会えてよかった。 アンタはこの俺の存在を、必ず意味があると言ってくれた』

俺は、俺の存在に意味があると言ってくれた者にそう言う。

『……例えそれが、忌み嫌われるものだとしても………』

俺はそう呟き、目的もなく歩き出す。

『何処へ行くんだ?』

俺を追い詰めた少年の1人がそう問いかけてくる。

『……何処でもない、何処か……』

俺はそういい残して、この世界から姿を消した。




それから、幾つの世界を渡っただろうか………

何処の世界も、俺の存在を認めてくれる世界はなかった。

そして、俺はまた、世界を渡る………




【Side Out】



【Side クロノ】



僕達は今、とある管理外世界へ向かっている。

つい先日、次元震が確認された世界だ。

そして、その世界で、局所的だが空間の位相が不安定になっている。

しかも、その空間の位相が不安定になる部分は移動している。

その調査の為に、アースラがその管理外世界に向かっているところなのだ。

そうなのだが………

「クライド………」

「リンディ………」

アースラのブリッジでは、何というか、その、俗に言うストロベリー空間が発生している。

その出所は、言わずもがな、母さんと父さん。

この2人、この前の闇の書事件が終わってから所かまわずこのような空間を振りまいている。

因みに父さんだが、かつて殉職したクライド・ハラオウンだという事は認められたが、闇の書の誘惑に乗ってしまった事は、管理局員にはあるまじき行為だという事で、殉職した時点の提督から相当な降格を言い渡された。

まあ、そのお陰でこうやって同じアースラに配属する事が出来たのだが。

その所為で、父さんと母さんは所構わずイチャ付いている。

この前の休暇の日なんて……

久々に家で家族水入らずで過ごしたのだが、その夜………

その……何というか………こ、声が駄々漏れで………

思わず防音結界を使った………

その内弟か妹が出来そうな雰囲気だ………

と、ともかく、話を戻すが、とある管理外世界の次元震と空間の位相が不安定な原因を突き止めるために、アースラが派遣されたのだ。




【Side Out】




今日は、1月25日。

この日は、俺の誕生日であるが、それ以前に父さんと母さんの命日でもある。

この日は朝早くから墓参りの為に家を出る。

一緒に行くのはリニスのみ。

士郎さんと桃子さんには、お昼までには帰るとだけ伝えてある。

前日に用意していた花と、墓掃除用の道具を持って丘の上の墓地へと向かった。

その途中、黒猫を見かけ、構ってやろうと近付いたが、すぐに逃げられた。

まあ、墓参りぐらいは静かにやりたいので、なのはや桜達にばれない様にリニスに頼んでジャミングまでかけて貰う徹底振り。

だが、ここまで徹底したことが裏目に出る事など、この時の俺は知る由もなかった。






【Side クロノ】




件の次元震と空間の位相が不安定になっている世界に到着する。

その世界は岩だらけの荒野の無人世界。

空間の位相が不安定になっている所は相変わらず移動しており、その原因を探るべく、僕と父さん、そして、数十人の武装隊がその世界へ転送される。

空間の位相が不安定になっているところへの直接の転送は危険な為、少し離れた場所に転送する。

その世界に転送された僕達は、移動している空間の位相が不安定になっている場所へと飛び立った。



その場所は、岩場の渓谷であった。

僕は、エイミィに通信で確認を取る。

「エイミィ、現在の空間異常の位置は?」

『え~っと……あと500mぐらい北だね』

「了解」

エイミィの言葉で僕達はそこへ向かう。

飛行魔法で岩山を越え、

『もうすぐだよ。 注意して』

「ああ」

エイミィの警告に従いながら地上を注視していると、谷底を移動する、黒い『何か』を目撃する。

「あれは?」

僕は、父さんや武装局員と共にその黒い『何か』の移動先に先回りし、待ち構える。

そして、その『何か』の姿を正面から視認した時、

「……ユウ?」

思わずそう呟いた。

いや、その『何か』がユウでないことは一目瞭然だ。

その黒い『何か』は、身長が3mほどもある人型。

そして、全身が闇に染まっていると思わせるほどの漆黒。

明らかに人間とは思えない生物。

だが、その『何か』の纏っている装甲は、大きさと色が漆黒なのを除けば、ユウのブレイズ発動時のバリアジャケットに酷似しすぎている。

すると、僕達の姿を確認したのか、歩いていた『何か』は立ち止まる。

そして、

「何者だ、貴様達は?」

信じられないことに、言葉をかけてきた。

「なっ!? 喋れるのか!?」

僕は、思わず驚愕する。

「もう一度聞く。 貴様らは何者だ!?」

先程よりも若干イラつきが入った言葉で再び問いかけられる。

「私達は時空管理局という組織の者だ。 今、この世界で局所的だが空間の位相が不安定になっている。 我々は、その調査に来た」

僕よりも早く、父さんが答えた。

僕も、その言葉で落ち着きを取り戻し、相手を見据える。

「そして、その空間の異常の中心部分に来た結果、君に遭遇したんだ」

僕はそう言う。

すると、相手は僅かに俯き、考え込む仕草をする。

「なるほど……空間の異常か………」

そう呟くと顔を上げ、

「その空間の異常の原因ならば、間違いなく俺だろう」

そう言い放った。

「なっ!?」

僕は一瞬驚愕するが、

「何故そんな事をする!?」

そう相手に問いかける。

「………理由などない」

若干間が空いたあと、相手はそう言った。

「なんだと!?」

その理由に、僕は思わず声を荒げてしまう。

理由もなく空間の異常を作り出す相手に、一瞬怒りを覚える。

「俺はそういう存在なのだ。 存在するだけで、空間に異常をきたし、世界を不安定にする存在。 俺はそのように生み出された」

だが、その怒りもこの一言で一気に冷めた。

「俺は本来、心を持たずに生まれてくる筈だった……だが、何の因果か、俺は心を持って生まれてしまった……世界を歪ませる存在であるにも関わらず!!」

僕はその言葉を聞いて、深い悲しみを感じた。

自分の意思とは関係なしに世界を歪ませる存在。

もし自分がそのような存在だとしたら、その苦しみは想像を絶するだろう。

いっその事、心など欲しくはなかったと思えるほどに………

「俺は、俺の存在の意味を知りたい……そのために幾つもの世界を回ってきた」

その相手はそう語る。

「だが、何処の世界も俺の存在を受け入れてくれる世界はなかった……」

相手のその言葉に、僕は内心、心苦しくも納得していた。

世界の安定を脅かす存在など、受け入れるわけにはいかない。

例えそれが、本人の意思でないとしても。

「………どうやら、貴様達も答えは同じようだな」

「ッ!」

相手の言葉に思わず反応してしまう。

すると、相手が構える。

「待ってくれ! 僕達は無闇に争うつもりはない! 君の身柄は管理局で保護する! 身柄の安全も保証する!」

僕は必死で呼びかける。

「フン! 今は無くとも、いつかは俺を排除するつもりだろう? 俺は世界の安定を歪める存在だからな」

「そんなことはっ……!」

そんなことは無いと言い掛けて、現在の管理局の現状からして、無いと言い切ることは出来なかった。

「第一、俺は誰かに指図されるという事が嫌いでな。 俺の行動を制限されるという事は我慢ならん!」

相手の言葉を聞いて、僕達は仕方なくデバイスを構える。

正直、彼とは戦いたくない。

だが、このまま彼を放っておくと、次元世界全体に危機が及ぶ可能性がある。

故に、力尽くで彼の身柄を確保する事に決めた。

本人の意志に関係ない事での強制確保は、本当に心苦しいが………

僕は、武装局員に確保の命令を出す。

だが、その考えが本当に甘かった事をすぐに思い知らされる事になるのだった。




【Side Out】






【Side 桜】



朝起きたら、ユウがいなかった。

魔力反応も無いし、私は思わず慌てて父さんと母さんに報告した。

でも、父さん曰く、ユウはリニスと一緒に、朝早く出かけて行ったそうだ。

昼までには戻ると言っていたので、それまでは心配する必要はないだろうとの事。

確かにリニスがいれば、私達の索敵能力に引っ掛からないぐらいのジャミングは出来るだろうけど……

何でそんなことしてるんだろ?

今日はアイツの誕生日なのに。

今日は休日だし、翠屋も特に忙しくないからいいんだけど。

そんな事を考えながら、なのはとゲーム(格闘以外)をやっていた。

そして、大体午前9時を回った位だった。

『マスター』

待機状態のレイジングソウルが声をかけてくる。

「何? レイジングソウル」

『アースラからの緊急通信です』

「えっ? アースラから? 繋いで」

私がそう言うと、モニターが開き、エイミィさんが映る。

しかし、その表情は切羽詰った表情だ。

『いきなりゴメン! ユウ君いる!? ユウ君に直接繋ごうと思ったんだけど、捉まらなくて!』

エイミィさんは、慌てた様子でそう捲くし立てる。

「えっと……ユウは朝から出かけてて……行き先は私達にもさっぱり……でも、昼までには戻ってくるって聞いてますけど………」

私がそう言うと、

『そんな……それじゃ間に合わない………ゴメン2人とも! 何とかユウ君探してきて! このままじゃクロノ君たちがやられちゃうよぉっ!!』

エイミィさんは半泣きになりながらそう叫ぶ。

尋常ではないエイミィさんの様子に、ただ事ではないと感じた私は、

「恭也兄さん! 美由希姉さん!」

家にいた2人を呼び、

「2人とも大至急ユウを探してきて! 私となのははクロノ達の応援に行くから!」

「わかった!」

2人は、何も聞かずに頷いてくれた。

「ユウを見つけたら、アースラに連絡を取るように伝えればいいから!」

私はそれだけ言うと、エイミィに転送を頼んだ。




【Side Out】




【Side クロノ】



「ブレイズキャノン!!」

僕は、相手に向かって砲撃を放つ。

「フン!」

だが、相手は腕に装備している3本の爪のような剣がついた籠手を振るう。

大して力を込めていないように思えるその一振りで、砲撃魔法は切り裂かれ、四散する。

はっきり言って、相手は無傷だ。

そして、こちらで今動けるのは、僕と父さんのみ。

武装局員達は、既に全員脱落。

というより、戦う資格すらなかったらしい。

相手が戦う前に発した咆哮と共に、凄まじい衝撃波が発生し、僕と父さんはプロテクションで罅が入りながらも何とか防いだが、他の武装局員達は防ぎきれず、大地や岩に叩きつけられ、全員が戦闘不能となった。

僕と父さんは、負傷した武装局員から相手を離すために、相手を引き付けつつ場所を変える。

その際も、幾度も攻撃を加えているが、軽く弾かれたり、防御するまでもないのか、攻撃魔法に正面から突っ込んできた時もあった。

その全ては、無意味と思えるほどに、全く効いていなかった。

「「スティンガースナイプ!!」」

僕と父さんは、同時にスティンガースナイプを放ち、相手を翻弄するように操作する。

だが、相手は全く気にしてないように僕達を見続ける。

「くっ!」

僕は思わず声を漏らす。

そして、僕と父さんは、相手の無防備な後頭部と、腹部に魔力弾を直撃させる。

しかし、その相手は微動だにしない。

「そんな豆鉄砲では、この俺にダメージは与えられんぞ」

相手はそう言い放つ。

僕は焦り始める。

僕達の魔法は、相手に全くダメージを与えられない。

例え、僕の魔法の中の最強の威力を誇る、スティンガーブレイド・ベルセルクシフトでも、ダメージが与えられるか危うい所だ。

僕が如何するか考えていた時、

「クロノ! 奴の上を撃て!」

父さんがそう叫ぶ。

僕は父さんの言った奴の頭上を見る。

そこには、崖の上から迫り出した大岩が見えた。

その瞬間、父さんの言いたい事を理解する。

僕と父さんは同時にデバイスを構え、

「「ブレイズキャノン!!」」

同時に砲撃を放つ。

「む?」

相手は、見当違いの方向に放たれた砲撃に声を漏らす。

砲撃は、大岩が乗っていた崖の一部を砕き、支えを失った大岩が落下した。

相手は、油断していたのか、逃げる素振りすら見せずに、その大岩の下敷きとなる。

更に崩れた崖が空いていた隙間を埋めるように雪崩れ込んだ。

「これなら……」

僕がそう呟いた時、

「クロノーーっ!!」

「クロノ君!」

聞き覚えのある、2人の少女の声。

其方を向くと、よく似た白いバリアジャケットを纏った2人。

「桜! なのは! どうしてここに!?」

僕は思わず問いかける。

「エイミィさんに頼まれたの。 クロノ達がピンチだから助けて欲しいって。 本当はユウの方が良かったんだけど、今日は朝から何処行ったか分からないから、私達が先に応援に来たの」

「そうか、助かる」

僕はそう言うと、生き埋めにした大岩の方に向き直る。

「それで、相手は?」

なのはが尋ねてくる。

「ああ。 今はあの岩の下敷きだ」

僕がそう言うと、

「ええっ? 大丈夫なの?」

なのはが驚いているが、

「先ず間違いなく生きている。 だが、これも何時まで持つか………せめて1時間……いや、30分持てばいい所……」

と、僕が言いかけた瞬間、

――ドゴォォォン

大岩が砕け散り、細かい瓦礫も全て吹き飛ぶ。

「「「「なっ!?」」」」

突然の事に驚愕する僕達。

「30秒しか持たなかったか………」

父さんが、残念そうな表情で呟く。

「この程度で俺を倒せると思っていたのか?」

そう言いながら、瓦礫を吹き飛ばしたときに起こった砂煙の中から、奴が現れる。

「「なっ!?」」

桜となのはが、驚いた声を漏らした。

恐らく、ユウのバリアジャケットとそっくりな相手の姿に驚いているのだろう。

「嘘……ユウ君のバリアジャケットそっくり……」

なのはが思ったとおりの言葉を漏らす。

しかし、

「な、何で………」

桜が震えた声を漏らした。

だが、それは単なる驚きの声ではない。

確実に恐れが混じった声だった。

よくみれば、肩も震えている。

「さ、桜お姉ちゃん?」

なのはも、桜の様子がおかしい事に気付いたのか、桜に声をかける。

しかし、桜は驚愕と恐れの表情をしたまま、

「ブ、ブラック………ブラック……ウォー………グレイモン…………」

そう呟いた。




【Side Out】




【Side なのは】



「ブ、ブラック………ブラック……ウォー………グレイモン…………」

桜お姉ちゃんが驚愕と恐怖が入り混じった表情と声で、そう呟きます。

それにしても、『ぶらっくうぉーぐれいもん』って何だろ?

私がそう思っていると、

「貴様、何故俺の名を知っている?」

相手が突然そう言ってきました。

え?

今のって、あの人(?)の名前なの?

すると、桜お姉ちゃんは、

「その前に、ちょっと聞かせて………デジモン、ダークタワー、ホーリーストーン、チンロンモン………この単語に聞き覚えは?」

震えた声で、そう問いかけました。

でも、私には1つも聞いた事のある単語がありません。

「……全て知っている……だが、それが如何した?」

相手のぶらっくうぉーぐれいもん?さんが如何でもいい様に答えました。

「……そう」

それを聞くと、桜お姉ちゃんが、諦めたように一度目を伏せる。

そして、

「レイジングソウル!!」

桜お姉ちゃんの呼びかけで、レイジングソウルがブラストモードに変形します。

でも、次に放たれた桜お姉ちゃんの言葉に、私は驚愕しました。

「非殺傷解除!!」

桜お姉ちゃんは、躊躇無く命令を下しました。

そして、私がその事を認識した瞬間、

「フルパワー! ポジトロンレーザー!バージョンF!!」

手加減無用の一撃が放たれました。

桜お姉ちゃんの一撃は、ぶらっくうぉーぐれいもんさんを飲み込み、そのまま崖の壁にぶつかります。

そして、その一撃は巨大な崖全体に罅を走らせ、一気に崩壊させました。

「なっ!? 桜!? いきなり何を!? しかも非殺傷を解除するなんて!?」

驚いたクロノ君が叫びました。

ですが、桜お姉ちゃんは焦りと恐怖を隠そうともせずに、

「逃げるわよ!!」

そう叫びました。

「さ、桜お姉ちゃん!?」

私は、桜お姉ちゃんが何故そう叫んだのかが分かりませんでした。

非殺傷解除のポジトロンレーザーを直撃させたら、いくらなんでも唯ではすまないと思うの。

でも、

「ブラックウォーグレイモン相手に、まともに戦って、勝てるわけないわよ!!」

桜お姉ちゃんがそう叫んで、私の手を掴むと、本当に逃げ出そうとしました。

「ちょ、桜お姉ちゃん!?」

私は慌てて引きとめようとしましたが、

「何処へ逃げるというのだ?」

そんな言葉と共に、瓦礫が吹き飛び、一瞬にしてぶらっくうぉーぐれいもんさんが私達の前に立ち塞がります。

「くっ……」

桜お姉ちゃんは、悔しそうな声を漏らしました。

驚く事に、ぶらっくうぉーぐれいもんさんは、無傷と言っていいほどダメージを受けていませんでした。

「如何いうわけか、貴様は俺の事を知っているようだな? 今の一撃も全く躊躇が無かった。 どうやら初めから効果が薄いと分かっていたな。 まあ、そいつらの豆鉄砲よりは遥かにマシだが」

ぶらっくうぉーぐれいもんさんは、桜お姉ちゃんからクロノ君たちに視線を移してそう言います。

「ならば、少しは骨があるか?」

ぶらっくうぉーぐれいもんさんは桜お姉ちゃんに視線を戻すと構えを取ります。

「さあ! 俺を楽しませろ!!」

そう叫ぶと、突っ込んできました。

桜お姉ちゃんは、私の手を引っ張り、その攻撃をかわします。

すると、

「なのは! フォーメーション対ブレイズ戦!!」

桜お姉ちゃんはそう叫びました。

「う、うん!」

私は、少し驚きましたが頷き、レイジングハートを構えます。

「おおおおっ!!」

ぶらっくうぉーぐれいもんさんが再び突っ込んできます。

今度はその攻撃を私達はギリギリまで引き付け、

『『Flash move.』』

高速移動魔法で左右それぞれに避けると、すかさず相手の後ろで合流し、デバイスのバスターモードとブラストモードを構えます。

「ダブル!」

「ポジトロン!」

「「レーザー!!」」

私はポジトロンレーザーを、桜お姉ちゃんは、ポジトロンレーザー・バージョンFを同時に放ちました。

2つの閃光はぶらっくうぉーぐれいもんさんに直撃、そのまま大地に叩きつけました。

魔力の爆発により、煙が辺りを覆います。

その時、

「「スティンガーブレイド! エクスキューションシフト!!」」

クロノ君とクライドさんの2人が、数百本の魔力刃を放ち、追い討ちをかけます。

「これなら少しぐらいは……」

クロノ君はそう呟きますが、

「淡い期待なんか持たない方が良いわよ。 よくて軽く殴られた程度のダメージじゃないかしら?」

桜お姉ちゃんがバッサリと切り捨てます。

「………桜。 君はあいつを知っているのか?」

クロノ君がそう問いかけました。

「……知識としては……だけどね」

桜お姉ちゃんはそう呟きながらも、全く油断はしていません。

すると、次の瞬間には、本当に殆どダメージを受けていないと思われるぶらっくうぉーぐれいもんさんが飛び出してきたの。

桜お姉ちゃんは、距離を取ろうとしますが、相手は猛スピードで一直線に向かってきます。

桜お姉ちゃんは、崖を背にするように動き、

『Flash move.』

再び高速移動魔法でその攻撃を避けました。

勢い余ったぶらっくうぉーぐれいもんさんは、そのまま崖に激突しました。

でも、その瞬間、私は絶句しました。

崖に一瞬にして罅が広がり、崩れます。

その幅は、先程桜お姉ちゃんがポジトロンレーザーで崩したものよりも大きかったのです。

という事は、ぶらっくうぉーぐれいもんさんの攻撃力は、私達の魔法よりも上だという事になります。

私が驚愕して、呆然となった一瞬でした。

「バカ! なのは! 危ない!」

桜お姉ちゃんがそう叫んだ瞬間、

「はぁああああっ!!」

崩れた崖の中から、ぶらっくうぉーぐれいもんさんが飛び出し、一瞬にして私の目の前にいました。

ユウ君のドラモンキラーと同じ形の武器が振り上げられます。

私は咄嗟の事で動く事が出来ません。

「なのは!!」

桜お姉ちゃんの悲痛な叫びが聞こえます。

そして、それが私に振り下ろされようとした瞬間、

『Blitz Rush.』

一瞬にして私は引っ張られ、その一撃から逃れる事が出来ました。

「なのは! 大丈夫!?」

私を助けてくれたのは、フェイトちゃんでした。

「フェイトちゃん!? 何でここに!?」

「私達も、エイミィに頼まれたんだ。 クロノ達を助けて欲しいって。 ユウは、姉さんやアリサたちが探してくれてる」

「そうなんだ………えっ? 私“達”?」

フェイトちゃんの言葉に、ちょっと気になったところがあり、そう聞き返したと同時、

「シャドーウイング!!」

火の鳥がぶらっくうぉーぐれいもんさんに直撃し、

「ハンマースパーーーーク!!」

電撃を纏った巨大なハンマーが叩き落しました。

「シグナムさん! ヴィータちゃん!」

シグナムさんとヴィータちゃんがいて、私がそう叫ぶと、

「響け! 終焉の笛! ラグナロク!!」

更に、巨大な砲撃が撃ち込まれました。

「はやてちゃん!!」

私が上を向くと、リインフォースさんとユニゾンしたはやてちゃんがいました。

「あたし等もいるよ!」

そう言って出てきたのは、アルフさん。

それに、シャマルさん、ザフィーラさん、ユーノ君がいました。

「みんな………」

私は思わず呟きます。

「なのは! 感動してる最中悪いけど、ブラックウォーグレイモンがあの位でやられる訳ないから、気を引き締めなさい!」

桜お姉ちゃんにそう言われます。

桜お姉ちゃんの言うとおり、ダメージを殆ど感じさせないぶらっくうぉーぐれいもんさんが煙の中から姿を現しました。

私達は、気を取り直して、ぶらっくうぉーぐれいもんさんに向き直った。






あとがき



やりたい放題やった第三十話の完成です。

一話で終わらせるつもりでしたが、収まりきらなかった。

いや~、こっちにも出てきましたブラックウォーグレイモン。

ちなみにコイツは、デジモンアドベンチャー02を見た事ある人なら分かると思いますが、チンロンモン登場の回から、VSウォーグレイモンの回に戻ってくるまでの間のブラックウォーグレイモンです。

にしても、自分のデジモン至上主義が浮き彫りになったなぁ………

でも、公式設定なら、完全体で核弾頭数発分の破壊力持ってますから、究極体は完全体の約10倍。

ってことは、軽く見積もって、核弾頭数十発分の破壊力を持つ計算になりますから………

なのはが好きな方には不満かもしれません。

でも、実際にアニメでも、なのははスターライトブレイカーでも海に水柱立てただけですが、ブラックウォーグレイモンは海割ってますし。

まあ、ともかく次も頑張ります。




[15302] 第三十一話(前編)
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2010/09/19 16:30


第三十一話 激突! 最強チートVS究極!!




【Side アリシア】




私達は、エイミィのお願いでユウを探していた。

公園や、近場の遊び場を探してみるけど、ユウの姿はない。

「あ~も~! ユウの奴何処に行ったのよ~~!」

アリサがそう声を上げる。

ユウの捜索には、私とアリサ、すずか、それにファリンも加わっている。

母様には、ユウの魔力反応を探してもらい、見つかったら連絡してくれる手筈になってる。

「アリサ、落ち着いて」

私はそう声をかける。

「でも、本当にユウ君何処に行ったんだろう?」

すずかがそう漏らす。

確かに、何時ものユウなら、出かけるなら出かけるで、行き先ぐらい伝えているはずなんだけど。

そのユウが、行き先も告げずにリニスと一緒に何処かに行く所なんて………

「あの、今日は、ユウ君にとって特別な日とかではないんですか?」

ファリンがそう聞いてきた。

「え?」

「私は、まだユウ君の事を良く知らないんですけど、今日はユウ君にとって特別な日だったりしないんでしょうか?」

もう一度ファリンがそう言った。

「今日って……1月25日だから………」

「誕生日だよね、ユウ君の」

私達はそう言う。

そう、今日はユウの誕生日であり、実はプレゼントとかも用意している。

「でも、誕生日だからって、誰にも言わずに行く所なんて………」

アリサがそう呟くが、私はユウの誕生日と聞いて、何か大事な事を忘れている気がした。

「アリシアちゃん? 如何したんですか?」

ファリンが考え込む私に気付いたのか、そう問いかけてきた。

「うん……ユウの誕生日に、とても大事な事があった気がするんだけど………」

私はそう呟く。

「ユウの誕生日に? すずか、心当たりある?」

「ううん、私には何も……」

2人には心当たりが無いらしい。

でも、絶対何かあった筈。

私は考え続ける。

ユウの誕生日……誕生日……誕生日………

その時、脳裏に閃く言葉があった。

『『誕生日おめでとう、ユウ』』

その言葉を思い出し、今日は何の日で、それと同時にユウの居場所も見当が付く。

「分かった!」

私は思わず叫んだ。

「ど、どうしたの? アリシア」

アリサがビックリした顔で問いかけてくる。

「ユウの居場所!」

「えっ? ど、どこなの?」

すずかが慌てた様子で尋ねてくる。

「お墓だよ!」

「「「えっ?」」」

私の言葉に、ユウが何故そんなところにいるのかと3人は首を傾げる。

「今日は、ユウの両親が死んじゃった日なんだよ!」

私はそう言うと、墓地へ向かって駆け出した。



墓地のある丘を登る道を駆け上っていく私達。

すると、逆にその坂を歩きながら降りてくるユウとリニスの姿があった。

思ったとおり、お墓の掃除やお墓参りをした後のようで、バケツを下げている。

「ユウ!」

私はユウに呼びかける。

すると、ユウは軽く驚いた表情になり、

「アリシア? アリサにすずかにファリンさんまで……一体如何したんだ?」

そう言って尋ねてくる。

すると、

「『一体如何したんだ?』じゃ、なーい!! アンタがほっつき歩いてる間に、なのは達が大ピンチになってるんだから!!」

アリサが突如叫んだ。

思わず耳を押さえる私達。

「ほ、ほっつき歩いてたわけじゃないんだが……って、なのは達がピンチってどういう事だよ!?」

驚くユウに私達は説明を開始した。




【Side Out】




【Side はやて】



アリサちゃん達がユウ君を探す間、私達が敵の足止めをするって事やったんやけど………

正直、ユウ君がおらんくても、私らが集まれば、敵を倒せるんやないかって思っとった。

でも……

「紫電一閃!!」

「ラケーテン!ハンマーーーーーッ!!」

シグナムとヴィータの2人が必殺の一撃とも言える攻撃を同時に繰り出す。

「フン!」

でも、相手は両手を上げて腕についている籠手で受けとめた。

普通なら防御されても、少しぐらい傷が付いたり、勢いで押す位してもいいんやけど、相手は微動だにしない。

しかも、その籠手には、傷もついていなかったんや。

「はぁっ!!」

相手はそのまま2人を弾き飛ばす。

「くっ……」

「うわっと」

2人は体勢を立て直して着地する。

その時、

「なっ!?」

相手はヴィータの目の前に接近していた。

「ヴィータ!」

私は思わず叫ぶ。

ユウ君のドラモンキラーと同じ形の武器が振り上げられる。

ヴィータは体勢が悪くて避けられそうにない。

でも、

「ヴィータ!」

ヴィータの目の前に、緑色の魔力障壁が3重に展開される。

相手の攻撃が、そのシールドに阻まれ、一瞬止まる。

「ッ!?」

ヴィータがその隙に飛び退く。

その瞬間、シールドが破られてつい一瞬前までヴィータがいた所にドラモンキラーが突き刺さった。

「す、すまねえユーノ」

ヴィータがシールドを張ってくれたユーノ君にお礼を言う。

でも、ユーノ君は険しい顔をしたまま、

「なのはのスターライトブレイカーも防げる強度があるのに……唯の攻撃が何て威力だ」

そう呟く。

その瞬間、

「「ダブルポジトロンレーザー!!」」

「エクストリームジハード!!」

桜色と白銀、金色の大砲撃が相手に撃ち込まれる。

相手はその砲撃に飲み込まれた。

でも、直ぐに平然として現れたんや。

相手の……えっと、桜ちゃんが呼んどった名は、ブラックうぇ~?……うぃ~…?

分からんからブラックさんや!

そのブラックさんが着てる鎧に傷一つ入ってないって、如何いう材質なんやろか?

「覇王拳!!」

「獣王拳!!」

ザフィーラとアルフさんが同時に攻撃する。

でも、ブラックさんは籠手を盾のように構えると、それだけで防ぎきった。

この場にいる全員は、シャマルの魔法でブーストがかかっとるはずなんやけど……

これだけの攻撃を受けても、全然ダメージが無いって如何いう事や!!

「ああっ! もうっ! 何て硬さだい!! 桜! アイツの鎧は一体何で出来てるんだい!?」

攻撃が効かない事にイライラしてたアルフさんが桜ちゃんに尋ねる。

流石に桜ちゃんもそんなトコまで知ってるわけ………

「アイツの鎧はクロンデジゾイドって言う金属で、簡単に言えば、ダイヤよりも遥かに硬いし、その金属で武器を作れば、ダイヤなんか簡単に破壊できる位の代物よ」

って、知ってるんかい!

「もう少し言えば、アイツにまともなダメージを与えたいなら、少なくとも核弾頭ぐらいの威力が必要なんだけど……」

桜ちゃんの言葉に私は驚いた。

核弾頭って、洒落にならんのやけど……

そんな事を思っていると、

「どうした? もう終わりか? だとしたら期待外れだったな」

ブラックさんはそう言う。

期待外れやったらこのまま見逃してほしいんやけど……

「俺はもう飽きたぞ……これで終わらせてやる!!」

ブラックさんはそう言うと、両手を頭上で合わせる。

そして、高速で回転を始めた。

それを見た桜ちゃんが、

「皆! 防御魔法を全開にしつつ、アイツから出来るだけ離れて!!」

そう叫んだ。

私達は、その忠告に従って、防御魔法を展開しながら、ブラックさんから離れようとしたんやけど……

「ブラック! トルネード!!」

回転していたブラックさんが見る見るうちに黒い竜巻となり、あたり一帯を吹き飛ばす。

その暴風に私達は巻き込まれた。

「「「「「きゃぁあああああああっ!!?」」」」」

「「「「「うぁあああああああああっ!?」」」」」

私を含めて、皆が吹き飛ばされる。

多分、防御魔法を発動させてなかったら、風圧だけでもズタズタにされていたのかも知れない。

そのまま全員は、地面や崖に叩きつけられた。

「あうっ………つ~~~……」

私は、痛む頭を押さえながら、起き上がろうとしたんやけど……

『主!!』

ユニゾンしてるリインフォースが叫ぶ。

その声に顔を上げると、目の前には、ドラモンキラーを振り上げるブラックさんが……

私がその瞬間思ったことは、「アカン、私死んだ」だった。

私は、思わず目を瞑った。

その一瞬がとても長く感じて…………

――ガキィィィィン!

突然金属音が響き渡った。

その音に眼を開けると………

私に襲い掛かろうとしていた黒いドラモンキラーを、横から割り込んで止める黄金のドラモンキラーが受け止めていた。




【Side Out】





あっぶっね~~~~~!!

無茶苦茶ギリギリではやてへの攻撃を、俺は左手のドラモンキラーで受け止めることに成功した。

つ~か、何でブラックウォーグレイモンがいるんだよ!!??

俺はそう思ったが、とりあえず右腕を振りかぶり、

「ドラモンキラー!!」

ブラックウォーグレイモンに、手加減無用の一撃を叩き込んだ。

もちろん非殺傷解除済み。

吹っ飛んでいくブラックウォーグレイモン。

崖に激突し、瓦礫に埋まった。

「はやて! リインフォース! 大丈夫か!?」

俺は、そう声をかける。

「ユ、ユウ君……」

はやては、ボロボロの姿で、俺の名を呟く。

「すまん……俺が遅れた所為で……」

俺はそう謝る。

そして、俺は周りを見渡す。

致命傷は無い様だが、ボロボロの姿のなのは達。

普段の俺なら本物のブラックウォーグレイモンと戦う事など、全力で拒否する筈だ。

だが、ボロボロな皆の姿を見ていると、無性に腹が立ってくる。

ブラックウォーグレイモンが瓦礫を吹き飛ばして姿を見せた。

「フッ……今度こそ、少しは骨のありそうな奴が来たな……」

ブラックウォーグレイモンは、嬉しそうな声で呟いた。

「…………ブラックウォーグレイモン」

俺は相手の名を呟く。

「貴様も俺を知っているか……ならば、俺が如何いった存在かも知っているな?」

「……ああ」

俺は、ブラックウォーグレイモンの問いにただ頷いた。

「そうか………ならば、貴様は俺を如何する?」

ブラックウォーグレイモンはそう問いかけてきた。

だから俺は……

「知らん」

そう答えた。

「何だと?」

俺の答えに、ブラックウォーグレイモンは呆気に取られた声を漏らす。

「お前が世界の安定を崩す存在だろうが、幾つ世界を滅ぼそうが俺は知らん。 俺の周りに火の粉が降りかからなけりゃ、誰が何処で何しようが如何でもいい。 俺の知らないところの出来事なんて、俺には関係ない。 第一、俺にはアンタの存在や行動を否定する権利も無ければする気もない。 いや、誰かの存在を否定する権利なんて、何処の誰にも有りはしないか………」

「……………」

ブラックウォーグレイモンは、黙って俺の話を聞いている。

「………けどな! お前はこいつ等を………俺の大切な奴らを傷つけた! 今、俺はその事が無性に腹が立って仕方がない! だから、俺はお前をぶっ飛ばす!!」

俺は、ブラックウォーグレイモンにドラモンキラーを突きつける。

すると、

「……クック………ハッハハハハハハ!」

ブラックウォーグレイモンは突然笑い声を上げた。

「ククク……ならば、貴様は世界の為などではなく、自分の感情のみで戦うという事か?」

ブラックウォーグレイモンは、笑いが混じる言葉で問いかけてくる。

「ああ。 俺は自己中心的な人間なんだ。 簡単に言えば、どこぞの知らない世界の100や200の命運より、俺は、こいつ等の方が大切なんだよ。 まあ、こいつ等はそんな事は望んで無いだろうけど……こいつらが傷つくのは俺が嫌だからな。 一言でいえば、俺は自分の為に戦っているんだ!!」

俺は皆を見渡してそう言った。

「クックック……幾つもの世界を回ってきたが、俺に立ち向かってきた奴らは、世界の為だの何だのいう奴ばかりだったからな……貴様のような奴は初めてだ……なる程……自分の為に戦う……か」

ブラックウォーグレイモンは、そう呟くと身構える。

そして、嬉しそうな表情で俺を見て、

「貴様は今迄で一番楽しめそうだ! さあ! お前の力を見せてみろっ!!」

ブラックウォーグレイモンは、そう叫びながら突っ込んでくる。

「うぉおおおおおおおおおおっ!!」

俺は真正面から受けて立った。






【Side 桜】




私が気がついた時、

「うぉおおおおおっ!!」

「はぁあああああっ!!」

黄金と黒が激突を繰り返していた。

「ユウ……」

私は、黄金の影がユウだという事は一目で分かった。

私は不安な気持ちで、ユウとブラックウォーグレイモンの戦いを見上げる。

その時、

「桜! 無事か!?」

その声に振り向くと、クロノが駆け寄ってきた。

「クロノ……ええ、私は大丈夫よ」

私はそう答える。

見れば他の皆も集まっていて、ボロボロだが酷い怪我はないようだった。

クロノは2人の戦いを見上げる。

「それにしても流石はユウだな。 僕達が束になっても敵わなかった相手に互角に渡り合ってる」

クロノはそう漏らす。

「おお。 流石はユウだぜ!」

ヴィータもそれに同意した。

でも、

「……………」

私は分かっていた。

この戦いは互角なんかじゃないって。

その時、

「ドラモン!」

「キラー!!」

――ドゴォォォォォッ!!

2人が真正面からドラモンキラーをぶつけ合う。

凄まじい衝撃が辺りを襲った。

2人は一瞬拮抗したが、

「フン!!」

「ぐあっ!」

ブラックウォーグレイモンが腕を振りぬき、ユウが弾き飛ばされる。

「そんなっ!?」

「ユウが……力負けしただと!?」

なのはとシグナムが信じられないといった声を漏らした。

「ユ、ユウ……手加減してるのかな?」

フェイトが不安そうにそう呟くが、

「そんなわけないわよ。 ユウは、ブラックウォーグレイモンの強さはよく分かってる筈だし」

私はそう言った。

「じゃ、じゃあ、何でユウ君が力負けするんや!?」

はやてが叫ぶ。

その言葉に、

「そんなの簡単よ。 単純に、基本的なポテンシャルが、ユウよりブラックウォーグレイモンの方が上回ってるからよ」

私は事実を突きつける。

その時、

「ブラックトルネード!!」

ブラックウォーグレイモンが、両手のドラモンキラーを頭上で合わせて高速回転。

黒い竜巻となって、ユウに突撃する。

対するユウは、

「ブレイブトルネード!!」

黄金の竜巻となって、黒い竜巻に立ち向かった。

黄金と黒の竜巻は、空中で何度も交差し、最後に真正面からぶつかり合う。

2つの竜巻は混ざり合い、1つの巨大な竜巻となった。

その竜巻の中で、幾度も閃光が走り、竜巻の中で2人が激しい戦いを繰り広げているのが分かる。

「が、頑張って……ユウ君……」

シャマルが祈るように呟く。

だが、

――ドゴォ!

竜巻の中から、1つの影が飛び出すように吹き飛ばされた。

その影は地面に叩きつけられ、100m近く地面を抉るように滑った。

「い、今のは!?」

ユーノが叫ぶ。

余りにも一瞬の事で、その影がどちらか判断はつかなかったけど、吹き飛ばされた方はおそらく………

竜巻が収束し、その中からもう1つの影が姿を現す。

それは、

「あ……そ、そんな………」

フェイトが思わず声を漏らす。

竜巻の中から現れたのは、私の思ったとおりブラックウォーグレイモン。

「………ユ、ユウく……!」

なのはが思わずユウの名を叫び……

「グレイスクロスフリーザー!!」

瞬間、砂煙を切り裂き、無数のミサイルがブラックウォーグレイモンを襲った。

「何っ!?」

ブラックウォーグレイモンは、驚愕の声を上げる。

それでも、ミサイルを避ける為に、回避行動を取る。

でも、ミサイルの全ては誘導性能を持っており、その全てをかわし切れる物じゃない。

「くっ!」

ミサイルの一発がブラックウォーグレイモンの腕に当たり、その部分を凍らせる。

それでも、表面上が凍っただけなので、ブラックウォーグレイモンの力があれば凍った部分を砕くのも容易いこと。

けど、ブラックウォーグレイモンの動きは一瞬鈍る。

その瞬間を狙って、他のミサイルが殺到した。

「ぐあっ!」

次々に着弾するミサイル。

ブラックウォーグレイモンは、身体の半分以上が凍りつき、僅かだが身動きが取れない状態になる。

その瞬間、砂煙の中からアイシクルのバリアジャケットを纏ったユウが飛び出し、

「コキュートスブレス!!」

両手から凄まじい冷気を放った。

コキュートスブレスは、身動きの出来ないブラックウォーグレイモンに直撃し、身体全てを凍りつかせた。

更にユウが右手を前に突き出すと、その手にミサイルランチャーのようなものが具現される。

「ガルルトマホーク!!」

ユウは、そのミサイルランチャーから、今までのミサイルよりも、遥かに大きなミサイルを発射した。

ミサイルは一直線に突き進み、

――ドゴォォォォォン!!

凍ったブラックウォーグレイモンに直撃し、爆発を起こした。

爆煙の中から、落下していくブラックウォーグレイモン。

だが、地面に激突する前に体勢を立て直し、上手く地面に着地する。

でも、そこでブラックウォーグレイモンは膝をついた。

「ぐうっ! やるな……今のは効いたぞ」

ブラックウォーグレイモンはそう言う。

それを聞いたはやては、

「流石ユウ君や! 私達で全然ダメージ与えられんかった相手に、ああも簡単にダメージ与えるなんて!」

そう喜びの声を上げ、

「ユウ君がんばれー!!」

「ユウ! その調子!!」

なのはやフェイトも声援を送る。

でも、逆に言えば、アイシクルの形態の最強ランクの攻撃3連撃であの程度のダメージって事なんだけど……

ブラックウォーグレイモンは立ち上がると、

「だが、戦いはこうでなくては面白くない!! さあ! もっと俺を楽しませろ!!」

ブラックウォーグレイモンは嬉しそうにそう叫ぶ。

「ブレイズ!」

ユウは、バリアジャケットをブレイズに変更する。

すると、ブラックウォーグレイモンは両手に負のエネルギーを集中させ、赤いエネルギー球を作り出す。

「くっ!」

ユウも、同じように魔力を集中させて、黄金の魔力球を作り出す。

そして、

「「ガイアフォーーーーーース!!」」

2つのガイアフォースが同時に放たれた。

2人の中央でぶつかり合うガイアフォース。

凄まじい衝撃が走り、その衝撃は、かなり離れている私達も必死で耐えなければ吹き飛ばされてしまうほどの物だった。

一瞬、暫く拮抗するかに思えたけど、

「はぁああああっ!!」

ブラックウォーグレイモンが気合を込めると、赤いガイアフォースが黄金のガイアフォースを撃ち破った。

そのまま赤いガイアフォースは、一直線にユウに向かう。

「くぅ! ブレイブシールド!!」

避けきれないと判断したユウは、背中のブレイブシールドを使って防御する。

ブラックウォーグレイモンのガイアフォースが、ユウのブレイブシールドに接触する。

「ぐうぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

ユウのガイアフォースで幾分か減衰しているにも拘らず、ユウは赤いガイアフォースに押され続ける。

「うぐっ! うおぉぉぉぉぉぉぉっ!」

数百メートル押された所で、

「だぁあああああああっ!!」

ユウは何とかガイアフォースを受け流す。

ガイアフォースは、軌道を変えられ、ユウの後方の遥か空へと消える。

「はぁ……はぁ……」

ユウはかなり消耗していた。

ブレイブシールドも罅だらけだ。

「バカな……ユウのガイアフォースを撃ち破った挙げ句、ユウでも受け流すのが精一杯だと……!?」

シグナムが驚愕の声を漏らす。

でも、ユウのガイアフォースが負けるのもある意味当然。

ユウは、あくまでウォーグレイモンの技を模したもの。

いわば、猿真似の技だ。

そんな猿真似が本物に通じるわけがない。

ユウも、その事は分かっているようで、技が負けたこと自体にショックを受けている様子はない。

でも、このまま行ってもジリ貧で、結果は見えている。

長期戦は不利。

それなら……

私がそう考えていた瞬間、ユウから虹色の魔力光の柱が立ち上る。

その中から現れたのは、オメガフォームを纏ったユウ。

ユウも私と同じ事を考えていたようだ。

長期戦で勝ち目が無いなら、短期決戦で一気に決めるしかない。

それでも賭けに変わりはないけど。

すると、ユウは左手を振って、グレイソードを構える。

それを見て、ブラックウォーグレイモンも身構えた。

ユウは、一気に地面を蹴り、

「うぉおおおおおおっ!!」

ブラックウォーグレイモンに斬りかかった。



[15302] 第三十一話(後編)
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2010/09/19 16:34







【Side 桜】













「うぉおおおおおおっ!!」

ブラックウォーグレイモンに斬りかかった。

「おおおおおおっ!!」

ブラックウォーグレイモンも、ドラモンキラーを突き出す。

――ガキィィィィン!!

グレイソードとドラモンキラーがぶつかり合い、激しい火花を散らす。

だが、先程のように簡単に押し負けたりしない。

「はぁあああああっ!!」

「うぉおおおおおっ!!」

――ガキィ! ギィン! ガキッ! ガキィン!

グレイソードとドラモンキラーの激しい応酬が繰り返される。

その一発一発は、私達にとっては正に必殺の威力を持っている。

その時、

――ガキィィィィン!!

お互いの渾身の一撃がぶつかり合い、互いに吹き飛ばされ間合いが開く。

ユウはその勢いに逆らわずに回転、流れるような動きで右腕をブラックウォーグレイモンに向けると同時に砲身を展開する。

でも、それと同時にブラックウォーグレイモンもガイアフォースを放てる状態に入っていた。

「ガイアフォーーーース!!」

ブラックウォーグレイモンは、赤いガイアフォースを放ち、

「ガルルキャノン!!」

ユウは右腕の砲身から、圧縮された魔力弾を放った。

ガイアフォースとガルルキャノンがぶつかり合い、

――ドゴォォォォォォォン!!

ユウの方がやや押されはしたものの、何とか相殺する事に成功する。

すると、

「はぁああああっ!!」

ユウは間髪いれず、2発目のガルルキャノンを放った。

2発目のガルルキャノンは、相殺時の爆煙を吹き飛ばし、ブラックウォーグレイモンへ直進する。

「何っ!?」

ブラックウォーグレイモンは、驚愕の声を漏らし、

――ドゴォオオオオオオオン!!!

ガルルキャノンの爆発に呑まれた。

「よっしゃ! 直撃だぜ!!」

ヴィータが声を上げる。

確かに見た限りでは直撃した。

でも、煙が晴れてくると、

「あっ……」

フェイトが声を漏らした。

「防がれたか……」

ザフィーラが呟く。

ザフィーラの言った通り、ブラックウォーグレイモンは背中のブラックシールドを前面に構えて盾にしていた。

ブラックウォーグレイモンは、シールドを背中に戻すと、

「今のは直撃していれば危ない所だったぞ。 やはり貴様は最高だ!」

自分が危険だったという発言ながら、嬉しそうに叫ぶブラックウォーグレイモン。

ブラックウォーグレイモンは、再び構えてユウに突っ込んでいく。

ユウも、グレイソードで迎え撃った。

「うぉおおおおおっ!!」

「はぁあああああっ!!」

――ギィン! ガキィ! ギギィン! ガキキィン!

再び繰り広げられる激しい剣戟。

正に、一進一退の攻防。

すると、ドラモンキラーを弾いたユウが、突然マントを翻した。

「むっ!?」

それによって、ブラックウォーグレイモンの視界が一時的に塞がれる。

そして、マントが通り過ぎた時、ブラックウォーグレイモンの視線の先にユウはいなかった。

「なっ!?」

ユウの姿が消えたことに、一瞬動揺するブラックウォーグレイモン。

その時、ユウはマントを翻した時にできた死角を利用して、ブラックウォーグレイモンの上にいた。

グレイソードに魔力を通し、激しい炎を纏っている。

ブラックウォーグレイモンも、そこでユウに気付く。

「グレイソードッ!!!」

ユウは渾身の斬撃を放つ。

対するブラックウォーグレイモンは、瞬時にブラックシールドを展開した。

――ガキィィィィィィィィィィィィィン!!

グレイソードとブラックシールドは激しい火花を散らすが、ブラックシールドには傷が付くだけで砕けそうにない。

「はぁあああっ!!」

ブラックウォーグレイモンの蹴りが、ユウの腹部に叩き込まれる。

「がはぁっ!!」

ユウは苦しそうな声を上げた。

オメガフォームでも、究極体の攻撃力は防ぎきれない。

っていうか、ユウって聖王の血を継いでるから、聖王の鎧も持ってる筈じゃ………

バリアジャケット+聖王の鎧の防御力を唯の蹴りでぶち破るって、やっぱり究極体の攻撃力はシャレにならないわね。

ユウは吹き飛ばされるも、腹部を押さえながら体勢を立て直す。

グレイソードは、攻撃力だけならガルルキャノン以上の筈。

それでもブラックシールドを破れないとなると、かなりヤバイ。

「ふう…………」

ユウは、一度、息を吐く。

そして、再びブラックウォーグレイモンを見据えた。

その眼は何かを狙っている。

すると、ユウは展開していたグレイソードとガルルキャノンを戻した。

「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」

その行動に、思わず声を漏らす私達。

でも、

「はあっ!!」

ユウが気合を入れると、左手のウォーグレイモンの頭を模した手甲に激しい炎が、右手のメタルガルルモンの頭を模した手甲に凄まじい冷気が発生する。

そして次の瞬間、ユウは一直線にブラックウォーグレイモンに突撃した。

ブラックウォーグレイモンは、ブラックシールドを構える。

でも、それに構わずユウは左手を振りかぶる。

「ダブルッ!!」

炎を纏った左手を、ブラックシールドに叩き込む。

「うぉおおっ!?」

ブラックウォーグレイモンは、思った以上の威力に声を漏らす。

だが、炎を纏った一撃も、ブラックシールドに熱を持たせるだけで破れそうにない。

少しの間炎を纏った一撃を繰り出し続けていたが、今度は冷気を纏った右手を振りかぶる。

「トレントォッ!!」

そのまま左腕を引くと同時に冷気を纏った右腕を叩き込んだ。

「ぐおっ!?」

その冷気は、ブラックシールドを凍りつかせる。

しかし、シールドは砕けず、冷気もブラックウォーグレイモン自身には届いていない。

でも、右腕を叩き込んだ反動でユウがブラックウォーグレイモンから離れる瞬間、ガルルキャノンを展開する。

「ガルルキャノン!!」

至近距離からガルルキャノンを放った。

爆発に呑まれる2人。

すると、ユウは爆煙の中から飛び出してきて、吹き飛ばされながらも地面に着地する。

ユウは、至近距離でガルルキャノンを放ったため、爆風で少しダメージを負ったようだった。

一方、ブラックウォーグレイモンは、

「くっ………捨て身の攻撃とは……」

これといってダメージを受けていないように思えた。

「惜しかったな……だが……」

そうブラックウォーグレイモンが続けようとした所で、

――ピシッ

ブラックシールドに罅が入る。

「何っ!?」

――ピシピシッ

罅がシールド全体に広がる。

そして、

――バキィィィィン

ブラックシールドは粉々に砕け散った。

「バカなっ!?」

ブラックウォーグレイモンは驚愕する。

「……ダメージが蓄積していたのか?」

それを見ていたシグナムがそう漏らすが、

「いや、それだったら今まで罅が入らなかったことはおかしい」

クライドさんが否定する。

そこで、私は気付いた。

「分かった! 急激な温度変化よ!」

私はそう言う。

「なる程、先程の攻撃の狙いはそれか!」

クロノは、私が言った言葉に納得し、頷きながらそう言った。

「「「え?」」」

なのは、フェイト、はやてが何で?といった声を漏らす。

「簡単に言えば、急激な温度変化を与えると、物質は脆くなるのよ。 つまり、ユウはさっきの攻撃でブラックシールドに急激な温度変化を与えて脆くしてから、ガルルキャノンで砕いたって事よ」

私の説明で納得したのか、3人は頷く。

すると、

「ククク………いいぞ……ここまで俺を追い詰めたのはあいつ等以来だ………」

ブラックウォーグレイモンは不適な笑みを零す。

っていうか、あっちも追い詰められてるはずなのに笑えるって事は、シグナムもビックリのバトルマニアよね……

「おおおおおおっ!!」

ブラックウォーグレイモンはユウに襲い掛かる。

――ガキィ!

「なっ!?」

ユウは、グレイソードで防ごうとしたが、右腕のドラモンキラーの一撃で防御した左腕が弾かれる。

「はぁああああっ!」

そのまま、ブラックウォーグレイモンは左手のドラモンキラーを突き出す。

「ぐああっ!!」

ユウは咄嗟に飛び退いて、直撃は避けたが、ドラモンキラーが繰り出された時に衝撃波が起こり、それによって吹き飛ばされる。

更に、ブラックウォーグレイモンはユウに追撃をかけていた。

吹き飛ばされている最中のユウの目の前に一瞬で移動し、

「うぉおおおおおっ!!」

渾身の蹴りが叩き込まれる。

「がはぁっ!!」

ユウは地面が陥没するほどの威力で、地面に叩き付けられた。

「ユウ君!!」

「いやぁ!」

なのはとフェイトが悲鳴を上げる。

ブラックウォーグレイモンは、更に追撃をかけようとした所で、

――ザンッ!

「ぐあっ!?」

一筋の閃光が走り、ブラックウォーグレイモンの胸当てを破り、ブラックウォーグレイモンの身体に傷を付けた。

ブラックウォーグレイモンは、胸に手を当てながら飛び退く。

ユウが立ち上がる。

その姿は、白き長剣を持ったパラディンモード。

「はぁ……はぁ……」

ユウは肩で息をしている。

「ったくよぉ……こうなったら! とことんやってやらぁ!!!」

ユウはヤケクソ気味にそう叫んだ。

ユウはオメガソードを振りかぶり、ブラックウォーグレイモンに突っ込み、

「そうだ! かかって来い!!」

ブラックウォーグレイモンも嬉しそうに叫びながらユウを迎え撃った。








【Side Out】





































あれから暫く戦い続け、現在は、なのは達からかなりはなれた場所で、俺達は仲良くぶっ倒れていた。

「フフフ……まさか人間相手にここまで楽しめるとはな……」

ブラックウォーグレイモンはそう呟く。

「そうかよ……俺は死ぬかと思ったぞ……」

俺はそう呟き、今更ながら究極体に喧嘩を売るという、とんでもなく恐ろしい事をしていたという事を実感していた。

いや、マジで如何してたんだろうな俺は?

俺がそう思っていると、

「1つ聞きたい」

ブラックウォーグレイモンがそう聞いてくる。

「何だ?」

俺がそう聞き返すと、

「お前は、この俺の存在に意味が有ると思うか?」

そう問いかけてきた。

だから俺は、

「さあな。 俺に聞かないでくれ。 存在に意味があるかどうかは自分自身が決める事だ」

そう答える。

「お前もそう思うか……」

ブラックウォーグレイモンはそう呟く。

「ま、後は、お前を生み出した存在ぐらいだろう。 その問いに答えられるのは」

俺はそう付け足した。

「俺を生み出した存在……奴は……」

「アルケニモンとマミーモンか?」

ブラックウォーグレイモンの言葉の途中でそう尋ねる。

「そこまで知っているのか?」

ブラックウォーグレイモンは、軽く驚いた口調でそう漏らす。

「何で知っているのかは聞くなよ。 ともかく、アルケニモンとマミーモンだが、そいつらも、とある人間によって人工的に生み出されたデジモンだ」

「なんだと!?」

流石のブラックウォーグレイモンも、その事実には驚いたようだ。

「それが本当なら!」

「ああ、お前を生み出した本当の黒幕って事になるな」

ブラックウォーグレイモンの言葉に、俺はそう答える。

すると、ブラックウォーグレイモンは立ち上がる。

「礼を言うぞ……」

ブラックウォーグレイモンはそう呟き、空を見上げる。

「行くのか?」

俺はそう問いかけた。

「ああ。 俺はあの世界へ戻る。 そして確認しなければならない。 その人間に俺を生み出した本当の理由を……」

「そうか………」

すると、ブラックウォーグレイモンは飛び立つ。

そして、ブラックウォーグレイモンの周りの空間が歪んでいき、ブラックウォーグレイモンはこの世界から消えた。

「………がんばれよ」

俺は、ブラックウォーグレイモンが消えた空に向かってそう呟いた。

そして俺は、この後にクロノに突っ込まれる事を予想しながら、どうやって説明するかを考えるのだった。







あとがき


やりたい放題やった三十一話の完成です。

いや~書き始めたら筆が進む進む。

気付いたら、2話分に匹敵する文章量になってました。

しかも、クロノ達への説明もまだだし。

返信で、空白期は10話以内で終わるだろうと書きましたが、このペースでは終わりません。

申し訳ない。

とりあえず、ブラックウォーグレイモンとユウのバトルはこんなもんで如何ですかね。

あと、最後にブラックウォーグレイモンにアルケニモンとマミーモンの事を話しましたが、デジアド02で再登場した際、何故かブラックウォーグレイモンは及川の事を知っているような口振りだったので、ここで教えておけば02のストーリーにも矛盾が出ないと思ったので………

ユウは試行錯誤の上全力を出し切って何とか究極体と渡り合える位です。

最強主人公をも上回るデジモン究極体。

自分のデジモン至上主義がここまでとは。

とりあえず、本物のデジモンが出るのはここだけの予定です。

では、次回も頑張ります。





[15302] 第三十二話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2010/11/07 14:58
第三十二話 第2回、翠屋尋問会



え~、ただ今俺は、翠屋でバインドに縛られて椅子に座らされている。

俺の横には、桜が俺と同じようにバインドに縛られて座らされていた。

普段なら、俺はいくらバインドで縛られようと力尽くで振り解く事が出来るのだが、生憎今は、ブラックウォーグレイモンとの戦闘で、魔力がスッカラカンである。

桜にしても、同レベル以上の魔導師であるクロノとリンディさんにかけられたバインドでは振り解く事は不可能。

そして現在、翠屋の入り口には、『貸切』の看板がかけられており、店内には、高町家の人々は勿論の事、テスタロッサ家、八神家、ハラオウン家、そして何故か月村家+アリサが、全員集合していた。

すると、

「では、これより第2回、翠屋尋問会を始めます」

リンディさんがそう宣言する。

因みに、第1回は俺の真実暴露だそうだ。(第十三話参照)

とりあえず、俺は口を開いた。

「お~い、何で俺達は縛られてるんだ?」

その質問に、

「君達は今回の相手について何か知っているようだったからな。 多分、君のことだから縛っておかないと逃げると思って」

クロノがそう答えた。

まあ、その通りだが。

「翠屋でやる理由は?」

俺が、もう1つ質問すると、

「君達の場合、無理矢理に聞きだすよりも、君達の家族や知り合いから『お願い』された方が効果的だからだ」

こちらの質問も、迷いなく答えてくれました。

「……それで、聞きたいことって?」

桜がそう尋ねると、

「言わなくても分かってると思うが、今回戦ったあの相手についてだ。 管理局のデータベースでも調べたが、あのような生物と遭遇した記録など一度もない。 念の為、この場の全員にも尋ねたが、知っている人は誰もいなかった」

まあ、当然だろう。

「だが、何故か君達2人はあの相手の名前を知っていた。 特にユウは、ブレイズのバリアジャケットと魔法が、相手の姿かたちと使った能力に類似点が多すぎる。 言い逃れは出来ないぞ」

クロノはそう言ってくる。

俺は、桜と顔を見合わせた。

(如何する?)

俺は、念話で桜に呼びかける。

(……まあ、いいんじゃないの。 話しちゃって。 別に絶対に黙ってなきゃいけないって事はないんだし。 信じてくれるかどうかは知らないけど)

桜はそう答えた。

俺はクロノに向き直ると、

「別に話してもいいけどさ、絶対に信じてくれないと思うぞ?」

俺はそう言う。

すると、

「それを判断するのは僕達だ」

クロノはそう言った。

俺はため息を吐き、

「簡単に言えば、ブラックウォーグレイモンは、俺達が前世で見てたアニメに出てきたキャラクターだ」

要点だけを纏めて一言でそう言った。

「「「「「「「「「「…………………」」」」」」」」」」

全員が一旦黙り込み、

「「「「「「「「「「はぁああああああああっ!?」」」」」」」」」」

一斉に叫んだ。

まあ、そうなるのは当然だな。

「ちょっと待て! 言いたい事は沢山あるが、先ず1つ。 前世ってどういう事だ!?」

クロノが叫ぶように問いかけてくる。

「言った通りだ。 高町家の人は知ってるけど、俺と桜は前世の記憶……つまり、この世界に生まれてくる前に、違う人間として生きてきた記憶があるんだ」

俺はそう言う。

「ちょ、ちょっとなのは! 知ってたって本当なの!?」

アリサが叫びながらなのはに詰め寄る。

「う、うん……」

なのはは、なんとか頷く。

「因みに死んだ歳は26歳だ」

俺はそう言い、

「私は25ね」

桜もそう答える。

「「「「「「「「「「…………………」」」」」」」」」」

高町家以外の人達が呆気に取られる。

「2人の言っている事は本当ですよ。 少なくとも、ユウは嘘は言っていません」

リニスがそう補足する。

リニスは俺とリンクが繋がってるから、嘘かどうかぐらいの判断はつく。

まあそれは別にしても、リニスは全部知ってるからな。

アニメ云々も含めて。

「……でも、それが本当なら、ユウ君が昔から大人びていた事にも説明がつくし、初めて桜さんと話したときに、同年代と会話してるような錯覚を感じた事も納得出来るわ」

リンディさんがそう言う。

「……まあいい。 仮にその話が本当だったとして、その次の話は………」

クロノが、そう続ける。

「それも本当よ。 こっちの世界じゃやってないけど、ブラックウォーグレイモンは前世で見てたアニメのキャラクターよ。 何でこの世界に現れたのかは知らないけど。 あ、そういえばブラックウォーグレイモンって、次元の壁を越える能力があったっけ」

桜がそう言った。

「それに、俺のバリアジャケットや魔法がブラックウォーグレイモンとそっくりなのも当然だ。 俺の魔法は、その前世で見てたアニメの同シリーズに出てたブラックウォーグレイモンの同種族のウォーグレイモンをモチーフにしたものだからな」

俺は序にそう言う。

「「「「「「「「「「…………………」」」」」」」」」」

全員言葉が出てこないらしい。

余りにもアホらしいからだろうが。

「とりあえず、俺達がブラックウォーグレイモンを知ってる理由はこれだけだぞ」

俺はそう言っておく。

「いや、しかし、アニメのキャラクターと言われてもだな………そんなことがありえるわけが……」

クロノがそう呟く。

暫く全員が黙っていたが、

「ふむ、ならば、この世界も君達にとってはアニメの世界じゃないのかな?」

クライドさんが呟いた言葉に、俺と桜は思わずクライドさんの方に顔を向けた。

「と、父さん!? 何でそんな事!?」

クロノが思わず呼びかける。

「いや、ユウ君と桜ちゃんは、何かと先読みが出来すぎてる気がしていたんだ。 ジュエルシード事件の事は詳しくは知らないが、この前起こった闇の書事件。 管理局でも知らなかった闇の書の真実を知っており、それでいて、暴走状態に入った闇の書の管制人格の能力も予想が的確すぎていた。 それで、もしかしたらと思ってカマをかけてみたんだけど、その2人の反応を察するに、どうやら図星だったみたいだね」

クライドさんの言葉に、俺と桜は拙ったと思った。

アニメ云々の話は喋るつもりは無かったのだ。

全員の視線が俺と桜に集中する。

「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

その視線に、俺達が耐え切れるはずも無く、洗いざらい吐かされる事になった。






俺達が話し終えると、

「わ、私が主人公なの~~~!?」

なのはが驚きで声を上げ、

「私がリンディさんの養子に………」

フェイトは、驚きながらそう呟き、

「リインフォースは助からんかったのか……」

はやては落ち込んでいた。

更には、

「わ、私って死んでるんだ………」

自分が死んでいると聞き、落ち込むアリシアと、

「わ、私がフェイトを鞭で叩いて………その上家庭崩壊なんて…………」

それ以上に落ち込んでいるプレシアさんの姿。

見事なorzです。

「クライドさんは落ち込まないんですね」

平気な顔をしてるクライドさんにそう尋ねる。

「ああ。 私自身こうしていられるのは運が良かっただけだし、何より、それは違う世界の出来事なんだろ?」

クライドさんはそう言った。

どうやら割り切っている模様。

「違う世界で思い出したけど、アニメのリリカルなのはには、元になったゲームがあったわね」

桜が突然そう言った。

「ああ、とらハ3か」

俺は頷くように呟く。

「あ、ユウも知ってたの? 私は話に聞いてたぐらいで殆ど知らないんだけど………」

「まあ、中途半端だが、やった事もあるし」

俺がそう言うと、

「ほう……どういうゲームなんだ?」

恭也さんがそう尋ねてくる。

だから俺は、

「恭也さんが主役の、じゅ………アドベンチャーゲームです」

あっぶねー危うく十八禁ゲームと言いそうになった。

「お、俺が主役か?」

恭也さんは若干焦った表情を見せた。

すると、俺の発言に食い付いた人物がいた。

「ねえねえ! その話もっと詳しく聞かせてよ!」

忍さんである。

「アドベンチャーゲームってことは、ヒロインは? 私? それとも他にいるの?」

忍さんは興味津々に問いかけてくる。

「え~っと……とりあえずヒロインは複数いまして、選択肢によってその中の誰か1人を選び、それによってストーリーが変わってくるタイプのゲームです」

俺は、忍さんの雰囲気に押され、そう言ってしまう。

「ほうほう………で、ヒロイン候補は?」

忍さんがそう聞いてくる。

「おい、忍」

恭也さんが忍さんを止めようとするが、

「いいじゃない。 別の世界の恭也に興味あるし。 で、誰?」

忍さんは恭也さんを黙らせ、再び俺に問いかけてくる。

「え~、ヒロインは、忍さんは勿論の事、歌姫のフィアッセ・クリステラ。 ドジでおっちょこちょいな巫女、神咲 那美。 明るく元気な空手娘の城島 晶。 関西弁の日中ハーフのレンこと、鳳 蓮飛。 ノエルさんも一応ヒロイン候補でしたし……あ、あと美由希さんもですね」

「ええっ! わ、私も!?」

美由希さんが顔を真っ赤にして驚く。

その瞬間、冷たい視線が恭也さんに集中した。

その視線に焦る恭也さん。

「ちょ、ちょっと待て! それはゲームの話だろ!? それに美由希は……!」

いい感じに恭也さんが焦っていたので、

「あはは。 まあ、そのゲームの設定では、美由希さんは、恭也さんの本当の妹じゃ無いんです。 その美由希さんは、士郎さんの妹の美沙斗さんっていう人の娘で、恭也さんとは従兄妹同士って設定……です………」

俺が笑って説明しようとした所、士郎さん達が、驚愕の目で俺を見ていたので、思わず語尾が小さくなる。

「ユウ君」

「は、はい」

士郎さんの言葉に、俺は思わず返事をする。

「つかぬ事を聞くが、その美由希の父親の名は分かるかい?」

「え、え~っと………た、たしか静馬……だったと思います」

俺は、誤魔化しは不可能と判断して、正直にそう言った。

すると、

「そうか……」

士郎さんはそう呟くと、若干俯いた。

「あの……もしかしてこの世界でも?」

俺がそう尋ねると、

「君の言った通りだよ」

士郎さんは頷いた。

すると、士郎さんはリンディさん達に向き直り、

「恐らく、今まで桜とユウ君が言ったことは本当でしょう。 先程の美由希の話は、ユウ君自身には勿論の事、桜やなのはにも言ってはいません」

そう言った。

「そうですか………私も嘘とは思っていません。 ユウ君は、こんな突拍子のない嘘はつかないと思いますから」

リンディさんはそう言った。





それから暫くして、

「それにしても、前世とはね~。どうりで桜もユウもまともに授業聞いてないくせに、勉強できると思った」

アリサが呆れ半分でそう言う。

「あはは、隠してたわけじゃないけど、ゴメン」

桜は謝る。

「まあ、いいわよ。 いきなり前世の記憶がある、なんて言われても、馬鹿にされるだけだろうし」

アリサはそう言って許した。

すると、アリサは俺に向き直り、

「そういえばユウ、アンタ26歳まで生きてたって言ったわよね?」

そう聞いてきた。

「ああ。 そうだけど」

俺がそう頷く。

すると、

「アンタさ、前世じゃ一体何人の女を引っ掛けたのよ?」

――ゴンッ!!

俺は思わず頭をテーブルに打ち付けた。

すぐにお俺は頭を上げ、

「ふざけんな! お前は俺を何だと思ってやがる!?」

思わずそう叫んだ。

「鈍感ってわけじゃないけど、無自覚女たらし」

アリサはキッパリと答えた。

思わず俺は項垂れる。

「あはは、実は私も気になってたんだ」

すずかがそう言った。

「すずかもか」

俺は恨めしそうにすずかを見る。

「あ、私もそれ気になる」

「私も」

「あはは、私も」

「実は私もや。 リインフォースやシグナムやシャマルも気になっとるんやないか?」

「私もです」

なのは、フェイト、アリシア、はやて、ファリンさんが次々にそう言う。

「お、お前らなぁ………」

俺はそう呟くと、

「俺の前世は、恋人どころか女の知り合いも一人もおらんかったわぁぁぁぁぁっ!!!」

思わずそう叫んだ。

その言葉にビックリする一同。

「冗談でしょ? 女の知り合いが一人もいなかったなんて」

アリサが恐る恐るといった雰囲気で問いかけてくる。

「本当だ! 俺は半分引きこもりだったから出会いがあるわけ無いだろっ!! 第一、前世の俺は正真正銘のダメ人間だったんだよ!!」

俺は力強く叫ぶ。

「そういえば、アンタそういう性格だったわね。 最近はマシになってきたからすっかり忘れてたわ」

桜がそう呟く。

「で、でも、よく言うやん。 運命の人とか、そういう人が………」

はやてがそう言うので、俺が否定する為に口を開こうとしたが、

「ああ、それは無いわよ」

桜がキッパリと否定してくれました。

何で桜が言えるんだ?

「な、何で桜が否定できるの?」

フェイトがそう問いかけると、

「だって私、前世じゃユウとは会ってないもん」

桜はそう答えた。

いや、だから何で前世の桜と会ってない事が証明になるんだよ?

「それが何の関係があるの?」

アリシアが問いかける。

「だって、前世のユウの運命の人って、私だもん」

は?

「「「「「「「「……………………」」」」」」」」

一瞬の沈黙の後、

「「「「「「「「はぁあああああああああっ!?」」」」」」」」

一斉に驚愕の声を上げた。

「どどど、どういう事だよ!?」

俺は思わず叫んで問いかける。

「私を転生させてくれた神様が言ってたの。 私の運命の人を間違って死なせちゃって違う世界に転生させたから、私が望むなら同じ世界に送ってもいいって」

「………あのじーさんそんな事一言も言わなかったぞ」

「多分、アンタを転生させた後に思いついたんじゃないかしら?」

桜の言葉に、俺はため息を吐く。

「なんか今、聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど………」

アリサがそう呟くと

「間違って死なせたってどーいう事ですかぁ?」

ファリンさんがそう不思議そうに呟く。

「ああ。 俺って前世じゃ、神様の部下がミスして寿命前に死んだらしいんだ。 で、そのお詫びに、記憶を持った転生をさせてくれたって訳」

「「「「「「「「「「ええぇぇぇぇぇぇっ!?」」」」」」」」」」

俺の言葉に、再び驚く一同。

「ア、 アンタはそれで納得したの!?」

アリサが叫んでそう言ってくる。

「いや、ミスなんて誰にでもあるだろ?」

俺はそう答えると、

「いくらミスだからって、そのミスで死んじゃったのよ!」

そう叫ぶアリサ。

「つっても、普段からミスを連発してた俺に、ミスを如何こう言う資格は無いし………」

「そういう問題じゃ………」

「でも、そのお陰で、俺はこうしてここに居られる訳だし」

俺がそう言うと、全員が黙り込む。

「ま、そういうわけだから気にすんな」

「あ、アンタって後ろ向きなのか前向きなのか分からないわね」

アリサが呆れたように呟く。

「無神経なだけじゃねーか?」

俺がそう呟くと、

「言えてるかもね」

桜が笑いを零しながらそう言った。








あとがき

微妙に中途半端な出来ですが、第三十二話の完成です。

とりあえず、色々暴露な回です。

もう少し面白く出来たらよかったなぁと思います。

ブラックウォーグレイモン登場の回からこの回までを一話でやろうとしていた自分はアホ以外の何者でもないです。

さて、次回は特にやる必要はないですが、モブキャラを使ったほのぼの話を書いて、その次からStSキャラを絡ませていこうと思います。

あと、マテリアル三人娘ですが、ちょっと前に出せないだろうと書いたのですが、ふと閃きが走り、マテリアルとしてではありませんが出せそうな感じです。

その場合、ユウのハーレムには入りませんが、出したほうが宜しいでしょうか?

では、次も頑張ります。





[15302] 第三十三話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2010/12/05 15:37
第三十三話 女の意地! クッキングバトル!!



さて、少し時が流れて、今日から4年生。

はぁ。

まだ小学校が半分終わっただけか。

先は長い……

で、今はバスで登校中なのだが、今いるメンバーは何時もの俺、なのは、桜、フェイト、アリシア、アリサ、すずかに加え、今日からはやても復学することになった。

因みに、これだけの美少女の中に、俺という男が1人囲まれている状況は、やはり周りの男からすれば羨ましいのだろう。

嫉妬の視線が何時にも増して厳しい。

でも、人間慣れるもので、今やすっかり気にならなくなった。

そして、学校の校門の車道を挟んで反対側のバス停で降りると、

「ん?」

何と、校門の前に長いリムジンが乗り付けている。

何だ一体?

すると、リムジンの一番後ろのドアが開き、金髪セミロングの髪の毛を縦ロールにした同年代の派手な女の子が降りてきた。

っていうか、誰だあれ?

あんな子この学校にいたか?

まあ、俺も、学校の生徒全員を把握してるわけじゃないからなんとも言えないが、あんな特徴的な子は覚えてる筈だが……

ふと横を見ると、アリサが驚きの表情をして固まっていた。

「ななな…………」

口をパクパクさせ、

「何でアンタがここにいるのよ~~~っ!!」

突然叫んだ。

すると、その金髪の少女が振り向き、フッと笑みを見せ、

「あ~ら、誰かと思えばバニングスさん。 お久しぶりですわね」

そんな事を言った。

なんか、もの凄く高飛車でお嬢様的な喋り方だな。

「アリサの知り合い?」

桜がそう尋ねる。

「ええ………家の会社と肩を並べるブライザート社の社長の娘で、名前はアリス・ブライザート。 会社がライバル同士だから、何かと顔を合わせることが多いのよ。 おまけに私と名前も似てるし」

アリサがそう答えた。

「そうですわ! 私こそかの有名なブライザート家の一人娘、アリス・ブライザート! 本来ならあなた方のような一般庶民が口を利くのもおこがましいのですが………ここは勉学の場。 特別に許してあげますわよ!」

そのアリスという少女は、高笑いをしつつそう言った。

あかん。

コイツ俺の嫌いなタイプの人間だ。

「それはそうと、何でアンタがここにいるのよ?」

アリサが再び疑問を口にすると、

「あら、今日からわたくしもこの学校に転入する事になりましたの」

「ええ~~~~っ!?」

その言葉に、本当に嫌そうな声を上げるアリサ。

「それはそうとバニングスさん。 何故あなたのようなお人がそのような卑しい庶民達と一緒にいるのですか?」

アリスは、一々癇に障るような言い方でそう言う。

「うっさいわね。 私が誰といようとアンタには関係ないでしょ?」

アリサは、関わりたくないといった雰囲気を隠そうともせずにそう言った。

「あらあら、そのようなことでは、バニングスも先が長くありませんわね」

「はいはい、勝手に言ってなさい」

アリサは、これ以上関わりたく無いと言わんばかりにアリスを無視して校門の方へ向かおうとする。

因みにこのやり取り、横断歩道の真ん中で行なわれていたりする。

「あ~ら、この私を前に早々と立ち去るなんて、負けを認めたようなものですわね。 オ~ホッホッホッホ!!」

無視するアリサに、アリスは高笑いする。

相変わらず道の真ん中で。

アレか?

世界は自分を中心に回ってるとか、そういう類の人間か?

そんな風に思っていると、お約束のように猛スピードで走ってくる暴走車が………

って、やべぇ!

俺は瞬間的に行動した。






【Side アリス】



「オ~ホッホッホッホ!!」

やりましたわ。

あのにっくきバニングスを言い負かしましたわ!

わたくしがそう思っていると、

――ブォオオオオンッ!

そんな音が聞こえてきまして、そちらを振り向くと、

「え?」

車が猛スピードでわたくしに向かって突っ込んできましたの。

ああっ、神様は何て非情な事を………

やはり、容姿端麗、成績優秀、才色兼備のわたくしは生きているだけで罪なのでしょうか?

でも大丈夫。

日頃の行いが良いわたくしのピンチには、きっと王子様が来て………

――ガシッ

ほらやっぱり。

気が付けば、わたくしはお姫様抱っこされていました。

ああっ!

完璧ですわ!

わたくしのピンチには颯爽と現れて、そして、思ったとおりお姫様抱っこでわたくしを助けてくださった。

目を開ければほら、わたくしを助けてくださった王子様がいます。

「ありがとうございます、王子様」




【Side Out】




あぶねーな、おい。

車に轢かれる寸前だったアリスと呼ばれる少女をギリギリで助けた。

すると、

「だ、大丈夫だった!? ユウ君!」

なのはが慌てた様子で聞いてくる。

「ああ。 平気だ」

俺の言葉に、なのは達は安堵の表情を見せる。

と、その時、

「ありがとうございます、王子様」

いきなりそんな事を言われた。

「はぁ!?」

俺は思わずそう漏らす。

何言ってんだコイツ?

「あなたこそわたくしの運命の人に違いありませんわ!」

「おい!」

俺は呼びかけたが、

「ああっ! 式は何時にしましょう!?」

「こら!」

コイツは、話を聞かずに、

「子供は何人?」

「話を聞けっ!」

どんどんエスカレートしていく。

「………………」

遂に我慢できなくなった俺は、

――ドサッ

抱き上げていたそいつを、その場で落とした。

「きゃっ」

軽い悲鳴を上げる。

かすり傷ぐらい付いたかもしれんが、とりあえず、目が覚めたろ?

と思いきや、

「ああ………わたくしキズモノにされてしまいました。 これは責任を取っていただかなくては……」

勘弁してくれ。

俺は泣きたくなった。

「何言ってんのよアンタは~~~~~!!!」

突如としてアリサが叫ぶ。

「な、なんですのバニングスさん!?」

「うっさい! ユウは私達の大切な人なの! 勝手に横から来て掻っ攫ってこうとするんじゃないわよ!!」

アリサがそう叫ぶ。

その形相にアリスはたじろぐが、

「で、ですが、お姫様抱っこされて、あまつさえキズモノにされた身としては………」

そう言う。

すると、

「お、お姫様抱っこなら私もされた事あるもん!」

なのはが主張するように叫ぶ。

まあ、1年生の時にあったな。

「そういえば、私もあるわね」

桜が思い出したように言った。

ジュエルシード事件の最初の時だな。

「わ、私もあるよ……一応」

フェイトが遠慮がちにそう言う。

「それにキズモノ言うたら、私らしょっちゅうキズモノにされとるで」

はやてがそう言った。

主に模擬戦でだがな。

「うぐ………し、しかし、ここで退いてはブライザート家の名折れ! バニングスさん! あなた方にその御仁を賭けた勝負を申し込みます!」

すると、そんな事を言い出した。

「何でそんな事しなきゃいけないのよ!?」

アリサが叫んで問いかける。

「わたくし、欲しい物はどんな事をしても手に入れるのが信条ですの。 この勝負に負ければ、この方の事はすっぱり諦めますわ。 ただし、わたくしが勝ったあかつき、もしくはあなた方が勝負を放棄した場合。 どんな手を使ってでもこの方を手に入れさせていただきますわ」

こいつはいきなり何を言ってやがる?

「だから何でそんな話になるわけよ!?」

「あら? わたくしの事は、あなたが良く分かってらっしゃる筈よ。 何せ、このわたくしのライバルなのですから」

アリスは、そう勝ち誇った態度で言った。

「ぐっ……私達が勝ったら、ユウの事はすっぱり諦めるんでしょうね!?」

アリサは言葉に詰まりながらもそう聞く。

「ええ。 ブライザード家の名に賭けて誓いますわ」

アリスはそう答える。

「……………ッ! いいわよっ! やったろうじゃない!!」

アリサが叫んだ。

つーか、やんの?

「それでこそわたくしのライバルですわ。 勝負の方法は、女らしく料理勝負にしましょう! 勝敗は、そのお方に食べてもらってどちらが美味だったかを審査してもらいましょう。 勝負は次の日曜日。 材料は各自が用意する事。 よろしいですわね?」

「ええ! 絶対に吠え面かかせてやるんだから!」

「楽しみにしてますわよ」

アリスはそう言うと、高笑いしながら去ってゆく。

「……………で、アリサよ」

俺はアリサに話しかける。

「何か申し開きはあるか?」

俺がそう聞くと、ギクリといった感じにアリサが震える。

「……う……その……ゴメン」

アリサは、申し訳ないといった雰囲気で謝る。

まあ、本人の了承も得ずにポンポン決めた事を自覚しているのだろう。

「はぁ………」

俺は、一度ため息を吐く。

そして、

「まあ、やるからには勝ってくれ」

そう言った。

「お、怒らないの……?」

アリサが恐る恐るといった雰囲気で問いかけてくる。

「勝手に決められたのは癪だけど、まあ、アリサの気持ちも分からんでもないし………俺もああいった高飛車でお嬢様な女は御免被る」

ああいう女は俺もムカつく。

すると、アリサが少し暗い表情をしていた。

「ん? 如何した?」

俺がそう尋ねると、

「……高飛車でお嬢様ってことは………私もダメ……かな……?」

そんな事をアリサは呟いた。

「何でだ? アリサはプライドが少し高いけど、友達想いのいい奴じゃん。 少なくとも、俺は好意的に思ってるけど」

俺がそう応えると、

「ッ!?」

アリサは顔を真っ赤にした。

「ば、馬鹿っ! そんな恥ずかしい事真顔で言わないでよ!」

「いや、恥ずかしい事って……俺はそう思ってるからそう言っただけだが………」

「ッ~~~~~~! もう! 馬鹿っ!」

アリサは顔を真っ赤にして走り去る。

あれ?

「なあ、俺って好感度上げるような事言ったか?」

俺は桜に問いかける。

「あら、好感度上げたって自覚はあるのね?」

桜はそんな風に答えた。

「まあ、あれだけあからさまに表情に出れば………」

俺がそう呟くと、

「ユウ君って、そういう事には鈍感じゃないよね」

すずかがそう言った。

「うん。 自分が言った事は良く分かってないけど」

アリシアも同意して頷く。

その言葉に、俺は首を傾げるしかなかった。




因みに、無事、全員が同じクラスになれた。







そして、運命の日曜日。

料理対決の会場は、とある海鳴市内の公共施設。

因みに、この施設は海鳴市の中で一番でかい。

あのアリスという少女は、今日の為にこの施設を丸々貸切にしたらしい。

更に、その施設内はまるでテレビ番組のようなセットが用意され、俺1人の判断で勝敗が決まる筈なのに、複数の審査員席があり、そこにどっかのテレビで見たような有名な人が座っている。

どんだけ金かけてんだ?

俺は半ば呆れるしかなかった。





【Side アリサ】



あいつ一体どんだけお金かけてるの?

思わずそう言いたくなる位、会場は手が込んでいた。

なのは達も呆然としている。

はっきり言って、アイツの頭を疑いたくなるわ。

そんな事を思いながら、アリスの方を向くと、

「……って、ちょっと待ちなさい!!」

私は思わず叫んだ。

「あら? 何かしらバニングスさん」

そいつは、何を言われるかわかっていながら、余裕の表情で問い返してきた。

「何でアンタの横にプロの料理人がいるのよ!! それに何よその食材は!!」

私は叫んだ。

私の言葉どおり、アイツの隣には、有名なプロの料理人がいるし、しかも材料は高級な海老やら蟹やら、とてもじゃないけど小学生が手に入れられるような食材じゃない。

「あ~ら、別にルール違反は犯していませんわよ。 料理は私が作るとは一言も言ってはおりませんし、食材もちゃんとこちらで用意したものですから」

私はその言葉を聞いて、はめられたと思った。

確かに、そんなことは一言も言ってない。

アイツは最初からこうするつもりだったんだと気付いた。

このままじゃユウが!

私がそんな風に悔しさで身を震わせていると、

「そうね。 その事に文句はないわ」

桜がそう声を発した。

「ちょっと桜!」

私は思わず声を上げるが、

「アリサ、これは相手の策を見抜けなかった私達の落ち度よ」

桜はそう静かに呟く。

「あら、そちらの庶民はちゃんと自分の立場をお分かりになっているのね」

アイツはまた高笑いするような仕草でそう言った。

でも、その時私は気付いた。

アリスは気付かなかったようだが、桜はアリスを見て、薄く笑みを浮かべたのだ。

まるで、相手を馬鹿にするように。

すると、桜は踵を返して、自分達の調理場に向かう。

私は、桜を慌てて追いかける。

「ちょ、ちょっと桜。 いくらなんでも分が悪すぎるわよ! 何で認めちゃったの!?」

私は思わず問いかける。

でも、

「心配しなくても平気よ」

桜は余裕の表情でそう言った。

「で、でも、いくらなんでもあれだけの高級食材にプロの料理人が相手じゃ……」

私は更にそう言おうとしたが、

「ヘーキヘーキ」

桜は余裕の笑みまで浮かべてそう言った。




そして遂に勝負は始まってしまった。

相手の料理人は、流石にプロというだけあって手際がいい。

高級食材をどんどん捌いていく。

対してこちらは、料理が得意なはやてと、前世で独り暮らしだった桜がいるとはいえ、所詮は一般家庭レベル。

料理自体の腕は比べるまでもない。

しかも食材は、その辺の店で買った物。

こちらも比べるまでもない。

私達は、不安を隠せないまま作業を進めていくが、やはり桜だけは余裕な表情で野菜を切っている。

その包丁捌きは慣れたもので、流石は前世の記憶持ちだと思う。

でも、

「ねえ……桜……」

私が桜に話しかけようとしたとき、

「ヘーキヘーキ」

私が何が言いたいのかを察した桜は、それだけ言って作業を止めようともしない。

「でも……!」

私がまた口を開こうとすると、

「アリサ」

その前に桜が口を挟む。

「いくら私達が美味しそうと思ったところで、食べるのはユウなのよ」

と、よく分からない事を言った。

「どういう意味よ?」

私が訪ねると、

「さあねぇ~」

はぐらかされた。





そして遂に料理の完成。

相手は、超高級海鮮料理。

伊勢海老とか、高級な蟹とか………

ううっ、見てるだけでも美味しそう。

対してこちらは、カツカレー。

ユウの好きなものは、カレーと肉類だったから、その二つを合わせた料理にした。

比べただけでも、その差は歴然。

それでも桜は涼しい顔。

「さて、それでは審査員の皆様。 試食してください」

あの女が自信たっぷりにそう言う。

食べ始めるユウを含めた審査員達。

最初は向こうの超高級料理。

審査員達は、料理人を褒め称える言葉を発しながら料理を食べていた。

ユウは無言だったけど。

そして次に私達の料理。

「……小学生にしては、良い出来ですが、普通ですね」

「普通だな」

「普通のカレーです」

そんな事を言われた。

「………………」

ユウは無言。

何か言ってよー!

そして、審査結果の発表。

「では皆さん。 わたくしの料理が美味しかったと思う方は白い札を、バニングスさん方の料理が美味しかったと思う方は赤い札をあげてください」

その言葉に、アンタが作った料理じゃないでしょと突っ込みたくなる。

「先ずは副審査員の方からどうぞ。 まあ、結果は分かりきってると思いますが」

アイツがそう言うと、ユウ以外の審査員の人達が札を上げる。

「「「「「「ッ!」」」」」」

結果は当然の事ながら全員が白い札。

私達は思わず声を漏らす。

私は桜の顔を見るが、ここまで来ても桜の顔は涼しい顔。

「オ~ホッホッホッホ!! これはもう決まったも同然ですね! ではユウ様! 判定をどうぞ!」

あいつがそう言うと、ユウは迷い無く札を上げた。

その色は………赤。

つまり私達。

「そ、そんな筈ありませんわ! バニングスさん! 口裏合わせるなんて卑怯ですわよ!!」

ユウの結果が信じられないのか、私達にそう言ってくるアリス。

でも、信じられないのは私達も同じだ。

完璧に負けたと思っていたのだから。

すると、

「人聞きの悪いこと言わないでよ。 そんなことする筈ないじゃない」

桜が冷静に返した。

「いいえ! それしか考えられませんわ! そうでなければ、こちらの高級料理があなた方の庶民的な料理などに負ける筈がっ!」

アリスは納得できないのか、そう叫ぶ。

「あんたねぇ………」

桜が呆れるようにため息を吐くと、

「まあ、私達があの料理を食べれば、ほぼ間違いなくそっちの料理の方が美味しいと思うわ」

桜はそんな事を言った。

「ならば何故っ!?」

アリスは再び叫んで問いかけてくる。

「でも、食べたのはユウなのよ?」

桜はそう言う。

その事は、私もさっき言われたけど、全く意味が分からない。

「どういう意味ですの!?」

アリスも分からないのかそう叫んだ。

「………はぁ」

桜は、やれやれといった表情でため息を吐く。

「答えは直接ユウに言ってもらいましょ。 ユウ、答えを言って頂戴。 3、2、1、はいっ」

桜がそう合図すると、

「俺、海の高級品は、殆ど嫌いなんだよ」

なんとも完結で分かりやすい答えを言ってくれた。

アリスに至っては、呆然としている。

「味覚なんて人それぞれ。 好きなものもあれば、嫌いなものもあるなんて当然でしょ? 好きな人に美味しいって言ってもらいたいなら、嫌いなものを入れるなんて論外じゃない。 栄養バランスは別にして………」

桜のその言葉に、アリスは打ちのめされたように床に手をついていた。

見事なorzね。

あいつのorzなんて貴重なもの見たわ。

「それにしても、桜お姉ちゃん。 何でユウ君の嫌いなもの知ってたの? 家で海老とか蟹とか出ても、ユウ君文句も言わずに食べてたけど………私、てっきりユウ君には好き嫌いがないって思ってたの」

なのはが桜に問いかける。

桜はその言葉を聞くと笑みを浮かべる。

「なのはもまだまだね。 ユウの性格を考えてみなさい。 居候の身で、折角作ってくれた料理にユウが文句言うと思う?」

桜の言葉に、私達はその様子を思い浮かべる。

「……思わないの」

「思わない」

「思わないな~」

「思わへん」

「思わないわね」

「思えないね」

なのは、フェイト、アリシア、はやて、私、すずかの順に答える。

「でしょ? それに、ユウは、そういう物を食べる時に若干しかめっ面してたからね。 嫌いだって気付いたのよ」

私達がそんな事を話していると、

「おーい、早く帰ろうぜ」

ユウが出口の前にいて、そんな事を言ってきた。

まあ、確かにもうここにいる意味はないしね。

アリスも真っ白になってるし問題ないわね。

アイツ自分の家名に賭けたから、もうユウにはちょっかいかけて来ないだろうし。

私達はユウの後を追いかけるように歩き出した。

すると、

「あ、そうそう」

ユウが気付いたように私達の方に振り向いた。

「お前らの作ってくれた料理、美味かったぜ。 ご馳走さん」

ユウは笑いながらそう言ってきた。

ああ、もう!

何でコイツはこうも嬉しくなる事を言ってくれるのよ!!

他のみんなも頬を赤くしながら喜んでいる。

そして、なのは、フェイト、アリシア、はやて、それにすずかまでが一斉にユウに抱きついた。

私はその様子を見て………

う、羨ましくなんか、無いんだからねっ!!





オリジナルモブキャラ



アリス・ブライザート


簡単に言えば、無印、A‘S間の幕間に出てきた金野 力の女バージョン。

外見的には、恋姫の袁紹。

性格も袁紹をモデルにした。

バニングスと肩を並べるブライザート社の社長の娘。

自称アリサのライバル。

名前の由来は、アリサと似た名前を考えてアリス。

性は、バニングスが、バーニングを思わせるので、ブリザードを適当に弄ったという相変わらずの安直です。

ネーミングセンス無いなー。





あとがき


どうもです。

一週間空きましたが、第三十三話の完成です。

とりあえず、モブキャラ使ったほのぼの話かいてみたんですけど如何でしょう?

やっぱり、完全なオリジナルだとダメですかね?

なんかアリサの好感度が低い気がしたので、アリサ主演にしたつもりです。

でも、なんか話の流れが不自然だと感じる。

まあ、単なるつなぎともいえる話なんで、別にやらなくても良かったんですけど………

ともかく、次回は漸くStSのキャラが出てきます。

記念すべき第一回目は、あの人たちです!

では、次回をお楽しみに。





[15302] 第三十四話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2010/12/05 15:36


第三十四話 俺の誕生日は厄日?



【Side 桜】



ブラックウォーグレイモンの戦いから丁度一年。

私、なのは、フェイト、アルフ、はやて、リインフォース、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、リニス、ユーノは、いつかスクライア一族を探しに来た世界の砂漠地帯にいた。

私達は、一年前のブラックウォーグレイモンとの戦いで、どれだけユウに甘えていたかを思い知った。

助けたいのに、助けられるだけの力がない。

それどころか、足手纏いにしかならない私達の非力さが悔しかった。

だから、それ以来私達は修行を始めた。

そして、選んだ修行場がこの砂漠地帯。

私達が知る世界の中で、最も強い生き物が住む世界。

ブラックウォーグレイモンとまでは行かないまでも、私達個人より強い生物。

修行の相手にはうってつけだった。

当初は、例の1000m級の蛇どころか、100m級の竜種1匹にすらボロ負けして命辛々逃げ帰ったことが何度もある。

でも、今は………




私達の周りには、100m級の竜種が10匹ほど。

そして、1000m級の蛇のような生物も1匹いる。

竜が、口から火球のブレスを吐いてくる。

その1発1発は、鉄なんか簡単に溶かすほどの熱量を持っていた。

1年前の私達なら防御しても大ダメージは必至だ。

その無数の火球の前に、ザフィーラとユーノが立ちはだかる。

2人は魔力を集中し、

「ゴッドブレス!!」

「テンセグレートシールド!!」

ザフィーラは、体全体を防御フィールドで覆い、火球をその身で受け止め、ユーノは強力なバリアを張って、火球を防ぐ。

2人が爆炎に包まれる。

だが、煙が晴れていくと、そこには無傷の2人の姿があった。

すると、リインフォースとユニゾンしたはやてがいつの間にか竜の群れの中心にいて、杖を構え、魔力を解放する。

「『エンド・ワルツ!!』」

はやてを中心に凄まじい魔力の奔流が発生する。

殆どの生物なら、それだけでその身を引き裂かれ、絶命するほどの威力。

流石の竜も、その魔力の奔流の前になす術がなく巻き込まれ、振り回されている。

「九頭竜陣!!」

その声と共に、地上から9匹の炎の龍が振り回されている竜の1匹に迫る。

9匹の炎の龍は、その1匹に喰らい付き、炎に包む。

喰らい付かれた竜は、炎に焼かれ、墜ちて行く。

それを地上から見上げるのは、龍を放ったシグナム。

更に、ヴィータがグラーフアイゼンのギガントフォルムを振り上げる。

「アージェント………」

そして、掛け声と共に振り下ろす。

「……フィアーーーッ!!」

そのまま竜に打撃面がヒットした瞬間、

――ドゴォォォォォォン!

大爆発を起こし、竜を叩き落とす。

これは、グラーフアイゼンに魔力を集中させ、インパクトの瞬間に魔力を炸裂させる事で絶大な破壊力を持たせている。

その時、1匹の竜が魔力の奔流から脱出し、炎のブレスを吐いてくる。

今度は、その前に立ち塞がるのはシャマル。

シャマルは両手を掲げ、

「ジェネラスミラー!」

両手にそれぞれ旅の鏡のような空間の穴を作り出す。

炎のブレスが、片方の穴に吸い込まれる。

そして、次の瞬間には、もう片方の穴から炎のブレスが飛び出し、そのままブレスを吐いた竜に直撃した。

焼け落ちていく竜。

今度は、一匹の竜がエンド・ワルツの勢いに吹き飛ばされた。

その先にはアルフがいる。

アルフは、右腕を振りかぶると、その手に魔力を集中させる。

そして、

「ネイルクラッシャー!!」

そのまま、吹き飛ばされた竜を殴りつけた。

殴られた竜は、勢い良く地上に激突し、砂に埋もれる。

すると、空に雷雲が集まっていく。

見ると、リニスが魔法を発動させていた。

「ヘブンズジャッジメント!!」

雷雲から無数の稲妻が降り注ぐ。

それは、数匹の竜に直撃し、落として行く。

そして、

「八雷神!!」

上空のフェイトが、魔法陣から8匹の雷の龍を放つ。

その雷の龍が、残った竜達に喰らい付き、動きを止める。

そのまま、

「「メガデェェェス!!」」

私となのはがそれぞれ放った2発のメガデスが、その竜を吹き飛ばした。

そして、最後に残った1000m級の巨大な蛇のような生物を見つめる。

「なのは! フェイト! はやて! 決めるわよ!」

私は3人に呼びかける。

「うん!」

「分かった!」

「いいで!」

3人は応え、私達は一箇所に集まると、メガデスを撃つ時のように頭上に魔力を集中させていく。

でも、メガデスのように使い勝手を良くしたものじゃない。

単純に、威力を突き詰めた技。

「「「「『ギガデェェェェェス!!!』」」」」

4人で作り出した超圧縮魔力弾を、巨大な蛇に向けて放つ。

ギガデスの威力は、今やユウのガイアフォースに匹敵する。

巨大な蛇は、ギガデスの直撃を受けて爆発に呑まれ、爆煙が晴れた後には、砂漠にその身を横たえる蛇の姿があった。







とまあこのように、何故一年足らずで魔改造並みに強くなったのかと言えば、これも私の前世の記憶に関係する。

修行を始めて最初の1ヶ月。

私は、100m級の竜種と1000m級の蛇に全然勝てない理由を考えていた。

アニメでも、なのははフェイトやヴォルケンリッター達に最初はボロ負けしても、約一ヵ月後には互角以上に戦う事が出来ていた。

でも、今の私達は、100m級の竜種にすら未だに歯が立たない。

その訳は、単純にポテンシャルの差だと私は思った。

アニメのなのはは、元々フェイトやヴォルケンリッター達と戦えるだけの魔力は持っていたから。

ただ、その魔力を使いこなす技術とデバイスの差があったからなのはは負けた。

それから、なのはは並々ならぬ努力により短期間でその技術を身に付け、フェイトやヴォルケンリッターと戦うだけの力をもてたんだと私は思う。

でも、私達が今相手にしてる竜種は、そんな小手先の技術が通用する相手じゃない。

単純に、“力”が不足している。

それが、私の行き着いた結論。

だから、その竜に勝つには、地力を上げるしかない。

で、そこで悩んだのがどうやって魔力を上げるかだけど………

そこで閃いたのが、前世の漫画で魔力と似たような感じの霊力を扱っていた幽遊白書。

それで出ていた呪霊錠。

それを参考に、バインドを改造して呪霊錠もどきを作ってみた。

効果があるか分からないからみんなに秘密で、私だけ呪霊錠もどきをつけてみたんだけど………

最初の一ヶ月は、日常生活すら必死だった。

二ヶ月目は、日常生活には支障は無くなったけど、まだ戦いには影響する。

三ヶ月目で、漸く違和感が無くなった。

漫画と言えど、これを数日で慣れた幽助は化け物だわ。

さすが主人公。

とまあ、三ヶ月たった所で、漸く呪霊錠もどきをつけたまま大の字で寝られる様になった私は、初めて呪霊錠もどきを外して戦いに赴いた。

その結果は………

ポジトロンレーザーで竜種を地平の彼方まで吹き飛ばしたのはいい思い出ね。

漫画じゃかつての全力が二分の力で出せるようになると言ってたけど、本当だわ。

当然の如く、皆から詰め寄られたので、皆に呪霊錠もどきをつけてあげたわよ。

皆悲鳴上げてたけど。

私が思ったのは、使い魔であるアルフや、元々プログラムであるヴォルケンリッター達が付けても意味があるのかと思ったんだけど……

そこは嬉しい誤算があり、主であるフェイトやはやてのレベルが上がったら、それに比例して、アルフやヴォルケンリッターのレベルも上がった。

そう言えば、リニスもユウが主になってから力が増したって言ってたっけ。

あ、リニスはなんかユウから貰う魔力を増やしてレベルを上げたらしいわよ。

どうやったか知らないけど。

で、その結果が今日の戦い。

こんなにレベルが上がるとは思わなかったわ。

因みにユウは、去年と同じように両親の墓参りに行ってる。

まあ、それを邪魔するほど私達も野暮じゃないわよ。

じゃあ、今日はユウの誕生日だから早く帰らないとね。






でもその日、ユウは帰ってこなかった。






【Side Out】






「……………うっ」

俺は目を覚ました。

目の前には、機械的な天井。

「……何処だ、ここ?」

俺は身体を起こそうとしたが、

「ッ!?」

手足が固定されていて、起き上がることが出来なかった。

俺は視線を動かして、周りを確認する。

どうやら俺は、手術台のようなベッドの上で、拘束されている状態らしい。

俺は、どうしてこうなったか、思い返すことにした。




たしか、俺は父さんと母さんの墓参りをした帰りに………

「こんにちは」

知らない黒髪の女性に声をかけられた。

「ごめんね。 私この町は初めてで、ちょっと道に迷っちゃったの。 駅がどっちにあるか教えてくれないかな?」

その女性がそう聞いてきたので、

「ああ。 駅なら……」

そう言って、その女性から視線を外して駅の方向を指差そうとした時、

『『マスター!』』

ブレイズとアイシクルからの警告が聞こえたと同時に、

――バチィ

「がっ!?」

衝撃が身体を襲い、意識が遠のいていく。

消えかかる意識の中、最後に覚えている事は、

「ふふっ。 ちょろいものね」

そう言って冷たく笑い、スタンガンを手に持った金髪の女性だった。





「………なさけねえ。 最近は平穏だったから油断しすぎたな……俺って誘拐されたのか? それに、あの女性はもしかして………」

その出来事を思い出した俺はそう漏らす。

すると、

「………はい……では、そのように」

話し声が聞こえる。

『頼むぞジェイル。 次元世界の安定の為に』

「わかりました。 では、これで」

見ると、紫の髪の白衣の男性が、通信を行なっていて、たった今切れたようだ。

っていうか、今ジェイルって呼ばれてたし、紫の髪って、コイツまさか……

その白衣の男性が振り返る。

「おや? 目が覚めたんだね」

その瞳は金色。

ほぼ間違いない。

「………ジェイル・スカリエッティ」

俺はそう呟く。

じゃあ、俺を攫ったのは多分ドゥーエか。

「ほう? 私の事を知っているのかね?」

スカリエッティは、特に驚いた様子もなくそう聞いてくる。

「まあな。 今の通信の相手は、最高評議会か?」

俺はそう尋ねる。

「驚いた。 そんなことまで知っているのかね」

口ではそう言うが、驚いた様子は見られない。

「アンタの事も知ってるよ。 最高評議会がアルハザートの技術を使って生み出した存在。 『無限の欲望 アンリミテッドデザイア』。 ジェイル・スカリエッティ」

そこで、スカリエッティの眉がピクリとする。

どうやら少しは動揺してくれたようだ。

「それにしても、アンタも物好きだな。 あんな腐った脳みそのいう事を聞くなんて」

「その言葉は、最高評議会の老人達の事を言っているのかい?」

「他に何がいる?」

俺は意識して、“誰”とは言わない。

つーか、脳みそになってまで生きながらえようとするなよ。

「どうやら、本当に知っているようだね」

「ああ。 手段と目的を完全に取り違えた馬鹿な脳みそ達だよ」

「くくっ! 次元世界の安定を守っている管理局の最高評議会をそこまで扱き下ろすとはね」

俺の言葉が面白かったのか、スカリエッティは笑う。

「俺は別に守ってくれと頼んだ覚えはない。 俺は俺の周りに影響がなければ、誰が何処で何をしようが知った事じゃない」

「くははっ! 本当に面白いな君は! 君を攫ったのは、その最高評議会の命令なんだよ?」

「予想の範囲内だ。 ったく。 俺が偶々SSSオーバーの魔力を持ってたからって、そこまでして欲しいかよ!」

俺は思わずグチを零す。

「まあ、あの老人達からすれば、喉から手が出るほど欲しいだろうね」

「だからって、正義を名乗る組織が拉致監禁。 その上人体実験か。 世も末だな」

「その言葉には同意するよ」

「だからって、このまま実験されるほど俺はお人よしじゃない」

俺はそう言うと、腕に力を込める。

「残念だが、君はそこから逃げられない。 その拘束具には魔力を封印する機能がある」

スカリエッティはそう言うが、

「確かにそんな機能があるみたいだな。 けどよ………」

俺は、右腕のみに魔力を集中させる。

「はっ!」

――バキンッ

右腕の拘束具が砕け散る。

「俺の魔力を甘く見すぎたな」

俺はそう言うと、残りの拘束具を破壊していく。

「まさか、拘束具を自力で破壊できるほどだとは……あの老人達が欲しがるわけだ」

「1つ聞かせろ。 俺が寝ている間、何かしたか?」

俺は立ち上がって気になった事を尋ねる。

「いや、まだ血液サンプルを取っただけだ。 その一部は、既に最高評議会に送られている」

「そうか。 めんどくさい事にならなきゃいいけど」

血液からだけなら、俺が聖王の血筋という事は気付かないと思うけど……

そうだったら、父さんと母さんも聖王の血筋だって知ってたはずだからな。

「ま、いいか。 あと、ブレイズとアイシクルは……ッ!?」

どこだと聞こうとした瞬間、俺は全身を強化して横から来た拳を受け止める。

そこには、紫の髪のショートカットの女性が拳を繰り出していた。

トーレか。

すると、トーレは飛び退き、スカリエッティの傍に着地する。

「ドクター。 ご無事ですか?」

「ああ」

トーレの問いに、スカリエッティは頷く。

その時、

「オーバーデトネイション!!」

ナイフが大量に飛んでくる。

俺はシールドを張ってそれを防ぐ。

ナイフがシールドに当たった瞬間、ナイフは爆発を起こす。

これって確か、ランブルデトネイター。

ってことは、チンクか。

俺の思ったとおり、煙が晴れていくと、銀髪の小柄な少女が現れる。

ただし、眼帯はしていない。

そういえば、目の傷はゼストと戦った時に付いた傷だっけ。

まだ、ゼストとは戦ってないってことか。

「おいおい、俺はこっちから手を出す気はないんだ。 第一、デバイスが無いと俺は手加減できないんだから。 怪我じゃすまないぞ」

俺はそう言うが、彼女達は身構える。

「トーレ、チンク、やめておきなさい」

スカリエッティがそう言う。

「ドクター?」

「君達では、彼に勝てない」

トーレの言葉に、スカリエッティはそう答える。

そして、俺に向き直ると、

「君のデバイスなら、2つとも隣の部屋に保管してある。 持って行くといい」

「そうか」

俺は踵を返し、その部屋を出ようとする。

すると、

「私からも1つ聞かせてくれ。 君は何を望む」

スカリエッティはそう問いかけてきた。

だから俺は、

「俺は、自由で平穏な生活がしたい。 唯それだけだ。 でも、それを邪魔するものがいれば叩き潰す。 それが例え管理局であっても」

そう答えた。

俺は、そのまま部屋を出ようとした。

だが、

「自由……か。 私も欲しかったな」

そんなスカリエッティの呟きが聞こえ、足を止めてしまう。

「………………」

「如何したんだね?」

足を止めた俺が気になったのか、スカリエッティがそう問いかけてくる。

「自由が欲しいなら、逃げればいいだろ。 アンタほどの頭脳があれば、自分が死んだように見せかける事なんて簡単じゃないのか?」

俺はそう返した。

「……………」

スカリエッティは、鳩が豆鉄砲食らったような顔をしている。

っておい、もしかして今まで思いつきもしなかったのか?

「…………そうだ…………そのとおりだよ! 何でそんな単純な事に気付かなかったんだ私は!」

なんかわけの分からない内にスカリエッティのテンションが上がっていく。

つーか、スカリエッティってこんな性格だったか?

これも世界の違いか?

「ハハハッ! 見ていろ老人共! 私は自由を掴む!!」

何かスカリエッティが熱血漫画みたいなノリに……

ホントになんでこうなった!?

俺の所為なのか!?

その問いに答えるものは誰もいない。

ただ、高笑いするスカリエッティと、呆然と彼を見るトーレとチンクがいるだけだった。






あとがき


やりたい放題の三十四話完成。

なのは達の魔改造が加速しました。

スカリエッティの性格が壊れました。

ユウ君のトラブル巻き込まれ体質がアップしました。

この小説の質が更に低下しました。

てな感じですかね。

さて、次回もユウ君のトラブル巻き込まれ体質が更なるトラブルを呼ぶ?

次回登場するStSキャラはあの人たちです。

お楽しみに(できるかなぁ?)





[15302] 第三十五話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2011/01/16 17:21
第三十五話 トラブル+巻き込まれ=俺?




俺がスカリエッティに拉致されてから1ヶ月。

俺は未だにスカリエッティの所にいた。

何故ならば、スカリエッティはこの1ヶ月、逃亡計画の為の準備をしていたからだ。

俺の一言が切っ掛けでこのような事になってしまったので、最後まで見届ける事にしたのだ。

別にほっといても良かったのだが、これでスカリエッティ達に何かあったら後味が悪い。

故に、俺はまだここに居るのだ。

この逃亡計画は、この施設内にあるガジェットⅣ型(この時はまだ名前は無いが)を暴走させ、この施設を破壊すると共に、それに紛れて逃亡を図るというのだ。

その為、最高評議会にばれない様に慎重に準備を進め、目覚めていないナンバーズを秘密裏に運び出し、最高評議会も知らない秘密研究所に移した。

そして、いよいよ今夜に計画の大詰めを迎える。

今夜0時に、ガジェットⅣ型が暴走するようにプログラムしているので、その混乱に乗じて逃げるだけだ。

俺は、1ヶ月も連絡を入れてない高町家の事を考えていた。

1度位は連絡を入れようかと思ったが、それが原因で情報が漏れる可能性があったので、やむなく止めた。

まあ、帰ったら魔法弾の嵐と剣の乱舞が待ち構えているのかなぁ~、などと考えていると、

「おい! ユウ!」

トーレが声をかけて来た。

「なんだ? ……って、聞くまでも無いだろうけど」

「ああ。 言うまでも無いだろうが、模擬戦だ!!」

トーレは力強く言ってくる。

「おい、今夜に作戦の決行だろ? 休んでおくべきじゃないのか?」

俺はそう聞くが、

「今日が最後だからだ! この1ヶ月、模擬戦で全敗どころか、まともな一撃すら入れてはいない! そのまま勝ち逃げされて堪るか!!」

トーレはそう叫ぶ。

1ヶ月前、トーレから訓練を兼ねた模擬戦の相手を頼まれたのだが、その時に全く寄せ付けもせずに完勝してしまった。

その事が悔しかったのか、毎日の様に模擬戦を挑まれる。

まあ、1対1では相手にならないので、クアットロとチンクを含めた3対1で行なっているのだが、それでも楽勝であった。

トーレのライドインパルスも、見切れる範囲だし、チンクのランブルデトネイターも俺の防御を抜くには力不足。

クアットロのシルバーカーテンは、アイシクルの無差別攻撃でクリア。

ぶっちゃけ苦戦する要素が1つもなかったりする。

まあ、普段から10対1の戦いに慣れている俺としては、3人相手など如何って事はない。

「はぁ~………何度も言うように、あんまり女性を傷つけるようなマネはしたくないんだけど……」

俺はそう言う。

普段からなのは達と戦っているので、矛盾しているかもしれない。

その言葉を聞いた瞬間、トーレは頬を赤くした。

「ええい! 何度も言うが、お前は何故私達を女扱いする!? 私達は戦闘機人だ! 戦う為に生まれた兵器だ!!」

トーレはそう叫ぶ。

「別にその考え方を否定するつもりはない。 唯、俺がお前らを女性だと勝手に思ってるだけだ」

「むぅ」

「ま、いいさ。 軽めにならやってやる」

俺はそう言うと、トーレと共に訓練室へ向かった。



まあ、結果は言わずもがな俺の圧勝。

アイシクルでクアットロを速攻で気絶させ、トーレをライドインパルスのスピードを上回る動きで撃破し、チンクのナイフを全て撃墜して終了した。

そういえば、俺の自惚れかもしれないが、トーレとチンクにフラグがたっている様な気がしてならない。

この1ヶ月、模擬戦で気絶させた後、トーレ達を部屋まで運ぶ際、途中で目覚める事が何回かあった。

その時の運び方が、まあ、なんと言うかお姫様抱っこだった為、羞恥か怒りか、顔を真っ赤にしていた。

いや、まさかね。

……………でも、今までのパターンを考えると、否定しきれないのが悲しい。

ま、まあ、今夜の夜逃げが上手くいけばもう会うこともないだろうし、そんなに深く考える必要もないか。

……………ないよな?

そう前向き(?)に考える俺だが、自分のトラブル巻き込まれ体質を侮っていた事を知るまであと約10時間。







さて、時間が経つのも早いもので、現在の時間は深夜11時59分。

間も無く計画の実行時間だ。

「ふむ、いよいよ自由への旅立ちのときだ!」

スカリエッティが嬉しそうにそう叫ぶ。

何でこんなに性格が変わったんだろうか?

いや、目的が変わっただけで、性格はあんまり変わってないか?

「………暴走プログラム発動まで、後10秒」

ウーノがカウントダウンを開始する。

「……6……5……4……3……2……1……」

ゼロと宣言する瞬間、

――ドゴォォォォン!

爆発音と共に、研究所に衝撃が走る。

「何事かね!?」

スカリエッティの言葉に、ウーノがモニターを開いていくと、

「……どうやら、管理局が侵入してきた模様です」

そう報告する。

ウーノの言葉に、俺はモニターを覗きこむと、渋い大柄の男性を中心とした管理局員が映っている。

「………おいおい、ゼスト隊かよ」

俺は呆れた声を漏らす。

今日が、原作で言うゼスト隊の壊滅の日かよ!

俺は心の中で叫んだ。

なんつうタイミングの悪さ。

更に運が悪い事に、

「ドクター。 管理局の侵入によって、研究所内の機械人形にプログラムされていた侵入者迎撃プログラムが作動。 それと同時に、暴走プログラムも作動した為、こちらからはコントロール不能です」

ウーノがそう報告してくる。

つまりは、ガジェットⅣ型が侵入者……ゼスト隊に攻撃を開始するけど、その停止命令がこっちからは出せないって事。

何処まで運が悪いんだよ!

「あらまあ、どうしましょ?」

クアットロが、軽い口調でそう言ってくるが、

「仕方ない、作戦変更。 この研究所は俺が破壊する。 皆は俺の合図でいつでも脱出できるようにしといてくれ」

俺はそう言って駆け出した。






【Side ゼスト】



私達の部隊は、戦闘機人に関する事件を追っていた。

だが、レジアスは、明日には私の部隊を別の案件に移す事を宣言してきた為、今現在分かっている違法研究所と思われる場所への突入捜査の予定を早め、今夜決行することにした。

その違法研究所へ突入した後、分隊長であるナカジマとアルビーノでコンビを組ませて、別ルートで捜索させ、私は他の隊員と共に正面から突破する。

突入後、然程間を置かず、迎撃システムらしき多脚生物型の機械人形たちが群がってきた。

迎え撃つ我々だが、予想以上に数が多い。

「おおおおおおおっ!!」

私は己の槍を振るい、機械人形達を鉄屑へと変えてゆく。

だが、その鉄屑となった機械人形を乗り越え、更なる数の機械人形が現れる。

「くっ!」

そのとき、部下の苦戦する声が聞こえる。

見れば、部下達が機械人形の数に押し切られようとしていた。

「させん!!」

私は思わず動いた。

攻撃を受けようとしていた部下の前に立ちはだかる。

が、

「ぐぅっ!」

鎌による攻撃を受け止め損ね、利き腕である右腕に浅くない傷を負ってしまう。

「隊長!?」

部下達の悲痛な声が響く。

「ぐっ……うおおおおおおっ!!」

私は槍を左手に持ち変え、目の前の機械人形を突き壊す。

だが、機械人形は容赦なく迫り来る。

「くっ……」

私は、槍を構えながらも己の浅はかさを呪った。

碌に調べもせずに突入した結果がこの有様。

今のところ、死者は出ていないものの、それも時間の問題だろう。

いや、全滅の可能性も少なくない。

別ルートで捜索しているナカジマとアルビーノも心配だ。

私が、この場をどのように切り抜けるか思案していた時、

「そこの騎士! 下がれっ!」

突如響いた子供の声。

突然の言葉に、私は瞬間的に反応してしまい、思わず下がってしまう。

その瞬間、

――バサッ

目の前にはためく白と赤のマント。

――ジャキッ

振りかぶられたオレンジ色の手甲を纏う左手から飛び出す大剣。

その左腕は、まるで竜を連想させる。

「うおおおおおおおおおおっ!!」

その叫びと共に大剣が振るわれた瞬間、

――ゴウッ!!

凄まじき衝撃波が発生し、視界に映る範囲にいた機械人形を1体残らず吹き飛ばした。

「「「「「なっ!?」」」」」

私も含め、その場を目撃した部下の全員が驚愕の声を上げる。

今の攻撃が、砲撃や広域殲滅魔法に類するモノであったのなら、まだ理解できた。

だが、今の攻撃は、単純に剣を振るった際の空気の衝撃――剣圧によるモノだ。

私とて、槍を振るった際の剣圧で攻撃する事は可能だ。

だが、その攻撃範囲は身体強化を全開にしたとしても、精々が数m。

しかし、今の子供が放ったものは、この通路の見える範囲。

少なくとも20m範囲は吹き飛ばしている。

それだけでも驚愕に値するのだが、それ以上に驚愕するものが今の我々の眼に映っていた。

それは………

「に、虹色の魔力光…………」

部下の誰かが呟いた。

そう、驚くべきことに、その者が纏っていた魔力光は、遥か昔に途絶えたとされる聖王の証である、虹色の魔力光。

その子供がゆっくりと振り向く。

改めてみれば、背丈からして10歳程度。

竜を連想させるオレンジの左腕の手甲。

蒼き狼を思わせる右腕の手甲。

頭の先から足までを白き鎧で覆い、背中には、外が白、内が赤のマント。

鎧の隙間から覗く眼は、赤と青のオッドアイ。

「…………管理局か」

その子供が呟く。

「き、君は一体……?」

私は思わずそう尋ねてしまう。

「……俺は、この研究所に捕まっているとある人物を助けに来た。 そいつはもう助けたから、おさらばしようとしていた所に、アンタ達が突っ込んできて勝手にピンチになっていたから見てらんなくて出てきただけだ」

その子供の言葉に皮肉が混じっていたが、正にその通りのために言い返すことは出来ない。

「そうか……すまない…………」

私は、礼を述べておく。

「……その代わりと言う訳ではないが、君と、君の助けた人物を管理局で保護しよう」

私は管理局員の使命に基づいてそう発言した。

だが、

「……フフッ……保護……ね」

その子供は感情の篭っていない乾いた笑いを漏らす。

私がそれを怪訝に思っていると、

「2つ、教えておいてやる」

突如そう言ってきた。

「先ず1つ。 俺もアイツも、管理局を全く信用していない」

その子供は、迷い無くそう言う。

「「「「「なっ!?」」」」」

その発言に驚愕する私達。

「そして2つ目。 なにより、アイツを拉致し、この研究所に捕らえるよう命じたのは他でもない! 管理局の最高評議会だ!」

続けて発言した言葉に、私達は声を失う。

「信じるかどうかはそっちの勝手だ。 少なくとも俺達は、管理局を信じるつもりも無ければ、保護なんて真っ平御免だ」

その子供は、キッパリとそう言った。

私が思うに、嘘をついている様子はない。

と、そのとき、

『……こちら、Bチーム! 現在、侵入者迎撃システムと思われるロボットと交戦中! 状況は不利! 応援を!』

別行動のナカジマから応援要請の通信が入る。

が、余裕が無いのか、すぐに通信が途絶する。

私は槍を握る。

「行くのか?」

その子供が問いかけてくる。

「部下を見捨てるわけにはいかんからな」

「その腕でか?」

その言葉通り、私の右腕からは、血が流れ続けている。

まともに使う事は出来ないだろう。

「それでも、仲間を裏切る事はできん」

私は、自分の思いを口にした。

すると、

「ふうぅ………」

彼は、大きなため息を吐き、蒼い狼を思わせる右腕を横に向けると、巨大な砲身が飛び出す。

そして、

「貫け、ガルルキャノン!」

その砲身から、凄まじい魔力を秘めた圧縮魔力弾が放たれた。

――ドゴゴゴゴォォォォォォン!!

その魔力弾は、壁を一直線に撃ち抜いていく。

すると、彼はその穴に飛び込んだ。





【Side Out】






【Side クイント】



隊長への応援要請をした後、私とメガーヌは機械人形の大軍に必死で抵抗していた。

正直、数が多すぎる。

でも、ここで死ぬわけには行かない。

愛する夫と娘達が待っているから。

私はその想いを胸に、拳を振るう。

「はぁあああああああっ!!」

リボルバーナックルで、また1体を破壊する。

でも、次から次へとキリがない。

既に囲まれているので、撤退も不可能。

隊長達が来るまで持ちこたえられるかどうか………

そう思っていた時、

――ドゴォォォォォォォン!!

突如後方の壁が爆発し、多くの機械人形を巻き込んだ。

「何っ!?」

メガーヌが驚愕した顔で叫ぶ。

私も其方に気が向いてしまった。

でも、機械人形たちはそんな事お構い無しに襲い掛かってくる。

私が気付いた時には、既に鎌状の武器が振り上げられていた。

「しまっ………」

私が、声を上げようとするのとほぼ同時に、鎌が振り下ろされる。

ギンガ………スバル………あなた………

その瞬間思い浮かぶのは、やはり愛する家族。

私は死を覚悟した。

でも、

――キィン!

その瞬間は訪れなかった。

気付けば、私に向かって振り下ろされた鎌ごと、目の前の機械人形は横一文字に両断されていた。

「えっ………?」

私は思わず呆けた声を漏らす。

目の前には、左腕の竜の頭のような手甲に大剣を装備し、更には虹色の魔力光を纏った子供の姿。

その姿は、正に騎士と言うに相応しい。

「……怪我はないか?」

「は、はい………」

その子供の問いかけに、私は思わず返してしまう。

「クイント!」

メガーヌが私を心配して駆け寄ってくる。

「あの……貴方は……?」

その子供に気付いたメガーヌが問いかける。

でも、

――ガシャ

その足音に、私とメガーヌは反射的に背中合わせになり構える。

私達の周りには、未だに数え切れない数の機械人形が存在していた。

「くっ!」

思わず声を漏らす私。

すると、

「2人とも、巻き込まれたくなければ動くな」

「「えっ?」」

突如聞こえたその呟きに私とメガーヌは思わず其方に顔を向けてしまう。

そこには、大剣が左手の竜の口に収納され、両腕を掲げる子供の姿。

しかも、左手の竜の手甲には灼熱の炎を、右手の狼のような手甲には凄まじい冷気を纏わせている。

そして、

「ダブルッ!」

その掛け声と共に右腕を床に打ち込む。

その瞬間、無数の氷柱が床から飛び出し、メガーヌが注意していた側の通路の機械人形たちが一瞬にして串刺し、もしくは氷漬けになる。

「なっ!?」

メガーヌが驚愕の声を上げた。

更に、

「トレントォッ!!」

灼熱の炎を纏った左手を続けて床に打ち込んだ。

それと同時に、床から炎が壁のように吹き出し、私が注意していた側の通路の機械人形達を一瞬にして破壊……いえ、蒸発させた。

「嘘………」

私は思わず呆けた声を漏らす。

桁違いの威力に驚愕する私達。

その時、

「ナカジマ! アルビーノ!」

壁に開いた穴から、隊長達が姿を現す。

「「隊長!」」

私とメガーヌは同時に声を上げた。

「2人とも、無事か?」

「はい!」

「この子のお陰で」

隊長の言葉に、私達は答える。

すると、隊長はその子の方を向く。

「……ありがとう。 君のお陰で大切な部下を失わずに済んだ…………だが、聞かせてくれ。 君は管理局を嫌っているのだろう? 何故私達を助けてくれたんだ?」

管理局を嫌っているという言葉に、私は内心驚いたが、

「確かに、管理局員が俺の知らないところでどうなろうと俺は知ったこっちゃない。 けど、俺の手の届く範囲であんた等を見捨てたら、気分が悪い。 それだけだ」

その子供はそう言うと、右手の狼の口から巨大な砲身が飛び出し、その右腕を上に向ける。

――ドゴォォォン!!

その砲身から、強力な魔力弾が放たれ、天井に外まで続く穴を開けた。

すると、

「今から5分後に、この研究所を跡形も無く破壊する。 巻き込まれたくなければ、早く逃げるんだな」

そう言い残して、その子供は天井の穴から外へ飛び出していってしまう。

「隊長、どうしますか?」

私は隊長へ問いかける。

「………恐らく、あの子供は本気だろう…………仕方あるまい。 全員、撤退する!」

「「「「「「「了解!」」」」」」」




【Side Out】







【Side ゼスト】





あの後、すぐさま脱出し、研究所が見える小高い丘の上に私達はいた。

あれから、そろそろ5分。

すると、研究所の上空に、虹色の光が見える。

確認するまでも無く、あの子なんだろう。

私達は、遠目にその様子を窺っていた。

その子は、右手の巨大な砲身を眼下の研究所に向ける。

そして、その砲身から一発の魔力弾を放った。

その魔力弾は研究所に向かって一直線に突き進む。

そして、その魔力弾が研究所に着弾した瞬間、

――ドゴオォォォォォォォォォォォォォォォン!!!

一瞬にして爆発が研究所を覆い尽くした。

衝撃波が、私達がいる丘の上にまで襲い掛かる。

「「「クッ!」」」

私達は、障壁を張ってその衝撃波に耐える。

そして、その衝撃を耐え切り、研究所があった場所を確認した瞬間、

「ッ!?」

私は絶句した。

そこには、研究所など跡形も無く、ただ巨大なクレーターが存在していただけであった。

私は、慌ててこの光景を作り出したであろう少年に目を向けるが、すでにそこに彼の姿は無かった。





【Side Out】





俺は研究所を消滅させた後、スカリエッティ達との合流地点に向かった。

オメガフォームとなったのは、あの姿なら普段の俺とは結び付けられないと思ったからだ。

リンディさん達も、聖王の魔力光が発現した部分は報告してないって話だし。

瞳の色も違うから、よっぽどの事ではバレない筈。

合流地点に着くと、そこには既にスカリエッティ達がいた。

「全員無事か?」

俺はとりあえずそう聞く。

だが、

「フフフ……素晴らしいよユウ君。 まさか聖王の血筋だったとは!」

スカリエッティは興奮した様子でそう言う。

そんなスカリエッティとはうって変わって、ナンバーズたちは唖然としていた。

「ま、まさかあれほどだったとは………」

チンクが呆然と呟く。

「クッ! 私達との模擬戦は、半分以下の実力であれほど圧倒されていたのか!」

そう悔しそうな声を上げるのはトーレ。

「参っちゃうわねぇ……」

そう愚痴るクアットロ。

「凄かったわね」

そういうのはドゥーエ。

「ドクター、落ち着いてください」

我関せずでスカリエッティを落ち着かせようとしているウーノ。

「まあ、とりあえず俺はこれで帰るからな」

俺がそう言うと、

「「ッ!?」」

明らかに反応するのが約2名。

おい、まさか本気でフラグ立ってるんじゃないだろうな?

すると、スカリエッティがニヤニヤして、

「そうだ、ユウ君。 私達も、一度君に付いて行っていいかね」

そんな事を言ってきた。

「何でだよ!?」

俺は思わず突っ込む。

「いや、最高評議会の命令とはいえ、君を拉致したのは私達なんだ。 せめて君の家族に謝罪をしたくてね」

「下手すりゃ殺されるぞ。 俺も近接戦闘に限ってだが、士郎さん……俺の保護者に勝てるとは思えないからな」

俺はそう言うが、

「何、心配ないだろう。 君の話からすれば、誠意を見せればいきなり殺される事はあるまい」

スカリエッティは、あっけらかんとそう言う。

「俺もなるべく止めるようにはするが、保障は出来ないぞ」

「かまわないよ」

スカリエッティがそう言うので、俺はやれやれと思いながらも了承した。

しかし、スカリエッティの真の狙いが別にあり、そのせいで俺の気苦労が増える事になるとは、この時の俺は思ってもみなかったのだった。







あとがき


第三十五話の完成。

さて、StSキャラ第2弾、ゼスト隊の方々でした。

ご都合主義の如く生き残りました。

本当なら高町家まで書こうと思ったけど、思った以上に長くなった為、ここで区切りました。

なんか、当初の予定がズルズルと長くなっていってる………

StSに入るまで後10話ぐらいかかりそうな気がする。

というか、StSに入るのか?という疑問が多いですが、それは次回で分かると思います。

今年は、生きる意味で始まって生きる意味で終わります。

では皆様、良いお年を。





[15302] 第三十六話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2011/02/06 15:02

第三十六話 StSへのフラグ………えっ? こんな立ち方アリ?




【Side 桜】



ユウが行方不明になって一ヶ月。

父さんや恭也兄さん、アリサやすずか達があの手この手で行方を追っているが、全くの手がかりなし。

多分だけど、地球にはいないと思う。

地球の人間は、ユウを攫っても特にメリットが無い。

第一、ユウの油断で攫われたとしても、目を覚ました所で犯人達をボッコボコにして帰ってくるはずだ。

なら、犯人は次元犯罪者の可能性が高い。

クロノも、その可能性が高いと言っていた。

とりあえず、リニスが無事だから生きてはいるんだろうけど、酷い実験をされていないかと心配になる。

クロノは、管理局で正式な次元犯罪として捜査するといっていた。

けど、聞いた話では、それが却下されたらしい。

クロノの話では、その命令を誰が出したかは分からないが、かなり上の人間の可能性が高いとのこと。

明らかに怪しいと私は思ったし、クロノも、納得が行かない為に、個人的に捜査するそうだ。

そして、今日も特に進展無く一日が終わる。

私は、そんな事を考えていて、ふと時計を見ると、12時を過ぎていた。

「………もう……こんな時間か………」

私は、もう寝なきゃとベッドに向かう。

ハッキリ言って、眠くないんだけど、これ以上夜更かしすれば明日に差障る。

私はそう思ってベッドに包まろうとすると、

――コンコン

と、ドアがノックされた。

「………桜お姉ちゃん……起きてる?」

なのはの声だ。

「どうしたの? 開いてるから入っていいわよ」

私がそう言うと、ドアがガチャリと開き、なのはが私の部屋に入ってくる。

「………桜お姉ちゃん……」

なのはの顔を見て、私はなのはの心情を悟る。

なのはは不安で堪らないのだ。

だから私は、

「おいで。 不安なら一緒に寝よ?」

なのはにそう呼びかけた。

「…………うん」

なのはは小さく頷いた。




2人で布団の中に入っていると、

「……ねえ……桜お姉ちゃん……」

なのはが不安そうな声で呟く。

「……なぁに?」

私は、出来るだけ優しく尋ねる。

「ユウ君……無事だよね……?」

そんな事を言ってきたので、

「大丈夫よ。 リニスが無事なら、ユウは間違いなく生きてるわ。 それにユウの事だから、また女の1人や2人引っ掛けてるかもよ」

私は出来るだけ明るい雰囲気でそう言った。

「ううっ………それは別の意味で心配なの……」

私の言葉に別の不安を感じるなのは。

「もう寝ましょ。 これ以上起きて、明日に差し障ると、もしユウが帰ってきたときに心配かけるから」

「うん……」

なのはにそう言い聞かせて、私達は目を瞑る。

でも、その時、

――キィン

「「ッ!?」」

私となのはは同時に飛び起きた。

今の魔力反応は!

なのはと一瞬目を合わせ、勘違いじゃない事を互いに確認する。

次の瞬間には、部屋を飛び出した。

深夜だというのに、廊下を走り、階段を駆け下りる。

玄関を出て、向かうは道場。

そして、道場の入口の扉を壊れるんじゃないかというくらいの勢いで開け放った。




【Side Out】




俺はスカリエッティ達を連れて、高町家の道場に転移してきた。

道場なら、人目につかないと思ったからだ。

そして、思ったとおり、道場は暗く、誰もいない。

「ここは何処だい?」

スカリエッティが尋ねてくる。

「ここは、高町家の道場だ。 この時間帯なら、誰もいないと思ってここにしたんだ。 真夜中に皆を起こすのは迷惑だろ? つーわけで、お前らには悪いが、明日の朝まではここで我慢してくれ」

「そう言いますけど、猛スピードでこちらに向かってる魔力反応が………」

ウーノがそう口にした時、

――ガラッ

凄い勢いで扉が開け放たれる。

そこにいたのは……

「桜………なのは………」

桜とその後ろにいるなのはの名を呟く。

「………ッ……ユウッ!」

桜の肩は震えており、俺の名を口にすると、デバイスを起動させる。

あ~………やっぱり心配かけてたか……

まあ、大人しく喰らうとするか。

そして、桜がデバイスを振りかぶりつつ、俺に飛び掛ってきた。

「ユウッ!!」

俺は、ビビリながらも、一ヶ月音信不通にしていた報いだと思って、無防備になる。

そして、

「アンタまた女引っ掛けてきたわねぇっ!!」

という言葉と共に、スプレンダーブレードを放つ桜。

って、そっちかよ!!

俺は内心突っ込みながら、その魔力斬撃に吹っ飛ばされた。




で、その暫く後、真夜中であるにも関わらず、高町家、テスタロッサ家、八神家、ハラオウン家、月村家、アリサ、ユーノが全員集合していた。

でもリンディさん?

その腕に抱いてる赤ちゃんは何ですか?

そういえば、最近リンディさんとは直接会ってなかったけど……

「先ずはユウ君。 無事に戻ってきてくれて何よりだ」

「はい。 一ヶ月も連絡もせずに……本当にすいませんでした」

リンディさんの事は気になるが、今は士郎さんの言葉に、俺はそう謝る。

「それで、この一ヶ月、一体何処に? それから其方の方々は何者だい?」

士郎さんが、スカリエッティ達に視線を向けて尋ねる。

「あのっ………それをこれから説明しますが、どうか落ち着いて聞いてください。 いきなり斬りかかるとかは、ホント止めてください」

「む……? よく分からんが、わかった」

恭也さんが代表して頷く。

「まず、この人たちですけど………」

「私の名は、ジェイル・スカリエッティ。 一ヶ月前に、ユウ君を拉致した実行犯だ」

「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」

スカリエッティの言葉に、桜を除く全員が殺気立つ。

いや、ホント言う前に忠告してなかったら、マジで斬りかかって来たかもっていう位だ。

「先ずは、その事を謝罪する」

そう言って、スカリエッティは頭を下げる。

その姿に、幾分か殺気が弱まる。

すると、クロノが口を開く。

「ジェイル・スカリエッティ……次元世界でも有名な次元犯罪者じゃないか」

「まあ、その殆どは、スポンサーからの依頼だがね」

クロノの言葉に、スカリエッティがそう返す。

「スポンサー?」

クロノが聞き返す。

「クロノ、落ち着いてよく聞いてくれ。 スカリエッティのスポンサーは…………管理局最高評議会だ」

「「「ッ!!??」」」

クロノ、リンディさん、クライドさんが激しく反応した。

「そして、スカリエッティ自身も、最高評議会がアルハザートの技術を使って生み出した存在だ」

俺の言葉に、3人は更なる驚愕の表情を見せる。

「アルハ……ザート?」

なのはが、首を傾げて尋ねてくる。

「アルハザート………既に失われたとされる古代世界で、卓越した技術と魔法文化を持っていたと言い伝えられる所よ。 そこに辿り着けば、あらゆる望みが叶うとも言われているわ。 私も、単なる御伽話としか思ってなかったけど、まさか実在したなんて………」

そうプレシアさんが説明した。

「な、何で最高評議会がそんな事を………」

「単純に考えれば、人手不足解消の為でしょうね」

クロノの困惑した呟きに、桜が言った。

「管理局は、万年人手不足。 魔法を使える人材も限られてくる。 そこで、効率よく戦力を得るために………」

「私に人造魔導師や戦闘機人の研究をさせたというわけさ」

俺の言葉を引き継いで、スカリエッティが言った。

「そんな………そんなの………手段と目的を入れ違えてるじゃないか!」

クロノが思わず叫ぶ。

「仕方ねーだろ? 最高評議会は、150年前の耄碌した脳みそ達なんだから」

「ッ!? どういう事だい?」

クライドさんが、若干動揺した表情で問いかけてくる。

「聞きますけど、管理局が発足して約150年。 最高評議会が引継ぎを行なったっていう話は聞いた事ありますか?」

「…………私の知る限りは無いわ」

俺の言葉に、リンディさんが答え、視線をクロノとクライドさんに向けるも、2人も首を横に振る。

「答えからいけば、最高評議会は脳髄だけで延命している、管理局を立ち上げた本人達です」

「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」

俺の言葉に、桜とスカリエッティ達以外の全員が驚愕の表情に染まる。

「……な、何を考えてるんだ………最高評議会は………」

「さあな。 多分、自分達が居ないと、次元世界の平和と安定が守られないとでも、勘違いしてるんじゃねえの?」

クロノの呟きに、俺はそう答える。

「もし本当にそうだとしたら、とんでもない傲慢者ね」

アリサが俺の言葉に同意するように頷く。

すると、

「そして、私にユウ君を拉致するように依頼したのも、その最高評議会なのだよ」

スカリエッティがそう暴露した。

その瞬間、辺りの空気が一気に冷え込んだ気がした。

「……………………また……管理局なんか………?」

はやてが呟く。

「………管理局は……何処までユウ君の幸せを踏みにじれば気が済むんや…………」

はやてが、ゆらりと立ち上がる。

「……………もう我慢できへん………ツブすで……最高評議会………」

なんかはやてがイっちゃった目でとんでもない事口走ってるよ。

「我らもお供します」

リィンフォース、シグナム、シャマルがはやてに続くように立ち上がる。

あ、ヴィータとザフィーラが唖然としてるよ。

「沢山………“お話”しなきゃ…………」

そう言って立ち上がったのはなのは。

っておい!

魔王化してないか!?

「許せないよ!」

フェイトも立ち上がった。

って、

「おい! ちょっと待て! 落ち着け!! 例え最高評議会を潰せたとしても、そうなったら間違いなく犯罪者だぞ!!」

俺は叫んではやて達を止める。

「んな事言うても、このまま好き放題やらせといたら、ユウ君が………」

「俺の事なら気にするな。 ちょっかい出してきたら、適当にあしらっとくから」

俺は、明るめの声でそう言う。

だが、

「ダメだよ!」

アリシアが叫んだ。

「確かにユウは優しいよ。 そんな優しい所が私達は好き。 でも、このままじゃユウは不幸になるだけだよ!」

「け、けどよ………犯罪者にならずに最高評議会を潰すには、クーデターぐらい起こさないと………」

俺がそう呟いた時、

「それや!!」

はやてが叫んだ。

はやてがリンディさんの方に向き直り、

「リンディさん。 私、管理局入るで」

とんでもない事を言い出した。

「えっ? はやてさん?」

リンディさんも驚いている。

「リンディさん。 今の話を聞いて、なんとも思わんかったんですか!? 確かに管理局は世界の平和の為に戦っとるのかもしれへん! けど、その為なら、一部の人達が犠牲になるのは構わへんってことですか!?」

「……はやてさん! まさか貴女ッ!?」

「私がクーデター起こしたる! 最高評議会を潰して、二度とユウ君に手出しせんようにしたる!!」

はやてがとんでもない事を言う。

「私も手伝う!」

「私も!」

なのはとフェイトが同意するように叫んだ。

その瞬間、

「ダメだ!!」

俺は叫ぶ。

「そんなの危険すぎる! 俺の為にそこまでする必要はない!!」

俺はそう反対するが、

「…………ユウ君、前に言ってたよね?」

なのはが、俺の言葉に対して口を開く。

「ユウ君が戦ってるのは、全部自分の為だって………それと一緒だよ。 これは、私達が自分の為にすることだよ」

「そう……私達がそうしたいからそうするだけ。 誰の為でもない。 自分自身の為に」

「ッ!」

なのはとフェイトの言葉に、俺は言葉をつまらせる。

「私達は、ユウ君と幸せになりたいんや。 だから、その幸せを邪魔するんなら、最高評議会だろうと叩き潰したる!」

「く………だが、最高評議会を潰した所で、人手不足が解消されなければ、また同じ事を考える人間は出てくる!」

はやての言葉に、そう言うと、

「…………管理局の人手不足って………要するに魔導師の数が足りないって事なんですよね?」

すずかがリンディさんに向かって問いかける。

「え? ええ、そうだけど………」

リンディさんが頷くと、

「じゃあ、もし普通の人でも魔法が使えるようになれば、人手不足も解消できるってことですよね?」

すずかの更なる問いに、

「ええ……そうなるけど……」

リンディさんが若干戸惑いながら頷く。

「よしっ………頑張ってみる」

すずかがなにやら気合を入れている。

ってまさか、

「まさかすずか、一般人でも使えるデバイスを作るつもりか!?」

「うん!」

俺の言葉に、すずかが迷い無く頷く。

「私も乗ったわその話!」

アリサと、

「私も手伝うよ!」

アリシアが便乗した。

「お前らまで!」

俺は思わず叫ぶ。

すると、

「ユウ、アンタの負けよ」

桜がそう言ってきた。

「桜、お前まで!?」

「なのは達は本気よ。 少なくとも、言い聞かせるだけで曲げるような覚悟じゃないわ」

「ッ…………」

桜の言葉に俺は俯く。

「それでも、どうしても納得できないって言うのなら、覚悟を示すわ」

「何っ?」

俺は驚いて顔を上げる。

「私達とユウで模擬戦。 オメガフォームには流石に敵わないから、ブレイズとアイシクルのユウを私達で倒す。 そうしたら、認めてあげて」

桜はそう言った。

「…………俺が勝ったら、大人しくやめてくれるんだな?」

俺が確認の為に聞くと、なのは達は迷い無く頷いた。

「………わかった。 それでお前達の気が済むのなら」

俺はそれを了承した。

俺は、なのは達にそんな危険な事をやらせるつもりは無い。

だから、本気で倒すつもりだ。

日時は、次の休日。

そこで、その話は一旦打ち切りとなった。






「ところでリンディさん。 さっきから気になってたんですが、その子は?」

俺は、赤ん坊を抱いているリンディさんに尋ねる。

すると、リンディさんは、顔を緩ませ、

「もちろん私とクライドの子よ」

リンディさんはそう笑みを浮かべていった。

「「「「「「「「「えぇえええええええええええええっ!!??」」」」」」」」

全員が驚く。

確かにその子はリンディさんと同じ、翠の髪をしている。

っていうか、守護騎士でも子供作れるのか!?

「名前はリーナ。 女の子よ」

リンディさんがそう紹介する。

「「「「「「わぁ~」」」」」」

なのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずかが声を漏らす。

その赤ん坊、リーナはスヤスヤと眠っている。

っていうか、さっきから散々大声出してるのによく起きないな。

まさかフェイトの、クロノ義妹フラグが消えたと思ったら、本当の妹が出来るとは…………

俺はクロノを見る。

「な、何だ?」

クロノは、若干引き攣った顔で尋ねてきた。

「………いや、とりあえず頑張れよ。 クロノお兄ちゃん」

「ゴホッ!? な、何を言い出すんだ君は!?」

「いや、兄貴なら妹を守るのは当然だろ?」

「そ、それはそうだが………」

「頑張れクロノお兄ちゃん。 負けるなクロノお兄ちゃん」

「その言い方は止めろ!」

クロノは顔を赤くして叫んだ。




それから落ち着いて、

「それにしても、ジェイル・スカリエッティ。 あなたが来るとはね」

プレシアさんがスカリエッティに話しかける。

「フッ、奇妙な縁だね、プレシア・テスタロッサ」

スカリエッティもそう返した。

「えっ? 母さん、この人知ってるの?」

フェイトがそう尋ねた。

「ええ……一応ね……」

プレシアさんはとりあえずそう言う。

「君がフェイト・テスタロッサだね。 プロジェクトFの基礎を組み立てたのは私だよ。 これがどういう意味かわかるかな?」

「あ………」

スカリエッティの言葉に、フェイトは声を漏らす。

「プレシア・テスタロッサが君の母親とするなら、私はさしずめ父親といったところか………さあ! 私のことをお父さんと「「呼ばせんな(ないで)!!」」ぐはっ!?」

ふざけた事をのたまったスカリエッティに紫と青の魔力弾が直撃する。

1つはプレシアさん。

もう1つは俺の放った魔力弾だ。

「あなたと間接的とはいえ夫婦になるなんて………想像しただけでも鳥肌が立つわ!」

「俺もテメーを将来的に父親とは呼びたくねえ!」

プレシアさんと俺がそう言うが、

「ッ!?」

フェイトが顔を真っ赤にした。

何で?

「ユユユ、ユウ! い、今のって……!」

フェイトの口が回らない。

「………ふ……ふふ……アハハハハハハハハッ!!」

プレシアさんがいきなり笑い声を上げる。

「やったわフェイト! ユウ君が認めてくれたわよ!」

「???」

プレシアさんの言葉に、俺は首を傾げる。

「ユウ、アンタ自分の言った事思い返してみなさい」

桜に言われ、俺はよく考える。

「……………」

その答えに気づき、俺は冷や汗をだらだらと流す。

「い、いや今のは言葉のアヤでっ………」

「あらあら、言い訳は見苦しいわよユウ君!」

『先ずはフェイトがマスターのハーレム一番乗りですね』

『この調子でどんどん増やしていきましょう。 というより、マスターが認めれば殆どハーレム入りですよ』

何故かこういうときに限って余計な事を言うMyデバイス共。

「お前らは黙ってろ!」

そのとき、魔力弾を受けて倒れていたスカリエッティが起き上がる。

「フフッ……甘いねユウ君。 フェイト嬢の父親にはなれなくとも、君が私の娘の誰かと一緒になれば、君は私をお義父さんと呼ばなければいけないんだよ?」

その言葉に過剰に反応したのが、

「「ドクター!! 私は別にユウの事などッ!!」」

トーレとチンクがそう声を上げた。

すると、スカリエッティはニヤニヤとして、

「おやぁ? 私は『娘の誰か』と言っただけで、トーレやチンクとは一言も言ってはいないが?」

「「うっ!」」

スカリエッティの言葉に、顔を真っ赤にする2人。

おいおい、マジでか?

「むぅ~~~! ユウ君! 私達のことも認めるの~~~~~!!」

なのはが叫ぶ。

俺は、

「落ち着けお前ら~~~~~~~~~!!!」

としか叫ぶ事が出来なかった。






あとがき


第三十六話の完成。

全体的にグダグダしてるな~。

上手くかけたと思うのは最後のひと悶着だけ。

さて、StS編へのフラグですが、元から上層部を潰す事前提で管理局に入局することです。

ただし、その前には最強のオリ主が立ちはだかってます。

さあ、ユウ君はフラグを叩き折る事が出来るのか?

それともなのは達が思いを貫き通すのか?

次回をお楽しみに。




[15302] 第三十七話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe
Date: 2011/02/06 15:00


第三十七話 少女達の覚悟



俺が高町家に戻ってきて数日後。

今日は、以前約束した模擬戦の日。

俺が勝てば、なのは達の管理局介入を止めさせる事が出来る。

ただし、オメガフォームは使用不可。

以上の条件で、俺となのは達の模擬戦は行なわれる。

俺達は、模擬戦を行なう荒野の世界に来ていた。

とりあえずアースラ組が誤魔化してくれるので、管理局にばれる心配は無い。

因みに、模擬戦を行なう魔導師組の他にも、立会人という名目で、高町家やテスタロッサ家、月村家、アリサといった非魔導師組と、何故かスカリエッティ一味が見届ける事になっている。

俺は、ブレイズのバリアジャケットを纏い、なのは達と相対する。

なのは達も、既に準備が完了しているようで、バリアジャケットを纏って、俺を見ていた。

それにしても、

「リニスもそっち側か………」

俺は、若干呆れを混ぜてそう呟く。

「ええ。 私もなのは達に賛成です。 ユウは、自分を大事にしなさすぎですから」

リニスはそんな事を言う。

「いや、自分を大事にしていないわけじゃないぞ。 基本俺は、自分第一な人間だし。 偶々お前らが特別なだけであって………」

「その“特別”な側から見れば! の話です!」

リニスは強い口調で言ってくる。

自分ではよく分からないが。

「まあいいや。 ともかく始めよう。 最初に言っておくけど、手加減するつもりは全くないからな!」

「良くありませんが、いいでしょう。 彼女達を舐めていると、痛い目を見るかもしれませんよ」

リニスは、そう意味ありげな言葉を呟いて、戦闘態勢に入った。




【Side 恭也】



俺は、ユウと桜、なのは達の模擬戦を見届けに来ていたのだが………

目の前で起こっている出来事は、本当に現実なんだろうか?

いや、桜達が魔法使いという事は、話に聞いていたし、アリサちゃんとすずかちゃんが誘拐されたときにも、その力の一端を見ている。

だが………

「サンクチュアリバインド!」

「チェーンバインド!」

「縛って! クラールヴィント!」

「てぉらぁああああああっ!!」

ユーノ、アルフ、シャマルさん、ザフィーラが、ユウの動きを止める。

「「ダブルポジトロンレーザー!!」」

桜となのはが放つ、漫画やアニメで出てくるようなビームみたいな光線。

『Sonic move.』

「はぁあああああっ!!」

フェイトちゃんが、神速に近いスピードで移動し、その手に持った鎌のような武器で切りかかる。

「紫電一閃!!」

シグナムさんが放つ、炎を纏った斬撃。

「ギガントハンマー!!」

ヴィータちゃんが、明らかに先程よりも巨大化したハンマーで殴りかかる。

「闇に沈め……デアボリックエミッション!!」

銀髪のはやてちゃんが放つ、全てを飲み込む闇の球体。

「セブンヘブンズ!!」

リニスが放った7つの光の球。

それらの攻撃が、ユウに直撃する。

大爆発に飲まれるユウ。

魔法に疎い俺から見ても、それらの攻撃は尋常ではない破壊力を秘めている事が分かった。

だが、その一斉攻撃を受けても、ユウは大したダメージも感じさせずに立っていた。

そして、次の瞬間には、一方的な戦いが始まった。

動き始めたユウに光弾が次々と撃ち込まれるも、ユウはそれをものともせずに突っ切り、腕に装着していた武器を振るう。

それだけで凄まじい衝撃波が発生し、なのは達の体勢は崩れ、隙だらけになってしまう。

その隙を、ユウは逃さなかった。

一瞬の内に、それぞれの目の前へ移動し、一撃の元に吹き飛ばす。

全員大地に叩きつけられ、勝負はついた。

「圧倒的だな……」

クライドさんが呟く。

「半ば予想していた事だけど……レベルが違う」

クロノ君もそう漏らした。

「う~ん……クライドの魔力が上がった秘密が分かるかと思ったんだけど………私の勘違いだったのかしら………」

「どういうことです?」

リンディさんの呟きに、プレシアさんが尋ねる。

「ええ……ここ半年ぐらいの話なんですが、クライドの魔力が急激に上がっているんです。 元々のクライドの魔力はSランク前後だったのですが、今のクライドはSS+からSSS-まで上がっているんです」

その言葉に驚愕の表情を浮かべるプレシアさん。

「それで、この模擬戦で何か分かるかと思っていたんですが………」

『それなんですけど艦長』

突如モニターが開き、エイミィさんが話しかけてくる。

『なのはちゃん達の魔力なんですが、ちょっと気になることが………』

「如何したの?」

『はい。 なのはちゃん達の魔力を計測していたんですが、その数値が若干ですが闇の書との戦いの時よりも低くなっているんです』

「えっ? 低く?」

『はい。 しかも全員です』

その言葉に、リンディさんは考え込む。

「何かおかしい事でも?」

俺は思わず尋ねた。

「ええ………魔力も身体と同じく成長するごとに上がっていきます。 勿論、ピークを過ぎれば徐々に衰えていきますが、今のなのはちゃん達の年齢からすれば、魔力が上がる事があっても、下がるという事は考えられないんです」

「ならば、考えられる事は………」

「意図的に力を抑えている……?」

俺達は、思わずなのは達の方に振り向いた。

そこには、なのはに腕の武器を突きつけているユウの姿があった。





【Side Out】




俺は、地面に叩きつけられながらも、懸命に起き上がろうとしているなのはにドラモンキラーを突きつけた。

「諦めろ。 お前達じゃ俺に勝てない」

だが、そう言われたなのはは、ニッコリと笑みを浮かべる。

俺は理解が出来なかった。

「何で笑えるんだ?」

俺は思わず問いかける。

「やっぱり優しいね……ユウ君」

なのははそう呟いた。

「自分が傷ついてまで私達を守ろうとしてくれる。 私達に傷ついて欲しくないから、こうやって本気で私達を倒そうとしてくれた……」

「…………ああ……その通りだ。 だから、馬鹿な真似は止めてくれ!」

俺はなのはの言葉を肯定する。

だが、

「でもね………」

なのはは顔を俯かせると、レイジングハートがバスターモードに変形する。

「だからこそ、私達はユウ君に甘えてるばっかじゃダメなんだ!!」

なのはは、超至近距離でポジトロンレーザーを放つ。

突然の事に、俺は思わず押され、飛び退いてしまった。

見れば、なのはがレイジングハートを支えにして立ち上がる。

そして、他のメンバーも、おぼつかない足取りながらも立ち上がった。

「桜お姉ちゃん!!」

なのはが桜に呼びかける。

「ええ!」

桜が応え、レイジングソウルを掲げる。

そして、俺を見据え、

「ユウ! 今から見せるのが、私達の覚悟の証よ!!」

そう叫んだ。

そして、

「不可視魔法解除!」

桜の言葉と共に、なのは達の両手、両足に枷のようなバインドが発生する。

「なっ!?」

「トレーニングバインド解除!!」

桜の号令と共に、全員の枷が弾け飛ぶ。

その瞬間、溢れ出す膨大な魔力。

「マジか!?」

俺は思わず驚愕した声を漏らす。

「シャマル!」

はやてがシャマルに呼びかけた。

「はい! ファイナルヒール!!」

シャマルが自分を中心に魔法陣を発生させる。

そして、その魔法陣の中に居たなのは達のダメージが見る見るうちに回復していく。

「ッ!? させるか!」

俺は、両手に魔力を集中させ、

「ガイアフォーーース!!」

手加減無しのガイアフォースを放った。

「ユーノ!」

「分かってる!」

すると、ザフィーラとユーノが飛び出し、

「テンセグレートシールド!!」

「ゴッドブレス!!」

ザフィーラがフィールド系の防御魔法で身体を張って立ち塞がり、そのザフィーラをユーノが強固な結界で覆う。

ガイアフォースを受け、爆発に飲まれるザフィーラ。

しかし、

「嘘だろう!?」

そこには、騎士甲冑をボロボロにしながらも、ガイアフォースを耐え切ったザフィーラの姿。

「フッ、盾の守護獣の面目躍如といった所か」

ザフィーラは笑みを浮かべる。

俺はすぐに気を取り直し、バリアジャケットをアイシクルに変更する。

「これなら如何だ!」

俺は、全武装を発射し、無数のミサイルがなのは達に襲い掛かる。

「甘いで! ユウ君!!」

今度は、リインフォースとユニゾンしたはやてが前に出る。

はやては杖を構え、

「『エンドワルツ!!』」

はやてを中心に凄まじい魔力の奔流が発生し、ミサイルを次々に吹き飛ばしていく。

「なっ!?」

俺が声を漏らした瞬間、

「隙あり!」

アルフがいつの間にか俺の背後にいた。

アルフは、右手に魔力を集中させ、

「ネイルクラッシャー!!」

俺の頬を思い切り殴りつけた。

「がっ!?」

俺はそれを喰らって仰け反る。

その一撃も俺には信じられなかった。

いくら防御の低いアイシクルとはいえ、ダメージが通った事に、俺は驚きを隠せない。

「驚いている暇は無いぞ! ユウ!!」

声がした方を向いてみれば、シグナムが地面に剣を突き刺し、八方に炎が伸びている。

これは、

「九頭龍陣!!」

8匹の炎の龍が俺に襲い掛かる。

「このっ!」

俺はミサイルランチャーを具現させ、

「ガルルトマホーク!!」

炎の龍を迎撃する為にミサイルを放つ。

が、その前にシャマルが空間転移で現れ、

「ジェネラスミラー!!」

手を翳したシャマルの前に旅の鏡のような空間の穴が2つ発生し、ガルルトマホークはその片方の穴に吸い込まれる。

と、同時にもう片方の穴からガルルトマホークが飛び出してきた。

「空間反転!? 冗談だろ!?」

俺は驚きつつも、咄嗟にガードする。

「があっ!?」

だが、ガルルトマホークの威力は我ながら相当なもので、無茶苦茶痛い。

その隙を逃さず炎の龍が俺に喰らいつく。

「テスタロッサ!」

シグナムが叫ぶ。

「はい!」

フェイトが俺より少し離れた所でバルディッシュ・ザンバーを振りかぶっている。

その刀身は凄まじく長い。

「天羽々斬!!」

フェイトがそれを薙ぎ払う。

「ぐあっ!」

その斬撃を受け、アイシクルのバリアジャケットに罅が入る。

「こいつも喰らっとけ!!」

ヴィータが、グラーフアイゼン・ギガントフォルムを振りかぶる。

「アージェント……フィアーーーーーッ!!」

そのハンマーが振り下ろされ、俺に直撃した瞬間、打撃面で爆発が起こり、俺は地面に叩きつけられた。

「がはっ!!」

地面に叩きつけられた俺の上にリニスが現れ、

「すみませんが、容赦はしませんよ!」

リニスの前に、雷の矢が幾つも現れる。

「ライトニングスピア!!」

その矢が一斉に撃ち出され、俺は地面に縫い付けられる。

「くっ!」

俺は、その矢を振り解こうとしたが、

「ユウ!」

「ユウ君!」

リニスの更に上には、なのはと桜の姿。

しかも2人の頭上にはそれぞれ巨大な魔力球。

「「メガデェェェェェェス!!」」

2人同時に放たれる魔力球。

「やべっ!」

俺は成す統べなくその魔力球に飲まれる。

が、寸前で俺はバリアジャケットをブレイズに変更し、ダメージを抑える。

俺は、爆発範囲から飛び出すと、

「あっぶねー。 アイシクルだったら耐え切れなかったかも………」

凄まじい威力に声を漏らす。

俺は、気を取り直してなのは達に向き直り………絶句した。

そこには、なのは、桜、フェイト、はやての頭上で輝くシャレにならない魔力が込められた魔力球。

「ユウ! ガイアフォースで来なさい!!」

桜が、

「ユウ君を撃ち破って、私達は自分の道を進むよ!」

なのはが、

「ユウ、これが私達の覚悟!」

フェイトが、

「私達を止めたいなら、本気で来んと痛い目見るで!」

はやてが叫んだ。

なのは達の姿に、俺は本気だと感じた。

ならば、俺の答えは唯1つ。

俺は、両手の間に魔力球を発生させ、魔力を込め続ける。

「うぉおおおおおおおおおおっ!!」

俺は叫び声を上げながら、ブレイズの限界ギリギリまで魔力を込め続ける。

正真正銘、ブレイズ状態での本気のガイアフォース。

「行くぞ!!」

俺は振りかぶる。

「ガイア………フォーーーーーーーースッ!!!」

俺はなのは達にガイアフォースを放った。

「「「「『ギガデェェェェェス!!!』」」」」

なのは達は迷うことなく超圧縮魔力弾を放った。

――ドゴォォォォォォッ!!

2つの魔力弾は俺達の中央でぶつかり合い、せめぎ合う。

「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」

「「「「『やぁああああああああっ!!』」」」」

俺は、魔力弾の激突越しになのは達を見た。

その表情は、必死であり、苦しそうだ。

だが、絶対に引かないという覚悟が感じ取れる。

「なのは……桜……フェイト……はやて……」

俺は、ふと目をそらしてシグナム達に視線を向けた。

シグナム達は何の不安もなく、その勝負を見ている。

今の内に俺に攻撃すれば勝率は上がるというのに、そんな様子は全くない。

俺の覚悟と、なのは達の覚悟のぶつかり合いの邪魔をしない。

それがシグナム達の覚悟なんだろう。

「………………」

俺は……

その瞬間、ギガデスがガイアフォースを撃ち破った。

「「「「いっけえぇぇぇぇぇぇっ!!!」」」」

超圧縮魔力弾が俺に迫る。

俺は、思わず笑みを浮かべた。





【Side 桜】



ギガデスに飲み込まれるユウ。

でも、私達は油断をしない。

ユウが、このぐらいでやられるとは思えないから。

次の瞬間、ギガデスが真っ二つに切り裂かれる。

思ったとおりの光景に、私達は身構えた。

けど、その先に出てきたユウは、

「あ~あ、思わず使っちまったぜ」

オメガフォームを纏っていた。

ユウは私達を見ると、

「オメガフォームを使った。 この勝負、俺の負けだ」

そう言って、あっさりと負けを認めた。

「ど、どういうつもり?」

私は思わず、問いかけた。

「どうもこうも、お前らの覚悟にはお手上げだと言ったんだ」

ユウは、軽い口調でそう言った。

「え……じゃ、じゃあ……」

なのはが、その言葉の意味を理解したのか、確認しようとする

「ああ。 お前らの好きにしろ。 俺は何も言わん」

その言葉を聞くと、なのは、フェイト、はやてが、

「「「やったぁ!!」」」

喜びの声を上げた。




【Side Out】



俺が喜んでいるなのは達を見ていると、

「よかったの? 完全に全力を出し切ったわけじゃないんでしょ?」

桜が問いかけてきた。

「いや、どちらにせよ俺は負けていたさ。 俺にはあいつ等の覚悟を曲げるだけの覚悟がなかったって事だな」

「そう」

「ところで、お前も管理局に入るのか?」

「それも考えているんだけどね……他の選択もあるから、どうしようかなって思ってるのよ」

「まあいいさ。 好きにしろ」

「言われなくても、そうさせてもらうわ」

そうして、俺達は笑い合った。




【Side リンディ】



目の前の光景が信じられなかった。

「エイミィ……今のなのはさん達の魔力ランクは?」

私は、何とかそう問いかける。

『は、はい……なのはちゃんとフェイトちゃん、リニスさん、シグナムが推定SSS-、ヴィータちゃん、アルフ、ザフィーラがSS+、ユーノ君、シャマルさんがSS………桜ちゃんとはやてちゃんに至っては、SSSを記録しています』

「信じられないわ………」

正直に言って、この前はやてさんが言った通り管理局の上層部を潰そうとしたら、ほぼ確実に達成できると思う。

特に、地上は人手不足が海よりも深刻だし……

いえ、そんなの関係無しにさっきのギガデスを撃たれたら、防壁なんて意味を成さずに地上本部ビルが消滅するわね。

止めてくれたユウ君には感謝ね。

それはともかく、これでなのはさん達は管理局に入る事になった訳だけど、クーデター起こす前提で入局するっていうのはちょっと複雑だわ。

いえ、彼女達には彼女達の幸せがある。

その幸せを壊していい権利なんて、管理局だろうと持ってはいない。

大を救うために小を犠牲にする。

それが歴史で繰り返されてきた事だろうと、納得は出来ない。

私も覚悟を決めよう。

少なくとも、今の最高評議会は認められない。

次の世代を信じないで、何が平和なんだろうか?

私は、腕の中にいるリーナを見る。

そう、未来は子供たちが作っていくもの。

古い世代は、新しい世代の手助けをして行こう。

私はそう決心し、隣のクライドの手を握った。

クライドも微笑んで握り返してくる。

あの子達が作り出していくだろう未来を感じながら………








あとがき

第三十七話完成。

う~ん、上手く行かない。

なんか面白みに欠けるなぁ……

グダグダしてるし、話が繋がらない。

まあ、とりあえずユウ君負けました。

なのは達の魔改造レベルが簡単に出ましたが、やり過ぎ?

さて、次からStS編へ本格的に向かっていきます。

次回は、あの子が出てきます。

では、次も頑張ります。




[15302] 第三十八話
Name: 友◆05c99d4d ID:315f8cfe
Date: 2011/03/13 18:58
すみません。
自分のミスでトリップが変わってしまいました。
直らないのでこのまま行きます。







第三十八話 俺の誕生日は(以下略)



さて、俺となのは達との模擬戦から早一年近く。

とりあえず、現状を簡単に説明すると、

管理局員となったのは、なのは、フェイト、はやて、リインフォース、シグナム、シャマル、ザフィーラ。

アルフもフェイトの使い魔として登録されている。

因みに余談だが、一度だけリインフォースにユニゾンしてくれと頼まれた。

俺もユニゾンには興味あったから了承してユニゾンしたんだが、リインフォースは「ふむふむ、なる程」とか呟いて1人でなにやら納得していた。

ユーノは、以前断った司書の誘いを受け、無限書庫の司書となった。

ただし、自分の趣味でもある遺跡発掘を両立させる事を条件にだ。

驚いたのが、ヴィータがユーノについていったこと。

俺は、ヴィータに無限書庫で仕事が出来るのかと思ったが、ユーノの護衛や古代ベルカ語の翻訳などで役に立っているとか。

意外だな。

アリサ、すずか、アリシアは、デバイスの知識を得るために猛勉強中。

因みに、講師はリニスとプレシアさんだったりする。

3人とも、凄まじい勢いで知識を身に付けていくので、講師役の2人は驚いていた。

スカリエッティ一味だが、はやての案で、名目上最高評議会の元に戻る事となった。

なんでも、俺を拉致した償いとして、管理局のいう事を聞く振りをしてスパイ活動しろ、って事らしい。

スカリエッティもそれに了承した。

理由は、

「全て終わった後に自由が約束されているなら別にかまわない。 最高評議会の元なら残りの娘達が目覚めるまで堂々と研究できるものだ」

らしい。

桜は、結局管理局には入らなかった。

現在では桃子さんの下、パティシエ見習いとして日々頑張っている。

何故管理局に入らなかったのかを聞くと、

「ユウを一人にしたら何かと心配だから」

だそうだ。

俺ってそんなに信用……無いな。

実際拉致されたし………

あと、ファリンさんだが、既に翠屋のドジっ子ウェイトレスとしての地位を築きつつある。

その度に俺がフォローしているわけだが。

最後に俺だが、士郎さんの下でコーヒーの淹れ方を始めとした喫茶店のマスターとしての心得を教わっている。

マジで士郎さんや桃子さんは、俺に翠屋を継がせるつもりらしい。

まあ、忙しいけど、結構やりがいあるし問題は無いんだけど。

因みに現在の俺のコーヒーは、士郎さんに言わせれば、まだまだと言った所だ。

そして、これとは別に、管理局に繋がっている違法研究所をオメガフォームで時々潰している。

これは、特にやっている事が許せないとか、そういった正義感の為にやっている事ではなく、単にクーデターの準備をしようとしているなのは達に注意が向かないようにするためのものだ。

外に気が向けば、その分だけ内部への注意は弱くなる。

この1年で3つほど違法研究所を潰しているが、流石に管理局は自分たちのやっている事を公には出来ないのだから、当然ながらオメガフォーム姿の俺は指名手配されている。

罪状は、健全な研究機関を破壊した事及びそこに居た人達の大量殺人。

通り名は『血塗られた聖王』。

何言ってるんだか。

序に言っておくと、俺は研究機関を跡形もなく破壊はしているが、人は1人も殺していない。

よく二次小説とかでやっている事が許せないとかで皆殺しとかする奴がいるが、俺は基本ヘタレなんで人殺しなど怖くて出来ん。

研究者達は、ガルルキャノンで岩山吹っ飛ばしたりグレイソードで直接脅せばいとも簡単に逃げていく為、無人になった研究施設をガルルキャノンで吹っ飛ばしているだけだ。

それでも、人が死んでいるなら、それは口封じの為に殺されたんだろう。

ったく、正義の組織が人に罪を擦り付けんなよ。

以上、ここ一年間はこんな感じだ。




でだ、しつこいとは思うが今日も1月25日。

俺は毎年恒例の両親の墓参りに来ているわけだが、

「……………何でこんな大人数なんだよ?」

いつもは1人、もしくはリニスと2人で墓参りしているはずだが、何故か今回はなのは達が全員付いて来た。

「当然じゃない。 一昨年、去年と碌でもない目に遭ってるんだから。 皆、ユウの事が心配なのよ。 勿論私もね」

桜がそう言った。

「まあ、その通りだから何も言い返せないけどさ………」

「安心しなさい。 墓前で騒ごうなんて思ってないから」

俺の呟きに、桜がそう答えた。




桜の言うとおり、俺が墓参りをしている間は皆は大人しくしていた。

そして、来た時と同じように皆で家へ帰ろうとすると、

「あ、ユウ君。 翠屋に行こうよ」

と言う、なのはの鶴の一声によって、翠屋行きが決定した。

すると、翠屋のドアには貸切の札が掛かっている。

「あれ? 今日って翠屋を貸切にする予定なんてあったけ?」

俺がそう尋ねるように呟くと、

「まあ、いいからいいから」

そう言ってフェイトに背中を押される。

俺は、フェイトに促されるままに翠屋のドアを開けると……

――パパパパパパパンッ!!

炸裂音と共に、キラキラした紙や紐が俺に降りかかる。

クラッカーだ。

「え?」

俺は思わず声を漏らした。

その瞬間、

「「「「「「「「「「「ユウ(君)! 誕生日おめでとう!!」」」」」」」」」」」

後ろにいたなのは達も含めて一斉に唱和した。

「え? え?」

状況が掴めずに軽く混乱する。

翠屋のテーブルには豪勢な料理が並んでいた。

「ユウ君。 今日はユウ君の誕生日だよ?」

なのはがそう言ってくる。

「いや……それは分かってるんだけど………これは?」

「だって、最近のユウ君の誕生日は、碌でも無いことばっかやん。 一昨年はブラックさんの襲撃。 去年はユウ君拉致されたやん」

「だから、今年は派手にやろうって事になったんだよ」

俺の言葉に、はやてとアリシアがそう言った。

「はは………なる程………」

俺は若干苦笑すると、店の中を見渡す。

そこには、高町家、テスタロッサ家、月村家。

流石にハラオウン家は居ない様だが、私服姿のトーレとチンクがいた。

何か新鮮だな。

「………皆……ありがとう」

俺は、感謝を込めてそう呟いた。





それでパーティーが始まって少しすると、

「ユウ君。 はい、プレゼント!」

なのはが、プレゼントの箱を渡してきた。

「あ、サンキュ」

俺が受け取ると、それを筆頭に、フェイト、はやて、アリシア、アリサ、すずか、シグナム、シャマル、リニス、ファリンさんと次々にプレゼントを渡してくる。

すると、トーレとチンクが俺の前に来て、

「あ~、すまん。 私達は急に知らせを受けたからプレゼントは用意出来なかった」

トーレがそう言う。

「いや、来てくれただけで嬉しいよ」

俺がそう返すと、

「だが、その代わりと言ってはなんだが、新しい妹達を紹介する」

「へ?」

チンクの言葉に、俺が声を漏らすと、

「お前達、出て来い!」

トーレの言葉と共に、

「ジャジャ~ン!」

床から水色の髪の少女と茶色のロングヘアーを後ろで縛っている少女が飛び出した。

「どわっ!?」

突然の事に、俺は思わず驚いた声を漏らす。

「初めまして! No6セインです! よろしく!」

水色の髪の少女、セインはそう元気良く挨拶する。

「No10ディエチ………よろしくお願いします」

対して茶髪の少女、ディエチは淡々と言葉を紡ぐ。

「あ、ああ。 俺は利村 ユウ。 よろしく」

俺は驚きながらもそう返した。

「セインはともかく、ディエチは感情が希薄だが、悪い娘ではない。 皆も仲良くしてやってくれ」

「「「「「「は~い!」」」」」」

トーレの言葉に、なのは達が答えた。

すると、

「そういえば桜お姉ちゃん? 桜お姉ちゃんはユウ君にプレゼント渡してないけど、どうしたの?」

なのはが、まだ桜が俺にプレゼントを渡していないのが気になったのかそう尋ねる。

「え、えっと………私のは……その………」

桜は何やら顔を赤くして言いよどんでいる。

「どうした?」

俺が尋ねると、

「フフッ、桜はもうプレゼントは渡しているわよ」

桃子さんが微笑んでそう言った。

「え?」

受け取った覚えの無い俺は首を傾げる。

そんな様子を見た桃子さんが、

「気づかなかった? 今日のユウ君のバースデーケーキは、全部桜が作ったのよ」

笑ってそう言った。

「「「「「「「「「「ええ~~~っ!!?」」」」」」」」」」

驚く俺達。

「こ、これでも母さんの下で1年近くも教わってきたのよ! ケ、ケーキぐらい出来て当然よ!」

桜はそう言うが、照れているのか顔が赤い。

「へ~、これを桜が」

俺は感心してそう呟く。

「い、一応母さんからは及第点を貰ったんだけど……どうだった?」

桜は若干恐る恐る尋ねてくる。

「ああ、美味かったぞ。 凄いな」

俺は本心でそう言った。

「そ、そう? ありがと……」

桜は顔を染めつつそう呟いた。

その時、

「すまない。 準備に手間取った」

リインフォースが店の奥からプレゼントの箱を持って現れた。

プレゼントの箱は、縦、横、高さ共に30cm位の大き目の箱だ。

「ユウ、これが私からのプレゼントだ」

そう言って、リインフォースがそのプレゼントを差し出してくる。

「ああ、ありがとう」

俺はお礼を言って受け取った。

「それは出来れば、今あけて欲しい」

リインフォースがそう言ってくる。

「え? いいのか?」

俺がそう聞くと、

「ああ。 すぐに開けてやってくれ」

「?」

“開けてやってくれ”と言う言い方に少し引っ掛かったが、俺は箱を縛っていたリボンを解く。

そして、蓋を開けると、

「どっかーーーん!!」

そんな声と共に、何かが箱の中から飛び出してきた。

「あははははっ!」

飛び出した何かは俺の周りをクルクルと飛び回ると、

「初めまして! 2代目祝福の風、リインフォース・ツヴァイです! よろしくですよ~!」

身長約30cm、ちっちゃなリインフォースことリインフォース・ツヴァイが俺の前にいた。

「リ、リインフォース?」

俺はリインフォースに顔を向けて、どういう事?と訴えかける。

「私がユウのサポートの為に生み出したユニゾンデバイスだ。 ユウの凍結の魔力変換資質と相性を良くしてある」

「い、いつの間に……って、結構前にリインフォースがユニゾンさせてくれって頼んできたのって!?」

俺は心当たりに思い当たり、リインフォースに確認を取る。

「その通りだ。 あのときに、ユウの身体を解析させてもらった。 ツヴァイは、そのデータを元に生み出したんだ」

「は~~………」

俺は感心していいのか呆れていいのか分からず、声を漏らした。

俺はツヴァイに顔を向けると、

「え~と、なんて呼べばいいんだ?」

原作ではリィンと呼んでいたが、俺は一応尋ねる。

「リィンはリィンですぅ!」

あ、やっぱそうやって呼ぶのか。

「じゃあ、リィン。 よろしくな」

「はいです!」

俺の言葉に、リィンが答える。

「ならばユウ。 早速ユニゾンしてみてくれ」

リインフォースにそう言われ、俺はリィンに手を差し出す。

「いいか?」

俺が聞くと、

「もちろんですぅ!」

元気良く言葉が返ってきた。

リィンが俺の差し出した手に触れ、

「「ユニゾン・イン!」」

俺達は光に包まれユニゾンした。

光が収まり、俺は身体の各部を確かめるように動かす。

「リィン、問題ないか?」

『はい! 全て良好! 相性もばっちりですぅ!』

リィンは俺の中で嬉しそうに言った。

「ん?」

ふとなのは達を見ると、

「ふわ~………」

「こういうのも、中々……」

「印象かわるわ~……」

何やら上の空。

「どうした?」

俺が尋ねると、

「はい」

桜が鏡を手渡してきた。

俺が鏡を受け取って鏡を覗くと、

「おお!?」

俺も軽く驚いた。

黒髪は全て銀髪になり、目は両目とも青くなっている。

目の色は、凍結の魔力変換資質が強く出た結果かな?

虹色の魔力光を発現させた時にも、片目は青くなるしな。

そして、俺は思った。

「………これなら……出来るかも………」

俺は、前から考えていた事を実行する事にした。

「アイシクル! セットアップだ!」

『Yes, Master. Stand by, Ready. Set up.』

俺はアイシクルを起動させる。

「えっ? ユウ君?」

俺がいきなりデバイスを起動させた為に、困惑の声を漏らすなのは。

『Ⅹ-Mode.』

だが、それは今までとは違う。

装着されるバリアジャケットは丸みを帯びたものから鋭く角張り、より装甲をイメージさせるものへと変化し、左肩には6連装ミサイルランチャー。

右肩にはレーザー砲の砲身。

左腕にもガトリングガンが装備され、右手の甲にもビームガンが装着されている。

両足にもミサイルポッドが追加され、更なる火力を手に入れた姿。

「よし! 成功だ!」

俺は思わず声を上げた。

前々から考えていたXモードが成功したのだ。

「ユ、ユウ……その姿って……?」

フェイトが、いつもと違うバリアジャケットの変化に、困惑した声を漏らす。

「なる程。 Xモードか」

やはり桜は理解しているようで、答えに辿り着いた。

俺はバリアジャケットを解除する。

そして、ユニゾンも解除した。

「ふう。 リィン、改めてよろしくな」

俺はリィンにもう一度そう言った。

「はいです! よろしくお願いします! とーさま!」

「なっ?」

リィンの言葉に俺は声を漏らす。

「リ、リィン? とーさまってどういう事だ?」

俺はそう尋ねる。

すると、

「ツヴァイはお前のデータを元に生み出した存在だ。 いわば、お前の子供同然だからな」

リインフォースがそう言う。

「で、でも………」

俺がそう呟くと、

「はぅ……とーさまって呼んじゃダメですか?」

ぐはっ!?

涙眼&上目遣い!

良く小説とかで読んでバカにしてたけど、これはキツイ!

「いや、ダメじゃないよ」

俺は思わずそう言ってしまった。

いや、仕方ないだろ!

すると、

「わーい! とーさま!」

さっきとはうって変わって笑顔で飛びついてくる。

まあ、いいか。

俺がそう思ったとき、

「かーさま! リィンはやりました!」

リィンがリインフォースに向かってそう言い、

「うむ! よくやったぞ、我が娘よ!」

リインフォースが力強く頷いた。

その瞬間、

「どういう事やリインフォース!!」

はやてが叫んだ。

「ツヴァイはユウのデータを元にしたとはいえ、私が生み出しました。 ですから母親は私です」

リインフォースはしてやったりという笑みを浮かべる。

「リ、リインフォース……主である私を差し置いてユウ君と子供作るやと……?」

「いくら主とはいえ、これだけは譲れませんので」

「リインフォースゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

これがきっかけとなり、魔導師組の大バトルに発展した。

流石に今のなのは達がマジでぶつかり合えば山奥に場所を変えたとて街への被害は避けられないために、それの鎮圧の為にXモードの必殺技、『ガルルバースト』の最初の犠牲者がなのは達魔導師組になったと記しておこう。





あとがき


第三十八話の完成。

新しいStSキャラは、セインとディエチ。

そしてリインフォース・ツヴァイでした。

因みにセインとディエチですが、原作ではゼスト隊壊滅時には既に稼動していた事が今回の執筆中に気づきました。

今更変えるのもなんだったので、とりあえずこのままいきます。

さて、リィンとのユニゾンでアイシクルのXモードが出ました。

となれば、ブレイズのXモードは……もう分かりますよね?

さて、次もがんばります。



[15302] 第三十九話
Name: 友◆05c99d4d ID:315f8cfe
Date: 2011/03/13 18:56


第三十九話 雷小僧との出会いは突然に



あのリィンの父となった誕生日から早2年。

俺は何気にリィンの父親をこなしています。

リインフォースと一緒にいると、とーさまかーさま言ってくるので、他の女性陣の視線が痛かったりするのだが………

で、俺のサポートの為に生み出されたリィンだが、今日は一緒にはいない。

何故ならば、管理局と繋がっている違法研究所を潰しに来たからだ。

リィンと一緒にいれば、ばれる事間違いなしだからな。

俺は、オメガフォームとなり、高台の上から研究所を見下ろす。

あ、そうそう。

俺も13歳になったから、結構背が伸びてきました。

え?

だから如何したって?

それは……………………

漸くバリアジャケットがカッコつく様になってきたんだよ!!

今までの俺のバリアジャケットは、いわゆる三頭身………SDガンダムやガチャポンみたいなカッコのつかないウォーグレイモンだったりメタルガルルモンだったりオメガモンだったりしたわけだ。

で、その悩みも、漸く背が伸びてきた事で解消されつつある。

とは言っても、まだ少しカッコ悪いんだが。

前世では170cmも行かなかったからなぁ………

今世では夢の170台へ!

と、話がそれたが、今日も張り切って研究所を潰すとしますか。



俺は高台から飛び降り、研究所の入口の前に着地する。

当然セキュリティーもあるため、数人の警備員が研究所内から現れた。

「何者だ!?」

警備員の1人が叫ぶ。

「……この姿を見れば分かると思うが?」

俺はそう呟く。

すると、警備員の表情が驚愕に染まる。

「ち、『血塗られた聖王』……?」

そう呟く警備員。

その通り名は何とかならんのか?

「死にたくなければさっさと消えろ。 無駄な戦いは好まん」

俺はグレイソードを構えてそう脅す。

いや、殺しはしないけどね。

管理局じゃあ俺が皆殺しにした事になってるし、脅しとしての効果は十分だ。

明らかに怯えている警備員達。

俺は警備員達を無視して、研究所の入口に向かう。

だが、

――ドォン

一発の魔力弾が俺に直撃する。

見れば震えた手で、警備員が杖を構えていた。

「………はぁ」

俺は一度ため息を吐くと、ガルルキャノンを展開し、警備員の方に向ける。

「……ガルルキャノン」

そして、その呟きとともにガルルキャノンを発射した。

俺は着弾すら確認せずに入口へ向かう。

そして、グレイソードで入口を切り裂き、研究所内へ歩みを進めた。

この場には、ガルルキャノンの跡形も残らず吹き飛びクレーターとなった岩山と、そのクレーターの端の少し前で腰を抜かしている警備員の姿だけがあった。






【Side ???】



僕がこの施設につれて来られてどの位の時が流れたのかは分からない。

毎日繰り返されるのは、痛くて苦しい実験ばかり。

最初は、もしかしたらお父さんとお母さんが助けに来てくれるかもしれないと淡い希望を持っていた。

でも、いつまで待っても、お父さんとお母さんは助けに来てくれなかった。

やっぱり、僕は本当に捨てられたんだ。

その事を理解した時、僕は全ての事が信じられなくなった。

僕は誰も信じない。

そう思っていた。

でも、この日、僕の運命は変わった。





【Side Out】





俺は、目に付く研究員を片っ端から脅して研究所から追い出す。

粗方部屋を回って、残りは一番奥の研究室だけとなった。

俺は研究室の入口を軽いガルルキャノンで吹っ飛ばす。

研究室に踏み入ると、いきなり吹き飛んだ入口にビックリしたのか、数人の研究者達が驚いた表情で俺を見てきた。

「な、何者だ!?」

「至高の実験の最中だぞ! どういうつもりだ!?」

なんて事を言ってくる。

どいつもこいつも言う事は一緒だな。

俺は、研究者達の言葉を無視して、グレイソードでさっさと追っ払うかと思ったとき、

「ん?」

俺は、その研究者達の向こうに、手術台のような台の上に拘束された4歳程度の赤髪の少年の姿を見つけた。

って、あれってもしかしてエリオか!?

「…………おい。 お前達はその子に何をしようとしていた?」

俺は思わず問いかけた。

「ふ、ふん。 至高の研究の為の実験だ。 何よりその子供は、プロジェクトFで作り出された人造魔導師だ。 人間ではない! どう扱おうと私達の勝手だ!」

その言葉を聞いた瞬間、怒りの感情が湧き上がり、グレイソードをその研究者の首に突きつけた。

「ふざけるな!!」

俺は叫んだ。

「ひぃっ!」

怯える研究者。

コイツの言った事は、作り出された存在は人間ではないといったも同然だ。

つまりフェイトやリインフォース、守護騎士プログラムであるシグナム達をも侮辱したも同義。

俺はこのまま真っ二つにしてやろうかとも思ったが、何とか耐える。

「選ばせてやる。 このまま自分の足でこの研究所を出るか、お星様になる勢いでたたき出されるか。 どうする?」

俺はそう宣言する。

「な、何を……?」

研究者は訳が分からないといった表情で呟く。

「つまりだ………」

俺は砲口を上に向け、ガルルキャノンを放った。

天井をぶち抜き、空が見える。

「ひぃっ!」

再び悲鳴を上げる研究者達。

「逃げて生き延びるか、ここで人生終わりになるか、どっちがいいかって事だよ」

俺は再びガルルキャノンを研究者達に向ける。

「「「「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」」」」

研究者達は一斉に逃げ出した。

まあ、仮に助かったとしても、口封じのために消されるだろうが。

別に同情はしない。

俺はエリオが固定されている台に近付き、拘束を解いてやる。

その瞬間、

――バチィ!

電撃が走った。

油断していたが、聖王の鎧のお陰でダメージは無い。

「く、来るなぁっ!」

エリオはそう叫んで身体中から電気を発して威嚇してくる。

そういえば、エリオは最初人間不信だっけ。

まあ、ほっとくのも後味悪いから、何とかしてみるか。

「心配するな。 俺はお前を傷つけるつもりは無い」

「うぅ~~~~~っ!」

とは言っても、エリオは唸るばかりでちっとも心を開いてくれそうに無い。

「名前はなんて言うんだ?」

「…………………」

名前を尋ねても、睨んでくるだけで答えてくれない。

「なあ?」

俺は、なるべく優しい声で語りかける。

「……………………エリオ」

小さい声だが、ちゃんと答えてくれた。

「そうか、エリオか」

俺は、エリオが答えてくれたことにちょっと嬉しくなった。

「で、エリオ。 お前はこれから如何する? 両親の元に戻りたいなら送っていくが?」

「嫌だ!!」

これまたハッキリと拒絶してくれました。

まあ、エリオからしてみれば、両親に捨てられたようなものだからな。

戻りたくないのも当然か。

だから俺は、

「じゃあ、俺についてくるか?」

そう尋ねた。

「ッ!?」

エリオは警戒心を露にする。

「信じられない、って顔してるな」

俺はそう言うと、

「だったら、信じなくていい」

「え?」

俺の言葉に、エリオは呆気にとられた顔をする。

「信じられないなら信じなくていい。 だから、俺を利用しろ」

俺は言葉を続ける。

「このままいても、生き残れる可能性は低い。 なら、生き残る為に俺を利用すればいい」

「……………」

エリオは、良く分かってないような顔をする。

いや、4歳児にこんな事をいう俺も俺だが。

「俺と一緒に来るならこの手を掴め」

俺はそう言って、左手のグレイソードの手甲を消し、手を差し出す。

「……………………」

エリオは、警戒しながらその手を見つめた後、おずおずとその手を掴んだ。

「フッ………」

俺はその様子を見て微笑む。

俺はエリオの手を握り、天井に開いた穴から外へ飛び出す。

「わっ!?」

エリオは驚いたようだが、しっかりと俺の手を握っている。

俺はある程度の高さまで来ると、右手のガルルキャノンを眼下の研究所へ向ける。

「エリオ………お前を苦しめた場所は、俺が破壊してやる」

俺は、エリオにそう呟くと、

「ガルルキャノン!!」

ガルルキャノンを眼下へ放った。

一瞬にして爆発に飲まれ、跡形もなくなる研究所。

「………………」

その様子を見つめているエリオ。

俺は転移魔法を準備する。

すると、

「……………………ありがとう」

小さな声だが、確かにそう聞こえた。

俺は聞こえない振りをして、転移魔法を発動させた。






俺が高町家の庭に転移すると、

「あ、とーさまー。 お帰りなさいですぅ」

「む、帰ったか」

出迎えたのは、リィンと何故かシグナム。

「何でシグナムが居るんだ?」

気になった俺は尋ねる。

今朝出かけるときは、桜が留守番役だった筈である。

「うむ、その事だが、急遽桜が翠屋の手伝いに駆り出されてな。 私が丁度管理局の仕事が休みだった為に、リィンの面倒を含めて、留守番を頼まれたのだ」

「なるほど」

シグナムの説明に、俺は納得する。

「ところで、そっちの少年は?」

シグナムは俺の傍らにいるエリオに視線を向けながらそう問いかけてくる。

「ああ。 こっちはエリオ。 今日潰しに行った研究所で人体実験を受けていたところを見つけて、ほっとけなくて連れて来た」

俺はそう説明する。

「そうか。 私はシグナムだ。 よろしく頼む」

「私はリィンフォース・ツヴァイですぅ!」

シグナムとリィンがそう自己紹介するが、エリオは警戒の眼差しを向けるだけだ。

俺は、念話で2人に話しかける。

(エリオは、人体実験を受けていた所為か、人間不信の傾向にある。 俺について来させる時も、生き延びる為に、俺を利用しろという名目で連れて来た)

シグナムは、その説明に納得したように頷く。

(なるほどな………ともかく、エリオの処遇は士郎殿達が戻ってきてから決めるのが良いだろう。 それよりも疲れただろう? 風呂にでも入ってきたら如何だ?)

(そうだな……そうさせて貰うか)

俺は、シグナムの案に賛同する事にした。

「なあエリオ。 風呂に入らないか?」

「え?」

俺の言葉に、呆気に取られるエリオ。

「お前って研究所にいた時は、まともに風呂も入ってないんじゃねえかって思ってさ。 まあ、どちらにしても、風呂に入るぞ」

俺はエリオの腕を掴んで、半ば強引に引っ張っていった。





そして、風呂場にいる俺は、只今エリオの髪を洗っている。

「痛くねえか?」

「あ………はい……大丈夫です」

俺の質問にしっかりと答えてくれるエリオ。

「じゃあ、シャンプー流すからな。 目に入らないように目を閉じてろよ」

「は、はい」

シャワーでエリオの頭の泡を洗い流していく。

「これで良しと」

「あ、ありがとうございます………」

お、ちゃんとお礼も言ってくれた。

俺達は、2人一緒に湯船に浸かる。

「ふう~~~~………如何だエリオ。 少しは気が紛れたか?」

俺はエリオに話しかける。

「………はい」

エリオは俯きながらも返事をする。

すると、エリオは俺に向き直り、

「あのっ………遅くなったんですけど、助けてくれてありがとうございます」

エリオは、突然礼を言ってきた。

「本当に遅くなって申し訳ありません。 あのときの僕は、何もかもがどうでもよくて………それで………」

コイツ本当に4歳児か?

子供がそんな事気にすんなよ。

俺は手で水鉄砲を作り、謝ろうとしたエリオの顔目掛けてお湯を飛ばした。

「わぷっ!?」

「子供がそんな事を気にするなよ。 子供は子供らしく、周りに迷惑かけてりゃいいんだ」

俺はそう言いながら、エリオの顔にお湯をかけ続ける。

「あのっ……ちょっ……やめっ……」

エリオは、止めるように言ってくる。

「謝らないんだったら止めてやるぞ」

俺がそう言うと、

「わ、わかりましたっ! もう謝りません! だからやめてっ」

エリオがそう言ったので、俺は水鉄砲を止める。

すると、

「あ、あのっ」

エリオが口を開こうとしたので、俺は水鉄砲を準備する。

「ち、違います! 謝るんじゃないです! ただ……」

エリオがそう言ったので、俺は手を戻す。

「あの……貴方の名前を教えてくれませんか?」

エリオにそう言われて、初めて名乗っていなかった事に気付く。

「すまん。 すっかり忘れていた」

俺は頭を掻いてエリオに向き直る。

「俺はユウ。 利村 ユウ。 本名はユウ・リムルートだ」

「ユウ……さん?」

エリオは俺の名を呟く。

「ああ。 よろしくなエリオ」

俺は笑みを浮かべてエリオに言った。

「はい、よろしくお願いします。 ユウさん」




俺達が風呂から出ると、

「何だ? やけに仲良くなっているな?」

シグナムが俺達の様子を見てそう漏らした。

「まあな。 これも裸の付き合いのお陰かな」

俺はそう返す。

すると、エリオがシグナムとリィンの前に一歩踏み出し、

「先ほどは失礼しました。 改めて、僕はエリオ。 エリオ・モンディアルです」

そう名乗った。

「そうか。 先ほども名乗ったが、私はシグナム。 烈火の将シグナムだ」

シグナムと、

「私は2代目祝福の風、リインフォース・ツヴァイですよー。 リィンって呼んでくださいね」

リィンが再び名乗る。

「はい! よろしくお願いします!」

エリオが元気良く返した。

そこで俺は、

「エリオが落ち着いたみたいだから言うが、エリオはこの先如何する? さっきも言ったが、両親の元に戻るか?」

そう尋ねてみる。

しかし、エリオは俯き、

「………いいえ。 やっぱり、あの人たちの下には戻りたくありません」

静かに、だが、ハッキリとそう言い切った。

「僕は、本当のエリオじゃないんです。 本当のエリオ君はもう死んでいて、僕は、本当のエリオ君を元に生み出された存在なんです……」

エリオは俯きつつそう告白する。

おいエリオ。

さっきも思ったが、お前本当に4歳児か!?

何故にそこまで理解している。

すると、シグナムが口を開く。

「なる程、お前もテスタロッサと同じという事か………」

「えっ?」

エリオが、驚いた顔でシグナムを見上げる。

「私達の仲間には、お前と同じく、人工的に生み出された者がいる」

その言葉に、エリオは驚愕している。

「序に言えば、このシグナムも、元々は守護騎士プログラム………厳密に言えば、人間じゃない」

俺の言葉に、エリオは更に驚愕してシグナムを見つめる。

「だがな……ここに居るユウや我が主はやて……そして多くの仲間達は、そんな事は全く関係無しに人として接してくれる」

シグナムはそう言うと、エリオの頭に手を乗せ、

「だから心配するな。 私達はお前を拒絶したり、追い出したりはしない」

エリオの頭を撫でながらそう言った。

「………うっ……ううっ………」

エリオの眼に涙が滲み、

「うわぁああああああああああああああん!!」

シグナムに抱きつきながら、エリオは大泣きした。

シグナムは少し慌てながらも、エリオを優しく抱きしめてやり、頭を撫でている。

その姿は、まるで子供をあやす母親のようであった。




暫くして落ち着いたのか、エリオは離れる。

「落ち着いたか?」

シグナムが語りかける。

「はい。 ごめんなさい“お母さん”」

「「お、お母さん!?」」

エリオから出た思いがけない言葉に俺とシグナムは驚愕する。

「あっ! ごめんなさい………まるでお母さんに抱きしめられてるみたいだったから、つい………」

エリオは、申し訳無さそうに頭を下げる。

その様子を見つめていたシグナムが、

「………別に母と呼んでも構わんぞ」

これまた予想外の事を言った。

「えっ?」

エリオが驚いた顔でシグナムを見上げる。

「い、良いんですか?」

エリオが確認を取るように尋ねた。

「ああ………ただし、条件がある」

シグナムは頷くが、そう続ける。

「条件……ですか……?」

「そうだ……その条件とは……」

エリオがゴクリと唾を飲み込む。

「………ユウの事を父と呼べ」

その瞬間、俺はずっこけた。

「シグナムッ! 何言ってやがる!?」

すぐさま俺は叫ぶ。

「私とてリインフォースに遅れを取るわけにはいかんのでな」

シグナムはそうハッキリと言う。

すると、

「ユウさん………」

エリオが俺を見上げてきて、

「………“お父さん”って呼んで、良いですか?」

エリオが純真無垢な瞳でそう言ってきた。

「お、おいエリオ? 俺達、出会ってまだ1日も経ってないんだぞ? そんな簡単に………

俺はそう言おうとしたが、

「駄目……ですか……?」

捨てられた子犬のような目でエリオは俺を見てくる。

ぐあっ!

罪悪感バリバリ!

「…………いいぞ」

結局折れてしまった。

何で俺ってこんなに流されやすいんだぁ!!

一方、OKを貰ったエリオはパッと顔を明るくして、

「お父さん」

俺に向かってそう呼んでくる。

「ああ」

俺は返事をした。

次にエリオはシグナムに向き直り、

「お母さん」

「ああ」

シグナムも返事をする。

エリオの顔は本当に嬉しそうだ。

すると、

「じゃあこれで、リィンとエリオは兄妹ですね!」

リィンがそう言った。

「まあ、義理の兄妹ってことで間違いないな」

俺も肯定する。

リィンは身体のサイズをフルサイズに変更すると、

「じゃあエリオ、兄妹として、改めてよろしくですよ~!」

リィンはエリオの手を握る。

「うん! よろしくリィン!」

エリオもリィンの手を握り返した。

それにしても、中学生で早くも二児の父親か………

とんでもない人生だな……

悪くないけど……



尚、エリオの事を士郎さんに話したら、快く受け入れてくれました。

桜は、帰ってきたらエリオが居るもんだからビックリしてたし。

そして後日、エリオの存在がなのは達に知れ渡った時、「シグナムにも先越されたぁ~~~~~~~!!」という叫びと共に、第二次嫉妬戦争が勃発。

再び鎮圧のためにアイシクルXモードが出撃した事を記しておこう。








あとがき


まずは、東北の地震で亡くなった人たちの冥福をお祈りします。

テレビで見ているだけでも、凄まじい地震と津波に戦慄を覚えました。

尚、自分は岐阜県在住なので、幸運にも被害を受けずに済みました。




第三十九話の完成。

雷小僧ことエリオ登場の回でした。

にしても、凄まじく大人びた4歳児になってしまった。

申し訳ない、自分の実力不足です。

とりあえずご都合主義という事で流してください。

さて、エリオの母親役はフェイトと予想してた人が多いでしょうがあえてシグナム。

フェイトの子供役は既に決まっているので。

言っておきますが、ヴィヴィオじゃありませんよ。

あと、シグナムの子供役はアギトと予想してた人もいたようです。

確かにそれでも良かったんですけど、そうなるとエリオの母親役がシャマルとなるわけで。

エリオの母親役がシャマルというものは既に見たことあったので、あんまり被るのも良くないかなって思ったのでシグナムに決定。

さて、皆様の反応が怖い。

次は、時系列で行くとあの出来事かな?

では、次も頑張ります。





[15302] 第四十話
Name: 友◆05c99d4d ID:315f8cfe
Date: 2011/03/27 15:55

第四十話 Q、俺のトラブル巻き込まれ体質は如何にかならんのか? A、どうにもなりません。




さて、エリオが2人目の子供になってから早一年近く。

エリオもリィンも元気に育っています。

まあ、リィンは外見は変わらないのだが………

エリオだが、俺のオメガフォームに憧れたのか、騎士になると言い出して母親役のシグナムに稽古を頼んでます。

シグナムも乗り気で、エリオに色々な得物を持たせて試した結果、槍が一番筋が良いそうだ。

やはりアニメと一緒なのか……

その内デバイスが欲しいとか言いそうだから、リニスに頼んでストラーダでも作ってもらうか。

それから最近の活動報告だが、俺は翠屋のマスター見習いで、もうすぐコーヒーを淹れる腕が店に出せるレベルまで上がっている。

桜は既に自分の作った菓子が店先に並ぶほど。

既に桜の菓子作りの腕は並のパティシエを凌ぐが、肩書きは未だにパティシエ見習い。

何でも、「母さんに追いつくまでは、見習いの肩書きを取る気はないわよ」だそうだ。

桃子さんに追いつくまで見習いって……他のパティシエが泣くぞ。

なのは達だが、相変わらず学校に通いながら管理局の仕事をしている。

やはり訓練校を即行で卒業してから、前線に出る事などザラで、その事ではやて曰く、

「こんなか弱い少女達を当然のように前線に放り込むなんて、やっぱり管理局の考えとることは理解出来んわ」

だそうだ。

か弱いか?と尋ねたら、魔力弾の嵐を受けました。

因みに管理局に入った魔導師組だが、全員トレーニングバインド装備で魔導師ランクをAAA前後まで落としてます。

これまたはやて曰く、

「敵対しようとしとる組織の中で手の内見せるわけないやん」

とのこと。

まあ、確かに。

それからアリサ、すずか、アリシアの非魔導師組だが。

デバイスの知識の習得は既に完了し、魔法論理について勉強中。

これまた凄まじい勢いで学んでいくので、講師役のリニスとプレシアさんが、教える事が無くなるまでもうすぐかもしれないと言っていた。

スカリエッティは相変わらず最高評議会に従う振りをしながら残りのナンバーズの調整を行なっている。

勿論スパイも忘れてません。

もう、最高評議会の黒いところが出るわ出るわ。

俺の違法研究所潰しの情報も、大半はスカリエッティからの情報だ。

最高評議会が、スカリエッティが自分達の思い通りに動いてくれていると思い込んでいるので、見ていて滑稽だそうだ。



で、今俺が何をしているかと言えば、只今ミッドチルダに来ております。

理由は秘密だが、ちょっとした物件探しだ。

中学を卒業したら、とある理由でこっちに一時的に住もうと思ってる。

その為に今の内に目ぼしい物件に唾つけとこうという訳だ。

とりあえず、ミッドチルダでは就業年齢が低い為に、俺ぐらいの子供が物件探しても別に怪しまれる事は無い。

費用は俺の両親の遺産を使えば十分に事足りる。

それで、ミッドチルダの街をうろついている訳だが、俺はふと思う。

そういえば今の時期って、アニメだとティアナの兄が殉職するのと、ヴァイスの妹誤射事件があるんだったな。

まあ、この世界でその事件が起こると断言は出来ないし、何時起こるか詳しい事は分からないから、俺には如何する事も出来ないな。

目の前でそんな事が起これば別だが、そんなピンポイントで事件に遭遇するわけが………

その瞬間、

――ドンッ

「おわっ!?」

いきなり走ってきた男性にぶつかり、俺は尻餅をついてしまう。

「退けガキ!! 邪魔だ!!」

その男はそう言うと、まるで邪魔な物を蹴ってどかす様に俺に蹴りを放ってきた。

「ぐっ!?」

俺は軽く吹き飛ばされ、地面に転がる。

まあ、蹴られる前に身体強化したから怪我は無いんだけど。

俺を蹴っ飛ばした男は、俺に見向きもせずに走って行ってしまう。

俺は、服に付いた汚れを払いながら立ち上がると、

「君! 大丈夫かい!?」

男が走ってきた方向から、管理局の制服を着たオレンジ色の髪の男性が走ってきて、俺に駆け寄った。

「あ、はい。 俺は大丈夫です」

俺がそう答えると、

「そうか。 良かった……」

その男性は安堵の表情を浮かべる。

すると、その男性は真剣な表情になり、先ほど俺を蹴っ飛ばした男の背中を見つめ、

「こちら首都航空隊 ティーダ・ランスター一等空尉! 指名手配中の違法魔導師を発見! これより追跡する! 市街地での飛行の許可を!」

『了解! 市街地個人飛行、承認します!』

その局員は、管制にそう報告し、飛行許可を貰うと、男が走っていった方に向かって飛び立った。

つーか、今、ティーダ・ランスターって………

マジかい!?

いや、でも今日死ぬって決まったわけじゃないし……

俺はそう思って飛んでいくティーダに背を向けて歩き出す。

「……………………」

が、すぐに立ち止まる。

「………………あーっ! 畜生! ほっとけねえ!」

俺は、如何しようも無い自分の気持ちに叫ぶと、ティーダが飛んで行ったほうに向かって走り出した。





【Side ティーダ】




「待て!」

私は逃走する違法魔導師を追う。

「チッ! 管理局の魔導師か!?」

違法魔導師の男は、制止の声にも耳を傾けず逃走を続ける。

すると、その男は飛行魔法を発動させて逃走を図った。

「止まれ! 警告に従わない場合は、攻撃を許可されている!」

私がそう警告するも、その男はとまる様子が無い。

「仕方ない! こちらティーダ・ランスター一等空尉! 犯人確保のため攻撃を開始する!」

私はそう宣言して、銃型デバイスを取り出し、構えた。

「シュート!」

先ずは犯人の進行方向に向けて威嚇射撃。

犯人の目の前に着弾したため、犯人は動揺を見せる。

「くそっ!」

犯人は、こちらに振り向くと、魔力弾を放ってきた。

私はその魔力弾を障壁で防ぎ、

「投降の意思無しと判断! 無力化させて確保する!」

今度は犯人を直接狙って魔力弾を放つ。

「シュート!」

数発の魔力弾が犯人に向かい、

「ぐあっ!?」

一発が犯人の左肩に当たり、魔力ダメージで動かなくなる。

「このクソ局員がぁぁっ!」

犯人はそう吐き捨てながらも、逃げる事を止めない。

しかも追跡を振り切る為に魔力弾を出鱈目に放ちながら。

このままだと、民間人に被害が出るのも時間の問題だ。

「仕方ない…………一撃で昏倒させる!」

私は再び銃型デバイスを構える。

狙うは逃げる犯人の後頭部。

「スティンガースナイプ………シュート!!」

誘導性能を持った魔力弾を発射する。

犯人は慌てて避けようとするが、無駄だ。

その魔力弾は私の意思で何処までも追跡する。

高速で迫る魔力弾を、犯人は紙一重でかわすが、魔力弾を操作して再び犯人に向かわせる。

すると、犯人は突然行き先を地上方向に変えた。

切羽詰った行動だろうが、油断はしない。

魔力弾を正確に操作し、犯人を追い詰める。

ようやく捉えると思ったその時、

「そこまでだ!」

犯人が叫んでこちらを振り向く。

更には腕に10歳ぐらいの少女を右手で抱えており、デバイスまで突きつけていた。

「くっ!」

私は咄嗟に魔力弾を操作して、犯人を外す。

すると、犯人は歪んだ笑みを浮かべ、

「ひゃっひゃっひゃ! そうだよなぁ! 民間人を傷つけるわけにはいかないもんなぁ! 正義の味方の管理局員さんよぉ!?」

そう言い放ちながら、少女を抱えたまま再び空中へ浮かび上がる。

その近くでは、少女の母親であろう女性が、娘を助けてと叫んでいた。

私は銃型デバイスを犯人に向け、

「その子を開放しろ!」

そう叫ぶ。

すると、

「開放………? ああ、してやるよ。 ほれ」

犯人はそう言うと、あろう事か空中で少女を手放した。

「なっ!?」

現在の場所は、地上から約20m。

そのまま落ちれば唯では済まない。

「くっ! 間に合えっ!」

私は咄嗟に動く。

「これもおまけだ」

更に犯人は少女に向かって魔力弾まで放った。

「くそぉぉぉぉぉぉっ!」

私は、地上から5mほどの所で少女を掴まえる事が出来た。

だが、後ろから迫り来る魔力弾に対処する暇が無い。

せめて、この少女だけでも。

私は咄嗟に少女を抱き締め、自分の背中を魔力弾に向けるようにする。

ほぼ間違いなく、あの魔力弾は殺傷設定。

このような行動をすれば、結果は見えている。

だが、私の夢は執務官となり沢山の人達を守る事。

故にこの目の前の少女を見捨てたら、例え執務官になれたとしても、それは夢を叶えた事にはならないし、何より自分が後悔する。

だからそれは出来なかった。

私は死を覚悟する。

ただ、1つの心残りがある。

それは、唯一の肉親である妹のティアナ。

私が死ぬと、ティアナは天涯孤独となってしまう。

「ゴメンな……ティアナ………」

独りぼっちにしてしまう罪悪感から自然と声が漏れた。

私は、その瞬間が来るであろう時を待つ。

だがその時、私の視界は虹色の光で埋め尽くされた。





【Side Out】





俺は、ティーダの後をこっそりと追っていた。

逃走する違法魔導師とティーダの実力の差は歴然で、犯人はあっという間に追い詰められていく。

どうやら俺の杞憂だったようで、ティーダがピンチになる要素が欠片も無い。

まあ、やっぱりそんなピンポイントで事件に遭遇するわけが………

と思っていたのも束の間、犯人が民間人を人質にとって、あっという間に形勢逆転。

しかも、女の子を囮に殺傷設定の魔法を撃ちやがった。

「チッ!」

俺は思わず動いた。

オメガを起動させ、オメガフォームになる。

勿論認識阻害の結界を張ってからだが。

俺は高速でティーダの前に立ち塞がる。

俺が魔力弾を受けることになるが、この程度の魔力弾は、例え殺傷設定だったとしても、俺には無意味。

後ろを振り返ると、ティーダが呆然と俺を見ていた。

「ち、血塗られた聖王………?」

ティーダが呟く。

まあ、管理局員は知ってて当然だな。

俺は、ふと先ほどの違法魔導師を見ると、既に逃走を図っており、かなりの距離が空いていた。

俺は、何となくこのまま逃げられるのも癪だと思ったので、右手のガルルキャノンを違法魔導師に向ける。

「ガルルキャノン、フリーズショット!」

砲口から冷気弾が放たれる。

その冷気弾は、高速で犯人に向かい、振り切ったと油断していた違法魔導師に直撃した。

途端に氷漬けになる違法魔導師。

そのままビルの壁にぶち当たり、ビルの壁に縫い付けられるように凍った。

「なっ!? まさか!?」

その様子を確認したティーダが最悪の状況を想像したのか声を上げる。

「心配するな。 今のは非殺傷だ。 死んではいない」

俺の言葉で、幾分か安堵の表情をするティーダ。

すると、

「何故、私を助けた?」

そんな質問をしてきた。

まあ、大量殺人犯(濡れ衣だが)として知られてる俺が、自分を助けたのが不思議なのだろう。

「別に……偶々見かけたことと、気まぐれと自己満足。 それだけだ。 感謝しろなんて別に言いはしない」

俺はそう言ってティーダに背を向け、飛び立った。





【Side ティーダ】



私はそのあと、事件のあらましを上官に報告した。

だが、その報告書を見た上官の反応は、

「何たる事だ! 犯人を後一歩まで追い詰めておきながら民間人を人質に取られて取り逃がし、あまつさえあの大犯罪者『血塗られた聖王』に命を救われただと? この役立たずが!! 貴様は首都航空隊の恥だ!!」

私は上官の暴言に耐える。

確かに血塗られた聖王に命を救われた事は事実で、それを恥だというのならば甘んじて受け入れる。

「貴様への処分は追って報告する。 さっさと出て行け! この役立たずが!!」

私は一度敬礼して退室する。

そして、隊舎から外に出ると、自然とため息が漏れる。

「…………夢が遠のいた……か……」

予想だが、処分は降格を言い渡されるだろう。

私は若干沈んだ気持ちのまま家へと足を向ける。

すると、

「お兄ちゃん!」

「え?」

その声に顔を上げると、そこには妹のティアナの姿。

「ティアナ?」

「お帰りお兄ちゃん! 如何したの? 元気ないね?」

ティアナは笑って私にそう聞いてくる。

私はふと思った。

もしあの時、血塗られた聖王が私を救ってくれなかったら、ティアナは独りぼっちになっていたんだと。

この笑顔が、泣き顔になっていたかもしれない事を思うと、胸が痛い。

私はティアナの頭に手を置くと、微笑んで頭を撫でた。

「?………えへへ」

ティアナは一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに笑顔になる。

ティアナを独りぼっちにしなくて済んだと思うと、とてもホッとした。

もし………もし再び彼に会うことがあったら、是非とも礼が言いたいと私は思った。





【Side Out】






ティーダの一件から約一ヶ月が経ち、俺は再びミッドチルダにいた。

理由は一ヶ月前と同じだ。

俺はあの後、ティーダのことが何となく気になり、リニスに頼んで調べてもらった。

すると、ティーダは一等空尉から三等空尉まで降格され、昇進の可能性も、ほぼ絶望的という事が分かった。

何でも、犯罪者(俺)に命を救われた事が局員としてあるまじき事だと判断されて降格になったそうだ。

いや、降格は何となく分かるが、昇進の可能性がほぼ絶望的ってどういう事だよ?

結果的にティーダが自分の夢を叶えられなくなってしまった事に、僅かとはいえ関わった自分に、少しだが罪悪感を覚える。

まあ、今更どうしようもないので、俺は思考を切り替えた。

と、そんな事を考えていると、視線の先に人だかりが出来ている。

何だ?

事件か?

俺が人だかりの隙間から覗くと、ビルのベランダに男が少女を人質に立てこもっていた。

おい、もしかしてこれって………

ふとシグナムの魔力を感じた。

シグナムも、この現場にいるらしい。

俺はシグナムに念話を送る。

(おい、シグナム)

(む? ユウか? 如何した?)

(俺も偶々この現場に居るんだが、この騒ぎは何だ?)

俺はシグナムに尋ねる。

(そうか。 見ての通りだが、男が少女を人質に立てこもっていてな。 男は大分興奮しているようで迂闊に手が出せん状況だ)

(………なる程。 で? 一体どういう作戦で行くんだ?)

俺がそう聞くと、

(私の部下に優秀な狙撃手がいる。 その男に犯人を狙撃してもらうつもりだ)

シグナムの言葉に、俺は益々やな予感を感じる。

(…………おい。 その狙撃手ってもしかしてヴァイス・グランセニックか?)

(良く知っているな。 その通りだ)

(……………もう1つ聞くが、もしかして今人質に取られてる女の子って、そいつの妹だったりしないよな?)

(その通りだが………何故知っている?)

(マジかよ………)

シグナムの肯定する言葉に、俺は頭を抱える。

(如何した?)

シグナムが尋ねてくる。

(………シグナム、言っちゃ悪いが、この狙撃は失敗する可能性が高い)

(何だと!?)

俺の言葉にシグナムが驚愕する。

(ヴァイスの撃った弾が妹の左目に直撃。 妹の左目は失明してヴァイスはそれがトラウマになる)

(待て! 何故そんなに詳しく…………ッ! 前世の記憶か!)

シグナムは一瞬怪訝に思うものの、答えに行き着く。

(その通り。 俺が知るこの事件の結末は以上だ)

(くっ……ユウ! 何とかならんのか!?)

(まあ、ちょっと荒っぽいけど助ける事は出来ると思うが………)

正直、知ってる未来を変えることは、世界を思い通りに動かす傲慢者みたいで気は進まないのだが………

既にティーダを助けてしまっている俺が言えたことじゃないか。

(ならば頼む! グランセニックは好感が持てる人物だ。 みすみす傷つけたくは無い!)

シグナムが俺に頼み込んでくる。

(……分かった。 シグナムにそこまで言われちゃ助けないわけにはいかないだろ)

(すまない)

(それにしても……)

(む?)

(シグナムにそこまで言わせるとは、少し妬けるな)

俺がそう言った瞬間、

(か、勘違いするなよ! グランセニックに向けている感情は、あくまで仲間意識でのものだ! わ、私があ、愛しているのはお前だけだぞ。 ユウ!)

シグナムが慌てたようにそう言った。

(冗談だよ。 それと、オメガフォームで行くから、適当に流れに合わせろよ)

(分かった)

そう言って、念話を切った。

さて、いっちょやりますか。





【Side ヴァイス】



俺はスナイパーライフル型デバイス、『ストームレイダー』のスコープで犯人の様子を窺う。

犯人は未だに興奮しているようで刃物を振り回して何やら叫んでいる。

俺は、捕まっている少女、妹のラグナを見た。

ラグナの表情は恐怖で泣き顔になってしまっている。

待ってろよラグナ。

今お兄ちゃんが助けてやるからな。

俺は引き金に指をかけ、スコープの標準を犯人に合わせる。

そうだ、いつも通りやれば問題ない。

いつも通りやれば………

だが、もし……万が一ラグナに当ててしまったら………

その考えが過ぎった瞬間、標準が突然ブレる。

いや、俺の手が震えていた。

くそっ!

何ビビッてやがる!

こんな状況、今まで何回あったと思ってるんだ!

その度に俺の狙撃で人質を助けてきたじゃねえか!

実の妹が……ラグナが捕まっているんだぞ!

こんな時こそいつも通りの狙撃をしなきゃ行けねえのに、何で俺はビビッてるんだよ!?

俺は震えを押さえつけながら、再び犯人に標準を合わせる。

だが、無理矢理震えを押さえつけている所為か、標準は安定しない。

大丈夫だ。

俺ならやれる。

そう自分に言い聞かせ、引き金を引…………こうとした瞬間、上空から青色の魔力弾が高速で飛来。

犯人とラグナがいるベランダの後方に着弾。

大きな音と衝撃が発生し、ラグナと犯人が外に投げ出された。

「ラグナッ!!」

俺は思わずスコープから目を離し、叫ぶ。

その時、

――バサッ

俺の目の前をマントを翻しながら何者かが通過する。

それは、何度も資料で見た人物。

「血塗られた……聖王……」

俺は思わず呟く。

そいつは、左腕で投げ出されたラグナを空中でキャッチする。

そして、犯人に向かって右腕を振り上げると、犯人の顔面に向かって殴りつけ、そのまま地面に叩きつけた。

余りの手際のよさに、一瞬見とれてしまった。

だが、直ぐに気を取り直し、

「ラグナ!」

妹の名を叫びながら、俺は狙撃場所だったベランダから飛び降りる。

あまり得意ではないフローターフィールドで無事に地面に着地すると、俺は直ぐに走り出す。

「ラグナ!!」

俺はラグナの名を叫ぶ。

すると、血塗られた聖王の腕から降りたラグナが俺に気付き、

「お兄ちゃん!」

ラグナも俺に向かって駆け出そうとした。

だが、血塗られた聖王が左腕でラグナを制止させると、右腕でマントを翻し、ラグナを覆い隠すようにした。

野郎、ラグナを連れ去る気か!

幾らラグナが可愛いからってそれは許さん!!

俺は、相手とのレベルの差も考えず、殴りかかろうとした。

その瞬間、

――ドゴォン!

突然血塗られた聖王が爆発に飲まれた。

ラグナと共に………

何だ……?

一体何が起こった……?

俺が目の前の光景を信じられないでいると、

「は、はは……やったぞ! あの血塗られた聖王を仕留めた!!」

後ろから癪に障る声が聞こえた。

同じ隊の隊員で、出世欲が旺盛な奴だ。

「貴様! 何故撃った!?」

シグナムの姐さんがそいつに詰め寄った。

「な、何を言ってるんですかシグナム分隊長。 極悪の指名手配犯を攻撃して何がいけないんですか?」

そいつはいけしゃあしゃあとそう言った。

「奴を撃った事についてはとやかくは言わん! だが、奴の傍には民間人の少女が居ただろう! それを貴様は殺傷設定で巻き込みおって!」

シグナムの姐さんはその男に怒鳴る。

「仕方ありません。 この先あの犯罪者によって生み出される犠牲者の事を考えれば、必要最小限の犠牲です。 私は自分が間違った事をしたとは思いませんよ」

この男は今なんて言いやがった?

ラグナが必要最小限の犠牲?

ラグナを殺した事が間違って無いだと?

俺がそいつに掴みかかろうとした瞬間、

「フン。 正義の時空管理局が聞いて呆れるな」

そんな声が聞こえ、

「へ?」

その男が声を漏らしたその時、

――ドゴォ!

爆煙を切り裂き青の魔力弾がその男に直撃。

そのまま吹き飛ばし、ビルの壁に叩きつけた。

その一撃で気絶する男。

俺は驚いて爆煙の方を見た。

爆煙の中から、無傷の血塗られた聖王が姿を現す。

すると、シグナムの姐さんの方を向き、

「部下にする人間は、選んだ方がいいな」

そう言った。

「ああ。 全くその通りだな」

シグナムの姐さんは、頷きながらそう答える。

そして、血塗られた聖王が閉じていたマントを開くと、

「ラグナ!!」

そこには、ラグナの無事な姿があった。

「お兄ちゃん!」

ラグナは俺に抱きついてくる。

「良かった……ラグナ……無事で本当に良かった……」

俺もラグナを抱き締めた。

俺は、ふと血塗られた聖王を見る。

そして、

「その……なんていうか……すまねえ! ラグナを……妹を助けてくれて、ありがとう!」

俺は頭を下げた。

こんな事は局員としてあるまじき行為だという事は理解している。

だが、頭を下げないわけにはいかない。

するとラグナも、

「おじさん! 助けてくれてありがとう!」

そう礼を言った。

「お、おじさっ………!?」

そいつは、ラグナの言葉を聞くと、一瞬呆気に取られる。

「ククッ………!」

その後ろでは、シグナムの姐さんが笑いを零していた。

そいつは気を取り直してラグナを見ると、

「なあお嬢ちゃん。 おじさんは止めてくれないか? 俺はまだ十代前半なんだ」

そう言い聞かせるようにそう言った。

俺は改めて血塗られた聖王を見てみる。

今までは威圧感からかでかく見えてたけど、こうやって見ると身長もそいつの言うとおり13~14歳位の背丈しかない。

「はい! ごめんなさい! お兄さん!」

ラグナは謝って言い直す。

すると、

「グランセニック。 妹をつれて下がっていろ」

シグナムの姐さんが、愛剣のレヴァンティンを抜きながらそう言った。

「姐さん!? 一体何を!?」

俺はそう問いかけるが、シグナムの姐さんは、レヴァンティンを血塗られた聖王に突きつけ、

「すまんな。 私個人としてはこのまま逃がしてやる事もやぶさかでは無いのだが…………局員としての立場がある。 悪いがこのままお前を“逃がす”訳にはいかんのだ」

そう言った。

すると、そいつは、

「そうか、難儀な奴だな。 それならば、逃がしてくれなくていい。 俺は自力で“逃げる”だけだ」

そいつがそう言った瞬間、

「レヴァンティン! カートリッジロード!」

姐さんの剣に炎が宿る。

「紫電……一閃!!」

姐さんが、渾身の力を込めて斬りかかった。

けど、そいつは左腕の手甲から大剣を生み出し、

――ガキィ!!

姐さんの必殺剣ともいえる一撃を微動だにせず受け止めた。

「フッ……」

そいつは姐さんを軽く弾き飛ばすと、大剣を真上に突き出す。

その剣に炎が宿った。

「グレイ……ソード!!」

剣を地面に向けて振り下ろす。

――ドゴォォォォォォン!!

凄まじい爆発音と共に、あいつの姿を煙が覆い隠す。

そして、その煙が晴れたときには、あいつの姿は何処にも無かった。



俺はその後、ラグナを連れて家に戻った。

俺はあの血塗られた聖王について考える。

管理局じゃ、既に千人を超える虐殺を行なっているという話だったが、今日、実際に話をしてみて、そんな事をするような人物ではないように思えた。

実際、今日の事件でも、誰一人として殺していない。

あのふざけた局員が生きていると分かった時、内心舌打ちしたのは秘密だ。

本当に噂どおりの人物なら、ラグナを助けたりはしないし、何より非殺傷なんか使う必要は無いだろう。

そして今日、ラグナを犠牲に血塗られた聖王を攻撃しようとした奴の言葉、必要最小限の犠牲、自分が間違った事をしたとは思っていない。

大を救う為に小を犠牲にする。

俺も、それが正しいと今まで思い込んでいた。

だが、犠牲にされた方には何も残らない。

これが、本当に正しいといえるのか?

このとき、俺は初めて時空管理局の在り方に疑問を持った。







あとがき


第四十話の完成。

さて、今回のお話はティーダの死亡フラグ回避とヴァイスのトラウマ回避のお話でした。

片方ずつやると、流石に短すぎたので同じ時期という事で2つ一緒にやりました。

ユウが何を企んでいるかは次をお楽しみに。

さて、思ったより早く出来上がったし、明日はリリフロを頑張ってみますかね。

では、次も頑張ります。





[15302] 第四十一話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122
Date: 2011/04/10 20:23
第四十一話 空港火災! そして…………



ウィースッ。

ティーダとヴァイスの事件から暫くたち、俺も中学3年になりました。

やっと、義務教育が終わる………

中学を卒業したら、俺達は進学せずにミッドに来るつもりだ。

なのは達も、管理局内で順調に出世していってる。

まあ、はやて以外アニメよりも、一階級ぐらい低い気もするが……些細な問題だろう。

で、相変わらずスカリエッティからの情報で研究所潰してます。

っていうか、何でこんなに違法研究所があるんだよ!?

既に合計で20近くの研究所を潰してるんだが………

組織がデカければ、それだけ闇もデカいってか?

まあ、その分管理局の意識が俺に来て、なのは達が動きやすくなるからいいんだけど。

そして現在、俺は再びミッドに来てます。

理由は、前から探していた物件で、丁度いい物があったから、そこに決定して色々と改装工事を頼む為だ。

まあ、実際に入るのは一年後なので、それほど急がなくてもいいのだが。

そういえば、今日は4月29日なのだが、この日って何かあったような…………

思い出せん………

ともかく、土産やらなんやら買っていたら、すっかり暗くなってしまった。

すでに星空が広がっている。

俺が、そろそろ帰るかと思ったとき、ビルのモニターに緊急の事件の報道が入った。

「現在、ミッドチルダ臨海第8空港で火災が発生しています」

あ、思い出した。






【Side なのは】



今日は休暇を利用してフェイトちゃんと一緒に、はやてちゃんの所に遊びに来てたんだけど、空港で火災があって、はやてちゃんが緊急に招集されることになったの。

もちろん、私とフェイトちゃんも、自分の意思で協力する事にしたんだけど………

ハッキリ言って、全然人手が足りません。

はやてちゃんは現場指揮を任されてるし、リインフォースさんははやてちゃんの補佐。

動いている局員は、災害担当と私とフェイトちゃんだけ。

地上部隊は何をやってるのーーーーーッ!?

命令とか待ってる暇があったら、さっさと救助に来るのーーーーーーっ!!

って叫びたい所だけど、叫んだ所で如何にもならないから先を急ぐ。

私が任されたのは、エントランスホールに取り残された女の子の救出。

私は、燃え盛る建物の中を突っ切る。

時々、火の勢いが増して、熱風が私に当たる。

でも、

「こんな火より、ユウ君のメガフレイムの方がもっと熱いんだから!」

思わず口に出して、防御フィールドを張りながら火の海に飛び込む。

漸くエントランスホールに到着して、私は空中から周りを見渡す。

すると、エントランスホールの中央にある女神像の前で、泣きじゃくる女の子。

「見つけた」

私がその子の方に向かおうとした時、

――バキィ!

女神像の台座が壊れ、女の子の方に倒れていった。

「いけない!」

私は咄嗟にフープバインドを発動。

女神像の倒壊を防いだ。

「よかった………間に合った………助けに来たよ」

私はホッと息を吐きながら、呆然と私を見ていた女の子に声をかける。

そして、その女の子の前に降り立つと、

「よく頑張ったね。 偉いよ……」

微笑みながら、安心させるようにそう言う。

その女の子は、余程怖かったのか眼に涙を浮かべている。

「もう大丈夫」

私は、もう一度安心させるようにそう言った瞬間、

――ドガァン

エントランスホールの天井で小爆発が起き、小さな瓦礫が振ってくる。

「危ない!!」

私は咄嗟にその女の子を庇うように覆いかぶさる。

落ちてくる瓦礫に、私は思わず目を瞑った。

でも、次に感じたのは、落ちてくる瓦礫が当たる痛みじゃなくて、暖かな感覚。

私が眼を開けると、優しい虹色の光が私達を覆っていた。

それに覚えがあった私は、顔を上げる。

そこには、管理局では『血塗られた聖王』と恐れられてる………でも、私にとってはとても愛しく頼りになる人。

「ユ………」

私は思わずユウ君の名を叫ぼうとした。

でも、

「大丈夫か?」

ユウ君は、私の言葉を遮るように声をかけて来た。

あ、そっか。

こんな女の子でも、ユウ君の名が知られたら、管理局にばれるかも知れないもんね。

私は、慌てて言葉を飲み込むと、

「はい。 助けていただき感謝します」

私は管理局員の立場で礼をいった。

ううっ。

ユウ君相手にこんな風に話すのは嫌なの。

内心そう思いながら、敬礼する。

「そうか………」

バリアジャケットで顔は見えないけど、微笑んだ事が分かった。

すると、ユウ君はマントを翻して後ろに振り返る。

そして、右手を横に向けると、ガルルキャノンの砲身を狼の手甲の口から出した。

それをゆっくりと斜め上に向ける。

「オメガ」

ユウ君がオメガに話しかけると、

『『射線軸上の安全を確認』』

オメガは安全の確認を報告する。

「よし!」

ガルルキャノンの砲身に魔力が集中する。

その様子を保護した女の子は呆然と見ていた。

「ガルルキャノン!!」

ユウ君の掛け声と共に、ガルルキャノンから青色の魔力弾が放たれた。

それは、天井を貫通し、何階層もある空港の建物を一気に貫き、外までの脱出口を作る。

すると、ユウ君はこちらに向き直り、

「行け」

私達に脱出するように促した。

私は、女の子から見えないようにユウ君に笑顔を見せると、その女の子を抱き上げ、外に脱出した。

「こちら教導隊01。 エントランスホール内の要救助者、女の子1名を救助しました」

私はそう報告する。

『ありがとうございます! 流石は航空魔導師のエースオブエースの副官ですね!』

管制の人はそう言ってくるけど、実際あの人は、尊敬されるような人物じゃないんだけどな~~。

管制の人の言葉に、私はそう思いながら返事を返す。

「西側の救護隊に引き渡した後、すぐに救助活動を続行しますね」

『お願いします!』

通信を切ると、女の子が私の顔を見つめていた事に気付く。

その子に私は微笑み返すと、救護隊の方に向かって飛びつつけた。




【Side Out】




【Side フェイト】




なのはとは別ルートで救助に参加してた私は、魔導師の女の子が妹を探しに奥に行ってしまったという事を救助者から聞いた。

私は、救助者を安全な場所まで送り届けると、急いでその女の子を捜しに行った。

所々小爆発が起きる通路を駆け抜ける。

吹き抜けに出ると、私より数階下の通路を這って歩く女の子を見つけた。

「そこの子! ジッとしてて! 今助けに行くから!」

私がその女の子に呼びかけて、女の子は私の方に振り向く。

でも、その時女の子の足元の通路に罅が入り、崩れる。

「きゃあ!?」

いけないっ!

『Sonic Move.』

私はすぐにソニックムーブを発動させ、地面に激突する寸前にその女の子を助ける事が出来た。

「危なかった……ゴメンね、遅くなって。 もう大丈夫だよ」

私は微笑みながらその子に声をかける。

私は、念のために周りに誰もいないことを確かめてから、ここから脱出しようとした。

でも、その瞬間、

――ドゴォォォォン

天井で爆発が起こり、この吹き抜け全てを埋め尽くすぐらいの瓦礫が降って来た。

拙い!

私は大丈夫だと思うけど、この女の子が!

私はそう思うが、砲撃を放つ暇も無い。

でも、

――バサッ

目の前で翻る赤と白のマント。

――ジャキン

左腕の手甲から飛び出す大剣。

「あっ」

私が声を漏らした瞬間、

「グレイソーーーード!!」

炎の一閃が降って来た瓦礫を切り裂き、私達を避ける様に下に落下した。

私達を救ってくれた人物、ユウが私達に向き直る。

私の腕の中の女の子も、その様子を呆然と見ていた。

「早く脱出しろ」

ユウは、私達にそう言う。

その言葉でハッとなった私は、

(ありがとう、ユウ)

念話でユウにお礼を言って、脱出ルートに飛び込んだ。






【Side Out】





【Side はやて】



私は、臨時に現場指揮を任されとったんやけど、暫くしてゲンヤ・ナカジマ三佐が来たから、情報整理をリインフォースに任せ、私は空に上がった。

「仄白き雪の王、銀の翼以て、眼下の大地を白銀に染めよ」

消火作業のために、凍結魔法を準備する。

「八神一尉。 指定ブロック、避難完了です!」

作業に当たっとる魔導師から報告が来る。

「了解! 来よ、氷結の息吹! アーテム・デス・アイセス!!」

私は凍結魔法を発動。

指定ブロックを凍らせていく。

でも、トレーニングバインドで魔力を抑えとるから、効果範囲はそこまで広くない。

AAA+やったらこんなもんかな。

それでも、魔導師達は十分驚いとるけど………

枷を外せば、この空港丸々凍らせる事は軽いで。

とは言っても、ユウ君には敵わんけどな。

私が内心そんな事を思っとると、

――ドガァァァァァァン!!

空港の中央管制ビルの中程で爆発が起きて、ビルの上の部分が私達の方に倒れてきた。

「冗談やろ!?」

私は思わず声を上げる。

逃げる?

アカン、航空魔導師は逃げられたとしても、地上で作業しとる災害担当の局員達が巻き込まれる!

でも、今のままやとあのビルは破壊できん。

枷を外さな無理や。

私は一瞬迷う。

ええい!

迷っとる時間は無い!

成るように成れや!

私は枷を外そうと………

「ガルルキャノン、フリーズショット!」

した瞬間、落ちてきたビルが閃光に包まれた。

私は、思わず目を庇う。

少しして閃光が収まり、私は目を開ける。

そこには、倒れてきたビルと中程まで残っていたビルが完全に氷漬けにされ、倒壊が防がれた管制ビルの光景があった。

ふと見ると、ビルの近くには虹色の輝き。

私はそれを見て、自然に笑みが零れた。

やっぱり、いざという時にはユウ君は頼りになるなぁ。

「ほら! 何やっとるんや!? まだ仕事は終わってないで!」

この光景を呆然と固まって見ていた局員に、私は発破をかける。

私の声で我に返った魔導師達が再び動き出す。

私は再びユウ君が居ったところに視線を戻すけど、そこにはもうユウ君の姿は無かった。

やけど、

「ありがとな………ユウ君」

そう呟いた。





【Side Out】














さて、あの空港火災から早一年。

中学を卒業した俺達はミッドチルダに来ていた。

それは、今日からミッドでとある事を始める為だ。

それは、

「いらっしゃいませ! 喫茶翠屋へようこそ!」

桜がそう挨拶する。

そう、俺達は、ミッドチルダで、喫茶翠屋、クラナガン支店を開店したのだ。

現在の店員は、マスター俺。

パティシエ、桜。

ウェイトレス兼コック、リニス。

ウェイトレス、ファリンである。

え?

なんでファリンを呼び捨てにしてるかって?

何でも、俺に好意を寄せてる中で、自分だけ“さん”付けだったのが距離感を感じていたらしく、呼び捨てで呼んでくれと頼まれたのだ。

あと、リィンもお手伝いで色々と頑張っていたりする。

で、喫茶翠屋クラナガン支店を開店して1ヶ月位なんだが、既に常連と化している人物達がいる。

それは、

「いや~、やっぱりユウ君の淹れるコーヒーは美味しいねぇ」

「はい、私も同意します」

「私も好きだな」

「私は紅茶の方が……」

「それよりも桜ちゃんの作ったシュークリームは最高よねぇ」

「私もクア姉に同意」

「おいしい」

上から順に、スカリエッティ、トーレ、チンク、ウーノ、クアットロ、セイン、ディエチである。

ドゥーエが居ないのは、既に管理局に潜り込んでいるからだろう。

それにしてもスカリエッティ。

指名手配犯が、真昼間から喫茶店でコーヒー飲んでて大丈夫なのか?

あと、変装のためかもしれんが、全員がサングラスかけてると、怪しい集団にしか見えんぞ。

とは言っても、最低でも週に2回は来る。

他にも、なのは達管理局組も暇があれば店に寄っている。

あと、アリサたち非魔導師組だが、ここクラナガンで新たに会社を設立した。

その名もBTT(バニングス・月村・テスタロッサ)社。

社長アリサ。

副社長すずか。

秘書アリシア。

主にデバイス関係を扱う会社である。

まだ小企業なので小さいが、あいつらの事だから、あっという間に大きくしそうだ。

その内、本当に一般人でも使えるデバイスを開発しそうだよな。

ユーノは、アニメの通り司書長に昇進しているそうだ。

ヴィータは、成長しているユーノに大して、成長しない自分にコンプレックスを持ち始めてるとかなんとか………

最後にエリオだが、聖王教会系列の魔法学院に入学した。

別に聖祥でも良かったんだが、ミッドチルダに居た方が母親のシグナムにも会いやすいだろうと思ってこっちの学校に入学したのだ。

因みに、シグナムがいつの間にか桜に頼んで、エリオに軽めのトレーニングバインドをかけていたらしく、実力的には既にAAランクに迫るほどの実力を既に身に付けていたり………

それが管理局にバレれば、間違いなく勧誘されるため、リミッターをかけてはいるが。

とりあえず、はやては、アリサ達の非魔導師用のデバイスの出来を見て、管理局の誰かに交渉を持ちかけるそうだ。

現在の第一候補はレジアス中将。

何でも、裏で色々やっているらしいが、地上を守ろうとしている気持ちは本物だとのこと。



ともかく、今はこの日常を楽しもう。





あとがき


第四十一話の完成。

う~ん。

盛り上がりがないなぁ………

グダグダしてるし…………

ギンガと、スバルの名前も出てない。

とりあえずミッドに移住してきました。

さて、話は変わりますが…………………とらハの久遠、出して良いですか?

いや、以前久遠は出す予定が無いと言ったんですけど、自分の壊れたアンテナが壊れた電波を受信しまして………

あの2人(匹?)の子供役に………

出す場合は、とらハ3の那美ルートのストーリーを完全に無視させていただく形になると思うのですが………

よろしいですか?

皆様の同意があれば出そうかと思ってます。

では、次も頑張ります。






[15302] 第四十二話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122
Date: 2011/04/24 16:56

第四十二話 鉄槌と鉄壁と竜使いの出会い




「いらっしゃいませ」

さて、今日も翠屋はいつも通りの営業だ。

ミッドチルダで翠屋を始めて数ヶ月。

最初は身内以外の人はあまり来なかったが、時が経つにつれ、徐々に客の量も増えていってる。

まあ、身内贔屓かもしれないが、この喫茶翠屋クラナガン支店は、なかなかのものだと自負している。

俺のコーヒーはともかくとして、桜の作る菓子は、桃子さんに及ばないまでもそんじょそこらのパティシエなんかよりも遥かに上だ。

更にウェイトレスとして、リニスやファリンといった美人が働いているため、男性受けはいいと思う。

序に………

と、その時店のドアが開き、家族と思われる白髪の男性と青髪の女性と同じく青髪の女の子2人が入店した。

「いらっしゃいませ」

俺は営業スマイルを浮かべて挨拶する。

「へぇ~………中々良さそうな店ね」

青い髪の女性は店内を見渡してそう漏らす。

って、この人たちって……

俺がこの一家に思い当たりがある事に気づいたとき、店の奥から桜が現れた。

「いらっしゃいませ」

桜も、営業スマイルを浮かべて挨拶する。

その時、

「な、なのはさん!?」

小さい方の女の子……スバル・ナカジマが驚いた声を上げる。

「えっ………? 高町三等空尉?」

その女性……クイント・ナカジマも、呆気に取られた顔で桜を見た。

桜は一瞬呆けたが、直ぐに笑顔を作り、スバルに目線を合わせるように座り込む。

「もしかしてスバル? スバル・ナカジマ?」

そう問いかけた。

「は、はい!」

スバルは、ピンと背筋を伸ばして返事をする。

どうやら桜をなのはと勘違いして、緊張しているらしい。

「やっぱり。 なのはが空港火災の時に助けた女の子よね? なのはから話は聞いてたからもしかしたらって思ったの」

桜は笑ってそう言った。

一方、スバルの方は、桜の物言いに不思議そうな顔をする。

大方、なのはと勘違いしている桜の言動に疑問を持っているのだろう。

桜がそんなスバルの表情に気付くと、

「いい忘れてたけど、私はなのはじゃないわよ?」

「「えっ?」」

スバルとクイントさんが声を漏らす。

「私は高町 桜。 なのはの双子の姉よ」

桜が笑みを浮かべてそう言った。




驚いていたクイントさんとスバルが落ち着いた所で、ナカジマ一家はカウンターの席に座る。

「それにしても、随分と若いマスターだな」

白髪の男性……ゲンヤさんが俺にそう言ってくる。

「あはは、若輩者なのは否定しません。 まだ15歳ですし」

そう言って、俺はゲンヤさんにコーヒーを差し出す。

クイントさんにもコーヒー。

ギンガとスバルにはオレンジジュースを出す。

ゲンヤさんは、コーヒーカップを手にとって一口飲む。

すると、少し驚いた表情をした。

「ほう………うまいコーヒーだな」

俺のコーヒーを気に入ってくれたらしい。

まあ、伊達に士郎さんに教わったわけではない。

「ありがとうございます」

俺は礼を言う。

すると、

「お待たせしました」

桜がシュークリームを持ってやってくる。

そして、クイントさん、ギンガ、スバルの前にシュークリームを置く。

「あら、ありがとう」

クイントさんはそう言うと、シュークリームを手に取った。

ギンガやスバルも、待ちきれなかったと言わんばかりに手に取ると、それにかぶりつく。

瞬間、3人同時に顔色を変える。

「あら、おいしい」

クイントさん。

「こんな美味しいシュークリーム初めて食べました!」

ギンガ。

「ぱくぱく!」

感想も言わずにシュークリームに夢中のスバル。

「ありがとう。 そう言ってくれると、作った甲斐があるってものだわ」

桜が笑顔でそう言った。




「ありがとうございました。 これからもご贔屓に」

ナカジマ一家が店を出る。

夕方が近いためか、店の中に客はいない。

「ふぅ~………」

と、俺は一息つく。

すると、店のドアが開いた。

「いらっしゃいませ………って、ユーノか」

入ってきたのはユーノだった。

「やあ、久しぶり」

ユーノは笑顔でそう言ってくる。

すると、

「邪魔するぜ」

と、ユーノの後ろから朱色の髪を三つ編みにした外見年齢17~18歳ぐらいの女性が現れた。

俺は思わず、

「おいユーノ。 女連れってどういう事だ? こんな所ヴィータに見られたら、グラーフアイゼンの落ちない滲みにされるぞ!」

そう言ってしまった。

「あ、あはは………」

ユーノは苦笑。

「へぇぇ………お前はアタシの事そんな風に思ってたのか?」

結構ドスの利いた声でその女性が言った。

「へっ?」

俺は思わず声を漏らす。

俺はその女性をよく見た。

髪は朱色で三つ編み。

身長は成人女性に近いが、その顔立ちは、ヴィータに共通する所が多々ある。

「ま……まさか………?」

俺は、ユーノに視線を向ける。

「あはは………ヴィータだよ………」

ユーノが苦笑しながら答える。

「……………一応確認するが、変身魔法は………」

「使ってないよ」

俺の質問に即答するユーノ。

俺は再びヴィータ(らしき女性)に向き直り、

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」

思わず叫んだ。

すると、

「ユウ!? 如何したの!?」

「何事ですか!?」

「ユウ君! 如何したんですかぁ!?」

「とーさま!?」

店の奥から、俺の声に驚いて、桜、リニス、ファリン、リィンが飛び出してきた。

「やあ、皆」

ユーノが爽やかに挨拶する。

「あ、ユーノじゃない。 如何したの?」

桜がそう尋ねる。

因みに俺は未だに固まったまま。

「ちょっと報告にね」

「報告?」

「うん。 先ずはヴィータの事」

「ヴィータ? ヴィータがどうかしたの?」

ユーノの言葉に、桜がそう尋ねると、

「見りゃわかんだろ?」

ヴィータがそう聞くと、

「えっと………? どちら様?」

桜がダラダラと冷や汗をかきながらそう聞いた。

いや、桜はもう気付いているが、認めたくない気持ちが大きいんだろう。

「こんなナリをしてるが、ヴィータだ」

ヴィータはそう答えた。

その瞬間、

「「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」

桜、リニス、ファリンは先ほどの俺と同じように盛大に驚き、

「如何しちゃったんですかヴィータちゃん!? いきなりおっきくなっちゃってるです!」

リィンが驚きながらそう聞いた。

「その話は後だ。 今日は、もう1つ報告があってな………」

ヴィータがそう言うと、ヴィータの後ろにいた誰かを俺達の前に押し出す。

その子は、5、6歳ぐらいの身長に、桃色の髪。

極めつけにその子の腕には白い幼竜が抱かれている。

如何見てもキャロです。

何でだよ!?

「あたし等の娘のキャロだ」

「は、初めましてっ……キャロ・ル・ルシエです! こっちは、フリードリヒ!」

キャロが挨拶するが、その前にヴィータの言った言葉で再び固まる。

む、娘?

キャロが?

ユーノとヴィータの?

「「「「何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!?」」」」

それを理解した時、皆一斉に驚きの声を上げる。

「どういう事だユーノ!?」

俺は思わず叫んでユーノに問いかける。

「あはは。 ちゃんと説明するから、先ずは落ち着こうか?」




あの後、何とか落ち着いた俺達は、とりあえずコーヒー(キャロはジュース)とシュークリームを出して、話を聞くことにした。







【Side ユーノ】





僕が無限書庫の司書長になって暫く経ち、数日前にようやく無限書庫での仕事が一段落したから、僕は自分の趣味である遺跡発掘に出かける事にした。

勿論ヴィータも一緒だ。

今回の目的地は、第6管理世界のアルザス地方。

この辺りは、竜に関する遺跡が結構あって興味をそそられるんだよね。

それで、1日かけて発掘する場所を決めて、暗くなってきたから野営の準備をする。

ヴィータと2人で焚き火の傍で座ってると、ヴィータが何か俯いている。

「ヴィータ? どうかしたの?」

気になった僕は尋ねる。

すると、

「なあ、ユーノ………」

ポツリとヴィータが呟く。

「うん?」

「アタシ………このままユーノの傍に居てもいいのかな?」

俯いたまま、そんな事を呟いた。

「何言ってるのさ、いきなり?」

「だって、ユーノは成長してるけど、アタシは元々守護騎士プログラム。 何年経っても、アタシは今と変わらない………そのせいで、ユーノが何て呼ばれてるか………」

「ああ。 ロリコン司書長とか、幼女趣味とか」

僕がそう言うと、ヴィータはまた落ち込む。

「良いんだよ。 言いたい人には言わせておけば」

僕はヴィータを元気付ける為に、笑ってそう言う。

「けどよ!」

「それに、僕は幼女が好きなんじゃなくて、“ヴィータ”を好きになったんだからね」

僕がそう言うと、ヴィータの顔が真っ赤に染まる。

「ばっ………おまっ………何言って!?」

顔を赤くしたまま、慌てるヴィータ。

可愛いなぁ。

そう思ったとき、

――ガサッ

後ろの茂みで音がした。

すぐに警戒態勢に入る僕達。

「原生生物か?」

ヴィータがグラーフアイゼンを起動させながら言った。

「一応、結界を張っていたから、危険な動物じゃないと思うけど………油断は禁物だよ」

僕はそう説明する。

――ガサガサッ

茂みが揺れて、その中から現れたのは、

「子供?」

ローブを纏っていて、頭もフードで覆われていたから顔はよく見えなかったけど、背丈がヴィータと同じぐらいか少し下の人間の子供。

その子は、フラフラとおぼつか無い足取りで2、3歩歩くと力尽きたように倒れた。

その拍子にフードが取れ、顔が露になる。

その子は、桃色の髪を持った、幼い少女だった。

「キュクルー」

すると、後ろの茂みから、白い幼竜が飛んできて、その子の近くに降り立ち、心配するように鳴いた。

「おい! 大丈夫か!?」

ヴィータが慌ててその子に駆け寄る。

僕もヴィータの声で我に返った。

その子の詮索は後回しだ。

先ずは介抱しなきゃ。

僕はその子を抱き上げ、テントの中へと連れて行った。






【Side Out】





【Side キャロ】




「アルザスの竜召喚部族、ルシエの末裔キャロよ!」

「僅か6歳にして白銀の飛竜を従え、黒き火竜の加護を受けた。 お前は真、素晴らしき竜召喚師」

「じゃが、強すぎる力は災いと争いしか呼ばぬ」

「すまんな。 お前をこれ以上、この里へ置く訳にはいかんのじゃ」

長老と大婆様にそう宣告されて、私はル・ルシエの里を追放された。

幾許かの食料を渡されて、私はフリードと一緒に里を追い出された。

私には行く当てもなく、自然の中を彷徨い続ける。

この辺りの獣なら、フリードが追い払ってくれるから、襲われても何とかなった。

私が思うのは、自分の力について………

竜召喚は危険な力……

人を傷つける………怖い力………





里を追放されて一週間。

貰った食料は底をついて、体力ももう限界。

フリードも相当疲れてる。

私は、もう駄目かな?

そんな考えが頭に過ぎる。

でも、その方がいいかもしれない。

私と一緒に居る人は、皆不幸になっちゃうから………

…………でも、寂しい。

フリードが居てくれるけど、それでも寂しい。

夜になって、あたりはすっかり暗くなる。

夜は怖い………

少しの物音に敏感になり、物陰から襲われる恐怖が付きまとう。

思わず眼から涙が零れる。

その時だった。

「え?」

少し奥に張られた結界に気付いた。

私は、思わずその結界に近付く。

それは、簡単な結界で、動物避け程度に作ったものだと解る。

私は、その結界の中に入った。

もう私の心身共に限界で、おぼつか無い足取りで前へと進む。

すると、焚き火と思われる光が見えた。

私は茂みを掻き分け、その光へと向かう。

私が茂みから出ると、目の前には男の人と、私と同じぐらいと思う女の子がいた。

夜の闇の怖さの中、人がいたという安堵感からか、心身ともに限界だった私は、そこで意識を失った。





【Side Out】




【Side ユーノ】



僕達が助けた女の子は衰弱していて、かなり限界に近かった事が解る。

僕はとりあえず治癒魔法でその子を回復させる。

暫くすると、

「う……うん………」

その子が目を覚ました。

「あ、大丈夫?」

僕は、その子を怖がらせないように微笑んで問いかける。

「あれ……? 私……?」

その子は、どういう状況か分かってないようで、声を漏らす。

その時、

「ユーノ。 飯の準備できたぞ」

ヴィータがテントの入口を開けてそう言ってきた。

そこで、ヴィータもこの子が目を覚ましている事に気付いた。

「おっ、目ぇ覚めたか」

ヴィータがテントの中に入ってくる。

「あの………貴方達は?」

その子がそう問いかけてきた。

「あ、ゴメン。 自己紹介がまだだったね。 僕はユーノ。 ユーノ・スクライア」

「アタシはヴィータ。 鉄槌の騎士ヴィータだ」

僕達がそう言うと、

「わ、私はキャロ。 キャロ・ル・ルシエです。 こっちはフリードリヒ!」

その子、キャロが慌てたように言って、幼竜も紹介する。

「そう。 よろしくね、キャロ、フリードリヒ」

僕がそう言うと、

「ところで、キャロは何でこんな所に1人で居たんだ?」

ヴィータがそう尋ねる。

「それは………」

キャロが俯いて口を開こうとしたところで、

――きゅるるるるるる

キャロのお腹の虫が可愛らしく鳴った。

キャロの顔が真っ赤に染まる。

「あはは! じゃあ、話はご飯食べながら聞こうか」

僕はそう言って、キャロ達と一緒にご飯を食べる事にした。




ご飯を食べながら、キャロの話を聞く。

簡単に言えば、

キャロはこの近くのル・ルシエの里の竜召喚師の子供。

6歳で飛竜フリードリヒを従え、黒き火竜ヴォルテールの加護を受けた、いわゆる天才召喚師。

でも、ル・ルシエの里では、大きすぎる力は災いと争いしか呼ばないと言われ、一週間ほど前に里を追放されて、食料が切れて彷徨ってた所、限界近くで僕達を見つけてそのまま倒れてしまったという事だ。

「ふざけんな!!」

ヴィータが叫んだ。

「こんな小さな子を追放だと………何考えてやがんだそいつ等!!」

ヴィータは、怒りの感情を隠そうともせずにそう叫ぶ。

そう言う僕も、その長老の判断には賛同できない。

「ユーノ!」

ヴィータが僕の名を呼ぶ。

ヴィータの言いたいことが分かった僕は頷き、

「解ってる。 明日、キャロの里へ行ってみよう」

そう決めた。



翌日。

キャロの案内で、ル・ルシエの里へ向かう。

キャロは飛べないので、僕がキャロを抱えて、ヴィータがフリードを抱えている。

キャロの案内通りに飛んでいると、コテージのようなテントが集まった集落が見えてきた。

「あ、あれです。 あれがル・ルシエの里です」

抱きかかえたキャロがそう言う。

僕達は、集落の中心にある広場に降り立った。

村人達が、突然降りてきた僕達に驚いた視線を向ける。

前にもこんな事あったような………

まあ、いっか。

「突然の訪問すみません! 僕はユーノ・スクライア! 発掘を生業とするスクライア一族の者です! すみませんが、お尋ねしたいことがあり、急遽来訪しました! いきなりですが、どなたかこの集落の長老の下へ案内していただけませんか!?」

僕はそう呼びかける。

すると、1人の男性が出てきて、

「ご案内します。 こちらへ」

「すみません」

僕は一言謝罪し、その人の後に続く。

すると、行く先には周りのコテージより一回り大きなコテージがあった。

案内してくれた男性は、

「ここで少々お待ちを」

僕達を入口の前で待たせ、男性はコテージの中に入る。

少しすると、

「長老がお会いになるそうです。 中へどうぞ」

そう言われ、僕達はコテージの中に入る。

「失礼します」

中には長老夫婦と思われるお爺さんとお婆さんがいた。

「よくぞ来なすった。 スクライアの客人よ」

長老の男性がそう言って迎える。

すると、長老は視線をキャロへと向けた。

「来訪のご用件は予想がつきます………キャロのこと……ですな?」

長老は、目を伏せながらそう言った。

「はい。 この里から、キャロを追放したというのは本当なんですか?」

僕はそう尋ねる。

「……本当の事ですじゃ……強すぎる力は、災いと争いを呼ぶ……故に……」

お婆さんがそう答えた時、

「ふざけんなっ!!」

ヴィータが叫ぶ。

「だからって、こんな小さな子を追放して良い訳ねえだろ!?」

「僕も、その判断には遺憾です」

ヴィータの言葉に続いて、僕もそう言う。

「そう思われるのも、当然ですじゃ………しかし………」

長老が何か言いかけるが、

「言い訳ばっか言ってんじゃねえ! 結局テメーらはこんな小さな子を追放した事には変わりねえんだ! 強すぎる力は災いと争いを呼ぶ!? 確かにその可能性は否定できねーよ! けど、そうしないためにもキャロをちゃんと導いてやらなきゃいけねーんじゃねーのかよ!!」

ヴィータの叫びに続いて、僕も口を開く。

「強くても弱くても、力は唯力でしかありません。 その力をどのようなものにするかは、その力を使う者の心次第です。 少なくとも、キャロが自分で判断を下せる年齢になるまでは育てるべきです。 例え話ですが、このままキャロを追放して、そのキャロをどこかの犯罪組織が拾ったとしましょう。 今のキャロの年齢では、善悪の判断も曖昧です。 この頃から教育していけば、その組織の思うままに戦う兵士にする事すら可能です」

そう、まるで親を殺されて天涯孤独になったユウを、管理局が取り込もうとしたように。

いや、このまま管理局に拾われても、管理局が正しいと刷り込まされて、前線に放り出される可能性が高い。

こう考えると、管理局も犯罪組織とあんまり変わらないなぁ。

「そうして、キャロという強力な兵士を得た犯罪組織は、勢力を拡大し、もしかしたらこの土地に攻め込んでくるかもしれません。 それこそ災いを呼ぶ力になってしまいます」

僕はそう言い放つ。

長老は俯いていたが、

「あなたのいう事も一理ありましょう。 しかし、キャロはまだ自分の力を制御できておらんのです」

そう言った。

「キャロの潜在能力は、凄まじいものです。 この里に住む竜召喚師が誰も敵わないほどの………しかし、それは逆にキャロを止められる者がおらんということに他なりませぬ。 もし、キャロがその力を暴走させてしまえば里の壊滅は必至………キャロの追放も、それを踏まえた上での苦渋の選択だったのです」

その言葉に、キャロは俯く。

その時、

――ドンッ!

ヴィータが床を殴りつけた。

「……もういい!」

ヴィータの表情は、怒りに満ちていた。

「グダグダ理由だけ並べやがって………結局テメーらはわが身可愛さにキャロを追放しただけだろうが! こんな小さな子が怖いかよ! この腰抜けヤロー共が!!」

ヴィータはそう叫ぶと、

「キャロはアタシ達が引き取る! 文句は言わせねえ!!」

それだけ言って席を立つ。

「ユーノ、キャロ、行くぞ。 もうここには用はねえ」

ヴィータはそう言うと、キャロの手を取ってコテージから出て行く。

僕もそれに続いて立ち上がって振り向こうとしたところで、

「ユーノ殿……でしたな」

長老に呼び止められる。

長老に向き直ると、

「追放した我らが言えた義理ではありませぬが、キャロの事、何卒よろしくお願いします」

長老夫婦が、揃って頭を下げていた。

「………言われるまでもありません」

僕はそれだけ言ってヴィータ達の後を追った。




僕達は、里から結構離れた場所で一度降りる。

「ユーノ、結界を頼む」

ヴィータがそう言う。

「やるんだね?」

僕が確かめるように聞くと、

「ああ。 このままじゃ、キャロは自分の力に怯えて、誰にも甘えられねえからな。 大丈夫だって事を証明しねーと」

ヴィータはグラーフアイゼンを起動させ、バリアジャケットを纏うとキャロに向き直り、

「キャロ! 今からお前の持てる全ての力で召喚しろ!」

そう言った。

「えっ? で、でも………」

「キャロが自分の力を怖がってるのは解った。 だからこそ召喚してくれ! アタシ等は、キャロと一緒に居ても不幸にならねーって事を証明してやるよ」

ヴィータが笑いながらそう言う。

その間に、僕は結界を展開した。

「さあ、いいよキャロ。 結界の中なら、誰にも迷惑はかからない」

それでも、キャロは踏ん切りがつかないのか召喚しようとしない。

するとヴィータが、

「召喚してくれキャロ。 アタシ達はお前を1人ぼっちにさせたくねーし、絶対にさせねー! だから、アタシ達を信じてくれ! キャロ!」

そう叫んだ。

すると、キャロの足元に桃色の四角い魔法陣……召喚陣が発生する。

「蒼穹を走る白き閃光。 我が翼となり、天を駆けよ。 来よ、我が竜フリードリヒ。 竜魂召喚!」

その呪文と共に、フリードが桃色の光に包まれ、巨大な姿へと変貌する。

「グガァァァァァァァァァァッ!」

フリードが咆哮を上げる。

幼竜の姿の大人しい性格は一変して、まるで野生の竜のように気性が荒い。

すると、有無を言わさずフリードが炎を吐いてきた。

「おっと!」

僕とヴィータは飛び退いてその炎を避ける。

するとヴィータが、

「ユーノ! 手ぇ出すなよ! ここはアタシがやる!」

そう言うと、返事も待たずにヴィータはフリードに飛び掛った。

フリードは、飛び掛ってきたヴィータに向かって炎を吐く。

だが、ヴィータはその炎を難なくかわし、

「テートリヒ・シュラーク!!」

グラーフアイゼンで、フリードの頭を殴った。

「グアァッ!?」

その一撃で脳を揺さぶられたのか、フリードは気絶して大地に沈む。

「へっ! 楽勝!」

ヴィータはVサインで勝利を喜ぶが、ヴィータの後ろに巨大な召喚陣が浮かび上がる。

「竜騎……召喚……!」

キャロが呟く。

「ヴォルテェェェェェェェェルッ!!」

キャロの言葉と共に、その召喚陣から火柱が吹き上がり、その中から、体長約15mの巨大な火竜が現れた。

巨大って言っても、100mクラスの竜を相手にしてきたから小さく感じるんだけどね。

でも、これほどとは予想以上。

枷をしたままだと、いくらヴィータでも手こずるね。

そのヴィータは、

「へっ、物足りなかった所だ! 相手してやるよ!」

勇ましくその竜に突撃していった。




【Side Out】





【Side ヴィータ】



「おらぁぁぁぁぁっ!!」

アタシはキャロが新たに召喚した黒い火竜に、ギガントフォルムで殴りかかる。

その一撃は頭部に直撃し、その竜は一瞬仰け反ったけど、直ぐに体勢を立て直して腕で殴りかかってきた。

「おわっ!?」

直撃は避けたけど、拳を繰り出した時の気流の乱れで少し吹き飛ばされる。

アタシは一度距離を取って体勢を立て直した。

軽く見積もって、あの竜はSランク相当ってところ。

枷をした状態のアタシの魔導師ランクはAAA。

枷をしたままだと、勝てるか判らない。

けど、

「ここで引き下がるわけにはいかねーんだよ!!」

アタシは、ギガントフォルムを巨大化させる。

「轟天爆砕! ギガント・シュラァァァァァァク!!」

巨大化させたグラーフアイゼンを振り下ろす。

相手の竜も、ギガント・シュラークに殴りかかってきた。

竜の拳とギガント・シュラークがぶつかり合う。

「うぉぉぉぉ………!」

互いの攻撃は拮抗する。

「うおりゃぁぁぁぁぁっ!!」

アタシはそこで更に気合を入れ、竜の拳を弾き飛ばした。

それによって、竜の体勢は大きく崩れる。

「もらったぁぁぁぁぁぁっ!!」

アタシはその隙に飛び込んで、竜の頭に向かってグラーフアイゼンを振りかぶる。

例えSランクでも、コイツを頭に喰らえばひとたまりも無いはず!

「轟天雷鳴! ハンマァァァァァァァ………」

アタシはそのままグラーフアイゼンを振り下ろす。

「スパァァァァァァァ………」

瞬間、

「グオァァァァァァ!!」

口から灼熱の炎が吐き出された。

「しまっ………!?」

思わず声を漏らすが、アタシは成す統べなくその炎に飲まれた。

身体中が炎に焼かれ、とても熱い。

「あぐっ!」

そのまま吹き飛ばされるように地面に向かって落下する。

身体も上手く動かない。

このままじゃ地面に激突する。

その時、

「ああっ!」

キャロの悲鳴に近い声が聞こえた。

その声を聞いた瞬間、アタシは自分に腹が立った。

アタシは何をやってるんだ!

キャロの前であんなデカイ口叩いてこの様は何だ!

アタシは自分に喝を入れ、無理矢理身体を動かす。

何とか地面に着地し、ギリギリで倒れるのを防ぐ。

「はぁ……はぁ……」

バリアジャケットの帽子は吹き飛んで焼き尽くされ、スカートの端やバリアジャケットの所々も、焼かれてボロボロ。

けど、倒れるわけにはいかねえ。

倒れたら、キャロの居場所が無くなっちまう。

すると相手の竜が翼を大きく広げ、口と両翼の前に魔力を集中させる。

恐らく来るのは、大威力砲撃。

けど、キャロの為にも負けるわけにはいかねえ。

はやてが、アタシに居場所をくれたように………

「アタシがキャロの居場所に!」

はやてが家族になってくれたように…………

「キャロの家族に!」

そして、

「キャロの母親に、なってやるんだぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

アタシの叫びと同時に、相手の竜が砲撃を放った。

アタシに迫る灼熱の砲撃。

でもその瞬間、緑色の3重の障壁がアタシを守った。

「ヴィータ、無茶しすぎだよ」

アタシの前にいたのはバリアジャケットを纏ったユーノだった。

「ユーノ!? 何で!?」

すると、

「ねえヴィータ。 ヴィータが母親になるって言うのなら、父親も必要じゃないかな?」

そんな事を言ってきた。

「えあっ? ユ、ユーノ………それって………」

顔が熱くなる。

きっと、今のアタシの顔は真っ赤だ。

「2人で、キャロの親になろう」

ユーノは、真剣な顔でそう言ってきた。

「ッ………ああ!」

アタシは迷い無く頷く。

その時、竜がさっきと同じ大威力砲撃を用意する。

「ヴィータ! あの砲撃は僕が防ぐ! その隙に!」

「分かった!」

ユーノが相手の竜に向かって飛ぶ。

アタシは、そのユーノの後ろに付いて飛んだ。

アタシの目の前を飛ぶユーノ。

初めて会った時よりも、ずっと大きくなった背中。

アタシは、成長しない自分にずっとコンプレックスを持ってたけど、ユーノはそんなの気にしないと言ってくれた。

そして、今は守ってやりたい子供が出来た。

だから、身体は成長しなくても、キャロの親に相応しいアタシに、ユーノの隣に立つに相応しいアタシに………

アタシはなる!!

そう心に誓った時、身体に違和感を感じた。

でも、今はそんな事を気にしてる場合じゃない。

相手の竜から放たれる大威力砲撃。

それをユーノは3重の障壁で防ぐ。

爆煙に包まれ、視界が遮られる。

けど、

「今だよ! ヴィータ!!」

ユーノの声。

「よっしゃぁっ!!」

アタシは迷わずに煙の中を突っ切る。

煙を抜けると、そこは竜の顔の前。

「あれだけの大威力砲撃の直後じゃ、さっきみたいな炎は直ぐには吐けねえだろ!?」

アタシはグラーフアイゼンを振り上げる。

「轟天! 雷鳴!!」

そして、渾身の力を込めて振り下ろした。

「ハンマァァァァァァスパァァァァァァァァクッ!!!」

電撃付きの巨大なハンマーが竜の頭部に直撃する。

その竜は、一度咆哮を上げて地面に崩れ落ちた。

「やったぜ!」

アタシは思わずガッツポーズをする。

「ヴィータ!」

煙の中から、ユーノの声がする。

「ユーノ!」

アタシがユーノを呼ぶと、煙が晴れていく。

「良かった。 無事だっ………」

煙が晴れてユーノが姿を見せると、何でか突然固まった。

「如何した? ユーノ?」

アタシが尋ねると、

「ヴィ、ヴィータ?」

何でか疑問口調で問い返してくる。

「おう! 如何かしたか?」

アタシがもう一度尋ねると、

「ヴィ、ヴィータ。 身体に違和感はない?」

そんな事を聞いてきた。

「ん? そーいやぁ、さっき違和感を感じたけど……今は何ともねえぞ」

アタシがそう答えると、

「と、とりあえず下に降りよう。 そうすれば分かると思うから……」

ユーノが若干焦った表情でそう言った。

「?」

アタシは良く分からなかったけど、とりあえずキャロを待たせてるから、ユーノと地上に降りる。

すると、

「ヴィータ」

ユーノに呼ばれて、そっちに振り向くと、

「うおっ!?」

ユーノの顔が、アタシの目線と同じぐらいの高さにあった。

「ユーノッ! ビックリさせんな! 何でアタシの目線に合わせてるんだよ!?」

アタシは思わずそう叫んで後ずさる。

けど、

「ヴィータ、よく見て。 僕は普通に立ってるよ」

「へっ?」

そう言われて、改めてユーノを見ると、確かに普通に立っている。

けど、アタシと同じ目線の高さ。

ってことは………

アタシは、自分の身体を確認するように下を向く。

「ヴィータ、大きくなってるよ」

「は?」

アタシは自分の目で見ても信じられなかった。

「はぁああああああああっ!?」

思わず驚愕の声を上げる。

「ど、どーなってんだよ!?」

「ぼ、僕に聞かれても………」

何でいきなり大きくなってるんだ!?

アタシは元々守護騎士プログラムだから、成長はしないはずだろ!?

そんな風に思っていると、

「ヴィータさん! ユーノさん!」

キャロが駆け寄ってきた。

その姿を見ると、

「まあ、いっか。 これなら母親って名乗っても馬鹿にされないだろうし」

そう思って、キャロを出迎える。

「キャロ、アタシ等の言うとおりだったろ? アタシ達は、お前と一緒にいても、不幸にはならないって!」

「はい! それにしてもヴィータさん?」

「如何した?」

「ヴィータさんって、大人だったんですね」

「んあっ?………あ、ああ。 その通りだ」

キャロの言葉に、アタシはそう答える。

それよりも、

「キャロ、“ヴィータさん”なんて他人行儀はやめろ。 さっきも言っただろ? アタシ達はキャロの親になるんだってな」

アタシはキャロにそう言う。

「えっ? えっと……………お、お母さん………?」

「おう!」

お母さんと呼ばれて、何かくすぐったい感じがしたが、アタシは返事をする。

キャロは、ユーノへ視線を向けると、

「お、お父さん……?」

「うん。 そうだよ、キャロ」

ユーノがそう言うと、

「………うっ……ううっ………」

キャロはいきなり目に涙を浮かべ、

「うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」

大泣きした。

「お、おい!? 如何したキャロ!?」

いきなり泣き出したキャロにアタシは困惑する。

すると、ユーノがキャロに近付いて、

「よしよし、大丈夫だよキャロ。 僕達が傍にいるから」

キャロを抱き上げて頭を撫でつつ慰める。

アタシもユーノの腕に抱かれたキャロを撫で、

「キャロ、ユーノの言うとおりだ。 アタシ達が付いてる。 心配する事はなんも無いからな」

そのまま、アタシ達はキャロを慰め続けた。





【Side Out】







「…………って訳」

ユーノの説明を聞き、呆然となる俺達。

キャロが2人の子供になるとは………

「それにしても、何でヴィータはいきなり成長したんだ?」

俺は疑問を口にする。

すると、

「僕の仮説だけど、ヴィータはあの時、キャロの母親として相応しくなりたいって強く思ったらしいんだ。 ヴィータの強い思いが、ヴィータの身体プログラムを書き換えたんじゃないかって思ってる」

「へ~」

「まあ、あくまで仮説だからね。 真実はわからないよ」

まあ、分からないものはしょうがないか。

「で、ちょっと頼みがあるんだけどよ」

ヴィータがそう言ってくる。

「何だ?」

俺が聞くと、

「ここって、結構空き部屋が合ったよな?」

そう返してくる。

「ああ。 どうせなのは達が泊まる事が多いだろうと思って、部屋の数は多くしといたけど………」

そう答えると、

「頼む! アタシ達に部屋貸してくれないか?」

ヴィータが頭を下げながら手を合わせてお願いしてくる。

「何で?」

「ああ。 アタシ等も、キャロを学校に通わせようと思ってるんだ。 ここなら、学校に通ってるエリオも居る事だし、アタシ等が無限書庫の仕事で遅くなった時も、キャロに寂しい思いをさせる事もない。 勿論! 必要なら家賃も払う。 だから、この通り!」

ヴィータは再び頭を下げる。

「ユウ。 僕からもお願い」

ユーノも頭を下げた。

「そこまでしなくても部屋ぐらい貸すよ。 家賃も必要ない。 ただ、家事の手伝いと、時間があるときで良いから店のヘルプは頼む」

俺がそう言うと、

「すまねえ! 恩に着る!」

「ありがとう! ユウ!」

2人して感謝してくる。

すると、

「ただいまー!」

エリオが帰ってきた。

「おう! お帰りエリオ」

俺はエリオにそう言う。

「あれ? ユーノさんと………」

エリオはヴィータを見て首を傾げる。

「ヴィータだ」

ヴィータは自分でそう言う。

「ヴィータさんって…………ええっ!?」

エリオは驚愕する。

「アタシもなんでこうなったかよく分からねえんだ。 とりあえず納得しとけ」

すると、ヴィータはキャロをエリオの前に連れてくる。

「でだ。 こっちはアタシとユーノの娘のキャロ。 エリオとは同年代だ。 その内学校にも入れるつもりだから、仲良くしてやってくれよな」

「は、初めまして! キャロ・ル・ルシエです! こっちは飛竜のフリード!」

「あ、はい、こちらこそ初めまして。 エリオ・モンディアルです」

キャロとエリオが自己紹介する。

何かその姿が微笑ましい。

こうして、翠屋に新しい家族が加わった。







なお、後日。

「ヴィータがおっきくなって、その上ユーノ君と子供まで作ったやとーーーーーーーーーッ!!?? うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!! ヴィータにもさき越されたぁぁぁぁぁぁ!!!」

と、はやてが暴走。

ただし、相手が俺では無かったので、他のメンバーは笑ってユーノとヴィータを祝福。

1人暴走するはやてを、とりあえず鎮圧しておいた。






あとがき


第四十二話の完成。

はい、ごめんなさい!

ヴィータを成長させてしまいました。

今回の話の中で、これが一番賛否両論あると思います。

しかし、キャロの母親という立場にするに当たって、流石に小学生低学年の背丈では拙いだろうと。

あと、話の中でも出ていましたが、ユーノがロリコン司書長呼ばわりされてしまうので………

そして、何故か竜達とのバトル。

哀れフリード。

一撃で沈められました。

ヴォルテールは中々頑張りましたが、鉄槌と鉄壁のコンビには敵いませんでした。

さて、皆様の反応が怖いです。

次回はアギトになるかなぁ。

そうそう。

久遠は反対が居ないようなので、出します。

次の次ぐらいに出てくると思うのでお楽しみに。

では、次も頑張ります。





[15302] 第四十三話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122
Date: 2011/05/03 21:30
第四十三話 烈火の剣精



さて、今日も喫茶翠屋は繁盛してます。

開店して早半年。

大分有名になってきたのか、客の数もかなり増えた。

以前来たナカジマ一家も翠屋を気に入ってくれたようで、クイントさんを始めとして常連客となっている。

そして、夕方に差し掛かり、客の入りも少なくなってきた頃、店の扉が開き、

「やっほー! ユウ君こんにちは」

常連の1人であるクイントさんが店に入ってきた。

「ああ。 クイントさん、いらっしゃい」

俺は挨拶をする。

すると、

「へえ~。 ここがクイントのお勧めの喫茶店かぁ…………」

クイントさんに続いて、紫の髪をした女性。

クイントさんの知り合いだと、ルーテシアの母親のメガーヌ・アルビーノか?

更には、大柄の男性も入ってくる。

もしかして、ゼスト・グランガイツ!?

そして、数人の男性局員も入店してきた。

おいおい、ゼスト隊全員集合か?

すると、最後に見知った顔が入店した。

「シグナム?」

俺は思わず声を漏らす。

「ああ。 店は繁盛しているようだな。 ユウ」

店に入ってきたシグナムはそう返した。

「あれ? シグナム知り合いなんだ?」

クイントさんがシグナムに声をかける。

「ええ。 昔からの付き合いですので」

シグナムはそう言った。

「それで、今日はこんな大勢でいらっしゃるとは、何かあったのですか?」

俺がクイントさんに尋ねると、

「ええ。 シグナムが新しくウチの部隊に配属されたから、その歓迎会って所ね」

クイントさんの説明に、俺は納得する。

「そういう事でしたか。 ファリン!」

俺は近くにいたファリンに声をかけ、ゼスト隊の面々を席に案内するように促す。

「はい! 了解ですぅ!」

ファリンも、声をかけた意味をすぐに読み取り、ゼスト隊の隊員達を大きなテーブルの所に案内した。




ゼスト隊の様子を仕事をしながらチラチラと見ていたが、どうやらシグナムは部隊に上手く溶け込んでいるらしい。

というより、クイントさんが無理矢理巻き込んでいるように見えなくも無いが………

すると、

「とーさまー!」

リィンが飛んでくる。

「ん、どうしたリィン?」

そう尋ねると、

「はい! リィンも何か手伝えませんか?」

そんなリィンの姿に思わず微笑む。

丁度その時、

「ユウ、7番の注文あがりました」

リニスが厨房から料理を持ってくる。

「丁度良かった。 リィン、この料理をシグナム達のテーブルに届けてくれ」

「はいですぅ!」

リィンは料理に浮遊魔法をかけ、シグナム達のテーブルに向かって飛んでいった。

「お待たせしました~!」

リィンは浮遊魔法で料理をそれぞれに配っていく。

あ、良く見れば、リィンを何度も見ているシグナムとクイントさん以外が唖然としてるよ。

まあ、ユニゾンデバイスなんて滅多に見るもんじゃないからな。

「ユ、ユニゾンデバイスか………?」

ゼストさんが声を漏らす。

「はい! 2代目祝福の風! リインフォース・ツヴァイです! 初めまして!」

何故か自己紹介するリィン。

まあ、シグナムの仲間だし、これからも顔を合わせるかもしれないからな。

「リインフォース? リインフォースって言えば、確か八神 はやて三佐の補佐の………」

思い当たる事があるのか、メガーヌさんが声を漏らした。

「あ! かーさまをご存知ですか?」

リィンが嬉しそうな声でそう言う。

「か、かーさま………?」

唖然とした表情でメガーヌが呟く。

「リィンは、リインフォースがユウのサポートの為に生み出しました。 故にリインフォースを母と呼び、ユウを父と呼んでいるのです」

シグナムが説明する。

「そうなんだ。 じゃあシグナム、あなた結構不利なんじゃない?」

クイントさんが面白そうな顔でシグナムに言った。

「な、何のことでしょう?」

シグナムは平静を装っているが、若干顔が引き攣っている。

「あら、解らないと思った? 貴方、この店に来てから、雰囲気が柔らかくなってるし、彼と話すときも嬉しそうな顔してたわよ」

クイントさん鋭っ!

シグナムが顔真っ赤にしてるよ。

「あはは! その反応は図星ね!」

クイントさんの言葉に、シグナムは益々顔を赤くする。

「………ええ、ナカジマ分隊長の仰るとおり、私はユウに好意を持っています。 それが何か?」

シグナムは観念したのかそう白状した。

「だから、ユニゾンデバイスとはいえ、子供がいるんじゃ、シグナムが不利じゃないの?」

クイントさんはそう言う。

すると、シグナムは一口コーヒーを飲み、

「ご心配なく。 その点に関しては私も引けを取ってはいませんので」

そう言った。

「え? どう言う………?」

メガーヌさんが声を漏らした時、店のドアが開き、

「お父さん、ただいま!」

「ユウさん、ただいま帰りました」

エリオとキャロが帰ってきた。

「おう、お帰り2人とも」

俺はそう言うと、

「エリオ」

エリオに声をかける。

「はい、何ですか?」

エリオがそう聞いてきた。

「シグナム来てるぞ」

俺は、シグナム達がいるテーブルを指しながらそう言う。

エリオはそちらを向いてシグナムの姿を確認すると、

「お母さん!」

嬉しそうにシグナムに駆け寄った。

「お帰り、エリオ」

シグナムは微笑みながらそう言う。

そして、そのやり取りを見て固まっていたゼスト隊の面々に向き直ると、

「というわけなので」

そう言った。

「シ、シグナム………あなた……子供がいたの?」

驚愕に顔を染めたまま、そう口にするメガーヌ。

「あ、お母さんの同僚の方ですか? 初めまして、エリオ・モンディアルといいます。 お母さんやお父さんとは血は繋がってませんが、2人のことを本当の両親以上に思ってます。 以後、よろしくお願いします」

エリオがそう言いながら頭を下げる。

「これはご丁寧に………」

釣られて頭を下げるクイントやメガーヌ。

「エリオ、今日はこの後時間が空いてる。 久しぶりに鍛錬に付き合ってやれるからな」

シグナムがそう言うと、エリオは嬉しそうな顔をして、

「はい! お願いします、お母さん!」

そう言って踵を返すエリオ。

すると、

「そうだ。 手洗いとうがいも忘れるなよ」

シグナムは思い出したようにそう付け加えた。

「はーい!」

エリオはそう返事をしてキャロと一緒に奥へと姿を消した。

それを見送るシグナムを見て、

「シグナム、意外にしっかりと母親してるじゃない」

クイントさんがそう言った。

「あの子達、ルーテシアと同じくらいかしら………」

メガーヌさんもそう漏らす。

「エリオ達は、初等科の1年生です。 間も無く2年生になりますね」

シグナムはそう説明する。

「そうなの。 もうすぐルーテシアも入学するから、仲良くしてくれると嬉しいかな」

メガーヌの言葉に、

「後で、エリオ達にも伝えておきましょう」

シグナムは頷いてそう言った。

俺はその言葉を聞いたとき、そういえばハラオウン家のリーナも今度入学なんだよな~、などと考えていた。






さて、本日の翠屋の営業も終わり店を閉めるが、俺はこれからやる事がある。

スカリエッティから新しい違法研究所の情報が来たので、そこを潰しに行くのだ。

研究所は、やはりというか目立たない場所にあった。

俺はオメガフォームでその研究所の前に降り立つ。

「ち、血塗られた聖王!?」

「ついにここにも!?」

俺に気付いた警備員がアタフタしているが、俺はそんな事には気にも留めずガルルキャノンを入口へ向けた。

そして手加減した魔力弾を放つ。

入口を吹き飛ばし、俺は内部へ踏み入った。








【Side ???】



生まれたときの事なんて覚えてないし、人間で言う親――マイスターが誰かなんていう事もアタシは知らない。

ただ静かに……多分、随分長い間眠ってただけ。

気が付けば、白い部屋で実験動物。

自分が、何のために生まれたのかが解ってただけが、辛かった。

生まれた意味を何一つ果たせないまま、死ぬ自由すらなく、苦しいまま………いつか、心と身体が壊れて終わるんだって、思ってた。

だけど今日、それが変わった。

最初に気付いたのは、白い部屋の入り口に走る亀裂。

続いてそこから漏れ出す爆炎。

白い部屋は、あっという間に炎で真っ赤に染まった。

研究者達は、我先にと逃げていく。

そして、部屋の入り口から誰かが現れた。

「誰………?」

アタシは拘束されたまま、朦朧とする意識で視線をそちらに向ける。

最初に目に入ったのは、炎を纏う大剣。

その人物の纏う甲冑は白。

その甲冑の隙間から覗く、赤と青の瞳。

だけどアタシは、炎の大剣と赤い瞳に惹きつけられた。

すると、その人物がアタシに気付き、その赤い瞳で見下ろしてくる。

「………アギト?」

その人物がアタシに向かってそう呟いた。

アギト………?

アタシの………名前………?

すると、そいつは右腕の青い手甲を消すと、右手を伸ばし、アタシの拘束を解いた。

すぐに布切れを被せられ、アタシはその腕に抱かれる。

そいつはそのままアタシを外へ連れ出した。

崖の上から、燃え盛る研究所を見下ろす。

すると、アタシはそいつの右腕から左腕のオレンジ色の手甲の上に乗せられる。

そして、そいつは再び右手に青い手甲を出現させると、そこから巨大な砲身を飛び出させた。

けど、アタシはそんな事は気にならなかった。

アタシは、さっきの事を思い返していた。

この左腕の手甲に装備されていた炎の大剣。

アタシはそれを思い出して、思わず左腕の手甲に手を触れて、こう呟いてしまった。




【Side Out】




う~む。

これまたビックリ。

まさかアギトがこの研究所にいたとは。

とりあえずほっとけなかった俺は、アギトを研究所の外へ連れ出した。

そして、研究所を吹き飛ばそうとガルルキャノンを構えた時だった。

「ユニゾン……イン……」

左腕に触れたアギトが呟く。

その瞬間、光に包まれる俺。

「なっ!?」

俺は思わず声を漏らす。

その瞬間左腕から炎が吹き上がる。

「がっ!? 拙い! 炎と氷のバランスが崩れる! くっ! オメガ! 分離だ!」

オメガフォームを維持できなくなった俺は、バリアジャケットを解除し、オメガをブレイズとアイシクルに分離させる。

一応、この辺りのサーチャーは全部破壊しといたから、俺の正体がばれる事は無いが。

「はぁ………はぁ………」

何とか暴走を抑えた俺は、息を整える。

この時俺は気付いていなかったが、髪と瞳は、赤に変化していた。

「いきなり何するんだ?」

俺は、ユニゾンしているアギトに問いかける。

『はは………やっぱりだ………』

アギトは俺の中で笑いを零す。

『アンタが……アタシのロードだ………』

アギトは、俺の問いには答えず、そう呟く。

俺は、俺の中で涙を流しながら呟くアギトに、何もいう事が出来なかった。

まあ、今まで実験材料にされてて、生まれた意味を何も果たせずにいたらしいから、相性がいい相手に出会えて嬉しいのは解るしな。

俺は、まあいいかと思い、燃え盛る研究所に向き直る。

「ならアギト、早速だが一発ぶちかますぞ!」

俺はブレイズを握る。

「ブレイズ! セットアップ!」

『Yes, Master. Stand by, Ready. Set up.』

俺はブレイズを起動させた。

『X-Mode.』

リィンとユニゾンした時のアイシクルと同じように、Xモードを発動させる。

丸みを帯びた鎧が、鋭く角張った装甲のイメージを持つものへと変化し、背中のブレイブシールドは無くなり、代わりにブースターの噴出口が装備される。

両腕のドラモンキラーも鉤爪状のものから、盾に3本の剣が、平行に並んで取り付けられている形状に変化した。

「そんじゃ、いっくぜぇぇぇぇっ!!」

俺は両腕のドラモンキラーを振り上げ、地面に打ち込んだ。

地面に罅が入り、俺の周りからマグマのような炎が噴き出し、俺は、その炎を頭上に集めていく。

通常のガイアフォースを超える、超圧縮された灼熱のエネルギー球。

「ガイア……フォーーーーーーースッ!!!」

それを俺は、眼下の研究所に放った。

着弾した瞬間、超圧縮エネルギーが解放され、研究所が灼熱のドームに包まれる。

暫く経って、その灼熱のドームが消えた後には、火山の火口かと思えるほどの灼熱のクレーターが広がっていた。





研究所の破壊を終えて翠屋に戻ると、既に時間は深夜。

桜達も、もう就寝している頃だろう。

俺は、手の中にいるアギトを見る。

せめて風呂ぐらいは入れてやりたかったんだが………

すると、

――トントン

と、肩を叩かれた。

「ん?」

俺は振り向くと。

「わっ!」

シャマルの顔のどアップがあった。

「おわっ………」

俺が思わず驚いて声を上げようとした瞬間、シャマルに口を塞がれた。

「し~~っ」

シャマルは口の前に指を持ってきて静かにというジェスチャーをする。

そうするぐらいなら驚かせるな!

俺は落ち着いて、

「で? 何でシャマルがいるんだ?」

そう聞くと、

「フフッ、違法研究所を潰しに行くって事は聞いてたから、差・し・入・れ♪」

シャマルは笑顔でそう言いつつ、ビニール袋を差し出す。

どうして閉店した翠屋に入れるのかといえば、仲間は全員翠屋の合鍵を持っているからだ。

「………………」

ただ、差し入れという気持ちは嬉しいのだが、

「心配しなくても買ってきたものだから大丈夫よ」

俺の不安そうな雰囲気を読み取ったのか、シャマルがそう言う。

「なら安心だ」

自分でも料理下手は自覚しているのだろうが、俺の言葉に、ちょっとムッとするシャマル。

俺は、ふと思いつき、

「なあシャマル」

「なぁに? ユウ君。 一緒にお風呂でも入ってほしい?」

シャマルは冗談半分に笑いながらそう言ってくる。

「半分正解。 コイツを風呂に入れてやってくれ」

俺はそう言いながら、手の中のアギトをシャマルに見せる。

「あら、可愛い子ね。 この子は違法研究所で?」

「ああ。 酷い実験を受けてたみたいだ。 いつもの如くほっとけなくて連れてきたんだが………名前は、アギトってつけた」

「そう。 いいわ、任せて」

シャマルはアギトを受け取ると、風呂場へ向かっていった。





【Side アギト】



アタシは助けてくれた奴――ユウに連れられて、ユウの家まで来た。

そこに金髪の女がいて、シャマルって名前らしい。

すると、ユウはアタシをそいつに託して、アタシはそいつに連れて行かれた。

それで………

「アギトちゃん、目を瞑っててね」

その女――シャマルはアタシの髪の毛を洗って、お湯で洗い流す。

「はい、綺麗になりました」

今までこんな事してもらった事なかったから、とてもスッキリする。

「あ、ありがと………」

アタシはそう呟く。

「如何いたしまして」

すると、シャマルはアタシを抱き上げて湯船に浸かる。

「気持ちいいでしょ?」

シャマルが問いかけてくる。

「あ、ああ………」

アタシはどういう反応をしていいのか解らず、曖昧に答えてしまう。

けど、シャマルはそんなアタシに微笑むだけで、気を悪くしたりとかはしてなかった。

そうして暫く浸かっていると、

「ねえ、アギトちゃん」

「ん?」

シャマルが声をかけて来たから、アタシはシャマルの方に振り向く。

「私の子供にならない?」

いきなり突拍子も無い事を言ってきた。

「はぁ?」

アタシは思わず声を漏らす。

「だってぇ~、リインフォースもシグナムもヴィータちゃんも子供が出来て羨ましいんだもん。 あ、勿論父親はユウ君ね♪」

シャマルは訳の分からない事を言ってくる。

「ね? 如何?」

アタシに顔を寄せてくるシャマル。

「か、考えとくっ!」

その異様な雰囲気に耐えられなかったアタシは、そう言って背を向けた。





【Side Out】





で、結局あの後どうなったのかと言えば、

「うっせーんだよ! このバッテンチビ!!」

「何言うですか!? この悪魔っ子!!」

俺の頭の上で喧嘩するアギトとリィン。

この2人、炎と氷のように仲悪いです。

喧嘩するほど仲が良いとも言うが。

翠屋名物、『妖精と小悪魔の意地の張り合い』です。

「なあ、親父。 このバッテンチビよりもアタシの方が役に立つよな?」

「とーさま、私ですよね?」

2人が俺に迫ってくる。

こういう時は、

「さあどっちかな? 少なくとも頭の上で喧嘩されると、どっちもどっちとしか言えないんだが」

こう言えば、2人とも負けず嫌いな所があり、競い合って良く働いてくれる。

「アギトちゃ~ん! 頑張ってる~?」

シャマルが翠屋に入店しながらそう言った。

「あ、御袋!」

アギトがそう言いながらシャマルの方に飛んでいく。

結局、アギトはシャマルを母親とした。

というか、シャマルがしつこくて折れた。

でも、アギトも満更じゃないらしい。

因みに呼び方は、シャマルが御袋。

俺のことを親父と呼ぶ。

後、当然ながら、アギトとリィンのユニゾンでオメガフォームのXモードが出来ないか試したんだが、俺の中で2人が喧嘩しまくるもんだから、制御が全然上手く行かず、失敗に終わっている。

因みに、例の如くはやてだが、

「うわぁぁぁぁぁぁん! シャマルにも裏切られたぁぁぁぁぁぁぁっ! ザフィーラ! 私の味方はザフィーラだけやぁ!!」

と、暴れる気力も無くなったのか、狼形態のザフィーラに泣き付く始末。

だが、近いうちにそのザフィーラにも裏切られようとは、はやては勿論の事、俺ですら予想していなかったのである。








あとがき


第四十三話の完成。

アギト登場。

そんでブレイズのXモードも登場。

更には母親ポジションにシャマルです。

多分、アギトの親の呼び方だと、親父、御袋になると思ったので、そう呼ばれても違和感無いかなと思うのが、自分の中ではシャマルだったので、アギトの母親はシャマルです。

序にクイントさんのつながりでゼスト隊の来店。

管理局の就業時間ってどうなってるのか良く分からないんで、そこのところは突っ込まないで下さい。

さて、次回は久遠が出る予定です。

なるべくはとらハのストーリーを壊さないようにしたいとは思っているのですが………

出来るかなぁ……?

ともかく、次も頑張ります。






[15302] 第四十四話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122
Date: 2011/05/15 14:37
第四十四話 誕生! 子(狐)連れ狼!




【Side アルフ】




やっほー。

アタシはアルフ。

フェイトの使い魔さ。

使い魔って言うのは、簡単に言えば契約の元、主から魔力を貰って生きる代わりに主を助ける存在さ。

普通使い魔は使い捨てにされる物なんだけど、アタシの優しいご主人様がアタシと結んだ契約は「ずっとそばにいること」。

だから、実質的にどっちかが死ぬまで有効の長期契約なのさ。

実際、もうすぐ生まれて10年になる。

まあ何が言いたいのかと言えば、こうやってそれなりに長い期間生きてると、使い魔らしからぬ感情も生まれる訳で………

今のアタシにはフェイトにも言っていない秘密がある。

それは………



今、アタシは人間形態で海鳴の神社の階段の一番上に座っている。

ここがいつものアタシ達の待ち合わせ場所。

因みに耳と尻尾は隠してるよ。

すると、

「あ、アルフさん?」

後ろから声がして振り向く。

「ああ。 那美かい。 久しぶりだね」

そこには、この神社の巫女で20代半ばの女性である神咲 那美がいた。

那美とは、数年前にこの神社を待ち合わせ場所にするようになってからの知り合いで、気軽に話せる仲だ。

まあ、魔法とか使い魔とかの事は教えてないけどね。

那美の傍らには、子狐の久遠がいる。

「はい、お久しぶりです。 また、あの人を待ってるんですか?」

「ああ。 そうだよ」

「クスッ……相変わらず仲がよろしいんですね?」

「まあね。 あいつは素っ気無い様に見えて、結構優しい奴だからね」

アタシと那美は笑い合う。

ふと、久遠に視線が行き、

「おいで、久遠」

「くぅん!」

アタシが久遠に呼びかけると、久遠は嬉しそうに階段の段差に座っているアタシの膝に飛び乗ってくる。

「よしよし」

アタシは久遠の頭を撫でる。

「くーん……」

久遠は気持ち良さそうに目を細めた。

「フフッ、久遠もアルフさんの事が大好きみたいですね」

那美は笑ってそう言う。

「う~ん、やっぱり久遠は可愛いねぇ。 ねえ那美? このまま久遠お持ち帰りしちゃ駄目かい?」

アタシは久遠を抱き締めながらそう言った。

アタシにしてみれば冗談だったんだけど、那美は何処か悲しそうな表情をした。

「な、那美!? 何でそんな顔をしてるんだい!? 今のはほんの冗談だよ!?」

アタシは少し慌てて那美にそう言う。

「あ! いえ、違うんです! あの、実は久遠なんですけど…………その……ちょっと遠くに引き取られる話がありまして…………ま、まだ本確定ではないんですけど…………もしかしたら、アルフさん達が久遠に会えるのはこれが最後になってしまうかも知れません………」

那美は、所々詰まりながらそう説明した。

「えっ!? そうなのかい!?」

アタシはそれに驚く。

「はい………」

那美は俯きながらも返事をした。

アタシは久遠を見下ろしながら、

「そうなのかい……会えなくなるのはちょっと寂しいけど、元気でな。 久遠」

「くぅ~ん?」

久遠は分かってないのか、首を傾げる様な仕草をした。

その時、

「すまん。 待たせたか?」

そう言いながら階段を上がってくる銀髪の男。

言うまでも無いけど、ザフィーラだ。

実は、アタシとザフィーラは付き合ってる。

これは、フェイトやはやてにも知られていない秘密。

因みに切っ掛けは修行中の時。

アタシが竜に襲われてもう駄目だって思ったときに、ザフィーラは身体を張ってアタシを守ってくれた。

ザフィーラは「これが盾の守護獣の役目だ」って言ってたけど、アタシはその時のザフィーラの姿にクラッと来ちゃったんだよ。

それで、その後は皆にばれない様にアタックを繰り返したんだ。

多少強引だったけど、付き合うことに成功したアタシ達は、局の仕事が休みの時にデートをしてる。

そんな中、ザフィーラの態度は素っ気無いけど、実はアタシを大切に思ってくれてるから、益々惚れちゃったんだ。

アタシは、膝の上の久遠を抱いて立ち上がると、那美に久遠を渡す。

そして、久遠の頭を撫でると、

「久遠、もし遠くに行っても元気でな」

そう言ってアタシは久遠から離れ、ザフィーラと腕を組む。

「それじゃあ、行こうかザフィーラ!」

「ああ……」

アタシ達は階段を下りていく。

でも、その時、

「……………ごめんなさい」

那美が俯いて小さな声で謝った事にアタシ達は気付かなかった。





アタシ達のデートは、人間がやってるのと殆ど同じ。

映画館行って、昼食を食べて、街を歩いたり、公園を散歩したり。

楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、夕食を食べ終えて、辺りはすっかり暗くなっていた。

休暇もこれで終わりかと思うと、少し寂しい感じがする。

そこでアタシはふと思った。

「ねえ、ザフィーラ。 神社に寄ってってもいいかい?」

「む……何故だ?」

「久遠の事だけど、近々遠くに引き取られるらしいんだ。 だから、アタシ達が会えるのも今日が最後になる可能性が高いから、最後にもう一度だけ見ておきたいんだ」

「そうか………わかった」

ザフィーラは頷いて了承してくれた。

「ありがと、ザフィーラ」

アタシ達は行き先を神社に変える。

そして、長い階段を登りきって、境内に目を向けたとき、




そこには………




丸くなって眠っている久遠に………




月光を反射する剣を振り上げた………




青髪の女の姿………




アタシはそれを見た瞬間、魔力強化で地面を蹴る。

石畳が砕けたけど、そんなの気にしてられない。

「何やってんだい! アンタ!?」

振り上げた腕が久遠に振り下ろされようとした時、アタシはその女の腕を掴んでそう叫んだ。

アタシの声にビックリして、久遠が起きる。

「くぅん?」

久遠は、何が起きていたのか分かっておらず、そんな鳴き声を上げて、たたっとアタシの後ろに回ってその女を見上げた。

「アンタ! 今久遠を斬ろうとしてたのかい!?」

アタシはそう叫んで問いかける。

「…………あなた達は……?」

その女はこっちに振り向いて、隙の無い姿勢で問いかけてくる。

「………アタシ達は、この神社の巫女をやってる那美の知り合いさ。 久遠とも仲が良いよ」

「そう……ですか………那美の知り合い………では、あなた方は、久遠について何か聞いていますか?」

アタシの答えに、その女は何か考えると、今度はそんな質問をして来た。

「何かって………久遠は唯の子狐じゃ無いのかい!?」

その言葉を聞くと、その女は目を伏せる。

「そうですか………なら!」

その女は、剣をアタシに突きつけてきた。

「何も聞かずに、ここを立ち去ってください。 邪魔をするなら、怪我では済みません」

殺気を出して、そう脅迫する。

「………アタシ達が居なくなったら、久遠を斬るのかい?」

アタシはその殺気を受け流してそう問い返す。

「ッ………!」

その女は、どこか苦しそうな表情をした。

「訳を話しな。 じゃなきゃ、退けるもんも退けないよ。 まあ、訳を聞いたからって、退くかどうかは別だけど」

アタシがそう言うと、

「この世には……知らなくて良い事もあるのです!」

目の前の女はそう答えた。

すると、

「ならば退けんな」

ザフィーラがアタシに突きつけられた剣を掴んだ。

「我も久遠の事は気に入っている。 訳も無く斬ろうとするならば……それなりの覚悟をしてもらおう」

ザフィーラは剣を掴んだままそう言い放った。

その女は剣を動かそうとしているが、ザフィーラに掴まれているその剣はビクともしないようだ。

その時、

「…………はー」

階段を登って、那美が現れた。

「あれ? アルフさん、ザフィーラさん? 薫ちゃんまで………」

那美はアタシ達の名を呼んだ。

目の前の女は、薫というみたいだ。

すると、女――薫――の発していた殺気が薄らいでいく。

殺気が消えた事を確認して、ザフィーラは剣から手を離し、薫と呼ばれた女も剣を鞘に納める。

そして、

「………ごめん」

薫と呼ばれた女は、那美に頭を下げた。





ことのあらましを那美に説明する。

「………そんな……薫ちゃん!」

那美は、薫に詰め寄る。

「………分かってくれ」

薫は辛そうな顔でそう言う。

「前回……目覚めてすぐの状態で……あれだけ………亜弓さんを食い殺して、ばーちゃんに瀕死の重傷を負わせて………それで、やっと………封じることが出来た祟りもの………」

那美は俯く。

「葉弓さんと楓………それから、うち………3人がかりでも封じることが出来るかどうか分からないんだ」

薫はそう言うけど、何も知らないアタシ達には、何の話かさっぱり分からない。

「あのさ、何の話かさっぱり分からないから、アタシ達にも説明してくれるとありがたいんだけど……」

アタシはそう発言する。

「あ………はい………」

那美は、俯きながらも話し出そうとした時、光が巻く様に久遠が人の子供の姿を取った。

「へっ?」

アタシは思わず素っ頓狂な声を漏らし、

「………!」

ザフィーラも口には出さないけど、目を見開いてる。

久遠は黄色の長い髪をポニーテールにして、巫女服に鈴のついた首飾りを下げている少女の姿。

おまけに、アタシ達みたいに、獣の耳と尻尾までついている。

那美の説明では、那美や薫は、いわゆる心残りがあるまま死んだ霊を徐霊する退魔師の家系だということ。

久遠は、獣が年を経て変化したりする『変化』。

いわゆる妖怪という奴らしい。

そいつは人に害をなす輩で、その中でも『祟り』っていう力を持つ厄介な奴もいて、久遠もそんな中の一匹。

で、昔暴れてた久遠を那美の祖母が退治して、その力の殆どを封印した。

でも、その封印にも限界があって、それが明日。

那美は、限られた時間の中で、久遠に優しい心を取り戻させようとしていた。

けど、薫は再封印の自信が無かったから、封印が解ける前に久遠を殺そうとしたらしい。

それを聞いたアタシは、

「………まあ、薫が間違ってるとは言わないけど………気に入らないね!」

そう言って、アタシは久遠を見下ろす。

「くぅん………」

久遠は、不安げな瞳でアタシを見上げていた。

多分、正体がばれたことで、嫌われるかもしれないという事が分かっていると思う。

だからアタシは、

「久遠」

「くぅ?」

隠していた尻尾と耳を出し、ポフッと尻尾を久遠の顔に当ててやる。

「くぅっ?」

一瞬何が起きたか理解できなかったらしく、久遠は声を漏らすが、すぐにアタシの尻尾に気付いた。

「これでお揃いだね。 久遠」

アタシは久遠に笑いかける。

「……………」

ザフィーラも腕を組んだまま、無言で耳と尻尾を出していた。

「くぅん♪」

久遠は笑顔になってアタシに抱きつく。

「えっ……ア、アルフさん?」

那美が驚いた顔でアタシに問いかける。

アタシは、自分が使い魔という事と、魔法の事を簡単に教えた。

「………まっ、そんなわけでアタシとザフィーラも普通の人間じゃないのさ」

アタシはそう言う。

アタシが説明している間、久遠は揺れ動くザフィーラの尻尾に興味津々。

それを素っ気無さそうな顔をしながらも、尻尾を動かす事を止めないザフィーラ。

「……はー、魔法使いって、本当に居たんですね……」

那美が感心したような声を漏らした。

「まあ、それはお互いさまだと思うけどね。 アタシは幽霊や妖怪が本当に居るなんて思ってなかったし」

アタシはそう言って気を取り直すと、

「ところで話を戻すけど、アンタはまだ久遠を殺す気でいるのかい?」

薫にそう問いかける。

那美はその言葉でハッとなり、

「………出来るわけ……無いよね………? ………本当に仲良しだったのに………誰より……私が知ってる………いつもいつも、可愛がって……」

そう言いかけて、

「それでも!」

薫が割り込む。

「哀しい事が、少しでも無くなる様に働くのが……うちらの仕事だ……!」

薫は、辛そうな表情でそう言った。

その時、

――ドクン

何かの鼓動を感じた。

「………!」

「………!!」

那美と薫はその鼓動の正体に気付いているようだ。

――ドクン

静かに鼓動の音が響く。

「…………あ……」

久遠の周りに、小さく電気が走る。

「封が………解ける……!?」

「なんで!? 早過ぎる!」

薫と那美が叫んだ。

「……久遠……ごめん………恨んで構わない!」

薫が剣を抜いて、大きく構えを取る。

「………神気発勝……………真威……楓陣刃ぁあああ!!」

剣から放たれた金色の炎が久遠を襲う。

「…………あ……」

炎が久遠を包むが、久遠は炎に苦しむ様子は無い。

それとは別に、何かに苦しんでいるように見えた。

「………あぁぁぁあ……………あー…………」

――ドクン ドクン

と、鼓動が続く。

そして、久遠は一瞬悲しそうな表情をして、

「………ぁぁああああああっ!!」

雷鳴が響いた。

アタシとザフィーラは咄嗟に那美と薫の前に出て、障壁を張る。

障壁に伝わる衝撃。

衝撃で巻き上がった煙が晴れてくると、

「………く……おん……?」

那美が呟く。

「……………ぁぁ…………あー………」

アタシ達の前には、大人の姿となり、尻尾も5本に増えた久遠。

「封印が………解けた………」

薫が呟く。

すると、

「……まだ……完全には覚醒してない。 今の内に………」

薫は、まだ剣を構えようとしていた。

それを見て、アタシはいい加減ムカついた。

「アンタ! いい加減にしな!!」

そう叫んで、アタシは魔力を込めた拳で、薫の剣を砕いた。

「なっ!?」

「アンタはさっきから久遠を殺すことだけしか考えてないのかい!? 少しは助けようとは思わないのかい!?」

アタシは思わず叫ぶ。

「くっ! うちだって出来ればそうしたい! けど……依代を殺さずに祟りを滅する方法はないんだ!」

「そうやって決め付けてるから何にも出来ない事に何で気付かないんだい!! もういいよ! ここからは、アタシ達のやり方でやらせてもらうから!!」

アタシはそう言って久遠に向き直る。

すると、

「………久遠………」

那美が久遠に近付いていく。

そんな那美に久遠は、

「………ぁ……ぁあああああああっ!!」

悲痛な声を上げて、電撃の宿る爪を振りかぶった。

「那美! 下がりなっ!」

アタシは那美の腕を引っ張って、強引に後ろに下げる。

間一髪、久遠の爪は空を切った。

それでも那美は、

「久遠! 駄目だよ、そんなことしちゃ………久遠は……いい子だよね?」

そう言い聞かせるように久遠にそう言った。

「……ぁああっ!!」

久遠は、泣き叫ぶように天に手を翳す。

雷が鳴り、

「あああああっ!!」

辺りに降り注いだ。

「きゃあっ!」

那美は悲鳴を上げる。

アタシは那美を引っ掴むと、

「ザフィーラ! この2人を頼むよ!」

那美をザフィーラに預けて、アタシは久遠と相対する。

「……ああ………」

久遠の悲しそうな瞳。

アタシが思うに、今の久遠は泣き叫んでる子供と一緒だ。

だったら………

「久遠! 何を泣いてるかは知らないけどね、そうやって見境なしに暴れられると、皆が困るんだ。 だから………」

アタシはこの神社周辺に結界を展開する。

「アタシが受け止めてあげる! 久遠の怒りも憎しみも悲しみも! 皆アタシが受け止めてあげる! だからさ、気が済んだら、元の優しい久遠に戻ってね。 約束だよ! 久遠!」

「あああああああっ!!」

アタシの言葉に応える様に、久遠は叫び声を上げて、私に電撃を放ってくる。

アタシは、あえて障壁を張らずに、その電撃を受けた。

「ぐっ………!」

アタシは思わず声を漏らす。

でも、

「こんなものかい久遠!? これじゃあ、アタシのご主人様やリニスの電撃には、遠く及ばないよ!!」

アタシは見栄を張ってそう叫ぶ。

フェイトやリニスに遠く及ばないって言うのは嘘じゃないけど。

「あああああっ!!」

再び久遠は雷撃を放ってくる。

アタシは、それを黙って受けた。

そして、一歩進む。

「ぁああああああっ!!」

また久遠が雷撃を放ち、アタシはそれを受け、また一歩進む。

それを何度も繰り返した。




「はぁ……はぁ……」

アタシは息をついて久遠を見る。

久遠との距離は、後3歩位の距離。

久遠の表情は、どこか辛そうな顔をしていて、その瞳には、涙が滲み始めている。

「ぁ………ああああああっ!!」

久遠は一瞬躊躇したあと、雷撃を放つ。

「ッ………!」

アタシはそれを受けるが、最初の頃と比べると、威力は格段に低い。

アタシは、また一歩進んだ。

「久遠……アンタの過去に何か悲しい事があったのは分かった………けどね……それに引き摺られて、これからの幸せも無くしちまう気かい? このままじゃ、久遠、本当に独りぼっちになっちまうよ?」

「ぁあ………」

「久遠は1人じゃないんだよ? 久遠には、那美っていう友達もいるじゃないか。 友達で物足りなきゃ、アタシが久遠のママになってやってもいい!」

「ぁ………と……も……だ……ち……………ま……ま………?」

久遠が反応する。

「そうだよ! 那美が友達! アタシがママだ!」

久遠が反応した事に対して、アタシは思わずそう叫んでしまう。

すると、久遠は那美へ視線を向けた。

「…………な……………み…………」

微かに、那美の名前を呼んだ。

「………な……み……………と……も……だ……ち……」

今度は、もっとはっきりと。

久遠の瞳から涙が零れる。

すると、今度はアタシに視線を向ける。

「………あ……るふ…………ま……ま……」

「久遠………」

アタシは久遠の言葉に、思わず微笑む。

本当にこのまま自分の子にしたいって思うぐらいだ。

すると、電撃が久遠の身体の中に収束していく。

それにやな予感がしたアタシは叫んだ。

「やめなっ! 久遠!!」

「久遠! 駄目!」

同時に那美も叫ぶ。

「なみ………まま……………だいすき………」

瞬間、久遠の身体が輝き、轟音と共に光が弾けた。

「「久遠!!」」

アタシと那美が叫ぶ。

光が収まると、久遠は子狐の姿になり、こげた匂いを放ちながら倒れた。

「「久遠っ!!」」

アタシと那美は久遠に駆け寄ろうとした。

けど、

「まだ!」

薫が叫ぶ。

「まだ終わってない!」

「薫ちゃん!?」

薫の言葉に、那美が振り向く。

「………久遠が倒れても、『祟り』自体は消えない!」

薫がそう言ったとき、久遠の身体から不気味な色の煙のように、『なにか』が立ち上る。

「……それが……久遠を駆り立てていた『祟り』………」

薫は何とかこれに対する手段を探そうとしてたけど、さっきアタシが剣を砕いた所為で、対抗手段が無いらしい。

でも、丁度いい。

「つまり、コイツが久遠を不幸にしてた大元ってことかい………だったら!」

アタシは身体に魔力を張り巡らせる。

「まて! 祟りに通常の攻撃は………!」

薫が叫ぶが、アタシはその『祟り』を見て思った。

コイツは、ロストロギアの思念体に近い。

だったら、

「魔力による攻撃は効くんじゃないのかい!?」

アタシはそう叫んでフォトンランサーを放った。

アタシの放ったフォトンランサーは、『祟り』に直撃し、『祟り』はまるで苦しむかのように蠢く。

「よっしゃ、効果あり!」

アタシは叫ぶ。

すると、その『祟り』が渦を巻くようにアタシに迫ってきた。

「やばっ……」

油断していたアタシがそう漏らした時、

「鋼の軛!」

地面から飛び出した魔力の槍が『祟り』を貫き、一部を四散させる。

「油断するな」

ザフィーラがそう言った。

「ありがと、ザフィーラ」

アタシは軽くそう言って、ザフィーラに吹き飛ばされた『祟り』に向き直る。

「それじゃ、一気に決めるよ!」

アタシは右腕を振りかぶり、魔力を集中する。

「獣!」

『祟り』がアタシがしようとしていることに気付き、再び渦を巻いて迫ってくる。

「王!」

でも遅い。

「拳!!」

アタシは『祟り』に向かって拳を繰り出す。

拳から放たれる狼の頭を模した魔力波。

それは『祟り』に直撃し、閃光と共に消し去った。

それを確認したアタシは、

「…………あれ?」

今頃、久遠から喰らい続けてきた電撃が聞いてきたのか、意識が遠くなっていく。

身体から力が抜けて、倒れようとするアタシを、逞しい腕が受け止めた。

それに気付いたアタシは、安心して意識を手放した。




【Side Out】









さて、今日は久々に八神家一同がこの翠屋に全員集合している。

序に、スカリエッティとナンバーズも居る。

ナンバーズは、No9ノーヴェとNo11ウェンディが目覚めて、総勢9名となった。

まあ、翠屋にいるのはドゥーエを除いた8人なんだけど。

因みに、ノーヴェとウェンディに桜のシュークリームを食わせたときの反応は、

ノーヴェ、

「……………………………………うまい」

ウェンディ、

「いや~~~~、美味しいッスねぇ~~~~」

以上の通り。

それで、八神家が全員集合しているという事は、

「かーさまー!」

「我が娘よ!」

リインフォースとリィン。

「お母さん!」

「如何した? エリオ」

エリオとシグナム。

「お母さん」

「キャロ」

キャロとヴィータ。

「御袋~」

「頑張ってる? アギトちゃん」

アギトとシャマル。

母子が大集合という事になります。

因みに、そんな夜天の騎士達の主といえば………

「うわぁあああああああん!! 皆主である私を差し置いて子供作るなんてどういうことやぁ~~~~!! ザフィーラ! やっぱり私の味方はザフィーラだけやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

狼形態のザフィーラに泣き付くはやて。

とりあえずザフィーラよ。

飲食店経営者として、店の中ではなるべく狼形態は止めてくれと前から頼んでいるはずだぞ。

ふと見ると、はやてに泣き付かれているザフィーラは、何処か明後日の方向を向き、冷や汗をダラダラと流している。

「ん? どうしたザフィーラ?」

気になった俺は尋ねてみる。

すると、

「……………主」

ポツリとザフィーラが呟く。

「ん? 何や?」

はやては、気を取り直して一度離れる。

すると、

「申し訳ありません。 主」

突然人間形態となり、見事な土下座をかますザフィーラ。

「い、いきなり如何したんやザフィーラ?」

はやても、いきなり土下座したザフィーラに困惑する。

「それは………」

ザフィーラが説明しようとした時、

「邪魔するよ!」

店の入り口を開けて、人間形態のアルフが入ってきた。

「おお、アルフか」

俺はそう漏らすが、アルフの腕に、小さな子狐が抱かれている事に気付く。

「おいおいアルフ。 ウチは飲食店だぞ。 動物の連れ込みは勘弁してくれ」

一応、使い魔の連れ込みは(リニスも使い魔なので)許可しているが、普通の動物の連れ込みは遠慮している。

俺がそう言うと、

「安心しなって、この子も使い魔みたいなものなんだからさ。 さっ、久遠」

アルフはそう言って子狐を放す。

って、今アルフの奴、久遠って……

すると、その子狐は、床をとととっと駆けると、ザフィーラに向かっていく。

そして、ザフィーラの前で、ポンっと音を立て、

「……ぱぱ」

黄色の髪に巫女服を着て、狐の耳と尻尾を生やした少女に変わり、ザフィーラの腕に抱きついた。

――ピシィ!

その瞬間、音を立てて固まるはやて。

どっから如何見てもとらハ3の久遠じゃねーか!

何でだよ!?

「紹介するよ! アタシとザフィーラの娘の久遠さ!」

アルフは笑ってそう言った。

俺は、内心混乱しながら、

「い、色々と聞きたいことはあるけど先ず一つ………アルフとザフィーラって付き合ってたの?」

俺はそう聞く。

「ああ。 皆には秘密にしてたけど、もう3年ぐらい前から付き合ってるよ!」

アルフはそう答えた。

「そ、そんなに昔からか…………」

俺は唖然となる。

「で、話は変わるんだけど、アタシと久遠も、ここに住まわせてくれないか?」

そんな事を言ってきた。

「ここに住むって………管理局は?」

「辞めて来た」

「はぁああっ!?」

アルフの言葉に、俺は驚く。

「前から考えていたことなんだけどさ、今のフェイトはアタシが居なくても大丈夫だからね。 フェイトが帰ってくるところを守りたいのさ。 で、久遠を引き取ったから、丁度いいと思ってさ。 いいだろ? ちゃんとウェイトレスはやるからさ」

そんな中、

「可愛いですぅ!」

「久遠って言うんだ?」

チビッ子達を中心に、久遠に集まる。

「くぅん?」

久遠は、状況が分かっていないのか、首を傾げる。

「はうっ!」

何やらそんな声が聞こえたので、そちらに目をやると、何かクアットロが頬を真っ赤にしている。

如何したんだ?

「皆、久遠はまだ上手く言葉が喋れないんだ。 少しずつ話してあげてくれないか?」

アルフは皆にそう言う。

久遠はアルフを見上げ、

「…………まま……?」

そう尋ねるように呟く。

するとアルフは、

「久遠、ここに居る皆は、久遠の友達だよ」

そう久遠に言う。

「……とも……だち?」

久遠は片言でそう呟く。

「みんな………ともだち………!」

それを理解したのか、久遠はニッコリと笑う。

「はうあっ!」

再びそんな声が聞こえたのでそちらに顔を向けると、クアットロが蹲っている。

………もしかしてクアットロの奴……

「如何したのクアットロ?」

ウーノが尋ねる。

「い、いえウーノお姉さま。 何でもありません」

クアットロは慌てて表面を取り繕ってそう言う。

だが、

「もしかしてクア姉、久遠を見て悶えてたんじゃ?」

セインが的確に突っ込む。

「そ、そんなわけありませんわ! そんなの私のキャラでは………」

クアットロは、やや焦った顔でそう言う。

すると、それを聞いたアルフがニンマリと笑い。

久遠を子狐形態にして抱き上げ、クアットロの所に行く。

「クアットロ」

アルフはクアットロに声をかけ、

「な、何ですの?」

クアットロは、やや焦り気味でそう尋ねた。

そして、

「ほら」

座っていたクアットロの膝に、久遠を乗せた。

「くぅん?」

久遠は、クアットロを見上げてそう鳴き声を漏らす。

クアットロの顔が見る見るうちに赤く染まっていく。

うん、俺から見ても十分可愛い仕草だ。

そして、久遠はすぐ近くに置かれていたクアットロの手に顔を寄せ、

――ペロリ

と舐めた。

その瞬間、

「―――――――ッ!」

クアットロは声にならない声を漏らし、

「久遠ちゃぁぁぁぁん!」

久遠を抱き締めた。

「久遠ちゃん、可愛いわぁ!」

クアットロは頬ずりまでする始末。

その時、

――じー

っと、約一名以外の全員からその様子を見られていた事に気付き、

「――――――――――――ッ!!!???」

さっきとは違う意味で声にならない声を上げた。

「クア姉の意外な一面ッスね」

「意外だな……」

「クアットロも女の子だったんだねぇ」

しみじみと言うスカリエッティ陣営。

と、その時、

「…………………ザ」

今の今まで固まっていたはやてが、ようやく再起動を果たしたらしい。

「……ザ……ザ………」

何やら呟き、

「ザフィーラの裏切り者ぉおおおおおおおおおおおっ!!」

そう叫んで、滝のような涙を流しながら走り去るはやて。

それを見て俺は、次に子供を保護することがあったら、はやてに面倒見させよう。

と、しみじみ思うのだった。




あれ? でも、StS編で残ってる子供って、あとヴィヴィオだけじゃ?







あとがき


第四十四話の完成。

久遠の両親はアルフとザフィーラでした。

アルフとザフィーラの付き合い方は、スパロボOGのキョウスケとエクセレンみたいな関係と思っていただければ……

問題は、『祟り』に攻撃が効くのか?というところでしたが、リリちゃの久遠は、イデアシードの思念体?みたいなモノを雷撃で消していましたので、その逆もまた然りってことで………

まあ、ちょいと手抜きが目立ちますね。

アルフが気絶してから、久遠が子供になるまでの描写が無い。

ままと呼ばせる方法も強引ですし………

ぶっちゃけますと、どうやってアルフの子供に持っていくかということが思いつかなかったのです(爆)

最初は、久遠は野良狐で、それをアルフとザフィーラが拾うような事を考えていたのですが、そこまでとらハのストーリーを無視するのはやっぱり………

という事でこんな形になりました。

久遠とクアットロの絡みを望んでいる人が居たのでこんな形にしてみたのですが、どうですかね?

さて、恐らく次はレジアスとの交渉に入ると思います。

では、次も頑張ります。




[15302] 第四十五話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122
Date: 2011/05/29 20:37
第四十五話 交渉




【Side レジアス】



友との誓いから暫く。

地上の治安を良くする為に、私は中将の地位まで登り詰めた。

統制システムの機能向上を初め、あらゆる所を改革してきた。

だが、いくらシステムを改革しようが、人員不足は如何にもならない。

魔力を持つ人物は限られており、その中で主力でもあるAAAランク以上の魔導師は管理局全体の5%にも満たない。

そして、そのAAAランク以上の魔導師の殆どは、本局に持っていかれてしまう。

第一、許される戦力が魔導師のみという事が、人員不足の根本的な原因である。

魔力を持つ人物は、全て先天性という問題があり、戦力供給という意味では非常に不安定なのだ。

それによって、管理局は慢性的な人員不足という現実に陥り、犯罪防止の低下に繋がっている。

だが、私が秘密裏に進めているプロジェクト………戦闘機人の導入を公に認めさせれば、人員不足は一気に解消される。

戦闘機人は、ヒトをあらかじめ機械を受け入れる素体として生み出し、人と機械を融合させ、常人を超える能力を得た存在だ。

才能と訓練による魔導師とは違い、常に安定した戦力供給が望める。

この技術は、世論に認められれば管理局の人手不足を一気に解消できると確信している。

だが、倫理的な面に問題があるという理由で、戦闘機人の製造は認められていない。

認められさえすれば、管理局の人手不足を解消でき、ひいては、地上の平和を守る事に繋がる。

何故これが分からんのだ!

そして、世論と同じように、戦闘機人プロジェクトを認めることが出来ない俺の友が、今目の前に居た。




今、この執務室には、俺と副官であり娘でもあるオーリスと秘書の女。

そして、私の座る机の目の前に、俺の友でもあるゼストがいた。

「レジアス、正直に答えてくれ。 お前は、戦闘機人事件に関与しているのか?」

俺の執務室に入ってきたゼストが、俺に向かってそう言う。

「……………」

俺は口を閉ざす。

「……レジアス………何故何も言わない………?」

「……………」

それでも、俺は口を開く事は出来ない。

「………レジアス」

ゼストがもう一度俺の名を呼ぶ。

「俺達が欲しかった力は………俺達が夢見た正義は………」

ゼストは、悲しむような感情を含めて口を開く。

「本当に……そんなものなのか………?」

「…………………」

俺がその言葉に迷っていた時、

「なんかえらい重い空気やなぁ」

突然女の声がした。

「誰!?」

副官であり、娘のオーリスが声がした方を向いて叫ぶ。

すると、影になっていた所から、小柄な女が姿を見せた。

「初めまして。 アポなしの訪問すみません。 私、八神 はやて三等陸佐です。 よろしゅうお願いします」

その女は、力を抜いた敬礼をしながらそう言う。

「八神 はやて三等陸佐………あの夜天の主の……?」

オーリスは、聞き覚えがあるのかそう呟いた。

だが、すぐに表情を引き締め、

「その八神三等陸佐が何故こんな所にいるのですか!? ここが何処だか知っているの!?」

そう怒鳴るように問いかけた。

「ええ、もちろん。 知ってて来たんですよ。 訪問理由は交渉です」

「交渉だと?」

俺は思わず漏らした。

「ええ。 先ずは………」

その八神 はやてという女は、なにやらパネルを操作すると、俺の前にモニターを出現させた。

そこに表示されている内容を見て、

「なっ!?」

俺は驚愕する。

「如何でっしゃろ? 全て身に覚えがあると存じますが?」

女は、いけしゃあしゃあと問いかけてくる。

そこに表示されていたのは、俺が関わっている戦闘機人プロジェクトの全貌。

ご丁寧に、俺が関与したとする証拠まで表示されていた。

「……レジアス………ここに書かれていることは本当なのか?」

ゼストが問いかけてくる。

「…………………」

俺は答えられない。

「レジアス!」

ゼストが叫ぶように俺の名を呼ぶと、

「本当だよ」

別の男の声がした。

しかも、この声は聞き覚えがある。

全員がそちらを向くと、先ほどの女が出てきた所から、男が現れる。

「こうやって直接会うのは初めてかな、レジアス中将」

俺の戦闘機人プロジェクトの開発を務める次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティがそこにいた。

「き、貴様!?」

俺は思わず声を上げてしまう。

「何故……スカリエッティがここに……?」

ゼストも、身構えながらそう呟く。

「簡単に言えば、ドクターは私の個人的な知り合いです。 ですんで、あなたのやっていた事は全部筒抜けなんですわ、レジアス中将」

なんだと……ッ!

思わずにらみ付けてしまう。

「先に言っときますけど、私には手を出さない方が良いですよ」

俺の様子に気付き、そんな事をのたまう女。

「もし、私に手をだしたら………」

「地上本部が壊滅すると思え」

更に別の男の声がした。

いつの間にか、その女の後ろに1人の人物がいた。

「「「なっ!?」」」

俺、ゼスト、オーリスが同時に驚愕する。

なぜなら、そこに居たのは、あらゆる世界の研究所を襲撃し、既に3桁以上の殺人を犯していると言われる大量虐殺犯『血塗られた聖王』だった。

「ち、血塗られた聖王………何故ここに?」

オーリスが震えた声で呟く。

すると、血塗られた聖王は、ゼストに視線を向けると、

「久しぶりと言うべきか? ゼスト・グランガイツ」

そう言った。

「………やはり、あの時の少年か……資料を見たとき、まさかとは思っていたが………」

ゼストは、何処となく懐かしむようにそう呟く。

「………ゼストさん?」

怪訝に思ったオーリスがゼストに尋ねる。

「………私は………いや、私達の部隊は一度、彼に救われている」

「えっ?」

オーリスが驚いた声を漏らす。

「ずっと気になっていた! 君はあの時管理局を嫌っていると言っていた! だが、無闇に人の命を奪う人物とは、到底思えなかった! 教えてくれ! 君は上の発表の通り、犯罪を犯しているのか!?」

ゼストは叫んで問いかける。

「…………俺が各地の研究所を襲撃しているという事は事実だ」

「……………そうか」

血塗られた聖王の口から言われた言葉に、ゼストは何処か気落ちした雰囲気を見せながら呟いた。

すると、

「話は最後まで聞いてください。 確かに彼が研究所を襲撃してるのは事実です」

女の方が再びパネルを操作し、別の情報を呼び出す。

「見てください。 これは、彼が今まで襲撃してきた研究所で行なわれていたことです」

開かれた情報に目を通していくと、

「なっ!? 馬鹿な!」

「嘘………」

ゼストとオーリスが驚愕する。

そこに表示されていた情報は、あらゆる違法研究の数々。

しかも、その研究所の全てが、管理局と関わりを持っているという事実。

この俺がやってきたことが可愛いものと思えるほどの、悪行の数々。

「何より、一番の間違いは、ここに居る彼は、1人も殺してはいません。 研究員は追っ払ってますし、攻撃する時も非殺傷です」

この女がそう言うと、

「ならば、今まで発表されている彼が殺したとされる人間たちは!?」

ゼストが叫ぶように問いかけた。

「証拠はありませんが、管理局にとって公になると拙いので、口封じという意味で消されてるんじゃないかというのが私らの見解ですわ。 で、その罪を監視カメラにも映像が残されている彼にすべて着せることで、管理局は違法研究をしていない。 血塗られた聖王は、健全な研究所を襲撃して、善良な研究員たちを殺害した極悪犯、というわけですわ」

「なんっ…………だと…………!」

ゼストが声を震わせながらそう呟く。

「こ、こんなの信じられるわけないわ! 出鱈目に決まってる!」

オーリスはそう叫んだ。

すると、女は私に視線を向け、

「貴方はどう思います? レジアス中将」

そう問いかけてくる。

俺は、その女を見ると、

「これが本当だとして、貴様は如何したいのだ? これを公表して、自分が管理局を支配するとでも言うつもりか?」

大方、権力に溺れた連中は、そうするだろう。

目の前の女も、そんな一人だと思っていた。

だが、

「そんなめんどくさいことするわけないやん」

その女は予想外の言葉を放った。

「私らは別に自分たちが正義の味方や、なんて言うつもりはあらへん。 本当やったら、私らは管理局に入らずに、今頃学生生活を満喫しとったはずや。 管理局の闇なんて、知ろうとも思わんかったしな」

あっけらかんとそう続ける。

「な、ならば、貴様たちの目的は何だ!?」

俺は思わず叫んでしまう。

「私らの目的はただ一つ。 自分たちの幸せです」

「ふざけてるの!?」

その女の答えに、オーリスは叫ぶ。

「ふざけてません。 私たちは大真面目です。 ただ、その幸せのために、最高評議会を含めた管理局の上層部が邪魔なんです。 ですんで、レジアス中将には、管理局上層部に対するクーデターを起こしてほしいんです。 もちろん、その時には私たちも協力します」

更にその女は信じられないことを言った。

「「「なっ!?」」」

俺、ゼスト、オーリスの声が重なる。

「何故あなた達の幸せに、管理局の上層部が関係あるの!?」

オーリスが叫ぶ。

すると、

「………………ユウ・リムルート」

その女が呟いた。

その言葉を聞いた瞬間、俺たちは絶句する。

「あなた達の年代なら、間違いなく聞いている名です」

リムルート。

その名は、およそ7年前に発覚した管理局の汚点。

類稀な魔力資質を持った子供の親を、管理局の提督が任務中に囮として殉職させたにも拘らず、その事実を隠蔽し、尚且つその子供を半ば強引に管理局に引き入れようとした。

その事実は、当時のマスコミが広く報道し、管理局の信頼低下に繋がった。

その子供の名がユウ・リムルート。

「私達は、そのユウ君は幼馴染で、同時に大切な人です。 公にはなっていませんが、最高評議会はユウ君を拉致したことがあるんです」

「「「なっ!?」」」

再び驚愕の声を上げてしまう。

「まあ、実行犯は私だがね」

スカリエッティが補足するように付け足した。

「それで、彼が拉致されてから一ヵ月後、俺は拉致された場所を探し出し、彼の救出に成功する。 その序に、スカリエッティとも繋がりを作った」

「彼らの自由な生き方に共感してね。 私も老人たちの元から離れることにしたんだ」

血塗られた聖王とスカリエッティがそう言う。

「それでもユウ君は、管理局に仕返しをしようとは思わんかった。 ユウ君の力なら、地上本部を壊滅させることは簡単な筈なのにや。 ユウ君は優しすぎる。 それがユウ君のええ所なんやけど、今回は相手が悪い。 何も仕返しせんかったら、相手が付け上がる。 そうなるとユウ君は不幸になるばっかりや。 私らは、ユウ君と幸せになりたい。 だから私らは最高評議会を含めた管理居の上層部を潰すんや」

その女は、そうきっぱりと言った。

動機としては凄まじく不純な動機だがな。

「序ですから、最高評議会の正体も見ときますか?」

その女は、更にそう続けた。

「何?」

俺が聞き返すと、女はパネルを操作する。

そしてモニターが開き、

「「「なっ!?」」」

三度驚愕の声を上げる俺たち。

モニターに映っていたのは、3つの培養槽に入った3つの脳髄。

「これが最高評議会です」

「最高評議会は管理局を立ち上げた本人たちの脳髄だ」

女と血塗られた聖王がそう言う。

「こ、これが………最高評議会……?」

ゼストが呆然とする。

「何を考えとるのか知らんけど、脳髄だけで延命しとるんですわ。 ま、大方自分たちが居ないと次元世界の平和が守れないとでも思ってるんですかね?」

確かに俺も実際に最高評議会の姿を見たことは無い。

今まで頑なに姿を見せなかったことを考えれば、この映像には信憑性がある。

「序に言っときますと、ドクターも最高評議会に生み出された存在ですよ」

女は、さらに驚くべき事実を口にする。

「アルハザードの技術を使って作られた存在。 開発コード『無限の欲望 アンリミテッドデザイア』、ジェイル・スカリエッティ。 それが私だ」

スカリエッティがきっぱりとそう言う。

な、ならば、最高評議会は自分たちで作り出したスカリエッティに犯罪を犯させ、罪を全て被せているという事ではないか!

ふとそこまで考えて、俺は思い直す。

俺が言えたことではないと。

俺は心を落ち着かせて、その女を見る。

「貴様達の言ったことが全て本当だったと仮定しよう。 それならば、何故俺に交渉を持ちかけてきた? 俺も最高評議会や上層部と何ら変わりが無いだろう?」

俺はそう尋ねる。

すると、

「確かにそうかもしれませんね。 ですけど、第一に、貴方はまだ本気でこのミッド地上の平和を願っている。 それはよくわかります」

その言葉に、俺は俯く。

確かに俺は、ゼストと誓い合った正義を胸に行動を起こしてきた。

それが結果的にゼストを裏切ることになっていたとは気付かずに………

いや、気付かない振りをしていただけだな。

「第二に、私らはユウ君に手を出した可能性がある奴等とは手を組みたくありません」

確かに俺は、彼には特に手出しをしていない。

「最後に、貴方は魔導師に拘ってはいない。 戦力増強の手段として戦闘機人を選んだのも、その表れです」

最後の言葉に、俺は顔を上げる。

「ですので、そんな貴方にはこの情報をプレゼント!」

そんな笑顔とともに、目の前にモニターが開く。

そこに表示されたデータを目にして、俺は眼を見開いた。

「これは!」

俺は思わず立ち上がりそのデータを凝視する。

そこに表示されていたデータは、リンカーコアを持たない人間でも、魔法が使えるようになるデバイス。

「とりあえず、実験段階では制作に成功してます。 あと数年もすれば、実用段階にこぎつけるでしょう」

確かにこれがあれば、戦力の問題が一気に解決される。

戦闘機人と違い、倫理的にも問題無い上、非殺傷も設定可能なので、質量兵器の禁止法に引っ掛かることもない。

そして、制作にかかわっている所を見ると、

「BTT社…………」

俺は呟く。

数年前に出来たばかりの新しい会社だが、デバイス関係の部品や商品の品質の高さで信頼を勝ち取り、あっという間に成長し、今ではこのクラナガンを代表する大会社だ。

当然ながら、管理局もBTT社のお得意様である。

その社長も随分若いという話だが…………

「その会社の社長、副社長、秘書は、私の幼馴染です」

その言葉には呆れるしかない。

こいつは一体何所までコネを持っているのかと。

管理局としては三佐という年齢にしては高い地位に着き、スカリエッティや血塗られた聖王とも交流があり、果ては大会社であるBTT社の上層部と友人とは…………

「…………で、どうします?」

その女がうって変わって真剣な表情で問いかけてくる。

その言葉に、俺は少し考える。

「……………俺がこの交渉を断り、このデータだけを利用するとしたら、お前は如何する?」

俺はそう問いかける。

これは試しだ。

俺の腹の中ではもう答えは決まっている。

「如何もこうも、断られたなら、力押しで最高評議会を潰すだけですわ。 クーデターの計画は元々、犯罪者にならない様に最高評議会を潰すために立てたものですから」

その言葉に、俺は呆気にとられる。

「貴様たちは、地上本部を…………いや、管理局を全て敵に回すというのか!?」

「一点突破で最高評議会と上層部を潰し離脱することだけなら出来ると思ってますよ。 こちらには彼もいますからね」

そう言いながら、女は血塗られた聖王を見る。

その顔は笑っているが、本気だろう。

そして、その覚悟も並大抵のものでは無いということを同時に悟る。

「まあ、その後の逃亡生活が面倒くさいですから、できればクーデター計画のほうで行きたいんですがね」

そう言いながら、その女は俺に向き直ると、

「簡単にいえば、利害の一致の協力関係を結びたいんです。 貴方は自分の信じる正義のために管理局を変え、私らは私らの幸せのためにあなたに協力する。 そういう関係です。 ああ、言い忘れてましたが、最高評議会を潰した後は、私らが犯罪を犯さん限り、私らには関与しないということも条件ですが。 もちろん、デバイスが完成した暁には、どう使うかはあなた達の自由です。 誰でも力が持てるようになったことで、出てくる問題もあるかもしれませんが、その辺はあなたの手腕に期待しましょう」

利害の一致か。

そして、その理由が自分の幸せのためにという理由なら、上辺の取り繕った言葉よりは信憑性はある。

「……………答えは決まっている」

俺は立ち上がり、右手を差し出した。

「よろしく頼む」

その女………八神 はやてもニッコリと笑い。

「よろしゅう」

俺の手を握り返した。

すると、

「さて、2人が手を結んだ信頼の証として、こちらの手札を一つ見せよう………ドゥーエ」

スカリエッティがそう言い、

「はい、ドクター」

秘書の女が返事をした。

俺が怪訝に思っていると、その女の姿が変わり、金髪の戦闘機人の姿になる。

「戦闘機人、No2ドゥーエ。 以後お見知り置きを」

その戦闘機人の女は優雅に一礼する。

俺はその事実に驚愕する。

「こうやって手札を見せたことで、そちらに対する信頼の証と受け取ってほしい。 逆にいえば、ドゥーエに何かあった場合には、裏切りと見なすということだがね」

「そうならないことを願いますよ。 レジアス中将」

スカリエッティと血塗られた聖王がそう言い、

「では、今日はこの辺で。 詳しい話はまたいずれ」

そう言い残し、姿を消す3人。

ドゥーエという戦闘機人は、また秘書の姿に戻った。

俺はゼストを見る。

「ゼスト、お前は俺をどう思う?」

そう尋ねた。

「……………正直、俺はお前が変わってしまったのだと思っていた。 だが、その大本は変わっていなかった。 それがわかっただけでも、俺はホッとしている」

「ゼスト………」

「2人で誓い合った正義………今度こそ間違えないでくれ」

「…………ああ!」

ゼストの言葉に、俺は頷いた。











あとがき


第四十五話の完成……………

何も言わないで!

グダグダで繋がりがないし、かなり強引だし!

やはりこういうところは苦手だぁぁぁぁぁぁぁ!!

というわけで、かなり強引ですがレジアスと手を結びました。

次回は、あの子とあの子とあの子と、ちょっと早いけどあの子が出てくる予定です。

では、次もがんばります。





[15302] 第四十六話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122
Date: 2011/06/12 22:18

第四十六話 少女達との出会い



闇の書事件から8年。

今日もいつも通り翠屋のマスターをしているユウだ。

で、俺の目の前のカウンター席には、常連客であるサングラスをかけたスカリエッティがいる。

「で? 話ってなんだ?」

俺は、防音結界を張って、スカリエッティに問いかける。

「ああ。 君に、とある研究施設の破壊を依頼したい」

スカリエッティはそう言ってきた。

「研究施設? 管理局絡みか?」

俺はそう聞くが、

「いや、ここは管理局とは直接の繋がりは無い」

スカリエッティはそう答える。

「だったらパスしたいところだが………………理由は?」

管理局関係で無ければ、俺が襲撃する意味は無いため、俺は乗り気ではなかったが、一応話だけは聞く。

すると、

「君は聖王のゆりかごを知っているかい?」

スカリエッティはそう聞き返してきた。

「古代べルカの遺産で、巨大な戦闘艦。 生きている聖王が起動キーとなり、二つの月の魔力が受けられる衛星軌道上まで到達すると、全兵装が使用可能となり、現存の次元航行部隊とも互角以上に渡り合えるポテンシャルを持つとか何とか………………」

俺は、前世の記憶を掘り返してそう答える。

「まあ、大体その通りだ。 それで、そのゆりかごなんだが、私………ひいては最高評議会が手中に収めている」

その辺は原作と一緒か。

「でも、聖王がいなければ、単なるガラクタだ」

「その通りだ。 現在では、聖王の血を引くものは既に途絶えていると言われているし、君のような例外もいるかもしれないが、私の情報網でも君以外に聖王の血を引くものは確認されていない」

「だったら心配ない……………って言いたい所だが、居るんだろ? 俺とはまた違った例外が」

俺は確信を持ってそう問いかけた。

スカリエッティが言っているのは、十中八九ヴィヴィオに関係することだろう。

でも、この時期にヴィヴィオって生み出されていたのか?

「ああ。 君と出会う前の話なんだが、ドゥーエに聖王教会のとある司祭をたらしこませて聖王の遺物から遺伝子情報を採取し、各研究施設にばら撒いたことがあるんだが…………」

「その研究施設の中で、聖王のクローンを生み出すことに成功した、または成功しそうな所がある。 という情報でも入ってきたんだろ?」

「その通りだ」

スカリエッティは頷く。

「ふう………まさに、自分で蒔いた種だな」

「面目ない」

「ま、いいさ。 その依頼、受けるよ」

「すまないね」

「気にするな。 仲間の頼みだ。 無碍にはしないよ」

俺がそう言うと、

「仲間………か」

スカリエッティが呟く。

「どうした?」

俺が尋ねると、

「いや、いい響きだと思ってね」

「おかしな奴だな」

「フッ…………ああ、忘れるところだった」

スカリエッティが思い出したように口を開く。

「今回の研究所、管理局と直接の繋がりは無いが、管理局から遺伝子データが横流しされているとの噂もある。 気にするほどではないと思うが一応知らせておこう」

「わかった。 頭の片隅には留めておくよ」

こうして、俺の次の行動が決まった。






スカリエッティから依頼された研究所は、べルカ自治区にあった。

「聖王なだけにべルカか………安直だな……」

俺はバカなことを呟き、森の中に隠された研究所を見る。

「さて、ここはミッドチルダだから、あまり派手な事は出来ないな。 とは言っても、やることはあまり変わりないか」

俺はグレイソードを出現させ、研究所の入口へと向かう。

完全な非合法研究所の為か、警備員は見当たらない。

俺は、グレイソードを振りかぶり、入口を切り裂いた。

研究所に踏み入ると、生体ポッドがいくつも並んでいた。

近くには、研究員と思われる人間が腰を抜かしている。

俺はその人物に近付き、グレイソードを突き付けた。

「ひぃっ!」

その男は、情けない悲鳴を上げる。

「い、命だけはっ!」

命乞いをする男。

「ならば答えろ。 この研究所では、聖王の遺伝子を元に人造魔導師を生み出そうとしているはずだ。 そこへ案内しろ」

俺はそう脅すが、

「し、知らない!」

その男はそう答えた。

「隠すと為にならんぞ?」

俺はグレイソードを更に近付ける。

「ほ、本当だ! 俺は何も知らない! お、俺は唯の下っ端で、詳しいことは何も知らされていない!!」

俺はしばらくグレイソードを突き付け続けていたが、その男は震えるだけで、何も答えられそうにない。

どうやら、何も知らないというのは本当らしい。

「なるほど。 どうやら本当に知らないようだ……………ならば、貴様の知る最高の上司の元へ案内しろ。 そうすれば見逃してやる」

「わ、わかった!」

その男はガクガクと首を縦に振る。

そして、怯えながら歩き出し、俺もその後に続く。

その途中で、他の研究員たちが俺の姿を見て取り乱していたが、まあ、当然だろう。

すると、俺を案内していた男は、通路の突き当たりにある扉の前で振り返り、

「う、上の研究員達が居るのはこの扉の奥だ。 だ、だが、俺のIDでは、この扉を開けることはできない!」

焦りながらそう言う。

「十分だ。 約束通りお前は見逃してやる。 他の奴に逃げるように伝えるのは勝手にしろ。 ただし、この研究所に残る場合は、身の安全は保証しない」

「わ、分かった!」

その男はそう言って、慌てて駆けだし、逃げていく。

俺はその姿を見送ると、扉に向き直り、

「フッ!」

グレイソードで扉を切り裂く。

かなりぶ厚い扉だったが、グレイソードの切れ味の前には無意味。

ゴトン、と重々しい音を立てて崩れる扉。

その扉の向こうには、かなりの広さの部屋があった。

すると、その奥には、

「ようこそ。 血塗られた聖王」

この研究所の最高責任者と思われる白衣の男が居た。

その男は、堂々と俺を迎え入れる。

相当肝が据わっているのか、それとも単なるバカか。

もしくは、余裕を持てる理由があるのか。

俺は、グレイソードを前に突き出し、

「用件だけを言う。 聖王のクローンは、もう生み出されているのか?」

俺がそう聞くと、

「ああ。 1体だけだが、既に生み出すことに成功している。 とは言っても、まだ幼いから暫くは生体ポッドの中で成長させるつもりだがね」

その男は、嬉しそうな笑みを浮かべてそう自慢げに言った。

「そうか………」

俺は一度目を瞑ると、再び目を開けてその男を見据える。

「ならば、その子を渡してもらおう」

俺はそう言い放つ。

「ククッ。 同じ聖王として、情でも移ったか?」

「否定はしない。 大方、その子が成長したら、聖王教会に売り込みでもするつもりなんだろう?」

「その通り。 聖王が復活するのだ。 聖王教会にとって、喉から手が出るほど欲しいものだろう」

「で、その子は傀儡として、権力の象徴となって扱われる………か………気に食わないな」

俺はそう言ってグレイソードを構える。

「どうせお前は渡すつもりは無いんだろう?」

「当然だな。 折角の金の生る木だ。 みすみす手放すわけはあるまい」

「なら、問答は無用だ」

俺は男を睨みつける。

だが、その男は余裕の態度を崩さない。

「お前………どうしてそこまで余裕で居られる?」

気になった俺は問いかける。

「フフッ………この研究所で研究されていたのは、何も聖王だけでは無いのだよ! さあ、出番だ! 我が最高傑作! サンプルナンバーN-24! F-17! H-28!」

その男が叫んだ瞬間、何処からか魔力弾が飛来した。

「むっ!」

俺は、マントを盾にしてその魔力弾を防ぐ。

煙によって視界が遮られるが、向こうに誰かいるのは分かる。

俺は煙の中を突っ切ってグレイソードを振りかぶった。

そして、煙の向こうの敵に、グレイソードをなぎ払うように振るい始める。

捉えた。

そう思った瞬間、煙が途切れ、相手の姿が視界に入った。

「ッ!?」

その瞬間、俺は思わず振るおうとしていたグレイソードを相手に当たる前に寸止めしてしまう。

その顔は、髪型がショートカットで瞳が水色だが、間違いなくなのはや桜と瓜二つの7、8歳前後の少女。

強引に攻撃を止めたため、俺は大きな隙を作ってしまう。

その時、

「くっ!?」

背中に衝撃を受ける。

衝撃の感覚からして、おそらく斬撃。

俺は思わず後ろを振り返る。

そこには、髪が水色で瞳が薄紅色のフェイト、アリシアと瓜二つの少女。

「何っ!?」

更に、かなり大きい魔力の収束を感じる。

そちらを確認しようとした瞬間、白い魔力砲撃が煙を切り裂いて俺に襲いかかった。

「チッ!」

俺は咄嗟にフェイト似の少女を突き飛ばす。

俺は砲撃に飲み込まれるが、聖王の鎧のお陰でダメージは無い。

煙が晴れていくと、そこには銀色の髪と翠の瞳を持った、はやてにそっくりの少女。

「…………………」

俺は思わず黙り込む。

外見的には、星光の殲滅者、雷刃の襲撃者、闇統べる王。

だが、大事なのはそこでは無い。

スカリエッティの言っていた、この研究所に管理局から遺伝子データが横流しされているという情報。

そして、この子たちのなのは達に似た外見。

それらを踏まえると、導き出される答えは……………

「………答えろ! この子たちの元になった遺伝子の持ち主は、高町 なのは、フェイト・テスタロッサ、八神 はやての3人か!?」

俺は思わず白衣の男に問いかける。

「おや、知っていたのかね? まあ、彼女達はそれなりに有名だからね。 知っていても不思議ではないか」

その男は、肯定するように呟く。

すると、

「見たまえ、この作品たちを! こんなにも幼いながらもオリジナルに匹敵する魔力ランクだ! この研究が完成すれば、管理局を潰し、世界を手に入れることも夢ではない!」

そう高らかに叫ぶ研究者。

だが、俺はそんなことはもはや聞いていない。

俺は、その男に向けて一歩踏み出す。

「む………」

その男はそれに気づき、子供たちに攻撃を加えるように指示する。

次々と魔力弾が飛来するが、そんなものは眼中にない。

俺が見据えるのは唯一点。

白衣の男のみ。

飛来する魔力弾も、俺の聖王の鎧の前に打ち消され、俺の歩みの妨げにはならない。

俺は一歩一歩その男に近付いていく。

全く効かないことは予想外だったのか、その男は慌て始める。

「な、何をしている!? 早く殺せ!!」

その言葉に、子供たちは強力な砲撃を放った。

俺はそれに飲み込まれるも、ダメージは無い。

「や、やったか?」

その男はホッとするように息を吐いた。

その瞬間、俺は飛び出し、右腕でその男を殴りつける。

「ごはっ!?」

その男は吹き飛び、壁に激突する。

そして、俺はその男の目の前まで行き、グレイソードを振り上げた。

俺の大切な奴らを汚したこいつは許しておけなかった。

「死………」

俺がグレイソードを振りおろそうとした瞬間、

「駄目ぇっ!!」

そんな声が響き、俺は思わずグレイソードを寸止めした。

俺は声のした方を向くと、

「駄目………殺しちゃ………駄目………」

なのはのクローンの少女が、涙を流しながらそう呟いていた。

見れば、フェイトとはやてのクローンも、目に涙を滲ませている。

「分からない………自分でも何でこんな事言ったのか………でも、あなたを見てると、胸が温かくなります……」

「お前達………まさか、僅かに記憶を持ってるのか?」

俺は驚いた。

でも、確かにありえないことじゃない。

ならば、俺の取るべき道は一つ。

俺は両手の手甲を消し、

「俺と一緒に来るか?」

手を差し出しながらそう尋ねた。

子供達は、一瞬驚いた顔をした後、同時に俺の手を取った。

すると、

「お願いがあります」

なのはのクローンがそう言ってきた。

「何だ?」

「…………私達に、名前をください」

「えっ?」

「私達は今まで、番号でしか呼ばれていませんでした。 私達は、私たちだけの名前が欲しい」

その言葉に、俺は悩む。

「い、いや、俺ってネーミングセンス無いから、帰ってから皆で考えた方が………」

俺はそう進めるが、

「いいえ。 貴方に名付けて欲しいんです」

子供達はそう言ってくる。

俺は少し考えると、

「じゃあ、お前はせいだ」

なのはのクローンの頭を撫でながら言う。

「星………」

次にフェイトのクローンの頭を撫で、

「お前はライ」

「ライ………」

最後にはやてのクローンの頭を撫で、

「そして、お前は夜美やみ。 夜の美と書いて夜美だ」

「夜美………」

俺はそう言いながら内心自己嫌悪に陥る。

ぶっちゃけ、星光の殲滅者、雷刃の襲撃者、闇統べる王の頭文字を取っただけだからな。

俺のネーミングセンスの無さが恨めしい。

それでも、子供達は喜んでくれているようだ。

っと、あんまり長居するのも危ないからな。

「皆、金髪でオッドアイの女の子の居場所ってわかるかな?」

俺は星達に尋ねる。

「………オッドアイかは分かりませんが、金髪の女の子なら心当たりがあります」

星が答えた。

「場所は?」

「こっち!」

ライが率先して動きだした。

俺はライの後に続く。

すると、ある扉に入る。

そこには、生体ポッドの中で眠る、紛れもないヴィヴィオの姿。

だが、歳は4、5歳といった所か。

ふと、俺は思った。

「どうやって出せば良いんだ?」

最初はぶっ壊そうかと思ったが、強引に外に出して、異常が残ったら本末転倒だ。

それだけは避けたい。

「そう言えば、そこの機械を研究者が弄っていたのを見たことがあるぞ」

夜美が横にある機械を指さしながら言った。

俺はその機械に近付き、

「オメガ、解析できるか?」

『『お任せください』』

オメガとその機械を接続し、オメガが凄まじい勢いでデータを解析していく。

すると、プシューという音と共に、生体ポッド内の培養液が抜けていく。

そして、生体ポッドが解放され、眠るヴィヴィオがそこに横たわっていた。

俺はすぐにマントでヴィヴィオを包むと、

「オメガ、剣だ」

『『Yes,Master.』』

俺の言葉で、オメガはオメガソードへと姿を変える。

そして、その機械へオメガソードを突き刺し、

『『Initialize.』』

研究所のデータを完全に初期化した。

俺はオメガソードを引きぬき、

「なら、帰るか!」

星達に笑いかけた。






【Side はやて】





私は今、ひじょ~~~~~~~に不機嫌や。

その理由は、

「元気か? 娘よ」

「はい!リィンはいつも元気ですよ~~!」

リインフォースとリィン。

「エリオ、後で稽古をつけてやるぞ」

「はい! お願いします! お母さん!」

シグナムとエリオ。

「キャロ、ここはこうで………」

「で、ここがこう」

「あ! そういうことだったんだ!」

「キュクルー!」

キャロに勉強を教えているヴィータとユーノ君。

あとフリード。

「お袋、おかわりいるか?」

「ありがとアギトちゃん」

紅茶のポットを運ぶアギトと、ティーカップを差し出すシャマル。

「くぅん………」

「よしよし」

「………………」

子狐形態で丸くなる久遠と、それを覆うようにしているアルフ。

そして、無言ながらも温かい眼差しを向けるザフィーラ。

「………う……うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

私は思わず叫び声を上げる。

「はやてちゃん! 落ち着いて!」

「はやて、しっかり!」

なのはちゃんとフェイトちゃんが私を宥めようとしている。

だが、

「これが落ち着いていられるかい! いきなりユウ君に呼び出されたと思いきや、目の前で親子の営み見せつけられて黙っとれるかぁぁぁぁ!!」

私はそう叫ぶ。

「まあ、確かにこうも堂々と見せつけられちゃ、羨ましくもなるわね」

「そうだね~」

「ううっ、羨ましいよ~」

アリサちゃんと、すずかちゃんと、アリシアちゃんが私に同意する。

すると、

「もう、騒がしいわね~。 いくら貸し切りの状態だからって、もう少し静かにしたら?」

店の奥から桜ちゃんが現れる。

何故か金髪オッドアイの女の子を抱いて。

「……………さ、桜お姉ちゃん………その子は?」

なのはちゃんが声を震わして尋ねる。

「ん。 この子はヴィヴィオ。 この子は………」

「さくらママ。 この人たちは?」

その子が桜ちゃんにそう呼びかける。

さくらママやて………?

「…………桜ちゃんも……なんか?」

私は思わず呟き、

「う、うう………裏切り者ぉおおおおおおおおっ!!」

そう叫んだ。

その瞬間、

「落ち着きなさい!」

「はぐっ!?」

軽めの魔力弾を頭に受け、撃沈される私。

「話は最後まで聞きなさい。 ユウ!」

桜ちゃんはそう言って、店の奥に居るユウ君に呼びかける。

すると、

「さあ、皆。 お披露目だ」

そう言いながらユウ君が店の奥から現れる。

3人の女の子を連れて。

しかも、その連れてきた3人の女の子達の顔が私らとそっくりやったことも、驚きを大きくさせた。

「ユ、ユウ………その子達は………?」

フェイトちゃんが問いかける。

「この子達は、研究所でヴィヴィオと一緒に保護した子供たちだ。 もう気づいていると思うが、間違いなく、お前達の遺伝子を元に生み出された存在だ」

ユウ君がそう言うと、その子達は、それぞれなのはちゃん、フェイトちゃん、私の前に来る。

「あなた達が………私達のオリジナル………」

その子達は、複雑な表情で私達を見上げてくる。

だから私は、

「決めたで!」

私は叫んで私似の女の子を抱きしめる。

「この子は私の子にする!」

「えっ?」

その子は驚いたように私を見上げる。

「名前はなんや?」

「えっ、あ、や、夜美」

「ほうか、夜美ちゃんか。 よーし、じゃあ、夜美ちゃんは今から私の子、八神 夜美や」

「え? ええっ?」

隣では、

「ねえ、名前はなんていうのかな?」

なのはちゃんがなのはちゃん似の女の子に尋ねた。

「星という名前をもらいました」

「そっか、星ちゃんか」

そう言って、なのはちゃんは星ちゃんに笑いかける。

「お名前、教えてくれるかな」

フェイトちゃんも、そう尋ねる。

「………ライ」

「そう。 よろしくね、ライ」

フェイトちゃんも、にっこり笑って手を握る。

すると、桜ちゃんがヴィヴィオちゃんを抱いて、アリサちゃん、すずかちゃん、アリシアちゃんの方へ行く。

「ヴィヴィオ。 この人たちがさっき教えた人たちだよ」

桜ちゃんのその言葉を聞くと、ヴィヴィオちゃんは嬉しそうな顔をして、

「この人たちもママ!?」

そう言った。

「そうよ。 順番に、アリサ、すずか、アリシアよ」

桜ちゃんがそう教えると、

「アリサママに、すずかママに、アリシアママだね」

ヴィヴィオちゃんがそう言うと、

「よくできました」

桜ちゃんが褒める。

「え、ええっ!? さ、桜!? 如何いうこと!?」

アリサちゃんが、驚いた声を上げる。

「だって、ヴィヴィオを独り占めするなんて勿体ないじゃない」

桜ちゃんはそう返した。

「そ、それにしても………ママか………なんかくすぐったいわね」

そう言いながらも、顔を赤らめて満更そうには見えないアリサちゃん。

「えへへ、すずかママか……」

素直に嬉しくて笑うすずかちゃん。

「ねえねえ、パパはもちろんユウだよね!?」

「当然!」

アリシアちゃんの問いに、サムズアップで答える桜ちゃん。

その時、

「お待たせしました~~~」

トレイに飲み物を乗せて現れるファリンさんとリニスさん。

「あっ! ファリンママ! リニスママ!」

そう嬉しそうに言うヴィヴィオちゃん。

って、ファリンさんとリニスさんも『ママ』なんやね。

「はい、ヴィヴィオ」

リニスさんがヴィヴィオちゃんにジュースを渡す。

「ありがとーリニスママ」

ヴィヴィオちゃんは嬉しそうにストローに口をつける。

それにしても、あっという間に大所帯になったなぁ………

私はそう思いつつ、夜美を愛でる事をやめない私だった。







あとがき


第四十六話の完成。

はい、子供達大集合の回でした。

ここで星光の殲滅者、雷刃の襲撃者、闇統べる王の登場です。

性格が違うのは、まだ、未発達だからです。

すぐに同じ性格になるでしょう。

で、ちょっと早いけどヴィヴィオも登場。

子持ちと戦闘機人を除いたヒロインズの子供になりました。

また色々と酷評が来そうな気がしないでもないですが……………

次回は、恐らく聖王教会編になるかと……

ともかく次も頑張ります。






[15302] 第四十七話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122
Date: 2011/07/10 23:20




第四十七話 聖王教会




【Side カリム】




今から約5年ほど前。

この聖王教会を激震させる情報が舞い込みました。

それは、現代に蘇った聖王。

情報でも、虹色の魔力光を纏っていたので、十中八九間違いないとのことでした。

しかしその聖王は、管理局の研究所を次々と襲撃し、そこに居た研究員達を皆殺しにしているということで、管理局はその聖王を『血塗られた聖王』と命名し、全管理世界に指名手配しました。

当時、聖王教会内部でも、その管理局の決定に不服を唱える者が多く、内乱が発生する危険があるほどでした。

しかし、それもしばらくして治まりました。

その理由は、私の持つレアスキル、『預言者の著書プロフェーティン・シュリフテン』にあります。

その預言の一説に、とある情報が書かれていた事で、未だ一部に反発があるものの、内乱の危険が無くなりました。

その内容は………

その時、モニターが開き、

『騎士カリム、騎士はやてがお見えになりました』

そう報告が来た。

「ありがとう。 通してちょうだい」

私は許可を出す。

少しすると、ドアがノックされる。

「どうぞ」

私がそう言うと、ドアが開き、フードを被ったはやてが通される。

「カリム、お待たせや」

「はやて、いらっしゃい」

私達はそう挨拶をして、

「フフッ、いつも通り翠屋のシュークリームのお土産や」

「ありがとう。 私も翠屋のシュークリームは大好きよ」

私達はそう笑いあって、お茶の準備を始めた。





「それじゃあ今日の本題。 新しく翻訳できた預言を含めて、最初から聞いてみよか?」

お茶を飲み始めて暫くしてから、はやてがそう切り出す。

私は頷き、メモを取り出した。

「【法の守護者が集う場所

 『最後』の力を持ちし白き聖王が現れる。

 『最後』の聖王は『自由』を求め、

 法の守護者と相対す。

 『最後』の聖王を慕いし乙女達は法の下、

 道化となりて数の乙女達と舞い踊る。

 『最後』の力を持ちし白き聖王、

法の下に生れし『最初』の力を持ちし黒き聖王と相対す。

 『最初』の聖王が勝つ時、世界は『安定』を迎え、

 『最後』の聖王が勝つ時、世界は『変革』を迎える】」

私は、預言を読み終える。

「えらい物騒な預言やなあ………」

はやてはそう呟く。

「私達の予想では、『最後』の力を持ちし白き聖王というのは、現在指名手配されている『血塗られた聖王』の事だと考えています。 そして、『最後』の聖王が勝つ時、世界は『変革』を迎える…………つまり、管理局システムの崩壊を意味していると思われるわ」

「………その可能性が高いやろうなぁ………」

はやても、私の仮説に同意する。

「それを防ぐためにも、早く『最初』の力を持つ黒き聖王を見つけ、味方につけなければなりません。 預言の通りなら、『最初』の聖王は、管理局の味方でしょうから」

「やっぱそうなるよなぁ………」

はやてはそう呟くと、何やら考え込んだ。





【Side Out】





【Side はやて】




カリムの預言を聞いた私は、

「えらい物騒な預言やなあ………」

思わずそう呟いてしまった。

だってそうやろ!?

私らの身内しか知らんはずの計画を、大雑把とはいえ的確に預言しとる。

預言に書かれる内容はランダムやっちゅう話やけど、ここまでピンポイントで私らの計画を的中させんでええやろ!?

『最後』の力を持ちし白き聖王は、間違いなくユウ君のことやろ。

なんたって、使っとるデバイスが『オメガ最後』なんやからなぁ。

で、『最後』の聖王を慕う乙女達っちゅうのは私らの事で、数の乙女達はナンバーズなんやろうな。

そんでもって、私らが管理局の下で道化となってナンバーズと舞い踊る…………

思い当たることありすぎやなぁ………

私は内心ウンザリする。

カリムの預言はすごいと思っとったけど、ここまで私らの計画を言い当てられるとは予想外や。

まあ、カリム達は内容を理解してないから、私らが計画しとる事までは分からんとは思うけど………

「私達の予想では、『最後』の力を持ちし白き聖王というのは、現在指名手配されている『血塗られた聖王』の事だと考えています。 そして、『最後』の聖王が勝つ時、世界は『変革』を迎える…………つまり、管理局システムの崩壊を意味していると思われるわ」

カリムがそう続ける。

「………その可能性が高いやろうなぁ………」

私は同意する。

っていうか、それが目的やし。

それにしても、

「それを防ぐためにも、早く『最初』の力を持つ黒き聖王を見つけ、味方につけなければなりません。 預言の通りなら、『最初』の聖王は、管理局の味方でしょうから」

その『最初』の力を持ちし黒き聖王っちゅうのは一体何なんや?

「やっぱそうなるよなぁ………」

私は、カリムの言葉に相槌を打ちながら、自分の考えに耽るのだった。





【Side Out】





【Side カリム】



はやてに預言の内容を話し終えた時、

――ドォォォン!

爆発音とともに、建物に振動が走った。

私はすぐにモニターを開き、

「シャッハ! 何が起こったの!?」

シャッハにそう尋ねる。

『はい。 一部の過激派が、暴動を起こしている模様。 すでに騎士たちが動いていますので、それほど時間をかけずに鎮圧できると思います。 ですが、騎士カリムは念のため、部屋から出ないようお願いします』

シャッハがそう答える。

「分かったわ………シャッハも気をつけて」

そう言ってモニターを切る。

すると、はやてが立ち上がった。

「はやて?」

私が尋ねると、

「まあ、必要無いと思うけど、私も出るわ。 じっとしとるのは性に合わんしな」

そう言うと、

入口に向かって歩いて行く。

「はやて!」

私は、出て行こうとするはやてを呼びとめる。

はやてはこちらを振り向いた。

「気をつけて」

私がそう言うと、はやては微笑んで部屋から出て行った。



暫くして、

『騎士カリム、暴動の鎮圧に成功。 こちらの人員に、重大な負傷者はありません』

そう報告が来て、

「ありがとう。 分かったわ」

私はそう言ってモニターを閉じる。

そして、ホッと息を吐いた。

その瞬間、

「んむっ!?」

突然口を布のようなもので塞がれ、意識が遠くなるのを感じた。













「……………うっ」

私が気がついた時、

「………ここは………?」

目の前には、木々や草が見えたので、少なくとも外に居る事が分かる。

「気がつきましたか? 騎士カリム」

そう呼ばれ、視線を向ければ聖王教会の騎士服を纏った複数の人物。

「あ、あなた達はっ………!?」

そう言おうとして、初めて両手が後ろで縛られていた事に気付く。

「我々は、聖王君主推進派の一員です」

その言葉に、

「過激派っ!?」

私は思わずそう口にしてしまった。

その瞬間、頬を叩かれる。

「ッ!?」

「その呼び方は止めて頂きたい。 我々は、聖王を正当な位へと導くために集まり、結束した集団だ。 聖王陛下を犯罪者として扱う輩に、そのような呼ばれ方をされる筋合いは無い!」

その男はそう叫ぶ。

「聖王を犯罪者………それは、『血塗られた聖王』の事を言っているのですか!?」

私がそう言った瞬間、再び頬を叩かれる。

「ッ!?」

「聖王陛下をそのような名で呼ぶな! 貴様も聖王教会の一員であろう!? 何故陛下をそのような侮辱した名で呼ぶ!?」

過激派のメンバーは、怒りに染まった表情でそう叫んでくる。

「それは既に公表したはずです! 私の預言で、聖王は、今の白き聖王の他に、黒き聖王がおり、その人物こそが世界を『安定』へと導く存在だと!」

「黙れ! 我らは貴様の預言など信用してはおらん! 現に、今いる聖王は、白き聖王のみ! ならば、陛下につき従い、陛下の御心のままに仕えるのが我らが騎士の役目!」

「それが、世界を滅ぼすことだとしてもですか!?」

「当然だ! 聖王陛下の行動こそ正義! 聖王陛下が世界を滅ぼすならば、それもまた正義なのだ!」

迷いなく言い切ったその者の言葉に、私は思わず言葉を詰まらせる。

「そして、貴方が公表した預言は誤りだったと発表するのだ。 そうすれば、同志は更に集い、聖王を犯罪者と罵倒する管理局に、正義の裁きを下す事が出来るのだ!」

その言葉を聞いた瞬間、私は自分の血の気が引く事が、はっきりとわかった。

「あ、貴方達は、戦争を起こす気なのですか!?」

私はそう叫ぶ。

「戦争? 違う、聖戦だ! 聖王陛下を罵倒する管理局に、正義の鉄槌を下し、聖王陛下が治める完全なる世界へと生まれ変わるのだ!」

過激派のメンバーの物言いに、私は戦慄を覚える。

この者達は、あまりに聖王を心酔するあまり、善悪の区別もつかなくなっている。

「馬鹿な真似はやめなさい! 貴方達は、旧暦の時代の過ちを、再び繰り返すつもりですか!?」

「聖王陛下が治めれば、世界は正しく回るのだ! そのためには犠牲が出るのも致し方ない」

「屍の上に築かれた平和など、まやかしに過ぎません! 第一、正しき者が王にならなければ、世界が正しく回るはずもありません!」

私はそう言い切る。

「このっ………」

私の言葉が感に触ったのか、男が再び腕を振り上げる。

その時、

「俺も彼女の意見に賛成だな」

空からそんな声が聞こえた。

私も含め、全員が空を見上げる。

そこには、

「おお………聖王陛下…………」

過激派のメンバーが感慨深い声を上げる。

私たちの視線の先には、『血塗られた聖王』がいた。

すると、彼は私と過激派メンバーの間に舞い降りる。

「ようこそおいで下さいました。 聖王陛下」

過激派メンバー達は頭を垂れる。

そんな過激派メンバーを立ったまま見下ろす血塗られた聖王。

「俺を陛下と呼ぶな。 俺は聖王などでは無い」

血塗られた聖王は、信じられない事を言った。

「な、何をおっしゃいます陛下? 貴方様の纏うその虹色の魔力光こそ、聖王である何よりの証」

過激派の男は、焦った表情でそう言った。

「俺は確かに聖王の血を継いでいる。 だがそれだけだ。 俺は聖王でもなければ、王になるつもりもない」

血塗られた聖王はそう言う。

「そ、そんな………」

過激派メンバーが絶望的な表情をすると、

「第一………」

血塗られた聖王は呟き、左腕の手甲から、大剣を出現させる。

「身動きできない女性に暴力を振るう輩は個人的に気に食わん!!」

そんな言葉と共に、血塗られた聖王は大剣を振りまわし、その時に発生した衝撃波で過激派のメンバー全員を吹き飛ばした。

木に激突するなどして、気絶する過激派メンバー達。

それを確認すると、血塗られた聖王は私の方に振り向いた。

私は、一瞬身をすくめる。

そして、私に向かって大剣を振りかぶる。

私は思わず目を瞑った。

次の瞬間、

――ヒュン

と、剣が空気を切る音が聞こえたが、身体に痛みは無い。

それどころか、

「え?」

縛られていた手のロープが千切れ、手が自由になる。

すると、血塗られた聖王は、大剣を手甲の中に納め、私に背を向けた。

思わず私は、

「待って下さい!」

彼を呼びとめてしまった。

彼は、足を止め、顔だけをこちらに向ける。

「貴方は、一体何者なんですか?」

私はそう尋ねる。

「………聖王の血を継いで、魔力がでかいだけの、単なる一般人だ」

彼はそれだけ言って、森の中へ消えていった。

私の心に、大きな波紋を残して。






【Side Out】






ふう、とりあえずこんな所か。

カリムを助けて、その場を去った俺はそう考える。

いきなりはやてから連絡が来たかと思ったら、カリムを助けに行ってくれ、だからな。

理由を聞けば、カリムは、預言に出ていた白き聖王………つまり俺をほぼ敵とみなしているため、最終的にはやてと敵対する可能性が高い。

はやてとしては、カリムを友人と思っているため、出来れば戦いたくないために、白き聖王が完全な悪ではないとゆさぶりをかけて欲しかったらしい。

まあ、これから先どうなるのかは運次第だが。

それから、カリムの預言にあった、『最初』の力を持ちし黒き聖王だが、オメガの情報によれば、聖王の武具には、『オメガ』と対を成す『アルファ』というデバイスがあるらしい。

恐らく、黒き聖王の『最初』の力は、その『アルファ』の事を現していると予想される。

残念ながら『アルファ』の能力に関しての記録は無く、オメガでもどのような能力かは分からなかった。

黒き聖王が誰かは分からないが、俺が戦わなければならない相手なのだろう。

だが、俺の自由と平穏を脅かすというのなら、俺の大切な奴らを傷つけようとするのなら、俺は戦う事に迷いは無い。

俺はそう決意し、再び日常へと戻るのだった。








あとがき


第四十七話の完成。

なんだけど…………

気付けばPVが90万突破してるんですけど!?

後10話足らずで100万突破しちゃうんですけど!?

良いの!?

俺の駄文なんかがPV100万突破しちゃっていいの!?

明らかに他のPV100万突破作品と比べると、文章レベル低いんですけど!?

と、まあ、信じられない事になっておりますが、今回は聖王教会の出来事でした。

聖王教会が大人しかったのは、もう一人の聖王が現れる事が預言されてたからでした。

それで大人しくなるんだろうかと思う人いるかもしれませんが、スルーしてくれるとありがたいです。

次回は、翠屋日常編になると思います。

では、次も頑張ります。





[15302] 第四十八話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122
Date: 2011/07/25 01:03

第四十八話 喫茶翠屋のとある一日





さて、闇の書事件から9年。

アニメで言うStS編まで、後1年と迫った訳だが、この世界でもはやては機動六課を作るつもりらしい。

最近は、部隊のメンバー集めに奔走中だ。

と言っても、その殆どは仲間関係だが…………

因みに、俺達翠屋メンバーも何故か誘われた。

なんでも、隊舎内で店を開いてほしいらしい。

うまい食事での隊員の士気高揚が目的と言う無茶苦茶な理由だ。

というのは口実で、秘密裏の戦力アップが目的なんだろうけど………

この世界では、機動六課の後ろ盾にレジアスさんまでいるため、結構な無茶が可能らしい。

機動六課の設立理由については、アニメと同じ少数精鋭の実験部隊という理由の他に、BTT社で開発した一般人でも魔法が使えるデバイスの実用試験という理由もある。

因みに、そのデバイスの詳しい内容は俺も知らない。

アリサ達が秘密にしているからだ。

何でも、完成した時のお楽しみらしい。

あと、以前保護した4人の子供達は…………

まずヴィヴィオ。

桜を中心とした6人の母親がいるわけだが、その性格はアニメの通り。

甘えん坊で、よく泣いて、ピーマン嫌いの普通の女の子。

次に星。

現在は高町 星。

なのはのスパルタ教育の賜物か、その性格は礼儀正しい。

まんま星光の殲滅者となった。

その次はライ。

ライ・テスタロッサ。

星とは逆に、溺愛のフェイトの下で育てられたせいか、明るく良い子に育ったのだが、まあ、所謂アホの子になった。

別に頭が悪いというわけではないのだが、精神年齢が子供達全員の中で、一番低い。

…………いや、寧ろライが普通で、ライ以外の子供たちの精神年齢が高すぎるだけか?

最後に夜美。

守護騎士達から主のように接するようにされて来た為か、喋り方が闇統べる王と同じになった。

無茶苦茶偉そうに喋る。

まるで王様のように。

誤解しないように言っておくが、闇統べる王のように、他人を『塵芥』とか言う事は無いし、根本的な性格はやさしい子だ。

ただ、喋り方が偉そうなだけ。

あと、スカリエッティだが、計画の最終段階に必要な事で、ガジェットを作ってアニメのようにロストロギアを集めるようにしている。

ただ、一般人に被害は絶対に出さないようにプログラムしてだが。

まあ、近況報告はこのぐらいにして、今日も喫茶翠屋クラナガン支店の開店だ。








「…………………ふう」

コーヒーを一口飲んで、そう溜息を吐いたのは、カウンター席に座る、最近常連客になりつつあるレジアスさん。

休暇の度にこの店に来るようになっている。

はやての紹介で翠屋の事を知り、さらにそこのマスターがこの俺、ユウ・リムルートと知って、一目散に翠屋を訪ねてきた。

でも、いきなりの土下座は吃驚したな。

最近は、オーリスさんも時々来るようになっている。

でも、管理局の中将と副官に、そこまで自由な時間があるのかと思ったが、考えないようにした。

すると、翠屋の入口が開いたため、

「いらっしゃいませ」

俺はカウンターから挨拶した。

その客は、

「こんにちは~!」

常連客のスバルと

「へ~、ここがスバルのお勧めの喫茶店か…………」

オレンジの髪のツインテールの女の子。

確認するまでもなくティアナだな。

「おう。 スバル、いらっしゃい」

俺は改めて声をかける。

「こんにちは、ユウさん」

カウンター席に座りながら、スバルはそう挨拶を返す。

俺は、ティアナに視線を向け、

「そっちの女の子は友達か?」

とりあえずそう聞く。

「はい! 私のルームメイトでコンビを組んでるティアです!」

スバルは嬉しそうにそう紹介した。

「は、初めまして、ティアナ・ランスターです」

ティアナは、いきなり紹介された事に吃驚しているのか、少し詰まりながら頭を下げた。

「こちらこそ初めまして。 喫茶翠屋へようこそ。 俺はマスターの利村 ユウだ。 よろしく」

「はい、よろしくお願いします」

「それで、注文は?」

俺がそう尋ねると、

「シュークリームと、オレンジジュースをお願いします」

スバルがそう言い、

「じゃあ、私はコーヒーとシュークリームで」

ティアナがそう言った。

「分かりました。 少々お待ち下さい」

俺は営業スマイルを浮かべて注文を受け、コーヒーの準備に取り掛かる。

少しして、2人は横に座るレジアスさんに気付き、

「レ、レジアス中将!?」

ティアナが盛大に驚き、

「あ、レジアスおじさんだ。 こんにちは」

スバルは普通に挨拶する。

スバルも翠屋の常連なので、最近常連になりつつあるレジアスさんとはよく顔を合わせているため、知り合いなのだ。

「ス、スバル!? あ、あんたレジアス中将に何て口を!?」

訳を知らないティアナがスバルを叱ろうとするが、

「構わんよ。 今ここに居るのは、唯の休憩中の、何処にでもいる中年オヤジだ。 それに、この翠屋では管理局関係は持ちこまないというのが暗黙のルールだ」

レジアスさんはそう言う。

まあ、俺があのリムルートと知っての言葉だが。

「は、はぁ…………」

ティアナは呆気に取られている。

その時、

「お待たせしました」

桜がオレンジジュースとシュークリームを乗せたトレイを持って、2人の所へ来た。

「あっ、ありがとうございます」

スバルは笑みを浮かべてお礼を言い、

「え? ええっ? 高町 なのは二等空尉!?」

ティアナはなのはとそっくりの桜の顔に、再び驚愕する。

「あはは! 違うよティア。 この人はなのはさんにそっくりだけど、なのはさんじゃなくて、なのはさんの双子のお姉さんの桜さん」

「ふふっ! よろしくね。 ティアナ……だっけ?」

桜はそう聞く。

まあ、桜本人は分かっているだろうが。

「は、はい! ティアナ・ランスターです!」

「そう。 私は高町 桜。 改めてよろしくね」

「は、はい……よろしくお願いします」

ティアナは、驚きすぎて茫然となっている。

「はい、こっちもお待たせ」

俺はコーヒーをティアナに差し出す。

「ど、どうも………」

ティアナは、そうお礼を言ってコーヒーを受け取り、一口飲んだ。

「あ、おいしい」

ティアナはそう漏らした。

「ありがとう。 そう言ってもらえると嬉しいよ」

俺は素直に礼を言う。

「ティア、桜さんのシュークリームも食べてみなよ。 絶品だよ!」

スバルがティアナにシュークリームを進める。

そう言われたティアナは、シュークリームを口に運ぶ。

そして、一口被りつくと、

「ッ!?」

表情が驚きに染まり、

「こ、こんなにおいしいシュークリーム初めて!」

そう驚愕していた。

すると、

「ユウ君、会計を頼むよ」

実はテーブル席に居たスカリエッティと、ウーノ、トーレ、チンク。

「了解」

俺はレジへ移動する。

「ああ、それからシュークリームの詰め合わせを頼む。 妹達に持って行ってやらねば」

支払い役のトーレがそう言ってきた。

「ん、分かった」

俺は、持ち帰り用の箱にシュークリームを詰めてトーレに手渡す。

「うむ、感謝する」

トーレは箱を受け取った。

すると今度は、

「では、ユウ様。 ヴィヴィオお嬢様をお借りいたします」

ウーノがそう言ってくる。

その横に、ヴィヴィオが居る。

何でも、スカリエッティからヴィヴィオにプレゼントがあるとか。

「ん、ヴィヴィオ。 あまり遅くならないうちに帰ってくるんだぞ」

俺がそう言うと、

「は~い。 パパ、さくらママ。 行ってきま~す!」

「心配せずとも、帰りは私が送ろう」

チンクがそう言った。

「いってらっしゃい」

桜がそう見送って、ヴィヴィオはスカリエッティ達と一緒に店を出る。

因みに、他の子供達は全員学校だ。

ヴィヴィオも、来年から初等科に通う予定になっている。

星、ライ、夜美の3人は、エリオ達の一つ下。

リーナやルーテシアと同学年だ。

序に言っておくと、子供たちの魔導師ランクは、

エリオ   AAA+

キャロ   AAA-(ヴォルテールはS)

リィン   AA

アギト   AA

星     AAA

ライ    AAA

夜美    AAA+

久遠    A(成人モード時はAAA)相当

ヴィヴィオ C(平常時。 聖王の鎧持ちなので、Sランクの砲撃も無力化)

である。

エリオとキャロはトレーニングバインドで鍛えている成果。

星達は元々持っている資質である。

普段はリミッターで全員Dランク以下まで落としているが、有事の際にはキャロ以外は俺かそれぞれの母親の判断で解除可能である(キャロは、ユーノとヴィータ)。



まあ、そんなこんなで暫くすると、

「ん?」

何やら外が騒がしい。

時々、魔力反応も感じる。

どうやら、外で戦闘というか、事件が起こっているらしい。

まあ、首突っ込むつもりもないので放置しようと思っていたが、

――ガッシャァァァァァァン

何かが入口を突き破って、店の中に転がり込んできた。

「な、何だぁ!?」

俺は思わず叫ぶ。

俺はカウンターから飛び出して、転がり込んできた『何か』を確認する。

そこには、

「ギンガ?」

傷ついたギンガが店の中に倒れていた。

「ギン姉!?」

スバルが一目散にギンガに駆け寄る。

「…………う……スバル……?」

ギンガがそう漏らす。

「大丈夫か?」

俺がそう声をかけると、ギンガは慌てて右腕を隠すような仕草をした。

「ッ!? ユ、ユウさん! お願い! 見ないでください!!」

ギンガはそう叫ぶ。

だが、俺は見えていた。

ギンガは右腕の二の腕辺りを負傷しており、その場所の皮膚が破れ、機械の内部が露わになっていた所を。

スバルも、慌ててその場所が見えないように移動するが、もう遅いことに気付いた。

「ユ、ユウさん………い、今のは………」

スバルが、言い辛そうに言葉を濁す。

俺は、如何したもんかと頭を掻いていると、

「ザマぁないな、管理局員さん?」

割れた入口に、一人の男が現れる。

「ッ!」

ギンガは右腕を隠したまま、立ち上がろうとする。

どうやら、この男がギンガを負傷させた犯罪者のようだ。

俺は一度溜息をついてその男の前に歩み出る。

「ユ、ユウさん!?」

その行動に驚くスバル。

「いらっしゃいませお客様。 暴力行為は、他のお客様のご迷惑になるのでお控するようお願いします」

俺がそう言うと、

「ああんっ!? 頭悪いのかテメェ!?」

その男はデバイスを突き付けてくる。

「………このまま立ち去るのでしたら、入口の修理費だけ払ってもらえれば十分です。 しかし、そうでないのなら、不本意ながら、力尽くで退去していただく事になりますが?」

「クハハハハハ! 笑わせてくれるねえ。 俺の魔力ランクはAAAだぞ! 無知とは愚かだな!」

「その言葉は、立ち去るつもりは無いと判断してよろしいので?」

「おお! その通りだ! 序だから、お前の店も滅茶苦茶にしてやるよ!」

すると、その男は客席にデバイスを向けた。

他の客達が悲鳴を上げる。

そして、その男は、躊躇なく魔力弾を放った。

魔力弾はまっすぐに客席へ向かい………

白銀の障壁にぶつかって弾けた。

「な、何っ!?」

その男は驚愕する。

「全く………本当に撃つ馬鹿とは思わなかったわ」

桜が呆れながらそう言った。

次の瞬間、黄土色とオレンジ色のバインドによって、雁字搦めにされる男。

「なっ!?」

「お客様達を狙った事は許せませんね。 覚悟はいいですか?」

「馬鹿なやつだね。 よりにもよって、この翠屋で暴れようとするなんて」

厨房からリニスとアルフが出てきてそう言った。

「親父~、如何する? 燃やすか?」

アギトが男の頭上で火の玉を作りながらそう言い、

「いえいえ、それよりも氷漬けにしてやりましょうよ、とーさま?」

リィンがフリジットダガーを男の周りに浮かべながらそう言った。

「ともだち…………いじめた……………」

久遠が成人モードで、バチバチと電撃を放ちながら威嚇する。

「へ? え? え? え?」

男は、訳が分からないといった表情で、周りを見渡す。

ファリンは、ギンガの傍により、

「大丈夫ですよギンガちゃん」

そう声をかけている。

「さて…………覚悟はいいな?」

俺は少し魔力を放出させて、その男を睨みつける。

少しと言っても、Sランクを超えているが。

「ひっ……ひっ……ひっ………」

男は震える。

「ひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

その悲鳴がきっかけとなり、アギトに燃やされ、リィンに氷漬けにされ、久遠に感電させられている。

黒こげとなったそいつを、

「おらぁっ!!」

魔力を込めた拳で殴り飛ばした。

その男は、入口から外に吹っ飛ぶ。

「…………確かに無知とは愚かだな」

カウンター席に座り、全く動じていなかったレジアスさんがそう呟いた。




男を外に吹っ飛ばした後、御客達を退店させて、俺達はギンガに近寄る。

ギンガは、皮膚が破れて内部の機械が見える右腕を抑えながら俯いていた。

大方、戦闘機人と………いや、普通の人間ではないとばれた事がショックなのだろう。

まあ、だからと言ってそんなことで差別する奴なんて、この翠屋には居ないが。

「大丈夫か? ギンガ」

俺は、ギンガを不安にさせないように優しく語りかける。

「あのっ、ユウさん! ギン姉………ううん。 ギン姉と私は…………!」

スバルが声を上げる。

俺は、全てを聞く前に、

「純粋な人間じゃない…………って言いたいのか?」

そう聞いた。

「…………はい」

スバルは、俯きながらも頷いた。

ティアナも、辛そうな表情をしている。

ギンガも、益々俯く。

だが、

「………で? だから何だ?」

「「「えっ?」」」

俺の言葉に、3人が呆気にとられた声を漏らす。

「心配しなくても、そんな事で差別する奴なんて、この翠屋には居ないわよ」

桜もそう言う。

「桜さん………」

「第一…………」

俺は、そう呟きながらファリンに目配せする。

ファリンは、俺の言いたい事を理解したのか、頷いてギンガ、スバル、ティアナの前に出る。

そして、右手で自分の左手首辺りを握り、数回捻るような仕草をすると、

――キュポン

というような音を立てて、ファリンの『左手』が外れた。

「「「……………え?」」」

3人は一瞬固まった後、声を漏らす。

「ファリンは、戦闘機人以上に人間から離れてるしな」

俺がそう言うと、

「因みに、義手なんてオチではありませんからね~」

ファリンが付け加えるようにそう言った。

「あ……あの、ファリンさんは一体……?」

ギンガが茫然と呟く。

「ファリンは、地球………第97管理外世界の失われた古代技術によって作られた自動人形…………まあ、ミッド風に言えば、完全自立機動人型ロストロギアってとこだな」

厳密には違うかもしれないが、イメージ的にはこっちの方が分かりやすいだろう。

「ファリンさんが…………ロストロギア?」

スバルが信じられないといった表情で呟く。

「まあ、失われた技術で作られたって意味ではね」

桜もそう補足した。

「だ・か・ら! 戦闘機人だからって気にせずに、今まで通り翠屋に来てね♪」

桜は、笑顔でそう言った。

「桜さん…………ユウさん……………」

ギンガは、涙を滲ませながら、俺達を見る。

「…………ありがとう…………ございます……………」

そして、そう呟くと共に、一筋の涙を流した。







あの後、レジアスさんが事後処理の為に人員を呼び、俺達は簡単な事情聴取を受けた。

あと、過剰防衛による説教も。

流石にあれはやりすぎたらしい。

ギンガは病院送り。

スバルとティアナも付き添いで行ってしまった。

あと、入口が壊れてしまったので、今日はもう閉店。

だが、このぐらいなら直ぐに直るらしいので、明日からは通常通り運営出来る筈だ。

俺達が、壊れた入口の片づけをしていると、

「お父さん、ただいま!」

「ユウさん、ただいま」

「父様、ただいま帰りました」

「おとーさん、ただいまだぞ!」

「父よ! 今帰ったぞ!」

子供達が帰ってきた。

「ああ、お帰り。 エリオ、キャロ、星、ライ、夜美」

俺がそう言うと、

「入口が壊れてるんですけど、何かあったんですか?」

キャロがそう尋ねてくる。

「ああ………まあ、ちょっと乱暴な客が来てな」

俺はそう答えておく。

「むっ! 悪い奴だな! 僕がぶっ飛ばしてやる!」

ライが叫ぶ。

「その必要は無いぞ。 俺がぶっ飛ばしといたから」

俺はライにそう言うと、

「ちぇっ!」

おい、何でそんなに残念そうな顔をする。

「父よ! そんなことより、オヤツが食べたいぞ! 準備せい!」

「お前、仮にも父親にそんな言い草は無いだろ!」

いつもの事だが、夜美の言葉に俺は思わず突っ込む。

「夜美、強請るのはいいですが、その前に手洗いとうがいを済ませなければだめですよ」

8歳とは思えない性格だが、三人娘の中ではお前が一番まともだよ、星。

「ふむ、仕方あるまい」

夜美はそう言うと、エリオの腕を掴んだ。

「え? 夜美?」

エリオは困惑する。

「さっさと行くぞ、エリオ。 そして、我と共にお茶をするのだ」

夜美はそう言うと、エリオを引っ張っていこうとする。

すると、

――ガシッ

夜美が掴んでいる腕とは反対側の腕をキャロが掴んで引きとめた。

「エリオ君とお茶をするのは私だよ!」

「ええっ!? キャロ!?」

キャロの言葉に、エリオが驚く。

「ああっ! 2人ともズルイぞ! 僕もエリオとくっ付くぞ!」

そう言いながら、ライがエリオの背中に飛びつく。

「うわっ!? ライ!?」

更に困惑するエリオ。

すると、

「貴方達! 何をしているのですか!? エリオが迷惑していますよ!!」

星が青筋を浮かべながら叫んだ。

俺はそんな子供たちを見て溜息を吐く。

最近気付いたのだが、どうやらこの4人は、エリオに好意を持っているらしい。

その事を少し前に桜に尋ねたのだが、

「今更気付いたの? 結構前から知ってたわよ。 親が親なら子も子ね」

と呆れられた。

そのまま4人は奥へと消えていく。

それを見送った時、

「ただいま!」

ヴィヴィオの声がして振り返る。

そこには、チンクに連れられたヴィヴィオの姿。

「お帰り、ヴィヴィオ」

俺は微笑んでそう言った。

「ヴィヴィオ、お帰り」

桜がそう言うと、

「ただいま! さくらママ!」

ヴィヴィオが嬉しそうにそう言った。

俺はチンクに視線を移し、

「チンク、ヴィヴィオを送ってくれてありがとう」

そうお礼を言った。

「い、いや、ヴィヴィオは私にとっても娘みたいなものだからな。 礼を言われるほどの事ではない」

チンクは頬を染めつつ、照れたように視線を外しながらそう言う。

「それでも、ありがとう」

「ま、まあ、そこまで言うなら、どういたしましてと言っておこう」

チンクは、顔を赤くしたままそう言った。

「ねえねえ!」

すると、ヴィヴィオが何やらせがんで来る。

「ん? 如何したヴィヴィオ?」

俺が尋ねると、

「パパ、ママ、見てて!」

ヴィヴィオはそう言って、ポケットから赤い宝石のような物を取り出す。

デバイスか?

そして、それを上に掲げると、

「セイクリッドソウル! セーットアップ!!」

そう叫んだ。

その瞬間、ヴィヴィオの身体から虹色の魔力光が迸る。

「「へっ?」」

俺と桜は思わず素っ頓狂な声を漏らした。

ヴィヴィオから感じる魔力は、Sランクを超える。

それを感じたリニスが、即座に結界を張ってくれたのには感謝だ。

やがて、その光が収まっていき、

「じゃーん! 見て見て!」

見た目十代後半の聖王の姿となったヴィヴィオが居た。

「「……………………」」

俺と桜は沈黙したまま顔を見合わせ、

――コクリ

と同時に頷きあうと、

――ガシッ

と同時にヴィヴィオの手を取って奥の部屋へと駆け込んだ。

そして、すぐさまスカリエッティに通信を繋げる。

『やあユウ君、ヴィヴィオへのプレゼントは気に入ってくれたかな?』

スカリエッティはそんな事を言ってくる。

「お………」

俺が叫ぼうとした瞬間、

「スカリエッティ! あんたまさか、ヴィヴィオをレリックウェポンにしたんじゃないでしょうね!!??」

それより早く桜が叫んだ。

すると、

『はっはっは! そんな命知らずな事するわけないじゃないか。 ヴィヴィオには、レリックを元に作りだしたデバイスをあげて、一時的に聖王の力を引き出せるようにしただけだよ』

スカリエッティはそう言った。

「何でそんな事?」

俺が尋ねると、

『何、万一の為の保険だよ。 何かと君達は事件に巻き込まれやすいみたいだからねえ、必要最低限の自衛のための力さ』

「「…………………」」

それを聞いて俺達は押し黙る。

否定できないからだ。

『まあ、起動には君達の許可が必要なように設定出来るようにしている。 如何するかは、君達しだいだ』

「…………そうか、わかった」

俺はそう頷く。

が、

「なら、せめて説明だけはして欲しかったな。 流石に吃驚したぞ」

『ははは! まあ、それが目的だったからね。 驚いてくれて何よりだ』

「おい!」

『おっと、娘達が呼んでいる。 もう切らねば。 では、お休み』

そう言って、通信が一方的に切れた。

「………はあ」

俺は溜息を吐く。

「うゆ? 如何したのパパ?」

ヴィヴィオが首を傾げる。

「何でもないよ」

俺はヴィヴィオの頭を撫でる。

「? えへへ、パパッ!」

それが嬉しかったのか、ヴィヴィオが抱きついてきた。

「おわっ!? ヴィヴィオ!?」

改めて言うが、今のヴィヴィオは聖王モード。

つまりは十代後半の姿だ。

まあ、何というか女性らしいスタイルの為に、当たるものが当たってしまう。

「ヴィ、ヴィヴィオ! その姿で抱きつくのは止めなさい!!」

それに気付いたのか、桜が叫んでヴィヴィオを引きはがす。

「うゆ? 何で?」

その意味を分かってないヴィヴィオは首を傾げる。

「何でも!」

流石に説明するにはヴィヴィオは幼いために強引に引きはがしにかかる。

「やっ!」

だが、逆にその行動が更にヴィヴィオが俺に抱きつく強さを強めてしまい、胸の膨らみが俺に押しつけられる。

「うぐっ……………」

ヴィヴィオは俺の娘、ヴィヴィオは俺の娘、ヴィヴィオは俺の娘。

そう俺は心の中で唱えつつ、煩悩を抑え込む。

その光景は、暫く続くのだった。









あとがき

第四十八話の完成。

また一週間遅れてしまった。

夏バテなのか、創作意欲が湧かなかったんですよね。

申し訳ない。

さて、今回は日常編。

とか言いつつ、犯罪者の乱入が入りました。

しかし、ミッド一の魔導師の巣窟に入ったものは無事で帰れるはずがありません。

子供たちのレベルと、ヴィヴィオの聖王モードが出ました。

キャロ、星、ライ、夜美は、エリオにぞっこんです。

さて、この先どうなるのか?

次回はStSの準備編になるかと思います。

やっとStSに入れます。

思った以上に空白期が長くなったなぁ………

では、次も頑張ります。






[15302] 第四十九話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122
Date: 2011/07/25 21:26

第四十九話 起動六課 準備編






【Side なのは】





闇の書事件から9年。

今の私は管理局の本局武装隊の二等空尉の地位にいる。

それで、周りからはかのエースオブエースの副官とそれなりに騒がれてはいるんだけど………

その肝心のエースオブエースは、

「何をしているの高町二等空尉! この私の訓練の最中に考え事をするなど!」

そう言って、複数の魔力弾を容赦なく放ってくる女性。

この人こそ現エースオブエースと騒がれているローザ・レイシス一等空尉。

薄い桃色の髪のショートカットで、見た目は結構美人。

私は、今この人の訓練を受けてるんだけど、はっきり言って得るものは何もなし。

この人は、自分の魔力の多さを使った弾幕的な戦い方しかしないんだもん。

レイシス一尉の魔力ランクはS+。

簡単には魔力切れは起こさないから、魔力弾をばら撒いて敵味方関係なく殲滅する。

現場でそんなことされちゃ適わないから、私が攻撃前に民間人や要救助者の救助をしてたから、特に犠牲は無かったんだけど。

で、私がこの人の下に付かされてからこの人のフォローばっかりしてたせいで、いつの間にかレイシス一尉がエースオブエースとして騒がれるようになった。

しかも、レイシス一尉も、それを全部自分だけの力と思い込んでるから始末が悪い。

プライドも高いし、意見すると煩そうだし、私は別に管理局の地位には興味無いから何も言わないんだけど。

そんな事を考えながら私は雨のように降ってくる魔力弾を避けていく。

はっきり言って退屈。

ユウ君のグレイスクロスフリーザーみたいに誘導弾じゃないし、フェイトちゃんのプラズマシュートみたいに爆発するわけでもないから、普通にシールド張って突っ込んだり、高速移動魔法で後ろに回り込めば、普通に勝てそう。

でも、そうすると後でめんどくさそうだから、いつも通り回避が追いつかなくなった振りをして、負ける事にした。





訓練とは名ばかりの、レイシス一尉の憂さ晴らしを終えると、

「高町二尉! 応接室で八神二佐がお待ちです!」

そう報告が来た。

はやてちゃんが?

じゃあ、いよいよ………

私は期待に胸を膨らませて応接室へ向かう。

私が応接室へ入ると、

「待っとったで、高町 なのは二等空尉」

そう言ってくるはやてちゃん。

「お待たせしました、八神 はやて二等陸佐!」

私は敬礼して応える。

「簡潔に言うで? 高町 なのは二等空尉、貴官を間もなく発足する実験部隊、遺失物管理部機動六課の小隊長に任命したい」

はやてちゃんがそう言ってくる。

でも、当然私の答えは決まっていた。

「高町 なのは二等空尉。 遺失物管理部機動六課、小隊長の任、謹んで拝命いたします」

そう答える私に、

「クスッ!」

はやてちゃんは微笑む。

つられて私も微笑を零した。

「やっぱり私らにこういう事は似合わんなぁ」

はやてちゃんはそう言う。

「仕方ないよ。 一応管理局員なんだし。 それはそうと、遅いよはやてちゃん」

「ごめんなぁ。 意外と準備に手間取ってしまってなぁ」

「あの自己中エースを毎日相手してる私の身にもなってよぉ」

軽口を言いあう私達。

「それで、他のメンバーは決まっているの?」

「うん。 とりあえず、フォワード陣では、身内以外に3人入れる予定や。 で、その内2人は新人やから、教導はなのはちゃんに任せるで?」

「うん! 今から楽しみ!」

はやてちゃんの言葉に、私はそう言って笑った。





【Side Out】







さて、今日も喫茶翠屋を開いているが、入口には重大な張り紙がしてあった。

それは、もうすぐ約半年~1年間翠屋を休業するという張り紙である。

機動六課の隊舎で働く事になっているので、そのための措置だ。

当然ながら子供達もそっちに移るのだが、はやてよ、無茶もほどほどにしとけと言いたくなる。

隊舎は託児所じゃないぞ。

で、そんな休業間近の翠屋に現在来ているのは、

「もうすぐ休業なんですね。 残念だなぁ」

「ここのお菓子は気に入っていたんですけど」

スバルとティアナである。

だが、心配するな。

お前らは多分毎日食べるだろうから。

「そう言えば、お前らってもうすぐ魔導師ランクの昇進試験だったな?」

俺はそう切り出す。

「はい! でも、私とティアなら合格間違い無しです!」

「調子に乗るな!」

ティアナにはたかれるスバル。

俺はそれを見て、

「う~ん。 ティアナの場合、自分が何かミスで怪我した時とかに素直になれなくて強がりでスバルにだけ合格しろとか言いそうで、それが原因で口論になって時間使ったり…………」

ティアナがピクリとなる。

「スバルの場合、時間ギリギリで後先考えずに全力疾走して止まる時の事を考慮しなかったりとかありそうだよなぁ…………」

スバルがギクリと震えた。

「あ、あはは………あり得そうだったかも…………」

スバルが苦笑する。

「まあ、2人はコンビなんだから、お互いを信じて力を合わせれば大丈夫さ」

俺はそう言っておく。

「「はい! ありがとうございます!」」

2人はそろって礼を言った。







【Side アリサ】





先日、はやてから機動六課始動の知らせが来た。

遂にこの時が来たわね。

私とすずかとアリシアの約8年分の血と汗と涙の結晶を世に出す時が!

そう意気込む私の視線の先には、卵のような形をした3つの物体。

これこそ私達が開発した一般人でも使えるデバイス。

その名も『Magilink Elementary』。

略して『ME』。

『マギメンタル』って略すのもありかしら?

魔力を溜めておけるカートリッジシステムや、魔力を掻き集める収束砲のメカニズムを徹底的に解明して組み込んだ。

もちろん失敗の連続だったわ。

集めた魔力を留めておけなかったり、集め過ぎて許容量の限界を超えて爆発したり。

集める事が上手くいったと思ったら、今度は上手く放出出来なかったし。

今思い返しても涙が出るわ。

当然徹夜する事なんて何度もあった。

夜更かしは肌に悪いから気にしてたんだけど…………

でも、その甲斐あって、満足いく物が完成した。

さて、お披露目の時には皆を驚かせてあげるとしますか。





【Side Out】





【Side ティーダ】




私は今、1枚の命令書に目を通していた。

内容は、今度発足する実験部隊の小隊の副隊長に自分を任命したいという内容だった。

私は、それを見た時信じられなかった。

局の上官の誰もが自分を見放し、自分にはもう昇進の機会は無いとまで思っていたのだから。

妹のティアナは、そんな上官を見返すために私が叶えられなかった執務官の夢を代わりに叶えると言って日々努力している。

だが、まだ自分で夢を叶えるチャンスが残っているのなら………

ほんの僅かでも道が残されているのなら…………

私はその道を行きたい。

私はその命令書を見つめながら、拳を握りしめた。








あとがき



第四十九話の完成。

でも短い。

あんまり話を思いつかなかった。

何気にエースオブエースが出てましたが、そう呼ばれてるのはなのはや他の部下が尻拭いしてるお陰です。

一般人が使えるデバイスの名前も出ました。

デジアド02みた人は一発で分かったでしょうが、元ネタはデジメンタルです。

ともかく、次回からアニメの第一話に入っていきます。

では、次も頑張ります。






[15302] 第五十話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122
Date: 2011/09/03 21:46
第五十話 空への翼




【Side スバル】




小さい頃の私は、本当に弱くて泣き虫で、悲しい事や辛い事に、いつも蹲って。

ただ、泣くことしか出来なくて…………

空港火災に巻き込まれた時も、ただ泣いて、彷徨って、助けを請うことしか出来なくて。

でも、そんな私を助けてくれたのが、優しい桜色の星の光と、あったかい虹色の光。

炎の中から助け出してもらって、連れ出してもらった、広い夜空。

冷たい風が優しくて、抱きしめてくれた手が、温かくて。

助けてくれたあの人は、強くて、優しくて、カッコ良くて。

泣いてばかりで、何も出来ない自分が、情けなくて。

私はあの時、生まれて初めて、心から思ったんだ。

泣いてるだけなのも、何も出来ないのも、もう嫌だって。

“強くなるんだ”って。






私は、私が変わる切っ掛けとなったあの火災を思い出しながら集中している。

そして、私は目を開き、

「はっ! やぁっ!」

これから始まる試験に対し、気合い十分でシャドーを始めた。

そうやってシャドーを続けていると、

「スバル、あんまり暴れてると、試験中にそのオンボロローラーが逝っちゃうわよ」

コンビのティアが不吉な事を言ってきた。

「うぇ~。 ティア~! やな事言わないで! ちゃんと油も注してきた!」

そんな事を言いながら、ストレッチやデバイスの確認をしていると、試験の開始時間になりモニターが開いた。

『おはよう。 さて、本日の魔導師試験の受験者2名、揃っているか?』

「「はい!」」

私とティアは返事をする。

モニターに映ったのは、翠屋の3大マスコット的存在のリィンちゃんによく似た女性。

リィンちゃんと違う所は、瞳が紅いってところかな。

因みに、3大マスコットの残りの2人は、当然アギトちゃんと久遠ちゃんの事。

序にティアは久遠ちゃんがお気に入りみたい。

顔には出さないように努力してるみたいだけど。

『では確認する。 時空管理局 陸士386部隊に所属のスバル・ナカジマ二等陸士………』

「はい!」

名前を呼ばれたので返事をする。

『ティアナ・ランスター二等陸士』

「はい!」

ティアも返事をした。

『保有している魔導師ランクは陸戦Cランク。本日受験するのは、陸戦魔導師Bランクへの昇格試験で、間違いないな?』

「はい!」

「間違いありません!」

『よろしい。 本日の試験官を務めるのは、私、リインフォース空曹長だ。よろしく頼む』

試験官、リインフォース空曹長が敬礼をしながらそう言った。

「「よろしくお願いします!」」

私達は答礼を返してコースの説明を受けた。




コースの説明を終えると、

『以上だが、何か質問は?』

リインフォース曹長がそう聞いてきた。

「え、え~っと………」

私は少し迷いながらティアを見た。

すると、

「ありません!」

ティアはそう迷いなく返した。

それを見た私も迷いが無くなり、

「ありません!」

そう返した。

『では、間もなくスタートだ。 健闘を祈る』

そう言い残してモニターが閉じ、代わりにカウントが表示される。

「レディー…………」

カウントが減り、ゼロになった瞬間、

「「ゴー!!」」

私達は駆けだした。






【Side Out】







突然だが、俺はスバルとティアナの試験会場に来ていた。

理由は、スバルの事だ。

アニメでは、空港火災の時になのはがスバルの目の前でディバインバスターを使った為に、スバルもディバインバスターを覚えたのだろう。

だが、この世界では俺が介入したために、なのははディバインバスターを使っていない。

そうなると、スバルはディバインバスターを覚えていなくて、最後の中距離攻撃スフィアを倒す事が出来ない可能性が出てきたのだ。

「はぁ………我ながら、後先考えずに行動したもんだな…………」

俺は溜め息をつきながらそう呟く。

「あら? アンタが後先考えて行動した事なんてあったけ?」

傍にいた桜がそう言ってきた。

その言葉に、俺はうっとなる。

実際、今まで考えて行動するようにしようとしていたにはしていたが、いざとなると、何も考えずに行動してしまう。

ジュエルシードの時叱り、闇の書に吸収された時叱り、ブラックウォーグレイモンの時叱り。

反論する余地が全くない。

「で? どうするの? もしあの2人がスフィアに負けそうになったら?」

桜がそう聞いてくる。

「まあ、ばれない様に手助けするか………はやてに口添えして、無理矢理合格にさせるか………」

とりあえず、あの2人ははやての計画の中に入っているので、落ちると困るのだ。

「まあ、落ちると決まった訳じゃないし、とりあえず様子を見るさ」

俺は、試験を開始したスバルとティアナの方に向き直った。






2人は、アニメと同じように順調にターゲットをクリアしていく。

そして、やはりというか最終関門一歩手前で、ティアナの流れ弾がサーチャーに当たり、モニターが映らなくなった。

「ここまではアニメと同じね。 さて、どうなる事やら?」

桜はそう呟いた。







【Side スバル】




「ゴメンティア………油断してた」

足を痛めて蹲るティアに私は謝る。

「私の不注意よ。 アンタに謝られると、返ってムカつくわ」

ティアは強がってそう言う。

「………走るのは無理そうね………最終関門は抜けられない」

「ティア」

ティアの言葉に、私は思わずティアの名を呟く。

「私が離れた位置からサポートするわ。 そうすれば、あんた1人ならゴールできる」

「ティア!」

私は思わず叫んでしまった。

「うっさい! 次の受験の時は、私1人で受けるっつってんのよ!」

「次って……半年後だよ!?」

「迷惑な足手まといがいなくなれば、私はその方が気楽なのよ! わかったらさっさと………ッ!」

ティアは、痛む足を我慢して立ち上がる。

「ほら! 早く!」

動かない私に向かって、そう怒鳴ってくるティア。

でも、私がティアを置いてけるわけ無いよ。

「私、前に言ったよね? 弱くて、情けなくて、誰かに助けてもらいっぱなしの自分が嫌だったから、管理局の陸士部隊に入ったって…………」

私は、私の思いをティアに伝える。

「魔導師を目指して、魔法とシューティングアーツを習って、人助けの仕事に就いた………」

「知ってるわよ。 聞きたくもないのに、何度も聞かされたんだから」

「ティアとはずっとコンビだったから、ティアがどんな夢を見てるか、魔導師ランクのアップと昇進に、どれくらい一生懸命かも、よく知ってる! だから! こんな所で! 私の目の前で! ティアの夢をちょっとでも躓かせるのなんて嫌だ! 1人で行くなんて! 絶対嫌だ!!」

私は思いをぶちまける。

すると、ティアは押し黙った。

あれ?

ここで怒鳴り返されるかと思ったんだけど…………

「…………作戦は?」

「えっ?」

ティアの言葉に思わず聞き返す。

「作戦よ! 2人でゴールする作戦! そこまで言うなら有るんでしょうね!?」

ティアはそう叫んでくる。

「う、うん………でも、ティア、如何して………?」

「………思い出したのよ、ユウさんの言葉」

「ユウさんの………あっ!」

ティアの言葉に、私はピンと来た。

今の状況、まさしくユウさんが言ってた状況そのもの。

「それで、如何するの?」

ティアがそう聞いてくる。

「あ、うん。 私の奥の手を使うよ」

私はそう答えた。

「アンタの奥の手………って、まさか『アレ』を使う気!?」

ティアは、驚いた顔で確認してきた。

「うん。 『アレ』なら離れた所からでも届くし………」

「馬鹿言ってんじゃないわよ! 確かに『アレ』は威力だけならAAランクを超えるし中距離程度なら届く! でも、『アレ』を使ったら、下手すればそれだけでアンタは不合格を貰うわよ!」

「あはは………確かに『アレ』はイメージの悪い魔法だけど、でも、何もせずに不合格になるぐらいなら、全力でやって不合格になるよ」

私はそうティアに笑いかける。

「はぁ………分かったわ。 意外とアンタ頑固だし」

ティアは溜息をついてそう呟く。

「じゃあ、弾道制御は私がやるわ」

と、続けて言われた言葉に、私は思わず反応した。

「テ、ティア!? そんなことしたらティアも不合格に!」

「馬鹿ね。 クロスレンジで当てるのが精一杯のアンタに、中距離射撃が出来るわけないでしょ?」

「うっ!」

更に言われたティアの言葉に、私は出鼻を挫かれた。

「それに、ユウさんも言ってたじゃない。 私達はコンビよ。 お互いを信じて力を合わせろって」

と、続けて言われたティアの言葉に、私は嬉しさがこみ上げ、

「うん!」

と笑顔で頷いた。





「フェイクシルエット……発動!」

ティアは自分の幻影を作りだし、ゴールに向けて走らせる。

その幻影が走りだして少しすると、近くのビルから魔力弾が飛んできて幻影に直撃。

幻影は消えさる。

ティアはもう1体幻影を作りだし、再びゴールに向かって走らせる。

再び魔力弾が飛んでくるけど、ティアは幻影を操作して、簡単にはやられない。

数発魔力弾が来ると、避けきれずに直撃した。

すると、

「よし! 位置は把握できた」

ティアはシルエットを解除して立ち上がり、私に向き直る。

「やれるわね? スバル」

「もっちろん!」

私は頷いて、ターゲットがいるビルが狙える所に移動する。

ティアが私の後ろで備えた。

「カートリッジロード!!」

私は、リボルバーナックルのカートリッジを3発ロードする。

「はぁあああああああっ!!」

私は魔力を集中させ、1発の魔力弾を作り上げる。

本来なら、砲撃で放つぐらいの魔力を無理矢理凝縮させ、1発の魔力弾にしている。

これは、4年前の空港火災の時、私を助けてくれた、なのはさんと同じ、もう一つの憧れ。

「一撃! 必倒ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

私は右腕を振りかぶり、拳を握りしめる。

私の後ろでは、ティアが弾道制御の為にアンカーガンを構えていた。

その時、私の魔力に反応したのか、ビルから魔力弾が飛んでくる。

でも、そんな事は関係ない。

「ガルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥル!」

私は振りかぶった拳を、作りだした魔力弾に向け、

「「キャノン!!」」

一気に繰り出す。

殴りだされた魔力弾は、ティアの補助もあり、一直線にターゲットのいるビルに向かって突き進む。

途中、放たれた魔力弾と正面からぶつかるけど、私達のガルルキャノンは簡単に撃ち破ってビルへと直進した。

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

私が叫んだ瞬間、魔力弾はビルの中に突っ込み、

――ドゴォォォォォォォン!

爆発した。

「ターゲット、破壊確認! 残り時間…………まだ間に合う! スバル!」

「うん!」

私は、ティアを背負って走りだす。

少し走ると、ゴールが見えてきた。

「ティア! あと何秒!?」

「あと16秒! まだ間に合う!」

ティアはそう言うと、ゴール前の最後のターゲットを撃ち抜く。

よし、後は駆け抜けるだけ!

私はそう思って全力疾走しようとした時、ふとユウさんの言葉が頭を過った。

『スバルの場合、時間ギリギリで後先考えずに全力疾走して止まる時の事を考慮しなかったりとかありそうだよなぁ…………』

それを思い出した時、

「カートリッジ! 一発残してフルロード!!」

私は加速する。

グングンスピードを上げる私に、

「ちょっとスバル! 止まる時の事考えてるんでしょうね!?」

ティアがそう言ってくる。

「大丈夫! カートリッジの最後の一発で、ウイングロード!!」

魔力の道を作りだす私の固有スキルウイングロード。

私はそれをゴールまで伸ばし、ゴールを過ぎた所で急上昇させた。

「なるほど、考えたわね」

それだけで納得するティア。

流石。

私達は、時間ギリギリでゴールを駆け抜けた。

私は、そのままウイングロードを駆け上がりながらブレーキをかける。

よし、上手くいった。

そのまま地上に降りる私。

すると、空から黒い翼を生やしたリインフォース曹長が降りてきた。

「ふむ、とりあえず試験は終了だ。 ご苦労だったな」

リインフォース曹長は、そう労いの言葉をかけてくる。

その時、

「ふふっ、どうやら無事に終わったようだね。 2人ともお疲れ様」

そう声がして見上げると、そこには憧れのなのはさんの姿。

「リインフォースもお疲れ様」

なのはさんはそう言って地上に降りてバリアジャケットを解除する。

「まあ、細かい事は後回しにして、ランスター二等陸士」

「あ、は、はい!」

呼ばれたティアは、慌てて返事をする。

「怪我は足だね? 治療するから、ブーツ脱いで」

「いや、治療なら私がやろう」

そう言って前に出るリインフォース曹長。

「あ、えと、すみません」

申し訳なさそうな顔をしながら謝るティア。

「………なのは……さん……」

思わず呟く私。

「うん?」

その呟きが耳に届いたのか、私の方を向くなのはさん。

「あっ! いえ、あの! 高町教導官………二等空尉!」

慌てて言い直す私。

「なのはさんで良いよ。 皆そう呼ぶから。 4年振りかな? 背伸びたね、スバル」

その言葉を聞いた途端、私は思わず目に涙が滲んだ。

覚えていてくれた。

それがとても嬉しい。

「また会えて嬉しいよ」

なのはさんはそう微笑んで私の頭に手を乗せてくる。

そこで限界だった。

私は流れる涙を我慢する事が出来ずに、泣いてしまった。





【Side Out】






「…………………」

俺は無言だった。

「あらまあ、これは予想外ね」

そう言う桜。

それは俺も同じだ。

まさか、ガルルキャノンを撃つとは欠片も思ってなかった。

「とりあえず、スバルにとっては、あんたも憧れの一つみたいね」

桜はそう言う。

「…………まあいいや。 とりあえず、俺は翠屋に戻る。 お前は…………」

「私はこの後なのは達に呼ばれてるからね。 ちゃんとスバルとティアナも強くしないと」

そう言って立ち去る桜。

やれやれ、どうなる事やら。

俺はそう考えながら帰路についた。






あとがき


第五十話の完成。

やっとStS編に入りました。

でもって、大方の予想通り、スバルがガルルキャノンぶっ放しました。

ディバインバスターと比べて、圧縮されているため威力が高く射程が長くなっております。

ただし、スバル単独で放つ場合、命中させられる範囲は10mが精々です。

さて、アニメと流れが若干違いましたが、結果はどうなるのか?

次も頑張ります。






[15302] 第五十一話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122
Date: 2011/10/01 16:20
第五十一話 機動六課






【Side ティアナ】




私達は、八神二等陸佐とテスタロッサ執務官に応接室に案内され、リインフォース空曹長を含めた3人から新部隊の設立について話を聞いていた。

それは、4年前の空港火災を切っ掛けに、八神二等陸佐が事件に対して即座に動ける少数精鋭のエキスパート部隊を持ちたいというものだった。

「・・・・・とまあ、そんな経緯があって、八神二佐は新部隊設立のために奔走」

「4年ほどかかって、やっとそのスタートを切れた、というわけや」

「部隊名は、時空管理局本局、遺失物管理部、機動六課だ」

「登録は陸士部隊。フォワード陣は陸戦魔導師が主体で、特定遺失物の捜査と、保守管理が主な任務や」

テスタロッサ執務官、八神二佐、リインフォース曹長が説明する。

「遺失物・・・・ロストロギアですね?」

私は確認する。

「そう」

八神二佐が頷き、

「でも、広域捜査は一課から五課までが担当するから、うちは対策専門」

テスタロッサ執務官が捕捉する。

「そうですか」

因みに、その途中、スバルから「ロストロギアってなんだっけ?」というバカげた質問が念話でされて来たので黙らせておいた。

「で、スバル・ナカジマ二等陸士、ティアナ・ランスター二等陸士」

「「はい!」」

「私は、2人を機動六課のフォワードとして迎えたいって考えてる。厳しい仕事にはなるやろうけど、濃い経験は積めると思うし、昇進機会も多くなる。どないやろ?」

八神二佐は、真剣な表情で問いかける。

「「ああ・・・・えと・・・・」」

私達は困惑する。

そんな私達にテスタロッサ執務官が言った。

「スバルは高町教導官に魔法戦を直接教われるし・・・・・」

「はい・・・・」

「執務官志望のティアナには、私でよければ、アドバイスとか出来ると思うんだ」

「あ・・・いえ、とんでもない!・・・・と言いますか、恐縮です・・・・・と言いますか・・・・」

私は困惑を続ける。

すると、

「後な、ティアナ二等陸士にはお兄さんがおるやろ?」

いきなりそんな事を八神二佐が聞いてきた。

「えっ……は、はい」

私は一瞬驚くが、慌てて頷く。

「そのティアナ二等陸士のお兄さん、ティーダ・ランスター三等空尉もな、機動六課の小隊の副隊長の任を要請して、それを受領してもらっとる」

私はその言葉を聞いて驚いた。

「兄さんを………副隊長に………?」

私は思わず呟く。

あの『血塗られた聖王』に助けられたと聞いて以来、兄さんの昇進の機会はほぼ絶望的と言っていいくらい断たれた。

「な………何で………?」

私は思わずそう聞いてしまった。

すると八神二佐は、何でそんな事を聞くのかと言わんばかりな表情をして、

「私から言わせてみれば、何であんな優秀な局員が未だ三等空尉の地位で埋もれとるのかが理解できんわ。 万年人手不足の管理局で、優秀な人材を活用せんなんて、彼の上司はアホやとしか言えんな」

そう溜息をつきながら、兄さんの上司を扱き下ろす八神二佐。

私は、兄さんを正しく評価してくれた事に泣きそうになった。

「ありがとう………ございます」

私の口からは、自然と感謝の言葉が漏れる。

「別に礼を言われるような事やないで。 優秀な人材を相応しい所で活用する。 当然の事や」

八神二佐はそう言う。

すると、

「取り込み中かな?」

高町二等空尉が近付いてきた。

「平気やよ」

八神二佐がそう言って、席を詰めてスペースを空ける。

高町二尉はそこに座った。

「とりあえず、試験の結果ね」

高町二尉の言葉に、私達は気を引き締める。

でも、内心は不合格である事を覚悟していた。

理由は、大犯罪者である『血塗られた聖王』の魔法、ガルルキャノンを使ったから。

私もスバルも、犯罪者とはいえ『血塗られた聖王』に嫌悪感は持っていない。

スバルは、高町二尉と並んで命の恩人という話だし母親であるクイントさんも救われたという噂もある。

私にしても、兄さんの命の恩人だから。

だから、私もガルルキャノンを使う事自体に反対は無かった。

けど、他の局員にしてみれば、イメージは最悪だろう。

「じゃあ、初めに試験の合否だけど………」

高町二尉の言葉に合わせて、私もスバルも気が重くなる。

「「………はい」」

思わず気落ちする声が重なる私達。

そして、高町二尉の口から結果の報告が………

「………合格!」

「「…………はい………えっ?」」

不合格を覚悟で返事をしたけど、改めて高町二尉の言葉を思い直して声を漏らした。

「如何したの? 合格したのが信じられないって顔してるね?」

高町二尉が不思議そうにそう言ってくる。

「2人とも、技術は特に問題なし。 危険行為も少なかったし、Bランクには十分だよ」

「えっ? で、でも私達………」

「そ、その…………」

私達は口籠る。

「もしかして、『血塗られた聖王』と同じ魔法を使ったから、何て思っとるんか?」

八神二佐が的確に突いてくる。

「「は、はい………」」

私達は頷いた。

「心配せんでも、私らはそんな事で不合格にしたりはせえへんよ。 むしろ歓迎やな

八神二佐はそう言ってくる。

最後の言葉は聞き取れなかったけど。

「で、如何する? この話を受けるか否か」

「えっと………その………」

八神二佐の言葉に、私とスバルは顔を見合わせる。

「自分の将来に関わる事やで、ゆっくり考えてや………って言いたい所やけど、準備があるから今日中には決めて欲しい」

八神二佐はそう言った。

「…………午後まで考えさせて下さい」

私は、とりあえずそう答えた。




結局、私達はその話を受ける事にした。

正直、私は迷ってた。

私みたいな凡人が、精鋭部隊の中でやっていけるか不安だった。

でも、スバルの言葉で決心した。

スバルの言葉が切っ掛けになったのは少し癪だけど。

私達は、機動六課フォワードの任を受ける事を八神二佐に伝えた。

すると、八神二佐はにっこり笑って、

「そか。 なら、スバル・ナカジマ二等陸士、ティアナ・ランスター二等陸士。 機動六課は2人を歓迎するで」

「「はい! よろしくお願いします!」」

私達は、起立して敬礼する。

「こちらこそ。 でな、機動六課に入るにあたって、ちょっとした課題があるんよ」

「課題……ですか?」

続けて言われた八神二佐の言葉に私は声を漏らす。

「そや。 入ってきていいで!」

八神二佐は私の言葉に頷くと、後ろの扉に声をかける。

すると、扉が開き、高町二尉そっくりの女性が………って、

「「さ、桜さん!?」」

私達は、驚きの声を上げる。

なんで、高町二尉の双子の姉で翠屋のパティシエの桜さんがこんな所にいるの!?

「ふふっ、こんにちはスバル、ティアナ」

桜さんは微笑んで私達に挨拶する。

「「あ、こ、こんにちは」」

桜さんに釣られて挨拶する私達。

「って、何で桜さんがここに!?」

スバルが疑問の声を上げる。

「それはもちろん、貴方達の課題を出すためよ」

「この課題は、桜ちゃんしか出せんからなぁ」

桜さんと八神二佐がそう言う。

「その……課題というのは一体……?」

私が尋ねると、

「簡単に言えば、これから2人には魔力向上ギプスを付けてもらう」

八神二佐が答えた。

「魔力向上ギプス………ですか? 魔力負荷をかけて、魔力の総量を増やす………」

私がそう尋ねると、

「まあ、似たようなもんやな」

八神二佐はそう言う。

でも、正直何で今更って考えてしまう。

魔力向上ギプスは結構一般的で、魔法学校の初等科でも使われている。

当然私も使った事はあるけど、増えるには増えるけどそこまで劇的に増えるってわけでもない。

私がそう考えていると、

「初めに言っておくけど、桜ちゃんのは一般的に使われとる魔力向上ギプスみたいな甘っちょろいものじゃないで」

私達の雰囲気を悟ったように八神二佐が言った。

「「えっ?」」

私達は思わず声を漏らす。

「まあ、百聞は一見に如かず。 その身を持って体験しよか。 桜ちゃん特製『トレーニングバインド』をな」

八神二佐がそう言うと桜さんが前に出てきて、

「じゃあ、先ずはスバルから。 両手出して」

そう言うと、スバルは言われたとおりに両手を出す。

すると、桜さんは何やら呪文を唱え、右の人差し指に環状魔法陣が発生し指先に白銀の魔力光が輝く。

この前も見たけど、やっぱり桜さんの魔力光って白銀なんだ。

その指先をスバルの両手の手首辺りで一周させると、白銀の魔力光のバインドのような物が発生し、

「うわっ!?」

突然スバルの両手が手錠をかけられたみたいに引き合い、重い物をいきなり持たされたかのように下がった。

「何これ!? 重ッ!?」

スバルは驚いている。

すると、その間に桜さんはしゃがみ込み、スバルの両足首に手首と同じようにバインドらしきものをかけた。

その瞬間、足も手錠をかけられたように引き合い、

「わわわわっ!?」

突然の事にバランスを崩したスバルは派手に転んだ。

「大丈夫? スバル?」

まるでこうなる事が初めから分かっていたかのようにスバルに声をかける高町二尉。

「じゃあ、次はティアナね」

私は覚悟して両手を出す。

桜さんはスバルと同じように私の手首にバインドをかける。

その瞬間、

「くっ!?」

予想以上の重さが私を襲った。

桜さんは、私の足にもバインドをかける。

その瞬間、引きあう両足。

「ッ!」

バランスが崩れたけど、なんとか転倒は防いだ。

横を見れば、高町二尉に手を貸してもらって、スバルが立ち上がっていた。

そして、

「んぎぎぎぎぎ…………」

両手を広げようとしているのか、力を加えている。

でも、バインドは広がるどころかビクともしない。

私も力を加えてみるけど、全然ビクともしなかった。

「何これ? ビクともしない………」

力を加える事に疲れたのか、軽く息をつきながらそう言うスバル。

「筋力だけじゃ無理よ。 全身の魔力をフルに使って」

桜さんにそう言われ、私達は魔力を高める。

全力の八割以上を使って、ようやくバインドが開き始める。

なんとか両手足を肩幅まで開いた。

「こ、こんなフルパワー近くで、いつもいろっていうんですか!?」

私は思わず問いかけた。

「強くなりたかったらね」

桜さんが言った。

「そのバインドを付けて、私の訓練をちゃんとこなしていけば、半年後にSランクは保証するよ」

高町二尉の言葉に私は絶句する。

つい今日Bランクになったばかりの私達が、半年後にはSランクと言われたのだ。

驚かない方がおかしい。

っていうか、信じられない。

「まあ、言葉だけじゃ信じられないだろうけど、騙されたと思って頑張ってみて」

「序に言っとくけどな。 既にティーダ・ランスター三等空尉にも、トレーニングバンドを付けとる」

「彼なら、半年後にはSSランク行くんじゃないかしら?」

そういえば、最近の兄さんは一挙一動が必死だった気が………

これを付けてたのなら納得だわ。

「さて、さっき言った課題やけど、本格的に機動六課が始動するまでに、まだ少し時間がある。 その時までに、日常生活に支障がないぐらいに動けるようになるのが私らから出す課題や」

八神二佐がそう言った。

私は、手にかかっているバインドを見る。

流石に半年でSランクは私達のやる気を出すためのブラフだろうけど、確かにこれに慣れれば、確実なランクアップが見込めると思う。

「わかりました!」

私は返事をする。

「わ、わかりました!」

スバルも少し遅れて慌てたように返事をした。

「そんなら、これにて解散。 機動六課で会える日を楽しみにしとるで」

八神二佐はそう言う。

「「はい!」」

私達は返事をして敬礼しようとした。

でも、手が重くてそれはぎこちないものになってしまった。

「次に会うときは、ちゃんと敬礼できるようにはなっとこうな?」

八神二佐は、微笑みながら茶化すように言ってくる。

「「は、はい…………」」

私達は思わず苦笑してしまった。

機動六課………

ここなら、私でも強くなれるかもしれない。

私は、改めて八神二佐に感謝した。










あとがき

第五十一話の完成。

オールティアナサイドになってしまった。

しかもユウ君出番なし。

もしかして初めて?

スバル、ティアナ、そしてティーダにパワーアップフラグが立ちました。

さて、どんな魔改造になる事やら。

次はいよいよマギメンタルの出番です。

では、次も頑張ります。






[15302] 第五十二話
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12
Date: 2011/10/01 16:27
第五十二話 集結





【Side スバル】



昇進試験から時が経ち、ついに機動六課始動の日が来た。

私達は、支給された制服を着てロビーに集まっている。

トレーニングバインドは、何とか日常生活を問題なく過ごせるレベルには慣れた。

ティアも同じぐらい。

私達がロビーで待っていると、どんどん他の隊員たちが集まってくる。

すると、

「ちょっといいかしら?」

金髪の女の人が話しかけてきた。

「はい?」

私がその人に向き直ると、

「あなた達………フォワードの子達よね?」

その女の人は、確認するように問いかけてきた。

「はい、そうですが………」

ティアが答えると、その女の人は笑顔になり、

「よかった、見つけたわ。 すずか! アリシア! フォワードの子を見つけたわよ!」

そう言って、周りに呼びかける女の人。

すると、その呼び声に応えて、紫の髪の女の人と金髪の女の人が………って、

「「フェ、フェイト執務官!?」」

そのこちらに近づいてくる2人の女性の内、金髪の女の人は髪型が前と違ってポニーテールだけど、間違いなくフェイト・テスタロッサ執務官。

私とティアは慌てて敬礼する。

すると、

「ぷっ………あはははっ!」

フェイト執務官は、いきなり笑い出した。

あれ?

フェイト執務官って、こんな性格だったっけ?

すると、フェイト執務官は私たちに向き直り、

「残念♪ 私はフェイトじゃないよ。 私はアリシア・テスタロッサ。 フェイトのお姉ちゃんだよ」

笑いながらそう言った。

「「えっ?」」

フェ、フェイト執務官のお姉さん!?

顔そっくり!

私が驚いていると、

「こんにちは。 初めまして、月村 すずかです」

紫色の髪の人がそう挨拶してきた。

「「あっ、初めまして!」」

私たちは思わず頭を下げる。

そして、

「そして私がアリサ・バニングス。 自慢じゃないけど、名前ぐらいなら聞いたことあるんじゃないかしら?」

最初に話しかけてきた金髪の女の人がそう名乗った。

そのアリサさんの言葉を不思議に思った私は、ティアの方を向いた。

すると、ティアは驚いた表情で固まっていた。

「ア、ア、ア、アリサ・バニングスって………もしかしてあの………!?」

ティアはそう問いかける。

「ええ。 十中八九あなたが考えているそのアリサ・バニングスで間違いないと思うわよ」

アリサさんが笑顔で頷く。

「ティア? アリサさんの事知ってるの?」

私はティアに聞くと、

「この馬鹿スバル! アリサ・バニングスって言ったら、発足からたった数年でミッドでも有数の大会社になったBTT社の社長じゃない!!」

ティアはそう怒鳴る。

「ついでに言えば、すずかとアリシアは、副社長と秘書よ」

その言葉に、再び固まる私達。

「な、なんでそんな大会社の重役の人がこんなところに………?」

ティアが呆然と問いかける。

「それは、私達も機動六課のフォワードメンバーだからだよ」

すずかさんがそう答えた。

「「ええっ!?」」

その言葉に声を上げる私達。

「ア、 アリサさんたちも魔導師なんですか!?」

私は思わず問いかけた。

「って、スバル! 驚く所はそこじゃない!」

ティアに突っ込まれる。

それからアリサさんたちに向き直ると、

「大会社のトップの人達が会社ほっといていいんですか!?」

そう言った。

「あら、そのぐらい考えてるわよ。 会長役のプレシアさんに社長代理も頼んで来たから」

アリサさんはあっけらかんと言う。

「それから、私達はフォワードメンバーだけど、私達自身は魔導師じゃないわよ」

「「えっ?」」

アリサさんの言葉にまた驚く。

「ど、どういうことですか!?」

「私達自身にリンカーコアは無いの。 そういう意味ではただの一般人ね」

「じゃ、じゃあなんでフォワードメンバーに!?」

アリサさんの次から次へと出てくる信じられない言葉に、私達は驚きっぱなしだ。

「それは、私達が新たに開発したデバイスの実用試験のため。 リンカーコアが無くても魔法が使えるようになる新デバイスよ」

「「ええっ!?」」

一般人でも魔法が使えるって、それってすごい事じゃ………

「で、でも、何で会社のトップ3が直々に? 普通なら、社員や管理局の局員に任せるものじゃ………」

ティアがそう聞くと、

「まあ、そう思うのは当然ね。 だけど、大会社のトップが直々におもむき、成功させる。 これ以上無いほどの宣伝になると思うけど?」

「それは………確かに………」

私達が呆然としていると、

「アリサママ、すずかママ、アリシアママ~!」

そんな幼い声が聞こえてきた。

私達がそっちに振り返ると、見たことのある金髪の女の子が駆け寄ってきた。

「ヴィヴィオ!」

アリシアさんが笑顔で呼びかけた。

ヴィヴィオちゃんが駆け寄ってきて、アリシアさんはそのままヴィヴィオちゃんを抱き上げる。

ヴィヴィオちゃんも笑顔でアリシアさんに抱きついた。

「って、何でヴィヴィオちゃんがここにいるの!?」

私は思わず叫んだ。

すると、

「それは、俺達もここに居るからだ」

聞き覚えのある男の人の声。

そっちに向き直ると、そこにはユウさんを始めとした、翠屋の人達。

しかも、エリオやキャロといった子供達までいる。

「「ユ、ユウさん!?」」

驚きの声を上げる私達。

「実は私達、機動六課の食堂で働くことになってるのよ」

桜さんがそう言う。

「ほ、ホントですか!?」

私は思わず桜さんに確認を取る。

「ええ」

桜さんは笑顔で頷いた。

「じゃあ、毎日桜さんのスイーツが食べられるってことですか!?」

私は再度尋ねる。

すると、桜さんは考えるような仕草をして、

「どうしよっかな~~~? 訓練を毎日頑張れば、そのご褒美に考えてあげてもいいけど?」

桜さんは含み笑いをしながらそう言った。

「頑張ります!!」

私は迷わずに返事をする。

毎日桜さんのスイーツを食べられるなら、どんなきつい訓練でも耐えれる!!

私は、これからの訓練に思いを馳せた。







やがてロビーに人が集まり、部隊長である八神二佐の挨拶が行われて機動六課が始動した。

すると、私達は早速なのはさんの訓練を受けることになった。

でも、言われるままに訓練着に着替えて指示された場所に行くと、そこは海に面した場所で、海の上にはかなり広い真っ平らな足場があるだけだった。

すると、私とティアに、予め預けておいたデバイスが返される。

「今返したデバイスには、データ記録用のチップが入ってるから、ちょっとだけ、大切に扱ってね。それと、メカニックのシャーリーから一言」

なのはさんがそう言うと、なのはさんの隣にいた女の人が自己紹介を始める。

「え~、メカニックデザイナー兼通信主任のシャリオ・フィニーノ一等陸士です。皆はシャーリーって呼ぶので、よかったらそう呼んでね。 皆のデバイスを調整したり、改良したりするので、時々、訓練を見せてもらったりします。あ、デバイスについての相談とかあったら、遠慮なく言ってね」

「「はい!」」

私とティアは返事をする。

「あ、そうそう」

一緒にいたアリサさんが思い出したように口を開く。

「私やすずか、アリシアもメカニックを兼任してるから、もし訓練中にデバイスに不具合がでたら見せてみて。 簡単な故障ならその場で直せるから」

そういうと、アリサさんは前に向き直る。

「じゃあ、早速訓練に入ろうか?」

なのはさんがそう言った。

でも………

「は・・・・はい・・・・・」

「でも・・・・ここでですか?」

私とティアはそう呟く。

目の前には、平らな足場があるだけ。

とても訓練をするような所には見えない。

すると、なのはさんはクスリと笑い、

「シャーリー」

シャーリーさんに声をかける。

「はーい!」

シャーリーさんは返事をすると、空間パネルを開き、操作を開始する。

「機動六課自慢の訓練スペース。なのはさん完全監修の陸戦型空間シュミレーター。ステージセット!」

シャーリーさんが操作を完了すると、唯の真っ平らな足場があっという間に廃棄都市街に変わった。

「わあ…………」

「ああっ………」

「なかなか凄いじゃない」

「へえ~…………」

「すご~い!」

その光景に、思わず声を漏らす私達。

「そういえばスバル、ティアナ」

なのはさんがいきなり声をかけてくる。

「「は、はい!」」

私達は、慌てて返事をした。

「トレーニングバインドには、もう慣れた?」

なのはさんがそう聞いてくる。

「え、あ、は、はい!」

「日常生活が問題なくこなせる程度には」

私とティアはそう返した。

「じゃあ、大丈夫だね」

なのはさんはそう言うと、訓練場へと歩き出した。






【Side Out】





【Side なのは】





「よしっと、皆聞こえる?」

ビルの上でシャーリーと訓練の準備が整った私は呼びかける。

「「はい!」」

「ええ!」

「「うん!」」

私の言葉に、皆が返事をする。

「じゃあ、早速ターゲットを出していこうか。 まずは軽く10体から」

「はい! 動作レベルは1。攻撃精度はEって所ですね?」

「うん」

シャーリーの確認に頷いて、私は再びフォワードメンバーを見下ろす。

「私達の仕事は、捜索指定ロストロギアの保守管理。その目的の為に私たちが戦う事になる相手は・・・・・・これ!」

魔法陣からガジェットⅠ型が現れる。

「自立行動型の魔導機械。これは、近付くと攻撃してくるタイプね」

「攻撃はかなり鋭いから、注意してね」

ジェイルさんからデータも貰ってるから、限りなく本物に近いんだよね。

シャーリーは知らないけど………

はやてちゃんも人が悪いなぁ。

完璧なイタチごっこじゃん。

計画の最終段階に必要とはいえ、皆を騙すのはいい気分じゃないなぁ……

それでも、私は気を取り直す。

「じゃあ、第1回模擬戦訓練、ミッション目的、逃走するターゲット10体の破壊、または捕獲。15分以内」

「「「「「はい!」」」」」

一同は元気良く返事を返す。

「それでは!」

「ミッション!」

「「スタート!!」」

私達の合図と同時にガジェットは逃げ出した。





「それじゃあ、早速お披露目といきますか」

アリサちゃんがそう言うと、アリサちゃん、すずかちゃんアリシアちゃんが、手に持っていたマギメンタルを掲げた。

「「「セーット! アップ!!」」」

その掛け声とともに、3人は光に包まれる。

アリサちゃんは赤い胸当てとフェイスガード、そして小手と具足。

すずかちゃんは黄緑の忍者みたいな恰好で両手の手の甲と両足首に大きな手裏剣、更には背中に直径が1mを超える八方手裏剣を背負う。

アリシアちゃんは、全身を覆う黒い軽鎧を纏い、その手には稲妻をイメージさせる剣を持っている。

「それじゃあ、行くわよ!」

3人はガジェットを追いかけ始める。

「スバル! 私達も負けてられないわよ!」

「もっちろん!」

ティアナとスバルもアリサちゃん達に影響されてやる気出したみたい。

でも、そう簡単にいくと思ったら大間違い。

案の定ガジェットのAMFに驚いてる。

あ、スバル、ウイングロード消されて落ちちゃった。

私は、アドバイスを加えながらスバルの無事を確認する。

私は、AMFの事を皆に説明すると、

「ふ、ふふふっ」

アリサちゃんが不敵な笑みを浮かべる。

そして、右手に炎を発生させ、

「こんなこともあろうかと!」

その言葉と共に拳を繰り出す。

すると、炎がまるで散弾銃のように無数の火球となってガジェットに襲い掛かる。

ガジェットはそれに対抗するためAMFを強め……

次の瞬間に火球に貫かれた。

「マギメンタルにはAMFキャンセラー付よ!!」

そう言い放つアリサちゃん。

すると、まるでアリサちゃんの言葉に怯えたと言わんばかりにガジェットは散り散りに逃げ出す。

動作レベルは最低だけど、その動きの速さは新人にはちょっとやっかいだと思う。

すると、

「スピードなら、私だって負けないよ!」

アリシアちゃんがそう言って足に力を入れ、一気に地面を蹴る。

すると、アリシアちゃんは、ガジェットを一気に追い抜いた。

ソニックムーブとまではいかないけど、魔法も使わずガジェットを超えるスピードを出したのは驚いた。

追い抜いたアリシアちゃんは剣を真上に振り上げ、

「ライトニングブレード!!」

剣が青い雷を纏い、それを斬撃状にして飛ばした。

ガジェットは避けることができずに真っ二つに切り裂かれる。

更にすごい動きをしてたのはすずかちゃん。

いつの間にか4体のガジェットに囲まれてたんだけど…………

ガジェットが一斉にレーザーを放つ。

すずかちゃんは迷わずに上に飛ぶ。

もちろん、ガジェットはすずかちゃんを撃墜するために照準を上に向けようとした。

でも、

「はっ!」

すずかちゃんは予め跳ぶ位置を考えていたらしく、ビルの壁を蹴ってすぐに地面に着地する。

そして、

「紅葉おろし!!」

両腕についていた手裏剣が回転し、すずかちゃんはその場で一回転する。

すずかちゃんを囲っていたガジェットは、全て切り裂かれ、爆散した。

うわぁ、流石すずかちゃん。

夜の一族の身体能力は伊達じゃないね。

私が驚いていると、

「おりゃぁあああああああああっ!!」

スバルがガジェットに殴りかかる。

でも、フィールドに止められる。

スバルは飛び退くと、

「やっぱり、魔力が消されると、いまいち威力が出ない………」

そう呟く。

その時、スバルの後ろにガジェットが回り込んだ。

「でも、それなら!」

スバルはすぐに動き出し、ガジェットを蹴落とすとガジェットに馬乗りになり、直接拳を叩き込んだ。

流石にそれにはAMFも効果が無かったようで、スバルの拳はガジェットにめり込んでいく。

スバルはそれを確認すると飛び退き、ガジェットは爆発した。

その時、ティアナはビルの屋上を移動し、ガジェットを狙える位置に陣取る。

そして、アンカーガンを構え、

「こちとら射撃型! 無効化されて、はいそうですかって下がってたんじゃ、生き残れないのよ!」

そう叫びながら魔力弾を形成する。

攻撃魔法の弾をフィールドを突破する膜状バリアで包んだ多重弾核射撃。

確かにそれならAMFを突破できる。

できるんだけど…………

「固まれ………固まれ…………固まれ! …………固まれっ!!」

ティアナはそう口にしながら魔力弾を精製する。

「うぉおおおおおおおおおおおおおっ!!」

そう叫ぶと、驚くことに魔力弾を完成させた。

「ヴァリアブル………シューーーーーートッ!!」

ガジェットに向けて、魔力弾を放つ。

その魔力弾は、ガジェットを追尾し、2機を見事に貫いた。

流石にその後は力尽きたみたいだけど、私は正直驚いていた。

なぜなら、ティアナはトレーニングバインドを付けた状態で多重弾核射撃を成功させたから。

トレーニングバインドには、魔力操作を阻害する能力もある。

だからこそ魔力の操作スキルもアップするんだけど、トレーニングバインドをつけて半月程度のティアナではAAランクのスキルを成功させることは、正直無理と思っていた。

つまり、そのAAランクのスキルをトレーニングバインドを付けた状態で成功させるということは、今のティアナの本来の技術スキルはAAAランク以上ということになるってこと。

ティーダさんから聞いた話じゃ、ティアナは自分のことを凡人凡人って思い込んでるらしいけど、技術スキルにおいては、天才なんじゃ………?

私は、嬉しい誤算に笑みを浮かべながら、この先の訓練に思いを馳せた。





【Side Out】







さて、機動六課の最初の夜。

フォワード陣は、ほとんどバテバテでグロッキーだった。

因みに、何故ほとんどと表したのかと言えば、

「ああ~、疲れた」

と言いながらも、割と余裕のあるすずかがカウンター席に座っているからだ。

「流石だな。 他の皆は全員グロッキーだってのに」

俺はそう言う。

「そうでも無いよ。 結構疲れたのは間違いないんだし」

いや、初めての訓練でそこまで余裕があることが凄いって言ってるんだが……

俺がそう思っていると、

「ね、ユウ君?」

すずかが身を乗り出して顔を近付けてくる。

「どうした?」

俺が聞き返すと、

「血、飲ませて」

と、突拍子も言った。

まあ、夜の一族だし血を欲しがっても不思議じゃないんだが。

「何でいきなり?」

俺はそう聞く。

「うん。 今日の訓練でいつも以上に身体能力を使ったからだと思うんだけど、いつもより喉が渇いちゃって………ね? お願い」

すずかは顔の前で手を合わせてお願いしてくる。

いや、そんなジュース飲ませて、みたいなノリでお願いすることじゃないと思うんだが………

「はあ…………まあ、貧血にならない程度に。 あと、見られないように気を付けろよ」

俺はそう言って了承する。

一応、すずかに血を飲ませたことは今までに何度かあったので、特に抵抗は無い。

俺は、カウンターの反対側から、すずかに少し身を乗り出す体勢になった。

すずかは、キョロキョロと食堂内を見回して、誰もいないことを再確認する。

誰もいなかったからこそ、血を飲ませてほしいと言い出したのだろう。

そして、すずかも俺に向かって身を乗り出し、襟元を少し引っ張って俺の首筋を露わにする。

そして、ゆっくりと口を首筋に近づけていき、

「いただきま~~す」

そう言って俺の首筋に噛みついた。

「んっ………」

すずかの牙が俺の皮膚を突き破り、流れ出した血をすずかは飲んでいく。

瞼を閉じながらコクコクと喉を鳴らしながら飲むすずかは、どこか愛しい感じがして抱きしめたくなる。

しばらくすると、すずかは口を離し、傷口を舐める。

それだけで、噛みついた傷は治った。

「ご馳走さま」

すずかは満足したのか、微笑んでそう言った。

すると、すずかは立ち上がる。

やはり血を飲むと体調は良くなる様で、疲れを見せない動きで食堂を出て行った。

っていうか、今現在の新人フォワードの中じゃ、最大戦力ってすずかだよなぁと、しみじみ思う。

あと、マギメンタルって、どう見てもデジメンタルだった。

俺は教えてないはずだし、また桜が教えたのか?

アリサはフレイドラモンだし、すずかはシュリモン。

アリシアはライドラモン。

おまけにAMFキャンセラー付という、能力までデジメンタルに似てる。

なんか他のマギメンタルもアーマー体を基にしてそうだよなぁ。

考えすぎか?

ともかく、こうして機動六課での最初の夜は過ぎていく。

が、

「「「………………(怒)」」」

厨房からさっきのやり取りを目撃したらしく、3人のお姫様が怒り狂っている。

すずかの吸血は、半分はキスみたいなモノだからなぁ………

ともかく俺は、厨房の方から嫉妬で怒り狂っている3人のお姫様をどう宥めるか頭を悩ませた。








あとがき


はい、遅くなりましたが五十二話の完成です。

自分が他に執筆しているリリカルフロンティアの本編が完結して気が抜けたのか、なかなか難産でした。

それから、リリフロあとがきで次回作のリクエストをしているので、興味がある人は覗いてみてください。

大半はデジモンクロスですが。

それはともかく………

PVが百万超えた!!??

マジでいいのか!!??

この小説が百万超えて!?

な、感じで内心荒れ狂っております。

本当に他のPV百万突破作品と比べると、明らかに文章レベルが低いんですけどねぇ…………

さて、ついに出ましたマギメンタル。

予想していた方もいたようですが、当然ながらアーマー体が元です。

それで、使う人物がアリサ達と予想できた人はいるんでしょうか?

そして、すずかの吸血シーン。

前から書きたいと思っていたシーンだったので、書けて満足。

まあ、流れ的に強引かもしれませんが。

では、次も頑張ります。



[15302] 第五十三話
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12
Date: 2011/10/01 16:19




第五十三話 ファーストアラート




【Side アリシア】



機動六課始動から2週間。

私達フォワードメンバーは、早朝の訓練を行なっていた。

皆、肩で息をするほどボロボロの状態である。

ホントになのはは容赦が無いんだから。

「はーい!整列!」

空中でバリアジャケット姿のなのはが声をかけ、フォワードメンバーを集める。

「本日の早朝の訓練、ラスト一本。皆、まだ頑張れる?」

「「「「「はい!」」」」」

「じゃあ、シュートイベーションをやるよ。レイジングハート」

『All right. Accel Shooter.』

なのはの呼びかけにレイジングハートが応え、無数の魔力弾をなのはの周りに出現させる。

「私の攻撃を5分間、被弾無しで回避しきるか、私に一撃を入れればクリア。 誰か1人でも被弾したら最初からやり直しだよ。頑張って行こう!」

「「「「「はい!」」」」」

レイジングハートを構えるなのはに、フォワードメンバーは返事をする。

「このボロボロの状態でなのはさんの攻撃を5分間、捌き切る自信ある?」

ティアナが全員に問いかける。

「無い!」

スバルが即答。

「私も厳しいわね」

アリサも、

「私もちょっと自信無い」

私もそう答えた。

「私は………自分だけなら何とか…………」

すずかは遠慮がちにそう言う。

「じゃあ、何とか一発入れよう」

ティアナがそう判断すると前衛陣が構える。

「準備はオッケーだね。 もしノーミスでクリアできたら、私から桜おねえちゃんに口添えして、食後のスイーツ一品追加してあげるから頑張って」

なのはがそう言った瞬間、

「皆! 絶対にノーミスでクリアするよ!!」

スバルが今まで以上の気合を入れてそう叫んだ。

スバルって桜のスイーツの大ファンだもんね。

「それじゃ・・・・・・」

なのはが手を掲げると、飛び回っていた魔力弾が一旦停止する。

「レディー・・・・・・・ゴー!!」

なのはが手を振り下ろすと同時に魔力弾が私達に襲い掛かる。

それを散開して避ける私達。

その時、ティアナの扱うアンカーガンから少し変な音がした気がした。

だから、私はティアナに合流する。

その間にも、アリサやすずか、スバルはなのはに攻撃を仕掛けている。

「ティアナ! アンカーガンちょっと見せて!」

「えっ?」

突然の私の言葉に、ティアナは困惑してる。

「早く!」

「は、はいっ!」

強く言った私の言葉で、ティアナはアンカーガンを差し出してきた。

私はそれを受け取ると、工具を取り出し素早く解体する。

部品を確認していくと、

「やっぱり! このままだと魔法が不発になってたよ」

私は応急修理を施してアンカーガンを再び組み立てる。

「早っ!?」

ティアナは驚いているけど、アンカーガンは専門家でもないティアナが作ったものだから、分解、修理なんて簡単なこと。

マギメンタルは普通のデバイスと比べると、とんでもないほど複雑だからね。

「はい! 少なくとも、この訓練中は大丈夫だと思うよ!」

1分と掛からずに修理して、アンカーガンをティアナに返す。

「あ、ありがとうございます!」

ティアナはお礼を言って受け取ると、すぐに思考を切り替えて訓練に集中する。

見れば、スバルがなのはの魔力弾に追い掛け回されている。

ティアナは、すぐに魔力弾を放って、なのはの魔力弾を相殺した。

相変わらず見事な射撃。

これでトレーニングバインド付って言うんだから、今現在でも相当な実力をもってるってことでしょ?

おっと、私も訓練に参加しないと、サボリだと思われて後で追加メニューなんてシャレにならないよね。





結果は、見事にクリア。

私とティアナの援護射撃と、アリサとすずかの陽動に引っかかったなのはを、スバルがゼロ距離ガルルキャノンでプロテクションを突破して、見事にダメージを与えた。

半分自爆技になりかけたため、そこの所を注意されていたが。

なのはは地面に降りてバリアジャケットを解除する。

「さて、みんなもチーム戦に大分慣れてきたね」

「「「「「ありがとうございます!」」」」」

「ティアナの指揮も、大分筋が通ってきたよ。指揮官訓練、受けてみる?」

なのはは、ティアナにそう尋ねたが、

「あ、いえ、戦闘訓練だけで一杯一杯です」

そう言って遠慮する。

「ふふっ」

そんなティアナの姿にスバルが笑みを零した。

そんな時、どこからか焦げ臭い匂いが…………

「スバル! すぐにローラー脱ぎなさい!」

アリサが叫んだ。

「え?」

アリサの言葉にスバルがローラーに視線を落とす。

すると、スバルのローラーからは、黒い煙が立ち上っていた。

「あっ!うわ、やっば~~・・・・・・あっちゃぁ~~・・・・・・」

スバルは慌ててローラーを脱ぐ。

「しまったぁ、無茶させちゃった」

スバルはローラを抱えてそう漏らした。

「ちょっと見せてみなさい」

アリサがそう言うと、

「お願いします………」

スバルが落ち込みながら差し出す。

アリサがローラーを受け取ると、慣れた手つきで分解していくが、

「あちゃぁ~………部品が完全に焼付いちゃってるわ。 これは部品を丸ごと取り替えないとダメね」

すぐにそう判断した。

「ティアナのアンカーガンも、そろそろ限界だよ。 これ以上使っていくなら、本格的に修理しないと」

私はそう進言する。

すると、

「皆も訓練に慣れてきたし、そろそろ2人とも訓練用の新デバイスに切り替えかなぁ・・・・・」

そう呟くなのは。

「新・・・・」

「・・・デバイス?」

なのはの言葉にきょとんとする新人2名であった。





隊舎に戻る道すがら、

「じゃあ、一旦寮に戻ってシャワー使って、着替えてロビーに集まろっか」

「「「「「はい!」」」」」

なのはの言葉に返事をする全員。

「あれ?あの車って・・・・・・」

ティアナがこっちに向かってくる黒い車に気付き、声を漏らす。

その黒い車は、私達の前で止まる。

その窓が開き、中にいたのは、

「フェイト執務官!八神部隊長!」

スバルが声を上げる。

「うん」

その言葉に、フェイトは微笑む。

「すごーい!これフェイト隊長の車だったんですか?」

スバルがそう声を上げる。

「そうだよ。地上での移動手段なんだ」

フェイトがそう答える。

「皆、演習の方はどないや?」

はやてがそう尋ねると、

「あ~、いや~・・・・」

スバルは、如何答えればいいか迷っている。

「頑張ってます」

ティアナがそう答えた。

「新人2人の方は元より、アリサちゃん、すずかちゃん、アリシアちゃんもいい感じで慣れてきてるよ。いつ出動があっても大丈夫」

なのはがそう言う。

「そうかぁ。それは頼もしいなぁ」

はやての言葉に、スバルとティアナは嬉しそうな声を漏らす。

「2人は、どこかにお出かけ?」

なのはが尋ねる。

「うん。ちょっと6番ポートまで」

「教会本部でカリムと会談や。夕方には戻るよ」

「私は昼前には戻るから、お昼は皆で一緒に食べようか?」

「「はい!」」

「ほんならな~!」

そう言って、車は走り出し、スバルとティアナは敬礼で見送り、私達は手を振って送り出した。




【Side Out】










【Side スバル】






訓練後のシャワーを浴びてから、朝食を食べるために食堂に行くと、

「あっ、兄さん!」

ティアがテーブルに座って食事をとっていたティーダさんに声をかけた。

「ああ、ティアナ。 訓練お疲れ様」

ティーダさんもティアに気付いてそう返す。

「兄さんは事務仕事?」

「ああ。 部隊が始動してから間もないからね。 色々と処理しなきゃいけない事が多いのさ。 あと1週間は、事務仕事に集中だな。 でも、それを乗り越えれば、私も本格的に訓練に参加するさ」

一緒に訓練出来ると聞いて、嬉しそうな表情をするティア。

その時、子供たちが食堂の前を通っていく。

「あっ! 皆、これから学校?」

私はそう問いかける。

「はい! そうです」

キャロがそう返事をした。

「アリサママ、すずかママ、アリシアママ、行ってきま~す!」

ヴィヴィオがアリサさん達に行ってきますと声をかける。

「行ってらっしゃい」

「気を付けるんだよ」

「行ってらっしゃい」

アリサさん、すずかさん、アリシアさんがそれぞれ声をかける。

「母様、行ってきます」

なのはさんの目の前まで来て、礼儀正しくお辞儀をしてそう言う星ちゃん。

聞いた話じゃ、星ちゃんはなのはさんの養子だって話だけど、こう並んで見ると、本当の親子と言っても信じられるくらいよく似ている。

それは、フェイト隊長とライちゃん。

八神部隊長と夜美ちゃんにも言えることなんだけどね。

「うん。 行ってらっしゃい、星」

なのはさんはそう言って送り出す。

「うむ! では言って来るぞ、皆の衆!」

相変わらず凄い王様口調な夜美ちゃん。

そして、ライちゃんも口を開く。

「僕も行ってくるぞ! おば………ッ!?」

――ガシッ

瞬間、ライちゃんの言葉が途切れる。

いつの間にか、アリシアさんがライちゃんの目の前にいて、ライちゃんにアイアンクローをかましていた。

いつも思うけど、どうして掴むまでの動きが全く見えないんだろう?

アリシアさんって、マギメンタルを使わなきゃ、一般人と変わりない筈なんだけど…………

「ラ~~~~イ~~~~~~~! 今、何て言おうとしていたのかなぁ~~~~~?」

アリシアさんが凄まじくドスの利いた声でライちゃんに問いかける。

そのライちゃんは、

「う、うぉおおおおおおおおおおおお!?」

アリシアさんのアイアンクローに悲鳴を上げている。

「い、痛い! 痛いぞおば………」

――メキッ

また禁句を言おうとしたライちゃんの頭部から、不穏な音が聞こえた。

「お! ね! え! さ! ん! でしょ!?」

一語一句強調して言い聞かせるアリシアさん。

いつも思うけど正直怖いよ。

暫くしてライちゃんは解放される。

そのライちゃんにしても、何で毎日同じことを繰り返せるのかなぁ?

まあ、何だかんだで送り出される子供達。

すると、

「フォワードの皆さ~ん!」

リィンちゃんが飛んでくる。

「訓練お疲れ様です! 冷たい飲み物はいかがですか?」

見ると、リィンちゃんが浮遊魔法で飲み物の入ったコップを浮かばせている。

「コーヒーもあるぞ」

アギトちゃんがコーヒーの入ったポットを運んできた。

「くぅん」

更に久遠ちゃんがトレイにそれぞれのお菓子を乗せて運んでくる。

はぅ。

翠屋の3大マスコットキャラ全員集合。

これだけでも凄い癒されるなぁ………

あ、ティアも顔を赤くしてる。

こうして、訓練後のほのぼの時間は過ぎて行った。






【Side Out】








俺は、時間を見てスカリエッティに通信を繋げる。

『やあユウ君。 待っていたよ』

スカリエッティは通信の向こうでそう言う。

「ああ。 で、レリックの位置は捉えているな?」

『もちろん。 現在はもうすぐ山岳地帯に入るリニアレールに積まれているよ』

それを聞いて、前世の知識通りだと俺は判断する。

「それじゃあ、そのリニアレールにガジェットを向かわせてくれ」

俺はそう要請する。

『了解だよ。 ところで、私の娘たちは如何する?』

「今回はいい。 フォワードメンバーはまだ実戦経験が無い。 あいつらの相手はまだ早いだろう。 今回は、実戦の空気を味わってもらうだけで十分だ」

『ふむ、そうかね?』

「そうそう。 隊長陣を引き離すために、航空戦力を送ることも忘れるなよ」

『判っているよ。 では、準備に取り掛かろう』

そう言って通信が切れた。






そして数分後。

機動六課にファーストアラートが鳴り響いた。

「っていうか、早いなオイ!」

俺は思わずそう突っ込んだ。









あとがき

第五十三話の完成。

遅れてすみません。

先週、先々週と稲刈りと社員旅行があり、執筆する余裕がありませんでした。

今回も少々手抜きが目立つ。

ところどころにリリフロからのコピペが…………

で、今回、アリシアの技術チートが発覚。

すずかが非魔導師三人娘の中で戦闘力特化ならアリシアは技術特化。

アリサは万能型ですね。

すずかでも、並のメカニック以上の腕は持ってますが。

とりあえず今回はこんなんで。

では、次も頑張ります。






[15302] 第五十四話
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12
Date: 2011/10/30 20:17



第五十四話 初陣





【Side ティアナ】





私達がデバイスルームで新デバイスを受け取っていると、機動六課に警報が鳴り響く。

それは、紛れもなく出動の合図。

すぐに通信で八神部隊長から連絡が届き、山中を移動中のリニアレールがガジェットに乗っ取られ、暴走中らしい。

私達の任務は、ガジェットの殲滅と、そのリニアレールに積まれているであろうレリックの回収。

八神部隊長の説明が一通り終わると、

「皆、初めての出動だけど、緊張しないで、いつもの訓練通りにやれば大丈夫だからね」

高町二尉がそう声をかけてくる。

「特にスバルとティアナ。 慣れない新デバイスでいきなりの実戦は不安かもしれないけど、何時動作不良を起こすかもしれない物よりかはマシだと思うから、頑張って」

「「はい!」」

私とスバルは返事を返す。

「一応、現場に到着するまで少し時間があるから、一度セットアップして、感触だけでも慣れておくといいよ」

「「わかりました!」」

高町二尉の指示に、確かにと内心頷きながら返事した。

慣れないデバイスは確かに不安だけど、高町二尉の言うとおり、何時動作不良を起こすか分からない物よりかは、動作不良を起こす可能性が限りなく低い新デバイスの方が良いに決まっている。

そして、私達は、ヴァイス陸曹が操縦するヘリに乗り込み、現場へと飛び立った。





【Side Out】








【Side なのは】





計画通りジェイルさんがリニアレールをガジェットに襲わせたらしい。

やっぱり、経験を積むには実戦が一番だしね。

まあ、わかってやってることだから、ある意味これも訓練と言えなくも無いんだけど………

私達は、ヴァイス君の操縦するヘリに乗って現場へ急行した。

スバルとティアナは、私の言った通り、新しいデバイスを展開して感触を確かめている。

すると、ロングアーチから航空戦力の増援が来たことが伝えられ、私とフェイトちゃんはそっちに向かうことになった。

まあ、これも新人たちに経験を積ませるための計画だけどね。

ヴァイス君に後部ハッチを開けてもらい、私はレイジングハートとバリアジャケットを展開する。

それから飛び降りようとしたところで、

「……………そういえば言い忘れてたけど」

私はふと言い忘れたことを思い出し、皆に向き直った。

「偶にこういうヘリとか高台とかから、飛び降りてからバリアジャケットを展開する“バカ”な人達がいるけど、そんな事絶対に真似しちゃだめだからね! 戦場では何が起こるか分からない。 限りなく低い可能性と言えど、飛び降りた瞬間に攻撃が来るかもしれない。 そうなった時、生身だったら一巻の終わりだよ。 だから、戦場に出るときは、必ず戦闘準備を完了させてから出ること! これは絶対だよ!」

私は昔桜おねえちゃんに注意されたことを、改めて皆に伝えた。

「「はい!」」

スバルとティアナはしっかりと返事をして、

「当然じゃない、そんなこと」

「うん。 わかってるよ」

「っていうか、そんな命知らずホントにいるの?」

アリサちゃん、すずかちゃんは何当たり前のことをと言わんばかりに頷く。

それからアリシアちゃん。

私は、そんな命知らずの副官をやってたんだよ?

私は、カッコつけるために、ことごとく飛び降りてからセットアップする自己中エース・オブ・エースを思い浮かべる。

私が何度進言しても、結局直してくれなかったし。

私は軽くため息を吐くけど、すぐに気を取り直し、後部ハッチの端に立つ。

「スターズ01、高町 なのは。 行きます!」

私はそう宣言して飛び降り、航空型ガジェットへと向かった。






【Side Out】








【Side スバル】





なのはさんが航空戦力の迎撃に向かった後、私達は降下ポイントに向かう。

その間、リインフォース曹長から作戦の内容を伝えられる。

それは、スターズとライトニングに分かれて、リニアレールの最前列と最後尾から中央の重要貨物室に向かってガジェットを破壊しつつ向かうというもの。

先に到達した方がレリックを確保するということだった。

「私も現場管制として降りるが、基本的に手は出さないと思ってくれ。 危険になったら助けるが、お前たちの経験を積むためにも、お前たちだけで解決して見せろ」

リインフォース曹長がそう言う。

「「「「「了解!」」」」」

そうやって、作戦内容を確認してる間に、降下ポイントに到着する。

「さーて、隊長さんたちが空を押さえてくれてるお蔭で、安全無事に降下ポイントに到着だ。 準備はいいか!?」

「「「「「はい!」」」」」

ヴァイス陸曹の言葉に、私達は返事を返す。

すると、後部ハッチが開いた。

私は、ティアと顔を見合わせて、互いに頷く。

「マッハキャリバー!!」

「クロスミラージュ!!」

「「セットアップ!!」」

私達は、なのはさんの言った通りに飛び降りる前にバリアジャケットとデバイスを展開する。

さっきまで展開しておいたから、感触にはだいぶ慣れた。

後は、実際に使って、能力を把握するだけ!

「スターズ03! スバル・ナカジマ!」

「スターズ04! ティアナ・ランスター!」

「「行きます!!」」

私達はそう宣言して後部ハッチから飛び降りた。

私達は、うまくリニアレールの先頭車両の上に着地する。

リインフォース空曹は、飛行魔法でゆっくりと着地した。

ヘリを見上げると、リニアレールの最後尾で、アリサさん達が飛び降りているところだった。

「さあ、気を引き締めろ。 ミッションスタートだ」

リインフォース曹長の言葉に、

「「はい!」」

私達が応える。

それと同時に車両の天井がボコボコに変形し、吹き飛ぶと同時に複数のガジェットが飛び出してきた。

私達はそれを飛び退くことでかわし、

「シューーーーーット!」

ティアが魔力弾でガジェットを撃ち抜く。

その隙に私は穴の開いた天井から車両の中に飛び込む。

車両の中には、まだ2機のガジェットがいたけど、

「うぉおおおおおおおおおっ!!」

私は、ガジェットが放つレーザーを掻い潜り、駆ける。

「おりゃぁああああっ!!」

そうして近づいた一機を、右腕のリボルバーナックルで殴りつける。

ガジェットは爆発し、私は他のガジェットからの攻撃を避けるためにすぐに飛び退き、マッハキャリバーを高速回転させ、車両の壁を駆ける。

「はぁあああああっ!!」

そのまま勢いを維持してガジェットに突っ込み、蹴り上げる。

その一撃でガジェットは粉砕した。

でも、

「うわっと!」

勢いが付きすぎて、天井から飛び出てしまう。

でも、

『Wingroad』

マッハキャリバーがウイングロードを出現させて車両から落ちるのを防いでくれた。

私は車両の上に着地する。

私は少し驚きながらもマッハキャリバーにお礼を言って、再びガジェットに向き直った。







【Side Out】






【Side アリサ】





私は、すずか、アリシアと一緒に、リニアレールの最後尾の車両に降り立つ。

その途端に、ガジェットが襲い掛かってきた。

ドクターの作ったものってことは知ってるけど、油断してると痛い目見るって話だから、気を引き締めていかないとね。

私達は構え、

「ナックルファイヤー!!」

「紅葉おろし!!」

「ブルーサンダー!!」

それぞれの魔法で攻撃する。

AMFキャンセラーは問題なく機能しているようで、私達の魔法は、ガジェットのAMFを素通りしてガジェットを破壊する。

本当の実戦で使ったのは初めてだけど、問題はなさそうね。

「よーし! このまま一気に重要貨物室まで行くわよ!」

私は、すずかとアリシアにそう呼びかける。

「うん!」

「オッケー!」

2人は頷いて私に続く。

そのまま車両ごとに数機のガジェットがいたけど、特に問題なく破壊して、先に進む。

リインフォースに確認を取ってみると、スバルとティアナは、私達より若干遅れているらしい。

まあ、こっちは3人だし、何より向こうは桜のトレーニングバインドをつけてるからね。

これで私達が負けたらかなり恥ずかしい。

そう思いながら重要貨物室の一個手前の車両に到達すると、今までより巨大で円形のガジェットが現れた。

「こいつって!」

「Ⅲ型だね」

「一機だけ今回の任務に出てくるって聞いたけど、私達は見事に当たりを引いたってことかな?」

そんなことを言ってると、Ⅲ型が2本のアームを伸ばして攻撃してくる。

私は、それを飛び退いてかわすと、

「ナックルファイヤー!!」

右の拳から炎を放つ。

その炎はAMFを素通りしてⅢ型の本体に直撃した。

でも、

「ッ!? 効いてない!」

表面が焦げただけで、Ⅲ型は特に問題なくそこに存在していた。

「かなりの装甲だね。 生半可な攻撃じゃビクともしないよ」

すずかがそう言う。

Ⅲ型が再びアームを伸ばしてきた。

私達は再び飛び退いてかわす。

「なら、私がアレで決めるわ! すずか、アリシア! サポートをお願い!」

私がそう言うと、

「わかった!」

「任せといて!」

2人は頼もしく頷く。

私はⅢ型に向き直ると、その場で跳躍した。

当然、Ⅲ型は空中の私を攻撃しようとアームを伸ばしてくる。

でも、

「草薙!!」

すずかが背中に背負った巨大な手裏剣を投げ、

「ライトニングブレード!!」

アリシアが手に持った剣から青い稲妻の斬撃を飛ばす。

すずかの草薙はⅢ型の左のアームを。

アリシアのライトニングブレードはⅢ型の右のアームを根元から切断する。

両方のアームを切断され、ただの丸い鉄の塊になったⅢ型に向かって、

「ファイヤー…………」

私は空中で体勢を変え、Ⅲ型に向かって跳び蹴りの体勢をとる。

そして、

「……………ロケット!!」

全身に炎を纏い、Ⅲ型に向かって急降下した。

そのままⅢ型のど真ん中を蹴り抜く。

私は車両を壊さないように調整しつつ、着地した。

私が確認の為に振り向くと、本体の真ん中に大穴を開けたⅢ型。

そして、一瞬置いて爆発した。

私は、上手くいった事にホッと息を吐く。

それからレリックを回収しようと思ったところで、

『スターズ分隊、レリックの回収完了』

リインフォースがそう報告してきた。

「あちゃぁ、時間かけすぎちゃったか」

私は、ちょっと残念に思った。

でも、マギメンタルの初披露としては上々だ。

私達は、そのまま事後処理に移行することにした。





【Side Out】





【Side なのは】




私とフェイトちゃんは、空中からリニアレールを見下ろしていた。

えっ?

ガジェット?

数分で片づけたけど?

「第一段階合格………だね?」

フェイトちゃんがそう言ってくる。

「うん。 ユウ君の言った通りだね。 じゃあ、次からはいよいよ皆にも手伝ってもらうことにしよっか?」

私は、フェイトちゃんと一緒にリニアレールを見下ろしながら、次の試練を考えることにした。















あとがき

第五十四話完成。

また遅れた。

でも短い。

ごめんなさい。

最近、休日の土日に予定が入っていて、執筆の時間が削られています。

それでもやめることは無いと思うので、気長にお待ちください。

さて、今回は流れはほぼ原作通り。

でも、ところどころ原作に対するツッコミが入ってます。

後、アリサのファイヤーロケットは、体当たりではなく、炎に包まれたライダーキックと思ってください。

では、次回も頑張ります。







[15302] 第五十五話
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12
Date: 2011/11/27 20:35


第五十五話 機動六課食堂『翠屋』のとある一日。







おひさ~。

最近空気だった“一応”主人公の利村 ユウだ。

って、俺は誰に言ってるんだ?

まあ、それはともかく、今日も一日張り切っていくとするか。





――朝

当然ながら、局員の朝は早い為に、必然的に俺達翠屋メンバーの朝も早くなる。

フォワード陣の早朝訓練が終わるころに合わせて、朝食を準備するのだ。

そして、早朝訓練が終わる少し前、ぞろぞろと食堂に入るちっこい人影達。

それは、

「父様、おはようございます」

「父よ。 朝食の準備だ」

「お父さん。 おはようございます」

「おはようございます。 ユウさん」

「ふわぁぁぁぁ…………とうさま、おはようですぅ……」

「おう親父、おはようさん」

「パパ、ママ、おはよう」

「くぉん、おはよ」

言わずもがな子供達である。

約一名を除き、朝の挨拶をしながら食堂に入ってくる。

まあ、夜美の性格にも慣れたものだ。

で、いつものごとく約一名足りない。

「はぁ…………またライは寝坊か?」

俺はため息を吐きながらそう漏らす。

「いつもの事です」

「あやつを起こすのは父の役目ぞ」

星と夜美がそう言ってくる。

お前らな。

お前らとライは遺伝子上は関係なくても、同じ場所で生まれた姉妹みたいなものだろうが。

もう少し起こしてやるとかそういうことをしろよ。

とまあ、そんなことを思いつつも、いつもの事だと割り切って俺はライの部屋(正確にはフェイトの部屋)に向かう。

フェイトは早朝訓練に参加しているため、今この部屋にいない事は分かっている。

なので、遠慮なく部屋に入ると、

「すぴ~~~…………すぴ~~~…………」

いつもの如くベッドで寝息を立てているライの姿があった。

俺はライに近寄り、

「おい、ライ! 起きろ! 朝だぞ!」

ライの体を揺すりながらそう呼びかける。

だが、

「うみゅう………あとごふん…………」

これまたいつもの如くベタな言葉を返すライ。

「そう言って起きた試しなんか一回もないだろうが!」

俺は、掛布団を引っぺがす。

しかし、

「ふみゅう………」

そう漏らしながら布団を被るライ。

こいつは………

まあ、これで起きないのもいつもの事だが。

だから、俺は魔法の言葉を使うことにした。

「そうかそうか。 じゃあ、学校から帰ってきてからのおやつは、ライだけ無しだな」

俺がそう言った瞬間、ライはガバッと起き上がり、

「起きる! 起きるよぉっ!!」

そう叫びながら、いそいそと着替え始めた。

以前、こう言っても起きなかったライに対して、実際におやつ抜きを実行したら、世界の終りみたいな表情になり、以後、こう言う度に即起きるようになった。

桜のスイーツはこういう所でも効果抜群だな。

俺は、着替え始めるライを確認して部屋を出た。



俺は食堂に戻り、朝の準備の続きを始める。

暫くして、子供たちの食事が終わり、学校へ行くための準備の為に、それぞれの部屋に戻っていく。

それと入れ替わるように、早朝の訓練を終えたフォワード陣が食堂へやってきた。

つい先日から、ティーダさんも訓練に参加し始めたようで、トレーニングバインドに結構苦労しているらしい。

それぞれが席に座り、翠屋の時と同じようにテーブルから注文してもらい、それを俺がメモしている。

それをリニスと桜に渡し、俺は飲み物を準備し始めた。



それから、フォワードメンバーの食事が終わるころ、学校に行く子供達が食堂の前を通りかかる。

「お前ら、気を付けて行って来いよ」

俺はそう声をかける。

「「「「「「は~い! 行ってきま~す!」」」」」」

全員がそう返してきた。

夜美は実際には違うのだろうが。

「気を付けてね」

「行ってらっしゃい」

などの声が、フォワードメンバーの中から聞こえる。

なんというか、この光景は普通の部隊ではありえないはずなんだが、皆さんものの見事に順応している。

子供たちをおくりだすと、フォワードメンバーは午前の訓練に向けて、気を引き締めた。





さて、喫茶店の時とは違い、勤務時間内には食堂を使う人もいないので、結構暇だ。

俺が軽くテーブルなどを拭いていると、

――ドンガラガッシャーーーーン

突然騒音が響き渡る。

「ふぇぇぇぇん! アイナさん、すみません~~~~!」

続いてファリンの泣きそうな声が響き渡る。

流石に食堂にはウェイトレスという仕事は必要ないので、ファリンは隊舎の寮母であるアイナさんの補佐という立場にいる。

ファリンは、月村家のメイドをしていたため、掃除や洗濯などといった家事能力は持っているし、その能力も基本的には高い。

高いのだが、持ち前のドジッ子ぶりから度々今のようなことがある。

しかし、取り返しのつかないことはしないので、それだけは救いだ。

まあ、これも結構日常風景の一つだ。





そして昼前。

はやてがシャーリーを伴って食堂の前を通りかかる。

「お、はやて。 どっかいくのか?」

俺がそう尋ねると、

「あ、ユウ君。 うん、ナカジマ三佐の所にちょっとな」

はやてはそう答える。

ふと見ると、その手にはアタッシュケースが握られていた。

魔力反応も感じるし、それにこの感じは………

「もしかして、それって………」

俺が尋ねると、

「気付いたみたいやな。 ユウ君の思っとる通り、これはマギメンタルや。 ナカジマ三佐への手土産や」

そういうはやて。

実はゲンヤさん、レジアスさんやゼストさんと同じく、俺達の協力者だ。

まあ、ゼストさん経由で仲間になったわけだが。

たぶん、今から情報交換とかしてくるんだろう。

俺はそう思いながら、はやてを送り出した。




そして夕方。

子供達が返ってくる。

「「「「「ただいま~~~!」」」」」

「今帰ったぞ。 父よ。 おやつの準備だ」

相変わらず、夜美だけ偉そうに言ってくる。

「はいはい。 準備しとくから、手洗いとうがいをしてこいよ」

俺は子供達にそう指示する。

「「「「「「は~~~い!」」」」」」

おやつが楽しみなのか、子供達は我先にと洗面所へ駆けていく。

そんな子供達を微笑ましく見つめながら、俺は桜に菓子の用意を頼むのだった。




夜。

夕食を終えた後は、後片付けになる。

だが、子供達は当たり前というかなんというか、寝るのが早い。

なので、桜とアルフはヴィヴィオと久遠を寝かしつけるために既にいない。

そうなると、片づけをするのは自動的に俺とリニス、あとはアイナさんの手伝いを終えたファリンということになり、

「はわわわ~~~~~~~!?」

「ほい」

皿を運んでいる最中に躓くファリンのフォローが発生することになるのである。

にしても、最近のファリンは態とやってるんじゃないかって位ドジが多い気がする。

フォローは、抱きしめることになることが多いので、それを狙ってるんじゃないかって思う。

まあ、俺としても悪い気はしないのでいいのだが。

ちぃとリニスの視線が痛いが。

まあ、今日の出来事はこんなものだ。

じゃ、そういうことで。









あとがき


ようやく第五十五話の完成…………なんですが………

短い、つまらん、盛り上がり無し。

の三拍子ですね。

1ヶ月かかってこの様。

理由をぶっちゃけますと………

こっちの小説がスランプに突っ込みました。

おそらく、こっちの小説で今年更新できるのはこれが最後になると思います。

まあ、この間にリリフロの外伝を終わらせて、ゼロ炎を再開させようとは思ってますが………

この生きる意味を楽しみにしていただいている皆様には申し訳ないのですが…………

更にはこの話を完成させるのに今日の気力も使い果たしまして返信も出来ません。

もう一つ更には昨日今日と腹の具合も悪いので………

本当に申し訳ない。

なるべく早く更新させようとは思ってますので、待ってくれる人は、気長に待ってください。

では、これにて失礼します。




[15302] 第五十六話
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12
Date: 2013/04/21 19:03

第五十六話 ホテルアグスタ





現在、機動六課フォワード陣は、ヴァイスの操縦するヘリに乗って、ホテルアグスタへと向かっていた。

アニメでもやっていた、オークションがあるのだ。

その道すがら、フェイトがメンバーにスカリエッティについての説明をしている。

とは言っても、フォワード陣でスカリエッティの事を知らないのは、スバルとティアナだけであり、他はスカリエッティのことを知っているのであまり意味はないのだが。

説明を終えると、

「はい、何か質問はある?」

なのはがそう聞くと、

「あ、あの~………」

スバルがおずおずと手を上げる。

「今の話じゃないんですけど………」

スバルはそう言ってくるりと首を回し、

「なんでユウさんと、キャロがいるんですか?」

こっちを向きながらそう聞いてくるスバル。

そう、このヘリには、俺とキャロ、フリードも乗っている。

まあ、不思議に思うのも当然だな。

「今から行く任務先のオークションにな、キャロの両親が呼ばれてるんだよ。 で、最近キャロも両親に会えてないから、俺が付き添いでキャロを両親に合わせようってことで同乗させてもらってるんだよ」

俺はそう説明する。

「って、あれ? キャロの親はユウさんじゃないんですか?」

ティアナが首をかしげながらそう言ってきた。

そういえば、ティアナはユーノとヴィータに会ったことは無かったな。

「ああ。 キャロは俺の友人達が引き取った子で、最近は仕事が忙しいからウチで面倒見てるだけだぞ。 俺の呼び方も、キャロだけ『ユウさん』だろ?」

「あ、そういえば………」

ティアナは納得したように頷く。

「その友人が今回のオークションに説明役として来るから、折角だからキャロも連れていこうってことになったんだ。 俺はキャロの付き添いだな。 まあ、向こうには何も言ってないけど………」

俺がそう説明すると、スバルとティアナは納得したように頷いた。






ホテルに着くと、フォワードメンバー達は、それぞれの持ち場へと移動する。

俺はキャロを連れてオークション会場へと向かった。

因みに俺の服装はスーツ姿であり、キャロも可愛らしくオシャレしている。

当初は私服のまま来たかったのだが、リニスや桜、ファリンといった女性陣に無理やりコーディネートされ、今に至る。

今更だが俺には服装のセンスは全く無い。

見栄えよりも動きやすさを重視する俺にとって、スーツなどといった堅苦しい服装は嫌いな部類に入る。

だが、せっかくリニスや桜たちがコーディネートしてくれたものなので、渋々着ている。

俺とキャロがホテルの中を歩いていると、

「お父さん! お母さん!」

キャロが突然駆け出した。

その先には、オークションの関係者と思われる人物と話しているユーノと、その隣にいるヴィータの姿。

その二人は、キャロの声に驚いた表情をしてこちらを振り向いた。

「「キャロ!」」

二人は同時に叫び、ヴィータがしゃがんで駆け寄ってくるキャロを抱きとめる。

「キャ、キャロ!? なんでここに!?」

驚いた表情のまま、ヴィータが問いかける。

驚く二人に向かって俺は声をかけた。

「よ、久しぶり」

「「ユウ!?」」

再び驚いた声を上げる二人。

「俺達からのサプライズは気に入ってくれたか?」

俺がそう問いかけると、

「ユ、ユウがキャロを連れてきてくれたの?」

ユーノが若干動揺しつつ聞いてきた。

「ああ、なのは達の仕事のついでにな。 お前たちもここ最近無限書庫にこもりっぱなしだろ?」

「う……確かに……ゴメンなキャロ。 寂しい思いをさせちまったか?」

ヴィータがキャロに問いかけると、

「ううん。 お仕事だから仕方ないよ。 それに、エリオ君たちもいるから寂しくないよ」

キャロは笑顔でそう答えた。

「そっか……ねえヴィータ」

ユーノがキャロを撫でながらヴィータに言う。

「何だ?」

「ヴィータはキャロと一緒にいてあげて」

「えっ? いいのか!?」

ユーノの発言にヴィータが驚く。

「うん。 オークションの品物の説明は僕だけで大丈夫だから」

「そっか。 分かった」

すると、ユーノはもう一度キャロに笑みをむけ、

「キャロ。 僕もオークションが終わったら時間が取れると思うから、後でゆっくりと話をしよう」

そう言うと、キャロは笑顔になり、

「うんっ!」

力強く頷いた。





キャロを2人に届けた俺は、ホテル内を歩いていた。

そして、時間を確認する。

「そろそろか?」

そう呟いたのと同じ頃、ガジェットの反応をロングアーチが捉えていた。








【SIDE ティアナ】



私たちがホテルの警備についてから暫く。

接近するガジェットの反応を捉えたという報告が入った。

それに対し、副隊長たちが先行してガジェットを破壊することとなった。

それは、兄さんの初出撃でもある。

私とスバルは、モニターでその様子を見ている。

『紫電一閃!!』

『ておらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

『スティンガースナイプ!!』

副隊長達は、次々にガジェットを落としていく。

兄さんも、派手さではシグナム副隊長やザフィーラには敵わなくても、撃墜数は劣っていない。

「頑張って……兄さん……」

私は、小さく兄さんを応援した。

すると、

『山岳方面より、新たなガジェットが接近中!』

ロングアーチから、敵の増援の報告が入る。

しかもその場所は、副隊長たちが戦っている場所とはホテルを挟んで正反対。

それは、私達の出撃を意味する。

『フォワード陣はガジェットの迎撃に向かってください』

その思った通りの言葉に、

「「了解!」」

私とスバルは、迷いなく返事を返した。







次々と迫り来るガジェットを迎撃する私達。

「ヴァリアブルシューーーートッ!」

「ガルルキャノン!」

「ブルーサンダー!」

「ナックルファイヤー!」

「紅葉おろし!」

次々に繰り出される攻撃が、ガジェットを破壊していく。

でも、数が多い。

次から次へと増援が現れる。

「ふん! この程度の奴らなんか、何体来たって問題ないわよ!」

でも、アリサさんはとても強気だ。

負けることなんか微塵も思ってない。

「ほらティアナ! 何ぼーっとしてるの!? ここの防衛戦の要はあんたなんだから、さっさと指示出して!」

「は、はい!」

アリサさんの言葉に私は我に返り、防衛のための指示と射撃を行っていく。

そんな時、

『レーダーに反応! 数は3! でも、この反応はガジェットじゃない?』

ロングアーチからそう報告が来る。

その時、木々の間から何かが飛んできた。

「くっ!?」

それをすずかさんが両手の甲に装備されている手裏剣を回転させ、盾のようにして飛んできた何かを弾く。

その弾いたものは、まるで刃のついたブーメランのようなものだった。

そして、そのブーメランは独りでに飛んできた木々の間へと戻っていく。

すると、その木々の間にいた何者かがブーメランを掴んだ。

その人物は歩いて木々の間から姿を見せる。

その人物は、ピンク色のロングヘアーで、額にヘッドギアをつけており、青いスーツを身に纏った女性。

更に、別方向からスバルのウイングロードに似た光の道が向かってくる。

「うおらぁあああああああああっ!!」

その道を走って、赤髪の少女が突撃を仕掛けてきた。

「なめんじゃないわよっ!」

その少女に向かってアリサさんは臆することなく拳を繰り出す。

アリサさんと赤髪の少女の拳がぶつかり合い、お互いの動きが止まる。

その赤髪の少女の顔は、どこかスバルに似ていた。

――ギィン

いきなり鳴り響いた金属音に振り向けば、アリシアさんが茶髪のロングヘアーをした少女の剣を自分の剣で受け止めていた。

「か、彼女たちは一体……?」

私は、いきなり現れた3人の人物に驚く。

「さあね。 でも、少なくとも、友好的じゃないのは確かね」

アリサさんがそう言う。

「ティアナ、スバル。 こいつらは私達で抑えるから、アンタたちはガジェットの殲滅をお願い」

「えっ? で、でも……」

「私たちのマギメンタルは、どっちかといえば1対1向きだから、複数のガジェットには対処しきれないかもしれない。 だから、ガジェット達には、ティアナたちの方が有効だよ」

アリシアさんもそう言う。

「わ、分かりました!」

私は、多少後ろ髪引かれる思いがあったが、

「スバル! 行くわよ!」

「了解!」

スバルと共にガジェットの迎撃に向かった。







【Side すずか】




目の前にいるのは、ピンク色の髪をしたジェイルさんの娘の戦闘機人の1人。

確か名前は……

(セッテちゃん…………だったよね?)

私は、仲間内しか知らない特殊な回線を使って、セッテちゃんに念話を送る。

(はい。 No.7 セッテです。 お互いの実戦訓練のために派遣されました)

向こうからも返信が来る。

(こらこら。 そんな風に自分を機械みたいに言わないの)

私は軽く叱っておく。

(そうは言われましても、私は戦うために生み出された戦闘機人です。 その事実は変えられません)

セッテちゃんの頭の硬さに、私はため息を吐きたくなった。

(まあいいや。 その辺りの性格は、追々矯正するとして、今は真剣勝負だよ)

私は、両手足の手裏剣を回転させる。

(望むところです)

セッテちゃんも、両手のブーメランブレードを構える。

そして、

「紅葉おろし!!」

「IS発動! スローターアームズ!!」

私は両手の手裏剣を飛ばし、セッテちゃんはブーメランブレードを投げつけてくる。

お互いの攻撃は、私達の中央でぶつかり、弾かれ合う。

私は手裏剣を繋がれていた魔力の鎖で引き戻し、定位置の手の甲に戻すと、そのまま駆け出す。

セッテちゃんも同時に飛び出し、弾かれたブーメランブレードをうまくキャッチしてそのまま斬りかかってくる。

「「はぁあああああああああっ!!」」

そして、手の甲に装備された手裏剣と、振るわれたブーメランブレードがぶつかり合い、火花を散らした。





【Side Out】





【Side アリサ】




「はぁああああああああっ!!」

「うぉおおおおおおおおっ!!」

私は、ノーヴェと拳をぶつけ合う。

拳の威力は互角。

一旦お互いに間合いを取り、ひと呼吸置く。

(やるわね、ノーヴェ)

(あんたもな、アリサ)

念話でそう言い合う私達。

(正直、姉貴ともやり合ってみたいと思ってたけど、アンタとやりあうのも悪くねえな)

(姉貴…………? ああ、スバルのことね。 そういえば、あんたもクイントさんの遺伝子が元になって生み出されたんだっけ?)

(そういうこった。 そうだ! ただやり合うのも面白くねえから、賭けをしねえか?)

(賭け?)

(ああ。 この勝負に負けたら、勝った方に桜のシュークリームを10個奢るってのはどうだ?)

(じゅ、10個!?)

(なんだよ? もしかして自信ねえのか?)

ノーヴェは挑発するように言ってくるが、

(そんなわけ無いでしょ! でも…………10個も食べたら……)

そりゃ私だって桜のシュークリームはたくさん食べたいわよ!

でも、そうすると女の天敵体重が迫ってくるのよ!

そういえば、スバルもギンガもあれだけ食べてるのに全ッ然体重増えないのよね!!(怒)

もしかしてノーヴェも…………

そんなの……そんなの……

「不公平だわ!!」

思わず声に出して叫んでしまった。

「はっ?」

ノーヴェは呆けた声を漏らす。

私はそれに構わず殴りかかった。

「うぉわ!?」

咄嗟に受け止めるノーヴェ。

なんか無性に腹が立つ。

決めた!

絶対に負けてやるもんですか!!






【Side Out】





【Side アリシア】





私は、剣を構えて目の前の少女と向かい合う。

名前は確か、最近目覚めたばかりの……

(No.12 ディードです。 よろしくお願いします)

ディードは念話で礼儀正しく挨拶してくる。

(私はアリシア・テスタロッサだよ。 よろしくね、ディード)

念話では挨拶を返すが、実際にはお互いに剣を構えている。

「やぁあああああっ!!」

私は先手必勝、自分から斬りかかる。

「ふっ!」

ディードは左手の剣で私の一撃を受け流すと、右の剣を横薙ぎに振るってくる。

「っと!」

私はその場でジャンプして、その一撃を躱す。

そのままディードに頭上から斬りかかった。

ディードは剣をクロスしてその一撃を受け止める。

(やるね)

(恐れ入ります)

私は飛び退いて距離を取る。

雷を使えば有利になると思うけど、私はあえてそれをしない。

純粋に、剣技だけで戦ってみたかった。

「行くよ!」

「受けて立ちます!」

再びお互いに斬りかかった。





【Side Out】







【Side ティアナ】





ガジェットの迎撃を進める私とスバル。

アリサさん達が抜けたせいで、さっきよりもキツくなってるけど、防衛線は抜かれてない。

でも、このままだとガジェットを全滅させるのは難しい。

その時、

『2人ともその調子!そのまま副隊長たちが戻ってくるまで持ちこたえて!』

ロングアーチからそう指示が出るが、兄さんの夢であり、私の夢でもある執務官を目指すためにも、この程度の数、全滅させないと。

「心配要りません!全部私達で倒します!」

私はそう宣言する。

『ちょ、ティアナ、大丈夫?無茶しないで』

「大丈夫です!毎日朝晩、練習してきてるんですから!」

私はそう言いながら、カートリッジを装填する。

「スバル!クロスシフトA! 行くわよ!!」

上空をウイングロードで駆け回っているスバルに呼びかける。

「応!!」

スバルは元気良く返事を返した。

スバルは、ガジェットたちのすぐ上をウイングロードで駆け抜ける。

すると、ガジェット達はスバルに狙いを定め、レーザーを撃つ。

その隙に、私は魔法陣を展開した。

(証明するんだ!)

カートリッジを4発ロード。

(特別な才能や、凄い魔力が無くたって・・・・・・一流の隊長たちの部隊でだって・・・・・どんな危険な戦いだって!)

私の周りに、今までで最大数の魔力弾が発生する。

「私は・・・・・・ランスターの弾丸は、ちゃんと敵を撃ち抜けるんだって!」

スバルに気を取られているガジェット達に狙いを定める。

『ティアナ!4発ロードなんて無茶だよ!それじゃティアナもクロスミラージュも!』

ロングアーチから警告が来るが、

「撃てます!」

『Yes.』

私は言い切り、クロスミラージュも同意する。

私はクロスミラージュを構え、

「クロスファイヤー・・・・・・・シューーーーーーーーーーーーーーーーーット!!」

魔力弾を一斉に放った。

その魔力弾は狙い通りガジェット達を次々と撃ち抜く。

「でやぁああああああああああああっ!!」

続けてクロスミラージュを連射し、撃ち漏らしたガジェットを狙う。

私は順調にガジェット達を撃ち落していくが、

「ッ!?」

4発ロードの無理が祟ったのか、僅かに狙いが狂ってしまう。

私が放った魔力弾は、ガジェットを外してしまう。

外れた魔力弾の射線軸上には、スバルの姿。

「スバル!? 危ない!」

私は咄嗟に声を上げる。

「えっ?」

スバルは、迫る魔力弾に気付くが、回避が間に合わない。

その瞬間、

「おらよっ!」

そんな掛け声とともに、木々の間からくの字に曲がったガジェットが猛スピードで飛び出してきた。

そのガジェットは、スバルの目の前で魔力弾に激突。

爆発した。

「うわぁっ!?」

スバルは爆発に煽られるが、魔力弾の直撃よりかはマシだろう。

「スバル!」

私は慌ててスバルに駆け寄る。

その時、

「ったく、見ちゃいられねえな」

そんな言葉とともに、赤いドレスのような服装に身を包み、肩にハンマー型のデバイスを担いだ赤毛の女性がそこにいた。

「えっ? だ、誰?」

私は思わず問いかけてしまう。

「アタシか? アタシはヴィータ。 お前らにわかりやすく言えば、キャロの母親だ」

「ええっ!? キャロのお母さん!? っていうか若ッ!?」

スバルが驚いてそう声を上げる。

ツッコミどころが違うような気がするが、確かに若い。

「……そんなに驚くことか? 見た目はなのは達もあんま変わんねえだろ?」

その言葉に、

「「ご尤も」」

私とスバルは激しく同意してしまう。

確かになのはさんたちも十分若い。

それなのに、養子とは言え、全員が子持ちだ。

「それよりも、ヒヨっ子が無理すんなよ」

その人の言葉に、私は身を震わせた。

そうだ。

私はもう少しでフレンドリーファイアをしてしまうところだったのだ。

その事実を思い出し、私は胸が締め付けられるように痛んだ。

それでも、ガジェット達は待ってくれない。

次々と新手が現れる。

「さてと…………」

ヴィータさんはガジェットに向き直ると、ハンマー型のデバイスを構えた。

この人は、ガジェットと戦う気だと悟る。

「ちょ、ちょっと!? 危ないですよ!?」

スバルが咄嗟に声をかけた。

「はん! 心配すんな! ヒヨっ子に心配されるほど落ちぶれちゃいねえよ!」

「「えっ?」」

その言葉に、私とスバルは声を漏らす。

「そういや、キャロの母親って名乗るよりも、こっちで名乗ったほうが良かったか?」

すると、ヴィータさんは堂々とデバイスを構え直し、

「夜天の主、八神 はやての守護騎士が1人…………鉄槌の騎士! ヴィータだ!!」

そう名乗りを上げた。

「八神部隊長の……」

「守護騎士の1人……」

私達は驚愕する。

その瞬間、

「おらぁああああああっ!!」

ヴィータさんは一番近くのガジェットに突撃。

ハンマーで一気に殴り飛ばす。

先ほどのガジェットと同じようにくの字になって吹き飛ぶガジェット。

吹き飛んだガジェットは、後ろのガジェットも巻き込んで爆発する。

続けてヴィータさんは数発の鉄球を具現すると、

「はっ!!」

ハンマーで打ち出した。

それらの球は、それぞれが数機のガジェットを貫き、20機近いガジェットを一度に破壊した。

「す、すごい」

スバルは呆然と呟く。

私は、ヴィータさんの実力を見て、先ほどヒヨっ子と言われたことを思い出した。

あの人からしてみれば、確かに私はまだまだヒヨっ子だ。

挙句にフレンドリーファイアをしそうになる始末。

やっぱり、私はまだまだだ。

やがて、ヴィータさんの活躍で、ガジェットはあっという間に全滅した。









あとがき


第五十六話の完成。

こちらではひじょ~~~~~にお久しぶりです。

1年と4ヶ月ぶりの更新です。

待っていた人はお待たせしてすみません。

なんだよ、まだ続けるつもりなのか?っていう人はスルーしてください。

インフィニット・テイマーズの方ばかり更新してました。

本当は丁度1年目で更新しようと思ってたのですが、インフィニット・テイマーズの方でも報告したとおり、仕事がドツボにハマって小説書くどころではありませんでした。

ようやく落ち着いてきたところなので、少しは更新速度もマシになるかと思います。

さて、今回はホテル・アグスタ編。

フライングでナンバーズの3人が参戦です。

とりあえず、皆さんグルなので、戦いながら色々ほのぼのしてます。

まあ、ティアナとスバルだけは真剣ですが……

さて、ところどころ違いますが、ティアナのミスショットは起こりました。

次回はどうなるんでしょうね?

原作通り無茶をしてなのはに撃墜されるのか?

はたまた別の道があるのか?

答えはその時をお待ちください。

では、次も頑張ります。





[15302] 第五十七話
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12
Date: 2013/04/21 19:00
第五十七話 強くなるために




【Side ティアナ】



襲撃してきたガジェットが全滅すると、アリサさん達と戦っていた3人の襲撃者達はあっさりと撤退していった。

事後処理が進む中、私は先ほどのミスショットが頭から離れず、気分が優れない。

そんな時、

「ティアナ」

後ろから声をかけられ振り向くと、そこには兄さんがいた。

「兄さん…………」

「ちょっと話さないか?」

兄さんからの突然の誘いに、

「えっ? でも、事後処理がまだ…………」

そう言いかけたところで、

「大丈夫。 隊長達から許可は貰ってるから」

そう笑みを浮かべて、私の手を取ると、半ば強引に私を連れ出した。




私と兄さんは、森の中を歩く。

「ティアナ…………話は聞いたが、かなり無茶をやらかしたみたいだな」

投げかけられる言葉に、私は俯く。

「…………ごめんなさい」

そう呟く私。

「まあ、ティアナが執務官を目指していて、そのために戦果を上げようと焦る気持ちもわからなくはないけどな……」

兄さんはそう言いながら言葉を区切る。

「けど、その為に命令無視や勝手な行動をしたら、本末転倒だぞ」

軽く叱るようにそう言われ、

「もし、今回の指揮官がティアナだったとして、今回自分が行った行動は、最善な行動だったか?」

そう言われ、私は気付く。

時間稼ぎなら、私やスバルだけでも十分だった。

そして、副隊長達が合流後、ガジェットを全滅させたほうが危険度も低く、確実性も上だ。

でも、私が焦ってガジェットを全滅させようとしたから、危うくミスショットをしそうになった。

「私も今まで色々な部隊にいた。 その中には、今のティアナみたいに功績を焦る者もいた。 けど、その殆どは逆に失敗する。 指揮官の指示を無視し、隊の連携を乱してうまくいくはずがない」

兄さんは言葉を続ける。

「確かに理不尽な命令や、自分を曲げてまで命令を厳守しろ、とは言わない。 だが、だからと言って、全てを自分の判断で行ったら、それは仲間を危険に晒すことになる」

「……うん」

「基本的に命令を守れば、結果は後からついてくる。 少なくともこの機動六課には、手柄を独り占めしようとしたり、他人を蹴落とすような人物は、誰一人としていない」

兄さんの言うとおり、機動六課に配属されている人たちは、ロングアーチやバックアップも含めて、みんないい人達だ。

そう思っていると、兄さんは私の頭に手を置き、

「だからティアナ、焦らなくてもお前はまだ若い。 時間は沢山あるんだ。 お前が歩みを止めなければ、きっと夢は叶う」

兄さんは微笑んでそう言う。

「話はこれだけだ。 今日はゆっくり休んで、明日からまた頑張るんだぞ」

「……うん!」

兄さんの言葉に、私はしっかりと頷いた。





私は凡人だから、もっと頑張らないと。




【Side Out】






その日の夜。

食堂を片付けてふと外を見ると、ティアナが原作でやっていたように、自主トレーニングをしていた。

おいおい、この世界じゃティーダさんが生きてるからあんまり無理しないと思ってたんだけどなぁ。

まあ、ティアナが努力家なのは根っからってことか。

この世界のなのはなら、アニメのように撃墜したりはしないだろうけど、こうやって無茶やってる姿を見るのもなんだかなぁ。

そう思った俺は、コーヒーを水筒に入れ、ティアナの所へ向かった。





「よっ、お疲れさん」

俺はそう言いながらティアナに声をかける。

「ッ…………ユウさん」

ティアナは俺に気付き、訓練を一旦中断する。

「…………ユウさんも、無茶を止めろって言いに来たんですか?」

ティアナは、若干拗ねるように言ってくる。

それに対し俺は、

「いや…………俺には強くなろうと努力してる奴を止める権利なんかないさ」

「えっ?」

俺の言葉に、ティアナが軽く驚いた声を漏らす。

才能の塊みたいな俺に、ティアナを止める権利はない。

俺の存在自体が、努力している奴をあざ笑うに等しいから。

まあ、魔力制御がてんでダメという欠点もあるが。

「それでも、一息入れるぐらいは良いんじゃないか?」

俺は、水筒に入れたコーヒーをコップに注ぎ、ティアナに差し出す。

「あ…………すみません……」

ティアナは若干躊躇したようだが、デバイスを待機状態に戻し、コーヒーを受け取った。

コーヒーを冷ましながら、両手でコップを持ち口を付けるティアナ。

「…………あったかい」

ポツリと漏らすティアナ。

不覚にもその姿を可愛いと思ってしまった。

「ティアナは………」

「はい?」

「ティアナは何で自分を凡人だと思うんだ?」

俺はそう尋ねてみる。

ティアナは若干俯くと、

「…………私には、スバルやシグナム副隊長みたいな近接能力も無ければ、フェイト執務官みたいなスピードもない。 アリサさん達は、魔導師の力は無くてもマギメンタルを開発した超天才。 得意の射撃も兄さんや高町隊長に比べれば、児戯みたいなものです。 レアスキルも持ってなければ、魔力が特別多いわけでもない。 こんな私が凡人でなければなんだと言うんですか?」

ティアナは自傷気味に呟く。

「少なくとも、魔力制御は飛び抜けて高いと思うが?」

俺はそう言ってやる。

「え?」

ティアナは驚いた顔で俺を見る。

俺は、ふと思いついた。

ティアナなら、『アレ』が出来るかもしれない。

昔思いついたことだが、魔力制御が下手くそな俺には無理だったこと。

俺は両手を前にだし、それぞれ人差し指を立てて、人差し指の先にオレンジと青の魔力弾を発生させる。

「ティアナ、問1。 オレンジがティアナの魔力弾。 青がなのはが戦闘時に使っている魔力弾だ」

2つの魔力弾の大きさは全く同じ。

「この魔力弾は、貫通系の魔力弾だ。 この2つをぶつけ合えば……」

俺はそう言いながら魔力弾を飛ばし、空中で2つをぶつけ合う。

その結果、オレンジの魔力弾は砕かれ、青の魔力弾はそのまま飛んで空に消える。

「さて、同じ大きさなのに、何故オレンジの魔力弾は撃ち負けた?」

俺はティアナに問いかける。

「それは……込められている魔力の密度が青いほうが高いからです」

ティアナの答えに、

「正解」

俺は頷いた。

「では問2。 込める魔力は変えずに、オレンジの魔力弾が青の魔力弾を撃ち破るにはどうすればいい?」

「えっ?」

俺の問いにティアナは思わず顔をしかめる。

「それは……無理なんじゃ……」

ティアナはそう呟くが、

「そうかな?」

俺は先ほどと同じ青の魔力弾を飛ばして自分の方へ向かうようにコントロールする。

そして、左手の指先に先ほどと同じオレンジの魔力弾を作り出し、向かってくる青の魔力弾に向かって構える。

「シュート」

俺がそう呟いた瞬間、閃光が走ったかと思うと、いつの間にか青の魔力弾が砕かれて四散していた。

「えっ? 今の……一体どうやって……?」

ティアナは四散した魔力弾を呆然と見ている。

「ティアナは銃型デバイスを使っているけど、そもそも銃がどういう物か知っているか?」

「えっ? ……えっと……確か、種類にもよりますけど、鉛玉を高速で撃ち出すものでしたよね?」

若干自信なさげに答えるティアナ。

「まあ、正解。 因みに、その速度はどのくらいか分かるか?」

「そ、そこまでは……」

「そうか。 参考までに言っておくと、拳銃タイプではおよそ秒速355m。 音速より速いな。 ライフルになれば秒速800m超なんてものもあるぞ」

「ッ!?」

ティアナは絶句する。

「当然魔法じゃないから銃弾をコントロールなんて事は出来ない。 けど、狙いを付けられて撃たれたら、並の魔導師では対処不能だ」

俺は至近距離で放たれた銃弾を掴むなんて離れ業をやらかした事もあるが……

「今から言うことは俺の勝手な意見だから気を悪くしないでくれ。 ティアナやなのはが使っている射撃型の魔力弾は、誘導することも考えているせいか、弾速はそれほど速くない。 いくら速いとは言っても、魔力強化なしでも視認することは可能だ」

「はい……」

「だから、はっきり言って銃型のデバイスを使っている意味は何もない。 魔力弾をコントロールするなら杖型を使ったってなんら変わりはない」

「ッ……!」

流石にその言葉はショックだったのか、ティアナは声を漏らす。

「銃とは狙って撃つ物だ。 本来はコントロールするものじゃない」

俺は再び左手にオレンジの魔力弾を発生させる。

「俺がさっきやったことは、魔力弾を銃弾に近づけたことだ。 先ずは魔力を圧縮……」

拳大の大きさだった魔力弾が直径10mmぐらいの大きさまで圧縮される。

「魔力弾の形を円錐状に……」

魔力弾の形が銃弾の形に近くなる。

「更に回転を加えて……」

魔力弾が高速回転し、

「圧縮した時の反動を弾の後方部分から開放」

次の瞬間、視認できないスピードで魔力弾が撃ち出された。

ただ、魔力光が一筋の線を描いていた。

「……とまあこんな感じだ。 スピードが速すぎるからコントロールは出来ないが、銃型のデバイスを使うティアナには、おあつらえ向きじゃないか?」

ティアナを見ると、ふるふると震えていた。

「私となんら変わらない魔力弾が……ここまでのものになるなんて……」

「魔力制御が下手くそな俺は、全部デバイス任せで、単発ずつしか撃てないけどな。 ティアナなら連射も可能になるんじゃないか?」

俺は至極真面目にそう言う。

「私に……出来るでしょうか?」

「必ずできる!…………なんて無責任なことは言えないが、俺よりも可能性があるのは確かだ」

「……そこは嘘でも出来るって言う所じゃないでしょうか?」

ティアナは苦笑しながらそう言う。

「ま、あとはティアナの頑張り次第だろ?」

俺はそう言って踵を返す。

「まあ、魔力制御の練習なら体力は使わないだろうし、寝不足にならない程度に頑張れ。 勝つためには、実力をつけることもそうだが、万全の体調で望むことも大事だからな。 それに、スクランブルがかかった時も、ちゃんと出れるようにしとけよ。 お前はもう訓練生じゃない。 立派な一人の部隊員なんだからな。 疲れてて任務失敗じゃ、お話にもならねーぞ」

それだけ言って俺はその場を立ち去った。








【Side ティアナ】



「お前はもう訓練生じゃない。 立派な一人の部隊員なんだからな。 疲れてて任務失敗じゃ、お話にもならねーぞ」

その言葉を聞いたとき、私の心に衝撃が走った。

そうだ。

私はもう訓練生じゃない。

私の行動が、人の命を左右することだってあるのだ。

そんな時に疲れてて失敗したら、目も当てられない。

高町二尉の訓練は確かに厳しい。

でも、翌日に疲れを残さないようにしっかりと調整されているし、いざという時にスクランブルがかかった時にも、即座に動けるだけの体力は残っている。

私は、自分が行おうとした愚行に気付いた。

高町二尉の訓練だけでもギリギリなのに、そこから無理して訓練すれば疲れが溜まるのは目に見えている。

それなのに、目先の失敗にとらわれて無茶な特訓をしようとしていた。

私は、クロスミラージュを顔の前に持ってきて一発の魔力弾を創りだす。

ユウさんがやっていたように、魔力弾の圧縮を試みる。

「くっ……!」

思ったよりも難しく、魔力弾は半分程度しか縮まらない。

それでも私はクロスミラージュを構え、近くの木に狙いを定め、引き金を引く。

しかし、放たれた魔力弾は思ったよりも弾速が速く、コントロールする暇もなく狙った木を外れ、その後ろにあった木に当たった。

私の通常の魔力弾は、木を貫通するほどの威力はない。

でも、今作った魔力弾は簡単に木を貫通し、その後ろの木を中程まで削った。

「………………」

私はその威力に呆然となる。

使った魔力はいつもと変わらない。

でも、その威力は倍以上。

しかし、弾速が速すぎてコントロールが難しい。

いつもなら簡単に当てられる距離を外してしまった。

その時、もう一つユウさんが言っていた事を思い出した。

『銃とは狙って撃つ物だ。 本来はコントロールするものじゃない』

「銃とは……狙って撃つもの……」

私はユウさんに言われた言葉を反復する。

ユウさんが言っていた。

今の私の使い方では、銃型デバイスを使っている意味は無いと。

ユウさんの言葉と、今撃った魔力弾の跡を見つめ、私は自分のやるべき事に気付いた。

「ありがとうございます。 ユウさん」

私はもうこの場にいない人に向けてお礼を言った。







【Side Out】












【Side とある管理局員】





「はぁ…………」

思わずため息を吐く。

その理由は、目の前にいるローザ・レイシス一等空尉。

「ムキー! 一体どうしたの私は!? 最近全然調子が出ないわ!」

そう叫ぶレイシス一尉。

そりゃそうだ。

ここ最近のレイシス一尉は、任務で失敗ばかり。

エースオブエースと呼ばれている彼女は、「彼女に不可能な任務は無い」と言われたほどだ。

ところが、最近では味方誤射など日常茶飯事、人質を犯人ごと攻撃、護衛物を破壊などなど、色々な失態を繰り返している。

雑誌などでも、「レイシス一尉、まさかの不調!?」とか、「エースオブエース失墜の危機!?」などと囁かれている。

ぶっちゃけ俺には…………というか、レイシス一尉本人以外の部隊員にはその理由は分かっている。

その理由は、高町二尉がいなくなったからだ。

数ヶ月前、高町二尉は新設された部隊、『機動六課』に出向となった。

このレイシス一尉率いる部隊には、レイシス一尉以外が知る、暗黙であり共通の見解が一つあった。

それは、『真のエースオブエースは高町 なのは二等空尉である』というものだ。

高町二尉は、レイシス一尉の敵味方関係なしの無差別攻撃から仲間を守り、レイシス一尉が攻撃する前に人質を犯人から救出し、これまた護衛物をレイシス一尉の考え無しの攻撃から守ったりetc。

レイシス一尉の尻拭い全てを受け持っていた。

その高町二尉の尽力に何一つ気付かないレイシス一尉は、手柄をすべて自分の物とし、エースオブエースの名を欲しいままにしていた。

訓練の模擬戦闘では、レイシス一尉は高町二尉に無敗だが、傍から見ても高町二尉が手を抜いているのは丸分かりだった。

そんなことにも気付かないレイシス一尉は、増長を続ける。

ある日、俺は高町二尉に訪ねたことがあった。

何故レイシス一尉にワザと負けているのかと。

その問に返ってきた答えは、

「あの人、勝ったら勝ったでめんどくさそうなんだもん」

不覚にも凄まじく納得してしまった。

レイシス一尉の魔導師ランクはS+。

しかし、その殆どはレイシス一尉が持つ、馬鹿げた魔力量のおかげだ。

対して高町二尉の魔導師ランクはAAA。

もし高町二尉がレイシス一尉に勝ったら、確かに色々めんどくさそうだ。

あの人、プライドだけは人一倍あるからな。

話が逸れたが、レイシス一尉の尻拭いを受け持っていた高町二尉が居なくなったため、レイシス一尉のメッキが剥がれだしたのだ。

俺たちもフォローしようとしているが、全く追いつかない。

居なくなって、高町二尉の凄まじさを再認識した。

それでも、調子が悪いとかなんとか言い訳ばかりして、自分の非を認めようとしない。

いや、もしかしたら気づいているのかもしれないが、それを認めるのを自分のプライドが許さないってところか?

ふと海辺を見ると、遠くに見覚えのある桜色の魔力光が見える。

そういえば、この辺りには機動六課の隊舎があるって話だったな。

「あら? あの魔力の色は……?」

レイシス一尉も、その魔力光に気付いた。

レイシス一尉の顔を見ると、ニヤリと怪しい笑みを浮かべていた。

うわ、嫌な笑顔。

また無茶なこと考えてるのか?

そうならないように祈るものの、この数十分後に問題は起きてしまうのだった。






【Side Out】








俺がティアナに圧縮魔力弾を教えてから数週間。

今日は、なのはとの模擬戦の日だ。

どうやらティアナは、アニメの時のような無茶はせず、調子も良さそうだ。

俺と桜はちょっと気になったので、模擬戦を観戦させてもらってる。

スバルとティアナは今までの訓練を活かし、うまくなのはと戦っている。

ティアナは、俺の教えた圧縮魔力弾は使っていないが、キレのある魔力弾のコントロールで、なのはを攻撃していく。

とはいえ、元々の地力が違うので、ジリジリとスバルとティアナは追い詰められていく。

しかし、

「ここまでは想定通り! スバル、次で最後よ!」

「うん! なのはさんをあっと言わせてあげよう!」

何かを企んでいるのか、そうやり取りを交わす2人。

「勝負を掛けてくるみたいだね」

身構えるなのは。

そして、

「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」

ウイングロードと共に、スバルが突っ込んでいく。

「一直線に突っ込んでくる!? 幻影?」

なのははとりあえず迎撃しようと魔力弾を放とうとするが、別方向からティアナの魔力弾が飛んできた。

なのはは咄嗟にそれを躱すが、その隙にスバルが突っ込んでいく。

そこでなのはは気付く。

「幻影じゃない! 本物!?」

「一撃必倒! ガルルキャノン!!」

スバルは、ガルルキャノンをゼロ距離で打ち込む。

なのはは咄嗟にプロテクションを張ってそれを防いだ。

いくらなのはでも、スバルのガルルキャノンは防御に集中しないと防ぎきれない。

「くぅうううううっ!」

「はぁああああああああっ!!」

スバルは力を込めるが、流石に破れそうにない。

「惜しかったけど、これで終わりだね!」

スバルのガルルキャノンの勢いが弱まってきたので、なのははスバルにバインドをかけようと手を翳す。

しかし、スバルはニヤリと笑って、

「まだ終わりじゃないですよ、なのはさん」

その言葉に怪訝に思ったなのはだが、そこで気付いた。

シュミレーターで作った廃ビルの屋上に、ティアナがクロスミラージュを構え、立っていた。

「ティアナ!? でも、ティアナの魔力弾じゃ、私の防御は抜けない……!」

「そうとは限らないですよ。 ティアだって、毎日頑張ってるんだから!」

スバルはそう言うと、ガルルキャノンの反動でその場を飛び退く。

「ティア!」

「OK!」

スバルがティアナに合図を送ると、ティアナはなのはに狙いを定める。

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

ティアナは引き金を引いた。

その瞬間、圧縮された魔力弾が目にも止まらぬスピードで発射された。

その魔力弾は、なのはのプロテクションに当たるが、それを貫き、なのはのバリアジャケットをも貫いた。






【Side なのは】





私は呆然とした。

ティアナの魔力弾は今までの魔力弾とは比較にならないスピードと貫通力を持っていた。

私のプロテクションを軽々と貫き、バリアジャケットまで破った。

私は、肩口の破かれたバリアジャケットを見る。

ティアナの魔力弾は、辛うじてかするに留まった。

もし直撃したら一撃で落とされていたと思う。

「外したっ!?」

ティアナが悔しがる。

今のはユウ君が考えた超圧縮魔力弾。

ユウ君いつの間に教えたの。

私には出来なかったし、桜お姉ちゃんでも一発作るのに相当の集中力と時間がいる。

それをティアナはこんな短期間に……

しかもトレーニングバインドつけたままで。

やっぱりティアナは魔力制御に関しては天才なの。

私は平静を装ってスバルとティアナにバインドをかける。

「はい、2人とも捕獲。 これにて模擬戦修了」

私はそう言うが、内心冷や汗ものだった。

「ああ~、惜しかったなぁ」

スバルがそう漏らす。

「ごめん、最後にミスったわ」

ティアナがスバルに謝った。

「それでも凄いよ。 なのはさんのプロテクションとバリアジャケットを貫くなんて!」

スバルは笑ってティアナを賞賛している。

うん、私もビックリしたよ。

さてと、今日の模擬戦の反省点を教えようとしたとき、

「ッ…………!?」

ひじょーに見覚えのある色の魔力弾が私に向かって飛んできた。

私は咄嗟にプロテクションを張ってその魔力弾を受け止める。

「なのはさん!?」

いきなり攻撃を受けた私に驚いてスバルが声を上げる。

今の魔力光の色を持っていて、こんなことをする人なんて、私の知る限り1人しかいない。

「…………いきなり何するんですか? レイシス一尉?」

私は上空にいるレイシス一尉に呼びかけた。

「うふふ。 久しぶりですね高町さん。 いえ、たまたま貴女の訓練を見かけたから、どんなものかと思いきや、随分と甘っちょろい訓練をしているのね?」

私は頭が痛くなってくるのを感じた。

相変わらずの相手を馬鹿にするような話し方だね。

「私の訓練はともかく、いきなり攻撃するのはどうかと思うんですけど?」

「そう遠慮しなくてもいいのよ。 今日は特別に私の訓練を受けさせてあげるわ」

あ~、本当に頭が痛くなってくる。

「ロ、ローザ・レイシス一等空尉…………?」

「あ、あのエースオブエースの…………?」

私の後ろではスバルとティアナが呆然と声を漏らしている。

私は、2人のバインドを解除すると、

「2人とも、早くこの場を離れて」

そう呼びかける。

「「えっ?」」

「早く!」

私は2人を急かすが、

「特別大サービスです。 そこの2人にも私の教導を受けさせてあげるわ!」

そう高らかに言うレイシス一尉。

あ~も~、貴女教導資格持って無いでしょ!

私は叫びたくなるのを必死で堪える。

私の大事な教え子をこんなところで潰されたくないの!

「さあ、教導開始よ!」

問答無用で魔力弾をばら撒き始めるレイシス一尉。

相変わらずの無差別攻撃なの~!

「レイジングハート!」

『Wide area protection.』

私はレイジングハートに呼びかけ、広範囲障壁を張って、レイシス一尉の攻撃に備えた。





【Side Out】






【Side スバル】





レイシス一尉の魔力弾が雨霰と降り注いでくる。

って、こんなの避けれるわけ無い!

その時、

「レイジングハート!」

『Wide area protection.』

なのはさんが障壁を張ってくれて、私達を守ってくれた。

「2人とも、私の後ろから出ちゃダメだよ!」

なのはさんはそう言って魔力弾を受け止め続ける。

だけど、なのはさんの表情を伺うに、かなり厳しそうだ。

「ほらほら! どうしたの高町さん!? そんなことでは教導にならないわよ!」

そう言ってくるレイシス一尉。

でも、こんなの教導とは思えない。

「何言ってるのよあの人! これの何処が教導なのよ!?」

ティアも私と同じことを思っているのか、そう口から漏らす。

あの人は、ただ闇雲に魔力弾をばら蒔いているだけ。

きっと、なのはさんだけならなんとか対処出るんだけど、私達を守るために受けに回ってるんだ。

私は、なのはさんに自分たちを気にしないように言おうとした。

でも、

「な、なのはさ「スバル、ティアナ……」」

なのはさんが私の呼びかけに被せるように声を発した。

「心配しないで。 絶対に守るから!」

そう言ったなのはさんの背中は、とても大きく見えた。

ああ、そうだ。

だから、私はこの人に憧れたんだ。

この人のように、誰かを守れるようになりたいと、そう思えるようになったんだ。

その時、魔力弾の嵐が一旦途切れる。

終わった?

私はホッとしてレイシス一尉を見上げた。

でも、

「…………ッ!」

そこには、今まで以上の魔力を杖に集中させるレイシス一尉の姿。

「砲撃ッ!?」

ティアが思わず叫ぶ。

そして、

「受けなさい!」

それが放たれた。

「レイジングハート! 全力防御!」

『Yes,master.』

砲撃をなのはさんが受け止める。

「ッ…………! くぅぅぅぅぅぅぅ…………!」

でも、砲撃の威力は凄まじく、なのはさんのプロテクションに罅が入り始めた。

このままじゃみんな吹き飛ばされちゃう。

その時、

「レイジングハート! バリアジャケットの魔力をプロテクションに回して!」

なのはさんのバリアジャケットが消え、いつもの教導制服になる。

でも、そんなことしたら、いくら非殺傷の攻撃でも身体にダメージが!

なのはさんのプロテクションは、先程よりも持ちこたえてるけど、破れるのも時間の問題。

レイシス一尉は、まだ余裕がある。

「これで終わりよ! 高町さん!!」

レイシス一尉が更に砲撃に魔力を込め、極太の砲撃となってなのはさんのプロテクションに罅を入れていく。

「くぅぅぅ…………あああっ!?」

遂になのはさんに限界が訪れ、プロテクションが破られた。

「「なのはさん!!」」

私とティアは思わず叫ぶ。

そして、なのはさんが閃光に飲み込まれようとした刹那。

突然砲撃が縦に切り裂かれた。

更に、

「ドラモンキラー!!」

次の瞬間に衝撃が走り、レイシス一尉の砲撃を跡形もなく吹き飛ばした。

「えっ?」

「い、一体何が……?」

呆然と呟く私達。

すると、目の前になのはさんを優しく抱き上げた黄金の装甲を纏う一人の男の人がいた。

「あ…………ユウ君…………」

なのはさんは、魔力を使い果たしたのか、弱々しくそう呟く。

って、この人ってユウさん?

「大丈夫か、なのは?」

そう優しい声で語りかけるその人の声は、紛れもなく毎日聞いているユウさんの声だ。

でも、髪と瞳の色が赤くなっている。

「うん……助けてくれたんだね…………ありがとう」

なのはさんは、もう心配することは無いと言わんばかりに安心しきっている表情だ。

すると、疲れ果てたのか、なのはさんはそのまま気を失った。

そして次の瞬間、

「「ッ!?」」

押しつぶされそうな程の凄まじい魔力を感じた。

その発生源は目の前のユウさん。

ユウさんは、上空のレイシス一尉を睨むように見上げている。

「ユ、ユウさんが…………怒ってる?」

私は思わず呟く。

ユウさんが怒ってる所なんて初めて見た。

そして、

「待って、ユウ」

そんなユウさんを、呼び止めた人がいた。

それは、

「さ、桜さん…………」

ティアが呟く。

「ユウ、ここは私にやらせて」

桜さんは、ユウさんに近づいていくと、気を失っているなのはさんの頭を、そっと撫でる。

「…………わかった。 ここは譲ろう」

ユウさんは、先程までの魔力を収め、なのはさんを抱いたまま数歩下がる。

代わりに、桜さんが前に出た。

「そこの貴女。 確か、レイシス一等空尉だったかしら?」

桜さんがレイシス一等空尉に呼びかける。

「え、ええ…………そういう貴女は? 高町さんにそっくりですけど?」

レイシス一尉はさっきのユウさんの魔力にあてられたのか、少し吃っている。

「私は高町 桜。 なのはの双子の姉よ」

「高町さんの姉? 初耳ね」

「私は管理局員じゃないしね。 私はただのパティシエ見習いよ」

そういう桜さん。

って、桜さんがパティシエ見習いだったら、9割のパティシエは、パティシエ見習い以下って事なんだけど…………

「そう。 それで? その高町さんのお姉さんが、この私になんの用?」

「そうね。 簡単に言うわ。 私って、他の皆から言わせれば、結構シスコンらしいのよね?」

「は?」

桜さんは、何とも場違いな発言をする。

レイシス一尉もポカンとして声を漏らした。

「まあ、なのはを大切に思ってることは事実だし、別に否定する気はないんだけど…………」

「な、何が言いたいの!?」

レイシス一尉が声を荒げた。

「わからない?」

その瞬間、桜さんの雰囲気が目に見えて変わった。

「私の大切な妹を理不尽にいたぶって、ただで済むと思っていないでしょうね!!」

桜さんは凄まじい怒気を含んでそう叫んだ。

そして、

「レイジングソウル! セットアップ!!」

桜さんが白銀の魔力光に包まれた。

その魔力光の中から現れた桜さんは、なのはさんのバリアジャケットとよく似たバリアジャケットを纏っていた。

なのはさんのバリアジャケットとの違いは、青いラインが赤くなっているところと、髪型がポニーテールになっている事。

そして、デバイスの杖のコアが白銀なのと、持ち手のところが赤くなっていることだけだ。

桜さんは空を飛び、レイシス一尉と対峙する。

「気は確か? エースオブエースであるこの私に楯突くなんて?」

「もちろん。 何で貴女如きに臆さなきゃいけないわけ? なんちゃってエースオブエースさん?」

レイシス一尉の言葉にそう返す桜さん。

っていうか、なんちゃってエースオブエースって……

「な、なんですってぇ~!?」

当然というか、怒りで顔を真っ赤にするレイシス一尉。

「事実じゃない。 最近の貴女の失敗談は、世間話のいいネタよ」

「そ、それは偶々調子が悪かっただけよ!」

桜さんの言葉に、目に見えて焦るレイシス一尉。

「ふ~ん…………どうして調子が悪くなったか教えてあげようか?」

そんなことを言う桜さん。

って、桜さん分かるの?

「な、何故あなたが私の不調の原因を知っているんです!?」

「別に私じゃ無くても、アンタの部隊の人間なら、アンタ以外全員分かってるんじゃないの?」

その言葉を聞いて、レイシス一尉がバッと勢いよく振り向く。

その視線の先には、いつの間にかレイシス一尉の部下と思われる数名の局員がフェイト隊長達と一緒に観戦していた。

レイシス一尉が振り向くと、その局員たちは、露骨に視線をそらしている。

ご丁寧に口笛まで吹いてる人もいるし。

うわ~、これって桜さんの言ってたことが図星って事?

「で、アンタの不調の原因だけど、不調になり始めた時期に何かがあったでしょう?」

「は? 不調になり始めた頃? その時は高町さんが出向になったぐらいで、私には何の関係もないわ」

それを聞くと、桜さんは思いっきりため息をついた。

「そこまで言って気づかないのなら別にいいわ。 私がアナタに制裁を加えることには変わりないから」

桜さんは構える。

「ふん! 身の程を知りなさい!」

レイシス一尉も構えた。

すると、

「スバル、ティアナ、なのはを頼む」

ユウさんがなのはさんを私達に預けてきた。

「あ、あの、ユウさん?」

ティアナが質問しようとしたところで、

「そこを動くなよ。 心配するな。 一発も通さねえよ!」

そう言って魔力弾を用意するレイシス一尉を見上げた。

って、レイシス一尉もしかして!

その瞬間、再び辺り一面に魔力弾がばら蒔かれた。

うわ~!

また無差別攻撃!?

桜さんは余裕の表情でその魔力弾の嵐をひょいひょいと避けていくけど、私達は……

だけど次の瞬間、

「はぁああああああっ!!」

ユウさんが右腕を横薙に振るう。

それと同時に魔力斬撃が吹き荒れ、私たちの方に降り注いでいた魔力弾を全てかき消した。

「す、すごい…………」

私は呆然と呟く。

確か、レイシス一尉の魔導師ランクはSランクオーバーだったはず。

じゃあ、その攻撃を簡単にかき消したユウさんって一体…………

その時、

「シュート!」

桜さんが魔力弾の嵐を掻い潜りながら、1発の魔力弾を放った。

その白銀の魔力弾は、レイシス一尉へ一直線に向かう。

でも、私は1発だけじゃすぐにレイシス一尉の魔力弾にかき消されてしまうと思った。

だけど、それは違った。

「ふっ!」

桜さんが魔力弾をコントロールして、魔力弾の嵐の隙間を縫うようにレイシス一尉へ向かっていく。

そして、

「がっ!?」

魔力弾の嵐を掻い潜った白銀の魔力弾がレイシス一尉の頭部へ直撃した。

それによって魔力弾の嵐が途切れる。

「その程度?」

桜さんが余裕綽々の態度で言葉を投げる。

「くっ……その程度の魔力弾で私を倒せると思っているの!?」

レイシス一尉は頭に血が上っているのか、声を荒げて叫んだ。

「そう思うなら、さっさと私を落としてみなさい」

桜さんは挑発的な言動を続ける。

「このっ…………がっ!?」

桜さんに杖を向けたレイシス一尉の頭部に再び白銀の魔力弾が直撃する。

「それっ!」

桜さんが杖を振り上げると、いつの間に用意していたのか下から魔力弾が急上昇してきてレイシス一尉の顎を打ち上げる。

「がふっ!?」

大きく仰け反った所に、

「はっ!」

腹部にボディーブローの様に魔力弾を叩き込んだ。

その様子を見ていて、私はすごいと思った。

まるで、近接格闘の連撃の様に鮮やかな魔力弾の操作だ。

さっきから、桜さんは強力な魔法を使っていない。

ティアが普段使ってるぐらいの魔力弾だ。

「このっ……調子に乗るなっ!!」

レイシス一尉はそう叫ぶと、身体全体を防御フィールドで覆った。

桜さんの魔力弾は、その防御フィールドに全て弾かれて消える。

「うふふ。 この私の防御フィールド、破れるものなら破ってみなさい!!」

レイシス一尉はそう高らかに叫ぶ。

だけど、

「………………」

桜さんは全く攻撃しようとしなかった。

「ど、どうしたの!? さあ! 早く攻撃してみなさい!」

桜さんの様子に、そう促すレイシス一尉。

「なんで?」

桜さんは首を傾げてそう聞く。

「え?」

「何で攻撃が効かないって分かってるのに攻撃しなきゃいけないの?」

桜さんは、何を当然な事をと言わんばかりに問いかける。

「な……? そ、そう。 貴女は負けを認めるというのね?」

レイシス一尉はそう言うが、

「何で? 防御フィールドを張っている間は、あなたも攻撃出来ないでしょ? それでどうやって私を倒すの?」

「うぐっ……」

桜さんの切り返しに言葉を詰まらせるレイシス一尉。

「私は自分の出来ることと出来ないことを理解してるだけよ。 アンタと違ってね」

桜さんはそう言っているが、

「お前がその気になれば、今の状態でもあの程度の防御フィールド余裕でぶち破れるだろうに…………」

ユウさんが何かボソッと呟いた。

「まあ、仕方ないか。 アンタ、普通にヘッポコだもんね」

「わ、私がヘッポコですって!?」

桜さんの言葉に顔を真っ赤にして怒るレイシス一尉。

っていうか桜さん、エースオブエースをヘッポコって……

「ええ。 普通に戦って分かったわ。 アンタ、なのはの足元にも及ばないわ」

「な、何を言ってるのかしら? 私は高町さんには模擬戦で無敗なのよ!?」

「だからアンタはヘッポコなのよ。 なのはが手加減してることにも気付かないなんて……。 Sランクの試験に合格したのも偶々じゃないの? 私からすれば、あんたの魔導師ランクは、魔力を除けばAランク以下よ」

「な、何ですってぇ~~!!」

「魔力操作もおざなり、魔力弾も滅茶苦茶、砲撃も無理やり、戦況も見えてないし、戦術に至っては問題外。 これがヘッポコ以外のなんだって言うのよ?」

「ぐぎぎ……」

桜さんの言葉に、レイシス一尉は歯を食いしばる。

「そんな上官の尻拭いをやってたなのはの苦労がよくわかるわ」

桜さんはやれやれと首を振った。

その瞬間、

「このっ、言わせておけば!!」

レイシス一尉が杖に魔力を集中させ、

「喰らいなさい!!」

砲撃を放った。

その砲撃は、油断していた桜さんを飲み込む。

「「桜さん!?」」

私とティアは思わず叫ぶ。

しかも、その砲撃の射線軸上には私達のところも。

迫ってくる砲撃。

「こ、こっちに来る!」

私は慌てるが、

「落ち着け」

ユウさんの言葉で我に返り、

「ふん」

ユウさんの裏拳の一撃で砲撃は軌道を変えられ、海の方へ消えた。

「…………おいおい、今の殺傷設定だったぞ」

ユウさんが呆れた声でそういう。

でも、私は今の言葉を聞いて血の気が引いた。

じゃあ、今の砲撃に飲み込まれた桜さんは!

私は慌てて空を見上げる。

「あっはははは! 私を馬鹿にするからそうなるのよ!」

そう高らかに笑うレイシス一尉。

だけど、

――チャキ

「やっぱりアンタ、ヘッポコよ」

レイシス一尉のすぐ後ろで、なのはさんのバスターモードに似た形態の杖をレイシス一尉の後頭部に添えた桜さんの姿。

桜さんの言葉で笑いが止まるレイシス一尉。

一体どうやって?

「私も幻術が使えるの。 ティアナほどじゃないけどね」

私の疑問に答えるように桜さんが言葉を紡ぐ。

「それからさっきのあんたの評価に追加しておくわ。 心構えも全っ然ダメ」

その言葉でレイシス一尉が振り返った瞬間、

「ディバイン…………!」

桜さんのデバイスに魔力が集中し、

「…………バスターーーーーーーッ!!」

白銀の砲撃がレイシス一尉を飲み込んだ。

「きゃぁあああああああああっ!?」

レイシス一尉の悲鳴が響く。

何て言うか……桜さん、ある意味なのはさん以上に容赦ないな~。

いつもと違う雰囲気の桜さんに、思わず冷や汗を流した。






【Side Out】






レイシス一尉を落とした桜が、スッキリした顔で戻ってきた。

「お疲れさん……というほどでもないか?」

「当然。 あの程度楽勝よ」

桜はイイ笑顔でそう言う。

何と言うか、とことんプライドをズタズタにする戦い方と挑発だったな。

それはともかく、

「あんだけ馬鹿にしまくって、後からイチャモンつけられないか?」

俺がそう聞くと、

「それは大丈夫だと思うわよ。 なのはから聞いた限りじゃ、アイツはエースオブエースの称号に固執してるみたいだから。 タダのパティシエ見習いにコテンパンにやられたなんて言ってみなさい、間違いなくエースオブエースの座から転がり落ちることになるわ」

「なるほど」

俺は納得した。

ただ、お前がタダのパティシエ見習いってところは訂正したい。

お前は、パティシエとしても魔導師としても、全然“タダの“じゃねえだろ。

すると、桜はティアナの方へ歩いていき、

「ティアナ、私の戦い方、見てくれた?」

「は、はい。 凄かったです」

ティアナは若干緊張した面持ちで桜を見た。

まさか、翠屋のパティシエである桜が、エースオブエースを圧倒する実力の持ち主とは思っていなかったのだろう。

まあ、相手がヘッポコだったのも理由が大きいが。

「そんなに謙遜しなくていいから。 正直に答えて、今の私の戦い方、自分には不可能だと思った?」

そう言われた桜の問いに、

「…………不可能だとは……思いませんでした……」

遠慮がちにそう答える。

「よしよし。 これで不可能だなんて言ってたら、レイジングソウルでぶん殴ってた所よ。 なのはの訓練をここまで受けたんだから、あのぐらい出来て当然よ」

桜はティアナの頭を撫でながらそう言う。

そのティアナは桜の言葉に若干引いているが……

「少なくとも、今のティアナは戦い方によってはあのなんちゃってエースオブエースを倒すことができるぐらいには強くなってるわ。 だから、自信を持って。 ね?」

そう言われてティアナはハッとして、

「もしかして桜さん。 その事を私に教えるために?」

「ん~、まあ、アイツのプライドをズタズタにしてやりたいって気持ちもあったけどね。 Aランクレベルの技能でSランクオーバーの相手を倒す。 まあ、最後のディバインバスターは、ティアナの超圧縮魔力弾の代わりだけどね。 私じゃティアナみたいなスピードであの魔力弾は作れないから」

「えっ?」

「ティアナは気付いてないかもしれないけど、あの超圧縮魔力弾はSランクオーバーの魔力制御技能が必要よ。 連射となればそれ以上。 仲間内で魔力制御が得意な私でも、時間をかけて単発を作るのが精々。 ユウは魔力制御は問題外だけど、デバイスが規格外だからね」

「え? ええっ!?」

ティアナは驚きすぎて頭がついていかないらしい。

「そういうわけで、ティアナはもっと自信を持ちなさい。 あんまり謙遜してると、イヤミになるからね」

「は、はい……」

「ならば良し…………それからアンタ達!」

桜はレイシス一尉の部下達に呼びかける。

「アレ、何とかしといてね」

気絶しているレイシス一尉を指差し、イイ笑顔でそう言った。

「「「「イエス マム!!」」」」

見事な唱和と、一糸乱れぬ敬礼であった。








あとがき



第五十七話の完成。

また遅れてすみません。

3週連続土曜日出勤でした。

まあともかくティアナの魔改造が加速しました。

既になのはのプロテクションとバリアジャケットを貫く威力の持ち主です。

まだ狙いが甘いですが。

さて、ティアナ撃墜がなのは撃墜になったのかと思えばキレた桜によってなんちゃってエースオブエースの撃墜となりました。

まあなんちゃってエースオブエースは、なのはがいなけりゃタダのヘッポコですから。

今回はこの程度ですが、いずれはなのは自身がキッチリと落とし前を付けるつもりですが。

さて、次回もオリジナル分が大量に入ってきます。

とりあえず自分が読んできたなのは二次小説の中で、見たことないストーリーを書こうと思ってます。

まあ、探せばおそらくあるのでしょうけど……

ヒント、中心人物はエリオ君。

では、次回も頑張ります。





[15302] 第五十八話
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12
Date: 2013/04/21 18:54


第五十八話 親子という事





あのレイシス一尉を返り討ちにした出来事からしばらく。

今日はアニメで言う休日の日らしく、ティアナとスバルが初めての休みに喜んでいた。

そういえば、本当なら今日ヴィヴィオを保護するはずだったんだよな?

それじゃあ今日はない事もないのか?

俺がそう思っていると、食堂の前を子供たちが通りかかる。

「父よ。 予定通り出かけてくるぞ」

夜美が相変わらずの王様口調でそう言ってくる。

今日は子供たちも休日で、街に出かける予定だそうだ。

まあ、女性陣からすれば、エリオとデートのつもりなんだろうが、

「お、お父さん、行ってきます」

エリオが女性陣に囲まれながらそう言ってくる。

その顔は若干焦っているようだ。

「父様、行ってきます」

「おとーさん、行ってくるね!」

「パパ、行ってきまーす!」

「ユウさん、行ってきます」

星、ライ、ヴィヴィオ、キャロの順でそう言いながら食堂の前を通り過ぎる子供達。

「いってらっしゃい。 気をつけて行くんだぞ」

「「「「「は~い!」」」」

俺の言葉に、全員が唱和した。






【Side エリオ】




休日の今日。

僕たちは街に遊びに行くことにしていた。

でも、皆僕にくっつく様に歩くのはなんでだろう?

ともかく、電車で街に着き、事前に決めたルートで街を歩くことにした。

皆で買い物をして、映画館に行ったり、レストランで昼食を食べたり。

とても楽しい時間だった。

だけど、

―ドン

おしゃべりしながら道を歩いていたから、対向の歩行者とぶつかってしまった。

「あっ! すみませ…………ッ!?」

僕は慌てて謝罪をしようとしたけど、相手の顔を見て思わず言葉が止まってしまった。

なぜなら、

「あ…………エリ…………オ……?」

そこにいたのは、

「エリオ………なのか……?」

僕を生んだ、いや、

「………お、お父さん…………お母さん………?」

僕を“捨てた”人達だった。







【Side Out】






【Side 星】




昼食を済ませてからしばらくして、エリオが歩行者とぶつかってしまいました。

「あっ! すみませ…………ッ!?」

エリオは慌てて謝罪の言葉を口にしようとしましたが、相手の顔を見た瞬間、驚愕の表情をして言葉が止まりました。

相手は30~40代と思われる灰色に近い銀髪の男性と、茶髪の女性。

どうやらこの御二方は夫婦のようです。

「あ…………エリ…………オ……?」

「エリオ………なのか……?」

その御二方はエリオの名を呟きました。

そして、

「………お、お父さん…………お母さん………?」

エリオが驚愕の一言を放ちました。

「エリオ…………エリオ!」

女性の方が感極まる表情で涙を浮かべつつエリオに駆け寄ろうとしましたが、

「違う!!!」

エリオが叫んだのは絶対的な拒絶の言葉でした。

その言葉で、駆け寄ろうとした女性の足が思わず止まります。

エリオは御二方を睨みつけ、

「僕のお父さんは利村 ユウ!! お母さんは烈火の将シグナム!! 貴方達なんか、お父さんとお母さんじゃ無い!!!」

エリオは吐き捨てるようにそう叫ぶと、振り向きざまに駆け出し、人ごみの中に消えていきます。

「待って! エリオ!」

「エリオ! 待つんだ!」

御二方はエリオを追おうと駆け出し、

「待つのは貴様らだ!!」

夜美の一括で、その足が止まりました。

夜美が御二方の前に堂々とした態度で歩いていきます。

「先ほどの話から察するに、貴様らがエリオの………いや、エリオの“オリジナル”の両親なのだろう?」

夜美から投げかけられた問いに、驚愕の表情を浮かべる男性と女性。

「何故……その事を………?」

男性が驚愕の表情を浮かべたまま言葉を漏らします。

「この場にいるもので、そこのキャロ以外はエリオと同じ身の上なのでな」

夜美は、暗に自分達もクローンであることを明かしました。

「き、君達も誰かの………」

「そのキャロとて、一族から追放………家族に捨てられた身だ。 そういう意味ではエリオと同じだな」

「違うわ! 私達はエリオを捨てたわけじゃ………」

「同じことだ。 エリオにとってはな」

夜美の言葉に反論しようとした女性でしたが、続けて言われた夜美の言葉に、何も言えなくなってしまいます。

「貴様たちがエリオを捨てていないと言うのなら、何故エリオを助けなかった? エリオが前に言っていたぞ。 貴様たちはエリオが助けを求めたのに抵抗を止めてしまったとな」

「そ、それは………」

「その程度の覚悟しか無いのならば、貴様らは違法行為に手を出すべきでは無かったな」

夜美はそう言うと踵を返し、

「ついて来い。 今のエリオの両親に会わせてやる」

御二方の返事も聞かずに歩き出しました。







【Side Out】





午後2時を回った頃。

俺は、子供たちは夕方まで遊んでいると思ったのだが、突然エリオだけが食堂に駆け込んできた。

そして、

「お父さん!」

そう叫んでエリオは俺に抱きついてきた。

「おいおい、どうしたんだエリオ?」

様子のおかしいエリオにそう問いかける。

「お父さん! 僕のお父さんとお母さんは、何があっても今のお父さんとお母さんだけですから!」

俺はその言葉で、両親に対することで何か不安になることがあったのだと察する。

俺は、エリオが落ち着くまで慰め続けることにした。






それからしばらくして、

「父よ、戻ったぞ!」

「父様、ただいま帰りました」

「おとーさん、ただいま!」

「ただいま、パパ!」

「ユウさん、ただいま」

エリオ以外の子供たちが帰ってくる。

ふと見ると、子供たちの後に続いて夫婦と思われる男性と女性がやって来た。

「この者達を父と烈火の将に会わせてやろうと思い連れてきた。 格の違いを見せつけるためにな。 母には許可を貰っている故、心配せずともよい」

夜美の言葉に、俺はその人たちに視線を向ける。

すると、エリオが俺に抱きつきながらその人たちを睨みつけていることに気がついた。

「…………貴方達は?」

俺が問いかけると、

「突然すみません。 私はソリオ・モンディアル、こちらは妻のヴェローナです」

自己紹介する2人。

「……なるほど、“モンディアル”……ね…………」

エリオと同じファミリーネーム。

そして、エリオの今の態度で、大方の予想はついた。

(リニス。 シグナムを呼んできてくれ)

俺は厨房にいるリニスに念話で呼びかけた。

(わかりました)

リニスも話を聞いて予想はしていたのか、すぐに頷いてくれた。






食堂でモンディアル夫妻と向かい合って席に座る。

尚、エリオは俺の隣に座っている。

しばらくすると、シグナムが食堂にやって来た。

「ユウ、何があった? エリオに関することだと聞いたが………」

シグナムは来てすぐにそう問いかけてくる。

「ああ、シグナム。 こちらはモンディアル夫妻だ」

俺はシグナムにモンディアル夫妻を紹介する。

モンディアル夫妻は、揃って頭を下げた。

「モンディアル………? なるほどな」

シグナムもその名を聞いただけで、ある程度は察したようだ。

シグナムは、エリオの隣の席に座り、モンディアル夫妻と向き合う。

「それで? まずは要件を聞こう」

シグナムはそう問いかける。

モンディアル夫妻は、睨みつけられるような視線に気不味い雰囲気になっていたが、口を開いた。

「……まずは、エリオの面倒を見ていただき、本当にありがとうございます」

ソリオさんが頭を下げる。

「親が子の面倒を見るのは当然のことだ。 貴方達に礼を言われることではない」

シグナムの言葉には、かなりの刺が伺える。

「どうかお願いです。 エリオを私達に返していただけないでしょうか?」

俺はやはり、と思った。

そして、俺が返す言葉は、

「身勝手だな」

「同感だ」

俺とシグナムはそう言い放った。

「そう思われるのは当然かもしれません。 しかし、私達は本当にエリオを愛しているのです」

その言葉に、

「嘘だ!!」

エリオが叫んだ。

モンディアル夫妻は困惑の表情を浮かべる。

「本当に僕を愛してくれていたのなら……………何であの時僕を助けてくれなかったんだ!!」

エリオは胸の内に秘めていた思いをぶちまける。

「僕は何度も、嫌だって………助けてって………何度も叫んだ!! でも、貴方達は助けてくれなかった!!」

その言葉に、モンディアル夫妻は身を竦めるように俯いた。

「研究所に連れて行かれた時も、僕は、お父さんとお母さんがいつか助けに来てくれるかもって思ってた! 苦しい実験にも、いつかは………いつか必ず助けに来てくれるって、信じてた!!!」

エリオは涙を流しながら叫び続ける。

「でも、貴方達は助けに来てくれなかった! 痛かった…………苦しかった…………そして何より寂しかった!! それなのに、今更しゃしゃり出てきて両親面するなぁ!!!」

自分の思いをぶちまけたエリオは、肩で息をする。

「はぁ………はぁ………そんな絶望の淵にいた僕を助けてくれたのは………」

「もういいエリオ」

そんなエリオを、シグナムは優しく抱きしめる。

「あ………お母さん……」

シグナムに抱きしめられて落ち着いたのか、エリオの気は鎮まって行く。

シグナムはモンディアル夫妻を睨みつけると、

「私も聞きたい。 何故貴方々はエリオを助けなかった?」

「そ、それは…………」

シグナムの言葉に、モンディアル夫妻は言葉を詰まらせる。

「エリオの事が知られれば、立場が危うくなることなど分かりきっていたはずだ。 貴方々は、それを承知で違法行為に…………プロジェクトFに手を出したのではなかったのか?」

「「………………」」

「その程度の覚悟で、何故エリオを生み出した?」

シグナムがそう問いかけると、

「…………それなら………どうすれば良かったんですか?」

ヴェローナさんが呟く。

「我が子を亡くし、その悲しみに耐え切れず違法行為にすがるしかなかった私達に…………あのままずっと悲しんでいればよかったんですか!?」

涙を流しながら叫ぶヴェローナさん。

その言葉に、

「勘違いしないで欲しい。 別に違法行為に手を出したことにどうこう言うつもりはない」

俺は口を開いた。

「俺も子供の時に両親を亡くしている。 家族の死の悲しみは、よく分かっているつもりだ。 その悲しみに耐えられなかった貴方達の気持ちもわからないわけじゃない」

俺の言葉に、モンディアル夫妻は驚愕の表情を浮かべる。

「俺達が言いたいのは、何故そこまで生み出したエリオを守り抜かなかったということだ。 そこまでしてエリオを生み出したのに、立場が悪くなるという理由だけで手放した。 俺達は、そこが理解できない。 持論だが、人工的に生命を生み出すというのは、神に喧嘩を売るに等しいと俺は思っている。 そこまでしたのなら、世界を敵に回すぐらい簡単なことだろ?」

俺の言葉に、黙り込む2人。

「ともかく、エリオを返す云々については俺はエリオの意思を尊重します。 今のエリオは興奮しているからまともな答えは出せないでしょう。 1週間時間をください。 その間にエリオによく考えさせ、答えを出させます。 少なくとも、もう一度エリオを貴方達と会わせることを約束します」

そう言う俺の言葉に、

「分かりました。 その間に、私達もどのような答えでも受け入れる覚悟をしておきます」

ソリオさんはそう言うと、ヴェローナさんを連れて機動六課隊舎を後にした。













――一週間後。

今日はモンディアル夫妻との約束の日。

俺は、エリオに問いかける。

「エリオ、答えは出たか?」

「…………はい!」

エリオははっきりと返事をした。

これなら大丈夫そうだな。

俺はそう思い、モンディアル夫妻との約束の場所へ向かうことにした。




約束の場所は、もう使われていないとある港。

ここを指定した理由はあるのだが、杞憂に終わればいいと思っている。

そこには既にモンディアル夫妻がいた。

「お待たせしました」

俺は、モンディアル夫妻から5mほど離れた場所で立ち止まり、そう言った。

「いえ………」

俺は2人を見て、

「では、よろしいですか?」

俺はそう聞く。

「「はい」」

2人同時に頷いた。

俺はエリオをその場に残し、シグナムを連れてモンディアル夫妻の方とは反対方向に歩き出す。

そして、エリオから5m離れた地点で振り返った。

丁度、エリオを中心に俺達とモンディアル夫妻が対照になる位置関係だ。

「エリオ。 お前が決めた答えをこの場で示せ。 モンディアル夫妻を選ぶならモンディアル夫妻の方へ。 俺達を選ぶなら俺達の方へ来てくれ」

「はい!」

俺の言葉に、エリオはしっかりと頷いた。

そして、エリオは一度目をつぶり、

「……………よし!」

そう覚悟を決めると、迷わずに一歩踏み出した。

モンディアル夫妻の方へ。

「あっ………エリオっ!」

ヴェローナさんが嬉しそうな声を漏らす。

対して、俺達は何も言わない。

事前に決めていた。

エリオがどんな選択をしようと、それを受け入れることを。

エリオは一歩一歩踏みしめるようにモンディアル夫妻の方へ歩いていく。

しかし、モンディアル夫妻まで後2mという地点で、エリオは立ち止まった。

「………エリオ?」

怪訝な声を漏らすヴェローナさん。

そこで、エリオは口を開く。

「…………僕を生み出してくれたお父さん、お母さん。 この一週間、僕はずっと考えました。 ずっとずっと考え続けました………………そして答えが出ました。 お父さんとお母さんが僕を助けてくれなかったことは、もう恨んではいません…………ですが、それを抜きにしても、今僕がお父さんとお母さんと慕っているのは、今のお父さんとお母さんなんです。 僕は、今の生活が好きなんです。 お父さんがいて………お母さんがいて………そして皆がいる今の生活が大好きなんです。 だから………だから………僕は、利村 ユウと烈火の将シグナムの子供であり続けます!」

エリオは涙を滲ませる。

「だけど………僕は、これからもエリオ・モンディアルです! 今のお父さんとお母さんの子供でも、僕はモンディアルを名乗り続けます! それが…………それが貴方達との絆の証だから!」

エリオの告白に、モンディアル夫妻は涙を流す。

「エリオ…………」

「だから………これだけは伝えておきたかった……………お父さん………お母さん…………僕を生み出してくれて、ありがとう………」

エリオの言葉に感極まったのか、モンディアル夫妻はエリオの元に歩いていき、エリオを抱きしめる。

「ありがとうエリオ…………不甲斐ない私達を許してくれて、ありがとう………」

涙を流しながらエリオを抱きしめるモンディアル夫妻。

しばらくすると、モンディアル夫妻はゆっくりとエリオから離れる。

「エリオ…………風邪をひかないようにね」

「はい」

「それから、好き嫌いしないように………」

「……はい」

「いつまでも、元気でいてね……………」

「…………はい!」

エリオに語りかけるヴェローナさんとエリオの声が徐々に涙声になっていく。

ヴェローナさんは耐え切れなくなったのか、ソリオさんに縋り付いた。

エリオは、涙を拭って踵を返す。

そして、俺達の方を向くと駆け出した。

俺達は、微笑んでエリオを迎え入れようとした。

その瞬間、

――ドン

エリオの足元に魔力弾が撃ち込まれた。

「ッ!?」

思わず足を止めるエリオ。

そして、

――パチパチパチ

何処からか拍手の音が響く。

すると、

「いやいや、中々見応えのある茶番劇だったよ」

建物の影から、白衣を来てメガネをかけた黒髪の男が出てきた。

「き、貴様は!?」

ソリオさんが声を上げる。

「研究所が血塗られた聖王に壊滅させられ、貴重な実験体も行方知れずとなったが………もしやと思いお前たち夫婦をマークしておいて正解だったようだ」

「な、なんだと!?」

「実験体が生きていれば、お前たちのところに戻るだろうと予想していたのだよ。 まあ結果は少々違ったが、無事実験体を発見できたのだ。 礼を言うよ、モンディアル夫妻」

俺は少々頭にきながらその男の話を聞いていた。

おそらくコイツは、エリオをモンディアル夫妻の元から連れ去った張本人だろう。

エリオを助けた研究所にいるとばかり思ってたが、どうやら違ったようだ。

ソリオさんは、その男とエリオの間に立ちふさがる。

「おや? なんのつもりかね?」

「私はもう間違えん。 エリオは私が守る!」

ソリオさんは、覚悟を決めた目で男を睨みつける。

「やれやれ、そんなことをしても立場が悪くなるのは君の方なんだよ?」

その男が手を上げると、男の後ろから2人の局員らしき人物が現れる。

「あの実験体を確保しろ」

その命令に従い、その2人は駆け出す。

局員らしき2人はソリオさんも邪魔者として排除するつもりのようだ。

「やらせはしない!」

ソリオさんも引くつもりは全くない。

2人がソリオさんに向けて魔力弾を放とうとした瞬間、

「おらっ!」

「はぁっ!」

1人は俺が殴り飛ばし、もう1人はレヴァンティンを起動したシグナムに斬り飛ばされていた。

吹き飛ばされた2人は、揃って海に落ちる。

「おいおいソリオさん。 エリオの親を差し置いてカッコイイこと言わないでくれよ」

「全くだな」

俺とシグナムは軽口を飛ばす。

「エリオを守るのは………」

「私達の役目だ!」

俺とシグナムは揃ってそう言う。

「ふ~む。 ここは穏便に済ませたいんですがねぇ~」

白衣の男はやれやれと言う表情をしながら、何か後ろに合図を送る。

すると、1人の男がアタッシュケースを持って俺たちの前にやってきた。

そして、そのアタッシュケースを俺達に見せるように開く。

その中には、札束の山。

「一億あります。 その実験体の値段にしては、破格だと思うんですがねぇ~」

「………………………」

白衣の男はそう言ってくるが、俺はこの状況に、とある既視感を感じていた。

そして、その理由を思い出す。

この状況は10年前、翠屋で管理局が俺を引き取ろうと士郎さんに大金を見せた状況にそっくりだった。

その時、士郎さんは全く揺らぎもせずに一蹴し、俺は凄いと思いつつ、俺だったら揺らぐだろうなと考えていた。

しかし、いざその状況が目の前に来たとき、俺の心に迷いは無かった。

左手に炎を発生させ、

「……………これが答えだ」

「へっ?」

アタッシュケースを持ってきた男が声を漏らした瞬間、メガフレイムを叩き込んだ。

爆炎で札束は灰となり、男は爆風で吹き飛ばされ海に落ちる。

「家族を金で売ると思うとは………見損なうな!!」

計らずも、あの時の士郎さんと同じ言葉が俺の口から出てきた。

「仕方ありませんねぇ~。 手荒なことはしたくなかったのですが………」

白衣の男がパチンと指を鳴らすと、建物の影から100人に近い人数の局員が現れ、俺達を取り囲む。

「こちらにはこの通り、管理局の許可と武装局員が付いています。 逆らえば逆らうほど立場が悪くなるのは其方ですよ」

白衣の男は、余裕の態度でそう言うが、

「飛龍一閃!!」

炎を纏った蛇腹剣が白衣の男のすぐ横を吹き飛ばした。

それに巻き込まれた数名の局員が吹き飛ばされ海に落ちる。

「ちぃ、外した! 怒りで手元が狂ったか!」

シグナムが悔しそうにそう漏らす。

「あ、貴女は人の話を聞いていたのですか!? 逆らえば立場が悪くなるのはあなたなのですよ!?」

白衣の男は若干焦った表情でそう叫ぶ。

「フン! エリオか自分の立場か………どちらが大切かなど比べるまでもない!」

シグナムはそう言い放つ。

「正義は我々にあるのですよ! 分かっているのですか!?」

白衣の男はそう言うが、

「私達の元からエリオを連れ去ることが正義だというのなら、私達は悪で十分だ!!」

シグナムは叫ぶ。

「リィン! アギト!」

俺がそう叫ぶと、倉庫の影からリィンとアギトが飛び出して来て、俺達の近くに浮遊する。

「アギト、お前はシグナムに力を貸してやってくれ」

俺はアギトにそう言う。

「ま、少々不満だけど、親父の頼みと弟分のエリオのためだ。 力を貸すぜシグナム!」

「ふっ、ゆくぞアギト!」

「とーさま!」

「ああ、リィン!」

俺はリィンと、シグナムはアギトと手を触れる。

「「「「ユニゾン・イン」」」」

光に包まれる俺達。

「アイシクル、セットアップ!」

『Yes, Master. Stand by, Ready. Set up.』

俺はアイシクルを起動させる。

『X-Mode.』

俺は、青い装甲を身に纏う。

シグナムは青紫基調の色合いの服と金色の篭手、薄紫の目で彩度の低いピンク色の髪になり、背中に二対の炎の翼が発生した。

バリアジャケットを纏い、俺達は局員と対峙する。

この姿を見て、驚きに呆けるモンディアル夫妻に、エリオが話しかけた。

「僕を生んでくれたお父さんとお母さん。 これが今の僕のお父さんとお母さんです。 僕のためなら、世界を敵に回すことも厭わない。 僕はそんなお父さんとお母さんが大好きです」

エリオが嬉しいことを言ってくれる。

「シグナム! 俺達の息子がああまで言ってくれたんだ! 気合入れていくぞ!」

「もちろんだ! 私たちの子供に手を出せばどうなるか、その身を持って知らしめてやるぞ!」

俺は全武装を展開。

「覚悟しやがれ!」

マルチロックで局員たちに標準を会わせる。

シグナムは炎を操り、鞭のように振り回す。

「『剣閃烈火!』」

シグナムとアギトの声が重なる。

「『ガルルバースト!!』」

「『火竜一閃!!』」

レーザーの様な魔力砲撃と無数のミサイルが局員達に襲いかかり、炎の鞭が辺り一帯をなぎ払う。

一瞬にして局員は全滅し、全員が海に落ちた。

「あがっ………あががっ…………」

白衣の男は腰を抜かしていた。

俺とシグナムは白衣の男に一歩踏み出す。

その途端、恐怖に駆られたのか、

「ひ、ひぃいいい! しょ、少将!! お願いします!!」

すると、建物の中から、1人の初老の男が姿を表す。

「ふはははは! あの人は管理局の少将です! 言い逃れは出来ませんよ!」

白衣の男はそう言うが、

「いいや、覚悟するのは貴様の方だ」

別の男性の言葉が響いた。

よく見ると、少将と呼ばれた初老の男の腕はバインドで拘束されている。

その初老の男の後ろから出てきたのは、槍のデバイスを持った大柄の男性。

それは、

「ゼスト隊長………」

シグナムが呟く。

そう、初老の男性を拘束していたのはゼストさんだった。

「貴様を誘拐未遂の現行犯と違法医学実行の疑いで逮捕する!」

ゼストさんがそう言い放つと、ゼストさんの後ろからクイントさんとメガーヌさん、数人のゼスト隊の隊員が現れ、白衣の男を拘束する。

「な、なぜです!? 一部隊の隊長如きが、何の権利があって!?」

白衣の男は、懲りもせずに暴れるが、

「時空管理局地上本部、レジアス・ゲイズ中将の命令だ」

命令書を白衣の男に突きつけるように見せるゼストさん。

まあ、もしもの時のために準備しておくようにお願いしたのは俺なんだが………

すると、ゼストさんはモンディアル夫妻の元へ歩いていく。

「失礼。 私は首都防衛隊ゼスト・グランガイツです。 詳しいお話を伺いたいので、同行を願えますか?」

ゼストさんの言葉に、

「はい………全てお話します」

ソリオさんとヴェローナさんは頷く。

「あ、あのっ!」

モンディアル夫妻を連れて行くゼストさんに、エリオが声をかけた。

「あの、その2人は………」

何か言おうとするエリオにゼストは微笑み、

「心配せずとも、そこまで重い罪にはならないはずだ。 私も、出来るだけ罪が軽くなるように力を尽くすことを約束しよう」

そう言った。

「お願いします!」

エリオは勢いよく頭を下げる。

すると、

「エリオ………」

ヴェローナさんがエリオに話しかける。

「お母さん………」

「エリオ、私達が罪を償うことができたら…………もう一度、会いに来ていい?」

その問いかけに、

「……………はい! もちろんです!」

エリオは迷わずに頷いた。

その言葉にモンディアル夫妻は笑みを浮かべ、ゼストの後について行った。

「大丈夫か? エリオ」

シグナムがエリオに呼びかける。

エリオは、滲ませていた涙を袖で拭い、

「大丈夫です。 僕には、お父さんやお母さんたちがいますから!」

エリオは笑顔でそう言った。

「フッ、そうか」

シグナムは笑みを浮かべる。

その時、

「ちょっとシグナム~!」

クイントさんがシグナムに駆け寄ってきた。

「クイント分隊長………」

「シグナム、あなた思った以上にちゃんと母親やってるのね。 驚いたわ」

クイントさんが笑ってシグナムに話しかける。

「そ、そうでしょうか?」

「ええ。 もうビックリしちゃった。 『エリオを守るのは、私達の役目だ!』とか『私達の息子に手を出せばどうなるか、その身を持って知らしめてやる!』とか、よくあんなセリフ恥ずかしげもなく言えたわね」

クイントさんの言葉に、シグナムは顔を真っ赤にする。

「あのっ、それはっ………!」

確かにその場の勢いで言ったが、改めて聞かされると凄まじく恥ずかしいな。

「これはスバルやギンガにいい土産話が出来たわね」

「ああっ! それはやめてくださいクイント分隊長!」

先ほどとは違うシグナムの姿に、エリオも笑いを零す。

俺は、エリオの頭に手を乗せ、

「エリオ、お前は紛れもなく俺達の息子だからな」

俺はエリオの頭を撫でながらそう言った。

「はいっ!」

エリオも笑顔で頷く。

「じゃあ、帰るか!」

「はいっ!」

俺とエリオは帰路につく。

「あっ! ユウ! エリオ! 待て! って、ああっ! クイント分隊長!」

いつもの日常へと………







あとがき


第五十八話の完成。

今回は1週間で更新できた!

はい、今回のお話は、エリオとモンディアル夫妻の絡むお話でした。

モンディアル夫妻の名前は、エリオの名前と同じくスズキの車種から適当に。

ほぼオリジナルのお話です。

自分って、なのは二次小説を読んだ中で、エリオとモンディアル夫妻が絡むお話を読んだことがなかったので書いてみました。

まあ、自分は読む数は少ないので、多分書いてる人もいると思いますが………

で、自分が書いてみた結果、こうなりました。

どうでしょうか?

というか、久々に戦闘(というほどでもない)シーンを書いた気がする。

さて、次回はユウ君がブチギレることが発生する………かも?


あと、二十六話のリインフォースの罪を許すという場面について、書き直したほうがいいと言う意見がありました。

皆さんはどう思います?

書き直したほうがいいと言うのなら書き直すつもりもありますし、ある程度の修正案もたっています。

ご意見お聞かせくだい。


次も頑張ります。







[15302] 第五十九話
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12
Date: 2013/08/22 00:00


第五十九話 心の傷





【Side レジアス】




機動六課の発足から数ヶ月。

部隊員の人間関係でいくつか問題が上がっているが、機動六課そのものには大した問題も無く、ここまで来ている。

俺がそのように考えていると、部屋のドアが開き、オーリスが険しい表情をして入室してきた。

「大変です! 中将!」

俺の前に来るなりそう叫ぶオーリス。

「どうした?」

俺がそう尋ねると、

「今しがた入った報告ですが、機動六課に緊急に査察が入るそうです! それを命じたのは最高評議会です!」

オーリスがそう言ってくる。

「それがどうした? 機動六課に査察が入ったとて、これといった問題点は無いと思うが……」

査察が入る程度十分に予想できる範囲内だ。

そして、機動六課そのものには致命的と言える問題点はない。

査察が入ろうとも、そこまで慌てる事では無いと思うが………

「六課に入る査察官が大問題です!」

オーリスは鬼気迫る表情で叫ぶ。

「やれやれ、一体誰だというのだ?」

私はそう聞きながら、机に置いてあったコーヒーを口に含む。

「クルーザー元提督! 現一等空佐です!」

その言葉を聞いたとたん、思わず吹き出した。

「ブフォッ!? 何だとぉッ!!??」

そこで気付いた。

私が吹き出したコーヒーが、正面にいたオーリスにモロにかかっていた事に。

「…………………」

オーリスは無言でメガネを外し、布でレンズを拭く。

そして、そのメガネを掛け直し、私に笑いかけると…………

ま、まて。

早まるな!

私が悪かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!







【Side Out】






【Side はやて】




機動六課創設から今まで、大した問題も無くここまで来とる。

まあ機動六課自体、ジェイルさんの起こした問題を迅速に解決する部隊やからな。

予めジェイルさんから連絡来るから、即座に解決できるのは当たり前や。

まあ、それでも即座に解決せな後で面倒になる事件ばっかやけどな。

ジェイルさんを危険視する声も、管理局の中じゃ大分高まってきとるし、計画通りや。

と、その時レジアス中将から緊急の通信がきた。

「はいはい。 お久しぶりですレジアス中将」

私は通信を開くとそう挨拶する。

けど、

『挨拶は後回しだ! すぐにユウ君を隊舎から連れ出せ!!』

険しい表情でそう叫ぶレジアス中将。

でも、その頬に見事な紅葉が付いていて、シリアス感に欠ける。

「そんなに慌ててどないしたんですか? あと、見事な紅葉ですね」

『いきなりだが、抜き打ちで機動六課に査察が入ることになった!』

紅葉についてはスルーされた。

でも、

「査察ですか? でも、なんでユウ君を連れ出す必要が………?」

ユウ君達翠屋の店員は、民間協力者という立場で隊舎内に入ってもらっとる。

まあ、我ながら無茶したと思っとるけど、お陰で訓練の士気も鰻上りやから、十分に効果を発揮しとる。

致命的と言える問題は無いはずやで?

『査察する人物が問題なのだ! いいか!? 今回の査察官は、クルーザー元提督だ!!』

その人物の名を聞いた瞬間、私は固まった。

「クルーザー元提督って…………もしかしなくてもあの………」

私が確認しようとしたその瞬間、

――ゾクッ

背筋に悪寒が走るぐらいの凄まじい魔力を感じた。

「って、まさかもう手遅れ!?」

私は通信そっちのけで駆け出した。





【Side Out】






「あ~! おなかすいた!」

朝の訓練を終えて、スバルが大きな声でそう言いながら食堂に入ってくる。

ティアナ、アリサ、すずか、アリシアもそれに続く。

いつもと変わらぬ平和な日々。

だけど、

「何故この私がこのような部隊の査察などを………」

どこかで聞いたことがあるような声。

「仕方ありませんよクルーザー一佐。 最高評議会の勅命なのですから」

続いて、忘れるに忘れられない名前も聞こえた。

見れば、管理局の制服を着た、10人前後の集団がいる。

そしてその集団を率いる50代ぐらいの男性局員がいた。

更に、その顔は………

「―――――――ッ!?」

俺は思わず殴りかかりたくなる衝動を必死で抑えた。

落ち着け、ここで奴を殴ってもはやて達に迷惑が掛かるだけだ。

自分にそう言い聞かせ、心を落ち着かせるために深呼吸する。

「ユウ………」

桜もその事に気付いたのか、カウンターの影になって食堂の方から見えない所で俺の手を握ってくれてる。

桜のお陰もあり、ようやく心が落ち着いてくる。

「何だこの部隊は? 査察官に出迎えもなしか?」

上から見下した物言いでそう言ってくるクルーザー。

それだけでも、俺の心は沸騰しそうになる。

普通なら、このぐらい言われても我慢できる。

だけど、こいつは………

コイツだけは………!

「………ユウ!」

桜が先程よりも手を強く握って俺を落ち着かせようとする。

「―――ッ! ………すまん」

俺は桜に謝る。

「仕方ありませんクルーザー一佐。 今日の査察は事前に知らせていないという話ではありませんか」

取り巻きがそういうが、

「たとえそうだとしても、上官が現れたら持て成すのが下士官の義務ではないのかね?」

またふざけた事を抜かすクルーザー。

なんでコイツは俺の感情を逆なでするような事しか言わねえのかな!?

俺がそう思っていると、

「フン! 大体何故この私がこのような部隊の査察になど来ねばならんのだ! それもこれも、みんなあのハラオウンの小僧の所為だ! 親の七光りで提督になっただけの若造が!」

七光りだけで提督までなれるかっつーの。

少なくともクロノは努力は惜しんでなかったぞ。

「クルーザー一佐。 それ以上は上官侮辱罪になります」

取り巻きの一人が宥めようとするが、

「ええい、忌々しい。 奴さえ居なければ私は今頃はこんなところにはいなかったはずだ! あの程度のことをグチグチ言いおってからに…………奴らは私の出世の足掛かりにしてやろうとしたのだ。 逆に光栄に思ってくれなければ!」

その瞬間、俺の思考は怒りで埋め尽くされた。

コイツハイマナントイッタ?

次の事を考える前に、俺は握られていた桜の手を振りほどいていた。







【Side スバル】




朝の訓練が終わって、朝食のために食堂に来ていた。

ティアも、最近は訓練の成果が実感できるようになったのか、どこか嬉しそうに思える。

訓練はキツいけど、そのあとの食堂では癒されるよね。

翠屋三大マスコットのリィンちゃんと、アギトちゃんと、久遠ちゃん。

この3人の可愛らしい姿を見ただけで訓練の疲れなんか吹っ飛ぶよ!

で、いつもの様に3人に癒されながら朝食を摂ってたんだけど、

「何故この私がこのような部隊の査察などを………」

なんか偉そうな声が聞こえてきた。

「仕方ありませんよクルーザー一佐。 最高評議会の勅命なのですから」

私達が振り返ると、局員の制服に身を包んだ10人前後の集団がいた。

誰だろう?

今日は何も予定は来てなかったけど、

「抜き打ちの査察かしら?」

ティアが呟く。

「何だこの部隊は? 査察官に出迎えもなしか?」

「仕方ありませんクルーザー一佐。 今日の査察は事前に知らせていないという話ではありませんか」

「たとえそうだとしても、上官が現れたら持て成すのが下士官の義務ではないのかね?」

なんかやな感じの査察官だなぁ。

私がそう思っていると、

「フン! 大体何故この私がこのような部隊の査察になど来ねばならんのだ! それもこれも、みんなあのハラオウンの小僧の所為だ! 親の七光りで提督になっただけの若造が!」

「クルーザー一佐。 それ以上は上官侮辱罪になります」

「ええい、忌々しい。 奴さえ居なければ私は今頃はこんなところにはいなかったはずだ! あの程度のことをグチグチ言いおってからに…………奴らは私の出世の足掛かりにしてやろうとしたのだ。 逆に光栄に思ってくれなければ!」

その瞬間、

――ゾクッ

背筋に悪寒が走った。

更に、押しつぶされそうに感じる強大な魔力。

こ、この感じって前にも………

私達が咄嗟に振り向いた瞬間、

――ドゴォォォォン

食堂のカウンターが吹き飛んだ。

「「「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」」」

食堂にいた全員が声をあげる。

そこには、

「テメエは……………どの口がそんな事ほざいてやがる!!!」

鬼気迫る表情で叫ぶ、ユウさんがいた。

今のユウさんは、いつもの穏やかな雰囲気は全くなく、前のレイシス一尉の一件と同じぐらいの………ううん、それ以上の怒りの感情が読み取れた。

「な、何なんだ一体!? 貴様は誰だ!?」

クルーザー一佐がそう言った瞬間、

「ッ!? ……………そうかよ………俺が誰だか分からねえか…………」

一瞬驚愕の表情をしたあと、

「このっ………クズ野郎がっ!!」

ユウさんは拳を振りかぶってクルーザー一佐に殴りかかった。

私達は、いきなりのことで止める暇もなかった。

だけど、

「ユウ! だめぇ!!」

桜さんが叫んでユウさんの振り上げた拳にバインドを発生させる。

そのおかげで、ユウさんの動きは一瞬止まる。

でも、すぐにバインドは引きちぎられようとしていた。

けど、その一瞬出来た隙に、ユウさんの体にいくつものバインドが掛けられる。

「抑えてください! ユウ!」

「気持ちはわかるけど落ち着きな!」

見れば、リニスさんとアルフさんが手を厨房の前で手を翳していた。

その時、

「ユウ! 落ち着きなさい!」

「ダメだよ! ユウ!」

アリサさんとアリシアさんがユウさんに抱きつくように抑えていた。

すると、すずかさんがユウさんの目の前に行き、ユウさんの顔に手を添えると目を瞑り、

「ユウ君、ゴメン!」

一言謝ると、すずかさんが目を見開く。

でも、すずかさんのその眼は、いつもの色ではなく、血のような紅に染まっていた。

すずかさんの眼がユウさんと合う。

すると、ユウさんの体がぐらりとよろめいた。

そして、

「ごめんなさい! ユウ君! ファイエル!」

ファリンさんの声が聞こえたかと思うと、何かが目の前を通り過ぎ、

「ぐはっ!?」

ユウさんが吹き飛ばされていた。

って、今ユウさんを吹き飛ばしたのって………

「「手?」」

私とティアは思わず声を漏らした。

ユウさんを吹き飛ばしたのは、どう見てもワイヤーがついた手にしか見えない。

すると、その手がワイヤーに引っ張られて引き戻されていく。

私とティアは思わずその手を視線で追っていき、

――カキン

という音と共に戻ったのは、ファリンさんの腕だった。

「「ファ、ファリンさん?」」

一体今のは何だったんだろう?

私達が疑問に思う間もなく、

「頭冷えた? ユウ」

桜さんがユウさんに歩み寄り、そう声をかけた。

すると、ユウさんは静かに立ち上がり、

「………ああ……………すまん、頭冷やしてくる」

俯きながらそう呟いて、食堂を立ち去った。

ユウさんが立ち去って少しすると、

「き、貴様ら! この私に向かって何ということをしたのだ!? この事は上に報告してやるからな!」

いきなり我に返ってそうまくし立てるクルーザー一佐。

私達が大変だと思っていると、

「失礼、クルーザー一佐」

そこへ八神部隊長が現れた。

「機動六課部隊長、八神 はやて二等陸佐です。 先程は大変失礼をしました」

八神部隊長は敬礼しながら謝罪の言葉を口にするが。

「今更謝っても遅いわ! この事は厳しく上に報告する! 覚悟しておくんだな!」

怒りで顔を真っ赤にしながらそう叫ぶクルーザー一佐。

すると八神部隊長は、冷たい視線をクルーザー一佐に向けた。

でも、それも一瞬のことで、すぐにいつもの表情になると、

「先程の彼の名はユウ・リムルート。 この名を聞いて何とも思わなければ、報告でもなんでもご自由に」

八神部隊長はそう言う。

って、リムルート?

ユウさんのファミリーネームは、利村じゃ………

すると、クルーザー一佐は、目に見えて動揺した。

「リ、リムルートだと………ま、まさか………」

クルーザー一佐は何か呟くと、逃げるように立ち去った。

「まったく。 迷惑なやっちゃな」

八神部隊長は呆れるようにそう言うと、私達に視線を向けた。

「すまんな2人とも。 驚かせたみたいやな」

そう謝ってくる八神部隊長。

「い、いえっ!」

「た、確かに少し驚きましたけど……」

私達はそういうが、実際にはちょっとどころか、すごい驚いた。

前のレイシス一尉の時は、なのはさんを理不尽に傷つけようとしたから、ユウさんは怒ったんだと思う。

ユウさんは、なのはさんや桜さん達をとても大切に思っている。

昔から翠屋に通っていて、ユウさんの事を見ていたからよくわかる。

そして、虫を殺すことも躊躇するほどの優しい人。

そんなユウさんが、あれほどまでに怒るなんて、ただ事じゃないと思っていた。

「そうは言っとるけど、やっぱり気になるって顔やなぁ」

八神部隊長にはあっさりと見抜かれた。

と、その時、

――ドゴォォォン

いきなりの爆発音と共に、隊舎が震える。

「な、何っ!?」

私は驚いて叫ぶ。

――ドゴォォォォォン ズドォォォォォォン

爆発音と振動は、断続的に続いている。

「あ~あ、派手にやっとるようやなぁ………」

八神部隊長は、気楽そうな声色で。

それでいて、どこか悲しそうな雰囲気を思わせる表情で呟いた。

私達が外へ出ると、そこには、

「ユウ………さん……?」

ティアが呟く。

私達の視線の先には、私達が訓練で使っているシュミレーターで、そのシュミレーター全てを埋め尽くさんとする膨大な数のガジェットと、そのガジェットを次々と破壊していくユウさんの姿。

「ちょ、これって!?」

シャーリーさんが慌てたようにシュミレーターの操作パネルを開く。

「動作レベル、攻撃精度、共に最大レベル………! ああっ、痛覚レベルも!」

シャーリーさんがそう呟いて言葉を失う。

前に聞いた話だけど、このシュミレーターの最大レベルは、本物を遥かに超えるスペックを持ち、隊長達でも一人ではクリアできない難易度だ。

そして痛覚レベルは、読んで字のごとく攻撃を受けた時に感じる痛みの強さ。

最大レベルだと、本当に攻撃を受けたかのような痛みが走る。

実際に怪我はしないけど、その痛みは相当なものだと思う。

「や、止めさせないと!」

シャーリーさんが慌ててパネルを操作し、シュミレーターを終了させようとした。

でも、

「シャーリー、ユウ君の好きなようにさせてあげて」

なのはさんがそれを止めた。

「なのはさん!? でも、これじゃ危険すぎます!」

シャーリーさんはそう叫ぶが、

「うん………でも、今はそっとしておいてあげて」

なのはさんはそう言うと少し悲しそうな視線をユウさんに向けた。

「なのはさん………」

私はなのはさんにつられてユウさんを見る。

ユウさんは、凄まじい魔力を以て次々とガジェットを破壊していく。

だけど、不思議と先ほどのような恐怖は感じられない。

まるで、子供が泣き叫んでいるかのような印象を受ける。

「…………スバル、ティアナ。 ユウ君のことが気になる?」

「「………はい」」

なのはさんの言葉に、私とティアは正直に頷いた。

何故ユウさんがあんなにも怒り、そして今泣き叫んでいるのか。

その理由を知りたいと思った。

「そう…………じゃあ、ロビーに来て。 そこで教えてあげる」

なのはさんはそう言うと歩き出し、私たちもそれに続いた。







ロビーには、隊長、副隊長全員と、フォワード陣、そして、子供達までもが集合していた。

「なのはさん……これは?」

隊長達はともかく、子供達がなんでいるんだろう?

「あ、ごめんね。 子供達も話を聞くってきかなくて」

子供達も、何でユウさんがあんな行動を起こしたのか知らないんだ。

「私達は、父様の娘です」

「当然、話を聞く権利は我らにもある」

星ちゃんと夜美ちゃんがそう主張する。

なのはさんは、子供達の気持ちをわかっているのか何も言わない。

それから、なのはさんに椅子に座るように促され、私達はそれに従う。

なのはさん達も、椅子に座った。

そして、少し間を置いて話しだした。

「…………………先ず、さっきはやてちゃんの言葉を聞いた人もいると思うけど、ユウ君の本当のファミリーネームは、利村じゃなくてリムルート。 これだけで、ティーダさんぐらいの年代の人なら、大体の予想はつくんじゃないかな?」

私達は、思わずティーダさんに視線を向ける。

「リ、リムルートって……………もしかしてあの………」

ティーダさんは、目を見開いて驚愕している。

私達には、何のことか分からないけど。

「多分………いや、十中八九ティーダさんの言うとるリムルートで間違いないと思う」

八神部隊長がティーダさんの考えを肯定する。

いや、だから私達には何のことかさっぱりわからないんですけど。

「今から十数年前の話だけど………とある部隊が、無人の管理外世界で未確認の魔法生物と戦闘になったの………」

フェイトさんが真剣な面持ちで話しだした。

「当時、その部隊には2人のスーパーエースがいた。 それが、レイジ・リムルート執務官とリーラ・リムルート執務官補佐…………ユウの両親」

桜さんもその話に便乗する。

「そして、当時その部隊を率いていた人物こそクルーザー元提督。 現一佐」

「「ッ!?」」

その事実に、私とティアは僅かに声を漏らす。

「当時の報告では、ユウの両親は部隊を守るため、自爆魔法で魔法生物と相打った………そう報告されていた」

「でも、ユウの元には、両親からデバイスが転送されてきていた。 真実と、両親からの最後のメッセージを記録したデバイスが…………」

「そのデバイスには、クルーザー元提督がユウ君の両親を魔法生物の足止めに使い、アルカンシェルでユウ君の両親諸共吹き飛ばした事実が記録されてた」

「なっ!? そんな……………!」

「嘘………!?」

私達は信じられなかった。

管理局員がそんな非道な行為を行ったことが。

「当時のユウ君の年齢は7歳。 しかも、その日は丁度誕生日だった。 本来なら両親から祝福されるはずの誕生日が、両親との永遠の別れの日になっちゃったの」

「「……………………」」

何も言えなくなる私達。

「普通の子供だったら、訳も分からず泣き叫ぶだけだったはず。 でもね、ユウは他とちょっと違うところがあって、子供の時から大人と同等の考えができたの。 だから、ユウはこの出来事を作戦の為の犠牲だと割り切ろうとした。 だけど、管理局がユウに伝えたのはさっきも言った体良く改竄された偽の報告。 そしてなにより、ユウの両親に対する謝罪が無かったことで、ユウは管理局に対してこれ以上ない嫌悪感を持つようになった。 今ではある程度マシになってるけど、それでも嫌悪感は完全には拭いきれていないわ。 今機動六課にいる事だって、はやてが拝み倒して、尚且つ部隊のメンバーが顔見知りが大多数を占めるということで何とか納得してもらったのよ」

ユウさんの壮絶な過去に、私達は呆然となる。

「で、さっきのクルーザー元提督は、後に当時執務官だったクロノ提督に告発された。 でも、管理局からクルーザー元提督に出された罰は、降格と数年の懲役。 しかも、懲役の方は執行猶予期間内に功績を挙げたから、ほぼ免除。 実質的にクルーザー元提督の罰は降格のみ」

「そんな!? そんなことってありえるんですか!?」

ティアが我慢できなかったのか、そう叫ぶ。

「ティアナ、スバル。 あなた達は管理局のことを問題が無い組織だと思ってるかもしれないけど、私たちからすれば、結構問題の多い組織なのよ」

「「えっ?」」

「まずは、管理局の基本的な役割を言ってみて?」

「えっと、次元世界をまとめて管理する、警察と裁判所が一緒になったところで、各世界の文化管理や、災害救助、そして、危険なロストロギアの回収及び管理が主な活動………ですよね?」

ティアがそう言うと、

「うん、だいたい正解。 さて、そこで既に問題があります。 それはどこ?」

えっ?

この時点で既に問題があるの?

「え、え~と…………わかりません!」

私は素直にギブアップする。

ティアを見ると、

「………すみません。 私にもわかりません」

そう言って、ティアもギブアップした。

「うん、それはしょうがないよ。 ティアナたちにとっては当たり前のことだからね」

「まあ、これからいう事は、あくまで私たちから見た視点ってだけで、一概に全部が悪いとは言い難いから、勘違いしないでね」

「管理局の役目は、さっき言った警察と裁判所が一つになったようなもの………つまり、法を適用する役割と、法を執行する役割があって、それがひとつの組織の中に入っちゃってるってこと」

「更には、その法を決めることも管理局が行っている。 つまり管理局は、法の決定、適用、執行を全て行えるということだ。 これがどういう事か分かるか?」

そこまで聞いて何となくわかるような気がするけど、何ていうか表せる言葉が出てこない。

「……………ッ!? 管理局は、次元世界の王とも呼べる組織………!?」

ティアが気づいたように口にする。

「その通りだ。 確かに全てを1つの組織に統合すれば、組織内のやり取りは円滑に進み、より多くの犯罪の対処が可能になる。 だが、その代わりに権力が集中し、濫用を行うことも容易い」

私はそれを聞き、

「じゃあ、クルーザー元提督の罪も………」

「十中八九操作されたと思う。 本来なら、問答無用で刑務所行きや」

「そんな………管理局がそんな事を…………」

ティアが悲痛な表情をする。

かくいう私も、それは酷いと思った。

「もう一つ言っておくけど、今話したような不正は、管理局全体で行われているわけじゃなくて、あくまでごく一部で行われていること。 だから、管理局全部が悪いってわけじゃないから、そこのところは勘違いしないでね」

「これで話は終わり、この話を聞いて、これからどうするかは、あなた達が決めて」

隊長達は、最後にそう締めくくった。







私とティアは、既に傾き始めた日の光の中を歩く。

「ねえ、ティア。 ティアは隊長達の話を聞いてどう思った?」

私はティアに尋ねる。

「正直信じられなかったわ。 でも、少なくともユウさんに関する過去は、事実だったと思うわよ。 なのはさん達が、ユウさんをダシに嘘をつくとは思えないし」

ティアはそう答える。

「うん………私もそう思った………だけど、管理局に対していい思いを持ってないユウさんが、今ここにいる理由って何なんだろう?」

「そうね、私もそれは考えたわ。 話では八神部隊長が頼み込んだっていうことだけど、だったらなんでユウさんが嫌うような管理局にわざわざ入局したのかってことになるのよ」

「そうだね。 はたから見てるだけで、なのはさんたちみんなユウさんにぞっこんだし………」

「アンタがそれを言う? ユウさんに会いたいからって毎度毎度翠屋に誘われてた私の身にもなってよ」

そう言われて、一瞬で顔が熱くなるのがわかった。

「あ………ううう…………ティ、ティアだってコーヒー飲みながら、ユウさんの事何度もチラ見してたじゃん!」

私は恥ずかしくなって思い当たることを言い返す。

すると、ティアの顔がボっと赤く染まった。

えっ? もしかして図星?

「そっ、そんなのアンタの見間違いよ、バカ!」

ティアは否定するけど、そんな真っ赤な顔で言われても説得力ないよ。

私がじーっと見つめていると、

「はぁ~~~~………」

突然大きなため息を吐いた。

「殆ど確信してたけど…………やっぱりアンタもだったのね? スバル」

「そう言うティアも?」

コクンと頷くティア。

「「はぁ~~~~~………」」

私とティアは、同時にため息を吐いた。

「アンタは何時から?」

そう聞いてくるティア。

「私は、この体の事を知られた時かな? それ以前は憧れのお兄さんって感じだった………私は気にしてないつもりだけど、やっぱりお母さんのクローンで戦闘機人って事実は変わらないから、こんな体の私を好きになってくれる人なんていないって……恋なんて私には無理だって諦めてた。 だけど、ユウさんは違った………もちろん桜さん達もだけど、こんな私やギン姉を自然に受け入れてくれた。 他の人達が見せる同情や哀れみじゃない………純粋に”ヒト”として私達を受け入れてくれた………その時だね、私が気持ちを自覚したのは………多分、ギン姉も一緒じゃないかな? 確認した訳じゃないけど」

私は自分の気持ちを正直に白状した。

「ティアは?」

「私は、前々からちょっと気になる男の人ぐらいだったんだけど………いつの間にか……かな? いろんな事に相談に乗ってくれたり、悩みを聞いてくれたり………思えば、兄さん以外じゃ一番頼れる男の人だったのよね」

ティアも素直に白状した。

「「…………はぁ~~~~~~………」」

また二人同時にため息が出る。

「どうする?」

ティアが聞いてくる。

「…………私は……知りたい……! もっともっと、ユウさんの事を……! あれ程の過去を持ちながら、なんで今機動六課にいるのかを………!」

私は自分の気持ちを口にする。

「そう………私も同じ気持ちよ」

「ティア………」

私は思わず笑みを浮かべる。

「じゃあ、早速ユウさんに宣戦布告しなきゃ!」

私はそう言って立ち上がる。

「へっ?」

ティアは呆けた顔をしてるけど、その手を掴み、

「え? ちょっと、本気?」

「本気も本気、マジ本気!」

ユウさんを探しに駆け出した。

「ちょっとぉ~~~~ッ!?」





【Side Out】





「はぁ~~~~~……………」

俺は思わずため息を吐く。

「やっちまった…………」

我慢しようとはしていたが、あいつの言葉に思わず我を忘れてぶん殴ろうとしていた。

今は大暴れして大分頭が冷えてきたが、自分がどのような事をしていたのか、今になって後悔している。

それに………

「なのは達はともかく………スバルやティアナ達がな~~~…………」

元々俺の過去を知っていて、何回か怒ったところも見たことがあるなのは達はともかく、スバルやティアナ達には、どうにも顔が合わせ辛い。

恐らく、あいつらの中の今までの俺のイメージが、ガラガラと音を立てて崩れたに違いない。

最悪避けられるかも…………

と、そこまで考えたところで、

「ユウさん見つけた~~~!!」

現在進行形で悩んでいた張本人であるスバルと、スバルに引きずられるように手を掴まれているティアナ。

顔を合わせ辛い2人に遭遇してしまった。

だが、2人は特に嫌な顔はせずに俺に駆け寄ってきた。

いや、ティアナはスバルに引きずられて、だが。

「スバル………ティアナ………」

どうにも顔が合わせづらいが、2人は俺の目の前までくる。

「あ~っと………悪かったな。 いきなりあんなことになって」

俺はとりあえず謝る。

「いえ! 確かに驚きはしましたけど、ユウさんが謝る必要はありません!」

スバルがそう言ってくる。

「え?」

「その………隊長達から聞いたんです………ユウさんの過去を………何故クルーザー一佐にあそこまで感情を露にしたのかを………」

ティアナが言いにくそうにそう言う。


「…………そっか」

「それでですね、その話を聞いて決めたことがあるんです!」

スバルが元気よくそう言う。

「何を決めたんだ?」

俺は特に不思議に思わずにそう聞いた。

そして、

「はい! 私達も、ユウさんのお嫁さん候補に入れといてください!」

思いっきりズッコケた。

「おい! 俺の過去を聞いたことの、何処をどうすれば今の話につながるんだ!? ティアナも何か言ってやれよ!」

俺は立ち上がり思わず叫ぶ。

「あ……いえ………その…………け、決してユウさんのお嫁さんになるのが嫌なわけじゃ………」

おいおい、ティアナもか?

スバルは踵を返す。

「ユウさん。 今言ったこと、本気ですから」

スバルは真剣な声でそう言うと、再びティアナの手をとって駆け出した。

「…………………」

俺はその場で呆然と見送り、

「なんでこうなるの?」

特に意識もせずに着々とハーレムを拡大していく自分に嫌気がさす。

『諦めてくださいマスター。 マスターのハーレム構築能力は、もはやレアスキルと言っていいレベルです』

『こうなればもはや腹を括って、全員面倒見るくらいの甲斐性を見せてください』

ブレイズとアイシクルがそう言ってくる。

「他人事だなテメーら」

『『他人事ですから』』

「はぁ~~~~~~~~…………!」

俺は最後に、深いため息をついた。







あとがき


やっと書けた………

第五十九話の完成です。

その割には出来はよくありませんが………

スランプ状態で強引に書いたものです。

別に今回の話はやらなくても問題なかったのですが、一応入れとこうと思いまして。

ついでにスバルとティアナのフラグをやや(?)強引に突っ込んどきました。

そして久しぶりに喋ったブレイズとアイシクル。

相変わらずのハーレム推奨派な2人(機?)です。

あと、最初にユウ君ぶっ飛ばされましたが、すずかの眼には催眠能力がある魔眼効果を勝手に設定しました。

原作とらハ3では、記憶操作ぐらいできますから、催眠能力ぐらいあってもおかしくないですよね?

その所為で、ユウ君がファリンにぶっ飛ばされました。

ファリンにもロケットパンチ装備です。

さて、次回はお子様達(三大マスコット除く)が大暴れの予定。

更にはその次に翠屋メンバーが大暴れの予定。

で、その次から3~5話ぐらいで終了の予定です。

では、次も頑張ります。




[15302] 第六十話
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12
Date: 2014/03/23 23:15
第六十話 大暴れ! お子様達の本領発揮!






【Side エリオ】



こんにちは。

エリオ・モンディアルです。

前の事件からしばらく経ち、機動六課にも平穏が戻ってきました。

平穏とは言っても、出動などはもちろんあるのですが、お母さん達の手に掛かれば、あっという間に解決です。

「「「「「「いってきまーす!」」」」」」

僕とキャロ、星、ライ、夜美、ヴィヴィオは今日も学校。

今日も一日楽しい学校生活が始まった。













はずだったんだけど……………

「騒ぐなガキども! 静かにしろ!」

現在全校生徒が体育館に集められてデバイス突きつけられてます。

一時間目の授業が始まってしばらくして、100人規模の集団が学校を占拠。

教員たちは突然の奇襲に動揺し、ほとんど何も出来ずに昏倒、もしくは捕縛されていた。

それで、生徒達は体育館に集められ、デバイスを突きつけられて脅されてる。

その生徒達の中でも、一際魔力ランクが高い生徒は隔離され、さらに厳重な警戒の元で監視されている。

困ったことに、友達のルーテシアや、クロノ提督の妹のリーナもそっち側だということだ。

僕やキャロ、星、ライ、夜美、ヴィヴィオはリミッターが掛かっているので、魔力高ランク保持者とは認識されず、一般生徒と同じ扱いだ。

僕はとりあえずキャロ達と合流する。

学校を占拠した人達は、円を描くように生徒を囲んでいるので、その円の中で移動するのは特に危険は無いようだった。

これからどうしようかと皆に相談する。

何で僕達にこれだけ余裕があるのかといえば、僕達の元々のランクは平均AAA。

リミッターは掛かってるけど、僕達が命の危機に晒されたとき、お父さん達の許可が無くてもデバイスが自動でリミッター解除するようになっている。

今はまだ命の危機と判断していないので、リミッターがかかった状態だけど。

つまりいざとなれば自分達だけなら如何とでもなるので余裕がある。

でも、友達や学校の皆を見捨てるつもりも無いから、安易な行動はしない。

それにもう少しすればお父さん達も駆けつけてくれるから、それほど心配はしてないんだけどね。








【Side Out】







【Side はやて】



突然来たカリムからの通信で、聖王教会系列の魔法学校が、武装勢力に占拠されたとの報告が入った。

私は占拠された学校の名前を聞いて、思わずたまげた。

そこは、夜美達が通う学校だったからや。

武装勢力は、どうやら聖王君主推進派、所謂過激派の集団らしい。

向こうの要求は、刑務所に入れられとる過激派メンバーの即刻開放。

この要求が受け入れられない場合、子供達の命は保証しないときた。

私は、カリムの言葉を聞くやいなや、機動六課フォワード陣+翠屋メンバー+ユーノ君&ヴィータに報告。

即時出動を決めた。

因みに、報告した時のそれぞれの言葉。

「ウフフ………星を人質にするなんて…………O・HA・NA・SHIなの」

レイジングハートを起動させ、黒いオーラを纏うなのはちゃん。

「ライ………今お母さんが助けに行くからね」

そんな優しそうな言葉とは裏腹に、犯人たちの首を刈り取らんとする死神の如き雰囲気を醸し出すハーケンフォームを担いだフェイトちゃん。

「エリオを人質に取るとは………我が剣の錆になりたいらしいな………!」

静かな言葉の中にも凄まじい怒気を含ませてレヴァンティンを鞘から抜くシグナム。

「ヴィヴィオは絶対に助けるわよ!」

「もちろん!」

「目にもの見せてあげるから!」

なんか熱血系のノリのアリサちゃん、すずかちゃん、アリシアちゃん。

「ウチのキャロに手ェ出すとは……グラーフアイゼンの落ちないシミにしてやる」

殺る気満々でグラーフアイゼンを磨いているヴィータ。
「な、なんか隊長達、怖いよ~~」

「ま、まあ、自分の子供が人質に取られたんだし、私達に害はないわよ……………多分」

「今回ばかりは、犯人達も選択を誤ったとしか言えないな」

そんな7人の雰囲気に冷や汗を流しているスバルとティアナとティーダさん。

「まあ、いざという時にはリミッター解除すれば、よっぽど心配は無いと思うがな……」

「確かに。 あ、でもヴィヴィオだけは色々とメンドくさい事になりそうな気が……」

「そうだね。 ヴィヴィオが聖王だってことがバレると、聖王教会が色々うるさいと思うよ」

ユウ君と桜ちゃんとユーノ君は、余り心配してなさそうやな。

まあ、確かに私も夜美の事は心配やけど、これだけの面子が揃って出陣した時には、犯人たちの命運は終わっとるな。

ともかく、現場に急行や!






【Side Out】






俺達が子供達の学校に到着すると、ゼストさん達や陸士108部隊など、見たことのある面子が揃っていた。

どうやらレジアスさんが色々と手を回してくれたかららしい。

はやてがゼストさんやナカジマ三佐から話を聞くと、24時間以内に刑務所に入れられてる過激派メンバーを開放しろと言って来ている。

要求が受け入れられない場合、子供達の命は保証しないとの事。

なんつーか、めっちゃ典型的な人質取る組織の台詞だな。

ま、それはともかく子供達の無事を確認するか、

(え~、聞こえるか~? 子供達~?)

俺は仲間内しか知らない特殊な念話で子供達に話しかける。

(あ、お父さん!)

エリオが反応した。

(エリオか、そっちは無事か?)

(はい。 今の所、犯人達に僕らを傷つけるつもりは無いみたいです)

(そうか。 とりあえず、状況が動くまでは大人しくしてろよ)

(はい)

とりあえず、子供達の無事は確認できた。

さて、どうしようか?

俺がそう思っていると、

(もしも~し!)

別回線から念話が入った。

ん? この声って、

(もしかしてセインか?)

俺が答えを返すと、

(ピンポ~ン。 その通り~!)

セインは機嫌よく返事を返した。

よく見ると、俺の足元の地面に指だけが出ているのを発見した。

(で? 何しに来たんだ?)

(ひどい言い草だね~。 折角ドクターの命令で手伝いに来たっていうのに)

(スカリエッティが?)

(そうそう。 特にトーレ姉とかチンク姉なんか、めっちゃやる気だったけど。 ありゃやる気じゃなくて殺る気だったな)

(あ、そう………)

俺は少し冷や汗を流す。

(で? どういう指示を受けてきたんだ? あと、ここにいるメンバーは?)

俺はそう尋ねる。

(とりあえずユウ兄の言う事に従っとけってさ。 あと、ここにいるのはさっき言ったトーレ姉とチンク姉。 あとディエチも狙撃手として離れたところに待機してるよ)

(わかった。 必要になったら頼むから、それまで待機しててくれ)

(りょ~かい!)

念話を終えると、地面から出ていた指が引っ込む。

さて、どうするか?

俺はそんな事を思いつつ、占領されている学院に目をやった。

その次の瞬間、

――ドゴォォォォン

凄まじい爆発音と共に、体育館の屋根が吹き飛ぶ。

体育館の中から、巨大な影が身を起こした。

白い甲殻を持つそれは、

「は、白天王!? まさかルーテシアが!?」

ゼスト隊のメガーヌさんが叫んだ。

そう、体育館の屋根を吹き飛ばし現れたのは、アニメではルーテシア最強の召喚獣である白天王だった。

つーか、何で白天王が出てくるんだよ!?

「ギャォォォォォォォォォォォッ!!」

白天王は咆哮を上げる。

「ッ!? いけない! 暴走してる! 落ち着きなさい、白天王!」

メガーヌさんが白天王が暴走していることに気付き、コントロールを試みるが、

「ッ………やっぱりダメだわ。 あの白天王は恐らくルーテシアが召喚したもの。 私のコントロールは受け付けない………!」

焦ったようにそう言うメガーヌさん。

って、あれだけ派手に天井ぶっ壊したら、生徒たちにも被害が…………

俺は思わず冷や汗を流す。

エリオ達は最悪の場合でもリミッター解除されるから死ぬことはないだろうけど、他の生徒たちがやばい。

そう思ったとき、体育館の方でユーノの魔力を感じた。

よく見れば体育館の内部に、ユーノの防御結界が張られている。

…………って、ユーノの結界!?

そういえば、ユーノどこいった!?








【Side キャロ】





ユウさんから念話が届き、とりあえずホッとする私達。

その時、

「キュッ!」

足元から、何かの鳴き声がした。

私が足元を見ると、

「フェレット?」

地球の動物であるフェレットによく似た小動物がそこにいた。

あれ?

何でフェレットがこんな所に?

私がそう思っていると、そのフェレットは私の体を駆け上がって肩に乗った。

すると、

(キャロ、僕だよ)

とても聞き覚えのある念話がした。

(お、お父さん!?)

私は驚いて聞き返す。

(当たり。 いざという時は僕が守るから安心してね)

お父さんはそう言ってくれる。

その時、

「ヒック…………ウェェェェェェェン!」

恐怖に耐え切れなくなったのか、誰かが泣き出した。

それは、まるで波紋が広がるように次々と伝染していく。

あっという間に周りの生徒たちは泣き声を上げる。

だけど、

「うるせえぞガキども! 静かにしろ!!」

犯人の一人が声を上げ、魔力弾を放つ。

一瞬はそれで静かになったけど、次の瞬間には、更なる泣き声が上がる。

「静かにしろっていうのがわからねえのか!! ぶっ殺されてえのか!?」

犯人の一人が近くにいた泣いている生徒を捕まえ直接デバイスを突きつけて脅した。

「ヒッ……!」

しかも、その生徒は、

「ルーちゃん!」

その子は私の友達のルーちゃん。

彼女は私と同等の召喚士の資質を持っていて、仲良くなれた子だった。

今のルーちゃんの表情は、恐怖に歪んでいる。

「イヤ…………」

ルーちゃんが呟く。

その時気付いた。

ルーちゃんの魔力が高まっていることに。

多分、無意識の防衛本能が働いてる。

「イヤァァァァァァァァァッ!!」

恐怖に耐え切れなくなったルーちゃんの叫びと共に、ルーちゃんの魔力が召喚陣を描く。

しかも、この魔力だとヴォルテール級の召喚獣が召喚されようとしてる!?

天井近くに描かれた召喚陣から、巨大な何かが現れた。

ルーちゃんの召喚獣は昆虫。

しかも、大きさもヴォルテール並み!

召喚された時には身を屈めていた状態だったから、何とか体育館に収まっていたけど、その召喚獣が雄叫びとともに立ち上がった。

「ギャォォォォォォォォォォォッ!!」

天井を突き破り、瓦礫が降り注いでくる。

「いけない!」

肩に乗っていたお父さんが瞬時に防御結界を展開。

生徒達を降り注ぐ瓦礫から守る。

私は、ルーちゃんが召喚した召喚獣を見上げる。

「やっぱり、ルーちゃんはあの召喚獣をコントロールできてない!」

私は思わず口に出す。

いくらルーちゃんの資質が高いといっても、今のルーちゃんじゃあのレベルの召喚獣をコントロールできない。

今にも暴走を始めようとしてる。

私は瓦礫で混乱している犯人達の隙をついて、ルーちゃんに駆け寄る。

ルーちゃんの傍には、リーナちゃんもいた。

「ルーちゃん! リーナちゃん!」

私は2人に呼びかける。

「キャロお姉ちゃん!」

リーナちゃんは答えたけど、ルーちゃんは恐怖で震えている。

「ルーちゃん! 落ち着いて! 召喚獣を大人しくさせなきゃ!」

私はルーちゃんに呼びかける。

でも、

「嫌………死ぬのは………イヤだぁぁぁぁぁぁっ!!」

ルーちゃんが恐怖に染まった表情で叫ぶ。

「ルーちゃん! しっかりして!」

リーナちゃんが必死にルーちゃんに呼びかける。

今のルーちゃんは、恐怖の余り錯乱してる。

「このガキ! なんてもんを呼び出しやがったんだ!」

さっきまでルーちゃんを脅していた犯人が、私たちに向かってデバイスを突き出した。

そのデバイスから魔力弾が放たれようとして…………

「ストラーダ!!」

『Speerangriff.』

横から突進してきたエリオ君に跳ね飛ばされた。

「ぐはっ!?」

エリオ君は直ぐに私達に駆け寄る。

「大丈夫? キャロ、ルー、リーナ?」

心配する声を掛けてきた。

やっぱりエリオ君はカッコいい。

「うん、大丈夫」

「エリオお兄ちゃん!」

私は頷き、リーナちゃんは嬉しそうな声を漏らす。

すると、

「パイロシューター!!」

桜色の魔力弾が犯人達を吹き飛ばす。

「高町 星とルシフェリオン………お相手致します」

星ちゃんがクールにキメる。

「くらえぇぇぇっ!! 光翼斬!!」

金色の魔力刃が数人の犯人を弾き飛ばす。

「学園の平和を乱す悪者め! この僕が退治してやる!!」

ライちゃんは何時も通りのノリで高々と叫ぶ。

「消えろ! カス共!」

大量の魔力弾が犯人達に降り注ぐ。

「我が学友に手を上げようとするとは…………己の器を知れ!」

いつもの王様口調の夜美ちゃん。

でも、こういう時には頼もしいと感じる。

更に、虹色の魔力光が立ち上った。

それと共に、空高く打ち上げられる犯人達。

虹色の魔力光が収まった時には、ヴィヴィオの聖王モードが拳を天に掲げた状態で立っていた。

「あなた達………許さないから!!」

怒った表情でそう叫ぶヴィヴィオ。

「せ、聖王陛下!?」

犯人達が取り乱す。

あ、そういえばこの人たちって、聖王君主推進派とか言ってたから、その称える象徴の聖王が自分達に敵意を向けてるから混乱してるんだね。

その時、犯人達の心情なんか知らないとばかりにルーちゃんの召喚獣が腕を振り上げた。

「いけない!」

私は叫ぶが、今からじゃ間に合わない。

でも、ルーちゃんの召喚獣の振り上げた腕が、どこからか攻撃を受け、弾かれた。

私は、一瞬どこからと思ったけど、今のうちにお父さんにお願いした。

「お父さん! 私のリミッター解除を!」

「キャロ?」

「このままじゃルーちゃん、昔の私と同じになっちゃう! もしあの召喚獣が誰かを傷つけて、死なせちゃったら、ルーちゃんはずっとその力に怯えて生きていかなきゃいけない! そんなの悲しすぎる! だから………!」

私はそう頼み込む。

すると、

「わかったよ、キャロ」

フェレットモードだけど、お父さんが微笑んだ気がした。

「キャロのリミッターを解除する!」

お父さんが魔法陣を展開し、術式を起動させる。

すると、私の体にかかっていた枷が外れた。

私は魔力を張り巡らせる。

「天地貫く業火の咆哮、遥けき大地の永遠の護り手、我が元に来よ、黒き炎の大地の守護者、竜騎招来、天地轟鳴、来よ、ヴォルテール!」

私はヴォルテールを召喚する。

私の描いた召喚陣から、炎とともにヴォルテールが現れる。

「ヴォルテール! その子を止めて!」

私の言葉に、ヴォルテールがルーちゃんの召喚獣に掴みかかる。

ヴォルテールなら、何とか押さえ込めるようだった。

その時、

「キャロお嬢様~」

足元から聞き覚えのある声がした。

私が足元を見ると、

「どうも、お久しぶりです」

「セインさん」

床からセインさんが顔を出していた。

「それで、ユウ兄からのお届け物です」

セインさんが手を出すと、

「キュクルー!」

「フリード!」

フリードが飛び出してきた。

「では、私はこれで」

セインさんは、そう言うと再び地面に潜っていってしまう。

「フリード、いくよ」

私はフリードに呼びかける。

「キュクルー!」

私の言葉に頷くようにフリードは鳴き声を上げた。

「蒼穹を走る白き閃光。 我が翼となり、天を駆けよ。 来よ、我が竜フリードリヒ。 竜魂召喚!」

私の魔法で、フリードが成竜の姿へと変わる。

「フリード! ブラストレイ!」

フリードは、私の魔力で強化された炎を放つ。

その炎が犯人達をなぎ払う。

「あちぃぃぃぃ!?」

「竜だぁぁぁぁぁっ!?」

「こんなの聞いてねぇぇぇぇ!!」

逃げ惑う犯人達。

ちょっと可哀想な気もするけど、自業自得だよね?

そんなことより、今はルーちゃん。

「ルーちゃん、しっかり! 大丈夫だから!」

私はルーちゃんに呼びかける。

でも、

「嫌だ! 死にたくない!」

私の声は届かず、ルーちゃんの錯乱は激しさを増す。

そのルーちゃんの感情に呼応して、ルーちゃんの召喚獣が力を増していく。

このままじゃ、いくらヴォルテールでも振りほどかれる可能性がある。

「ルーちゃん!」

私は必死にルーちゃんに呼びかけ続けた。






【Side Out】





【Side エリオ】




『Sonic move.』

僕は高速移動魔法で生徒達の隙間を掻い潜りつつ、犯人達を一撃の元に気絶させていく。

幸運なことに、犯人達はルーが召喚した巨大な召喚獣に気を引かれていて、尚且つ生徒達はユーノさんの結界で守られていたので、人質は取られず簡単だった。

「集え、明星、全てを焼き消す焔となれ! ルシフェリオンブレイカー!!」

「砕け散れ! 雷神滅殺! きょっこーーーざん!」

「絶望にあがけ塵芥。 エクスカリバーッ!!」

「フリード! ユゴスブラスター!!」

「さくらママ直伝、ルナライト改め………レインボー………ブレイカーーーーッ!!」

あーあー。

聞こえない。

聞いちゃいけない魔法名が聞こえたような気がしたけど聞こえない。

体育館の半分以上が更地に変わっているのなんて見てない。

その時、

「なんだこの醜態は?」

空から声が聞こえた。

空を見上げると周りの犯人たちよりも立派な騎士甲冑を纏った一人の男が浮いていた。

「た、隊長!」

犯人の一人が声を上げる。

どうやら、あの人がこの事件の親玉らしい。

「この召喚獣を召喚したのは……………」

その男は視線を順番に僕達に泳がせていくと、キャロとルーテシアで視線を止めた。

「………お前達か」

すると、手に持ったデバイスを2人と近くにいたリーナに向け、

――ドンッ

容赦なく砲撃を放った。

恐らくあの魔導師はSランククラス!

いけない!

「ッ! ストラーダ! フルドライブ!!」

『Explosion.  Duke form』

僕はストラーダをフルドライブさせ、キャロたちの前に立ちはだかる。

僕はその砲撃を一身に受けるが、ダメージはそれほどない。

何故なら、

「何だ? その姿は?」

ストラーダのフルドライブ、デュークフォルムは、西洋騎士のような鎧に身を包み、ランスだけではなく、巨大な盾も展開されるからだ。

この姿は、お父さんがオメガフォームの元にしている憧れの騎士の盟友の姿を元にしているそうだ。

僕はそれを聞いたとき嬉しかった。

その騎士は、自分の正義の為に君主にすら歯向かった信念の騎士。

僕も、自分の信念を貫くために戦う!

「ルーテシア、リーナ」

僕は自分の信念を込めてルーテシアとリーナの名を呼んだ。

「ッ…………! エリオ………」

ルーテシアは、そこで初めてハッとして、僕に気付いたようだった。

「安心して。 君達は僕が、必ず守るから!」

僕の信念を言葉にし、僕は犯人と向き合う。

すると、

「…………エリオめ、またフラグ立ておったわ」

「………血の繋がりは無いとは言え、やはりエリオは父様の子ですね」

夜美と星が何やら言っているけど、今は気にしてられない。

召喚獣は、ルーテシアが正気を取り戻したおかげか、大人しくなっている。

「はぁあああああっ!!」

僕は犯人に飛びかかった。

「ガキが!」

ランスの一撃は、シールドに止められる。

でも、

「ロイヤルセーバー!!」

シールドにランスを突き立てた状態で、ランスに魔力を送り込んで貫通力を増す。

ランスの切っ先は、ジリジリとシールドに食い込んでいく。

「な、何!?」

犯人が驚愕した時には、切っ先はシールドを貫通していた。

その瞬間、

「開放!」

キーワードで、ランスに溜め込んでいた魔力を、切っ先から開放。

衝撃波となって犯人に襲いかかる。

「ぬわぁああああああっ!!」

魔力の奔流に襲われた犯人は落下していく。

でも、地上スレスレで立て直した。

僕も地上に着地する。

「お、おのれ………ガキの癖に……!」

犯人は、そう僕を睨みつけてくる。

ちっとも怖くないけど。

「子供だからって、舐めないでください」

僕はそう言い返す。

僕の言葉に更にキレたのか、

「このガキがァァァァァ! 大人を舐めるな!!」

すると、彼の後ろに転送魔法陣が浮かび上がる。

「くははははは! 貴様は我らの戦力がこの学校の占拠に当てたもので全てと思っていたかもしれんがそれは違う! 我らの戦力はまだ半分は残っているのだ! その残った戦力を全てこの場に呼び出す! これで貴様達も終わりだ!」

何か叫んでるけど、この学校を占拠していた戦力で半分なら、もう半分も大体同じぐらいの人数何だよね?

だとすれば、普通に僕たちでも勝てることに、あの人気付いてないのかな?

やがて魔法陣が光り輝き、

――ドサドサドサドサッ

屍の山とも思える、ボロボロな人達が折り重なり山積みになった一団が転送されてきた。

「………………は?」

呼び出した犯人の隊長も呆気に取られている。

すると、

(ゴミ掃除は我らで引き受けておいた)

(お前たちは、そいつを早く片付けるがいい)

トーレさんとチンクさんから念話が届いた。

どうやら2人が別働隊を見つけて片付けてくれたようだ。

「ふむ………どうやらアテが外れたようだな」

「まあ、例え何事もなく現れたとしても、負けるつもりはありませんでしたが」

強気な発言をする夜美と星。

「よーし! やっつけちゃうぞ~~~!!」

「友達を危ない目に合わせた事、絶対に許せない!」

相変わらずなライと、聖王モードで怒っているヴィヴィオ。

そこに、

(お~い、お前ら)

お父さんから念話がとどいた。

(この際だ。 ド派手に決めてやれ!)

お父さんからの後押し。

僕達は更にやる気を出す。

「キャロ! 星! ライ! 夜美! ヴィヴィオ! …………やるよ!」

僕は皆に合図を送る。

「わかったよ、エリオ君。 フリード!!」

キャロがフリードの背に跨り、フリードが大きく翼を羽ばたかせる。

「私達の力、見せてあげましょう!」

星がフリードの右翼に、

「よーし! 頑張っちゃうぞ~~~!」

ライがフリードの左翼に、

「恐れおののけ! 塵芥!!」

夜美がフリードの後方に待機する。

「皆の力を一つにして!」

ヴィヴィオもフリードの背に飛び乗る。

「これが! 僕達の力だ!!」

最後に僕がフリードの頭に飛び乗った。

僕は、ランスを前方に構える。

「「「「「「はぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁ……………!」」」」」」

全員で魔力を高め、6人の魔力がフリードを覆っていく。

「お願い! フリード!」

キャロの合図でフリードが羽ばたいた。

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!??」

犯人の隊長が今更ながらに空を飛んで逃げ出す。

でも、もう遅い。

フリードは逃げる犯人に向かって突撃する。

その名は、

「「「「「「ドラゴンドライバーーーーーーーッ!!!」」」」」」

僕達は、巨大な光の矢となって犯人を撃ち抜いた。





【Side Out】







「「「「「「ドラゴンドライバーーーーーーーッ!!!」」」」」」

巨大な光の矢が犯人を捉えた。

閃光と共に爆音が響き、視界が一瞬真っ白になる。

やがて光が収まると、犯人がボロボロになりながら落下していく。

あのまま落下すると命がヤバイと思ったが、そこは子供達も分かっていたらしく、星がバインドで犯人を空中で捕まえた。

俺は一件落着と思い、皆の方を振り返ると、

「「「「「「「「「「ポカーン………………」」」」」」」」」」

スバル、ティアナ、ティーダさんを始め、ゼスト隊や、108部隊など、多くの局員が呆気にとられた表情で目の前の光景を見ていた。

まあ、全員AAAランク以上だから、そんじょそこらの部隊よか強いな、ウチの子供達は。

「み、皆……こんなに強かったんだね………」

スバルが呆然と呟く。

「翠屋の人達は、全員普通じゃないと思ってたけど、まさか子供達までこんなに強いなんて……」

失礼だなティアナ。

ウチで普通の人間ぐらい……………1人もいねーな。

生身の人間は俺と桜だけだし、俺は元より、桜もかなり規格外だからな。

否定できん。

まあいい。

この後に起こるだろう騒動はめんどくさいだろうが、今は子供達を労ってやろう。

そう思い、既に子供達に駆け寄っている母親達に続いて、俺は歩き出した。










あとがき


またかなり遅れて申し訳ない。

第六十話の完成です。

今回は子供達が大暴れしました。

容赦なく大魔法ブッ放す女性陣。

デュークモンなエリオ。

グラニなフリードでした。

因みに白天王の最初の攻撃を弾いたのはディエチの狙撃です。

さて、次回はユウ君除いた翠屋メンバーが大暴れの予定。

今回の話を読めば、次回の流れは大体わかりますね。

では、次も頑張ります。






PS. 26話をちょっと改訂してみました。
   興味があれば読んでみてください。



[15302] 第六十一話
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12
Date: 2014/03/23 23:13

第六十一話 最強喫茶『翠屋』出陣!





学校占拠事件の翌日。

今日は学校は臨時休校となり、子供達は隊舎にいる。

俺達はいつも通り機動六課の食堂で働いていたのだが、そこへ少々疲れた顔のはやてが書類を持ってやって来た。

「おはようユウくん」

「おっす、はやて。 疲れた顔してるな」

挨拶を交わす俺達。

はやてはカウンターの席に座ると、

「ブラックコーヒー頼むな」

「了解」

俺は慣れた手付きでコーヒーを淹れていく。

カップに注ぎ、それをはやてに差し出す。

「おおきに」

そう言ってはやてはコーヒーを一口すすり、

「で、ユウくん。 予想出来とった事やと思うんやけど…………」

はやては持っていた書類をカウンターの上に広げる。

「やっぱ来たか………」

俺は呆れ気味に呟く。

「管理局各部所からの、子供達のスカウトの書類や」

はやても、呆れを隠そうともせずにヤレヤレと首を振る。

子供達はAAAランク前後を記録している。

あの場にいた管理局員にはモロバレだろう。

「キャロの物については、ヴィータとユーノ君に送ろうと思ったけど、通信で伝えた瞬間突っ返せって怒られたわ」

「ま、当然だな」

俺はさも当然と頷く。

「ほな、聞くまでも無いと思うとるけど、ユウ君の答えも…………」

「断るに決まってるだろ。 俺は子供達が18歳になるまで…………最低でも15歳を過ぎるまでは、手放すつもりはない」

「ま、そこまでは確信しとったところまでやで問題ないんやけど……」

はやてはそう言うと書類の大部分を横に退かし、下の方にあったいくつかの書類を見せる。

「ヴィヴィオの事でちょっとめんどくさい事になっとてなぁ…………」

「めんどくさい事?」

はやては申し訳なさそうに書類を見せてくる。

「…………ヴィヴィオの親権を聖王教会に寄越せって言ってきとるんや………」

その書類には、あらゆる項目が書き込まれていて、あとは俺のサインでヴィヴィオの親権が聖王教会側に移るようになっている。

「…………………………………………………」

俺は無言でその書類を左手で持つと、

「ふざけんな…………!」

自分でも信じられないぐらいの低い声で唸ると同時に、炎で書類を灰も残らず焼き尽くした。

「ヴィヴィオは渡さん! 以上!」

俺はそうキッパリと告げる。

「まあ、そう言うと思っとったけど…………困ったことになぁ、聖王教会の使者が直接来るんよ。 そこで直接ユウ君たちに話を持ちかけるつもりやと思うで」

「使者が来ようが、騎士が来ようが、ヴィヴィオは渡さんぞ」

「まあ、それはわかっとるけど、話だけは聞いてあげてや。 そうせんと何度も催促来るから」

「わかった。 聞くだけな」

はっきり言って、話を聞くのもめんどくさいが、はやてにこれ以上負荷をかけるわけにも行かないからな。

「で、いつ来るんだ」

俺がそう尋ねると、

「もう来とるで」

「早ぇなオイ!」

俺は思わず突っ込んだ。






俺は応接間に入っていくと、聖王教会の人間と思われる女性とその護衛と思われる騎士がいた。

因みにこちらの人選は、俺とヴィヴィオが母親と慕う桜、リニス、ファリン。

機動六課からも、ヴィヴィオの母親役であるアリサ、すずか、アリシアが同席している。

「で? 話があるなら早くしてくれ。 こっちにもこっちの仕事があるんだ」

ぶっちゃけ俺は断る気マンマンなので、態度もクソもなく、どっかりと椅子に座ってそう言う。

「ええ、私達は聖王陛下を迎えに来ました。 その為に陛下の親権を我ら聖王教会へと移して欲しいのです」

「「「「「「断る(ります)!!」」」」」」」

7人完全同時0.5秒の即答であった。

「ふざけたこと言ってんじゃないわよ!!」

先ずはアリサが、

「ヴィヴィオは渡しません!」

すずかが、

「ヴィヴィオは私達の娘なんだから!」

アリシアが、

「話になりません! お引き取りください!」

リニスが、

「絶対にヴィヴィオは渡しませんよ!」

ファリンが、

「時間の無駄だわ」

桜がそれぞれ叫ぶ。

「な…………」

あまりの即答に聖王教会の使者は呆気に取られている。

「ヴィヴィオはもう俺達の家族だ。 少なくとも、18歳になるまでは手放すつもりはない。 ま、その後にヴィヴィオが王様になりたいって言うのなら、好きにすればいいさ」

俺は自分の考えを言う。

「そ、それはなりません! 聖王陛下には、幼き頃より陛下に相応しき教育を施さねば…………!」

その言葉を聞くと、俺は女を鋭い目で睨みつける。

「ッ…………!?」

俺の気迫に押されたのか、言葉が止まる女。

「相応しい教育と言えば聞こえはいいが、それは単なる刷り込み……………洗脳みたいなもんだろう? 子供は自由に、伸び伸びと育てるのが一番だ。 俺はそう思ってる」

「同感」

「私もそっちの方がいいと思います!」

桜とファリンが俺に同意する。

「し、しかし! 我々には、聖王が! 心の拠り所である象徴が必要なのです!」

女は必死そうにそう言う。

「聖王ね…………」

俺は思わず馬鹿にしたような笑みを浮かべてしまう。

自分の体に流れる聖王の血を思いながら。

「あんたらの都合なんざ知ったこっちゃない。 さっきも言ったが、ヴィヴィオを聖王として迎えたいなら、ヴィヴィオが18歳になってからヴィヴィオを説得することだ。 それまでは何度来られようとヴィヴィオを渡す気はない」

俺はキッパリと言い切る。

「しかし! 聖王陛下が18歳まで無事という保証はありません! 聖王陛下の生存が確認された以上、あらゆる組織が陛下を狙ってくるに違いありません! 聞けば、貴方達はただの喫茶店の経営者! 魔力は持っているようですが、そういった驚異から陛下を守りきれるとは、到底思えません!」

向こうもそう言い返してくるが、

「そうかしら?」

アリサが口を開く。

「このミッドチルダで、翠屋以上に安全な場所なんて無いと思うけど?」

「なっ!? そ、それは私達聖王教会や、管理局に対する侮辱と受け取ってよろしいので?」

アリサの言葉に過敏に反応する女性。

「侮辱も何も事実だって言ってるの。 管理局や聖王教会じゃ、魔力ランク保有制限とかで、1部隊に入れられる戦力の上限が決まってるでしょう? その点、翠屋じゃ、そんな制限なんて無いから、戦力の上限は無いわ」

アリサはすました顔でそう告げる。

「唯の喫茶店の店員が、我々聖王教会の騎士を上回るというのですか!?」

「じゃあ聞くけど、昨日暴れた子供達に勝てる部隊って、そっちに幾つある?」

「ッ!?」

アリサの言葉に、声を詰まらせる女。

それも当然。

子供達は全員AAA以上。

ヴィヴィオの聖王モードに至ってはS+以上だ。

S+が1人にAAA以上が5人。

管理局であれば、確実に魔力保有制限に引っかかる。

SS以上の魔導士がいれば話は別だが、管理局内でもそれほどの魔導士は片手で数えられる程度だ。

「子供達に手古摺るようじゃ、絶対に翠屋は負けないわ。 こっちにはユウもいるしね」

「まあ、昨日の子供達ぐらいなら、片手間で十分だな」

アリサの合図で、俺は魔力を開放する。

「うくっ………!?」

俺の魔力の大きさにあてられたのか、女は大きく後ずさる。

「まっ、そういう事だ。 下手な部隊に預けるよりも、ヴィヴィオは俺達といたほうが安全なんだよ」

俺は魔力を抑え、そう告げる。

だが、

「しっ、しかし! あなたがずっと陛下と一緒にいる保証もないでしょう!?」

女は諦めずにそう言ってくる。

「はぁ………だったら賭けをしよう」

俺はそう切り出す。

「賭け………ですか?」

「ああ。 俺と昨日の子供達を除いた翠屋の店員とお前が動かせる部隊全てで模擬戦だ。 これなら俺がいない時の戦力がわかるだろう? お前らが勝てばヴィヴィオの事は好きにしな。 ただし、こちらが勝ったらヴィヴィオの事は諦めろ」

俺はそう言う。

すると、女は少し考え、

「いいでしょう。 その賭け、受けましょう」

口元を釣り上げ、自信に満ちた顔で頷いた。

さて、その余裕がいつまで続くか。








俺は理由をはやてに話し、訓練施設を使わせてもらうことにする。

既に、桜、リニス、ファリン、アルフ、アギト、リィン、久遠は、シュミレーターで再現された廃ビル群の中にあるハイウェイで準備運動をしていた。

アリサ、すずか、アリシアは、元々BTT社の所属であり、翠屋ではない為、今回は傍観組に回っている。

因みに、話を聞きつけた機動六課のメンバーも見学している。

やがて、ぞろぞろと相当な数の騎士を引き連れた先程の女性が現れた。

騎士の数は、500人ぐらいだろうか?

殆どはB~Cランクだが、AAAランク前後もチラホラと。

S+も何人か居るな。

流石にSS以上は居ないようだが。

まあ、リニスは魔力を抑えてると言ってもSS並みの力はあるし、最悪枷を外せばどうとでもなるだろ。

すると、女性は俺の前に立ち、

「どうですかこの騎士達の数は? この者たちは皆、聖王陛下を守るために立ち上がったものたちです」

腹立つぐらいのドヤ顔でそう告げる女性。

「あ~はいはい。 凄いですね~。 こっちにも都合があるので早く準備してください」

棒読みでそう返す俺。

お前、今動かせる部隊だけじゃなく、勤務中の部隊も引っ張ってきただろ?

まあ、ともかくこっちも暇じゃないからさっさとして欲しい。

「なっ!? い、いいでしょう。 我ら聖王を護る騎士達の力、存分に見せつけて差し上げます!」

騎士の数に気圧されると思っていたのか、俺の反応を見て驚きながらもそう言う女性。

訓練施設に、ぞろぞろと入っていく騎士達。

約500人VS翠屋7人(人間1人、使い魔2体、自動人形1機、ユニゾンデバイズ2機、妖怪1匹)の戦いが始まろうとしていた。

騎士達には聖王を迎え入れるという意気込みでそれぞれが気負った表情をしているのだが、

『桜おねえちゃん、頑張れ~!』

『アルフ、リニス、怪我しないようにね』

『ファリン、しっかりね』

『娘よ、頑張るのだぞ』

『アギトちゃん、頑張って~!』

『アルフ、久遠………気をつけろ……』

和気藹々と通信で声を掛けられる翠屋チーム。

上から、なのは、フェイト、すずか、リインフォース、シャマル、珍しく人間形態のザフィーラだ。

因みに機動六課メンバー。

翠屋チームが負けることなど毛ほども考えてはいない。

スバルやティアナは心配ぐらいするかと思っていたのだが、

「桜さん達なら、何とかしちゃいそうです」

「本当なら心配するのが普通なんでしょうけど………何というか、あの人達が負ける姿が想像できません」

とのこと。

どうやら既にこの2人の中では、翠屋は人外認定されている模様。

そして、いよいよ模擬戦が始まろうかという時、

「リニス、ヘブンズジャッジメントは無しね。 一瞬で終わっちゃうから」

桜がそんな事を言う。

「わかっていますよ。 この模擬戦は、私達翠屋全員の力を見せつけるためのものですから、そんな事をすれば、意味がありません」

リニスも何でもないように頷く。

その言葉が聞こえた騎士達に青筋が走る。

まあ、暗に手加減すると言われたようなもんだからな。

因みに言っておくと、桜はバリアジャケットを纏っているが、リニス、アルフは翠屋の制服。

リィンとアギトはいつもの格好。

久遠は巫女服だし、ファリンに至ってはメイド服だったりする。

その服装も騎士達の怒りを買うのに一役かっている。

『それでは…………始め!!』

はやての合図で模擬戦が開始される。

その瞬間、

「ディバインバスターーーーッ!!」

桜が間髪入れずディバインバスターを放つ。

白銀の閃光が騎士の集団の中央を一直線に貫いた。

「「「「「「「「「「あんぎゃーーーーーーーーっ!!??」」」」」」」」」

それに巻き込まれた騎士達が木の葉のごとく吹き飛ばされている。

100人ほど巻き込んだだろうか?

「よしっと! 私はこんなものかな?」

桜は結果に満足したのか早々に後ろへ下がった。

「怯むな! 接近すれば我々の土俵だ!」

分隊長らしき騎士が部下達に発破をかける。

「「「「「「「「「「おお!!」」」」」」」」」」

その号令に騎士達が走り出す。

その先に立つのはアルフ。

アルフは、右肩をほぐす様にグルグルと回すと、

「さ~て………いくよ!」

まるで獲物を見つけた肉食獣のような目と獰猛な笑みを浮かべる。

まあ、アルフの素体は狼だから、肉食獣って所は間違ってないんだが。

シュッ、シュッ、と2、3回シャドウボクシングのように拳を繰り出すと、右腕を振りかぶり、

「百獣拳!!」

高速で右拳の乱打をその場で繰り出す。

すると、獣王拳よりかは小さいが、無数の狼の顔を模した魔力波が騎士達に襲いかかる。

「おわぁ~~~~!!??」

「なんじゃこりゃーーーー!!??」

「こんな魔法みたことねえ~~~~!!」

「こいつ、ただのウェイトレスじゃねーのか!!??」

百獣拳に巻き込まれ、吹き飛ばされていく騎士達。



一方、久遠は大勢の騎士達に囲まれていた。

見た目年端もいかない子供だから、騎士達も余裕がある。

「こんな小さい子を虐めるのは気が引けるが………これも命令で、聖王陛下を迎え入れるためだ。 悪く思わないでくれ」

そう言ってデバイスを構える騎士達。

「くぅ?」

久遠は話の意味が分かってないのだろう、首を傾げている。

なんつーか、子供相手にそんな強気な発言してると、気が小さいやつにしか見えんな。

まあ、即刻考えを改めさせられるだろうが。

次の瞬間、久遠から激しい雷撃が迸り、近くにいた数人が巻き込まれる。

「「「「あべべべべべべべ!!???」」」」」

お~お~、物の見事に感電してらあ。

そして雷撃が収まると、そこには尻尾が5本に増え、少女の姿だったものが、20前後の女性の姿となった妖狐モードの久遠。

「ヴィヴィオ……………連れて行かせない………!」

耳と尻尾の毛が逆立ち、パリパリと放電させながら威嚇する久遠。

次の瞬間、雷が落ちたかと思える程の轟音と雷光が発生した。

…………生きてるかな?

久遠は非殺傷じゃないからちょっと心配。

騎士甲冑展開させてたから、大丈夫だとは思うが………

やがて煙が晴れていくと、黒焦げになった騎士が地面に転がっていた。

…………生きてる………よな?

俺は一瞬冷や汗を流すが、直後にビクビクと痙攣している騎士達を見てホッとした。




「おい!バッテンチビ! どっちが多く倒せるか勝負だ!」

「望むところです! この悪魔っ子!」

相変わらずのアギトとリィンに俺は苦笑する。。

2人は競い合いながら炎弾と氷弾を発射する。

2人は協力する気はなく、意地になって競い合っているだけなのだが、やられる方にとっては、炎弾と氷弾が織り交ざりながら嵐の様に襲いかかってくるため、たまったものではない。

「なんだこのチビ達!? シャレになんねぇ!?」

「仲悪そうなのに、息ピッタリじゃねか!?」

「あちゃっ! 冷たッ!? あちゃ!? 冷た!?」

喧嘩するほど仲がいいとはよく言ったものだ。

こっちも心配する必要は無いな。

さて、お次はファリンの様子だが………

「ふっ! はっ! ほっ!」

剣型のデバイスによる斬撃を、いつものドジなファリンからは想像できないほどの華麗なステップと身のこなしで次々と回避していく。

もちろん服装はメイド服なので、スカートが邪魔にならないようスカートの両端をつまみ上げた状態でだ。

ファリンは一度大きく飛びのき、宙返りで体勢を整えつつ着地した。

「なんだこのメイドは? 並みの動きじゃない!」

攻撃をよけられた騎士が驚愕しながら呟く。

「何でメイドがこんな動きを!?」

違う騎士がそう叫ぶと、

「メイドの嗜みです!」

ファリンは立ち上がりながらそう言った。

そして、

「では、そろそろこちらから仕掛けさせて頂きます!」

そう言って右腕を上に掲げる。

すると、

「内蔵マギリングギミック起動!」

ファリンが叫ぶと同時にファリンの右腕が、まるでデバイスが待機状態から起動させる時のように変化していく。

そして一瞬後には、細く綺麗だったファリンの右腕が、ファリンの身長と同等以上の大きさを持つ、機械的で無骨な腕へと変わっていた。

その変化に驚き、声も出ない騎士達。

ファリンがそんな騎士達を見据える。

「内蔵マギリングギミックその1!」

ファリンはそう叫びながら巨大な右腕を振りかぶり、

「アクセル! アーーーームッ!!」

思い切り地面に叩きつけた。

叩きつけた地面を中心に、魔力衝撃波が発生し、近くにいた騎士を次々に吹き飛ばしていく。

なんつーか、メイドさんがメカメカしい巨大な腕を振り回している光景って、シュールだな。

それにしても、何故にジャスティモン?

クリティカルアームとかブリッツアームとかあるのかね?

あと、蹴りが45tとか?

護身用にマギメンタルの技術を流用した機能をファリンに搭載したとアリサ、すずか、アリシアが言っていたが、魔(法的)改造にも程があるだろうに。

下手すりゃSランク以上じゃないか?

と、ふと思った所で騎士達の中に、Sランクが何人かいた事を思い出し、そういえばと姿を探すと、

「ライトニングスピア!!」

リニスに雷の矢で、ビルの壁に磔にされてました。

だが、その隙をついて、数人のAAAランクの騎士がリニスを完全に囲った状態で同時に斬りかかった。

が、

「テスタメント!!」

リニスの全身から放出された強力な電撃が斬りかかってきた騎士全員を巻き込む。

「「「「「ぐわぁあああああああっ!!??」」」」」

リニスは、電撃を受けた騎士達を確認もせずに、

「セブンヘブンズ!!」

振り向きざまに遠くのビルの屋上をセブンヘブンズで狙い打った。

爆散するビルの屋上。

散らばるガレキの中に、リニスを狙っていたおと思われる弓型デバイスを持った騎士が
混ざっていた。




『ご愁傷様』。

俺が予想できていた惨状を前にそんな事を思っていると、

「凄い凄い! アギトちゃんもリィンちゃんも久遠ちゃんもみんな凄い!」

スバルが大はしゃぎで賞賛している。

「もう、悔しさを通り越して呆れてくるわね」

何やら悟った様子のティアナ。

「そ、そんな…………我ら最強の騎士達が………」

この惨状を全く予想できていなかった例の女性が、震えた声で呟く。

最強つっても、ゼストさんとかいないから、こいつが勝手に言ってるだけだろう。

ゼストさんは首都防衛隊だから、所属としては管理局になるのか?

と、そんなことは置いといて…………

最後の騎士が気絶したことを確認し、

「勝負アリ、だな。 約束通りヴィヴィオの事は諦めろ」

俺がそう言うと、

「そ、そんな口約束など無効です!」

これまた予想通りな言葉を口にしてくれました。

しかし、お生憎様。

『はぁ………だったら賭けをしよう』

『賭け………ですか?』

『ああ。 俺と昨日の子供達を除いた翠屋の店員とお前が動かせる部隊全てで模擬戦だ。 これなら俺がいない時の戦力がわかるだろう? お前らが勝てばヴィヴィオの事は好きにしな。 ただし、こちらが勝ったらヴィヴィオの事は諦めろ』

『いいでしょう。 その賭け、受けましょう』

ブレイズとアイシクルが記録していた約束の時の言葉を、映像付きで流してやった。

「な…………」

女性は言葉を失う。

「因みに当たり前のことだが、今の模擬戦も記録済みだからな。 この賭けの内容は、始まる前に既に管理局のレジアス中将に通してある。 もしこの約束を反故にすれば、どうなるかぐらい予想がつくよなぁ?」

俺がそう言うと、

「くっ………!」

その女性は、逃げるように立ち去っていった。

やれやれ、面倒なもんだな。

それはともかく、俺は桜達を労うためにそちらに足を向けた。







あとがき


第六十一話の完成。

更にクオリティが低くなった………

何故か面白くできない………

とりあえず翠屋の最強ぶりを書いてみた。

初っ端から砲撃ブッ放つ桜。

狼なのにレオモン度が加速するアルフ。

久々に妖狐モードの久遠。

喧嘩するほど仲がいいリィンとアギト。

天使度が増すリニス。

そんで、ガチで魔改造が施されていたファリン。

そんな翠屋の店員達でした。

ファリンのギミックは、勿論マギメンタルのノウハウを活かした魔力攻撃です。

45tのメイドキックもやらせたほうが良かったですかね?

まあ、そんなわけでもうすぐ原作も終盤に入ります。

さて、どんな物語になるんでしょうか?

では、気が向くなら最後までお付き合いください。

次も頑張ります。





[15302] 第六十二話
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12
Date: 2014/05/06 17:27


第六十二話 動き出す物語







【Side スバル】




時が経つのも早いもので、機動六課に配属になってからもう5ヶ月。

勿論、何度か出撃もあったけど、今の所任務の達成率は100%。

私も、随分と強くなった自覚がある。

そして今日、いつもの朝練の為に集合した時、

「さて、今日の朝練の前に、1つ連絡事項です」

なのはさんがそう切り出す。

「陸士108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹が、今日から暫く六課へ出向となります」

「はい。 陸士108部隊、ギンガ・ナカジマ陸曹です。 よろしくお願いします」

なのはさんに紹介され、ギン姉が敬礼をしながら名乗る。

ギン姉は、前々から機動六課と協力関係だったから、さほど驚きは無いかな。

「「「「「よろしくお願いします!」」」」」

フォワードメンバー全員で敬礼しながら返事を返す。

私も今は管理局の一員として敬礼した。

「それじゃあ、紹介も済んだ所で、今日も朝練いってみよー!」

「「「「「「はい!」」」」」」

なのはさんの言葉に全員で返事を返した。





「ギンガ」

なのはさんがギン姉に声をかける。

「はい?」

ギン姉が尋ねると、

「ちょっと、スバルの出来を見てもらっていいかな?」

「あ……はい」

なのはさんの言葉にギン姉が頷く。

「一対一で軽く模擬戦。 スバルの成長、確かめてみて」

「はい!」

なのはさんの言葉に、ギン姉は力強く頷く。

私は、それを見て気を引き締めた。








「はぁああああああっ!!」

「クッ!」

「はぁっ! やぁ! てやぁ!」

「ふっ! はっ! くぅっ!」

ギン姉の攻撃を私は何とか防いでいく。

ギン姉とは、今まで何度か模擬戦をしたことはあるけど、勝てたことは一度も無い。

けど、私だって今まで伊達になのはさんの訓練をこなして来た訳じゃない!

「はぁあああああっ!!」

「くぅっ!」

ギン姉の渾身の一撃をプロテクションで何とか防ぐ。

受け止められるとは思ってなかったのか、ギン姉の顔に驚きの表情が伺える。

その隙は逃さない!

「リボルバァァァァァァ…………………」

私は右腕を振りかぶる。

そして、

「キャノンッ!!」

渾身の一撃を繰り出した。

「くっ!?」

ギン姉は咄嗟に防御魔法を展開。

でも、私は構わずに思いきりぶちかます。

ギン姉の障壁は咄嗟に張っただけでそれほどの強度はなく、私はそれを打ち破る。

その衝撃で吹き飛んだギン姉を、私は加速して追いかけ、追撃の蹴りを放つ。

「おりゃぁあああああっ!!」

だけど、ギン姉はジャンプしてその攻撃を避けると、ウイングロードで空中に逃れる。

私も直ぐにウイングロードで後を追う。

追いかけて少ししたところで、ギン姉が突然向きを変え、私に向かってくる。

私は怯まずに迎え撃った。

「「はぁあああああっ!!」」

拳と拳がぶつかり合う。

私は無理に押し切らず、互いに受け流すように交差する。

そのまま空中でヒットアンドウェイを繰り返し、何度も交差した。

でも、私は気付いた。

このままだと押し切られることに。

私は攻防を繰り返しながらも考えを巡らす。

ふとその時、最近ユウさんが思いつきで教えてくれたウイングロードの使い方を思い出した。

このまま続けてもジリ貧だし………試してみよう!

私はもう一度ギン姉と交差した直後、すぐさまブレーキをかけて後ろに振り返る。

今までと違ってスピードが殺されてしまうから次の激突では不利になる。

でも、今から私がやろうとしていることには関係ない!

ギン姉は今まで通りスピードを殺さずに大きく旋回している。

そして、再び私に狙いを付け、突っ込んできた。

「今だっ! ウイングロード!!」

私はその瞬間ウイングロードを発動。

だけど、足場にするだけの一本じゃない。

上下左右の4方向。

4本のウイングロードを組み合わせたトンネル状の道を作り出す。

それをギン姉に向かって伸ばした。

「なっ!?」

こっちに全速力で向かってきていたギン姉は急な方向転換が出来ずにそのトンネル状のウイングロードに包まれた。

「ロック!」

私の合図でギン姉の後方でトンネルが閉じて完全に逃げ道を塞ぐ。

これで、私とギン姉の間は一本道。

これなら外さない。

私は魔力を集中する。

「一撃! 必倒ぉぉぉぉぉぉっ!!」

私は全力の魔力弾を作り出し、右腕を振りかぶる。

「ガルゥゥゥゥル…………キャノンッ!!」

その魔力弾に右腕を全力で打ち込み、ギン姉に向かって飛ばす。

今のギン姉に逃げ道はない。

それに、いくらギン姉でも、私のガルルキャノンは防げないハズ。

勝った!

私はそう確信した。

すると、ギン姉はリボルバーナックルが付いた左腕を手刀状にして真上に振り上げる。

そこに、私のガルルキャノンに匹敵するほどの魔力が込められ、魔力刃が形成された。

私は初めて見るギン姉の魔法に目を見開く。

「一刀両断!! グレイッ………ソーーーーーードッ!!!」

ギン姉が左腕を振り下ろす。

次の瞬間、凄まじい衝撃と共に、ガルルキャノンが真っ二つに切り裂かれた。

「そんなっ!?」

その事実に驚愕する私。

でも、それが致命的な隙になった。

ギン姉が一瞬で私の懐に飛び込み、私の首筋に魔力刃を突きつけていた。

「あ…………」

私は声を漏らすことしか出来なかった。

「はーい! そこまで!!」

なのはさんが模擬戦終了の合図を出す。

ギン姉が魔力刃を消し、私に向き直る。

「いいね。 色々、上手くなった」

ギン姉は私を褒めてくれる。

でも、

「まだまだ………全然」

勝てると思ったのに負けたのは、とても悔しかった。





【Side Out】






【Side なのは】





今日の朝練も終わり、皆バテバテです。

「つーかーれーたー!」

スバルがそう言いながら、地面に大の字で寝転がっている。

「本当ね…………ダイエットにも丁度いいわ」

そう言うのはアリサちゃん。

「ほ、ホントだね…………」

一番キツそうな顔してるのはアリシアちゃん。

「いい運動だったね」

逆に一番余裕なすずかちゃん。

「はあ………はあ………」

地面に座り込みながら静かに息を整えるティアナ。

そんなスバルとティアナの姿を見て、

「そろそろかな………?」

2人の訓練も終盤に差し掛かっていることを確認した。





【Side Out】





俺達は、何時もの様に朝食の準備をしていると、

「それにしてもスバル、強くなったね」

「まだまだだよ………結局勝てなかったし」

訓練を終えたフォワード陣が食堂に入ってくる。

その中には、ギンガの姿も見えた。

そういえば、今日からギンガも機動六課に出向になったんだったな。

「よう皆、お疲れさん」

俺はそう声をかける。

「あっ、ユウさん。 おはようございます!」

スバルは元気よく挨拶する。

「ああ、おはよう」

俺はギンガに目を向け、

「ギンガも久しぶりだな」

そう笑みを向ける。

「あっ、ユ、ユウさん! お、お久しぶりです!」

ギンガは驚いたのか、しどろもどろになりながら返事を返す。

「あっ、ユウさん! ユウさんの考えてくれたウイングロードの方法、使ってみました!」

スバルがそう言ってくる。

「ほう。 で、どうなった?」

俺が聞くと、

「えと、ウイングロード自体は上手くいったんですけど、ガルルキャノンをギン姉に斬られて負けちゃいました」

少しガッカリしながらスバルは言う。

「ふむ、ガルルキャノンを斬られたのならしょうがないな。 ギンガの方が一枚上手だったってことだ」

「はい………」

「まあ、これからも頑張れよ」

「はい!!」

スバルは元気よく返事をする。

「あっ! そうだユウさん!」

スバルが思い出したように続ける。

「なんだ?」

俺はコーヒーカップを準備しながら返事をすると、

「ギン姉の事も、ユウさんのお嫁さん候補に入れてあげてください!」

――ガッシャーン

俺は思わずコーヒーカップを落として割ってしまう。

「ス、スススススス、スバルッ!? な、何言ってるの!?」

ギンガが顔を真っ赤にしてスバルに詰め寄る。

「あれ? ギン姉もユウさんの事好きだと思ってたんだけど…………違った?」

スバルは、不思議そうな顔で首を傾げながらギンガに問う。

「へあっ!? そ、それはユウさんの事は好きだけど、何でいきなりお嫁さんこうほぉぉぉぉぉぉっ!?」

ギンガ………テンパってるのはわかるが、大声は止めような………

俺も恥ずい。

「ユユユ、ユウさん!? い、今のはそのぉ~~~…………」

「恥ずかしがること無いよギン姉。 私とティアもお嫁さん候補に入れてもらってるし」

堂々とそう言うスバル。

「えええええっ!!??」

盛大に驚くギンガ。

俺が額に手を当て、反応に困っていると、

――スコーーーン

と俺の後頭部に何かが直撃。

痛みを堪えつつそちらを向くと、

「「「…………………………」」」

ジト目で俺を睨む桜、リニス、ファリンの姿があった。

俺はガックシとうな垂れるのだった。






















1週間後、公開意見陳述会当日。

朝から、続々と陳述会の参加者が地上本部に集まってきていた。

その中には、はやて、シグナムの姿や、聖王教会の騎士、カリムやシャッハの姿もある。

リインフォース、ギンガ、フォワード陣は、外部警備に当たり、なのは、フェイトが内部警備。

そして、陳述会が始まり、数時間が経過した。

その頃、とある場所では…………








【Side スカリエッティ】






「ナンバーズ、No.3トーレからNo.12ディードまで、全員配置完了」

『キャロお嬢様も準備完了とのことです』

『攻撃準備も全て万全。 あとはゴーサインを待つだけですぅ』

「ええ」

ウーノと他のナンバーズが確認を取り終える。

「……クックック…………アッハッハッハ………クハハハハ…………この手で世界の歴史を変える瞬間が………研究者として………技術者として………心が沸き立つじゃないかぁ……そうだろ? ウーノ。 我々のスポンサー氏にとくと見せてやろう………我らの思いと、研究と開発の成果をな………」

私がそこまで言うと、

「何馬鹿なこと言ってるんですか? ドクター」

冷静な声でウーノに突っ込まれた。

「ノリが悪いなぁウーノ。 一応今の私の設定を忠実に再現しただけじゃないか?」

「馬鹿な事言ってないで、早く指示を出してください。 そろそろ時間です」

う~む、ウーノは真面目すぎるな。

まあ、それがウーノのいい所でもあるんだが。

私は立ち上がり、モニターの前に立つ。

「これより、計画を実行段階に移す。 全員頑張ってくれたまえ」

『『『『『『『『『『『『了解』』』』』』』』』』』』

「ああ、それから…………全員、無事に戻ってくるように」

『『『『『『『『『『『『はい!』』』』』』』』』』

娘たちに声を掛け、いよいよ計画が始まる。

さあ、自由への第一歩だ。










【Side Out】









時間として、日が沈む頃、地上本部では異変が起き始めた。

システムへのクラッキングが起き、司令部で混乱が起きる。

防壁は発動させるものの、その混乱に乗じて、ナンバーズのセインが麻痺性のガスを散布。

司令部の人員を麻痺させる。

一方、動力部に侵入したチンクが、ISランブルデトネイターで動力部を爆破。

防壁の出力を低下させる。

それに合わせて、キャロが遠隔召喚で地上本部に直接ガジェットを召喚。

更に混乱が生じる。

更にはディエチが、近隣のビル屋上より砲撃。

こちらも麻痺性のガス弾を撃ち込み、多くの局員を無力化する。

すると、ガジェットが地上本部ビルを囲い、AMFを発生させる。

これによって、地上本部のAMF濃度が上がり、デバイスの無い内部警備の魔導師達を無力化し、更には隔壁を下ろす事で、内部に閉じ込めた。







【Side スバル】





公開意見陳述会の警備に当たっていた私たちだけど、突然の襲撃に驚く。

殆どの局員が無力化され、まともに動けるのが私達を含めた僅かな部隊だけ。

とにかく、私達は隊長達にデバイスを届けるため、本部の中に突入する。

途中で戦闘機人と思わしき人達と出くわしたけど、何とか退けて隊長達の元へたどり着く。

でも、丁度隊長達にデバイスを届けた時だった。

別行動していたギン姉からの通信途絶。

最悪の予感が頭を過ぎる。

隊長達との話し合いの結果、私とティア、なのはさんでギン姉の救援に向かうことになった。

私は、すぐさま駆け出す。

通路を駆け抜け、通信が途絶した場所まで最短距離を進む。

なのはさん達をかなり引き離し、先行してその場所までたどり着いた時、私の目に飛び込んできたのは……………

「ん?」

隊長達にデバイスを届けに行く途中で出会った戦闘機人とそれとは別の戦闘機人。

そして、通路の奥に消えようとする、何者かに担がれ、連れ去られようとするギン姉の姿。

「う……………うわぁあああああああああああああああっ!!!」

私は、忌むべき力を解放した。





【Side Out】






【Side ノーヴェ】






とりあえず、今の所計画通りに事が進んでいる。

で、現在は本部地下で、ゼスト隊との情報交換だ。

とは言っても、実際にやり取りしてるのはチンク姉とゼストのおっさんだけ。

アタシとウェンディは待ち惚けだ。

と、その時、

「ねえねえノーヴェちゃん」

話しかけてきたのは、ゼスト隊の一人、クイント・ナカジマ。

アタシの元になった遺伝子の持ち主だ。

「なんだよ?」

アタシはそう聞き返す。

「早くお母さんって呼んでくれないかな?」

またか。

この人はアタシに会うたびに母と呼ぶことを強要してくる。

別に呼び方なんて何でもイイじゃねえか。

アタシがそう思っていると、

「別にイイじゃないっスかノーヴェ。 呼んであげても」

ウェンディが賛同しやがった。

裏切り者。

「ね? ほら」

この人は期待に満ちた目でアタシを見てくる。

う~~~~。

「……………お………お………おか…………」

「お?」

期待の目が最大限に高まった。

「ッ~~~~~~~~~! ………………御袋! これでいいだろ!」

アタシはそう叫んでそっぽを向く。

「~~~~~~~~~ッ!!」

それでも御袋は感極まったのか、

「ノーヴェ!」

アタシを抱きしめた。

「ん~~~~! 3人目の娘が出来て、私も嬉しいわ!」

御袋はそう言いながらアタシを抱きしめ続ける。

ま、まあ、悪い気はしないな。

「にしし………」

ウェンディがムカつく笑みを浮かべているが、今は御袋に免じて勘弁してやる。

すると、チンク姉達の話が終わったのか、こちらに向き直る。

「何をしているナカジマ?」

ゼストのおっさんにひと睨みされて、御袋は慌ててアタシから離れた。

「あ、いえ……親子の営みをと………」

「やれやれ………」

ゼストのおっさんは呆れているらしい。

ま、そりゃそうだな。

その時、

――ドゴォォォォン

突然壁が爆発して、そこに現れたのは、

「えっ? お母さん?」

アタシの上の姉貴にあたるギンガ・ナカジマだった。

「えっ? な、なんでお母さん達がその戦闘機人達と………?」

突然の状況に混乱しているらしい。

「ギンガ!!」

御袋が一目散に姉貴に向かう。

そして、

「ちょっと眠ってなさい!!」

脳天に全力の拳を振り下ろした。

「はうあっ!?」

姉貴は頭にでっかいタンコブをこさえて気絶する。

ってオイィ!?

そんな事しなくてもいいだろうが?

「お、御袋!? 何してんだよ!?」

アタシは思わず問いかける。

「何って……………目撃者排除?」

疑問形で言うな!!

「そんな事しなくても、説明してこっちに引き込めばよかったんじゃねーのかよ!! 何でイキナリ手が出てんだあんたは!?」

アタシは思わず叫ぶ。

「そこはほら、私って口よりも先に手が出るタイプだから」

笑って言ってんじゃねー!!

「こ、こんな奴の遺伝子がアタシに使われてると思うと……泣きたくなってくる」

「やーねー、照れちゃうわ」

「褒めてねーーーー!!」

ぜいぜいと肩で息をしながら、アタシは頭を抱える。

本当にこんな人が御袋で良かったんだろうか?

「じゃあ、隊長。 これ以上ややこしくならないうちに撤退しましょう」

「お前が仕切るな! まあいい。 これより撤退する」

ゼストのおっさんがそう言うと隊員達は奥の通路へと消えていく。

御袋は姉貴を肩に担いで。

なんか、どっと疲れた。

やっと休めると思ったとき、

――ビィィィィィィィィィィィ

モーター音が聞こえ、反対の通路に振り向く。

「ん?」

そこには、下の姉貴であるスバル・ナカジマの姿。

「う……………うわぁあああああああああああああああっ!!!」

姉貴から凄まじいエネルギーの噴出と瞳の色が金色に変わる所を目撃した。

だぁ~~~~!!

これ以上話をややこしくするんじゃねー!!

次の瞬間、姉貴が猛スピードで突っ込んでくる。

「ギン姉を………返せぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

涙を流しながら突っ込んでくる姉貴。

って、姉貴の奴、上の姉貴をアタシらが拉致ったと勘違いしてやがる!?

拳を繰り出してくる姉貴。

やべえっ、確か姉貴の能力は振動破砕。

アタシら戦闘機人には弱点とも言える能力だ。

アタシは無理に受けずに回避に徹する。

「ノーヴェ、ウェンディ、お前たちは引け!」

「チンク姉!?」

「安心しろ! 姉の能力なら相手に触れずに戦える!」

確かにチンク姉なら接近重視のアタシと比べれは安全性は高い。

「くっ………」

「行け!」

チンク姉の言葉に、アタシは歯噛みしながらも従う。

くそぉ!

アタシにできるのは、チンク姉が無事であることを祈るだけだった。





【Side Out】





【Side チンク】




私は、スバルと向き合う。

さてどうするか。

まともに傷つけるわけにはいかない上に、向こうの攻撃もまともに喰らえばほぼアウト。

ユウが言っていたな。

こんな状況を無理ゲーだと。

だが、時間だけは稼がせてもらう。

私はナイフをスバルの前面に放ち爆発させる。

これで多少は怯むかと思っていたのだが、

「うぉおおおおおおっ!!」

スバルは構わずに爆発の中を突っ切ってきた。

怒りで我を忘れている……か。

勘違いとはいえ、姉を攫われたと思い込んでいるのだから、その怒りも当然か。

これでは、いくら言葉で語ろうとも、スバルは聞いてはくれないだろう。

ならば、多少の怪我は我慢してもらおう!

「IS発動! ランブルデトネイター!!」

私はナイフを操り、スバルの周辺に突き刺す。

そして、それと同時に爆破。

先程よりもスバルに近いため、多少のダメージはあるだろう。

しかし、

「ギン姉を………返せぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

それでも全くひるまずにスバルは突っ込んでくる。

スバルは完全に防御を捨てている。

このままでは私もスバルも唯では済まない。

私がそう思ったとき、

(見てらんねーな)

そんな声が私の脳裏に響いた。

そして、

――トン

軽い音がしたかと思うと、スバルの体がぐらりと崩れ、その場に倒れ伏す。

そこには、

「ユウ!」

ユウがいた。

「あのままぶつかっていたら、どっちもタダじゃすまなかっただろうからな、悪いけど、手を出させてもらった」

「い、いや、助かった。 礼を言う」

恐らくユウがスバルを気絶させたのだろう。

「怪我は無いか?」

「あ、ああ。 大丈夫だ」

「そうか、よかった」

そう微笑んだユウの顔を見て、思わず顔が熱くなるのを感じた。

「とりあえず、もうすぐなのは達がここに来る。 チンクは早く逃げろ」

「わかった。 済まない」

私は振り返り、妹達の後を追う。

「また後でな」

「ああ」

そう言い残し、この場を立ち去った。
























あとがき


第六十二話の完成。

遅れてすみません。

第三次スパロボZをやってたら遅くなりました。

自分のスパロボのやり方は、序盤の内に補給装置を使ってレベル99まで上げて、俺TSUEEプレイです。

主人公TSUEE、WガンダムTSUEE、ガンダムOOTSUEE、ゲッターTSUEE、アクエリオンTSUEE、マクロス(アルト、バサラのみ)TSUEE、ダンクーガTSUEE、グレンラガンTSUEE、他YOEEEEEです。

撃墜数が、主人公(贔屓)、ヒイロ(ローリングバスターライフル)、デュオ(ビームシザーズ全体攻撃)の3人がずば抜けてます。

さて、今回は相当駆け足で話を進めました。

手抜きと思われるかもしれませんね。

とりあえず、スバルのガルルキャノンをギンガがグレイソードでぶった切る事をやりたかっただけの話。

後は原作通りのようでどこか違う話でした。

では次も頑張ります。







[15302] 第六十三話
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12
Date: 2014/08/13 19:34


第六十三話 特訓の成果





本部が戦闘機人の襲撃を受けたあと、スカリエッティから更なる犯行予告が警告された。

要約すれば、1週間後に本部に総攻撃を仕掛けるので、犠牲を出したくなければ一般市民は避難しておけというものだ。

その声明が、本部だけなら良かったものの、首都全てに発せられたものだからさあ大変。

あっさりと無力化された管理局本部を信じるものは誰もおらず、我よ我よと逃げ出していく。

その際に起こる混乱収拾などの役目のため、機動六課も駆り出されあっという間に1週間が過ぎる。

予告された日が明日に迫った今日、スバル、ティアナ、ティーダさんは、なのは達に呼び出された。





【Side スバル】




犯行予告の前日、私とティア、ティーダさんは、なのはさん達隊長陣に訓練場に呼ばれた。

私達が訓練場に着いた時、なのはさん、フェイト隊長、シグナム副隊長の3人と、何故か桜さんもいた。

「3人とも、お疲れ様。 ごめんね、避難誘導で疲れてるところを呼び出して」

なのはさんがそう言う。

「いえ、大丈夫です」

私はそう言う。

「それで………私達を呼び出した理由はなんですか? 訓練というのならアリサさん達がいないのはおかしいですし、副隊長の兄さんもこっち側ですし…………」

ティアがそう聞く。

「うん。 今から集まってもらった3人に行うのは、私たちからの卒業試験」

「卒業………」

「………試験?」

なのはさんの言葉に、意味の分からなかった私とティアは首を傾げる。

「もしかして………」

ティーダさんは何かに気付いたように自分の手首を見た。

「合格基準は、私達と1対1の模擬戦をして勝利すること」

「「えええええええええええええっ!!??」」

無理無理、絶対無理!

いつもは全員がかりでやっと戦える程度なのに、1対1なんて絶対無理ィーーーー!!

「スバルとティアナ、動揺しすぎ」

桜さんが溜息を吐きながら呆れたように行ってくる。

「アンタ達………一体何のために今まで訓練してきたのよ……」

「いえ、ですけど流石に1対1は………」

桜さんの言葉にそう返すと、

「はあ…………ティーダさんは分かってるみたいだからいいけど、スバルとティアナ。 ちょっとその場で大の字に寝転んでみなさい」

「「はい?」」

桜さんの言葉に一瞬呆気に取られてしまい、声が漏れる。

「早く!」

「「は、はい!」」

桜さんの促す言葉に従い、私とティアはその場で寝っ転がる。

でも、これが一体何の意味があるんだろう?

「あの……これって何か意味あるんですか?」

ティアが私と同じ疑問を口にする。

すると、桜さんは口元に笑みを浮かべ、

「2人とも、その状態で疲れたりとかその状態を保つのが辛いとか感じてる?」

桜さんは意味不明な質問をしてくる。

「えっ? そんなことはありませんけど………ただ寝っ転がってるだけですし………」

「じゃあ聞くけど、訓練を始めた当時、そんな簡単に寝っ転がれた?」

その言葉を聞いて、私は訓練開始当時を思い出す。




『何これ!? 重ッ!?』

『こ、こんなフルパワー近くで、いつもいろっていうんですか!?』





「「あっ!」」

ティアも思い出したのか、同時に声を上げる。

トレーニングバインドを付けてた事なんて、最近はすっかり忘れてた。

私達の反応を見て、桜さんはニッコリと笑い、

「今までよく頑張ったわね。 今日はその“枷”を外すわ」

そう言った。

「じゃあ、誰から行く?」

桜さんがそう聞いてきたので、

「はい!」

私は一目散に手を上げた。

今は、特訓の成果が知りたくでウズウズしてる。

「ふむ、スバルの相手なら私だな」

シグナム副隊長がそう言って前に出る。

同じ近接戦闘タイプ。

新旧の違いはあっても同じベルカ式。

確かに実力を確かめるには一番の相手かも知れない。

だけど、本当に勝てるのかなぁ………

桜さんを信じないわけじゃないけど、たった半年の特訓でシグナム副隊長を超える実力が付いたとは、到底思えなかった。

だけど…………

「それじゃあ、“枷”を外すわね」

桜さんが私の出した両腕を包むように手をかざし、先ずは不可視魔法を解除した。

白銀の枷が私の両腕と両足をつないでいる。

「トレーニングバインド、解除!」

桜さんがそう言った瞬間、両腕と両足の枷が弾け飛ぶ。

「なっ!?」

その瞬間、自分でも信じられないぐらいの魔力が自身の中にあるのを感じた。

それだけじゃなく、体がとても軽い。

今なら空も飛べそうな気がした。

「す、凄い…………」

私は思わず呟く。

「それじゃあ、スバルとシグナムは模擬戦の位置について」

なのはさんの言葉に従い、私とシグナム副隊長はシュミレーターで作られた廃ビル群の中に向かう。

そして、シグナム副隊長に向き直った。

「スバル、お前の特訓の成果、見せてもらうぞ! 手加減は無しだ!」

シグナム副隊長がレヴァンティンを起動させ、構える。

いつもなら緊張してしまうぐらいの張り詰めた空気なのに、今の私は、何故かワクワクしていた。

私もマッハキャリバーとリボルバーナックルを起動させ、構えを取る。

『二人共準備はいい? それじゃあレディー…………』

なのはさんの合図を今か今かと待ち望む。

『…………ゴー!!』

ついにその瞬間が来た。

「はぁああああああああっ!!」

シグナム副隊長が即座に斬りつけてくる。

いつもなら余りの速さに反応できないぐらいのスピード。

だけど、今はハッキリと剣筋を見ることができていた。

「うおおおおおおおおおっ!!」

私は斬撃に向かってリボルバーナックルを繰り出す。

剣と拳がぶつかり合い、甲高い音を上げる。

そして、

「くあっ!?」

私はそのままシグナム副隊長の剣を押し切った。

私は一瞬信じられず、その場で固まる。

いつも全く届かないと思っていた隊長達の領域。

今、間違いなく私はその領域に踏み込んでいた。

私は気を取り直し、シグナム副隊長を見据える。

「行きます!」

マッハキャリバーのローラーを高速回転させ、一気に突っ込む。

「くっ!」

シグナム副隊長は咄嗟に空中に飛び退く。

「ウイングロード!」

私は即座にウイングロードで追撃。

ウイングロードの展開スピードも今までの比ではなく、一瞬にしてシグナム副隊長への道を作り出す。

「速い!?」

シグナム副隊長が一瞬驚くが、直ぐに気を取り直し、

「紫電…………」

剣に炎を纏わせ振りかぶる。

「………一閃!!」

私の突撃に合わせて必殺の一撃を繰り出してきた。

いつもなら恐ろしくて避けることだけしかできないシグナム副隊長の必殺剣。

でも今は、不思議と怖くは無かった。

「うぉおおおおおおおおおっ!!」

私は思い切って魔力を込めた右手で炎に包まれたレヴァンティンを…………掴んだ。

「何っ!?」

シグナム副隊長が驚きの声を上げる。

今まで手も足も出なかった一撃を片手で止めることが出来た。

実際にやった自分でもビックリしてる。

けど、今は………

驚くシグナム副隊長を他所に、私は左腕を思い切り振りかぶり、

「おりゃぁあああっ!!」

シグナム副隊長の腹部に向けて、魔力を込めた掌底を繰り出した。

「がふっ!?」

シグナム副隊長は肺の中の空気が押し出されるように息を吐く。

そのまま地面に落下するも、途中で体勢を立て直して地面にうまく着地した。

でも、ダメージはあるようで、私が打った腹部を押さえながら荒い息を吐いている。

今なら行ける。

「行けっ! ウイングロード!!」

ギン姉との模擬戦でやった、トンネル型のウイングロードでシグナム副隊長を閉じ込める。

そして、

「一撃……………必倒ぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

私は全力で魔力弾を作り出す。

すると、シグナム副隊長は、

「チィ! 逃げ場がない! ならば! 迎え撃つのみ!!」

シグナム副隊長はレヴァンティンを鞘に収め、腰溜めに構える。

「ガルゥゥゥゥゥル……………キャノンッ!!!」

私は拳で魔力弾を打ち出し、

「飛竜一閃!!」

シグナム副隊長は炎を纏った蛇腹剣を繰り出す。

お互いに放った必殺技は、私達の中央でぶつかり、一瞬拮抗したあと、

「くっ!」

シグナム副隊長の飛竜一閃を弾き飛ばしてガルルキャノンが突き進む。

「くあっ!?」

シグナム副隊長はガルルキャノンを紙一重で躱した。

そのままガルルキャノンは突き進み、

シュミレーターのビル群を全て突き破って海の表面を抉りつつ空の彼方へ消えていった。

「……………………」

私はガルルキャノンを撃った状態で固まっている。

何? 今の威力?

自分で撃っときながら信じられなかった。

シグナム副隊長はガルルキャノンの軌跡を眺めた後、私に向き直り、

「ふむ、降参だ」

ギブアップを宣言した。

「えっ?」

私は思わず声を漏らす。

何故なら、シグナム副隊長はまだピンピンしているからだ。

「よもや一撃でここまで損傷が出るとは思わなかったぞ」

そう言って目の前に掲げたシグナム副隊長のレヴァンティンは、刀身全てがひび割れていた。

「文句なしの合格だ」

シグナム副隊長の言葉に私は嬉しくなり、

「はい!!」

大きな声で返事をした。

この力なら、絶対にギン姉を助けられる!

待っててね、ギン姉!

私は決意を新たにした。







私が皆のところに戻ると、

「すごいじゃないスバル!」

ティアが驚いた表情で駆け寄ってきた。

「うん、自分でも信じられないよ!」

私も興奮が収まらない。

まさかシグナム副隊長に1対1で勝てる日が来るなんて!

と、そこで私は気を取り直す。

「次はティアだよね。 頑張って!」

「とりあえず、全力でぶつかるだけよ」

ティアも何時もの調子で答えた。





【Side Out】





【Side ティアナ】





「じゃあ、次はティアナの番ね。 両手出して」

桜さんに言われ、私は両手を差し出す。

スバルの時と同じように両手を包むように手を翳し、

「トレーニングバインド、解除!」

枷が外された。

その瞬間、信じられないほど体が軽くなったように感じ、更には自分の中に今までの比じゃない魔力も感じる。

それに、魔力操作も断然しやすくなってる。

私が驚いていると、

「ティアナの相手なら私だね。 じゃ、いこっか」

なのはさんが笑ってそう言う。

「へっ?」

な、なのはさんが相手?

「ええぇぇぇぇぇぇ~~~~っ!?」

私は思わず叫び声を上げてしまった。






私はシュミレーターの中でなのはさんと向き合っていた。

「ティアナ、本気で行くからね!」

なのはさんは笑みを浮かべながらそう言うけど、その目は本気だ。

「は、はい………」

私は自信なく頷く。

さっきはスバルを見て、もしかしたらって思ってたけど、やっぱりこうやって向かい合うと不安で仕方がない。

「それじゃあ、始めるよ!」

なのはさんがレイジングハートを構える。

私も反射的にクロスミラージュを双銃モードで構えた。

『レディー………ゴー!!』

フェイトさんの合図で模擬戦が開始される。

「アクセルシューター! シューーーートッ!!」

なのはさんはいきなり20を超える誘導弾を撃ってくる。

流石なのはさん、やる時は本当に容赦が無い。

あーもー!

こうなりゃヤケよ!

「クロスファイヤー…………シューーーートッ!!」

私はダメ元でなのはさんの魔力弾と同数の魔力弾を作り出し、相殺を狙う。

今までの私が正確に誘導できる数は10そこそこ。

その倍以上の数を正確に制御できる自信なんて無かった。

だけど、魔力弾の操作が今までよりも格段に操作しやすくなっていた。

全ての魔力弾がほぼ同時になのはさんの魔力弾に当たり、爆発を起こす。

「流石」

なのはさんは笑ってそう言う。

「え………?」

あっさりと全弾命中に成功した私は呆気に取られた声を漏らす。

魔力操作もしやすくなってることはわかってたけど、こんなに簡単に………

でも、この魔力制御のレベルなら!

私は片方のクロスミラージュをなのはさんに向ける。

その瞬間、なのはさんは反射的に飛び退いた。

そして、

「シュート!」

私は一瞬で超圧縮魔力弾を作り出し、放った。

その弾丸は、なのはさんのバリアジャケットを掠める。

「超圧縮魔力弾をほぼタイムラグ無しで生成。 やっぱりティアナ、只者じゃなかったね」

なのはさんはそう呟く。

でも、私は今の感覚で確信した。

私は、両方のクロスミラージュをなのはさんに向けて構える。

「へ?」

私の姿を見て、呆気に取られた声を漏らすなのはさん。

その頬には、一筋の冷や汗が流れていた。

「はぁああああああああああっ!!」

私は叫びながら超圧縮魔力弾を交互に連射する。

「ひぇえええええええええええっ!!」

なのはさんはちょっと情けない声を上げならが弧を描くように飛行魔法で私の射撃から逃げながら上昇し、空中に退避する。

私はなのはさんを追うように回転しながら射撃を続けるけど、一向に当たる気配がない。

私はそこで射撃を一旦中断し、

「やっぱり、空中を飛び回る相手には流石に当たらないわね。 せめて、機動力で追随できれば話は別なんだけど………」

私はそう漏らす。

すると、

『マスター』

クロスミラージュが話しかけてきた。

「何?」

『マスターの枷が外されたのと同時に、私に隠されていた、最後のモードが解放されました。 それを使えば機動力で劣ることはありません』

「ホント!? 直ぐに頼むわ!」

『了解しました。 ベヒーモスモード、起動します』

クロスミラージュがそう言うと、光に包まれと誰もが知るあるものへと姿を変える。

それは、

「バイク?」

それは、銀色のボディをもった、いかにも重装甲な大型のバイク。

『はい。 陸戦二輪車両型形態、ベヒーモスです。 双銃モードと併用して使え、私がコントロールすることによって、走りながら射撃を行うことも可能です』

私はなるほどと思った。

これなら私の欠点の一つである機動力不足も補えるし、スバルのウイングロードとの相性もいい。

私個人でも、スバルとのコンビでも活躍できる形態だ。


私はベヒーモスに跨る。

「行くわよ! クロスミラージュ!!」

『了解しました!』

私はアクセルを吹かし、なのはさんを追う。

私は威嚇射撃を行いながらなのはさんとの距離を詰める。

「ッ」

なのはさんは大きく旋回して振り向くと、レイジングハートをバスターモードにして構えた。

「ディバイィィィィン…………バスターーーーーーッ!!」

なのはさんお得意の砲撃が来る。

だけど、

「撃ち砕く!!」

私はハンドルから手を放して両手で銃を持ち、砲撃に向かって超圧縮魔力弾を乱射する。

一発では飲み込まれてしまうけど、連射なら!

私の放った無数の超圧縮魔力弾の一発一発がなのはさんの砲撃に穴を開け飲み込まれつつも押し返される前に次の弾が砲撃を再び削っていく。

「くっ!!」

なのはさんは咄嗟に砲撃を中断し、その場を飛び退いた。

その一瞬後に無数の超圧縮魔力弾がその場を通過する。

「まさか、バスターが砕かれるなんて………!」

空中に居る安心感からか、僅かながら私から意識を外しその場を見るなのはさん。

でも、私はその隙を見逃さなかった。

「行くわよ! クロスミラージュ!」

『了解』

ビルの壁に向かって加速し、ウイリーを行いながら壁に激突………せずに、ビルの壁を垂直に走っていく。

「はああああああああああっ!!」

そして、なのはさんに向かってジャンプ。

「なっ!?」

なのはさんが気付いたけど、もう遅い。

なのはさんとの距離は僅か3mほど。

この距離なら、この魔法の威力が最大限発揮できる。

私は、両手の銃をなのはさんにむかって構える。

この魔法は、ユウさんに銃について教えて貰った後、地球の銃について個人的に調べていて思い付いたもの。

銃について調べ、銃の中にも色々な種類があると分かり、その中に一つが私の目に止まった。

それは散弾銃。

ショットガンとも呼ばれ、弾丸に込めた無数の小さい弾が発射と同時に放射状に広がる命中率が高く、近距離で高い威力を誇る種類の銃だ。

これは、それを元に編み出した魔法。

正確には、構想は出来ていたけど、今までは出来なかった。

でも、今なら!

私は銃口に無数の超圧縮魔力弾を集中させる。

そして、

「ダブルインパクト!!」

2丁の銃の引き金を同時に引く。

それと同時に無数の超圧縮魔力弾が放射状に広がり、なのはさんを襲う。

「きゃあああああああああああっ!?」

なのはさんは咄嗟にシールドを張ったけど、超圧縮魔力弾は軽々と貫通し、なのはさんに降り注いだ。

魔力ダメージによってなのはさんは気絶し、地面に落下した。

『そこまで!』

フェイト隊長からストップがかかる。

私は地面に着地するとベヒーモスから降りてなのはさんに駆け寄る。


「なのはさん、大丈夫ですか? なのはさん!」

私が揺さぶりながら声をかけると、

「………う~ん」

なのはさんは、直ぐに目を覚ました。

なのはさんは私をみると、

「にゃはは………強くなったねティアナ………合格!」

なのはさんはそう微笑む。

「あ………は、はい!」

私は、思わず目尻が熱くなった。





私の模擬戦の後は、兄さんとフェイト隊長が模擬戦をしたけど、あっという間に兄さんの勝ちだった。

機動六課に入るときに隊長達が行っていた通り、兄さんはSSランクを超えているかもしれない。

それから、隊長達が私達の魔力ランクを大まかに選定した結果、私もスバルもS+となった。

それを聞いたスバルは、

「よし! この力で絶対にギン姉を助けてみせる!」

と、意気込んでいた。

すると、

「あ~………その~………スバル? 意気込んでるとこ悪いんだけど…………」

桜さんが歯切れ悪く話しかけてきた。

「はい? 何ですか桜さん?」

スバルが聞き返すと、

「とりあえず食堂に来て、そうすればわかるから」

桜さんはそう言って私達を食堂へ促した。






【Side Out】






現在、食堂では今までで一番騒がしくなっていた。

「ウェンディ! テメー食いすぎだぞ!!」

「やかましいっスノーヴェ! 久々の桜姉のスイーツっス! 誰にも渡さないっス!!」

「へへっ! 頂き!」

「あーーーー!! セイン!! テメッ!」

桜のスイーツ争奪戦を繰り広げているノーヴェ、ウェンディ、セイン。

「ふぅ。 やっぱりコーヒーはユウ君の淹れたものが一番だよ」

「全くです」

「やはり旨いな」

「やっと落ち着けます」

「あ~ん、久遠ちゃん、久しぶり~!」

上からスカリエッティ、トーレ、チンク、ウーノ、クアットロ。

そして、ドゥーエを除いたほかのナンバーズが大人しくシュークリーム等を食べている。

つまりは、ドゥーエ以外のスカリエッティ一味が集合していた。

「「ど、どういう事ぉ!!」」

いきなり叫び声が聞こえた。

そっちに目をやると、スバルとティアナが驚いた表情を浮かべている。

「あ、スバル……」

食堂の席の一つに座っていたギンガが、苦笑しつつ手を振る。

「って、ギン姉ぇぇぇぇぇぇっ!?」

スバルが叫びつつ駆け寄る。

「ギン姉!? 大丈夫なの!? 怪我は!?」

慌ててそう声をかけるスバル。

「大丈夫よ。 殴られて気絶しただけだから………………………お母さんに」

歯切れ悪く答えるギンガ。

すると、

「はっはっは! 久しぶりだねスバル!」

スカリエッティが話しかけた。

「「あー! ジェイル・スカリエッティ!? 指名手配犯がなんでここに!?」」

スバルとティアナが同時に叫ぶ。

「酷いなあ。 何度も翠屋でお茶をした仲じゃないか」

肩を竦めながらそう言うスカリエッティ。

「え? お茶?」

「しかも翠屋って……?」

2人は首を傾げる。

「まだわからないのかい?」

スカリエッティはそう言うとサングラスを取り出しそれを掛ける。

それを見たスバルは、

「あー!! ジェイさん!?」

そう叫んだ。

因みにジェイとは翠屋に通っていた時のスカリエッティの偽名である。

「ってことは………」

ティアナが振り返ってナンバーズ達を見渡す。

「もちろん私の娘たちさ」

「「嘘ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」」

衝撃の事実に叫ぶ2人。

「ほ、本当にどういうことなんですか!? ユウさん!」

訳も分からず俺に詰め寄るスバル。

「それは私から説明しよう!」

また別の男の声がする。

それは、

「「レ、レジアス中将!?」」

レジアス中将であった。

「ついてきたまえ。 皆も待っている」

「「?」」

レジアス中将が背を向け、歩き始める。

スバル達も、困惑しながら後に続いた。






あとがき


第六十三話の完成。

また遅れてすみません。

第三次スパロボZ2週目やってました。

2週目で驚いたのはボン太くんがとあるステージから普通に使えるようになったことですかね。

ボン太くんでボスと戦うとセリフが面白くて仕方なかったです。

どんなボスでも動揺させまくりでしたからね。

唯一アクエリオンEVOLのミカゲだけは逆に動揺させられてましたが。




で、今回の話ですが、まあ、出来はそこそこ。

スバル&ティアナ無双でした。

スバル、純粋にパワーアップ。

ティアナ、ベルゼブモン化進行。

ティアナは結局バイク乗せて爆走させました。

枷有りのなのはを圧倒しました。

さて、次回はいよいよクーデター編になります。

お楽しみに(している人はまだいるんだろうか?)。





[15302] 第六十四話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7a8c92be
Date: 2014/11/30 22:33


第六十四話 クーデター勃発! もう1つの真実。




【Side ティアナ】




私達がレジアス中将に連れられ、機動六課の隊舎の通路を進む。

すると、この先には行き止まりの壁しかない通路を曲がった。

「あれ? この先って行き止まりだったよね? ティア」

スバルが小声で聞いてくる。

「そのはずだけど……」

レジアス中将は行き止まりの壁の前で立ち止まると、壁に手を当て、押し開いた。

「「えっ?」」

思わず声を漏らす私達。

「か、隠し扉?」

「何でそんなものが?」

私達の疑問を他所に、レジアス中将は隠し扉の奥にあった下り階段を進んでいく。

薄暗い階段を5分ほど下りた先に出口らしき光が見えた。

その出口を潜ると…………

「「え………?」」

私とスバルは再び声を漏らした。

目の前には広大な地下ドッグと、1000人を超える管理局員。

そして、旧式だけどL級の次元航行艦がそこにあった。

私達は、レジアス中将の指示でその管理局員たちの最後尾に並ぶ。

すると、レジアス中将が前にあった壇上に上った。

『諸君! 諸君らの中には何故このような場所へ連れてこられたか分からぬものもいるであろう! しかし、ここにいる者は、全員が我々と同じ志を持つものと信じて話をしたい!』

レジアス中将がマイクで突然話しだした。

『諸君らは、今の管理局の現状をどう思っているのかね? 深刻な人手不足。 それによる強引な勧誘。 その為に年端も行かぬ子供達すら戦場に立たせなければならない非情さ。 挙句の果てには、人手不足を解消するために、人造魔導師や戦闘機人といった違法行為にすら手を出す者すらいる』

レジアス中将の言葉にスバルが俯く。

多分、自分の身体のことを考えているんだと思う。

すると、レジアス中将はひと呼吸置き、

『この際だから白状しよう…………この私も人手不足解消のために戦闘機人という違法行為に手を出そうとした時期があった』

その言葉に、管理局員達に動揺が広がる。

私とスバルも顔に出るほど驚愕していた。

『私の事はいくら非難してくれても構わない。 それだけの事をしようとした事は自覚している。 だが聞いて欲しい。 私が戦闘機人に手を出そうとした理由は、あくまでも管理局の人手不足解消の為なのだ。 現に成人すらしていない管理局員がこの場に何人いる? ヘタをすれば一桁の年齢から戦いの場に赴いている者もいるはずだ』

それを聞いて私はハッとする。

よくよく考えれば私とスバルもまだ15、6に過ぎない。

周りから見れば、十分に子供と取られる年齢だ。

『私は友のお陰で道を完全に踏み外す前に間違いに気付くことが出来た。 そして同時に、新たなる道も見つけた。 BTT社が開発した『Magilink Elementary』、魔力が無いものでも魔法が使えるようにしたデバイスだ。 既にこの機動六課で実用試験にこぎ着けており、その成果も十二分に発揮している。 これがあれば人手不足もいずれ解消できるであろう。 しかし! それ以前に我々にはやらねばならぬことがある! それは、最高評議会の打倒である!!』

先程以上の動揺が局員たちの間に広がる。

『突然こんな事を言われて困惑する者もいるだろう。 だが、これを見て欲しい。 これが最高評議会の正体だ』

次の瞬間空中に映し出されたモニターには、培養液のカプセルの中に収められた、3つの脳髄。

「なっ!?」

「これが………最高評議会?」

私とスバルは顔を青くする。

『最高評議会とは、150年前時空管理局を発足させた3人の人物………その本人達が脳髄だけの姿で延命し、生き存えてきたものなのだ』

私達は、息を詰まらせる。

『この3人は確かに正義のために管理局を発足させ、今までの次元犯罪やロストロギアの暴走による世界の崩壊を食い止めるのに貢献してきた。 しかし! その正義は今やねじ曲がり、自分達がいなければ世界を守れないとまで思っている! 最高評議会は、次世代を全く信用していない! 脳髄だけで延命しているのがその証拠だ! 更には、自分達で決めた法を自ら破り、違法行為に手を染めている! その最大の犠牲者が彼だ!』

レジアス中将がそう言うと、壇上に上がった人物がいた。

それは、ジェイル・スカリエッティ。

『何故こんなところに次元犯罪者であるジェイル・スカリエッティがいるのかと疑問に思うものが殆どであろう。 驚かないで聞いて欲しい…………ジェイル・スカリエッティは我々の協力者なのだ』

その言葉にざわめく局員達。

『スカリエッティには明日の為にひと芝居うってもらったのだ。 民間人に被害を出さないためにな………だがしかし! 彼こそ最高評議会の最大の犠牲者なのだ!』

レジアス中将は拳を握り締めながら、力強くそう言う。

『彼は、最高評議会が伝説のアルハザートの技術を使い、生み出された存在なのだ! 更に! 最高評議会は彼に人造魔導師や戦闘機人といった違法技術を研究させ、自分達はのうのうと法の守護者を名乗っている!』

私を含め、その事実に驚愕するほぼ全ての局員。

『こんなことが許されていいのか!? 否!! 確かに彼らは正義の元、管理局を発足させた功労者である! しかし! 今の彼らが行っている行為は間違いなく法に背くものであり、かつ人道的に見ても、間違いなく悪である!! 故に、我々は明日09:00において、最高評議会に反旗を翻す!! スカリエッティが行った警告のお陰で、民間人はほぼ全て避難している。 民間人への被害は安心して欲しい。 この考えに賛同するものは明日の07:00までにこのL級次元航行艦『アースラ』に搭乗して欲しい。 また、反対する者も拘束はしない。 このまま戻ってもらい、この事を報告してもらっても構わない………だが、我々は止まらない! それだけの覚悟をもってここに立っているからだ!! …………以上だ。 願わくば、我らの考えに賛同する者が多くいることを切に願う』

レジアス中将はそう言って壇上から降りた。

そんな中、局員達には大きく2つの動きがあった。

1つはL級次元航行艦に向かう者達。

もう一つは、その場に立ち尽くす者達。

前者が6割、後者が4割。

そして、私とスバルは………後者だった。

突然の事態にどうすればいいかわからなかった。

「スバル、ティアナ」

ふと名を呼ばれ、私達は振り返る。

そこには、なのはさんが立っていた。

「なのはさん…………」

スバルが呟く。

「驚いた?」

なのはさんがそう聞いてきた。

「はい………」

「どうすればいいか………わからないです……」

私とスバルはそう呟く。

「なのはさんは………どうするんですか?」

スバルが問いかける。

「私? 私はクーデターに参加するよ。 むしろ、レジアス中将にクーデターの話を持ちかけたのは私達だしね」

その言葉に驚愕する私とスバル。

「「ど、どういうことですか!?」」

私とスバルは同時に叫ぶ。

「まず初めに謝っておくけど………ごめんね」

突然なのはさんが謝罪の言葉を口にした。

「な、なんで謝ったりするんですか!?」

スバルが叫ぶ。

「私は、2人がイメージしてる『なのはさん』みたいに立派な人間じゃないの。 本当の私は、自分勝手で、我が儘で、自分の幸せの為に他人を蹴落とすような人間なんだよ?」

「そ、そんな事……!」

そんな事ありませんと言いかけたところで、なのはさんは首を横に振る。

「ううん。 現にこのクーデターだって、元をたどれば私達が自分の幸せの為に持ちかけたんだよ」

「「えっ?」」

「自分の幸せの為に、ミッドチルダの………ううん、全ての管理世界に多大な影響を与える事も厭わない。 それが私達の本性だよ」

なのはさんはそう言って自傷気味に笑う。

「でも、忘れないで。 あなた達の力はあなた達だけの物。 その力をどう使うかは自分次第だよ。 クーデターに参加しても、クーデターに反対しても、私は2人の選択を尊重するよ。 でも、敵同士になったら、そのときは容赦しないけどね?」

なのはさんは最後に本気とも冗談ともとれる言葉を残し、その場を立ち去った。

「「……………」」

私達はとりあえずその場を後にし、2人で真剣に話し合うことにした。










「スバル………どう思う? さっきの話………」

私達は、自分たちの部屋で話し合う。

「正直……迷ってる。 レジアス中将の気持ちも分かるし、それでもクーデターはやりすぎなんじゃないかって気持ちもある」

「そう…………私も同じね………」

「……ねえティア」

「何よ?」

「なのはさん達の幸せって…………何なのかな?」

なのはさんが言っていた、なのはさんたちが自分の幸せの為にクーデターを持ちかけたという話を思い出す。

「なのはさん達の幸せ…………か。 真っ先に思い付くのはユウさん………なんだけど……」

「ユウさんと最高評議会に関係なんて…………」

スバルがそう言いかけたとき、私はふと頭に過ぎるものがあった。

「ちょっと待って! 確か、最高評議会は人造魔導師の研究にも手を出してたって言ってたわよね?」

「えっ? う、うん………そう言ってたけど…………」

「なら………可能性はあるかも………」

「何かわかったの? ティア」

「ええ………あくまで仮説だけど、ユウさんの魔力ランクは知らないけど、少なくとも類希な才能があることには気づいているわよね?」

「う、うん………今の私達でも、手も足も出ないぐらいだって事はわかってるけど………」

「ええ。 それなら、管理局から見れば、ユウさんは喉から手が出るほど欲しい存在ってことになるわ」

「あ………そっか」

「表向きには、ユウさんに断られたら管理局は引かざるをえない。 でも、裏じゃ………」

そこまで言ってスバルは目を見開く。

「もしかして、裏で最高評議会がユウさんに手を出そうとした?」

「ええ。 それで、怒ったなのはさんたちが犯罪者にならないように最高評議会を潰すために、レジアス中将にクーデターを持ちかけた………あくまで仮説だけど……」

「………でも、なのはさん達の事を考えるとそれも、否定できないかも………ユウさんの事になると、割と見境ないようだし…………」

「そう考えると、それしか理由が無いように思えてくるわね」

「うん! 絶対間違いないよ!」

「その根拠は?」

「勘!!」

「はぁ~~……」

スバルの言葉に、私は思わず溜息を吐く。

でも、私もそれで間違いないと自分の勘が言っている。

「それじゃあ、私達の選択は決まっているわね」

私は笑みを浮かべ、スバルを見る。

「そうだね。 クーデター側に参加しよう! ユウさんのお嫁さん候補の身としては、ユウさんのピンチに黙って見ていられないよ!」

スバルも私に笑いかける。

でも、その理由はどうなのよ!?





気を取り直して、私達はアースラへと乗り込んだ。

すると、

「あら? やっぱりアナタ達も来たのね」

そう言って話しかけてきたのは、アリサさん。

「ふふっ! 思ったとおりだったね」

そう笑みを零す、すずかさん。

「私も初めからこうなると思ってたよ!」

アリシアさんも笑う。

「皆さん……」

「ここに来たってことは覚悟があるわね? 何て、野暮なことは聞かないわ! お互いに頑張りましょう!」

そう言って手を差し出してくるアリサさん。

「はい!」

私もその手を握り返す。

すると、スバルが何かに気付いたように掛けていった。

「ギン姉! お母さん! お父さん!」

見れば、ギンガさんにクイントさん、ゲンヤさんが居た。

「スバル! 良かった………あなたもこっち側を選んでくれたのね………」

クイントさんが心底ホッとした表情を見せる。

自分の娘と敵対する可能性があった事は、かなりの精神的不安になっていただろう。

そのまま家族と話を続けるスバル。

「ティアナ」

突然名を呼ばれ、私は振り返る。

「………兄さん!」

そこに居たのは兄さんだった。

「ティアナ。 お前もこっちの道を選んだんだな………」

兄さんはホッとしたという表情で微笑む。

「うん………兄さんは良かったの? その………兄さんの夢は……」

「私の夢は、執務官となりより多くの人々を救うこと………だが、その救いの裏で犠牲になる者がいると言うのなら、私はそれを黙って見ているわけにはいかない」

兄さんは真剣な表情でそう言った。

私は嬉しくなって笑みを作る。

「兄さん………」

「さあ、明日に備えて、今日は休もう」

「うん」

私は、自分に割り当てられた部屋に行き、休むことにした。





【Side Out】








そして、運命の日の当日。

俺達翠屋のメンバーと子供達も、アースラに搭乗していた。

このアースラは、原作通り廃艦となる筈だった所を、クーデターの旗艦とするために秘密裏に回収。

機動六課地下の秘密ドックで、修理、改修が行われていた。

現役の次元航行艦を使うと、そこからクーデターの情報が漏れ出す恐れがあった為、廃艦寸前だったアースラは都合が良かった。

でも、俺は手を出すつもりはない。

この戦いは、なのはたちの戦い。

なのは達の、自分達の為の戦い。

俺は、本当にギリギリになるまで手を出すつもりはない。

桜やリニス、アルフ達は始めっから参加するつもりらしいが………

一応、子供達にも手を出さないようには言ってある。

あと、当然ながらユーノとヴィータもアースラに乗っている。

だが、1つ懸念事項がある。

スカリエッティが言っていたが、最高評議会に潜入していたドゥーエと連絡が取れないらしい。

通信出来ない状況が続いているだけならそれでいいのだが、万が一の事もある。

俺達の仲間内では、ドゥーエの捜索も目的の1つになっている。

尚、次元航行部隊の方はクロノが既に手を回しており、即座に動ける艦はクロノが艦長を務めるクラウディアと、クーデター賛成派が艦長を務める艦のみとなっている。

そして、いよいよクーデター開始の時間が迫っていた。

この時点で、アースラに搭乗した局員は、あの場にいた9割以上。

僅かながらクーデターに参加しなかった者もいたが、それでもクーデターの事を報告する者はいなかったようだ。

間もなく時計が9:00を指す。

それと同時に、

「今こそ立ち上がるとき! アースラ、発進せよ!!」

艦長席に座ったレジアス中将の号令により、秘密ドッグに海水が流れ込み機動六課近くの海底に作られた出口からアースラが発進していく。

海面を隆起させ、アースラは大空へと飛翔する。

そして、アースラの目の前に地上本部を捉えた。

レジアス中将は、広域通信と艦外放送で呼びかけた。

『こちらは、レジアス・ゲイズ中将である! 地上本部、最高評議会に告げる! 貴様達が行った非道は、もはや筒抜けである! 直ちに投降し、法の下で裁きを受けよ!』

通信と共に最高評議会が行ってきた悪事を証拠の情報と共にばら撒き、クーデターの開始を告げた。








【Side カリム】







聖王教会の一室で、スカリエッティの警告に備え、事務仕事を行っていると、

「騎士カリム! 大変なことが!」

シャッハが慌てた表情で部屋に駆け込んできた。

「どうしたのシャッハ。 そんなに慌てて?」

私は落ち着いて聞き返す。

すると、

「たった今、地上本部でレジアス中将がクーデターを起こしたと報告が!」

シャッハは驚くべき事実を言った。

「なんですって!?」

私は思わず椅子を倒すぐらいの勢いで立ち上がって叫んだ。

何故このタイミングで!?

私は驚愕するが、直ぐに気を取り直す。

「シャッハ! 直ぐに機動六課に報告を! 直ぐに対処に当たらせて!!」

私はそう指示するが、シャッハはいつものように直ぐに返事をせず、表情を曇らせ、何か言いにくそうにしている。

「そ……それが………」

「どうしたの?」

シャッハの様子に私は思わず聞き返す。

シャッハは覚悟を決めたように顔を上げ、

「機動六課も…………クーデターに参加しているとの情報です!」

私が顔を青ざめさせる程の驚愕の事実を言い放った。

「そ……そんな…………はやて………どうして…………?」

私はその事実を即座に受け止めることができずに、力が抜けたようにその場に座り込む。

何故………はやてが………

私は、昔からの友人を思う。

「騎士カリム!」

シャッハは、座り込んだ私に慌てて駆け寄ってくる。

「大丈夫ですか?」

「え……ええ………」

私はシャッハの手を借り、何とか立ち上がる。

そうだ、こんな所で呆けてる場合じゃない。

私はそう思い立つと、直ぐにシャッハに指示を出す。

「シャッハ! 直ぐに動ける騎士達を集めて! 私も行きます!」

私の言葉にシャッハが驚く。

「騎士カリム!? どうなされるおつもりで!?」

私はシャッハをしっかりと見つめ、

「私が機動六課を………はやてを説得します!」

そう言い放った。






【Side Out】







【Side なのは】






レジアス中将がクーデターを宣言して数分も経たない内に地上本部には1000人を超える魔導師達が防衛網を敷いていた。

いくら最高評議会の悪事を暴いたとはいっても、その最高評議会を心酔する人達には、殆ど効果が無かったみたい。

程なくして戦闘が開始される。

魔力弾が飛び交い、爆発が起こる。

数ではこちらが不利でも、質ならこっちが上だと言い切れる。

その筆頭となっているのは、

「うぉおおおおおおりゃぁああああああああっ!!」

「はぁああああああああああっ!!」

ウイングロードで相手の集団の中に殴り込み、その後ろをベヒーモスで爆走するティアナが超圧縮魔力弾を正確な射撃で連射する。

遠くの相手はティアナが射撃で撃ち落とし、近付く相手はスバルが叩き落とす。

やっぱりあの2人、いいコンビだね。

私がそう思っていると、見覚えのある魔力弾が私に向かって飛んできた。

この魔力弾は、

「見損ないましたわよ高町さん。 よもやあなたともあろう者が、このような低俗なクーデターに参加するなど」

「レイシス一等空尉……」

そこに居たのは、ローザ・レイシス一等空尉。

またこの人?

「最高評議会に反旗を翻すとは、そこまで堕ちましたか」

「堕ちるも何も、私は元からこういう人間だよ」

私は勘違いしてるレイシス一尉にそう言う。

「減らず口を!」

レイシス一尉はそう叫んで魔力弾をばら撒いてくる。

私は、もうワザと負ける必要が無いからその魔力弾を避けようとして………

「ッ!?」

一斉に私に向かって向きを変えてきた。

「クッ!」

私は咄嗟にプロテクションでその魔力弾を受け止める。

魔力弾に込められてる魔力も前と変わりないから結構キツイ。

私は魔力弾を防ぎきると、レイシス一尉を見上げる。

「驚いたよ。 まさかあれだけの数の魔力弾を一斉に操作するなんて」

私は素直に感心した言葉を漏らす。

「フッ、あなたのお姉さんに敗北してから、屈辱を晴らすためにこの数ヶ月鍛え直しましたの。 今ならあなたのお姉さんにも負ける気はしませんわ!」

なるほど。

元々才能は高かったし、プライドの高さもいい方向に持っていったのなら、これだけ短期間に成長したのも頷ける。

今ならSランク魔導師を名乗っても恥ずかしくないレベルかな。

「なのはさん!」

スバルが今の様子を見て、私が不利と悟ったのか、ウイングロードで私の前に出てくる。

「ここは私達が!」

続けてティアナもスバルの横に並ぶ。

あはは、気持ちは分かるし、ある意味嬉しいといえば嬉しいんだけど………

「いいよ、2人とも。 2人は下がってて」

「で、ですが………」

ティアナが言いにくそうに今の私とレイシス一尉の実力差を示唆する。

けどね………

「あの人は、私が直々に墜としてあげないと気が済まないから………!」

私の実力があの程度と思われるのは、心外だなぁ……

「「ッ!?」」

私の雰囲気に押されたのか、2人は若干引いた。

私は2人の真ん中を通ってレイシス一尉の前に出る。

「あら、高町さん。 まだ実力差がわからないのかしら?」

レイシス一尉は先程の攻撃で気を良くしたのか、いつも通りの上から目線で話しかけてきた。

「ううん。 この数ヶ月のあなたの努力は認めるし、実力が桁違いに上がったのは、否定できない事実だよ」

「フフッ………それならば観念なさい? 今なら私が擁護してあげても宜しくてよ?」

はぁ、一々頭に来る言い方だなぁ………

「………けどね」

でも、漸く………

「高々数ヶ月の努力で、この私の8年間の努力に勝てると思うなんて………笑わせないで欲しいな!」

私はそう言いながら不可視魔法を解除する。

私の両腕と両足に掛けられていた枷が顕になる。

「なのはさん!? それってまさか………」

「トレーニング………バインド……!?」

スバルとティアナが驚愕している。

「解除!」

私の言霊でトレーニングバインドが弾け飛ぶ。

そして、久々に感じる、私自身の本来の魔力。

それが私の体から吹き出した。

「なぁっ!?」

レイシス一尉が口を大きく開けて固まってる。

「行くよ、レイシス一尉」

私はレイジングハートをレイシス一尉に向け、バスターモードに変更する。

「クッ!」

気を取り直したレイシス一尉は私に向かって大量の誘導弾を発射する。

けど、そんな豆鉄砲を何発用意したところで無駄。

「ポジトロン………レーザーーーー!!」

久しぶりに撃ったポジトロンレーザーはレイシス一尉の魔力弾を何もないかのように飲み込み、突き進む。

「なっ!?」

レイシス一尉は反射的に回避行動をとり、ポジトロンレーザーから逃れる。

目標を見失ったポジトロンレーザーはそのまま突き進む。

そして、

「なぁっ!?」

レイシス一尉が再び驚愕した声を上げる。

何故なら、私の放ったポジトロンレーザーは地上本部の防壁を紙のごとく突き破り、本部の塔のど真ん中に風穴を開けた。

「う………嘘………」

レイシス一尉は呆けていて隙だらけ。

だから私は………

「はっ!?」

レイシス一尉がこっちに気付くけどもう遅い。

私の頭上には巨大な魔力球が存在していた。

「な………あ………」

絶句するレイシス一尉。

「メガ………」

私はその魔力球を振り下ろす。

「………デェェェェェス!!」

私の放った巨大魔力球はレイシス一尉を呑み込み、そのまま地上に激突し、大爆発を起こした。

「…………ふう! スッキリ!」

今まで溜め込んだストレスを、一気に開放した感覚だね。

こんな清々しい気持ちは久しぶり。

そんな私を、

「な、なのはさん………やっぱりすごーい………」

「こ、これがなのはさんの本気…………」

スバルとティアナが唖然として私を見ていた。





【Side Out】






【Side はやて】




「邪魔やぁぁぁぁぁ!!」

枷を外した私は存分に魔力を振るう。

結構暴れたで、もう地上本部の防衛人員は、もう半分を切ってるんやないかな。

その時、

『新たな増援部隊を確認! 所属は…………聖王教会の騎士団です!!』

私はオペレーターの報告に一度溜息を吐く。

やっぱり来てもうたんやな………

私は気を取り直し、オペレーターに報告する。

「聖王教会は私に任せて貰う! リインフォース! 付いて来てや! 他はこのまま地上本部へ!!」

私はそう言って、リインフォースとユニゾンし、聖王教会の騎士達の元へ急ぐ。

そこに居るだろう友人の事を考えながら…………




枷を外した私のスピードなら然程時間は掛からず聖王教会の騎士達の元へたどり着いた。

私は騎士達の前に降り立つ。

すると、思った通りの人物が私の前に現れた。

「はやて………」

「…………カリム」

私の前に現れたのは思った通りカリムやった。

「はやて………何故こんな事を………?」

カリムは本当に悲しそうな表情で私に問いかける。

私は少しバツが悪そうに頭を掻き、

「何で言われてもなぁ………私らが管理局に入ったのは、元々最高評議会を潰すのが目的やったし………」

私の言葉を聞いて、カリムはショックを受ける。

「私は…………はやての事を友人だと思っていたわ…………はやて……あなたは私を騙していたの?」

「それは違う!」

今のカリムの言葉には、即効で否定した。

「私もカリムの事は仲のいい友達や思っとる。 そりゃあ、本当の事を黙っとったのは悪いと思うとるけど…………」

「それなら! ………私の事を友人だと思ってくれてるのなら……! お願い! こんな事はもうやめて! 私ははやてとは戦いたくないわ!」

カリムの泣きそうな顔での懇願。

私は一度目を伏せる。

「…………正直、私もカリムとは戦いとうない…………カリムは、なのはちゃんやフェイトちゃんに並ぶ友達や。 普通やったら、こんなことせえへん」

「それなら!」

私は顔を上げ、

「けど、ここで止めるわけにはいかん! 最高評議会がおる限り私は………ユウ君は絶対に幸せになれへんのや!」

私は叫ぶ。

「カリム、人には優先順位いうものがある。 私にとっての一番はユウ君なんや。 ユウ君が幸せになれな、私も幸せになれへん! 私は自分の幸せの為に最高評議会を潰す! その邪魔をするんやったら、カリムが相手だろうと、私は戦うで!」

私は杖を突きつけ、覚悟を示す。

「はやて………」

カリムは俯く。

さて、ここでカリムがどう出るかで私の対応も決まってくる。

出来れば、このまま引いてくれることは私は願う。






【Side Out】








【Side 三人称】





とある場所。

そこに3つの脳髄が培養液のカプセルの中に浮かんでいた。

『やれやれ、よもやレジアス中将だけではなく、ジェイルまで裏切るとはな……』

『所詮奴らに我々の崇高な正義など理解できぬという事だ』

『しかしどうする? このままでは地上本部の陥落も時間の問題だぞ?』

3つの脳髄は話し合う。

『仕方あるまい。 アレを使う。 更に保険として、ゆりかごの用意も』

『いいのか? ゆりかごはともかく、アレはまだコントロールが完璧ではない。 最悪こちらの被害もバカにならんぞ』

『問題ない。 魔導師がいくら死のうがアレの研究が完成すれば、魔導師など取るに足らん』

『それもそうだな。 では、アレの転送の準備とゆりかごの起動を』

3つの脳髄が入ったカプセルの台が下がり始め、床の下へと消えていった。







【Side Out】







戦闘が始まって約1時間。

この戦いの大局は、クーデター側に傾いていた。

このままいけば、後1時間もすれば地上本部の制圧も完了するだろうと思っていた。

その時、

『レジアス中将』

最高評議会から突如として通信が入った。

しかし、その画面に映ったのは紋章が描かれた画像が映るだけのサウンドオンリーの通信だった。

「最高評議会………!」

レジアス中将は拳を握り締める。

『残念だよレジアス中将………君はもっと、賢い男だと思っていたのだがね』

「だまれ! 私は友のお陰で自分の正義を取り戻しただけだ! キサマらに賢いだの何だの言われる筋合いはない!!」

『やれやれ。 まあいい。 我々に逆らったのだ。 その報いは受けてもらわねば』

「何?」

最高評議会の言葉にレジアス中将は怪訝な声を漏らす。

『見よ!! これが我らの正義の力だ!!』

通信で最高評議会が叫ぶと地上本部をそっくり覆うような巨大な召喚魔法陣が浮かび上がる。

「何だと!?」

レジアス中将が驚愕した声を上げる。

そして、次の瞬間その魔法陣から途轍もなく巨大な魔法生物が姿を現した。

「なっ!? 馬鹿な!!」

その魔法生物は、地上本部を同化するように取り込んでおり、全高はおよそ1km。

顔はまるで竜のようであり、腕は細長く、腕の先には4本の鋭い爪。

両腕を広げれば、手の両端は最大2km程になるだろうか?

背中には禍々しい紅の翼。

そして、全身を鱗とも甲殻とも違う不思議な外殻を纏っていた。

「グギャァァァァァァァァァァァァッ!!!」

その魔法生物は、禍々し叫び声を上げる。

敵味方を含め、多くの局員がそれを見て絶句する。

その魔法生物が腕を振り回すと、凄まじい衝撃波が発生し、敵味方問わず吹き飛ばす。

その衝撃波は、聖王教会の騎士達の所にも達し、倒壊したビルの瓦礫が騎士達に降りかかる。

「カリム!!」

はやては咄嗟にカリムを抱き抱え、その場を離脱し、カリムを瓦礫から救った。

「だぁぁぁっ! 敵味方関係無しかいな!!」

はやてが叫ぶ。

その威力に

再び多くの局員が絶句した。

しかし、俺にとっては、別の意味で言葉が出なかった。

あの魔法生物を見て、俺の記憶にある2つの存在が頭に過ぎった。

一つは前世の記憶。

細部はかなり違うが、全体的なシルエットはデクスモンにそっくりだった。

そしてもう一つ。

それは、父さんと母さんが死んだ、最も直接的な原因となった、あの時の魔法生物。

その魔法生物に共通する部分が、目の前の魔法生物に多く見て取れた。

『どうだね? 我らの正義の力は?』

「グ………」

レジアス中将は歯を噛み締める。

だが、俺はそんな事は気にしていられなかった。

俺は前に出て、

「答えろ最高評議会。 あの魔法生物は、12年前、クルーザーの部隊が遭遇した魔法生物と関係があるのか?」

感情を押し殺し、淡々と問いかけた。

『ほう? よく気がついたな。 あの時の魔法生物はコレの試作品だよ。 あの部隊にはSSランクが2人も居たからね、実験テストにはちょうど良かったのさ。 SSランク魔導師を2人も倒せればコレの有用性が証明できるし、ついでに彼らの子供は類希な魔力資質を持つ子でね、人造魔導師の実験材料にするには一石二鳥だったわけだよ。 まあ、その子を取り込むことは失敗してしまったがね』

その言葉を聞いた瞬間、俺は頭が真っ白になった。

「キサマら! それだけの事をしておいて、それでよく堂々と正義を名乗れるものだな!!」

レジアス中将が激高する。

『何を言っている? 我々こそ正義なのだ! 我らの行うことこそ正義であり、唯一次元世界を守れる方法なのだ!!』

最高評議会が何やら言っているが、もう何も聞きたくない。

「黙れよ」

俺は淡々と、それでいて有無を言わさぬ言葉で最高評議会を黙らせる。

俺は目を瞑る。

「…………そうだったのか…………どちらにせよ、俺の父さんと母さんは、殺される手筈だったというわけだ……………正義の名の元に……………」

俺の目からは涙が溢れる。

俺は目を開く。

「俺は…………この戦いに介入するつもりは無かった…………だが! お前達が父さんと母さんの本当の仇だと言うのなら話は別だ! 覚悟しておけ最高評議会! キサマらは俺が直接消し飛ばす!!」

俺はそう言って転移魔法を発動させる。

まずは、あの目障りな魔法生物を消し飛ばす!!




俺達がアースラで最高評議会に宣告していた時にも、なのは達はデクスモンモドキと戦いを続けていた。

枷を外したなのは達ですら、デクスモンモドキには大したダメージを与えられない。

俺はそんな中、あまり動いていなかったはやてを目印に転移した。

「あっ! ユウく……ッ!?」

はやては俺に話しかけようとしたが、その言葉が途中で止まる。

恐らく今の俺の状況に気が付いたのだろう。

冷や汗を流している。

「……はやて………悪いがこの戦い、俺にも介入させてもらうぞ!!」

俺はそう言って魔法生物を見上げる。

「ユウさん………? 翠屋のマスターの?」

カリムが突然現れた俺に呆然としている。

すると、デクスモンモドキが本能のままに振り回していた腕が、俺の方へと向かってくる。

だが、俺にはどうでも良かった。

「危ない!!」

カリムが叫ぶ。

そこで俺は叫んだ。

「オメガ!!」

叫んだ瞬間、腕が俺に叩きつけられる。

「ああっ!?」

カリムが悲鳴に近い叫び声を上げる。

でも、

「大丈夫や」

はやてがそう言った瞬間、俺の体から虹色の魔力が吹き上がる。

「に、虹色の魔力光!?」

カリムが驚愕した声を上げる。

俺はオメガを起動し、バリアジャケットを纏う。

その姿を見たカリムは、

「ち、『血塗られた聖王』…………?」

呆然と声を漏らす。

「久しぶりというべきか? 騎士カリム」

俺はグレイソードでデクスモンモドキの腕を受け止めながらそう言った。

「………ユウさんが…………『血塗られた聖王』?」

「そういう事だ」

カリムの呟きに、俺は肯定し、そして、

「はぁああああああああああああっ!!」

グレイソードでデクスモンモドキの腕を切り落とした。

「グギャァアアアアアアアアアアアッ!?」

デクスモンモドキは、痛みからか叫び声を上げた。

俺は地を蹴り、デクスモンモドキの顔の前に飛んでいく。

「ユウ君!?」

俺に気付いたなのはが叫ぶ。

「ユウ………さん?」

スバルとティアナが呆然としている。

「話は後だ。 まずはこいつを片付ける!」

俺は左腕を振り、グレイソードを展開。

続いて右腕を振り、ガルルキャノンを展開させた。

「ギガァァァァァァァァァッ!!」

デクスモンモドキは、完全に俺を敵と定め、残った腕で襲いかかろうとする。

しかし、俺は腕を振り上げ、

「グレイソーーーードッ!!」

振り下ろすとともに巨大な魔力斬撃が飛び、残った腕を根元から切り落とす。

「ギィャァァァァァァァァァッ!?」

叫び、暴れまわるデクスモンモドキ。

俺は、そんなデクスモンモドキに大した思いも抱かず、

「ガルルキャノン!!」

莫大な魔力を圧縮した魔力弾を、デクスモンモドキに撃ち込んだ。

着弾地点から魔力のドームとも言うべき魔力の連鎖爆発の範囲が広がっていく。

「ギャァァァァァァァァァァァァァッ…………!!」

断末魔の叫びと共に、デクスモンモドキは地上本部ごと消え去った。

「ち、地上本部ごと………一撃で………」

ガルルキャノンの威力に呆然とするスバルとティアナ。

だが、俺はまだ終わっていないと確信できていた。

デクスモンモドキが地上本部を取り込んだ時、最高評議会に変化は無かった。

つまり、最高評議会は地上本部にいない可能性が高いということ。

その時、突然強い揺れがグラナガンを襲った。

まだ、戦いは終わってはいない。









あとがき


第六十四話の完成。

っていうか、また凄まじく遅れてしまって申し訳ない!

え? 別に待ってないって何回言わせればわかるんだって?

それならばいいのですが…………

さて、今回はクーデター勃発。

視点がコロコロ変わるため読みづらいかも?

だけどなのはとレイシス、はやてとカリムの絡みはやっておきたかったので。

ユウ君の両親の死に最高評議会が深く関わっていたという事実。

こんな設定どう思います?

完全に最高評議会が狂っとりますが、脳髄だけで延命する奴なんてこんなもんでしょう?

はてさて、残りはあとわずか。

目指せ今年以内での完結。

では、次も頑張ります。






[15302] 第六十五話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7a8c92be
Date: 2014/12/31 20:29


第六十五話 白の聖王VS黒の聖王







【Side クイント】





「はぁああああああああっ!!」

私は新型のリボルバーナックルで相手を殴り飛ばす。

その時、別の魔導師が私の後ろから魔力弾を放とうとしていた。

でも、

――ドォオオン

その魔導師が別方向から飛んできた魔力の矢に撃ち落とされる。

「人の嫁さんに何しようとしてやがる」

私がその矢が飛んできた方向を見ると、左腕の装甲と弓が一体化したバリアジャケットを纏ったあの人が居た。

「あなた…………」

彼が纏っているのは、八神二等陸佐から渡されていた、『Magilink Elementary』のモデル“サジタリアス”。

魔力の矢を主力にした遠距離特化のマギメンタル。

仕事の合間に、私に秘密で特訓していたらしい。

「ま、何だ? …………大丈夫だったか?」

彼の言葉に、私は思わず笑みを浮かべてしまう。

「フフッ、おかげさまでね。 …………嬉しいわ」

「あん? 何がだ?」

「あなたと一緒に戦える日が来るなんて、夢にも思わなかったから………」

私がそう言うと、彼も笑みを浮かべる。

「俺も同じだ。 これからは、お前だけを戦わせたりはしねーからな」

「フフッ! 頼りにしてるわ。 あなた…………」

私はそう言って、もう一度気を引き締めようとしたとき、強い揺れがグラナガンを襲った。

「ッ!? 何っ!?」

「ただの地震じゃないぞ! これは!?」

私達は揺れに耐えつつ、あたりの様子を伺った。

その時、グラナガン郊外の森が突如隆起し始め、その下から巨大戦艦が浮上を始めた。





【Side Out】






【Side 三人称】





ゆりかご浮上の数分前。

グラナガン郊外の森の下に眠るゆりかご。

その玉座の間にドゥーエがバインドで縛られた状態で、床に横たわっていた。

その時、カツカツと玉座の間の入口から誰かが歩いてくる足音が聞こえた。

「う…………」

その足音でドゥーエが眼を覚ます。

「………あれ………? 私…………?」

意識が朦朧としているのか、今の状況をハッキリと思い出せないドゥーエ。

しかし、足音が近付くにつれ、徐々に意識が覚醒していく。

「………そうだ。 私、『彼』を逃がそうとして………」

ドゥーエが身を起こしそう呟いた瞬間、足音の主が玉座の間に入ってきた。

「ッ! アルッ!!」

その人物を見た瞬間、ドゥーエが叫んだ。

ドゥーエにアルと呼ばれた人物は立ち止まり、ドゥーエの方を向いた。

驚くことにその顔は、髪が白髪なものの、ユウと瓜二つであった。

その両目も赤と青のオッドアイである。

「ドゥーエ…………」

彼はドゥーエの名を呟くと、足を止め視線を向ける。

「アル! もうやめて! あなたが最高評議会に従う必要なんてないのよ!」

ドゥーエは、悲しみが入り混じった声で叫ぶ。

すると、彼はドゥーエに歩み寄ってきた。

「ドゥーエ………」

「アル………」

2人は互いの名を呟く。

すると、アルは片膝を付き、ドゥーエの視線に合わせる。

「ありがとう、ドゥーエ…………君のお陰で、俺は人間らしさを残すことが出来た」

アルは微笑み、優しそうな眼差しでドゥーエを見つめる。

そして、彼女の頬に手を添え、

「俺があの地獄の日々を乗り越えられたのも、全ては君のお陰だ………君という光があったから、俺は生きる希望を手放さずにいることが出来た………」

「アル…………!」

ドゥーエの瞳には、涙が溜まっていた。

アルの手が、頬を滑り、顎を持ち上げる。

「本当に………ありがとう…………」

アルの顔を近づき、そのまま唇を重ねた。

「!?」

ドゥーエは一瞬驚きで眼を見開くが抵抗はせず、逆にそのまま眼を閉じ、身を委ねた。

しばらく流れる2人だけの時間。

永遠に思えるその時間も、やがて終わりが来る。

アルが唇を放し、ドゥーエを見つめる。

「ドゥーエ…………君を愛している………」

「アル…………」

ドゥーエは涙を流しながらアルを見つめる。

すると、何かに気付いたようにアルは立ち上がる。

アルが立ち上がった瞬間、アルの後方にモニターが開き、最高評議会の紋章が映し出された。

『何をしている、α―01。早くゆりかごを起動させるのだ』

最高評議会からそう通信が来ると、アルの表情は無表情になった。

「別に………何でもない」

先程とは違う、全く感情を感じさせない冷たい声でそう言うと、アルは踵を返し、玉座に向かって歩いていく。

そして、玉座に腰掛け、眼を瞑った。







【Side ドゥーエ】




私が彼と初めて会ったのは、最高評議会に潜入してしばらく経ってからだった。

彼を初めて見たとき、私は直ぐに彼がユウの遺伝子を元に作り出された人造魔導師であることに気付いた。

おそらく、ユウを拉致した時に採取した血液サンプルを元に生み出されたのだろう。

当初はすぐに彼の事をドクター達に報告しようと思っていた。

でも、彼が人としての扱いを受けず、実験動物的な仕打ちを受けるのを見て、私は胸が苦しくなった。

だからせめて、私だけは彼の事を『ヒト』として見てあげようと思い、そのように接してきた。

最初は、多分姉が弟を見るような気持ちだったんだと思う。

けど、いつからだったか、私は彼に対し、情が湧いているのに気付く。

そして、その情がいつしか『愛』に変わっていった。

普段無表情で感情を感じさせない彼でも、私の前では優しい表情を見せてくれる。

それがとても嬉しかった。

私は、ついに最後まで彼の事をドクターに報告することができなかった。

報告すれば、彼との関係が終わってしまう。

そう思ったから。

その彼が、ゆりかごの玉座に座る。

その瞬間、ゆりかごが起動した。







【Side Out】





グラナガンを激しい揺れが襲い、郊外の森がせり上がったと思ったら、信じられないことに、その下からゆりかごが浮上してきた。

「馬鹿な!? 何でゆりかごが動く!?」

俺は思わず叫ぶ。

「聖王の血が流れてるユウもヴィヴィオもこっちにいるのに!」

桜も俺と同じように驚いている。

「ユウ君? 桜お姉ちゃん? あれが何か知ってるの?」

近くに居たなのはがそう問いかけてくる。

「あれは聖王のゆりかご。 生きている聖王が起動キーとなって動く古代ベルカの産物だ。 二つの月の魔力が受けられる衛星軌道上まで上昇すれば、現在の次元航行艦隊とど互角以上のポテンシャルを発揮すると言われている。 だが、逆に言えば、聖王がいなければデカいガラクタに過ぎないんだが…………」

「もしかして、カリムの預言にあった、黒の聖王?」

「可能性としては、それか………」

桜の言葉に俺は頷く。

「何にせよ、このままゆりかごを放っておくわけには行かないからな。 俺は玉座の間へ行く。 桜となのはは、動力部を破壊してくれ」

「わかったわ。 ユウなら大丈夫と思うけと、気をつけて」

「ああ。 お前らもな」

すると、

「ユウさん!」

「私達も一緒に!」

近くにいたスバルとティアナが声を上げた。

「いや、お前達はこのまま外を頼む。 さっきの魔法生物の所為で状況がかなり混乱しているが、まだ抵抗している本部局員もいる。 そいつらを鎮圧してくれ」

「ッ………分かりました」

「ティア!?」

「スバル、私達が一緒に行っても、ユウさん達の足手まといになるだけよ」

ティアナの言葉に、スバルは言葉を詰まらせる。

「すまない……」

俺はそう言ってゆりかごに向かって飛び立つ。

桜となのはも俺に続いた。

だが、俺は気付かなかった。

桜となのはの他にも、俺の後に付いてくる小さな2つの存在に。






俺はゆりかごの船体のど真ん中にガルルキャノンで穴を開け、艦内に突入する。

原作通りゆりかご内部には高濃度のAMFが張り巡らされていたが、今の俺達には殆ど意味がない。

一応、最高峰議会ごとゆりかごを墜とすという事も考えたが、ゆりかごの中にドゥーエがいる可能性もあったのでそれはやめることにした。

ゆりかご内部に入ったあとは、桜達と別れ、俺は船首付近にある王の間へと向かう。

内部構造は、突入直前にスカリエッティからデータを貰っているので、迷うことはない。

途中、ガジェットⅣ型が数えるのもメンドくさいぐらいに湧いて出てきたが、氷漬けか蒸発か、どちらかの刑に処してやった。

やがて、大した時間もかけずに王の間の入口へとたどり着く。

無駄にデカい入口を見上げながら、何でこんなデカい入口を作ったんだろうかと思う。

アレか?

昔の聖王は巨人だったのか?

そんなどうでもいい事を思いつつ、俺は扉を開けて中に入る。

すると、目の前の玉座には、驚くことに俺とそっくりの男が座っていた。

「何者だ? お前は?」

俺は思わず問いかける。

「俺か? 俺はお前だ」

その男はそう返してくる。

「俺? そうか、お前は俺を元に生み出された人造魔導師!」

「そういう事だ。 初めましてだな、兄貴」

その男はニヤリと笑みを浮かべた。

その時、

『ククク…………どうかね血塗られた聖王。 我々の最高傑作、『α―01』と出会った感想は?』

玉座の上にモニターが開き、最高評議会の紋章が映し出される。

「悪くない気分だ。 俺は一人っ子だったからな。 弟が出来て嬉しいよ」

俺は最高評議会に皮肉を込めてそう言った。

『フフフ………“これ”こそ我らの最高傑作。 これが我らの正義の力だ!』

最高評議会の物言いに、俺は呆れると同時に少し気になった。

『これ』と言われた瞬間、目の前の男の表情が僅かに不機嫌になったように感じたのだ。

『正義の力の前に這いつくばるがいい! そこの戦闘機人と同じようにな!』

そう言われて俺は気付いた。

部屋の隅にドゥーエがバインドで縛られていた。

目が若干赤いような気がしたが、特に怪我は無いようだ。

「よかった。 ドゥーエ、無事だったか」

俺はその場でドゥーエに向かって手を翳し、バインドを破壊する。

「ドゥーエ、下がっていろ」

俺はそう言って相手を見据える。

すると、ドゥーエは一度相手を見ると、心無し後ろ髪引かれるような表情をして俺の方に歩いてくる。

すると、

「ユウ、お願いがあるの」

俺の前でドゥーエが口を開く。

「ドゥーエ?」

俺が聞き返すと、

「彼を殺さないで」

「えっ?」

ドゥーエの意外な言葉に俺は声を漏らす。

「お願い…………」

ドゥーエは泣きそうな表情でそう懇願する。

「……………わかった。 理由は聞かない」

「……………ありがとう」

ドゥーエはそう言うと俺の横を通り過ぎ、玉座の間を出る。

俺は気を取り直して相手を見つめると、相手は玉座から立ち上がる。

「さあ、始めようか。 聖王同士の戦いを!!」

相手はそう言うと、赤い宝石に逆三角形の金の縁どりがされたデバイスを取り出し、身体に虹色の魔力を纏う。

やはり、俺が元になっているだけあって、しっかりと聖王の血を継いでいるようだ。

ゆりかごを起動できたのも頷ける。

「起きろ! アルファ!!」

相手が叫ぶと同時にデバイスが起動し、バリアジャケットを纏う。

それは、全体的に丸みを帯びた黒い鎧に金の縁どり。

背中には俺とは対照的に外側は白、内側は青のマントを纏いし黒き聖騎士の姿。

その姿は正しく、

「アルファモン………か」

俺は呟く。

俺が『最後』の名を冠するオメガに対し、相手は『最初』の名を冠するアルファ。

その姿も、正しく『最初』の聖王の名に相応しい。

「それがもう1つの聖王の武具、『アルファ』か」

俺がそう言うと、

「そう。 お前のオメガがミッド式をも取り込んだ万能を目指した最高のインテリジェントデバイスなのに対し、俺のアルファはベルカ式を極限まで追い求めた究極のアームドデバイス。 完全な戦闘特化型のデバイスだ。 そして、この姿はアルファの名を聞いたとき、自然と頭に浮かんだ姿だ」

相手はそう答えた。

俺は、クローンにまで影響を与える自分のデジモン脳に若干呆れてしまった。

俺はどこまでデジモンバカ何だ?

ともかく、俺は気を取り直し、

「なあ、戦う前に一ついいか?」

そう言って相手に問いかける。

「何だ?」

「俺はアンタと戦う理由はない。 俺が用があるのはお前のバックにいる3つの腐れ脳ミソだ。 だから、道を開けてくれないか? あいつらの下にいても、いい思いはしてこなかったろ? あいつらが居なくなれば、お前も晴れて自由の身だから、悪い話じゃないと思うけど?」

俺がそう言うと、相手は一度眼を伏せるが、すぐに眼を開き、

「あんなのでも、とりあえずは生みの親だからな。 生み出してくれた“義理”は果たすさ」

そう言って右手に魔力を込め、掌を俺に突き出すように構えを取る。

「義理堅いな………本当に俺のクローンか?」

俺はそう言いつつも、右腕のガルルキャノンを向ける。

「フッ………俺は……『俺』だからな」

相手は口元に小さく笑みを浮かべるが、すぐに表情を消し、

「行くぞ!!」

右腕の魔力が高まる。

俺は即座に行動した。

「ガルルキャノン!!」

右腕の砲口から圧縮魔力弾を放つ。

対して相手は、

「デジタライズ・オブ・ソウル!!」

掌から魔力弾をマシンガンのごとく連射した。

俺達の中央でぶつかり合い、せめぎ合う。

相殺し、爆発した瞬間、俺は飛び上がり左腕のグレイソードを上段に振りかぶった。

俺は相手を空中から攻撃する。

「グレイソーーーードッ!!」

魔力を込め、俺はグレイソードを振り下ろす。

すると相手は、

「聖剣! グレイダルファー!!」

右腕から光の魔力刃を生み出し、迎え撃った。

グレイソードと光の剣がぶつかり合う。

相手の足元が陥没するものの、膝をつく様子はない。

お互いに力を込め続け、魔力爆発が起こった。








【Side なのは】





ユウ君と別れた後、私は桜おねえちゃんと一緒に動力炉に向かっていた。

さっきから虫みたいな形のロボットが沢山出てきて、足止めを食らっています。

1体1体は大したことがないんだけど、数が多くて大変です。

メガデスとかで吹き飛ばしたい気もあるんですけど、ドゥーエさんが何処にいるかもわからないので無茶はできません。

そして、漸く殆どの虫型ロボットを片付けたとき、船が揺れました。

「ユウの方は、どうやら始まったみたいね」

桜お姉ちゃんがそう言います。

「スカリエッティから貰ったデータによれば、動力炉はもう少しよ。 急ぎましょう!」

「うん!」

桜おねえちゃんの言葉に私は頷きます。

大丈夫だよね? ユウ君。

私は胸に過ぎった不安を振りほどくように、そう心の中で呟きました。





【Side Out】







戦いが始まって数分。

俺達は、一進一退の攻防を繰り広げていた。

最早、玉座の間に原型は殆ど残ってはいない。

床はクレーターができ、壁は崩され、天井は穴だらけ。

唯一、コントロールユニットである玉座だけは相手が配慮して無傷で残っている。

「グレイソード!!」

俺は斬撃を飛ばす。

「グレイダルファー!!」

相手は光の剣を投げつける。

それが中央でぶつかり合い、大爆発を起こした。

俺達はクレーターを挟んで再び向かい合った。

すると、

「さて、準備運動はこんなところか?」

相手はそんな事を言った。

「何?」

俺は思わず聞き返す。

「おっと、勘違いしないでくれ。 俺は手を抜いていたわけじゃない。 だが、アルファの能力をフルに出し切っていたわけじゃないのさ」

相手はそう言うと、左腕を横に伸ばし、人差し指で印を描き出す。

「なっ!? まさか!?」

その動きに見覚えのあった俺は戦慄する。

相手が印を描き終わると、左手をその印に突っ込む。

すると、空間に溶け込むように左手が消え、再び引き抜くと、その左手に続いて、身の丈をも超える巨大な剣が握られていた。

その剣はバトルアックスの刃部分を柄と同じぐらいの長さにしたもので、黒の刀身と金の刃を持った大剣だ。

「究極戦刃王竜剣!」

相手がその剣の名を言い放つ。

それと同時に、相手の背に金の翼が展開された。

「くっ! うぉおおおおおおおっ!!」

俺は一瞬声を漏らすがグレイソードで斬りかかる。

それに対し、相手はその剣を振りかぶり、

「はぁああああああああっ!!」

俺の一撃に合わせるように剣を振るった。

――キィン

お互いが交差した一瞬後、

――ドスッ

グレイソードの刀身が床に突き刺さった。

「なっ!?」

見れば、グレイソードが根元から断ち切られている。

「くっ!」

俺はすぐさま振り向き、ガルルキャノンを放とうとしたが、

「フン!」

同じく振り向きざまに振るわれた王竜剣によりガルルキャノンの砲身も断ち切られた。

「くぅっ!?」

俺がやばいと思いつつ後ろに飛び退こうとしたが、

「はぁあああああああっ!!」

流れるように振り下ろされた王竜剣に回避が間に合わず、両手をクロスさせて防御するものの、

「うわぁああああっ!!」

両腕の手甲が砕かれ、俺は吹き飛ばされた。

「がはっ!?」

そのままガレキに突っ込み、空気が肺から押し出される。

メチャクチャ痛い。

こんな痛みは、ブラックウォーグレイモンと戦った時以来だ。

俺は何とかガレキの中から起き上がる。

「まさか、グレイソードが負けるなんて………」

流石は戦闘特化と言うだけある。

「だが、まだだ!」

ならば、こちらも攻撃特化で勝負!

「オメガ! 剣だ!」

俺は、バリアジャケットをパラディンモードに変更する。

オメガブレードを構え、再び相手を見据える。

「勝負!!」

俺は相手に向かって全力で羽ばたいた。











あとがき


第六十五話の完成。

遅れてすみません。

そんで、今年中に終わりませんでした!

残り後一話か二話。

くそう、土曜日に仕事さえなければ………

2週連続で忘年会さえ無ければ………

年末は忙しい………

いえ、決してシャイニング・レゾナンスやガンダムブレイカー2をやってて遅くなった訳じゃないよ。

ホントダヨ?

最初に忘れかけていたゲンヤさんのマギメンタルフラグの回収。

それで、結構駆け足で黒の聖王と遭遇。

大方の予想通り、ユウの人造魔導師でした。

でもって、モチーフはアルファモン。

究極戦刃王竜剣!

カッコイイ名前だね!(厨二病)

ラウンド1はユウ君の負け。

さて、次はどうなるのかな?

お楽しみに。

今年もあとわずか。

それでは皆さん、良いお年を。






[15302] 最終話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7a8c92be
Date: 2015/01/12 02:26


最終話 彼の物語



【Side 桜】



私となのはは王の間へと向かっていた。

えっ?

動力炉?

ダブルポジトロンレーザーで簡単に壊れたけど?

必死の思いでギリギリ壊した原作のヴィータに申し訳ない気がする。

やがて、王の間の入口らしき場所に着いたんだけど、そこは見事に瓦礫の山だった。

「うわぁ………酷い状態ね…………って、あら?」

私の視線の先に、見覚えのある2つの小さな後ろ姿があった。

「リィン、アギト? 何でアンタ達がここにいるの?」

「「……………………」」

私は声を掛けるが、2人は何の反応も示さない。

「リィン? アギト?」

続いてなのはも声を掛けるがこちらも反応なし。

が、2人はある一点を見つめていることに気がついた。

気になった私は、2人の視線を追っていく。

そして、そこで見たものは…………

「…………………嘘………」

私は思わず呟く。

2人の視線の先にあったものは、壁にめり込むほどに叩きつけられ、力なく寄りかかっているパラディンモードのユウの姿。

その傍らには、根元から折られたオメガブレードも転がっていた。

そして、ユウを倒したと思われる相手の姿は、まさにアルファモン。

その相手が、最初の聖王であることもすぐに理解した。

その手に持つのは、究極戦刃王竜剣。

「そ、そんな………! ユウ君!?」

なのはが顔を青ざめさせて叫ぶ。

すると、

「う………ぐ………」

ユウが身動ぎした。

息があることにホッとする私となのは。

だけど、ユウがボロボロなのに対し、相手は殆ど無傷と言っていい。

つまり、それほどの差があるということだ。

「ユウ君! 今………!」

「待ちなさい! なのは!」

思わず飛び出しそうななのはの肩を掴んで止める。

「桜お姉ちゃん!?」

なのはは、どうして?と言わんばかりな表情で私を見る。

「私達が飛び出していっても、足手纏いになるだけよ」

私自身飛び出したい感情を押さえつけてそう言う。

パラディンモードのユウがあそこまでやられるほどの相手だ。

修行でSSSまで行った私達でも、恐らく歯が立たない。

「でも………!」

なのはの気持ちは痛いほど分かる。

だけど、今ユウを助けることが出来るのは、私達じゃない。

助けることが出来るのは………

私はそう思いつつ視線を移動させ、心配そうにユウを見つめる小さな2人に眼を向ける。

「リィン、アギト」

私は静かに、それでいてハッキリと2人の名を呼ぶ。

「はっ!」

「は、はい!?」

その言葉で、2人はハッとしながら私達に気付いた。

「2人が何でここにいるのは聞かないわ。 どうせ興味本位でユウの後をついてきただけだろうから」

「「ギクッ!」」

私の言葉に動揺する2人。

やっぱりね。

「けど、今から言うことは真剣な話。 今、ユウを助けられるのは、貴方達しかいないわ」

ユウが勝つには、ユウがもう一段階上の強さを手にしなければならない。

私の言葉を聞くと、アギトがニヤリと笑みを浮かべ、

「そういうことなら任しとけ! けど、バッテンチビの力はいらねーな。 アタシ一人で十分だ!」

「それはこっちのセリフです! この悪魔っ子!」

「「むむむむ………!」」

にらみ合う2人。

だけど、

「2人の内どちらかじゃない。 あなた達2人の力が必要なの!」

私はハッキリとそう言う。

オメガフォームやパラディンモードは、ユウの炎と氷の力のバランスが均等になってこそ本当の力を発揮する。

アギトとリィンのどちらかじゃ、バランスが崩れて本当の力が出せないから、ユニゾン前よりも弱くなってしまう。

「け、けどよ………」

アギトが何か言いたそうだったが、

「2人とも、ユウが居なくなってもいいの?」

「「えっ?」」

私の言葉に、2人は声を漏らす。

「このままじゃ、最悪ユウは殺されるわ。 私達が加勢しても、結果は同じよ」

私は、最悪の事態を2人に告げる。

「2人は、ユウが居なくなってもいいの?」

「「嫌だ(です)!!」」

私の言葉に、2人は即答する。

「じゃあ、どうすればいいか、分かるわよね?」

私は、2人に言い聞かせるようにそう言う。

すると、2人は俯いていたが、

「おい、バッテンチビ」

「何ですか? 悪魔っ子」

アギトが喧嘩腰に言い、リィンも受けて立つように言い返す。

「アタシはお前が嫌いだ。 お前と力を合わせるなんて絶対嫌だ」

「それは私も同じです」

2人とも視線を合わせず、憎まれ口を叩き合う。

「けど………」

アギトはそう呟いて顔を上げると、

「親父が居なくなるのは、もっと嫌だ!」

アギトは、目に涙を溜め、そう叫んだ。

「……………奇遇ですね。 私も同じ気持ちです」

リィンも、静かに同意した。

「「………………」」

2人は眼を合わせ、少しの間無言になる。

「“リィン”、今回だけ力を貸せ!」

「仕方ありませんね。 とーさまの為です。 今回だけですよ。 “アギト”」

お互いに口は悪いが、初めて名前で呼び合ったため、私は心配ないと思った。

2人はユウの元に飛び出していく。

「なっ!? リィン!? アギト!? 何でここに!?」

ユウは、リィン達に初めて気付いたのか、声を上げて驚く。

「む?」

相手は不思議そうにしているようだが、特に手を出そうとはしないようだ。

「親父! ユニゾンだ!」

アギトが叫ぶ。

「…………気持ちは嬉しいがそれは無理だ。 お前達どちらかとユニゾンしても奴には………」

「どちらかじゃありません! 私達2人とユニゾンするんです!」

ユウの言葉を遮ってリィンが叫ぶ。

「ッ!?」

リィンの言葉に驚いたのか、声を詰まらせるユウ。

「お前達…………」

2人をジッと見つめるユウ。

「そうか………分かった! やるぞ! リィン! アギト!」

「はい(おう)!!」

次の瞬間、ユウは虹色の光に包まれ、アギトは赤、リィンは青の光に包まれる。

ユウが真上に飛び上がり、アギトが左から回り込むように、リィンが右から回り込むようにユウへ向かっていく。

そして、虹色、赤色、青色の三色の光がぶつかりあった。

「「「クロスユニゾン!!」」」

虹色の光が膨れ上がる。

『『X―Mode.』』

そして、その光が収まった時、通常のオメガフォームのやや丸みを帯びた鎧が鋭く角張り、その感じる魔力も今まで以上である、オメガフォームのXモードのユウがそこにいた。

ユウは空中から相手を見下ろす。

「態々待ってもらって済まないな」

ユウはそう語りかける。

「なに、俺も力を存分に振るいたいと思っているだけだ」

「そうか………」

ユウは呟くと、左腕を振り上げる。

その左腕からグレイソードが飛び出す。

「ならば行くぞ!!」

「来い!!」

ユウが空中から急降下し、相手も床を蹴り急上昇する。

「おおおおおおおおおっ!!」

「はぁああああああっ!!」

ユウのグレイソードと、相手の王竜剣がぶつかり合う。

凄まじい衝撃が発生し、辺りの瓦礫を吹き飛ばす。

私となのはは咄嗟にプロテクションで守ったけど、結構衝撃が大きかった。

2人は弾き合い、距離をとった所で、

「デジタライズ・オブ・ソウル!!」

相手の右手から、魔力弾がマシンガンの如く発射される。

「ガルルキャノン!!」

ユウも右腕のガルルキャノンを展開し、放った。

通常のガルルキャノンは圧縮された魔力弾だったのに対し、今のガルルキャノンは、砲撃魔法と同じく極太ビームだ。

互いの中央でぶつかり合い、一瞬拮抗するが、

「はぁあああああっ!!」

ガルルキャノンの勢いが増し、相手の魔力弾の嵐を飲み込んで行く。

「チッ!」

相手は押し負けると判断するやいなや、王竜剣を振り上げ、ガルルキャノンの軌道を変えた。

弾かれたガルルキャノンは、天井を突き抜け、艦外に飛び出し、上空の雲を吹き飛ばしながら空へと消えた。

威力も桁違いに上がってるわね。

それを弾く相手も大概だけど。

でも、次の瞬間、ユウはグレイソードを構え、突撃していた。

「くっ!」

相手は咄嗟に上段から振り下ろされたグレイソードを受け止めるが、

「かかったな!」

ユウは、右腕のガルルキャノンの砲口をガラ空きになった相手の腹部に押し付けた。

「なっ!?」

これには相手も驚愕する。

ユウが狙っていたのは、防御不能のゼロ距離ガルルキャノン。

「ガルルキャノン!!」

ゼロ距離で放たれたガルルキャノンは、相手を吹き飛ばしながら押し進む。

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

だが、相手も聖王の鎧を持っているためか、床に着弾しても貫通はせず、小規模な爆発に留まった。

しかし、無傷とは行かず、アルファモンを模したバリアジャケットには、多数の罅が見受けられる。

それでもユウには、油断の一欠片も無かった。

既に左腕のグレイソードに炎を纏わせ、振りかぶっている。

「グレイソーーーーードッ!!」

ユウは炎の剣を、容赦なく叩きつけた。

その一撃は、相手のバリアジャケットを砕き、非殺傷でなければ確実にオーバーキルと誰もが見て分かるものだった。

その一撃で、相手は魔力ダメージにより気絶し、ピクリとも動かない。

ユウは、少しの間相手を見下ろしていたが、

「桜、なのは」

突然私達に語りかけた。

「こいつを連れて先に脱出してくれ」

ユウはそう言う。

「いいけど………ユウはどうするの?」

私はふと気になったことを尋ねる。

「俺は………全てに決着を付ける」

その言葉で、ユウの気持ちを悟った私は、

「わかったわ。 全部ユウに任せる」

「ありがとう」

私となのはは、ユウが戦っていた相手を運ぶために近付く。

そこで驚いた。

「ユ、ユウ君そっくり!」

なのはの言う通り、髪が白髪なだけでその顔はユウそっくりだった。

私となのはは反射的にユウを見る。

「そいつは……………俺の弟だ」

その言葉で私は悟る。

彼はユウの人造魔導師だと。

まあ、でも、私達の周りにはフェイトやエリオっていう前例があるから、別にどうという訳ではないけど。

「そういうこと。 わかったわ」

「頼む。 あと、ドゥーエが先に脱出してる。 そいつの事も気にかけてたようだから、早く会わせてやってくれ」

「ん。 了解」

私はそう言って彼をなのはと一緒に肩に担ぐと、脱出するために飛び立った。






【Side Out】







桜となのはを見送ったあと、俺は1つの映像に眼を向ける。

それは、予め飛ばしておいたサーチャーの映像。

最高評議会の居場所を探るためのものだ。

とは言え、臆病者のアイツ等が居るところなど、原作でクアットロがいたと思われる最深部ぐらいだろうと思っていたため、スカリエッティのデータと照らし合わせ、一直線にそこに向かってサーチャーを飛ばした。

そして、案の定そこに最高評議会はいた。

サーチャーから話し声も聞こえる。

『バ、バカな…………α―01が敗れるとは………』

『どうする!? こんな事は想定外だ!』

『お、落ち着け! 奴もまだ我々の居場所は把握してないはず。 今のうちに脱出の準備を………』

いい感じに3つの脳髄が焦っていることに、俺は可笑しく感じてしまう。

まあ、こうやってサーチャーで覗けている時点で、居場所は既に分かっている。

俺は最深部がある方向にガルルキャノンを向ける。

ただ、最高評議会に直撃させないよう少しずらして。

「ガルルキャノン!!」

原作でもなのはがやった壁抜き。

ぶっちゃけ今の状態なら逆に鑑を落とさないように手加減する方が難しい。

まあ、手加減するのはオメガの役目だが。

俺はガルルキャノンで最深部までの一直線の通路を作り出す。

『な、何だ!?』

モニターの向こうでは、最高評議会が驚愕している。

俺はその穴から飛び降り、最深部の部屋に降り立った。

「よう。 会いたかったぜ、最高評議会」

俺が声をかけると、

『ち、血塗られた聖王………』

脳髄の一つから出た言葉に、俺は呆れた。

「よく言うぜ。 人に罪を擦り付けておいてよ」

こいつらは本物の馬鹿か?

いや、脳髄だけで延命してる時点でどうしようもない馬鹿だな。

「まあ、それはともかく、覚悟は出来ているんだろうな?」

俺は右腕のガルルキャノンを脳髄の入ったカプセルに向ける。

『や、やめろぉ………!』

『わ、我々が居なくなったら、誰がこの世界の秩序を守るのだ!?』

『そ、そうとも。 この世界があるのは我々がいてこそだ!』

三者の……いや、3個のそれぞれの言葉に、俺は心底落胆する。

「確かにお前達は管理局を発足させ、今の次元世界の基盤を作った功労者だ。 それは俺も認めよう」

『そ、それならば…………』

「けど、時代は変わっていくものだ。 いつまでも150年前と同じだと思うなよ!」

『な、何を言う!? 現に我々が世界を導かねば、あっという間に腐敗するのだぞ!?』

「腐敗………ね。 その割には、自分たちの腐敗には気付いてないみたいだけどな?」

『貴様っ! 我々を愚弄するかっ!』

「うるせーよ。 耄碌した脳みそ共。 少なくとも、俺はあんたらに恨みはすれど、感謝することなど一つもない!」

『な、何だと!? 我々がお前に何をした!?』

その言葉を聞き、俺はおや?と思った。

もしかして、こいつら気付いてないのか?

散々アイツを弟呼ばわりしまくったのに………

本気でわかってなかったら、冗談抜きで耄碌してんな。

俺がセットアップする所も見てなかったとか。

それとも、俺がユウ・リムルートだと認識してないのか?

「お前ら………それマジで言ってんの?」

あまりのアホらしさに、俺は若干毒気を抜かれる。

『何ぃ?』

俺はやれやれと思いつつ口を開く。

「俺の両親は、お前達の人工魔法生物の実験台にされ、アルカンシェルで吹き飛ばされた………」

『なっ!?』

「俺自身も、スカリエッティに拉致され、実験動物にされそうになった……」

『ま、まさか貴様は………』

ようやく気付いたのか、声を上げる。

「俺はユウ・リムルート! キサマら最高評議会の『正義』に人生を振り回された人間だ!」

俺はバリアジャケットを頭だけ解除し、素顔を見せる。

『『『な……あ………!』』』

3つの脳髄が声を漏らす。

「そういうわけだ。 俺にはお前達を討つ理由がある」

ガルルキャノンをさらに突きつけ、威嚇する。

『ま、待て! 私達が悪かった!!』

『そ、そうとも! これ以降お前に……いや、君達に関わらないことを誓う!』

『それだけではない! いくらでも償いはしよう!』

必死に言葉を並べる最高評議会を見て、俺はガルルキャノンを下げる。

『『『ふう………』』』

それを見た最高評議会は、安堵の息を漏らす。

まあ、息はしてないが。

「みんなはどうか知らないが、俺は元々その言葉を聞ければ許すつもりでいた………」

『おお! ならば………!』

最高評議会の一つは、嬉しそうな声を漏らす。

だが!

「だが、お前達が父さんと母さんの本当の仇だと知った今、許すことなど出来はしない!!」

俺は、今まで抑えていた怒りを吐き出す。

『『『ッ!?』』』

最高評議会が狼狽えるのが分かる。

『や、やめろ! 私達が居なくなればこの世界の『正義』が………!』

『『正義』が守れなくなる………!』

『我々が守ってきた『正義』が…………!』

最高評議会は、揃って『正義』という言葉を口にする。

だが、俺は………!

「『お前達の正義』など、俺にはわからない………………わかりたくもない!!」

その言葉とともに左腕を振り上げ、グレイソードを展開。

グレイソードに魔力を集中させ、今こそオメガの真の力を発動する。

「オーーーーール…………!!」

俺は叫びながら3つの脳髄が入ったカプセルに向かって跳躍する。

『『『や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!』』』

最高評議会は悲鳴を上げるが、聞く耳持たん!

俺は躊躇無くグレイソードを振り下ろした。

「…………デリート!!!」

『『Delete』』

オメガの『消滅』の力が発動し、空間ごと辺り一帯を消し去り、黒く染まっていく。

もちろん、発動の中心点である最高評議会の脳髄が入ったカプセルも例外ではない。

最高評議会は『消滅』の名が示す通り、細胞一つ、痕跡一つ残さず、完全にこの世から消え去った。

そして、消滅の空間は広がり続け、やがてゆりかご全てを呑み込み、まるで何もなかったかのように消え去った。








【Side 三人称】





この日、最高評議会は打ち倒された。

それは古き時代の終わりを意味し、新しい時代が始まることを意味していた。

だが、この日を境に最高評議会打倒の重要人物であった者達の殆どが姿を消した。

彼女達を知る者は多くいる。

しかし、どこへ行ったのか知る者は居ない。

ごく僅かな人物を除いて…………












――エピローグ






とある管理外世界。

この世界は地球と同程度の文明レベルを持つ世界である。

ただ、地球と大きく違うところは、この世界にもミッドチルダに似た魔法がある上、全体で一夫多妻制が認められていること。

とは言え、基本一夫一妻であるし、一夫多妻でも2~3人。

多くても5人程度だ。

過去に最大10人の妻を娶った男がいるという話だが、それは最早伝説と言ってよかった。

だがある日、この世界に17人の妻を娶るという伝説を大きく超えた男が現れた。

その男は、とある喫茶店のマスターであり、妻達は全員その喫茶店で働いている。

その喫茶店の名は『翠屋』。

別名『人妻喫茶』である。

しかも、その妻達が、全員極上と言っていいほどの美人である。

当然そのマスターは他の男達から恨みを買いまくっていた。

その上、夜もお盛んなようで、ワケアリで妊娠出来ない者以外は全員妊娠させ、出産させたというとんでもない男である。

尚、現地の報道機関が妻達に不満が無いか聞いたところ、全員が揃って「これ以上女が増えなければ不満はない」と答えたらしい。

因みに怒り狂った男達が喫茶店に襲撃をかける事件が密かにあったのだが、そのマスターの男が出てくる以前に、全員人妻達によって殲滅させられたらしい。






今日の『翠屋』の開店時間。

今日も開店前から男達が列を作って並んでいる。

何だかんだで『翠屋』の客受け(主に男性)は良いらしい。

そして時間と同時に店が開く。

客が一歩踏み込むと同時に、

『『『『『『『『『『『『『『『『『いらっしゃいませ! 喫茶翠屋へようこそ!』』』』』』』』』』』』』』』』』

美人の人妻達が笑顔でお出迎え。

そしてその人妻達の奥のカウンターに男が1人。

「いらっしゃいませ!」

その男も笑顔で挨拶。

幸せを噛み締めているようだ。

いつものごとく男達から殺気が飛ばされるが、最早慣れたものでどこ吹く風。

平穏な中の僅かな刺激に、退屈しないとは男の弁。

これもまた、彼が選んだ1つの道。

ここから先は、彼だけの物語。

生きる意味を持たずに死んだ男は、生まれ変わってそれを見つけた。

そんな彼の物語は続いていく。

いつか彼が死んでも、子供達が次の物語を続けるだろう。

それが繰り返され、人は前に進んでいく。

全ての世界が、1つの物語であるように…………






~Fin~













あとがき


皆様! 明けましておめでとうございます!!

でもって最終話の完成~~~~。

新年初っ端から終わりました。

まあ、余り出来は良くないですが。

何だかんだで終わりました。

最後がなんか中途半端感が半端ない。

でも、これ以上思いつかなかった。

因みに17人の妻とは、桜、なのは、フェイト、はやて、リニス、アリシア、アリサ、すずか、ファリン、リインフォース、シグナム、シャマル、スバル、ティアナ、ギンガ、トーレ、チンクの17人です。

これで全員だよね? 

忘れてたらごめんなさい。

まあ、所々躓きながらも何とか完結まで持ってこれました。

勢いで始めた小説がここまで来るとは。

でもやっぱりA`S編で終わらせとくべきだったと思います。

最後の五話ぐらいなんてマジでグダグダ。

でも何故がPV数がシャレになってないんですけど…………。

途中で挫折した人も何人もいるかと思いますが、こんなお目汚しの作品に最後まで付き合っていただけた人には感謝の念が絶えません。

とりあえず、自分の完結作品2つ目です。

さて、そろそろあれを再開させねば…………

それはともかく、皆様!!

今まで本当~~~~~~~にありがとうございました!!

まだ別の作品は書き続けてますので、気が向いたら読んでいただけると幸いです。

それでは皆様、またお会いしましょう。

本当に、ありがとうございました!!!





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