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[7967] 〔習作〕 Witch of moonlight 〔ストライクウィッチーズ 転生 TSオリ主〕 
Name: イワン◆6b379e6a ID:b04dd4ef
Date: 2011/01/26 00:19
皆様、はじめまして。イワンと申します

「ストライクウィッチーズ」の転生TSオリ主作品です

アニメ1期を舞台としてますが、登場するのはまだ先の予定で、暫くはオリジナルストーリー、主人公視点を基本に展開します。
小説版や、「いらん子シリーズ」の設定もある程度使用しております

軍事的な事に関しては、専門用語などはあまり出ないと思います。自分の勉強不足です。


初めて書くSSですので文章的にも拙い点が多々あると思いますので、誤字脱字の指摘等、ご指導のほど、よろしくお願いいたします

更新履歴

7/5:1~2話修正、3話投稿
7/8:3話誤字訂正等の修正版に変更
7/20:3話再修正版、4話暫定版投稿
10/24:4話加筆改訂版投稿
1/23:1.3.4話の年代等の不具合を修正した加筆修正版に変更
   5話仮投稿。正式版は鋭意製作中です
2/11:5話前編投稿 各所修正
6/30:5話中投稿
7/13:5話後編投稿、5話前中編の一部加筆 
8/12:各所訂正
8/23:第6話前編投稿

2011年

1/2:第6話前編全面改訂
1/26:第6話誤字等修正
   



[7967] プロローグ
Name: イワン◆6b379e6a ID:b04dd4ef
Date: 2009/04/09 21:22




あ…ありのまま、今起こった事を話すぜ!
たった今、俺は事故った。というか事故られた。

休日出勤を繰り返して溜まった仕事を片付け、漸く作った連休で小旅行の帰り道、居眠り運転の10tトラックに乗ってた車ごと崖下に吹っ飛ばされました。
即死こそしなかったものの、下手に意識が残るってーのも考え物ですな。どんどん力が抜けてくわ、寒くなるわ、意識が薄れるわと散々です。

徐々に薄れて行く意識の片隅で思ったのは、

居眠り運転で事故起こすなら、誰も巻き込まずに一人で事故りやがれ、運転手のド阿呆め
明日から仕事だったのに、どーすっかね。しかも納期前の仕事が結構あったのに……
こんな終わり方なんて納得できるわけないだろーが。生きたい…生きて……いた………い………

そして俺の意識はそこでぷっつりと途切れた。



『光だ』



意識が戻った時、こんな考えしか頭になかった。少々の怪我や病気ならば関西人故に「知らない天じ(ry」とか「もっと光を!天帝様は(ry」というネタに突っ走るのだが、
当然のことながらさすがに今はそういう気分ではない。

一度行った賽の河原じゃないのは確定だが、ここはいったい何処だ?
あそこ(賽の河原)は三途の川の渡し船の待ち行列や説教大好きな鬼達で結構ガヤガヤ騒がしいけど、ここは静かだし、なにより天井がある。
周りを見渡そうにも体どころか首すら動かん。それどころか喋ることも出来ない。事故の影響で全身麻痺状態なのか?
これでは助かったところで意味なさげではないか……いやいや、命があっただけマシと考えるべきなのかどうかと考えていたら

「あなた、あの子が起きましたよ」

って女性の声がした。少なくとも『オカン』の声じゃない、もっと若い女性の声だ。

「そうかそうか。やっとお目覚めか」

という声と共に視界に入ってきたのはこれまた若い男女………誰だコイツ?という俺の疑問そっちのけで話し始めてますよ。

「やっと起きましたね~」とか、「顔立ちは母さんによく似てるな」とか、「あら、目もとは貴方にそっくりですよ」とか、
この会話でなんとなく状況を理解しつつあったが、理解したくない。夢ならさっさと覚めろと必死に思ったが、
その思いをアッサリと否定する決定的一言を女性の口から出た。出てしまった。

「はじめまして。私たちがあなたのお父さんとお母さんですよ~」

やっぱりそう来ましたか。薄々は解ってたんですよ、あの事故で俺は現世からTHE・グッバイして、何の因果か記憶を持ったまま輪廻転生したって事ですよね。
正直言って、前世には未練タラタラですよ。家族の事とか、仕上げる直前だった仕事の事とか色々とありますよ。
でもこうなった以上はどうしようもできん、神仏ならどうにかしようがあるのかもしれんが、あいにくと俺は人間なんで。
もう一回人生やれるって事だけでも感謝しておくべきなんでしょうか?


「ところで貴方、この子の名前は考えてあるの?」
「勿論だ。この子の名前はひかり。『神月ひかり』だ」
「ひかり……良い名前ね。貴女は今日からひかりよ。元気に育ってね」
「大丈夫だ、この子、ひかりなら元気に、そして母さんみたいな美人になるさ」
「やだ、貴方ったらお上手ですこと」


………ちょっと待てい!!
今聞き捨てならんことをおっしゃいませんでしたか?母さんみたいな美人?
…………マジですか…

こうして、『俺』は死に、女の『神月ひかり』となってしまった。


あれから約4ヶ月、俺は赤ん坊の仕事である「寝て、食べて、泣く」のサイクルを順調に繰り返している。
いきなり見ず知らずの世界にポンと放り出されたら、帰れないと理解しててもホームシックにもなる。そういう時は夜泣きに見せかけてコッソリと泣いている。
こうなってしまった以上は『神月ひかり』として生きる他に選択肢は無いのだから、できるだけ後悔しないように生きていこうと、もう会えない親兄弟に誓った。

さて、そうなるとまずは情報収集である。
首も据ったので、しばらくモゾモゾと寝返りで体を動かして視界を確保、ちょうど視界に入ってきたカレンダーをまじまじと観察。

1928年3月6日 

まず、1928年というところで焦った。太平洋戦争前じゃないですか、お父さん。俺に機銃掃射と焼夷弾の雨の中を逃げ惑えと?
すみません、前世のマイファミリーよ。さっきの誓いは五分と経たずに破ってしまいました。 orz
なんてテンパってたら、その横に書いてある文字を見て強制的に再起動させられた。

扶桑皇国春季皇霊祭

大日本帝国じゃない…扶桑皇国?……扶桑皇国?!
もしかしてアレですか。ストライクウィッチーズな世界に、最近流行りの転生モノってヤツですか。こんなのってアリですか?







[7967] 第1話
Name: イワン◆6b379e6a ID:b04dd4ef
Date: 2010/08/12 21:58
皆さん、こんにちは。神月ひかりです
こっち(ストライクウィッチーズ)の世界で人生を再スタートして約10年ちょっと、月日の経つのは早いものですね。
「光陰矢の如し」とはよくいったものです。その間に世界的にも、私自身にも色々なことがありました。世界的なものでいえば


1936年宮藤博士率いるプロジェクトチームによる『宮藤理論を採用した新型ストライカーユニット』の発明と、坂本美緒による初飛行成功
同年の扶桑皇国陸軍、ストライカーユニット「キ27」採用
まだまだ発展途上とはいえ、人類がネウロイに対抗し得るストライカーユニットの登場は大きなターニングポイントになる事は間違いないです。
事実、翌年、というか去年の扶桑海事変ではキ27や試作ストライカーを装備したウィッチ達の活躍で、人類初の勝利を収めています。
実際には辛勝だったらしいのですが、詳細を知るには軍人となって戦闘詳報を見るか、数十年後の機密指定解除を待つかのどちらかしかありません。
もっとも、最前線に立つのが本来なら守られるべき年若いウィッチ達というのは、軍人にとっては複雑なところでしょうね。


一方、私的な出来事で言えば、母さんとおばあちゃんの連合による「扶桑の撫子」教育
一人称に「俺」を使いたいのを我慢して「僕」を使ってたのに心配したんでしょうね。一人称を「私」にすることから始まり、
掃除洗濯裁縫、「扶桑の撫子」としての心構えに至るまでミッチリと教え込まれました。結果がこの口調です、ハイ。
これから先も『女性』として生きていくのだから、こうなるのは当然といえば当然なんですがね。
あと、精神が肉体に引っ張られたというのでしょうか、『女の子』になってから、『以前』と比べてかなり涙脆くなったんですよね。
あ、でも『元男』として、まだ譲ることのできない一線というのは残ってますよ。イロイロと。


次が尋常小学校入学
世間から見れば、ただの入学なんですけどね、ワタクシ的には一大事件なのでした。
それまでは着物を着て誤魔化してましたけど、学校へ行くとなれば、あの服「スクール水着っぽいボディスーツの上にセーラー服」になるのですよ。
覚悟はしてましたが、着替えた瞬間に今まで守ってきたナニカが崩れて、何処か遠くへといってしまいました。
両親は良く似合っていると褒めてくれましたが、ちょっと複雑な気分でした。これを理解できる人はこちらにはいないでしょうね。
もっとも、六年という猶予期間があったことは感謝です。三十前の男が、目が覚めたらいきなり少女になってて、
いきなり「スクール水着っぽいボディスーツの上にセーラー服」へ着替えろなんていわれたら、精神的ダメージは巨大なものになったでしょうね。
少なくとも、私には耐えられないことは間違いありません。


その次にあったのが、婆ちゃんによる「水泳教室」です。
毎年夏休みを利用して父さんの実家へ2週間ほどのお泊まりです。父さんの実家は漁師をやってるんですが、婆ちゃんも現役バリバリの海女さんでして、
その2週間の間に泳ぎを叩き込まれました。婆ちゃんの指導のお陰で、前世は25m泳げれば上等といわれたカナヅチだったのですが、
今では4~5kの遠泳でも、素潜りでもドンとこいです。最初は溺れまくったのは黒歴史ですが……



そして、最大の出来事、文字通り人生を左右するような出来事。
私、ウィッチになりました。
ひかりになってから、とくにウィッチに関係するような出来事も無くウィッチの家系でもないので、一般人生活を存分に堪能しよう。そう思ってたんです。
ついさっきまでは。

昨日も、婆ちゃんによる「水泳教室・素潜り編~目標深度7m~」が終わった私は夕涼みも兼ねて神社への散歩中でした。

「ん~~、原作通りだと、たしかそろそろだったかな。宮藤博士の死亡通知」

今は1938年8月初頭、記憶にある年表の通りならば、あと10日ほどでそうなる筈。
去年の扶桑海事変も年表通りに発生し、穴吹智子、加藤武子、加東圭子の陸軍ウィッチ三人娘が有名になり、先月には穴吹智子主演の映画も公開されました。
軍が全面的に協力しているので、なかなかに良い出来の映画でしたね。

「三人娘を筆頭にウィッチ達の活躍により、扶桑海事変は人類の勝利。新聞には書かれてないけど、たしか結構ギリギリの勝利っぽかったんだっけ・・・・・・」

その時の新聞の記事には「人類初!!怪異に大勝利」「我が軍のウィッチ隊の大活躍」といった景気の良い文字が躍っていましたが、実際はそうでもなく。
陸軍のキ27と海軍の九六式戦闘脚が主力だったとはいえど、一部のウィッチに至っては旧式のストライカーを動員しての連日の出撃と戦闘。
闘えるウィッチは戦闘の度に減り、負傷していなくてもストレスや魔法力の枯渇で飛べなくなる者は増える一方。
辛うじて勝利を収めたものの、陸海軍のウィッチ隊も被害は甚大。もし時を開けずに同規模のネウロイが再び襲来していれば、扶桑皇国も危なかったでしょう。
なんにせよ、ウィッチ隊の戦力は公開された映画「扶桑海の閃光」を見た、淫じゅ……ゲフン、迫水ハルカのようなウィッチ候補生の大量志願、
そして、彼女たちが訓練校を卒業して配属される来年あたりまで扶桑の国防は綱渡りを強いられるのは間違いないでしょう。

「とはいえ、ウィッチでもない私に何ができるっていうのよ・・・・・・ハァ」

実際のところ、私が出来ることなど無いといっても過言ではない「ある程度未来に起きること、特に欧州関連の事を知ってるんで、役立ててください」なんて言っても、
よくて門前払い、下手すれば鉄格子付きの病院へ送られるだろうから却下。
技術職に就こうにも、まだ小学校のお子様には専門知識はこれっぽっちも足りません。あるのは前世の職業知識も完全に役立たず状態。

「ある程度の原作知識があっても、フツーのお子様じゃどうしようも無いっていうことですか……とりあえず、神社で坂本少佐達の活躍を祈っておきましょう」

と気落ちしつつ、半分癖となった独り言をブチブチと言いながらも足は止めずに神社への森、俗に言う「鎮守の森」をテクテク歩いていると、
ガサガサガサッという音がしたかと思うと、ナニカが降ってきました。後で分かった事なんですが、どうやら鳥だったそうです。
そして私の背中というか、お尻に着弾です。するといきなりパァッと光ったと思うと、耳の上辺りと腰がなんかムズムズしてきました。
さらにいえば、腰は何か窮屈な感じというか、妙に圧迫されてたまりません。
これはいったいナンデスカ?まさか、孔明のわ(ry
それはさておき状況がイマイチよくわからなかったので散歩は中断。大急ぎで婆ちゃんの家に引き返しました。

「お婆ちゃ~~ん!!」
「そないに慌ててどないしたんやいな?」
「お宮まで散歩してたら鎮守の森でガサガサって音がして、何かなって思ったらナニカ降ってきて、背中というか腰?お尻?に当たったと思ったら
 パァッて光ったと思ったら、なんか腰の辺りがムズムズするっていうか、なんかキツイの!!」
「ひかり、あんたその格好……ちょっとこっちぃ来なはれ」

と婆ちゃんに引っ張られるがままに鏡の前に連れてかれて鏡を見ると、なんといいますかどう表現すればよいのでしょう……手っ取り早く言えばマルセイユさん?
耳の少し上辺りからは猫耳とか犬耳とかじゃなくて、鳥耳?とでもいうのはピョコンと。
後ろを向けば腰のあたりにある尻尾用の穴からは鳥の尾羽の先っぽだけが窮屈そうに出てます。どうみてもウィッチの姿です。

「ウ、ウィッチ?」
「えらいこっちゃ、はよ皆に連絡せんと」

いったいぜんたいどういうことですか?うちの家系にはウィッチは一人もいない「代々続く一般人家系」の筈、突発?後天的ですか?
鏡の前で呆然としてる私を他所に婆ちゃんは父さん達に連絡を取ろうとしてるのを呼び止めて

「あ、お婆ちゃん。その前にちょっと鋏貸して」
「鋏?何に使う……アカン!!夢や思うて切ったりしたらアカンで!!」
「や、そうじゃなくて、服の腰のトコ切るだけだから」
「へ?あ、ああ、そういうことかいな。ほなすぐ取ってくるかいにちょっと待っときなはれ」

で、服(というか水着?)の腰の辺りをチョキチョキと穴を開ける感じに切ってもらうと、尾羽がバサッと出てきました。出る場所が殆ど無ければ圧迫されて当然ですよね。
そっと尾羽や耳?を触ってみましたが、ちゃんと触った感触が伝わってきました。あと、意外とモフモフしてて触り心地は良かったです。
私がモフモフしているうちに、婆ちゃんは父さん達に連絡を取るために出かけてしまい、今は私一人で鏡の前で考え事の真っ最中。
早ければ、明日にも婆ちゃん達も交えての家族会議開催でしょう。父さんや母さんには申し訳ないけど、ウィッチという力を手に入れ、知識も持っているのです。

私はウィッチ養成学校へと進んでウィッチになります。なにごともなく退役を迎えるか、はたまた最前線で空の露と消えるか、それはまだ分かりません。
どこまでやれるかは分かりませんが、やれるところまでやってみましょうか。

宮藤博士の言を借りるなら「その力を、多くの人を守るために」ですね。


※:少し分かり難いとの指摘があったので、母方の祖父母を平仮名で、父方の祖父母を漢字で表記します





[7967] 第2話
Name: イワン◆6b379e6a ID:b04dd4ef
Date: 2010/08/12 21:59

こんにちは、神月ひかりです。
私がウィッチになってから今日で四日目、アッという間に過ぎてしまいました。


なんというか、怒涛の勢いで過ぎていった数日でした。
私がウィッチになった翌日は家族会議。私が軍のウィッチ養成学校に進みたいという事に対して両親に両親の親も参加しての会議開催です。
母さん達女性陣は反対派、婆ちゃんだけが「ひかりの思うようにしたらええ」と中立に、父さん達は当初は沈黙を貫いていたので、
ほぼ孤立無援状態からのスタートとなりました。「危険だ」とか「負傷したり、万一の時は後悔するだろうから止めておきなさい」
といった意見に対して私も反論です。
「危険は承知のうえ、後悔するにしても、同じ後悔でもやらずに後悔するよりやって後悔した方がいい。
 それにもしもの時、皆を守る力があるのに使えなかった方がもっと後悔する。私は皆を守りたい。だからウィッチ養成学校に行かせてください」
敬遠もタイムも変化球も一切無しのひたすら直球勝負、ここで頭を下げずにどこで下げるといわんばかりに頭も下げます。
単にウィッチへの憧れとかの理由なら、父さんたちも反対したそうですが、私の覚悟を聞いて賛成にまわってくれました。
父さんたちの援護のおかげで、母さんたちも最終的にはには賛成してくれました。母さんは最後まで渋っていましたが、ごめんなさい。
こう進むと決めてしまったのですから。

で、学校を卒業したらウィッチ養成学校に進む事が決まったんですが、かわりに勉強を頑張ることとの御達しをもらいましたが、
まがりなりにも前世では大卒です。ソロバン以外は問題ありません。ちょっとしたチート気分です。フッフッフ


次の日は、そんなこんなで進路(?)が決まったので、父さんと母さんは村役場で私がウィッチとなった為、調査申請の書類を提出に言ったので、
婆ちゃんと婆ちゃんちの近所の服屋に行って、服(ボディスーツ?)の仕立て直しです。
服には元から尻尾用のスリットがあるんですが、私の場合はスリットが縦じゃなくて横にする必要があるんですよ。
今あるのは全部普通のばかりで、尾羽を出すことができるのは婆ちゃんに切ってもらったのしか持ってないのですから、早めにやっておく必要があります。
で、服屋でに着くなり婆ちゃんが「島村はん、うちの孫がウィッチになってもうて、なんや服の穴を新しぃに空けなあかんのやわ。ちょっと見たってか?」
ってサクッと言っちゃうんですよ。「ちょっと、婆ちゃん!!」って言っても「遅かれ早かれ皆に言うんやから、かまわんやないか」ってカラカラと笑う婆ちゃん。
確かに婆ちゃんの言うとおり、村の皆にはすぐ知れ渡ることなんですけどね、このポジティブ&アクティブさは見習うべきなのでしょうか…?
そして、島村さんの店で尾羽を出した状態で採寸をしてもらい、持ってきた服を全部直してもらうことにしました。
仕立て直してもらった服は、尾羽が出る辺りに、スリットではなくて穴をあけてもらうかたちになりました。なんとなく競泳水着っぽくなりました。
尾羽を出すのは楽チンなんですが、腰のあたりがスースーします。これにも早く慣れることにしましょう。
婆ちゃん家に帰ると、早速で近所の人達がきてました。皆さん私がウィッチになったのを聞いて来たそうです。恐るべきご近所ネットワークです。
この様子なら明日には村長や他の人達も来るでしょう。だいたいは父さんや母さんが対応するのでしょうが、私も同席しなくちゃいけないので大変です。


今日は予想通りというべきでしょうか、朝から千客万来です。
まず、爺ちゃんと婆ちゃんが漁から帰ってきた時に一緒に漁師や海女仲間の皆さんが来ました。
帰ってくるなり婆ちゃんが「皆ひかりがウィッチになったん見たい言うてな、ちょっと見せたってか」と。
なんでも、漁師仲間の皆さんが、私がウィッチになったそうだという話をしていたら、婆ちゃんが「その話はホンマや。なんやったらウチに見に来たらどないや?」
と言ったので見に来たそうです。婆ちゃん、アクティブすぎますよ。
それで、ウィッチ姿のお披露目をしたんですが、「へー」とか「ほー」とか「新聞で見るのと実際に見るのとは、やっぱり違うのー」とか。
なんかちょっとした見世物ですね。あと、耳と尾羽を出す時のムズムズ感というのがまだ馴れません。いずれ馴れるのでしょうが……
皆さん明日の漁の準備があるので、帰っていきましたが、その時にワシャワシャと豪快に頭を撫でたり、ポムポムと軽く叩き「頑張るんやで」とか
「あいつはあない言うとったけど、まだこまいんやからあんまり無理せんときや」とか言ってくれました。ありがとうございます。

ちょうどそれと入れ代わりに近所の人が次々に来ました。またウィッチ姿を~と言われるのも面倒なので、そのままお出迎えです。
耳と尾羽を出す度にムズムズもぞもぞするのも考え物ですしね。
・・・・・・え~、そこのおばあちゃん。「ありがたや、ありがたや」って私を拝んでも御利益はないと思いますよ?
それからそこのお子様達、人の尾羽でモフモフしないでください。他の人にされるとくすぐったいんですから!

そして、お昼過ぎにはついに村長がやってきました。
村長はいい人なんですが、話をするのが大好きというちょっと困っところがありまして、今日も最初から全力全開です。三時間近くにわたる村長の長話、
神社の由来がどうとか、ある時代の巫女がどうだといった間に入った話を端折って要約すれば
『この村の神社は、千百年以上の歴史を持つ神社で、代々神社に仕える巫女がウィッチの家系だったそうです。
 しかし、御一新の少し後にその家も途絶えて、以降ウィッチはこの村から出ることがなかったが、こうして私がウィッチとなりました。
 本当にめでたいことである云々』ということです。
それはいいんですが、話が長すぎます。三時間近く話しっぱなしの村長に付き合わされる私はまだ九歳のお子様なんですから、
村長もその辺りをもう少し考えて下さいよ。
もっとも、私がウィッチ養成学校に進むという事を言ってないから、これくらいで収まったのかも知れませんね。もし言っていたら
話の時間が三割増しくらいになっていたでしょうが……
そして、村長が帰り際に教えてくれたのですが、明日内務省魔導局の人が私についての調査で来るそうです。
さて、私の使い魔と固有魔法はいったいなんでしょうね?


とりあえず明日に備えて今日はもう寝ることにします。村長の長話で疲れたのもありますし、それではお休みなさい。




[7967] 第3話
Name: イワン◆6b379e6a ID:b04dd4ef
Date: 2010/02/11 19:37


こんにちは、神月ひかりです。


昨日の村長の話によれば、今日は魔導局の人が来るそうなのですが、何時頃に来るかが分かりません。
しかし、昨日の今日で来るとはレスポンス良すぎです。失礼ながら役所の反応の速さとは思えませんよ。
せめて、おおまかな時間帯だけでも教えてほしかったです。というか、村長は来ると言っただけで、来る時間を言うのを完全に忘れていたようですね。
父さんと母さんは昨日の夜に一足先に家に戻ったし、爺ちゃんと婆ちゃんは寄り合いに出掛けてしまったので、ただいま一人でお留守番の真っ最中です。
下手に出かけて、入れ違いになるのも嫌ですから、散歩に行く事も出来ませんし…………ちょっと恨みますよ村長。
でもまあ、文句を言ってても仕方ありません。とりあえず、婆ちゃん家の掃除でもしておきましょう。


~~♪~~~♪~♪

鼻歌を唄いながら玄関先の掃き掃除をしてます。
部屋から始まった掃除もここで最後です。掃除が終わったら爺ちゃんと婆ちゃんが寄り合いから帰って来るまでどうしてましょうか?
学校の宿題はさっさと片付けてますし、あとやる事といえば何がありましたか・・・・・・


「すみません、神月さんはこちらでしょうか?」

突然声をかけられて、振り向いた先には、この年代には珍しいビジネススーツに身を包んだ若い女性がいました。

「あ、ええ。神月はウチですけど」

「神月ひかりちゃんはご在宅でしょうか?」

「神月ひかりは私です。失礼ですがどちら様ですか?」

「ああ、これは失礼しました。私、内務省魔導局の原田と申します」

「これはどうもご丁寧に。貴女が村長の言ってた方ですね。立ち話もなんですから、どうぞ上がってください」



~神月家居間~


原田さんを居間に通して、とりあえずお茶(麦茶)を出し、私も向かい側に座ります。


「…(略)…という訳で、ウィッチはみんな魔導局のウィッチの名簿に登録する必要があるのよ」

原田さんの説明によれば、ウィッチとして目覚めた者は例外無く魔導局の作成するウィッチの名簿に登録する仕組みになっているそうです。
なるほどなるほど。その仕組みがあったから、あの時坂本さんは宮藤さんの情報を素早く手に入れる事ができたんですね。納得です。
それと、原田さんは陸軍の元ウィッチだったそうで、現役から教官を経て、退役後に魔導局にスカウトされたそうです。
ウィッチの登録に男の役人が来るよりも元ウィッチの女性が来る方がウィッチとなった少女達も安心できるだろうからという事だそうです。


「早く終わらせちゃいましょうか?ひかりちゃんもその方がいいでしょ?」

「そうですね。さっさと済ませちゃいましょうか」

「ん。それじゃあ早速だけど、お願いね」

「はい。それじゃ、いきますね」

ウィッチの名簿には氏名や住所などの個人情報と、使い魔の種類、それと学校での成績や評価等が記入されるそうですが、
今日は個人情報の確認と使い魔の種類、契約した状況の調査が目的だそうなので、ウィッチの姿になる必要があるので、ウィッチへ変身です。
やっぱりまだ耳と尾羽の感覚には馴れませんね。


「っ!!」

「どうしたんですか、原田さん?」

「え?ううん、何でもないの。ひかりちゃんの使い魔が珍しいから、ちょっと驚いただけよ」

「はあ、そうですか。この使い魔って珍しいんですね」

「そうよ。鳥の使い魔って、結構珍しいのよ。え~っと、羽の色は褐色、それに白の斑点ね。詳しい種類は……と」

原田さんは持ってきた辞典と睨めっこしてます。どうやら鳥を使い魔にしたウィッチは珍しいようですね。


「分かったわ。ひかりちゃん、貴女の使い魔の種類は」

「種類は?」

「ヨタカね」

「ヨタカ、ですか」

「そう、ヨタカ。間違っても漢字にしちゃダメよ」

「は?はぁ……」

「それと、さっき聞いた使い魔との契約の状況から私の推測した事なんだけど、ひかりちゃん、聞いても驚かないでね」

「……はい」

「実は…」

「実は…?」

「貴女がそのコと契約したのって、事故みたいな感じだったのよね」

「………………ゑ?」

「ヨタカってね、夜行性だから昼間はだいたい木の上で寝てるのよ。でね、寝方に特徴があって、枝と平行な向きで寝るの。
 それで、全くといっていいくらい無い事なんだけど、なにかの拍子に枝から落ちて、その下に偶然居たのが」

「私で、ぶつかった拍子に契約になっちゃったということですか」


ハハハ………なんて事ですか…
私がウィッチになった原因が、このコ(ヨタカ)が寝ぼけて落ちてきて、その先にたまたま私が居たからって……
いくらなんでも落ち込みますよ。|||orzって状態です。


「あ、でもね。ウィッチとしての素質が無かったらこうならなかったのよ。だから、偶然の結果だったからって落ち込まないでね」


原田さんはフォローしてくれますが、普通はショック受けますって。
ま、まあ、そんな些細なことはどうでもよろしいです。ホントはあんまりよくないですけど、割り切って捉えましょう。


「お気遣いありがとうございます。なんとか大丈夫ですから。ええ、大丈夫です。私がウィッチになったのは事実なんですし」

「そ、そうよね。ひかりちゃんがウィッチなのは事実だもんね」



~~side 原田~~


ウィッチとして目覚めた少女がいるので、名簿への記載と使い魔等の調査をする為にと向かった先には、恐らく10歳前後の少女が居た。
最初はちょっと年上ぶった子という印象だったけど、契約時の状況の聞き取りと一通りの説明を終えた時には年上ぶった子から、
年齢に合わぬ落ち着きを持った子に印象は変わった。普通なら生返事を返す程度なのだけど、この子は理解したうえに説明に納得したのだから。

そして、彼女。神月ひかりちゃんがウィッチの姿となった時、私は驚かずにはいられなかった。
彼女の使い魔はウィッチの使い魔達の中でも希少な鳥類だった。
鳥を使い魔とするウィッチはいない訳ではないが、その数はとても少なく、私も実際に見たのはこれが始めてだった。
そして、鳥を使い魔としたウィッチは、その殆どが空の王者といえる存在へとなっている。
カールスラントのマリアンネ、ルイーザのリヒトホーフェン姉妹やマグダレーネ・インメルマン、ガリアのロメーヌ・フォンクのように……
私はこの大いな可能性を秘めたウィッチの誕生に関わることができたことを八百万の神々に感謝しよう。
使い魔との契約については苦笑せざるを得ない状況だったし、その事でガッカリとしてた辺りは年相応な感じだったけどね。


~~side out~~


私の使い魔に原田さんが驚いたり、契約の時の新事実に私が凹んだりといろいろありましたが、調査は無事に終了。
今後の進路を聞かれた時にウィッチ訓練所に進むと言ったときに、原田さんから「是非とも陸軍に」と熱烈に勧誘されましたが、
まだそんなに考えてませんが、どちらかというと海軍かな?といった感じで答えたら、かなりガッカリされてました。
まあ、持ってる知識は殆どが海軍のウィッチしか無いもんですからね。仕方ないです。
生前(?)に見てたアニメに陸軍ウィッチが出てたり、ゲームとかが発売されてたら、もう少し知識を得てたでしょうから少しは変わってたんですけど……
原田さんはこれから魔導局の支所に帰って名簿と書類の作成があるとのことで、玄関でお見送りです。


「さてと、それじゃあ今日はこれで失礼するんだけど、ひかりちゃん」

「はい、なんですか?」

「固有魔法の調査に、また後日。今度はひかりちゃんの自宅の方に伺わせてもらうんだけど」

「けど?」

「多分次も私にんるでしょうけど、魔導局の職員が立ち会っていない時は、ウィッチになっちゃダメよ」

「え、そうなんですか」

「もちろんよ。ウィッチ家系の子ならともかく、ひかりちゃんみたいになにかの拍子にウィッチになった子達は、いきなり魔力の制御なんてできないでしょ?
 たまにいるのよ、魔力の制御ができないのにウィッチになって、固有魔法を暴走させちゃうのが」

「暴走、ですか」

原田さんに指摘されてようやく気づきましたが、よくよく考えれば当たり前ですよね。魔力の制御方法なんて知ってません。
原作キャラでちょっと固有魔法の暴走を想像してみましょう……電撃放出しっ放しのペリーヌさん、怪力全開制御不能のバルクホルンさん、etcetc……
うわぁ、えらい事ですね。今日までよくもまあ暴走しなかったもんです。

「一応聞いておくけど、使い魔のコと契約してから、今日までウィッチになったりは?」

「すいません。昨日皆が見せて欲しいって言うから、結構なっちゃってました」

「…………はぁ………何事も無かったみたいだからよかったけど、下手をすればひかりちゃんだけじゃなくて、他の人も危ない目に遭ってたかもしれないのよ?
 もう絶対にしないこと。いいわね?」

「はい、わかりました」

「ん、よろしい。それじゃ、今日はこれで失礼します。次に伺う時は事前に連絡をするから、よろしくね」

「わかりました。それでは、お気をつけて」


私の固有魔法は一体何なんでしょうか。
気になりますけど、まだ満足に魔力の制御も出来ないのだから、原田さん立会いで無いと変身しちゃ駄目と釘を刺されているので、我慢です。
さて、私はウィッチとなったあの場所に行ってくるとしましょう。





[7967] 第4話
Name: イワン◆6b379e6a ID:89e51783
Date: 2010/08/12 22:03
皆さんお久しぶりです。神月ひかりです。

夏休みにウィッチになったり、その時の新事実にちょっと凹んだりしましたが、無事に新学期を迎え、季節は秋を迎えました。

そして、今私はある博覧会に来ています。
その名も『国防と資源大博覧会』です。

何故私がこの博覧会を見に来ているかと言いますと、父さんが
「ひかりも来年の春にウィッチ養成学校へ行くけど、その前にこういった事(軍事とか)の勉強もしておいた方が良いだろうから、見に行こう」
と言ったからです。

学校の勉強はともかく、こういった関係の勉強は殆どできませんでしたから、早速と見に来ました。
こっちの勉強をしてなかったのかって?
考えてもみてください。一般家庭の十歳の女の子が軍事に関する専門書籍を読み漁ってる光景っておかしいですよね?
せいぜい新聞をよく読んだりするのが精一杯ですよ。

話を戻しましょう。この博覧会は、扶桑皇国で産出される資源。その流れと、それを守る国防について理解してもらうというのを趣旨として、
陸海軍や官庁のバックアップを受けて開催されてます。そして、数ある展示館の一つ、資源館の『扶桑皇国勢力圏図』の前に立っているんですが……

なんですか、このチート国家は。勢力圏がハンパじゃありません。
北はアリューシャン列島経由アラスカ、南は台湾、フィリピン等を経由してオーストラリアやニュージーランド等の南洋諸島を領土におさめています。
しかも、瑞穂国がリベリオンと合併するまでは、南リベリオン沿岸とファラウェイランドを除く太平洋地域のほぼ全てが扶桑勢力圏だったんですから、
太平洋のかつての別名が『帝(みかど)の庭園』と言われていたのも納得です。

というか、ぶっちゃけ進出し過ぎです。いくらネーデルラントやヒスパニアが衰退した時期に上手く立ち回ったといっても、まず有り得ないくらいです。
しかも、ブリタニアと戦争やらかしながらなんですよ?
前世歴史の鎖国という名の引きこもりを知っている身としては、この進出ぶりにちょっと頭を抱えたくなります。


「どうしたんだい、ひかり?」

「え?いや、何て言うか、扶桑って大きな国だなって」

「扶桑は大きな国か。そうだね、父さんもそう思うよ。信長公が海外進出を奨めたおかげだね。ひかりも知ってるよね?」

「知ってます。扶桑皇国中興の祖と言われてる人でしょ?私もちゃんと勉強してるんだから」

「うん、感心感心」

「む~、私のお願いを聞いてもらったんだから、がんばってるもん」

「ごめんごめん。ひかりががんばってるのは、父さんもしっかり分かってるさ」

「でも、扶桑の武士団がリベリオンまで渡って瑞穂国を作ったりしたのは織田信長も予想できなかったかな?」

「どうだろうね。確かに、ある程度まで領土を広げるのは予想してたかもしれないけど、自分の死後に太平洋を越えてリベリオン大陸までいったのは予想外だったんじゃないのかな」

「意外と予想してたのかも」

「ハハッ。そうだったら凄かっただろうね」


本能寺の変を危機一髪で逃れた織田信長は天下統一後、平定した各地の大名に命じ、扶桑武士団を海外に進出させる事に成功しました。
さらに言えば、彼は大陸への進出は全く行わず(ちょっかいをかけて来た時は、容赦なくやり返したそうですが)、シャム王国と
同盟を結び、呂宋(ルソン)や満剌加(マラッカ)を足掛かりに南洋や太平洋への進出を命じたとの事。
進出のしかたが妙に手際よすぎる気がしてなりません。この人も私と同じで知識を持って生まれ変わった類じゃないでしょうね?

私の些細な疑念は置いといて、父さんと一緒に資源館の展示を見て回ります。
資源館には広大な扶桑領で産出される資源の産出地図や産出される鉱石の実物、それが精錬されて資源となるまでの流れ、
そしてその資源の流れなどが地図や写真などを使って分かりやすく展示されています。

各地で産出された資源を加工して生産された小型かつ良質な工業製品、その製品を領内だけでなくリベリオンや欧州にも輸出する技術工業国扶桑。
どう見てもチート国家でした。

そして、この国のチートを支えているのが、高速船舶による航路と飛行艇などの大型航空機を使った航空路です。
両方とも官民を挙げて整備を推し進めた結果、広大な勢力圏を網羅するに至ったのだそうです。
そのおかげかどうかは分かりませんが、皇国郵船の船長や南洋航空の機長になるのは男の子たちの夢なのだそうです。


さて、このチートぶりと、資源の流通をよく覚えたうえで、いよいよ国防に関する各展示館へと向かいます。
私としては、海軍館での艦艇の艦橋を再現した所や大型の艦艇模型を見て、陸軍館で実物の戦車や航空機、大砲等をじっくりと見てから、
ウィッチ館と通称されている扶桑海事変大パノラマ館でウィッチについての勉強がしたいのですよね。


…………はて?


「………あの~~……」

「そして、この模型と資料を使用したパノラマ図を順番に従って見ていくことで、扶桑海事変を発生から終結までの流れが解りやすくなっています」

「なるほど、事変で動員された部隊がどのように動いていたか、これを見れば一目瞭然ということですね」

「その通りです」

「なるほど。新聞やラジオ等の報道では、全体像を掴むというのは、我々のような市民にはなかなかに難しいものですからね。これは実に解り易い」

「そうおっしゃっていただけると、このパノラマを初めとした資料制作を監修した私達の苦労も報われます」

「……もしも~し」

「うん?どうしたんだい、ひかり?」

「えと、なぜこうなってるのかな~?と」

「元ウィッチの方に事変の流れを詳しく教えてもらってるなんて、普通じゃまずない事なんだけど、ひかりは不満なのかい?」

「そうよ。私の案内にどこかおかしな所とか、分からないこととかあったのかしら?」

「そうじゃないんですけど、何故原田さんがここにいるのかな?と」


私は海軍館を見学してから、陸軍館で実物の戦闘機をじーっくりと観察しようとしてた筈なんですが、
何故かいつの間にやらウィッチ館の扶桑海事変パノラマ模型の前で、お父さんと一緒に原田さんから詳しい説明を受けています。

というか、原田さん。なんでこう狙ったかのようなタイミングで現れてるんですか??



[7967] 第5話前編
Name: イワン◆6b379e6a ID:4277bcf7
Date: 2010/07/13 21:18

こんにちは、神月ひかりです。今私は『国防と資源大博覧会』に来ています。

そして、いつの間にかウィッチ館の扶桑海事変パノラマ模型の前で、お父さんと一緒に原田さんから詳しい説明を受けています。
原田さん。なんでこう狙ったかのようなタイミングで現れてるんですか??


「あの、原田さん?」

「ん?どうかしたの、ひかりちゃん?」

「ちょっと質問なんですけど、良いですか?」

「ひかりちゃんからの質問なら大歓迎よ。なんだって答えちゃうわ。あ、機密事項は教えたりできないけどね」

「そんなに大した事じゃないですよ。何故原田さんがここにいるのかなと」

「何故って?決まってるじゃない」

「と言いますと?」

「勿論、ひかりちゃんを陸軍に勧誘するためよ。ひかりちゃんを勧誘するためなら、日参夜討ち朝駆け何でもしちゃうわよ」

「ゑ゛?!…………は、原田さん。じょ、冗談ですよね?」


原田さんの発言には思わず一歩後ずさってしまいました。一つ間違えばストーカー発言じゃないですか!


「ひかりちゃ~ん。そんな顔されたら、お姉さん傷ついちゃうわ。ほんの冗談なのに……」

「いや、さすがにさっきのはほんの冗談では済みませんって。普通は引きますよ」

「そうかしら?『私の事を、これだけ思ってくれてるのね』って感動するところじゃないのかしら」

「いやいやいやいや、他の子はいざ知らず、私は引きますから」

「もう、冗談だって言ってるじゃない。今日ここに来てるのは仕事よ。し・ご・と」


口をとがらせてさっきの発言を否定する原田さん。冗談だというのにホッとしました。
でも仕事って何でしょうね?


「はぁ、仕事ですか。でも原田さんって内務省ですよね?どう関わってるんですか?」

「簡単に言えば、展示内容におかしな点が無いかの検査ね。私は元陸軍のウィッチで事変の時は教官だったでしょ。
 だから、事変の詳細な推移とかも知ってるから、こういう事には適任なの。この博覧会が開幕する前に一度確認はしてるんだけど、
 直前とか、期間内に差し替えたりされてないか、ちょくちょく確認に来てるの」


なるほど、大本営発表をさせない為に展示内容の確認ですか。原田さんの経歴はまさに適任ですね。


「ひかりちゃん、大本営発表って?」

「えぁ?いえ、こっちのはなしですので、お気になさらず」

「ふ~~ん、まあいっか。それでひかりちゃん、改めて私の案内でここを回る?」

「そういうことでしたら、よろしくお願いします」

「よろしい。お姉さんに任せなさ~い」


元ウィッチによる状況説明付きの案内ですか。何とも豪勢なことなので、展示内容以上の事を聞ける事を期待しつつ、
ペコリと頭を下げて原田さんの提案を喜んで受け入れました。


「コホン。それじゃあ、改めて最初から解説し直していくわね。そもそもの始まりは1937年7月2日未明、扶桑海に突如として怪異が現れた事から始まるわ。
 この時、ある一隻の艦が偶然にも怪異を発見することが出来たの。それが無かったら、扶桑本土に被害が出てたかも知れないの。それが」

「それが、第六号哨戒艇。通称『佐久間艇』ですね。原田さん」

「ええ、その通りです。神月さん。佐久間艇は樺太方面での哨戒を終え、大湊への帰還途上に怪異を発見、大湊警備府に緊急電を打ち怪異の監視警戒を始めたの。
 そして、その緊急電は政府と軍を震撼させたわ。どうしてか分かる?ひかりちゃん」


ジオラマの前で船の模型と、赤い矢印を順に指しながら事変の始まりからの解説を始める原田さん。
ネウロ……今はまだ怪異でしたね。が赤い矢印で、扶桑軍が青い矢印と船や航空機の記号と部隊名で表されてますね。
父さんと話してたかと思うと、いきなりの出題ですね。確か、この時には軍にはストライカーユニットはあったから…


「え~と、場所。ですか?」

「ひかりちゃん、大正解。そう、発見された場所が扶桑本土に近かったことが問題だったの。軍の哨戒をすり抜けるかのように、
 扶桑の裏庭とも言っても過言じゃない扶桑海に突如として怪異が発生。もしもの話だけど、佐久間艇が発見してなければ、扶桑本土に甚大な被害が出てたでしょうね」

「うわ……それってもしかして、凄く運がよかったって事ですか?」

「もしかしなくても、とても幸運なことには違わないわね。そして、怪異対策の協議を始めた政府と軍に悪夢ともいえる二次報が飛び込んできたの。
 内容は『怪異ノ数ハ急速ニ増エツツアリ。目視ニテ総数七十以上ヲ確認、外観ハ今迄ノ怪異ニ非ズ』『ワレ、怪異カラノ攻撃を受ケツツアリ』って。
 政府と軍は対策の協議なんて暢気な事をやってる余裕は無くなったわ。政府は軍に対して動員可能な戦力の即時出動と怪異撃滅を下令。
 軍も早急に戦力の編成と出撃準備を開始。 具体的には、陸軍は明野飛行学校実験中隊を中核とした第8独立飛行隊を急遽編成して丘珠飛行場へ展開。
 それも、ウィッチ隊は装備を可能な限り持ち次第出発させて、整備部隊は後続の輸送機に詰め込んで移動させるやり方で、まず戦力の展開を重視させたわ。
 海軍も防空の為に千歳、三沢、山形各飛行場へ戦闘機隊を進出。更に 新鋭軽巡洋艦の『最上』を旗艦に、軽空母『鳳翔』で九六式艦上戦闘脚への転換訓練を
 終えたばかりのウィッチ隊、それと数隻の駆逐艦で第3航空戦隊を編成して扶桑海へ出撃させるのと同時に、
 怪異の哨戒、監視をする為に三沢と千歳から航空隊を出撃させたわ。」


原田さんは扶桑各地から扶桑海や丘珠飛行場へと青い矢印が集まるジオラマの前に歩いていくと、解説を続けました。


「軍が出撃準備と戦力展開を続ける中、佐久間艇は、怪異からの攻撃に迎撃しながらも打電を続けたの。
 『小型種ニ対シ、機銃及ビ高角砲ハ効果アリ』『中型種ニ機銃ノ効果ナシ。高角砲ハ一定の効果アリ』『怪異ノ一部ニ光線ニヨル攻撃ヲ確認。威力ハ大ナリ』
 という内容のね。でも、孤軍奮闘といえる状態で戦ってきた佐久間艇も『我ガ哨戒艇ハ戦闘能力ヲ喪失セリ』の電文を最後に通信が途絶したわ。
 その少し後に佐久間艇が通信を絶った海域に到着した海軍の哨戒機からの報告だと、海域には油膜と黒煙が少し残り、海面に少量の漂流物があっただけ。
 第六号哨戒艇は、艇長佐久間中尉をはじめ全員が戦死したわ。彼等は最期まで任務を遂行したの。海軍館に佐久間艇乗組員の遺品と、漂着した佐久間艇長の手帳が
 展示されてるわ。その時、佐久間艇長は、乗員は何を思って戦ったのかが書き留められているわ。よかったら後でもう一度見ておいてね」

「はい、絶対に見ます」

「いい返事ね。そして、佐久間艇が撃沈されたのと前後して陸軍第8独立飛行隊のウィッチ達が丘珠飛行場へ進出、怪異との戦いが始まったわ。
 先陣を切ったのは第8独立飛行隊のウィッチと陸海軍戦闘機隊ね。瘴気と機体性能の関係もあって、戦闘機隊は小型種への牽制攻撃とウィッチの援護に勤め、
 ウィッチ達が文字通り切り込んで行ったわ。」

「原田さん。ちょっと質問なんですけど、いいですか?」

「いいわよ、何かしら。ひかりちゃん」

「えっと、もっと沢山のウィッチで攻めることって、できなかったんですか?それとさっき原田さんは文字通り切り込んでいったっておっしゃってましたけど、
 ウィッチ隊の全員で突撃をしたって事ですか?」


文字通り切り込んだって、まさかウィッチ全員が抜刀切り込みしたってことじゃないですよね?
いくら戦闘機隊が援護したって言っても、せいぜい小型種相手の援護ですよね?精鋭揃い(多分)だからって、いきなり突撃なんてしてないですよね?


「一つ目の答えは、もっと戦力を集めたかった。出来ることならウィッチ隊の大半を投入したかったのが本音なんだけど、そうもできなかったの。
 他の所から怪異が現れる可能性もあったから、防衛に必要な戦力は置いておく必要があったから、飛行学校実験中隊にある程度増援を加えた飛行隊規模の戦力を
 投入するのがその時では一杯だったの。それでも事変終盤には、飛行中隊規模の増援の準備が進んでいたのよ。海軍も同じようなものね。
 それと、全員での突撃はさすがにしてないわよ。抜刀切り込みを行ったのはウィッチ隊の約半分、残りは銃撃で援護を行ったわ」

「あ、そうなんですか」

「そうよ。この約半分というのにも訳があって、第8独立飛行隊の中核を担った明野飛行学校実験中隊はストライカーユニットを使用した新戦術の研究も兼ねていて、
 本土にいるウィッチ達の中でも選りすぐりの精鋭を集めていたの。そのうちの半分が剣道を修めていて、扶桑刀による接近戦中心の戦法を研究するウィッチ達。
 そして、残り半分が弓道や鉄砲術を修めたウィッチ達による銃火器による戦闘を研究していたの。そして、この戦いでは今までの研究で生まれた
 銃火器による火力支援の下に切り込み部隊が突入、銃撃によってダメージを与えて近接戦で止めを刺すという戦法を使ったの。分かってくれたかしら?」

「なるほど、よくわかりました」

「いえいえ、それじゃ続けるわね。最初の戦闘で怪異の大半を撃破して、怪異は一度北方へ下がったわ。その監視を航空隊に任せてウィッチ隊は丘珠飛行場へ帰還。
 後続していた整備部隊がストライカーの整備と補給を行い、その日は怪異も接近してこなかったから戦闘は一度で済んだの。そして、その時海軍は佐世保鎮守府や
 舞鶴鎮守府所属の駆逐隊と合流して扶桑海を北上、夜半に男鹿半島北方海上に展開したわ。そして翌3日、数を大幅に増やした怪異は再び侵攻を始めたの」


扶桑海北方で佐久間艇と表された船の模型に×印がつき、丘珠飛行場から伸びた矢印によって、赤い矢印が北へと押しやられたジオラマの前で解説をしていた原田さんは、
扶桑海北部が拡大されたジオラマの前へと行きました。
拡大された扶桑海北部のジオラマには、展開した艦隊と丘珠飛行場に集結した部隊が詳しく紹介されています。


「3日からの戦いは怪異が昼夜を問わず攻撃してきた事で、激戦が繰り返されたわ。瘴気の影響で、まず戦闘機隊が消耗して援護が出来なくなったの。
 海軍の艦隊が代わりに砲撃により援護を行うようになったんだけど、同士討ちの危険があるからウィッチ達の戦闘が始まれば援護はできなくて、
 戦闘でのウィッチ達の負担が徐々に増え始め、少しずつ負傷する子も出てきたわ。軽症なら衛生兵による治癒魔法で戦線復帰は出来たんだけど、
 戦死者こそ奇跡的に出なかったものの、重症者は後送され、相次ぐ戦闘の疲労と自分たちが抜かれたら後が無いっていう重圧から、
 魔力が回復しなくて出撃できなくなる子も出てきて、徐々に戦線は押されはじめたわ。戦いの激しさを物語っていたものの一つが、彼女たちの服装ね。
 本来真っ白なウィッチのマフラーや飛行服のあちこちが黒ずんだ状態になっていたわ。洗濯も満足にできない状態だったの。それでも彼女たちは懸命に戦い続けたわ」


赤い矢印と青い矢印がぶつかり合った、扶桑海北部ジオラマには、その日ごとの出撃数や戦果、損害が書かれていました。
日を追うごとに出撃数は減り、損害が増えていって、激戦が繰り広げられていたことが表されています
そして、最後のジオラマには、赤い矢印に向けて艦隊をはじめとした殆どの戦力を当てています。

「そして1週間後、負傷したウィッチのうちのある程度が復帰して、幾らかの増援も得た陸海軍は一気に攻勢をかけることにしたの。
 海軍は『鳳翔』の護衛に数隻の駆逐艦を残して、旗艦『最上』も前線に投入、陸軍もウィッチ隊と再編成した戦闘機隊を再び投入して、最大の激戦となったわ。
 そして、その時に陸軍のウィッチ隊の先頭で次々に怪異を落とし、士気をおおおいに上げたのが穴拭智子を筆頭にした『ウィッチ三人娘』なの。
 『三人娘』については後でまた説明するから、今は割愛するわね。彼女たちの奮闘に触発される形でウィッチ隊、艦隊、航空隊の全てが士気を上げ、
 更に攻勢を強めたわ。そして、二日に渡る決戦ともいえる攻勢の末、扶桑海に現れた怪異は全て撃墜破され、人類史上初の怪異に対する完全勝利となったわ。
 もっとも、事変の集結と勝利宣言は、この戦闘の3日後、陸海軍で繰り返し行った偵察で、怪異が全く発見されなくなったのを受けての事だけどね」

「人類初の勝利ですか。それじゃあ、それまではそうじゃなかったんですか?」

「そうね、それまでの欧州戦役や扶桑海海戦も、あくまで怪異を追い払っただけで、現れた全てを倒したわけじゃなかったの。
 だから、現れた怪異を全て倒したこの扶桑海事変が本当の意味での怪異に対する勝利というわけよ。もっとも、軍が被った損害も大きかったのだけどね。
 ウィッチ隊には奇跡的にも戦死者こそ出なかったけど、重傷者や魔力を使い果たした者を含めれば、約半数が暫く戦えない状態になっていたわ。
 そして、戦闘機隊は参加戦力の半数を失ったし、艦隊も駆逐艦1隻が大破後自沈処分、5隻が小中破、海防艦は2隻が沈没し、2隻が中破。
 旗艦の最上は艦後部の殆どを破損して大破寸前。これが扶桑海事変のだいたいの流れよ。
 あと、最後に。私達が今こうやっていられるのは、扶桑海事変で戦ったウィッチ達や、佐久間艇をはじめとする陸海軍の人達が命がけで戦ったからだっていうことを
 絶対に忘れないでね」」


そう言って扶桑海事変の解説を締めくくる原田さん。勝利したといっても、とても大きな被害ですね。いったい何人の方が戦死されたんでしょう………
それに、10日前後で精鋭揃いのウィッチ隊の約半数が飛行不能だったっていうのは、想像してた以上の激戦だったんですね。


「さてと、事変の流れはさっき説明したとおりね。それじゃあ、次は『三人娘』をはじめとしたウィッチ達の展示に行きましょうか」



そう言って、次のウィッチ達の展示コーナーへ案内してくれる原田さん。
その先で、まさかあんな事になるとは、予想不能でした。



中編へ続く


はじめての前中後編になりました
後編も早く投稿できるように、頑張っていきます



[7967] 第5話中編
Name: イワン◆6b379e6a ID:4277bcf7
Date: 2010/07/13 21:19

どうも、神月ひかりです。
国防と資源博覧会に来ている私は今、原田さんによる扶桑海事変の解説を聞き、陸海軍ウィッチ関連の展示コーナーへ来ています。
事変のジオラマの所は、どちらかというと大人が多かったんですが、こっちは家族連れというか、子供、特に女の子が沢山いますね。


「原田さん、こっちには女の子が沢山いますね?」

「こっちはウィッチ関連の展示だもの。ウィッチに憧れてる子が見に来てるから、ひかりちゃんがそう思うのも当然よ」

ウィッチに憧れるなら、こっちの展示だけじゃなくて、向こうの事変のジオラマも見とけよ~。ウィッチはとっても大変なんだぞ~。
と心の内で言いながら展示コーナーを見ると、入り口真正面に『扶桑海の閃光』のダイジェスト版が上映されていますね。
順路に沿って、ウィッチの写真と、簡単な経歴や事変での戦果などが表されて・・・・・・・・・ナンデスカ、アノバカデッカイ銃ハ?


「あの~、原田さん。あのでっかい銃は一体なんでせうか・・・・・・?」

「でっかい銃?ああ、あれね。あれは樫出悠子准尉が使った97式自動砲改よ。全長2000ミリ、重さ約60キロ、事変でウィッチが使用した火器の中でも最大のものよ。
 この20ミリ弾に当たれば、中型怪異も文字通り一撃必殺だったの。もっとも、これを扱えるウィッチはそんなにいないけどね」

「そうでしょうね」


こんな、本人よりも大きくて重い銃(砲?)を振り回して戦っただなんて、恐るべしです。というか、横に置かれているオロナミンの空瓶みたいな弾頭が当たれば、
小型の怪異は問答無用で木っ端微塵なんでしょうね。
なになに『樫出准尉は、実家の樫出流鉄砲術を修め、扶桑海事変では遠距離からの狙撃により、中型種を中心に20体近い怪異を撃破』ですか。
まるで扶桑版リーネちゃんですね。使っている銃も似たようなモノですし、遠距離からの狙撃という点では同じですしね。
そして、やっぱりというべきか、展示スペースのど真ん中にでかでかと『三人娘』の展示がありました。
今扶桑で有名なウィッチのトップ3ですから、当然といえば当然なんですが。
しかしまあ、レプリカとは思いますが、戦闘脚に服と銃、刀まで展示されてますね。その横には写真を使った紹介ですか。


「そして、これが扶桑陸軍が誇る最新鋭ストライカーユニット『キ27』よ。『キ27』っていうのは開発時の呼称で、正式名称は『九七式戦闘脚』ね。
 ここにも書いてあるけど、従来のストライカーは魔導エンジンを艇体と呼ばれるのに収納して別に持つ必要があったから、ウィッチの自由度は今一つだったの。
 でも、宮藤理論を採用して魔導エンジンをストライカー内部に納めることに成功したこの『キ27』は、今までのストライカーとは別次元の自由度を
 ウィッチに与えることが可能になったの。この形状のストライカーとしては、海軍の九六式戦闘脚の方が先に正式化されたんだけど、
 あっちはどちらかというと試験機的な運用もあったし、九六式で得た戦訓も取り入れたから、今現在各国が使用している戦闘脚の中では、
 トップクラス。特に機動性能に関しては、現状最高峰と言っても過言じゃないわ」


なるほどなるほど。ただ説明文を読んでるだけよりも、元ウィッチの原田さんから聞くとこれはまた違った感じがしますね。
……あれ?
『加東圭子 中距離からの見越し射撃を得意とし、事変では怪異23体を撃破』
『穴拭智子 扶桑刀を用いた近接戦を得意とし、事変では怪異7体を撃破』
『加藤武子 戦闘での指揮に長け、怪異撃破数は2体と少ないものの、加東、穴吹との編隊を指揮し、両名の戦果及び事変の勝利に多大な貢献を寄せる』
あれあれ?撃墜数が加東さんの方がぶっちぎりで多いじゃないですか。なぜに映画の主役じゃなかったんですかね?


「原田さん、原田さん。この加東さんって人の方が沢山撃墜してるんですよね?何で映画の主役じゃなかったんですか?」

「あ~、え~っと、その~。それはね・・・・・・・・・」


何か言いにくそうな原田さん。聞いちゃマズかったんでしょうか?


「えっとね、言うのもちょっと恥ずかしいんだけど、圭ちゃん。加東さんって、中距離からの射撃って書いてあるでしょ。それじゃ見栄えが悪いって上層部から注文が
 入っちゃって、近接戦での撃墜数トップだった穴拭さんが映画の主役に決まったの」


と思ったら、耳元で小声で教えてくれましたが、ちょっと呆れる理由ですね。
そりゃ確かに淡々と銃を撃ってるよりは、扶桑刀でバッサリと切り裂く方が見栄えはいいかもしれませんけどさ………
格闘戦至上主義というか扶桑刀至上主義って言えばいいのでしょうか?そういうのはやっぱりあるんですね。
と、ちょっと考え込みかけてたんですが、話題を変える為なのか原田さんが話しかけてくれました。

「それより、どうかしら?扶桑陸軍ウィッチ隊の装束は。純白の小袖に緋色の袴。ウィッチ用の手甲と脚甲も格好いいでしょ」

「そうですね。見た目も鮮やかですし、手甲と脚甲で戦う者の雰囲気も合わさってますね」

「でしょ?そして、首元には小袖と同じく純白のマフラーをたなびかせて空を舞うの。現役の頃を思い出すわ」

「原田さんが現役の時も同じだったんですか?」

「そうよ。陸軍ウィッチの装束は、ずっと昔からあの姿のままよ。多分だけど、ここ50年は変殆どわってない筈よ。
 昔と比べて変わった所っていっても、銃を使うウィッチに合わせて弾薬盒が新しく開発されたくらいじゃないかしら?」

「へえ~。伝統ある装束なんですね。あ、あのマフラーになんか書いてありますね。え~っと…豪……勇…穴拭?字が下手でちょっと見にくいですね。
 模造した人ももう少し綺麗に書いて欲しいですよ」

「あれ実物よ」

「ゑ゛?!」


うわ~~。やっちゃいました。よりによって国民的有名人の直筆を下手くそって言っちゃいましたよ。


「……あ~。え~と、その、原田さん。さっきのは聞かなかったことでお願いします」

「別に構わないわよ。私も同じこと言っちゃったし」

「ハハハハ…そうですか。原田さん、あっちに何か行列ができてますけど、なんなんですか?」

「ああ、あれはウィッチの装束で写真を撮ってくれる所があるんだけど、その順番待ちの列よ。といっても、簡略化した装束に付け耳をして、
 ストライカーの外装を固定した台に座って。ってやつだけどね。ひかりちゃんも記念に一枚どう?」

「いや~~、遠慮しておきます。少し経てばウィッチになりますから」


「予想してたけど、やっぱりひかりちゃんならそう言うわよね~。あ、そうだ。ひかりちゃん、ストライカー着けてみない?」

「はい?」


原田さんったら、いきなりトンでもない事を言ってきました。猫の耳と尻尾は幻視ですよね?


「原田さん。ストライカーって」

「当然ストライカーユニットよ。陸軍最新鋭のキ27、もちろん本物よ」

「いやいやいやいや。さすがに無理ですって」

「それがそうでも無いのよね。偶然にも、私の教え子がココに来てるの。その子に頼めば一発解決よ」

「それって公私混同じゃないんですか?」

「ひかりちゃん、良いことを教えてあげるわ。権力とコネはね、使うためにあるのよ!」

「さらっと凄い事言いましたね。ところで、そのこころは?」

「ひかりちゃんに陸軍のストライカーも良い事をアピールすること………あ゛………そ、それじゃちょっと聞いてくるわね~」


そう言うと、原田さんは『関係者以外立ち入り禁止』と書かれている扉を開けて中へ入ってしまいました。
原田さん、あなたが戻ってくるまで私たちはどうしてればいいんでしょうね?とりあえず、近くの展示品を見ておきましょうか…

数分して、原田さんが戻ってきました。


「許可貰ったわよ。五時半に、ここの前に来てくれればいいって。それで、私もこっちで準備を手伝うから、時間まで別行動になっちゃうの。ごめんなさい」

「いえ、それは構いませんけど」

「それじゃ、五時半前にここの前で待ってるわね」


と言って原田さんは扉の中に戻っていきました。というか、本当にアッサリと許可取って来ましたね。時間は五時半ですか…


「五時半……お父さん。今何時?」

「今は三時を少しまわったところだね」

「あと二時間ちょっと……どうしよう」

「そうだね。それじゃあ、移動動物園に行ってみるかい?」

「ん~~、それじゃそうしよっか。行こう、お父さん」


というわけで、約束の時間まで会場の一角にある移動動物園に行ってきました。
犬や猫等の小動物とのふれあいコーナーで思う存分モフモフしてきました。個人的なことですが、やはり犬は柴犬ですよ。

さて、約束の時間が近づいてきたので、名残惜しいのですがモフモフは終了させて、ウィッチ館の前まで来ましたが……

『本日は国防と資源博覧会にご来場いただき、誠にありがとうございました。あと少々の時間をもって、本日は閉場となります。
 お忘れ物の無いようお気をつけてお帰りください。本日はご来場いただき、誠にありがとうございました』

ってアナウンスが流れてきました。このままだと会場が閉まってしまうんですけど、どうなるんでしょう……
 

「お待たせ、ひかりちゃん」

「いえいえ、私達も今来たところですから。ところで原田さん、もうすぐ閉場しますってアナウンスがされてますけど、私達はどうなるんですか?」

「既に連絡済みだから大丈夫。今日は関係者用出入り口から出れば良いって許可も貰ってるわ。さ、こっちよ。ついてきて」


原田さんに案内されたのは、ウィッチ館裏手にある倉庫のような建物でした。原田さんの説明によると、展示している武器や機械を整備する建物だそうです。
その建物の真中にある台座にストライカーユニット「キ27」が固定されていました。そして、その横に陸軍の軍服(上着)を着用した女性がジッとこっちを見ています。
眼鏡越しにもの凄く鋭い視線がビシバシとこちらに来てます。やっぱり、原田さんが無茶を言ったからなんでしょうか……ちょっと怖いんですけど……


「貴方が神月ひかりさんね?私は所沢陸軍飛行学校教官、川崎マヤです。よろしく」


後編へ続く


あとがき(と言えるほどのものでもないボヤキ)

まさかの前中後編になってしまいました。微妙な終わり方で後編へと続きますが、国防博覧会編は次で終わり。
私生活でいろいろとあって、一回書くの辞めかけたけど、二期開始に励まされた。
カタツムリ並みの速度でも頑張っていきます。




[7967] 第5話後編
Name: イワン◆6b379e6a ID:4277bcf7
Date: 2010/07/13 21:21

こんにちは、神月ひかりです。
父さんと二人で見に行った国防と資源博覧会で原田さんと偶然会い、原田さんの案内で扶桑海事変大パノラマ館、通称ウィッチ館を見学していたわたしたちですが、
原田さんの思いつき?策略?で陸軍のストライカーユニットを着けることができる事になったので、閉場後に機材整備用の建物に行くことになりました。
そこで私達を待っていたのは……


「貴方が神月ひかりさんね?私は所沢陸軍飛行学校教官、川崎マヤです。よろしく」


ビシッと擬音語の付きそうな、一分の隙も無い敬礼と鋭い視線で迎えてくれた、原田さんの後輩の川崎さんでした。
現役軍人の纏う空気とでもいうのでしょうか、私は現在進行形でその雰囲気に完全に圧倒されちゃってます。


「は、はい。神月ひかりです。その、今日はよろしくお願いします」

「原田先輩の頼みという事ですので、今日は特例で許可しますが、本来何も関係の無い一般人がストライカーを装着する事はできないということをお忘れなく」

「わ、わかりま「ちょっと、マヤ。ひかりちゃんがこわがってるじゃないの。」」

「しかし先輩。「しかしもカカシも無いわよ。貴女の雰囲気に呑まれちゃってるじゃないの。とりあえず、その眼鏡を外しな…さいっ」」


川崎さんの所へ歩み寄ったかと思うと、いきなり川崎さんの眼鏡を奪うかのように外した原田さん。
あれ?眼鏡が外れたと思ったら、川崎さんの『いかにも軍人です!』という雰囲気が一気に着えちゃいました。
表情も鋭かったのが、どちらかというと気弱そうな感じになってます。


「ひどいですよ、センパ~イ」

「怖い思いさせちゃってごめんね、ひかりちゃん。あらためて、この子が私の教え子の一人の川崎マヤよ」

「さっきはすみませんでした~。あらためてヨロシクお願いしますね~」

「はぁ……」

「おどろいた?この子はこっちのノンビリしたのが地の性格なの。それで、教官として振舞うときは、この伊達眼鏡をかけるとさっきのバリバリの軍人モードになるの。
 簡単に言えば、この眼鏡が意識の切り替えスイッチという事ね」

「そうだったんですか」

「そう、それじゃマヤ。後はそっちに任せるから、頼んだわよ」

「わかりましたセンパイ。コホン。この台座に固定されているのが、扶桑陸軍が誇るストライカー「あ~、マヤ。そのあたりの説明はもうやっちゃてるから」
 センパイ、ひどいです。私なにもできないじゃないですか」


すみません、マヤさん。そういった説明は原田さんから一通り聞いてますので、被っちゃいます。
マヤさんの落ち込みっぷりがあまりにもアレなので、とりあえず疑問に思ったことを聞いておきましょうか。


「あの~、川崎さん。質問なんですけど、いいですか?」

「え、え?え?!わ、私にですか?」

「はい、そうです。原田さんにだいたいの事は教えてもらったんですけど、ちょっと聞きそびれたことがありました。いいですか?」

「も、もちろんです。何ですか?」

「えっとですね、このストライカーは宮藤理論を採用してるんですよね?もし仮になんですけど、ウィッチが手を突っ込んじゃったらどうなっちゃうのかな?と」

「手、ですか?」

「手です。何かの拍子にストライカーに小物とかを落としちゃったら、手で拾わないといけないじゃないですか。その時はどうなるのかなって」

「う~~ん、やってみないとわからないかな?その時のその子の状態にも左右されると思いますけど、魔力に反応して接続されますから、
 落としたものを拾おうとしたら、 ついうっかり腕にストライカーが装着されちゃう事も無いとは言い切れませんね」

「そうですか、あんまりたいした質問じゃなかったと思いますけど、ありがとうございました」


状態によっては腕にストライカーが装着されることも無いわけじゃ無い。
ロマーニャのイタズラ大好き黒ヒョウ娘なら、嬉々としてやりそうですね。見た目はとても間抜けっぽいでしょうけど…


「ひかりちゃんの疑問も解消できことだし、そろそろストライカーを着けてみましょうか」

「そうですね。それじゃあ、ひかりちゃん。こっちへ来てください。あ、ストライカーを着けるときは靴を脱いでくださいね」


マヤさん(川崎さんと呼んでいたら、本人が「マヤでいいですよ」と言ってくれました)に連れられて台座の上に上がると、足元にはストライカー。
脚を入れるところが『何時でもどうぞ』と言わんばかりに見えました。


「じゃあ、ここに座って、ストライカーにゆっくりと脚を入れてみて。大丈夫です。ウィッチなら、絶対に装着できますから」

「わ、わかりました。それでは、いきます」

いよいよ初のストライカー装着です。マヤさんは大丈夫って言ってますけど、正直不安でいっぱいなので、恐る恐るつま先をストライカーに入れていきます。
くるぶし辺りまで入ったくらいにパァッと光ったと思ったら、そのままどんどんと脚が入っていきます。
それと同時に使い魔の耳と尾も出てるみたいなんですが、ストライカーに入っていくふくらはぎの辺りがくすぐったいやらなんやら、なんともいえない感触です。


「ん………ふぅ……」

「っ……センパイ、あの子って」

「そうよ、貴女に無茶言った理由が分かったでしょ?」

「はい。でも、これは私も始めて見ました」


あ~~、私の馬鹿馬鹿馬鹿、くすぐったいというか、ちょっと気持ち良い感覚だからって、なに甘い溜息ついてるんですか。
きっと私の顔は真っ赤になってるに違いありません。原田さんとマヤさんが何か言ってますが、そんなの気にしてられません。あ~恥ずかしい。
太ももの3分の2くらいの所で自動的に固定されるみたいで、それと同時にストライカーを固定してた止め具も『ガシャリ』と音を立てて外れました。


「え~っと、マヤさん。装着できたみたいです」


と立とうとしましたが、この時、装着した時の恥ずかしさとかでストライカーユニットを着けたらどうなるかというのをスッポリと忘れていました。


「え?あ?ちょ……うわ、わわわわわわ」


膝も足首もストライカーの異空間の中です。当然バランスなんか取れずに転倒一直線……と思ったら、予想してたのか原田さんが受け止めてくれました。
顔を原田さんの胸に埋める格好で抱きしめられてます。もう耳の先まで真っ赤です。


「ひかりちゃん、言い忘れてたけどストライカーを装着すると、魔導エンジンが動いていないと普通に立つのも一苦労なのよ」

「そう、ですね。すみませんでした」

「まあ、普通は軍の養成所で講義を受けてからだもの、知らなくて当然よ。とりあえず、ひかりちゃんはここに座って」


と、台座に逆戻りです。魔導エンジンが動かせない以上、仕方ありません。
やることが無いので、座ったまま脚をブラブラさせてますが、ストライカーユニットを履いた状態でも、重さを殆ど感じないってのは新発見です。
魔力で体力とかが増強されてるからなんでしょうね。きっと。でないと、空であんなにホイホイと姿勢変えられませんから。
しかし、やることがホントに無いです。原田さんとマヤさんはなんか内緒話…私を陸軍に引っ張ってく方法でも話してるんでしょうか?
そんなに珍しいんですかね、鳥の使い魔って。

あぁ、退屈です。あまりに退屈なので、ちょっと実験です。魔導エンジンは魔力で稼動するのだから、魔力=燃料と仮定してみます。
まず、原田さんに教わった通りに目を閉じて意識を集中させて、自分の魔力の流れを把握。
ふむふむ、私の身体だけじゃなくて、ストライカーの表面にも魔力が流れてますね。タンクに燃料が入ってるのと同じ様なものですか。
それじゃあ、燃料タンクからエンジンへのコックを開けて、燃料が回ったところで点火すれば始動するはずですし、駄目元でやってみましょう。
イメージ的には農業用発電機みたいなもんですね。燃料コックを運転に切り替えて、始動用の紐を思い切り引っ張るイメージで始動です!!
『ババン』
……………ほへ?

ほとんど冗談のつもりでやったエンジン始動が、成功してしまいました。
『バッバッバッバッババババババババ……』と音を立ててエンジンはどんどんと動き始めてしまいました。
原田さんもマヤさんもエンジン音にすぐ気付いてこっちに来てくれてますが、ど、ど、どどどうしましょう!!
と、とりあえず、エンジン停止です。燃料(魔力)を絞れば止まる筈(予想)ですから、魔力を絞る、絞る…絞る……やり方がわかりません。
もう一回、始動と同じイメージです。燃料コックを閉にしてしまえば自然に止まる筈です………良かった、止まってくれました。
マヤさんがこっちを見てプルプルと震えてます。これは完全に怒らせちゃいましたよね?


「ひかりちゃん、貴女一人で始動させちゃったの?」

「マヤさんごめんなさい。まさかホントに動くとは思ってなかったんです。本当にすみませんで「センパイ、ひかりちゃんを陸軍(ウチ)に下さい!!」した…ヘ?」

「それなんだけどね、マヤ。ひかりちゃんったら海軍志望なのよ」

「え~~、ひかりちゃん、陸軍に来ない?」

「え~と、マヤさんの申し出はとても嬉しいんですけど、遠慮させていただきます」

「そんな~。あ、今陸軍に入ったら、私が一から手取り足取り全部教えてあげますよ。どうですか?」

「いえ、今のところ海軍志望に変わりないので。空に上がれば階級なんか些細なものだっていってる海軍と比べて、陸軍って階級に厳しい感じがするんですよ。」

「う゛」


瞳をキラキラ輝かせて猛烈な勢いで陸軍への勧誘をしてくるマヤさんですが、階級に厳しそうという理由で押し黙ってしまいました。どこか心当たりがあるんでしょうか。
と思ったら、原田さんとまた密談を始めましたね。
『やっぱり陸軍ってそう思われて……』とか『その辺りはやっぱり変えるべきよね』とか『いっそのこと陸戦ウィッチ隊も巻き込んで……』とか
『じゃあ、こっちの伝手で近衛の方も……』とか、なんか不穏な台詞もチラホラ聞こえてるんですけど………
周りの陸軍の人達も少し引いてますよ。


「あの、原田さんにマヤさん。こっちにもちょっと聞こえてますよ」

「「ゑ゛………あ、アハハハハハ」」


私の声で辺りの状況に気付いた二人は乾いた笑い声をあげて誤魔化そうとしてるみたいです。


「え、えっと…あ、そろそろ時間だから、出口まで送ってくわね」


ちょっと強引ですけど、話題を変えましたね。原田さん。ですが、時間というのならば仕方ありません。名残惜しくはありますが、ストライカーを外して家に帰りましょう。
…………ところで、ストライカーってどうやって外すんですか?

この後、原田さんとマヤさんに教えてもらいながら、なんとかストライカーを外して、原田さんに出口まで送ってもらって家に帰りました。
いろいろと予想外なことが沢山起きましたけど、それ以上に色々なことが経験できたので、とても良い一日でした。




あとがきのようなもの

祝、二期放送開始
しかし、このSSでやろうとしてた事を先にやられちまいました |||orz
まあ、このSSの流れに大きく関わってるので、ちゃんとやりますけどね……でも、やられた感はけっこうありました。

さて、ちょっと強引な感じもしないわけでもありませんが、国防と資源博覧会編がようやく終わりました。次回から漸くウィッチのタマゴになる予定です。
プロットを書いた筈なのに、原田さんが勝手に動き回ってしまう怪現象多発中。おかげでどんどんと量が増えております。
本編には書いてませんが、原田さんのひかり勧誘参りには、何回かに一回の割合でマヤもついて行ってます。
さらに、この時に原田さんとマヤさんがしていた密談(?)が切っ掛けとなって、空戦陸戦要請所に陸軍省までも巻き込んだ、
すったもんだの大議論の末、堅苦しいまでに拘ってた陸軍の階級の上下が、ウィッチ隊限定ですが緩和される流れになってしまったりもしてます。
なにやってんだよ、原田さん。




[7967] 第6話(加筆版) 
Name: イワン◆6b379e6a ID:4277bcf7
Date: 2011/12/19 22:39

1939年3月31日


こんにちは、神月ひかりです。

 遂にここまで来ました。両親に見送られ、地元の駅を出発して数時間。列車を乗り継ぎ船に揺られて到着したのは扶桑皇国海軍士兵学校のある江田島。
私の目の前には立派な門があり、その横の柱には『扶桑皇国海軍江田島ウィッチ養成学校』と書かれた看板がかかっています。
海軍兵学校からは少し離れた場所に建っているのですが、赤レンガで建てられた校舎は純白の兵学校にも負けず劣らぬ風格があります。
全国から集まったウィッチ候補生は、甲種、乙種訓練生となり、甲種訓練生は1年、乙種訓練生は1年3ヵ月の間に色々と訓練を受け、晴れてウィッチとなれるのです。
 
 ちなみに、甲種というのは代々ウィッチ家系、乙種が非ウィッチ家系の事だそうで、それによって訓練の期間が変わるそうで、私は乙種訓練生です。
そして、乙種訓練生がなぜ3ヵ月訓練期間が長いのかというと、ウィッチ家系でないので、どうしても魔法力の制御を基礎から教える必要があるので、
魔法力の制御ができてから通常の訓練に移るのですが、その差が3ヵ月という期間に顕れるのだそうです。

 養成学校の入校式は明日なのですが、制服の支給等があるので寮は今日の午前中に到着しておく必要があったのです。
正門横の詰め所で入校許可証を提出して、いよいよ養成学校の敷地へと入ります。
係の人に案内されて来たのは食堂です。ここで十時半から、昼食を挟んでの養成学校の施設の説明等があり、寮の部屋割りと同時に制服も支給されるとか。
かなり早めに来たと思ったんですが、席の半分近くがすでに埋まっていますね。とりあえず、空いている席に座って待つとしましょう。


「すいません、隣いいですか?」

「え?あ、はい、ど、どうぞ…」

「どうも、ありがとうございます」


 空いている席の隣の娘に一声掛けて、座らせてもらいましたが、かなり緊張してるみたいですね。というか、殆どの娘が大なり小なり緊張した表情ですね。
今のこの場所で、特に緊張したり気負ったりしてない私の方が変なんでしょうね。もっとも、前(前世)は、これ以上に緊張させられる事があったからなんですが…
ま、その辺の事は今はどっかの置いておきましょう。


「あ、あの…」

「?どうしました?」

「その…貴女は緊張してる風に見えないから……私なんかほら、手が震えちゃって…」


座る時に声をかけた娘はそういって、右手を見せてくれましたが、その手は小刻みに震えてます。かなり緊張しちゃってますね。


「あ~、そりゃ私も養成学校の前ではちょっと緊張してましたよ」

「……ちょっとだけなんだ」

「その辺はともかく、ここまで来たんだから、今更ここで緊張しててもしょうがない。と考えることにしたら、あら不思議。緊張感なんてどこかに行ってしまいました」

「えっと……そういうものなの?」

「まあ、開き直りとも言います。それに、これより緊張することなんて後からタップリあるでしょうから、もっと気楽にしていればいいんですよ」

「………ありがとうございます。貴女とお話したら、少し気が楽になりました」

「それはなによりです。え~と……」

「あ、わたしは倉本ひとみです」

「私は神月ひかりと言います。よろしく、倉本さん」

「ひとみ、でいいですよ。神月さん」

「私もひかりでいいですよ、ひとみさん。…おろ?」


いつの間にやら、私の左手がひとみさんの右手を握っていました。ううむ、我がことながら、いつの間に……


「あ~…ひとみさんすいません」

「いえ、その、ひかりさんが迷惑じゃなかったら、もう少しこのままでいいですか?」

「ん~、別にいいですよ。でも、机の下でお願いしますね」


 という訳で、机の下で手を繋いだまま、ひとみさんとお話していますが、ちょっと人見知りというか内気のようですね。
あれこれ他愛ない話をして、ひとみさんの緊張もほぐれてきたかな?と思ったら予定時刻がきたらしく、教官らしき女性が食堂へ入ってきました。
それと同時に、事務方らしい数人の人が冊子と数枚の書類を配っています。

「諸君、静粛に!刻限となったので、これより養成学校及び訓練生についての説明を開始する。
 紹介が遅れたが、私は海軍省教育局の大沢と言う。少ない間だがよろしく。それでは早速だが………」


大沢さんの説明と冊子によると、海軍機械化航空歩兵訓練生、つまり航空ウィッチ訓練生は

1.甲種訓練生は1年、乙種訓練生は1年3ヵ月訓練をし、その後各地のウィッチ隊へと配属される
2.訓練生は伍長待遇の扱いとなり、配属時に軍曹として正式に任官する
3.訓練は月曜から金曜と土曜の午前中。土曜の午後からと日曜は基本休日である
4.休日は申請すれば外出は可能であるが、門限までに必ず寮に戻ること。外泊は原則禁止である
5.若干ながら俸給が出る

といった内容でした。それ以外にも一日のおおまかな日程の説明がありました。
続いて施設の説明ですが、施設は座学や屋内での訓練を行う講義室棟、体育館兼用の講堂、私達が寝起きする寮棟、そして、訓練用ストライカーが納められた
格納庫と滑走路、グラウンド等々。午後から各施設へ実際に行くのだそうです。

 午前中の説明の最後が、寮の部屋割りと制服の支給です。
寮の部屋は甲種と乙種で分かれていますが、訓練期間の差によるもので、二棟ある寮棟の一号棟が甲種、二号棟が乙種に割り振られています。
制服は赤いボディスーツに、これまた赤い水兵服、それに水兵帽の三点セットが訓練生の制服で、ウィッチを夢見る女子の憧れなのだとか。
これも水兵服のジョンベラ(襟)の線が甲種は三本、乙種は二本となっています。

制服の支給は五十音順に名を呼ばれて支給されますが、名前を呼ばれた娘は、ウィッチ訓練生になるという事に、誰彼問わず緊張と興奮を顔に貼り付けています。


「次、神月ひかり」


おっと、私の番です。それでは貰いに行きましょう。


「神月ひかりです」

「神月ひかり、乙種訓練生。間違いないか?」

「間違いありません」

「では制服を……む、君のはこっちか。受け取りなさい」

「はい、ありがとうございます」

事前に申請しておいた尾羽対応の制服を受け取り、席に戻りますが、一人だけ妙にこっちに鋭い視線を飛ばしてくる娘がいました。一体なんでしょう?


「次、倉本ひとみ」

「は、ハイ」


ひとみさんの番ですか。また緊張しちゃってますけど、大丈夫でしょうか?


「く、倉本ひとみです」

「倉本ひとみ、乙種訓練生。間違いないか?」

「ま、間違いありません」

「では制服を」

「はい、あ、ありがとうございます」


 ………ふう、なんとかかんとか大丈夫でしたか。ガチガチに緊張してたので思わず心配してしまいました。
席に戻ってきたひとみさんですが、まだ緊張したままです。私と同じ乙種訓練生なので、訓練生の間に内気がなんとかなるといいな~と思ってましたら、
机の下で、またもや私の左手をギュッと握ってきました。そうして暫くしていると、緊張してた表情が幾分か緩んできました。
人事とはいえ、早めに改善するべきでしょうかね?下手すりゃ依存になりかねませんし……

そう考えている間に、制服の支給はつつがなく進行し、最後に寮の部屋割りとなりました。


「それでは、最後に寮の部屋割りを発表する。各員は割り振られた部屋に荷物を置き、正午に再び食堂へ集合。昼食後に各施設の案内をする」


部屋割りによれば、1部屋を4人で使用することになっています。えーと……私の部屋はっと………
『2号棟118号室・神月ひかり・倉本ひとみ・杉野和美・中瀬ゆき』とあります。


「ひとみさんと同部屋ですか。あらためて、今日からよろしくお願いします」

「わ、私こそよろしくお願いします。ひかりさん」


 他のルームメイトはどんな人達なんでしょう?1年3ヵ月の間寮生活を一緒にするのですから、興味も出ますが、とりあえず部屋に荷物を置きましょうか。
あとひとみさん、そろそろ手を離していただいてもよろしいでしょうか?荷物が持てません。






「………………」

「………………」

「………………」

「………………」


 え~と、どうしましょうかね、この状態。
ウィッチ養成学校の寮の部屋にいるのですが………部屋の真中にある丸机を四人で囲んだまま、無言の状態が続いてます。
 しかも、右側の子はさっきから私をじーっと見てるんですよね、鋭い視線というやつですか?
というより、どうしてこうなったんでしょうか?
とりあえず、なんとかしましょう。


「え~とですね、ちょっといいですか?ここでこうやってても仕方ありませんし、簡単な自己紹介から始めませんか?とりあえず顔と名前が一致しないと話もできませんし」


とりあえず、異存は無いみたいですね。


「じゃあ、私から。神月ひかりです。皆さんよろしくです」

「え、えと、その、倉本ひとみ。です。よ、よろしくおねがいします!」

「…………中瀬ゆき」

「わたしは杉野和美ですわ。よろしく」


ふむふむ、左側に座ってるひとみさんはもう知っているのですが、正面に座ってる短髪の子が中瀬ゆきさん、でもって、右側が杉野和美さんですか…


「さて、お互いの名前がわかったところで、神月さん!わたしは貴女に一言言わせていただきます!!」


 って、いきなり何ですか?杉野さんがビシィッと擬音が付きそうな勢いで私を指差してきました。
私は何もしてませんし、杉野さんとも初対面、の筈ですよね?


「神月さん、貴女は一体何を考えてますの?」

「何を…って言われましても……ねぇ?」


首を傾げてひとみさんを見ると、何故か同じように首を傾げてます。


「貴女という人は…私達は明日からウィッチ候補生として規律を守って訓練を積む日々になるのですよ?」

「そうですよね」

「でしたら、その服装はどう考えてるつもりですか?」

「服装?服装ってこれのことですか?」

「そう、それです。規律以前に破廉恥です!!扶桑の撫子として恥ずかしくないんですか貴女は!!」

「え~と、その、杉野、さん?ひかりさんの服ってどういうことなんですか?」


 ちょうどいい機会ですね。ひとみさんの疑問に答える形で説明しちゃいましょう。誤解はさっさと解くに限ります。
上着の裾を捲り上げて腰の部分を皆に見せます。


「え~とですね、こういう事です。というか、杉野さんよく見てましたね」


 既に見ていた杉野さんはともかく、中瀬さんとひとみさんは驚いてますね。
あ~、中瀬さん?理由があってこんな風にしてるんですから、『………大胆』とか言わないでくださいよ。


「さてと、杉野さん。私がこの服なのは、別に自分だけ目立とうとか規律を無視するとか、そういうのじゃありません。ちゃんとした理由があるんですよ」

「理由?」

「百聞は一見にしかずと言いますし、とりあえず見れば分かります。よっと」


原田さんに教わったやり方で魔法力を制御して、尾羽をバサッと出して。


「こういうわけです。普通の服はコレ(尾羽)がつっかえちゃうんですよ。ご理解いただけ…「ごめんなさいっ」」


杉野さんが深々と頭をさげてます。いきなりですね。


「神月さんの事情も知らず、見た目だけで判断して本当にごめんなさい」

「あ~、いえ。別にそんなに気にしてませんから。それより」

「それより?」

「知らなかった事が原因なんですし、色々とお話しをして知り合えばいいんです。今日から卒業するまで同じ部屋の仲間なんですから」


 この後、四人で『出身はどこか?』『使い魔は何?』『海軍に入った理由は?』とか色々話しをしました。
話に夢中になりすぎて、お昼の時間がギリギリになってしまったのは皆のナイショです。
明日からいよいよウィッチ候補生としての日々が始まります。一体どんな毎日を送るのでしょうか?今からでもワクワクしてきます。


 それと、今日の夜は寝付けるでしょうかね?






皆様、ご無沙汰してます。
新規投稿でなく、加筆版への差し替えです。
稼動している原発が殆ど無くなり、それに伴い私の仕事も消えかけました。

それはさておき、ようやっとウィッチ養成学校入校です。
あまり時間をかけず、サラッと卒業まで書くつもりです。
私生活次第ですが・・・


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