『製作依頼 依頼主セリス
依頼料700G
ショートソード(外装はオリで)
できれば斬撃補正付でお願いします』
これは、ゲームが発売されて三日目に町の掲示板にぽつんと張られた依頼書だ
アイテム製作、それもショートソードというRPGにおいて定番中の定番ともいえる武器の依頼
この依頼書は、『デザインカスタマイズ機能』を試すいいチャンス
俺も含めた多くの鍛冶屋がそう考えていた
だが、このなんてことのない一枚の依頼書が、多くのプレイヤーを悩ませた『ショートソード事件』の発端だった
俺はドワーフ
「なんだこれは。こんなものを商品として並べられるか!
これなら果物ナイフのほうがよっぽどマシだ」
そう言って、俺の武器を酷評する目の前の親方ドワーフ
これで4本目の失敗
今まで作ったショートソードは
すべて武器として売る許可を得ることができなかった
なぜかって?
店売りショートソード
攻撃力:20
耐久力:50/50
必要技量値:12
俺の考えたかっこいいショートソード
攻撃力:5
耐久力:12/12
必要技量値:22
斬撃補正:+7%
細かい数値はさておき武器としての性能が雲泥なのは言うまでも無い
ほかの作品も似たような感じだ
ここまで店売りに差をつけられてしまっては許可されないっぽい
俺の数値が足りていないのか?
ためしにノーマルデザインのショートソードを作ってみると
普通のショートソード
攻撃力:32
耐久力:65/65
必要技量値;10
攻撃補正:+12%
と、大変使い勝手のよい品物が出来上がる。正直依頼主に売りつけたい
しかし、武器製作に相性抜群である、俺がこうなのだ
ほかの種族だと、もっとひどい事になっているんじゃないか?
そう思い、FTOの掲示板の鍛冶屋スレを覗いて見ると、思ったとおり多くのorzが書き込まれていた。
まぁおれも、オリデザショートソード製作に2500Gかかっている時点で十分orzなのだが
あっ、俺の次に親方に武器を見せたプレイヤーがorzっている
ここで簡単に、
このVRMMO『ファンタジー・テイル・オンライン(FTO)』の説明をしておこう
VRMMO『ファンタジー・テイル・オンライン(FTO)』は、大きく分けて三つの特徴がある
一つ目は、名前のとおり、御伽噺に出てくるようなファンタジー要素あふれる世界観と、それにあわせた種族および職業のキャラメイク
二つ目は、ゲーム内での1日は現実の六時間という時間差設定
どういう仕組みなのか少し調べて見たんだが、なんか難しい理論でよくわからんかった。
とにかくすごいらしい
三つ目にして、このゲームが売れた最大の理由
それは、自分でデザインしたアイテムや、作曲したものなどをゲーム内に取り込む、カスタマイズ機能の高さだ
これに、多くのプレイヤーが期待し、胸を膨らませていた
実際俺も、この機能が気になって購入した口だ
今度は俺の説明
俺の種族はドワーフ、職業は鍛冶屋だ。
『ドワーフ』
人間よりも少し小さい伝説上の種族。
矮躯でありながら屈強、豊かな髭を生やしている
大酒飲みで手先が器用であり、鉱夫あるいは細工師や鍛冶屋などの職人であると同時に戦士でもある。
職人・技術者のイメージから発展して、銃砲や機械類などの知識を持つとされる
魔法など神秘的な知識には無関心であり霊的な能力にも劣るとされるが、
信仰系の魔法に限っては使えるとしている場合もある。〔WIKI抜粋〕
普通の人の思い浮かべるドワーフのイメージは、上記に挙げたとおりだろう
俺自身もそうだと思っているし、俺の外装もそんな感じだ
このVRMMO『ファンタジー・テイル・オンライン(FTO)』において
高い種族補正にもかかわらず一・二を争う不人気種族だ
理由は簡単、
外見がまぁ、正直に言えばかっこ悪いの一言ですむ
多くのVRMMOは、容姿を目の色から指の形にいたるまでキャラメイクで弄る事ができる
要するに、自分の理想の外見になることが可能だ
そんなゲームで、チビとデブを兼ね備えたドワーフになろうとする物好きは、かなり少数だからだ
まぁ、俺もそんな少数派だが
リアルにおける三日=ゲーム時間における十二日
それだけの時間があれば、
職業『鍛冶屋』の基本スキルである『武器作成』で、ショートソードを製作できるようになるには十分な時間。
作成が可能になった多くの鍛冶屋が、オリジナルデザインのショートソードを作った。
しかし、発売から今まで、オリジナルデザインのショートソードは販売の許可された物は0
全ての武器で考えると、いくつかは通った物もあったようだが、出来自体もあまりよくはなく
通ったものと、通らなかったものの違いが何だったかも不明
問題はオリデザにあるのは間違いない
しかし、自らの理想を変更したくはない
多くの鍛冶屋が、『僕の考えたかっこいい武器』の誘惑に勝てず
有効な解決策を打てないまま失敗を繰り返し、出費を重ね続け、
ついには耐え切れず一人、また一人とキャラクターを作り直す
発売から現実時間において十日たった今では、鍛冶屋の数はスタート時の2割近くまで減少し、当然作り手が減ったため原因究明のための人手も減少
といったまさに負の連鎖が起こっているのが現在のFTOの現状だ
とにかく、これ以上失敗を重ねるわけにはいかない
もう一本ロングソードを作るにしても
成功につながるものを作らなければ
いろいろ考えたが、何も思い浮かばん
とりあえず、一度ログアウトし取り説を読み直してみるかなぁ
アイテムクリエイト:武具製作
いろいろな武器や防具を、自分のデザインした外装を取り込んで作ることが可能
剣:金属の種類、刀身の長さ、柄や鞘の細かい形に至るまで自由に設定できます
ただし、作ることの出来る剣の種類は武具製作の熟練度に依存します
うん、説明不足なんだな
おそらく製作者の頭の中には
悩むのも楽しみの一つとかいう考えがあるのだと思う
楽しむ前に力尽きたやつがほとんどだったがな
しかし、いったい何が違うんだ?
PCの画面に表示された、オリデザと店売りとを見比べてみる
店売りのデザインは
刀身に柄という、まさに剣といったシンプルなものだ
大して俺のデザインしたものは
剣先は、10センチくらいで、刀身が十字になっていて、そこから細くなり先っぽの2/3位の太さ
そして、鍔は大きな星型、そして柄頭には、大きな玉がついている
そんなに変なデザインってわけでもないんだがなぁ・・
うーん、これの何がいけなかったんだ
少々奇抜すぎたかなぁ・・・・
とりあえず、明日は仕事休みだし
ゆっくり考えるか
あとがき
初小説で初投稿
読みやすい文章の書き方とかがよくわかりません
修正 ゲームの名前を変更