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[7818] 【習作】クローンは似ている?(現実→リリカルなのは オリ主)
Name: ジャミー◆90775155 ID:657ebfc4
Date: 2009/09/12 22:58
 この小説についてのご注意


 オリジナル主人公が登場します。
 オリジナル主人公である田中雄一は実在の人物と一切関係の無い架空の人物です。
 主人公は原作知識を持っています。
 主人公はスカリエッティのコピーに憑依します。
 主人公は善人ではありません。
 オリキャラが登場します。
 原作キャラが崩壊している可能性があります。
 原作のストーリーを改変しています。
 現在のところ死人はでていませんが、以後でる可能性があります。
 ご都合主義な所があります。



[7818] 第01話 「オリ主にしては微妙すぎる」
Name: ジャミー◆90775155 ID:657ebfc4
Date: 2009/04/04 22:30
人はみな平等であると感じている者は幸せである。
何故ならその者には不満が無いのだから。
byここのオリ主



第01話 「オリ主にしては微妙すぎる」


 目が覚めたら、スカさんになっていた。
 何を言っているのかわからないと思うが俺も(ry

 ようするにテンプレどおりトラックに轢かれてリリカルな世界にトリップ。
 ちなみに、もう少し詳しく書くと俺が憑依したのはスカさんではなくそのコピー品(スカさんよりも若い。というか約十歳児)。
 作ったのは最高評議会系列の研究所。作成理由はスカさんの予備兼追加労働力。そして配属されたのはスカさんとは別の研究所。


 てなわけで産まれてからずっと、真面目にお仕事しています。というよりは、真面目に働かされています。命が掛かっているとニート気質な俺でも真面目に働けるようです。
 まぁ、スカさんの記憶とこの体のおかげで頭脳面に関してはチートなんで仕事なんて楽勝ですけどね。
 でも第二の人生はマジつまらねぇ('A`)

 リリカルな世界に来たことだし、本当は原作介入とかハーレムとかやりたかったんだけど、監視が厳しすぎて無理。
 なんでスカさんのコピーという微妙どころなんだ。俺tueeeeeもハーレムもできんじゃないか。

 真面目にお勤めを果たしているおかげで研究所所長としてある程度の権力はもらえたけど、外出はぜんぜんさせてくれない。KINF OF HIKIKOMORI♪
 原作介入は無理でも、せめて翠屋のケーキを食べに行きたかった……orz

 最初の頃は、逃亡とか考えていたんです。
 けどね……。
 この研究所には2ヶ所出口があるが魔導師が駐在してんだよ、しかも1ヶ所につきBランク前後が1人、Cランク前後が3人。無理です。逃げれません。
 なんという戦力の無駄遣い。Bランクなんて駐在させんなよ!!

 強力な魔導師を作成して見張りの魔導師を倒そうとか考えたこともあるが、作成段階でバレるので作れない。
 この研究所はすべての培養槽に魔力探知機が付けられていて、勝手に魔力を持った生物を作ると監視所に連絡が行くようになっていやがるんですよ。

 なにか別の手段を考えないと逃げれないorz








~5年の歳月経過~

 いっきに飛びましたよ~。
 別に詳しく話しても面白い話なんてないんですから、飛ばします。
 死体の解剖話とか、内臓同士の細胞が癒着しちゃったクローンの話とか聞きたくないでしょ?



 んじゃあ面白い話を始めます。
 今日とんでもない事実が発覚しました。


俺「エリオを作り出したのは俺だったんだよ!!」
俺「なんだってーーーーーーー!!」



 ……………………。
 後の所員から痛いものを見るまなざしを向けられてしまった……。
 くそ!書類上とはいえ俺の部下なのに!


 ようするに今日、エリオ作成の依頼がきたわけですよ。
 エリオの両親→組織→俺 こんな感じで回ってきました。
 エリオ作成の秘話は語られていなかったが、まさか俺が犯人だったとは……。キバヤシも真っ青ですね。



 まぁ別にそれだけの話で、エリオの作成は問題なく終えることができ、無事出荷できました。
 しかし、その後問題が……。




 上から研究用にもう一体エリオを作れとの指示が。
 なん……だと……?

 アニメにエリオは二人もでてきませんよ?
 イレギュラーにも程があるだろ……。原作と違う流れになる可能性が高いだろ。
 しかし上の命令なので作らないわけにはいかない。命令違反を繰り返すと首を切られる。比喩ではなく本当に首を切られる。命を落とす的な意味で。
 こっちは違法に作られた人間ですからね~。裏切ったら生かしておいてなんてくれません。
 人生は厳しい……。



[7818] 第02話 「また微妙なオリキャラが」
Name: ジャミー◆90775155 ID:657ebfc4
Date: 2009/04/04 22:31
小心者は仲間を欲する。
それは、心強い仲間を得たいのではなく、責任を押し付けれる相手が欲しいからである。
byここのオリ主


第02話 「また微妙なオリキャラが」



 エリオきゅん2号が完成しました。




 …………………………………………。
 ………………………………。
 ……………………。

 どうすんのこれ?



 俺が管理することになったんだけど、ぶっちゃけ管理したくない。
 っていうより、目覚めさせたくない。アニメにいないんだもこいつ。パンドラの箱すぎるだろ……。

 とは言え仕事なので目覚めさせますけどねぇ。




 お! 目が覚めたみたいだな。
 エリオきゅん2号がマッパのままきょろきょろしています。って言い難いな。以下2号と呼称。

 あっ、目が合った。



「なっ! スカリエッティー?!」

 うんそうだね。見るからにスカリエッティーだね。5年の月日が俺をショタっ子スカさんからアニメ版に出てくるスカさんに進化させた。
 でもよく考えると、15歳の俺と三十路を軽く超えて40ぐらいであろうスカさんの見かけがそっくりってどうよ? って思う。
 このアニメって年齢と見かけが一致しない辺りはリリカルだよね。他にリリカルな所が無いくせに。
 士郎さんとかスカさんとかプレシアさんとか、桃子さんとか桃子さんとか桃子さんとか、リンディーさんとかリンディーさんとかリンディーさんとか。

 大事なことなので3回ずつ言いました。





 ってそうじゃないよ!!


 なんで、エリオのクローンなのにスカさん知ってんの?!



 2号は鏡を見つけ、自分の姿をしげしげと見つめながら、「もしかしてエリオ?」とか呟いています。
 OK謎は解けた。


「残念。エリオではありません。エリオ2号です」

 とりあえず、儚い夢は最初に潰しておく。
『うはwwwやったwwwこれでキャロとのフラグはいただきwww』という考えに行き着く前に現実を教えてあげるのは優しさだと思う。ロリコンにこの上げ落しは辛いからね。
 ん? 俺はロリコンじゃないよ。小さな子が好きなだけだよ。


「えっ?」とか言いながら、驚いた表情でこっちを見てみてくる。

「ちなみに俺は、スカさんじゃありません。スカさん2号です」 

 一応俺についての情報も渡しておくことにする。
 多少は付き合うことになるだろうし、同郷の者だしね~。





~説明すること数十分~

「なんでそんな微妙な奴に憑依してるんだ俺……」
「そんなの俺も一緒だし、むしろ犯罪者じゃないぶんお前のほうがマシだろ」

 現在、お互いに哀愁を漂わせながら今の立場に悲観しています。
 2号のおかげで俺もまた凹みましたよ。せっかく考えないようにしていたのに。
 俺も2号もこの施設から逃げ出せば死刑。リリカルな世界にいるのにまったく楽しめません。

「まぁ、運命だと思って諦めろ2号」
「2号って呼ぶの止めろよ」

 2号が怒ってる。別に呼び方なんぞどうでもいいと思うんだけどね。ここではね。
 俺もここの生活に慣れちまったな……。

 「じゃあなんて呼べばいい?」
 「……あんたは何て名乗ってるんだ?」

 質問を質問で返すとはとんだド低脳ですね。俺の答えを聞いてから、名前を考えるとか狡い奴だ。

 「田中雄一」
 「えっ?」
 「田中雄一」
 「……前世の名前名乗ってるの?」
 「そうだけど?」

 ここで、いきなり中二病な名前を名乗る奴よりはマシだと思う。だって元は一般人だし。オタクだけど。
 っていうか、研究員にしか名前使わないしね~。ぶっちゃけ名前とかどうでも良かったってのもある。外に行きてぇぇぇぇぇぇ。

 「で、何て呼べばいい?」
 「……カルタスで」
 「一応言っておくけど、お前の方が産まれたの遅いからな」

 まぁ、外人丸出しで日本人の名前を名乗るのも恥ずかしいか。でもカルタスもどうかと思う。



カルタス…ぶっちゃけ車。
     カルタスの後継機がエリオ。ようするにエリオのお兄ちゃん。



[7818] 第03話 「原作介入もできないしちょっと無駄話」
Name: ジャミー◆90775155 ID:657ebfc4
Date: 2009/04/04 22:31
罪を悔い改める者には救いの手を罪を悔い改めない者には断罪を。
従順な者なら飴をやり、反抗的な者には鞭をやる。
言い方さえ変えれば道化師も英雄になる。
by田中雄一


第03話 「原作介入もできないしちょっと無駄話」



 さらに年月がすぎましたYO
 どんどんと無駄に時間が過ぎていく。マヂで何も介入しないオリ主。


 どうでもいいことだけどとりあえず報告。
 カルタスは俺の管理下ってことで、エリオきゅんみたいに虐待じみた実験はやってません。最大でも8話のティアナぐらいです。



 あ、本家本元のエリオはちゃんと救助はされましたよフェイトさんに。
 ぶっちゃけ羨ましい。別にフェイトさんの子供になれるのが羨ましいって言っているわけじゃないですよ?
 親子プレイと新しいな。とか思ってません。本当です。
 ようするに痛い実験されるのは嫌だけど、先が見えないまま監禁されるのはもっと嫌ってことを言いたかったんですよ。本当です。大事なことなので2回言いました。
 ここにも管理局突入してこないかな~。

 …………って、突入してきたら俺が逮捕されるか。
 PT事件、闇の書事件、JS事件を見る限り、管理局に役立つ人材にはとことん恩赦、役に立たない奴には罰則って感じだもんな。

 だってそれぞれの犯人に対しての罰則が緩すぎるもん。
 まぁ、フェイトはもう少し重くても良かったと思うけど、妥当な罰則だと思うよ。
 でもヴォルゲンリッターはありえないと思う。死刑もしくは終身刑が妥当だろ。まぁ良くても無期懲役。なのに保護観察だけ。
 そしてスカさん&ナンバーズ。ぶっちゃけると全員罪が軽い、死刑でも文句は無いと思う。あと役に立つ奴には恩赦が云々が如実に出た例だと思う。教会もしくは管理局に入ればすぐに出れるけど、拒否するなら無期懲役って感じで。

 まぁ、偏見も極論もあるけど俺の中ではこのイメージ。


 ようするに、戦闘能力皆無な俺は恩赦をもらえないってことだったんだ!!
 なんだってーーーー!!


 まぁ、あれこれいってるけど俺も恩赦をもらいたい。何? そうした制度に反感を持ってたんじゃないのかって?
 他人は駄目だけど自分ならいいんです。

















「最近思ったんだ。原作キャラのクーロンを作れば、俺らの世界から誰かがやってきて憑依するんじゃないかって。俺らの例から考えると、あながち間違いではないと思うんだ」
 突然語りだした俺を怪訝な顔つきで見るカルタス。

「だから、なのはさんとかフェイトさんとかのクローンを大量に作「止めろ!」せめて最後まで言わせてくれよ」

 人の話は最後まで聞きましょうって先生に習わなかったのか?

「機動六課VS偽機動六課とかやってみたくね?」
「やりたいとは思わない」

 夢の無いやつめ。
 まぁ本気ではないが。こういう実りの無いことでも考えていないとやってられない。
 毎日毎日、研究の日々。産まれてこのかた研究しかやってきていない。外に一度も出たこと無いってどんなんだよ。
 たまには、外でスイーツ(笑)とか食べたりしたい。


 まぁ、こんな馬鹿なことをするのも、もうすぐで終りだけどね。
 なんたって、長い年月をかけて行ってきた脱走の準備があと1ヶ月もしないうちに整うんですから(笑)



[7818] 第04話 「激闘!!フェイトVS田中雄一!!」
Name: ジャミー◆90775155 ID:657ebfc4
Date: 2009/04/06 22:57
人は危機的状況に陥ると誰も考え付かない行動をとることができる。
それは常識という鎖から解き放たれるからである。ただし、その行動が良いか悪いかは別である。
by田中雄一


第04話 「激闘!!フェイトVS田中雄一!!」


~AM5:00~



 現在大変なことが起こりました。
 何があったかというと、長年かけて用意していた脱走の準備が無駄なものに成り下がりました。


 簡単に言うと、管理局が踏み込んできました。
 踏み込んでこないかなぁ。とか思いましたが、本当に踏み込んでこないで下さい。
 なんであと少しで脱走という所で強制捜査とか、俺の運はどこまで悪いんだorz



 いや、逆に考えるんだ。別に捕まってもいいさ。と考えるんだ!

 ……無理です。
 捕まりたくは無いです。そんなマゾッ気はありません。
 となると残された道は一つ、今から脱走するしかない!

 モニターで見る限り幸い管理局は一つの出口しか把握していないようで、突入してくるのはそこだけだ。おまけにもう一つの出口にいた組織の魔導師は、管理局に応戦するために持ち場から離れている。

 計画とは違うから、死体の偽装なんてこともできないが、管理外世界へ逃げてしまえば奴らの目もごまかせるだろう。
 となれば話は早い。カルタスを迎えにいってそのまま逃亡しよう。うん、そうしよう。




 「おい起きろ!!逃げるぞ!!」
 カルタスを揺さぶりながら声をかける。これだけ大騒ぎしているのに起きないとはどんだけ図太い神経をしているんだ……。
 って、いい加減起きろ!!なんで揺さぶってんのにまったく目を覚まさないんだ?!
 もういい。カルタスは抱えて連れて行こう。大して重くないし、時間が無い。


 俺は走る走る。恐慌状態の所員を無視してカルタスを抱えて走る。現在いるのは、生体ポッドがある部屋だ。このまま奥にある倉庫、廊下を抜ければ外へ抜けれる。

 うはwwwこれで俺も自由だwww
 外に出たら俺、翠屋でお茶するんだ!









 と思った瞬間。ロックしてあった後ろの扉が破壊され。

「広域次元犯罪者ジェイル・スカリエッティあなたを逮捕します」

 フェイトさんが登場。

 俺オワタ\(^o^)/





 くそ!死亡フラグを吐いた瞬間にこれかよ!死亡フラグって効果あったんだな!!畜生!!
 それにその台詞はもっと後だろ!!最終決戦までとっとけよ!!スカさんをホームランしてから言えよ!!
 原作キャラに初めて会ったけど全然嬉しくねぇぇぇっ!!


 くそ!どうすればいいんだ!何か、何か無いのか?!
 ポケットに入っているのは、電子端末、手帳にシャーペン、カッターナイフ、音楽機器。手に持っているのは寝ているカルタス。

 ……………………。
 使えるもんがねぇぇぇぇぇっ!!
 カッターナイフじゃ、ぜってぇぇ勝てねぇ!!蟻と象の戦いよりも酷い!
 カルタスを起せば、なんとか戦えるが勝てるとは思えない。


 くそ!こうなりゃ自棄だ!!

「おっと!動かないでくれたまえ、動かれると驚いて手が動くかもしれないよ?」

 ようするにカルタスにカッターナイフを突きつけ、小悪党丸出しな台詞を吐くことにする。なんとなくスカさん風味の口調で。

「エリオ?!」

 うはwww予想以上に効果的なようでフェイトさんの動きが止まったw
 悔しそうに歯を食いしばりながら、こっちを睨んできます。

「人質を放して、投降しなさい!!」

 やばい、眼力がさらに上がった。美人が睨むと物凄く恐い。マヂで恐い。恐ろしさで涙が出そう。でもちょっと興奮した。

「投降なんてすると思うかね?」

 投降しろって言われて投降する奴はいないと思う。
 ってやばい殺気が膨らんでいる!!
 本気で泣きそう。

 しかし、必死に恐怖に耐えフェイトを牽制しつつ相互側に繋がる扉の方へ移動を開始。長いこと殺気にさらされていると興奮しsゲフンゲフン……体に悪い。
 それにフェイトの顔は凄く焦っている。ようするに、このまま俺を逃がしたら打つ手が無いってことなんでしょうね。なら、急いで逃げた方がお得というもの。

「あなたは、命を弄……「私は、そこの扉から外に行くが、追いかけてこないでもらいたい。もし君が扉を開けたのなら、その瞬間からこの子の指を一本ずつ切り落としていくよ?」

 フェイトさんが何か言おうとしていたけど、遮ってこちらの要求を突きつける。おそらく会話によって時間稼ぎをするつもりなんでしょうけど、こちらがそれに乗ってやる義理は無い。


「それではさようなら、フェイト・テスタロッサ」

 別れの挨拶を済ませて、扉の外へ移動し扉をロックする。そして脇目も振らずにダッシュ。
 よしよし、いい感じに監視の魔導師と管理局員が戦ってるようだ。
 おかげで管理局員に会うことも無く外へ逃げ出すことに成功。

「自由だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 こうして外に出た俺は、俺が作ったシルバーケープのパチモンで見つかることなく逃げおおせることに成功したのだったっとさまる。




あとがき
とりあえずここまで一気に投稿。
研修がまだまだ続くので、全体的に投稿は遅めになりそうです。



[7818] 第05話 「えーマジシリアス!? シリアスが許されるのは(ry」
Name: ジャミー◆90775155 ID:657ebfc4
Date: 2009/04/06 22:56
影響を与えようと行動しても影響を与えれないことはよくある。
逆に何気ない行動が大きな影響を相手に与えることがある。
by田中雄一


第05話 「えーマジシリアス!? シリアスが許されるのは(ry」




~AM5:00~



~フェイトside~

 この日、長年追ってきたジェイル・スカリエッティのアジトへの強制捜査が行われた。 魔導師の抵抗にあったけど突入はうまくいき、ついにスカリエッティと対峙することができた。

 「広域次元犯罪者ジェイル・スカリエッティあなたを逮捕します」

 これで終りだ。ここでスカリエッティを逮捕し、これ以上の犠牲者を出すことは無くなる。そう思っていたのに。





「おっと!動かないでくれたまえ、動かれると驚いて手が動くかもしれないよ?」

 ?
 追い詰められたというのに、スカリエッティは慌てること無くこちらを振り向いた。
 何か、秘策があるんだろうか? しかし、その疑問はすぐ解けることになった。
 振り向いたスカリエッティが抱いていたものを見た瞬間に。

「エリオ?!」

 抱いていたものはエリオに瓜二つの子供だった。おそらくあの子もスカリエッティの実験の犠牲者……。
 私は、ニヤニヤと笑うスカリエッティを睨みつけることしかできない。
 私が動いた時に、スカリエッティがどんな行動をするのか予想できない。本当にあの子を殺してしまうかもしれない。

「人質を放して、投降しなさい!!」

 無駄だと思いながらも投降を促した。私にはそれしかできないから……。
 しかし、スカリエッティは私の言葉に怒ったのか鼻息を少し荒くし、拒絶の言葉を示した。

「投降なんてするとおもうかね?」

 打つ手が無い。他の局員は、まだ足止めされている。こちらの応援にくるにはまだ時間がかかる。
 でも何とかしてあの子を助けてあげたい。今までエリオと同じように辛い目にあってきただろうあの子を。

 あとできるのはスカリエッティを説得することだけだ。正直に言うとスカリエッティを説得できるとは思っていない、スカリエッティは今まで多くの命を弄んでいる。そんな人間を簡単に説得なんてできないだろう。
 でも、スカリエッティにも自分が生み出した生命に対して情があるかもしれない。それに、今このままスカリエッティを見逃せばあの子はまた辛い目にあう。だから意を決して話しかけた。

「あなたは、命を弄……「私は、そこの扉から外に行くが、追いかけてこないでもらいたい。もし君が扉を開けたのなら、その瞬間からこの子の指を一本ずつ切り落としていくよ?」

 思わず呆けてしまった。私の言葉を遮ってこの男が言った言葉が理解できなかった。
 今何て言ったの? 自分の身勝手な理由で生み出し、自分の保身を図るために指を切り落とすっていうの?
 許せない……。この男を許すことができない。
 でも、今の私ではどうすることもできない。

「それではさようなら、フェイト・テスタロッサ」

 スカリエッティはそう言いながら、逃走していった。
 あの子を助けることができず、逃げ去っていくスカリエッティを黙ってみていることしかできなかった。あの男が憎かった。でもそれ以上に無力な自分が憎かった。








 その後、外に待機していた局員に連絡をして監視をしてもらったが、スカリエッティが監視網にひかかることは無かった。
 何か手掛かりを得れるかと思っていたデータも大半が抹消されていて、復旧は困難とのことだった。

 残っていたデータから解ったことは、あの子が酷い扱いを受けていたってことだけ。
 ううん、違う。これからも受けるんだ。私が助けることができなかったから……。

 ごめんね……。でもいつか絶対に助けるから……。





あとがき
むしゃくしゃしてやった。今では後悔している。
でも反省はしていない(゚∀゚)

みなさんこんばんは。
シルバーケープとかカッターナイフの件を突っ込まれて若干困っている作者です。
実はあれですよ。カッターナイフは↓をつかっていたんです。amazonで検索したら出てきたんですから、カッターナイフです。
http://yamamotosouitirou.blog87.fc2.com/blog-entry-23.html

って、ここまで書いといてなんですけど、俺的に子供の指ならカッターナイフでも十分切り落とせると思ってたんですけど無理ですかね?


シルバーケープは…………。
知りません。田中君に聞いてください。



あと、更新は平日に入ったのでさらに遅くなりそうです。
部屋でネットが使えないのが痛いです。



[7818] 第06話 「楽しみのためなら多少のリスクは惜しまない」
Name: ジャミー◆90775155 ID:657ebfc4
Date: 2009/04/07 22:18
坊主が憎けりゃ袈裟まで憎い。
憎い相手がとる行動はすべて悪意ある行動に見える。
by田中雄一


第06話 「楽しみのためなら多少のリスクは惜しまない」




~管理外第97世界「地球」海鳴市~


「と言う訳で、俺はフェイトさんを出し抜いて逃げ切ったのさ」

 現在、地球の翠屋でお茶をしながらカルタスに俺の武勇伝を演説中。

 ん? お金はどうしたのかって?
 そんなのハッキングすればいくらでも手に入りますよ。地球の暗号技術なんてミッドチルダ製コンピュータの敵ではありません。


「色々言いたいことがあるけど、とりあえず言わせてくれ。馬鹿なの?死ぬの?」

 せっかく助けてあげたというのに、カルタスが辛辣な言葉を浴びせてきます。

「いったい何が不満だって言うんだ?」
「なんでそんな物騒な方法で逃げてんだよ!!他にも方法はあっただろ!!」
「とりあえず落ち着け。周りのお客さんに迷惑だ」

 回りのお客さんがこっちを注視してきます。俺はこう見えて恥ずかしがりなので恥ずかしいです。
 カルタスは回りを見回した後、顔を赤くして俯いた。止めろ。エリオフェイスでそんな行動をとるな。萌えてしまうではないか。

「それに、そもそも逃げる必要なんてないだろ。保護してもらえば良かったじゃないか」
「あぁ、確かにそうだな。フェイトさんいたし、別にお前を置いて逃げても良かったのか」

 今度は音量を落とし、周りに気を使って話すカルタス。
 確かに良く考えればカルタスを置いてきても問題なかったよな。少なくともフェイトさんがいたから、変なところに連れて行かれるってことも無いだろうし。そう考えると悪いことをしたかもしれん。

「いや、お前も保護してもらえばいいだろ?」
「何言ってんの。お前はともかく俺は捕まるだろ。違法研究やってるわ、遺体損壊やってるわ、罪状がごろごろしてんぞ?」

 この子は何を言ってるの。俺に捕まれと?
 フェイトさんとの親子フラグをへし折ったとはいえ、そんなに怒るなよ。

「いや、捕まらないだろ。好きでやっていたわけじゃないし、どっちかっていうとお前も被害者だろ。それに研究データを見たら俺が酷い扱いを受けてないってのも解るだろうからフェイトの誤解も解けるだろし」

 あれを誤解と言っていいのか、やっちまった俺からすると疑問だけどな。
 まぁ、それに第一……

「それ無理。提出しないと駄目だったから研究データは捏造しまくってる。データ上だとお前はエリオ以上の扱い受けてるから」

 上の奴らは意味も無いようなデータを取れ取れと煩かったから、捏造しといたデータを渡しといた。
 たぶん、あのデータを見たフェイトさんはお怒りだろうな~。
 ……絶対に俺が犯人だとばれたら駄目だな。ばれたらホームランじゃ済まん気がする。
 スカさん南無。

「それにだいたい、あんなあくどい組織がそんな情量酌量敵なことしてくれないだろ。アンサイクロペディア読んだことないの?」
「馬鹿か!?アンサイクロペディアはネタが書いてあるサイトだろ!!本気にするな!!」

 また大きな声を出したため周りのお客さんの視線が再び集まる。んで、またカルタスが顔を赤くして俯いた。止めろ。エリオフェ(ry
 どうやら俺とカルタスでは、管理局に対する認識が異なっているようだな。まぁ、ここで言い争っても仕方がないか。

「まぁ、過ぎたことは置いておこう」
「置いてちゃ駄目だろ……。お前の話を聞く限り、絶対にフェイトはお前のことを捕まえようとするだろうし、早く誤解を解かないと」

 カルタスがげんなりした表情で俺に言ってきた。
 ぐちぐちいう男はもてないんだぜ! ちなみに俺は前世ではもてなかったぜ!

「まぁフェイトさんに関しては大丈夫だろ。たぶん」
「なんで?」
「だって、フェイトさんは俺のことジェイル・スカリエッティって呼んでたから、スカさんが捕まればモーマンタイ。俺の罪も一緒にスカさんが被ってくれるよ」

 カルタスは呆れた顔をして、俺の顔を見つめてくる。
 なんだ俺に惚れたのか?

「お前って俺が思っていた以上に悪人だったんだな……」

 そんなに褒めんなよ。照れるジャマイカ。
 と言っても、俺の存在を隠さないと意味が無いのが辛いところ。脳味噌共が持っている俺のデータが管理局に流れたら目も当てられない。
 あれさえ消すことができたら、俺のことがばれる可能性が無くなるんだけどね~。少なくともデータ上は俺の存在が消える。

 それに例え俺のことがばれても、魔力パターンさえ知られてなければ管理局の人探し能力なんてどうってことはない。
 捕まらないためには、スカさんと同じ顔だから整形はしなきゃならんけど。

 ってことで管理局にデータを消しに行かねばならん。
 でもそれは今じゃないし、カルタスに話すことでもない。カルタスは信用できる奴だが完全に信頼できるやつじゃない。カルタスは人が良すぎる。


「という訳で問題ない、他に質問は?」
「あぁ~。大した事じゃないんだけど、何で最初からシルバーケープを使わなかったんだ?」

 最初ほどの緊張はもう残っていないようで、だらけた態度になりつつ質問してきた。

「あぁそのことか、っていうかシルバーケープじゃなくて、そのパチモンな」
「どう違うんだ?」

 カルタスが解らないといった表情で聞いてくる。

「シルバーケープは、ISと同じく魔力とは違った別のファンタジックなエネルギーで動いているわけだが、俺の作ったパチモンはバッテリーの電力で動いている」
「つまり?」
「ようするに、戦闘機人ほどのエネルギー容量が無いわけだから使用できる時間がオリジナルに比べて短い。だから外に出てから使用しようと思っていたわけ。そうやってケチってたらフェイトさんに見つかって俺涙目状態になったわけよ」

 呆れたような納得したような顔で、なるほどと頷くカルタス。


「もう一つ質問なんだが、なんで地球に来たんだ?」
「そんなの決まってるだろ。翠屋でお茶するのと、原作地域の聖地巡礼ですよ」
「…………」

 カルタスが物凄く睨んできます。でもやりたいんだから仕方がない。原作介入しないトリッパーでも観光ぐらいはしたくなると思うんだよね。
 それに、地球出身の俺らが住みやすいってのもある。そこまで元の世界と違うってことは無いだろうしね。

「と言う訳で、もっと楽しもうぜ!」
「……今更だけど、俺達がここにいたらまずいんじゃないのか」
「へっ? 何で?」
「たしか、機動六課がここにくるイベントがあっただろ? その時に俺たちのことを店の人に覚えられていたら……」

 あれ?
 そんなイベントあったっけ?
 俺の記憶ではないんだが……。っていうか、今更だな。俺が翠屋に入ろうとした時点で言おうぜ。

「そんなイベントあったっけ?」
「確かサウンドステージであったと思うよ」

 OK。疑問は解けた。
 俺、サウンドステージ聞いてないや(笑)

「まっ、大丈夫だろ。機動六課が設立されるまで3年ぐらいあるんだから話でもしない限り忘れるだろ」

 まぁ、3年前に来ていた客を覚えているなんてことはないだろう。
⊂(^ω^)⊃ セフセフ!!
 ミ⊃⊂彡。

 「こんにちは。観光でこられたんですか?」

 美由希さんがどこからともなくやってきて話しかけてくれましたよ。
  (^ω^;)⊃ アウアウ
 ⊂ミ⊃)
  /  ヽ

 OK。無難な話をしていれば、興味を持たれずに忘れ去られるはずさ。まだまだどうとでもなるさ。

「はい、長い休暇を取ることができたので。それにしてもいいお店ですね」
「ありがとうございます。こっちの子は弟さんですか?」

 笑顔で聞いてくる美由希さん。いいから早く去ってください。

「え~と息子?」
「何で疑問系なんですか?」

 苦笑しながら聞いてくる。
 そんな表情も可愛いですね。

「違います!間違ってもこんな男の息子ではありません!!」

 カルタスはカルタスで断言してくる。しかも声を張り上げて。
 そのおかげで肩で息をしているし。お前どんだけ怒ってんだよ?


「え、えっと。僕お名前は?」

 この空気に耐えれなかったようで、カルタスに名前を聞いている。

「え、えっと俺はカルタスっていいます」
「よろしくね。カルタス君」

 急に名前を聞かれて、焦りながらも答えるカルタス。
 それに対して、柔和な声で答える美由希さん。営業スマイルとは違った笑顔だ。ちなみに俺に対しての笑顔は営業用だった。別に悲しくなんて無いんだからね!!
 睨んでいるように見えるけど、暖かい視線で見守っているんだからね!!

「すいません。おあいそお願いします」

 とりあえず、会計を済ませておきたかったのでおあいそを頼む。別にこれ以上二人が仲良く話すのを止めたかったわけじゃないんです。ただ会計を済ませたかっただけです。大事なことなので2回言いました。

「あ、はい。わかりました。じゃあまた来てねカルタス君」

 そう言いながらカルタスの頭を撫でる美由希さん。ちょっとカルタスが挙動不審だった(笑)
 中身はいい年した男性だから困るよね。死ねばいいのに。

 このままこの店にいると、俺の精神衛生上よくないのでさっさと店を出ることにする。 精神衛生上って言っても、俺達のことを覚えられそうって意味だからね!!
 決して妬んでいるわけじゃないんだからね!!










ちょっと未来のお話

side out

~新暦75年 管理外第97世界「地球」海鳴市~

 この日、ザフィーラを除いた機動六課の主要メンバーは、ロストギアの探索のために海鳴を訪れていた。
 そして、夜にはアリサ・バニングスのコテージで現地住民とのバーベキューを楽しんでいた。
 そしてそんな中、

「あれ? 君、昔に翠屋に来てくれたことがあったよね?」

 美由希がエリオに向かって声をかけた。
 そう、見覚えのあった少年に。

「えっ? 僕がここに来るのは始めてなんですけど……」
「他人の空にかな? 外人さんの二人連れで変わっていたから覚えていたんだけど」

 エリオによく似た少年ということで、興味を持ったフェイトが詳しく話を聞くことになった。
 話を聞くフェイトには思い当たる人物がいた。そう、ある犯罪者と助けることのできなかった少年が。

「あのもしかして、この男じゃないですか?」

 そういいながら、フェイトはジェイル・スカリエッティの画像データを取り出す。

「あ、この人だよ。うん。間違いない」
「うそ……」



 sideフェイト

 スカリエッティが何故この地球に来ていたのかはわからない。でもそんなことよりもあの子のことが気になる。
 話を聞く限りあの子に外傷があったり、憔悴している様子はないみだいだけど、良い待遇を受けているとは考え難い。本当に息子のように育てているんなら、必死に否定なんてしないだろうし……。
 それに、美由希さんとあの子が話をしている時はずっと睨み続け、話を続けようとしたら会計をしたらしい。おそらく余計なことは何も言わないようにする為に。

 それ以来見かけることは無いみたいだから、ここを張っていても意味が無い。やっぱり、あの時に助けることができなかったのが致命的だ。どうして、私はあの時助けることができなかったんだろう……。
 駄目だ。すぐに昔のことを悔やむのは私の悪い癖だ。

 これから助ければいい。そう、私の身に代えても。





あとがき
 フェイトさんサイドは書くのが難しい。かっこいいフェイトさんって書くのが難しいと思うんですよねぇ。
 でもかっこいいフェイトさんは俺のジャスティス!!



 研修で課題を出されたorz
 ますます時間がなくなるぅぅぅぅぅぅ。
 2日に一回の更新も諦めたほうが良さそうですね。



[7818] 第07話 「色々あり過ぎ、そんなにイベントはいらない」
Name: ジャミー◆90775155 ID:657ebfc4
Date: 2009/04/09 21:00
檻の中には檻の中の自由がある。
制限された中でも楽しみを見つける人間は人生を謳歌できる。
by田中雄一


第07話 「色々あり過ぎ、そんなにイベントはいらない」





 あれから、半年の月日が経ちましたよ。

 毎回毎回、月日が飛び過ぎだって?
 仕方がないだろ?
 面白い話なんてないんだから、あったことといえば、無印で登場してた温泉に行ったり、小学校に侵入して警察に追われたりしたぐらいですよ。
 別に聞きたいとは思わないでしょ?


 あと、あるとすれば組織に捕まっちゃった位かな♪
 どうやら、体内に発信機が仕掛けられていたらしく、1月と経たないうちに捕まりました。おかげでまた実験三昧な日々ですよ。

 えっ?
 カルタスはどうしたかって?
 別の研究所に連れて行かれて、エリオきゅん並みの実験が行われています。ようするにカルタスの管理権とられました。こっちは脱走をした身なので拒否権なしです。

 同郷のよしみで助けたいっていうのはあるんだけど、こっちも監視されている身。おまけに一回脱走したせいか警備がさらに厳重になっちゃいました。
 ここから脱走した後に、どこに捕まっているのかわからないカルタスを助けるというのは短期間じゃ無理。
 まぁ、脱走準備は始めていますから、気長に待ってもらうしかないんですよね~。



とりあえず俺の目標は
 カルタスの救助、平穏な暮らし、可愛い奥さん

俺的重要度:平穏な暮らし≧可愛い奥さん>>>超えられない壁>>>カルタスの救助


まぁ、仕方ないよね。
でも平穏な暮らしの準備より脱走の準備の方が先に整うと思うから、勘弁して欲しい。









 そう思っていた時期が俺にもありました。
 また脱走の準備が整う前にトラブル発生です。今度は異動命令です。俺が脱走しようとするとなんで毎回トラブルがおきるんだ?

 命令なんで、どうしようもないんですけどねぇ。さてさて次はどこに飛ばされることやら。


 あれ? スカさんの研究所?
 もう修正不可能なぐらい原作介入?














「よくきてくれた。歓迎するよ」

 目の前には、笑顔を浮かべたスカさんがいます。この人の笑顔は友好的に見えないから不思議ですよね~。
 ちなみに場所は応接間みたいな部屋。ただし殺風景。

「よろしくお願いします」
「はっはっはっ、こちらこそよろしく頼むよ」

 傍から見たら、同じ顔をした二人が丁寧に挨拶しあっているというシュールな映像なんじゃないんだろうか。
 しかも格好までまったく同じ。いや、これは俺がいたずら心で合わせたせいなんですけどね(笑)
 っていうか、スカさん本当に若く見えるよな。俺と見た目がまったく変わらん。

「ところで、なんで俺をここに呼んだんですか?」

 今回の異動命令、実はスカさんの要請でした。でも理由がわからない。
 自分で言うのもなんだけど、確かに俺は優秀ですよ。だけどスカさんほどじゃない。俺をわざわざ呼んでも大してメリットが無い。
 それより、停滞している他のプロジェクトに派遣した方がずっと効率が良い。

「あぁ、実は人手不足でね。人造魔導師、戦闘機人、レリック探索用機械の開発・改造と同時並行で行ってるんだよ」

 OK。解った。こいつ俺にレリック探索用機械の開発・改造をさせる気だ。ようするに、やってて楽しくない仕事を俺に丸投げするきだ。間違いない。

「そういうわけで、君にはレリック探索用機械の開発・改造を任せたい」

 やっぱり予想通りかよ!!
 別にいいけどさぁ。俺には選択肢ないし。
 まぁ、スカさんの下で働く方が自由度が高そうなぶんマシか。

「はい。わかりました」

 俺が返事をするのと同時にデータを渡すスカさん。返事がどうであれ渡すき満々だったな……。
 完成しているのはⅠ型だけで、Ⅱ、Ⅲは設計段階かぁ。
 まぁ、それなりにやっていればいいか。
 別にガジェットが弱くても俺は困らないし。




「あと、私の作品たちを紹介しておこう」

 作品?
 あぁ、戦闘機人のことか。

「うむ。悪いが、少し部屋にきてくれ。例の彼が来てくれたのでね。顔合わせをしておこうと思ったんだよ」

 スカさんが通信を開いて、ナンバーズらしき人たちに連絡をとっている。
 数の子部隊とのご対面ですか、今の時期だと稼動しているのはクアットロまでだっけ?

『pipipipipipipipi』

 ん?
 何の音だ?

「おっと済まない。クライアントから連絡が入ったようだ。悪いが、少し席をはずすよ」
 そう言いながらスカさんが出て行った。
 えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!顔合わせなのに、スカさん行っちゃうんですか!!気まずいんですけどぉぉぉぉぉっ。
 そして待つこと約1分。

「失礼します」

 ナンバーズが入ってきた。ん?
 ドゥーエはいないのか。あと、予想通り稼動しているのはセインまでか。

「ドクター、例の彼は?」

 ウーノが、俺に聞いてきた。ようするに彼女達は俺とスカさんを間違っています。
 クローンの俺が来るのは聞いてるんだから、産みの親との区別は頑張ってつけようぜ。

「あぁ、通信が急に入ってね。さっき話をしに出て行った所だよ。すぐ戻ると思うから待っていてくれ」
「はい」

 あれ?口が勝手に動いたよ。
 別に、ナンバーズで遊びたいわけじゃないよ。あくまで口が勝手に動いてしまっただけだよ。

「あと、彼には製造番号しかなくてね。名前がないんだよ。それで、自分を呼ぶときはご主人様もしくは旦那様と呼んで欲しいそうだよ」
「「「「「は?」」」」」

 見事にはもった。気持ちはよくわかる。でも俺は自重しない。

「入ってきた時に『初めましてご主人様』と言ってあげてくれ。一度呼んであげれば、彼も満足するだろう。」
「ドクターがそうおっしゃるのなら……」

 しぶしぶといった感じだが、ウーノが了承してくれた。他のメンバーもしぶしぶ了承。スカさんって偉大なんだね。
 あと、こんなことを言っても疑問に思われないスカさんって凄い。

 おっ! 足音が聞こえてきた♪

「おっと、戻ってきたみたいだね。それでは頼んだよ」
「はい……」

 本当にみなさんいやいやですね。あとで俺殺されるんじゃない?
 でも、ご主人様って言っている所を見たいじゃない!! そして映像に残して弄り続けたい!!

「すまなか…「「「「「初めましてご主人様」」」」」は?」

 スカさんが、戸惑っている顔しているこれもレアな映像なんではないんだろうか。

「何をやっているんだね??」
「え?もしかしてドクター?」

 ナンバーズが振り向いた先には、大量のサーチャーで映像を撮っている俺の姿が。

「「き、貴様ーーー!!!」」

 チンクとトーレ怒号が部屋に響いたとさ。





「という訳で、みなさんよろしく」
「「「「「…………」」」」」

 みんな愛想が悪いなぁ。もっとフレンドリーにいこうぜ!

「今ここにはいないが、もう一人ドゥーエという者がいるので覚えておいてくれ」
「はい。わかりました」

 フレンドリーなのはスカさんだけです。ちなみに、俺がクローンだということを皆に言ってなかったようです。驚かせようとしていたんですかね?

「それではみなさん、私のことはご主「「呼ばん!!」」ですよねー」



 こうして前途多難な職場ライフがスタートした。前途多難にしたのは俺だけど。テヘ♪







あとがき
寮生活のおかげで健康的な生活を送っているジャミーです。
健康的な生活のおかげで作品を書ける時間が有りません。ただし、他の人の作品を読む時間は作る。


だんだんと、作品の方向性がわからなくなってきました。
田中君はいったい何をしたいんでしょうか?
そしてオリキャラがこれ以上でるのかでないのか?

誰か教えてください。



[7818] 番外編 第01話 「休日っていいよね」
Name: ジャミー◆90775155 ID:657ebfc4
Date: 2014/12/01 17:46
厄介なことが起こる時は続けて起こるもんだ。
ただし、それは対策をとっていないからだ。
by田中雄一


番外編 第01話 「休日っていいよね」




~管理外第97世界「地球」海鳴市~


「日本人ならやっぱりお風呂だよね~」

 そう言いながらお風呂に浸かる俺。
 温泉なんて前世ぶり、この娯楽の一時を噛み締めています。

「いや、おまえもう日本人じゃないだろ」

 カルタスが俺の極楽に水を差してきます。

「こういうのは、気持ちの問題!」

 まったくカルタスは解ってないなぁ。
 ん? 今何をしているのかって?
 聖地巡礼ですよ。今は、フェイトとなのはがジュエルシードを巡って争った地である旅館に来ています。
 さっきまでは、ここが激戦のあった場所かぁ。って言いながら庭を散歩していました。


「それより、これからどうするんだ? アニメで登場した場所はこれで全部回りきっただろ?」
「何言ってんの? まだ私立聖祥大附属小学校に行ってないだろ?」

 この子はいったい何を言っているんでしょう?
 学校は見ておきたいに決まっているでしょうに。

「ばっ馬鹿か?! 部外者が入れるわけないだろ?!」
「ふっ。俺達にはシルバーケープ(パチモン)があるではないか!」

 これさえあれば大抵の場所には侵入できます。

「……あんまり気が進まないなぁ」

 カルタスが何か言ってるけど無視無視。
 さぁ、風呂を上がったら日本酒にお料理と楽しもう♪
 んで、明日は学校内を巡礼です。











「ほら、簡単に侵入できただろ?」

 現在、私立聖祥大附属小学校の校内、時刻は昼だけど休日のため人っ子一人いません。
 シルバーケープで敷地内に侵入、その後ピッキングで校内に侵入。そしてシルバーケープを仕舞って、探検と言うわけです。


「おぉここが、アリサさんとなのはさんが殴り合いの果てに友情が芽生えた場所か」
「たしかにそうだけど、もうちょっと言い方を考えろよ」

 またカルタスが何か言っているけど無視。何も聞こえません。
 んじゃ後は、お昼タイムに使ってた屋上を見て終わろうかね。教室? 確かに見たいけど当時と今だと教室の場所が変わってそうだし、いくつか適当に見るだけにしときます。
 キョロキョロと周りを見ながら歩いていたせいか、丁字路で人にぶつかってしまった。 足元で尻餅をついている人間をみると、ちょうど3、4年生くらいの男の子だった。

「って、ヤバッ!!」

 大声を出されると困るので、口を手で押さえ捕まえる。

「捕まえたのは良いけどどうしようこれ?」




side out

 今、少年の顔は恐怖によって歪んでいた。
 少年の友人が、目の前で男に口を塞がれ捕まったからだ。

 この少年達は、休日の学校に侵入するという子供らしい悪戯を行っていた。休日だと、理科室の標本が校内を徘徊するという噂を確認するためであった。
 この少年が捕まらなかったのは、彼の友人が恐がる彼に比べ数メートルも先行していたためだ。そのため、友人が捕まるのと同時に物陰に隠れることができ見つからずにすんだのだった。

 彼は友人を助けようと思ったが、どう考えても子供の自分では敵わないと思い、助けを呼びに学校の外へと駆け出した。





 この日、アリサ・バニングスと月村すずかは、買い物に出かけていた。服を見たり小物を見たりと楽しんでいた。
 だが、学校のそばを通りかかった時にそれは起きた。

「助けてください!」

 学校から顔を恐怖の色に染め上げ、涙を浮かべた少年が必死に声をかけてきた。

「どうしたの?」

 アリサとすずかは突然のことに驚いたが、すぐに気持ちを落ち着けて少年にやさしく尋ねた。

「友達が変な男に捕まったんです」

 少年が言うには、肝試しをしに学校に来ていたが、学校内にいた変な男が少年の友達を捕まえたのだという。

 一瞬、警備の人や先生ではないかと考えたが、それなら口を押さえて捕まえる必要なんてない。

「わかったわ。私が助けに行く。すずかは警察に連絡をお願い」
「アリサちゃん?!」

 アリサはそう言うと、学校の中へと駆け出して行った。
 すずかは急いで警察へ通報すると、すずかもまた学校内へ駆けて行った。





side 田中

「マヂでどうしようこの子?」

 俺はカルタスに問いかける。
 だって本当にどうしたらいいのかわからない。
 いや、開放はするよ。本当だよ。嘘じゃないよ。

 でもさぁ。このまま逃がしたら警察を呼ばれたりして面倒なことになりそう。誰にも見られていないことだし記憶を消しておくのが無難かなぁ。
 記憶を消すのは面倒なんだよねぇ。薬を使えば一瞬で消せるけど、消す記憶の範囲を指定できないから、短期記憶を無差別に消しちゃうんだよねぇ。

 ……良し。とりあえず説得をしてみよう。それで何とかなりそうだったら、それで終わらせよう。正直面倒臭い。

「口から手を離すけど大声を出すんじゃないぞ」

 軽く頷いたのを確認すると口元から手を離す。

「今日は休日なのに学校で何をしていたんだい?」

 優しく問いかける。だって泣かれたりしたら面倒だもん。
 んで、事情を聞いてみると友達と肝試しに来ていたみたいだ。昼なのに肝試しとか思ったけど無人の学校ってけっこう恐いから小学生なら有なのかもしれん。
 って!!!

「友達と来たのか?!」
「う、うん」

 ちょっとビクッとした少年が答える。
 やばい、これはマヂで説得しかない。いや、説得というよりも警察向けの理由だな。それをこの少年に話したら、速攻で逃げる。それしかない!

「お兄さんも君と似たような理由さ。最も僕は、知り合いが過ごしていた学校が見たくて。と言っても不法侵入だから吃驚して捕まえてしまったんだよ。悪かったね」
「ううん、別にいいよ」

 そう言って可愛らしい笑顔を向ける少年。
 …………持って帰っていい?
 それはそうと、カルタスがしかめっ面をしている。俺の喋り方が気持ち悪いと言いたげだな。外面だけで中身は可愛くない少年なんて滅べばいいのに!

 いやいや、話がそれたな。さっさとこの少年に色々と言い含めて帰るとしようか。シルバーケープがあるといっても、人前で使うのは不味いからな。

「まぁ、僕達はそろそろ帰るけど君も早く帰るんだよ。あと、あんまり僕達のことは話さないでもらえるかな。学校に勝手に入ったことが、警察の人にばれたら怒られるから。君も怒られるからあんまり言わない方がいいよ」

 とりあえずこれだけ言っておけばなんとかなるかな。
 警察も、何も盗まれていないことなどから事件性無しと判断して、たいした捜査はやらないだろう。

「んじゃあ、さよう@いあwぺbfw;亜hねf」

 理解不能な台詞を言いながら吹き飛ぶ俺。唖然とする少年。
 い、いったい何が?
 さっきまで俺がいた場所を見ると金髪の美女が立っていました。どうやらこいつに蹴り飛ばされたようです。なんでそんなことが解るかって?
 俺の服にくっきりと足跡が残っていれば誰でもわかります。
 っていうか

「なにをするだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 なんでこいつは初対面の人間を足蹴にしてくれてるんですか?!
 キチ○イですか?! 危険人物ですか?!

「おい! 何とか言ったrあべし!!」

 今度は殴られましたよ。顔面を。

「ぶ、ぶったね?! 親父にもぶたれたことが無いのに!!」

 痛いけどそこまでダメージが無いのでけっこう余裕な俺。
 でも痛いものは痛いんじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!

「てめぇぇ!! もう許さねぇぇ!! 女だからって容しゃって待て! 消火器は洒落にならないって」

 この女、備え付けの消火器を取り外して振りかぶってきやがった。マヂでキチ○イだ。本物だ。
 後ろに居る少年なんて、腰を抜かして目に涙を浮かべてるぞ。
 よし、こうなったら……。

「いけ! カルタス! 何とかしてくれ!」

 他人頼りです。だって俺よりもカルタスの方が戦闘能力が高いんですもん。
 …………ってあれ?
 振り返ると、カルタスが居なくなっていた。ついでに言うと少年も……。
 って、カルタスが少年を連れて逃げてる?!

「あの野郎!! 絶対に後で酷い目に遭わせてやる!!」

 とか言ってる間に消火器が振り下ろされて、

「あ、危ねぇぇぇ!! 後、数センチずれていたら当たってた!!」

 危機一髪で回避に成功!!
 ただし命中した床は若干陥没。当たったら死ねる。
 と、とりあえず反撃をしなければ、幸い女は床に消火器をぶつけた時に反動で消火器を手放しているので現在は無手だ。よし。武器の無い女なら勝てる。
 ふっふっふっ、今までの恨み晴らしてくれるわ!!

「もらったぁぁぁぁぁくぁzwせxdcrftgyふじmk、おl」

 掛け声と共に殴りかかったら、横から強烈な衝撃が。

「大丈夫? アリサちゃん?!」
「す、すずか!」

 あれ? どこかで聞いた事がある名前のような気がするんですが?
 どう考えても魔王の愉快な仲間達です。本当にありがとうございました。

「アリサちゃんに酷いことをするなら許さない!!」

 あれ? 酷い事されたのはむしろ俺じゃね?
 俺の意見は無視ですか。そうですか。
 くそ!! かまうものか!! 例え二人になったとしても所詮は女の細腕、奇襲を喰らわねばどうとでもなるわ!!

「きえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 奇声と共に殴りかかる俺。
 そして、

「ぐえっ!」

 見事に返り討ちになった。すずかの運動能力が半端ねぇぇっ!!
 そういえば、トラハだと月村家は吸血鬼だって話を聞いたことが……。
 だったら勝てる訳ねぇよ!

「お、おのれぇ。こうなれば「そこを動くな!!」はい?」

 振り向いたそこには警察官が。
 嘘!! もう来たの?!

「畜生!!」

 そう叫ぶと共に逃げ出した。



side out

「すずか大丈夫?」

 アリサは、先程まで不審者と戦っていたすずかに声をかけた。

「うん。大丈夫だよ」

 すずかは安心させるように微笑みながらアリサに答えた。
 これでこの事件は解決するだろうと思い。二人は微笑みあった。



 その後、警察から男に逃げられたと聞いた時に少し不安になったが、少年の事情聴取で男の危険性が低いことを知り、引きつった笑いと共に冷や汗を掻いたため、不安になることはなくなった。




ちょっと未来のお話

side out

~新暦75年 管理外第97世界「地球」海鳴市~

 この日、ザフィーラを除いた機動六課の主要メンバーは、ロストギアの探索のために海鳴を訪れていた。
 そして、夜にはアリサ・バニングスのコテージで現地住民とのバーベキューを楽しんでいた。
 そしてそんな中、アリサは、美由希とフェイトの話の輪に入っていった。


「あれ? この男って……」

 アリサは、自分の中にある嫌な記憶が蘇った。そう、誘拐犯ではなく単なる不法侵入者を撲殺しかけたという記憶が。

「アリサこの男を知っているの!!」
「えぇ、まぁ」

 アリサとしては、曖昧に答えるしかなかった。しかし、フェイトは詳細なことまで追求してきた。

「!! この男がその子供に酷い目に遭わせてやるって言ったの?!」
「う、うん。たしかそんなことを言っていたと思うわ」

 アリサとしては、何故フェイトがこの男にこだわるのかがわからなかった。

「フェイト、この男って何者なの?」
「……凶悪な犯罪者だよ」
「えっ?! そうなの?!」

 この日、アリサは気持ちよく眠れたという。



side フェイト

 やっぱり、あの子は酷い目に合わされてるんだ。
 …………絶対に助け出してあげる。

 それに、あの男は絶対に許さない!
 必ず私が捕まえてみせる!!






あとがき
要望があったから書いてみた。
ちなみに、今回が2回目の戦闘シーン。
えっ? 1回目はだって?
やったじゃん。フェイトさん対田中君。

ところで質問なんだが、話がシリアス&ダークになっても問題ないよね?



[7818] 第08話 「嫌な同僚と難題を突き付ける上司」
Name: ジャミー◆90775155 ID:657ebfc4
Date: 2009/04/13 22:55
自分がとった行動の代償は自分に返ってくる。
ただし、その代償をどうするのかが腕の見せ所だ。
by田中雄一


第08話 「嫌な同僚と難題を突き付ける上司」




 現在、ガジェットを製作中。
 とりあえず、探索の主力になるⅠ型の改造とⅡ型の開発に力を注いでいます。
 最初は嫌々やってたけど開発しているとだんだん楽しくなってきました。物作りっていいですよね。やっぱり日本人なら物作りだよ。

 ちなみにⅢ型については独断と偏見で後回しが決定。
 だってレリック探索だけだと別に絶対必要ってわけじゃないし、ⅠとⅡ型を強化&増産すれば最悪Ⅲが無くてもなんとかなりますもん。
 まぁ、高ランク魔導師用としては配備してはおきたいところですけど。って言っても、六課の体調陣だと手も足もでないんですよね~。対チートキャラ用のガジェットもいくつか作ろうかねぇ。


 まぁ何はともあれ、とりあえずⅠ型を漫画版からアニメ版にパワーアップさせとこうかな?
 いや、でもそれじゃ面白くないよな~。さらなる改造を施したほうが楽しいよね!
 もっと質量兵器を装備してやってシールド&AMFの強化だな。となると今よりも大出力な動力炉がいるな。

 Ⅱ型は原作以上に対空兵器として特化させとくか、制空権確保が第一目標だもんな。ビーム砲は一門に減らす代わりに強力な奴に換装と。もちろん空対空ミサイルははずせません!
 ……となると、こっちも大出力な動力炉が必要だな。

 いっそのことジュエルシードを積むか?
 そうするとなると、俺がジュエルシードのコピー品を作らんとならんのか、面倒だな……。それにジュエルシードを積むとなるとコストもかかるか。
 評議会は金出してくれんのかな?






「ところで何て呼べばいいんですか~?」
「ご主「却下」……」

 Ⅰ型の改造をやっていたら、なんかクアットロが話しかけてきた。暇なの?暇なら、メイド服を着てお茶を入れてくれ。

「嫌です」
「……何で俺の考えたことがわかったんだ?」
「わかりません。でも碌でもないことを考えているのは解りました~」

 なんて失礼な奴なんだろうか。顔を見ただけで考えを判断しやがって。確かに考えたけど。

「で?何て呼べばいいんですか?」
「田中雄一って名乗ってるから、雄ちゃんって呼んでいいよ」
「解りましたDr.田中」
「おまえ俺のことが嫌いだろ?」
「はい」
「…………」
「…………」

 よし。誰かこいつを殺せ。……で表現されているから、解らないと思うが、こいつはずっとニコニコと笑っていやがる。
 ちなみに俺はスカさんの得意技非友好的な笑いで対抗している。

「な、なにやってるんですか?」

 引き攣った笑みでセインが聞いてきた。
 まぁ、お互いに笑いながら見詰め合ってたら聞きたくもなるか。
 って、どこから沸いて出たセイン?
 こいつは本当に沸いて出るから油断できない。IS的な意味で。

「セインちゃん。この人の呼び方が決まったわよぉ。Dr.田中」
「止めろ。語感が微妙に良くて逆に嫌だ」

 ドクターと日本人の名前が合わさると、なんとなくシュールな気がするのは俺だけではないはず。
 それに、スカさんがドクターって呼ばれているから被るだろ。

「あっ、Dr.田中。ドクターが呼んでたよ。手が空いたら来てくれって」
「だから止めろというに」

 止めろと言っているのに何故呼ぶ。
 セインよ。お前も俺のこと嫌いなのか?
 まぁ、悲しくなるしそれについては置いておくとして、スカさんが俺に用事って何だろう?

 出会い頭に騙した上でご主人様と呼ばせていたのが悪かったか……。
 まさか、ここまで尾を引くことになるとは……。




「ドクター話って何です?」

 研究室で椅子に座っているスカさんに話しかける。

「君が前に話してたF計画の遺産についてだよ」

 あぁ、カルタスについてか。前に駄目元で、こっちにカルタスの管理権を移したいって頼んだんだよね。なんせ脱走計画がおじゃんになっちゃったわけだから。
 だったら他の研究所よりこっちに移送した方がマシだろうからなぁ。

「カルタスについてですか。ということは、こちらに移送する目処が立ったんですか?」
「いや、カルタスについては向こうで管理するとのことで、移送申請が却下されたよ。そのことについて話そうと思ってね」

 カルタス南無。俺にできることはもう何も無い。諦めて成仏してくれ。
 だってしかたがないじゃん、スカさんが頼んでも駄目だったものを俺にどうしろと?

「ただし、現在カルタスを管理している研究所の場所等ついての調査は進めているから、場所が判明しだい教えてあげよう。それにカルタスを強奪しようというのなら協力を惜しむ気持ちは私にはないよ?」
「はい?」

 いやいやいやいやいやいや。何を言ってるんですかスカさん!!
 なんで、協力関係にある研究所襲撃の教唆及び幇助をしようとしてるんですか?
 俺としては駄目なら駄目と言ってもらって、助ける方法がない。すまないカルタスって流れでも良かったんですよ?

「そんなことをすれば、我々が最高評議会に狙われるのでは?」
「犯人が私達だとばれなければどうということはないよ」

 そういえばこの人、最終的に上司の脳味噌をぬっ殺したんでした。上の連中のことは大嫌いな上に、ばれなければなにやっても良いって考えだ。
 でもさ、俺に協力するってことは……

「え~と、対価に何を要求しようと?」
「はっはっはっ、何を言っているんだい? 君と私はいわば兄弟、見返りが欲しくて協力しようというのではないよ」

 流石はスカさん。
 その慈愛溢れる行動に痺れる憧れるぅぅぅぅぅぅ!!
 でも、無理しなくていいんだよ? 評議会に目を付けられたら後が恐いんですけど?

「そう兄弟なのだよ。だからカルタスを奪還した後、兄である私の計画に参加してくれたまえ」

 前言撤回。
 スカさんはとことん自己中心的です。慈愛なんてありません。

「計画とは何なんですか?」

 俺は原作で計画を知っているけど、知らない設定だから聞いておく。
 設定に合わせないといけないから面倒臭い('A`)

「それについては、君が計画に参加すると決めた時に話すよ」

 あくまで、参加するまでは教えるつもりはないということか、まぁそこまで信用しているわけじゃないですよねぇ。

「少し考えさせてもらってもいいですか?」
「勿論かまわないよ」

 これはいきなり答えを出すわけにはいかない用件です。じっくり考えさせてもらいます。
 カルタスのことを考えたら即決するんだけど、今度の予定と調整する必要があるからなぁ。すまんなカルタス。










あとがき ※若干ネタバレ

やばい、何がやばいって今書いてい分がだよ、ようするにこれよりも後の話。
どうしよう、なんか田中君が覚醒した。悪い意味で。



よし。現実逃避のため資格取得のため、書くのをストップして勉強をしよう。



[7818] 第09話 「人生設計」
Name: ジャミー◆90775155 ID:657ebfc4
Date: 2009/04/24 23:22
人は自分のためだけに動く。
例え人助けであっても、人助けをする自分になりたいがために助けるのである。
by田中雄一


第09話 「人生設計」




 さぁ、話はとんでもない方向に進みだしましたよ。
 とりあえず、私室に戻ってじっくり考えているわけだが、正直どうしたらベストなのかがわからない。
 一応、俺にもスカさんとは違った計画というものがある。
 俺は別にスカさんみたいに、生命操作技術の完成や研究環境の構築といった目的はない。自由に暮らせればいいやっていうだけ。
 それだけで考えればスカさんの計画に乗るメリットはない。カルタスには悪いけど。



 とりあえず、スカさんの計画について考察しよう。

 今の所スカさんの計画について、詳細は語られてない。
 でも原作どおりなら、ゆりかごでミッドチルダを人質にした後に、法律なんて無視してやりたい放題。めでたしめでたし。という計画のはず。


 ……………………。
 無謀じゃね?
 ミッドチルダを人質にするのは可能だけど、その後はどうすんだろ?
 ミッドチルダを人質にするにしても、恒久的に衛星軌道上へ居座るのは厳しいだろ。管理局もなんらかの方法で軌道上のゆりかごを攻撃するだろうし。



 次に俺の希望。
 スカさんが評議会をぬっ殺す→そのどさくさに紛れてデータ消去→スカさん逮捕される→田中? 誰それ? 全部スカさんが犯人→俺、指名手配されない→HAPPY END
っての流れが最良。

 って言っても、俺のことを知る人物は何人もいるわけだから、指名手配は避けれないでしょうね~。
 でも、前回脱走した時にも言ったとおり、指名手配されても脳味噌の持ってる俺の魔力パターンさえ消去しちまえば、見つかることはほぼ100%無くなるから無問題。


 うむ。やっぱりこの方法が一番よさそうだな。
 いやいや、焦らずにもう一度今までに考えた案を整理しよう。焦って答えを出しても仕方がない。限られているとはいえ、まだ多少の時間はある。
 とりあえず今までに考えた方法を列挙しよう。


目的:管理局に捕まらない。
方法:1.魔力パターンを消去して、他人になりすます。
   2.死体を偽装して他人になりすます。
   3.管理局を滅ぼすor管理局に対抗できる組織を作る。

 方法としては、何回考えても大まかにしたらこんなもんだよなぁ。
 と言っても、どう考えても3は達成するのが厳しいよね~。どっちかっていうとスカさんの計画と似ているもんなぁ。
 とは言っても、2も微妙。クローン技術で死体を作っても魔力パターンを調べられたら本物の死体じゃないってばれる可能性があるからなぁ。

 ってことはやっぱりさっきと同じで1しかないか。より捕まる確率を減らすために2を併用するっていうのはありかもしれんが。
 となると、一番の問題はデータの消去方法かぁ。

 ………………。
 やっぱり、管理局に潜入しているドゥーエに消してもらうのが一番確実だよなぁ……。 最高評議会をぶっ殺せる秘書っていう立場だから、データを消すことは可能だろう。仮にデータがパスワードでロックされていても物理的な意味での消去が可能だろうから問題なし。
 確実に消すには、この方法が一番効果的だな。

 そうなると、スカさんとの協調路線を表向きは維持しないと駄目か。協力関係にもない俺の頼みなんて聞いてくれそうにもないし。
 ということなら、カルタスの救助は実行だな。俺が借りを作るということで関係が親密になるわけだし、同じ秘密を共有するというのは、心理学的にも仲間意識を高めるからな。

 あとは俺の計画を目眩ましするために、方法3をスカさんに進言しとくか。3を俺が真剣に取り組んでおけば、ドゥーエがデータを消去するのと同時に消えうせるなんて夢にも思わないだろうからな。
 まぁ、受け入れてくれなくても積極的に協力すればいいだけの話だし問題なし。と言ってもスカさんの計画に上乗せする感じの計画だから受け入れてくれる可能性は高いだろう。

 それに、奇跡的に3が成功しそうなら、敗北しそうになるまで付き合うってのもありだな。
 何にも無い状態での逃亡よりも力のある組織を運営しつつ自由に暮らすほうが旨味があるしねぇ。
 と言っても、捕まったら元も無いから失敗の予兆が少しでもあれば逃げ出すけどな。













「それでは、カルタスの件はよろしくお願いします」

 現在、スカさんの部屋にて会談中。
 はぁ、これで当分はスカさんと運命共同体かぁ。凄く死亡フラグ臭い気がするのは気のせい?

「あぁわかっているよ。任せておいてくれ。では、今度は私の計画について話そうか」

 はい?
 いやいや、いくらなんでも気を許すのが早すぎるんじゃないですか?
 これなら、前回話すのと安全面でほとんど変わらない気がするんですが。

「どうかしたのかね?」
「いえ……」
「大方、信用するのが早すぎる。といった所かな?」

 なっ!
 クアットロといいスカさんといい、ここはエスパーの巣窟か!!

「なに、最初から君が裏切ることについて心配していなかっただけだよ」
「それは最初から信用していると?」

 うほ。嬉しいこといってくれるじゃないの。
 裏切る気満々だけど。

「いや、君が裏切ったとしても報告する前に消すことができるというだけのことだよ。計画の話をしなかったのは、計画に参加しない者に話すのが単に面倒なだけだよ」
「…………」

 流石はスカさん。
 俺よりもずっと良い性格してるよ。

「それでは、説明を始めるよ?」
「はい……」


 いいさ、やってやるさ。
 俺は俺にとっての『最高のHAPPY END』を目指すだけさ。
 最後に笑うのは俺だ。







 あれ?
 今ので死亡フラグ臭くなった?








あとがき
Arcadia復活おめでたう!
サーバーが死んでいる間、自分も死んでいました。
だって気になる作品の続きが見れないですもん。

えっ?
自分の作品の更新?

そんなものはしらん。



実は、もう3,4話までは書けているんだけど話が迷走しまくっているので、大幅改正とストーリーの見直し中。ただし、いまだに結末が決まらない(笑)



[7818] 第10話 「何もしなくても物語りは進む」
Name: ジャミー◆90775155 ID:b4c2a3d3
Date: 2009/04/28 22:50
明日になったらする、という場合の明日は永遠に来ない明日である。
一度決まりを破ると際限なく破り続ける。
by田中雄一


第10話 「何もしなくても物語りは進む」




 さてさて俺の計画についての結果報告です。
 とりえず、第一段階である。目眩まし用の案である3はスカさんに受け入れられました。
 というよりも、それに近い案がスカさんにもあったみたいですね。問題である拠点の確保についてはスカさんの方で用意すると言ってくる辺り、もう準備のほうもしてあったのかもしれません。
 まぁ、俺としては俺が本気で取り組んでいるということをアピールすることが目的ですから、多少踊らされていたとしても何の問題もありませんけどね~。















 マジでスカさん準備良すぎ('A`)
 俺が3について提案してからたった1週間で拠点を用意してきました。
 スカさんが、違法研究用の研究所兼ガジェットドローン生産用拠点として無人世界の一つを最高評議会から分捕ってきやがった。
 表向きは、資源開発会社による開拓事業です。ただしこの世界を巡回する管理局の部隊は、最高評議会の息が掛かっているので表向きの理由もいらないくらいの至れり尽くせりな環境です。

 欠点としては、この世界が生物が生まれなかった世界ってことですかね。
 地球とまったく同じなんですが、微生物一匹存在しません。ということで酸素なし荒れ放題の土地という素敵仕様です。
 …………。
 まぁ、なんとかなるか。




 さて、無人世界の管理はスカさんが全面的に任せてくれたので好き勝手やれます。
 現在、無人機械によって昼も夜も関係なく工事が多面的に行われています。最高評議会が用意してくれた予算の限り同時進行。途中からは最高評議会の手から完全に離れた行動をしなければならないので、自立するために必要な施設を最優先で建造中。
 とりあえず、エネルギー生産施設、資源発掘施設、マザーマシーン生産工場。これだけあれば最低限なんとかまわすことができる。
 まぁ、大量の機械と資材があるからなんとかなりそうですけどね。



 そう思っていた時期が俺にもありました。
 死ぬマヂで死ぬ。人手が足りなさ過ぎる。工場の建設なんかは最低限のことさえしてやれば無人機械が勝手にやってくれるが、その最低限で死ねる。
 設計図は元からあるものを流用しているけど、それでも多少は変更しないといけないし、最低限の監督は必要。無理やりクアットロとウーノを手伝わせているけど。全然人手が足りない。おまけにウーノはすぐにスカさんが連れて行っちゃう。

 あん?
 トーレ、チンク、セインはどうしたんだって?
 監督業ならある程度まかせれるけど、たいした戦力にならん。おまけにクアットロはすぐにバテるか逃走しやがる。
 楽に作業をするには最低でもウーノが10人は欲しい。
 いっそのことクローニングで作るか?


 っていっても、単なる駒としてクローンを量産するのには抵抗があるんだよな~。辛うじてある俺の良心の一つ。俺の中では、クローニングしてもスカさんがナンバーズにしている程度の扱いはするっていうマイルールがある。
 っていっても、俺自身のことが最優先だから決まりを破ること自体には躊躇いは無いんだけど、これはあくまで目眩まし用の作戦。そんなことで決まりを破るのは、俺自身の精神衛生上良くない。
 工期を多少ずらしてもかまわんか……。俺の頑張りをアピールすることが目的だしな。
 それに、下手にクローンを作ってまた憑依者がでてくるとややこしいしな。





side out

「ドクター、あの男を好きにさせておいていいんですか?」

 多少苛立った様子のクアットロがスカリエッティに尋ねる。

「ん? 何か問題でもあるのかね。彼も一応、我々の協力者だよ?」
「クア姉は、扱き使われるのが嫌なんだよね~」

 何も問題は無いだろと答えるスカリエッティに、茶々を入れるセイン。

「違うわよ! まぁ、確かに嫌なことは確かだけど……。ドクター、そうは言ってもあの男は何を考えているのかわかりませんわ。私達に開発を手伝わせていますけど、重要部分に関しては、どんなに忙しくても私達に触らせません」

 クアットロはセインに怒鳴った後、真面目な顔になりスカリエッティに話しかける。
 クアットロはあの男が裏切るのではないのかと考えていた。田中が開発したガジェットに関してもプログラム部分はブラックボックスになっており、いかなる命令を受け付けるのかがまったくといっていいほどわからない。
 ナンバーズ側にマニュアルと指令入力用のコードは渡されているが、命令の優先度は田中が上位になっている事は間違いないとクアットロは考えていた。

「それに関しては問題ないよ。何を考えているかはだいたい創造が付く。彼は私に、最高評議会が持っている彼自身のデータを消去して欲しいと頼んできたんだからね」
「それがどうかしたんですか?」

 よく解らないといった表情で尋ねるクアットロ。
 セインは特に変わらない。おそらく、興味が無いのだろう。セインとしては、田中が裏切るとは思っていない。彼女の認識では、悪戯をするけど面白い人間となっている。そんな人間が裏切るなんて考えもしない。

「おそらく彼は私がデータを消去するのを確認するのと同時に逃げる気だよ。最悪の場合、証拠隠滅のため私達を処分しようと考えているのかもしれないね」
「「なっ?!」」

 クアットロとセインは驚きの表情を顔に浮かべた。
 それに対し、二人の反応をみたスカリエッティは愉快そうな顔で笑っていた。

「何故、それがわかっているのにあの男を処分しないんですか?!」

 クアットロは、若干の怒気を含めた声でスカリエッティに尋ねた。何を考えているのかわかっていても意味が無い。問題は大有りだ。といった所だろう。
 セインも顔の色を悪くし、しきりに頷いている。セインとしては寝耳に水といった感じだ。

「と言っても、この考えは私の想像の領域を超えるものじゃないしね。そんな不確定な材料で彼を罰したら悪いだろ? それに私が何もしなくても、彼は私達に協力せねばならない状況になるよ」

 スカリエッティは楽しそうに二人に語る。それに対して二人は意味がわからないといった顔になる。





side 田中

 クアットロが過労で倒れたりしたけど、何の問題もなく工事は進んでいく。でも戦闘機人が倒れるってどんだけー。
 多少工期は遅れてるけど特に問題なし。たった三ヶ月で一部の施設では稼動に扱ぎ付けることに成功っていうのは逆に賞賛物ですよ。
 俺の設計した新型ガジェットも順調に頭数が揃いつつあるしね。ただし、ミッドチルダにある生産施設のみの生産だけど。
 まぁ、もうすぐこの世界の生産設備も稼動できそうだから、一気に戦力は増えそう。こりゃマヂで3を実行してもいいような気がしてきた(笑)
 っていっても、時空航空艦隊とぶつかるとなると更なる戦力が必要だからまだまだ不可能だな。


 すべて順調に言っていると思っていたら、別の所で問題発生。しかも大問題が……。








 今日は、スカさんに呼ばれてミッドチルダに帰ってきた。他に、こちらにある生産拠点の調整なんかもしなければならないんですけどねぇ
 さっさと話を聞いて、拠点の方に行くとしますか。


「すいません。もう一度言ってもらってもかまいませんか?」

 現在、スカさんとお話中。ただし、スカさんが問題発言。
 もう一度、スカさんに言い直してもらう。うん。きっと聴き間違えだ。そんなことがあるわけが無い。

「じゃあもう一度言うが、君のデータが管理局に回されたみたいだよ?」

 頭が真っ白になって何も考えることができない。頭では理解できているけど心が受け入れられないっていう状況なんだろう。
 スカさんに部屋で少し休みますと言い。自室に戻った。

「やられた……」

 最高評議会は、完全に俺を縛る気のようだ。よく考えればこの可能性に行き着いたはずなのに、無視してしまったツケが回ってきたと言うことなんだろう。
 そもそもスカさんが指名手配されていること自体がまずおかしいのだ。最高評議会の保護下にあるスカさんが何故手配される?
 簡単だ。管理局に指名手配させ最高評議会の保護が無ければ生きていけない状態にするためだ。それが俺にもされたということだろう。

 今までは、あくまで予備という側面が色濃かったことやスカさんのクローンがいるということを隠したかったために公表は控えていたんだろうが、俺がスカさんと行動を共にし始めたことで、反抗される可能性を考慮し予防策をとったということか……。
 まぁ、すべて後付けの説明だからなんとでも言えるか……。


 とは言え、これで俺が目的を達成するためには

 『3.管理局を滅ぼすor管理局に対抗できる組織を作る』

 を実行するしか方法がなくなったわけだな……。
 まぁ、逃亡生活を続けるっていう道は残されて入るが、あの脳味噌の飼い犬共に追い回される生活なんてごめんだ。



 よろしい。ならば戦争だ。
 脳味噌どもには、俺の退路を絶った事を後悔してもらおう。
 奴らがもっとも大事にしている管理局諸共消し去ってくれようぞ!!






side out

昔、クロノが言った言葉にこんな物がある。

世界は、いつだって……こんなはずじゃないことばっかりだよ!!
ずっと昔から、いつだって、誰だってそうなんだ!!
こんなはずじゃない現実から逃げるか、それとも立ち向かうかは、個人の自由だ!
だけど、自分の勝手な悲しみに、無関係な人間を巻き込んでいい権利は、どこの誰にもありはしない!!


 ただし、田中はそうは思わない。
 いや、前半部分に関しては同意見だ。でも権利が無い云々については違う。別に権利があると思っているわけじゃない。
 ただ、権利なんて物は人間が作り出した概念でしかなく、そんな物は存在しないと考えているだけだ。
 他人を巻き込むのに権利なんて物は必要ない。意思と力さえあればいくらでも巻き込める。ただ巻き込む者に意思も力もなければ反撃を喰らい敗北するだけのことだ。

 彼が前世で常識人だったのは社会に生きていたからだ。簡単に言うなら、他人を不幸にした際に被る反撃に怯えていただけだ。社会的地位を失うことや家族に迷惑をかけるのが嫌だったそれだけである。たしかに、彼にも良心はある。ただし、それよりも他人に軽蔑されたりするのが嫌だということのほうが大きい。

 ただし、今は何も失う物はない。すでに社会的地位は犯罪者。迷惑をかけたくないと思う人間もいない。
 現在の彼は、精神的に自由だ。彼を縛るのは彼の良心だけ。ただし彼の良心は、自分を不幸にする者とその眷属に対して容赦するつもりはない。

 だから彼は、自分の勝手な悲しみに、無関係な人間を巻き込むことを決めた。



あとがき
なんか、田中君の人生の方向性がわからなくなりました。
後は野となれ山となれですね。とりあえず進めておけば、納得できない終わり方であったとしても終りを迎えられるはずです。



[7818] 第11話 「下準備と思惑」
Name: ジャミー◆90775155 ID:657ebfc4
Date: 2009/05/03 15:35
目的が同じなら、利害関係だけの同盟も強力な物になる。
時には、正義の下に集まった者たちよりも。
by田中雄一


第11話 「下準備と思惑」




 現在大量のクローンを製造中。
 え? 良心はどしたって?
 前にも言ったでしょうが!


 俺 自 身 の こ と が 最 優 先 !!


 現在はまだ管理局上層部というか、脳味噌どもの息の掛かった人間にしか俺の情報が流されていないとは言え、管理局全体に流れるのは時間の問題であり、良心やモラルなんて守っている暇なんてありません。

 とにかく事務要員等で大量の人間が必要なんですよ。高性能で裏切る心配の無い人間がね。
 無人機械どもは便利だが、融通がきかないのが欠点なんですよ。無人機械を指揮する人間が大量に必要なんです。とりあえず、千人単位で欲しい。
 憑依者だったらどうするんだって?
 その時はその時です!

 とはいえ千人も憑依者がいたら困るので、とりあえず一人目を製造中。素体はウーノのオリジナル。
 でも、まさか何の躊躇いも無く遺伝子情報をスカさんが提供してくれるとは思わなかった。俺を信頼するようになったのか?
 ……………………。
 いや、それはないな。あのスカさんに限って。
 まぁ、何はともあれこれで憑依者ではなければ、俺の計画も動き始めるわけです。




 さぁ、ついにクローンを起動させますよ。
 ちなみに、見かけは3、4歳です。別にロリコンなわけではありません。これ以上成長させるのは、コスト面でも時間面でもきついんです。だからロリコンではないんです。
 大事なことなので2回言いました。

 クローンは目を覚ますと周りを見渡したあと俺を見つめる。
 そして……

「マスターおはようございます」

 なっ!! 憑依者じゃないだと!!
 いや、成功して嬉しいんですよ。でも、なんだか釈然としない。憑依する条件ってなんなの? ランダム?
 まぁ、憑依も無かったし、植えつけた知識や刷り込みもうまくいってるようだし気にするのは止めとくか。






 という訳で製造は拡大して実行中。
 今度は本当に千人単位で製造。もちろん名前なんて付けていない。
 俺には1000人分もの名前を付けれるほどの語録はない。とりあえず製造番号のみで管理。名乗りたい名前があるなら、名乗ってもらってもかまわないけど、管理しやすいので製造番号は必須ですよ。


 そんなこんなでこの惑星は完全に俺の制御下になりました。
 それにクローン製造も問題なさそうなんで、戦闘用のクローンも製造開始ですな。
 今までの問題がクローンの製造によって一気になくなったおかげで、その他の施設も建設が可能です。この分だと時空航空艦の造船所が完成するのも時間の問題だな。
 計画を実行するまでの時間はあまり無いから、多くてもアースラよりも旧式で小型な艦が2、3隻程度だろうが、有るか無いかでは天と地ほど違う。なんたって戦術の数が増えるからねぇ。
 時間さえあれば最新式の工場や艦の設計図が手に入るだろうし、数も揃えられてんだが、文句は言えないだろう。


 まぁ何はともあれ、このようにして俺の帝国がクローン達によって建国されるわけですね。

 ん? 
 えぇ建国ですよ。
 そうそれこそが俺の最終目標にして生命線。
 誰にも犯される事の無い主権国家の建国。





side out

「本当にこのまま放っておいてもいいんですか?」

 クアットロは心配そうな声でスカリエッティに尋ねた。
 その顔は心の底から心配しているようだ。
 それもそうだろう。たしかに、田中はスカリエッティと共に管理局と対立する道を進んでいる。
 だが田中は、ウーノのクローンを作り施設の拡充を急速に進めている。クローン達は田中の言葉だけを聞くように洗脳されており、あの星の施設及び全戦力は事実上は田中の物だ。
 スカリエッティにはナンバーズがいるが数が違いすぎる。質ではナンバーズが圧倒しているが、それを上回るだけの量がある。ただの質ではこの戦力差を覆せることはできない。

 そして口には出してはいないが、何よりクアットロが恐れているのは、田中の変わりようだった。
 田中は今までも警戒をするのに十分な程の行動を取っていたが、飄々とナンバーズをからかい、余裕のある顔だった。
 だが現在は違う。飄々とした態度は変わらないが目が違う。狂人と言っても問題ない目をし、余裕無く作業する様は恐怖という言葉をクアットロに与えていた。
 もし裏切られたとしたら、何をしてくるのかがまったくわからない。以前スカリエッティが言っていた、自分達を処分するという話にも現実味が帯びてくる。

「あぁ、まったく問題が無いよ。私達には切り札がある」

 切り札。そう、管理局に対抗するために用意した世界最強いや、全次元最強の質量兵器『ゆりかご』。
 完全に起動すれば管理局の時空航空艦隊にも勝てる代物だ。

「そうは言っても、完全に起動していなければ奴の戦力でも落とすことが可能ですよ?

 クアットロは、焦った顔でスカリエッティに問うた。田中が開発したガジェットには拠点攻略用の大型兵器を搭載した物があり、その数も100や200では済まないはずだ。それに、近いうちに田中の持つ戦力には次元航空艦も含まれることになっている。月からの魔力を受け取っていないゆりかごなら十分に落とすことが可能だ。
 それに対してスカリエッティはニヤッと軽く笑うとクアットロに言った。

「君は忘れているんじゃないのかい。彼と私は味方で敵は管理局なのだよ?」

 クアットロは訳が分からないと言った表情をした。そんな建前のことを聞いているのではなく、奴が裏切った時のことを話しているのだとその顔は訴えていた。

「管理局は彼の敵だ。でも彼の戦力で管理局に勝つことはできるのかい?」

 クアットロは、ハッっとした顔になった。
 そう、たしかに田中の戦力は強大になったが管理局と正面から戦うだけの戦力は無い。管理局を屠るには完全起動したゆりかごが必要だ。

「そういうことだよ。彼は完全起動したゆりかごを必要としている。彼は『私達の』ゆりかごを起動させることに全力を尽くすよ」

 田中はゆりかごを完全起動させることが必要である。そう、後々に自分自身をを縛ることになるゆりかごを。

「私達がゆりかごを確保している限りどうとでもなるという事さ」

 そう言い終えるとスカリエッティは研究に戻っていった。


あとがき
こんな時間帯に投稿するのは初めてだw
GWですげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!

それにしても、投稿期間がだいぶ開いちゃいましたよ。
話の展開が難しい。この後どうなっていくのかがわからない。そして俺に戦闘描写が書けるのか?!
今まで2回戦闘描写が登場しましたが、両方ギャグですからね~。



[7818] 第12話 「実戦テスト」
Name: ジャミー◆90775155 ID:657ebfc4
Date: 2009/05/09 04:03
建前と本音は誰にでもある。そうとは思わず、建前だけを信じる奴は三流だ。
本音があることを知っている奴は二流、相手の本音を高精度で推測できる奴だけが一流。
by田中雄一


第12話 「実戦テスト」




 さぁ、そろそろ原作が始まる時期になってきました。っていうか、一部だともうはじまってるのか。
 えっ? カルタスはどうなったんだって?

 簡単に言うと見つかりません。
 最初はわざと情報をスカさんが隠しているのかと思ったんですが、それは無かったようです。
 最高評議会が俺にとってカルタスは弱みになると思ったらしく、徹底的に隠蔽しているようですね。

 まぁ、よく考えればスカさんにはゆりかごがあるし、無理に俺を抑えようとする必要なんてないしね~。
 それにそのゆりかごを俺が奪おうにも奪えないって現実があるしねぇ。
 戦力的には可能なんですけど、戦闘機人と戦闘になるとほぼ確実に管理局に探知されちゃう規模になっちゃいますからね。
 というわけで、スカさんとは仲良くしていた方が特なんで、協力関係の強化をしたいところです。


 なんて考えていたらスカさんから要請が来ました。レリックを取ってきて欲しいそうです。
 自分で取ってこいよ。面倒臭い('A`)
 目的は、Ⅰ型とⅡ型の実戦データ取りも兼ねている模様。俺じゃなくてもいいじゃん。むしろスカさんがデータを取ってそれを俺に回してくれ。ガジェットの調整をするのは俺なんだから。
 いや、スカさんとしては、実戦データを基に運営するつもりなのか……。

 とゴチャゴチャ言っていても、仕方がないので取ってきますよ。ナンバーズは貸し出してくれるみたいだし、カルタスを助ける時の前払いだと思えばいいか。
 え~と場所は、管理外世界に拠点のある犯罪組織かよ。ようするに取るじゃなくて盗るかよ。





「なんで私まで参加なのよ~」

 クアットロが物凄く不満顔で俺に文句を言ってくる。
 俺に文句を言われても困る。出動メンバーを決めたのはスカさんなんだから、文句はあるならそっちに言ってくれ。
 ちなみにメンバーは、スカさん側からクアットロ、セイン、チンク。俺側から、俺とウーノクローンを5人。ちなみに、クローンはNO1~50までを俺に秘書兼雑用係代わりにしている。まぁその内の5人が今回同行するわけです。NO50以降の残りはすべて惑星開発に回している。
 あと、毎回毎回ウーノのクローンって言うのは面倒臭いから以降はUNシリーズ略してUNズな。

 それにしても、このメンバーだと戦闘能力あるのチンクだけじゃね?
 どうやって回収すればいいの?
 ガジェットで攻撃すればすぐに攻略できるけど、間違ってレリックに誘爆したら目も当てられない結果になるよな……。

 ルーちゃんがいればもっと簡単にいけるんだろうけど、ここにはいないんだよなぁ。っていうか、スカさんの所に来てから一度も見ていない。スカさんにルーちゃん何処?って聞いてもいいんだが、ルーちゃんの事を知らないはずの俺が聞いたら怪しまれるよなぁ。 ただでさえ良好とは言えない関係なのに、これ以上の悪化は避けたいところだ。

 くそ!
 スカさんのアジトには、俺への癒しは無いというのか?!(チンクタン除く)
 でもルーちゃんがいても、ガリュー達と仲良くなれる自信が無いんだよな。俺って前世から虫が駄目なんだよね~。なんていうか、生理的に受け付けないって奴?
 う~む。ルーちゃんとのフラグは諦めねばならないかぁ。

「Dr.田中、聞いています?」
「ごめん。聞いてなかった」

 クアットロが黙りこくってた俺に訝しげに聞いてきた。
 うん。ちょっと現実逃避してた。だって考えたくなかったんだもん。

「よし、クアットロ。なんか良い作戦考えろ」
「なんで私が?」
「おまえ、そういうの考えるの好きだろ?」

 たしか原作だと策謀が大好きだった気がしたんだが。っていうか、クアットロの顔が怒りと呆れが混じった顔になってる。
 そして、だんだんと怒りの割合が大きくなり目つきが鋭くなっていき……。ちょwww恐いwww。目つき恐いwww射抜かれそうなほど鋭いwwww



 結局、人里が回りにない所に犯罪組織の建物があるので、ガジェットが陽動として総攻撃。その隙にセインとチンクが内部に侵入して奪うっていうシンプルなものになりました。
 ちなみに残ったメンバーはデータ収集とガジェットの指示。








 現在、目の前では阿鼻叫喚な地獄絵図が展開されています。ようするにⅠ型が物量に物を言わせて進軍中。しかも熱光線なんて物に非殺傷設定なんてものができるわけもなく、犯罪者の方々は見るも無残な姿に変えられていきます。
 中には魔導師が混ざっているようで、シールドを張って防ごうとしています。でも、AMFの環境下では紙同然の防御力しか発揮できないようで、ガンガン突き抜けていきます。
 時たまレーザーを防ぐ高ランク魔導師もいるようだが、彼らの攻撃はAMFの前では無力なものでダメージを与えられない。そして最後には消耗しきってシールドが破られると。

「圧倒的ではないか我が軍は」
「そうですね~。でも敵はショボイですからね~」

 普通に返事を返すクアットロ。ネタをネタで返してくれる奴が居ないと寂しくて仕方がない。
 まぁ、冗談はこれぐらいにしておくか。それにしてもあんまり良いデータは取れなかったな。何の対抗策も打てないまま全滅したからねぇ。
 Ⅱ型の方はもっと散々な結果だったしねぇ。空戦魔導師は多少居たようだけど、Ⅱ型に面白いように撃墜されるだけで単なる的と対して変わらなかったしねぇ。
 これならアニメや漫画を元に考えたAMF対抗策を組み込んでいるシミュレーションの方がまだましだ。

「あ、チンクちゃん、セインちゃんおかえりなさ~い」

 お、チンク達が戻ってきたようでクアットロが声をかけている。
 チンクの右手にはレリックが握られている。よし、これでミッションコンプリートだな。

「んじゃあ、仕上げに証拠隠滅やっとくか」

 質量兵器を使われたみたいで、Ⅰ型が2機落とされたみたいだから掃除しとかないとなぁ。破壊された時に自爆システムで重要な回路は破壊されるようになっているけど一応ね。
 それに、『アレ』のテストもしたいしねぇ。

「ん? いったい何をするつもりだ?」

 チンクタンが訝しげに聞いてくる。
 それほど大したもんじゃないんだけどなぁ。

「見てればわかるよ」

 そう言いながらコンソールを操作する。
 すると、大型なミサイルを無理やり装備したⅡ型が現れ、ミサイル発射。
 猛スピードで建物にミサイルが突っ込んでいき着弾。そして着弾した瞬間……。

 猛烈な衝撃と爆風が俺達に届く。建物は跡形も無く消し去りクレーターが後に出来上がった。
 シミュレーション通りの結果をここに出せたわけだ。若干効果範囲が広かった気もするが特に問題なし。流石はジュエルシード爆弾。コピー品とはいえ、なかなかの高威力。次元震を起こすほどじゃないが程じゃないが兵器としては十二分として役立つ。コスト以外は優秀だ。

「えげつねー。やりすぎじゃない?」
「…………」
「…………」

 顔を引き攣らせながらセインが言ってくる。
 クアットロとチンクは無言であり表情も硬かった。

 あれ?
 チンクはともかく、クアットロならなんらかの嫌味を言うかけらけらと笑うんじゃないかと思ってたんだけどなぁ。
 人が大量に死んだことに病んだ?
 いやいやいや。こいつらに、人を殺して後悔するような神経は無いはずだしなぁ。そんな神経ならゼスト隊を全滅させといてなんもなしって事はないからな。
 何が気に入らなかったんだ?




side out

 現在、田中とウーノのクローンは帰還のための準備を行っていた。それを脇に見ながらクアットロは、さっきの出来事を思い出していた。
 クアットロは、田中が拠点攻撃用の兵器を作成していることには気づいていたが、ここまでの高威力であるとは思っていなかった。
 ゆりかごを軌道上に載せるまでのまでの戦力は確かに必要だが、先程のミサイルは明らかにオーバーキルだ。たしかに地上本部やアインヘリヤルを攻撃する際には有用かもしれないが、その他の場所では使いようが無い。
 クアットロは改めて、田中の脅威を感じ取った。

 また、それはチンクも同じであった。
 チンクは、セインからドクターの田中に関する推測を聞いていたため、クアットロと同じ危惧を抱いた。
 しかし、この男が自分達にとって必要であるということも理解していた。この男がいなければガジェットの大半が使用することができない。田中のガジェットのデータを元に一部生産をしているが、ゆりかご内部に搭載する分しか生産できていない。祭りのために必要な量にはまったく手が届いていない。

 セインは、ドクターが言っていた裏切りについて現実感が伴ってきていた。
 たしかにセインはあの時こそ恐怖したが、その後の田中の態度からその記憶が薄れていた。
 出撃前も雑談をし、笑い合っていたものだ。
 しかし、それも今の爆発で消し飛んだ。楽天家なセインにとっても、この男は警戒しなければいけない人物なのだと認識された。






あとがき
最初は核弾頭にしようかと思っていたんだけど、レリック爆弾という意見があったので参考にしてみましたw
でもレリックだと色々問題があるので、ジュエルシードのコピーを使用という設定に。
核弾頭と違って放射能汚染がないので使用者としては使いやすい兵器となっております。環境破壊がないので気軽にお使いいただけます。

あと、他の方が書かれているスカさんのクローン物を読んだんだけど、同じクローンなのにどうしてここまで違うのかと絶望した。向こうの方が圧倒的に萌える。知識や能力に目がいってしまい、外見をまったく考慮しなかった自分が憎い。



[7818] 第13話 「久しぶりの原作」
Name: ジャミー◆90775155 ID:b4c2a3d3
Date: 2009/06/01 21:32
本命以外の戦いも今後の戦いの参考になる。
それを活かせるのか活かせないのかが、勝者と敗者をわける。
by田中雄一


第13話 「久しぶりの原作」




 現在、大画面にてレリック争奪戦IN列車が上映されている。
 うん。原作の例のあれだ。

 といっても、原作のガジェットとは質や種類が違う。とりあえずⅢ型はいない。っていうことで、エリオとキャロの名場面は無いな。
 Ⅲ型は一応開発したけど、まだスカさんに供給してないから登場しません。

 あと、Ⅰ型・Ⅱ型共に性能が違う。コストの関係でジュエルシードは搭載されていないが、性能は格段に上がっているはずだ。搭載型は少数だし、スカさんにはこれまた未供給。
 う~ん。Ⅲ型がいないことを差し引いても、原作よりも強力な部隊だな。もしかしたらフォワード陣じゃ勝てないかもね~。
 まぁ、強力といってもなのはさんとフェイトさんには勝てないだろうから、時間さえ稼げれば応援に駆けつけてくれるだろうし、どうとでもなるか。

 まっ、別にどっちが勝っても俺としてはどうでもいいから高みの見物と洒落込みますか。













 あぁ、やっぱりフォワード陣は苦戦しているなぁ。でも以外にやるねぇ。新型のガジェットに合わせて訓練をしているからか?
 と言っても、フォワード陣が梃子摺っている間にガジェットの方がレリックの運搬を開始しそうだけどね~。
 まぁ、こっちの勝ちだね。

 うん。でもなかなか面白い見世物だった。
 残りの戦闘も楽しく拝見させてもらおうかね~。

 おっ!
 エリオとキャロが進んできたな。でもⅢ型がいないから、あの場面は再現されないんだよね~。ちょっと残念。

 ……………………。
 ってぇぇぇぇっぇぇぇ!!!
 ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇっ!!!
 なんでⅢ型の代わりに、俺が作った試作機が鎮座してんだよぉぉぉぉぉ!!

 スカさんに連絡を!!

「ドクター。レリックを強奪しようとしている部隊に倉庫で眠っているはずの試作機が混ざっているんですが?」

 青筋をたてつつも怒りをなるべく面に出さないようにしつつ質問をする。

「あぁ、倉庫に眠っていたから勿体無いから稼動させといたんだよ。それに興味もあったしね」
「一言あっても良かったんではないですか?」

 ここで文句の一つでも言っておかないと、後々にも同じ事をされかねない。いや、文句を言ってもされそうだが。

「それはすまなかった。てっきり要らない物かと思ってしまってね。それに、ここにあるガジェットに関しては全面的に貸与してくれるということだったと思うんだが?」

 ちっ! たしかにレリック探索のためにガジェットはすべて貸与ということになっている。ここは引き下がるしかないか……。

「次からは一言お願いしますよ」

 一応釘だけは刺して通信を切る。



 情報を隠蔽するためにあんまり稼動させたくなかったんだが、量産予定はないから別にいいか……。
 と言っても、技術のテストも兼ねた機体だからⅠ型Ⅱ型以上に鹵獲されるのは避けねばならんな。いざとなれば割り込み命令で自爆させるか……。














 現在の状況を簡単に言うと、エリオ君&キャロ大ピンチ!

 この試作機、金剛はⅢ型とはまったくかけ離れた性能を有する。
 見かけは若干Ⅳ型に似ている。ただし、その武装は大きく異なる。装備している兵器は全て質量兵器。また、動力炉を含め駆動関連にも魔法は一切使われていない。まぁ、このことからわかるとおり完全に魔法が使えない状況下での戦闘を想定して作成したものだ

 ちなみに詳しい武装は、機関銃1丁、近距離戦用の鎌2丁、対空ミサイル(魔力、熱、画像追尾)、対戦車バズーカ1門(自動装填機能付き)。
 地球の装備で魔導師を倒すことは可能なのか? が開発のコンセプト。ぶっちゃけお遊びです。近距離戦用兵器のテストが目的だったから後の兵器は色々と流用したんだよねぇ。

 おっと話がそれたが、ようするに強敵を前に二人は梃子摺ってます。っていうか死にそうです。既存の魔法戦闘とはかけ離れた戦闘を前に途惑っているようです。
 ここで二人が死ねば原作崩壊も決定的だな。

 っていうか、こいつら逃げればいいのに。子供ゆえにそこに頭が回らないのか性格ゆえに逃げられないのか。おそらく後者だろうねぇ。
 これがしっかりと訓練を受けた人間なら、同じ性格でも選択肢として撤退という言葉がでてきたのかもしれんが、あまりに経験知識共に不足しているんだろう。


 でもまぁ、死のうが生きようが俺には関係ない。子供が死ぬのは心が痛むが、この二人を戦場に連れてきたのは俺じゃないし、管理局員になろうと決めたのはこの二人の意思だ。
 俺は、実戦において質量兵器が何処まで魔法に通じるのかを見させてもらう。


side out

 現在、エリオは苦戦を強いられていた。それは彼が学んできた戦闘技術とはかけ離れた戦闘が行われているからだった。
 エリオは金剛から距離を取ろうとする。しかし、すぐさま金剛から銃弾が放たれる。しかもその銃弾は、タングステンを内包し貫通力を強化した物である。またその連射力は回避不能と言っても過言ではない弾幕を形成する。
 その結果、エリオに何発もの銃弾が殺到する。
 バリアを張ったことにより銃弾が貫通することは無かったようだが、著しくエリオの魔力を奪っていく。

 金剛は、銃によって距離を詰められないようにするのと同時にミサイルで、攻撃をしてくるため、銃・ミサイルの両方に注意を向けねばならない。
 また、エリオはキャロがいるために思うように取れないことも災いしていた。。
 高速で移動し続けて距離をとれば回避できるかもしれないが、それではいつキャロに攻撃の矛先が向かうかわからない。エリオは金剛の気を引き付けておかねばならない。
 なのはとフェイトはⅡ型によって足止めを受けており、援護に向かうことができない。またスバルとティアナもⅠ型の足止めを受けている。

「くっ!!なら!!」

 声を発するのと同時にエリオがソニックムーブで金剛の懐に潜り込む。
 へたに距離をとることで銃撃を受けるのなら、至近距離に移動し銃の射角から逃れるのと同時に切り込むほうが得策と考えたようだ。

「てりぁぁぁっ!!」 

 作戦通り、エリオを追尾していた銃身は動きが止まり射撃できなくなる。そして、無防備になった金剛に向かってエリオが掛け声と共に切りかかる。
 しかし、金剛も潜り込まれるのと同時に鎌で応戦しストラーダを受け止め弾き飛ばす。そして弾き飛ばすのと同時にミサイルを撃ち込む。
 その結果……。

「エリオ君?!」

 エリオは空中に投げ出されることになった。



side 田中

 マヂですか?
 修正力って凄いなぁ。原作通りエリオが崖に落ちていくのを追いかけキャロが飛び降りた。
 んでもってフリードを覚醒させてピンチを乗り切ると。
 何か、凄く嫌な物を見た気分になった……。
 俺が何をしようとも物語りは原作通りに進むって言われたみたいな気になった。実際にはそんなことはありえるはずがないとは思うが、なんともいえない気分だ。

 おっと、そんなことを考えているうちにフリードが金剛に攻撃をしようと接近していった。
 そして、魔力を収束させ攻撃しようとするが、甘い!!
 金剛はその隙に余分な動作無しでバズーカを発射。そして命中。

 流石に、竜であるとはいえ、生物であるフリードがバズーカの直撃を受けて無傷なはずはないだろう。
 そう思いながら画面を見ていると…………。

「はぁぁぁぁっ?!」

 煙の中から出てきたフリードは確かに傷を負い苦しんでいたが、腹が少し抉れた程度で飛行を続け、攻撃を金剛に放っていた。
 一方、攻撃を受けた金剛は装備していたバズーカとミサイルに引火して大惨事になっていた。

 そして止めにエリオが一撃を放ち起動停止、そして大爆発。
 …………一応薄いとはいえ金剛には複合装甲を施していたんだが。


 主人公補正っていうやつなのか? エリオは主人公ではないがそういったものが働いたとしか思えない。

 …………。
 こんなくだらないことで時間を潰していても仕方がない。今回のデータを整理して、ガジェットに活かすとするか。
 それにしても、改めて魔導師の恐ろしさを感じ取ったな。生身の人間が、機関銃の弾丸を受け止めた上に、装甲車両並の装甲をぶち抜くとはなぁ。

 まぁそれでも俺が勝つけどね。最終的に物を言うのは数だ。奴らがそれを思い知るのもそう遠くは無い。地上本部攻撃時が見ものだな。



あとがき
ネットが無い所で研修が行われていたため更新できませんでした。
あと、時間がないため感想の返信はできそうにないです。申し訳ありません。ただし、いただいた感想はすべて読みます。それと誤字脱字の報告大歓迎です。


ようやく原作場面を登場させることができました。
前に登場させたのはSSの話だけですから感慨深いです。
あと、田中君の精神が磨耗しきっている気がしてきたw



[7818] 第14話 「吉報と局地戦」
Name: ジャミー◆90775155 ID:657ebfc4
Date: 2009/06/18 23:12
成功している時が一番危ない。
そんな時は、小さなミスを見逃し大きな事故を引き起こす。
by田中雄一


第14話 「吉報と局地戦」




 まったくもって忌々しい!!
 え? 何がそんなに忌々しいのかって?
 そんなの決まってますよ。ついに俺の情報が一般の方にまで出回り始めたんですよ。

 せっかくスカさんに擦り付けたホームランフラグが俺に返ってきましたよ。打たれるのは嫌ですね。
 フェイトさんはけっこう好きなキャラでしたがホームランはノーサンキュー。そういうのは、Mな方々にお譲りします。
 まぁ、フェイトさんは最終決戦時はゆりかごではなくスカさんのアジトに向かってたし回避できるかな?

 たまには良いことがないですかね?
 凶報ばかりで吉報が届いたためしがありません。





















 吉報がこないかなーっていう祈りが届いたようです。
 みなさ~ん、待ちに待ったカルタスの情報が届きましたよーーーーー!!!!
 スカさんによってもたらされた情報によると、カルタスはクローンに関する研究施設に捕らわれているようです。しかも、エリオ同様に酷い扱いを受けているようです。

 ってよく考えたら、俺もたいがい非人道的なことをやってるな。人のことは言えないか。まぁ気にしないけどな!



 まぁ、そんなわけで出撃です。
 つっても、俺と5名のUNズだけですけどね。何でかって言うと、ナンバーズとは仲が良くありません。比較的仲が良かったセインでさえ最近はあんまり会話がないですしねぇ。
 要請さえすれば援軍は出してくれるんでしょうけど、気まずい中でやりたくないですしねぇ。まぁ、資料を見る限りの戦力だとガジェットだけで何とかなるだろ。





 今回の組織は前にレリックを奪った組織よりも都会っ子です。管理世界の郊外に研究所があります。
 こんな所にあると管理局がすぐに駆けつけるから襲撃しにくいですねぇ。

「でもそんなの関係ねぇ!でもそんなの関係ねぇ!」

 フリも再現して見事におっぱぴーをしてやった。
 むしゃくしゃしてやった今では後悔している。でも反省はしていない!

 …………。
 疲れてるのかなぁ俺。



「マスター大丈夫ですか?」

 俺の奇行を見たロリっ子5人が心配そうな顔で見つめてくる。
 止めて! そんな目でみないで!

「……大丈夫。んじゃあ行こうか」

 テンションがだだ下がりのまま出撃することになった。







 今回も圧倒的戦力差ですね。楽勝としか言いようがない戦いです。下がっていたテンションが少し上がってきました。
 まぁ、管理局がやってくる前に撤収しないといけないからさっさと終わらせたいから楽勝じゃないと困るんですけどねぇ。


 時間にして僅か10分で敵の防衛システムは完全に沈黙。魔導師が散発的に抵抗するだけ。後は、突入したガジェットがカルタスを見付けるの待つだけだな。
 っと、発見したようだな。それじゃあ、後のことはUNズに任せて、俺は感動の再開をしてくるとしますか。

「お~い、カルタスいるか~?」

 ガジェットから送られたデータからカルタスがいると思われる部屋に入っていく。

「あ、いた」

 カルタスが漫画に出てくるエリオとまったく同じ格好で転がされています。
 こっちの世界の研究者の間ではこの監禁方法が流行っているのか? Sなんだなこちらの研究者は。

「大丈夫か~」

 声をかけながら拘束を解いていきます。
 拘束を解き終わるとカルタスが泣きながら抱きついてきます。エリオフェイスで泣きながら抱きつかれるとちょっと萌える。ただし涙と鼻水がついてちょっとばっちぃ。

「んじゃあ、行くぞ」

 いつまでも泣きじゃくるカルタスを小脇に抱え移動を開始。いつまでもこんな所でまったりしている訳にはいきません。ゆっくりしていると管理局の奴らがやってきますからね。


 ん、UNズからの通信か。

<マスター、管理局が来ました。機動六課です>


 シット!!!!
 ゆっくりした結果がこれだよ!!
 何でレリックも無いのに機動六課がくるんだよ。しかも来るのが早すぎるんだよ!!

<追加報告です。ガジェットが建物の中からレリックを発見しました>

 原因はそれか!!
 ということは、レリックを回収する予定できたら、たまたま襲撃していた俺達を目撃したということか。何で毎回毎回タイミングが悪いんだよ俺は……。
 いや、この場合は良いのか?
 ギリギリとはいえカルタスを回収できたんだし。もし、もう少し遅ければ回収できなかったんだろうから。

<どうしますか?>

 っと、今考えることではないな。
 こんなことは帰ったらいくらでも考えることができる。今は、帰ることだけを考えるか。

「ガジェットに迎撃させろ。少しでも時間を稼げ」

 ん?
 迎撃を命令したら何か言いたそうに口をぱくぱくさせながらカルタスが暴れだした。なんだ?
 ったく、あと少しで帰れるんだから暴れんな。

 研究所を抜けるとそこは戦場でした。
 空中では魔王夫妻とⅡ型が空中戦を繰り広げ、地上ではステエキとⅠ型が激突しています。と言っても遠すぎて肉眼では見えないんでモニター越しですが。
 まったく持って元気な奴らだ。近くにいるガジェットを護衛としてこっちに回してさっさと離脱するか。

 って、魔王の嫁に気づかれた?!
 それにステエキからもエリオがこっちに向かってる?!
 やべぇぇぇ!!離脱せねば!!
 ちなみにエリオが抜けたからステキだな。エリオが抜けたらステキ、性別的な意味で。
 あれ? もしかして俺うまいこと言った?







「その子を離しなさい」

 馬鹿なことを考えていたら追いつかれてしまった。
 しかも鋭い目つきで睨みながら威圧的な声で話しかけてくるというオプション付き。まだ50メートル離れているがここからでも恐いぞ。

「こ…こいつを引き渡せば…こいつを差し出せば…ぼくの「命」…は…助けてくれるのか?」

 それに対して俺は臆病者のごとく震えながら返事をする。

「管理局は犯罪者でも命はとらない」

 フェイトさんは相変わらず鋭い目つきと威圧的な声を変えることなく話しかけてくる。
「だが断る。この田中雄一が最も好きな事のひとつは、自分で強いと思ってるやつに「NO」と断ってやる事だ」

 やってやったぜ!
 これは俺が死ぬまでに言っておきたい言葉の一つだったんだ。しかも場面的にも凄く合ってる!
 ただし、フェイトさんはポカンとした後に綺麗な顔を歪めさらに目つきを鋭くしてきた。死亡フラグが立ったようです。
 あと、右の脇に挟んでいるカルタスの暴れ具合も激しくなった。だから暴れんな。とりあえず頭をはたいて黙らせる。

 カルタスの頭をはたくのと同時にフェイトさんの形相がさらに素敵な事になり、こっちに向かってきた。しかも物凄いスピードで。
 このままでは、俺がホームランされてしまう。いや、ホームランどころではないぞこのスピードは!

「そうはいかんざき!!」

 叫ぶと同時にガジェットを操作し局地的に高濃度のAMFを発生させるべく陣形を整える。
 このAMF状況下でこれだけのガジェットを抜ける物なら抜いて見やがれ!!

 ザシュッって音と共にガジェットが次々に切り捨てられる。
 うん。あっさり抜かれそう。
 くそ! こいつらリミッターを解除しているな! Sランクオーバー相手だとⅢ型がないと無理か!

「その子を渡してもらう」

 フェイトさんがⅠ型を切り捨てながら話しかけてくる。

「何というジャイアニズム。お前の物は俺の物、俺の物も俺の物ですね。わかります」

 こちらもガジェットを操作しながら返事をする。

「ふざけないで! あなたは命を弄んでそんなに楽しいの?!」

 フェイトさんが涙を浮かべながら睨んできます。
 はっきり言ってフェイトさんはさっきから興奮しすぎです。そのおかげで周りが見えていないようです。

「楽しいというよりは便利かな?」

 スカさんは楽しいから生命操作技術を使っているけど俺は便利だから使ってるからね。 UNズが誕生してから俺は楽になったしねぇ。って言っても、俺にしか出来ないこともたくさんあるから、忙しいことには変わりがなく、余計な事をやっている時間はないんだけどねぇ。

「便利?! あなたは命をいったい何だと思っているの!」

 なんかフェイトさん必死だね~。
 ん?
 フェイトさんは好きなキャラじゃなかったのかって?
 えぇ好きでしたよ。ほらアレですよ。好きな子ほど虐めたくなるっていうやつですよ。ツンデレですよ。

「命ねぇ、哲学的な問題だな。まぁ個人的には特に何とも思っていないんだけどねぇ。特別神聖視するものでもないよ。便利だったら利用するし邪魔なら殺す。君だって牛や豚を食べるし蚊を殺すだろ? それと同じだよ」

 っと、俺の話を聞いたフェイトさんは俺に憤怒の表情を浮かべ斬りかかってくる。
 しかしそれに対応し、先程から待機しているⅡ型の一部でⅠ型諸共フェイトさんにミサイルを撃ち込む。
 はっはっは馬鹿め! こんなこともあろうかと一部のⅡ型には対地攻撃能力を付加しておいたのだよ。

 このⅡ型は、フェイトさんが注意散漫になっている隙に、魔王と交戦中の部隊から回してきた物です。油断大敵って奴ですね☆


 流石に魔王の嫁とはいえ、まったくのノーダメージというわけにはいかないようで、こっちへの進行速度が遅くなった。しかし未だ健在。
 それに対してこっちも今の爆発でⅠ型にも多数の犠牲が。
 しかし、勝てなくてもこのままⅠ型で押さえ込めば逃げる時間は稼げそうだな。よし、さっさと逃げるとすr

『ドーン!!』

 俺の護衛をしていたガジェットの一体が爆発を起こした。一体なにが?!
 ってエリオかぁっ!! もう着いたのかよ!! 空戦能力が無いのに到着するのが早すぎだろ!!

「その子を離せぇぇぇ!!」

 エリオが叫びながらこちらに斬りかかってくる。
 くそ! こっちにも数体のⅠ型を回して応戦せねば。せっかく対フェイトさん用に戦力を集中させていたのに、分散してしまったではないか。
 しかし空戦能力がないエリオにⅡ型を多く回しておけば押さえ込めるはず。

「親子揃って似た台詞を吐くな。親子仲が良いのはわかったから。あとこれは俺のだから」

 部隊の再編をしつつ返事をする。言われっぱなしって言うのは性分に合わない。

「その子はあんたの物なんかじゃない!!」

 エリオが物凄い勢いで切り込んでくる。なんでそんなに怒ってんの? カルシウムが足りないの?
 怒りのパワーで何体ものガジェットを切り捨てるエリオだが、Ⅱ型が到着した頃には完全に守りに回っていた。やはり物量と相性には敵わないか。

 よしよし、この親子は一応抑えることができたな。
 後は、空を飛んでいる魔王を完全に抑えれば逃げ切れるはず。んでもって現在こちらにガジェットⅡ型の増援が向かっている途中だ。というわけですぐに逃げれるな。UNズはいい仕事をしてくれる。
 っと連絡が。

<申し訳ありません。Ⅱ型の増援部隊が闇の書の守護騎士プログラムによって足止めされています>

 くそ!! シグナムとヴィータか!!
 このままではいずれ逮捕されてしまうな。とはいえ、ジェルシード爆弾やⅢ型は決戦まで見せるのを避けておきたいしな……。
 わざわざ俺が出張ってきたのは失敗だったか……。

 とは言えそんなことを言っていても仕方がない。何か手段を考えないと。
 っとまた連絡か。次は吉報がいいなぁ。

<増援として近辺にいた部隊から抽出したⅠ型とⅡ型の混成部隊を送ったのですが……>

 おぉ! 流石はUNだ。早速増援を送ってくれたのか。数で押し切ればどうにでもなるな。

<敵にも増援がいたようで、こちらの部隊よりも先に管理局の増援が到着します>

 なっ!! 増援だと?!
 シャマルか? ザフィーラか? それともシャッハか?

<魔力パターン特定しました。ゼスト隊です>

 は?
 WHAT?

「すまんがもう一度言ってもらって良いか?」

 どうやら最近は疲れ気味のようで耳の調子が悪いらしい。
 今日は帰ったらゆっくり寝ようかな。

<敵の増援はゼスト隊です>

 うん。聞き間違いじゃなかった。
 どおりで一回もルーちゃんを見なかったはずだ。そりゃあ、母親が生きていたらスカさんの所に回されるはずがないよね~。はっはっは。

 って何でだよ!!
 俺は介入なんてして無いぞ。カルタスだって介入する暇なんて無かったはずだ。
 ということは、別に憑依者が存在するということか?

<マスター指示をお願いします>

 くそ!
 ゼスト隊が加わるとなると多少の増援じゃ意味がない。しかし、今からⅢ型を使おうにも間に合わない……。このままじゃジリ貧だ。それにまだ、はやての出撃という可能性もある。
 だったら、ゼスト隊が来る前に無理をしてでもこのまま離脱したほうがいいな。

「俺は強行してそっちに離脱するから、脱出の準備を整えておけ」

 こんな所で捕まってたまるか!
 転送ポートを設置している場所まで逃げ切れば俺の勝ちだ。絶対に逃げ切ってやる。







 ちっ!
 離脱を開始したのはいいが、Ⅱ型が魔王に突破されたな。このままだと数分で追いつかれる。
 残りのⅠ型で対空射撃しかけさせて時間を稼がねば。






「投降しなさい」

 うん。Ⅰ型の対空射撃だけで時間稼ぎとか無理だから。そんなんじゃ魔王様の進撃は止められない!
 ってそんなこと言っている場合じゃないよなぁ。幸いなことにまだ相手は高町なのは一人。やりようによっては十分に抜けられるはず。
 ………………だといいなぁ。




 無理無理無理無理無理!!
 何にも良い考えが浮かばない。今あるのは、周りにある数体のガジェットⅠ型、ズボンに挟んである地球土産のチャカ、脇に抱えているカルタス。

 いや、これはフェイトさんと対峙した時と似た状態だな。
 違う点は、武装がカッターナイフからチャカとガジェットにグレードアップして、相手がリミッター解除というチート状態なだけ。
 あの時と同じ状況だな。多少状況は悪いが。
 これなら同じ手で切り抜けられるはず。ワンパターンだが仕方がない。



「動くんじゃねぇ! 動いたr」

 叫びながらカルタスの頭にチャカを向けようとした瞬間に物凄い衝撃を感じ、体が宙を舞った。そして舞っている最中に意識が途切れた。
 意識が途切れる瞬間、カルタスをお姫様抱っこしたフェイトさんこちらを物凄い形相で睨んでいるを見た気がした。


BAD END





あとがき
投稿間隔開きすぎワロタwww
駄目じゃん俺('A`)
あと、おっぱぴーは流石にどうかと思った。流石に自重しろよと思った。自重しろ田中!!


最後に一言、もうちっとだけ続くんじゃ。







次回はカルタス視点での振り返りだからあんまり期待しないで。



[7818] 第15話 「その時、俺は」
Name: ジャミー◆90775155 ID:657ebfc4
Date: 2009/06/24 22:30
同じ場面に遭遇しても、人によって感じること考えることは違う。
それが解らないと人はすれ違っていく。
by田中雄一


第15話 「その時、俺は」




~side カルタス~

 俺は田中に抱えられながら研究所の廊下を移動している。先程までの助けられたことによる気分の高揚はもうない。今あるのは悲しみだけだ。

 田中と別れた後は、ずっと奴らの研究所に監禁され人体実験をされ続けた。辛かった悲しかった。だから、田中が助けに来てくれたときには恥も外聞も無く泣いたまま抱きついていた。田中は苦笑いしていたけど、そんなことは関係なく嬉しかった。
 その後は、脇に抱えられて移動させられたけど問題なんて無かった。
 研究所にいた人間の死体で埋まった廊下を田中が鼻歌交じりで平然と歩き始めるまでは。

 俺は自分だけが辛く苦しい思いをし、声を失ってしまった可哀想な人間だと思っていた。
 だけど、田中にも辛く苦しい思いがあったんだと思う。田中は今までも実験で死体を扱ったりしていたけど、決して死には慣れていなかった。まして自分で人を殺し平然としていられるような人間ではなかった。
 田中は俺以上に変わってしまったのかもしれない。いや、変わらないといけなかったのかもしれない……。




 俺がそんな事を考えていたら、見たことのない女の子から通信が入ってきた。

<マスター、管理局が来ました。機動六課です>

 管理局だ。これで助かった。事情さえ話せば俺も田中も助けてもらえるはずだ。

「ガジェットに迎撃させろ。少しでも時間を稼げ」

 最初、俺は自分の耳を疑った。どうして、そんな必要があるんだ!
 だが、同時に思い出した。以前、田中が管理局を信用していないと言っていた事を。アンサイクロペディアのことは冗談だろうが、根本的なところで信用しきれないんだろう。 でも、そんなことで俺も諦められない。声なき声を出して「やめろ。話し合えば助けてもらえる」と言った。
 だが、この行動は田中は少し怪訝な顔つきをしただけで、また研究所を歩き出した。
 俺の言葉を田中に伝える手段はなかった。念話もAMFのせいで使うことが出来ない。

 外に出たら、遠くで爆発音が聞こえだした。一体何が行われているんだ?
 その疑問はすぐに解けた。田中が見ている画面には機動六課とガジェットが戦っている様子が映し出されている。
 田中は悠々とコンソールを弄っていたが、急に慌てだして走り出した。
 最初は何があったのかと思ったが、この疑問もすぐに解けた。

 フェイトが目の前に現れ。

「その子を離しなさい」

 毅然と俺達に、いや田中に言い放った。
 フェイトは俺が田中に拉致されていると思って威圧的に言っているんだろうけど、ただでさえ管理局を不信している田中にその言い方はやめて欲しい。これじゃあ、田中がますます投降しない。

「こ…こいつを引き渡せば…こいつを差し出せば…ぼくの「命」…は…助けてくれるのか?」

 え? 今何て言ったんだ?
 奇跡が起こった! この様子だと投降するかもしれない!
 若干、田中が震えているようなので、フェイトに脅えているのかもしれない。こういうのはどうかと思うけど、投降さえしてしまえば俺がフォローするし、何とかなるかもしれない。

「管理局は犯罪者でも命はとらない」

 フェイトは相変わらず鋭い目つきと威圧的な声だけど、田中の問に答えた。よし、これなら何とかなるかもしれない!

「だが断る。この田中雄一が最も好きな事のひとつは、自分で強いと思ってるやつに「NO」と断ってやる事だ」

 なっ!!
 馬鹿かコイツは!! なんでこんなシリアスな場面で露伴先生の真似をしているんだ!!
 ほらフェイトも滅茶苦茶怒ってる!!

 とりあえず、田中の体を叩きながら抗議をする。これ以上、馬鹿な真似をされたら終りだ。……もう手遅れな気もするけど。
 田中の返答は平手打ちだった。とは言っても、ぺちって音がしそうな程の威力の無い物が額にあたっただけだけど。

 平手打ちで閉じていた目を開けると恐い顔をしたフェイトがこっちに向かっていた。
 こ、恐い……。思わずまた目を閉じそうになった。
 なんでそんなに怒ってるの?! もしかして俺が叩かれたから?! 
 それだったら全然問題ないから落ち着いてぇぇぇぇぇぇぇ!!



 それからはフェイト無双だった。田中が的確にガジェットを配置し効果的に反撃しているように見えるけど、そんなのは関係なく倒していく。
 でも、目の前では余裕の表情でフェイトと会話をしている田中がいる。しかもかなり挑発している。このまま戦闘が続けば田中の敗北は目に見えているのに……。何か秘策でもあるのか?
 あるんだとしても使わないで欲しい……。もう、大人しく捕まろうよ。

 俺の願いも虚しく田中の挑発は熾烈さを増し、人間を牛や蚊と同じだと言った。それを聞いたフェイトは怒った顔をしてこちらに切りかかってきた。
 命を重視するフェイトにそんなことをいったらこうなるよな……。
 俺に出来るのは田中が無事でいられることを祈るだけだ。

 しかし俺のそんな心配は杞憂に終わった。フェイトがこちらに切りかかってくるのを防いでいたガジェットもろともフェイトをミサイルが吹き飛ばした。
 おい! この爆発じゃあ下手したらフェイトが死んでしまうぞ! いくらなんでもやり過ぎだ!

 …………………。
 良かった。どうやらフェイトは無事みたいだ。多少ダメージはあるみたいだけど命には問題ないみたいだ。
 あとの問題はどうやって田中を説得するかだけどどうしたもn

『ドーン!!』
 俺達を囲んでいたガジェットの一体が爆発を起こした。

 爆発した方向を見るとエリオがこっちに向かっていた。
 あぁ、本当にどうしたもんだろう……。
 エリオもフェイトと同様に俺を助けようと必死になってガジェットを破壊している。その心遣いは嬉しいんだけど、状況が状況だけに複雑だ……。

 やはりと言うべきか、エリオも田中に挑発された挙句、ガジェットによって引き離された。もしかして田中って戦闘指揮が得意なのか?
 ここまできたら、後は田中のアジトに行ってから気長に説得するしかないよな……。俺がしっかりしないと。





 しかしここにきて驚くべき情報がもたらされる。
 ゼスト隊が生きている?
 でも、田中と話をした時は介入しようにも監視されていて何も出来なかったって言ってたはずなのに……。俺達以外にもこの世界に来た人間がいるのか?

 この思考は数分で止められた。
 目の前に、なのはが現れ立ちはだかっている。
 流石にこれは田中でも突破するのは無理だろうなぁ。周りにいるのは数体のガジェットだけ。それに田中の顔も今までに見たことがないぐらい汗が流れている。

 あれ?
 田中の顔が何かひらめいたって顔になった……。何を思いついたんだ?
 田中はおもむろに取り出した拳銃を俺の頭に……って!! まさか昔フェイトに対して使った手を使うのか?!
 止めろ! ますます管理局に対して印象がわるくなる!

 何とかして止めないと、そう思って田中の腕を掴もうとした瞬間、体が宙に浮き次の瞬間には暖かくて柔らかな感触が俺を包んでいた。
 そして、目の前には宙を舞う田中の姿が……。人って空を飛べるんだなぁ……。
 って違う! いったい何が?!

 俺が上を向くと睨んでいるフェイトの顔が。うっ! 恐い……。
 あぁそうか、田中はフェイトに攻撃されたのか……。田中は大丈夫だよな? 非殺傷設定だし……。非殺傷設定だよね?
 フェイトの顔を見ていると殺傷設定と言われても納得できそうだから恐い。俺、フェイト達を説得できるのかな?


 そんなことを考えていたら、フェイトが涙を浮かべながらだけど表情を柔らかくして抱きついてきた。
 ちょっと!! 当たってる!! 胸が当たってる!! は、離してぇぇぇ!!

「ごめんね。今まで助けてあげることができなくて。でも、もう大丈夫だから、私が守ってあげるから……」

 そう言って、俺のことを優しく抱きしめてくれる。うぅ恥ずかしい……。
 助けを求めるように周りを見回すと、優しい目をして俺とフェイトを見守っているなのはと時々ピクリと痙攣しながら地面に伏している田中がいた。……大丈夫かな?


 その後は、ヘリがやってきて田中や画面に映っていた女の子を護送していった。そして俺もフェイトに連れられてこの地を去った。
 その途中、俺は疲れから意識を手放し眠りに就いた。








あとがき
 前回の投稿分に対する総ツッコミありがとん。田中が出撃したのは違和感がありましたか……。では、ちょっと理由説明。
 田中的に、カルタスは重要な人物です。無意識にですが、カルタスを唯一本当の仲間だと感じています。UNズも仲間であると考えていますが、それは洗脳の効果であるためと感じているため、後ろめたさや不安などがあるからです。
 って、こんなの描写が少なくて読者に伝わるはずがねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!
 サンクス。みんなのおかげで心理描写が書けてないことに気が付けました。これからの糧にさせてもらいます。
 脳内では補完されているから、思わず書き忘れちゃうんですよねぇ。



 で、話が戻りますが。
 田中は多少のリスクだけだと余裕がでる性格です。なのはに遭遇する可能性が限りなく0近いとはいえあるのに翠屋に行った事(田中はアニメで帰省描写が無かった為、JS事件終了まで帰省は無いと思っていた)、犯罪者組織からレリックを奪う時に、スカさんからの依頼とは言え一緒に行った事(資料から戦力差が圧倒的だと思っていた&JS事件が終わるまで健在だったナンバーズが一緒に行くって事は俺も大丈夫じゃね?)などはこれらの性格からです。

 以上から、資料から戦力差が圧倒的&前回の強奪から強気になっていた&(無意識に)カルタスに良く思われたいと考えた結果、一緒に出撃しました。

 うん。こんな設定を今までの描写から読み取れっていうのが無理な話ですね。っていうか、無理やりな設定とも捉えられるか。
 これだけ説明しないと伝えられないとか駄目駄目ですな。物語を書くって難しいですねぇ……。




あと、いーちゃんさん
俺も離脱するものだと思ってました。
最初は離脱する予定のプロットだったのに、いつの間にか捕まってました。不思議!



[7818] 第16話 「3回目の戦い」
Name: ジャミー◆90775155 ID:b4c2a3d3
Date: 2009/08/06 19:17
取引というのは利害の交換である。相手にこちらの利益を悟られないのが上策である。
例え悟らせる場合でも真の目的は隠すべきである。
まぁ、隠す必要が無い時は隠さないけどね
by田中雄一


第16話 「3回目の戦い」




 気が付いたら機動六課に監禁されていた。何を言っているのかわからないと思うが俺も何をされたのかわからなかった。
 …………いや、本当はわかっていますよ。魔王様に注意を逸らされている隙に、いつの間にかガジェットを突破してきた魔王様の嫁に一撃を喰らったわけです。夫婦愛の前に負けたわけですよ。
 
 まぁ、そういうわけで終りですよ。すべて終り。計画も人生も。
 くっくっくっくっくっくっくっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!


































 いや、落ち着けよ俺。
 まだ慌てるような時間じゃない。
 それでもUNズなら、UNズなら何とかしてくれるはず!


 ……………………。
 って助けに来てくれるかなぁ~。一応、洗脳を施しているから、アルゴリズム的に考えて助けに来てくれるとは思うんだけど……。自我が有るUNズだと、自分で洗脳の内容を上書きしてしまう危険性があるからねぇ。
 所詮、人の気持ちを無理やりに縛っているだけの代物ということだかんねぇ。

 それに助けようとしてくれているとしても、助けるのが遅いと管理局の上層部に消される可能性があるんだよなぁ。

 ……結局は洗脳が保たれていることを祈りつつ待つことだけか。
 まぁ、今後のためにやれることはやっとくか。







~side フェイト~

 ついにあの時の子供を保護することができた。でも助けるのが遅かった。
 私が助けた時にはあの子は声を失っていた。シャマルの話によると精神的外傷によるものだそうだ。あの子に何が行われていたのかは想像に難くない。
 私にできることは、あの子が生きる意味を見つけるまで、見守ってあげることしかないけど、少しでもあの子の力になってあげたい。
 今は、ゆっくりと休んでいて欲しい。



 今は、あの男の尋問を優先して行おう。今はシャーリーが尋問を行ってくれているけど、私もいかないと。
 本局に引き渡すまでの間に少しでも情報を聞き出したい。事件解決のためには少しでも情報が必要だ。それにあの女の子達の情報も欲しい。恐らくあの子達もF計画の犠牲者。あの男に生み出され利用されたんだろう。
 もしかしたら、あの子達以外にも同じような子がいるのかもしれない。もしそうなら、その子達も助けてあげたい。











「フェイトさん」

 あの男の尋問を終えたシャーリーが話しかけてきた。

「どうだった?」

 私の問いかけにシャーリーは困ったように眉を曲げて尋問の結果を話してくれた。

「はっきり言って駄目でしたね。彼がジェイル・スカリエッティではなく、最近手配書が出回ったもう一人の男だってことはわかったんですけど」

 シャーリーから尋問の結果を伝えられる。やっぱり捕まえたのはスカリエッティの方じゃないか。前回と同じような行動を取っていたから同一人物だとは思っていたけど。
 それにしてもやっぱり簡単に情報は渡さないか……。それにしてもあの男はいったい何者なんだろう……。管理局にあるデータにも名前すらなかった男。
 やっぱり容姿から推察するとスカリエッティのクローン?

「今度は私が尋問をしてみるから、シャーリーは今回手に入れた情報を処理してもらってもいいかな?」
「はい」

 さぁ、これからが戦いの本番だ。






「何度来たって喋ることはないよ?」

 目の前には、例の男が顔をにやけつかせたまま座っている。

「もしあなたが喋らなければ、あの子達も不利な状況になるんですよ?」

 私の言葉を前にしても男は顔色を一つも変えずに返事をした。

「別にいいよ? っていうかさ。俺がそんなことで喋らないのはもう十分にわかってるんじゃないの?」

「っ!?」

 唇を噛みながらも目の前の男を睨みつける。
 そんなことはわかっていた。わかっていたけど、こんなに簡単にあの子達を切り捨てることが信じられなかった。
 本当にあの子達のことは単なる駒としか考えていないのだろうか!!
 怒りで顔が紅潮しているのが自分でもわかる。あの子達は何度説得しても、この男を庇う為に黙秘を続けているのにこの男は!!

「でも、俺が知りたいことを教えてくれたらさ、あんたが『一番』欲しい情報を喋ってあげるよ?」

 !!!!
 いったいこの男は何を知りたいというんだ。それに私が一番欲しい情報って?

「俺が知りたい情報は、たぶんスバル、ティアナ、ヴァイスの三人が持ってるから、そいつらと話をさせて欲しいわけよ。んで、俺が教えるのはあの子供達についての情報。俺がこの情報を話したら、あいつらに対して情状酌量の余地ができるよ?」

 この男は、散々利用した子達を更に利用しようと言うの!!
 ……でも、たしかに私が一番欲しい情報だ。スカリエッティの居場所や保有しているガジェットの数など聞きたいことはたくさんあるけど、あの子達を救うこの情報は欲しい。 でも、あの三人が持っている情報って何だろう? 共通していることって無いと思うんだけど……。

「……わかりました。私が三人に、話し合いをするように頼んでみます。それでは、そちらの情報を教えてもらえますか?」

 私の言葉に男は笑いながら答えた。

「何言ってんの? そっちが先に決まってるでしょ? 俺はそっちを信用してないんだから」

「私もあなたを信用していません」

 私がそう答えると男はさらに笑いながら話しかけてきた。

「じゃあこの話は終り。俺は本局に移送されるまで寝て過ごすだけだ」

 …………………………。
 結局は私が折れるしか無かった。この男が折れることが無い以上、この男の言葉を信じて交換条件を満たすしか方法が見つからなかった。


~side ティアナ~

 あたしは今、先の戦闘で逮捕した男がいる取調室へスバル、ヴァイス陸曹と共に向かっている。
 フェイトさんがあたし達に頭を下げてお願いしてきたからだ。
 あんなに申し訳なさそうな顔をされて頭を下げられたら、断ることなんて出来ない。それにフェイトさんのあんな顔を見たくない。


「いらっしゃ~い」

 あたし達が部屋に入ると、男が軽薄そうな挨拶を述べてきた。
 ……嫌なタイプだと思った。

「それであたし達に聞きたいことって何?」

 私は男を睨みつけながら問いかけた。

「まぁ聞きたいことは色々あるんだけど、まず最初に聞くけど。ティアナのお兄さんって生きてる?」

 馴れ馴れしさに腹立たしさを覚えながらも、何でこの男は兄さんのことを聞いてくるんだろうと疑問を覚えた。

「あなたに、呼び捨てにされる覚えは有りません。……えぇ、兄は元気ですよ」

 私が答えると男は、顎を手で擦りながら頷いていた。
 一体今の質問に何の意味があったんだろう?

「いやいや、これは失礼した。ランスター二等陸士。ところでお兄さんが、違法魔導師と戦闘をしたことがあると思うんだが、その時の状況を教えてもらえないかね?」

 なんで兄さんのことをそんなに詳しくしっているんだろう?
 いったい兄さんに何があるというんだろう……。

「残念ながら、どの事件かわかりません。もう少し詳しくその事件を教えていただかないとお答えできません」

 確かに、兄さんが違法魔導師と戦ったという話は聞いたことがある。でもそんなことは何度もあった。そのうちのどの事件のことかなんてわからない。
 それにしても、さっきから何度も話し方が変わるこの男との会話はイライラする。

「あ~。んじゃいいや、え~とグ、グランドクロス陸曹? 妹さん失明とかしていない?」

「グランセニックだ。妹は元気だ」

 ヴァイス陸曹が怒りながら答える。たぶん、名前を間違われたことより、妹さんが失明したかと言われたことに怒ってるんだろう。
 私も兄さんのことを死んだことを前提に話されているようでさっきは怒りがこみ上げた。

「おっと、これは失礼。グランセニック陸曹。え~と妹さんが人質に取られた事件があったと思うんだけど、その時に活躍していた人って誰か教えてくれるかな?」

 ヴァイス陸曹が少し目を鋭くしながら答える。

「……クイントさんだ」

 その答えに、男は眉を曲げ苦々しい顔をする。何故そんな顔をするんだろう。この男が何を考えているのかがまったく読めない。
 それにしても、以前ヴァイス陸曹がクイントさんにお世話になったって話していたけど、そんなことがあったんだ。

「マジで? この流れから生きていたとは思ったけど、そんな活躍をしているとなるとクイントが憑依者か?」

 男は何かぶつぶつとつぶやいてる。憑依者?
 一体なんのことだろう?
 突然、男は独り言をやめ、スバルに顔を向け話しかけた。

「ナカジマ二等陸士、君のお母さんは変な言動とかない? 憑依とか言ってない? っていうかどんな人?」

 男の問に対してスバルは顔に怒りを滲ませながら、答える。

「母さんは、そんなことそんなことはしていない! 母さんは私やギン姉、ホクト姉を守ってくる強くて優しい人なんだ!」

 スバルの声が狭い取り調べ室に木霊す。
 スバルが怒るのも当然だ。自分の母親を馬鹿にされたようなことを言われて平常でいられるはずがない。それに私も今の言葉には怒りが湧いてくる。
 男は、そんなスバルの言葉に驚いたのか呆けた顔になっていた。

「ホクト姉って誰?」

 呆けた理由は違ったようだ。この男にはホクトさんが誰か解らなかったらしい。
 それにしても、どうしてこの男は私達の家族のことをここまで詳しく知っているんだろう……。詳しく知っているからこそ呆けたんだろうけど……。じゃあなんで知らなかったんだろう?

「ホクト姉はあたしの大切なおねーちゃんだ」

 スバルは男の発言に肩透かしを食らったようで戸惑いつつもしっかりと答えた。
 それに対して男は……。

「どうみてもそいつが元凶です。本当にありがとうございました」

 そう言うと男は机に突っ伏した。
 その言葉に、スバルはますます怒っているみたいだけど、男はそのことに気づいていないのか話を続けてくる。

「OK、OKわかった。んじゃあ、約束どおりこっちの情報話すからフェイトさんよんどいて」

 何か言おうとするスバルを連れて部屋からでる。
 それにしてもあの男の目的はいったい何だったのだろう……。話の流れからするとホクトさんと関係があるみたいだけど、あの男はホクトさんを知らないようだったし。
 …………あぁーもう!!わかんない!!



~side out~

 現在、取調室ではフェイトと田中が向かい合っていた。

「んじゃぁ話すけど、録音の準備はOK?」

 田中は軽い調子で話しかける。
 それに対しフェイトは、厳しい目をしたまま肯定の言葉を伝える。

「んとなUNズ、っとUNズっていうのはあのクローンの子供達のことな。んで、UNズには製造段階、つまりは生まれる前から洗脳を施してある」

「なっ!?」

 田中はフェイトのリアクションに満足そうに頷くと話を続ける。

「洗脳って言っても、命令を何も考えずに実行するような非人道的なもんじゃないよ。洗脳の内容は簡単に言うと、俺に好意を抱くようにするって代物。ただ単に命令を実行するよりも柔軟な発想を可能にするうえに、命令自体も極度の好意を抱いているから例え命を捨ててでも成し遂げようとするっていう優れもの!」

「それの何処が人道的なものだというんです!」

 フェイトは怒りで声を震わせながら田中に言う。
 それに対して田中は、肩をすくめて対応する。

「別に人道的とは言ってないよ。まぁ一緒かぁ。っと無駄話はそれぐらいにするとして、どうよ役に立つ話だっただろ?」

 フェイトは田中に無駄話と言われ、更に目つきを厳しくするが、反論はせずに話を続ける。

「えぇ、確かに有益な情報でした。でも他の情報について言う気は無いんでしょ?」

 フェイトにとって、有益な情報だと思ったのは本心からだった。あとは、この情報を裏付ける物的証拠を手に入れることが出来れば、情状酌量がされ大幅な減刑がされるだろう。もしかしたら、洗脳の解除と基礎的な学習だけで社会復帰できるかもしれない。
 だが、アジトの場所等も知っておきたい情報でもあった。

「その通り、言うわけにはいかないね」

 フェイトは、目の前の男がこれ以上の情報を吐かないという確信もあった。
 男は必要だから自分にとって不利にならないこの情報を喋っただけで、自分にとって必要でない上に自分が不利になる情報を喋ることはないとフェイトは感じていた。

 こうして、田中とフェイトの3回目の戦いは幕を閉じた。



あとがき
大阪勤務になって始めての投稿。
これは酷い。1月以上開いている。
ネットがあっても書けない時は書けないものなんですね。むしろネットがあるほうが書けないのか。


それにしても、このssの進行が迷走している。



[7818] 第17話 「三人目」
Name: ジャミー◆90775155 ID:b4c2a3d3
Date: 2009/08/15 23:42
猫を被るということ言葉がある。悪いことのように聞こえるがそんなことはない。
仮面を被り本来の己と違う自分を他人に見せるのは普通のことだ。
面接で素の自分を出す奴なんていないだろ?
by田中雄一


第17話 「三人目」




 まぁ、それなりに良い情報は手に入ったか。
 フェイトが出て行ったドアを見つめながら、手に入れた情報について考えを巡らせる。
 とりあえず、わかったのはゼスト隊の面々は生存。ティアナの兄者も生存。スバルの母者も生存。ヴァイスの妹者は失明していない。フェイトさんの制服姿もエロイ。

 そして何よりも大事なのが、スバルにホクトという姉がいることだな。
 この流れからすると、憑依者なんだろうねぇ。クイントになんらかの助言を与えて、ゼスト隊壊滅を阻止って所かな。ヴァイスの妹さん人質事件で、クイントが活躍って所から考えるとこれもホクトが助言してるんだろうねぇ。ということは、ティアナのほうも同じ流れなのか?
 そこから導き出されるホクトの人物像は、最高のハッピーエンドを求めるオリ主。

 ……厄介だよなぁ。色々な意味で。
 これからのことを考えると絶対俺の計画を邪魔するよなぁ。俺の計画だと原作知識を活用して、聖王を機動六課に渡さずに確保、地上本部襲撃で機動六課主要メンバー殺害って作戦だったんだけど、確実に無理だね。ようやく原作知識使えると思ったんだけどなぁ。

 ゼスト隊が生きている時点で敵戦力が大幅にUPしている上に、敵にも憑依者がいるから原作知識が役立つかも微妙。俺と憑依者の間で、相手がいかに原作知識を活用するかを考えて対策を立てるという化かし合いになるだろうからなぁ。

 まぁ、ヴィヴィオはガジェットに反応して起動したっぽいから、トラックにレリックを載せなかったらなんとかなるかなぁ。
 でも、ガジェットが無くても勝手に起動しそうでもあるんだよなぁ。そのための対策もしとけば大丈夫か?

 まぁ、こうやって色々と考えても全部UNズが俺を助けてくれることが前提だけどな(泣)



 そんなことを考えていると、ドアが開いた。
 一人取調室に残されたのは、はやてが直々に取調べでもするためだろうと思っていたが、入ってきたのは予想と反し別の人物だった。スバルと似た顔でスバルよりも長い髪をしていたので、ギンガだと思ったがすぐに違和感を覚えた。
 長い髪と思ったが、よく見れば肩までしかない。
 あぁ、こいつが……。

「初めまして、あんたがホクトか?」

 軽いジャブの代わりに、あくまで笑顔で挨拶をしてくおく。

「初めまして、えぇ私がホクトよ」

 それに対してこのオリ主は笑顔で答えてきやがった。
 可愛いのが逆にむかつくぜい。

「ところで、この会話は監視されていたり、録音されていたりするわけ?」

 重要なことなので聞いておく、監視されているなら憑依者ってことがバレないようにするために、出来る会話が限られるからねぇ。
 まぁ、こいつがバレてもかまわないって考えているならこちらとしては、どうしようもないけどね。必要となればこいつも原作キャラにバラすだろうし、信じられる信じられないは別にして。

「いいえ。ここでの会話は一切記録されていないわ」

「なるほど、それなら安心して会話ができるな」

「えぇ、だから何も心配せずに会話が出来るわよ。介入者さん」

 あくまで笑顔だが目が笑っていない。っていうよりも若干鋭い。
 最高のハッピーエンドを求めるオリ主っていう推測は間違ってなかったというわけか。
「それはお互い様でしょ? 介入者さん」

 向こうも笑顔。こちらも笑顔。
 でも、この空間の沈黙は物凄く剣呑。一応笑顔だけど居た堪れないぃぃぃぃ。

「あなたは、どうして介入なんてするの? それも悪い方に」

 笑顔を消し、真剣な目つきで話してくる。
 ここからが本気と言うわけか。さて、どうするか。正直に話す必要も無いが、話さない必要も無い。
 むしろ真実を俺に都合がいいように折り曲げて伝えた方がいいか……。
 だが、ここはあえて本音でいかせてもらおう。ここで、こいつの心証を良くしていても対した益にはならないだろうし、なによりも俺はこいつに俺の人生について批評してもらいたい。
 別にこいつに共感されたいわけでもないし、否定されても生き方を変える気も無いが、俺の人生が他人にとってはどのように映るのかが知りたい。
 憑依という特異な人生のおかげで他人に話せないから、こんな機会は二度とないかもしれない。

「立場の違いだね」

「立場の違い?」

 首を傾げながら聞き返してきた。

「あんたはナカジマ家に保護されてぬくぬくと育てられてきたんだろうが、俺は最高評議会に捕らわれ違法研究をさせられてきたんだ。自由を得ようと思うなら、管理局を瓦解させなければならないと考えるのは普通だろ?」

 言い終わると、肩を落としながら溜息を吐いた。
 言いたいことを言えたからか、少し肩が軽くなった。

「もしそうだったとしても、いえ、そうだったのなら尚更あの娘達のような不幸な存在を生み出すべきではなかったはずよ! 何故、自分と同じ境遇の者を増やそうというの?!」

 目の前の女は、少し語気を強くして言い放った。
 確かに、言ってることは正論だと思う。でも納得は出来ない。

「それは持てる者のエゴだと思えるけど? クローンを作って管理局に反抗するというのが駄目だと言うのなら、俺はどうすれば良かったんだ?」

 姥捨て山に老人を捨てるのを非人道的だと言うのは簡単だ。だが、それはただの自己満足でしかない。
 老人を捨てなければ、その者は老人共々と餓死するのだから。
 捨てたくて捨てるのではない。捨てると言う道しか見つからないから捨てるのだ。
 文句を言うのなら解決方法も教えなければ意味が無い。

「機動六課に助けを求めるなり、何らかの方法があったはずです」

 厳しい表情を崩すことなく、淡々と言葉を紡いでいくホクト。
 たしかに、それも考えたことが無いわけじゃないけど。

「仮に俺が助けを求めたとして、どうなると言うんだ? とりあえず、機動六課には保護されるとは思うよ。でもさ、その後は? 本局に連れて行かれて、上層部の意向で合法・非合法問わずに抹殺されるのは目に見えているじゃないか」

「…………」

 厳しい表情は崩れることは無かったが、返答は無かった。

「俺がもし今と違う立場だったら、また違った道を歩んでいたはずだよ?」

 好きでこんなことをやっているのではないという意味を込めて言い放つ。
 もし、俺がこいつと同じような境遇なら、それこそ俺が最高のHAPPY ENDを目指していたと思う。


 …………………………………………。
 ごめん。嘘吐いた。
 たぶんハーレムエンド目指してた。出来る出来ないではなく、ハーレムは男の夢だろ!! まったくもって興味がないなんていう奴はいないはずだ!! 
 目指してもたぶん失敗するけどな!!
 俺が馬鹿なことを考えていると、ホクトは表情に若干の憂いを加えた表情で喋りだした。

「……それでも私は、あなたがやってきたことを認めることはできません」

 ホクト的には、『自分の勝手な悲しみに、無関係な人間を巻き込んでいい権利は、
どこの誰にもありはしない』ってことなんだろうねぇ。
 それを別に否定するつもりはない。むしろ立派だなとさえ思える。でも、それに俺が共感することも無い。

「別に認めてもらおうと思って話したわけじゃない」

 まぁ、俺としては最初から俺の意見に賛成してもらえるとは思ってなかった訳だし、言いたいことを言えてスッキリさせてもらったんだから御の字だね。

「……聞いていた話とは、あなたの人物像が違いますね」

 ホクトがポツリと呟いた。

「ん?」

 俺の人物像っていったいどんなのだよ。
 クローン技術を利用してまでロリっ子を大量生産する変態とか思われていたら流石に嫌だぞ。

「報告では、常に相手を馬鹿にしたような態度で挑発的とあったんですけどね。確かに挑発的ではあるけど、報告のようなものと違いますね」

 報告って言うと、フェイト達が書いたものか?
 まぁ、確かにすき放題やったわな。

「RPGって知っているか?」

「RPGですか?」

 ホクトは顔に困惑の表情を浮かべ、俺に聞き返してきた。

「そうだ。ソ連の携帯対戦車グレネードランチャーだ」

「…………」

 ホクトは微妙な表情を浮かべて、こちらを見つめてきた。

「いや、そこはつっこめよ」

 いや、つっこんでくれないと。
 なんだか俺がKYな人みたいじゃないか。

「まぁいい、role playing game つまり役割を演じる遊びだ」

「つまり、あなたの今までの態度は演じていた物だと? しかしいったい何のために?」

 納得し切れていない顔でホクトが尋ねてくる。

「やる気を出すためさ。悪役を演じることで自分を騙し、チート主人公に対しても怯まずに挑発することができる!」

 俺がいい事を言ったところホクトは何故か呆れた顔になった。
 何故、呆れた顔をするのかが理解できない。演じるということは非常に重要なことだし、自分を騙すということも、仕事をするうえで効果的だということは、心理学の本やビジネス書にも書かれていることなんだぞ?

「挑発する必要が何処にあるんですか?」

 あぁ、そっちか。
 なんで挑発すかってそりゃぁ、

「相手を挑発することによって、相手の精神状態を乱し隙を作らせ、そこを攻撃する。アニメや漫画の基本じゃないか」

 実際、この戦法で先の戦闘ではフェイトさんに一撃かませたし悪い戦法ではないはz…………今度は可哀想な者を見る目で見られている気がする。

「それは置いておくとして、あのエリオのクローンもあなたが生み出したのですか? これまでの取り調べでもはぐらかしてきたようですが」

 あれ? なんで話を変えるの?
 別に他の話をするのはいいんだけど、なんでこんな区切りの悪い所でかえるんだ?
 ……まぁいいか、エリオのクローンっていうとカルタスだよな?

「あぁ、一応俺が作ったんだけど、あれって実は憑依者なんだよねぇ」

「!! 憑依者なんですか?!」

 ホクトは驚いたようで目を見開いている。

「名前はカルタスって名乗ってる。あいつがこのあとどういった証言するのか予想できなかったからあいつについての情報は喋らなかったんだよねぇ」

「なるほど。それにしてもどうして、カルタスと名乗っているんですか? うちの部隊のカルタスさんと被っていますけど……」

 えっ?
 被って……いる……だと?

「……そのカルタスってアニメとか漫画でてた?」

 いやいや、まったくに記憶が無いから出てきてはいないはず。

「はい」

「……まったく気が付かなかった」

 俺もカルタスもまったくもって気が付きませんでした。
 誰だよ。108部隊のカルタスって。影薄すぎ、出演しているならもっと濃いキャラになってくれないと。
 おかげでいらん恥を掻いてしまったではないか。

「でも別にどうでもいいや、影が薄すぎたため気づかなかっただけです。因果関係は有りません」

「……わかりました」

 なんかホクトが若干疲れているように見えるけど気のせいだよね。
 俺が悪いんじゃないよね。
 雰囲気が悪いし話題を変えるとしよう。

「で、あんたはこれからどうする気?」

「これからとは?」

 ホクトは、疲れた顔を一変させ厳しい表情に戻っていた。
 会話がフレンドリーになっていたけど、こっちへの警戒は解けていなかったみたいだねぇ。
 ただのお人よしではないようだ。でも、顔に出やすいから効果は半減だな。

「ヴィヴィオを攫わせないとか、レジアスを死なせないとか、サウンドステージXやForceでも介入するのかってこと」

「それを聞いてどうしようというんです?」

 さっきよりも目を鋭くして聞いてくる。
 警戒レベルを上げられたか、もし助け出されたら活用できるかと思って聞き出そうとしたが無理そうだな。

「なに、もう俺はもう舞台から強制退場だからねぇ。これからこの物語がどうなるのか気になるだけだよ。おそらくこの後は、一生を牢で過ごすか最高評議会に暗殺されるかだからねぇ」

「……………………。残念ながらXやForceは知らないのでどうしようもありませんが、私は少しでもこの物語を幸せな物語にしようと思っています」

 ホクトはいい終わると席を立ち出口に向かって行く。
 なるほどねぇ。出来る限りのハッピーエンドねぇ。まぁ、せいぜい頑張ればいいと思うよ。
 そんなことを考えていると、ホクトはこちらを振り向かずに話しかけてきた。

「地上本部には私の知り合いがいます。あなたを暗殺なんてさせません。それにもしあなたが反省し、やり直す気があるのなら私はあなたを支援してもかまいません」

 言い終えると、ホクトは扉から出て行った。

「…………」

 その幸せな物語に俺も入っているって言いたいのかねぇ。
 結局はただのお人よしさんだな。
 まぁ、悪くは無いと思うよ。少しでも人を幸せにしようって考えて、他人のために何かをするってのはなかなかできる事じゃないからねぇ。


 でも俺はそんな夢物語よりも、現実的な道の方が好みだけどね。



[7818] 第18話 「ドナドナな田中」
Name: ジャミー◆90775155 ID:b4c2a3d3
Date: 2009/09/12 22:58
自分が考えていた人物像と実際の人物では違うことがある。
しかしそれを嘆いていても仕方がない。
重要なのはこちらに与える結果なのだと割り切ることだ。
by田中雄一


第17話 「ドナドナな田中」





~side NO893~

 現在、私はマスターを救出するための作戦を実行しようとしている。今日、マスターは管理局から本局にヘリで移送させられることになっている。そこを襲撃する。
 こんなことをしているというのもあの愚か者共のせいだ。製造された順番が50番以内というだけでマスターの周りで活動することを許されただけの能無しだ。
 幸運にもマスターのそばで活動できるというのに、マスターを守ることも出来ずに管理局に捕まった愚かな姉達。

 しかし、不謹慎だけどこれは私にとってのチャンスでもある。
 本来なら私は管理局襲撃時の部隊に配属されるはずだった。でもマスターが捕まったため、現段階においてもっともガジェット運用能力のある私が救出作戦を実行することになった。
 もしこの作戦が成功したら、私がマスターの傍で活動を続けることも可能になる。そうなれば、私がマスターにとっての一番になることも不可能じゃない。まぁ、作戦に参加する配下の妹達も傍にいることになるだろうけど、それは我慢しよう。ただし2番以下ならね。
 それ以上を望むなら退場してもらおう。何処からとは言わないけれどね。
 まぁいいわ。今は作戦のことだけを考えましょう。捕らぬ狸の皮算用をしても仕方が無いしね。


 ガジェットのレーダーがマスターを乗せたヘリを捉えた。ガジェットから送られてくるデータを確認すると、自然と口元が綻んでしまう。
 時間通りね。地上本部から流される情報もそれなりに使えるわね。
 さてと、それでは私の夢を実現するために動くとしましょう。





~side out~

 現在ヘリの中には、パイロットであるヴァイスの他に、なのは、フェイト、ヴィータ、シグナムそして田中がいた。
 会話はない。田中が他の5人と話をすることもなければ、4人が犯罪者の前で会話をすることもない。

 だが、突如その沈黙は破られた。

「!! ミサイルにロックされました!!」

 ヴァイスの声によって緊張がはしる。

「私とヴィータが出る。テスタロッサ達は、ヘリの防衛を頼む」

「うん。シグナム達も気をつけて」

 シグナムとフェイトが声を掛け合い終わると、シグナムとヴィータはヘリから出撃した。

















「ちっ!! うじゃうじゃといやがる」

 ヴィータは愚痴を零すが、手は止めずに次々にミサイルを撃墜していく。

「たしかに切りが無いな」

 シグナムも愚痴を零す。
 ヴィータとシグナムの前には、約50機のⅡ型が2機ごとに編隊を組んで飛行している。
 すぐにでも壊滅させたいが、Ⅱ型はアウトレンジからのミサイル攻撃を主体にした戦法で襲ってくるため、ベルカ式の二人ではなかなか数を減らすことができない。
 また、接近し破壊しようにもⅡ型が広範囲に散らばっているため、接近してもすべてを破壊することができない。下手をすれば離れているⅡ型がヘリの方へ向かわれてしまうという危険も付きまとうためある程度の距離を保ちすべての敵を牽制しなければならない。

 むろんシュワルベフリーゲンやシュツルムファルケンといった遠距離魔法を使用すれば撃墜することは可能だが、シュツルムファルケンは隙が大き過ぎる上に多数を相手にするには向いていないため使用できない。
 よってヴィータのシュワルベフリーゲンに頼ることになるが、ミサイルを絶えず発射してくるため迎撃にも力を入れねばならず、結果として撃墜数は上がらない。

「でも、ヘリから遠ざけることはできたな」

 シュワルベフリーゲンでミサイルを迎撃しながらヴィータが呟いた。
 時折、何体かのⅡ型がヘリへ向かおうとするが、それらは全て二人によって撃墜されており、Ⅱ型をこの場にとどめることに成功している。そのおかげでヘリはすでに20km以上離れている。

「だが少し簡単過ぎたのではないか?」

「そうか? こいつらが賢くないのは前からだろ?」

 シグナムが疑問をあげるが、ヴィータは軽く返す。
 いかに二人が強いといっても、ガジェットは数が多いため無理に突破をかければ半分とは言わないが、四分の一程度は突破することが可能だ。そう考え疑問を挙げたシグナムだった。

「たしかに戦法は変わってるみてぇだけど、動きはパターン化されたことの繰り返しみてぇだし考えすぎじゃないのか?」

「それもそうか……」

 納得しきれた訳ではなかったが、シグナムも納得の声を返した。
 今回は撃墜に梃子摺っているが、それは相手の動きが良いからではない。戦闘アルゴリズムが変わっているだけで性能自体はそれほど変わってはいない。


「ん? 動きが変わった?」

 動きを変化させたⅡ型を見てヴィータが呟いた。
 2機での編隊は変わっていないが、今まではバラバラに行動し攻撃してきていたのが、全ての機体がこちらから大きく離れていった。

 それを見たヴィータとシグナムは逃げられると思い。追撃を始めようとした。
 これだけのガジェットを見逃せば後の憂いになる上に機動六課の立場も悪くなる。そう考えた二人は全力で追撃を始めた。
 これ以上、ヘリとの距離が開くことには躊躇いがあったが、フェイトとなのはが機械兵器ごときに不覚を取ることは万に一つも無いと考え行動を開始した。














 シグナムとヴィータはヘリからⅡ型を引き離すことに成功した。
 しかし、これは言い換えればⅡ型がヘリから二人を引き離したとも言える。


 シグナムとヴィータの二人が追撃を始めたのと同時にヘリでも動きがあった。





 現在、ヘリの中にいるのはバインドで簀巻きにされた田中と操縦しているヴァイスだけで、なのはとフェイトは外でヘリと平行飛行し、護衛に当たっていた。

「フェイトちゃん!!」

 なのはがフェイトに注意を促した。
 そしてすぐに二人はバリアを張り防御にあたった。

 バリアの発生とほぼ同時に光の濁流が二人に襲い掛かかる。
 光の発生源には原作ではⅢ型と呼ばれるガジェット2体が地上に鎮座していた。ただし、原作と違い大型の砲を装備し、単純な出力さだけでも数倍の性能差を誇る。

「あれは新型?」

 フェイトがⅢ型を見て呟いたが、次の瞬間には意識を切り替えた。
 地上から大量のⅡ型が上昇してきていたのだ。

「なのは!」

「うん!」

 二人は完全な戦闘態勢に入り迎え撃とうとしていた。

「これは罠に嵌められちゃったかな?」

「……たぶん」

 なのはが苦い顔をしながらフェイトに問いかけ、それに対しフェイトも苦い顔で答えた。
 今まで何の反応が無かった事から、ガジェットは稼動していない状態で地上に配置されていたことが窺える。Ⅱ型から回避できたと思っていたが、それはただ単にこの場所に追い込まれただけだったのだと二人は悟ったのだ。

 そして状況はさらに悪化する。

「駄目だ。念話が使えない……」

 二人からは見えない位置にいるが、強力なAMF発生装置を装備したⅢ型が多数取り囲み、念話を使用できないようにしている。また揚がってきたⅡ型は包囲網を形成しようとしていた。 

 アグスタを経験していない彼女達には、ガジェットは設定された目標に沿って行動するといった固定概念があった。随時、人がガジェットに命令を与え続け操作するという可能性を失念していた。





「今のところ順調ね。でもここからが本番か……」

 NO893は離れた場所から戦闘の様子を窺っていた。
 今回の作戦は勿論、田中の救出が第一目標であるが別の目標もある。
 今回の作戦に参加しているガジェットは地上本部襲撃時に使用する部隊をそのまま使用している。そしてその中のⅢ型を出撃させていることが、その別の目標行う理由に直結している。

 本来ならⅢ型は、地上本部の襲撃で初実戦を行う予定であった。
 地上本部の襲撃と同時に高ランク魔導師及び教導隊に襲撃をかけ壊滅させ、Ⅲ型への有効な対策を立てる事を不可能にし、そのままゆりかご浮上を行う手筈であった。
 Ⅲ型を管理局に認知させないことで、対策をたてさせず技術的奇襲を行い圧倒するはずであったが、今回の作戦で認知されてしまう恐れがでたのである。

 よって今回の作戦では、Ⅲ型を目撃した人物を全て抹消する必要がでてきたのである。そのため、Ⅲ型の高濃度なAMFを加えたジャミングを行いあらゆる通信を妨害しているのである。

「さぁ、管理局のエースの皆様には舞台から退場していただきましょう。マスターを連れ去ったことを後悔しながら死んでいってもらいなさい」

 NO893が配下の妹に声をかけ、作戦を第二段階へと移行させた。





あとがき
UMズがなんだかヤンデレ気味です。こんな思考をしていても見た目はとてとて歩く美幼女なんだぜ。
最初の設定では、心優しい少女って設定だったはずなんだが一体何を間違えたんだか……。


それはそうと今回は少なめです。
本当はもう少し先まで進めたかったんですが、昨日は弟をオープンキャンパスへ連れて行ったりしていて時間切れになりました。
なら完成してからとも思ったんですが、また明日から滋賀の方へ行かなくてはならなず、次に投稿できるのは遅くなりそうなんで投稿しちゃいました。



[7818] 第19話 「田中救出戦」
Name: ジャミー◆90775155 ID:b4c2a3d3
Date: 2009/09/12 22:58
他人の思考を完全に読むことは不可能である。
そこから思い違いを起こし、ミスを犯す。
重要なのは客観的に状況を見ることである。
by田中雄一


第19話 「田中救出戦」





 前回から簀巻きにされている田中です。
 手足だけじゃなくても口も猿轡状態で喋ることもままなりません。この扱いは人権侵害じゃないかと思います。法を司る管理局がこんなことをしていいのでしょうか。
 ところで何故簀巻きにされているかと申しますと


~回想~

「ちょ!!!! ロックされてる!! ロックされてる!! グランドニック陸曹右によけろ!!」

「うるせぇぇぇ!! そんなことは言われなくてもわかってる!! それに俺はグランセニックだ!! 地上本部聞こえるか? こちら……」

 うるせぇぇぇとは何だ。ロックされてるんだぞ。それに俺を無視して応援なんて頼んでるんじゃない。
 後ろではフェイトとシグナムが何か話しているが、そんなのは今はどうでもいい。とにかく回避するんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 っと、ロックが消えた?
 よく見るといつの間にか出撃したシグナムとヴィータが撃墜したようだ。
 ふぅ。脅かしやがって。

「って、またロックされてる?! しかも今度は2基にロックされてる!!」

 やばい!! やばい!! これだけ何度もロックするってことは評議会の暗殺部隊か?!

「回避、回避するんだグランセドリック陸曹ぉぉぉぉぉぉ!!」

 グランドセドリック陸曹の肩を揺らしながら回避を促す。

「うお!! 肩を揺らすな!! 操縦できないだろうが!! なのはさん、すいませんがこいつを縛っておいてください」

「え? あ、うん任せておいて」

 先程までシグナムたちの戦闘を見ていたなのはは、突然声をかけられて事に驚いたようだったが、すぐに気を取り直してこちらに向かってレイジングハートを向けようと、って縛るだとおぉぉぉっ!!

「えぇぇい止めろぉぉぉぉ」

 こちらの抵抗も虚しくバインドで縛られた。

「ついでに口の方も閉じさせておいてください。うるさいと集中できないので」

 グランセドリック陸曹の悪魔のような声が耳に入った。

~回想終了~


 いやさ、取り乱して暴れたのは悪かったと思うよ。でもさ、この扱いはないんでないの?
 こんな扱いを平然とするのに、司法組織なんてよく言えるもんだ。


 さて、愚痴はこれぐらいにして冷静に観察をするとしよう。
 さっきまでは取り乱していたためミサイルしか見えてなかったが、今だとミサイルを撃っているのがⅡ型だとわかるので安心できる。
 何故なら、仮にスカさんに渡したⅡ型が襲ってきているのだとしても、UNズが上位者として割り込み命令をすることができるのでいざとなったらどうにかしてくれるだろう。

 それに、あれだけ大量のⅡ型を運用しているって事はUNズが操作している可能性が高いのでさらに安心。おそらく戦力を分断するために攻撃を仕掛けているんだろう。
 まぁ、UNズが俺を裏切って攻撃をしてきたって可能性もあるけどそんなことは…………ないよな?

 いやいやいや、よく考えればヘリをロックしたミサイルの数自体も少なかったし!!
 なのは達が迎撃できる分だけ撃ちこんだって考えれば納得できる。それにいざとなればミサイルを自爆させたらいいだけだから撃ちこんだとも考えられる。
 うん。大丈夫だ。俺は裏切られてない!!







~side out~

 Ⅱ型はミサイルと熱光線で牽制しつつヘリを包囲し始めた。
 ただ、ヘリの進行方向から包囲を始めたため、ヘリの後方からはまだ脱出できる。

「ヴァイス君、私とフェイトちゃんでガジェットの足止めをするからその間に退避を」

「了解しました」

 なのはの声にヴァイスが返事を返すと同時にヘリが反転を開始した。
 退避方向にまた未稼働なガジェットが配置されている心配はあるが、リミッターを解除できない状態では一人で応戦しきれない。一人は護衛としてヘリの傍にいたいが、一人で応戦した結果、突破されては意味が無い。
 ここが廃棄都市であるため、敵にとってガジェットを隠す場所に困らないことが悩みだが、地上をなのはのサーチャーで索敵しながら進めば完全な奇襲は阻止できるということと、高度を保っていれば多少の攻撃ならヴァイスの腕があれば回避できるため、なのははヘリ単独での退避を決めた。

 ヘリが反転を開始するのと同時にⅡ型の猛攻が始まった。大量のミサイルを吐き出し、、飽和攻撃を図る。
 そしてⅢ型はエネルギーをチャージするための時間稼ぎを行うため、建物の影へと多脚の脚を利用し移動を開始した。


 大量に押し寄せるミサイルに対して、フェイトが広域攻撃魔法であるサンダーフォールにてミサイルを一掃し、なのはがアクセルシューターで撃ち漏らしを掃討していく。
 リミッターを掛けられているとはいえ、ガジェット程度ではそう簡単に落とされはしない。ミサイルの迎撃を終えると砲撃魔法でⅡ型の数を削っていく。
 しかし、その後も続々とⅡ型が浮上してきたため、まだ空中には250機を越えるⅡ型が飛んでおり、地上にも少なくない数のⅢ型が蠢いている。

 このⅡ型は大型化によってミサイルを本体に収納することが可能となっており、ミサイル搭載数が大幅に増やされている。収納されているものと露出している物を合わせると1機当たり12発のミサイル装備している。その結果、敵戦力が保有するミサイルは、12×250で3000発にもなっている。。
 そしてⅡ型はそのミサイルの数を活かし、二人が攻撃をする間を与えずに攻め続ける。二人が撃墜したⅡ型は最初のカウンターで放った砲撃魔法以降では、ミサイルを使い切り熱光線で攻撃を仕掛けに来た数機だけだ。

 しかしその熱光線で攻撃を仕掛けてくる機体も容易に撃墜できる相手ではない。
 Ⅱ型はミサイルと違い直線で接近してくるわけではない。並の空戦魔導師よりも機動力のあるⅡ型は、半端な攻撃ならすり抜けて接近してくる。
 そして現在も、6機のⅡ型がサンダーフォールによる攻撃を回避した後に、20発近くのミサイルと共に二人に接近していった。

「私が迎撃する。なのははミサイルを願い」

 フェイトがⅡ型へ接近する。高速で接近されたためⅡ型はまともに回避行動を取れず、擦れ違いざまに3機が切り捨てられる。残りの3機は散開するが、すぐさま急制動によって反転し熱光線を放ちながら向かっていく。

「くっ、早い! 前回の時よりも機動が上がってる」

 フェイトは放たれる熱光線を紙一重で回避しつつ、変則的な回避運動を高速で行う前方の2機に対してプラズマランサーで迎撃を行う。接近するプラズマランサーに対して2機は誘導に対応しきれずに撃墜されるが、1機はスラスターを吹かし、力ずくで制動をかけ回避する。そして次の瞬間には射線上にフェイトを捉える。
 そして、Ⅱ型が熱光線を放とうとしていた。

「くっ!」

 フェイトは襲ってくる衝撃に体を強張らせた瞬間、残りの1機が爆散した。
 フェイトが辺りを見回すと、親指を立てたなのはがいた。

「ありがとう、なのは」

 ミサイルを迎撃し終えたなのはが、アクセルシューターでⅡ型を撃墜したのだ。
 フェイトは笑顔でなのはに礼を言う。

「うん。でもまだ終りじゃないよ」

 それに対してなのはもフェイトに笑顔で答える。
 しかし、なのはの言う通りまだ終りではない。Ⅱ型はまた新たなミサイルを放とうとしていた。





「いくらなんでもズル過ぎるんじゃない?」

 NO893は戦闘の様子をモニターで見ながら呟いた。
 すでに400発近くのミサイルが撃たれているのに直撃弾はまだでていない。数十発は命中しているが、バリアで防がれているため戦果は二人の魔力を多く消耗させただけで効果は薄い。

「あれでリミッターが掛けられているっていうの? 並の空戦魔道師なら、最初の一波で壊滅しているのに」

 Ⅱ型は原作でも一般的な空戦魔道師を凌駕する機動性を持たされている。しかし、このⅡ型は田中の思想の元に主力兵器として開発されており、旋回能力、速力どちらも原作を上回る能力を持っている。
 普通、旋回能力は速力に対して反比例するものだが、無人であるため無理な機体制動を可能とし、高度な旋回能力を持っている。

 そのⅡ型に対して、砲撃や大規模魔法で撃墜するだけならまだしも、接近し切り捨てるという馬鹿げた芸当まで披露しているのだ。

「でも、どれだけ頑張れるのかしら? いくら質が良くても圧倒的な量を覆すのは無理よ?」






 NO893の想像通り、二人は圧倒的な物量差で自然と防戦一方になっていく。
 1対1なら圧倒的である高ランク魔道師でも、大多数を総合した戦力には勝てない。攻撃力だけならリミッターがない状態であれば対抗できるかもしれない。しかし手数だけはどうしようもない。誘導弾を放つにしても数百も操ることはできない。
 現在は、一度に100発近く飛来するミサイルに対してサンダーフォールで一掃することでなんとか対応しているに過ぎない。

 しかし、当然撃ち漏らしも出てくる。そして今、撃ち漏らした20発近くのミサイルがなのはに迫っていた。先程までなら、なのはがそれらを誘導弾で撃ち落としていのだが、今回はそれと同時に30機近いⅡ型がヘリへ向かっていた。
 Ⅱ型かミサイルのどちらかしか撃ち落とすことが出来ない。フェイトはサンダーフォールを撃った直後で魔法を唱えるのが間に合わない状況である。

 しかし、なのはは迷わずアクセルシューターをミサイルに向けて放つ。

 アクセルシュータは1発も狙いを外さずに全弾がミサイルに命中したが、それと同時にミサイルがなのはに命中した。

「なのは!!」

 フェイトが悲鳴に近い声でなのはの名を呼ぶ。
 硝煙が立ち籠めるていおり、なのはの姿は確認できない。フェイトは焦燥感だけが積もっていく。

「フェイトちゃん。私は大丈夫だから」

 硝煙の中からなのはの声が聞こえてきた。
 その声にフェイトは安堵の溜息を吐いた。しかし、硝煙が晴れると逆に息を呑んだ。
 硝煙から現れたなのはは、傷だらけであった。おそらくシールドが間に合わずバリアジャケットだけで防いだのであろう。

「なのは!!」

「大丈夫。まだやれるよ。それにまだ終われないよ」

 なのはの言うとおり、戦闘の妨げになるような致命的な傷はなさそうだが、放っておいて良い傷などない。
 しかし、フェイトはなのはの言葉を聞き諦めたようだ。なのはの言うようにまだ戦闘は終わっていない。今の攻防でヘリとガジェットの距離をさらに開けることには成功したが、気を抜けばすぐにでも抜かれそうである。敵にはそれだけの数がいる。
 フェイトとしてはすぐにでもなのはに治療を受けさせたいが、そんなことをすればヘリが襲われるのは火を見るよりも明らかだ。

 二人はガジェットの侵攻を食い止めるために、自身の疲労が溜まるのもかまわずに魔法での攻撃をより一層強めていった。







「よく頑張るわねぇ」

 なのはやフェイトが戦っている地から遠く離れた場所に佇むNO893は楽しそうな声で呟いた。
 予想以上に二人が抵抗したおかげで、予想に反しほとんど何のダメージも与えていないことやこちらの損害が大きいことは彼女にとって面白くなかったが、全体的に見れば彼女にとって何の問題もなかった。
 ガジェットから送られてくる映像に映っている必死に戦うなのはやフェイトは、彼女から見たら愚かしいことこの上なかったのだから自然と笑みも浮かぶ。

「貴女達が必死になってガジェットを食い止めれば食い止めるほど私の作戦が成功する確率が上がるというのに……」

 NO893は虚しそうな声をあげた。
 しかし顔は満面の笑みを浮かべていた。


「さてと、じゃあマスターは返してもらうわよ?」








 グシャリ
 最初、ヴァイスはそれが何の音かわからなかった。
 だが次の瞬間、体にかかる風圧でヘリに穴が開いたことを理解した。彼が振り向いた先では、ヘリに切り込みを入れてそこから抉じ開けようとしている透明な刃物が見えた。
 彼の視線の先では、簀巻きされ転がっている田中が悲鳴を上げ、穴から離れようとしていた。

 だが次の瞬間には穴が広がりそこから透明な何かが入り込み、逃れようとしていた田中を掴み上げた。

「クソ!!」

 ヴァイスはコックピットに固定されていたストームレイダーを手に取りシュートバレットを放つが、放たれたシュートバレットは空中でかき消された。そしてすぐに見えない何かは田中を連れてヘリから離れていった。ヘリに止めの一撃を加えてから。







 Ⅳ型
 ステルス能力を有するガジェットである。
 そのステルス能力は、至近距離まで近づいてもヴィータに気付かれないほどである。
 3期前にはなのはを撃墜し、3期ではヴィータを半殺しにしたりと大活躍である。



~あとがき~
タイトルに習作と付けました。
ネタにするか、習作にするか迷いましたが習作の方が幅が広そうなのでこっちにしました。
a-23さん御指摘ありがとうございました。




滋賀から帰還しました。いや本当は9月上旬には帰還していて、先週には投稿しようと思っていたんですが、ちょっと家のほうで色々有りまして投稿が遅れました。

そして投稿したのはいいけど話が進まねぇwww
しかも戦闘描写が下手糞だ。まだキャラごとの心理を書いているほうがマシな気もするw
もうちょっと戦闘が続きそうだけど勘弁してください。

たぶん次は来週に投稿します。……出来たらいいなぁ。



[7818] 第20話 「数の暴力」
Name: ジャミー◆90775155 ID:b4c2a3d3
Date: 2009/10/27 20:25
表舞台に登場するしないは大きな問題ではない。
目的の達成への道を進んでいるのかが問題だ。
目立たずとも成果を挙げさえすればいい。例え他人の成果でも。
by田中雄一


第20話 「数の暴力」





~side out~

 ヴィータとシグナムが異変に気が付いたのは、逃亡し始めたⅡ型を追いかけ始めてすぐであった。

「さっきから念話がまったく通じねぇ!!」

 ヴィータが苛立った口調で叫ぶ。
 それを聞いたシグナムも念話を試みるがまったく通じない。
 逃亡したⅡ型の追撃を始めたことをなのは達に伝えようとしたがまったく通じない。

「くっ! 罠に嵌められたか。すぐに引き返……」

 シグナムがヴィータに話しかけようとした時、さらに後方から多数のⅡ型が現れた。

「ちっ!! あたし達が追いかけてくるのも計算済みだったってことかよ」

 前方に27機、後方に約100機のⅡ型が展開している。
 これでは当分の間、なのは達と合流することはできない。

「いったい何機のガジェットを投入するつもりなんだ……」

 シグナムが歯を噛み締めながら呟いた。
 シグナムは、今まで何度もガジェットと交戦したことが何度もあったが、ここまでの物量に襲われたことは無かった。多くても50機程度が限度であった。
 これまで、戦闘という目的で大量に投入された事など無かった。これはガジェットという存在の意味を変えるものであった。

「だけど、そんなの関係ねぇ!! まとめてブッ潰すだけだ!!」

 ヴィータが吼える。
 しかし、声とは裏腹にその表情は焦りに満ちていた。

(あたしが、あの時にシグナムの疑問にもっと真面目に答えていればこんな罠に嵌らなかったかもしれないのに……。あたしはあんな思いはもう二度としたくねぇのに!!)

 ヴィータはグラーフアイゼンを握り締めガジェットの群を迎え撃とうとしていた。







 ヴィータとシグナムを遠くから見ていたものがいた。
 NO893の配下のUNズの一人であった。

 彼女の役割は、ヘリについている護衛の分散と隔離であった。
 彼女は、田中の直接的な救助とは関係ない今回の戦闘に不満があった。
 しかし彼女にとって、ここでの彼女の働きが田中のためになることと、NO893が今後の進退を約束してくれたことはとても大きかった。

「でも、NO893を信頼するのは危険よね。だって彼女も私なんだし」

 NUズは基本的な知識や人格は製造段階において同じであるため、ある程度の考えはお互いにわかる。ようするに彼女達の腹黒い考えもお互いにばれている。

 ようするに田中を独り占めしたいのである。見た目が幼子であるのでこの考えはとても微笑ましく思える。が、実際はそんなことはない。
 邪魔になる相手を排除してでもと考えるあたり物騒である。相手を蹴り落とすなんて当たり前、場合によっては直接的な排除まで考える。

 しかし、考えるだけ実行しない辺りの理性がNO893を含めて働いているのは不幸中の幸いともいえる。ただし実行しない理由が論理的なものではなく、実際に排除が始まると際限が無くなり互いの生産能率が壊滅状態になることは確実であり、田中に見捨てられる可能性が高いという打算的なものである。

 そのような考えから、このまま作戦通り二人の足止めをしてさえいれば、NO893からの報酬がもらえるというのは信用できる。

「でも、今のうちに少しでもポイントを高めておいた方がいいわね。このままだとNO893のポイントが高いのは確実だしね」

 蹴り落とすことはしないが出し抜くことは常に考えている。
 何故なら彼女も他の彼女達も、他者より少しでも多くの愛が欲しいのだから。

「という訳で、私のために死んでね」

 彼女は笑顔でガジェットに命令を与えていく。








 なのは達と合流するためにⅡ型との交戦を始めた二人だったが、大きく苦戦させられていた。
 Ⅱ型を迎え撃とうとしていた二人に対して、ガジェットによる最初の攻撃は先程と同じくアウトレンジからのミサイル攻撃であった。ただし、もう時間稼ぎをする気がないため1機当たり6発の一斉射撃であった。
 前方のⅡ型はほとんどのミサイルのを使い果たしているため、後方に展開しているガジェットからだけの攻撃であったとはいえ600発を超えるミサイルが二人に殺到する。

 それに対して、シュワルベフリーゲンやシュランゲバイセンを用いての迎撃と回避運動をとることで、100発以上のミサイルを撃墜し、何十発ものミサイルを回避する。そのおかげで命中弾はそれほど多くない。しかし、回避されたミサイルは追尾機能により再び二人に襲い掛かる。

 回避と撃墜を繰り返しさらに撃墜数を増やしていく二人だが、Ⅱ型はそんな二人を見逃したりはしない。もう時間稼ぎをするつもりなどない彼らが二人を待つ理由などない。
 本体に収納されていたミサイルを体外に出し発射準備を整えたⅡ型も二人へと襲い掛かる。
 Ⅱ型の参戦によって、ミサイルに対しての回避が阻害されバリアによる防御が主体になっていく。その結果、魔力の消耗を強いられる。






 Ⅱ型に搭載されているAMF発生装置はⅠ型と同程度であるうえに、高速移動を繰り返すため移動範囲が大きくなってしまい濃度が薄まるためあまり効果は高くない。せいぜい命中する魔力弾の威力を減らし、防御能力を高める程度だ。

 しかしそれでも何十機と集まり相手を取り囲めば相手の魔法を阻害する本来の効果を発揮する。
 高ランク魔導師相手にはそれなりの効果でしかないが、ギリギリの戦いを行っている者には致命的なものとなる。
 ほんの僅かに遅くなる飛行速度、魔法展開、そして少しずつ増える魔力消費量。

 そしてそれらは命中弾の増加に繋がっていく。
 ミサイルや熱光線が命中するたびに二人は苦悶表情を見せ傷つけられていく、バリアが間に合わない場面も出てきているのだ。

 そしてⅡ型は今までとは違い、2機1組であることを生かしての攻撃を行っている。1機が攻撃・追撃を行っている間、もう1機が上空もしくは後方にて援護・哨戒を行う。
 1機を攻撃すればもう一機からの攻撃を受ける。二人は確実に消耗させられていく。

 二人途中から大きく戦い方を変えたⅡ型に驚き戸惑っていた。

「…………こいつら、今までと動きが全然違う」

 あまりの違いに思わずヴィータから声が零れ落ちる。

 今まで、ヴィータたちが戦ってきたガジェットはほとんどがスカリエッティーが運用するガジェットだ。 
 もちろん田中を逮捕した時に一度戦っているが、その時はリミッターの解除が行われていたうえに、それほどガジェットの数も多くなかったため簡単に破壊できた。その結果、ガジェットの違いについてはあまり感じることが無かった。


 スカリエッティーの元で運用されているガジェットは全て探索を目的にされており、戦闘はそこまで考慮されていなかった。
 並みの局員相手だとAMFと機動力そして数で圧倒できるため、ガジェット用の戦術・戦法については研究が行われていない。

 しかし田中の下で運用されているガジェットは、戦闘を目的とした効率良い運用が研究されており、基本的な戦術・戦法はもちろん組み込まれている。

 その結果がこの戦闘である。
 Ⅱ型は機械であることを生かして互いに高速通信を行い、全機の情報を統合し敵味方の位置関係を完全に把握する。
 そして2機1組の基本的なロッテ戦法を基本としつつ、その情報を元に互いを援護行いあう。
 最適な援護によって効率的な損害と戦果を実現するのだ。




「大丈夫か、ヴィータ?」

 回避運動をとりながら、シグナムがヴィータに声をかける。

「あぁ、あたしは大丈夫だ。そう言うシグナムの方こそ大丈夫なのかよ」

 シュワルベフリーゲンでまた1機を叩き落しながら、そう答える。

「むろんだ」

 それに対して、シグナムもシュランゲバイセンで3機まとめて撃墜しながら答える。
 しかし二人の言葉とは裏腹に息は荒く、疲弊しているのは明らかだった。
 それに対して、ガジェットはミサイルの大半を失ったとはいえ、まだ100機近くが残っており、戦闘能力は健在であった。

「くそ! これじゃあ、向こうに合流するのは無理みてぇだな」

「あぁ、今はあの二人を信じよう」

 ヴィータが悔しそうな言葉に、シグナムが答える。だがその顔もまた悔しさに満ちていた。
 無理をすればⅡ型を振り切って二人と合流することはできるだろう。しかし、おそらくⅡ型もすぐに追いつくことになる。そうなると、なのはとフェイトに余計な負担をかける可能性がある。

 しかし、何時までも考え事をしていることは出来ない。次々とⅡ型が二人に襲い掛かってきているのだから。

「ならせめて、ここで全機墜してやる」

 ヴィータがアイゼンをⅡ型に向けて宣言をする。

「だな」

 それにシグナムも静かに同意する。
 そして、二人とⅡ型の殲滅戦が始まった。


~あとがき~
はい。一昨日にまた一歩おっさん度を高めたジャミーです。
今回は全然話が進んでいません。しかも田中が出てきてません。最初の三行で出てないことの言い訳をしているだけです。

しかし戦闘ばっかり書いててもだれますよね。読者的に。作者的には楽しいですがw
戦闘描写がうまく書けるのならまた別なんでしょうけどねぇ。

次には話を進めて行きたいと思います。



ところで、アコース査察官の思考捜査って記憶ごっそり見れるんでしたっけ?
六課にカルタスとUNズが捕まっているんだけどwww
うっかり、こいつのレアスキルを忘れてたw

これだからレアスキル持ちは嫌いなんだよ┐(´Д`)┌

投稿2009/09/21 20:27



[7818] 第21話 「過去」
Name: ジャミー◆90775155 ID:b4c2a3d3
Date: 2009/10/27 23:44
きっかけが無いとなかなか自分を見直すことはできない。
ちょっとした不幸で直す所に気付くことができたのならそれは幸運だ。
何故ならその先に起きるかもしれなかった大きな不幸を予防することができたのだから
by田中雄一


第21話 「過去」





 現在、空中遊泳を楽しんでいる田中です。
 いったい何が起ったのかと思ったら犯人はⅣ型でした。ステルス機能をフルに利用しての奇襲でしたよ。ふぅ、脅かしやがって。もう少しで悲鳴をあげるところ所だったじゃないか。
 しかしステルスのおかげで、何の支えも無く浮いているように見えるため恐ろしさが継続中で悲鳴をあげそうなんだけどな!

 まぁ、今現在は比較的に落ち着いているため落下していくヘリとグラッセ……ヴァイスを観察する余裕はあります。
 そういや確かヴァイスって空戦能力無かったよな? 魔力が少なかったはずだし。
 ……………………南無。




 まぁいいか。俺には関係ないし。
 でもまぁ、これでこの戦闘がUNズの救出作戦だったとわかって一安心。…………ここまできていきなりⅣ型に落とされるとかは無いよね?


 何にせよこれで殺される心配も無くなったわけだ。うん。
 おかげで不完全燃焼のまま表舞台からの退場は避けられた。
 といっても、このまま逃げ切れたらの話なんだけどねぇ。そのへんは、UNズを信頼するしかないか。


 さて、しかしこれからが大変だよなぁ。
 ホクト対策を考えないといけないし、カルタス(オリキャラ)とUNズの救出もせんといかんし……。


 情報の漏洩が一番の問題だけど、それはなんとかなるか。
 カルタスは問題ないし、UNズも自分から漏らさないだろうし。
 仮にUNズから漏れたとしても何とかなるレベルだしな。今回連れてきていたのは、ガジェットの操作を強化した護衛用だったから知っている情報なんてたかが知れている。

 一番知られちゃ困るミッドのアジトや生産拠点の無人世界の位置情報も知らないからねぇ。基本的に、転移する際には端末に登録されている位置情報を使うだけだから、正確な位置情報がわかっているのは俺と一部のUNズだけ。スカさん側がどうなっているのかは知らないけど。
 んで、端末は捕まる前に全員が破棄したはずだからどうとでもなる。

 …………なら救出の方は別に急がなくてもいいか。
 カルタスは元々被害者ってことになってるし、UNズも俺の証言の影響でひどい扱いにはならないだろうから、留置されている場所にもよるが地上本部襲撃の時にでも助ければいいか。
 それにフェイトそんとあの善人そうなホクトが勝手に何とかしてくれるだろ。


 にしても、あのオリ主ホクトはこれからいったいどうするんだろうねぇ?

















~side ホクト~

 ヘリが出発するのを見送った後、私はあの時の事を考えていた。。


『仮に俺が助けを求めたとして、どうなると言うんだ? とりあえず、機動六課には保護されるとは思うよ。でもさ、その後は? 本局に連れて行かれて、上層部の意向で合法・非合法問わずに抹殺されるのは目に見えているじゃないか』


 あの時、私は何の返答もすることが出来なかった。
 たしかに彼の言うとおり、六課に保護を求めてもその後に殺される可能性は十分にある。管理局の上層部が暗部に通じていることを私は知っていたのに、そのことに頭が回らなかった。
 私は、母さんやティーダさん、ラグナさんを助けることができたことで浮かれていたのかもしれない……。
 私は自分の周りの人だけしか見ていなかったんだと思う。そして他の人のことを考えていなかったのかもしれない。












 私は最初この世界にやってきてからナカジマ家で育ててもらった。
 ギンガやスバルと同じように、父さん母さんに愛してもらった。でもその時には、もうでにこの世界がリリカルなのはの世界だってわかっていたから、複雑な気持ちだった。
 母さんがもうすぐしたら死んでしまうことがわかっていたから。

 最初は物語を変えることに抵抗があったけど、母さんや父さんが私を抱きしめてくれるたびに、スバルとギンガが微笑んでくれるたびにそんな抵抗は無くなっていった。
 1年も経つと、私の中でここは物語りの世界はでは無く、大切な家族が生きている世界となっていた。

 そうなると後は、考えるよりも先に行動してしまった。
 母さんに戦闘機人事件の捜査を止めて欲しいと願い出た。最初は何故、極秘に捜査していた事件のことを知っているのかと驚かれたが、母さんは真剣に私の話を聞いてくれた。
 そして、私はリリカルなのはのことを話してしまった。
 最初はこの話をすることで、気味悪く思われたり信じてもらえないのではないかと心配し恐怖していたのだが、母さんは震える私を抱きしめて

「私はホクトのことを信じるわ。だってホクトは私の娘だもの」

 そう言ってくれた。
 思い出すと少し恥ずかしいけど、その時は私も泣きながら母さんに抱きついた。

 結局、捜査自体は止めることはなかったけど、突入の際には極秘任務にもかかわらず応援を呼び、原作よりも多くの局員で突入していった。
 その結果、ゼストさんは大怪我をされたけど誰も欠けることはなかった。

 この事件を切欠に私は、物語に大きく関わっていこうと考えるようになった。
 私が大きく流れを変えてしまったせいで、何がどうなるのかわからない。なら、少しでもみんなが幸せになれるようにしようと思った。それに悪く変わる箇所があるならそれを阻止するのは私の責任だと考えた。

 それから、母さんに話していたおかげでティーダさん、ラグナさんが事件の被害にあうこともなく、すべてがうまくいくと感じていた。

 でもそんな慢心があの事件を起こしてしまった。
 臨海第8空港の大規模火災事故。この事件自体は把握していたけど、いつ起きるかが解らなかった。
 空港の税関での検疫を強化してもらってはいたけど、それだけだった。

 ギンガとスバルが父さんの所へ遊びにいくと聞いた時、事故に巻き込まれる懸念を覚えた。でも、私は単身赴任でほとんど会うことが出来ない父さんとの再会を邪魔する気にはなれなかった。それに、今までも事件を変えてきたこと、原作と違う道を歩んでいることから、事件は起きないんじゃないかと考えてしまった。

 でも実際には、税関をすり抜けて入ってきたレリックによって事件は起きてしまった。 しかも悪い方向に変化して。

 結果としては、ギンガもスバルも生きて帰ってくることができた。でも、その時にスバルは大怪我を負った。なのはさんに見つけてもらう前に、落下してきた天井の一部がぶつかり、全治2ヶ月の怪我を負った。あたり所が悪ければ死んでいたのかもしれない。

 私はその時まで、口では現実の世界と言いながら心のどこかではこの世界の事を物語だと思っていたのかもしれない。
 自分はこの物語の主人公で、起きるはずだった悪いことはすべて防ぐことができ、家族にも不幸なことは訪れないと。
 でも実際にはこの世界は現実で、不幸は平等に訪れてくる。








 あの事件で知ったつもりでいたけど。
 今回の事で、本当につもりでしかなかったんだと実感させられた。

 彼の立場で考えたら、味方も助けも無い状態で何年も過ごしていて精神的に限界だったのかもしれない。
 そのことを理解していれば、彼に酷いことを言わなくて済んだのかもしれないのに……。

 彼がしてきたことは許されることではないと思う。利用するためだけに人工的に命を生み出し、人の心を弄くるなんて。

 だけどこれから、彼の手助けをしていこうと思う。彼が自分の罪を認めて、償っていけるように。
 もしかしたら、私がやろうとしていることは偽善なのかもしれない。それでも私はやらないといけないと思う。

 何かが違っていたら、彼がここにいて私があのヘリに乗っていたのかもしれないのだから。



 とりあえず、彼の安全を考えないといけない。本局にいる友人達に連絡を取って、見張っていてもらおう。
 そしてその間に私は最高評議会がやってきたことの証拠を集める。そうすれば、情状酌量の余地も生まれてくるだろう。それに、彼らがやってきたことが闇に葬られるなんて許せない。






 これからのことを考えているとロングアーチから通信が入ってきた。

「なっ!! ヘリが襲撃を受けてる?!」

 襲撃者が評議会の暗殺部隊なのか、田中の救出部隊なのかはわからないけど、ここで彼を連れて行かれるわけにはいかない。


~あとがき~
なんとか週刊ペースを保っているジャミーです。
仕事が増えない限りこのペースを保っていきたいです。

微妙に話は進んでいるから、ボクハウソヲツイテナイヨ。
すいません。次からは、確実に話を進めていきますですorz

と言っても、なのは&フェイトの戦域とシグナム&ヴィータの戦域の話を終えないといけないので大幅に進むのはもう少し後になります。

ホクトがよく解らないという意見をみて、この話を書いたんだが裏目に出たような気がしないことも無いですなぁ。





フロストさん
廃棄都市なんでその辺りは大丈夫です。
ちないにUNズ側はガジェットを隠せると言うことで廃棄都市を選んでます。


前回のあとがきでの言葉が、田中のものか作者のものかの答えはみんなの心の中にあります(キリッ

2009/09/27 22:37 投稿



[7818] 第22話 「戦果」
Name: ジャミー◆90775155 ID:b4c2a3d3
Date: 2009/10/28 00:00
世の中は常に動いていく。
しかし自分が考えたとおりに動くとは限らない。
むしろ、違う動きをすることが大半だ。
by田中雄一


第22話 「戦果」




~side out~

 なのはとフェイトは、大量に押し寄せるⅡ型を順調に撃墜していた。
 最初は、大量のミサイルに翻弄され押されていたが、時間が経つにつれミサイルを失い熱光線で攻撃を仕掛けようとする機体が増えたため攻撃の間隔が広がり、なのは達が攻撃するチャンスが生まれた。
 結果、なのはは真骨頂である砲撃を撃てる時間を得ることになり、大量のⅡ型がピンクの光に飲み込まれ爆散していった。

 すでになのは達は100機近くのⅡ型を撃墜する事に成功しており、残りの機体も大半がミサイルを失っている状態であった。
 Ⅱ型を壊滅させるのは時間の問題になっていた。新型は時たま砲撃しに出現するが撃ち終わるとすぐに引っ込むためまだ撃破できていないがⅡ型を壊滅させれば、機動力の無い新型はすぐに破壊できると思っていた。
 しかし、そんな時にヘリの下を探査していたサーチャーが異変を知らせてきた。

「なっ?!」

 サーチャーから、なのはに送られてくる映像には、ヘリが撃墜される姿が克明に映されていた。
 何の予兆も無くヘリが堕ちたことで、なのはとフェイトは一瞬呆然となるが、すぐにヘリの元へ向かおうとする。
 しかし、その行く手をⅡ型が塞ぐ。ミサイルを使い果たした機体が大半とはいえ、まだ100機以上の機体が残っているその戦力は、足止めには十分であった。

「フェイトちゃんは、先に行ってて。私はちょっと掃除をしてから行くから」

 一人がⅡ型を食い止めれば、一人はⅡ型を振り切ってヘリの元へ行くことが可能である。なのははそう判断し、フェイトに告げた。

「でも……」

 しかし、フェイトは即答することを躊躇っていた。ここでなのはを置いていけば、無茶をするのではないかと心配してのことであった。

「早く行って!! 間に合わなくなる!!」

 語気を強くし、なのはがフェイトを促す。
 もしヴァイスが生き残っているのなら、速やかな治療が必要である。1分1秒が生死を分ける。ここで、無駄に時間を浪費するのがもっとも愚かなことだ。
 なのはは、絶対にここに残るだろう。なら、友の意思を無駄にしてはならないと考えフェイトはなのはに応える。

「わかった。でも無茶しちゃ駄目だからね?」

「うん。わかってるよ」

 心配そうに声をかけるフェイトに対して、なのはは笑顔で答えた。
 その直後には、フェイトはヘリに向かって飛行を始めた。進行を塞ごうとしていたⅡ型を擦れ違いざまに2機切り捨て、最大速度でヘリへ向かっていった。
 それに反応して数機のⅡ型が追いかけようとしたが、なのはのアクセルシューターによって撃墜された。

「ここから先は通行止めだよ」

 レイジングハートをⅡ型へ向けて宣言した。








 フェイトが最初に見たものは、撃墜され黒煙を上げるヘリとこちらに向かってくるⅡ型の編隊であった。
 このⅡ型はUNズ側が用意した最後の予備兵力であった。もし、なのはとフェイトが二度目の襲撃で分かれて行動した場合にヘリと切り離すために用意したものだ。
 しかし無事に田中を救出させることに成功したため、なのはとフェイトを殲滅するために投入してきたのだった。

 ヴァイスの安否の確認と田中の所在を確認したかったフェイトであったが、Ⅱ型との交戦を余儀無くさせられた。
 数は50機程であったが、ミサイルを完全装備しているため、最初と同じ状態になってしまった。いや、なのはがいないため完全に撃ち落すことができず回避に力を入れなくてはならずそのぶん不利であった。

 視界を覆いつくす程のミサイルが襲い掛かってくるが、フェイトは機動力を活かし回避していく。
 しかしいくら回避能力に優れていても数が多いため、至近距離で回避しなくてはならないミサイルもでてくる。しかし、そんなミサイルは内部のコンピュータによって自動で自爆していく、その爆発は装甲の薄いフェイトにとっては軽いものではなかった。
 だが、フェイトもただやられるだけではない。隙をみてはプラズマランサーを撃ち込み、擦れ違いざまに切りつけⅡ型を撃墜していく。
 ヘリの落下地点から離れるわかえにいかないため機動力を十分に活かせないが、それでもⅡ型に対して五分以上の戦いを繰り広げていった。
 このままいけば、時間はかかるが全機撃墜するのは不可能ではないだろう。






 ただし、そこにいるのはⅡ型だけではなかった。



 ステルス機能を使用しながらⅣ型がフェイトの背後から忍び寄っていた。
 フェイトが高速で移動しているため攻撃を仕掛けるタイミングが無かったが、Ⅱ型のミサイルをバリアで防いだためにフェイトの動きを止った。その瞬間を狙い、両腕の鎌で切りつけた。

 しかし鎌の刃がフェイトに当たる前にⅣ型が爆散した。

「何?!」

 一番驚いていたのは、フェイトであった。フェイトにとっては何もない空間が突然爆発したのであるから当然であろう。バリアをはっていたため無傷とはいえ、驚きは隠せない。

「フェイトさん無事ですか?!」

 フェイトの眼下にはコンクリートの岩陰に隠れながらストームレイダーを構えるヴァイスの姿があった。
 ヴァイスはヘリが落されたるのと同時にヘリから飛び出し、ビルにアンカーを打ち込むことで落下を防いでいたのだった。
 その後は、Ⅱ型と空戦を開始したフェイトの援護をしようと移動し、ストームレイダーを構えていたが、フェイトの背後に迫るⅣ型に気付きをそれを撃破したのだ。
 ちなみにⅣ型に気付けたのは、Ⅳ型にヘリの破片が載っていたためだ。高性能なステルス能力を持っているのにそれを無駄にするⅣ型は間抜けだが、空戦のために視野を広くし大まかにしか見ていなかったとはいえ、フェイトが気付けなかったほど小さな破片に気付けるほどの注意力を持つヴァイスの能力の高さが窺えるとも言える。

「よかった無事だったんだ」

 フェイトはヴァイスが無事だったことに安堵し息を吐いた。しかしすぐに気を引き締め、バルディッシュを構えなおすと残りのⅡ型へ向かった。





~side NO893~

 ちっ!! 忌々しい!!
 死に損ないのヘリパイロットのせいで、Ⅳ型の奇襲が失敗した。

 まだ付近に何体かのⅣ型はいるけど、警戒した状態の金髪女をもう一度奇襲するのは難しいそうよね……。
 ミサイルも機体数もまだあるからなんとかできそうだけど、時間がかかるし機体の損失が増えそうねぇ。
 せめて、AMF発生に特化させたⅢ型が近くにいればいいけど、すべて白い奴のところにいるのよねぇ。ヘリと戦力、最後の引き離しがどこになるのかわからなかったから仕方がないけど。まさかここまで苦戦するとは思わなかったわ。

 でもまぁいいわ。このまままとめて始末すれば何の問題も無いもの
 妹が勝手に桃いのと赤いのを殲滅を始めたけど、それも問題は無い。あの2匹を始末する必要は無いけど、ヘリの襲撃を妨害にするのを阻止するために時間稼ぎをする必要はあった。それを始末するように変えただけでしかない。
 被害が増えるけど、始末するほうが費用対効果は高い。始末できるだけの戦力があるんだもの。誰でもそうする。私もそうする。


 ミサイルを装備したⅡ型が飽和攻撃を仕掛ければ回避能力に長けた金髪女でも完全に避け切るのは不可能だわ。当たりさえすればそのうち墜とせるはずだしね。
 死に損ないが増えた程度でこの運命は変えられないわ。

 あの白いのも今は善戦しているけど、こちらが徐々に押している。金髪女がいないおかげで、Ⅲ型の砲撃もバリア越しとはいえ当てる事ができるようになってるしね。
 ここで落しさえすれば、戦力を金髪女に回せるから一気にかたがつくはず。

 桃いのも赤いのも映像を見る限りかなり消耗しているみたい。こちらの被害もかなり増えているけど、援軍を回すまでもなく撃墜できそう。

 敵の援軍の心配があるから時間はあまりかけれないけど、それでも少なくとも到着までにあと二十分は掛かるはず。












~side out~

 シグナムとヴィータは、あれから50機以上のⅡ型を落していた。が、二人もまたボロボロになっていた。
 致命傷こそ受けていないが何度も攻撃を受けており、騎士甲冑も破損が目立つようになっていた。ガジェットが原作よりも強力になっていることもあるが、リミッターによる速度、防御力の低下が大きな原因であろう。


 そして現在、ガジェットは二人に止めを刺すべく周りを包囲し、突入のタイミングを図っていた。

「思っていたよりはやるみたいだな」

 シグナムと背中を合わせた状態で、ヴィータが不敵に笑う。しかし、息は荒く余裕は無い。

「機械兵器ごときだと侮り過ぎたな」

 それにシグナムも不敵に笑いながら応じた。

 Ⅱ型は先程から体当たりによる自爆も辞していない。Ⅱ型の持つ質量とエネルギーはそう何度も耐えられる物ではない。
 二人は敗北の可能性を感じていた。地上に隠れれば密度の高い攻撃は避けられるだろうが、それからは一方的に攻撃されることになる。そのため、地上に降りることも躊躇われていた。

 しかしⅡ型が攻撃に移ろうとしていた時、二人は高魔力反応を感じ取った。

 そして次の瞬間には、数機のⅡ型が爆散し、二人の目の前に数人の人影が現れた。

「首都防衛隊のゼスト・グランガイツだ。救援に来させてもらった」





 ゼスト隊が到着したことで戦況は大きく変わっていた。
 ランクが高いとは言えない航空魔導師が多いとはいえ、熟練された技と連携でⅡ型を落していった。いかにⅡ型が個体での戦闘能力が高く、瞬間瞬間での状況把握能力が高いとは言え、それなりの数がいて連携の取れた相手では戦闘アルゴリズムにも限界があった。おまけにリミッターの無い高ランク魔導師であるゼストも参加することで、なす術もなく落される。
 あくまで、Ⅱ型の長所は物量とそれを生かす状況把握能力なのである。














 一方、なのはがいた戦域でも変化があった。
 変化の始まりは、なのはに対して行われた近距離での念話であった。

<こちら、首都防衛隊のクイント・ナカジマです。これより、地上の敵戦力を殲滅します>
 その念話の直後、地上から空のなのはを狙っていたⅢ型とその護衛のⅠ型に対してゼスト隊の攻撃が開始された。
 多数の砲撃型のⅢ型は廃墟の影に陣取り、自身を中心にⅠ型に円陣を組まるというスタイルで分散していた。

 それらのガジェットの一団に対してクイント率いる分隊が戦闘に入っていった。
 一人突出し接近するクイントに対して、ガジェットは接近するにクイントへの迎撃を開始した。全機体の熱光線がクイントに集中するがそれらをすべて回避しながら、接近していく。チャージの終わったⅢ型の高出力砲撃も放たれるが、それすらも機敏な動きで避け、手近なⅠ型を叩き潰す。
 そして、次々とⅠ型がクイントのリボルバーナックルに破壊されていく。一度懐に入り込まれ乱戦になると、近接武装の乏しいⅠ型やⅢ型はなす術はなった。
 陣形の乱れたガジェットに対して他の局員も攻撃を開始することで、ガジェットは離脱することも適わず殲滅されていった。

 しかしメガーヌに襲撃されたガジェットはさらに悲惨であった。
 周辺の廃墟ごと地雷王によって吹き飛ばされ、Ⅲ型は廃墟に押しつぶされ、生き残ったⅠ型も他の局員によって破壊されていった。一部のⅠ型はメガーヌを攻撃しようと試みたが、メガーヌの護衛に当たっている局員によって破壊されるだけであった。

 これらの戦闘によって、廃墟の影ではなく完全に廃墟の中に身を隠していたAMF特化型のⅢ型とその一団を除き、次々と壊滅されていった。
 対航空魔導師用に分散していたことが裏目に出る結果となっていた。分散することで、航空魔導師からの攻撃で一度に壊滅することを避けていたが、本格的な陸戦部隊が出てきたことで戦力が大幅に低下していたガジェットは防戦一方になっていた。

 並みの陸戦魔導師が相手ならAMFの影響もあるので倒すことが出来るだろうし、それが無理でもⅠ型を殿にすることで逃亡は可能であろう。
 しかし、シューティングアーツの使い手でありAMF状況下でもかなりの戦闘能力を発揮できるクイントに、強力な召喚虫を操るメガーヌの二人、そして他の局員が二人の補助をすることで、逃亡すら出来ぬ状況となっていた。











 次々と送られてくる映像を見て、NO893は放心していた。

「嘘でしょ……。何でこんなに早く動けるの? これじゃあ、全員を始末するなんて無理じゃない……。それにこれだけ敵戦力が増えたら、こっちが全滅する可能すら……」

 力ない言葉を呟き、体の震えが止まらず目の焦点も合っていない状況で両膝も地面に着けていた。
 目の焦点はすぐに戻ったが、体の震えは止まらず言葉は溢れてくる。

「これじゃ、私が手に入れることができる戦果はほとんどないじゃない……。マスターは助けることが出来たけどそれは出来て当たり前の戦果。報復に護衛メンバーを殺害するのも他の姉妹との暗黙の約束だっていうのに……。少なくともⅢ型の目撃者殺害すら失敗した現時点で、私が捕まった姉妹の後釜にすわること対して横槍が入るのは必至よね……。なんとかして、戦果を少しでも手に入れておかないと私の先が無い。せめて、金髪女か白い奴のどちらかだけでも殺さないと……」

 一通りの言葉を吐き出すと、両膝を地面から離し立ち上がった。
 そして、コンソールを操作しガジェットを操り始めた。








 地上での戦いが激しくなってきた頃、フェイトを囲んでいたⅡ型の大半が一斉に移動を開始した。無論、それをフェイトが黙って見過ごすはずもなく遠ざかろうとするⅡ型に対してフォトランサーを撃ち込み数機を撃墜するがそれでも他の機体はスピードを緩めることなく遠ざかっていく。
 フェイトが追撃を行おうとした瞬間、残っていたⅡ型が体当たりを始めた。無論、そう簡単に当たるはずも無く難なくかわしが、切り付けようとした瞬間に機体が爆発し、フェイトにダメージを与える。
 しかもⅡ型全機が殺到し始めたため容易に追撃できる状況ではなくなった。
 Ⅱ型は完全に戦力の温存、費用対効果を無視した行動を取り始めていた。
 シグナム達に対しての体当たりとは違い、撃ち落される確率が高く成功率の低い場合でも躊躇なく突っ込んでいた。完全に足止めのみを目的とした行動であった。



 そして、なのはの方でもⅡ型による体当たりが始まっていた。
 こちらでも全機がただ只管に突っ込んでいた。
 なのはもそう容易く体当たりを受けるような魔導師ではないが、全方位から味方同士による同士討ちを気にせず熱光線を乱射しながら突撃してくるⅡ型を完全にかわしきることはできなかった。
 なのはのアクセルシューターが数機のⅡ型を撃墜すると、1機がなのはに接近するという具合だった。なのはは回避しようとするが、Ⅱ型は接触が不可能と判断した時点で自爆していき、少しずつとはいえ確実になのはへダメージを与えていった。







 ほんの1、2分の間に4、50機のⅡ型が堕ちたが、確実になのはのバリアジャケットを削り消耗させていた。
 見るからに、なのはは消耗しておりそう何度も耐えれないという状況であった。

 しかし、Ⅱ型はそんななのはに止めとばかりに八方から同時に接近していった。なのはのアクセルシューターが1機、2機、3機、4機、5機と撃墜していったがそこで展開していたアクセルシュータが尽きた。新たに展開していたのでは間に合わない、そう判断したなのはがバリアを展開し衝撃に耐えようとしたその時、接近していたⅡ型が爆散していった。




「空でなのはを守るるのはあたしの役目だからな」

 鉄(くろがね)の伯爵グラーフアイゼンを構えた鉄槌の騎士ヴィータが誰に聞こえることなく呟いた。
 ヴィータはゼスト隊が来たことで戦域が落ち着いたため、シグナムやゼストに後を任せ救援に駆けつけたのだ。

 ヴィータが加わったことでなのはやフェイトが戦っていた戦域も急速に鎮圧されていった。








「……終りね。残ったガジェットは自爆させてデータ解析されないようにしないとね……」

 それだけ呟くと。
 NO893は配下の妹達と共に撤収していった。



[7818] 第23話 「反省会」
Name: ジャミー◆90775155 ID:b4c2a3d3
Date: 2009/11/20 19:53
人は反省することができる生き物である。
己の過去を顧みることで将来を見据えることができる。
反省しなければ同じ失敗を何度も繰り返す。
by田中雄一


第23話 「反省会」




「それでは、第37回反省会を始めます」

 目の前には、各部門代表のUNズが集まっている。
 まぁ、さっき言った台詞から解るとおり今から今回の反省会をやろうってわけですよ。
 そんな中、一人が手を挙げた。

「ん? 何か質問か?」

「はい。第37回と言うのは何なのでしょうか? 確か反省会という名の付いた会議は始めてだったと思うんですが?」

 うん。その通りだ。確かに反省会という名の会議はこれが始めてだ。だけど、

「その方が響きがいいだろ。第37回っていうのが個人的には、一番しっくりくるんだよね」

「…………。はい。解りました」

 よしよし。んじゃ、会議を始めようか。

「っと、始める前に確認だけど、事前に教えていた情報に対して質問はある?」

 事前に教えていた情報……。憑依、原作知識云々。
 今回の件で懲りたので、俺が知っている限りの情報を事前に通達した。俺が色々情報を回していたら、ゼストが生きていることに疑問を持って報告をあげていただろうしねぇ。今更だが、教えておいた方がいい。問題は、俺が電波受信したと思われたり、イエローピーポー呼ばれたりしないかだ。。
 その辺は、親子以上の好意を寄せるようにしている洗脳に期待しておこう。


 ………………。
 ってあれ?質問無いの? みんな無言なんだが……。

「質問無いの? っていうか、あの話のこと信じている?」

「はい。勿論信じています」

 質問が無いのは嬉しいんだが、何か釈然としない。
 俺の事を信用してもらえるのは嬉しいんだが、なんでこんな電波話を何の疑問も無く受け止めれるんだ?
 ……まぁいいか。今度こそ始めよう。

「まずはガジェットの被害に関してからにするか。今回の損害はⅠ型が75機、Ⅱ型が500機、Ⅲ型が砲撃型、AMF型合わせて5機か。んで、Ⅳ型が1機。……けっこうな数だな。特にⅡ型。これで原作キャラが一人も死んでいないのは痛いな」

 でも、原作でアギトINのシグナムが一撃でⅡ型を50機撃墜していたことを考えると仕方がない損失か。他の場面でも面白いように撃ち落していたしなぁ。
 おまけに今回はゼストの部隊もいたみたいだし。
 しかし、リミッター掛かった状態で殺せなかったのは痛いな。次からは警戒しているだろうし殺すのは難しいか。

「現在のガジェットの生産量ってどうなってたっけ?」

 まぁ、ガジェットなんていくら潰されても代えが効くからなぁ。生産拠点を破壊されない限りなんとでもなる。
 一度破壊されると、長期で使用できなくなるうえに一体生産するのに何年もかかるスカさんの戦闘機人なんていう玩具とは違うんですよ。ふふん。
 しかも価格や生産性よりも性能を追及した兵器のはずなのに、Sランクどころか(自称)凡人の魔導師相手に束になっても敵わない戦闘機人なんて本当にただの玩具だよね~。

「現在、月産ですと全体でⅠ型が3000機、Ⅱ型が5250機、Ⅲ型が300機、Ⅳ型が75機です。その内、ミッドチルダで生産している分ですと、Ⅰ型が450機、Ⅱ型が675機になります。ちなみにミッドチルダでのガジェットの生産に使用している部品は、ミッドチルダでの生産が半数で残りが母星(生産拠点の無人世界)からの供給となっています」

 この前、報告を聞いたときよりも生産数が若干増えてるな。うんうん。生産性が向上することは良い事だ。
 母星での生産量には何の問題も無いから、四日も有れば今回の損失を完全に補填できるんだけど、ミッドチルダに持ってくるまでが大変なんだよなぁ。
 四日分くらいの補填は問題ないんだけど、決戦用のガジェットの持ち込みがいまいちなんだよなぁ。
 現在は俺達が作った企業を使って密輸してるけど、流石に一度に大量のガジェットを送ったら怪しまれるからなぁ。検疫は最高評議会の息が掛かった人間がやるから無問題だけど、あまりに輸送量が多いとレリック捜索用にしちゃ過剰だから最高評議会に怪しまれるんだよねぇ。
 現在の生産施設も地下に作るとかして何とか過剰生産を誤魔化してるんだからねぇ。最高評議会の目を誤魔化すのも大変だよなぁ。本当にまんどくせえ~。

 って、話が本題から逸れてたな。閑話休題。

「まぁ、ガジェットの補充も問題ないか。時間は多少掛かるが現在の生産量なら補充はできるな。何らかの作戦を行う場合でも、兵力にはまだ余裕があるしなんとかなるだろ」

「はい。決戦用に準備しているガジェットの数はまだ完全と言えませんが、時間的余裕を考えれば多少の消費は問題ありません」

 俺が確認の意味を込めて見るとそう答えてきた。
 損失は痛いけど特に問題は無しと。まぁ、機体を更新するとでも言えば輸送量が増えてもそこまで不審に思われないだろう。それが駄目でも時間さえあれば規定数には達するし何とでもなるな。それにいざとなれば決戦時に強襲上陸させればいいし。

 まぁ、そんなことよりもⅢ型とⅣ型が落されたほうが痛い。技術的なものはばれていないだろうけど、技術的奇襲というのは無くなったな。特にⅣ型はステルスを利用して何度か使おうと思ってたんだけどなぁ。
 と言っても、完全に奇襲性が無くなった訳じゃないし、開き直って使いまくるっていうのは無しだよな。……なんというジレンマ。

「まぁ損害は問題ないと言うことでいいか。それはそうと、今回の戦闘データのフィードバックはどうなってる?」

 いくら補充が簡単に出来るとは言え、そのまま放置すると言うのは駄目だからねぇ。出来る限り戦闘の結果をフィードバックして性能の向上に努めよう。

「残念ながら、根本的には機体自体の性能向上しかないかと。前回の戦闘で、有用なデータは集まりましたが、完全なフィードバックは不可能です。対処可能な戦術をインストールしたとしても連携の取れた敵が相手だと処理が追いつきませんし、高ランク魔導師相手では機体性能そのものが足りません。現段階でのベストは尽くしていますが、アップグレードがないと完全とは言いがたいです」

 完全な対処は現段階では無理か。かといって本当に機体の更新をするっていうのも厳しいよな。
 決戦までの時間もあまり無いしねぇ。
 開発部では開発を続けているから、今後の生産で作る分の一部が新型になるくらいか。

「まぁ、しょうがないか。開発コンセプトは、数を生かした戦闘だからなぁ。連携の取れた複雑な戦法に対しても数を生かして潰すことって前提で作ったし」

 完璧な兵器を求める方が無茶だよなぁ。
 前提どおり数を揃えることを優先した方が無難か。

「んじゃ、次は捕まったNUズなんだが。ぶっちゃけ放置と言うことで」

 流石にストレートに言い過ぎたか? クローンとはいえ姉妹を見捨てるって言われたら、流石に怒るよな。
 でも、ここではっきりさせておかないと今後の作戦の優先順位でも支障をきたしかねないしな。

「本当に放置するのですか?」

 一人のUNズが手を挙げて質問してきた。
 やっぱり、怒るよなぁ。だがここは心を鬼にして……。

「情報が漏れないように始末した方がよろしいのではないでしょうか?」

 って、えぇぇぇぇぇぇっっ!!
 そっち、そっちなのか?! 疑問に思ったのは?!

「カルタス様を助けるついでなら、助けるのもありかもしれませんが。救出をするには時間がかかります。その間に情報が漏れる可能性がありますし、地上本部を使って始末した方がよろしいのでは?」

 こ、こいつらってこんなにシビアだっけ? いや、重要な情報を持っているんなら始末した方がいいんだって俺にもわかるしやるべきなんだが。
 もしかして俺がした洗脳のせいか?! いやいや俺がしたのは、好意を抱く程度な洗脳だけのはず、その洗脳だって人格に影響がでない程度にしたつもりだし……。
 でも、俺の目的に一糸乱れず邁進する様に、一体感を持つような演説をするといった軽度な洗脳もしたよなぁ。そっちが原因か?

 ……わからん。考えないようにしよう。

「いや、知っている情報もたいした事ないし別にかまわん。それに全体の作戦も少し修正しようと思うっているしな」

「そうですか」

 よし、この件はこれで終わらせよう。
 別に問題は無いはずだ。それに例え問題があったとしても今更どうにもならん。UNズの量産体制はとうの昔に整い、今なお生産し続けてるんだ。
 今更、UNズ無しには作戦なんてなりたたん。
 それに逆に考えれば、目的、効率を最優先にするってことで俺的には何の問題もない。むしろプラスなはずだ。

「ということで、とりあえず抜けた護衛のほうの穴埋めは俺の救出を行った部隊で穴埋めをしとくけど問題ないか? 地上本部襲撃の部隊ならまだ先だから補充は効くと思うし」

 流石に一度捕まった身としては自重するが、まったく動かないわけにも行かない。UNズを作ったとはいえ、俺がやらねばならんことも多いしなぁ。
 って、あれ? 何か会議に参加しているUNズの目が殺気だったような気が?

「ど、どうした? 何か問題でもあったのか?」

「いえ、マスターが決めたことなら問題ありません」

 もしかして、すでに別の部隊での運用が決まっていたのか? それで殺気だったのか?
 いや、でもそれぐらいで殺気だたないよな。だって、まったく関係の無い部門の奴らも殺気だっていたし。何なの?
 最近、こいつらの考えがわからん……。
 気にしても仕方がないか。話を進めよう。

「あと、修正についてなんだが。お前達も知っている通り、むこうにもホクトという原作知識持ちがいるわけだ。つまり、今のままの作戦だと確実に失敗だ。というか、このアジトの場所もばれる可能性もある」

 ゆりかごが眠るこのアジトが見つかる可能性があるというのは大きい。この森林地帯が広いとは言え、もしホクトがミッドチルダ東部にある森林地帯にアジトがあるという情報を持っているなら、地道なローラー作戦でも見つかってしまう可能性がある。
 この前、話をした時の感じではコアなファンじゃないっぽいから、設定資料集やスターターブックは読んでいない可能性は高いと考えられるんで、東部の森ってことはばれないと思うんだけどねぇ。
 でも可能性があるというだけでこちらは作戦を早める必要がある。アジトを移転させることができるならそんな必要はないんだが、ゆりかごがあるためそんなことはできない。

「なに俺達は目的さえ達してしまえばいい。なにもパーフェクトに作戦を遂行する必要なんてない」

 勝ってしまいさせすれば後はどうとでもなる。
 簡単な流れとしては、ゆりかごを打ち上げる、本局の艦隊を壊滅させる、本局を制圧する、ここさえうまくいけば後はどうとでもなる。
 本局と艦隊さえなければ、俺の帝国が世界を征することができる。
 地上部隊についてはどうとでもなる。

「というわけで出来る限り計画を前倒し決定です」

 俺の計画では、まず最初に別世界で次元航行艦を含めた大規模の戦力による陽動を行う。
 次元航行艦を含めた部隊を使うことで管理局の艦隊もおびき出し、ゆりかご浮上までの時間を確実に確保するハワイ作戦。
 敵戦力を十分に陽動できたら、地上本部及びアインヘリアルを襲撃、その際に敵航空兵力をできる限り消耗させ、確保したアインヘリアル利用して制空権を完全確保し安全にゆりかごを打ち上げる「ケ」号作戦。

 この両作戦はほぼこのまま行っても問題はないと思う。
 陽動部隊が暴れたら、ホクトはゆりかごのための陽動だって気付くだろうけど。管理局がそのことに気付くことはない。それに例えホクトがそれを訴えても証拠が無い以上管理局が動くはずもない。
 最高評議会なら陽動に気付くかもしれんし部隊を動かす権限を持っているが、すぐに動かす可能性は低いんじゃないかと思える。
 原作でもスカさんがヴィヴィオを奪取しても何の行動も起こさなかったし、ゆりかごが打ち上げられてものんびりとしていたしねぇ。
 それに第一、感づく可能性は低い。評議会はこっちの戦力を完全に把握していないから、時空航行艦が暴れたとしてもすぐに俺が犯人だとは思わないだろう。流石にガジェットを使用すればばれる可能性が高いだろうが、この作戦で使うガジェットは次元空間での戦闘が可能なものを使うし、外観も変えたものを使う予定であるから多少の時間は稼げるはず。

 という理由のため変えるのは日時だけ、本来このXdayは意見陳述会に合わせようと思っていたが、ヴィヴィオの確保と同時にハワイ作戦を開始、レリックの埋め込みが完了と同時に「ケ」号作戦発動。
 多少の時間調整はするが、大体これでいこうと思う。準備期間が短くなることや効率的に敵航空戦力を撃破できないが仕方がない。
 下手に時間をかけてここを発見されては元も子もない。
 本来なら原作知識によってナイスなタイミングで行動する予定だったけど、それを無視するだけの話。完全な計画ではなくなったけどそれは仕方がない。ゆりかごさえ打ち上げたらどうとでもなるのがから多少の被害はやむをえない。

 時空航行艦隊と本局さえなければ次元世界すべてを管理下におくことができる。
 いくら地上に戦力があろうと宇宙、次元空間からの攻撃の前には無力。俺達は次元空間を制するだけでいい。政治は各世界の政府がやればいいし、治安維持は地上本部が引き続きすればいい。
 レジアスはそのためには使える駒だ。奴なら例え俺達の支配下とはいえ治安が悪化するのは望まないはず。それに、いい感じにこちらは弱みを握っている。

 何も全てを支配する必要もない。次元航行艦等の俺達にとって脅威となりえる兵器の所持を禁止し、教育、メディア、技術をこちらで握り、税金の1%ほどをいただくだけで十分世界は管理できるはず。
 このために無理して旧式とはいえ航行艦を建造するノウハウを蓄積してきたんだ。ミッド制圧後に最新技術を手に入れれば、比較的短時間で新型の建造までこぎつけることが出来るはずだ。
 航行艦を持つのは俺達だけでいい。



「で、他に何か質問はある? なかったらとりあえず今回は終りにするけど」

 と自分の作戦を思い出しつつ、変更点とそれに伴う細かな説明をし終えたので質問があるかを聞いておく。
 すると一人が手を挙げて質問をしてくる。

「地上本部のほうはどういたしましょう? 今回のことでかなり文句を言ってきていますが」

「新たに戦闘用クローンを製造した際には回すとでも言って宥めておけ」

 まったくレジィ坊やは五月蝿いぜ。
 この前、50人も魔力持ちの戦闘用クローンを貸してあげたんだから少しくらいは便宜を図ってくれてもいいじゃない。

 ん? なんで戦闘用クローンをまわしたのかって?
 HAHAHA! そんなのは簡単さ。使い物にならなかったのさ。

 そうあれは、UNズの生産が軌道に乗ったんで、調子に乗って高ランク魔導師のクローンを作った時だ。遺伝子提供者(勿論無許可)は、原作組じゃないけどSランクオーバーの魔導師さん。
 製造自体は大成功。クローン達は、子供ながらにAA~AAAランク級という安定した製造精度。大人になればSランクは余裕という兵器として問題の無い高性能ぶり。

 だったはずが、クローンの製造に成功してから気付いたのが、戦闘技能の教導というノウハウを誰も持ってなかったということ。製造できたのはただの魔力タンクというオチ。
 いくら記憶転写で戦闘知識を写しても体がその通りに動かないので宝の持ち腐れ。最初は、スカリエッティの戦闘機人に教育させようと思ったんだが、こっちの陣営となんか小競り合いが何度もあって(特にノーヴェ)頓挫。おまけに機人は戦闘データを蓄積し姉妹間で共有できるというチートができるので、(クローンだけど)普通の人間に教えるのは効率が悪いことも判明。
 それならいっそのこと地上本部で育成してもらおうということで落ち着いた。戦闘知識自体はあるから、効率よく成長するだろうしねぇ。
 勿論こいつらにも洗脳が施されているので本気で管理局員として働くことはない。とはいえ、そんなことは知らないレジアスには恩を売ることができる。それにハワイ作戦と「ケ」号作戦時にはスパイとしてこっちに情報を送ってもらえるし、世界を征した後は地上の監視役になるという美味しい話。
 管理局が育てた魔導師がそのまま敵になるというナイスな皮肉。

 とはいえ、兵器として完成するのに時間がかかり過ぎるので、今作戦に十分な戦力は確保できないと判断し生産は一時中断。それよりは、その生産ラインをUNズの生産にあてたほうがいいしねぇ。
 自立して行動できるから、監視者として世界征服後の主力になると思うけど。それはまた別の話。


「それと質問出がないのですが、一つ提案があります」

「ん? 何?」

 さっき質問してきたUNズが話しかけてくる。

「マスターが教えてくださった。情報を元に我々でいくつか今後の行動を考えましたのでご検討願えませんか?」

 うん。そういう意見は大歓迎だ。
 原作知識に基づいた作戦は今まで俺という偏った視線だけで考えた物だから、そういう意見は今更だが必要だ。
 んじゃあ、聞かせてもらおうか。



~あとがき~
予告していた日時よりも大幅に投稿が遅れたことをお詫び申し上げます。
リアル世界のほうが色々ありまして遅れてしまいました。




>雲海さん
この程度で正気を疑っていたら、世界は狂気に満ち溢れてるぜ
あとポエムじゃない!! 格言(笑)もしくはKAKUGENだ!!

まぁ、俺も無くてもいいとは思う。
てなわけで、いらないと思う人は不要と、いると思う人は必要と感想板に書いておいてください。
どうでもいいと思う人は無視しておいてください。
不要が多い場合は次回から書きません。同数の場合も。
ただし、両方ともに1票もない場合は継続します。締め切りは次回投稿まで。

不要が多くても過去の消去は当分しません。暇な時に改訂ついでにやります。



[7818] 第24話 「一方での反省会」
Name: ジャミー◆90775155 ID:b4c2a3d3
Date: 2010/04/18 13:46
人は自分の思惑とはまったく違うことを考え行動する。
それを完全に予測することは不可能である。
その結果、大きく食い違ったまま行動し続ける。
by田中雄一


第24話 「一方での反省会」




~side out~
 機動6課部隊長室には、はやて、なのは、フェイトそれにヴォルゲンリッターが揃っていた。
 しかし、全員の顔は暗く重い雰囲気が漂っていた。

「はやて、上層部からは何て?」

 やはり暗い顔のフェイトがはやてに尋ねた。

「本局の上層部はリンディ統括官が抑えてくれているからええけど、地上本部からは機動6課解散の要求まであったわ」

 その答えに皆黙り込んだ。

「一度捕まえた重要容疑者の取り逃がしにヘリの撃墜、おまけにガジェットの殲滅には首都防衛隊の手を借りとるっていうところを本部が突いてきとるみたいやな」

「ごめんはやて。あの時、あたし達がヘリから離れさえしなきゃ」

 泣きそうな声でヴィータが答えた。

「?! 違うんや。私はそんなつもりで言うんたんやないよ」

 はやては慌てヴィータの言葉を遮る。

「今回の件は、襲撃を予見しきれんかった私にある。もし、私がシャマルとザフィーラを同行させていれば、今回のことは防げたはずや」

「でも……」

 はやてが言い終わると、その場にいた他の者がその言葉を否定しはやてに非が無いことを言うとするが、はやては何か言おうとする皆を制して言葉を続ける。

「責任を取るんわ部隊長の仕事や。それに、リンディー統括官が頑張ってくれているおかげで、責任はそこまで大きくないもんになるはずや。それも500機以上のガジェット相手に頑張ってくれた皆のおかげや」

 そう言って、はやては微笑みながらヴィータの頭を優しくポンと撫でた。
 それに対してヴィータは皆に見られていることもあり顔を赤くし俯いた。

「ほんなら、暗い話はこれくらいにして、これからの事を話し合おか。失敗した分はこれから取り返していけばええ」

 はやてはニカッと笑い皆のほうを向いた。
 それを見た他の者も表情を幾分か柔らかくし、先程までの重い雰囲気はいくらかは和らいでいた。













「残骸を調査した結果あのガジェット達についてわかったことがいくつかあるから、それについて説明するで」

 はやてはそう言うと、コンソールを操作しウインドウを浮かび上がらせる。
 浮かび上がってきた映像にはⅡ型が映っていた。

「まずⅡ型からやけど、戦ったみんなは解っていると思うけど。今までの機体と違って新型や。動力炉の出力強化で熱光線の攻撃力、AMFの防御力が向上しとる。それに速度の向上と大型化による積載量の増加で増えたミサイルも侮れんもんがある。特に目新しい技術は使われてないけど、能力の向上は厄介やな」

「そん次はこのⅢ型やけど、発見されたものには2種類があったんや。一つ目が、なのはちゃん達に砲撃をかましてた砲撃型。AAクラス以上の砲撃能力がある。二つ目は、AMF特化型。ゼスト隊の話やとAランクの射撃も無効にしとったらしい。砲撃型にAMF特化型っていうのが厄介な相手なんやけど、それ以外に使われとる技術自体に厄介なもんがあるんや」

 そう言ってコンソールを操作して別の映像を映し出す。映し出された映像には、大きく抉り取られた地面に爆風で倒壊したと思われるビルが映し出されていた。

「Ⅲ型には高エネルギーの動力炉が積まれとったらしい。実物はガジェットに自爆されてしまったから手に入らんかったけど。映像を見たらわかるとおり並大抵のエネルギーやない。この動力炉が量産されとるんやとしたら、今までの対AMF戦だけやと対処できんようになるかもしれん」

 ここまで、ガジェットの機体を滞りなく説明していたはやてであったが、一度コンソールを動かす手を止め深呼吸をし、表情を引き締めた。
 そんなはやてになのは達は少し怪訝な顔をするが、はやては話を再開するのを待った。

「最後になるⅣ型や。これは回収された残骸から、元の形状を復元したもんや」

 そういってⅣ型の映像を映し出す。
 映像が映し出された瞬間、その場にいた全員が反応した。
 映し出されたガジェットは、かつてなのはに重症を負わせ空から堕とした存在であった。

「こいつは……」

 ヴィータは目を見開き瞳の青色を濃くし映像を睨みつけていた。
 両手は血が出そうなほど握られている。

「そうや、昔なのはちゃんを堕としたガジェットや。至近距離に近づかれても簡単には気付けんほどのステルス能力があるさかいに気をつけて欲しい」

 ガジェットについての説明を終えるとはやては、全てのウインドウを閉じた。

「なるほどこいつらが、8年前にふざけたことをしてくれたわけか」

 ヴィータは誰にも聞こえないほどの声で呟いた。








「それでこれからの事やけど、今うちにいるあの子達を本局に連れて行かなあかんのとあの施設に捕まっていた子を聖王医療院まで連れて行かなあかん」

 あの子達とは捕まえたUNズの事であり施設に捕まっていた子とはカルタスのことである。
 UNズは捕まって以来、何も話していないが大きな手掛かりであるのには変わりはない。彼女達から情報が得ることができれば、事件への解決が大きく前進すると期待されている。
 カルタスは、人体実験を行われていたことなどから単なる被害者であると考えられているため、本局ではなく聖王医療院へ連れて行き療養させることになった。はやてとしては前回数百機ものガジェットが繰り出されたことを考えると心配であったが、聖王医療院は単なる病院ではなくベルカ騎士も駐在する教会組織の一部であり、襲撃の心配も少ないと上層は判断していた。

「今回は、前回の事もあるから本局から護送の増援が送られてくるから、それまでの間にフェイトちゃんはホクトやギンガと一緒にあの子達から話を聞きだして欲しいんや。できればあの子からも」

 本局からの増援は、前回失敗したことにたいする不信感だけではなく、前回の戦いで隊長陣全員が少なくない怪我を負ったためである。
 特にヴィータは、無理をしてなのは達の救援に向かったため初期で負った怪我が悪化し、当分の間は激しい運動は禁止されていた。他の隊長陣に関しても、リンカーコアの酷使などから戦闘はできないと判断されていた。

 とは言え、信用が落ちていることは確かであった。
 そのため、はやてとしては少しでも情報を集め、上層部による情報の統制が行われたとしても何も知らないと言う状況を避けたいと考えていた。












 部隊長室から出たフェイトにカルタスが意識を取り戻したという情報がもたらされた。
 その報告を受けたフェイトはすぐに医務室へと向かった。はやてに頼まれた情報収集という目的よりもカルタスが心配であるという気持ちがうえであったが。




 フェイトは医務室の外でシャマルからカルタスの状態を聞き話しが出来る状態であることを確認すると一緒に医務室に入って行った。
 カルタスはベッドで寝ている状態であったが、フェイトが入ってくるのを見るとベッドから起き上がろうとした。
 しかしそれを見たフェイトは慌てて止めた。いくら意識を戻したからと言っても、体のほうの疲労や怪我はそこまで良くなっていないため、フェイトは無理をさせたくなかったのであろう。

「はじめまして。私はフェイト・T・ハラオウンです。よろしくね」

 そう言ってまだベッドに寝転んだ状態のカルタスに微笑みながら声をかけ、頭を優しく撫でた。
 頭を撫でられたカルタスは、顔を紅くし慌てていた。それを見たフェイトとシャマルはそれを微笑ましく見ていた。

『カルタスです。よろしくお願いします』

 それに対してカルタスは、喋れないため情報端末に文字を入力して意思表示を行う。  本来なら念話で会話をするればよいのだが、リンカーコアも不安定なため大事をとってこのような方法をとった。

 違法研究所にいたせいで声を失ったというのに、意思の強い目を失わずにいるカルタスの姿を見て、フェイトは安心した気持ちと同時に痛ましい気持ちになっていた。
 そんな彼に仕事とはいえ、辛い過去を聞きだし情報を集めなくてはいけないことを思うと暗雲たる気持ちになった。

「それじゃあ、君の事を話してもらってもいいかな?」

 それでも気持ちを入れ替えフェイトは少しでも彼に不安を与えないために、優しい声でゆっくりとカルタスに語りかける。

『はい』




~side フェイト~


 カルタスから話を聞き終えた情報を頭の中で整理する。
 カルタス自身についての話を簡単にまとめるとカルタスは私が以前突入した研究所で田中(カルタスが教えてくれたおかげでようやくわかったあの男の名前は、以前名乗っていたとおり田中だった。あの時は偽名だと思っていたけど、どうやら本名を名乗っていたみたい。戸籍が無い以上は意味がないのかもしれないけど)に生み出されたエリオ・モンディアルのクローンの一人で、私が保護したエリオも田中が生み出した一人であるらしい。それは予想していたことであるとはいえ、やっぱり衝撃はあった。

 だけど、その後に語られて話の方がインパクトが強過ぎてすぐに衝撃も和らいだ。
 カルタスが語ったのは田中についてのものだった。カルタスは田中自身も囚われの身であり、違法研究も強要されて渋々研究を行っていたと言うんだけど……。
 はっきりと言って、そんな話は信じられない。この前の戦いと取り調べをした時に田中と相対し言葉を交わした身としては考えようがなかった。
 あの時、田中が語った言葉はふざけた口調であったけど、あの言葉は本気だったと思う。じゃなければ、あそこまですらすらと言葉が続くとは思えない。
 それにあの目は本当になんとも無い目だった。あの少女達が不利になると話した瞬間もにやつかせた目を変えることは無く少女達を材料に交渉してきた。

 いくつもの事件に関わってきた執務官としては、その言葉を信じるよりは田中があの少女達にしたようにカルタスにも洗脳を施したと考えるべきだと思う。カルタスを利用しやすくする為に偽の記憶を与え、思考を誘導にしているのだと考えたほうが理解できる。
 カルタスが語った真の黒幕が管理局の最高評議会であるというのもこの考えの真実味を与える要素だと思う。最高評議会がこのような犯罪行為を行っていたというのは突拍子過ぎる。確かに管理局は完璧な組織じゃない。でも、そんな話を簡単に信じるほど、私は管理局を腐った組織だとは思っていない。

 ふとカルタスの目が合った。偽の記憶を与えられたであろうカルタスは本気で田中の心配をし、不安げな瞳で私を見つめていた。
 だから私はカルタスを安心させるために嘘とは言えないが本当でもない言葉をかけた。

「大丈夫。私がすべての真実を明らかにするから」

 その言葉にカルタスは安心した顔を見せてくれる。
 そんな顔を笑顔で見ていたけど、内心ではそんな顔をするように仕向けた田中に対して憤然たる思いだった。













~side カルタス~

 最初はどうかなるかと思ったけどなんとかなって良かった~。
 この前の戦闘でフェイトの田中に対する感情は最悪になっていた思っていたから、俺の話を信用しないんじゃないかと思ってただけに安心した。
 やっぱり、フェイトは優しいのだとおもう。

 ここまでくると後は逃げ出した田中だけが問題だなぁ。
 なんでも詳しくは教えて貰えなかったが、護送中に逃げ出したらしい。なんで逃げ出してんだよ……。
 田中を説得できれば大団円で終わると思ったんだけどなぁ




 でも、やっぱり前回のこともあるし完全な無罪で終わるって言うのは難しいのかなぁ。フェイトさんも『すべての真実を明らかにする』とは言ってくれたけど、田中の処遇については、何一つ具体的に言ってくれなかったしなぁ。やっぱり多少の刑罰はあるのかな?
 例えそうだとしても田中には自首して欲しいと思う。
 このまま逃げ続けてもどうにもならないと思う。このまま原作通りに行けば最高評議会も全滅して逃走の補助は完全に無くなるだろうからいずれ捕まる……。そうなればより罪は重くなるだろうし、期間があけば最高評議会の罪も隠蔽されるんじゃないかと思う。
 それよりは、他にいるであろう憑依者に協力してもらって最高評議会の罪を暴いてもらえば大幅に減刑されるだろうからその方がいいと思う。
 他の憑依者もゼスト隊を助けている所をみる限り悪い人じゃないと思うし。


 う~ん。やっぱりそれしかないよな。











~あとがき~
新年明けましておめでとうございます。

投稿がだいぶ遅くなってしまってすいません。
原因はリアルでのできごとによるモチベーションの低下でした。

去年は最後の最後で不幸が続きまくったおかげで、やる気がなくなってしまいました。
徐々に持ち直してきたので、少しずつでも投稿量を増やしていきたい所存です。





前回アンケートの結果
KAKUGEN存続希望票が多かったので存続決定です。

>せつなさみだれうちさん
だぁかぁらぁぁぁぁぁ
POEMではなくKAKUGENNですってば。

>mujinaさん
作者が聞いた格言の影響を受けた格言(笑)は書きますが、実際に使われている格言をそのまま使用する予定はあんまりありません。引用という形で使用することはあるかもしれませんが。

>はきさん
他のオリキャラの格言は隙があればやっていこいうかと思いますが、たぶん回数はあまり多くならないと思います。


感想はすべて読んでいるのですが、返信は一部だけとさせていただいています。
申し訳ありません。


投稿日:2010/01/01 00:14



[7818] 第25話 「準備期間」
Name: ジャミー◆90775155 ID:b4c2a3d3
Date: 2010/04/18 13:51
物事を起こす際に何の計画も無しで成功するのは天才と強運の持ち主だけだ。
だからこそ計画は緻密に慎重に。
by田中雄一


第25話 「準備期間」




 ふぅ、なんとかなったな。
 現在、地上本部の報告書(横流し品)を読んでいる最中だが、読んだ限りでは最悪の状況にはならないようだな。
 Ⅲ型の解析は予想通り成功していないし、ジュエルシードもどきで作った動力炉も単なる高出力魔力炉だと思われているようだ。
 やはり安定した出力を出せるように調整していたのが良かったようだ。しかし、おかげで自爆時の爆発力がある程度抑えられてしまったのは痛いな。それに普通に警戒されてるから微妙か……。
 これなら最初からまだ幾分か安い通常の動力炉を積んだほうがマシだったか?
 いや、小型化と将来性から考えたらこっちのほうがいいよな。だから納得しておこう。そうしないと泥沼に入り込んでしまう気がする。妥協とは人生に余裕を持たせるためには必要なことだよな。うん。

 で、最大の懸念であるUNズが本局送りなのは怖いがどうにもならん。襲撃しようかと思ったが流石に警備が多過ぎて手出しができなかったからな。
 まぁ、あいつらが持っている情報はそこまで重要じゃないってことで最初の考え通りに見送りと。
 …………まぁ、もしもの時は最高評議会が対処してくれるだろうから最悪の事態にはならんだろう。






 うむ。我ながら外道になったもんだ。
 だが現在、あいつらにかまってやる余裕はない。圧倒的に勝利できると思っていた戦いがいつの間にやら綱渡り状態。精神的な余裕もいっぺんに吹き飛んだってもんだ。
 まったくもって忌ま忌ましい。

 おかげで日程を繰り上げて、ゆりかごの対空武装を増強させたりと大忙しである。何あの貧弱な対空武装は? あんなんじゃ航空勢力に対応しきれないだろ常識的に考えて。
 ゆりかごを戦艦大和の後期型のように対空武装ではりねずみにしないとなぁ。
 …………例えが死亡フラグだったな。

 まぁ、いいか。死亡フラグなんてフラグブレイカーの俺に掛かれば何の問題もない。
 あとは念のために予備の動力炉も搭載もしないとなぁ。あの赤いエターナルロリータに破壊されないとも限らんし。
 まぁこっちは実用化も含めての計画のため、元々余裕のある工期だし大丈夫か。

 他にもガジェットの生産も急がせねばならんし大忙しだ。特にⅢ型の生産比率を増やさんとなぁ。
 決戦前に調えればいいと思って、今までは平時に使うⅠ型とⅡ型を重点的に生産していたのがあだになった。下手に原作知識があったおかげで、いつ生産すればいいのかがわかっていたのが敗因か。

 くそ。本当に頭が痛い。
 頭が痛いといえば他の報告書もろくでもない結果だったしなぁ。踏んだり蹴ったりだ。
 せめてもの救いはアギトが奴らに保護されていないことくらいか。まぁ、ゼストとルーテシアがいないから当たり前といえば当たり前か。ホクトが捜すにしても限度があるしな。
 まぁ、あとはこちらで捕まえてしまえば問題ないか。

 …………と言っても、アギトが活躍するのは最終局面でのガジェット掃討戦だけだったから、あんまりお得感がないよなぁ。最初からシグナムの手にいないというのは美味しいけど。






「マスターよろしいでしょうか?」

 UNズの一人から通信が入ってきた。

「晩飯なら、今日は海豚のステーキが食べたい気分」

「いえ、食事のことではなく。先程、新たな情報が入りましたのでご報告に」

 ん? 晩飯は何にするかという話かと思ったら違ったようだ。
 どうでもいいが、微妙にハズイ。


 晩飯じゃないなら、一体何よ?
























~sideホクト~

 まずいことになったわね。まさか6課の隊長陣がいるなかを襲撃してくるなんて……。
 私に出来たことは首都防衛隊の母さん達に連絡をしたことだけだった。
 母さん達のおかげで最悪の事態にはならなかったけど、悪い状況には変わりはない。

 犯人は一体誰なんだろう……。
 いや、おそらく田中が生み出したクローン達なんだろう。見たことも無いガジェットを使用していたことからしても間違いは無いと思う。








 逃げ出した田中はこれから何をするだろう?
 本気で管理局を潰す気なんだろうか?
 あの時の田中の様子を思い出すと、その確率は高いと思える。彼の怒りは本物だろう。
 それにそうでなければ、クローンや新たなガジェットを生み出したりはしないだろうし。


 もし管理局を潰そうとするならゆりかごを使うしかない。となると次に行動するのは、ヴィヴィオを狙う時かな。一応アグスタでの事件はまだ起きてないけど、向こうにとってもこっちにとってもあまり重要じゃない。
 勿論ロストロギアを渡すわけにはいかないけど、ゼストさんやルーちゃんが向こう側にいないから、二人を助けるということをしなくていい。
 一方で、むこうも手に入れるロストロギアにはたいした重要性はないはずだ。アニメでもこのロストロギアを使用する描写なんてないし。

 …………やっぱり鍵はヴィヴィオか。
 後悔しないためにも今からできることはやっておかないと。

 とりあえずは、カルタス君に話を聞くのが先決か。田中と一度話しただけの私より、彼について詳しいだろうし。






















「まず最初になんだけど、あなたが憑依者というのは本当?」

 目の前には、エリオに良く似た少年がいる。
 彼がカルタス君か……。

『えっ!! …………あなたも憑依者なんですか?』

 カルタス君が驚いた顔で尋ねてくる。
 声を出すことが出来ないため、カルタス君は念話を使用している。そのことを考えると、少し心が痛む。

「えぇ。と言うことはあなたも憑依者ということでいいのね?」

『はい。このことは田中に?』

「えぇ」

『田中は今どうなっていますか?』

「田中は現在も逃走中であしどりはわかっていないわ」

 あれから一切の進展は無く、無意味に時間は過ぎている。
 そのことを告げるとカルタス君は驚いた顔をした。

『えっ?! 逃走中?!』

「知らなかったの?」

 カルタス君の反応に驚き、尋ねてしまった。フェイトさんとカルタス君は話をしていたから、てっきりこのことは知っているのかと思ったんだけど……。
 精神的なことを考慮してフェイトさんはあえて教えなかったのかしら……。

『はい。ずっと捕まっているのかと』

「本局に移送されている途中に襲撃があってね」

『そ、そんな……。犯人はわかっているんですか?』

 カルタス君は、不安そうな顔をしてこちらを見つめてくる。恐らく、田中の安否を心配しているんだろう。

「犯人はわかっていないわ」

『そんな……』

「でも、おそらく犯人は田中が生み出したクローンよ」

『クローン?!』

「えぇ、彼の手伝いをさせていたみたいね」

 カルタス君は俯むくと、そのまま顔を上げなかった。
 私から表情を見ることはできないけど、悲痛な雰囲気は感じ取れる。

『田中の罪はどうなりますか?』

 顔を上げることのないままカルタス君が尋ねてきた。

『俺がした報告で、田中の罪は軽くはならないんですか?』

 必死な様子で尋ねてくる様子を見るとその問に対して答えるのが辛くなる。
 フェイトさんが書いた報告書を思い出し、若干眉を曲げながらその質問に答える。

「…………あなたがした証言は洗脳による可能性があるってことになってるから、どうなるかはわからないわ」

『えぇっ?! な、なんでですか?!』

 カルタス君は顔を上げ、驚いた表情を見せた。
 そんな顔を見せられると答え辛い。

「あなたが田中と一緒にいた時に、実験をされていたわよね?」

 カルタス君が田中と一緒にいた時に実験は行われていたはずだ。
 フェイトさんがアジトを突入した時に手に入れた証拠にたしかその時のデータもあったはずだ。資料を私に渡しながら、実験の内容を語るフェイトさんの表情は今でも思い出せるほど悔しさに染められていた。

『はい。確かにやっていましたけど?』

「そのことを話さなかったでしょ? そのあたりも含めて、記憶の改竄が行われたと思われているみたい。それに最高評議会の話も信じられていないみたいだしね」

『で、でも実験と言っても軽いものだけでしたし』

「軽い?」

 以前押収されたデータを思い出してみても、どれも軽いでは済まされない実験ばかりだった気がするんだけど……。

『えっ? あれぐらいは軽かったですけど』

「あれが軽い……」













 はぁ。さっきは驚いたわ。もしかしてカルタス君にそんな趣味があるんじゃないかと失礼なことを考えちゃった……。

『あぁぁぁぁ……。あの時の捏造実験報告がこんなところで……』

「以前あれを読んで、フェイトさんもかなり怒っていたみたいだから」

『そんなことないんです。田中はそこまで悪い奴じゃないんです』

「その件に関しては、新たな証拠を入手した際に訂正していくしかないわね」

 若干涙目になりながら話すカルタス君を見ていると、なんというか可愛らしくて守ってあげなくちゃって言う気分にさせられる。
 そんなカルタス君に今から田中について話をするのは抵抗があるけど気分を引き締めて話そう。

「ねぇカルタス君」

 カルタス君は、声色の変わった私の声に若干戸惑いを見せたけどすぐ真剣に耳を傾ける。

「私は貴方が言っていることを全部信じる。田中が元から悪い人じゃないってことも」

 そこで一度言葉を区切る。もう一度、気持ちを引き締め話を再開する。

「でも、今の彼がそうだとは限らない」

 その言葉にカルタス君はムッとした表情をするが、何かを思い出したのか何も言わなかった。

「彼は、この世界に介入しようとしている。それも悪い方向に」

『いったい何を根拠に!!』

 私の言葉にカルタス君は怒りも混ざった反論をする。でも私はそれでも言葉を途切るわけにはいかない。

「彼は駒としてクローンやガジェットを生み出しているわ。それも本来なら登場しないはずの強力なガジェットをね。ここまで言えば本来の物語を知っているあなたなら彼が何をしようとしているかわかるでしょ?」

 カルタス君は顔を青くし言葉を紡げないでいる。
 本来なら存在しない戦力を有する。それは本来の終わり方を無理矢理に捻じ曲げるために手に入れた力なんだろう。

「私は彼を止めたいの。彼が介入すれば大勢の人達が不幸になってしまうわ。それに彼も取り返しがつかないことになってしまうわ。だから私に協力して欲しいの」

「…………」

 俯いていたカルタスはゆっくりと顔を上げ一度だけ頷いた。

「ありがとう」

 私はカルタス君の協力を得ることができた。これが卑怯な手段だということは解っているけどそれでも私はやらなければいけない。


















 カルタス君と別れてから、聞いた田中の話を思い出し何とも言えない気持ちになる。

 長年の監禁生活か……。
 田中にとってはすでに限界を越えていたんでしょうね。だから再び捕まった時に爆発した……。
 でも彼にどんな事情があるにせよ。彼がしようとしていることは許されることじゃない。
 いや、これは私のエゴなんだと思う。それでも母さんや父さん、ギンガ、スバルのためにも止めないといけない。
 たしかに彼には同情する。けど、それは彼が無害であるからこそできることだと思う。
 彼は免罪符を持っている。それこそ何をしても許されるのではないかと本人に思わせるほどの。だからこそ危険なのよね……。私が今まで捜査官として関わった事件で、確信犯が起こす事件は本人の歯止めが効かなくなったものは多い。

 ……前までは、田中を助けようとか奇麗事を考えていたというのに、今ではこんな事を考えている自分に嫌気が差しそうだ。
 でも私が田中の行動を認められない以上、私がしてやれることは大きな事件を起こす前に逮捕することと最高評議会の罪を暴くことぐらいしかないのだろう……。








 そこまで考えたところで、端末に入った通信によって思考の海から引き揚げられた。
 その通信で知らされてた内容は私を驚愕させられるものだった。

















side 田中


「本局送りにされたUNズが自殺した?」

 入ってきた情報に驚き、尋ね返した。もちろん返答が変化することはない。
 通信を切ったあと椅子に深く座り直すと煙草を取り出し一度だけ大きく吸い一拍間を開けてから吐き出す。





 ……自殺ねぇ。
 自殺の方法はわかる。奥歯に仕込んである毒だろう。毒の上からカルシウムでコーティングしていたし、管理局が気付かなかったのも納得できるが……。

 もう一度煙草を吸い、吐き出す。
 やっぱりいつも以上に不味い。まだだいぶ長いが灰皿に押し潰す。

 自殺した理由がわからん。情報を渡したくなかったというのはわかる。洗脳の効果もあるしな。だが、それなら喋らなければいいだけのはず……。拷問や自白剤か?

 いくら考えてもわからず、とりあえず以前から懸念していた洗脳の高すぎる効果が暴走したということで納得し、調査はUNズに任せ他の仕事を始めた。するべきことは山ほどある感傷に浸る余裕はない。

あとがき
>>JINさん、はきさん
誤字の報告ありがとうございます。
修正しておきました。

過去の分も含めて誤字脱字の連絡があるとありがたいので、皆さんも発見された場合はお願いいたします。


更新期間が大幅に空いてしまい申し訳ありませんでした。
3月、4月は仕事場が変わるため忙しかった物で。
1、2月はどうした?っていわれると言い訳できませんがorz



[7818] 第26話 「信じるモノ」
Name: ジャミー◆f53ce591 ID:c97238e8
Date: 2010/12/25 22:14
信じる者は救われる。
信じることは大切なことだ。
だが自分で何も考えずに盲目的に信じる人間は足元を掬われる。
by田中


第26話 「信じるモノ」






 死んだ奴の穴埋めに関しては、№893達のグループを穴埋めにしているので問題無い。しかし、自殺の原因の特定が未だに不明瞭。わかっているのは尋問中に死んだということだけ。
 曖昧過ぎるだろ常識的に考えて……。いや、本局が陸の管轄外というのはわかるよ? まだ、自殺してから一日ちょっとしか経ってないのもわかるよ。でももうちょっと頑張ろうよレジアス中将。もう少し詳細な情報がほしいので調査続行を依頼だな。

 まぁ、隠蔽されることもないだろしすぐにわかるか。





 とりあえず、今は次回での行動にそなえて準備をするだけだな。っと言っても次回(アグスタ)の準備は大半が終了しているので問題はないか。
 むしろホクトの出現で全体的に前倒しになってしまった計画の全体的な修正のほうが厄介だよなぁ。生産量なんてすぐには上がらんというのに、せめて資源さえ完全に自活していればまだましだったんだがなぁ。
 一部の希少金属はどうにもならなかったのが痛かったか。まぁ、使用する量が少量なだけマシか。


 …………というのに、こんな忙しい時に一部のUNズがこそこそと何かやっているし。
 いったい何をやっているんだか。


 …………。
 …………まさか謀反の準備じゃないよな? 自殺したUNズに衝撃を受けて。

 …………一応探りをいれておくか。低確率とはいえ洗脳が解けることもあるからな。
 くそ、最近起きることは胃に悪いことばかりだ!!









~side out~
「あぁ…………。僕はあまかったのかな」

 アコース査察官は誰ともなく呟く。
 昨日、彼はUNズの取り調べを行っていた。しかしそれは犯人の自決という最悪の幕引きになってしまった。

 彼はUNズに自供して欲しかった。自供し協力的な態度をとっていれば、まともな教育どころか洗脳を受けていた彼女達の罪が軽くなるのは確実であった。しかし協力的な態度をとらなければ罪が軽くなることはない。
 それゆえにアコーズは自身の能力を使わずに自供を促した。そして最終的には自身の能力を明かし、黙秘が無駄であることを悟らせた。
 その結果、彼女達がとった行動は自決。結果は最悪であった。彼女達を救うどころか、死に追いやったうえに事件のてがかりを丸々失ってしまったのだから。

 そんな彼に周りのものは励ましの言葉をかけたが、彼にとってそれは余計に辛いものであった。
 しかし、彼はそれでも止まれない。今ここで止まれば、すべてが無駄になってしまうから。











「ロッサの様子はどうでした?」

「はい。やはり、まだ落ち込んでるようで」

 聖王教会の一室でカリムとシャッハが話しこんでいた。
 ロッサと通信を行ったシャッハにカリムがロッサの様子を聞いているところであった。

「そうですか……」

「ロッサはあの子達のことを助けたかったようですから仕方が無いことでしょう」

「そうですね。あの子達のことは私も残念に思います」

 そこまで話した後、沈黙が場を支配し二人とも一言も発することができなかった。最後まで利用され命を失っていった幼子達、そしてそんな子達を助けようとして失敗し傷ついたロッサ。それらのことを考える彼女たちの心もまた傷ついた。
 だがしばらくすると、そんな沈黙に耐えかねたようにカリムが話し出す。

「それでも、私達は止まるわけには行きません。予言は絶対に阻止しなければいけません」

旧い結晶と無限の欲望が交わる地
死せる王の下、聖地より彼の翼が蘇る
死者達は踊り、中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち
それを先駆けに数多の海を守る法の船は砕け落ちる

 この予言があらわすことは管理局の崩壊。この予言が実現した際の被害は測りきれない。だが、今世界で起こっている悲しみが数十倍に膨らむことは想像に難くない。

「はい。私も非才の身ですが、精々頑張らせていただきます」

 カリムの言葉にシャッハが答える。
 シャッハも、いや教会の一同は世界の平和を守りたいという気持ちは一緒であった。


 シャッハが答え終わると同時に部屋に電子音が鳴り響き通信が繋がる。

「どうかしましたか?」

『た、大変です。聖王医療院が!!』

 それは新たな戦いが始まりであった。

















 そこは安穏ととした自然豊かな地であった。

 しかしそれは唐突に破られた。複数の爆発とともに。
 そして爆発と同時に聖王医療院を守護するベルカの騎士に無数のガジェットが襲い掛かった。

「まったく忌々しいわね。でもいいわ踊ってあげる。これを機に私の今の位置を磐石のものにしてみわ」

 多数のベルカ騎士が守る聖王医療院に進撃するガジェットの中心にいたのはNO893であった。
 今回の侵攻理由は、いたって簡単である。前回辛勝とも言いがたい戦闘を行ったNO893田中の身辺警護を行う今の立ち位置にいるのは他のUNズにとって面白い物ではなかった。
 そのため、カルタスが奪還が不可能ではない聖王医療院にいることを理由にその他のUNズがカルタス奪還を計画しNO893に実行させたのだ。失敗による失脚もしくは逮捕・死亡すればよし、成功すれば今の地位を認めねばならないが、このまま何もせずに今の地位にいられるよりもましであった。
 そして、現在の地位を磐石にしたいNO893もこの機会を利用しようと計画を後押しした。NO893は成果さえ挙げてしまえばUNズ間の暗黙の了解によって現在の地位が保証されてしまうためそれを狙っていた。

 彼女達がこそこそと隠れて行っていた話し合いとはこういったものであった。
 こそこそとやられていたため田中は最初いぶかしんだが、計画が自分にとって害の無いものであるとわかると、困惑したままであったが計画を承認し実行に移した。






 騎士とガジェットとの戦闘は激しさを増していた。
 今回は機密の保全を理由にⅢ型及びⅣ型の使用は禁止されているので使用されている機体はⅠ型とⅡ型だけである。それを主張したのは他のUNズであったので理由はそれだけではないだろうが。


「今だ!! 行くぞ!!」

 Ⅰ型の隙を突き、数人の騎士が得意な接近戦を挑み多数のⅠ型を切り捨てていく。
 乱戦に持ち込まれたⅠ型は一斉射撃による制圧もできず、ケーブルで応戦するも碌な抵抗もできずに次々と破壊されていく。

「よし。いけるぞ!!」

 騎士側も士気が上がり盛り返しを見せる。乱戦の場合、遠距離兵器よりも取り回しがし易い武器の方が有利である。
 ガジェットの熱光線も遠距離兵器としては取り回しがそこまで悪いわけではないが照準を合わすのに本体ごと向きを変えなければならないことや連射能力が低く点による攻撃のため、接近戦のエキスパートであるベルカの騎士と接近戦を行うには遠く及ばない。ケーブルは取り回しもよく線による攻撃ができるので接近戦に向いているが、AMF影響下とはいえベルカの騎士と切り結ぶにはあまりにも力不足であった。
 乱戦に持ち込まれたⅠ型は次々と破壊されていった。


 しかし上空での戦いでは、遠距離での攻撃を持つものがほとんどいないベルカの騎士に対して遠距離での攻撃のみで戦うⅡ型が優勢で進めていた。
 ベルカの騎士も消耗を抑え健闘していたが、一部の機体が地上へ攻撃を開始するのを止めることはできなかった。




 騎士として人との戦いを想定してきた彼らは気づけなかった。ガジェットは仲間を攻撃することに躊躇いなど無いことを。そして空戦能力があるもの以外にとって乱戦から離脱するのは至難の業であることを。
 彼らが気が付いた時には、上空のⅡ型から大量のミサイルが降り注いでいた。
 それらは空対空用の炸薬量の少ないミサイルではなく炸薬量の多い空対地ミサイルであった。空対空に比べれば速度は遅い。しかし乱戦によって周りの敵が時には味方さえも障害物となって離脱にもたついた獲物に対しては十分な速度を持っていた。
 彼らにできたことはバリアを張り騎士甲冑の防御力を上げることだけであった。

 それらの攻撃により多数のガジェット共に乱戦をしていた騎士達は多大な損害をだした。ある者は即死し、ある者は手足を失う重症を負った。無論、軽傷者や無傷の者のほうが多いが戦えない者が四分の一ほども出てしまった。
 負傷者を守りながら、戦うのでは動ける範囲が狭くなり、病院への侵攻を許してしまう。




「ふん。まったく無駄な抵抗を。おかげで余計な時間を使ってしまったじゃない」

 NO893は忌々しそうに吐き捨てるとコンソールを操作し、ガジェットを侵攻させていく。そして自らもガジェットと共に侵攻していく。
 しかし、それは護衛のガジェット数機が破壊されるのと同時に止められることになる。

「あらあら、執務官様のおでましね。でも増援にしては早過ぎるわね」

 現れたのはフェイトであった。
 偶然カルタスを見舞うため訪れようとしていたため、この場に現れることができたのだ。

「今すぐこの騒乱を止めなさい。これ以上、罪を重ねないで」

 凛とした声でフェイトは投降を呼びかけた。
 しかしNO893はそれに対して。

「お断りするわ。私はやらないといけないことがあるの」

 あっさりと投降を拒否されるが、フェイトは諦めずに説得を続ける。これ以上罪を重ねて欲しくない一身で。

「それは多くの人を殺してもやらないといけないことなの?」

「えぇそうよ。だってマスターの願いであるんですもの」

 しかしNO893はフェイトの言葉に対して笑顔で拒否をする。

「そんなことをしてもあなたは報われない。あの男は貴女達をただの駒としてしか見ていない」

「えぇそうね。私達は役割を負うために生み出された。それにマスターは私達を駒としてみている」

「だったら」

 言葉を続けようとするフェイトをNO893は嘲りのある声で遮った。

「それを貴女が言ってもなんの説得力がないわね」

「え?」

「単なる駒として扱われ、最後には駒としても見てもらえなかった可愛い可愛いお人形さん」

「一体何を……?」

「試験管から生み出され、その後は便利な人形として扱われた挙句に、最後にはお払い箱。それなのに最後まで母親に縋っていた貴女がそんなことを言っても説得力がないんじゃない?」

 呆然とした表情をフェイトが浮かべる。それを見たNO893はさらに楽しそうな表情を浮かべて話を続ける。

「ね? お人形さん?」

「どうして貴女がそれを……」

「そんなことどうだっていいじゃない。ようするに未だに部屋に母親の写真を飾っている貴女がそんなことを言う資格なんてないんじゃないってこと。貴女の論理で言うなら、人形扱いしていたプレシアは母親じゃないって否定するべきなんじゃない?」

 その言葉にフェイトは呆然とする。NO893が言ったことは管理局の一部の人間しか知らないことであり、最後の写真のことはフェイトの部屋に入ったことのある人間にしかわからないことである。
 何故それを知っているのか、それを考えると混乱し行動をとることができない。

「そうね。貴女が言っていることは間違っていない。私はまだ母さんのことを母親だと思っている。でもそれは私が決めたことだから、でも貴女は……」

 そこまでフェイトは言ったところで表情を歪め躊躇うが、意を決したように続きを語りだす。

「貴女は洗脳されている。貴女があの男のことを思うのも無理やり思わされていることなの。だから」

 フェイトのその言葉にNO893は嗤う。

「だったら、貴女のそれもただの洗脳じゃない。貴女が母親を思う気持ちもアリシアの記憶を埋め込まれたことによる副産物でしかないわ。とんだお笑い種ね。それに、私達が洗脳されていることは知っているわ。でも、それでも私達は自分達で選んだの」

「どうして……」

 まだ言葉を繋げようとするフェイトの言葉を爆発音が遮る。
 煙は病院からあがっている。

「なっ?!」

「何で私が貴女と無駄な会話のために時間を使ったと思っているの? 貴女を手持ちの戦力で倒すのは勿論、時間稼ぎもたいしてできない。だから一部の部隊を別ルートで向かわせて私はここ戦力を減らさずに時間稼ぎ。貴女にばれない様に向かわせないといけないと駄目だから手間だったけど上々ね」

 フェイトは焦燥感に駆られる。今ここで彼女を捕らえても別の人間がガジェットを操っていれば、そこまでだ。

「早くしないと病院の非戦闘員が巻き込まれるわよ」

 フェイトは目の前の少女を置いて病院へ向かう。
 色々な感情を置き去りにしながら。










 病院は控えめに言っても大混乱に陥っていた。
 1階では残っていたベルカ騎士の守備隊とガジェットが戦闘を繰り広げ、それよりも上の階では逃げようとする患者とそれを押し留める医師や看護師で騒然としていた。
 医師たちが押し留めているのは、1階で戦闘を行っている以上は地上からの脱出ルートが存在せず危険しかないためである。だが、それがわからない患者は危険なこの場所から逃げようとパニックを起こしていたのである。
 ちなみに他の脱出ルートとしては緊急搬送用のヘリで逃げるという選択肢もあるにはあるが、制空権をガジェットに握られている状況下では危険極まりない行為である。

 カルタスはそんな中、自分の病室から外の様子を窺っていた。
 窓の外で繰り広げられるガジェットと騎士の戦いに顔色を悪くさせていた。

(な、なんでこんなことを……)

 誰にも聞こえない声でそう呟く。
 襲っているのは大量のガジェットであること、原作でこんな事件がなかったことからこれは間違いなく田中の仕業である。それを考えると意味がないとわかっていても呟くことをやめることができなかった。

「ういっす。助けに来たぞ~」

 誰にも返事されるはずのない呟きに対して扉の向こうから返事をする者がいた。
 息を呑むカルタスを無視して扉から侵入してくるものはガジェットⅠ型であった。音声はガジェットから出ているようである。そしてその声にカルタスはもちろん聞き覚えがあった。

「よし、時間もないしさっさといくぞ。付いて来い」

 そういうとさっさと部屋から出て行こうとする。

『待て!! 何でこんなことをしたんだ?!』

 カルタスは、端末を操作し投影したディスプレイに文字を表示し、田中に問いかける。

「だから時間が無いって言うのに……。お前の言いたいことはわかるが状況が変わったんだ。以前ならお前が管理局に捕まってもフェイトに保護されてハッピーエンドだったんだろうが、俺と一緒にプリズンブレイクしたりした時点でお前も上層部に目を付けられた可能性があるわけだ。まぁ、放っておかれる可能性も普通にあるわけだけど、わざわざ危険を冒すほどのことでもないだろ?」

 やれやれとガジェットはケーブルを使って無い肩をすくめる仕草をしながら言い終えると、話はそれまでだと部屋から出ていこうとする。

『俺が聞きたいことはそんなことじゃなくて、どうして人を傷つけるようなことをするんだってことだ!!』

「おまえさぁ、他人のことなんて気にしてる場合じゃないだろ? 俺はすでに指名手配されている身だし、おまえも下手すればどうなるかわからないんだぞ? 捕まれば二度と娑婆に出れない状況なわけだ」

『自分のために他人を犠牲にするっていうのか?!』

「俺としては知らない他人を犠牲にしても生きたいね。ほれ、早く行くぞ」

 早く来いとケーブルをくいくいと振りながら促す。が、カルタスは俯いたまま答えない。
 だんだんとケーブルを振るスピードが速くなるがそれでもカルタスはまったく来る様子が無い。やれやれともう一度無い肩を竦める。

「……俺は行かない」

「ん?」

 聞こえるはずの無い声を聞き間抜けな声と共にガジェットが振り向く。

「俺は行かない。他人を犠牲にして進む道なんて後で後悔するだけだぞ!! ホクトさん達を信じて一緒に違う道を探そう」

 何がカルタスに心理的外傷を乗り越えさせて声を再び与えたのかはわからない。それはカルタスの強い思いだったのかもしれない。
 だが、

「俺としては後悔することができる『後』がとりあえず欲しいね。俺としてはあいつを信じてへたこくより、自分で行動してへたこいた方が後悔しないね。……んで、本当に来ないのか? 変な意地をはるのは止めとけって」

 それに対してガジェットは苛立ちで返す。自分の行動・考えを否定されたことに対する反発であろうか。

「……行かない。何でだよ。どうして信じないんだよ?」

「むしろどこに信じられる要因があるのか知りたいね。それに、もう引き返せないところまできてるんだ。ふんだ、もう誘ってやんないからな。やっぱり連れてってて言っても連れて行ってやんないんだから」

 そういうと、ガジェットは部屋から出て行ってしまった。
 カルタスはそれを力なく見ていることしかできなかった。

「これが最後のチャンスだぞ」

 出て行った向こう側から、ひょっこりとドアの隙間から頭?だけを出しながら聞いてくるが、カルタスが何の反応も見せないのを見ると、ゆっくりと離れていった。

「何で、何でだよ……」

 カルタスはそう呟くとごしごしと目元を擦り続けた。




















「マスター、病院内に侵入させたガジェットはこの後はどうしましょう?」

 椅子にだらしなく座っている田中にガジェットの操作をしていた秘書役のUNズは声をかける。
 それに対して田中は「う~ん」と唸り声をあげるだけである。田中はカルタスとの会談の後からはずっとこの調子である。
 そんな田中の心情はUNズには窺い知れない。

「おや? この反応は……。マスター、病院内に脱ぎ魔が到着した模様です」

 UNズは登録されている敵の魔力反応を捉えたため、その敵に割り振られているコードネームを淡々と読み上げ指示を仰ぐ。

「ん? フェイトか……。さっきカルタスに言い忘れたことの伝言でも頼もうかね」





 病院の一階部分では、防衛に当たっている騎士達が再編成を行っていた。

「ありがとうございます。ハラオウン執務官。執務官がガジェットを一掃してくださったおかげで立て直すことができます」

「いえ、それよりも死傷者は?」

「幸い民間人には被害はありませんし、騎士に何人か負傷者がいますが死者はおりません。」

 もっともそれは病院内部だけの話で、外では騎士だけとはいえ大量の死傷者が出ている。

「このまま再編成を行い、外の負傷者を救助しつつ救助がくるまで……。なっ?! ガジェット?!」

 騎士の隊長格の男性が見つけたのは病院の階段をのんびりと降りてくるガジェットの姿であった。
 その声を聞いた騎士やフェイトはガジェットを破壊しようとデバイスを構えた。

「おっと、本当に壊していいのか? もしかしたら前の事件の時みたいにこのガジェットは強力な動力炉を積んでいて、破壊すると爆発で病院が倒壊するって可能性もあるぞ?」

 ガジェットから流れる男性の声を聞き全員の動きが止まる。その中で、声の主に心当たりのあるフェイトだけはその声を聞き表情を歪ませる。

「まぁ俺の伝言を聞いてくれたらこのガジェットは外に出すからさぁ。そうカリカリしなさんな」

 そのふざけるた口調に全員が殺気立つが動くことはできない。

「んじゃぁ、カルタスに伝言なんだけど『vivid、forceは中止でStrikerSはBAD ENDで強制打ち切りにするから。邪魔すると大食い娘の母親のようになる』んじゃ、伝言よろしく~」

 そこまでいい終えるとガジェットは、いきなり近くにあった窓をぶち破り外へ飛び出していった。 












 それから1時間後、管理局と教会からの増援によって完全に事件は鎮圧された。
 幸い病院側に死傷者はでなかったが、守護を請け負っていた騎士達に多数の死傷者が出た。そして、事件の実行犯であるUNズにはまんまと逃げ遂せられてしまった。

 管理局、教会双方にとってこれは大きな痛手であった。
 だが、この事件がこれから始まる事件の序章でしかない。



~あとがき~
こんな時間帯にこっそり更新。
なんでこんなに、更新頻度が遅いんだろorz



最後のフェイトとの会話に違和感を覚えた方はすいません。でも自分にはこれ以上の会話を思いつきませんでした。やはり原作キャラに喋らせるのは難しいですね。

~あとがき2~
量があまりなかったので追加という形式をとらせていただきました。

sg◆8a0f027cさん
Tom◆f71d00ccさん
誤字報告ありがとうございます。
あと元ネタはないです。
単純に逆でしたorz

ちなみに外に飛び出したガジェットは外にいた騎士に瞬殺されました。
ちなみに似非ジュエルシードは積んでませんした。

登校日:2010/07/14 17:01



[7818] 第26.5話 「それぞれの思い」
Name: ジャミー◆90775155 ID:f79e8ba1
Date: 2011/04/01 12:20
第26.5話 「それぞれの思い」




 クアットロが先ほどから作業を行っているが、傍から見ていてもわかるほどにイラついている。

「なんで私があの男の後始末を!!」

 先ほどから聞こえてくる罵声からわかるとおり田中の後始末である。正確に言えば、最高評議会に対し

て田中が破損させたガジェットの補充名義での部品の補充要請である。








「そこまで大した作業量ではないのに何故あれほどクアットロは怒っているのでしょうか?」

「それは勿論、彼女が彼のことを嫌っているからだろうね」
 
 クアットロから少し離れた場所で紅茶を飲みながら優雅に作業を行っているスカリエッティーとウーノ

。二人ともクアットロを手伝う気はなさそうである。まぁ、元々の作業量は多くないので妥当といえば妥

当ではあるが。

「田中が最終的に我々を裏切ろうとしているからというのはわかりますが、それは最終的に我々が主導権

を握ってしまえば済むこと。あれほど怒る理由がわかりません。」

「同属嫌悪というものなんだろうねぇ」

「同属嫌悪ですか?」

 その問いに対して紅茶を置きながらスカリエッティーが答える。

「人間不信、挑発的な言動、他にも色々と似た部分があると思わんかね?」

「はぁ」

 わかったようなわからないような声で答えるウーノ。

「例えば、二人とも人というものを信じていない。故に彼女は後発組みから感情を消そうとしたし、彼は

配下のクローンに洗脳を施したわけだ。しかも彼の洗脳は医学面、心理学面の2重で細工が施されていると

いうオプション付きだ。……まぁもっとも二人とも心許せる者を持ちたがっている寂しがりだがね」

 そこまでいい終えると紅茶を一口飲み。続きを話始める。

「クアットロの場合はドゥーエが当てはまる。人間らしさを否定しているはずの彼女は、『姉妹には優し

い』ドゥーエを敬愛しているだろ? 彼の場合は、カルタス君だったかな? 洗脳を施さないと安心でき

ないはずの彼はカルタス君を同等の存在と見なしている節がある。もっとも彼の場合は振られてしまった

ようだから、これからどうなるのかが楽しみだね。もともと精神的に壊れかけていた彼がこれからどう暴

走するのかがつくづく楽しみだ」

「……クアットロと田中が似ているというのは理解しましたし納得できたのですが。田中が暴走するとい

うのは不味くは無いのですか?」

 スカリエッティーはウーノの質問に嘲笑を浮かべて頷き答える。

「なに、大丈夫さ。彼の目的はだいたいわかってるからね。その目的から考えると、私を排除しようなん

て考えていないだろうさ。それにもし排除しようとしてもゆりかごの起動直前までは安全さ。そんなに早

く私達を消すと最高評議会にばれてしまうからね」

「目的ですか? 田中の目的はゆりかごでの管理局の制圧。そして我々の排除によるゆりかごの奪取では

ないのすか?」

「うむ。私の考えも君とほぼ同じだよ。だが、排除というのは死をもってのものじゃないよ。最高評議会

に成り代わって私達を支配しようとしているのさ」

「田中は私達を殺害しようとしていたのではないのですか?」

「彼の手配書のが出回るまではそうだったんだろうが、今更私達を消しても彼にとって大きなメリットは

ないよ。まぁ、デメリットを消すことはできるがね。それよりは私に技術開発をさせるさ。その証拠に彼

のコンピュータに入っていた制圧後の長期計画には私無しで考えると期限が短い開発案件がいくつかあっ

たしねぇ」

 スカリエッティーは田中のコンピュータに不正アクセスしたというのに、特に自慢することも恥じるこ

ともなく淡々と話し続ける。
 もっとも、田中とスカリエッティーの関係を考えると特に恥じる必要も無いだろうが。

「はっきり言って彼は研究者として私より劣っている。彼がやってるクローンに関してもガジェットに関

しても私から得た物の単純な延長でしかないしね。電力のみで動くガジェットやクローンの大量生産によ

る組織的な運用というのは面白かったがそれだけだしね。彼にも能力はあるが発想力がないし、第一研究

というものにそこまで関心も無い」

「では逆に我々が田中を生かしたままにしておくメリットはあるのですか? ゆりかご上昇後に田中達を

制圧する手はずは整えていますが、絶対に成功するとはかぎりません」

 ウーノの問いにスカリエッティーは悪戯を企んでいる子供のようにニヤリと笑うと問いに答えた。

「彼は最高評議会に成り代わろうとしているが、それは私にとってもなんの文句はないんだよ。ただ、私

が彼を支配する側になる場合だけだがね。最高評議会が無くなれば今まで私達がしなくてよかった研究の

ための環境を自分たちで用意しなくていけない。それに加えて管理世界の管理もしなくてはならない。は

っきり言ってそんな瑣末ごとに時間をとられるのはナンセンスだよ。幸い彼は次元世界を管理するための

長期計画をたててあるようだから、彼にその役目を譲ろうじゃないか」

「なるほど。……形は変わるとはいえ我々には最高評議会は必要だと」

「そういうことだよ。彼はそういった面では私より優秀さ。彼よりも優秀な人間は探せばいるかもしれな

いが、探し出すのが面倒からね。それに人を資源と見なし管理しようという彼の考える社会主義というの

は私達にとっても都合がいいからね。実力に関しても大規模開発やクローンを利用しての管理及び発展は

無人世界でなかなかの実績を残しているしねぇ。あとはどうやって彼を縛り続けるかを煮詰めるだけだね



 スカリエッティーはくつくつと笑い終えると紅茶を飲み作業を再開した。ウーノもそれに倣い作業を再

開した。クアットロは漸く作業が終わったようで、悪態を吐きながら別の作業を開始した。
 そこにはいつも通りのラボの光景が映っていた。



あとがき
昔のように小刻みでの更新に戻そうかと思います。
その代わりに更新頻度を2週間に1回を目標にして。
このままだとまた年を越しそうですから。



[7818] 第27話 「アグスタ」
Name: ジャミー◆90775155 ID:f79e8ba1
Date: 2014/01/16 18:32
自分自身のことを解っている者は多くはいない。
むしろ自己を正当化することで本質を隠していく。
しかしそれを気にしてはいけない。
by田中


第27話 「アグスタ」






 目の前の机の上には白い布切れに包まり、震えながら怯えた表情でこちらを見るアギトの姿がある。
 とりあえず……。

「ヒャッハー!!」

「や、いやぁぁぁっ!!」

 荒ぶる鷹のポーズをきめつつ奇声を咆げてみたところ悲鳴をあげた後に、さらに体を丸めて震え始めた。
 すまない。嗜虐心が刺激されたんだ。



 それにしてもこれがあのアギトとは……。
 アニメに出ていた時の面影がないな。元気っ子的な意味で。
 俺が少し動くだけで過敏に反応して怯える。まぁ、俺が白衣を着ているせいで向こうの施設の研究員を連想するのだろうけど。

 とりあえずこいつはどうしよう? シグナム及び管理局勢力に使われたくないという理由で、発見した研究所を襲撃させて連れ去らせたわけだが、その後のことはまったく考えてなかった。

 とりあえずホクトざまぁぁぁぁぁぁ。

 たしかに融合騎には興味があるが、今はそんなことに割く時間はない。あったとしても自分で調べるのは面倒くさい。
 う~む。どうしたものか。どこかに監禁しとくか?

「マスター。この融合騎はどうなされるのです?」

 俺が考え込んでいるとNO893が俺に尋ねてきた。…………うん。そうしよう。厄介なことは他人に押し付けるに限る。
 となればやることは簡単だ。
 まずはしゃがみ込む、次にNO893の両肩に手を乗せる。そして

「まかせた」

「はい?」

 NO893が頭に?マークを浮かべて首を傾げるが無視する。
 これで懸念事項は一つ解決だな。
 あと、俺がするべきことは……。

「ヒャッハー!!」

「や、いやぁぁぁっ!!」

 なんか楽しくなってきた!!
















「マスター? どうかなさったのですか?」

「いんや、アグスタの2次ネタで一番好きだったのは、解説役として呼ばれたはずなのに、壇上に上がったとたんにユーノが競りにかけられたというシュールギャグだったなと急に思い出しただけ」

 男の娘文化の侵食度合いの高さを示すネタだったな。
 何でそんなことを思い出していたかというと、画面に映し出されているのが、アグスタだからだ。ようするにオークション開催日がやってきました。


 そして、やっぱりこちらに仕事を廻してきやがりましたよスカの野郎!! そんなにロストロギアが欲しければ自分でとってこいよ!!
 …………まぁ予想通りといえば予想通り。それにこちらもこの機会を利用させてもらえばいいだけの話。そのための準備もしてきたわけだし。
 それに最近はアギトの強奪に成功したりと調子がいい、波には乗っている。
 …………カルタスの馬鹿がとち狂ったのはあったが想定の範囲内。大勢に影響はない。………影響は無い。









 原作と違い警備に機動六課はいない。
 怪我が完治していないことによる戦力不足が原因で呼ばれていないらしい。まぁ、警備なんて元々は本来の仕事じゃないし不思議じゃないか。それに今回は奴らがいないほうがいいわけだから好都合。
 警備に地上本部の部隊があたっているが特に問題はない。


 と言っても実際に戦うのは俺じゃないけどな。俺はお家でお留守番。
 今回も前回と同じく前々回の轍は踏みません。安全地帯から偉そうに命令を出して踏ん反り返るのが司令官の仕事なんです。
 司令官が宇宙人の母艦を戦闘機で攻撃しちゃ駄目なんです。
 まぁ、UNズに頑張ってもらいましょう。



 今回の作戦は、短期的に見たら戦略的・政治的に特に大きな影響は無い。だが、ゆりかご浮上時には有利に働くだろう。ゆりかご浮上時の補助という意味では大きな一歩となる。
 副産物として今回の作戦によって原作から大きく乖離するだろうが関係ない。それに、ホクトの手によってすでに乖離が発生している。登場人物の死亡の回避、108部隊と機動六課の早い段階での協力、ETC、ETC。

 俺がやってきたことで影響がありそうなのはアギトの件と今回の件に機動六課が不参加なことぐらいだろう。まぁ、微細では色々あるだろうが。
 奴の介入の結果が俺にとって邪魔な出来事だというのも事実。今後のことを考えると一石投じておきたい。

 …………それにこれは、完全な決別を表すあいつに対する意思表示でもある。

 今回の作戦でアギトの奪取など問題にならないほどの変化をもたらすことになる。
 勿論、悪い意味で。
























~side out~

「このまま何も無く終わればいいんですが」

「まぁな」

 アグスタを警備している部隊の副官の若い男がやや年配の部隊長に話しかけていた。

「それにしても、今回の警備は本当なら機動六課が担当する予定だったらしいじゃないですか」

 副官の男がやっていられないといったニュアンスを含めて言った。

「らしいな。六課の主力が怪我して使えないからこっちに回ってきたとか」

「何で我々が本局の尻拭いをしなといけないんですか」

 若い男が溜息を吐きながら肩を落とす。
 今回のオークションは本局が管理するロストギアを本局の無限図書の司書長が売捌く。副官を含む一部の者はそういった感想を持っていた。

「ぶつくさと文句を垂れるな。遊びじゃないんだ。だいたいうちは警備が半場主任務になっているだろ? 代わりに戦力の制限がゆるいんだ。AAAが3人、AAが4人、Aが6人、Bが8人、Cが15人の大所帯なんてなかなかないぞ? 楽できる分、仕事が回ってくるのは宿命だ諦めろ。むしろ本局の仕事を奪ってやるぐらいの意気込みを持て。だいたいお前はだな…………」

『多数のガジェットの反応を確認しました』

 部隊長が副官にさらに説教をしようとした所で、指揮車からガジェットの来訪を告げる通信が届く。

「ちっ!! やはり終始平穏というわけにはいかないか。ホテル側に避難するように伝えろ」

 二人はすぐさま指揮車に乗り込み各方面に指示を出し始めた。
 ここにガジェットと警備部隊との戦闘が開始された。



















 一方のホテル内でも動きがあった。

 そこにいたのは休日でたまたまアグスタに居合わせたクイントとホクトであった。…………表向きはの話ではあるが。

 勿論、二人はこの事件の被害を最小限に抑えるためにきている。情報源はむろんホクトである。
 本当なら部隊総出で動きたいところであるが、話の信憑性が高いことを管理局に認めさせるという手段を持たない以上はやむを得ないことであった。
 そうである以上は、偶然事件に遭遇したという形を取らねばならなかった。

「さぁ、行きましょう。ガジェットが侵入してくるかもしれないわ」

 こうして舞台の幕は上がった。











 戦闘は警備部隊が有利に進んでいた。
 ガジェット側は参加機体がⅠ型しかいないうえに古いバージョンしかいないため、制空権は管理局側にありAMFの濃度もそれほど濃くはなく、管理局優位に戦局は進んでいた。


「何!? 客の避難をさせないだと!! いったい何を考えているんだ」

 部隊長が毒づく。現在はガジェットの攻勢を防いでいるが、何が起こるかわからない以上は最悪の事態を避けれるように行動するのが最善だからだろう。

 現在は高ランク魔導師と低ランク魔導師を混ぜた分隊で対処しているため、高ランク魔導師の魔力の残量が極端に低下するといった事態は避けられているが、それがいつまで持つかわからない。

 高ランク魔導師は低ランク魔導師のフォローのみを行うことで魔力の消費を抑え、低ランク魔導師に戦果をあげさせる。
 短時間で戦果をあげることはできないが、高ランク魔導師の魔力と低ランク魔導師の人員を消耗させない方法であった。

「応援がくるまで、なんとしても持ちこたえろ。打って出る必要はない。目的は敵の殲滅ではなく、施設の防衛だ。それを忘れるな」

 部隊長が部下を叱咤する。やりようによってはCランクでも十分にⅠ型を破壊できる。それだけの熟練度はある。
 それに時間は管理局側に味方している。時間が経てば周辺の部隊が救援に駆け付けてくれるはずなのだから、警備部隊が敵を全滅させる必要はない。
 時間さえ稼げれば警備部隊の勝ちなのだ。


 その考えは間違いではなかった。事実、予めクイント経由で襲撃を予期していたゼスト隊が襲撃の知らせと同時に救援に向かっていた。










 ただし、そんなことはUNズにとってもわかりきっていた。









 不意にガキリと搬入路を閉ざしているホテルの搬入路用のシャッターを金属の鎌が切り裂く音が響いた。それは一箇所からだけではなく何箇所から同時に響いた。
 それに気付いたホテルの警備員が駆け付ける。彼らが見たのは扉を切り裂き侵入してくる透明な何かであった。

 最初は呆然としていた彼らだったが、すぐに魔力弾を放ち迎撃を開始した。
 が、対AMF戦闘などろくに習っていない彼らの魔法はAMFの前にあっさりと消え去った。

「なっ!! 消された?!」

 そして彼らもまたAMFの範囲に入り、念話さえ困難な状況に追いやられた。
 それらは彼らを障害と認識し排除するための行動を開始した。
 そしてそれらの見えざる死神の鎌が彼らを…………。










「大丈夫!?」

 鎌とリボルバーナックルがぶつかり火花を辺りに激しくぶちまける。

「皆さんはここから離れて一般人の避難誘導をお願いします」

 クイントは、警備員達が避難し始めるのを見届けると改めて見えない敵達と相対し構える。
 その横には遅れてきたホクトが並び立つ。

「やっぱり、目的はここにあるロストロギアか」

「さぁ、ここから一歩も通さないわよ!!」

 その二人の言葉にする返答のように敵はステルスを解除していく。現れた敵は急造で熱光線発生機と無反動砲が追加されたガジェットⅣ型の改造機であった。
 警備員と客が避難するための時間を稼ぐため二人とガジェットの戦いが始まった。








「何!? 内部に侵入されただと!!」

「はい。ホテル側からの通信で、姿の見えない敵に侵入されたと」

 ホテル側から入った通信の内容を副官の男が部隊長に伝えていた。

「姿の見えない敵だと? …………くそ!! 例の新型か!!」

 六課が襲撃された時に出現したというステルス機能を持った新型。その存在に彼らは気づけなかった。無論彼らもステルスの機体に対抗するための準備はしていた。現に今回の配置もホテルを囲むようにされており、侵入するものに気付くことができるようになっていた。
 だだ、一度出現しただけのガジェットの性能を的確に把握することができなかっただけの話である。
 しかし、疲労していたとはいえAAAランクのヴィータに気付かれずに真後ろまで接近し、胸を貫く程の能力を持っていることを把握しろというのは酷な話であろう。

「くそ!! すぐに遊撃隊をホテルに向かわせろ!! ホテルの防衛は放棄する!! 散らばっている隊員を終結させ、客の避難経路を確保させろ!! 随時再編を行い遊撃隊の増援を送り込む!!」

「は、はい」

 しかし、警備部隊側もすぐに少数精鋭の遊撃隊を編成し向かわせることで対処する。少数精鋭とすることで、高い機動力と火力を併せ持つ編成となり救援に向かわせるには最適と言えるだろう。
 
 これより、戦いはより激しく燃え上がっていく。












 ステルスを解きクイント達と戦闘を繰り広げていたガジェット達であったが、二人との距離を開けると急に行動を停止した。
 二人が不審に思っていると二人の近くにいたガジェットからフレンドリーな声が流れ出した。

『おひさ。元気してた?』

 その声を聞いた二人は険しい顔をしながら返答をする。

「えぇ、久しぶりですね」

 そう答えたホクトの声は冷静ではあったが怒りが滲んだものだった。
 そして、より一層怒気を滲ませた声で語り掛けた。

「どうして、病院で警備をしていた人達を殺したんですか?」

 ホクトの問いに対して、しばらくの間が空いてから返答があった。

『あぁ、この前のあれか。邪魔だったから、そして敵だったから。それ以上でもそれ以下でもないな』

 ホクトの問いに何でも無いかのように返答が返ってきた。
 その答えを聞いたホクトは表情を歪めた。

「やはり、貴方は生まれを言い訳にして自分を正当化しているだけだ。どうして、何の罪も無い人たちを邪魔という理由だけで殺せるんですか」

「…………」

 ホクトが鋭い眼光で声を発していたガジェットを睨み付ける。
 それに対してガジェットは、ホクトの言に呑まれたのか、はたまた呆れ果てたのか沈黙したままであった。

「たしかに貴方の生まれは不運だった。実験で人の生を奪うのも仕方なかったのかもしれない。でも!! 病院からカルタス君を連れ出すためだけに警備をしていた何の罪も無い人達を殺す必要なんてなかったはずよ。彼らはカルタス君に危害を加えることなんてなかったのよ?!」

 ホクトは怒りのこもった声で言い放った。
 ホクトの叫びに対して、ガジェットは依然と沈黙を保ったままであった。
 しばらく互いに沈黙を保っていたが、ガジェットから怒声が溢れてきた。

『うるせぇ!! なんなんだお前らは!! こっちの言い分を何一つ聞かないで上から目線で説教して!! お前はいいよな。のんびり過ごしてきて。脳味噌の手先風情が偉そうに!! 何の罪も無い人達? はっ、お前ら脳味噌の手先は俺の敵なんだよ!! 何? 脳味噌の手先なんかじゃない? てめぇらが何と言おうが結果的にそうなんだよ!! 管理局や教会なんてどこまで奴等の手が伸びてるかわからない以上、すべて敵だろ!! いつ、口封じのために殺してくるかわからん人間の下にいるなんて自殺行為そのもの。だから連れ出してやろうとしたのに、甘い考えでこっちの苦労を踏みにじる!!』

 そこまで言い切ると息を整えるためか暫しの沈黙が訪れる。
 そして沈黙後の声は先ほどの怒声と違い落ち着いた声であった。

『いやはや、すまんね。なんか興奮しきってたわ。たしかに俺がやってることは碌でもないことだ。最高評議会とその一部を怨むならともかく、管理局全体を、ましてや教会に敵対するなんて筋違いもいいところだ。まぁ、だからといって敵だという認識は変わらんがね』

 延々と独白を続けていた田中を前に二人は厳しい目を向けたままではあったが遮ることはせずに最後まで聞き終えた。
 だが、終わると同時に静かなしかし力強い声でホクトが語りだした。

「あなたにどのような思いがあり考えがあるのかは私にはわかりません。本当はただ単に救われたかっただけなのかもしれません。でも、貴方は多くの人に害をなし、これからも害をなそうとしています。それは絶対に防ぎます」

 二人はゆっくりと構える。田中が独白を続けている間に警備員は避難が完了していた。おそらく、警備員の誘導で周りにいた人間もすべて避難が完了しているいだろう。
 これなら、気を使うことなく戦闘を行うことができる。
 ここにいるガジェットの数は10体程、光化学迷彩で隠れている機体もいるだろうが部屋の広さから一度に相対するのは3、4体であり、少し奥に引けば通路に入るため背中から襲われることもないため二人で十分に対処できる数だ。だが外のガジェットが万が一侵攻してくることを考慮し早くここのガジェットを排除し民間人の避難を護衛しなくてはならない。
 そう考えガジェットを二人が攻撃しようとした時、突然爆音と共に建物全体に振動が伝わってきた。

「なっ?! 上?!」

 予期もしない場所が震源となっていることに驚きの声を漏らす。

『おっ、本隊が攻撃を開始したな』

 田中の呟きにホクトが反応する。

「なっ!! 貴方の目的はロストロギアじゃなかったの?!」

『いやいや、それはスカ公の目的であって、俺はここのロストロギアなんてどうだっていいし』

 やれやれといった風に田中が答える。
 二人が周りの人の避難のために時間を稼いでいたように、田中もまた本隊のために時間を稼いでいたのであった。いや、田中の場合は、本体が目的地に到着するまでの暇潰しであったのであろう。

「じゃぁ、いったい何が目的で……。なっ?! まさか!!」

『さぁ、答えはなんでしょう? と言いつつ悪いんだけど通信を本隊のほうに移すんで、回答は実演ということで。それじゃあ』

 それだけ言い残すとそれ以降はガジェットから何の音も返ってくることは無かった。
 そしてそれに伴いガジェット達は最初と同じように無機質な動きに戻り、二人を攻撃しようと取り囲もうとしていた。

「ホクト、あいつの目的が解ったの?」

 クイントの問いに対してホクトは軽く頷く。
 今のアグスタで原作に関わるものはロストロギアを除くと一つしかない。















 
 オークション会場付近では突如現れた5機のガジェットによって地獄絵図と化していた。警備員が必死に誘導を行っているが、逃げ惑う人々の統制ができず混乱が混乱を呼んでいた。
 一部の警備員が魔力弾をうちこんで応戦していたが、ほとんどの弾丸はガジェットに届くまでに消えてしまいダメージを与えることができない。
 ガジェットは魔力弾を放ち応戦する警備員を脅威度の高い敵と認識し引き裂こうと一部が前進し、他の機体は警備員を無視し移動し続けていく。
 警備員を無視し行動している機体達の数体が逃げ惑う人々の元へと達した。ガジェットは攻撃もせず大魔力も持たない者を敵性対象とは見做していないが、わざわざ損害を与えないように考慮するようにもできていない。その結果、逃げ惑う人々を突っ切る形で移動を開始した。



 そのガジェットの進行上には親とはぐれたであろう5、6歳の少女が泣きながら床に座りこんでいた。だが、そんな少女を気にも留めずにガジェットは前進を続けていく、ガジェットにとってその少女は有害でもなければ有益でもないそこらの石ころと同じなのだから。
 少女が取り残されたことに気付いた警備員が魔力弾を放つがすぐに他のガジェットに排除される。
 警備員が命と引き換えに放った魔力弾もガジェットに当たる前に霧散し、前進を止めることはできない。
 そしてついにガジェットが少女の前に到達し鋭い脚が少女を貫こうととした瞬間、翠色の鎖がガジェットの脚を搦め捕り空中に固定した。
 振り払おうとガジェットがもがくが、その瞬間に鎖が引かれガジェットが横転する。

 ガジェットが起き上がろうともがいている隙をつき、ハニーブラウンの髪の青年が少女を助けだした。

「大丈夫? 怪我は無い?」

「う、うん」

 青年は未だにもがいているガジェットから離脱し、避難誘導を続ける警備員のほうへ向かって行く。

「スクライア司書長無事ですか?」

「えぇ。この子をお願いします」

 少女を警備員に預けるとユーノ・スクライアはガジェットの群れに向き直る。

「スクライア司書長どうなさるつもりですか?!」

「避難が完了するまで時間を稼ぎます」

「し、しかし危険では」

「時間を稼ぐことに専念すればなんとかなります」

 警備員の心配を無視しユーノはガジェットの方へ向かって行った。

 警備員が人々の誘導をする間、数人の警備員とユーノがガジェットの戦闘を開始する。
 先ほどまで戦闘と違いユーノがサポートに付く事で違った展開を見せていた。ユーノがガジェットの動きを抑えることで警備員は落ち着いて魔力弾の多殻化を行うことができていた。
 警備員の魔力は高くないため多殻化した魔力弾を撃っても一撃で撃破などできないが、多少の破損や足一本を破壊することはできる。何度も打ち込めば破壊することもできる。
 そうして、すべてののガジェットを行動不能に追い込んでいった。

「そろそろ、我々も退避を」

 警備員の一人がそう行ったその瞬間、客が退避して行った通路で突如爆発が起こり崩落した壁の残骸が通路に降り注ぎ彼らの退路を消し去った。
 その爆発の原因はステルスによって透明化したガジェットによる砲撃であった。
 そしてそれに合わせるように他の出入り口からはガジェットが進入してくる。20を超えるガジェットによってユーノ達の退路は完全に塞がれることとなる。
 ガジェット達は数に物を言わせじりじりと包囲網を築いていく。

 ユーノ達が完全に壁際に追い込まれると同時にガジェットから音が発せられる。

『初めましてスクライア司書長殿。警備員を囮に転移で逃げられたらどうしようかと思ったが、原作通りのお人好しで助かったよ』

 ガジェットから発せられた声に全員戸惑いが隠せない状況であったが、意を決してユーノがそれに対峙する。

「僕に何かようですか」

 ユーノの緊張した声とは対照的にガジェットからは緊張の感じられない声色で声がかけられる。

『あぁ、とても大事な用がね。と言ってももう終わったよ。話しかけたのは念のため本人か確認したかっただけからね。本当は何時間でも話をしていたいんだが、そうは言ってられないのでね。さよなら、ユーノ・スクライア』

 ガジェットの声が途切れると同時に取り囲んでいたガジェットから一斉に熱光線と砲弾が放たれユーノと警備員達に殺到し、次の瞬間には多数の爆発が彼らを覆い隠した。

『あっけなかったな』

 濛々と煙が立ち込める中、ガジェットから呟きが漏れる。

『なっ?!』

 だが次の瞬間には驚愕の声に変わった。
 煙が晴れた所にいるのは、先ほどと変わらない彼らの姿だったのだから。違う点は、彼らを翡翠色のバリアが覆い隠している事と、ユーノの息遣いが荒い事であった。

『ちっ』

 舌打ちと共に、再度攻撃が開始される。
 確かに先ほどの攻撃は防がれたが、無反動砲は軽装甲車輌なら撃破可能な能力を持っている。それをそう何度も耐えれるはずがない。現に先程の攻撃でユーノが消耗しているのは見て取れる。
 高密度で囲み過ぎたせいで前衛の5機しか無反動砲を撃てないが、自動装填により10秒にも満たない時間で発射が可能となるためそう問題はない。
 そう判断した田中の読み通り新たな攻撃によってユーノの魔力はほぼ消えさった。むしろ、対魔法防御を想定して作られているわけではないとはいえ、無反動砲を何発も耐えたことが驚きである。
 田中が次で終わりだと、10秒を待っている瞬間にガジェットのレーダに別の魔力が探知される。

 自動で外円部にいたガジェットが迎撃に向かうが鎧袖一触で撃破される。
 彼らの正体は遊撃隊として送り込まれた局員達であった。

 あっさりと数機撃破されたとはいえ、まだまだ余裕はある。ある程度の戦力は包囲に残し、抽出された戦力が応戦に向かう。
 抽出部隊と局員が本格的な戦闘を始めると同時に、新手の部隊が現れ、機体を抽出したことによって薄くなった包囲の一角に大量の魔力弾が打ち込まれ包囲が崩れさる。
 着弾のすぐ後に生き残った前衛2機が無反動を放つが、ユーノのバリアは崩せず、包囲網の穴から警備員達に逃げだされる。

 ガジェットは逃亡する一団に攻撃を加えようとするが、すぐさま攻撃できる前衛2機は再装填が間に合わず、止むを得ず無反動砲の代わりに熱光線を放つがユーノのバリアを破ることはできずに弾かれる。
 他の機体は、無反動砲を放とうとするも先ほどの攻撃で残骸となった味方の機体が邪魔で射線が確保できず放てずにいた。
 おかげで順調にガジェットから距離をとりつつあった一団であったが、別働隊と合流する寸前に、ガジェットに割り込み設定が付け加えられる。
 ガジェットの優先目標が手動でユーノとは離れた場所にいる警備員に変更される。
 次の瞬間、放たれた熱光線によって足を打ちぬかれた警備員が転倒する。
 直前になされた会話とその後の攻撃がユーノに集中していたことから、敵の目的がユーノただ一人と考え、余力も無かったためユーノと巻き込まれる可能性のある周辺にしかバリアを張っていなかったことが裏目にでてしまっていた。
 優先目標を強制変更されたガジェットは愚直に戦術等を無視し警備員に攻撃しようとするも翡翠色の鎖が絡みつき体勢を崩す。それにより放たれた熱光線はあらぬ方向へと飛んでいく。

「早く彼を!!」

 足を負傷した警備員の前にユーノが立ち塞がり他の警備員が負傷した仲間を連れて行くまでの時間を稼ぎ始める。
 再装填の終わった無反動砲が命中するもユーノを打ち破ることはできず、ユーノが稼ぎ出した時間により、負傷した者を含む警備員が局員と合流を果たした。
 すぐ様、局員の一人がユーノを援護しようと飛び出し、合流しようとした瞬間に何の前触れも無くユーノの胸から血が噴出す。

「え?」

 誰が出したのかも分からぬ呟きが漏れる。
 それほどまでに唐突であった間近で見ていた局員にも突然、ユーノの胸から血が吹き上がったように見えた。
 しかし、よく見れば透明な鎌に沿って血が滴り落ちているのがわかる。

 すぐさま状況を理解した局員はステルス化したガジェットがいるであろう場所に一撃を加える。
 局員の一撃によりユーノに刺さった鎌を本体から分断されるもガジェットの応戦によって振り下ろされたもう片方の鎌が局員に直撃する。
 幸いバリアジャケットを貫くことはなかったものの弾き飛ばされ距離を開けられる。
 すぐさまユーノの元にかけ戻ろうとした局員に対してガジェットの取った行動は簡単かつ効率的なものだった。
 自爆。ジュエルシードモドキ搭載型のⅢ型と比べると蟻と象ほどに違う爆発だが、攻撃対象が近距離かつバリアを張れない相手なら効果は絶大である。
 
 その直後に局員によってガジェット達は一掃されたがすべてが遅すぎたのであった。

 

 

























「やったか?! 流石に、あれだけの爆発に巻き込まれてはひとたまりもあるまい」

 口元をにやけさせながら、田中は椅子に深く座り直す。

「ホクトの悔しがる様が思い浮かぶようだ」

「何故、マスターはあの女をそこまで嫌うのですか」

 にやついている田中に対してNO893は以前から気になっていた疑問を問いかける。

「ん? 理由か? 理由なぁ。まぁ、あえて考えればいくつも浮かんでくるが、結局のところは自分でもわからんな。醜い妬みなのかもしれんが、とりあえず腹立たしい。それだけだな」

 そこまで言った後、田中は上機嫌なまま撤退指示を出していった。
 今回の出来事で今後の展開は大きく変わっていくだろう。それが良い方向なのか悪い方向なのかはまだ誰にもわからない。
  
投稿日:2011/04/19 00:47



[7818] 第28話 「アグスタ戦が終わって」
Name: ジャミー◆90775155 ID:b92758f3
Date: 2014/07/30 23:26
第28話 「アグスタ戦が終わって」






 やったねタエちゃん。ゆりかご浮上阻止にかかる手間が増えるよ!!
 タエちゃんって誰だよって思った良い子の皆は間違ってもググっちゃ駄目だよ。お兄さんとの約束だよ。

 やっほぉぉぉぉぉぉぉっ!!
 ゆりかごの資料とか内部図面を引っ張りだしてくる馬鹿が死んだよ!! これで仮にゆりかごに侵入されても動力炉&玉座に着くまで時間がかかるよ!!
 ゆっくりしていってね!!





 ……などと無理にテンションを上げてみたが、いまいち楽しくない。
 まぁ、別にテンションが上がらなくてもいいわけですし。
 目的は果たしたわけですし問題はなっしんぐ。ゆりかご浮上の時間稼ぎ&六課に対しての精神的ダメージ+カルタスへの決別の意思表示になったわけで万々歳だ。

「マスター、地上本部より先日の戦闘に関する最新の情報が届きました」

 うむ。
 ユーノ殺害を果たした以上は他の戦果はあまり関係がないが、念のため見ておくか。何が後々に影響を与えるかわからんしな。

 どれどれ。
 民間:死者3名、負傷者68名、行方不明3名
 局員:死者2名、負傷者11名
 
 こっちは旧式を含めるとはいえ50機以上の損失があったことを考えるとガジェット(笑)状態だな。
 高ランク魔導師とはいえ一般局員に圧倒されるガジェットェ。まぁ、AMFが薄い場所だと不意打ち無しではⅣ型でもあんまり優位にはなれんというのは痛いほどわかった。
 やっぱりAMF特化機使うか集中運用でAMF濃度を高めた場所を作り出さんと訓練された魔導師とやりあってもガジェットに勝ち目は無いか。

 まぁそれは今後の課題として、続きを読むか。

備考:ユーノ・スクライア 意識不明の重態

 って、おい!! 生きてんのかよ!!
 くそ。

 今回の計画は失敗か。まぁ、重症ならゆりかご浮上時に無限書庫で無双することもないか?
 確実を期す為に暗殺っていうのは、現実的じゃないしなぁ。これも今後の課題か……。致命的な問題じゃないのが救いだな。
 とはいえ、ユーノに無双されるされるのも困る。念のため内部図面が敵に出回った場合の対応をしておくほうがいいか。
 くそっ!! 対空武装に時間がかかっているっていうのに!!
 この苛立ちをどこにぶつければいいのだ?!




 苛立ちをぶつけるべく隣の部屋へ突撃する。

「ひゃっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 悲鳴をあげ頭をかかえ蹲るアギト。
 それを抱きかかえ優しく撫でてやるNO893。
 そして、何か言いたげにこっちを見てくる。

 えっ? 何? 母性本能にでも目覚めたのか?
 なんか。物凄くいたたまれないんですけどー。
 俺が悪いの? ねぇ?





~side out~
 機動六課は悲しみと後悔に包まれていた。
 無理をしてでもアグスタの警護に行っていればこんなことにならなかったのではと全員が考えるが、すべてはすでに後の祭りである。

 特に酷かったのが、なのはとフェイトであり、一時は酷い取り乱し様であった。
 反対にもっとも落ち着き冷静に部隊内のフォローに回っていたのがはやてであった。だが、彼女もまた一人になった時には両目を涙で濡らし、他の皆と同じ様に、いや、それ以上に後悔で思考を埋

め尽くされていた。

「私が、私があの時、命令をそのまま受託しておけばこんなことにはならへんかったかもしれへんのに……」

 アグスタの警護は元々機動六課に回ってきた仕事であった。だが、部隊員の体調が悪く、仕事に支障をきたすと考え、他部署に回してもらえるように、はやては依頼をかけてしまった。
 結果的にはその所為でユーノを助けることができなかったが、当時の判断は決して間違ってなどいない。もしかしたら、ユーノを助けることができたかもしれない。だが、その代わりに本調子でな

い隊員の誰かに犠牲が出ていたかもしれない。
 そのことは課員の誰もが分かっていることだった。だからこそ誰もはやてを責めない。それ故に、はやては誰にも責められない己が許せない。逆に家族にフォローされる自分に怒りさえ覚えていっ

た。



 こうして、アグスタの事件は機動六課全体に深い傷痕を残していった。
 






~side ホクト~
 私は大きな過ちを犯してしまった。
 彼の目的に気づくのが遅すぎたためにユーノさんが重症を負うのを見過ごしてしまった。

 私が彼の目的に気づき現場に到着した時には、地獄のような光景があるのみだった。

 彼がユーノさんを狙った理由はおそらく、ゆりかごの情報のサルベージ阻止のためなのだろう。
 ユーノさんがいなくなればゆりかごの情報が現場に届くことを遅らせることができる。
 そんなことのために……。ユーノさんを……。しかし彼にとってはオークション会場にあったロストロギアよりも重要なことだったのだろう。
 しかし、これは私の落ち度だ。
 彼が何を求め行動するかを予測できたのは私だけだったのに、安易にロストロギアを狙った行動だと考えてしまった。
 彼はなりふり等かまっていない、手段など選んでいないのだ。
 私も覚悟を決めないといけないのだろう。



[7818] 第29話 「誰だよ。そんないい加減なこといったの」
Name: ジャミー◆90775155 ID:01a89712
Date: 2014/12/01 17:51
第29話 「誰だよ。そんないい加減なこといったの」


 ヴィヴィオは、運送時にレリックと一緒に梱包しなきゃ問題なく届くから寝てても手に入るよと言ったが、すまん。ありゃ嘘だ。
 ヴィヴィオ作るのはスカさんと関係無い組織だから黙ってたら手に入りません。



 ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
 カルタスの奴め、いい加減な情報をよこしやがってぇぇぇぇぇ!!

 ……とか馬鹿なことやってる場合じゃないな。何で俺はそんな馬鹿な記憶違いをしていたんだ……。

 オリヴィエさんのクローンは何時頃できますかってスカさんに聞いたら『作ってないよ☆』 というお返事をいただいたため絶賛混乱中。
 大丈夫。まだ慌てるような時間じゃない。こんな時こそ落ち着くんだ俺。素数は孤高の数字、俺に勇気を与えてくれる。
0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10

 大丈夫だし。高町さんちのヴィヴィオちゃん襲う時に、原作より大量の戦力振り向ければ何とかなるし。

 本当に?
 いや、駄目だ。全然安心できない。むこうもこっちが数割増しで戦力を振り向けることは予想してるに違いない。原作+ゼスト隊とか振り向けられたら、生半可な戦力じゃ返り討ちだな
……。
 逆に考えるんだ。負けてもいいやって考えるんだ。……いやいや駄目だろ負けたら。

 無理に戦う必要はないんだ。ヴィヴィオさえ攫えればいいんだ。どうする? ヴィヴィオ襲撃時に別の場所に誘導する?

 ちゃんと誘導されるのか? 前のアグスタの時みたいに管理局ではなく、個人としてこられたら誘導しきれないぞ……。
 いや、個人としてくる分ならナンバーズ共も駆り出せばなんとでもなるか。大量の人員が一斉に休暇をとるなんてないだだろうし。そもそも、いつ誘拐事件が発生するかなんてわからないだろうし、もしかしたらバタフライ効果でヴィヴィオの輸送が行われないかもしれないし、ガジェットが襲わないかもしれないし。って、うおぉぉぉぉぉぉぉい。それは流石にまずいだろ。ガジェットがヴィヴィオを襲わなかったら別組織にそのまま輸送されるだろ!! どうするんだよ。ヴィヴィオいねぇとゆりかごが動かないぞ?!
 落ち着け俺。とりあえずはイベントが発生することを前提に考えよう。
 その場合、流石にスカの字も、ゆりかごの重要生体部品奪取には協力するだろう。だが、さらにガジェットの在庫が減るな。現在の生産の大部分が組み立て工場状態とはいえ生産体制が整っているのは幸いか。家電メーカー状態なのは辛いが、基礎技術無しで生産体制を整えるには仕方がなかったしな。
 せめて重要部品の輸入経路を増やしてリスク分散するか。重要部品の何点かは少量生産は可能だか、大量生産体制はまだ構築できてないしな。


 イベントが発生ない場合も考えてスカさんに相談するか。原作で輸送中のヴィヴィオがガジェットに襲撃されるのは予定外のことだっただろうし、当ては流石にあるだろう。これだけの重要部品の入手を完全な運頼みにはしないだろう。


















 スカ衛門に相談した結果。
 (脳味噌傘下の)他所様がヴィヴィオを作る→ドゥーエさんが情報を盗ってくる→ナンバーズが襲撃→解決
 とうプランらしい。大丈夫なの。これ? ゆりかご本体は押さえているから最悪なんとかなるのか?
 不安だが、今から俺がオリヴィエさんのクローンなんて作るのは流石に無理だよな。時間がかかりすぎる。一度、遺伝子情報を見たことあるけど損傷が多すぎて復元が非常に面倒臭い。ヴィヴィオの遺伝子情報が手に入れば比較的すぐにつくれるが、そもそもヴィヴィオが手に入らないことを悩んでいるから意味がない。

 まったくもっていい手が思い浮かばん。
 せめてヴィヴィオ捜索の手に力を入れるべきか。
 まったくもってままならん。

 とりあえず、コーヒーでも飲んで落ち着こう。
 慌てたまま答えを出しても碌な結果にならないのは目に見えている。







 NO893にコーヒーを持ってきてもらったら、肩にアギトをへばり付けてやってきた。そして、肩にへばり付いているアギトはこっちを見て、がるるる~と威嚇してくる。
 やんのかこのやろー。

 何で俺は威嚇されてるの? 何か嫌われるようなことなんてしたっけ?
 まったくみにおぼえがないなー(棒)
 コーヒーうめー。

 あの怯えていた可愛らしいアギトはいったいどこへ行ってしまったのでしょう。実に悲しいことだ。


 アギトはこっちへはガルルルゥッ!!と威嚇してくるのに、NO893が撫でると目を細めて気持ちよさそうにしている。何だこの猫は。

 そしてNO893は、最初あんなに嫌そうな顔をしていたのに、何故微笑みながらアギトを撫でているんだ?
 母性か?! 母性に目覚めたのか?!

 豹変し過ぎだろ……。
 なんか、むかつくからアギトにデコピンしてやろう。
 ていっ!!

 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! か、噛まれた!!
 こいつ猫化しすぎだろ!! 野生児か!!



~side ホクト~
 ようやく。反撃することができる。
 ゆりかごの捜索はまだできていないが、それでも色々と種はこれまでに蒔いてきた。

 今日の行動が事件の早期解決、被害の最小化につながることを祈る。





「行くわよ。ホクト」

「えぇ、母さん」




~side 田中~
 飲んでいたコーヒーが気管に入りむせる。

「部品の供給地点が攻撃されたって、どこの供給地点だ?!」

 たった今、ガジェットに使用する部品の供給地点が管理局にがさ入れされたの報告があった。
 がさ入れされたのが下請けで使っている犯罪組織が何か所かやられただけなら供給量もそこまで大きくないので、そこまで問題にはならないのだが……。

「使用している別組織を含め過半数がやられました」

「それは、ダミー会社も含めてか?」

「はい、ダミー会社も抑えられています」

 くそっ!!
過半数もやられたとなると、供給源は激減だぞ!!
 しかもダミー会社もかよ!!
 ダミー会社はかなりの供給量を誇っていたというのに!! 一応は商業活動も行っていたから表の顔としても利用できて重宝したというのに!!
 ってちょっとまて!!

「供給地点がやられたということは無人世界の生産拠点も割り出されているんじゃないのか?!」

「襲撃されているのは1次集積所のみで、2次集積所以降は無事ですので割り出されれている可能性低いかと思われます」

「念のため警戒態勢を取らせておけ」

 警戒態勢を取らせておいても、襲撃された時点で詰んでいるが(どう頑張っても生産施設を移転なんてできない)、完成している次元航空艦(半ば実験艦1隻と艤装が未完の2隻)と搭載できるだけのガジェットだけでも逃がしておきたい。
 使い道なんて最後の手段の逃走で使える足くらいにしかならないが選択肢は少しでも多く確保しておきたい。

 しかし、生産拠点が無事でも部品の供給を抑えられたら減産するしかない。整備のための部品も確保しないとんらないことを考えるといったいどれだけ生産数が減るんのか……。
 無人世界で原料からの生産体制が整っている部品は、ある程度増産可能だが、それ以外の部品は供給の目途がたっていない状況では増産の意味はあまりない。整備で使用頻度が高い部品の多くは無人世界単独での生産が可能なのがせめてもの救いか。まぁ、輸入に頼っている部品もガジェットの稼働時間が長いと交換が必要になるから気休めでしかないが。
 至急、供給体制の見直しが必要だな。
 くそが!!

「どこのどいつだ!! こんな余計なことをしてくださりやがった奴は!!」

「まだ、確定情報ではありまえんが、首都防衛隊が今回の件に絡んでいるようです」

 また、おまえらか!!
 大人しく首都の防衛をしてろよ!! そんなことしている間に首都でテロがあったらどうすんだよ?!
 くそ。そいつらが絡んでいるってことは、またホクトの奴か!!

「っていうか、レジアスの奴は何をやってるんだよ!! しっかり手綱を握っておけよ!! 戦闘用クローンだけじゃなくて、おまけに人数分のデバイスを渡してやったのに役に立たん奴だ!!」

「クローンは戦闘訓練ができないから押し付けただけで、デバイスは万が一に備えて持たせただけでは……」

 あーあーきこえなーい。
 それにしてもゼストの奴は好き勝手し過ぎだろ。上司ガン無視して捜査とか。ないわー。
 レジアスにこれ以上は期待できんな。地上本部そのものへの影響力はともかく、ゼスト隊への圧力という意味では。
 だが、こっちでゼストをなんとかするなんて無理だ。できても原作同様ぬっころすことぐらいしかないが、警戒しているであろうオーバーSをどうやって仕留めろというのか。
 頼りないがレジアスに任せるしか方法はないか……。
 最高評議会からも圧力があるだろうからやる気はでるだろ。

 それよりも、部品の入手に全力を投入せんといかんな。
 部品の大半は枯れた技術でできたものばかりだから手を尽くせば入手の回復は可能だと思うが……。
 ただ、量を確保するのと輸送体制を再構築するのがかなり面倒だな。流石に襲撃されなかったとはいえ集積所をそのまま使うのは気が引ける。
 あとは、部品購入の資金をどうするかだな。下請けがやられたということは、資金の入手経路も同時に失ったということだからな。下請け組織をつかってやっていた商売の復活も考えないといかんな。もしくは別の資金入手方法を考えるか。
 現在確保できているガジェットは本当に必要最低限だからなぁ。後々のことを考えると足がでそうだ。


~side ホクト~
 複数個所のガジェットの部品供給元を検挙することに成功した。
 彼らの拠点そのものを特定することはできなかったけど、これで大幅な戦力ダウンを促すことができる。……ただ、供給元や集積個所から彼らの生産拠点がミッドチルダではなく、別の次元世界にある可能性が高まったのが懸念材料ね。
 ガジェットの数の増加数も併せて考えると原作に描かれていたアジトの地下生産施設だけではなく、別の次元世界に生産拠点を設けているというのは間違いないのだろう。

 別次元世界に作られた生産拠点、原作にないガジェット、まだ見つからないアギト、そして彼らが強奪しようとするであろうヴィヴィオ。不安要素は限りなくある。
 

 それに、今は比較落ち着いたとはいえ彼を止めようと歩み始めたカルタス君のことも心配だ。
 カルタス君は、嘱託になってこの事件に関わるつもりみたいだ。戦力が増えるのは有難いけど、彼の精神状態はあまりよくない。彼にはこの事件が終わるまで療養していて欲しいというのが正直な気持ちだ。



~あとがき~
ゆー◆b988b418様
masa◆023313fe様
ご報告ありがとうございます。
修正致しました。



[7818] 第30話 「鍵を閉め忘れた気がする現象」
Name: ジャミー◆90775155 ID:c5f2b9dd
Date: 2014/12/25 22:27
第30話 「鍵を閉め忘れた気がする現象」

 色んな部品の確保がままならん。
 管理局の襲撃のせいで、ガジェットの部品はもちろんのこと、他の機械の部品も入手困難に陥った。
 入手できる範囲でコストと品質に見合ったものはすべて正規品・不正規品問わずに購入していたおかげで、現在は目ぼしい販売経路がほとんど残っていない。……もしかして幅広く取引していたせいで踏み込まれたのか? どこかに管理局に目星をつけられた取引先がいて、そうとは知らずに取引をおこない、そこから芋づる式に……。
 まぁ、今となっては範囲が広すぎて原因となった個所の特定もできないか。

 まぁいい。
 こうなったらコストは度外視して購入するしかないか。だが、裏表共にダミー会社のいくつかがやられたから資金もあんまりないんだよなぁ。最高評議会にばれないように活動するための裏金も残り少ないし、どうしたもんか。
 こうなったらガジェットを売っ払うか? あんまり気乗りしないけど。それとも施設の一部を転用して薬でも作って売るか? それも
あんまり気乗りしないけど、短期間で資金を回収できる商売なんてあんまりないからな。




 コーヒーを飲んで落ち着く。
 成功後の治安維持のことを気にして、その前でこけたらそれこそ本末転倒だし我儘いってもしかたがないか。
 ヴィヴィオ確保時に生じるであろう損害を考えたらすぐにでも生産量を回復させないといけないしな。やむを得ないな。うん。

 ぐだぐだな感じで一息ついたところで、相変わらずアギトを肩に乗せたNO893がやってくる。

「マスター報告です。聖王のクローンを確保しました」

 ゲホッ!!グホッ!!
 気管にコーヒーが入った!! 苦しい!!

 って、待て待て!!
 何の抵抗もなく確保できたの?!
 原作だとガジェットがヴィヴィオに返り討ちにあった挙句に逃亡されてたんだけど!

「ガジェットが発見したレリックがトラックで輸送されていたため、聖王が載っていると仮定して、極力車体を破壊しないように攻撃したところ、生体ポッドに傷を付けずに奪取できました」

 な、なるほど。

「現在は、生き残っているダミー会社のトラックへ移送し終わったところです。ガジェットはレリックをもって囮のために地下道を移動中です」

 マヂですか?
 いや、こっちが有利な状況だからいいんですけど、なんかこう釈然としないような。
 まぁ、気にしたら負けか。

「破損したトラックは目立たない場所へ牽引済みです。多少は時間が稼げるでしょう」

 あとは検問が張られなければ無事に持ってこれる可能性は高いと。しかも、スカさんじゃなくてこっち側で確保できると。
 スカさんではなく、こちらで確保できたというのは有難いな。これでゆりかごの操作という点ではこっちが圧倒的に有利に立てる!!

「うはははははは!! よくやった!! でかしたぞ!!」

 アウチ!! 
 そういってNO893の頭を撫でているとアギトに噛まれた。
 おのれ!! 解体するぞこの野郎!!

 当初予定していた陽動用のガジェットは出さんほうがいいか……。
 たぶん検問が張られることはないと思うが、下手に地上に局員が動き回ると面倒だしな。何かの拍子にトラックの荷物を調べられると困る。

 現段階では、このまま様子見が一番か……。
 現時点でトラックは誰にも怪しまれることはないはず、現時点でこちら以外でトラックにヴィヴィオが乗っているのを知っているものはいないし、トラックの所有者であるダミー会社も現時点までは表の商業活動しかさせていない。社員に社会不適合者が多数いるという点は怪しまれるだろうが、大丈夫なはず。

 念のため、ガジェットの準備を整えるだけであとは様子見だな。
 何もなければいいが……。














 はい。何もありませんでした。
 えっ、本当に終わったの?
 実はホクトの罠で襲撃されるとか色々考えていたんだけどそんなことはなかったの?

 ヴィヴィオ奪取から10時間少々たった後にゆりかごがある拠点まで搬送されました。平穏無事に終わりすぎて、謎の不安感が物凄いんだけど……。例えるなら、鍵を閉めたはずだけど、もしかしたら閉めてないんじゃ……。っていう不安感。

 だが、目の前にはヴィヴィオがインした生体ポッドが、ででーんとある。罠とかじゃないだろうな。中に入っているのはヴィヴィオと思わせておいて実は爆弾で、ポッドを開けると同時に爆発するとか……。
 いや、ないよな。常識的に考えて。念のため行ったスキャンでもちゃんと生体反応でてたし。
 つまりこれは本物。
 ようするに。

「魔法少女リリカルなのは第3部完!!」

 いや、ゆりかご浮かせるまでは完じゃないけどさ。それでもこれで問題の大半が片付いた!!
 いやっふぅぅぅぅぅぅぅっ!!

 何も取り残しはないよな?
 このままヴィヴィオにレリックをぶち込んで玉座に縛り付ければいいだけだよな?

 よし。あとは、浮上中の護衛のガジェットを作るだけ…………。
 って、それだよ!! それを今、悩んでだよ!!

 ……地道に作るしかないか。ヴィヴィオを確保し、ゆりかごの起動がいつでも可能になった現状では特に慌てる必要がなくなったし、落ち着いて生産するか。ゆりかごが見付からなければ、いつまでも時間をかけることはできるしな。
 ヴィヴィオをどこかに隠されるという危険がなくなったのは精神的にも大きいな。ヴィヴィオをどこかに隠されたらほぼ詰みだったからな。

 とりあえず、ヴィヴィオにレリックをぶち込むか。
 ぶち込んだ後は母性本能を覚醒させたNO893に任せればいいか。っていうか、見た目が10歳以下なのに母性とはこれいかに。いかに。

















 レリックをヴィヴィオにぶち込もうと思ったら、資料少なすぎワロタ。
 そうだよな。原作でレリックをぶち込まれた成功作であるルーテシアとゼストがこの世界ではいないんだから、スカさんの資料がすくないのも頷ける。
 おのれホクトめ!! ゆるざん!!

 いや、マヂでどうしよう。俺らだけでヴィヴィオの処理はしたいんだが、困難であることは間違いない。人体にレリックをぶち込むなんて作業を俺は今までやったことがない。おまけに資料も少ない。
 能力的に考えて俺らだけで作業を行ったらどれだけ時間がかかるがわからん。下手こいたら、数年単位で時間がかかるかもしれん。これはスカさんに助力を頼むしかないのか……?
 スカさんが資料としてあげていない実験を繰り返している可能性もある。それならば向こうにはノウハウがこちらよりもある。
 仮に資料外の実験を行っていない場合でも、俺が資料通りのことしかできないのと違いスカさんが優秀なのは間違いない。確実性を求めるならスカ衛門にヘルプを求めるべきである……が。

 原作のルーテシアやヴィヴィオみたいに何か仕込まれる可能性がある。釘を刺したうえで作業を監視したとしても裏をかかれる可能性が大いにある。
 生体技術に関する能力はこちらの一歩二歩どころか十歩先くらいにいる。でなきゃ、ぬっ殺して安稗をとっている。スカさんがあんな性格じゃなきゃ普通に協力体制をとるんだがなぁ。
 能力が高すぎて捨てるに捨てられん。……最高評議会も同じ気持ちなのかもしれんな。切りたいのにもったいなくて切り捨てられん。なんとも厄介なもんだ。

 ……結局はスカさんに協力を仰がないければならんか。ゆりかご離陸前に管理局に捕縛されたら、スカさんにやられる云々以前に詰むからな。
 ヴィヴィオに何かされないかの監視を強くして対処するしかないな。

不安だがそれしかないな。

~~~~あとがき~~~~
勘違いしている人がいるかもしれませんが、昨日も今日も普通の日です。
だから私が22時以降も会社で仕事をしていても、家に帰って一人でおにぎりと惣菜を食べていてもなんらおかしなことはないのです。
ないのです。
です。


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